従来、例えば、電子写真方式を利用した画像形成装置は、一般に円筒型の電子写真感光体(感光体)とされる像担持体上に静電像(潜像)を形成し、この静電像をトナーにより現像してトナー像とし、このトナー像を最終的に転写材(記録用紙、プラスチックフィルム、布など)に転写して、定着することによって画像を出力する。
そして、複数色のトナー像を重ね合わせることにより転写材上にカラー画像を形成する電子写真方式のカラー画像形成装置には、次のような方式のものがある。先ず、像担持体上に逐次に形成されるトナー像を、転写材担持体に担持された転写材上に順次に転写し、転写材上で複数色のトナー像を重ね合わせる方式(直接転写方式)がある。又、像担持体上に形成されるトナー像を中間転写体上に順次に転写して、中間転写体上で複数色のトナー像を重ね合わせ、その後この多重トナー像を一括して転写材上に転写する方式(中間転写方式)がある。特に、複数の画像形成手段(プロセスステーション)を直列に配置し、各画像形成手段が備える像担持体に形成されたトナー像を、転写材担持体上に担持されて搬送される転写材、又は中間転写体上に順次に転写するインライン方式の画像形成装置は、画像形成速度の高速化が図れるなどの点で有利である。
転写材担持体、中間転写体としては、複数のローラに張架されて無端移動するベルト、即ち、搬送ベルト、中間転写ベルトが広く用いられている。
従来、搬送ベルト、中間転写ベルトとしては、厚さ50〜200μm、体積抵抗率109〜1016Ωcm程度のPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリカーボネート等の樹脂フィルム、或いは、厚さ0.5〜2mm程度のEPDMなどのゴムの基層の上に、ウレタンゴムにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などフッ素樹脂を分散した材料からなる表層を設けたものが用いられている。尚、本明細書では、画像形成手段が備える像担持体に当接して配置され、像担持体上に形成された出力用画像又は制御用画像であるトナー像を、直接又は転写材を介して所定の領域に担持して搬送する搬送ベルト、中間転写ベルトとされるベルト体を、以下、総称して「ベルト状転写体」という。
しかしながら、ベルト状転写体としてPVdFなどのヤング率がさほど高くない材料(ヤング率0.8GPa)を用いた場合、長期間にわたって使用すると、起動/停止時にかかるストレスにより、ベルト状転写体上にシワが発生し易い。その結果、ベルト状転写体と感光体とが接触した際に、ベルト状転写体のシワによる凹凸の影響で、感光体の削れ方に差が出ることがある。そして、その感光体の削れ方の差が帯電電位のムラとなり、画像上に濃度ムラ(画像スジなど)として現れることがある。尚、感光体としては、一般に、アルミニウムや鉄などの、ヤング率が70GPa以上220GPa以下となる金属管の表面に、感光層を設けた感光ドラムが使用される。
このような問題は、ポリイミドなどのヤング率が高い材料(ヤング率約5GPa)をベルト状転写体として使用することにより抑制することができる。ベルト状転写体のシワの発生自体が抑えられるためである。しかしながら、こういった材料は一般的に高価であるため、より低コストにて上記感光体の削れなどの問題に対応することが望まれる。表1は、ベルト状転写体のヤング率とシワの発生状況の相関を示す。
ベルト状転写体の材料としてヤング率が1GPa以下のものを用いた場合、シワが問題となるものの、材料自体が柔らかいため感光体に影響を及ぼすことがなく、画像スジも発生しない。しかしながら、上述のように、材料自体が柔らかいために、径時変化による伸びなどが発生し易く、長期使用などにおいてベルト状転写体の材料としては望ましくない場合がある。
一方、ヤング率が高いものの割れやすいポリカーボネートやアクリル樹脂(ヤング率約1.5GPa)といった樹脂をベルト状転写体に用いた場合には、シワは発生しないものの、ベルトの端部から亀裂が入り易く、ベルトが破断することがある。
又、従来のベルト状転写体は、以下に説明する点で改善が望まれている。
即ち、従来、画像形成装置を使用する温湿度条件やプロセスステーションの使用度合いにより画像濃度が変動することから、この変動を補正するための画像濃度制御が行われる。画像濃度制御においては、制御用画像(検知パターン)として所定の画像情報に従うパッチ画像(濃度パッチ)を形成し、この濃度パッチの濃度を、光学式センサとされる濃度センサで読み取る。そして、その結果を高圧条件やレーザーパワーといったプロセス条件等の画像形成条件の制御にフィードバックして、画像の最大濃度、ハーフトーン階調特性などを制御する。
濃度センサは、一般的に、濃度パッチに光源から光を照射し、反射光の強度を受光センサで検知する。濃度センサを用いた反射光の光度の検知方式は次の2つの方式に大別される。
(1)反射光の乱反射成分を検知する方式
(2)反射光の正反射成分を検知する方式
先ず、反射光の乱反射成分を検知する方式について説明する。乱反射成分とは、色として感じる反射の成分である。乱反射成分を検知するタイプの濃度センサは、後述する正反射成分の影響を除くために、図11に示すように、照射角αと受光角βが異なるように構成される。そして、乱反射光は、図12に示すように、濃度パッチから全方向にまんべんなく拡散する。乱反射成分の光量は、図13に示すように、濃度パッチの色材の量、即ち、トナー量の増加に応じて増大する特徴がある。
複数の感光体を有するインライン方式の画像形成装置においては、濃度センサの数の低減を図るために、感光体上での濃度パッチの検知を行わず、ベルト状転写体上に濃度パッチを形成し、1つの濃度センサで全色の濃度パッチを検知することが行われている。
