JP2005032819A - レジスト剥離装置およびレジスト剥離方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ウエハW上で硫酸および過酸化水素水を混合して生成されるレジスト剥離液による処理の後、ウエハWの表面に温水が供給されて、ウエハWの表面に付着しているレジスト剥離液が温水によって洗い流される。すなわち、スピンチャック1によってウエハWが300〜1500rpmの回転速度で回転される一方で、その回転中のウエハWの表面の中央部にDIWノズル4から温水が供給される。ウエハWの表面に供給された温水は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、その供給位置からウエハWの周縁に向けて流れる。これによって、ウエハWの表面全域に温水が行き渡り、ウエハWの表面に付着しているレジスト剥離液が温水によって洗い流される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの各種基板の表面から不要となったレジスト膜を剥離するためのレジスト剥離装置およびレジスト剥離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板の表面に形成されたレジスト膜を剥離するための処理(レジスト剥離処理)が行われる。
レジスト剥離処理の方式としては、たとえば、複数枚の基板を一括してレジスト剥離液中に浸漬させるバッチ式と、基板の表面にレジスト剥離液を供給して、基板を1枚ずつ処理する枚葉式とが考えられる。しかし、バッチ式のレジスト剥離処理を実施するためには、複数の基板を収容することのできる大きな処理槽が必要であることから、最近では、処理対象の基板が大型化してきていることもあって、そのような大きな処理槽を必要としない枚葉式のレジスト剥離処理が注目されている。
【0003】
枚葉式のレジスト剥離処理を実施する装置は、たとえば、基板をほぼ水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板の上面に硫酸(H2SO4)および過酸化水素水(H2O2)をそれぞれ供給するためのノズルとを備えている。このような装置によるレジスト剥離処理は、スピンチャックに静止状態で保持された基板の表面(表面)に硫酸を供給して、基板上に硫酸を液膜の状態で貯めた後、スピンチャックによって基板を低速で回転させ始め、つづいて、その回転している基板の表面に過酸化水素水を供給することにより達成できる。過酸化水素水が供給されると、基板上で硫酸と過酸化水素水との化学反応が生じて、強い酸化力を有するH2SO5を含むレジスト剥離液が生成され、その酸化力によって、基板の表面に形成されているレジスト膜が化学的に剥離されて除去される。
【0004】
【特許文献1】
特開昭50−21681号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、硫酸および過酸化水素水からなるレジスト剥離液を用いた場合、処理の後に基板を水洗しても、基板の表面にSO4 2−などの硫黄成分が残留することがあった。基板の表面に硫黄成分が残留していると、この硫黄成分の残留(硫黄残渣)が原因で、基板の表面にパーティクルが付着するおそれがある。
そこで、この発明の目的は、硫酸および過酸化水素水による処理後の基板の表面に硫黄残渣およびパーティクルが残るのを防止できるレジスト剥離装置およびレジスト剥離方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)の表面に形成されているレジスト膜を剥離して除去するためのレジスト剥離装置であって、基板を保持して回転させる基板保持回転手段(1)と、この基板保持回転手段に保持された基板の表面に、レジスト膜を剥離するための硫酸および過酸化水素水を供給する薬液供給手段(2,3)と、上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に、温水生成部(41;71)で生成された温水を供給する温水供給手段(4,7)とを含むことを特徴とするレジスト剥離装置である。
【0007】
上記薬液供給手段は、上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に硫酸および過酸化水素水を別々に供給するものであってもよいし、上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に硫酸および過酸化水素水の混合液を供給するものであってもよい。
括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0008】
上記の構成によれば、基板の表面に対して硫酸および過酸化水素水によるレジスト剥離処理が行われた後、硫酸および過酸化水素水の付着した基板の表面を温水によってリンスすることができる。これにより、基板の表面が常温水でリンスされる場合と比較して、基板の表面に付着している硫黄成分を良好に洗い流すことができる。よって、温水リンス後の基板の表面に硫黄成分が残留するおそれがなく、そのような硫黄成分の残留に起因する基板の表面へのパーティクル付着の問題を生じるおそれがない。
【0009】
請求項2記載の発明は、上記レジスト剥離装置は、上記温水生成部で生成された温水に物理洗浄効果を付与するための物理洗浄効果付与手段(7;95)をさらに含み、上記温水供給手段は、上記物理洗浄効果付与手段によって物理洗浄効果が付与された温水を上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に供給するものであることを特徴とする請求項1記載のレジスト剥離装置である。
この構成によれば、物理洗浄効果が付与された温水によって、硫酸および過酸化水素水によるレジスト剥離処理後の基板の表面をリンスすることができる。温水に物理洗浄効果が付与されていることにより、温水が有する熱的洗浄効果に加えて、温水が有する物理的洗浄効果によって、基板の表面に付着しているSO4 2−などの硫黄成分を良好に洗い流すことができる。よって、基板の表面に硫黄成分が残留したり、この硫黄成分の残留が原因で基板の表面にパーティクルが付着することを一層防止することができる。
