JP2005024004A - 変速装置 - Google Patents

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Kazunori Sato
和範 佐藤
Tadahiko Miyazawa
忠彦 宮澤
Mutsuo Nishimoto
睦男 西本
Masanori Ishihara
正紀 石原
Toshifumi Yamakawa
敏文 山川
Yuichi Kimura
勇一 木村
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Abstract

【課題】1速で作動させる場合において、特に大きな駆動トルクを入力軸から出力軸へ迅速かつ確実に伝達することを可能にすること。
【解決手段】入力軸2と出力軸3との間に配設された第1〜第3の遊星歯車機構41〜43を備えている変速装置。該装置は、各遊星歯車機構の回転要素の一つに連結された第1の制動ドラム対41D、第2及び第3の制動ドラム42D及び43Dと、各制動ドラムの外周側に軸方向のみに移動可能に配設された磁石手段50と、磁石手段50を軸方向に移動させて、制動ドラムの外周面と対向する第1〜第4の制動位置と制動ドラムの外周面と対向しない制動解除位置に位置付ける磁石作動手段6とを備えている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等に搭載する変速装置、更に詳しくは遊星歯車機構を備えた変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
遊星歯車機構は、サンギヤと、サンギヤと同心に配設されたリングギヤと、リングギヤとサンギヤとに噛み合うプラネタリギヤ、及びプラネタリギヤを支持するプラネタリキャリア等の回転要素からなっている。このような遊星歯車機構は、サンギヤとリングギヤ及びプラネタリキャリアの何れか一つを固定し、残りの一方を入力側に他方を出力側にそれぞれ伝動連結することにより、入力側に伝達された動力を遊星歯車機構を介して出力側に伝達することができる。このような遊星歯車機構を備えた動力伝達装置、例えば変速装置において、遊星歯車機構を構成するサンギヤとリングギヤ及びプラネタリキャリアの何れか一つを固定する手段として、従来はブレーキバンドまたは多板ディスクブレーキが一般に用いられている。而して、ブレーキバンド及び多板ディスクブレーキは回転力を摩擦力によって制動するため、磨耗が発生し耐久性の面で問題がある。
【0003】
上記事実に基づいて、遊星歯車機構を構成する回転要素の一つに非接触で制動力を与えることができる変速装置が、本出願人であるいすゞ自動車株式会社によって既に提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された変速装置は、原動機の動力によって駆動させられる入力軸と、入力軸と同一軸上に配設された出力軸と、入力軸と出力軸との間に配設された第1、第2、第3及び第4の遊星歯車機構を備えている。この変速装置は更に、第1、第2、第3及び第4の遊星歯車機構をそれぞれ構成する回転要素の一つに連結された制動ドラムと、各制動ドラムの外周側に回転が規制され軸方向に移動可能に配設された磁石手段と、磁石手段を軸方向に移動させ、各制動ドラムの外周面とそれぞれ対向する制動位置と各制動ドラムの外周面と対向しない制動解除位置に位置付ける磁石作動手段とを備えている。以上の構成により、4段変速が可能な変速装置が得られる。
【0004】
上記変速装置によれば、磁石手段を制動ドラムの外周面と対向する制動位置に位置付けることにより、磁石手段と制動ドラムとの相対速度差によって制動ドラムの外周面に渦電流を生じさせ、制動ドラムすなわち回転要素の一つに制動力を与えることができる。この結果、機械的な接触をすることなく遊星歯車機構を機能させ動力伝達を行うことができるので、磨耗が無く耐久性に優れた変速装置を得ることができる。また、上記変速装置を車両に搭載した場合には、入力軸を原動機に直接連結しても車両を発進駆動させることができ、車両を発進するために用いられている摩擦クラッチやトルクコンバータ等の流体継手を除去することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−153191号公報(第4−第5頁、図7)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記変速装置には次のような問題が存在することが判明した。
(1)第1、第2、第3及び第4の遊星歯車機構を配列することにより、4段変速が可能な変速装置を得るよう構成されているので、部品点数が多く、全体の構成が複雑となり、重量が重く、コストアップとなる。
(2)変速装置を高速段側で作動させる場合には、比較的多数のギヤを駆動しなければ出力軸に動力を伝達できないので、駆動効率が低下し、実用的には好ましくない。更に具体的には変速装置を3速で作動させる場合には、第1、第2及び第3の遊星歯車機構を駆動する必要があり、また変速装置を4速で作動させる場合には、第1、第2、第3及び第4の遊星歯車機構を駆動する必要がある。その結果、駆動効率が大きく低下するので、該装置を実用化するためには、駆動効率を改善する必要がある。
(3)他方、変速装置を低速段側で作動させる場合には、更に具体的には変速装置を1速又は2速で作動させる場合には、3速及び4速用の遊星歯車機構である第3及び第4の遊星歯車機構の回転要素の一つである制動ドラムが高速で空転させられる。その結果、駆動エネルギーのロスが増加し、駆動効率が大きく低下するので、該装置を実用化するためには、駆動エネルギーのロスを少なくする必要がある。
【0007】
上記事実に基づいて本発明者は鋭意研究を行った結果、新しい変速装置を開発した。この新しい変速装置は、本出願人であるいすゞ自動車株式会社によって既に出願されている(特願2002−345318)。この新しい変速装置は、入力軸と出力軸との間に配設された第1、第2及び第3の遊星歯車機構と、導電性材料からなる第1、第2及び第3の制動ドラムと、各制動ドラムの外周側に軸方向のみに移動可能に配設された磁石手段と、磁石手段を移動させて、制動ドラムの外周面と対向する第1、第2、第3及び第4の制動位置と制動ドラムの外周面と対向しない制動解除位置に位置付ける磁石作動手段とを備えている。入力軸には、各遊星歯車機構のサンギヤを備えたサンギヤユニットがワンウエイクラッチを介して連結されかつ第3の遊星歯車機構のプラネタリキャリアが連結され、第3の遊星歯車機構のリングギヤには第3の制動ドラムが、第2の遊星歯車機構のリングギヤには第2の制動ドラムが連結され、第1の遊星歯車機構のリングギヤには第1の制動ドラム及び第2の遊星歯車機構のプラネタリキャリアが連結され、第1の遊星歯車機構のプラネタリキャリアは出力軸に連結されている。磁石手段が、第1の制動位置に位置付けられると第1の制動ドラムの外周面に対向し、第2の制動位置に位置付けられると第2の制動ドラムの外周面に対向し、第3の制動位置に位置付けられると第3の制動ドラム及び第1の制動ドラムの外周面に対向し、第4の制動位置に位置付けられると第3の制動ドラム及び第2の制動ドラムの外周面に対向する。
【0008】
第1、第2及び第3の遊星歯車機構を配列することにより、4段変速が可能な上記変速装置によれば、先に述べた(1)〜(3)の技術的課題を解決することが可能になった。しかしながら、上記変速装置には更に別の問題が存在することが判明した。すなわち、変速装置を1速で作動させる場合には、特に大きな所要の駆動トルクを入力軸から出力軸へ迅速かつ確実に伝達する必要があるが、上記変速装置には、この要求を満足させるための対策が施されていない。
【0009】
本発明の目的は、1速で作動させる場合において、特に大きな所要の駆動トルクを入力軸から出力軸へ迅速かつ確実に伝達することを可能にする、新規な変速装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、合理的なシフトパターンを確保しながら上記目的を達成することを可能にする、新規な変速装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、入力軸と出力軸との間に配設された第1、第2及び第3の遊星歯車機構を備えている変速装置において、
導電性材料からなる第1の制動ドラム対、第2及び第3の制動ドラムと、各制動ドラムの外周側に軸方向のみに移動可能に配設された磁石手段と、磁石手段を移動させて、制動ドラムの外周面と対向する第1、第2、第3及び第4の制動位置と制動ドラムの外周面と対向しない制動解除位置に位置付ける磁石作動手段とを備え、
入力軸には、各遊星歯車機構のサンギヤを備えたサンギヤユニットがワンウエイクラッチを介して連結されかつ第3の遊星歯車機構のプラネタリキャリアが連結され、第3の遊星歯車機構のリングギヤには第3の制動ドラムが、第2の遊星歯車機構のリングギヤには第2の制動ドラムが連結され、第1の遊星歯車機構のリングギヤには第1の制動ドラム対及び第2の遊星歯車機構のプラネタリキャリアが連結され、第1の遊星歯車機構のプラネタリキャリアは出力軸に連結され、磁石手段が、第1の制動位置に位置付けられると第1の制動ドラム対の外周面に対向し、第2の制動位置に位置付けられると第2の制動ドラムの外周面に対向し、第3の制動位置に位置付けられると第3の制動ドラムの外周面に対向すると共に第1の制動ドラム対を構成する片方の第1の制動ドラムの外周面に対向し、第4の制動位置に位置付けられると第3の制動ドラム及び第2の制動ドラムの外周面に対向する、
ことを特徴とする変速装置、が提供される。
【0012】
磁石手段は、磁石支持環と、磁石支持環の内周面に相互に軸方向に間隔をおいてかつそれぞれ周方向に間隔をおいて複数個配設された第1及び第2の磁石を備え、磁石手段が、第1の制動位置に位置付けられると第1の磁石が第1の制動ドラム対を構成する片方の第1の制動ドラムの外周面に対向すると共に第2の磁石が第1の制動ドラム対を構成する他方の第1の制動ドラムの外周面に対向し、第2の制動位置に位置付けられると第1の磁石が第2の制動ドラムの外周面に対向し、第3の制動位置に位置付けられると第1の磁石が第3の制動ドラムの外周面に対向すると共に第2の磁石が第1の制動ドラム対を構成する片方の第1の制動ドラムの外周面に対向し、第4の制動位置に位置付けられると第1の磁石が第3の制動ドラムの外周面に対向すると共に第2の磁石が第2の制動ドラムの外周面に対向する、ことが好ましい。