しかしながら、ベルト状転写体は、転写材担持体としての転写材の搬送力や、中間転写体上での画像安定性を確保するために、抵抗値の調整を行う必要がある。そのため、ベルト状転写体は、カーボンブラックが分散されて、黒色や濃い灰色となることが多い。従って、ベルト状転写体上の黒色のトナーの濃度を、乱反射を検知するタイプの濃度センサで検知しようとしても、濃度パッチからも下地からも光が反射されないために検知することができない。
そこで、有彩色の画像の上に黒色のトナーによる濃度パッチを形成し、乱反射成分の減少量を検知することで濃度パッチの濃度を検知する方法が提案されている。しかしながら、人間の視覚特性に対して敏感なハイライト領域の検知能力、及び、最大の反射光強度の差による検知精度の観点から、黒色のトナーによる濃度パッチに関しては、後述する正反射光を検知するタイプの濃度センサを用いる方が望ましい。
次に、反射光の正反射成分を検知する方式について説明する。正反射成分とは、光沢として感じるものである。正反射光を検知するタイプの濃度センサでは、図6に示すように、下地面(即ち、ベルト状転写体の表面)の法線に対して照射角αと対象となる方向に反射される光を検知する。正反射成分の光量は、下地の材料に固有の屈折率と、表面状態により決まる反射率とに依存する。即ち、正反射成分の光量は、下地上にトナーが存在しない場合に最大となる。下地の上に濃度パッチが形成されている場合、図7に示すように、トナーのある部分では下地が隠され、反射光が無くなる。従って、正反射成分の光量は、図8に示すように、濃度パッチのトナー量の増加につれて小さくなる。
正反射光を検知するタイプの濃度センサは、トナーからの反射光ではなく、下地からの反射光を主として検知するため、トナー及び下地の色によらず濃度検知を行うことができる点で、乱反射光を検知するタイプの濃度センサよりも有利である。又、一般的に正反射成分の反射光量は、乱反射成分の反射光量よりも大きく、濃度センサの検知精度に関しても正反射光を検知するタイプの濃度センサの方が有利である。
ところで、正反射光を検知するタイプの濃度センサでは、使用度合いによって下地の表面状態が変動した場合、反射光量も変動してしまう。そこで、濃度パッチの反射光量を下地の反射光量で規格化した後、濃度情報に変換するなどの補正を行うことが有効である。
しかしながら、濃度パッチの反射光量を下地の反射光量で規格化した後、濃度情報に変換するなどの補正を行う場合においても、ベルト状転写体としてPVdFのようなヤング率の低い素材を用いた場合、使用を重ねるに連れてその表面が粗れてくるため、下地の反射光量が大幅に低下してくる。その結果、濃度パッチの反射光量を規格化する際の十分な光量が得られず、精度が悪くなり、濃度検知精度が低下することがある。
又、正反射光を検知するタイプの濃度センサで有彩色のトナーを検知する場合には、下地の表面状態が変動すると、次のような問題がある。上述のように、有彩色トナーの濃度パッチに光を照射した場合、トナー量の増加に応じて乱反射光が増加し、その反射光は全方向にまんべんなく拡散される。従って、正反射光を検知するタイプの濃度センサで検知される光は、図9に示すように、正反射成分と乱反射成分の和になる。このときのトナー量に対して検知される反射光量は、図10に示すように、一点鎖線で示される特性の正反射光量と、破線で示される特性の乱反射光量との和になり、実線で示されるような負性特性(トナー量がある程度以上増加すると再び反射光量が増加し始める特性)を示す。このため、濃度パッチの濃度検知に必要な直線性が得られず、濃度検知の精度が十分ではなくなる。
この問題に対して、有彩色のトナーのみによる濃度パッチの検知結果(即ち、正反射光成分と乱反射光成分の和)から、無彩色画像上に形成された有彩色のトナーによる濃度パッチの検知結果(即ち、乱反射光成分)を差し引くことによって、視覚特性に対して敏感且つ、反射光強度が強く、検知精度の高い正反射光成分のみを取り出す方式が提案されている。
しかしながら、このような方式を用いた場合にも、上述のように、ベルト状転写体としてPVdFのようなヤング率の低い素材を用いた場合、下地の反射光量が大幅に低下してくるために、濃度パッチの反射光量を規格化する際の十分な光量が得られず、精度が悪くなり、濃度検知精度が低下する。
以上説明したようなベルト状転写体のシワ、表面状態の変化の問題は、ポリイミドなどのヤング率の高い材料(約5GPa)による一様な表面を有するベルト状転写体を使用することによって抑制される。しかし、前述のように、このような材料は比較的高価であるので、コストを上げることなく上述のような問題に対応することが望まれる。
以下、詳しく説明するように、本発明者は、上述のような従来のベルト状転写体における問題点を解決するべく鋭意検討した結果、ベルト状転写体の表面に発生するシワの問題、正反射成分を検知する濃度センサを用いて濃度パッチを検知する際の下地の表面状態の変動の問題は、ベルト状転写体の基材(ベルト基材)の表面上に、出力用画像又は制御用画像であるトナー像を直接又は転写材を介して担持する領域(以下「トナー担持領域」という。)を含む表面層を、部分的に形成することにより改善し得ることを見出した。
ここで、従来、ベルト状転写体の表面に、その搬送方向における基準位置(トップ位置)を検知するための反射テープを、例えば、搬送方向に直交する方向の端部側に貼る方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法は、出力用画像又は制御用画像であるトナー像を担持するトナー担持領域を含む表面層を、ベルト状転写体の基材の表面上に部分的に形成するものではない。つまり、従来、上述のような反射テープは、ベルト状転写体のトナー担持領域外に添着される。
特開平11−160928号公報
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置の全体構成及び動作]
