JP2005023153A - ポリオレフィン系樹脂成形品の塗料用樹脂組成物、それを用いた塗料、その塗装方法、及び塗装物 - Google Patents

ポリオレフィン系樹脂成形品の塗料用樹脂組成物、それを用いた塗料、その塗装方法、及び塗装物 Download PDF

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義明 丸谷
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Abstract

【課題】取扱い性及び安全性に優れ、揮発性有機化合物(VOC)の発生濃度が低くて環境にやさしく、しかも、耐水性の耐久性に特に優れ、かつポリオレフィン系樹脂成形品に対する塗膜の付着性に優れた塗料及びその塗料の塗装方法を提供する。
【解決手段】塩素化ポリオレフィンに、ビニル重合性モノマーをグラフト重合することによって得られたグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とする水系塗料用樹脂組成物、その水系塗料用樹脂組成物を含有してなる塗料、さらに、着色顔料を含有することを特徴とする塗料などを提供した。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系塗料用樹脂組成物、それを用いた塗料、塗装方法、及びその塗装物に関し、さらに詳しくは、ポリオレフィン系樹脂成形品に直接塗装でき、安全でしかも耐水性に優れた水系塗料用樹脂組成物、それを用いた塗料、塗装方法、及びその塗装物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅の外装部品には、樹脂製品や樹脂成形品が広く使用されるようになっている。このような樹脂成形品としては、経済性の面から、ウレタン系樹脂よりも、ポリオレフィン系樹脂素材が益々多量に使用されるようになっている。また、ポリオレフィン系樹脂は、耐薬品性や、耐水性、成形性等に優れている。
これらのポリオレフィン系樹脂素材へ塗装する場合には、金属の塗装の場合に比べて種々の制約を受ける。例えば、ポリオレフィン系樹脂素材は、低極性であるため、塗膜の付着性が悪い。また、ポリオレフィン系樹脂素材は、熱に弱いため、塗料の加熱乾燥に当たっては、例えば、140℃よりも低い温度であることが要請される。
【0003】
そのため、ポリオレフィン系樹脂成形品に対する塗料の付着性を改良する方法としては、種々の方法が検討されている。例えば、ポリオレフィン系樹脂成形品の表面に、フレーム処理や、コロナ放電、プラズマ処理、クロム硫酸処理等の前処理を行ってから上塗り塗装する方法、ポリオレフィン系樹脂成形品の表面をまずトリクロロエタン等の溶剤で洗浄し、付着性のよいプライマーを塗装した後に、上塗り塗装する方法等が検討されている。
しかしながら、これらの方法では、必ずしも満足の行く付着性が得られず、しかも工程数が多いため、煩雑であり、更に専用の高価なプライマーを使用するために、コスト的に不利である等の問題があった。
【0004】
一方、これらの技術の改良方法として、ポリオレフィン系樹脂成形品に対する付着性を改良するものとして、例えば、塩素化ポリオレフィン樹脂を使用した塗料を用いる方法が検討されている。例えば、(1)塩素化ポリオレフィン系樹脂とアクリル樹脂との混合物からなる塗料(例えば、特許文献1参照。)、(2)塩素化ポリオレフィン系樹脂とアクリル系モノマーと、更には、これらと、数平均分子量が500〜3000のポリエステルプレポリマーとの共重合にイソシアネート化合物を組合せた塗料(例えば、特許文献2〜4参照。)、(3)塩素化ポリオレフィン系樹脂とアクリル系モノマーと塩素化ポリジエンとの共重合体にイソシアネート化合物を組合せた塗料、更には(4)塩素化ポリオレフィン系樹脂と、アクリル系樹脂との混合物又は塩素化ポリオレフィンにアクリル系モノマーをグラフトしたものに、イソシアネートプレポリマーやメラミン樹脂等の硬化剤を配合した塗料(例えば、特許文献5、6参照。)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、塗料(1)では、塩素含有量を35重量%以下とする必要があり、塗料が2相に分離し易いため、顔料の分散安定性、塗膜の艶、塗料の付着性、耐候性等の物性が十分ではない。また、塗料(2)では、塗料(1)に比べて塗料の安定性はよいが、塗膜の艶や、耐候性が不十分であり、また、イソシアネート化合物は毒性が強いために、取扱いや安全性の面の問題がある。塗料(3)では、耐溶剤性や、耐候性が十分ではなく、また塗料(2)と同様にイソシアネート化合物を使用することに伴う取扱い性及び安全性の問題がある。さらに、塗料(4)では、イソシアネートプレポリマーを使用する場合には、毒性の問題が生じ、メラミン樹脂を配合したものは、硬化が充分でないために、耐水性が低下するという問題があった。
【0006】
以上のように、種々の改良された塗料が提案されているが、住宅の外装部材用塗料におけるように、特に厳しい耐久性が要求される分野における塗料としては未だ十分ではなく、その使用分野は限られたものとなっている。