入力軸の回転を逆転して出力軸に伝達する第4の遊星歯車機構が備えられ、第4の遊星歯車機構は、リングギヤと、該リングギヤの外周側に該リングギヤと一体的に回転可能にかつ該リングギヤに対し軸方向に移動可能に配設された、導電性材料からなる第4の制動ドラムと、第4の制動ドラムを軸方向に移動させて第4の制動ドラムの外周面が磁石手段と対向する制動位置と磁石手段と対向しない非制動位置とに選択的に位置付けるドラム移動手段と、該リングギヤに噛み合わされた第1のプラネタリギヤと、第1のプラネタリギヤに噛み合わされた第2のプラネタリギヤとを備え、第2のプラネタリギヤと第1の遊星歯車機構のプラネタリギヤとは一体に回転しうるよう軸により連結され、該軸は、第1の遊星歯車機構のプラネタリキャリアに回転自在に支持され、磁石手段が制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラムは、ドラム移動手段によって、制動位置と非制動位置とに選択的に位置付けられる、 ことが好ましい。
入力軸の回転を逆転して出力軸に伝達する第4の遊星歯車機構が備えられ、第4の遊星歯車機構は、リングギヤと、該リングギヤの外周側に該リングギヤと一体的に回転可能にかつ該リングギヤに対し軸方向に移動可能に配設された、導電性材料からなる第4の制動ドラムと、第4の制動ドラムを軸方向に移動させて第4の制動ドラムの外周面が磁石手段と対向する制動位置と磁石手段と対向しない非制動位置とに選択的に位置付けるドラム移動手段と、該リングギヤ及び第1の遊星歯車機構のプラネタリギヤに噛み合わされたプラネタリギヤと、第1の遊星歯車機構のプラネタリキャリアに連結されたプラネタリキャリアと、該リングギヤに連結された導電性材料からなる第4の制動ドラムとを備え、磁石手段が制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラムは、ドラム移動手段によって、制動位置と非制動位置とに選択的に位置付けられる、ことが好ましい。
該リングギヤの外周側には円筒状の支持部材が一体に配設され、第4の制動ドラムは、支持部材の外周面に対し、相対回転できないようにかつ軸方向に移動可能に嵌合されている、ことが好ましい。
磁石手段は、磁石支持環と、磁石支持環の内周面に相互に軸方向に間隔をおいてかつそれぞれ周方向に間隔をおいて複数個配設された第1及び第2の磁石を備え、磁石手段が制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラムが制動位置に位置付けられると、第4の制動ドラムの外周面は第2の磁石に対向する、ことが好ましい。
磁石手段は、磁石支持手段と、相互に周方向に間隔をおいて磁石支持手段に配設された複数個の永久磁石とを備え、永久磁石の各々は、軸方向に間隔をおいて相互に対向するよう配置された第1及び第2の磁極部と、第1及び第2の磁極部を接続するよう配設された橋絡部とからなり、第1及び第2の磁極部は橋絡部の両端から半径方向内側に延び出すよう構成され、永久磁石の各々において、第1及び第2の磁極部は、半径方向内側に向けられた、相互に異極をなす磁極面を有し、周方向に相互に隣り合う永久磁石の各々における、第1の磁極部の磁極面同士及び第2の磁極部の磁極面同士は相互に異極をなし、磁石手段が、第1の制動位置に位置付けられると永久磁石の各々の第1の磁極部の磁極面が第1の制動ドラムの外周面に対向し、第2の制動位置に位置付けられると第1の磁極部の磁極面が第2の制動ドラムの外周面に対向し、第3の制動位置に位置付けられると第1の磁極部の磁極面が第3の制動ドラムに対向しかつ第2の磁極部の磁極面が第1の制動ドラムの外周面に対向し、第4の制動位置に位置付けられると第1の磁極部の磁極面が第3の制動ドラムに対向しかつ第2の磁極部の磁極面が第2の制動ドラムの外周面に対向する、ことが好ましい。
磁石手段は、磁石支持手段と、相互に周方向に間隔をおいて磁石支持手段に配設された複数個の永久磁石とを備え、永久磁石の各々は、軸方向に間隔をおいて相互に対向するよう配置された第1及び第2の磁極部と、第1及び第2の磁極部を接続するよう配設された橋絡部とからなり、第1及び第2の磁極部は橋絡部の両端から半径方向内側に延び出すよう構成され、永久磁石の各々において、第1及び第2の磁極部は、半径方向内側に向けられた、相互に異極をなす磁極面を有し、周方向に相互に隣り合う永久磁石の各々における、第1の磁極部の磁極面同士及び第2の磁極部の磁極面同士は相互に異極をなし、磁石手段が制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラムが制動位置に位置付けられると、第4の制動ドラムの外周面は永久磁石の各々における第2の磁極部の磁極面に対向する、ことが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による変速装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。図1には、本発明による変速装置の実施形態の概略構成図が示されている。図1に示す変速装置は、図示しない車両に搭載されており、原動機の動力によって駆動される入力軸2と、入力軸2と同一軸上に配設された出力軸3と、入力軸2と出力軸3との間に配設された第1の遊星歯車機構41、第2の遊星歯車機構42、第3の遊星歯車機構43及び第4の遊星歯車機構44とを備えている。第1、第2及び第3の遊星歯車機構41、42及び43は、出力軸3側から入力軸2側に向かってこの順に配列され、第4の遊星歯車機構44は、第1の遊星歯車機構41の、出力軸3側に配置されている。入力軸2には、ワンウエイクラッチ21を介してサンギヤユニット22が連結されている。入力軸2には、入力軸2よりも大径のボス部2aが設けられている。ボス部2aには入力軸2と共通の軸線を有する嵌合孔が形成され、該嵌合孔にワンウエイクラッチ21の外輪が嵌合されて一体に連結されている。ボス部2aの一部は、第3の遊星歯車機構43のプラネタリキャリア43dを構成している。サンギヤユニット22は、中心軸部22Aと、中心軸部22Aの外周部に軸方向に間隔をおいて一体に配設されたサンギヤ41a、42a及び43aとを備えている。サンギヤユニット22の中心軸部22Aは、ワンウエイクラッチ21の内輪又は中心軸に一体に連結されている。
【0014】
第1の遊星歯車機構41は、上記サンギヤ41a、サンギヤ41aと同心に配設されたリングギヤ41b、サンギヤ41aとリングギヤ41bとに噛み合わされたプラネタリギヤ41c、及びプラネタリキャリア41dの各回転要素を備えている。プラネタリギヤ41cは、軸41sに一体に配設され、軸41sは軸受Brを介してプラネタリキャリア41dに回転自在に支持されている。更に具体的に説明すると、軸41sの一端部(図1において右端部)には、後述する第4の遊星歯車機構44の第2のプラネタリギヤ44eが一体に配設され、上記プラネタリギヤ41cは、軸41sの他端部(図1において左端部)に一体に配設されている。そして軸41sの中間部が軸受Brを介してプラネタリキャリア41dに回転自在に支持されている。プラネタリキャリア41dは出力軸3に一体に配設されている。第2の遊星歯車機構42は、上記サンギヤ42a、サンギヤ42aと同心に配設されたリングギヤ42b、サンギヤ42aとリングギヤ42bとに噛み合わされたプラネタリギヤ42c、及びプラネタリキャリア42dの各回転要素を備えている。プラネタリギヤ42cはプラネタリキャリア42dに回転自在に支持されている。第3の遊星歯車機構43は、上記サンギヤ43a、サンギヤ43aと同心に配設されたリングギヤ43b、サンギヤ43aとリングギヤ43bとに噛み合わされたプラネタリギヤ43c、及びプラネタリキャリア43dの各回転要素を備えている。プラネタリギヤ43cはプラネタリキャリア43dに回転自在に支持されている。
【0015】
入力軸2の回転を逆転して出力軸3に伝達する第4の遊星歯車機構44は、リングギヤ44bと、リングギヤ44bに噛み合わされた第1のプラネタリギヤ44cと、プラネタリキャリア44dと、第1のプラネタリギヤ44cに噛み合わされた第2のプラネタリギヤ44eとの、各回転要素を備えている。第1のプラネタリギヤ44cはプラネタリキャリア44dに回転自在に支持されている。先にも述べたように、第2のプラネタリギヤ44eと第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cとは、相互に一体に回転しうるよう軸41sにより連結されている。軸41sの中間部は、第1の遊星歯車機構41のプラネタリキャリア41dに軸受Brを介して回転自在に支持されている。先にも述べたように、軸41sが回転自在に支持されている第1の遊星歯車機構41のプラネタリキャリア41dは、出力軸3に一体に連結されている。このような構成に起因して、第1の遊星歯車機構41のプラネタリキャリア41dは、第4の遊星歯車機構44の第2のプラネタリギヤ44eのプラネタリキャリアを兼用しているといえる。なお、いうまでもなく、第4の遊星歯車機構44の第2のプラネタリギヤ44eと第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cは、それぞれ周方向に間隔をおいて複数個(同数)配設されているので、それらを相互に一体に連結する軸41s及び軸受Brも同じ複数個配設されることになる。
【0016】
第1の遊星歯車機構41のリングギヤ41bには、第1の制動ドラム対41Dと第2の遊星歯車機構42のプラネタリキャリア42dとが一体に連結されている。第1の制動ドラム対41Dは、片方の第1の制動ドラム41Daと、他方の第1の制動ドラム41Dbとから構成されている。第1の制動ドラム対41Dは、リングギヤ41bの外周側、すなわち半径方向外側位置に配置されている。第2の遊星歯車機構42のリングギヤ42bの外周側、すなわち半径方向外側位置には第2の制動ドラム42Dが一体に連結されている。第3の遊星歯車機構43のリングギヤ43bの外周側、すなわち半径方向外側位置には第3の制動ドラム43Dが一体に連結されている。第3の遊星歯車機構43のプラネタリキャリア43dは入力軸2に一体に連結されている。第4の遊星歯車機構44のリングギヤ44bの外周側、すなわち半径方向外側位置には、第4の制動ドラム44Dが、リングギヤ44bと一体的に回転可能にかつリングギヤ44bに対し軸方向に移動可能に配設されている。第4の制動ドラム44Dの軸方向の一端(他方の第1の制動ドラム41Dbに対し軸方向反対側の一端であって図1において右端)には、第4の制動ドラム44Dの外周面から半径方向外方に延び出す環状のリブ44Drが形成されている。第4の制動ドラム44Dは、ドラム移動手段70により、制動位置R−onと非制動位置R−offとに選択的に位置付けられるよう構成されている。この構成については後に詳述する。上記片方の第1の制動ドラム41Da、他方の第1の制動ドラム41Db、第2、第3及び第4の制動ドラム42D、43D及び44Dは、入力軸2及び出力軸3と共通の軸線上に配列されている。