図1は本実施例の画像形成装置の概略構成を示す。本実施例の画像形成装置100は、画像形成装置本体(装置本体)Aに通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ、原稿読み取り装置或いはデジタルカメラなどの外部機器からの画像情報信号に応じて、電子写真方式を利用してイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色フルカラー画像を転写材(記録用紙、OHPシート、布など)Sに形成することのできる所謂インライン方式のフルカラーレーザービームプリンタである。
画像形成装置100は、画像形成手段たる複数の画像形成部(プロセスステーション、プロセス装置)として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部10Y、10M、10C、10Kを有する。又、画像形成装置100は、各画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおいて形成された画像を転写材Sに転写するための転写ユニット20を有する。転写ユニット20は、ベルト状転写体として、無端移動するベルト状の転写材担持体である静電吸着搬送ベルト(搬送ベルト)1を備えている。
尚、本実施例では、各画像形成部10Y、10M、10C、10Kの構成は、現像剤の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、何れかの色用に設けられた要素であることを示すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して総括的に説明する。
画像形成部10は、像担持体として回転可能なドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム11を有する。又、感光ドラム11の外周に沿って、感光ドラム11を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ12、感光ドラム11に形成された静電像を現像する現像手段としての現像器14、感光ドラム11上に残ったトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーナ15が配置されている。更に、各画像形成部10には、感光ドラム11に画像情報に応じて変調されたレーザーを照射し得るように、露光手段(画像書き込み装置)としての露光光学系(レーザースキャナー)13が設けられている。
そして、各画像形成部10の感光ドラム11に対向するように、転写ユニット20が配置されている。転写ユニット20が備える搬送ベルト1は、複数のローラとして駆動ローラ23、テンションローラ24及び25、及び吸着対向ローラ26の各ローラにより張架され、図中矢印で示す方向に周回移動(回転)する。それぞれ異なる色の画像を形成する画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、搬送ベルト1の周面に一列に配置されている。又、転写ユニット20において、搬送ベルト1の内周面側には、転写手段としての転写ローラ21Y、21M、21C、21Kが配置されている。各画像形成部10の感光ドラム11は、搬送ベルト1を介して転写ローラ21に当接し、感光ドラム11と搬送ベルト1とが接触する転写部(転写ニップ)nを形成している。更に、搬送ベルト1の搬送方向最上流に位置する第1の画像形成部10Yの上流側には、転写材吸着部材としての吸着ローラ27が配置されている。この吸着ローラ27は、搬送ベルト1を介して吸着対向ローラ26に当接している。転写材Sは、吸着ローラ27と吸着対向ローラ26とで形成するニップ部を通過する際に、吸着ローラ27を介して吸着バイアス印加手段たる吸着バイアス電源28よりバイアスを印加され、搬送ベルト1に静電的に吸着される。これにより、転写材Sは、搬送ベルト1上を、各画像形成部10の転写ニップnへと順次に搬送される。
尚、転写材Sは、転写材供給部40において、転写材収納部としてのカセット41から転写材供給部材たる供給ローラ42、レジストローラ(図示せず)などによって、画像形成部10におけるトナー像の形成とタイミングを合わせて、吸着ローラ27と搬送ベルト1とが接触する吸着部(吸着ニップ)へと搬送されてくる。
次に、図2をも参照して、画像形成プロセスについて説明する。
図中矢印方向(反時計回り)に回転する感光ドラム11は、帯ローラ12によって一様に帯電される。帯電ローラ12には、帯電バイアス印加手段としての帯電バイアス電源16から帯電バイアスが印加される。本実施例では、感光ドラム11は一様に負極性の所定の電位に帯電される。帯電した感光ドラム11の表面は、露光光学系13により画像情報に応じた光Eで走査露光される。こうして、感光ドラム11上に静電像が形成される。感光ドラム1に形成された静電像は、現像器14によってトナー像として現像される。つまり、現像器14は、トナーを収容する現像剤収納容器14bと、この容器内の現像剤を担持搬送して感光ドラム11に供給する現像剤担持体としての現像ローラ14aとを有する。本実施例では、現像器14内には現像剤として負帯電性のトナーが収納されている。そして、現像バイアス印加手段としての現像バイアス電源から現像ローラ14aに現像バイアスが印加されることで、現像ローラ14aと感光ドラム11との対向部(現像領域)において、現像ローラ14a上のトナーが感光ドラム11上に転移し、静電像はトナーとして可視化される。
感光ドラム11上に形成されたトナー像は、転写バイアス印加手段としての転写バイアス電源22より転写ローラ21に印加される転写バイアスの作用によって、搬送ベルト1上に担持されて転写ニップnへと搬送されてきた転写材S上に転写される。
