JP2005029822A - めっき厚調整用ガス噴射ノズル - Google Patents

めっき厚調整用ガス噴射ノズル Download PDF

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Abstract

【課題】短時間でガス噴射ノズルのノズル孔形状を最適形状に変更することができ、かつ線状オーバーコートの発生を防止可能なめっき厚調整用ガス噴射ノズルを提供する。
【解決手段】溶融めっき金属の浴面上方で、鋼帯の板面にノズル孔45からガスを噴射して、過剰なめっき金属を吹払するめっき厚調整用ガス噴射ノズル40は、鋼帯の幅方向に延びるノズル孔の一方の内面を形成するノズル本体42と、ノズル本体に着脱可能に挿入され、ノズル孔の他方の内面を形成するノズル孔調整片41と、ノズル孔調整片をノズル本体に押付ける楔片43とを備える構成である。ノズル孔調整片には、無電解ニッケルめっきが施され、ノズル本体に楔片とともに装着された状態で楔片に当接する面92に切欠部93が形成される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続的に溶融めっきされた金属帯のめっき厚を調整するガス噴射ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属帯たとえば鋼帯に連続的に溶融めっきを施すときには、ガスワイピング法によってめっき付着量の制御が行われている。ガスワイピング法は、鋼帯に付着した過剰なめっき金属をガス噴射ノズルから噴射されるガスの圧力によって吹払する方法であり、これによってめっき付着量を予め定める値に制御することができるとともに、美麗な表面肌を得ることができる。このガスワイピング法を用いた場合、鋼帯の幅方向に延びるガス噴射ノズルの長さは、鋼帯の幅よりも長く構成されているので、鋼帯の存在しない部分については表裏のガスが緩衝して緩衝流が発生する。この緩衝流は、鋼帯の幅端部のワイピング効果を阻害するので、鋼帯の幅端部のめっき付着量が多くなる、いわゆるエッジオーバーコートという問題を引起こす。
【0003】
エッジオーバーコートを防止する方法の一つに、ガス噴射ノズルのノズル孔にテーパを形成して、ノズル孔の両端部の間隔を中央部よりも大きくし、両端部における噴射ガス流量を増大するというものがある。この方法では、狭幅の鋼帯に適合するようにノズル孔にテーパを形成すると、広幅の鋼帯に対してはテーパが不適合であるので、幅中央部と幅端部とのめっき付着量差が大きくなり、幅方向の付着量分布が不均一になる。したがって、各鋼帯幅毎に適正なテーパを設計し、鋼帯幅に応じて適正なテーパを有するガス噴射ノズルに交換しなければならないけれども、ガス噴射ノズルの交換には長時間を要するので、操業を停止する必要があり、生産性が大幅に低下するという問題がある。
【0004】
このような問題を解決する従来技術として、各鋼帯幅毎に適正なテーパを有するノズル孔調整片を予め作製し、ノズル本体にノズル孔調整片を着脱可能に装着させることのできるめっき厚調整用ガス噴射ノズルが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
図5は、従来技術のめっき厚調整用ガス噴射ノズル1の側面図である。めっき厚調整用ガス噴射ノズル1は、溶融めっき金属、たとえば溶融亜鉛3の浴面上で浴中を通過してほぼ鉛直上方に搬送される金属帯、たとえば鋼帯4を臨んで設けられる。多くの場合、めっき厚調整用ガス噴射ノズル1は、鋼帯4に関して面対称の位置に一対が対向して設けられる。一対のめっき厚調整用ガス噴射ノズル1は、互いに同一に構成されるので、一方についてのみ説明し、他方については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0006】
めっき厚調整用ガス噴射ノズル1は、鋼帯4の表面にそのノズル孔5からガスを噴射し、鋼帯4にめっきされた過剰な溶融亜鉛3を吹払してめっき厚、すなわち亜鉛付着量を調整する。噴射されるガスには、空気、窒素および燃焼排ガスなどが用いられる。
【0007】
めっき厚調整用ガス噴射ノズル1は、上ノズル本体6および下ノズル本体7を有するノズル本体8と、ノズル孔調整片2(以後、インサートと呼ぶことがある)と、楔片9とを含む。ノズル孔調整片2は、ノズル本体8の下ノズル本体7に対して鋼帯4の幅方向に移動させることによって着脱可能であり、ノズル孔調整片2を下ノズル本体7に挿入し、さらに楔片9を下ノズル本体7に挿入することによって、ノズル孔調整片2を下ノズル本体7に対して押圧し、装着固定することができる。逆に、楔片9を下ノズル本体7から離脱させ、下ノズル本体7に対するノズル孔調整片2の押圧状態を解放することによって、ノズル孔調整片2を下ノズル本体7から離脱させることができる。
【0008】
図6は、各鋼帯幅毎に適正なテーパを有するノズル孔調整片2の正面図である。図6では、ノズル本体8に装着されたノズル孔調整片2を鋼帯4の位置を視点にして見た状態を示す。ノズル孔調整片2は、鋼帯4の幅方向中央部付近に互いに対向する一方の面11と他方の面12とが平行に形成される平行部13と、平行部13の鋼帯幅方向両側に平行部13に連なり平行部13から離反するのに伴って一方の面11が他方の面12に近接するように形成されるテーパ部14とを有する。
