JP2005029419A - 断熱性耐火物の吹付け施工方法およびそれに使用する吹付け施工用断熱性耐火物 - Google Patents
断熱性耐火物の吹付け施工方法およびそれに使用する吹付け施工用断熱性耐火物 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】吹付材の付着性、接着性、保存性及び安全性に優れた効果を発揮する断熱性耐火物の吹付け施工方法およびそれに使用する吹付け施工用断熱性耐火物を提供する。
【解決手段】耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付耐火物を、圧送ポンプ1でノズル2に送り、ノズル部あるいはノズル部の後方において石灰乳を添加して吹付ける、断熱性耐火物の吹付け施工方法である。また、耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付材であって、その後に添加された石灰乳で急結される吹付け施工用断熱性耐火物である。
【選択図】 図1
【解決手段】耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付耐火物を、圧送ポンプ1でノズル2に送り、ノズル部あるいはノズル部の後方において石灰乳を添加して吹付ける、断熱性耐火物の吹付け施工方法である。また、耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付材であって、その後に添加された石灰乳で急結される吹付け施工用断熱性耐火物である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、断熱性耐火物の吹付け施工方法とそれに使用する吹付け施工用断熱性耐火物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミナ−シリカ質繊維等の耐火性無機繊維を主材とした断熱性耐火物を、吹付け施工することが知られている。吹付け施工は鋳込みと違って型枠を必要とせず、施工が迅速かつ容易である。
【0003】
耐火物の吹付け施工は大別して乾式法と湿式法とがある。乾式法は、吹付材を水分を添加しない粉末状態でノズルに送り出し、ノズル部で水分を添加して吹付ける。湿式法は予め水分を添加した吹付材をノズルに送り、吹付ける。また、他の湿式法として、予め水分を添加した吹付材をノズルに送り、ノズル部で急結剤を添加して吹付ける方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
乾式法は水分添加がノズル部で行われ、吹付材が十分に湿潤されないまま吹付けられるため、発塵が著しい。断熱性不定形耐火物の吹付けでは耐火性無機繊維が飛散する。そこで、断熱性耐火物の吹付け施工は作業環境上の面から湿式法が好ましい。
【0005】
断熱性耐火物の湿式吹付け施工方法として、従来、耐火性無機繊維に耐火性超微粉、コロイダルシリカ、有機増粘剤および水を添加した吹付材を使用する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−284583号公報(第1−6頁)
【0007】
【特許文献2】
特開平9−87046号公報(第1−6頁)
【0008】
【発明が解決しょうとする課題】
断熱性耐火物の吹付け施工において、前記の従来法は湿式法であることで発塵の問題がない。しかし、吹付材の付着性(吹付け時の、跳ね返り・ダレ落ち難さ)・接着性(付着後の吹付材の剥がれ難さ)は決して十分なものではない。例えば、垂直面に対する施工厚さは50mm程度が限度であって、それを超えるとダレ落ちによって付着率が大幅に低下する。天井面に対する厚手の施工はさらに困難である。
【0009】
付着性・接着性の向上を図るために、前記吹付材に硬化剤として例えばアルミナセメントの添加が考えられる。しかし、湿式法の施工においてアルミナセメントを添加した吹付材は、水分添加で泥しょう状に調整した直後から固化が進行し、例えば常温下で6時間以内といった短時間でノズルへの圧送が困難となる。また、泥しょう状に調整した直後に施工したとしても、固化の進行で被施工面上での吹付材の広がりに欠けるためか、付着性・接着性に劣る。
【0010】
水分添加後に固化が早い吹付材の湿式吹付け施工では、泥しょう状に調整後、直ちに吹付ける必要がある。そのためには、吹付材は吹付け施工現場で水分を添加し、泥しょう状に調整する必要である。しかし、施工現場の限られたスペースに吹付材を泥しょう状に調整するための混練装置等の設置は、吹付け施工作業の弊害となる。しかも、吹付材の調整と吹付け施工を並行して行うことになり、施工作業が煩雑となる。
【0011】
また、固化の早い吹付材は、泥しょう状に調整しての造り置きができないことから、泥しょう状の吹付材を一度に多量に製造することができず、吹付材の生産性に劣る。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点を解決した断熱性耐火物の吹付け施工方法およびそれに使用する吹付け施工用断熱性耐火物を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付耐火物を、圧送ポンプでノズルに送り、ノズル部あるいはノズル部の後方において石灰乳を添加して吹付ける、断熱性耐火物の吹付け施工方法である。また、耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付材であって、その後に添加された石灰乳で急結される吹付け施工用断熱性耐火物である。
【0014】
本発明は泥しょう状に調整した吹付材の固化を、吹付材に含まれるコロイダルシリカと、施工時にノズル部あるいはノズル部の後方において添加する石灰乳と相互作用によって行う。すなわち、コロイダルシリカを含む吹付材が石灰乳によってpHが高くなり、強アルカリ性に移行するに伴い、コロイダルシリカ中のシリカ粒子の反発力が低下することでコロイダルシリカがゲル化し、吹付材が急結固化する。このゲル化は石灰乳の添加で急激に生じ、吹付材の付着性・接着性に優れた効果を発揮する。
【0015】
特許文献1のとおり、湿式法においてノズル部で急結剤を添加する施工方法が知られている。ここで使用される急結剤は、従来から種々のものが提案されている。例えば、ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム、リン酸ソーダが一般的である。
【0016】
これらの急結剤は強アルカリのために人体の皮膚に接触すると皮膚が火傷に似た症状となり、安全衛生面で好ましくない。これに対し、本発明で急結剤として使用する石灰乳は人体にやさしく、安全衛生面での問題がない。
【0017】
耐火性無機繊維の材質は、耐火性・経済性の面から一般にアルミナ−シリカ質あるいはアルミナ−シリカ−ジルコニア質のシリカ含有質の繊維が使用される。これらのシリカ含有質繊維は比較的融点が低く、しかも繊維のために比表面積が大きいことで高温下で長期使用すると繊維同士が融着する問題がある。また、急結剤に強アルカリのケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム、リン酸ソーダ等の使用は高温下で繊維同士の融着を助長させる。繊維同士の融着は断熱性耐火物に必要な断熱性が損なわれる。
