JP2005023156A - 固形状接着剤および固形状接着剤用液状原料組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】被着体への塗布性および初期接着性を良好に維持しつつ、製品自体の着色が抑制され外観特性に優れた固形状接着剤、および該固形状接着剤を調製するための原料液状組成物を提供する。
【解決手段】水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の成分および無機還元性物質を構成要素に含むことを特徴とする固形状接着剤である。
【解決手段】水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の成分および無機還元性物質を構成要素に含むことを特徴とする固形状接着剤である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性、被着体への塗布性が良好で、さらに外観特性に優れる固形状接着剤と、該固形状接着剤を調製するための原料液状組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長鎖脂肪酸塩などを形状保持用ゲル化剤とし、ポリビニルピロリドン(PVP)などの水溶性接着ポリマーを主成分とする固形状接着剤を口紅状容器に充填してなるいわゆるスティック糊が知られている。
【0003】
上述のような固形状接着剤では、保存時における固形状接着剤自体の変色や、上記接着剤を被着体に塗布した場合に、塗布部分が経日的に黄変したり褪色したりすることが問題とされていた。
【0004】
これらの問題の解決を目的とした技術は多数提案されており、たとえば特許文献1には、固形状接着剤が酸化されることで生じる変色を有機系の抗酸化剤を使用することで防止する技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−502594号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本発明者らは、上記固形状接着剤の初期接着性を向上させる技術として、水溶性接着ポリマーを接着成分の主体として、さらに特定量の水性高分子エマルジョンを配合してなる固形状接着剤を提案している(特願2003−148970号)。
【0007】
上記固形状接着剤は、被着体への塗布性や初期接着性には優れているが、得られる製品が著しく着色してしまう場合があり、固形接着剤自体の商品価値を損なうだけでなく、被着体の種類によっては使用がためらわれたり、塗布後の被着体外観を著しく損なうおそれがあった。また、かかる外観不良は、上述の特許文献1に開示された技術では克服できず、更なる検討が必要であった。
【0008】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであって、その目的は、被着体への塗布性および初期接着性を良好に維持しつつ、製品自体の着色が抑制され外観特性に優れた固形状接着剤、および該固形状接着剤を調製するための原料液状組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の固形状接着剤は、
1)水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の成分および無機還元性物質を構成要素に含む、あるいは、
2)水溶性接着ポリマー、糖アルコールと芳香族アルデヒドとの縮合物および/または脂肪酸塩、および無機還元性物質を構成要素に含むところに要旨を有するものである。
【0010】
上述のように無機還元性物質を固形状接着剤の構成要素とすることで、製造工程における加熱により製品自体の着色が顕著となるのを抑制し、外観特性に優れた固形状接着剤とすることができる。
【0011】
また、上記固形状接着剤を調製するための原料液状組成物であって、
3)水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の成分および無機還元性物質を構成要素に含む、あるいは
4)水溶性接着ポリマーと無機還元性物質を構成要素に含む固形状接着剤用原料液状組成物も本発明に包含される。
【0012】
【発明の実施の形態】
上記問題について、本発明者らが検討を進めたところ、固形状接着剤の着色は、構成要素として水溶性接着ポリマーと共に水性高分子エマルジョン由来の成分を含む場合、製造時の加熱によって顕著になることを突き止めた。しかしながら、初期接着性の向上を図るには水性高分子エマルジョン由来の成分は重要な構成要素である。そこで、さらなる検討を進めた結果、水溶性接着ポリマーと、水性高分子エマルジョン由来の成分とを含む固形状接着剤の構成要素として、さらに無機還元性物質を採用すれば、固形状接着剤としての特性、例えば、被着体への塗布性や、初期接着性を損なうことなく、固形状接着剤の着色を防ぎ得ることを見出した。
【0013】
また、水性高分子エマルジョン由来の成分を含まない構成の固形状接着剤においても、製造時の加熱によって、程度は小さいものの着色が認められるが、無機還元性物質の採用によって、このような着色も防止しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明の固形状接着剤の構成について、詳細に説明する。
<固形状接着剤の第1の態様>
本発明の固形状接着剤の第1の態様(以下、この項の説明において、第1の態様を単に「本発明の固形状接着剤」という)は、接着成分の主体である水溶性接着ポリマーと、水性高分子エマルジョン由来の成分に加えて、無機還元性物質を含むところに特徴を有するものである。本発明の固形状接着剤おいて、特に無機還元性物質を採用したのは、有機還元性物質では着色抑制効果が得られず、また、製造時の加熱によって固形状接着剤の着色を増進させる場合があるからである。上記無機還元性物質としては、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウムなどの亜硫酸塩、二酸化硫黄、チオ硫酸ナトリウムなどが好ましく用いられる。これらの中でも、亜硫酸塩は着色抑制効果が高く、安全性にも優れるため好ましい。より好ましくは、亜硫酸ナトリウムである。
【0014】
上記無機還元性物質の量は、後述する水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上である。無機還元性物質の配合量が上記下限値を満足する場合には、固形状接着剤の着色を低減する効果が特に有効に発揮される。
【0015】
尚、無機還元性物質の量の上限は特に限定されないが、水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対して、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。本発明の固形状接着剤は、例えば、各原料を混合・加熱して粘稠な液状物とし、これを容器(口紅状など)に充填し、冷却固化することで得られるが、無機還元性物質量が上記上限値を超えると、容器に充填される前の液状物の粘度が増大し、1cm〜数cmといった比較的小径の口紅状容器への充填作業に時間がかかる傾向がある。
【0016】
なお、本発明において水性高分子エマルジョン由来の固形分とは、該水性高分子エマルジョンを常圧下、110℃で2時間乾燥さたときに得られる不揮発分をいうものである。
【0017】
固形状接着剤の着色の度合いは、分光色差計を使用して固形状接着剤のLab色差(JIS Z 8730規定されているCIE Lab色差式による色差)を測定して得られるb値により評価できる。なお、b値は大きいほど黄色味が強く、固形状接着剤が着色していることを示しており、b値が3.5以下であれば、白色の固形状接着剤として許容される範囲である。
【0018】
本発明の固形状接着剤の接着成分の主体は、水溶性接着ポリマーである。前記水溶性接着ポリマーとしては、例えば、N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマー;ポリビニルアルコールおよびビニルアルコール共重合体;ポリウレタンおよびウレタン共重合体;ポリアクリル酸およびアクリル酸共重合体、並びにこれらの塩;ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの変性多糖類;などが挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