以上のプロセスが終了すると、搬送ベルト1は、除電帯電器(図示せず)によって除電され、次のプリントプロセスに備える。又、転写工程時に感光ドラム11上から転写材Sに転写されなかったトナー(転写残トナー)は、クリーナ15が備えるクリーニングブレード15aにより掻き落とされ、廃トナー容器15bに収容される。
尚、本実施例では、反転現像方式によって現像工程が行われる。即ち、本実施例では、感光ドラム11は負帯電性のOPC(有機光導電体)感光体であり、その露光部を現像するために負極性トナーが用いられる。従って、転写ローラ21には転写バイアス電源22より正極性の転写バイアスが印加される。ここで、転写ローラ21としては低抵抗ローラを用いるのが一般的である。
例えば、4色フルカラー画像の形成時には、上述の動作が、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像形成部で行われる。これによって、搬送ベルト1上に担持された転写材S上に、各色の画像が順次重ね合わせて転写された多重トナー像が形成される。実際のプリントプロセスにおいては、搬送ベルト1の移動速度と各画像形成部10の転写位置間の距離を考慮して、転写材S上に形成される各色のトナー像の位置が一致するタイミングで、各画像形成部10での画像形成、転写プロセス、転写材Sの搬送が行われる。そして、転写材Sが各画像形成部10を一度通過する間に、転写材S上にトナー像が完成される。
搬送ベルト1の搬送方向最下流の画像形成部10の転写ニップを通過し、その上にトナー像が完成された転写材Sは、その後搬送ベルト1から分離されて、定着手段としての加熱加圧定着器30へと搬送される。そして、転写材Sは、定着器30によってトナー像が定着された後に装置本体A外に排出される。
尚、各画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおいて、感光ドラム11と、感光ドラム11に作用するプロセス手段としての帯電ローラ12、現像器14、クリーナ15のうち少なくとも1つとは、一体的にカートリッジ化されて装置本体Aに対して着脱可能なプロセスカートリッジとされていてよい。又、現像器14が単独で装置本体Aに対して着脱可能なカートリッジ(現像カートリッジ)とされていてもよい。
[搬送ベルト]
次に、本実施例にて最も特徴的な搬送ベルト1の構成について説明する。
図3(a)は、本実施例の搬送ベルト1の断面図である。又、図3(b)は、本実施例の搬送ベルト1の外観斜視図である。
本実施例では、本発明に従って、搬送ベルト1は、出力用画像又は制御用画像であるトナー像を直接又は転写材Sを介して担持するトナー担持領域を含む表面層3が、ベルト基材2の表面(転写材Sを担持する側の面)上に部分的に形成されている。
搬送ベルト1のベルト基材2は、しなやかで割れにくい材料で形成することが好ましい。ベルト基材2は、ヤング率が比較的低い材料で作製することができる。基層2を構成する材料としては、PVdFなどのフッ素樹脂が挙げられる。材料の整形しやすさや、管理の点でPVdFが最も好ましい。尚、基層2自体は、単一の材料による単一の部材であっても、同一又は異なる材料による多層構造を有していてもよい。
一方、搬送ベルト1の表面層3は、搬送ベルト1のシワを許容し得る範囲に抑制できる程度に十分高いヤング率を有する材料で作製される。又、表面層3を構成する材料としては、許容し得る程度に高ヤング率でありながら、比較的低価格の汎用プラスチック、汎用エンジニアリングプラスチックから選択されることが好ましい。表面層を構成する材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどが挙げられる。加工性及び強度の点でアクリル樹脂が最も好ましい。本実施例では、表面層3を構成する材料のヤング率は、ベルト基材2を構成する材料のヤング率よりも高い。以下、更に詳細に説明する。
本実施例の搬送ベルト1は、ベルト基材2として、周長Pが800mm、厚さTが100μmのPVdFの樹脂フィルム2の表面上に、表面層3として、厚さtが5μmにてアクリル樹脂が部分的にコーティングされる。アクリル樹脂は、紫外線硬化性の溶液を、ベルト基材2であるPVdFシートに塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより表面層3とした。
尚、ベルト基材2のPVdFシートは、利用可能な任意の方法により製造することができる。斯かる方法は、当業者には周知であるので詳しい説明は省略するが、遠心成形法により製造されるシームレスベルトなどを好適に使用することができる。
又、搬送ベルト1には、搬送ベルト1の移動方向を規制するための搬送補助部材としてのリブ4が、ベルト基材2の内周面(感光ドラム1との当接側とは反対側の面)に設けられている。リブ4は、ガイド部材、コロなどの搬送規制部材によって、その搬送ベルト1の周回移動方向に直交する方向である長手方向(以下「スラスト方向」という。)の移動を規制することによって、搬送ベルト1の搬送性を向上させる働きを有する。本実施例では、リブ4は、スラスト方向においてベルト基材2の両端部近傍に設けられている。リブ4は、ベルト基材2と同種又は異種の材料で形成し、接着等の適当な接合手段によりベルト基材2の内周面に取り付けることができる。より具体的には、本実施例では、リブ4は、シリコンゴムにて作製された、スラスト方向の幅Rが5.0mm、高さHが5.0mmの断面矩形の突起とされ、搬送ベルト1の全周にわたり延在する。リブ4は、スラスト方向においてベルト基材2の幅W内に配置されている。又、リブ4は、スラスト方向においてベルト基材2の端部から距離Q(本実施例では10mm)だけ内側に配置されている。
