JP2005022280A - インクジェット記録用紙及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、インク吸収性が高く、発色性に優れ、ブロンジングを生じにくく、ひび割れ等の品質低下がなく、画像保存中の滲み耐性に優れたインクジェット記録用紙及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である下記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される該多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【化1】
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である下記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される該多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【化1】
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規のインクジェット記録用紙及びインクジェット記録方法に関し、詳しくは、発色性、ブロンッジング耐性、ひび割れ耐性、滲み耐性及びインク吸収性が改良されたインクジェット記録用紙及びそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録材料は、急速にその画質向上が図られ、写真画質に迫りつつある。特に、写真画質に匹敵する画質をインクジェット記録で達成するため、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)の面からもその改良が進んでおり、高平滑性の支持体上に微粒子と親水性ポリマーからなる微小な空隙層を設けた空隙型の記録用紙は、高い光沢を有し、鮮やかな発色を示し、インク吸収性及び乾燥性に優れていることから、最も写真画質に近いものの一つになりつつある。特に、非吸水性支持体を使用した場合は、吸水性支持体に見られるようなプリント後のコックリング、いわゆる「しわ」の発生がなく、高平滑な表面を維持できるため、より高品位なプリントを得ることができる。
【0003】
インクジェット記録は、一般に、水溶性染料インクを用いる場合と顔料インクを用いる場合とに大きく分けられる。顔料インクは、画像の耐久性が高いが、画像様に光沢が変化しやすく、その結果、写真画質に近いプリントを得にくく、一方、水溶性染料インクを用いると、画像の鮮明性が高く、かつ均一な表面光沢を有する写真画質に匹敵するカラープリントが得られる。
【0004】
しかしながら、この水溶性染料は親水性が高いため、滲みが発生したり耐水性が劣るという欠点を有している。すなわち、画像記録後に、高湿下で長期間保存したり、プリント面上に水滴が付着した場合、染料が滲みやすい特性を有している。
【0005】
この問題を解決するため、一般には、カチオン性物質のような染料固着性物質をインク受容層中に添加しておくことが行われている。例えば、カチオン性ポリマーを用いてアニオン性の染料と結合させ、強固に不動化する方法が好ましく用いられている。このようなカチオン性ポリマーとしては、4級アンモニウム塩の重合物等が挙げられ、例えば、「インクジェットプリンター技術と材料」(株式会社シーエムシー発行 1998年7月)や特開平9−193532号に記載されている。また、水溶性の多価金属イオンを予めインクジェット記録用紙中に添加しておき、インクジェット記録時に染料を凝集固着させて不動化させる方法も提案されている。
【0006】
しかしながら、後述の様なカチオン性ポリマーや水溶性多価金属イオンの添加により、滲み耐性や耐水性を高めれば、染料が凝集して表面で凝集しやすくなり、その結果として、画像表面が金属光沢状のブロンジング現象を起こしやすくなる。このブロンジング現象は、一般にプリントを高湿状態で保管した場合に起きやすくなる。
【0007】
一方、ジルコニウム原子やアルミニウム原子を含有する化合物をインクジェット記録用紙に用いることが既に知られている。例えば、特開昭55−53591号、同55−150396号、同56−86789号、同58−89391号および同58−94491号には、水溶性染料と結合して難溶性塩を形成する水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開昭60−67190号、同61−10484号及び同61−57379号には、カチオン性ポリマーと水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開昭60−257286号には、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物を含有したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開平10−258567号には、親水性高分子と第4A族元素含有水溶性化合物を併用する方法が、特開平10−309862号には親水性高分子と多価カルボン酸にジルコニル化合物を併用する方法が開示されている。さらに、ジルコニウム元素を含む化合物に関しては、特開平4−7189号に多孔性顔料と酸塩化ジルコニウム化合物を用いた方法が開示されている。同公報には、酸塩化ジルコニウム塩の添加により、比較的少量のバインダーで接着強度が得られ、画質向上が図れたと記載されている。また、特開平6−32046号には、ジルコニウム化合物をシリカと変性ポリビニルアルコールと組み合わせた方法が開示されている。さらに、欧州特許第754,560号には、水溶性バインダー、顔料、ジルコニウム化合物、カチオン性ポリマーを併用する方法が開示されている。
【0008】
更に、ジルコニウム化合物またはアルミニウム化合物と共に、微量の多価金属化合物を併用して、滲み耐性、耐水性、ブロンジングを改良したインクジェット記録用紙が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、ジルコニウム化合物とポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミド系重縮合化合物とを併用して、滲み耐性及び耐光性を改良したインクジェット記録用紙が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
しかしながら、上記のような水溶性多価金属塩を含有させる場合、充分な滲み耐性や耐水性を向上させる効果を得るまで添加量を増すと、ブロンジングを引き起こしやすく、又はブロンジングを引き起こさないように添加量を減らすと滲み耐性が不十分になりやすい欠点があることが判明した。
【0010】
一方、インクジェット記録用紙のインク吸収性、乾燥性を改良する目的で、尿素を用いることが知られている。例えば、水溶性樹脂と尿素を用いて、印字濃度が高く、インク吸収性、乾燥性、保存性を改良したインクジェット用記録シートが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。また、下層部にカルバミド系化合物を添加し、上層部に無機微粒子の比率を規定したインクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献4参照。)
更に、上記課題を解決する他の方法として、特願2002−119151には多価金属化合物と尿素化合物等の水溶性保湿剤とを使用することにより、滲み耐性とブロンジングを両立したインクジェット記録用紙が提案されている。しかしこの方法で作製されたインクジェット記録用紙を用いてプリントを行なった場合、最高濃度が十分に得られないことやひび割れ等の品質低下を生じるなどの問題を抱えており、更なる性能改良が求められていた。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−274013号公報 (特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献2】