これらの中でも、良好な接着性や、後記ゲル化剤の使用量が少量でも十分な形状保持性が確保可能な点で、N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマー、ポリビニルアルコールおよびその共重合体(特にポリビニルアルコール)、変性多糖類が好ましく、N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマーが特に好ましい。
【0020】
N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマーに使用可能なN−ビニルラクタム類の具体例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−ε−カプロラクタムなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。接着性および入手のし易さなどの観点から、最も好ましいものはN−ビニルピロリドンである。
【0021】
N−ビニルラクタム類以外に水溶性接着ポリマーを合成する際に用いることのできるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルなどのアミノ基含有モノマー類;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミドなどのアミド基含有モノマー類;酢酸ビニル;スチレン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;炭素数2〜30のα−オレフィン類などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。ただし、これらのN−ビニルラクタム類以外のモノマーは、モノマー成分100質量%中、50質量%以下に抑えることが好ましい。N−ビニルラクタム類に由来するポリマーの水溶性や優れた接着性を低下させることがあるからである。
【0022】
以上のことから、N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマーの中でも、ポリビニルピロリドンまたはビニルピロリドン共重合体がより好ましく、ポリビニルピロリドンが最も好ましい。
【0023】
N−ビニルラクタム類を必須成分に含むモノマー成分を重合してなるポリマーでは、濃度:1質量%の水溶液とし、毛細管粘度計によって測定される相対粘度値(25℃)を用いて下式で求まるK値が大きいほど、固形状接着剤の接着力を高め得ることから、該K値は50以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。
【0024】
【数1】
【0025】
また、水溶性接着ポリマー(N−ビニルラクタム類を必須成分に含むモノマー成分を重合してなるポリマーに限定されない)では、濃度:10質量%の水溶液とし、B型粘度計(スピンドルNo.2)を用いて25℃で測定して得られる粘度が大きいほど、固形状接着剤の接着力を高め得ることから、該粘度は30mPa・s以上であることが好ましく、70mPa・s以上であることがより好ましく、100mPa・s以上であることが更に好ましい。
【0026】
なお、水溶性接着ポリマー(特にN−ビニルラクタム類を必須成分に含むモノマー成分を重合してなるポリマー)は一般に高価であり、固形状接着剤の原料コストの大きな部分を占めているが、本発明では安価な水性高分子エマルジョン(後述する)を配合することで接着性の向上を図り得るため、従来と同レベルの接着性を確保する場合には、高価な水溶性接着ポリマーを減量して、コストダウンを図ることができるといった利点も有している。
【0027】
本発明では、上記水溶性接着ポリマーに加えて、初期接着性の向上を目的として水性高分子エマルジョンを用いる。本発明において水性高分子エマルジョンとは、水を含む媒体中に重合体粒子が均一に分散しているエマルジョンをいうものである。
【0028】
上記水性高分子エマルジョンは、最低造膜温度(MFT)が30℃以下であることが好ましい。MFTがこの上限値を超える場合には、固形状接着剤の常温での接着性が低下することがあるからである。水性高分子エマルジョンのMFTは25℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることが更に好ましい。なお、ここでいうMFTは、次の方法により測定される値である。熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に、0.2mmギャップのアプリケーターで、水性高分子エマルジョンを塗工し、クラックが生じたところの温度(すなわち、MFT)を測定する。
【0029】
例えば、MFTが30℃以下の水性高分子エマルジョンは、ガラス転移温度(Tg)が40℃以下の重合体粒子を用いることを、一つの目安として調製できる。MFTはTg(℃)よりも大体10℃低いことが知られているからである。Tg(K)は、「POLYMER HANDBOOK 第3版」(John Wiley & Sons, Inc.発行)に記載された各ホモポリマーのTg(K)を元にして計算により簡単に求められる他、DSC(示差走査熱量測定装置)やTMA(熱機械測定装置)によって求めることができる。また、Tgの高い重合体粒子であっても、後述の可塑剤を用いて水性高分子エマルジョンとすることで、MFTを上記上限値以下に調整することも可能である。
【0030】
上記水性高分子エマルジョンの樹脂(重合体粒子)は、接着剤の分野で採用されている樹脂であれば特に限定されず、慣用の樹脂が使用できる。すなわち、上記水性高分子エマルジョンには、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体の如き酢酸ビニル系重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体の如きアクリル系重合体;ポリウレタンなどのウレタン系重合体;などを重合体粒子の主成分とする高分子エマルジョンが含まれる。また、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体を重合体粒子の主成分とするようなアルカリ可溶性のエマルジョンも使用可能である。これらの水性高分子エマルジョンは1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いても構わない。中でも、本発明の固形状接着剤の主要な被着体の一つである紙への接着性が良好であることから、酢酸ビニル系重合体のエマルジョンが推奨される。
【0031】
酢酸ビニル系重合体としては、ポリ酢酸ビニル(酢酸ビニルの単独重合体)の他、酢酸ビニルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な上記他のモノマーとしては、例えば、エチレンなどのオレフィン類;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどの酢酸ビニルを除くビニルエステル類;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸2−エチルヘキシルなどのマレイン酸エステル類;フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、フマル酸2−エチルヘキシルなどのフマル酸エステル類;などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
上述のようなモノマーを用いて得られる酢酸ビニル系重合体の中でも、本発明の固形状接着剤の主要な被着体の一つである紙への接着性が良好であることから、ポリ酢酸ビニルが好ましい。
【0033】
なお、上記酢酸ビニル系重合体のエマルジョンは、公知の乳化剤や保護コロイド、可塑剤(ジブチルフタレートやジオクチルフタレートなど)を含有していてもよい。
【0034】
上記水性高分子エマルジョンは、公知の手法で調製されたものであればよい。例えば、水系で上記のモノマーを乳化重合する方法や、別途重合して得られた上記の樹脂を、水を含む媒体中に分散(乳化)させる方法が挙げられる。なお、水性高分子エマルジョンの固形分濃度は20〜70質量%であることが一般的である。
【0035】
上記水性高分子エマルジョンでは、重合体粒子の粒径は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、平均粒径が0.001〜10μmであることが好ましい。
【0036】