【0010】
上記物理洗浄効果付与手段は、請求項3に記載のように、上記温水生成部で生成された温水に気体を混合させることによって温水の液滴の噴流を形成し、その噴流を上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に供給する二流体スプレーノズル(7)を含むものであってもよい。また、請求項4に記載のように、上記温水生成部で生成された温水に超音波振動を付与する超音波振動付与手段(95)を含むものであるってもよい。
【0011】
請求項5記載の発明は、上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に、上記温水供給手段によって供給される温水よりも低温の純水を供給する低温純水供給手段をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のレジスト剥離装置である。
この構成によれば、たとえば、温水によるリンス後の基板の表面に、温水よりも低温の純水(たとえば、常温(約25℃)の純水)を供給することができる。これにより、温水リンスで昇温した基板を冷却することができる。また、基板保持回転手段によって基板を回転させつつ、その回転中の基板の表面に低温の純水を供給すれば、基板の表面に供給された常温の純水が周囲に飛び散るから、ウエハWの周囲に配設された部材および基板が収容された処理室内の排液を冷却することができ、処理室内の水蒸気(湯気)による曇りを除去することができる。
【0012】
請求項6記載の発明は、基板(W)を保持して回転させる基板保持回転手段(1)に処理対象の基板を保持させる基板保持工程と、上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に硫酸および過酸化水素水を供給して、当該基板の表面に形成されているレジスト膜を剥離するレジスト剥離工程と、このレジスト剥離工程後に、上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に温水生成部で生成された温水を供給して、当該基板の表面を温水でリンスする温水リンス工程とを含むことを特徴とするレジスト剥離方法である。
【0013】
この方法によれば、請求項1に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項7記載の発明は、上記レジスト剥離方法は、上記温水生成部で生成された温水に物理洗浄効果を付与する物理洗浄効果付与工程をさらに含み、上記温水リンス工程は、上記物理洗浄効果付与工程で物理洗浄効果が付与された温水を上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に供給する工程であることを特徴とする請求項6記載のレジスト剥離方法である。
【0014】
この方法によれば、請求項2に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るレジスト剥離装置の構成を図解的に示す図である。このレジスト剥離装置は、基板の一例であるシリコン半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)の表面(上面)から不要になったレジスト膜を剥離するレジスト剥離処理を行う枚葉式の装置であり、処理室内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転するスピンチャック1と、このスピンチャック1に保持されたウエハWの表面に硫酸(H2SO4)を供給するための硫酸ノズル2と、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面に過酸化水素水を供給するための過酸化水素水ノズル3と、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面にDIW(脱イオン化された純水)を供給するためのDIWノズル4とを備えている。
【0016】
スピンチャック1は、たとえば、真空吸着式チャックであって、ほぼ鉛直な方向に延びたスピン軸11と、このスピン軸11の上端に取り付けられて、ウエハWをほぼ水平な姿勢でその裏面(下面)を吸着して保持する吸着ベース12とを有している。スピン軸11には、モータなどを含む回転駆動機構13が結合されていて、ウエハWを吸着ベース12に吸着保持した状態で、回転駆動機構13からスピン軸11に駆動力を入力することにより、ウエハWをほぼ水平な姿勢でスピン軸11の中心軸線まわりに回転させることができる。
【0017】
なお、スピンチャック1としては、このような真空吸着式チャックに限らず、たとえば、ウエハWの端面を複数個の挟持部材で挟持することにより、ウエハWをほぼ水平な姿勢で保持し、さらにその状態でほぼ鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる構成のものが採用されてもよい。
硫酸ノズル2には、硫酸供給源からの硫酸を供給する硫酸供給管21が接続されている。硫酸供給管21の途中部には、硫酸供給源側から順に、硫酸の温度を調節するための温度調節器22と、硫酸ノズル2からの硫酸の吐出を制御するための硫酸供給バルブ23とが介装されている。硫酸ノズル2から吐出される硫酸は、たとえば、連続流の状態(硫酸の液流が柱状をなしている状態)でウエハWの表面の中央部(回転中心付近)に供給される。
【0018】
過酸化水素水ノズル3は、たとえば、過酸化水素水を霧化してウエハWに供給する噴霧ノズルであり、過酸化水素水供給源からの過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給管31と、窒素ガス供給源からの窒素ガス(N2)を供給する窒素ガス供給管32とが接続されている。過酸化水素水ノズル3に過酸化水素水と窒素ガスとが同時に供給されると、過酸化水素水ノズル3内で過酸化水素水が霧化され、この霧化した過酸化水素水が過酸化水素水ノズル3の先端からウエハWの表面に供給される。過酸化水素水供給管31の途中部には、過酸化水素水供給源側から順に、過酸化水素水の温度を調節するための温度調節器33と、過酸化水素水ノズル3への過酸化水素水の供給を制御するための過酸化水素水供給バルブ34とが介装されている。また、窒素ガス供給管32の途中部には、窒素ガス供給源側から順に、窒素ガスの温度を調節するための温度調節器35と、過酸化水素水ノズル3への窒素ガスの供給を制御するための窒素ガス供給バルブ36とが介装されている。