ここで、アクリル樹脂をベルト基材2に塗布する際に、マスキングによって、スラスト方向における表面層3の幅Nを変更(スラスト方向中心を基準として両端までの距離を変更)し、表面層3の効果を調べる実験を行った。ここでは、アクリル樹脂のコーティングを施す領域を下記(1)〜(4)のように変化させた。結果を表2に示す。
尚、本実施例では、スラスト方向における感光ドラム11上の画像形成領域(印字領域)に対応する搬送ベルト1上の画像形成領域(トナー担持領域)の幅Uは、220mmであり、スラスト方向における2つのリブ4間の距離Mより内側に収まっている。即ち、リブ4は、スラスト方向において、搬送ベルト1の端部の画像形成領域以外の領域(非画像形成領域)内に配置されている。
(1)感光ドラム11上の画像形成領域内にアクリル樹脂の塗工領域の端部が入るように、表面層3を形成した。
(2)リブ4の内側端部間の領域にアクリル樹脂を塗工して、表面層3を形成した。即ち、ベルト基材2のスラスト方向におけるアクリル樹脂の塗工幅Nと、2つのリブ4間の距離Mとを同一とした(塗工領域とリブ4間の領域とで、スラスト方向の中心は一致している)。
(3)ベルト基材2の両端部からそれぞれ0.5mmずつ内側の領域までアクリル樹脂を塗工して、表面層3を形成した。
(4)ベルト基材2の両端部までの全域にアクリル樹脂を塗工して、表面層3を形成した。
上記(1)の場合、アクリル樹脂の塗工領域から画像形成領域が外れると、耐久により、通紙によって画像形成領域内に搬送ベルト1のシワが発生し、感光ドラム11の削れムラを引き起こして、画像ムラが発生することがあった。
これに対し、上記(2)の場合のようにリブ4までアクリル樹脂の塗工領域を広げると、リブ4の走行抵抗などによってストレスを受ける範囲がアクリル樹脂で強化できるため、シワが全く発生しなかった。
更に、上記(3)の場合のように塗工領域を搬送ベルト1の端部から0.5mm内側の部分まで広げても、搬送ベルト1のシワや画像に問題がなかった。同様の実験で、塗工領域を搬送ベルト1の端部から1.0mm内側の部分とした場合にも、搬送ベルト1のシワや画像に問題はなかった。
一方、上記(4)の場合のように、搬送ベルト1の端部までアクリル樹脂の塗工領域を広げたところ、耐久により端部からアクリル樹脂が割れはじめた。樹脂が割れる原因としては、搬送ベルト1の端部が搬送ベルト1の支持枠体と接触することなどによる疲労、ジャム処理(転写材が搬送経路中で詰まった場合にこれを取り除く操作)時などのハンドリングで生じる搬送ベルト1の端部の変形などが考えられる。
このようなアクリル樹脂の割れが進行して画像領域に入ったり、剥がれた部分が感光ドラム11を傷付けるといった画像への弊害が考えられる。そのため、このアクリル樹脂の割れは避けなければならない。この表面層3の割れは、塗工領域を搬送ベルト1の端部より内側、好ましくは0.5mm内側、より好ましくは1.0mm内側の部分までとすることによって防止し得ることが分かった。
以上の結果から、表面層3の幅Nは、リブ4が設けられている搬送ベルト1の端部側(本実施例では両端部)では、ストレスを受けるリブ4の部分を強化するように、スラスト方向における該表面層3の端部がリブ4の内側端部(即ち、搬送ベルト1の中央側端部)よりも外側になるように設定することが好ましい。又、表面層3の幅Nは、端部における割れ等を防止するように、スラスト方向における該表面層3の端部が搬送ベルト1の端部よりも内側に設定することが好ましく、0.5mm〜1.0mm内側になるように設定することがより好ましい。
このように、表面層3の幅を限定することで、搬送ベルト1の使用に伴う表面層3の劣化を防止して、効果的に搬送ベルト1のシワを防止することが可能である。即ち、スラスト方向において、ベルト基材2の端部から所定の範囲内には、表面層3が形成されないようにする。ベルト基材2の端部における表面層3が形成されていない部位は、スラスト方向において、搬送ベルト1がトナー像を直接又は転写材Sを介して担持するトナー担持領域以外に位置することが好ましい。又、ベルト基材2の端部における表面層3が形成されていない部位は、スラスト方向において、ベルト基材2の端部からリブ4の搬送ベルト1の中央側端部までの範囲内に位置することが好ましい。本実施例では、搬送ベルト1は、搬送ベルト1のトナー担持領域の全部を含む表面層3を有し、且つ、ベルト基材2のスラスト方向の端部のトナー担持領域以外の領域において該表面層3が形成されない部位を有する。
以上、本実施例によれば、ポリイミドのような比較的高価な樹脂を使用すること無く、搬送ベルト1のシワの発生を抑制し、高品位な画像を安定して出力し続けることが可能になる。又、表面層3の材料としてヤング率が高いものの割れやすいアクリル樹脂のような材料を使用しても、割れの発生の原因となる端部を避けてベルト基材2の表面上に表面層3を形成することで、屈曲や摺擦するベルトとして使いこなすことが可能である。即ち、本実施例によれば、ポリイミドのような比較的高価な材料による一様な表面を有する搬送ベルト1を用いることなく、シワによる画像不具合の発生や、ベルトの破断を抑えることができる。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。尚、本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は実施例1のものと実質的に同じである。従って、実施例1のものと実質的に同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
本実施例では、搬送ベルト1のベルト基材2の表面上に部分的に設ける表面層3を、特に、トナー担持領域としての濃度パッチの形成領域に形成する。即ち、本発明者は鋭意検討した結果、本発明に従って、ベルト基材2の表面上に部分的に実施例1と同様の表面層3を設けることで、濃度パッチの検知精度を向上し得ることを見出した。