上記水性高分子エマルジョン由来の固形分は、上記水溶性接着ポリマーと前記水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量に対し、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましく0.5質量%以上、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下とするのが望ましい。水性高分子エマルジョン由来の固形分量が上記範囲を超えると、製造工程における加熱により固形状接着剤が着色し易くなったり、水性高分子エマルジョンに含まれる重合体粒子の凝集が起こり易くなって接着性が低下する場合がある。一方、水性高分子エマルジョン由来の固形分量が上記範囲を下回ると、初期接着性向上の効果が小さくなる場合がある。
【0037】
本発明の固形状接着剤では、形状保持性を確保するために、ゲル化剤も構成要素とする。上記ゲル化剤は、特に限定されるものではなく、従来から固形状接着剤に通常使用されている公知のゲル化剤を用いることができる。例えば、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、リシノール酸塩などの、炭素数8〜36の脂肪酸の金属塩またはアンモニウム塩;ソルビット・ベンズアルデヒド縮合物、キシリット・ベンズアルデヒド縮合物などの、炭素数4以上の糖アルコールと芳香族アルデヒドとの縮合物;などが挙げられる。中でも、炭素数8〜36の脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が好適であり、アルカリ金属塩がより好ましい。なお、炭素数8〜36の脂肪酸の金属塩におけるアルカリ金属としては、Na、Kなどが一般的である。
【0038】
固形状接着剤の製造に当たっては、上記水溶性接着ポリマー、上記ゲル化剤、上記水性高分子エマルジョンおよび無機還元性物質を水系溶剤に加え溶解、加熱し分散させて、固形状接着剤組成物用の容器に充填する。水系溶剤としては水が好ましいが、水系溶剤中には、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類が含まれていてもよい。また、上記水系溶剤の全量が水性高分子エマルジョンの媒体(水を含む媒体)であってもよい。
【0039】
ゲル化剤を水系溶剤に溶解させるための溶解助剤として、また、湿潤剤および可塑剤として作用させるために、多価アルコールを配合することが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上のアルコール類が挙げられる。また、ケトース(へキスロース、ヘプツロースなど)、アルドン酸、アルダル酸、デオキシ糖、イノシトール糖の環状アルコールなども用いることができる。
【0040】
本発明の固形状接着剤では、上記ゲル化剤量は、上記水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対して好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であって、好ましくは80質量部以下、より好ましくは65質量部以下とすることが推奨される。ゲル化剤量が上記範囲を下回ると、固形状接着剤の形状保持性が低下する場合がある。他方、ゲル化剤量が上記範囲を超えると、初期接着性が低下する場合がある。
【0041】
また、固形状接着剤中の水系溶剤の量は、上記水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対し、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上であって、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下とすることが望ましい。なお、水系溶剤として、水に加えて上記例示の如き有機溶剤を併用する場合には、水系溶剤100質量%中、該有機溶剤を10質量%以下とするが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。勿論、水系溶剤の全量が水であることも好ましい。
【0042】
さらに、上記多価アルコールを使用する場合には、上記水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であって、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下とすることが望ましい。
【0043】
本発明の固形状接着剤組成物には、他に公知の添加剤を加えても構わない。このような添加剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンイミンなどの水溶性ポリマー類;亜麻仁油、リシン、ひまし油、大豆油、やし油、トール油、魚油、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの油脂類;ポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン(モノ、ジ、トリ)脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン(モノ、ジ、トリ)脂肪酸エステル、ソルビタン(モノ、ジ、トリ)ステアレートなどの界面活性剤など;流動パラフィンなどの潤滑剤;シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化バリウム、酸化亜鉛、タルク、ベントナイトなどの無機増量剤;ショ糖、ソルビトールなどの糖類;デキストリン、シクロデキストリンなどのデキストリン類;などが挙げられ、必要に応じて適量用いればよい。また、香料、蛍光増白剤、抗菌剤、防腐剤、着色剤なども配合可能である。例えば、抗菌剤を固形状接着剤中に0.01〜0.1質量%程度添加することが推奨される。
【0044】
固形状接着剤の具体的な製法としては、例えば以下の方法を採り得る。水系溶剤(好ましくは水)に水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョンおよび無機還元性物質を混合した後、この混合物を加熱しながら撹拌して均一な分散液(すなわち、本発明の固形状接着剤用原料液状組成物)を調製し、これにゲル化剤と、必要に応じて多価アルコールを混合して均一に溶解させ、さらに必要に応じて各種添加剤を混合し、粘稠な液状物とする。この液状物を容器(例えば、口紅状など)に充填し、冷却固化させて固形状接着剤とする。ただし、各原料の添加順序は特に限定されず、上記以外の順序で各原料を添加・混合してもよい。また、いうまでも無いが、水系溶剤の全量を水性高分子エマルジョン由来の媒体とする場合には、別途水系溶剤を使用する必要は無い。
【0045】
さらに、予め固形状接着剤用原料液状組成物を調製しておき、例えば該原料液状組成物に、更に水溶性接着ポリマーや、ゲル化剤、多価アルコール、各種添加剤を混合して上記の粘稠な液状物とし、上述の方法で固形状接着剤としてもよい。この場合の固形状接着剤用原料液状組成物では、水溶性接着ポリマー(好ましくはN−ビニルラクタム類を必須成分とするモノマー成分を重合してなるポリマー)の含有量が1質量%以上、好ましくは5質量%以上であって、40質量%以下、好ましくは30質量%以下であり、また、水性高分子エマルジョン由来の固形分が0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であって、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下であることが望ましい。このような原料液状組成物を用いることで、容易に固形状接着剤を調製することができる。水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の固形分共に、上記範囲を超えると、原料液状組成物の粘度が大きくなりすぎて、取り扱いが困難となり、上記範囲を下回ると、本発明の固形状接着剤を製造するための各成分量の調整が煩雑となる。
【0046】
なお、原料液状組成物の各成分量の好適範囲と、固形状接着剤の各成分量の好適範囲は一致していないが、これは、上記の通り、原料液状組成物にさらに水溶性接着ポリマーを混合して固形状接着剤を調製する場合もあり得るからである。
【0047】
また、上記固形状接着剤用原料液状組成物における無機還元性物質の配合量は、上記水溶性接着ポリマーと水溶性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下とするのが推奨される。無機還元性物質量が上記範囲を下回ると、固形状接着剤の着色を抑制する効果が小さくなる場合がある。一方上記範囲を超えて添加すると、原料液状組成物の粘度が増大し取り扱いが困難になる場合がある。