このような背景の下に、取扱い性及び安全性に優れ、かつ低温硬化が可能であり、しかも耐水性に優れかつポリオレフィン系樹脂成形品に対する塗膜の付着性に優れた塗料が強く要望されていた。
【0007】
【特許文献1】
特開昭57−200438号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】
特開昭59−27968号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】
特開昭62−149734号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】
特開平4−132783号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献5】
特開平5−117574号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献6】
特開平9−95643号公報(特許請求の範囲等)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、上記問題点に鑑み、取扱い性及び安全性に優れ、揮発性有機化合物(VOC)の発生濃度が低くて環境にやさしく、しかも、耐水性の耐久性に特に優れ、かつポリオレフィン系樹脂成形品に対する塗膜の付着性に優れた塗料及びその塗料の塗装方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、以下の構成により上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、塩素化ポリオレフィンに、ビニル重合性モノマーをグラフト重合することによって得られたグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とする水系塗料用樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明の水系塗料用樹脂組成物を含有してなる塗料が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、さらに、着色顔料を含有することを特徴とする塗料が提供される。
【0011】
本発明の第4の発明によれば、ポリオレフィン系樹脂成形品に、第2又は3の発明の塗料を塗布することを特徴とする塗装方法がが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、ポリオレフィン系樹脂成形品に、第3の発明の塗料を塗布した後、その着色塗膜上に、さらにビニル重合性水系クリアを塗布することを特徴とする塗装方法が提供される。
【0012】
本発明の第6の発明によれば、第4又は5の発明の塗装方法により得られた塗装物が提供される。
【0013】
本発明は、上記した如く、塩素化ポリオレフィンに、ビニル重合性モノマーをグラフト重合することによって得られたグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とする水系塗料用樹脂組成物などに係るものであるが、その好ましい態様として、次のものが包含される。
【0014】
(1)第2又は3の発明において、さらに、タレ止め剤、沈降性防止剤又はレベリング剤の少なくとも1種を含有することを特徴とするさらに、着色顔料を含有することを特徴とする塗料。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
1.水系塗料用樹脂組成物
(1)グラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂
ポリオレフィン系樹脂成形品の表面に塗装される、本発明の水系塗料用樹脂組成物に使用されるグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素化ポリオレフィンにビニル重合性モノマーをグラフト重合(共重合を含む)することによって得られる。
このような塩素化ポリオレフィンは、例えば、オレフィンの重合体又はその重合体にカルボキシル基や、酸無水物基、水酸基を導入した変性物を塩素化したものである。また、オレフィンの重合体としては、例えば、ポリエチレンや、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン等が挙げられる。
【0016】
その塩素化ポリオレフィンの塩素含有量は、10〜50重量%であることが好ましい。塩素含有量が50重量%を超えると、ポリオレフィン系樹脂成形品に対する付着性及び耐候性が低下し易い。一方、塩素含有量が10重量%未満では、溶剤への溶解性が低下し、低温での塗料の安定性が悪く、また、以下で説明するグラフト部分との親和性が劣り、塗膜外観が劣ったものとなり易い。