【0017】
他方の第1の制動ドラム41Db、片方の第1の制動ドラム41Da、第2の制動ドラム42D及び第3の制動ドラム43Dは、出力軸3側から入力軸2側に向かってこの順に配列されている。第4の制動ドラム44Dは、他方の第1の制動ドラム41Dbの、出力軸3側に配置されている。片方の第1の制動ドラム41Da、第2の制動ドラム42D及び第3の制動ドラム43Dは、軸方向に相互に比較的小さな一定の間隔をおいて配列されているが、片方の第1の制動ドラム41Da、他方の第1の制動ドラム41Db及び、非制動位置R−offに位置付けられた状態における第4の制動ドラム44Dは、軸方向に相互に比較的大きな一定の間隔をおいて配列されている。片方の第1の制動ドラム41Da、他方の第1の制動ドラム41Db、第2の制動ドラム42Dの軸方向幅は相互に実質的に同じに形成されているが、第4の制動ドラム44Dの軸方向幅はそれらよりも若干大きく形成され、第3の制動ドラム43Dの軸方向幅は、他の全ての制動ドラム(片方の第1の制動ドラム41Da、他方の第1の制動ドラム41Db、第2及び第4の制動ドラム42D及び44D)よりも大きく形成されている(片方の第1の制動ドラム41Da、他方の第1の制動ドラム41Db及び第2の制動ドラム42Dの軸方向幅の少なくとも2倍以上)。
【0018】
片方の第1の制動ドラム41Da、他方の第1の制動ドラム41Db、第2、第3及び第4の制動ドラム42D、43D及び44Dは、それぞれ導電性材料(例えば、銅、アルミニウム、鉄、鋼など)から形成され、それぞれ実質的に同じ外径寸法を有するよう形成されている。これらの各制動ドラムを、磁性材である鉄や鋼よりも優れた導電性を有する銅、アルミニウムなどにより形成することは、後述する磁石手段50との間に相対回転が生じた場合、表面に発生する渦電流が鉄や鋼に較べて大きくなって上記ドラムの制動効率が向上するので好ましいといえる。
【0019】
上記第4の遊星歯車機構44において、リングギヤ44bの外周側には円筒状の支持部材45が一体に配設されている。第4の制動ドラム44Dは、支持部材45の外周面に対し、相対回転できないようにかつ軸方向に移動可能に嵌合されている。更に具体的に説明すると、入力軸2及び出力軸3と共通の軸線を有する支持部材45の外周面には、周方向に間隔をおいて軸方向に平行に延在する図示しない複数の溝が形成され、第4の制動ドラム44Dの内周面には、周方向に間隔をおいて軸方向に平行に延在する図示しない複数の突部が形成され、第4の制動ドラム44Dの突部を支持部材45の溝に摺動自在に嵌合することにより、第4の制動ドラム44Dは、支持部材45の外周面に対し、相対回転できないようにかつ軸方向に移動可能に嵌合される。支持部材45の軸方向の一端(図1において左端であって、他方の第1の制動ドラム41Db側の一端)には、支持部材45の外周面から半径方向外方に延び出す環状のストッパ45aが形成されている。また支持部材45の軸方向の他端(図1において右端であって、他方の第1の制動ドラム41Dbに対し軸方向反対側の他端)の外周面には、環状の溝が形成され、該溝にストップリング45bが嵌合されている。ストップリング45bの周縁領域は支持部材45の外周面から半径方向外方に突出している。これらストッパ45a及びストップリング45bにより、第4の制動ドラム44Dの、支持部材45に対する軸方向移動が規制される。
【0020】
上記第4の遊星歯車機構44は、第4の制動ドラム44Dを軸方向に移動させて第4の制動ドラム44Dの外周面が後述する磁石手段5と対向する制動位置R−onと、磁石手段5と対向しない非制動位置R−offとに選択的に位置付けるドラム移動手段70を備えている。ドラム移動手段70は、第4の制動ドラム44Dの半径方向外側を入力軸2及び出力軸3と共通の軸線方向に該軸線に平行に延在する軸71を備えている。軸71は、変速装置のケース1の後壁1aに軸方向に摺動自在にかつ回転できないように支持されている。後壁1aは、支持部材45における軸方向の上記他端に近接して配置されている。軸71の一端側は後壁1aから支持部材45側に突出し、軸71の他端側は後壁1aから支持部材45とは反対側に突出している。軸71の一端部には、それぞれ軸71の外周面から半径方向外方に延び出す一対のフォーク72が軸方向に間隔をおいて配設されている。一対のフォーク72は、支持部材45のリブ44Drに相対回転自在に嵌合されている。軸71の、後壁1aから支持部材45とは反対側に突出した領域における他端部には、係止リング73が軸方向に移動できないように配設され、軸71の、係止リング73と後壁1aとの間には、ばね手段である圧縮コイルばね74が配設されている。軸71は、圧縮コイルばね74のばね力によって、他方の第1の制動ドラム41Dbに対し軸方向に離隔する方向に常時付勢されている。その結果、第4の制動ドラム44Dは、圧縮コイルばね74のばね力によって、その上記他端がストップリング45bに圧接された非制動位置に常時付勢され、位置付けられている。ドラム移動手段70は、アクチュエータ、実施形態においてはロータリソレノイド75と、アーム76とを備えている。アーム76の一端はロータリソレノイド75の回転駆動軸に一体に連結され、他端は軸71の他端に対向させられている。ロータリソレノイド75が非作動の状態においては、第4の制動ドラム44Dは非制動位置に位置付けられている。ロータリソレノイド75が作動されると、ロータリソレノイド75の回転駆動軸が所定の角度だけ回転駆動させられる。この回転は、アーム76を介して軸71に伝達され、軸71を圧縮コイルばね74のばね力に抗して他方の第1の制動ドラム41Dbが存在する軸方向に移動させる。その結果、第4の制動ドラム44Dは、後述する第2の磁石52に対向する制動位置に位置付けられる。
【0021】
上記した第4の遊星歯車機構44において、第1のプラネタリギヤ44cを第2のプラネタリギヤ44eに対しほぼ周方向に隣接しかつ若干半径方向外側寄りの位置に配置して噛み合わすレイアウトに構成した場合には、第4の制動ドラム44Dと共に第1〜第3の制動ドラム41D〜43Dの直径を短縮することができる。
【0022】
図示の変速装置は、上記第1、第2、第3及び第4の制動ドラム41D、42D、43D及び44Dの外周側に、回転が規制されかつ軸方向に移動可能に配設された磁石手段5(換言すれば、軸方向のみに移動可能に配設された磁石手段5)と、磁石手段5を軸方向に移動させて、第1〜第3の制動ドラム41D〜43Dの外周面と対向する第1〜第4の制動位置と、第1〜第4の制動ドラム41D〜44Dの外周面と対向しない制動解除位置とに位置付ける磁石作動手段6とを備えている。これら第1〜第4の制動ドラム41D〜44Dと、磁石手段5及び磁石作動手段6は、各遊星歯車機構41〜44を構成する回転要素の一つに制動力を与える回転要素制動手段を構成する。
【0023】
磁石手段5は、鉄などの磁性材から形成される磁石支持環50と、磁石支持環50の内周面に相互に軸方向に間隔をおいてかつそれぞれ周方向に間隔をおいて複数個配設された第1の磁石(換言すれば第1の磁石列)及び第2の磁石(換言すれば第2の磁石列)を備えている。磁石支持環50は入力軸2及び出力軸3と共通の軸線上に配置されている。第1の磁石及び第2の磁石は、この実施形態においては、それぞれ周方向に間隔をおいて配列されかつほぼ直方体形状を有する複数個の第1の永久磁石51及び第2の永久磁石52から構成されている。第1及び第2の永久磁石51及び52は磁極面がそれぞれ半径方向に向けられ、周方向に隣接する第1の永久磁石51の半径方向内側面同士と半径方向外側面同士及び周方向に隣接する第2の永久磁石52の半径方向内側面同士と半径方向外側面同士は、それぞれ相互に異極となるよう配置されている。相互に実質的に同じ形状及び大きさを有する第1の永久磁石51及び第2の永久磁石52は、相互に同じピッチで周方向に間隔をおいて配列され、軸方向には相互に間隔をおいてかつ並列して位置付けられている。軸方向に相互に間隔をおいてかつ並列して位置付けられた第1の永久磁石51及び第2の永久磁石52の磁極面は相互に同極となるよう配置されることが、磁気ショートを回避するためには好ましい。第1の永久磁石51及び第2の永久磁石52の半径方向内側面は、相互に同じ外径を有する制動ドラム41D〜45Dの外周面よりも若干大径の円周面に接するよう位置付けられている。なお、上記第1の永久磁石51の各々の磁石支持環50への保持は、例えば、第1の永久磁石51の各々間に楔部材を配置し、楔部材の各々を磁石支持環50にボルトにより締結することにより容易に行うことができる。また、上記第1の永久磁石51及び第2の永久磁石52に代えて第1の電磁石及び第2の電磁石を使用する他の実施形態もある。
【0024】
磁石作動手段6は、図示の実施形態においては、外周面に雄ねじが形成された1本のねじロッド部材60と、ねじロッド部材60を回転駆動する駆動源であるステッピングモータMとを備えている。ねじロッド部材60の一端部はステッピングモータMの図示しない駆動軸に駆動連結され、他端部は、変速装置のハウジング1に回転自在に支持されている。ねじロッド部材60は磁石支持環50の鉛直方向頂部における外周面の外側近傍を、磁石支持環50の軸線に平行に延在するよう配置されている。磁石支持環50の外周面には、該外周面から半径方向外方に突出するボス53が形成されており、ボス53には雌ねじ53aが形成されている。雌ねじ53aの軸線は磁石支持環50の軸線に平行に延在するよう配置されている。ボス53の雌ねじ53aがねじロッド部材60にねじ係合されることにより、磁石支持環50は、ねじロッド部材60に沿って軸方向に往復移動自在に支持される。磁石作動手段6はまた、変速装置のハウジング1に配設された少なくとも1本(実施形態においては1本)のガイドロッド61を備えている。ガイドロッド61は磁石支持環50の鉛直方向最下部における外周面の外側近傍を、磁石支持環50の軸線に平行に延在するよう配置されている。磁石支持環50の外周面であってボス50aに対し軸心を挟んだ反対側の位置には、該外周面から半径方向外方に突出する他のボス54が形成されており、ボス54には被ガイド孔54aが形成されている。被ガイド孔54aの軸線は磁石支持環50の軸線に平行に延在するよう配置されている。ボス54の被ガイド孔54aがガイドロッド61にスライド自在に嵌合されることにより、磁石支持環50は、ガイドロッド61に沿って軸方向に往復移動自在に支持される。
【0025】
