JP2005031165A - 電子写真装置用導電性ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】電子写真装置に用いられる導電性ベルトであって、ラフ紙から平滑紙のいずれに対しても画像抜け等がなく用紙対応性に優れ、ブレードクリーニングが可能、かつ、湿式や油性成分含有等の高解像トナーに対応できる中間転写ベルトに最適な導電性ベルトを提供する。
【解決手段】1〜2層の弾性体からなるベルト本体2の引張弾性率が1〜10MPaであって、ベルト表面層3が、その膜厚が2〜20μmで、引張弾性率が2〜140MPaであり、かつ、動的濡れ性試験における炭素数9〜14の不飽和化水素系溶剤に対する後退接触角θを10°以上にする。更にベルト表面層3にフッ素系アクリル共重合体とフッ素化オレフィンの3成分で形成すると上記トナーに対する離型性やブレードクリーニング性能が得やすい。
【選択図】 図1
【解決手段】1〜2層の弾性体からなるベルト本体2の引張弾性率が1〜10MPaであって、ベルト表面層3が、その膜厚が2〜20μmで、引張弾性率が2〜140MPaであり、かつ、動的濡れ性試験における炭素数9〜14の不飽和化水素系溶剤に対する後退接触角θを10°以上にする。更にベルト表面層3にフッ素系アクリル共重合体とフッ素化オレフィンの3成分で形成すると上記トナーに対する離型性やブレードクリーニング性能が得やすい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子写真装置に用いられる導電性ベルトに関する。特に、感光体上に形成されたトナー画像をラフ紙等の粗表面を有する記録材に転写する中間転写ベルトに適した導電性ベルトに関する。
【0002】
【従来技術】
前記中間転写ベルトは、感光体等の像担持体上に現像されたトナー像を、一旦、ベルト表面(ベルト表面層の外周面を云う)に転写した後、紙等の記録材に再転写する導電性ベルトをいい、感光体、記録材との間を仲介する役割を担う。また、この中間転写ベルトは、トナー像を記録材に転写した後、ベルト表面に残留する現像剤(トナー)をクリーニングブレード(ブレードという)やブラシ等の手段によって除去回収し、清浄なベルト表面を形成して新しいトナー像の転写を可能にする必要があり(クリーニングという)、このクリーニング工程が容易であり、長期間安定していることが要求される。
【0003】
中間転写ベルトは、導電剤を混入したポリカーボネート等の樹脂単体を薄肉円筒状に成形したものと、導電剤を混練りした樹脂又はゴム状弾性体を薄肉円筒状に成形したベルト本体の外周面に、導電剤を混入したウレタン、アクリル樹脂等をコーティングしてベルト表面層を形成した積層構造をなしたものが用いられている。
【0004】
この積層構造をなした中間転写ベルトのベルト表面層は、残留トナーを取れやすくするとともにブレード等との摺擦抵抗を減少させることを目的として、フッ素変性アクリレートやシリコン変性アクリレート等の表面自由エネルギーを下げ、低摩擦係数化や撥水機能を付与する共重合体を用いる事例がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、このような共重合体を用いると、低摩擦係数化やトナー離型性は向上するものの、ブレードの圧接に対する変形追従性や摺擦摩耗に対する耐久性が不足する傾向にあり、ベルト表面層として適切な強度を有することが求められる。
【0006】
また、近年、高画質化の要求に対応して、トナーを溶媒中に分散させ小粒径化した湿式トナーや、種々の油性成分(例えば、シリコンオイル)を加えたトナー(油性成分含有トナーという)が使用されるようになり、このようなトナーに長時間接触していると、ベルト表面の含有成分の配列がくずれ(モロフォルジー変化という)表面自由エネルギーのムラが生じ、トナー離型性が低減し、クリーニング性が低下してくる問題が指摘されている。
【0007】
トナー離型性や低摩擦係数化に関連するベルト表面層の表面自由エネルギーを評価する指標として、従来、水に対する接触角が用いられ、その値を80〜120°にすることが好ましいことが記載されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、上述した湿式トナーや油性成分含有トナーを用いる場合は、水に対する接触角での評価は、実情にそぐわないとの指摘があり実用的な評価尺度が求められている。
【0008】
さらに、最近ではラフ紙と呼ばれる「表面がざらざらして粗く、半紙のようなすき目があり、嵩に富む紙」に対しても馴染みよく、「ズレ」や「画像抜け」がなく、トナー像をラフ紙など記録材に綺麗に転写できること(用紙対応性という)が要求されており、ベルト表面層の弾性率を高い所定範囲とするのみでは、記録材の表面粗さにベルト表面層が追従できず実際の接触面積が減少して用紙対応性が悪くなる。特に、ラフ紙を使用するときこの傾向が強い。所謂、ラフ紙は表面に繊維や充填剤等が露出してベルト表面層と馴染みにくい傾向があると考えられる。従って、用紙対応性を向上させるためには、ベルト表面層をある程度柔らかくする即ち引張弾性率を下げることが必要になってくる。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−230714号公報(段落番号0007)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであって、ブレードの反転や鳴きがなく、ブレードとの摺擦に対する耐久性に優れ、かつ、湿式トナーや油性成分含有トナーとの離型性に優れるとともに、粗くざらざらしたラフ紙でも画像ズレや画像抜け等が生じない導電性ベルトを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために請求項1に記載の電子写真装置用導電性ベルトは、弾性を有する円筒体であるベルト本体の外周面にベルト表面層を設けた電子写真装置用導電性ベルトにおいて、前記ベルト本体の引張弾性率が1〜10MPaであって、前記ベルト表面層が、膜厚が2〜20μmで引張弾性率が2〜140MPaであり、かつ動的濡れ性試験において炭素数9〜14の不飽和炭化水素系溶剤に対する後退接触角が10°以上であることを特徴とする。