【0018】
本発明では、急結剤として使用する石灰乳の水酸化カリシウム成分とコロイダルシリカのシリカとが高温下において反応し、繊維間に高融点の2CaO・SiO2を生成することによって繊維同士の溶着を防止し、吹付け施工体の断熱性を長期にわたって維持させる効果がある。
【0019】
本発明で使用する泥しょう状に調整した吹付材は、pHを6〜11としたことで泥しょう状での長時間の保存が可能となる。pHがこの数値範囲より小さくても大きくても、泥しょう状の吹付材は安定性に欠け、早期に固化が進行し、施工性・保存性に欠ける。また、これが強アルカリまたは強酸の場合は、容器あるいは施工装置の腐食原因となると共に、施工作業において安全衛生上の問題がある。
【0020】
本発明に使用する吹付材は、予め泥しょう状に調整後も長時間に固化しないことで、予め泥しょう状に調整した吹付材を必要量のみ施工現場に搬入しての施工が可能となり、吹付材の混練作業等の調整を施工現場で行う必要がない。また、その保存性の良さから、泥しょう状の調整作業を一度に多量に行うことができ、吹付材の生産性が向上する。
【0021】
湿式吹付け施工の急結剤の一例として消石灰スラリー(石灰乳)が既に知られている。従来方法における急結剤は、消石灰スラリーの場合も含め、セメント系吹付材においてセメントおよび耐火性超微粉の凝集を目的としており、コロイダルシリカをアルカリ性移行し、ゲル化させる本発明とはその急結機構が異なる。しかも、セメント系吹付材は泥しょう状に調整後、短時間のうちに固化が進行し、6時間程度で既にノズルに圧送できなくなり、施工性と吹付材の保存性に劣る。また、吹付材を泥しょう状に調整後、直ちに施工した場合でも固化の進行のために付着性・施工性において十分なものではない。
【0022】
特許文献2に示される吹付材はコロイダルシリカを含んでいる。しかし、この材質での付着性の付与は有機増粘剤で行うものであり、急結作用がないために十分な付着性が得られない。そこで、付着性改善のために有機増粘剤の添加量を増すことが考えられるが、有機増粘剤の添加量が多くなると、吹付材は粘性が高くなってノズルへの圧送が困難となる。しかも、ここでのコロイダルシリカは吹付け施工後、乾燥に伴うゲル化作用で施工体に接着性を付与するものであり、吹付け直後にはコロイダルシリカのゲル化作用が生じなために、厚手の吹付け施工体の形成は困難である。
【0023】
本発明で使用する吹付材は、泥しょう状に調整後のちょう度が150〜250(JIS R2506−1985に準ずる測定)であることが好ましい。ちょう度は混練物の硬さの測定単位である。ちょう度の数値は、大きいほど材料がやわらかく、小さいほど材料が硬い。例えば特許文献1に示される湿式吹付け施工では、急結剤を添加しないために、ちょう度が250を超える吹付材はダレ落ちによって付着性が低下する。
【0024】
本発明で使用する吹付材は大きなちょう度であっても、施工直後の急激なゲル化によって十分な付着性が得られる。ちょう度が大きい吹付材は被施工面上でのでの広がり易さで付着性および接着性に優れた効果を発揮する。
【0025】
本発明で使用する吹付材は、耐火性無機微粉を使用しないか、使用してもその使用量が少ないことが好ましい。耐火性無機微粉を使用する場合、その使用量は泥しょう状に調整した後の吹付材に占める割合で10質量%以下が好ましく、さらに好ましくは5質量%以下である。耐火性無機微粉は耐火性無機繊維間に充填されることから、耐火性無機微粉が多くなると耐火性無機繊維間の空隙率の低減によって、施工体の断熱性が低下する。また、耐火性超微粉が多いと吹付材の重量が増し、吹付材の施工時のダレ落ち原因となる。
【0026】
本発明で急結剤として使用する石灰乳は、本発明の効果を損なわない範囲で他の物質を添加してもよい。石灰乳に例えば塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムを添加すると、吹付材の付着性がさらに向上する。これはコロイダルシリカと石灰乳の反応による吹付材の固化に比べ、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムが作用した吹付材の凝集作用が早いことによる。
【0027】
塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムを含む石灰乳は、その凝集作用で吹付材を施工面に確実に留めた上で、コロイダルシリカと石灰乳との反応による固化が進行することによって、接着性についてもさらに向上する。また、この塩化カルシウム、硝酸カルシウムは共に人体にやさしく、安全衛生面での問題もない。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明において、吹付材組成の主材となる耐火性無機繊維は、従来の断熱性耐火物に使用されている材質と同様のもので足りる。例えばアルミナ−シリカ質、アルミナ−シリカ−ジルコニア質、シリカ質、セピオライト、岩綿等の耐火性無機繊維が使用できる。中でも耐熱性および経済性を兼ね備えたアルミナ−シリカ質あるいはアルミナ−シリカ−ジルコニア質が好ましい。
【0029】
アルミナ−シリカ質あるいはアルミナ−シリカ−ジルコニア質の繊維形状は、バルク状、チョップド状、粒状(カール状)等がある。このうち、解砕分散が容易なバルク状あるいは粒状の使用が好ましい。
【0030】
耐火性無機繊維の使用量は泥しょう状に調整した吹付材に占める割合で7〜40質量%が好ましい。さらに好ましくは10〜30質量%である。耐火性無機繊維の割合が少ないと断熱性耐火物の特性である断熱性が損なわれる。多過ぎると泥しょう状の吹付材中において水分と繊維とが分離し、均一な施工体が得られ難い。
【0031】
コロイダルシリカはシリカ超微粒子をコロイド状に分散させた水溶液である。コロイドシリカ、シリカゾルとも称される。市販品から得ることができる。シリカ超微粒子の粒径は例えば50nm以下のものが好ましく、例えば10〜20nmとする。市販品そのままを使用してもよく、さらに水分を添加して薄めてもよい。
【0032】
コロイダルシリカはその成分が純粋な無水シリカであればpHは酸性であるが、アンモニアによる安定化、粒子表面への界面活性剤の被覆等の処理でpHを変化させた各種の仕様が市販品から求めることができる。
【0033】
本発明では泥しょう状の吹付材をpH6〜11に調整する。pHがこの数値範囲から外れると保存が長時間に及ぶと固化が進行し、施工性の低下と同時に保存性に欠ける。また、強アルカリまたは強酸の場合は、容器あるいは施工装置の腐食原因となると共に、施工作業において安全衛生上の問題がある。さらに好ましくはpH6〜8である。本発明で使用する吹付材のpHは、コロイダルシリカのpHに大きく影響される。そのため、コロイダルシリカはpH6〜11、さらに好ましくはpH6〜8のものを選択使用することが好ましい。
【0034】
泥しょう状の調整後の不定形耐火物に占めるコロイダルシリカの割合は、固形物換算で3〜20質量%が好ましい。さらに好ましくは5〜18質量%である。少ないと吹付材の付着性、接着性の効果に劣る。多過ぎるとシリカ成分による繊維間への目詰まりによって施工体の断熱性に低下傾向が見られる。
【0035】