磁石作動手段6のステッピングモータMを回転駆動制御することにより、磁石手段5は、第1〜第3の制動ドラム41D〜43Dの少なくとも1個の制動ドラムの外周面と所定の隙間をおいて対向する第1、第2、第3及び第4の制動位置と、第1〜第4の制動ドラム41D〜44Dのいずれの外周面とも対向しない制動解除位置に位置付けられる。
【0026】
更に具体的に説明すると、磁石手段5が、図1に示す制動解除位置〔中立位置(N)〕に位置付けられた状態においては、磁石手段5の第1の永久磁石51は、第1の制動ドラム対41Dの中間における空間に対向し、第2の永久磁石52は、支持部材45の外周面に対し、第4の制動ドラム対44Dの半径方向の厚さ以上の隙間をおいて対向する。これは、少なくとも、第4の制動ドラム44Dが、支持部材45の、図1に示す非制動位置R−offから図6に示す制動位置R−onに移動させられるときの干渉を防ぐために設けられる。支持部材45が鋼材などの磁性材からなる場合には、該隙間は、少なくとも支持部材45に対する磁束の影響が無視できる程度に設定される。また、支持部材45がアルミなどの非磁性材からなる場合には、該隙間は最小でよい。磁石手段5が、図2に示す第1の制動位置〔1速位置(I)〕に位置付けられると、第1の永久磁石51は片方の第1の制動ドラム41Daの外周面に対向し、かつ第2の永久磁石52は他方の第1の制動ドラム41Dbの外周面に対向する。磁石手段5が、図3に示す第2の制動位置〔2速位置(II)〕に位置付けられると、第1の永久磁石51は第2の制動ドラム42Dの外周面に対向し、かつ第2の永久磁石52は第1の制動ドラム対41Dの中間における空間に対向する手段5が、図4に示す第3の制動位置〔3速位置(III)〕に位置付けられると、第1の永久磁石51は第3の制動ドラム43Dの外周面の軸方向一端部(第2の制動ドラム42D側の一端部)に対向して、かつ第2の永久磁石52は片方の第1の制動ドラム41Daの外周面に対向する。磁石手段5が、図5に示す第4の制動位置〔4速位置(IV)〕に位置付けられると、第1の永久磁石51は第3の制動ドラム43Dの外周面の他端部に対向し、かつ第2の永久磁石52は第2の制動ドラム42Dの外周面に対向する。また、磁石手段5が上記制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラム44Dは、ロータリソレノイド75の作動によって、制動位置R−onと非制動位置R−offとに選択的に位置付けられる。
【0027】
磁石作動手段6のステッピングモータMの回転駆動制御は、例えば、次のとおりにして容易に行なうことができる。すなわち、磁石手段5、したがって磁石支持環50の、図1に示す制動解除位置〔中立位置(N)〕を基準位置として予め定め、該基準位置である制動解除位置〔中立位置(N)〕から上記第1〜第4の制動位置までの移動ストロークに対応した回転数を予め算定して図示しないコントローラに記憶しておく。そして、運転者による変速指示信号に基づく制動位置と現在の制動位置との間の移動ストロークに対応した回転数をコントローラにより演算し、ステッピングモータMを該回転数だけ正転又は逆転させることにより、磁石支持環50を現在の制動位置から変速指示信号に基づく制動位置へ、ねじロッド部材60及びガイドロッド61に沿って、回転が規制された状態で軸方向に移動させることができる。
【0028】
図1に示す変速装置は以上のように構成されており、以下その作動について説明する。磁石手段5が図1に示すように中立位置(N)に位置付けられている場合には、先に述べたように、第1の永久磁石51が第1の制動ドラム対41Dの間の空間に対向しかつ第2の永久磁石52が支持部材45の外周面に対し上記隙間をおいて対向する。周方向に相互に隣接する第1の永久磁石51の半径方向内側の磁極面間には磁界が形成され、周方向に相互に隣接する第1の永久磁石51の半径方向外側の磁極面と磁石支持環50との間には磁気回路が形成される。また、周方向に相互に隣接する第2の永久磁石52の半径方向内側の磁極面間にはそれぞれ磁界が形成され、周方向に相互に隣接する第2の永久磁石52の半径方向外側の磁極面と磁石支持環50との間には磁気回路が形成される。しかしながら第1及び第2の永久磁石51及び52の半径方向内側にはそれぞれ上記空間及び隙間が存在するので、第1及び第2の永久磁石51及び52の磁気が、第1〜第4の制動ドラム41D〜44D及び支持部材45に作用することはない。すなわち、磁石手段5が中立位置(N)にある状態では、磁石手段5は動力を伝達するための制動力を発揮しないよう機能する。出力軸3は、一般的には、車両の制動装置の作動などにより固定された状態にある。このため、第1の遊星歯車機構41のプラネタリキャリア41d(第4の遊星歯車機構44の第2のプラネタリギヤ44eのプラネタリキャリアを兼用している)は固定される。他方、第1の制動ドラム対41D及び第2〜第4の制動ドラム42D〜44D、すなわち第1の遊星歯車機構41のリングギヤ41b及び第2の遊星歯車機構42のプラネタリキャリア42d、第2の遊星歯車機構42及び第3の遊星歯車機構43のリングギヤ42b及び43b、及び、第4の遊星歯車機構44のリングギヤ44b及び支持部材45はいずれも固定されない。その結果、入力軸2から出力軸3へ動力は実質的に伝達されない。なお、第1〜第4の制動ドラム41D〜44Dは空転させられる。
【0029】
図2を参照して、変速装置を1速で作動させるため、磁石手段5を1速位置(I)に位置付けると、先に述べたように、第1の永久磁石51は片方の第1の制動ドラム41Daの外周面に対向し、かつ第2の永久磁石52は他方の第1の制動ドラム41Dbの外周面に対向する。片方の第1の制動ドラム41Daは、周方向に相互に隣接する第1の永久磁石51の半径方向内側の磁極面間に形成される磁界内に位置付けられ、他方の第1の制動ドラム41Dbは、周方向に相互に隣接する第2の永久磁石52の半径方向内側の磁極面間に形成される磁界内に位置付けられるので、それぞれ、第1及び第2の永久磁石51及び52の磁気作用を受ける。このとき、片方の第1の制動ドラム41Da及び他方の第1の制動ドラム41Dbからなる第1の制動ドラム対41Dは回転させられているので、第1及び第2の永久磁石51及び52と第1の制動ドラム対41Dとの間に相対速度差が生ずる。この相対速度差によって第1の制動ドラム対41Dの外周面に渦電流が生ずるので、第1の制動ドラム対41D、すなわち第1の遊星歯車機構41のリングギヤ41b及び第2の遊星歯車機構42のプラネタリキャリア42dが制動トルクを受ける。その結果、入力軸2に伝達された回転トルクは、ワンウエイクラッチ21、サンギヤユニット22に配設された、第1の遊星歯車機構41のサンギヤ41aを介して第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cに伝達される。プラネタリギヤ41cはリングギヤ41bに沿って自転しつつ公転し、この公転が軸41s、軸受Br及びプラネタリキャリア41dを介して出力軸3に伝達される。この場合、入力軸2の回転速度は減速されて出力軸3に伝達される。なお、第1の制動ドラム対41D、すなわちリングギヤ41b及びプラネタリキャリア42dは、渦電流に基づく制動トルクを受けて回転速度が低下するが、この回転速度が小さくなると上記渦電流に基づく制動トルクが発生しなくなるため停止することはない。このため、リングギヤ41b及びプラネタリキャリア42dは、トルク伝達時においても低い所定の回転速度付近で回転している。なお上記したような第1の制動ドラム対41Dに作用する制動力発生の原理は、他の制動ドラムにおいても同じであるので、以降の説明においては説明を省略する。
【0030】
図3を参照して、変速装置を2速で作動させるため、磁石手段5を2速位置(II)に位置付けると、先に述べたように、第1の永久磁石51は第2の制動ドラム42Dの外周面と対向し、かつ第2の永久磁石52は第1の制動ドラム対41Dの中間に存在する空間に対向する。第2の制動ドラム42Dは、周方向に相互に隣接する第1の永久磁石51の半径方向内側の磁極面間に形成される磁界内に位置付けられるので、第1の永久磁石51の磁気作用を受ける。このとき、第2の制動ドラム42Dは回転させられているので、第2の制動ドラム42D、すなわち第2の遊星歯車機構42のリングギヤ42bが制動トルクを受ける。その結果、入力軸2に伝達された回転トルクは、ワンウエイクラッチ21、サンギヤユニット22に配設された、第2の遊星歯車機構42のサンギヤ42aを介して第2の遊星歯車機構42のプラネタリギヤ42cに伝達されると共に、第1の遊星歯車機構41のサンギヤ41aを介して第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cに伝達される。プラネタリギヤ42cはリングギヤ42bに沿って自転しつつ公転し、この公転は、プラネタリキャリア42d、第1の遊星歯車機構41のリングギヤ41b、プラネタリギヤ41c、軸41s、軸受Br及びプラネタリキャリア41dを介して出力軸3に伝達される。この2速の場合、入力軸2の回転速度は1速の場合よりも増速されて出力軸3に伝達される。
【0031】
上記したように変速装置が低速段である1速又は2速で作動しているとき、高速段側の回転要素である第3の制動ドラム43Dも空転させられるが、その回転数は入力軸2の回転数を越えることはない。その結果、変速装置の低速段での作動時に高速段側の回転要素、すなわち第3の制動ドラム43Dが高速で空転することが防止され、駆動エネルギーのロスが少なくなるので、駆動効率が、先に述べた従来の変速装置よりも向上する。なお、変速装置が低速段である1速又は2速で作動しているとき、第4の制動ドラム44Dも空転させられるが、その回転数は入力軸2の回転数を越えることはない。
【0032】