【0019】
スピンチャック1の周囲は、壁状のスプラッシュガード(図示せず)によって囲まれており、このスプラッシュガードの外側にDIWノズル4が固定配置されている。DIWノズル4には、温水ユニット41からの温水(40〜80℃のDIW)を供給する温水供給管42と、DIW供給源からの常温(約25℃)のDIWを供給するDIW供給管43とが接続されている。温水ユニット41は、配管内を流通するDIWを加熱して温水を生成するユニットである。なお、この温水ユニット41に代えて、DIWを加熱して生成された温水を貯留しておくタンク式の温水キャビネットが採用されてもよい。
【0020】
温水供給管42の途中部には、DIWノズル4からの温水の吐出を制御するための温水供給バルブ44が介装されている。また、DIW供給管43の途中部には、DIWノズル4からの常温のDIWの吐出を制御するためのDIW供給バルブ45が介装されている。DIWノズル4から吐出される温水または常温のDIWは、たとえば、連続流の状態(温水またはDIWの液流が柱状をなしている状態)でウエハWの表面の中央部(回転中心付近)に供給される。
【0021】
また、スピンチャック1の側方には、旋回軸51が鉛直方向にほぼ沿って配置されており、過酸化水素水ノズル3は、その旋回軸51の上端部からほぼ水平に延びたアーム52に取り付けられている。旋回軸51には、この旋回軸51を中心軸線まわりに回転駆動する旋回駆動機構53が結合されている。旋回駆動機構53から旋回軸51に駆動力を入力して、旋回軸51をその中心軸線まわりに所定の角度範囲内で往復回転させることにより、スピンチャック1に保持されたウエハWの上方でアーム52を揺動させることができ、これに伴って、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面上で、過酸化水素水ノズル3からの過酸化水素水の供給位置をスキャン(移動)させることができる。また、旋回軸51および旋回駆動機構53は、昇降駆動機構54によって昇降されるようになっている。
【0022】
図2は、過酸化水素水ノズル3の構成を示す断面図である。過酸化水素水ノズル3は、円筒状の内周面301aを有する中空のノズル本体301と、このノズル本体301の中空部分に挿入された過酸化水素水流通部材302と、ノズル本体301の先端に接続されたノズルヘッド303とを有している。ノズルヘッド303は、キャップ304によって、ノズル本体301の先端に接続された状態で固定されている。
【0023】
過酸化水素水流通部材302は、ノズル本体301の内周面301aに気密性を保って密着した封止部305と、外径がノズル本体301の内径(内周面301aの径)よりも小さく形成された管状の小径部306と、この小径部306の先端部付近から側方に(内周面301aに向けて)突出した環状のフランジ部307とで構成されている。過酸化水素水流通部材302の内部には、封止部305および小径部306を貫通して、過酸化水素水をノズルヘッド303に向けて導くための過酸化水素水流通路308が形成されている。また、過酸化水素水流通部材302には、ノズル本体301に溶接された接続部材309を介して過酸化水素水供給管31が接続されており、過酸化水素水供給管31から供給される過酸化水素水は、接続部材309に貫通形成された接続路310を通して、過酸化水素水流通路308に流入するようになっている。
【0024】
ノズルヘッド303は、先端部が半球状に形成された中空体であり、ノズル本体301の内周面301aに段差なく連続した円筒状の内周面303aと、この内周面303aに段差面303bを介して接続されていて、過酸化水素水流通部材302の小径部306の外径よりも少し大きな径に形成された円筒状の内周面303cとを有している。また、半球状の先端部には、吐出口311が形成されている。
【0025】
過酸化水素水流通部材302の先端は、ノズルヘッド303の内周面303aに囲まれた空間内に入り込んでいて、過酸化水素水流通路308は、ノズルヘッド303の内周面303cに囲まれた空間内で吐出口311に向けて開口している。また、過酸化水素水流通部材302のフランジ部307は、その周面がノズル本体301の内周面301aとノズルヘッド303の内周面303aとに跨った状態で密着しており、フランジ部307よりも封止部305側の小径部306の周囲には、ノズル本体301の内周面301aとの間に隙間312が形成され、フランジ部307よりも先端側の小径部306の周囲には、ノズルヘッド303の内周面303aとの間に隙間313が形成されている。そして、フランジ部307には、環状の連通孔314が貫通形成されていて、フランジ部307によって仕切られた隙間312,313は、その環状の連通孔314を介して連通されている。さらに、過酸化水素水流通部材302(小径部306)の先端部とノズルヘッド303の内周面303cとの間には、微小な環状のガス流路315が形成されており、このガス流路315を介して、隙間313とノズルヘッド303の内周面303cに囲まれた空間とが連通している。
【0026】
また、ノズル本体301の外側面には、窒素ガス供給管32を接続するための接続部316が突出して形成されている。接続部316には、窒素ガス供給管32からの窒素ガスが流通する窒素ガス流通路317が形成されている。窒素ガス流通路317は、ノズル本体301の内周面301aに形成された開口318を介して隙間312に連通している。