【0009】
このテーパ部14が各鋼帯幅毎に適正になるような種々のテーパを有する、たとえば図6に示すようなノズル孔調整片2a,2b,2c,2dを予め作製しておき、製造するべき鋼帯幅毎に適正なテーパ勾配を有するノズル孔調整片2を選択して用いることによって、鋼帯幅に応じた適正なノズル孔5形状を得ることができる。
【0010】
従来技術は、たとえばノズル孔調整片2a,2b,2c,2dのうちから、製造しようとする鋼帯幅に対応するように作製されたものを選択し、ノズル本体8から現行のノズル孔調整片を離脱させ、新たに選択したものを装着させることによって、操業を停止させることなく、鋼帯幅に応じてノズル孔調整片を交換することができ、ノズル孔5形状を最適形状に変更してエッジオーバーコートを防止することができるというものである。
【0011】
【特許文献1】
特開平11−217661号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示される技術には、以下のような種々の問題がある。ノズル孔調整片2は、ノズル本体8の下ノズル本体7に対してスライドさせるようにして着脱される。したがって、ノズル孔調整片2の下ノズル本体7に当接する前記他方の面12および下ノズル本体7に係合する凹所を形成する位置決め面15は、ノズル孔調整片2の着脱時、下ノズル本体7と摺動する。したがって、前記他方の面12もしくは前記位置決め面15またはこれらの面と互いに擦過される下ノズル本体7側の面に、すり疵やかき疵の発生することがある。
【0013】
すり疵やかき疵が生じたとき、すり寄せまたはかき寄せられた屑は盛り上がり、当該面から突出した突出部を形成する。特に前記他方の面12にこのような突出部が形成されたとき、ノズル孔調整片2が浮上がり、上ノズル本体6のノズル孔形成面に近接するように変位するので、ノズル孔5が局所的に狭くなり、ノズル孔5から噴射されるガスの動圧が低下する現象が発生する。
【0014】
図7は、すり疵またはかき疵の発生に起因する動圧低下の状態を示す図である。図7中に実線で示すライン16が、正常状態における鋼帯幅方向の動圧測定結果を示し、鋼帯幅方向のほぼ中央部付近において仮想線で示すライン17の動圧測定結果が、すり疵に起因する局所的な動圧低下の状態を示す。このような動圧の低下が発生すると、鋼帯表面に付着しためっき金属を吹払する能力が低下するので、動圧の低下した部分に対応する鋼帯表面の部分に局所的にめっき付着量の多い部分が連続して形成され、線状オーバーコートと称する欠陥になる。
【0015】
このようなノズル孔調整片2とノズル本体8との摺動によるすり疵やかき疵の発生を防止することを目的として、硬質クロム(Cr)めっきの施されることがある。硬質Crめっきは、めっき表面がビッカース硬さで800〜900以上を有するので、疵発生の防止や耐磨耗を目的として多用されている方法である。しかしながら、硬質Crめっきは電解(電気)めっきであるので、被めっき物が複雑な形状を有する場合、均一な厚みでめっきすることができないという問題がある。
【0016】
図8は、Crめっき18の施されたノズル孔調整片2の断面図である。電解めっきであるCrめっきにおいては、ノズル孔調整片2の凸部19,20,21,22,23に電流が集中して流れるのでめっき厚みが厚くなり、凹部24に流れる電流は少ないのでめっき厚みが薄くなる。そのめっき厚みのばらつきは、めっきの目標厚みがたとえば20μmであるとき、薄い部分ではほぼ零(0)であり、厚い部分では約40μmにもなる。このようにめっき厚みがばらつくとき、厚みの薄い部分では、すり疵やかき疵の防止効果がなく、また薄い部分と厚い部分との差異によって厚い部分が前述の突出部と同じ作用を及ぼし、線状オーバーコートの原因となる。したがって、Crめっきを施した後、めっき厚みの厚い部分を研磨することによって、めっき厚みが均一化されるように修正しているけれども、その修正研磨作業が手作業によって行われるので、正確に除去し修正することは不可能である。したがって、ノズル孔調整片2の製作時、最終めっき工程で加工精度が低下することもあった。
【0017】
またノズル孔調整片2は、簡易な治具が用いられるけれども、作業者の人手によってノズル本体8に対して着脱されている。ノズル孔調整片2は、前述のように鋼帯幅を超える長さ、たとえば2m程度の長さを有するので、往々にして着脱の取扱い時に作業場周辺の構造物や装置に対して衝撃的に接触し、損傷を受けることがある。
【0018】
図9は、損傷を受けたノズル孔調整片2の事例を示す図である。図9(a)では、ノズル孔調整片2が楔片9と当接する面25の下部を損傷した例を示し、図9(b)は、損傷部分を拡大して示す図である。
【0019】
ノズル孔調整片2が周辺の構造物や装置に対して衝撃的に接触したとき、ノズル孔調整片2の角部が損傷変形し易い。特に図9に示すノズル孔調整片2が楔片9と当接する面25の下部が損傷変形し、へこみ部26とへこんだ部分の質量が移動して盛上がる突出部27とが形成されるとき、ノズル孔5から噴出されるガスの動圧に影響を及ぼす。