【0048】
尚、無機還元性物質は、上記固形状接着剤の着色抑制の他に、貯蔵時における固形状接着剤用原料液状組成物の粘度の低下を防ぐ効果も有している。該原料液状組成物の粘度の低下は、これを用いて製造される固形状接着剤の接着力の低下を引き起こす。しかしながら、無機還元性物質を添加しておくことで、上記問題を防ぐことができ、良好な接着力を有する固形状接着剤を得ることができる。
【0049】
また、予め原料液状組成物に無機還元性物質を配合しておくことで、貯蔵時における原料組成物の着色も防止することができる。このように無機還元性物質は、貯蔵時における上記原料液状組成物の安定性を確保するのにも有用である。
<固形状接着剤の第2の態様>
本発明の固形状接着剤の第2の態様は、水溶性接着ポリマーに加えて無機還元性物質を含むところに特徴を有している。
【0050】
上述したとおり、固形状接着剤製造時の加熱による着色は、水性高分子エマルジョン由来の成分が存在する場合に顕著であり、これが固形接着剤の着色を促進する成分として作用していると考えられるが、例えば、水性高分子エマルジョン由来の成分を含有しない構成の固形状接着剤においても、程度は小さいものの、製造時の加熱による着色は認められる。
【0051】
しかしながら、上記無機還元性物質を構成要素に含めることで、水性高分子エマルジョン由来の成分の存在とは無関係の着色も防止でき、外観特性の優れた固形状接着剤とすることができる。
【0052】
なお、第2の態様の固形状接着剤の必須成分である水溶性接着ポリマー、および無機還元性物質、ならびにその他の好適成分の具体例や含有組成、さらに製法に関しては、上述の第1の態様と同じである。
【0053】
また、第2の態様の固形状接着剤のための原料液状組成物、すなわち水溶性接着ポリマーと無機還元性物質を含む原料液状組成物については、水溶性接着ポリマー100質量部に対し、無機還元性物質を0.001質量部以上とするのが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
【0054】
本発明の固形状接着剤の対象となる好適な被着体は、第1の態様、第2の態様を問わず、和紙、合成紙、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、箔紙、クラフト紙、含浸紙、蒸着紙などの公知の紙類;ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム(シートも含む);木綿、ポリエステル、ナイロンなどの繊維からなる織布あるいは不織布など;各種糸類;アルミ箔、銅箔などである。
【0055】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、本実施例で用いる「部」、「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、本実施例で用いた評価方法は以下の通りである。
【0056】
尚、後述する本実施例で用いた水溶性接着ポリマーは、ポリビニルピロリドン(実験1〜5,8および9:日本触媒社製「K85」、K値85、実験6,7:International Specialty Products社製「K90」、K値90)であり、水性高分子エマルジョンとしては、固形分濃度が50%のポリ酢酸ビニルエマルジョン(日信化学工業社製「ビニブラン1107L」)を用いた。尚、前記ポリ酢酸ビニルエマルジョンについて、上述の方法により測定されるMFTは2℃である。
【0057】
〔白色度(b値)の測定〕
分光式色差計(日本電色工業(株)製 SE−2000)を使用して、下記実験により得られた固形状接着剤のLab色差(JIS Z 8730規定されているCIE Lab色差式による色差)を測定した。表1〜3に示した白色度は、b値を用いて評価した。
【0058】
〔粘度の測定〕
固形状接着剤用原料液状組成物70gを100mlのビーカーに入れ、25℃の恒温槽に3時間浸した後、B型粘度計(スピンドルNo.3)を用いて、回転数3rpmで粘度を測定した。
【0059】
実験1
還流冷却器と撹拌器を備えたフラスコに、水:54.6部と、上記ポリ酢酸ビニルエマルジョン:8.0部を加え、撹拌しながら80℃に昇温した。その後上記ポリビニルピロリドン:23.4部を継粉にならないように少しずつ添加して溶解させ、さらに亜硫酸ナトリウム:1.0部を添加して原料液状組成物とした。次に、グリセリン:6.0部、ステアリン酸ナトリウム(ゲル化剤):7.0部を添加して24時間撹拌し、粘稠な白色液状物を得た。この液状物を90℃に昇温した後、口紅状容器(内径:23mm、長さ:80mm)に充填し、放冷して固化させ、固形状接着剤を得た。この固形状接着剤の各原料組成と、その評価結果を表1に示す。
【0060】
実験2〜5
各原料の配合組成を表1に示すように変更した以外は、実験1と同様にして固形状接着剤を得た。これらの固形状接着剤の評価結果を表1に示す。なお、実験1および2の固形状接着剤は無機還元性物質を、実験4および5では有機還元性物質をそれぞれ用いた例を示しており、実験3は還元性物質を用いない例を示している。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の配合組成の欄において、「ポリ酢酸ビニルエマルジョン(固形分)」は、ポリ酢酸ビニルエマルジョン中の固形分量を示しており、「水」は、ポリ酢酸ビニルエマルジョン中の水と、別途用いた水の合計量を示している。
【0063】
表1から分かるように、無機還元性物質を使用した実験1および2の固形状接着剤の白色度(b値)は、還元性物質を含まない実験3の固形接着剤に比べて小さく、着色抑制効果が得られている。特に、無機還元性物質として亜硫酸ナトリウムを使用した実験1の固形状接着剤のb値は極めて小さく(b値:0.7)、優れた着色抑制効果が得られている。
【0064】
これに対し、有機還元性物質を使用した実験4および5の固形状接着剤のb値は、還元性物質を用いない実験3の固形状接着剤の値と同等(実験4)、または大きく(実験5)、着色を抑制できないばかりか、固形状接着剤を著しく着色させてしまうことが分かる。特に、L−アスコルビン酸ナトリウムを用いた実験5の固形状接着剤のb値は大きく(b値:14.9)、著しく着色していた。
【0065】
実験6、7
各原料の配合組成を表2に示すように変更した以外は、上記実験1と同様にして固形状接着剤を得た。これらの固形状接着剤の評価結果を表2に示す。尚、実験7の固形状接着剤は、無機還元性物質を使用しておらず、従来のポリビニルピロリドン系固形状接着剤に相当するものである。
【0066】
【表2】
【0067】
表2から分かるように、亜硫酸ナトリウム(無機還元性物質)を含有する固形状接着剤(実験6)は、実験7の固形状接着剤に比べて着色が抑制されており、無機還元性物質を使用することによって、着色抑制効果が得られることがわかる。このように、無機還元性物質による固形状接着剤の着色抑制効果は、製造時に加熱を要する固形状接着剤であれば、水性高分子エマルジョン由来の成分の有無に関係なく有効に得られることがわかった。
【0068】
実験8、9
各原料の配合組成を表2に示すように変更した以外は、上記実験1と同様にして固形状接着剤用原料液状組成物を調製した。得られた原料液状組成物を、空気雰囲気下でガラス製のサンプル管に入れて密封し、遮光して、60℃で3週間保存したときの原料液状組成物の貯蔵安定性を評価した。尚、評価は、上記液状組成物の貯蔵前後における白色度の比較により行った。
【0069】
【表3】
【0070】
無機還元性物質として亜硫酸ナトリウムを含む実験8の原料組成物溶液は、貯蔵前後における白色度の低下が小さく、また上述のような過酷な条件下においても粘度の低下をほとんど起こすことがなく、貯蔵安定性に優れるものであった。一方、亜硫酸ナトリウムを含まない実験9の原料組成物溶液は、上記条件で保存後、著しく着色すると共に、粘度が大幅に低下しており、該原料溶液を用いて固形状接着剤とするには不適なものであった。
【0071】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の成分を含む固形状接着剤に、無機還元性物質を配合することで、被着体への塗布性(形状保持性)および初期接着性を良好に維持しつつ、製品自体の着色を抑制することができた。
【0072】