【0012】
ベルト本体とベルト表面層の引張弾性率の関係およびベルト表面層の膜厚を上記のようにすることにより、ラフ紙等への用紙対応性が優れたものとなり、さらにベルト表面層の後退接触角を上記のようにすることにより、油性成分含有トナーへの離型性が向上し、ブレードとの摺擦抵抗が減少し、反転や鳴きを生じにくくなる。
【0013】
通常、この種のベルトでは弾性を有する円筒体であるベルト本体は1層又は2層からなり、厚みが0.2〜1.5mmであり、それに対してベルト表面層がコーティングにより膜厚1〜50μm程度とされる。このベルト本体を形成する弾性体としては、NBR、CR、EPDM、NR、ポリウレタン、シリコンゴム等のゴムが用いられる。低硬度で強度的に優れ、配合剤のブリードが少ない点でポリウレタンが好ましく使用される。
【0014】
ベルト本体の引張弾性率が1MPaより小さくなると、ブレードとの摺擦抵抗が大きくなり回転不能になったり、ブレードの反転や鳴きが生じやすくなる。また、この引張弾性率が10MPaを超えるとラフ紙等表面の粗い記録材への用紙対応性が悪くなって画像抜け等の欠陥が生じやすくなる。ベルト表面層の引張弾性率が、ベルト本体の引張弾性率以下となったり、2MPaより小さくなるとブレードとの摩擦係数が大きくなり、ブレードの振動や反転といった問題が生じやすくなる。また、ベルト表面層の引張弾性率が140MPaを超えると表面層が変形しにくくなり、ラフ紙等表面の粗い記録材には十分に馴染まず、均一に転写されず、画像抜けが発生し易くなる。
【0015】
次にベルト表面層の膜厚が2μmより小さくなると、ブレードとの摺擦に耐えにくくなり、ベルト表面層が損傷しやすくなる。また、ブレードの振動や反転という問題を生じやすくなる。また20μmを超えるとベルト表面層が変形しにくくなり、ラフ紙等表面が粗い記録材には馴染みにくくなり、トナー像が均一に転写されなくなる。
【0016】
更に、ベルト表面層の炭化水素系溶剤に対する後退接触角を評価指標とすることにより、湿式トナーや油性成分を有するトナーの離型性の実用的評価が可能になる。この値を10°以上とすることにより、湿式トナーや、油性成分含有トナーを使用する場合であっても、ブレードとの摩擦係数の増加やトナー離型性の低下が少なく中間転写ベルトとして長期に使用できる。後退接触角が10°未満であれば、ベルト表面に残留する残留トナーに対する離型性が悪くなる。
【0017】
炭素数9〜14の不飽和炭化水素系溶剤を用いるのは、湿式トナーの溶媒に多く用いられているためである。炭化水素系溶剤やシリコンオイルに対し成分の配列が変化しやすいベルト表面層は、浸漬開始時の前進接触角では差異が出にくいが、所定時間、炭化水素系溶剤に浸漬した後、引き上げるときの後退接触角を測定すると、ベルト表面層が溶剤により変化を受けやすいほど後退接触角が小さくなる傾向にあり、溶剤により変化しにくいベルト表面層(トナー離型性の良いベルト表面層)との差が出やすい。これによって撥水・撥油性即ちトナーとの離型性が判断できる。
【0018】
請求項2に記載の導電性ベルトは、前記ベルト本体が、弾性芯体層と弾性層との2層からなる。ベルト本体の伸びを抑える弾性芯体層とクッション性を有する弾性層との2層で形成することにより、走行時に伸びが少なく、ラフ紙表面への対応性に優れた導電性ベルトが得られる。なお、ベルト本体の弾性率は、2層積層成形した円筒体の弾性率である。このような2層からなるベルト本体は、遠心成形法を用いることにより容易に積層成形できる。
【0019】
請求項3に記載の導電性ベルトは、請求項1のベルト表面層に、▲1▼フッ素変性アクリレートと他のアクリレートとの共重合物、▲2▼フッ素化オレフィン、▲3▼メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体との共重合体の3成分が配合されていることを特徴とする。
【0020】
この構成により、前記ベルト本体との接着性、トナーとの離型性などの特性を決める、即ち、▲1▼フッ素変性アクリレートと他のアクリレートとの共重合体は、表面層のトナーと接触する側に偏って配され、表面自由エネルギー低下によりトナー付着防止機能を担い、▲2▼フッ素化オレフィンは、トナーの拭き取りを容易にする機能を有し、▲3▼メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体との共重合体は、表面層と弾性を有するベルト本体との接着力を向上する機能を有する。なお、これらの3成分は別々になっているのではなく溶剤に溶解されコーティング液に調製される。ベルト表面層の引張弾性率は、▲3▼のメタクリル酸メチル等のガラス転移点を調整することにより調整できる。また、便宜上はコーティング膜としてのガラス転移点で調整しても良い。
【0021】
また、上記コーティング液には、導電性を付加するため、カーボンブラック等の導電性粒子を混合しても良く、更に、ベルト本体とベルト表面層との接着性を向上させるため、コーティング液とベルト本体とに保有する官能基と反応する架橋剤を加えてもよい。このような機能を有する架橋剤としては例えば、イソシアネートが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る中間転写ベルトとして使用される導電性ベルトの実施例および比較例によって本発明を具体的に説明する。