また、塩素化ポリオレフィンの数平均分子量は、一般に3,000〜30,000、好ましくは5,000〜20,000が好ましい。数平均分子量が3,000未満では、硬度や付着性が劣り易い。一方、数平均分子量が30,000を超えると、塗料粘度が高過ぎるため、希釈溶剤や界面活性剤をより多く使用する必要が生じ、塗料の固形分が低下し、厚膜が得られ難く、塗装作業性が劣る傾向となる。
【0017】
具体的には、例えば、塩素化ポリオレフィンとして、東洋化成株式会社製の「ハードレン15LLB」(塩素含有量30重量%)、「ハードレン14LLB」(塩素含有量27重量%)、「ハードレン14ML」(塩素含有量26.5重量%)及び「ハードレンBS−40」(塩素含有量40重量%)や、日本製紙株式会社製の「スーパークロン832L」(塩素含有量27%)、「スーパークロン773H」(塩素含有量32%)及び「スーパークロンL−206」(塩素含有量32%)等が挙げられる。
【0018】
グラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂のグラフト部分は、塩素化ポリオレフィンに、ビニル重合性モノマーをグラフト重合することによって、グラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂上に形成されるものである。
グラフト部分の量は、塩素化ポリオレフィン5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%に対して、50〜95重量%、好ましくは60〜90重量%の量である。塩素化ポリオレフィンの量が、5重量%よりも少ない場合には、付着性が劣り、一方、50重量%よりも多くなると、耐候性が低下する。
【0019】
また、塩素化ポリオレフィンのグラフト重合は、公知の慣用手段により行うことができる。例えば、ラジカル重合によってグラフト重合を行うことができる。ラジカル重合は、溶液中で行うことが望ましい。
ラジカル溶液重合に使用されるラジカル反応開始剤としては、従来からラジカル重合において使用されている反応開始剤を制限なく、使用することができる。
【0020】
このような反応開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物や、アゾビスバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等のアゾ化合物を挙げることができる。
【0021】
また、ビニル重合性モノマーとしては、例えば、α,β−エチレン性不飽和モノマーを併用することができる。このようなα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、以下に挙げるモノマーを使用することがでる。
【0022】
(i)アクリル酸又はメタクリル酸若しくはそのエステル:
例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有ビニル重合性モノマーや、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートや、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、オクチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等のアルコール残基の炭素数が1〜18個の(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデシル(メタ)アクリレートなどの環状(メタ)アクリレート等が挙げられる。
この内シクロヘキシル(メタ)アクリレートや、イソボルニル(メタ)アクリレート等が好ましい。例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレート等の環状(メタ)アクリレートが、ビニル重合性モノマー全体の3〜70重量%、好ましくは5〜60重量%併用することが好適である。この量が3重量%未満では、塗膜が膨潤しやすく、耐水性が劣りやすい。一方、この量が65重量%を超えると、塗膜が硬くかつ脆くなりやすく、耐衝撃性が悪化し、塗膜の割れを生じやすい。特に、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの方がイソボルニル(メタ)アクリレートよりも、塗膜強度及び耐衝撃性の点でバランスがとれている。
例えば、カルボキシル基含有ビニル重合性モノマーを併用することにより、グラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂にカルボキシル基を任意官能基として導入することができる。
【0023】
(ii)ビニル系化合物:
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレン等が挙げられる。
(iii)ポリオレフィン系化合物:
例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
(iv)その他:
例えば、メタアクリルアミド、アクリルアミド、ジアクリルアミド、ジメタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルイソプロペニルケトン、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、フォスフォノオキシエチル(メタ)アクリレート等の燐酸基含有(メタ)アクリレート、トリフルオロメチルビニルエーテル等のパーフルオロビニルエーテル等が挙げられる。
【0024】
このようにして得られたグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は、好ましくは5,000〜50,000である。数平均分子量が5,000より小さい場合は、耐候性が低下し易い。一方、数平均分子量が50,000よりも大きくなると、塗料粘度が高くなり過ぎ易いため、溶剤や界面活性剤をより多く使用する必要が生じやすく、塗料の固形分が低下し、膜厚を大きくすることができず、また塗装作業性が劣り易い。更に好ましく数平均分子量は、7,000〜35,000である。
【0025】
本発明の水系塗料用樹脂組成物に使用されるグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂の製造は、水性樹脂とするために、水と乳化剤を用いた乳化重合でもよいし、また、溶液中で重合した溶液重合のポリマーを水、乳化剤で置換してもよい。
【0026】
(2)その他成分
本発明の水系塗料用樹脂組成物には、上記の必須成分であるグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂以外に、更に、必要に応じて、従来より塗料の分野において使用されている種々の添加剤、例えば、酸性硬化触媒、着色顔料、体質顔料、アルミニウム粉末、パールマイカ粉末、タレ止め剤又は沈降防止剤、レベリグ剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、シンナー等を適宜配合して、調製することができる。
【0027】
本発明において、水系塗料用樹脂組成物(塗料)には、着色塗料とするために、着色顔料を含有することが好ましい。
その着色顔料としては、例えば、酸化チタン[例えば、「タイペークCR−95」(チバガイギー製の酸化チタン顔料)]、カーボンブラック、酸化鉄、ベンガラ、モリブデン酸鉛、酸化クロム、クロム酸鉛等の無機顔料や、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン顔料、キナクリドン系赤、アゾ顔料、アントラキノン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0028】
また、体質顔料としては、例えば、カオリンや、タルク、シリカ、マイカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
タレ止め剤又は沈降性防止剤としては、例えば、ベントナイト、ヒマシ油ワックス、アマイドワックス、マイクロジェル[例えば、「MG100S」(大日本インキ製)]、アルミニウムアセテート等を、好ましく使用することができる。
レベリング剤としては、例えば、「KF69」、「Kp321」及び「Kp301」(以上、信越化学製)等のシリコン系の界面活性剤や、「モダフロー」(三菱モンサント製の表面調整剤)、「BYK301」、「BYK358」(ビックケミージャパン製)等のシリコン系界面活性剤及び「ダイヤエイドAD9001」(三菱レイヨン製)等を、好ましく使用することができる。
分散剤としては、例えば、「Anti−Terra U」又は「Anti−Terra P」及び「DISPERBYK−101」(以上、ビックケミージャパン製)等を、好ましく使用することができる。
【0029】
消泡剤としては、例えば、「BYK−0」(ビックケミージャパン製)等を好ましく使用することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、「チヌビン900」、「チヌビン384」、「チヌビンP」(以上、チバガイギー製)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、「サンドバ−3206」(サンド製)等のシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤等を好ましく使用することができる。
光安定剤としては、例えば、「サノールLS292」(三共製)及び「サンドバー3058」(サンド製)、「チヌビン123」(チバガイギー製)等のヒンダードアミン光安定剤等を好ましく使用することができる。
シンナーとしては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N−メチルピロリドン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ等のエステル化合物、もしくはこれらの混合物等を使用することができる。
【0030】
(3)水系塗料用樹脂組成物の調製、塗布(塗膜形成)方法