吹付材を泥しょう状に調整するための必要な水分量は、泥しょう状吹付材に占める割合で40〜80質量%が好ましい。水分量が少な過ぎると吹付材は十分な流動性が得られず、ノズルへの圧送抵抗が大きくなり、吹付け施工が困難となる。水分量が多過ぎる場合はダレ落ち等によって付着性が低下する。
【0036】
前記した水分量は、前記したコロイダルシリカ、さらには増粘剤の溶媒等から供給される水分を含めての量である。コロイダルシリカの濃度は特に限定されるものではなく、例えば市販品の濃度として一般的な10〜50質量%のものを使用する。例えば、きわめて濃度の低いコロイダルシリカを多量に添加することによって、吹付材全体の水分量がコロイダルシリカの水分だけで適当量に達すれば、施工水として水分を追加する必要はない。
【0037】
本発明に使用する泥しょう状の吹付材は、アルミナセメント、ポルトランドセメント等のセメント類を実質的に含まないことが好ましい。セメント類を含ませると、吹付材のpH値が本発明で限定した数値範囲を超え、泥しょう状の吹付材が常温下で早期に固化し、本発明の効果が得られない。
【0038】
吹付材は泥しょう状に調整後、そのちょう度がJIS R2506−1985に準ずる測定において、150〜250、さらには170〜220に保つことが好ましい。吹付材を耐火物製造工場等であらかじめ泥しょう状に調整したものを吹付け施工現場に搬送しての施工を考慮した場合、吹付材は泥しょう状に調整後、少なくとも48時間、前記ちょう度を保つことが好ましい。泥しょう状の吹付材の造り置き、一括製造等による吹付材の生産性等の面からは、1ヶ月以上、このちょう度範囲を保つことが好ましい。
【0039】
ちょう度が大きすぎると、泥しょう状に調整した吹付材がその保存中に耐火性無機繊維と水分とが分離し、付着性に低下傾向が見られる。また、施工体の繊維密度が小さくなって施工体の強度にも影響する。耐火性無機繊維と水分との分離については、例えば施工直前に再混練することで解消されるが、その分、施工工数が増え、好ましくない。逆に、ちょう度が小さ過ぎると吹付材を圧送ポンプのホッパーに投入した際に、耐火性無機繊維の繊維間に介在する空気が圧送ポンプさらには圧送管に噛み込み、空気のクッション作用で圧送管内での吹付材の圧送が連続せず、ノズルからの噴出が息継ぎを生じやすい。
【0040】
ちょう度の測定規格JIS R2506−1985は、測定対象となるモルタルの練り混ぜ器具、試験用水、練り混ぜ方法についても規定されている。本発明で測定対象となる吹付材は既に練り混ぜを終えた泥しょう状であることから、同規格において、練り混ぜ後の「5.3ちょう度の測定方法」の手順をもって、ちょう度を測定する。
【0041】
本発明では泥しょう状の吹付材をpH6〜11に調整することで長時間の保存が可能となるが、さらにこれをpH6〜8に調整した場合、さらに長時間の安定化が図られ、密封状態であれば常温下で例えば6ヶ月を経てもちょう度150〜250を保つことができ、搬送性・保存性・施工性はさらに向上する。
【0042】
本発明で使用する吹付材は泥しょう状に調整後、これを収納した容器を開封状態にして長時間放置すると、乾燥によって表面に薄い固化層が形成されることがある。前記したpH、ちょう度は、この表面の固化層を除く泥しょう状の部分での測定数値とする。
【0043】
耐火性無機微粉を含有させる場合、泥しょう状の吹付材に占める割合で10質量%以下が好ましく、さらに好ましくは5質量%以下とする。耐火性無機微粉の含有量が多くなると無機質微粉の耐火性無機繊維間への充填によって施工体の断熱性低下の原因となる。
【0044】
耐火性無機微粉の具体例としては、耐火性を備えたアルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ等である。経済性の面からは、経済性の面から、微粉として入手しやすい仮焼アルミナあるいは揮発シリカが好ましい。
【0045】
本発明に使用する吹付材には、必要によっては増粘剤、消泡剤、分散剤、金属粉、固化遅延剤等を添加してもよい。
【0046】
増粘剤は、耐火性無機繊維の分散性を向上させる働きがある。その使用量は泥しょう状の吹付材に占める割合で3質量%以下が好ましい。多すぎると泥しょう状の吹付材のちょう度が小さくなって付着性・接着性に低下傾向が見られる。さらに好ましくは0.05〜2.5質量%である。泥しょう状の吹付材への増粘剤の混入は、分散性を高めるために、予め水等に溶解した水溶液状で添加することが好ましい。
【0047】
増粘剤の具体例は特に限定されるものではない。例えばカルボキメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニールアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ソーダ、デキストリン、サンザンガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアゴム、タロイモ澱粉、山芋澱粉、緑豆澱粉、米澱粉、コーンスターチ等が挙げられる。中でも、品質の安定や経済性の面で、カルボキメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニールアルコール、ヒドロキシエチルセセルロース等の水溶性有機高分子が好ましい。
【0048】
分散剤の具体例は、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、ポリカルボン酸、リグニンスルホン酸ソーダ、カルボキシル基含有ポリエーテルなどである。分散剤の添加量は、耐火性無機繊維100質量%に対する外掛けで0.01〜0.3質量%が好ましい。
【0049】
泥しょう状の吹付材を急結させる石灰乳は、消石灰(水酸化カルシウム)または生石灰の微粉を水分中に分散させることで得られる。生石灰は水中において水和し、水酸化カルシウムとして分散する。石灰乳中における水酸化カルシウム微粉は、平均粒径1〜10μm、濃度(石灰乳中に占める水酸化カルシウムの割合)5〜30質量%が好ましい。
【0050】
塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムを添加した石灰乳を使用する場合、石灰乳に占める塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムの割合は、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは2〜15質量%である。少ないと塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムの添加による吹付材の付着性および接着性向上の効果が顕著に得られない。多過ぎるとその凝集作用が過多となって付着性に低下傾向が見られる。
【0051】
急結剤としての石灰乳はさらに、分散剤を添加してもよい。分散剤の具体例は特に限定されるものではなく、例えばトリポリリン酸ソーダ、テトラポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリルリン酸ソーダ、ポリカルボン酸、リグニンスルホン酸ソーダ、カルボキシル基含有ポリエーテルなどである。その添加量は、石灰乳100質量%に対し外掛け0.01〜0.3質量%が好ましい。
【0052】