また、無機還元性物質は、固形状接着剤の構成要素に水性高分子エマルジョン由来の成分を含む場合のみならず、製造時に加熱を要する固形状接着剤の黄変を低減するのに有効であることが分かった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性、被着体への塗布性が良好で、さらに外観特性に優れる固形状接着剤と、該固形状接着剤を調製するための原料液状組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長鎖脂肪酸塩などを形状保持用ゲル化剤とし、ポリビニルピロリドン(PVP)などの水溶性接着ポリマーを主成分とする固形状接着剤を口紅状容器に充填してなるいわゆるスティック糊が知られている。
【0003】
上述のような固形状接着剤では、保存時における固形状接着剤自体の変色や、上記接着剤を被着体に塗布した場合に、塗布部分が経日的に黄変したり褪色したりすることが問題とされていた。
【0004】
これらの問題の解決を目的とした技術は多数提案されており、たとえば特許文献1には、固形状接着剤が酸化されることで生じる変色を有機系の抗酸化剤を使用することで防止する技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−502594号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本発明者らは、上記固形状接着剤の初期接着性を向上させる技術として、水溶性接着ポリマーを接着成分の主体として、さらに特定量の水性高分子エマルジョンを配合してなる固形状接着剤を提案している(特願2003−148970号)。
【0007】
上記固形状接着剤は、被着体への塗布性や初期接着性には優れているが、得られる製品が著しく着色してしまう場合があり、固形接着剤自体の商品価値を損なうだけでなく、被着体の種類によっては使用がためらわれたり、塗布後の被着体外観を著しく損なうおそれがあった。また、かかる外観不良は、上述の特許文献1に開示された技術では克服できず、更なる検討が必要であった。
【0008】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであって、その目的は、被着体への塗布性および初期接着性を良好に維持しつつ、製品自体の着色が抑制され外観特性に優れた固形状接着剤、および該固形状接着剤を調製するための原料液状組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の固形状接着剤は、
1)水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の成分および無機還元性物質を構成要素に含む、あるいは、
2)水溶性接着ポリマー、糖アルコールと芳香族アルデヒドとの縮合物および/または脂肪酸塩、および無機還元性物質を構成要素に含むところに要旨を有するものである。
【0010】
上述のように無機還元性物質を固形状接着剤の構成要素とすることで、製造工程における加熱により製品自体の着色が顕著となるのを抑制し、外観特性に優れた固形状接着剤とすることができる。
【0011】
また、上記固形状接着剤を調製するための原料液状組成物であって、
3)水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の成分および無機還元性物質を構成要素に含む、あるいは
4)水溶性接着ポリマーと無機還元性物質を構成要素に含む固形状接着剤用原料液状組成物も本発明に包含される。
【0012】
【発明の実施の形態】
上記問題について、本発明者らが検討を進めたところ、固形状接着剤の着色は、構成要素として水溶性接着ポリマーと共に水性高分子エマルジョン由来の成分を含む場合、製造時の加熱によって顕著になることを突き止めた。しかしながら、初期接着性の向上を図るには水性高分子エマルジョン由来の成分は重要な構成要素である。そこで、さらなる検討を進めた結果、水溶性接着ポリマーと、水性高分子エマルジョン由来の成分とを含む固形状接着剤の構成要素として、さらに無機還元性物質を採用すれば、固形状接着剤としての特性、例えば、被着体への塗布性や、初期接着性を損なうことなく、固形状接着剤の着色を防ぎ得ることを見出した。
【0013】
また、水性高分子エマルジョン由来の成分を含まない構成の固形状接着剤においても、製造時の加熱によって、程度は小さいものの着色が認められるが、無機還元性物質の採用によって、このような着色も防止しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明の固形状接着剤の構成について、詳細に説明する。
<固形状接着剤の第1の態様>
本発明の固形状接着剤の第1の態様(以下、この項の説明において、第1の態様を単に「本発明の固形状接着剤」という)は、接着成分の主体である水溶性接着ポリマーと、水性高分子エマルジョン由来の成分に加えて、無機還元性物質を含むところに特徴を有するものである。本発明の固形状接着剤おいて、特に無機還元性物質を採用したのは、有機還元性物質では着色抑制効果が得られず、また、製造時の加熱によって固形状接着剤の着色を増進させる場合があるからである。上記無機還元性物質としては、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウムなどの亜硫酸塩、二酸化硫黄、チオ硫酸ナトリウムなどが好ましく用いられる。これらの中でも、亜硫酸塩は着色抑制効果が高く、安全性にも優れるため好ましい。より好ましくは、亜硫酸ナトリウムである。
【0014】
上記無機還元性物質の量は、後述する水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上である。無機還元性物質の配合量が上記下限値を満足する場合には、固形状接着剤の着色を低減する効果が特に有効に発揮される。
【0015】
尚、無機還元性物質の量の上限は特に限定されないが、水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対して、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。本発明の固形状接着剤は、例えば、各原料を混合・加熱して粘稠な液状物とし、これを容器(口紅状など)に充填し、冷却固化することで得られるが、無機還元性物質量が上記上限値を超えると、容器に充填される前の液状物の粘度が増大し、1cm〜数cmといった比較的小径の口紅状容器への充填作業に時間がかかる傾向がある。
【0016】
なお、本発明において水性高分子エマルジョン由来の固形分とは、該水性高分子エマルジョンを常圧下、110℃で2時間乾燥さたときに得られる不揮発分をいうものである。
【0017】
固形状接着剤の着色の度合いは、分光色差計を使用して固形状接着剤のLab色差(JIS Z 8730規定されているCIE Lab色差式による色差)を測定して得られるb値により評価できる。なお、b値は大きいほど黄色味が強く、固形状接着剤が着色していることを示しており、b値が3.5以下であれば、白色の固形状接着剤として許容される範囲である。
【0018】
本発明の固形状接着剤の接着成分の主体は、水溶性接着ポリマーである。前記水溶性接着ポリマーとしては、例えば、N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマー;ポリビニルアルコールおよびビニルアルコール共重合体;ポリウレタンおよびウレタン共重合体;ポリアクリル酸およびアクリル酸共重合体、並びにこれらの塩;ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの変性多糖類;などが挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
これらの中でも、良好な接着性や、後記ゲル化剤の使用量が少量でも十分な形状保持性が確保可能な点で、N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマー、ポリビニルアルコールおよびその共重合体(特にポリビニルアルコール)、変性多糖類が好ましく、N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマーが特に好ましい。
【0020】
N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマーに使用可能なN−ビニルラクタム類の具体例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−ε−カプロラクタムなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。接着性および入手のし易さなどの観点から、最も好ましいものはN−ビニルピロリドンである。
【0021】