【0023】
(実施例1)
ポリオールとしてPTMG(ポリテトラメチレングリコール)、架橋剤として1,4−B(1,4ブタンジオール)とTMP(トリメチロールプロパン)の混合物〔重量比:(1,4−B)/TMP=72/28〕、及び導電性付与剤としてカーボンブラックを混合した後、イソシアネートであるMDI(ジフェニールメタンジイソシアネート)をポリオール100重量部に対して14重量部を添加混合し、遠心成形機にて成形・硬化させ、外径約250mm、厚み0.5mmの円筒体で、引張弾性率が3MPaの導電性ポリウレタンを主体とする1層構造のベルト本体を得た。
【0024】
別途、コーティング液として、▲1▼フッ素変性アクリレートと他のアクリレートとの共重合体、▲2▼フッ素化オレフィン、▲3▼メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体との共重合体の3成分を混合したコーティング原液(大日本インキ化学工業社製、商品名「ディフェンサー」、ガラス転移点=−7.5℃)の固形分100重量部に対し架橋剤としてHDI系ブロックイソシアネート(旭化成工業社製、商品名「デュラネートE402−B80T」)を10重量部、触媒としてDBTDL(ジプチル錫ジラウレート)を0.5重量部を添加し、希釈溶媒としてMEKとMIBK(混合重量比:MEK/MIBK=80/20)を固形分濃度15wt%になるよう加えて混合調製した。
【0025】
前記遠心成形法により得られたベルト本体の外周面に、前記のコーティング液をデイッピング法により塗工し、風乾し、熱風循環炉を用いて130℃×60分の条件で乾燥硬化させ、走行試験用ベルトを作製した。
【0026】
走行試験は、走行試験用ベルトを電子写真装置に組み込み、JIS−A硬度80°のポリウレタン製のブレードを当接させ、現像剤を供給しながらベルトを走行し、記録紙に画像を転写させて、形成された画像を確認しながら走行試験を行った。「ラフ紙への転写性」の評価は、表面粗さ50μmのラフ紙に対して転写画像に抜けが発生しない場合は○、僅かに転写抜けが発生した場合は△、転写抜けが発生する場合には×と判断して結果を表1に示した。また「走行枚数」の評価は、ブレードによる現像剤のクリーニングが出来なくなるまでの走行距離を、A4普通紙何枚分に相当するか換算し、クリーニングが不可能になるまでの枚数を走行枚数として表1に示した。
【0027】
<動的濡れ試験>
ベルト表面層の動的濡れ特性としての前進接触角、後退接触角は、ウィルヘルミイ(Wilhelmy)平板法により表面張力を測定して計算により求められる。この測定方法について、図2(a)に概念図を示す動的濡れ性試験装置(レイカ社製「WET−6000」)を参考にして説明する。
【0028】
動的濡れ試験片7を、荷重検出器6に連結したクリップ12に取り付け、貯留槽9に湿式トナーの溶媒としてよく用いられ、表面張力が既知である炭化水素系溶剤(炭素数12のノルマルドデカン)8を満たし、貯留槽9を0.5mm/秒の速度で上昇させて、動的濡れ試験片7を炭化水素系溶剤8に浸漬させ浸漬深さ5mmにて30秒間保持した後、0.5mm/秒の速度で下降させて浸漬を解除する。なお、図2(b)に示す貯留槽9を矢印10の方向に上昇させるときの接触角θAを前進接触角といい、図2(c)に示す貯留槽9を矢印11の方向に下降させるときの接触角θRを後退接触角という。
【0029】
この過程を図3により詳しく説明する。動的濡れ試験片7〔図2(a)参照〕の浸漬深さを横軸xとし、荷重検出器6で検出される荷重を縦軸yとして、上記の浸漬開始点sから浸漬終了点eまでの荷重変化の1サイクルをプロットし、このループ(矢印p1,p2,p3)の直線部分(前進直線部分A、後退直線部分R)を外延して接触点Tでの浮力項(試料の浸漬深さによる浮力)を除いた荷重(FA、FR)を読みとり、次式より前進接触角(θA)および後退接触角(θR)を求めた。なお、接触点Tは、ロードセルに掛かる初期荷重がフルスケールの1%変化した点を云う。
【0030】
cosθA=FA/PγL
cosθB=FB/PγL
ここでPは試験片7と溶液8表面との接線長さであり、試験片の厚さ(t)と幅(w)より決定される〔P=2×(t+w)〕。γLは浸漬する溶剤8の表面張力(既知)を表す。結果を表1に示す。
【0031】
<物性の測定>
ベルト表面層の引張弾性率の測定は先に記載した別途作製の引張試験用シートを、ベルト本体の引張弾性率は遠心成形法で作製されたベルト本体を、JIS−6号ダンベルにて打ち抜いて試験片を作製し、インストロン社製5568引張り試験機にて、引張り速度200mm/minの条件で行った。測定結果を表1に示す。
【0032】
(実施例2)
ポリウレタンを主体とするベルト本体を、弾性層、弾性芯体層の順で同一金型に2回つづけて遠心成形することにより形成した。弾性層は、実施例1のベルト本体と同じ配合物を遠心成形により薄い円筒状に形成し、この弾性層が半硬化状態となった後、MDIの量をポリオール100重量部に対して16重量部に変更した他は実施例1のベルト本体の配合と同じ配合物を注入して、硬化、アフターキュアーさせてベルト本体を形成した。総厚を0.5mm、弾性芯体の厚みを0.3mmとした。実施例1と同様に評価して、結果を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
ポリウレタンを主体とするベルト本体の作製に用いる架橋剤(イソシアネート)であるMDIの量を、ポリオール100重量部に対して20重量部に変えてベルト本体の引張弾性率が大きくなるよう調整した以外は実施例1と同様に走行試験用ベルトを作製し走行試験を行った。また、実施例1と同様にしてベルト本体の引張弾性率、及びベルト表面層の動的濡れ特性と引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例2)