泥しょう状に調整した吹付材に対する石灰乳の添加量は、水酸化カルシウム濃度が5〜30質量%の石灰乳を使用した場合、例えば0.1〜5質量%とし、この範囲で石灰乳の濃度等に合せて適宜決定するのが好ましい。
【0053】
図1は本発明の施工方法に使用する施工装置例の概念図である。泥しょう状に調整した吹付材を圧送ポンプ(1)でノズル(2)に送り出す。圧送ポンプ(1)からノズル(2)への移送は圧送管(3)を介して行われる。圧送ポンプの型式は、例えばスクイズ式、スクリュー式、ピストン式等である。急結剤の石灰乳は急結剤供給管(4)を介し、圧搾空気と共にノズル(2)内の吹付材に添加する。吹付材は石灰乳が添加された後、ノズル(2)から噴出する。
【0054】
図には示していないが、石灰乳の添加位置をノズル(2)の後方、即ち圧送管(3)の位置で添加しても良い。この場合、石灰乳の添加位置からノズル(2)先端までの距離が長すぎると、吹付材が石灰乳によって固化が進行し、付着性低下の原因となり、好ましくない。
【0055】
本発明による断熱耐火物の吹付け施工は、例えば均熱炉、加熱炉、焼却炉、廃棄物溶融炉、廃棄物灰溶融炉、ボイラー、セメント炉、トンネルキルン、樋カバー、取鍋蓋等の内張りあるいはその補修に適用することができる。被施工面は、例えば定形耐火物、不定形耐火物、耐火性無機繊維ブロック等である。
【0056】
【実施例】
表1は各例で使用したコロイダルシリカの成分表である。表2は急結剤とした使用した石灰乳の成分表である。石灰乳B〜Dは、石灰乳に塩化カルシウムあるいは硝酸カルシウムを添加溶解させたものである。
【0057】
表3、表4は各例で使用した吹付材の配合組成をその試験結果である。吹付材は水分を添加してミキサーにて混練し、泥しょう状に調整したものである。同表に示す水分量は吹付材組成全体に占める割合であって、コロイダルシリカの水分、増粘剤の水分(溶媒)も含めたものである。比較例4は、コロイダルシリカをまったく使用していないことから、コロイダルシリカからの水分の供給はない。また、増粘剤は水に溶解して添加したが、表に示した割合は粉体での質量である。
【0058】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
施工は図1の概念図に示した装置にて行った。圧送ポンプはスクイズ式ポンプを使用し、吹付材の吹付け速度は約15リットル/分とした。急結剤の添加量は、泥しょう状に調整した吹付材100質量%対し、3質量%とした。アルミナ−シリカ質繊維ブロックよりなる垂直面に、約100mm厚さの施工体の形成を試みた。
【0059】
吹付材に使用した耐火性無機繊維は、アルミナ−シリカ質繊維(バルク状繊維、化学成分値:Al2O3 49質量%、SiO2 51質量%、平均繊維径2.5μm)とした。
【0060】
吹付材のpHおよびちょう度は、泥しょう状に調整した直後に測定した。pH測定は電子pHメーターによって行った。 ちょう度はJIS R2506−1985の「5.3ちょう度の測定方法」の手順をもって測定した。
【0061】
保存性:泥しょう状に調整した後、48時間経過後のちょう度と、ノズル圧送困難になるまでの時間または日数を測定した。ちょう度が150〜250の範囲内で長時間持続するものほど吹付材の造り置き時間が長く、保存性、施工性および生産性に優れている。
【0062】
付着性:吹付材を泥しょう状に調整後、3時間経過した時点で吹付け、その付着率を求めた。
【0063】
接着性:前記付着性の試験で施工して得た吹付け施工体を、被施工面に付着した状態で切り出し、1200℃×3時間加熱後、吹付け施工体の被施工面に対する接着強度を曲げ強さによって測定した。接着性の程度を4段階で評価した。◎…きわめて大きい、○…大きい、△…小さい、×…きわめて小さい。
【0064】
施工体の断熱性:乾燥後の施工体を切り出し、さらに1200℃×48時間加熱後、熱流法によって熱伝導率λ(W/m・K)を測定した。数値が小さいほど断熱性に優れている。
【0065】
試験結果が示すとおり、本発明実施例によればその優れた急結作用と、吹付けに適したちょうど度を有する吹付材によって、付着性および接着性に優れた効果を発揮する。施工体は断熱性耐火物に要求される断熱性においても十分な効果を得た。しかも、急結剤が石灰乳であることで安全衛生上の問題もない。
【0066】
また、泥しょう状の吹付材は、48時間経過後も施工に適したちょう度を持続し、90日後も問題なくノズルへの圧送が可能であった。その結果、吹付材は長時間の造り置きが可能となり、生産性、施工性にも優れている。
【0067】
本発明実施例の中で実施例5〜9は、塩化カルシウムあるいは硝酸カルシウムを添加した石灰乳を急結剤としたものである。付着性および接着性においてさらに優れている。
【0068】
これに対し、急結剤にケイ酸ソーダを使用した比較例1はケイ酸ソーダが強アルカリであることで、安全衛生上の問題がある。また、ケイ酸ソーダは吹付材のコロイダルシリカを強アルカリ化する効果がなく、急結作用に乏しいことで、付着性、接着性ともに劣る。さらに、ケイ酸ソーダは高温下において無機繊維同士を溶着させ、施工体の熱伝導率を高め、施工体は断熱性耐火物の機能として必要な断熱性に劣る。
【0069】
比較例2はpHの小さいコロイダルシリカを含む吹付材の使用したものであり、泥しょう状の吹付材のpHが本発明で限定した数値より小さく、早期に固化が進行して保存性、付着性、接着性共に劣る。
【0070】
比較例3はアルミナセメント含む吹材の施工であって、吹付材のpHが高く、早期に固化することで保存性に欠ける。また、吹付材は泥しょう状に調整後、3時間経過した時点で既に硬くなり、ノズル圧送ができないことで、付着性、接着性、断熱性の測定ができなかった。
【0071】
比較例4はアルミナセメント含み、コロイダルシリカは全く含まない吹付材を使用したものである。泥しょう状に調整した吹付材は3時間経過した時点で既に硬くなり、前記した比較例3と同様に、付着性、接着性、断熱性の測定ができなかった。
【0072】
比較例5は吹付材に有機増粘剤を添加したものである。急結剤を使用しないことで吹付け施工時の凝集性がなく、付着性、接着性に劣り、ダレ落ちによって100mmの厚手の施工体を得ることができなかった。
【0073】
なお、試験結果には示していないが、本発明実施例で使用した泥しょう状の吹付耐火物は、常温下においていずれも6ヶ月を経てもちょう度170〜220を保持し、保管性においてきわめて優れており、国内各所への搬送はもとより海外への輸出も可能である。
【0074】
【効果】
本発明による断熱性耐火物の吹付け施工およびそれに使用する吹付け施工用断熱性耐火物は、施工において湿式法の採用による発塵防止の他に、以下のとおり従来技術からは予期できず、かつ断熱性耐火物の吹付け施工においてきわめて有用な効果を得ることができる。
【0075】
すなわち、急結剤は中性あるいは弱アルカリ性であり、吹付け施工作業において安全衛生面で好ましい。吹付材の付着性、接着性に優れ、垂直の被施工面に対しても例えば100mm以上といった厚手の施工体を容易に形成できる。吹付材を泥しょう状に調整した後も長時間の保存・造り置きが可能となり、吹付けの施工性および吹付材の生産性が向上する。吹付けによって得られる施工体は、十分な断熱性を備えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の施工方法に使用する施工装置例の概念図である。