図4を参照して、変速装置を3速で作動させるため、磁石手段5を3速位置(III)に位置付けると、先に述べたように、第1の永久磁石51が第3の制動ドラム43Dの外周面に対向し、かつ第2の永久磁石52が片方の第1の制動ドラム41Daの外周面に対向する。第3の制動ドラム43Dは、周方向に相互に隣接する第1の永久磁石51の半径方向内側の磁極面間に形成される磁界内に位置付けられ、また、片方の第1の制動ドラム41Daは、周方向に相互に相互に隣接する第2の永久磁石52の半径方向内側の磁極面間に形成される磁界内に位置付けられるので、第3の制動ドラム43D及び片方の第1の制動ドラム41Daは、それぞれ第1及び第2の永久磁石51及び52の磁気作用を受ける。このとき、第3の制動ドラム43D及び片方の第1の制動ドラム41Daは回転させられているので、第3の制動ドラム43D、すなわち第3の遊星歯車機構43のリングギヤ43bと、片方の第1の制動ドラム41Da、すなわち第1の遊星歯車機構41のリングギヤ41b及び第2の遊星歯車機構42のプラネタリキャリア42dが制動トルクを受ける。その結果、入力軸2に伝達された回転トルクは、第3の遊星歯車機構43のプラネタリキャリア43dを介してプラネタリギヤ43cに伝達される。プラネタリギヤ43cはリングギヤ43bに沿って自転しつつ公転し、この自転及び公転は、サンギヤユニット22に配設された、第3の遊星歯車機構43のサンギヤ43aを介してサンギヤユニット22に伝達される。サンギヤ43a、したがってサンギヤユニット22は、入力軸2よりも増速されるので、ワンウエイクラッチ21の締結状態が解除される。以上のようにしてサンギヤユニット22に伝達された回転トルクは、第1の遊星歯車機構41のサンギヤ41aを介してプラネタリギヤ41cに伝達される。プラネタリギヤ41cはリングギヤ41bに沿って自転しつつ公転し、この公転が軸41s、軸受Br及びプラネタリキャリア41dを介して出力軸3に伝達される。この3速の場合、入力軸2の回転速度は2速の場合よりも増速されて出力軸3に伝達される。また、第3の遊星歯車機構43と第1の遊星歯車機構41のギヤ比を同一に設定した場合には、出力軸3の回転数は入力軸2の回転数と同じとなり、1:1の速度比を得ることができる。
【0033】
図5を参照して、変速装置を4速で作動させるため、磁石手段5を4速位置(IV)に位置付けると、先に述べたように、第1の永久磁石51が第3の制動ドラム43Dの外周面に対向し、かつ第2の永久磁石52が第2の制動ドラム42Dの外周面に対向する。第3の制動ドラム43Dは、周方向に相互に隣接する第1の永久磁石51の半径方向内側の磁極面間に形成される磁界内に位置付けられ、また、第2の制動ドラム42Dは、周方向に相互に相互に隣接する第2の永久磁石52の半径方向内側の磁極面間に形成される磁界内に位置付けられるので、第3の制動ドラム43D及び第2の制動ドラム42Dは、それぞれ第1及び第2の永久磁石51及び52の磁気作用を受ける。このとき、第3の制動ドラム43Dは第3速で制動作用を受けた状態の回転を維持しているが、第2の制動ドラム42Dはそれよりも高速で回転させられているので、第2の制動ドラム42D、すなわち第2の遊星歯車機構42のリングギヤ42bが制動トルクを受ける。その結果、上記した3速の場合と同じく、入力軸2に伝達された回転トルクは、第3の遊星歯車機構43のプラネタリキャリア43dを介してプラネタリギヤ43cに伝達される。プラネタリギヤ43cはリングギヤ43bに沿って自転しつつ公転し、この自転及び公転は、サンギヤユニット22の本体部22aに配設された、第3の遊星歯車機構43のサンギヤ43aを介してサンギヤユニット22に伝達される。サンギヤ43a、したがってサンギヤユニット22は、入力軸2よりも増速されるので、ワンウエイクラッチ21の締結状態が解除される。以上のようにしてサンギヤユニット22に伝達された回転トルクは、第2の遊星歯車機構42のサンギヤ42aを介してプラネタリギヤ42cに伝達されると共に、第1の遊星歯車機構41のサンギヤ41aを介して第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cに伝達される。プラネタリギヤ42cはリングギヤ42bに沿って自転しつつ公転し、この公転が第1の遊星歯車機構41のリングギヤ41bに伝達される。リングギヤ41bに伝達された回転トルクは、プラネタリギヤ41c、軸41s、軸受Br及びプラネタリキャリア41dを介して出力軸3に伝達される。この4速の場合、入力軸2の回転速度は3速の場合よりも増速されて出力軸3に伝達される。
【0034】
上記変速装置において、1速で作動させられる場合(図2参照)、上記したように、第1の永久磁石51が片方の第1の制動ドラム41Daの外周面に対向し、かつ第2の永久磁石52が他方の第1の制動ドラム41Dbの外周面に対向する。つまり、第1の遊星歯車機構41のリングギヤ41b及び第2の遊星歯車機構42のプラネタリキャリア42dは、相互に実質的に一体の第1の制動ドラム対41Dを構成する片方の第1の制動ドラム41Da及び他方の第1の制動ドラム41Dbの二つの制動ドラムが第1及び第2の永久磁石51及び52の両方の磁力の作用を受けることによって制動されるので、上記変速装置が第2速〜第4速で作動させられる場合に比べて、特に大きな制動トルクを受ける。その結果、特に大きな所要のトルクを入力軸2から出力軸3へ迅速かつ確実に伝達することが可能になるので、上記変速装置を車両に搭載して使用した場合には、車両の発進動作を先に述べた従来装置におけるよりも更に円滑かつ確実に遂行することを可能にするものである。また、上記した如く、第1の遊星歯車機構41のリングギヤ41b及び第2の遊星歯車機構42のプラネタリキャリア42dを制動するために、片方及び他方の第1の制動ドラム41Da及び41Dbを配設するにもかかわらず、中立、1速、2速、3速及び4速間のシフトは所要のとおり円滑かつ確実に遂行されるので、所要のとおりの合理的なシフトパターンは確保される。
【0035】
上記変速装置において、3速で作動させられる場合(図4参照)、上記したように、入力軸2に伝達された回転トルクは、第3の遊星歯車機構43のプラネタリキャリア43d、プラネタリギヤ43c及びサンギヤユニット22に配設されたサンギヤ43a、及び第1の遊星歯車機構41の、サンギヤユニット22に配設されたサンギヤ41a、プラネタリギヤ41c、軸41s、軸受Br及びプラネタリキャリア41dを介して出力軸3に伝達されるよう構成されているので、先に述べた従来の変速装置における如く、3個の遊星歯車機構を駆動する必要がなく、比較的少ないギヤを駆動することによって出力軸3に動力を伝達することができる。その結果、変速装置の駆動効率を向上させることができ、実用上有用である。
【0036】
また、変速装置が4速で作動させられる場合(図5参照)、上記したように、入力軸2に伝達された回転トルクは、第3の遊星歯車機構43のプラネタリキャリア43d、プラネタリギヤ43c及びサンギヤユニット22に配設されたサンギヤ43a、第2の遊星歯車機構42の、サンギヤユニット22に配設されたサンギヤ42a、プラネタリギヤ42c及びプラネタリキャリア42d、第1の遊星歯車機構41のリングギヤ41b(プラネタリキャリア42dに連結されている)、プラネタリギヤ41c、軸41s、軸受Br及びプラネタリキャリア41dを介して出力軸3に伝達されるよう構成されている。この4速の場合においても、先に述べた従来の変速装置における如く、4個の遊星歯車機構を駆動する必要がなく、比較的少ないギヤを駆動することによって出力軸3に動力を伝達することができる。また先に述べた従来の変速装置においては、3個の制動ドラムを駆動する必要があるが、上記変速装置においては2個の制動ドラム(第1の制動ドラム対41Dのみ)を駆動すればよく、この点においても、有利である。以上の結果、変速装置の駆動効率を向上させることができ、実用上有用である。
【0037】
次に、図6を参照して、変速装置を後進で作動させる場合には、磁石手段5が上記制動解除位置〔中立位置(N)〕に位置付けられた状態で、ロータリソレノイド75を作動させる。第4の制動ドラム44Dは、支持部材45上を圧縮コイルばね74のばね力に抗して非制動位置R−offから制動位置R−onに移動させられる。第4の制動ドラム44Dは、第2の永久磁石52の内側面に対向する(換言すれば、第2の永久磁石52の内側面が第4の制動ドラム44Dの外周面に相対的に対向する)。第4の制動ドラム44Dは、周方向に相互に隣接する第2の永久磁石52の半径方向内側の磁極面間に形成される磁界内に位置付けられるので、第4の制動ドラム44Dは、第2の永久磁石52の磁気作用を受ける。このとき、第4の制動ドラム44Dは回転させられているので、第4の制動ドラム44D、すなわち第4の遊星歯車機構44のリングギヤ44bが制動トルクを受ける。入力軸2に伝達された回転トルクは、ワンウエイクラッチ21、サンギヤユニット22に配設された、第1の遊星歯車機構41のサンギヤ41aを介して第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cに伝達される。プラネタリギヤ41cが駆動されると、軸41sを介して第4の遊星歯車機構44の第2のプラネタリギヤ44eがプラネタリギヤ41cと一体に回転駆動される。第2のプラネタリギヤ44eが回転駆動されると、第1のプラネタリギヤ44cが第4の遊星歯車機構44のリングギヤ44bに沿って自転しつつ公転する。その結果、軸41sが自転しながら公転させられるので、プラネタリキャリア41d及び出力軸3が回転駆動させられる。サンギヤ41aの回転方向は入力軸2と同じ方向であるが、これに噛み合うプラネタリギヤ41c及びこれと一体の軸41sと第2のプラネタリギヤ44eの回転方向は入力軸2と反対方向であり、第2のプラネタリギヤ44eに噛み合う第1のプラネタリギヤ44cは入力軸2と同じ方向に回転(自転)するが、リングギヤ44bに沿って入力軸2と反対方向に公転させられる。その結果、第2のプラネタリギヤ44e、軸41s及びプラネタリギヤ41cが入力軸2と反対方向に公転させられるので、プラネタリキャリア41d及び出力軸3は、入力軸2と反対方向、すなわち車両を後進させる方向に回転駆動されるのである。
【0038】
上記した如く磁石手段5が上記制動解除位置〔中立位置(N)〕に位置付けられた状態において、かつ、第4の制動ドラム44Dが制動位置R−onに位置付けられた状態において、ロータリソレノイド75の作動を解除させると、第4の制動ドラム44Dは、支持部材45上を圧縮コイルばね74のばね力によって、制動位置R−onから非制動位置R−offに移動させられる。これにより変速装置は中立状態となる。このように、上記変速装置によれば、磁石手段5が上記制動解除位置〔中立位置(N)〕に位置付けられた状態で、第4の制動ドラム44Dが、ロータリソレノイド75によって、非制動位置R−offと制動位置R−onとに選択的に位置付けられるよう構成されているので、上記した合理的なシフトパターンを確保しながら、車両の後進を可能にする。
【0039】