この構成により、過酸化水素水供給管31から供給される過酸化水素水は、接続路310および過酸化水素水流通路308を通って、ノズルヘッド303内の内周面303cに囲まれた空間に吐出される。一方、窒素ガス供給管32から供給される窒素ガスは、窒素ガス流通路317を通って隙間312に流入し、さらに連通孔314、隙間313およびガス流路315を順に通って、ガス流路315からノズルヘッド303内の内周面303cに囲まれた空間に適当な圧力で吐出される。これにより、過酸化水素水ノズル3に過酸化水素水と窒素ガスとが同時に供給されると、ノズルヘッド303内の内周面303cに囲まれた空間で、過酸化水素水流通路308から吐出される過酸化水素水にガス流路315から吐出される窒素ガスが衝突し、この衝突によって過酸化水素水が霧化されて、スリット状の吐出口311から霧状の過酸化水素水が吐出される。
【0027】
図3は、ウエハWの表面上における過酸化水素水の供給範囲(形状)について説明するための図解図である。ウエハWの表面上における過酸化水素水の供給範囲は、過酸化水素水ノズル3のノズルヘッド303に形成された吐出口311の形状と、過酸化水素水ノズル3とスピンチャック1に保持されたウエハWの表面との間の距離によって決まる。
この実施形態では、吐出口311は、ノズルヘッド303の半球状の先端部に、その頂点を通る円弧に沿ってスリット状に長く形成されている。これにより、吐出口311から吐出される霧状の過酸化水素水は、吐出口311の長手方向に拡がりつつウエハWの表面に向けて進み、ウエハWの表面上のスリット状の範囲SAに供給される。
【0028】
図4は、このレジスト剥離装置の電気的構成を示すブロック図である。このレジスト剥離装置はさらに、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置6を備えている。
制御装置6には、回転駆動機構13、旋回駆動機構53、昇降駆動機構54、硫酸供給バルブ23、過酸化水素水供給バルブ34、窒素ガス供給バルブ36、温水供給バルブ44およびDIW供給バルブ45などが制御対象として接続されている。制御装置6は、レジスト剥離処理のために、予め定められたプログラムに従って、回転駆動機構13、旋回駆動機構53および昇降駆動機構54の動作を制御し、また、硫酸供給バルブ23、過酸化水素水供給バルブ34、窒素ガス供給バルブ36、温水供給バルブ44およびDIW供給バルブ42の開閉を制御する。
【0029】
図5は、レジスト剥離処理について説明するための図である。処理対象のウエハWが搬送ロボット(図示せず)によって搬入されてきて、そのウエハWが搬送ロボットからスピンチャック1に受け渡されると、まず、回転駆動機構13が制御されて、スピンチャック1に保持されたウエハWが3000rpmの高回転速度で回転される。その一方で、硫酸供給バルブ23が開かれて、硫酸ノズル2から高速回転中のウエハWの表面の中央部に硫酸が連続流の状態で供給される(H2SO4湿潤)。ウエハWの表面に供給された硫酸は、ウエハWの高速回転による大きな遠心力を受け、その供給位置からウエハWの周縁へ向けて、ウエハWの表面上を比較的強い液流となって流れる。これにより、ウエハWの表面に格子状のパターンが形成されていても、ウエハWの表面に供給された硫酸は、そのパターンの影響をほとんど受けずにウエハWの表面の全域に行き渡る。この結果、ウエハWの表面の全域が硫酸によって湿潤した状態になる。
【0030】
このようなウエハWの高速回転中における硫酸の供給は、所定の硫酸湿潤時間(たとえば、1秒間)にわたって行われる。その後は、回転駆動機構13が制御されて、スピンチャック1によるウエハWの回転速度が3000rpmから0rpmまで徐々に減速(たとえば、3秒間かけて毎秒1000rpmずつ減速)されていく(ステップS2)。この減速の間は、硫酸ノズル2からウエハWの表面への硫酸の供給が続けられていてもよいし、硫酸ノズル2からウエハWの表面への硫酸の供給が停止されていてもよい。硫酸の供給が続けられる場合、このウエハWの回転速度を減速する過程も、ウエハWの表面を硫酸で湿潤させるH2SO4湿潤工程に含まれる。
【0031】
ウエハWの回転速度が0rpmまで減速されて、ウエハWが静止した状態になった後も、さらに所定の硫酸パドル時間(たとえば、10〜20秒間)、ウエハWは静止した状態のまま、硫酸ノズル2からウエハWの表面への硫酸の供給が行われる(H2SO4パドル)。これにより、ウエハWの表面に供給された硫酸は、ウエハWの表面上に拡がり、その表面張力でウエハWの表面上に液膜となって溜められていく。すなわち、ウエハWの表面上に硫酸が液盛りされて、ウエハWの表面上に硫酸の液膜が形成されていく。この液膜形成に先立って、ウエハWの表面全域が硫酸で湿潤されているので、静止状態のウエハWの表面に供給される硫酸は、たとえウエハWの表面にパターンが形成されていても、そのパターンの影響を受けずに、ウエハWの表面上をその供給位置を中心とする同心円状に拡がる。これによって、ウエハWの表面上には、その全域にほぼ均一な膜厚を有する硫酸の液膜がむらなく形成される。
【0032】
ウエハWの静止状態での硫酸の供給が上記硫酸パドル時間行われると、硫酸供給バルブ23が閉じられて、硫酸ノズル2からウエハWへの硫酸の供給が停止される。そして、ウエハWが静止し、そのウエハWの表面上に硫酸の液膜が形成されている状態で数秒間(たとえば、2〜3秒間)放置される。この放置後、回転駆動機構13が制御されて、スピンチャック1に保持されたウエハWが10rpmの低回転速度で回転される。そして、昇降駆動機構54が制御されて、ウエハWの表面に過酸化水素水ノズル3が近づけられ、ウエハWが回転されている一方で、過酸化水素水供給バルブ34および窒素ガス供給バルブ36が開かれて、過酸化水素水ノズル3から低速回転中のウエハWの表面に霧状の過酸化水素水が供給される(H2O2供給)。
【0033】
過酸化水素水ノズル3からの霧状の過酸化水素水は、図3を参照して説明したように、ウエハWの表面上に設定されたスリット状の供給範囲SAに向けて供給される。また、霧状の過酸化水素水がウエハWの表面に供給されている間、旋回駆動機構53が制御されて、ウエハWの表面上における過酸化水素水の供給範囲SAのスキャンが行われる。すなわち、過酸化水素水の供給範囲SAが、その供給範囲SA内にウエハWの回転中心が含まれる位置(センタ位置)と、供給範囲SA内にウエハWの周縁部が含まれる位置(エッジ位置)との間で繰り返し往復する。スピンチャック1によってウエハWが低速回転される一方で、過酸化水素水の供給範囲SAのスキャンが行われることにより、ウエハWの表面上の硫酸の液膜に対して過酸化水素水がむらなく供給される。