【符号の説明】
1 圧送ポンプ
2 ノズル
3 圧送管
4 急結剤供給管
【発明の属する技術分野】
本発明は、断熱性耐火物の吹付け施工方法とそれに使用する吹付け施工用断熱性耐火物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミナ−シリカ質繊維等の耐火性無機繊維を主材とした断熱性耐火物を、吹付け施工することが知られている。吹付け施工は鋳込みと違って型枠を必要とせず、施工が迅速かつ容易である。
【0003】
耐火物の吹付け施工は大別して乾式法と湿式法とがある。乾式法は、吹付材を水分を添加しない粉末状態でノズルに送り出し、ノズル部で水分を添加して吹付ける。湿式法は予め水分を添加した吹付材をノズルに送り、吹付ける。また、他の湿式法として、予め水分を添加した吹付材をノズルに送り、ノズル部で急結剤を添加して吹付ける方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
乾式法は水分添加がノズル部で行われ、吹付材が十分に湿潤されないまま吹付けられるため、発塵が著しい。断熱性不定形耐火物の吹付けでは耐火性無機繊維が飛散する。そこで、断熱性耐火物の吹付け施工は作業環境上の面から湿式法が好ましい。
【0005】
断熱性耐火物の湿式吹付け施工方法として、従来、耐火性無機繊維に耐火性超微粉、コロイダルシリカ、有機増粘剤および水を添加した吹付材を使用する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−284583号公報(第1−6頁)
【0007】
【特許文献2】
特開平9−87046号公報(第1−6頁)
【0008】
【発明が解決しょうとする課題】
断熱性耐火物の吹付け施工において、前記の従来法は湿式法であることで発塵の問題がない。しかし、吹付材の付着性(吹付け時の、跳ね返り・ダレ落ち難さ)・接着性(付着後の吹付材の剥がれ難さ)は決して十分なものではない。例えば、垂直面に対する施工厚さは50mm程度が限度であって、それを超えるとダレ落ちによって付着率が大幅に低下する。天井面に対する厚手の施工はさらに困難である。
【0009】
付着性・接着性の向上を図るために、前記吹付材に硬化剤として例えばアルミナセメントの添加が考えられる。しかし、湿式法の施工においてアルミナセメントを添加した吹付材は、水分添加で泥しょう状に調整した直後から固化が進行し、例えば常温下で6時間以内といった短時間でノズルへの圧送が困難となる。また、泥しょう状に調整した直後に施工したとしても、固化の進行で被施工面上での吹付材の広がりに欠けるためか、付着性・接着性に劣る。
【0010】
水分添加後に固化が早い吹付材の湿式吹付け施工では、泥しょう状に調整後、直ちに吹付ける必要がある。そのためには、吹付材は吹付け施工現場で水分を添加し、泥しょう状に調整する必要である。しかし、施工現場の限られたスペースに吹付材を泥しょう状に調整するための混練装置等の設置は、吹付け施工作業の弊害となる。しかも、吹付材の調整と吹付け施工を並行して行うことになり、施工作業が煩雑となる。
【0011】
また、固化の早い吹付材は、泥しょう状に調整しての造り置きができないことから、泥しょう状の吹付材を一度に多量に製造することができず、吹付材の生産性に劣る。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点を解決した断熱性耐火物の吹付け施工方法およびそれに使用する吹付け施工用断熱性耐火物を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付耐火物を、圧送ポンプでノズルに送り、ノズル部あるいはノズル部の後方において石灰乳を添加して吹付ける、断熱性耐火物の吹付け施工方法である。また、耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付材であって、その後に添加された石灰乳で急結される吹付け施工用断熱性耐火物である。
【0014】
本発明は泥しょう状に調整した吹付材の固化を、吹付材に含まれるコロイダルシリカと、施工時にノズル部あるいはノズル部の後方において添加する石灰乳と相互作用によって行う。すなわち、コロイダルシリカを含む吹付材が石灰乳によってpHが高くなり、強アルカリ性に移行するに伴い、コロイダルシリカ中のシリカ粒子の反発力が低下することでコロイダルシリカがゲル化し、吹付材が急結固化する。このゲル化は石灰乳の添加で急激に生じ、吹付材の付着性・接着性に優れた効果を発揮する。
【0015】
特許文献1のとおり、湿式法においてノズル部で急結剤を添加する施工方法が知られている。ここで使用される急結剤は、従来から種々のものが提案されている。例えば、ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム、リン酸ソーダが一般的である。
【0016】
これらの急結剤は強アルカリのために人体の皮膚に接触すると皮膚が火傷に似た症状となり、安全衛生面で好ましくない。これに対し、本発明で急結剤として使用する石灰乳は人体にやさしく、安全衛生面での問題がない。
【0017】
耐火性無機繊維の材質は、耐火性・経済性の面から一般にアルミナ−シリカ質あるいはアルミナ−シリカ−ジルコニア質のシリカ含有質の繊維が使用される。これらのシリカ含有質繊維は比較的融点が低く、しかも繊維のために比表面積が大きいことで高温下で長期使用すると繊維同士が融着する問題がある。また、急結剤に強アルカリのケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム、リン酸ソーダ等の使用は高温下で繊維同士の融着を助長させる。繊維同士の融着は断熱性耐火物に必要な断熱性が損なわれる。
【0018】
本発明では、急結剤として使用する石灰乳の水酸化カリシウム成分とコロイダルシリカのシリカとが高温下において反応し、繊維間に高融点の2CaO・SiO2を生成することによって繊維同士の溶着を防止し、吹付け施工体の断熱性を長期にわたって維持させる効果がある。
【0019】
本発明で使用する泥しょう状に調整した吹付材は、pHを6〜11としたことで泥しょう状での長時間の保存が可能となる。pHがこの数値範囲より小さくても大きくても、泥しょう状の吹付材は安定性に欠け、早期に固化が進行し、施工性・保存性に欠ける。また、これが強アルカリまたは強酸の場合は、容器あるいは施工装置の腐食原因となると共に、施工作業において安全衛生上の問題がある。
【0020】
本発明に使用する吹付材は、予め泥しょう状に調整後も長時間に固化しないことで、予め泥しょう状に調整した吹付材を必要量のみ施工現場に搬入しての施工が可能となり、吹付材の混練作業等の調整を施工現場で行う必要がない。また、その保存性の良さから、泥しょう状の調整作業を一度に多量に行うことができ、吹付材の生産性が向上する。
【0021】
湿式吹付け施工の急結剤の一例として消石灰スラリー(石灰乳)が既に知られている。従来方法における急結剤は、消石灰スラリーの場合も含め、セメント系吹付材においてセメントおよび耐火性超微粉の凝集を目的としており、コロイダルシリカをアルカリ性移行し、ゲル化させる本発明とはその急結機構が異なる。しかも、セメント系吹付材は泥しょう状に調整後、短時間のうちに固化が進行し、6時間程度で既にノズルに圧送できなくなり、施工性と吹付材の保存性に劣る。また、吹付材を泥しょう状に調整後、直ちに施工した場合でも固化の進行のために付着性・施工性において十分なものではない。