実施例1と同様にしてベルト本体を得、コーティング液作製用原液の固形分のガラス転移点を−10℃に変えてベルト表面層の引張弾性率を低く調整した以外は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製し走行試験を行った。また、実施例1と同様にしてベルト表面層の動的濡れ特性と引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
(比較例3)
実施例1と同様にしてベルト本体を得、コーティング液作製用原液(固形分)のガラス転移点を−4.5℃に変え、同時に架橋剤を「デュラネートTPA−B80X」とした以外は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製し走行試験を行った。また、実施例1と同様にベルト本体の引張弾性率およびベルト表面層の動的濡れ特性と引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
(比較例4)
実施例1と同様にしてベルト本体を得、コーティング液作製用の希釈溶媒の添加量を、固形分濃度が5wt%まで増量することにより、表面層膜厚を0.7μmとした他は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製し走行試験を行った。また、実施例1と同様にベルト表面層の動的濡れ特性と引張弾性率の測定を行った。結果を表2に示す。
【0037】
(比較例5)
実施例1と同様にしてベルト本体を得、コーティング液作製用の希釈溶媒の添加量を、固形分濃度が25wt%となるまで減量することにより、表面層膜厚を23μmとした他は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製し走行試験を行い、実施例1と同様に濡れ特性試験、物性試験を行い、結果を表2に示す。
【0038】
(比較例6)
コーティング液を、エステル系熱可塑ウレタンエラストマー(日本ミラクトラン社製「E−185」)をTHF、MEK(混合重量比:THF/MEK=70/30)の混合溶媒で溶解し、この液の固形分100重量部に対して、表面自由エネルギーを低下させるアクリルシリコン(東亜合成社製「US−270」)を25重量部を添加し、架橋剤としてHDI系ブロックイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネートE402−B80T」を10重量部、触媒としてDBTDL(ジプチル錫ジラウレート)を0.5重量部添加し、更に、この液の固形分濃度が15wt%になるように上記混合溶媒を加えて調製して、膜厚5μmのベルト表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製して走行試験を行った。また、実施例1と同様に動的濡れ試験、物性試験を行い、結果を表2に示す。
【0039】
(比較例7)
コーティング液を、アクリルシリコンの添加量を50重量部に、架橋剤をHDI系ブロックイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネートTPA−B80X」にし固形分の濃度が25wt%になるように希釈した他は比較例6と同様に調製し、ベルト表面層の膜厚を23μmとした他は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製して走行試験を行った。また、実施例1と同様にしてベルト本体の引張弾性率およびベルト表面層の動的濡れ試験、物性試験を行った。結果を表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
以上より実施例1では、ベルト本体及び表面層の引張弾性率、表面層膜厚を適切な範囲に調製しているためラフ紙の凹凸やざらつきへの追従性が良く、ラフ紙への転写性に優れる。また、表面層の炭化水素系溶剤に対する後退接触角を用いて表面自由エネルギーの変化を評価しているので、湿式トナーや油性成分含有トナーの離型性、即ち撥油性の低下が少なく長期にクリーニング性を維持できる。比較例1〜7においては、ベルト表面層が柔らかすぎると振動が発生し、硬すぎるとラフ紙の転写性が悪く、シリコン系のコーティング液では撥油性が短期に失われることを示している。
【0043】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本願発明の導電性ベルトは、ベルト本体およびベルト表面層の引張弾性率を調整し、表面層膜厚を2〜20μmに管理することにより、ラフ紙への転写性が優れるという効果がある。
【0044】
また、ベルト表面層のトナー離型性を炭化水素系溶剤に対する動的濡れ性試験で得られる後退接触角を用いて評価する(10°以上)ことにより長期間、湿式トナーや油性成分含有トナーに接触してもベルトの表面自由エネルギーが変化が少なく、トナー離型性を維持することが出来るという効果が有る。
【0045】
そしてベルト表面層を、フッ素系の3種の重合体の混合物をコーティングして形成することにより、ベルト本体との共働でラフ紙への転写性改良と、トナー離型性の確保が容易に実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる導電性ベルトの斜視図である。
【図2】表面層の前進接触角と後退接触角の測定方法を表す概念図であり、図2(a)は動的濡れ試験装置の概念を示し、図2(b)は前進接触角の測定方法を示し、図2(c)は後退接触角の測定方法を示す。