即ち、一般に、画像形成装置100を使用する温湿度条件や画像形成部の使用度合いにより画像濃度が変動する。従って、この変動を補正するために、画像濃度の制御が行われる。前述のように、画像濃度制御においては、基準画像として所定の画像情報に従うパッチ画像(濃度パッチ)を形成し、この濃度パッチの濃度を、検知手段として光学式センサとされる濃度センサで読み取る。そして、その結果を高圧条件やレーザーパワーといったプロセス条件にフィードバックして、画像の最大濃度、ハーフトーン階調特性などを制御する。一般的には、濃度センサは、濃度パッチに光源から光を照射し、反射光強度を受光センサで検知する。その反射光強度の信号はA/D変換された後、制御手段たるCPUで処理され、画像形成プロセス条件にフィードバックされる。
更に説明すると、一般に、画像濃度制御は、各色の最大濃度を一定に保つこと(以下「Dmax制御」という。)と、ハーフトーンの階調特性を画像信号に対してリニアに保つこと(以下「Dhalf制御」という。)を目的とする。又、カラー画像形成装置の場合、Dmax制御は、各色のカラーバランスを一定に保つことと同時に、トナーの載りすぎによる色重ねした文字の飛び散りや、定着不良を防止する意味も大きい。
具体的には、Dmax制御は、画像形成条件を変えて形成した複数の濃度パッチを光学センサで検知し、その結果から所望の最大濃度を得られる条件を計算し、画像形成条件を変更する。ここで、濃度パッチはハーフトーンで形成するのが好ましい場合が多い。その理由は、所謂、べた画像(最大濃度レベルの画像)を検知した場合、トナー量の変化に対するセンサ出力の変化の幅が小さくなってしまい、十分な検知精度が得られないからである。
一方、Dhalf制御は、電子写真プロセスに特有の非線形的な入出力特性(γ特性)によって、入力画像信号に対して出力濃度がずれて自然な画像が形成できないことを防止するため、γ特性を打ち消して入出力特性をリニアに保つような画像処理を行う。具体的には、入力画像信号が異なる複数の濃度パッチを光学センサで検知して、入力画像信号と濃度の関係を得、その関係からホストコンピュータからの入力画像信号に対して所望の濃度が出るよう、画像形成装置に入力する画像信号を、画像形成装置のコントローラにより変換する。このDhalf制御はDmax制御により画像形成条件を決定した後行うのが一般的である。
本実施例の画像形成装置100においても、各画像形成部10によって搬送ベルト1上に濃度パッチを形成し、上記Dmax制御、Dhalf制御を行う。即ち、本実施例では、画像形成部10と、感光ドラム11に当接する搬送ベルト1と、を有する画像形成装置100は、画像形成部10を制御して所定の検知パターン(濃度パッチ)を形成する検知パターン発生手段と、検知パターンを検知する検知手段としての後述する濃度センサ50A、50Bと、濃度センサ50A、50Bの出力に基づいて画像形成条件を制御する画像形成条件制御手段と、を有する。本実施例では、検知パターン発生手段と、画像形成条件制御手段との機能は、画像形成装置100の動作を統括的に制御する制御手段としてのコントローラ部が有する。コントローラ部は、記憶部、演算部、制御部を有し、記憶部に記憶されている濃度制御プログラムに従って、画像形成部10を制御して濃度パッチを形成すると共に、濃度センサ50A、50Bによる濃度パッチの検知結果に従って画像形成部10を動作させるための画像形成条件を制御する。
尚、搬送ベルト1上に形成された濃度パッチは、クリーニングプロセスによってプロセス装置に静電的に回収される。つまり、クリーニングプロセス時には、感光ドラム11にトナーの帯電極性と逆極性のバイアスを印加し、転写ニップnで濃度パッチのトナーを感光ドラム11に引きつける。そして、このトナーは、転写残トナーと同様に、クリーナ15が備えるクリーニングブレード15aで掻き取られる。
本実施例においては、無彩色、即ち、黒色のトナーによる濃度パッチを検知する検知手段として、正反射光を検知するタイプの光学センサである第1の濃度センサ50Aを有する。図5は、第1の濃度センサ50Aの概略構成を示す。
第1の濃度センサ50Aは、LEDなどの発光素子51と、フォトダイオードなどの受光素子52を有する。発光素子51から照射された光は、本実施例では搬送ベルト1に対して30°の角度で入射し、検知位置53で反射される。受光素子52は、搬送ベルト1による反射光のうち、発光素子51からの照射された光の入射角度と同じ角度(30°)で反射された反射光を検知する位置に設けられている。本実施例で使用した第1の濃度センサ50Aは、その特性として反射光強度が強くなるほど電圧が高くなる。
第1の濃度センサ50Aで濃度パッチを検知したときに検出される反射光の特性について説明する。下地となる搬送ベルト1上に照射された光は、図6に示すように、搬送ベルト1の材料に固有の屈折率と、表面状態とで決まる屈折率とに応じて反射され、受光素子52で検知される。第1の濃度センサ50Aの検知位置53に濃度パッチが形成されていると、図7に示すように、トナーがある部分の下地が隠され、反射光量が減少する。従って、図8に示すように、濃度パッチのトナー量の増加と共に反射光量は減少し、この減少量を基に濃度パッチの濃度を求めることができる。実際には、搬送ベルト1の使用度合いによって下地の表面状態が変動し、反射光量も変動する。そのため、濃度パッチの反射光量を下地の反射光量で規格化した後、濃度情報に変換するのが一般的である。
しかしながら、前述のように、濃度パッチの反射光量を下地の反射光量で規格化した後、濃度情報に変換するなどの補正を行う場合においても、ベルト状転写体としてPVdFのようなヤング率の低い素材を用いた場合、使用を重ねるに連れてその表面が粗れ、下地の反射光量が大幅に低下してくる。その結果、濃度パッチの反射光量を規格化する際の十分な光量が得られず、精度が悪くなり、濃度検知精度が低下することがある。