【0020】
すなわち、ノズル孔調整片2がノズル本体8に装着され、次いで楔片9がノズル本体8とノズル孔調整片2との間に挿入されると、楔片9が突出部27を局所的に強く押圧するので、ノズル孔調整片2の突出部27が形成された部分に回転モーメントが発生し、ノズル孔調整片2が局所的に浮上がり上ノズル本体6のノズル孔形成面に近接するように変位するので、ノズル孔5が局所的に狭くなり、ノズル孔5から噴射されるガスの動圧が低下する。
【0021】
図10は、ノズル孔調整片2に形成された突出部27に起因する動圧低下の状態を示す図である。図10中に示すライン28が、鋼帯幅方向の動圧測定結果を示し、鋼帯幅方向のほぼ中央部付近において図10の紙面下方に向ってV字状に鋭く変化しているのが動圧低下部29である。このような動圧の低下が発生すると、動圧低下部分に対応する鋼帯表面部分に線状オーバーコートが発生する。
【0022】
またノズル孔調整片2は、前述のように平行部13とテーパ14とを有するように形成されるけれども、平行部13からテーパ14に移る角部である境界部を通過してノズル孔5から噴射されるガスの動圧が、平行部13およびテーパ部14の動圧に比して低下する現象がある。図11は、従来のめっき厚調整用ガスノズル1における動圧測定結果を示す図である。図11中に示すライン30が動圧測定結果を示す。境界部に相当する部分の動圧31a,31bは、平行部13に相当する部分の動圧32およびテーパ部14に相当する部分の動圧33a,33bに比較して低い。したがって、境界部に相当する動圧の低下した部分に対応する鋼帯表面の部分に線状オーバーコートが発生するという問題がある。
【0023】
本発明の目的は、短時間でガス噴射ノズルのノズル孔形状を最適形状に変更することができ、かつ線状オーバーコートの発生を防止することのできるめっき厚調整用ガス噴射ノズルを提供することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明は、位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方を有し、金属帯の幅方向に延びるノズル孔の一方の内面を形成するノズル本体と、前記ノズル本体の位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方に当接する位置決め凹部または位置決め凸部を有し、ノズル本体に着脱可能に挿入され、ノズル孔の他方の内面を形成するノズル孔調整片と、ノズル孔調整片の位置決め凸部または位置決め凹部を、ノズル本体の位置決め凸部または位置決め凹部に押付ける押圧手段とを備え、溶融めっき金属の浴面上方で、浴中を通過して上方に搬送される金属帯の板面に、前記ノズル孔からガスを噴射して、金属帯にめっきされた過剰なめっき金属を吹払するめっき厚調整用ガス噴射ノズルにおいて、
ノズル孔調整片は、無電解めっきが施されていることを特徴とするめっき厚調整用ガス噴射ノズル。
【0025】
また本発明は、前記無電解めっきが、無電解ニッケルめっきであることを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、ノズル本体に着脱自在に装着されるノズル孔調整片は、無電解めっき、好ましくは無電解ニッケルめっきが施される。無電解めっきは、電気を用いることなく、たとえば金属塩溶液中の金属イオンを置換、酸化、還元などの反応を利用して析出させてめっき層を形成するものである。したがって、ノズル孔調整片の形状に関らず、ノズル孔調整片の全表面にほぼ均一な厚みでめっき層を形成することができる。このことによって、めっき厚みの差異に起因するノズル孔調整片の局所的な変位や変形が防止されるので、ノズル孔から噴射されるガスの動圧の局所的な低下が防止され、その結果、線状オーバーコートの発生が防止される。
【0027】
さらに無電解めっきとして、無電解ニッケルめっきを行なうとき、ニッケルめっき層の硬さが高いので、特にニッケルめっき層形成後にベーキング処理することによって一層硬さを高くすることができるので、ノズル孔調整片の着脱時におけるすり疵やかき疵の発生が防止され、これらの疵に起因するノズル孔から噴射されるガスの動圧の局所的な低下、すなわち線状オーバーコートの発生が防止される。
【0028】
また本発明は、前記押圧手段は、前記ノズル本体と前記ノズル孔調整片との間に着脱可能に挿入され、
ノズル本体にノズル孔調整片と押圧手段とを装着した状態で、ノズル孔調整片の押圧手段に当接する面には、切欠部が形成されることを特徴とする。
【0029】
本発明に従えば、ノズル本体にノズル孔調整片と押圧手段とを装着した状態でノズル孔調整片の押圧手段に当接する面には、予め切欠部が形成される。このことによって、ノズル孔調整片2が周辺の構造物や装置に対して衝撃的に接触して最も損傷変形しやすい部位であるノズル孔調整片が押圧手段に当接する面の下部が、損傷変形した場合であっても、損傷変形で形成される突出部の突出高さが、切欠部の切欠深さの範囲内にとどまる。したがって、ノズル孔調整片が、押圧手段によって局所的に強く押圧されることがなくなるので、ノズル孔から噴射されるガスの動圧の局所的な低下が防止され、線状オーバーコートの発生が防止される。