【0034】
なお、ウエハWの表面上における過酸化水素水のスリット状の供給範囲SAの長手方向の長さがウエハWの半径よりも長く、また、その供給範囲SAがウエハWの回転中心から周縁まで及ぶように、過酸化水素水ノズル3が設計されていれば、ウエハWの表面上で過酸化水素水の供給範囲SAをスキャンさせなくても、ウエハWの表面の全域に過酸化水素水を供給することができる。しかしながら、供給範囲SA内の各部で過酸化水素水の供給量が均一であるとは限らないので、過酸化水素水ノズル3がそのように設計されている場合であっても、ウエハWの表面上で過酸化水素水の供給範囲SAをスキャンさせることが望ましく、そうすることによって、ウエハWの表面全域にむらなく均一に過酸化水素水を供給することができる。
【0035】
過酸化水素水ノズル3からウエハWの表面に向けて供給される過酸化水素水は霧状であるから、この霧状の過酸化水素水は、ウエハWの表面上に形成されている硫酸の液膜を破壊することなく、硫酸の液膜の表面の全域からその液膜内に浸透する。これにより、ウエハWの表面上では、その全域で、硫酸と過酸化水素水との化学反応(H2SO4+H2O2→H2SO5+H2O)が生じて、強い酸化力を有するH2SO5を含むレジスト剥離液が良好に生成される。また、このとき化学反応による発熱(反応生成熱)を生じるから、たとえば、硫酸ノズル2からウエハWの表面に供給される硫酸の温度を室温程度に温度調節し、過酸化水素水ノズル3から供給される霧状の過酸化水素水の温度を約40℃に温度調節しても、ウエハWの表面上に生成されるレジスト剥離液の温度は、ウエハWの表面に形成されているレジスト膜を良好に剥離可能な約100℃以上の高温に達する。よって、ウエハW上における硫酸と過酸化水素水との混合は、エネルギー効率の点から望ましい。
【0036】
霧状の過酸化水素水の供給は、所定の過酸化水素水供給時間(たとえば、15秒間)にわたって行われる。そして、過酸化水素水の供給停止後は、そのままの状態(ウエハWが静止し、そのウエハWの表面上にレジスト剥離液の液膜が形成されている状態)で、予め定める時間(たとえば、30〜120秒間)が経過するまで放置される。過酸化水素水が供給されている期間およびその後の放置されている期間に、ウエハWの表面に形成されているレジスト膜が約100℃以上の高温に昇温したレジスト剥離液による酸化を受け、ウエハWの表面から剥離されて除去される。
【0037】
この後、ウエハWの表面に温水が供給されて、ウエハWの表面に付着しているレジスト剥離液が温水によって洗い流される(温水リンス)。すなわち、回転駆動機構13が制御されて、ウエハWが300〜1500rpmの回転速度で回転される一方で、温水供給バルブ44が開かれて、回転中のウエハWの表面の中央部にDIWノズル4から温水が供給される。ウエハWの表面に供給された温水は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、その供給位置からウエハWの周縁に向けて流れる。これによって、ウエハWの表面全域に温水が行き渡り、ウエハWの表面に付着しているレジスト剥離液が温水によって洗い流される。
【0038】
ウエハWの表面を温水でリンスすることにより、ウエハWの表面を常温のDIW(冷水)でリンスする場合に比べて、温水が有する熱的洗浄効果によって、ウエハWの表面に付着しているSO4 2−などの硫黄成分を良好に洗い流すことができる。よって、リンス後のウエハWの表面に硫黄成分が残留するおそれがなく、そのような硫黄成分の残留に起因するウエハWの表面へのパーティクル付着の問題を生じるおそれがない。
【0039】
温水によるウエハWのリンス処理が所定の温水リンス時間(たとえば、60秒間)にわたって行われると、温水供給バルブ44が閉じられて、DIWノズル4からウエハWの表面への温水の供給が停止される。その後は、DIW供給バルブ45が開かれて、DIWノズル4からウエハWの表面に常温のDIWが供給される(DIWリンス)。温水の供給停止後もウエハWの回転は続けられており、DIWノズル4からの常温のDIWは、300〜1500rpmの回転速度で回転しているウエハWの表面に供給されて、温水リンスで昇温したウエハWを冷却した後、ウエハWの回転による遠心力でウエハWの周縁から飛散する。これにより、ウエハWだけでなく、温水リンスで昇温した処理室内(スプラッシュガード内)の各部材および処理室内の排液を冷却することができ、処理室内の水蒸気(湯気)による曇りを除去することができる。
【0040】
ウエハWの表面への常温のDIWの供給が所定のDIWリンス時間(たとえば、15秒間)にわたって行われると、DIW供給バルブ45が閉じられて、DIWノズル4からの常温のDIWの供給が停止される。そして、スピンチャック1によるウエハWの回転速度が3000rpmまで上げられて、DIWリンス処理後のウエハWの表面に付着しているDIWを遠心力で振り切って乾燥させるスピンドライ処理が所定の乾燥時間(たとえば、にわたって行われる。スピンドライ処理が終了すると、スピンチャック1によるウエハWの回転が止められて、図示しない搬送ロボットにより、スピンチャック1から処理後のウエハWが搬出されていく。
【0041】
以上のように、この実施形態によれば、ウエハW上で硫酸および過酸化水素水を混合して生成されるレジスト剥離液による処理の後、そのレジスト剥離液が付着したウエハWの表面が温水によってリンスされる。これにより、ウエハWの表面が常温のDIWでリンスされる場合と比較して、ウエハWの表面に付着している硫黄成分を良好に洗い流すことができる。よって、温水リンス後のウエハWの表面に硫黄成分が残留するおそれがなく、そのような硫黄成分の残留に起因するウエハWの表面へのパーティクル付着の問題を生じるおそれがない。
【0042】
なお、このレジスト剥離処理についての説明で挙げた具体的な数値は、いずれも単なる一例であり、たとえば、ウエハWの表面を硫酸で湿潤させるときのウエハWの回転速度は、ウエハWの表面にパターンが形成されている場合であっても、そのウエハWの表面の全域に硫酸を行き渡らせることができる遠心力を生じさせるような回転速度(好ましくは、1000rpm以上)であればよい。