このように、少なくとも下地による反射光量の変動の影響が顕著である正反射光を検知するタイプの濃度センサの検知範囲には、表面層3を設けることが好ましい。
そこで、本実施例では、図4(a)、(b)に示すように、第1の濃度センサ50Aに対応する搬送ベルト1の表面上に、実施例1と同様の表面層3を形成した。
つまり、本実施例では、少なくとも搬送ベルト1上の黒色トナーによる濃度パッチを形成する部位に表面層3を設ける。本実施例では、実施例1における搬送ベルト1と同じベルト基材2及びリブ4(ベルト基材2及びリブ4の材料、寸法P、W、R、Q、M、T、U、Hは実施例1と同じ。)を備える搬送ベルト1において、ベルト基材2の表面(転写材Sを担持する側の面)上の、第1の濃度センサ50Aの対向位置(図4中右側の端部近傍)に、スラスト方向において第1の濃度センサ50Aの検知範囲(検知光の光スポット)よりも大きい幅V(本実施例では10mm)にて、実施例1と同様の方法によりアクリル樹脂を厚さt(本実施例では100μm)にてコーティングした。
本実施例では、表面層3は、スラスト方向において感光ドラム11上の画像形成領域に対応する搬送ベルト1上の画像形成領域内に位置する。本実施例では、スラスト方向において表面層3の外側端部は、リブ4の内側端部よりも内側に位置する。又、詳しくは後述するように、本実施例では、図4(b)に示すように搬送ベルト1の周方向の所定箇所において未形成部(切り欠き部)5が設けられる部分を除いて、表面層3は搬送ベルト1の周方向に連続して形成される。そして、この表面層3が設けられた部分に黒色トナーによる濃度パッチが形成されるようになっている。
即ち、搬送ベルト1上のスラスト方向における所定位置に光を照射して、その反射光を検知する検知手段、特に、搬送ベルト1上に光を照射した際の正反射光を検知するタイプの検知手段を有する場合、ベルト基材2の表面において、表面層3を、上記検知位置において搬送ベルト1の周方向の少なくとも一部を含む範囲に形成することが好ましい。これにより、下地の反射光量が搬送ベルト1の使用度合いによって変化しないようにすることができる。
尚、本実施例のように、特に表面層3を濃度パッチが形成される部位に設ける場合においても、実施例1にて説明したのと同様に、表面層3の割れ等を防止するように、ベルト基材2のスラスト方向における該表面層3の端部が、ベルト基材2のスラスト方向端部よりも内側になるように形成することが好ましく、0.5mm〜1.0mm内側になるように形成することがより好ましい。
表3は、搬送ベルト1上の表面(第1の濃度センサ50Aによる検知面)の材料の違いによる、搬送ベルト1の使用初期と耐久後とにおける、第1の濃度センサ50Aを用いて検出される反射光量の違いを調べた結果を示す。実験は、検知面の材料としてポリイミド、PVdF、アクリル樹脂のコーティングのそれぞれについて行った。反射光量の測定結果は、検知面の材料がポリイミドである場合の初期の反射光量を100とした場合の比率で示す。
表3に示す結果から明らかなように、搬送ベルト1にアクリル樹脂をコーティングして表面層3を形成することにより、耐久試験を実施しても反射光量の低下が無く、十分な光量が得られるようになった。その結果、搬送ベルト1の使用レベルによらずに、正反射光を検知するタイプの濃度センサを用いて十分な精度を維持しながら黒色のトナーによる濃度パッチを検知することが可能となる。
一方、本実施例では、有彩色のトナーによる濃度パッチを検知する検知手段として、乱反射光を検知するタイプの光学センサである第2の濃度センサ50Bを有する。図11は、第2の濃度センサ50Bの概略構成を示す。
第2の濃度センサ50Bは、LEDなどの発光素子51と、フォトダイオードなどの受光素子52を有する。発光素子51から照射された光は、搬送ベルト1上の検知位置53にあるトナーにより乱反射される。第2の濃度センサ50Bでは、正反射成分の影響を除くために、照射角αと受光角βが異なるよう構成されている。乱反射光を検知する第2の濃度センサ50Bは、トナー自身が反射する光量を測定する。そのため、耐久によって下地、即ち、搬送ベルト1の表面が粗れた場合でも、トナーによる反射光量を測定する前に予め下地の乱反射光量(基準値)を測定しておくことで、トナーによる反射光量を測定した際のその基準値からの光量の増加分に基づいて、トナーの量を検知することが可能である。従って、有彩色のトナーによる濃度パッチの濃度は、乱反射光を検知する濃度センサにより精度よく検知することが可能である。
そのため、本実施例では、搬送ベルト1のベルト基材2の表面上において、第2の濃度センサ50Bに対向する部分には、表面層3を設けない。即ち、第2の濃度センサ50Bの検知範囲内の搬送ベルト1の表面の材料は、ベルト基材2であるPVdFのままの状態とした。
このように、本実施例では、正反射光を検知するセンサで黒色のトナーによる濃度パッチの濃度を検知し、乱反射光を検知するセンサで他の色、即ち、有彩色であるイエロー、マゼンタ、シアンの各色のトナーによる濃度パッチの濃度を検知する。
更に、本実施例では、スラスト方向において黒色トナーによる濃度パッチが形成される部位に設けられた表面層3は、搬送ベルト1の周方向1周分内に表面層3が設けられていない部分を有する。即ち、本実施例では、図4(b)に示すように、周方向に連続する表面層3には、周方向の幅X(本実施例では20mm)にて切り欠き部5が設けられている。
つまり、従来、搬送ベルト1の基準位置(トップ位置)を検知するためには、反射テープを搬送ベルト1の表面に貼ったり、或いは搬送ベルト1に穴を開けるなどして、搬送ベルト1に基準位置指示手段を設け、この基準位置指示手段を、光学センサなどの基準位置検知手段で検知していた。しかし、このような従来の方法では、耐久により反射テープは剥がれたり、或いは搬送ベルト1に穴を開けるといった2次加工が必要であった。