【0030】
また本発明は、前記ノズル孔調整片は、
金属帯の幅方向中央部付近に互いに対向する一方の面と他方の面とが平行に形成される平行部と、平行部の金属帯幅方向両側に平行部に連なり平行部から離反するのに伴って一方の面が他方の面に近接するように形成されるテーパ部とを有し、
平行部とテーパ部との境界部が、曲率を有するように曲面加工されていることを特徴とする。
【0031】
本発明に従えば、ノズル孔調整片の平行部とテーパ部との境界部が、曲率を有するように曲面加工されるので、境界部に相当する部分のガスの動圧低下が防止され、線状オーバーコートの発生が防止される。
【0032】
また本発明は、前記ノズル孔調整片には、ノズル本体に装着された状態でノズル本体と当接する面に、粉体状の潤滑剤が塗布されることを特徴とする。
【0033】
また本発明は、前記粉体状の潤滑剤は、2硫化モリブデンおよび黒鉛より選択される1種または2種であることを特徴とする。
【0034】
本発明に従えば、ノズル孔調整片には、ノズル本体に装着された状態でノズル本体と当接する面に、粉体状の潤滑剤、好ましくは2硫化モリブデンおよび黒鉛より選択される1種または2種が塗布されるので、ノズル孔調整片をノズル本体に着脱させるとき、当接面の摩擦力を極めて低く抑制して着脱させることができる。したがって、前記当接面におけるすり疵やかき疵の発生を抑制し、これらの疵に起因する線状オーバーコートの発生を防止することができる。
【0035】
また潤滑剤は粉体状のものが用いられる。めっき厚調整用ガス噴射ノズルは、操業時、溶融めっき金属でめっきされたばかりのたとえば鋼帯からの輻射熱によって、400℃ないしそれ以上の温度に加熱されるので、潤滑剤が液体やペーストでは、液体成分が熱によって気化し、気化成分が鋼帯表面のめっき層に品質上の悪影響を及ぼす。しかしながら、固体である粉体状潤滑剤であれば、耐熱性を備え、加熱された場合であっても、品質上有害な成分を発生することなく、健全なめっき鋼帯を製造することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態であるめっき厚調整用ガス噴射ノズル40の構成を簡略化して示す側面図であり、図2は図1に示すめっき厚調整用ガス噴射ノズル40に備わるノズル孔調整片41の斜視図であり、図3はノズル孔調整片41の断面図である。めっき厚調整用ガス噴射ノズル40(以後、ガス噴射ノズル40と略称する)は、大略ノズル本体42と、ノズル孔調整片41と、押圧手段43と、整流棒44と、シム73とを含んで構成される。ガス噴射ノズル40は、溶融めっき金属の浴面上方で、浴中を通過して上方に搬送される金属帯たとえば鋼帯の板面に、ガスを噴射して、鋼帯にめっきされた過剰なめっき金属を吹払し、めっき厚を調整することに用いられる。めっき厚調整のための溶融めっき金属、鋼帯およびガス噴射ノズル40の全体構成は、前述の図5と同一であるので説明を省略する。
【0037】
ノズル本体42は、ノズル孔45を境にして上下に分割されており、上ノズル本体46と下ノズル本体47とを含んで構成される。上ノズル本体46は、図示を省略する鋼帯の幅方向(以後、幅方向と略称する)に延びる部材であり、その軸直角断面形状は大略的に嘴状である。上ノズル本体46の先端部48は、鋼帯を臨んで設けられており、先端部48の第1下面49は水平面にほぼ平行に形成されている。第1下面49は、ノズル孔45の一方の内面、すなわちノズル孔45の上面を形成する。前記先端部48付近の鋼帯を臨む外面50は、鋼帯に近付くにつれて下方に傾斜し、その傾斜角度は、予め定める角度に設定される。
【0038】
上ノズル本体46には、前記第1下面49に連なる溝51と、ガス供給路52とが形成されている。溝51は、前記第1下面49に連なるように形成され、幅方向に延びており、ガス供給室を形成する。ガス供給路52は、上ノズル本体46の後端面53に形成されている切欠溝54と、前記溝51とを連通する連通孔であり、幅方向に間隔をあけて複数個形成されている。上ノズル本体46の後端部55の第2下面56は、水平面にほぼ平行に形成されており、前記第1下面49と同一面内に存在する。上ノズル本体46の後端部55には、上下方向に延びる第1ボルト挿通孔57と、水平方向に延びる第2ボルト挿通孔58とが形成されている。
【0039】
下ノズル本体47は、幅方向に延びる部材であり、その軸直角断面形状は大略的に嘴状である。下ノズル本体47の先端部59は、鋼帯を臨んで設けられており、先端部59の上面である第1上面60は水平面にほぼ平行に形成されている。第1上面60は、ノズル孔調整片41の位置決め面を形成するので、以後、第1位置決め面60と呼ぶ。第1位置決め面60には、幅方向に延びる浅溝61が形成されている。
【0040】