【0022】
特許文献2に示される吹付材はコロイダルシリカを含んでいる。しかし、この材質での付着性の付与は有機増粘剤で行うものであり、急結作用がないために十分な付着性が得られない。そこで、付着性改善のために有機増粘剤の添加量を増すことが考えられるが、有機増粘剤の添加量が多くなると、吹付材は粘性が高くなってノズルへの圧送が困難となる。しかも、ここでのコロイダルシリカは吹付け施工後、乾燥に伴うゲル化作用で施工体に接着性を付与するものであり、吹付け直後にはコロイダルシリカのゲル化作用が生じなために、厚手の吹付け施工体の形成は困難である。
【0023】
本発明で使用する吹付材は、泥しょう状に調整後のちょう度が150〜250(JIS R2506−1985に準ずる測定)であることが好ましい。ちょう度は混練物の硬さの測定単位である。ちょう度の数値は、大きいほど材料がやわらかく、小さいほど材料が硬い。例えば特許文献1に示される湿式吹付け施工では、急結剤を添加しないために、ちょう度が250を超える吹付材はダレ落ちによって付着性が低下する。
【0024】
本発明で使用する吹付材は大きなちょう度であっても、施工直後の急激なゲル化によって十分な付着性が得られる。ちょう度が大きい吹付材は被施工面上でのでの広がり易さで付着性および接着性に優れた効果を発揮する。
【0025】
本発明で使用する吹付材は、耐火性無機微粉を使用しないか、使用してもその使用量が少ないことが好ましい。耐火性無機微粉を使用する場合、その使用量は泥しょう状に調整した後の吹付材に占める割合で10質量%以下が好ましく、さらに好ましくは5質量%以下である。耐火性無機微粉は耐火性無機繊維間に充填されることから、耐火性無機微粉が多くなると耐火性無機繊維間の空隙率の低減によって、施工体の断熱性が低下する。また、耐火性超微粉が多いと吹付材の重量が増し、吹付材の施工時のダレ落ち原因となる。
【0026】
本発明で急結剤として使用する石灰乳は、本発明の効果を損なわない範囲で他の物質を添加してもよい。石灰乳に例えば塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムを添加すると、吹付材の付着性がさらに向上する。これはコロイダルシリカと石灰乳の反応による吹付材の固化に比べ、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムが作用した吹付材の凝集作用が早いことによる。
【0027】
塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムを含む石灰乳は、その凝集作用で吹付材を施工面に確実に留めた上で、コロイダルシリカと石灰乳との反応による固化が進行することによって、接着性についてもさらに向上する。また、この塩化カルシウム、硝酸カルシウムは共に人体にやさしく、安全衛生面での問題もない。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明において、吹付材組成の主材となる耐火性無機繊維は、従来の断熱性耐火物に使用されている材質と同様のもので足りる。例えばアルミナ−シリカ質、アルミナ−シリカ−ジルコニア質、シリカ質、セピオライト、岩綿等の耐火性無機繊維が使用できる。中でも耐熱性および経済性を兼ね備えたアルミナ−シリカ質あるいはアルミナ−シリカ−ジルコニア質が好ましい。
【0029】
アルミナ−シリカ質あるいはアルミナ−シリカ−ジルコニア質の繊維形状は、バルク状、チョップド状、粒状(カール状)等がある。このうち、解砕分散が容易なバルク状あるいは粒状の使用が好ましい。
【0030】
耐火性無機繊維の使用量は泥しょう状に調整した吹付材に占める割合で7〜40質量%が好ましい。さらに好ましくは10〜30質量%である。耐火性無機繊維の割合が少ないと断熱性耐火物の特性である断熱性が損なわれる。多過ぎると泥しょう状の吹付材中において水分と繊維とが分離し、均一な施工体が得られ難い。
【0031】
コロイダルシリカはシリカ超微粒子をコロイド状に分散させた水溶液である。コロイドシリカ、シリカゾルとも称される。市販品から得ることができる。シリカ超微粒子の粒径は例えば50nm以下のものが好ましく、例えば10〜20nmとする。市販品そのままを使用してもよく、さらに水分を添加して薄めてもよい。
【0032】
コロイダルシリカはその成分が純粋な無水シリカであればpHは酸性であるが、アンモニアによる安定化、粒子表面への界面活性剤の被覆等の処理でpHを変化させた各種の仕様が市販品から求めることができる。
【0033】
本発明では泥しょう状の吹付材をpH6〜11に調整する。pHがこの数値範囲から外れると保存が長時間に及ぶと固化が進行し、施工性の低下と同時に保存性に欠ける。また、強アルカリまたは強酸の場合は、容器あるいは施工装置の腐食原因となると共に、施工作業において安全衛生上の問題がある。さらに好ましくはpH6〜8である。本発明で使用する吹付材のpHは、コロイダルシリカのpHに大きく影響される。そのため、コロイダルシリカはpH6〜11、さらに好ましくはpH6〜8のものを選択使用することが好ましい。
【0034】
泥しょう状の調整後の不定形耐火物に占めるコロイダルシリカの割合は、固形物換算で3〜20質量%が好ましい。さらに好ましくは5〜18質量%である。少ないと吹付材の付着性、接着性の効果に劣る。多過ぎるとシリカ成分による繊維間への目詰まりによって施工体の断熱性に低下傾向が見られる。
【0035】
吹付材を泥しょう状に調整するための必要な水分量は、泥しょう状吹付材に占める割合で40〜80質量%が好ましい。水分量が少な過ぎると吹付材は十分な流動性が得られず、ノズルへの圧送抵抗が大きくなり、吹付け施工が困難となる。水分量が多過ぎる場合はダレ落ち等によって付着性が低下する。
【0036】
前記した水分量は、前記したコロイダルシリカ、さらには増粘剤の溶媒等から供給される水分を含めての量である。コロイダルシリカの濃度は特に限定されるものではなく、例えば市販品の濃度として一般的な10〜50質量%のものを使用する。例えば、きわめて濃度の低いコロイダルシリカを多量に添加することによって、吹付材全体の水分量がコロイダルシリカの水分だけで適当量に達すれば、施工水として水分を追加する必要はない。
【0037】
本発明に使用する泥しょう状の吹付材は、アルミナセメント、ポルトランドセメント等のセメント類を実質的に含まないことが好ましい。セメント類を含ませると、吹付材のpH値が本発明で限定した数値範囲を超え、泥しょう状の吹付材が常温下で早期に固化し、本発明の効果が得られない。
【0038】
吹付材は泥しょう状に調整後、そのちょう度がJIS R2506−1985に準ずる測定において、150〜250、さらには170〜220に保つことが好ましい。吹付材を耐火物製造工場等であらかじめ泥しょう状に調整したものを吹付け施工現場に搬送しての施工を考慮した場合、吹付材は泥しょう状に調整後、少なくとも48時間、前記ちょう度を保つことが好ましい。泥しょう状の吹付材の造り置き、一括製造等による吹付材の生産性等の面からは、1ヶ月以上、このちょう度範囲を保つことが好ましい。