以上のように、上記変速装置においては、磁石手段5、したがって磁石支持環50を、1速位置(I)、2速位置(II)、3速位置(III)及び4速位置(IV)に選択的に位置付けることにより、それぞれ所定の変速比の出力(出力軸3を入力軸2と同方向に回転駆動する出力)を得ることができる。また、磁石手段5が上記制動解除位置〔中立位置(N)〕に位置付けられた状態において、第4の制動ドラム44Dを制動位置R−onに位置付けることにより、所定の変速比の出力(出力軸3を入力軸2と逆方向に回転駆動する出力)を得ることができる。上記各リングギヤ、プラネタリキャリアなどに制動力を与える回転要素制動手段は渦電流による制動機構であるため、機械的な接触部がなく、非接触で制動力を与えることができる。その結果、制動における摩耗がなく、耐久性を向上することができる。また、渦電流による制動機構は制動ドラムと磁石手段との間に滑りが発生することで制動力が作用し、遊星歯車機構を機能させることができるので、入力軸2を車両の原動機である内燃機関に直接連結しても車両を停止状態から発進駆動することができる。すなわち、本発明に従って構成された変速装置を車両の変速装置に適用した場合には、車両を発進するために用いられている摩擦クラッチやトルクコンバータ等の流体継手を除去することが可能となる。
【0040】
また上記変速装置においては、第1、第2及び第3の遊星歯車機構を配列することにより、4段変速が可能な変速装置を得ることができるので、先に述べた従来の変速装置に較べて、部品点数が少なく、全体の構成がコンパクトとなり、軽量化及びコストダウンを可能にした。
【0041】
本発明の上記実施形態において、第4の制動ドラム45のドラム移動手段70は上記した如く構成されているが、第4の制動ドラム45を非制動位置R−offと制動位置R−onとの間を往復移動させるものであれば、どのような移動手段であってもよい。また、アクチュエータも、ロータリソレノイド75に限定されるものではなく、他の形態のソレノイド、流体圧シリンダ機構、電動モータ、その他の駆動源を利用することができる。また、磁石作動手段6におけるねじロッド部材60及びステッピングモータMに代えて、流体圧シリンダ機構あるいは他の磁石作動手段を利用してもよい。
【0042】
図7には本発明による変速装置の他の実施形態が示されている。この変速装置において、第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cは、プラネタリキャリア41dに回転自在に支持されており、プラネタリキャリア41dは出力軸3に一体に連結されている。また、第4の遊星歯車機構44は、入力軸2及び出力軸3と共通の軸線上に配置されたリングギヤ44b、リングギヤ44bと第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cとに噛み合わされたプラネタリギヤ44f、及び第1の遊星歯車機構41のプラネタリキャリア41dに一体に連結されたプラネタリキャリア44gの各回転要素を備えている。プラネタリギヤ44fはプラネタリキャリア44gに回転自在に支持されている。第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cは、図示の実施形態においては歯幅が比較的広く形成されている。その他の構成は図1に示す変速装置と実質的に同じであり、したがって同一部分は同一符号で示し、説明は省略する。
【0043】
上記のように構成された図7に示す変速装置の作動において、磁石手段5を、中立位置(N)[図7に示す位置]、1速位置(I)、2速位置(II)、3速位置(III)及び4速位置(IV)にそれぞれ位置付けた場合の作動については、先の実施形態におけるのと実質的に同じであるので説明は省略する。以下、後進の場合についてのみ、その作動を説明する。
【0044】
図7と共に図6を参照して、図7に示す変速装置を後進で作動させる場合には、磁石手段5が上記制動解除位置〔中立位置(N)〕に位置付けられた状態で、ロータリソレノイド75を作動させる。第4の制動ドラム44Dは、先に述べたと同様にして非制動位置R−offから制動位置R−onに移動させられる。第4の制動ドラム44Dは、第2の永久磁石52の内側面に対向するので、先に述べたと実質的に同様な、第2の永久磁石52の磁気作用などによって、第4の制動ドラム44D、すなわち第4の遊星歯車機構44のリングギヤ44bが制動トルクを受ける。入力軸2に伝達された回転トルクは、ワンウエイクラッチ21、サンギヤユニット22に配設された、第1の遊星歯車機構41のサンギヤ41aを介して第1の遊星歯車機構41のプラネタリギヤ41cに伝達される。プラネタリギヤ41cが駆動されると、第4の遊星歯車機構44のプラネタリギヤ44fがリングギヤ44bに沿って自転しつつ公転する。このプラネタリギヤ44fは、第1の遊星歯車機構41のサンギヤ41aによりプラネタリギヤ41cを介して駆動されるため、サンギヤ41aと回転方向が同じとなるので、公転方向が逆となる。つまり、プラネタリキャリア44gの回転方向はサンギヤ41aとは逆方向となる。その結果、プラネタリギヤ41cに伝達された動力は、プラネタリキャリア44g及びこれと一体のプラネタリキャリア41dを介して出力軸3を入力軸2とは逆方向に回転させるように伝達される。出力軸3は、入力軸2と反対方向、すなわち車両を後進させる方向に回転駆動される。
【0045】
上記した如く磁石手段5が上記制動解除位置〔中立位置(N)〕に位置付けられた状態において、かつ、第4の制動ドラム44Dが制動位置R−onに位置付けられた状態において、ロータリソレノイド75の作動を解除させると、第4の制動ドラム44Dは、先の実施形態におけるのと実質的に同様にして、制動位置R−onから非制動位置R−offに移動させられる。これにより変速装置は中立状態となる。
【0046】
上記説明から容易に理解されるように、図7に示す変速装置の実施形態は、図1に示す変速装置の実施形態と実質的に共通する基本的構成を有しているので、共通する基本的構成については、実質的に共通の作用効果を得ることができる。
【0047】
図8〜図13には、磁石手段の他の実施形態が示されている。図示の磁石手段500は、磁石支持手段500Aと、磁石支持手段500Aに配設された複数個の永久磁石550とを備えている。永久磁石550の各々は相互に実質的に同じ形状及び大きさを有している。永久磁石550は、図10に明示されているように、軸方向に間隔をおいて相互に対向するよう配置された第1の磁極部550a及び第2の磁極部550bと、第1及び第2の磁極部550a及び550bを接続するよう配設された橋絡部550cとからなる。第1及び第2の磁極部550a及び550bは橋絡部550cの両端から相互に平行にかつ橋絡部550cに対して直角に同じ長さだけ延び出すよう構成されている。第1及び第2の磁極部550a及び550bと橋絡部550cは横断面がほぼ矩形状をなしている。したがって、第1及び第2の磁極部550a及び550bは、橋絡部550cの長手方向両端において、橋絡部550cの片面から相互に平行にかつ該片面に対して直角に同じ長さだけ延び出すよう構成されている。この実施形態において、第1の磁極部550a及び第2の磁極部550bと橋絡部550cとは一体に形成されている。図10から明らかなように、上記の如く構成された永久磁石550は、全体としてほぼチャンネル形状ないしU形状をなしている。第1及び第2の磁極部550a及び550bは、各々の先端に、相互に異極(N−S)をなす磁極面を有している。磁極面の各々は矩形状をなしている。後述するとおりにして磁石作動手段6のねじロッド部材60に配設された状態、広義には変速装置に配設された状態において、永久磁石550の各々は、入力軸2及び出力軸3の軸方向に間隔をおいて相互に対向するよう配置された第1及び第2の磁極部550a及び550bと、第1及び第2の磁極部550a及び550bを接続するよう配設された橋絡部550cとからなり、第1及び第2の磁極部550a及び550bは橋絡部550cの両端から半径方向内側に延び出すよう構成され、永久磁石550の各々において、第1及び第2の磁極部550a及び550bは、半径方向内側に向けられた、相互に異極をなす磁極面(N又はS)を有している。
【0048】
磁石支持手段500Aは、第1の磁石支持環551と、第2の磁石支持環552と、第1の磁石押さえ環553と、第2の磁石押さえ環554とを備えている。図11にその一部が明示されているように、第1の磁石支持環551は、一定の軸方向幅及び半径方向厚さを有する円筒状の本体部551aと、本体部551aの外周面の全周にわたって相互に等間隔をおいて半径方向外方に延び出す複数個(偶数個)の突起部551bとを備えている。第1の磁石支持環551は、例えばアルミニウム合金などの非磁性材から形成されている。突起部551bの半径方向外側面は、本体部551aと共通の軸心を有する共通の円周面上に位置付けられた円弧面からなる。
【0049】
例えばアルミニウム合金などの非磁性材から形成することができる第2の磁石支持環552は、一定の軸方向幅及び半径方向厚さを有する円筒状の本体部555と、本体部555の外周面から半径方向外方に延び出すボス部556と、ボス部556に対し軸心を挟んだ反対側の位置における外周面から半径方向外方に延び出す図示しない他のボス部とを備えている。本体部555には、周方向に間隔おいて複数個の取付孔555aが軸方向に延在するよう形成されている。ボス部556には雌ねじ556aが軸方向に延在するよう形成され、他のボス部には図示しない被ガイド孔が軸方向に延在するよう形成されている。雌ねじ556aは、鋼材など耐久性に優れた他の円筒部材の内側に形成し、この円筒部材をボス部556に埋め込むことが好ましい。また、上記被ガイド孔は、摩擦係数が低く耐久性に優れた他の円筒部材の内側に形成し、この円筒部材を他のボス部に埋め込むことが好ましい。
【0050】
第1の磁石支持環551の軸方向幅は、永久磁石550の第1及び第2の磁極部550a及び550bの、相互に対向する面間の間隔にほぼ等しく、第1の磁石支持環551の内径は、第1〜第4の制動ドラム41D〜44Dの外径よりも若干大きい。また、第1の磁石支持環551の本体部551aの半径方向厚さは、永久磁石550の第1及び第2の磁極部550a及び550bの、橋絡部550cからの延び出し長さとほぼ等しい。更にはまた、第1の磁石支持環551の突起部551b間の間隔は、永久磁石550の幅とほぼ等しい。第2の磁石支持環552の軸方向幅は、永久磁石550の長手方向両端面(第1及び第2の磁極部550a及び550bの、相互に対向する面と反対側の端面)間の距離にほぼ等しい。また、第2の磁石支持環552の本体部555aの内周面は、第1の磁石支持環551の突起部551bにおける半径方向外側面の外径(該外側面と共通の円周面の外径)とほぼ同じ内径を有している。
【0051】