また、ウエハWの表面上に硫酸の液膜を形成する際にウエハWを静止させているが、ウエハWの表面上に溜められた硫酸が回転による遠心力を受けてウエハW上から流下しない程度の低回転速度(好ましくは、10rpm以下)であれば、ウエハWの表面上に硫酸の液膜を形成する際にウエハWが回転されてもよい。
【0043】
さらにまた、ウエハWの表面に硫酸の液膜を形成する工程に先立って、ウエハWの表面を硫酸で湿潤させる工程は、必ずしも行わなければならないわけではなく、処理対象のウエハWがスピンチャック1に受け渡された後すぐに、そのウエハWの表面上に硫酸を液盛りして、ウエハWの表面上に硫酸の液膜を形成するようにしてもよい。この場合、たとえば、ウエハWを静止させた状態のまま、その静止状態のウエハWの表面に硫酸ノズル2から硫酸を供給し、この硫酸の供給途中から、スピンチャック1によってウエハWをウエハWの表面上に溜められた硫酸が流れ落ちない程度の低回転速度(たとえば、10rpm以下)まで徐々に増速させるとよい。ウエハWを低回転速度で回転させることにより、硫酸の液膜をウエハWの表面上のほぼ全域で均一な膜厚に形成することができる。
【0044】
図6は、この発明の他の実施形態に係るレジスト剥離装置の構成を図解的に示す図である。この図6において、図1に示す各部に相当する部分には、図1の場合と同一の参照符号が付されている。
この実施形態に係るレジスト剥離装置では、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面に温水の液滴の噴流を供給するための二流体スプレーノズル7が備えられており、この二流体スプレーノズル7からの温水の噴流によって、レジスト剥離液による処理後のウエハWの表面がリンスされる。
【0045】
二流体スプレーノズル7には、温水ユニットまたは温水キャビネット71からの温水(40〜80℃のDIW)を供給する温水供給管72と、窒素ガス供給源からの高圧の窒素ガス(N2)を供給する高圧窒素ガス供給管73とが接続されている。温水供給管72からの温水は、たとえば、100〜150cc/minの流量で二流体スプレーノズル7に供給される。また、高圧窒素ガス供給管73からの高圧窒素ガスは、たとえば、80NL/minの流量で二流体スプレーノズル7に供給される。二流体スプレーノズル7に温水と高圧窒素ガスとが同時に供給されると、温水と高圧窒素ガスとが混合されて、温水の微細な液滴が形成され、この温水の液滴が噴流となってウエハWの表面に供給される。温水供給管72の途中部には、二流体スプレーノズル7への温水の供給を制御するための温水供給バルブ74が介装されている。また、高圧窒素ガス供給管73の途中部には、二流体スプレーノズル7への窒素ガスの供給を制御するための高圧窒素ガス供給バルブ75が介装されている。
【0046】
スピンチャック1の側方には、旋回軸81が鉛直方向にほぼ沿って配置されており、二流体スプレーノズル7は、その旋回軸81の上端部からほぼ水平に延びたアーム82の先端部に取り付けられている。旋回軸81には、この旋回軸51を中心軸線まわりに回転駆動する旋回駆動機構83が結合されている。旋回駆動機構83から旋回軸81に駆動力を入力して、旋回軸81をその中心軸線まわりに所定の角度範囲内で往復回転させることにより、スピンチャック1に保持されたウエハWの上方でアーム82を揺動させることができ、これに伴って、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面上で、二流体スプレーノズル7からの温水の液滴の噴流の供給位置をスキャン(移動)させることができる。また、旋回軸81および旋回駆動機構83は、昇降駆動機構84によって昇降されるようになっている。
【0047】
図7は、二流体スプレーノズル7の構成例を示す断面図である。二流体スプレーノズル7は、たとえば、いわゆる内部混合型の二流体スプレーノズルであって、中空のノズル本体701と、このノズル本体701に接続された気体導入管702および液体導入管703とを有している。気体導入管702には、高圧窒素ガス供給管73から高圧窒素ガスが供給され、液体導入管703には、温水供給管72から温水が供給されるようになっている。
【0048】
ノズル本体701は、上面および円筒状の内周面を有する接続部704と、この接続部704の下端に連なり、下方に向かうにつれて内径が小さく形成されたテーパ部705と、このテーパ部705の下端に連なり、内径が一様な直管形状のストレート部706とで構成されている。接続部704の上面には、ほぼ中心に開口707が形成されており、気体導入管702は、その開口707に挿通されて、下半分程度の部分がノズル本体701内に突出した状態に設けられている。また、液体導入管703は、接続部704に形成された接続口708に接続されていて、その接続口708を介して、気体導入管702の外周面と接続部704の内周面との間の環状の空間709に連通している。
【0049】
この構成により、温水供給管72から供給される温水は、液体導入管703を通って環状空間709に流入し、さらに、環状空間709から気体導入管702の下方の空間710に流入する。その一方で、気体導入管702に高圧窒素ガスが供給されると、高圧窒素ガスが気体導入管702の下端開口から噴出されて、気体導入管702の下方の空間710に流入した温水に高速で衝突する。その結果、気体導入管702の下方の空間710で温水と窒素ガスとの気液混合が生じて、温水の微細な液滴が形成され、この温水の液滴が、テーパ部705およびストレート部706を通って、ストレート部706の下端開口411から吐出される。温水の液滴は、テーパ部705を通過することによって流圧(流速)が大きく高められるので、下端開口411から吐出される温水の液滴は、大きな流速を有する噴流となって、ストレート部706の先端からスピンチャック1に保持されたウエハWの表面に直線状に勢いよく供給される。
【0050】