本発明の水系塗料用樹脂組成物の調製に際しては、上記グラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂、及び必要に応じて顔料等の添加剤を混合し、サンドクラインドミルや、ボールミル、アトライター等の分散機によって均一に分散させることによって水系塗料用樹脂組成物が調製される。
【0031】
本発明の水系塗料用樹脂組成物を水系塗料用として用いる際には、グラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂などを水中に分散させるために、溶媒や界面活性剤を用いることができる。そのような溶媒としては、低級アルキルの一官能性アルコール(例えば、n−ブタノール)およびグリコールエーテルアルコール(例えば、エチレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、および好ましくはプロピレングリコールフェニルエーテル)を挙げることができる。
【0032】
また、本発明の水系塗料用樹脂組成物を水系塗料用として用いる際には、好ましくは、1種またはそれ以上の他の樹脂成分(例えば、水に希釈可能なウレタン樹脂やアクリル樹脂など)を含有することもできる。さらに、例えば、界面活性剤(乳化剤)、湿潤剤、増粘剤などを添加してもよい。
【0033】
また、本発明の水系塗料用樹脂組成物の塗膜形成方法としては、まず、ポリオレフィン系樹脂成形品に公知の脱脂洗浄処置、例えば、1,1,1−トリクロロエタン等の有機溶剤による脱脂洗浄や、アルカリ脱脂洗浄、酸洗浄、溶剤ワイプ等を施した後、本発明の水系塗料用樹脂組成物を含有してなる着色塗料を塗布する方法が採られる。
その塗布方法としては、任意の従来のコーティング技術(例えば、はけ塗り、スプレー塗り、浸し塗りまたは流し塗り)により、例えば、ポリオレフィン系樹脂成形品に塗布され得るが、スプレー塗りが好ましい。圧縮空気スプレーならびに手動または自動のいずれかの方法のような任意の公知のスプレー技術が採用され得る。例えば、本発明の水系塗料用樹脂組成物を圧縮空気スプレー法等により直接塗装し、必要に応じて0.5〜120分、好ましくは1〜20分間セットした後、常温〜140℃、好ましくは40〜100℃の低温で加熱硬化(焼付)させる。このベーキング(加熱硬化)操作で、溶媒が除去される。ベーキング操作は、必要ならば、さらに低いかまたは高い温度および時間が用いられ得る。
本発明においては、上記構成により、140℃以下の低温で加熱硬化させることができるので、ポリオレフィン系樹脂成形品自体にダメージを与えることなく、優れた塗膜特性を有する塗膜を被覆させることができる。
【0034】
2.水系塗料用樹脂組成物の塗装方法
本発明の水系塗料用樹脂組成物を用いた塗装方法としては、例えば、2コート1ベーク形等が挙げられる。2コート1ベーク形とは、上塗り塗装の塗装方法の一つであって、まず、顔料を多く配合した本発明の水系塗料用樹脂組成物を含有してなるベースコート塗料(着色塗料)を塗装し、次いで、焼き付けを行わず、その上に透明なビニル重合性水系クリアであるトップコートを塗装して、1度に焼き付ける塗装方法である。すなわち、ベーキング操作の前に「ウェットオンウェット(wet−on−wet)」配置で塗装する方法である。また、ビニル重合性水系クリアであるトップコートは、ベースコート塗料を塗装しベーキングした後に、塗布し、再度ベーキングしてもよい。
【0035】
上記のビニル重合性水系クリアとしては、前記した水系塗料用樹脂組成物に準拠した水系塗料用樹脂組成物が用いられる。具体的には、例えば、日本ペイント製の「オーデパワー」(エマルジョンクリア)など市販されているものでもよい。
【0036】
本発明の水系塗料用樹脂組成物を含有してなる着色塗料の乾燥後の塗膜厚さは、通常、10〜30μm、好ましくは15〜25μmであり、一方、ビニル重合性水系クリアの乾燥後の塗膜厚さは、通常、20〜40μm、好ましくは25〜35μmである。
【0037】
【実施例】
以下、製造例、実施例により、本発明を具体的に説明する。本発明は、これらの実施例などによって何ら限定されるものではない。尚、例中の部は重量部、%は重量%である。
【0038】
[製造例1〜3](水系塗料用樹脂組成物を構成するグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂の調製)
(製造例1)
攪拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、表1の配合に準じて、トルエン744部、塩素化ポリプロピレン[日本製紙(株)製のスーパークロンL−206;塩素含有量32%、不揮発分50%]500部を仕込み、撹拌しながら100℃に加温し均一にした。続いてシクロヘキシルメタクリレート225部、ブチルアクリレート12.8部、イソブチルメタクリレート113.2部、2−ヒドロキシエチルアクリレート43.5部、プラクセルFM−4[ダイセル化学工業(株)製]351.7部、アクリル酸3.8部、及びベンゾイルパーオキシド5部の混合液を2時間かけて滴下し、更に1時間同温度で撹拌を続け、最後に80℃に冷却してアゾビスイソブチロニトリル1部を加え、5時間撹拌を続け、塗料(A)を構成するグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂溶液Aを得た。