相互に実質的に共通部品からなる第1及び第2の磁石押さえ環553及び554は、一定の軸方向厚さ及び半径方向幅を有する環状円板からなり、例えばアルミニウム合金などの非磁性材から形成されている。第1及び第2の磁石押さえ環553及び554には、それぞれ周方向に間隔おいて複数個の取付孔553a及び54aが軸方向に延在するよう形成されている。取付孔553a及び554aの各々は、第2の磁石支持環552の本体部555に形成された上記取付孔555aの各々と整合する。第1及び第2の磁石押さえ環553及び554の内径は、第1〜第4の制動ドラム41D〜44Dの外径よりも若干大きく、また第1及び第2の磁石押さえ環53及び54の外径は、第2の磁石支持環552の本体部555の外径とほぼ等しい。
【0052】
永久磁石550は、第1の磁石支持環551の本体部551aにおける半径方向外側面であって、突起部551bの各々の間に装着される。永久磁石550の各々の第1及び第2の磁極部550a及び550bの相互の対向面は、第1の磁石支持環551の本体部551aの両側面にほぼ密着し、第1及び第2の磁極部550a及び550bの磁極面は、第1の磁石支持環551の本体部551aの幅方向両側において、本体部551aの内周面と一致する円周面に対し、半径方向外側からほぼ接するよう位置付けられる。また、永久磁石550の各々の橋絡部550cの両側面は、第1の磁石支持環551の突起部551bの各々の、相互に対向する周方向面にほぼ密着させられる(該周方向面の間隔は半径方向外方に向かってわずかずつ拡大するよう形成されている)。更にはまた、永久磁石550の各々の半径方向外側面であって、最大外径部は、第1の磁石支持環551の突起部551bの半径方向外側面と共通の円周面に対し、半径方向内側からほぼ接するよう位置付けられる。なお、第1の磁石支持環551に装着された状態において、永久磁石550の各々の半径方向外側面を、第1の磁石支持環551の突起部551bの半径方向外側面と共通の円周面にほぼ整合する円弧面に形成してもよい。
【0053】
上記した如く、複数の永久磁石550が第1の磁石支持環551に装着された状態で、第1の磁石支持環551は第2の磁石支持環552の本体部555の内周面に嵌合される。第1の磁石支持環551の突起部551bの各々の半径方向外側面は、第2の磁石支持環552の本体部555の内周面にほぼ密着ないし圧接される。永久磁石550の各々の長手方向両端面は、それぞれ第2の磁石支持環552の幅方向両側面とほぼ共通の面上に位置付けられる。第1及び第2の磁石押さえ環553及び554は、それぞれ第2の磁石支持環552の本体部555の幅方向両側面に当接され、第1及び第2の磁石押さえ環553及び554の取付孔553a及び554aと、第2の磁石支持環552の本体部555の取付孔555aを整合した状態で複数のボルト558及び559により、軸方向に締結する。第1及び第2の磁石押さえ環553及び554の内周面は、第1の磁石支持環551の本体部551aの内周面と共通の円周面にほぼ整合するよう位置付けられる。
【0054】
磁石作動手段6は、先の実施形態と実質的に同じであるので、同一部分を同一符号で示し、説明は省略する。第2の磁石支持環552のボス部556に形成された雌ねじ556aがねじロッド部材60にねじ係合され、かつ、第2の磁石支持環552の他のボス部に形成された被ガイド孔(いずれも図示せず)がガイドロッド61にスライド自在に嵌合されることにより、第2の磁石支持環552は、ねじロッド部材60及びガイドロッド61に沿って軸方向に往復移動自在に支持される。
【0055】
上記したとおりにして、永久磁石550の各々が磁石支持手段500Aに支持された状態において、周方向に相互に隣り合う永久磁石550の各々における、第1の磁極部550aは、第1の磁石支持環551の軸方向一側に周方向に等間隔をおいて配列され、周方向に相互に隣合う第1の磁極部550aの各々の磁極面同士は相互に異極をなす。また、第2の磁極部550bは、第1の磁石支持環551の軸方向他側に周方向に等間隔をおいて配列され、周方向に相互に隣合う第2の磁極部550bの各々の磁極面同士は相互に異極をなす。図12及び図13を参照して、周方向に相互に隣り合う永久磁石550の各々における、第1の磁極部550aの磁極面間には、それぞれNからSに向かう磁力線で示すことができる磁界が形成され、また、周方向に相互に隣り合う永久磁石550の各々における、第2の磁極部550bの磁極面間には、それぞれNからSに向かう磁力線で示すことができる磁界が形成される。更に、永久磁石550の各々における橋絡部550cには、第1の磁極部550aの磁極面から第2の磁極部550bの磁極面に向かう磁力線で示すことができる磁路が形成される(第1の磁極部550aの磁極面がS、第2の磁極部550bの磁極面がNの場合)か、又は、第2の磁極部550bの磁極面から第1の磁極部550aの磁極面に向かう磁力線で示すことができる磁路が形成される(第2の磁極部550bの磁極面がS、第1の磁極部550aの磁極面がNの場合)。このようにして、環状に配列された永久磁石550の各々間には、全周にわたって、周方向及び軸方向に連続した磁気回路が形成される。
【0056】
先の実施形態と同様に、磁石作動手段6のステッピングモータMを回転駆動制御することにより、磁石手段500、更に具体的には、永久磁石550の各々における第1の磁極部550aの磁極面及び/又は第2の磁極部550bの磁極面は、第1〜第4の制動ドラム41D〜44Dの少なくとも1個の制動ドラムの外周面と所定の隙間をおいて対向する第1、第2、第3又は第4の制動位置と、第1〜第4の制動ドラム41D〜44Dのいずれの外周面とも対向しない制動解除位置に位置付けられる。
【0057】
更に具体的に説明すると、磁石手段500が、図8、及び図1に示すのと同じ制動解除位置〔中立位置(N)〕に位置付けられた状態においては、永久磁石550の各々における第1の磁極部550aの磁極面は第1の制動ドラム対41Dの中間における空間に対向し、第2の磁極部550bの磁極面は支持部材45の外周面に対向する。磁石手段500が、図2に示すのと同じ第1の制動位置〔1速位置(I)〕に位置付けられると、永久磁石550の各々における第1の磁極部550aの磁極面は片方の第1の制動ドラム41Daの外周面に対向し、かつ第2の磁極部550bの磁極面は他方の第1の制動ドラム41Dbの外周面に対向する。磁石手段500が、図3に示すのと同じ第2の制動位置〔2速位置(II)〕に位置付けられると、第2の磁極部550bの磁極面は第2の制動ドラム42Dの外周面に対向し、かつ第2の磁極部550bの磁極面は第1の制動ドラム対41Dの中間における空間に対向する。磁石手段500が、図4に示すのと同じ第3の制動位置〔3速位置(III)〕に位置付けられると、永久磁石550の各々における第1の磁極部550aの磁極面は第3の制動ドラム43Dの外周面対向し、かつ第2の磁極部550bの磁極面は片方の第1の制動ドラム41Daの外周面に対向する。磁石手段500が、図5に示すのと同じ第4の制動位置〔4速位置(IV)〕に位置付けられると、永久磁石550の各々における第1の磁極部550aの磁極面は第1の永久磁石51は第3の制動ドラム43Dの外周面に対向し、かつ第2の磁極部550bの磁極面は第2の制動ドラム42Dの外周面に対向する。また、磁石手段500が上記制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラム44Dは、ロータリソレノイド75の作動によって、制動位置R−onと非制動位置R−offとに選択的に位置付けられる。第4の制動ドラム44Dが制動位置R−onに位置付けられると、第2の磁極部550bの磁極面は第4の制動ドラム42Dの外周面に対向する。
【0058】
上記説明から容易に理解されるように、永久磁石550の各々の第1の磁極部550aの配列は、先の実施形態における第1の磁石51の配列に相当し、また、永久磁石550の各々の第2の磁極部550bの配列は、先の実施形態における第2の磁石52の配列に相当する。したがって、磁石手段500の上記各制動位置における制動作用それ自体に関しては先の実施形態における磁石手段500の上記各制動位置における制動作用と実質的に同じであるので、更なる説明は省略する。
【0059】
上記磁石手段500を備えた変速装置において、周方向に間隔をおいて配列された永久磁石550の各々は、軸方向に間隔をおいて相互に対向するよう配置された第1及び第2の磁極部550a及び550bと、第1及び第2の磁極部550a及び550bを接続するよう配設された橋絡部550cとからなる。第1及び第2の磁極部550a及び550bは橋絡部550cの両端から半径方向内側に延び出すよう構成されている。永久磁石550の各々において、第1及び第2の磁極部550a及び550bは、半径方向内側に向けられた、相互に異極をなす磁極面を有し、周方向に相互に隣り合う永久磁石550の各々における、第1の磁極部550aの磁極面同士及び第2の磁極部550bの磁極面同士は相互に異極をなしている。つまり、本発明における永久磁石550の各々においては、周方向に配列された第1の磁極部550aの磁極面間に磁界が連続して形成され、かつ、周方向に配列された第2の磁極部550bの磁極面間に磁界が連続して形成されると共に、第1の磁極部550aと第2の磁極部550bとの間は、それぞれ、軸方向に延在する橋絡部550cにより形成される磁束流路を介して連通されているので、第1の磁極部550aと第2の磁極部550bとが分離されている形態の従来の永久磁石の構成及び配列と比較して、永久磁石550の各々の半径方向寸法を増加させることなく、永久磁石550の各々の磁力を一層強化することができる。また、半径方向内側に向けられた、永久磁石550の各々の磁極面の面積を増加させることなく、永久磁石550の各々の磁力を強化することができる。その結果、駆動力の伝達性能を一層向上させることができる。先に述べたように、各変速段において、制動ドラムに作用する制動力を増大するほど入力軸2から出力軸3への駆動力の伝達性能が向上するが、本発明による変速装置においては、永久磁石550の各々の半径方向寸法を増加させることなく、また永久磁石550の各々の磁極面の面積を増加させることなく、制動ドラムに作用する制動力を増大させることが可能となるので、変速装置のコンパクト化及び軽量化を達成しながら、駆動性能を向上させることができる。したがって、本発明による変速装置は、車両への搭載上、きわめて有利となる。また特に、本発明における変速装置においては、1速段の制動ドラムが、第1の制動ドラム対45Dから構成されているので、上記した如く、永久磁石550の各々の磁力を強化することにより、1速段の制動力が一層強化されるので、1速段における駆動力の伝達性能が一層向上する。
【0060】