再び図6を参照して、温水によるウエハWの表面のリンス時には、回転駆動機構13が制御されて、ウエハWが300〜1500rpmの回転速度で回転される。その一方で、旋回駆動機構83および昇降駆動機構84が制御されて、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面に二流体スプレーノズル7が近づけられる。そして、温水供給バルブ74および高圧窒素ガス供給バルブ75が開かれて、二流体スプレーノズル7からウエハWの表面に温水の液滴の噴流が供給される。また、温水の液滴の噴流がウエハWの表面に供給されている間、旋回駆動機構83が制御されて、二流体スプレーノズル7からの液滴の噴流が導かれるウエハWの表面上の供給位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、円弧状の軌跡を描きつつ繰り返し移動(スキャン)させられる。スピンチャック1によってウエハWが回転される一方で、そのウエハWの表面上を温水の液滴の噴流がスキャンすることにより、ウエハWの表面の全域に温水の液滴の噴流がむらなく供給される。
【0051】
二流体スプレーノズル7からの温水の液滴の噴流は、大きな運動エネルギー(流速)を有しているので、この大きな運動エネルギーを有する温水の液滴の噴流がウエハWの表面の全域に供給されることになる。これにより、温水が有する熱的洗浄効果に加えて、大きな運動エネルギーを有する温水の液滴の噴流がウエハWの表面に衝突するときの衝撃力による物理的洗浄効果によって、ウエハWの表面に付着しているSO4 2−などの硫黄成分を良好に洗い流すことができる。よって、リンス後のウエハWの表面に硫黄成分が残留することを一層防止することができる。
【0052】
なお、この実施形態では、過酸化水素水ノズル3が取り付けられたアーム52とは別にアーム82が設けられて、このアーム82に二流体スプレーノズル7が取り付けられているが、二流体スプレーノズル7をアーム52に取り付けることにより、旋回軸81、アーム82、旋回駆動機構83および昇降駆動機構84を省略することができる。
図8は、この発明のさらに他の実施形態に係るレジスト剥離装置の構成を図解的に示す図である。この図8において、図1に示す各部に相当する部分には、図1の場合と同一の参照符号が付されている。
【0053】
この実施形態に係るレジスト剥離装置では、DIWノズル4が、スピンチャック1の情報でほぼ水平に延びたアーム91に取り付けられている。このアーム91の一端は、スピンチャック1の側方でほぼ鉛直に延びた旋回軸92の先端に結合されており、その旋回軸92には、旋回軸92を中心軸線まわりに回転させるための旋回駆動機構93が結合されている。旋回駆動機構93から旋回軸92に駆動力を入力して、旋回軸92をその中心軸線まわりに所定の角度範囲内で往復回転させることにより、スピンチャック1に保持されたウエハWの上方でアーム91を揺動させることができ、これに伴って、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面上で、DIWノズル4からの温水供給位置をスキャン(移動)させることができる。また、旋回軸92および旋回駆動機構93は、昇降駆動機構94によって昇降されるようになっている。
【0054】
さらにまた、DIWノズル4には、超音波発振器95からの発振信号を受けて、周波数200kHz〜3MHzで振動する超音波振動子(図示せず)が組み込まれている。温水供給管42からDIWノズル4に温水が供給されつつ、超音波発振器95から超音波振動子に発振信号が入力されると、DIWノズル4に供給された温水に超音波振動が付与され、この超音波振動の付与された温水の水流がDIWノズル4からウエハWの表面に供給される。
【0055】
温水によるウエハWの表面のリンス時には、回転駆動機構13が制御されて、ウエハWが300〜1500rpmの回転速度で回転される。その一方で、旋回駆動機構93および昇降駆動機構94が制御されて、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面にDIWノズル4が近づけられる。そして、温水供給バルブ44が開かれるとともに、超音波発振器95からDIWノズル4内の超音波振動子に発振信号が入力されて、DIWノズル4からウエハWの表面に超音波振動の付与された温水が供給される。また、温水がウエハWの表面に供給されている間、旋回駆動機構93が制御されて、DIWノズル4からの温水が導かれるウエハWの表面上の供給位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、円弧状の軌跡を描きつつ繰り返し移動(スキャン)させられる。スピンチャック1によってウエハWが回転される一方で、そのウエハWの表面上を温水の水流がスキャンすることにより、ウエハWの表面の全域に超音波振動の付与された温水がむらなく供給される。これにより、温水が有する熱的洗浄効果に加えて、温水が有する超音波振動エネルギーによる物理的洗浄効果によって、ウエハWの表面に付着しているSO4 2−などの硫黄成分を良好に洗い流すことができる。よって、リンス後のウエハWの表面に硫黄成分が残留することを一層防止することができる。
【0056】
なお、この実施形態では、過酸化水素水ノズル3が取り付けられたアーム52とは別にアーム91が設けられて、このアーム91にDIWノズル4が取り付けられているが、DIWノズル4をアーム52に取り付けることにより、アーム91、旋回軸92、旋回駆動機構93および昇降駆動機構94を省略することができる。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、過酸化水素水ノズル3は、霧状の過酸化水素水をスリット状の範囲に供給するように構成されているとしたが、過酸化水素水ノズル3には、霧状の過酸化水素水をコーン状(円錐状)に吐出して、ウエハWの表面上のウエハWの半径を含む円形状の範囲に供給する構成のノズル(コーンノズル)を採用してもよい。
【0057】
また、DIWノズル4は、スピンチャック1の外側で固定配置されているとしたが、スピンドライ処理時にウエハWの表面と近接した位置に対向配置される遮断板が備えられている場合には、この遮断板に取り付けられていてもよい。