下ノズル本体47の先端部59には、略V字状の位置決め凸部62が形成されており、前記先端部59と下ノズル本体47の後端部63との中間には幅方向に延びる嵌合溝64が形成されている。位置決め凸部62は、嵌合溝64内に突出しており、かつ幅方向に延びている。位置決め凸部62は、前記第1位置決め面60と、第2位置決め面65とを有し、第2位置決め面65は、鋼帯に近付くにつれて下方に傾斜している。第1位置決め面60と、第2位置決め面65とのなす角度は鋭角である。嵌合溝64の先端部59側第1側面66は、鋼帯の板面に対してほぼ平行になるように形成されている。これに対して、後端部63側の嵌合溝64の第2側面67は、鋼帯の板面に対して傾斜しており、その傾斜面は本実施の形態では鋼帯の幅方向一端部から他端部に向かうにつれて鋼帯の板面に近付くように形成されている。
【0041】
嵌合溝64の底面68は、水平面にほぼ平行に形成されている。下ノズル本体47の先端部59の鋼帯を臨む外面69は、鋼帯に近付くにつれて上方に傾斜し、その傾斜角度は予め定める角度に設定される。下ノズル本体47の後端部63には、上下方向に延びる第3ボルト挿通孔70と、水平方向に延びる第4ボルト挿通孔71とが幅方向に間隔をあけて複数個形成されている。第3ボルト挿通孔70は、前記第1ボルト挿通孔57と対応する位置に形成されている。下ノズル本体47の後端部63の第2上面72は、水平面にほぼ平行に形成されている。
【0042】
これらの上ノズル本体46および上ノズル本体47は、たとえば鋼製であり、鋼よりも軟質のたとえば黄銅などからなるシム73を、上ノズル本体46の第2下面56と下ノズル本体47の第2上面72とに間挿し、第1ボルト挿通孔57と第3ボルト挿通孔70とにボルト74を挿通しナット75を螺合させることによって、一体的に固定される。このとき、上ノズル本体46と下ノズル本体47との間には、シム73が介在するので、ボルト74とナット75との締付け力が接触面全域に均等に及ぶので、締付け後のがたつきが防止される。
【0043】
ノズル孔調整片41は、幅方向に延びる部材であり、その軸直角断面形状は大略的にL字状である。ノズル孔調整片41の下部には、略V字状の位置決め凹部81が形成されている。位置決め凹部81は、前記第1位置決め面60に当接する第3位置決め面82と、前記第2位置決め面65に当接する第4位置決め面83と、谷底面84とを有している。前記第3位置決め面82は、ノズル孔調整片41の先端部85の第3下面であり、水平面にほぼ平行に形成されている。第4位置決め面83は、鋼帯に近付くにつれて下方に傾斜している。第3位置決め面82と、第4位置決め面83とのなす角度は鋭角であって、かつ前記第1位置決め面60と第2位置決め面65とのなす角度と同一である。
【0044】
したがって、ノズル孔調整片41は、位置決め凹部81および位置決め凸部62の対応する各位置決め面を相互に当接させて幅方向に摺動させることができる。またこれによって、ノズル孔調整片41を下ノズル本体47に挿入して装着させることができ、逆にノズル孔調整片41を下ノズル本体47から離脱させることができる。さらに第1位置決め面60に浅溝61が形成されているので、第1位置決め面60と第3位置決め面82とを均一に接触させることができる。
【0045】
ノズル孔調整片41の先端部85の第3上面86は、前記装着時にノズル孔45の他方の内面、すなわちノズル孔45の下面を形成する。ノズル孔調整片41の先端部85の鋼帯を臨む外面87は、鋼帯5に近付くにつれて上方に予め定める角度で傾斜し、前記下ノズル本体47の外面69とほぼ同一面内に存在する。ノズル孔調整片41の後端部88の第4上面89は、前記第3上面86よりも下方に段差をつけて形成されており、ガス供給室を形成する。前記第4上面89および前記後端部88の第4下面90は、水平面にほぼ平行に形成されている。位置決め凹部81の谷底面84、第4位置決め面83に連なる第3側面91およびノズル孔調整片41の後端部88側第4側面92は、ともに鋼帯の板面にほぼ平行に形成されている。
【0046】
さらに第4側面92の下部には、段差を有する切欠部93が形成され、切欠部93を構成する切欠面94は、第4側面92とほぼ平行に形成される。第4側面92と切欠面94との間に形成される段差の寸法は、特に限定されることはないけれども、好ましい範囲を例示すれば0.1〜0.5mmである。
【0047】
ノズル孔調整片41にこのような切欠部93を形成しておくことによって、ノズル孔調整片41が周辺の構造物や装置に対して衝撃的に接触して、切欠面94の下部が、損傷変形して突出部が形成された場合であっても、突出部の突出高さが、切欠部93の切欠深さである段差寸法内にとどまるので、ノズル孔調整片41が、後述する押圧手段43によって局所的に強く押圧されることがなくなるので、ノズル孔45から噴射されるガスの動圧の局所的な低下が防止される。
【0048】
ノズル孔調整片41は、たとえばノズル本体42と同様に鋼製であり、前述のような形状に成形加工された後、無電解ニッケルめっきが施され、さらにめっき後、約400℃で1hrのベーキングと呼ぶ熱処理が施される。
【0049】