【図3】動的濡れ試験における浸漬深さxと荷重yとの関係図である。
【符号の説明】
1:導電性ベルト
2:ベルト本体
3:ベルト表面層
6:加重検出器
7:濡れ試験片
8:炭化水素系溶剤
9:貯留槽
θR:後退接触角
θA:前進接触角
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子写真装置に用いられる導電性ベルトに関する。特に、感光体上に形成されたトナー画像をラフ紙等の粗表面を有する記録材に転写する中間転写ベルトに適した導電性ベルトに関する。
【0002】
【従来技術】
前記中間転写ベルトは、感光体等の像担持体上に現像されたトナー像を、一旦、ベルト表面(ベルト表面層の外周面を云う)に転写した後、紙等の記録材に再転写する導電性ベルトをいい、感光体、記録材との間を仲介する役割を担う。また、この中間転写ベルトは、トナー像を記録材に転写した後、ベルト表面に残留する現像剤(トナー)をクリーニングブレード(ブレードという)やブラシ等の手段によって除去回収し、清浄なベルト表面を形成して新しいトナー像の転写を可能にする必要があり(クリーニングという)、このクリーニング工程が容易であり、長期間安定していることが要求される。
【0003】
中間転写ベルトは、導電剤を混入したポリカーボネート等の樹脂単体を薄肉円筒状に成形したものと、導電剤を混練りした樹脂又はゴム状弾性体を薄肉円筒状に成形したベルト本体の外周面に、導電剤を混入したウレタン、アクリル樹脂等をコーティングしてベルト表面層を形成した積層構造をなしたものが用いられている。
【0004】
この積層構造をなした中間転写ベルトのベルト表面層は、残留トナーを取れやすくするとともにブレード等との摺擦抵抗を減少させることを目的として、フッ素変性アクリレートやシリコン変性アクリレート等の表面自由エネルギーを下げ、低摩擦係数化や撥水機能を付与する共重合体を用いる事例がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、このような共重合体を用いると、低摩擦係数化やトナー離型性は向上するものの、ブレードの圧接に対する変形追従性や摺擦摩耗に対する耐久性が不足する傾向にあり、ベルト表面層として適切な強度を有することが求められる。
【0006】
また、近年、高画質化の要求に対応して、トナーを溶媒中に分散させ小粒径化した湿式トナーや、種々の油性成分(例えば、シリコンオイル)を加えたトナー(油性成分含有トナーという)が使用されるようになり、このようなトナーに長時間接触していると、ベルト表面の含有成分の配列がくずれ(モロフォルジー変化という)表面自由エネルギーのムラが生じ、トナー離型性が低減し、クリーニング性が低下してくる問題が指摘されている。
【0007】
トナー離型性や低摩擦係数化に関連するベルト表面層の表面自由エネルギーを評価する指標として、従来、水に対する接触角が用いられ、その値を80〜120°にすることが好ましいことが記載されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、上述した湿式トナーや油性成分含有トナーを用いる場合は、水に対する接触角での評価は、実情にそぐわないとの指摘があり実用的な評価尺度が求められている。
【0008】
さらに、最近ではラフ紙と呼ばれる「表面がざらざらして粗く、半紙のようなすき目があり、嵩に富む紙」に対しても馴染みよく、「ズレ」や「画像抜け」がなく、トナー像をラフ紙など記録材に綺麗に転写できること(用紙対応性という)が要求されており、ベルト表面層の弾性率を高い所定範囲とするのみでは、記録材の表面粗さにベルト表面層が追従できず実際の接触面積が減少して用紙対応性が悪くなる。特に、ラフ紙を使用するときこの傾向が強い。所謂、ラフ紙は表面に繊維や充填剤等が露出してベルト表面層と馴染みにくい傾向があると考えられる。従って、用紙対応性を向上させるためには、ベルト表面層をある程度柔らかくする即ち引張弾性率を下げることが必要になってくる。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−230714号公報(段落番号0007)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであって、ブレードの反転や鳴きがなく、ブレードとの摺擦に対する耐久性に優れ、かつ、湿式トナーや油性成分含有トナーとの離型性に優れるとともに、粗くざらざらしたラフ紙でも画像ズレや画像抜け等が生じない導電性ベルトを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために請求項1に記載の電子写真装置用導電性ベルトは、弾性を有する円筒体であるベルト本体の外周面にベルト表面層を設けた電子写真装置用導電性ベルトにおいて、前記ベルト本体の引張弾性率が1〜10MPaであって、前記ベルト表面層が、膜厚が2〜20μmで引張弾性率が2〜140MPaであり、かつ動的濡れ性試験において炭素数9〜14の不飽和炭化水素系溶剤に対する後退接触角が10°以上であることを特徴とする。
【0012】
ベルト本体とベルト表面層の引張弾性率の関係およびベルト表面層の膜厚を上記のようにすることにより、ラフ紙等への用紙対応性が優れたものとなり、さらにベルト表面層の後退接触角を上記のようにすることにより、油性成分含有トナーへの離型性が向上し、ブレードとの摺擦抵抗が減少し、反転や鳴きを生じにくくなる。
【0013】
通常、この種のベルトでは弾性を有する円筒体であるベルト本体は1層又は2層からなり、厚みが0.2〜1.5mmであり、それに対してベルト表面層がコーティングにより膜厚1〜50μm程度とされる。このベルト本体を形成する弾性体としては、NBR、CR、EPDM、NR、ポリウレタン、シリコンゴム等のゴムが用いられる。低硬度で強度的に優れ、配合剤のブリードが少ない点でポリウレタンが好ましく使用される。