これに対して、本実施例では、黒色トナーによる濃度パッチの濃度検知のためにベルト基材2の表面上に形成した表面層3に切り欠き部5を設け、その切り欠き部5に現れるベルト基材2(本実施例ではPVdF)の反射率と、表面層3(本実施例ではアクリル樹脂)の反射率との違いを、基準位置検知手段としての機能を兼ねる第1の濃度センサ50Aで検知する。即ち、本実施例では、第1の濃度センサ50は、表面層3上のトナーの検知と、切り欠き部5の位置情報の検知との両方を行う。これにより、特別な手段を設けることなく、搬送ベルト1の基準位置(トップ位置)を検知することが可能となる。第1の濃度センサ50Aによって検知された搬送ベルト1の基準位置の情報は、コントローラ部において、画像形成タイミングの制御等に使用される。
以上説明したように、本実施例によれば、例えば、黒色トナーによる濃度パッチの濃度検知などのために、搬送ベルト1の正反射光を検知しなければならない場合に、搬送ベルト1のベルト基材2の表面上における検知部に相当する個所に、使用により表面状態が粗れにくい樹脂をコーティングして表面層3を形成する。これにより、装置の使用条件に拘わらず、常に高い正反射光量が得られる。従って、例えば、黒色トナーによる濃度パッチの濃度の、高い検知精度を維持することが可能になる。又、搬送ベルト1のベルト基材2の表面上に、表面層3を形成しない部位を設けることで、その部位においてイエロー、マゼンタ、シアンなど、有彩色トナーの検知を、乱反射光を検知するセンサによる比較的簡易な方法で精度よく検知することができる。つまり、搬送ベルト1の一部に表面層3を設けることで、特性の違うトナーの量を、それぞれ非常に単純な方法で検知することが可能である。本実施例のように非常に単純な方法でトナー量を検知することで、例えば搬送ベルト1に黒色のトナーで下地を印字し、その上に有彩色のトナーを印字するといった、均一性や、安定性に不安のある方法を取る必要が無く、精度の高い検知が可能である。
更に、ベルト基材2の円周上に形成する表面層3に切り欠き部5を設けることで、ベルトに特別な加工を施したり、特別なセンサを設けたりすること無く、ベルトの基準位置(トップ位置)を検知することが可能である。
以上、ポリイミドのような比較的高価な材料による一様な表面を有する搬送ベルト1を用いることなく、搬送ベルト1の使用レベルによらずに安定した画像形成条件の制御を行うことができる。
尚、切り欠き部5を設けずに、濃度センサの検知範囲に対応する部位に搬送ベルト1の全周にわたり連続する表面層3を形成することも勿論可能である。
又、当然、実施例1のように、搬送ベルト1上のトナー担持領域の全部を含むように表面層3を形成する場合において、濃度パッチをその上に形成することもできる。これにより、搬送ベルト1のシワの抑制と、濃度パッチの検知精度の向上の両方の効果が得られる。
又、制御用画像(検知パターン)は、上記Dmax制御、Dhalf制御に用いられる濃度パッチに限定されるものではない。即ち、従来、多色画像の形成時に複数の成分色画像を搬送ベルト上の転写材上、或いは中間転写ベルト上に重ね合わせて転写する際に、それぞれの成分色画像がずれることなく重畳されるように、所定のタイミングで搬送ベルト或いは中間転写ベルト上に画像位置ずれ検知(レジスト検知)用の制御用画像(レジスト検知パターン)を形成し、これを光学センサで読み取ることで、各色の位置合わせ制御が行われることがある。又、現像器内のトナー濃度制御のために、中間転写ベルト又は搬送ベルト上に所定の画像情報に従う制御用画像(トナー濃度検知パッチ)を形成し、これを光学センサで読み取ることで、現像器内のトナー濃度制御(トナー補給制御)が行われることがある。このようなレジスト検知パターン、トナー濃度検知パッチを、正反射光を検知するタイプの光学センサで高精度に読み取るためには、下地としてのベルト状転写体の表面状態の変動を抑制することが望ましい。従って、これらの制御用画像を検知する場合にも本発明は等しく適用することができ、上記同様の効果を得ることができる。
又、上記各実施例では、ベルト状転写体が搬送ベルトである場合を例に説明した。本発明はこれに限定されるものではなく、ベルト状転写体が中間転写ベルトである場合にも等しく適用することができ、同様の効果が得られる。
例えば、図14に、ベルト状転写体1として中間転写ベルトを備える画像形成装置200の概略構成を示す。図14の画像形成装置200において、図1に示す画像形成装置100と実質的に同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。図14の画像形成装置200においては、図1の画像形成装置100における転写ローラ21に相当する、一次転写手段としての一次転写ローラ21を有する。これにより、各画像形成部10の転写ニップ(一転写ニップ)n1において、感光ドラム11から中間転写ベルト1上にトナー像を順次に転写(一次転写)する。中間転写ベルト1上に形成された出力画像用のトナー像は、中間転写ベルト1と二次転写手段としての二次転写ローラ29とが接触する二次転写部n2において、二次転写ローラ29の作用によって転写材S上に転写(二次転写)される。二次転写ローラ29には、二次転写バイアス印加手段としての二次転写バイアス電源(図示せず)から二次転写バイアスが印加される。又、図14の画像形成装置200においても、図1の画像形成装置と同様に、中間転写ベルト1上に制御用画像を形成して、これを光学センサ50A、50Bで検知し、画像形成条件を制御することができる。
そして、この中間転写方式の画像形成装置200において、中間転写ベルト1は、上記各実施例にて説明した搬送ベルト1と実質的に同一のものを使用することができる。これにより、上記各実施例にて説明したのと同様の作用効果を奏し得る。