N−ビニルラクタム類以外に水溶性接着ポリマーを合成する際に用いることのできるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルなどのアミノ基含有モノマー類;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミドなどのアミド基含有モノマー類;酢酸ビニル;スチレン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;炭素数2〜30のα−オレフィン類などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。ただし、これらのN−ビニルラクタム類以外のモノマーは、モノマー成分100質量%中、50質量%以下に抑えることが好ましい。N−ビニルラクタム類に由来するポリマーの水溶性や優れた接着性を低下させることがあるからである。
【0022】
以上のことから、N−ビニルラクタム類を必須成分として含有するモノマー成分を重合してなるポリマーの中でも、ポリビニルピロリドンまたはビニルピロリドン共重合体がより好ましく、ポリビニルピロリドンが最も好ましい。
【0023】
N−ビニルラクタム類を必須成分に含むモノマー成分を重合してなるポリマーでは、濃度:1質量%の水溶液とし、毛細管粘度計によって測定される相対粘度値(25℃)を用いて下式で求まるK値が大きいほど、固形状接着剤の接着力を高め得ることから、該K値は50以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。
【0024】
【数1】
【0025】
また、水溶性接着ポリマー(N−ビニルラクタム類を必須成分に含むモノマー成分を重合してなるポリマーに限定されない)では、濃度:10質量%の水溶液とし、B型粘度計(スピンドルNo.2)を用いて25℃で測定して得られる粘度が大きいほど、固形状接着剤の接着力を高め得ることから、該粘度は30mPa・s以上であることが好ましく、70mPa・s以上であることがより好ましく、100mPa・s以上であることが更に好ましい。
【0026】
なお、水溶性接着ポリマー(特にN−ビニルラクタム類を必須成分に含むモノマー成分を重合してなるポリマー)は一般に高価であり、固形状接着剤の原料コストの大きな部分を占めているが、本発明では安価な水性高分子エマルジョン(後述する)を配合することで接着性の向上を図り得るため、従来と同レベルの接着性を確保する場合には、高価な水溶性接着ポリマーを減量して、コストダウンを図ることができるといった利点も有している。
【0027】
本発明では、上記水溶性接着ポリマーに加えて、初期接着性の向上を目的として水性高分子エマルジョンを用いる。本発明において水性高分子エマルジョンとは、水を含む媒体中に重合体粒子が均一に分散しているエマルジョンをいうものである。
【0028】
上記水性高分子エマルジョンは、最低造膜温度(MFT)が30℃以下であることが好ましい。MFTがこの上限値を超える場合には、固形状接着剤の常温での接着性が低下することがあるからである。水性高分子エマルジョンのMFTは25℃以下であることがより好ましく、20℃以下であることが更に好ましい。なお、ここでいうMFTは、次の方法により測定される値である。熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に、0.2mmギャップのアプリケーターで、水性高分子エマルジョンを塗工し、クラックが生じたところの温度(すなわち、MFT)を測定する。
【0029】
例えば、MFTが30℃以下の水性高分子エマルジョンは、ガラス転移温度(Tg)が40℃以下の重合体粒子を用いることを、一つの目安として調製できる。MFTはTg(℃)よりも大体10℃低いことが知られているからである。Tg(K)は、「POLYMER HANDBOOK 第3版」(John Wiley & Sons, Inc.発行)に記載された各ホモポリマーのTg(K)を元にして計算により簡単に求められる他、DSC(示差走査熱量測定装置)やTMA(熱機械測定装置)によって求めることができる。また、Tgの高い重合体粒子であっても、後述の可塑剤を用いて水性高分子エマルジョンとすることで、MFTを上記上限値以下に調整することも可能である。
【0030】
上記水性高分子エマルジョンの樹脂(重合体粒子)は、接着剤の分野で採用されている樹脂であれば特に限定されず、慣用の樹脂が使用できる。すなわち、上記水性高分子エマルジョンには、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体の如き酢酸ビニル系重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体の如きアクリル系重合体;ポリウレタンなどのウレタン系重合体;などを重合体粒子の主成分とする高分子エマルジョンが含まれる。また、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体を重合体粒子の主成分とするようなアルカリ可溶性のエマルジョンも使用可能である。これらの水性高分子エマルジョンは1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いても構わない。中でも、本発明の固形状接着剤の主要な被着体の一つである紙への接着性が良好であることから、酢酸ビニル系重合体のエマルジョンが推奨される。
【0031】
酢酸ビニル系重合体としては、ポリ酢酸ビニル(酢酸ビニルの単独重合体)の他、酢酸ビニルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な上記他のモノマーとしては、例えば、エチレンなどのオレフィン類;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどの酢酸ビニルを除くビニルエステル類;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸2−エチルヘキシルなどのマレイン酸エステル類;フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、フマル酸2−エチルヘキシルなどのフマル酸エステル類;などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
上述のようなモノマーを用いて得られる酢酸ビニル系重合体の中でも、本発明の固形状接着剤の主要な被着体の一つである紙への接着性が良好であることから、ポリ酢酸ビニルが好ましい。
【0033】
なお、上記酢酸ビニル系重合体のエマルジョンは、公知の乳化剤や保護コロイド、可塑剤(ジブチルフタレートやジオクチルフタレートなど)を含有していてもよい。
【0034】
上記水性高分子エマルジョンは、公知の手法で調製されたものであればよい。例えば、水系で上記のモノマーを乳化重合する方法や、別途重合して得られた上記の樹脂を、水を含む媒体中に分散(乳化)させる方法が挙げられる。なお、水性高分子エマルジョンの固形分濃度は20〜70質量%であることが一般的である。
【0035】
上記水性高分子エマルジョンでは、重合体粒子の粒径は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、平均粒径が0.001〜10μmであることが好ましい。
【0036】
上記水性高分子エマルジョン由来の固形分は、上記水溶性接着ポリマーと前記水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量に対し、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましく0.5質量%以上、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下とするのが望ましい。水性高分子エマルジョン由来の固形分量が上記範囲を超えると、製造工程における加熱により固形状接着剤が着色し易くなったり、水性高分子エマルジョンに含まれる重合体粒子の凝集が起こり易くなって接着性が低下する場合がある。一方、水性高分子エマルジョン由来の固形分量が上記範囲を下回ると、初期接着性向上の効果が小さくなる場合がある。
【0037】