【0014】
ベルト本体の引張弾性率が1MPaより小さくなると、ブレードとの摺擦抵抗が大きくなり回転不能になったり、ブレードの反転や鳴きが生じやすくなる。また、この引張弾性率が10MPaを超えるとラフ紙等表面の粗い記録材への用紙対応性が悪くなって画像抜け等の欠陥が生じやすくなる。ベルト表面層の引張弾性率が、ベルト本体の引張弾性率以下となったり、2MPaより小さくなるとブレードとの摩擦係数が大きくなり、ブレードの振動や反転といった問題が生じやすくなる。また、ベルト表面層の引張弾性率が140MPaを超えると表面層が変形しにくくなり、ラフ紙等表面の粗い記録材には十分に馴染まず、均一に転写されず、画像抜けが発生し易くなる。
【0015】
次にベルト表面層の膜厚が2μmより小さくなると、ブレードとの摺擦に耐えにくくなり、ベルト表面層が損傷しやすくなる。また、ブレードの振動や反転という問題を生じやすくなる。また20μmを超えるとベルト表面層が変形しにくくなり、ラフ紙等表面が粗い記録材には馴染みにくくなり、トナー像が均一に転写されなくなる。
【0016】
更に、ベルト表面層の炭化水素系溶剤に対する後退接触角を評価指標とすることにより、湿式トナーや油性成分を有するトナーの離型性の実用的評価が可能になる。この値を10°以上とすることにより、湿式トナーや、油性成分含有トナーを使用する場合であっても、ブレードとの摩擦係数の増加やトナー離型性の低下が少なく中間転写ベルトとして長期に使用できる。後退接触角が10°未満であれば、ベルト表面に残留する残留トナーに対する離型性が悪くなる。
【0017】
炭素数9〜14の不飽和炭化水素系溶剤を用いるのは、湿式トナーの溶媒に多く用いられているためである。炭化水素系溶剤やシリコンオイルに対し成分の配列が変化しやすいベルト表面層は、浸漬開始時の前進接触角では差異が出にくいが、所定時間、炭化水素系溶剤に浸漬した後、引き上げるときの後退接触角を測定すると、ベルト表面層が溶剤により変化を受けやすいほど後退接触角が小さくなる傾向にあり、溶剤により変化しにくいベルト表面層(トナー離型性の良いベルト表面層)との差が出やすい。これによって撥水・撥油性即ちトナーとの離型性が判断できる。
【0018】
請求項2に記載の導電性ベルトは、前記ベルト本体が、弾性芯体層と弾性層との2層からなる。ベルト本体の伸びを抑える弾性芯体層とクッション性を有する弾性層との2層で形成することにより、走行時に伸びが少なく、ラフ紙表面への対応性に優れた導電性ベルトが得られる。なお、ベルト本体の弾性率は、2層積層成形した円筒体の弾性率である。このような2層からなるベルト本体は、遠心成形法を用いることにより容易に積層成形できる。
【0019】
請求項3に記載の導電性ベルトは、請求項1のベルト表面層に、▲1▼フッ素変性アクリレートと他のアクリレートとの共重合物、▲2▼フッ素化オレフィン、▲3▼メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体との共重合体の3成分が配合されていることを特徴とする。
【0020】
この構成により、前記ベルト本体との接着性、トナーとの離型性などの特性を決める、即ち、▲1▼フッ素変性アクリレートと他のアクリレートとの共重合体は、表面層のトナーと接触する側に偏って配され、表面自由エネルギー低下によりトナー付着防止機能を担い、▲2▼フッ素化オレフィンは、トナーの拭き取りを容易にする機能を有し、▲3▼メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体との共重合体は、表面層と弾性を有するベルト本体との接着力を向上する機能を有する。なお、これらの3成分は別々になっているのではなく溶剤に溶解されコーティング液に調製される。ベルト表面層の引張弾性率は、▲3▼のメタクリル酸メチル等のガラス転移点を調整することにより調整できる。また、便宜上はコーティング膜としてのガラス転移点で調整しても良い。
【0021】
また、上記コーティング液には、導電性を付加するため、カーボンブラック等の導電性粒子を混合しても良く、更に、ベルト本体とベルト表面層との接着性を向上させるため、コーティング液とベルト本体とに保有する官能基と反応する架橋剤を加えてもよい。このような機能を有する架橋剤としては例えば、イソシアネートが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る中間転写ベルトとして使用される導電性ベルトの実施例および比較例によって本発明を具体的に説明する。
【0023】
(実施例1)
ポリオールとしてPTMG(ポリテトラメチレングリコール)、架橋剤として1,4−B(1,4ブタンジオール)とTMP(トリメチロールプロパン)の混合物〔重量比:(1,4−B)/TMP=72/28〕、及び導電性付与剤としてカーボンブラックを混合した後、イソシアネートであるMDI(ジフェニールメタンジイソシアネート)をポリオール100重量部に対して14重量部を添加混合し、遠心成形機にて成形・硬化させ、外径約250mm、厚み0.5mmの円筒体で、引張弾性率が3MPaの導電性ポリウレタンを主体とする1層構造のベルト本体を得た。
【0024】
別途、コーティング液として、▲1▼フッ素変性アクリレートと他のアクリレートとの共重合体、▲2▼フッ素化オレフィン、▲3▼メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体との共重合体の3成分を混合したコーティング原液(大日本インキ化学工業社製、商品名「ディフェンサー」、ガラス転移点=−7.5℃)の固形分100重量部に対し架橋剤としてHDI系ブロックイソシアネート(旭化成工業社製、商品名「デュラネートE402−B80T」)を10重量部、触媒としてDBTDL(ジプチル錫ジラウレート)を0.5重量部を添加し、希釈溶媒としてMEKとMIBK(混合重量比:MEK/MIBK=80/20)を固形分濃度15wt%になるよう加えて混合調製した。