【0039】
ちょう度が大きすぎると、泥しょう状に調整した吹付材がその保存中に耐火性無機繊維と水分とが分離し、付着性に低下傾向が見られる。また、施工体の繊維密度が小さくなって施工体の強度にも影響する。耐火性無機繊維と水分との分離については、例えば施工直前に再混練することで解消されるが、その分、施工工数が増え、好ましくない。逆に、ちょう度が小さ過ぎると吹付材を圧送ポンプのホッパーに投入した際に、耐火性無機繊維の繊維間に介在する空気が圧送ポンプさらには圧送管に噛み込み、空気のクッション作用で圧送管内での吹付材の圧送が連続せず、ノズルからの噴出が息継ぎを生じやすい。
【0040】
ちょう度の測定規格JIS R2506−1985は、測定対象となるモルタルの練り混ぜ器具、試験用水、練り混ぜ方法についても規定されている。本発明で測定対象となる吹付材は既に練り混ぜを終えた泥しょう状であることから、同規格において、練り混ぜ後の「5.3ちょう度の測定方法」の手順をもって、ちょう度を測定する。
【0041】
本発明では泥しょう状の吹付材をpH6〜11に調整することで長時間の保存が可能となるが、さらにこれをpH6〜8に調整した場合、さらに長時間の安定化が図られ、密封状態であれば常温下で例えば6ヶ月を経てもちょう度150〜250を保つことができ、搬送性・保存性・施工性はさらに向上する。
【0042】
本発明で使用する吹付材は泥しょう状に調整後、これを収納した容器を開封状態にして長時間放置すると、乾燥によって表面に薄い固化層が形成されることがある。前記したpH、ちょう度は、この表面の固化層を除く泥しょう状の部分での測定数値とする。
【0043】
耐火性無機微粉を含有させる場合、泥しょう状の吹付材に占める割合で10質量%以下が好ましく、さらに好ましくは5質量%以下とする。耐火性無機微粉の含有量が多くなると無機質微粉の耐火性無機繊維間への充填によって施工体の断熱性低下の原因となる。
【0044】
耐火性無機微粉の具体例としては、耐火性を備えたアルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ等である。経済性の面からは、経済性の面から、微粉として入手しやすい仮焼アルミナあるいは揮発シリカが好ましい。
【0045】
本発明に使用する吹付材には、必要によっては増粘剤、消泡剤、分散剤、金属粉、固化遅延剤等を添加してもよい。
【0046】
増粘剤は、耐火性無機繊維の分散性を向上させる働きがある。その使用量は泥しょう状の吹付材に占める割合で3質量%以下が好ましい。多すぎると泥しょう状の吹付材のちょう度が小さくなって付着性・接着性に低下傾向が見られる。さらに好ましくは0.05〜2.5質量%である。泥しょう状の吹付材への増粘剤の混入は、分散性を高めるために、予め水等に溶解した水溶液状で添加することが好ましい。
【0047】
増粘剤の具体例は特に限定されるものではない。例えばカルボキメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニールアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ソーダ、デキストリン、サンザンガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアゴム、タロイモ澱粉、山芋澱粉、緑豆澱粉、米澱粉、コーンスターチ等が挙げられる。中でも、品質の安定や経済性の面で、カルボキメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニールアルコール、ヒドロキシエチルセセルロース等の水溶性有機高分子が好ましい。
【0048】
分散剤の具体例は、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、ポリカルボン酸、リグニンスルホン酸ソーダ、カルボキシル基含有ポリエーテルなどである。分散剤の添加量は、耐火性無機繊維100質量%に対する外掛けで0.01〜0.3質量%が好ましい。
【0049】
泥しょう状の吹付材を急結させる石灰乳は、消石灰(水酸化カルシウム)または生石灰の微粉を水分中に分散させることで得られる。生石灰は水中において水和し、水酸化カルシウムとして分散する。石灰乳中における水酸化カルシウム微粉は、平均粒径1〜10μm、濃度(石灰乳中に占める水酸化カルシウムの割合)5〜30質量%が好ましい。
【0050】
塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムを添加した石灰乳を使用する場合、石灰乳に占める塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムの割合は、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは2〜15質量%である。少ないと塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムの添加による吹付材の付着性および接着性向上の効果が顕著に得られない。多過ぎるとその凝集作用が過多となって付着性に低下傾向が見られる。
【0051】
急結剤としての石灰乳はさらに、分散剤を添加してもよい。分散剤の具体例は特に限定されるものではなく、例えばトリポリリン酸ソーダ、テトラポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリアクリルリン酸ソーダ、ポリカルボン酸、リグニンスルホン酸ソーダ、カルボキシル基含有ポリエーテルなどである。その添加量は、石灰乳100質量%に対し外掛け0.01〜0.3質量%が好ましい。
【0052】
泥しょう状に調整した吹付材に対する石灰乳の添加量は、水酸化カルシウム濃度が5〜30質量%の石灰乳を使用した場合、例えば0.1〜5質量%とし、この範囲で石灰乳の濃度等に合せて適宜決定するのが好ましい。
【0053】
図1は本発明の施工方法に使用する施工装置例の概念図である。泥しょう状に調整した吹付材を圧送ポンプ(1)でノズル(2)に送り出す。圧送ポンプ(1)からノズル(2)への移送は圧送管(3)を介して行われる。圧送ポンプの型式は、例えばスクイズ式、スクリュー式、ピストン式等である。急結剤の石灰乳は急結剤供給管(4)を介し、圧搾空気と共にノズル(2)内の吹付材に添加する。吹付材は石灰乳が添加された後、ノズル(2)から噴出する。
【0054】
図には示していないが、石灰乳の添加位置をノズル(2)の後方、即ち圧送管(3)の位置で添加しても良い。この場合、石灰乳の添加位置からノズル(2)先端までの距離が長すぎると、吹付材が石灰乳によって固化が進行し、付着性低下の原因となり、好ましくない。
【0055】
本発明による断熱耐火物の吹付け施工は、例えば均熱炉、加熱炉、焼却炉、廃棄物溶融炉、廃棄物灰溶融炉、ボイラー、セメント炉、トンネルキルン、樋カバー、取鍋蓋等の内張りあるいはその補修に適用することができる。被施工面は、例えば定形耐火物、不定形耐火物、耐火性無機繊維ブロック等である。
【0056】
【実施例】
表1は各例で使用したコロイダルシリカの成分表である。表2は急結剤とした使用した石灰乳の成分表である。石灰乳B〜Dは、石灰乳に塩化カルシウムあるいは硝酸カルシウムを添加溶解させたものである。
【0057】