さらに、上記の実施形態では、ウエハWの表面に硫酸の液膜を形成しておき、その硫酸の液膜が形成されたウエハWの表面に霧状の過酸化水素水を供給する場合の構成を取り上げたが、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面に過酸化水素水を連続流の状態で供給するノズルと、ウエハWの表面に硫酸を霧化して供給するノズルとを設けて、ウエハWの表面に過酸化水素水の液膜を形成した後、その過酸化水素水の液膜が形成されたウエハWの表面に霧状の硫酸を供給するようにしてもよい。この場合、過酸化水素水の液膜の形成に先立って、ウエハWの表面を過酸化水素水で湿潤させておけば、ウエハWの表面上の全域に過酸化水素水の液膜をむらなく形成することができる。
【0058】
また、上記の実施形態では、スピンチャック1に保持されたウエハWの表面に硫酸と過酸化水素水とが別々に供給されて、ウエハWの表面上で硫酸と過酸化水素水とが混合することによってレジスト剥離液が生成される構成を取り上げたが、たとえば、図1の構成において、硫酸ノズル2および過酸化水素水ノズル3に代えて、レジスト剥離液をウエハWの表面に供給するためのレジスト剥離液ノズルが設けられて、硫酸と過酸化水素水とを予め混合して生成されたレジスト剥離液が、そのレジスト剥離液ノズルからスピンチャック1に保持されたウエハWの表面に供給されるようにしてもよい。
【0059】
さらにまた、上記の実施形態では、ウエハWの表面から不要になったレジスト膜を剥離するレジスト剥離処理を例にとったが、処理対象となる基板は、ウエハWに限らず、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディプレイパネル用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板および磁気/光ディスク用基板などの他の種類の基板であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係るレジスト剥離装置の構成を図解的に示す図である。
【図2】過酸化水素水ノズルの構成を示す断面図である。
【図3】ウエハの表面上における過酸化水素水の供給範囲(形状)について説明するための図解図である。
【図4】このレジスト剥離装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】レジスト剥離処理について説明するための図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係るレジスト剥離装置の構成を図解的に示す図である。
【図7】二流体スプレーノズルの構成例を示す断面図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態に係るレジスト剥離装置の構成を図解的に示す図である。
【符号の説明】
1 スピンチャック
2 硫酸ノズル
3 過酸化水素水ノズル
4 DIWノズル
6 制御装置
7 二流体スプレーノズル
41 温水ユニット
71 温水ユニットまたは温水キャビネット
95 超音波発振器
W シリコン半導体ウエハ
Claims (7)
- 基板の表面に形成されているレジスト膜を剥離して除去するためのレジスト剥離装置であって、
基板を保持して回転させる基板保持回転手段と、
この基板保持回転手段に保持された基板の表面に、レジスト膜を剥離するための硫酸および過酸化水素水を供給する薬液供給手段と、
上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に、温水生成部で生成された温水を供給する温水供給手段と
を含むことを特徴とするレジスト剥離装置。 - 上記レジスト剥離装置は、上記温水生成部で生成された温水に物理洗浄効果を付与するための物理洗浄効果付与手段をさらに含み、
上記温水供給手段は、上記物理洗浄効果付与手段によって物理洗浄効果が付与された温水を上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に供給するものであることを特徴とする請求項1記載のレジスト剥離装置。 - 上記物理洗浄効果付与手段は、上記温水生成部で生成された温水に気体を混合させることによって温水の液滴の噴流を形成し、その噴流を上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に供給する二流体スプレーノズルを含むものであることを特徴とする請求項2記載のレジスト剥離装置。
- 上記物理洗浄効果付与手段は、上記温水生成部で生成された温水に超音波振動を付与する超音波振動付与手段を含むものであることを特徴とする請求項2または3記載の基板処理装置。
- 上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に、上記温水供給手段によって供給される温水よりも低温の純水を供給する低温純水供給手段をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のレジスト剥離装置。
- 基板を保持して回転させる基板保持回転手段に処理対象の基板を保持させる基板保持工程と、
上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に硫酸および過酸化水素水を供給して、当該基板の表面に形成されているレジスト膜を剥離するレジスト剥離工程と、
このレジスト剥離工程後に、上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に温水生成部で生成された温水を供給して、当該基板の表面を温水でリンスする温水リンス工程と
を含むことを特徴とするレジスト剥離方法。 - 上記レジスト剥離方法は、上記温水生成部で生成された温水に物理洗浄効果を付与する物理洗浄効果付与工程をさらに含み、
上記温水リンス工程は、上記物理洗浄効果付与工程で物理洗浄効果が付与された温水を上記基板保持回転手段に保持された基板の表面に供給する工程であることを特徴とする請求項6記載のレジスト剥離方法。
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