【0025】
前記遠心成形法により得られたベルト本体の外周面に、前記のコーティング液をデイッピング法により塗工し、風乾し、熱風循環炉を用いて130℃×60分の条件で乾燥硬化させ、走行試験用ベルトを作製した。
【0026】
走行試験は、走行試験用ベルトを電子写真装置に組み込み、JIS−A硬度80°のポリウレタン製のブレードを当接させ、現像剤を供給しながらベルトを走行し、記録紙に画像を転写させて、形成された画像を確認しながら走行試験を行った。「ラフ紙への転写性」の評価は、表面粗さ50μmのラフ紙に対して転写画像に抜けが発生しない場合は○、僅かに転写抜けが発生した場合は△、転写抜けが発生する場合には×と判断して結果を表1に示した。また「走行枚数」の評価は、ブレードによる現像剤のクリーニングが出来なくなるまでの走行距離を、A4普通紙何枚分に相当するか換算し、クリーニングが不可能になるまでの枚数を走行枚数として表1に示した。
【0027】
<動的濡れ試験>
ベルト表面層の動的濡れ特性としての前進接触角、後退接触角は、ウィルヘルミイ(Wilhelmy)平板法により表面張力を測定して計算により求められる。この測定方法について、図2(a)に概念図を示す動的濡れ性試験装置(レイカ社製「WET−6000」)を参考にして説明する。
【0028】
動的濡れ試験片7を、荷重検出器6に連結したクリップ12に取り付け、貯留槽9に湿式トナーの溶媒としてよく用いられ、表面張力が既知である炭化水素系溶剤(炭素数12のノルマルドデカン)8を満たし、貯留槽9を0.5mm/秒の速度で上昇させて、動的濡れ試験片7を炭化水素系溶剤8に浸漬させ浸漬深さ5mmにて30秒間保持した後、0.5mm/秒の速度で下降させて浸漬を解除する。なお、図2(b)に示す貯留槽9を矢印10の方向に上昇させるときの接触角θAを前進接触角といい、図2(c)に示す貯留槽9を矢印11の方向に下降させるときの接触角θRを後退接触角という。
【0029】
この過程を図3により詳しく説明する。動的濡れ試験片7〔図2(a)参照〕の浸漬深さを横軸xとし、荷重検出器6で検出される荷重を縦軸yとして、上記の浸漬開始点sから浸漬終了点eまでの荷重変化の1サイクルをプロットし、このループ(矢印p1,p2,p3)の直線部分(前進直線部分A、後退直線部分R)を外延して接触点Tでの浮力項(試料の浸漬深さによる浮力)を除いた荷重(FA、FR)を読みとり、次式より前進接触角(θA)および後退接触角(θR)を求めた。なお、接触点Tは、ロードセルに掛かる初期荷重がフルスケールの1%変化した点を云う。
【0030】
cosθA=FA/PγL
cosθB=FB/PγL
ここでPは試験片7と溶液8表面との接線長さであり、試験片の厚さ(t)と幅(w)より決定される〔P=2×(t+w)〕。γLは浸漬する溶剤8の表面張力(既知)を表す。結果を表1に示す。
【0031】
<物性の測定>
ベルト表面層の引張弾性率の測定は先に記載した別途作製の引張試験用シートを、ベルト本体の引張弾性率は遠心成形法で作製されたベルト本体を、JIS−6号ダンベルにて打ち抜いて試験片を作製し、インストロン社製5568引張り試験機にて、引張り速度200mm/minの条件で行った。測定結果を表1に示す。
【0032】
(実施例2)
ポリウレタンを主体とするベルト本体を、弾性層、弾性芯体層の順で同一金型に2回つづけて遠心成形することにより形成した。弾性層は、実施例1のベルト本体と同じ配合物を遠心成形により薄い円筒状に形成し、この弾性層が半硬化状態となった後、MDIの量をポリオール100重量部に対して16重量部に変更した他は実施例1のベルト本体の配合と同じ配合物を注入して、硬化、アフターキュアーさせてベルト本体を形成した。総厚を0.5mm、弾性芯体の厚みを0.3mmとした。実施例1と同様に評価して、結果を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
ポリウレタンを主体とするベルト本体の作製に用いる架橋剤(イソシアネート)であるMDIの量を、ポリオール100重量部に対して20重量部に変えてベルト本体の引張弾性率が大きくなるよう調整した以外は実施例1と同様に走行試験用ベルトを作製し走行試験を行った。また、実施例1と同様にしてベルト本体の引張弾性率、及びベルト表面層の動的濡れ特性と引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例2)
実施例1と同様にしてベルト本体を得、コーティング液作製用原液の固形分のガラス転移点を−10℃に変えてベルト表面層の引張弾性率を低く調整した以外は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製し走行試験を行った。また、実施例1と同様にしてベルト表面層の動的濡れ特性と引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
(比較例3)
実施例1と同様にしてベルト本体を得、コーティング液作製用原液(固形分)のガラス転移点を−4.5℃に変え、同時に架橋剤を「デュラネートTPA−B80X」とした以外は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製し走行試験を行った。また、実施例1と同様にベルト本体の引張弾性率およびベルト表面層の動的濡れ特性と引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