無電解ニッケルめっきは、公知の方法が用いられてよい。たとえば、硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、乳酸等を含む溶液を作成し、90℃程度に加温した溶液中にノズル孔調整片41を浸漬してニッケルめっきする。形成されるめっき層は、厳密にはニッケル(Ni)とリン(P)との合金めっきである。めっき層は、Ni−Pの析出状態で、ビッカース硬さ(HV)が500〜550であり、前述のベーキング処理を行なうことによって、さらに硬化して、硬質Crめっきに匹敵する700〜1000HVを有するようになる。なお、無電解ニッケルめっきは、ノズル孔調整片41だけでなく、ノズル本体42にも施されてよい。前述のように、ニッケルめっき層は、硬さが硬いので、ノズル孔調整片41をノズル本体42に着脱する際、ノズル孔調整片の第3および第4位置決め面82,83と、下ノズル本体47の第1および第2位置決め面60,65とが、互いに擦過されても、すり疵やかき疵の発生が防止される。
【0050】
さらに図3は、無電解ニッケルめっきされたノズル孔調整片41の断面図である。無電解ニッケルめっきは、電気を用いることがなく化学的な析出現象を用いるので、ノズル孔調整片41は、凸部や凹部の形成される複雑な形状を有するけれども、形状に関らずほぼ均一な層厚でニッケルめっき層95が、形成される。たとえば、めっき層厚が10〜20μmを目標にして無電解ニッケルめっきを施す場合、目標厚みに対するばらつきが±1.0μmをはるかに下回る程度であり、極めて均一厚みのめっき層が得られる。したがって、めっき厚みの差異に起因するノズル孔調整片41の局所的な変位や変形が防止されるので、ノズル孔45から噴射されるガスの動圧の局所的な低下が防止され、線状オーバーコートの発生が防止される。また、均一な厚みのめっきが可能になるので、ノズル孔調整片41製作時の加工精度が最終めっき工程で崩れることなく、製作管理が容易である。
【0051】
押圧手段43は、楔片43である。楔片43は、幅方向に延びる先細状の角形棒状体であり、ノズル孔調整片41の第4側面92に当接する第5側面101と、下ノズル本体47の嵌合溝64の第2側面67に当接する第6側面102と、前記嵌合溝64の底面68に当接する第5下面103と、第5上面104とを有する。第5側面101は、鋼帯の板面にほぼ平行に形成されており、第5下面103および第5上面104は水平面にほぼ平行に形成されている。これに対して、第6側面102は幅方向一端部から他端部に向かうにつれて鋼帯に近付くように傾斜している。第5側面101と第6側面102とのなす角度は、前記嵌合溝64の第2側面67の板面に対する傾斜角と同一である。
【0052】
したがって、楔片43はノズル孔調整片41の第4側面92と、下ノズル本体47の第2側面67との間に着脱可能に挿入することができる。また、楔片43を挿入して幅方向他端部に向けて押し込み、第5側面101、第6側面102および第5下面103をともに対応する当接面に接触する状態にすれば、楔片43は楔効果によってノズル孔調整片41に鋼帯の板面に垂直な方向の押圧力を付与することができる。この結果、ノズル孔調整片41を下ノズル本体47に前記位置決め凸部62および位置決め凹部81を介して確実に固定することができる。さらに楔片43を幅方向に引抜けば前記押圧力を開放することができるので、ノズル孔調整片41を下ノズル本体47から容易に離脱させることができる。
【0053】
ノズル孔調整片41を下ノズル本体47に着脱するに際しては、ノズル孔調整片41の第3および第4位置決め面82,83に、粉体状の潤滑剤である2硫化モリブデンおよび黒鉛より選択される1種または2種を、予め塗布しておくことが好ましい。また粉体状の潤滑剤には、2硫化モリブデンがより好適に用いられる。第3および第4位置決め面82,83に、たとえば2硫化モリブデンを予め塗布しておくことによって、第3および第4位置決め面82,83と、下ノズル本体47の第1および第2位置決め面60,65との、着脱時における摩擦力が著しく軽減されるので、すり疵やかき疵の発生が防止される。
【0054】
図4は、本発明の実施の他の形態のガス噴射ノズルに備えられるノズル孔調整片110を鋼帯の板面側から見た正面図である。図4(a)は、ノズル孔調整片110の全体を示し、図4(b)は、図4(a)のA部を拡大して示す。本実施の形態に用いられるノズル孔調整片110は、先の実施の形態のノズル孔調整片41に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0055】
ノズル孔調整片110は、先の実施の形態のノズル孔調整片41と同様に、幅方向中央部付近において互いに対向する第3位置決め面82と第3上面86すなわちノズル孔45の下面とが平行に形成される平行部111と、平行部111の幅方向両側に平行部111に連なり平行部111から離反するのに伴って第3上面86が第3位置決め面82に近接するように形成されるテーパ部112とを有する。本実施の形態のノズル孔調整片110において注目すべきは、平行部111とテーパ部112との境界部113が、曲率を有するように曲面加工されていることである。
【0056】
この境界部113に施される曲面加工は、たとえば、テーパ部112の勾配が(0.25mm/100mm)であるとき、その曲率半径(R)が、100R以上、特に好ましくは150Rに施される。このことによって、ノズル孔45の境界部113に相当する部位から噴出されるガスの動圧低下が顕著に抑制されるので、線状オーバーコートの発生が防止される。なお、動圧低下に効果を発現することのできる曲率半径(R)は、テーパ部112の勾配に応じて異なるけれども、これらは各種のテーパ勾配に対して種々に異なる曲率半径(R)の加工を施し、予め動圧を測定する試験を実施することによって、テーパ勾配毎の好適な曲率半径(R)を定めることができる。