表3、表4は各例で使用した吹付材の配合組成をその試験結果である。吹付材は水分を添加してミキサーにて混練し、泥しょう状に調整したものである。同表に示す水分量は吹付材組成全体に占める割合であって、コロイダルシリカの水分、増粘剤の水分(溶媒)も含めたものである。比較例4は、コロイダルシリカをまったく使用していないことから、コロイダルシリカからの水分の供給はない。また、増粘剤は水に溶解して添加したが、表に示した割合は粉体での質量である。
【0058】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
施工は図1の概念図に示した装置にて行った。圧送ポンプはスクイズ式ポンプを使用し、吹付材の吹付け速度は約15リットル/分とした。急結剤の添加量は、泥しょう状に調整した吹付材100質量%対し、3質量%とした。アルミナ−シリカ質繊維ブロックよりなる垂直面に、約100mm厚さの施工体の形成を試みた。
【0059】
吹付材に使用した耐火性無機繊維は、アルミナ−シリカ質繊維(バルク状繊維、化学成分値:Al2O3 49質量%、SiO2 51質量%、平均繊維径2.5μm)とした。
【0060】
吹付材のpHおよびちょう度は、泥しょう状に調整した直後に測定した。pH測定は電子pHメーターによって行った。 ちょう度はJIS R2506−1985の「5.3ちょう度の測定方法」の手順をもって測定した。
【0061】
保存性:泥しょう状に調整した後、48時間経過後のちょう度と、ノズル圧送困難になるまでの時間または日数を測定した。ちょう度が150〜250の範囲内で長時間持続するものほど吹付材の造り置き時間が長く、保存性、施工性および生産性に優れている。
【0062】
付着性:吹付材を泥しょう状に調整後、3時間経過した時点で吹付け、その付着率を求めた。
【0063】
接着性:前記付着性の試験で施工して得た吹付け施工体を、被施工面に付着した状態で切り出し、1200℃×3時間加熱後、吹付け施工体の被施工面に対する接着強度を曲げ強さによって測定した。接着性の程度を4段階で評価した。◎…きわめて大きい、○…大きい、△…小さい、×…きわめて小さい。
【0064】
施工体の断熱性:乾燥後の施工体を切り出し、さらに1200℃×48時間加熱後、熱流法によって熱伝導率λ(W/m・K)を測定した。数値が小さいほど断熱性に優れている。
【0065】
試験結果が示すとおり、本発明実施例によればその優れた急結作用と、吹付けに適したちょうど度を有する吹付材によって、付着性および接着性に優れた効果を発揮する。施工体は断熱性耐火物に要求される断熱性においても十分な効果を得た。しかも、急結剤が石灰乳であることで安全衛生上の問題もない。
【0066】
また、泥しょう状の吹付材は、48時間経過後も施工に適したちょう度を持続し、90日後も問題なくノズルへの圧送が可能であった。その結果、吹付材は長時間の造り置きが可能となり、生産性、施工性にも優れている。
【0067】
本発明実施例の中で実施例5〜9は、塩化カルシウムあるいは硝酸カルシウムを添加した石灰乳を急結剤としたものである。付着性および接着性においてさらに優れている。
【0068】
これに対し、急結剤にケイ酸ソーダを使用した比較例1はケイ酸ソーダが強アルカリであることで、安全衛生上の問題がある。また、ケイ酸ソーダは吹付材のコロイダルシリカを強アルカリ化する効果がなく、急結作用に乏しいことで、付着性、接着性ともに劣る。さらに、ケイ酸ソーダは高温下において無機繊維同士を溶着させ、施工体の熱伝導率を高め、施工体は断熱性耐火物の機能として必要な断熱性に劣る。
【0069】
比較例2はpHの小さいコロイダルシリカを含む吹付材の使用したものであり、泥しょう状の吹付材のpHが本発明で限定した数値より小さく、早期に固化が進行して保存性、付着性、接着性共に劣る。
【0070】
比較例3はアルミナセメント含む吹材の施工であって、吹付材のpHが高く、早期に固化することで保存性に欠ける。また、吹付材は泥しょう状に調整後、3時間経過した時点で既に硬くなり、ノズル圧送ができないことで、付着性、接着性、断熱性の測定ができなかった。
【0071】
比較例4はアルミナセメント含み、コロイダルシリカは全く含まない吹付材を使用したものである。泥しょう状に調整した吹付材は3時間経過した時点で既に硬くなり、前記した比較例3と同様に、付着性、接着性、断熱性の測定ができなかった。
【0072】
比較例5は吹付材に有機増粘剤を添加したものである。急結剤を使用しないことで吹付け施工時の凝集性がなく、付着性、接着性に劣り、ダレ落ちによって100mmの厚手の施工体を得ることができなかった。
【0073】
なお、試験結果には示していないが、本発明実施例で使用した泥しょう状の吹付耐火物は、常温下においていずれも6ヶ月を経てもちょう度170〜220を保持し、保管性においてきわめて優れており、国内各所への搬送はもとより海外への輸出も可能である。
【0074】
【効果】
本発明による断熱性耐火物の吹付け施工およびそれに使用する吹付け施工用断熱性耐火物は、施工において湿式法の採用による発塵防止の他に、以下のとおり従来技術からは予期できず、かつ断熱性耐火物の吹付け施工においてきわめて有用な効果を得ることができる。
【0075】
すなわち、急結剤は中性あるいは弱アルカリ性であり、吹付け施工作業において安全衛生面で好ましい。吹付材の付着性、接着性に優れ、垂直の被施工面に対しても例えば100mm以上といった厚手の施工体を容易に形成できる。吹付材を泥しょう状に調整した後も長時間の保存・造り置きが可能となり、吹付けの施工性および吹付材の生産性が向上する。吹付けによって得られる施工体は、十分な断熱性を備えている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の施工方法に使用する施工装置例の概念図である。
【符号の説明】
1 圧送ポンプ
2 ノズル
3 圧送管
4 急結剤供給管
Claims (7)
- 耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付耐火物を、圧送ポンプでノズルに送り、ノズル部あるいはノズル部の後方において石灰乳を添加して吹付ける、断熱性耐火物の吹付け施工方法。
- 泥しょう状の吹付耐火物のちょう度(JIS R2506−1985に準ずる測定)が150〜250である請求項1記載の断熱性耐火物の吹付け施工方法。
- 泥しょう状の吹付耐火物が、さらに増粘剤を3重量%以下含む請求項1または2項記載の断熱性耐火物の吹付け施工方法。
- 泥しょう状の吹付材が、実質的にセメント類を含まない請求項1〜3のいずれか1項記載の断熱性耐火物の吹付け施工方法。
- 泥しょう状の吹付材が、さらに耐火性無機微粉を10質量%以下含む請求項1〜4のいずれか1項記載の断熱性耐火物の吹付け施工方法。
- 石灰乳が塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムを含む請求項1〜5のいずれか1項記載の断熱性耐火物の吹付け施工方法。
- 耐火性無機繊維およびコロイダルシリカを含み、かつpH6〜11の泥しょう状の吹付材であって、その後に添加された石灰乳で急結される吹付け施工用断熱性耐火物。
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