本発明の固形状接着剤では、形状保持性を確保するために、ゲル化剤も構成要素とする。上記ゲル化剤は、特に限定されるものではなく、従来から固形状接着剤に通常使用されている公知のゲル化剤を用いることができる。例えば、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、リシノール酸塩などの、炭素数8〜36の脂肪酸の金属塩またはアンモニウム塩;ソルビット・ベンズアルデヒド縮合物、キシリット・ベンズアルデヒド縮合物などの、炭素数4以上の糖アルコールと芳香族アルデヒドとの縮合物;などが挙げられる。中でも、炭素数8〜36の脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が好適であり、アルカリ金属塩がより好ましい。なお、炭素数8〜36の脂肪酸の金属塩におけるアルカリ金属としては、Na、Kなどが一般的である。
【0038】
固形状接着剤の製造に当たっては、上記水溶性接着ポリマー、上記ゲル化剤、上記水性高分子エマルジョンおよび無機還元性物質を水系溶剤に加え溶解、加熱し分散させて、固形状接着剤組成物用の容器に充填する。水系溶剤としては水が好ましいが、水系溶剤中には、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類が含まれていてもよい。また、上記水系溶剤の全量が水性高分子エマルジョンの媒体(水を含む媒体)であってもよい。
【0039】
ゲル化剤を水系溶剤に溶解させるための溶解助剤として、また、湿潤剤および可塑剤として作用させるために、多価アルコールを配合することが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上のアルコール類が挙げられる。また、ケトース(へキスロース、ヘプツロースなど)、アルドン酸、アルダル酸、デオキシ糖、イノシトール糖の環状アルコールなども用いることができる。
【0040】
本発明の固形状接着剤では、上記ゲル化剤量は、上記水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対して好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であって、好ましくは80質量部以下、より好ましくは65質量部以下とすることが推奨される。ゲル化剤量が上記範囲を下回ると、固形状接着剤の形状保持性が低下する場合がある。他方、ゲル化剤量が上記範囲を超えると、初期接着性が低下する場合がある。
【0041】
また、固形状接着剤中の水系溶剤の量は、上記水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対し、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上であって、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下とすることが望ましい。なお、水系溶剤として、水に加えて上記例示の如き有機溶剤を併用する場合には、水系溶剤100質量%中、該有機溶剤を10質量%以下とするが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。勿論、水系溶剤の全量が水であることも好ましい。
【0042】
さらに、上記多価アルコールを使用する場合には、上記水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であって、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下とすることが望ましい。
【0043】
本発明の固形状接着剤組成物には、他に公知の添加剤を加えても構わない。このような添加剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンイミンなどの水溶性ポリマー類;亜麻仁油、リシン、ひまし油、大豆油、やし油、トール油、魚油、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの油脂類;ポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン(モノ、ジ、トリ)脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン(モノ、ジ、トリ)脂肪酸エステル、ソルビタン(モノ、ジ、トリ)ステアレートなどの界面活性剤など;流動パラフィンなどの潤滑剤;シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化バリウム、酸化亜鉛、タルク、ベントナイトなどの無機増量剤;ショ糖、ソルビトールなどの糖類;デキストリン、シクロデキストリンなどのデキストリン類;などが挙げられ、必要に応じて適量用いればよい。また、香料、蛍光増白剤、抗菌剤、防腐剤、着色剤なども配合可能である。例えば、抗菌剤を固形状接着剤中に0.01〜0.1質量%程度添加することが推奨される。
【0044】
固形状接着剤の具体的な製法としては、例えば以下の方法を採り得る。水系溶剤(好ましくは水)に水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョンおよび無機還元性物質を混合した後、この混合物を加熱しながら撹拌して均一な分散液(すなわち、本発明の固形状接着剤用原料液状組成物)を調製し、これにゲル化剤と、必要に応じて多価アルコールを混合して均一に溶解させ、さらに必要に応じて各種添加剤を混合し、粘稠な液状物とする。この液状物を容器(例えば、口紅状など)に充填し、冷却固化させて固形状接着剤とする。ただし、各原料の添加順序は特に限定されず、上記以外の順序で各原料を添加・混合してもよい。また、いうまでも無いが、水系溶剤の全量を水性高分子エマルジョン由来の媒体とする場合には、別途水系溶剤を使用する必要は無い。
【0045】
さらに、予め固形状接着剤用原料液状組成物を調製しておき、例えば該原料液状組成物に、更に水溶性接着ポリマーや、ゲル化剤、多価アルコール、各種添加剤を混合して上記の粘稠な液状物とし、上述の方法で固形状接着剤としてもよい。この場合の固形状接着剤用原料液状組成物では、水溶性接着ポリマー(好ましくはN−ビニルラクタム類を必須成分とするモノマー成分を重合してなるポリマー)の含有量が1質量%以上、好ましくは5質量%以上であって、40質量%以下、好ましくは30質量%以下であり、また、水性高分子エマルジョン由来の固形分が0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であって、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下であることが望ましい。このような原料液状組成物を用いることで、容易に固形状接着剤を調製することができる。水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の固形分共に、上記範囲を超えると、原料液状組成物の粘度が大きくなりすぎて、取り扱いが困難となり、上記範囲を下回ると、本発明の固形状接着剤を製造するための各成分量の調整が煩雑となる。
【0046】
なお、原料液状組成物の各成分量の好適範囲と、固形状接着剤の各成分量の好適範囲は一致していないが、これは、上記の通り、原料液状組成物にさらに水溶性接着ポリマーを混合して固形状接着剤を調製する場合もあり得るからである。
【0047】
また、上記固形状接着剤用原料液状組成物における無機還元性物質の配合量は、上記水溶性接着ポリマーと水溶性高分子エマルジョン由来の固形分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下とするのが推奨される。無機還元性物質量が上記範囲を下回ると、固形状接着剤の着色を抑制する効果が小さくなる場合がある。一方上記範囲を超えて添加すると、原料液状組成物の粘度が増大し取り扱いが困難になる場合がある。
【0048】
尚、無機還元性物質は、上記固形状接着剤の着色抑制の他に、貯蔵時における固形状接着剤用原料液状組成物の粘度の低下を防ぐ効果も有している。該原料液状組成物の粘度の低下は、これを用いて製造される固形状接着剤の接着力の低下を引き起こす。しかしながら、無機還元性物質を添加しておくことで、上記問題を防ぐことができ、良好な接着力を有する固形状接着剤を得ることができる。
【0049】
また、予め原料液状組成物に無機還元性物質を配合しておくことで、貯蔵時における原料組成物の着色も防止することができる。このように無機還元性物質は、貯蔵時における上記原料液状組成物の安定性を確保するのにも有用である。
<固形状接着剤の第2の態様>
本発明の固形状接着剤の第2の態様は、水溶性接着ポリマーに加えて無機還元性物質を含むところに特徴を有している。
【0050】