【0057】
(実施例)
以下本発明の実施例について説明する。本実施例では、日本工業規格(JIS)G3314に規定される溶融アルミめっき鋼帯の製造に際し、従来例に示すガス噴射ノズル1と、本発明の実施の形態に示すガス噴射ノズルとを、それぞれ用いてめっき厚の調整を行なった。したがって、本実施例の試験鋼帯には、JISに規定される範囲内で、種々の板厚、鋼帯幅およびめっき付着量のものが含まれる。
【0058】
実施例1として、無電解ニッケルめっきを施し、楔片43に対する当接面である第4側面92の下部に切欠部93を形成し、下ノズル本体47との当接面に潤滑剤として2硫化モリブデンを塗布したノズル孔調整片41を備えるガス噴射ノズル40を用いた。実施例2として、テーパ部112と平行部113との境界部113に150Rの曲面加工を施したノズル孔調整片110を備えるガス噴射ノズルを用いた。なお実施例2では、境界部113に曲面加工を施した以外は、従来のガス噴射ノズル1と同一の構成を有するガス噴射ノズルを用いた。比較例として、前述の従来例に示すガス噴射ノズル1を用いた。
【0059】
ガス噴射ノズルの性能評価は、異常鋼帯の発生率を求めることによって行なった。ここで、異常鋼帯の発生率とは、製造後の溶融亜鉛めっき鋼帯を目視検査し、各ガス噴射ノズルを用いた場合について、線状オーバーコートが発生したことによって品質不良と判定された鋼帯数と、試験期間中に製造した鋼帯数との比を、百分率で表したものである。
【0060】
異常鋼帯の発生率は、実施例1および実施例2と比較例との対比を明瞭にするために、線状オーバーコートの発生原因別、すなわち境界部の動圧低下に起因するものと、ノズル孔調整片のすり疵、かき疵、あたり疵および/またはノズル本体のすり疵、かき疵に起因するものとの、原因別に異常鋼帯の発生率をとり、評価した。
【0061】
試験結果を表1に示す。比較例では、境界部形状起因の動圧低下による異常鋼帯の発生率が4%であるけれども、実施例2では0%に改善された。また比較例では、すり疵やかき疵起因の動圧低下による異常鋼帯の発生率が1%であるけれども、実施例1では0%に改善された。このように、ノズル孔調整片に無電解ニッケルめっきを施し、切欠部を形成し、ノズル本体に対する着脱に備えて潤滑剤を塗布し、またノズル孔調整片の境界部に曲面加工を施すことが、ノズル孔から噴射されるガスの動圧の局所的低下を防止して線状オーバーコートの発生を防止することに極めて効果的であることを明らかにした。
【0062】
【表1】
Figure 2005029822
【0063】
以上に述べたように、本実施の形態では、金属帯は、溶融アルミめっき鋼帯であるけれども、これに限定されることなく、溶融アルミ合金めっき鋼帯でもよく、溶融亜鉛めっき鋼帯でもよく、溶融亜鉛合金めっき鋼帯でもよく、また他の溶融金属がめっきされる鋼帯であってもよく、さらに鋼帯以外の金属帯であってもよい。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、ノズル本体に着脱自在に装着されるノズル孔調整片は、無電解めっき、好ましくは無電解ニッケルめっきが施される。無電解めっきは、電気を用いることなく、たとえば金属塩溶液中の金属イオンを置換、酸化、還元などの反応を利用して析出させてめっき層を形成するものである。したがって、ノズル孔調整片の形状に関らず、ノズル孔調整片の全表面にほぼ均一な厚みでめっき層を形成することができる。このことによって、めっき厚みの差異に起因するノズル孔調整片の局所的な変位や変形が防止されるので、ノズル孔から噴射されるガスの動圧の局所的な低下が防止され、その結果、線状オーバーコートの発生が防止される。
【0065】
さらに無電解めっきとして、無電解ニッケルめっきを行なうとき、ニッケルめっき層の硬さが高いので、特にニッケルめっき層形成後にベーキング処理することによって一層硬さを高くすることができるので、ノズル孔調整片の着脱時におけるすり疵やかき疵の発生が防止され、これらの疵に起因するノズル孔から噴射されるガスの動圧の局所的な低下、すなわち線状オーバーコートの発生が防止される。
【0066】
また本発明によれば、ノズル本体にノズル孔調整片と押圧手段とを装着した状態でノズル孔調整片の押圧手段に当接する面には、予め切欠部が形成される。このことによって、ノズル孔調整片2が周辺の構造物や装置に対して衝撃的に接触して最も損傷変形しやすい部位であるノズル孔調整片が押圧手段に当接する面の下部が、損傷変形した場合であっても、損傷変形で形成される突出部の突出高さが、切欠部の切欠深さの範囲内にとどまる。したがって、ノズル孔調整片が、押圧手段によって局所的に強く押圧されることがなくなるので、ノズル孔から噴射されるガスの動圧の局所的な低下が防止され、線状オーバーコートの発生が防止される。
【0067】
また本発明によれば、ノズル孔調整片の平行部とテーパ部との境界部が、曲率を有するように曲面加工されるので、境界部に相当する部分のガスの動圧低下が防止され、線状オーバーコートの発生が防止される。