得た樹脂溶液を減圧により、溶剤を飛散させると共に、市販の乳化剤と水を加え、水性樹脂溶液を得た。
【0039】
グラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂溶液の加熱残分%、グラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂の特性値として、酸価、塩素化ポリオレフィン/グラフト部の量、グラフト部の主鎖から15〜40原子離れた位置にある水酸基量及びグラフト部の全水酸基量を表1に示した。
【0040】
表1の配合に準じて、製造例1と同様に、水系塗料用樹脂組成物(A)を構成するグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂溶液B〜Cを得た。
【0041】
【表1】
Figure 2005023153
【0042】
以下の表1に示す成分の詳細は以下の通りである。
注1)「スーパークロンL−206」:日本製紙株式会社、塩素含有量32%、不揮発分50%、商品名
2)「プラクセルFM−4」ダイセル化学工業株式会社、カプロラクトン変性メタクリル酸エステル、平均分子量586、水酸基価96mgKOH/g
【0043】
[実施例1](塗料用樹脂組成物の調製)
上記で調製したグラフト化塩素ポリオレフィン樹脂溶液B100部、アルミペースト[昭和アルミ(株)製のSAP510;不揮発分65%]11部と酢酸ブチル20部との混合物、及びモダフロー[三菱モンサント(株)製の表面調整剤]0.1部をディスパーで十分混合し、塗料用樹脂組成物(A−1)を調製した。
【0044】
(樹脂成形品への塗装)
被塗物として、ポリオレフィン系樹脂(イノアック製)で成形したガスケットから切りだした、70×150mmの試験片を、イソプロピルアルコール拭きにより脱脂し、自然乾燥させた。
上記で調製した塗料用樹脂組成物(A−1)を水で、乾燥塗膜厚が20μmになるようにエアスプレイ塗装を行い、3分間フラッシュオフ後、ウエットオンウエットで、日本ペイント製の「オーデパワー」(エマルジョンクリア)(B−1)を水で、粘度19秒(フォードカップ#4、20℃)に調整した後、乾燥塗膜厚が30μmになるようにエアスプレイ塗装により塗り重ねた。その後、10分間室内に放置したのち、60℃で30分加熱乾燥し、24時間後に塗膜性能試験を実施した。
【0045】
塗膜性能試験方法は下記の通りである。その結果を表2に示した。
(耐水性)
試験片を40℃の温水中に240時間浸漬した後、取り出し、塗面状態の観察と付着性試験を行い、塗面状態に異常の認められないものを合格とした。
付着性試験については、ゴバン目100についての残数で評価し、100/100を合格とした。
【0046】
[実施例2〜3]
表2の配合に準じて、実施例1と同様に塗料用樹脂組成物(A)を調製し、表2に準じて塗料組成物(A)、ビニル重合性水系クリアを実施例1と同様に塗装し、表2に記載の温度で30分加熱乾燥し、同様に塗膜性能試験を行った。この結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
Figure 2005023153
【0048】
上記結果から判るように、本発明の水系塗料用樹脂組成物を使用してポリオレフィン系樹脂素材に直接塗装すると(実施例1〜3)、ポリオレフィン系樹脂素材に対する付着性とともに、塗膜としての耐水性など、上塗り塗膜に要求される諸性能において、極めて良好な塗装成形品を得ることができる。
【0049】
【発明の効果】
本発明の水系塗料用樹脂組成物を使用することにより、ポリオレフィン系樹脂素材からなる住宅外装部品の表面に、塗料を直接塗装でき、取扱い性及び安全性に優れ、揮発性有機化合物(VOC)の発生濃度が低くて環境にやさしく、しかも、耐水性の耐久性に特に優れるという効果を発揮し、かつ、ポリオレフィン系樹脂成形品に対する塗膜の付着性に優れた塗料、その塗料の塗装方法、及びその塗装方法により得られた極めて良好な塗装物を得ることができる。

Claims (6)

  1. 塩素化ポリオレフィンに、ビニル重合性モノマーをグラフト重合することによって得られたグラフト化塩素化ポリオレフィン樹脂を含有することを特徴とする水系塗料用樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の水系塗料用樹脂組成物を含有してなる塗料。
  3. さらに、着色顔料を含有することを特徴とする請求項2に記載の塗料。
  4. ポリオレフィン系樹脂成形品に、請求項2又は3に記載の塗料を塗布することを特徴とする塗装方法。
  5. ポリオレフィン系樹脂成形品に、請求項3に記載の塗料を塗布した後、その着色塗膜上に、さらにビニル重合性水系クリアを塗布することを特徴とする塗装方法。
  6. 請求項4又は5に記載の塗装方法により得られた塗装物。
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