上述したとおり、固形状接着剤製造時の加熱による着色は、水性高分子エマルジョン由来の成分が存在する場合に顕著であり、これが固形接着剤の着色を促進する成分として作用していると考えられるが、例えば、水性高分子エマルジョン由来の成分を含有しない構成の固形状接着剤においても、程度は小さいものの、製造時の加熱による着色は認められる。
【0051】
しかしながら、上記無機還元性物質を構成要素に含めることで、水性高分子エマルジョン由来の成分の存在とは無関係の着色も防止でき、外観特性の優れた固形状接着剤とすることができる。
【0052】
なお、第2の態様の固形状接着剤の必須成分である水溶性接着ポリマー、および無機還元性物質、ならびにその他の好適成分の具体例や含有組成、さらに製法に関しては、上述の第1の態様と同じである。
【0053】
また、第2の態様の固形状接着剤のための原料液状組成物、すなわち水溶性接着ポリマーと無機還元性物質を含む原料液状組成物については、水溶性接着ポリマー100質量部に対し、無機還元性物質を0.001質量部以上とするのが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
【0054】
本発明の固形状接着剤の対象となる好適な被着体は、第1の態様、第2の態様を問わず、和紙、合成紙、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、箔紙、クラフト紙、含浸紙、蒸着紙などの公知の紙類;ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム(シートも含む);木綿、ポリエステル、ナイロンなどの繊維からなる織布あるいは不織布など;各種糸類;アルミ箔、銅箔などである。
【0055】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、本実施例で用いる「部」、「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、本実施例で用いた評価方法は以下の通りである。
【0056】
尚、後述する本実施例で用いた水溶性接着ポリマーは、ポリビニルピロリドン(実験1〜5,8および9:日本触媒社製「K85」、K値85、実験6,7:International Specialty Products社製「K90」、K値90)であり、水性高分子エマルジョンとしては、固形分濃度が50%のポリ酢酸ビニルエマルジョン(日信化学工業社製「ビニブラン1107L」)を用いた。尚、前記ポリ酢酸ビニルエマルジョンについて、上述の方法により測定されるMFTは2℃である。
【0057】
〔白色度(b値)の測定〕
分光式色差計(日本電色工業(株)製 SE−2000)を使用して、下記実験により得られた固形状接着剤のLab色差(JIS Z 8730規定されているCIE Lab色差式による色差)を測定した。表1〜3に示した白色度は、b値を用いて評価した。
【0058】
〔粘度の測定〕
固形状接着剤用原料液状組成物70gを100mlのビーカーに入れ、25℃の恒温槽に3時間浸した後、B型粘度計(スピンドルNo.3)を用いて、回転数3rpmで粘度を測定した。
【0059】
実験1
還流冷却器と撹拌器を備えたフラスコに、水:54.6部と、上記ポリ酢酸ビニルエマルジョン:8.0部を加え、撹拌しながら80℃に昇温した。その後上記ポリビニルピロリドン:23.4部を継粉にならないように少しずつ添加して溶解させ、さらに亜硫酸ナトリウム:1.0部を添加して原料液状組成物とした。次に、グリセリン:6.0部、ステアリン酸ナトリウム(ゲル化剤):7.0部を添加して24時間撹拌し、粘稠な白色液状物を得た。この液状物を90℃に昇温した後、口紅状容器(内径:23mm、長さ:80mm)に充填し、放冷して固化させ、固形状接着剤を得た。この固形状接着剤の各原料組成と、その評価結果を表1に示す。
【0060】
実験2〜5
各原料の配合組成を表1に示すように変更した以外は、実験1と同様にして固形状接着剤を得た。これらの固形状接着剤の評価結果を表1に示す。なお、実験1および2の固形状接着剤は無機還元性物質を、実験4および5では有機還元性物質をそれぞれ用いた例を示しており、実験3は還元性物質を用いない例を示している。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の配合組成の欄において、「ポリ酢酸ビニルエマルジョン(固形分)」は、ポリ酢酸ビニルエマルジョン中の固形分量を示しており、「水」は、ポリ酢酸ビニルエマルジョン中の水と、別途用いた水の合計量を示している。
【0063】
表1から分かるように、無機還元性物質を使用した実験1および2の固形状接着剤の白色度(b値)は、還元性物質を含まない実験3の固形接着剤に比べて小さく、着色抑制効果が得られている。特に、無機還元性物質として亜硫酸ナトリウムを使用した実験1の固形状接着剤のb値は極めて小さく(b値:0.7)、優れた着色抑制効果が得られている。
【0064】
これに対し、有機還元性物質を使用した実験4および5の固形状接着剤のb値は、還元性物質を用いない実験3の固形状接着剤の値と同等(実験4)、または大きく(実験5)、着色を抑制できないばかりか、固形状接着剤を著しく着色させてしまうことが分かる。特に、L−アスコルビン酸ナトリウムを用いた実験5の固形状接着剤のb値は大きく(b値:14.9)、著しく着色していた。
【0065】
実験6、7
各原料の配合組成を表2に示すように変更した以外は、上記実験1と同様にして固形状接着剤を得た。これらの固形状接着剤の評価結果を表2に示す。尚、実験7の固形状接着剤は、無機還元性物質を使用しておらず、従来のポリビニルピロリドン系固形状接着剤に相当するものである。
【0066】
【表2】
【0067】
表2から分かるように、亜硫酸ナトリウム(無機還元性物質)を含有する固形状接着剤(実験6)は、実験7の固形状接着剤に比べて着色が抑制されており、無機還元性物質を使用することによって、着色抑制効果が得られることがわかる。このように、無機還元性物質による固形状接着剤の着色抑制効果は、製造時に加熱を要する固形状接着剤であれば、水性高分子エマルジョン由来の成分の有無に関係なく有効に得られることがわかった。
【0068】
実験8、9
各原料の配合組成を表2に示すように変更した以外は、上記実験1と同様にして固形状接着剤用原料液状組成物を調製した。得られた原料液状組成物を、空気雰囲気下でガラス製のサンプル管に入れて密封し、遮光して、60℃で3週間保存したときの原料液状組成物の貯蔵安定性を評価した。尚、評価は、上記液状組成物の貯蔵前後における白色度の比較により行った。
【0069】
【表3】
【0070】
無機還元性物質として亜硫酸ナトリウムを含む実験8の原料組成物溶液は、貯蔵前後における白色度の低下が小さく、また上述のような過酷な条件下においても粘度の低下をほとんど起こすことがなく、貯蔵安定性に優れるものであった。一方、亜硫酸ナトリウムを含まない実験9の原料組成物溶液は、上記条件で保存後、著しく着色すると共に、粘度が大幅に低下しており、該原料溶液を用いて固形状接着剤とするには不適なものであった。
【0071】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、水溶性接着ポリマーと水性高分子エマルジョン由来の成分を含む固形状接着剤に、無機還元性物質を配合することで、被着体への塗布性(形状保持性)および初期接着性を良好に維持しつつ、製品自体の着色を抑制することができた。
【0072】
また、無機還元性物質は、固形状接着剤の構成要素に水性高分子エマルジョン由来の成分を含む場合のみならず、製造時に加熱を要する固形状接着剤の黄変を低減するのに有効であることが分かった。
Claims (4)
- 水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の成分および無機還元性物質を構成要素に含むことを特徴とする固形状接着剤。
- 水溶性接着ポリマー、糖アルコールと芳香族アルデヒドとの縮合物および/または脂肪酸塩、および無機還元性物質を構成要素に含むことを特徴とする固形状接着剤。
- 請求項1に記載の固形状接着剤を調製するための原料液状組成物であって、
水溶性接着ポリマー、水性高分子エマルジョン由来の成分および無機還元性物質を構成要素に含むものであることを特徴とする固形状接着剤用原料液状組成物。 - 請求項2に記載の固形状接着剤を調製するための原料液状組成物であって、
水溶性接着ポリマーおよび無機還元性物質を構成要素に含むものであることを特徴とする固形状接着剤用原料液状組成物。
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