(比較例4)
実施例1と同様にしてベルト本体を得、コーティング液作製用の希釈溶媒の添加量を、固形分濃度が5wt%まで増量することにより、表面層膜厚を0.7μmとした他は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製し走行試験を行った。また、実施例1と同様にベルト表面層の動的濡れ特性と引張弾性率の測定を行った。結果を表2に示す。
【0037】
(比較例5)
実施例1と同様にしてベルト本体を得、コーティング液作製用の希釈溶媒の添加量を、固形分濃度が25wt%となるまで減量することにより、表面層膜厚を23μmとした他は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製し走行試験を行い、実施例1と同様に濡れ特性試験、物性試験を行い、結果を表2に示す。
【0038】
(比較例6)
コーティング液を、エステル系熱可塑ウレタンエラストマー(日本ミラクトラン社製「E−185」)をTHF、MEK(混合重量比:THF/MEK=70/30)の混合溶媒で溶解し、この液の固形分100重量部に対して、表面自由エネルギーを低下させるアクリルシリコン(東亜合成社製「US−270」)を25重量部を添加し、架橋剤としてHDI系ブロックイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネートE402−B80T」を10重量部、触媒としてDBTDL(ジプチル錫ジラウレート)を0.5重量部添加し、更に、この液の固形分濃度が15wt%になるように上記混合溶媒を加えて調製して、膜厚5μmのベルト表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製して走行試験を行った。また、実施例1と同様に動的濡れ試験、物性試験を行い、結果を表2に示す。
【0039】
(比較例7)
コーティング液を、アクリルシリコンの添加量を50重量部に、架橋剤をHDI系ブロックイソシアネート(旭化成工業社製「デュラネートTPA−B80X」にし固形分の濃度が25wt%になるように希釈した他は比較例6と同様に調製し、ベルト表面層の膜厚を23μmとした他は、実施例1と同様にして走行試験用ベルトを作製して走行試験を行った。また、実施例1と同様にしてベルト本体の引張弾性率およびベルト表面層の動的濡れ試験、物性試験を行った。結果を表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
以上より実施例1では、ベルト本体及び表面層の引張弾性率、表面層膜厚を適切な範囲に調製しているためラフ紙の凹凸やざらつきへの追従性が良く、ラフ紙への転写性に優れる。また、表面層の炭化水素系溶剤に対する後退接触角を用いて表面自由エネルギーの変化を評価しているので、湿式トナーや油性成分含有トナーの離型性、即ち撥油性の低下が少なく長期にクリーニング性を維持できる。比較例1〜7においては、ベルト表面層が柔らかすぎると振動が発生し、硬すぎるとラフ紙の転写性が悪く、シリコン系のコーティング液では撥油性が短期に失われることを示している。
【0043】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本願発明の導電性ベルトは、ベルト本体およびベルト表面層の引張弾性率を調整し、表面層膜厚を2〜20μmに管理することにより、ラフ紙への転写性が優れるという効果がある。
【0044】
また、ベルト表面層のトナー離型性を炭化水素系溶剤に対する動的濡れ性試験で得られる後退接触角を用いて評価する(10°以上)ことにより長期間、湿式トナーや油性成分含有トナーに接触してもベルトの表面自由エネルギーが変化が少なく、トナー離型性を維持することが出来るという効果が有る。
【0045】
そしてベルト表面層を、フッ素系の3種の重合体の混合物をコーティングして形成することにより、ベルト本体との共働でラフ紙への転写性改良と、トナー離型性の確保が容易に実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる導電性ベルトの斜視図である。
【図2】表面層の前進接触角と後退接触角の測定方法を表す概念図であり、図2(a)は動的濡れ試験装置の概念を示し、図2(b)は前進接触角の測定方法を示し、図2(c)は後退接触角の測定方法を示す。
【図3】動的濡れ試験における浸漬深さxと荷重yとの関係図である。
【符号の説明】
1:導電性ベルト
2:ベルト本体
3:ベルト表面層
6:加重検出器
7:濡れ試験片
8:炭化水素系溶剤
9:貯留槽
θR:後退接触角
θA:前進接触角
Claims (3)
- 弾性を有する円筒体であるベルト本体の外周面にベルト表面層を設けた電子写真装置用導電性ベルトにおいて、
前記ベルト本体の引張弾性率が1〜10MPaであって、前記ベルト表面層が、膜厚が2〜20μmで引張弾性率が2〜140MPaであり、かつ動的濡れ性試験において炭素数9〜14の不飽和炭化水素系溶剤に対する後退接触角が10°以上であることを特徴とする電子写真装置用導電性ベルト。 - 前記ベルト本体が、弾性芯体層と弾性層との2層からなる請求項1に記載の電子写真装置用導電性ベルト。
- 前記ベルト表面層が、▲1▼フッ素変性アクリレートと他のアクリレートの共重合物、▲2▼フッ素化オレフィン、▲3▼メタクリル酸メチルと他の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体との共重合体の3成分を含有されている請求項1に記載の電子写真装置用導電性ベルト。
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