以上、本発明を車両に搭載された変速装置の実施形態により説明したが、本発明による変速装置の用途が車両に限定される理由はなく、産業上使用される変速装置として広く適用することが可能である。本発明による変速装置において、入力軸2の回転方向を出力軸3に逆転して伝達する必要がない場合には、逆転機構である第4の遊星歯車機構44、第4の制動ドラム44D及び第4の制動ドラム44Dに関連する機構が不要となることはいうまでもない。
【0061】
【発明の効果】
本発明による変速装置によれば、1速で作動させる場合において、特に大きな所要の駆動トルクを入力軸から出力軸へ迅速かつ確実に伝達することを可能にする。また、合理的なシフトパターンを確保しながら上記効果を達成することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による変速装置の実施形態の概略構成図であって、中立状態を示す概略構成図。
【図2】図1に示す変速装置の、1速作動状態を示す概略構成図。
【図3】図1に示す変速装置の、2速作動状態を示す概略構成図。
【図4】図1に示す変速装置の、3速作動状態を示す概略構成図。
【図5】図1に示す変速装置の、4速作動状態を示す概略構成図。
【図6】図1に示す変速装置の、後進作動状態を示す概略構成図。
【図7】本発明による変速装置の他の実施形態の概略構成図であって、中立状態を示す概略構成図。
【図8】本発明による磁石手段の他の実施形態の要部を示す断面概略図であって、磁石手段が中立位置に位置付けられた状態を示す断面概略図。
【図9】図8のA−A矢視断面図であって、一部を破断して示す断面図。
【図10】図7に示す磁石手段に備えられている永久磁石を拡大して示す斜視図。
【図11】図7に示す磁石手段に備えられている第1の磁石支持環の一部を拡大して示す斜視図。
【図12】図7に示す磁石手段に備えられている永久磁石間に形成される磁界の状態を磁力線で示す模式図。
【図13】図12に示す永久磁石列を軸方向から見た模式図。
【符号の説明】
2 入力軸
3 出力軸
5 磁石手段
50 磁石支持環
51 第1の永久磁石
52 第2の永久磁石
6 磁石作動手段
21 ワンウエイクラッチ
22 サンギヤユニット
22a 本体部
22A 中心軸部
41 第1の遊星歯車機構
41D 第1の制動ドラム
42 第2の遊星歯車機構
42D 第2の制動ドラム
43 第3の遊星歯車機構
43D 第3の制動ドラム
44 第4の遊星歯車機構
44D 第4の制動ドラム
45D 中立ドラム
41a、42a、43a サンギヤ
41b、42b、43b 44b リングギヤ
41c、42c、43c、44f プラネタリギヤ
44c 第1のプラネタリギヤ
41d、42d、43d、44d、44g プラネタリキャリア
41e、41f プラネタリキャリア
41s 軸
44e 第2のプラネタリギヤ
Br 軸受
500 永久磁石
550 永久磁石
550a 第1の磁極部
550b 第2の磁極部
550c 橋絡部

Claims (8)

  1. 入力軸と出力軸との間に配設された第1、第2及び第3の遊星歯車機構を備えている変速装置において、
    導電性材料からなる第1の制動ドラム対、第2及び第3の制動ドラムと、各制動ドラムの外周側に軸方向のみに移動可能に配設された磁石手段と、磁石手段を移動させて、制動ドラムの外周面と対向する第1、第2、第3及び第4の制動位置と制動ドラムの外周面と対向しない制動解除位置に位置付ける磁石作動手段とを備え、
    入力軸には、各遊星歯車機構のサンギヤを備えたサンギヤユニットがワンウエイクラッチを介して連結されかつ第3の遊星歯車機構のプラネタリキャリアが連結され、第3の遊星歯車機構のリングギヤには第3の制動ドラムが、第2の遊星歯車機構のリングギヤには第2の制動ドラムが連結され、第1の遊星歯車機構のリングギヤには第1の制動ドラム対及び第2の遊星歯車機構のプラネタリキャリアが連結され、第1の遊星歯車機構のプラネタリキャリアは出力軸に連結され、
    磁石手段が、第1の制動位置に位置付けられると第1の制動ドラム対の外周面に対向し、第2の制動位置に位置付けられると第2の制動ドラムの外周面に対向し、第3の制動位置に位置付けられると第3の制動ドラムの外周面に対向すると共に第1の制動ドラム対を構成する片方の第1の制動ドラムの外周面に対向し、第4の制動位置に位置付けられると第3の制動ドラム及び第2の制動ドラムの外周面に対向する、
    ことを特徴とする変速装置。
  2. 磁石手段は、磁石支持環と、磁石支持環の内周面に相互に軸方向に間隔をおいてかつそれぞれ周方向に間隔をおいて複数個配設された第1及び第2の磁石を備え、
    磁石手段が、第1の制動位置に位置付けられると第1の磁石が第1の制動ドラム対を構成する片方の第1の制動ドラムの外周面に対向すると共に第2の磁石が第1の制動ドラム対を構成する他方の第1の制動ドラムの外周面に対向し、第2の制動位置に位置付けられると第1の磁石が第2の制動ドラムの外周面に対向し、第3の制動位置に位置付けられると第1の磁石が第3の制動ドラムの外周面に対向すると共に第2の磁石が第1の制動ドラム対を構成する片方の第1の制動ドラムの外周面に対向し、第4の制動位置に位置付けられると第1の磁石が第3の制動ドラムの外周面に対向すると共に第2の磁石が第2の制動ドラムの外周面に対向する、請求項1記載の変速装置。
  3. 入力軸の回転を逆転して出力軸に伝達する第4の遊星歯車機構が備えられ、第4の遊星歯車機構は、リングギヤと、該リングギヤの外周側に該リングギヤと一体的に回転可能にかつ該リングギヤに対し軸方向に移動可能に配設された、導電性材料からなる第4の制動ドラムと、第4の制動ドラムを軸方向に移動させて第4の制動ドラムの外周面が磁石手段と対向する制動位置と磁石手段と対向しない非制動位置とに選択的に位置付けるドラム移動手段と、該リングギヤに噛み合わされた第1のプラネタリギヤと、第1のプラネタリギヤに噛み合わされた第2のプラネタリギヤとを備え、第2のプラネタリギヤと第1の遊星歯車機構のプラネタリギヤとは一体に回転しうるよう軸により連結され、該軸は、第1の遊星歯車機構のプラネタリキャリアに回転自在に支持され、磁石手段が制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラムは、ドラム移動手段によって、制動位置と非制動位置とに選択的に位置付けられる、請求項1記載の変速装置。
  4. 入力軸の回転を逆転して出力軸に伝達する第4の遊星歯車機構が備えられ、第4の遊星歯車機構は、リングギヤと、該リングギヤの外周側に該リングギヤと一体的に回転可能にかつ該リングギヤに対し軸方向に移動可能に配設された、導電性材料からなる第4の制動ドラムと、第4の制動ドラムを軸方向に移動させて第4の制動ドラムの外周面が磁石手段と対向する制動位置と磁石手段と対向しない非制動位置とに選択的に位置付けるドラム移動手段と、該リングギヤ及び第1の遊星歯車機構のプラネタリギヤに噛み合わされたプラネタリギヤと、第1の遊星歯車機構のプラネタリキャリアに連結されたプラネタリキャリアと、該リングギヤに連結された導電性材料からなる第4の制動ドラムとを備え、磁石手段が制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラムは、ドラム移動手段によって、制動位置と非制動位置とに選択的に位置付けられる、請求項1記載の変速装置。
  5. 該リングギヤの外周側には円筒状の支持部材が一体に配設され、第4の制動ドラムは、支持部材の外周面に対し、相対回転できないようにかつ軸方向に移動可能に嵌合されている、請求項3又は請求項4記載の変速装置。
  6. 磁石手段は、磁石支持環と、磁石支持環の内周面に相互に軸方向に間隔をおいてかつそれぞれ周方向に間隔をおいて複数個配設された第1及び第2の磁石を備え、磁石手段が制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラムが制動位置に位置付けられると、第4の制動ドラムの外周面は第2の磁石に対向する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の変速装置。
  7. 磁石手段は、磁石支持手段と、相互に周方向に間隔をおいて磁石支持手段に配設された複数個の永久磁石とを備え、永久磁石の各々は、軸方向に間隔をおいて相互に対向するよう配置された第1及び第2の磁極部と、第1及び第2の磁極部を接続するよう配設された橋絡部とからなり、第1及び第2の磁極部は橋絡部の両端から半径方向内側に延び出すよう構成され、永久磁石の各々において、第1及び第2の磁極部は、半径方向内側に向けられた、相互に異極をなす磁極面を有し、周方向に相互に隣り合う永久磁石の各々における、第1の磁極部の磁極面同士及び第2の磁極部の磁極面同士は相互に異極をなし、
    磁石手段が、第1の制動位置に位置付けられると永久磁石の各々の第1の磁極部の磁極面が第1の制動ドラムの外周面に対向し、第2の制動位置に位置付けられると第1の磁極部の磁極面が第2の制動ドラムの外周面に対向し、第3の制動位置に位置付けられると第1の磁極部の磁極面が第3の制動ドラムに対向しかつ第2の磁極部の磁極面が第1の制動ドラムの外周面に対向し、第4の制動位置に位置付けられると第1の磁極部の磁極面が第3の制動ドラムに対向しかつ第2の磁極部の磁極面が第2の制動ドラムの外周面に対向する、請求項1記載の変速装置。
  8. 磁石手段は、磁石支持手段と、相互に周方向に間隔をおいて磁石支持手段に配設された複数個の永久磁石とを備え、永久磁石の各々は、軸方向に間隔をおいて相互に対向するよう配置された第1及び第2の磁極部と、第1及び第2の磁極部を接続するよう配設された橋絡部とからなり、第1及び第2の磁極部は橋絡部の両端から半径方向内側に延び出すよう構成され、永久磁石の各々において、第1及び第2の磁極部は、半径方向内側に向けられた、相互に異極をなす磁極面を有し、周方向に相互に隣り合う永久磁石の各々における、第1の磁極部の磁極面同士及び第2の磁極部の磁極面同士は相互に異極をなし、
    磁石手段が制動解除位置に位置付けられた状態で、第4の制動ドラムが制動位置に位置付けられると、第4の制動ドラムの外周面は永久磁石の各々における第2の磁極部の磁極面に対向する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の変速装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP3042083A4 (en) * 2013-09-05 2017-05-10 Eaton Corporation Variable output centrifugal pump

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