【0068】
また本発明によれば、ノズル孔調整片には、ノズル本体に装着された状態でノズル本体と当接する面に、粉体状の潤滑剤、好ましくは2硫化モリブデンおよび黒鉛より選択される1種または2種が塗布されるので、ノズル孔調整片をノズル本体に着脱させるとき、当接面の摩擦力を極めて低く抑制して着脱させることができる。したがって、前記当接面におけるすり疵やかき疵の発生を抑制し、これらの疵に起因する線状オーバーコートの発生を防止することができる。
【0069】
また潤滑剤は粉体状のものが用いられる。めっき厚調整用ガス噴射ノズルは、操業時、溶融めっき金属でめっきされたばかりのたとえば鋼帯からの輻射熱によって、400℃ないしそれ以上の温度に加熱されるので、潤滑剤が液体やペーストでは、液体成分が熱によって気化し、気化成分が鋼帯表面のめっき層に品質上の悪影響を及ぼす。しかしながら、固体である粉体状潤滑剤であれば、耐熱性を備え、加熱された場合であっても、品質上有害な成分を発生することなく、健全なめっき鋼帯を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態であるめっき厚調整用ガス噴射ノズル40の構成を簡略化して示す側面図である。
【図2】図1に示すめっき厚調整用ガス噴射ノズル40に備わるノズル孔調整片41の斜視図である。
【図3】ノズル孔調整片41の断面図である。
【図4】本発明の実施の他の形態のガス噴射ノズルに備えられるノズル孔調整片110を鋼帯の板面側から見た正面図である。
【図5】従来技術のめっき厚調整用ガス噴射ノズル1の側面図である。
【図6】各鋼帯幅毎に適正なテーパを有するノズル孔調整片2の正面図である。
【図7】すり疵またはかき疵の発生に起因する動圧低下の状態を示す図である。
【図8】Crめっき17の施されたノズル孔調整片2の断面図である。
【図9】損傷を受けたノズル孔調整片2の事例を示す図である。
【図10】ノズル孔調整片2に形成された突出部27に起因する動圧低下の状態を示す図である。
【図11】従来のめっき厚調整用ガスノズル1における動圧測定結果を示す図である。
【符号の説明】
40 めっき厚調整用ガス噴射ノズル
41,110 ノズル孔調整片
42 ノズル本体
43 楔片
44 整流棒
45 ノズル孔
46 上ノズル本体
47 下ノズル本体
60 第1位置決め面
65 第2位置決め面
82 第3位置決め面
83 第4位置決め面
93 切欠部
95 Niめっき層
111 平行部
112 テーパ部
113 境界部

Claims (6)

  1. 位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方を有し、金属帯の幅方向に延びるノズル孔の一方の内面を形成するノズル本体と、前記ノズル本体の位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方に当接する位置決め凹部または位置決め凸部を有し、ノズル本体に着脱可能に挿入され、ノズル孔の他方の内面を形成するノズル孔調整片と、ノズル孔調整片の位置決め凸部または位置決め凹部を、ノズル本体の位置決め凸部または位置決め凹部に押付ける押圧手段とを備え、溶融めっき金属の浴面上方で、浴中を通過して上方に搬送される金属帯の板面に、前記ノズル孔からガスを噴射して、金属帯にめっきされた過剰なめっき金属を吹払するめっき厚調整用ガス噴射ノズルにおいて、
    ノズル孔調整片は、無電解めっきが施されていることを特徴とするめっき厚調整用ガス噴射ノズル。
  2. 前記無電解めっきが、
    無電解ニッケルめっきであることを特徴とする請求項1記載のめっき厚調整用ガス噴射ノズル。
  3. 前記押圧手段は、前記ノズル本体と前記ノズル孔調整片との間に着脱可能に挿入され、
    ノズル本体にノズル孔調整片と押圧手段とを装着した状態で、ノズル孔調整片の押圧手段に当接する面には、
    切欠部が形成されることを特徴とする請求項1または2記載のめっき厚調整用ガス噴射ノズル。
  4. 前記ノズル孔調整片は、
    金属帯の幅方向中央部付近に互いに対向する一方の面と他方の面とが平行に形成される平行部と、平行部の金属帯幅方向両側に平行部に連なり平行部から離反するのに伴って一方の面が他方の面に近接するように形成されるテーパ部とを有し、
    平行部とテーパ部との境界部が、曲率を有するように曲面加工されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のめっき厚調整用ガス噴射ノズル。
  5. 前記ノズル孔調整片には、
    ノズル本体に装着された状態でノズル本体と当接する面に、粉体状の潤滑剤が塗布されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のめっき厚調整用ガス噴射ノズル。
  6. 前記粉体状の潤滑剤は、
    2硫化モリブデンおよび黒鉛より選択される1種または2種であることを特徴とする請求項5記載のめっき厚調整用ガス噴射ノズル。
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