特開2002−301860号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【特許文献3】
特開2000−118127号公報 (特許請求の範囲)
【0014】
【特許文献4】
特開2003−1931号公報 (特許請求の範囲)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、インク吸収性が高く、発色性に優れ、ブロンジングを生じにくく、ひび割れ等の品質低下がなく、さらに画像保存中の滲み耐性に優れたインクジェット記録用紙及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0017】
1.支持体上に、無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である前記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される該多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0018】
2.前記一般式(1)で表される化合物が、尿素またはその誘導体であることを特徴とする前記1項記載のインクジェット記録用紙。
【0019】
3.前記インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される前記多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の90モル%以上であることを特徴とする前記1または2項に記載のインクジェット記録用紙。
【0020】
4.支持体上に無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である前記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該多価金属化合物が、該インク受容層総膜厚の表面から50%以内の領域に添加されていることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0021】
5.前記一般式(1)で表される化合物が、尿素またはその誘導体であることを特徴とする前記4項記載のインクジェット記録用紙。
【0022】
6.支持体から最も遠い位置にあるインク受容層には、前記多価金属化合物が添加されていないことを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0023】
7.前記多価金属化合物が、ジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物であることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0024】
8.前記1〜7項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙を用いたインクジェット記録方法であって、該インクジェット記録用紙上に、有機溶媒含有比率が20質量%以上のインクを吐出して画像記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0025】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、多孔質インク受容層に特定の構造を有する化合物、好ましくは尿素またはその誘導体と多価金属化合物とを含有するインクジェット記録用紙において、複数で構成されるインク受容層全膜厚における多価金属化合物を、特定の位置に分布させることにより解決できることを見出し、本発明に至った次第である。すなわち、上記構成のインクジェット記録用紙において、多価金属化合物を複数で構成されるインク受容層の全層にわたり均一に分布させるのではなく、インク受容層の表面に近い側に多く分布させることによって、発色性が改良されることを見出した。従来の知見によれば、多価金属化合物をインク受容層の表面に近い面側に局在させると、ブロンジングやひび割れを生じやすいことが知られていたが、本発明では前記一般式(1)で表される化合物、好ましくは尿素またはその誘導体を共存させることにより、これらの特性を取り崩すことなく発色性を改良することができたものである。
【0026】
本発明のインクジェット記録用紙には、2層以上の多孔質インク受容層を有することを特徴とする。本発明のインクジェット記録用紙の製造方法としては、特に限定されるものではないが、表面近くに配置するインク受容層を構成する塗布液に予め多価金属化合物を添加し、支持体上に他の多価金属化合物を含まないインク受容層塗布液とともに塗布するのが好ましい。多価金属化合物が水溶性である場合、インク受容層を形成する過程、例えば、塗布工程、乾燥工程などでは、多価金属化合物の一部が拡散し、添加した層以外の層にも分布することになる。その分布量は、一般に知られている分析方法によって調べることができ、その代表的な方法は、後述のSEM−EDX分析法である。一般に、インク受容層のバインダーとしてアニオン性基を有する水溶性高分子化合物を用いた場合、水溶性高分子化合物が多価金属イオンの正電荷と静電的相互作用を持つため、多価金属化合物の層間拡散は低く抑えられる。本発明者らの知見によれば、多価金属化合物の層間拡散量は、多くの場合5%以内であり、最大でも10%以内である。
【0027】
また、本発明のインクジェット記録用紙を用いて、有機溶媒含有率の高いインクにより画像形成した場合に、本発明の目的効果が特に効果的に発揮される。近年は、プリンタインクヘッドにおける目詰まり防止を目的として、インク中における有機溶媒含有率が高まってきているが、このことは、同時にインクジェット記録用紙に対してもインク吸収性の向上を要求しているものである。この有機溶媒は、一般に、水よりもインク受容層に吸収されにくい特性を有していることがその理由である。インクジェット記録用紙のインク吸収能が低下すると、インク受容層表面に残った色素によって、ブロンジングや滲みの劣化を引き起こす。本発明のインクジェット記録材料の構成では、前記一般式(1)で表される化合物、好ましくは尿素またはその誘導体の添加と多価金属化合物の分布を制御することによって、高いインク吸収性を維持することができた。その結果、有機溶媒含有率の高いインクで画像印字した場合に、特に顕著な性能改良効果を得ることができた。
【0028】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のインクジェット記録用紙においては、支持体上に、無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である前記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される該多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上であることが特徴であり、好ましくは80〜100%であり、より好ましくは90〜100%であり、更に好ましくは95〜100%である。
【0029】
すなわち、本発明のインクジェット記録用紙においては、2層以上の複数層で構成されているインク受容層を有し、多価金属化合物をインク受容層全膜厚の表層から60%までの深さの領域に、より多く存在させることが特徴である。具体的には、インク受容層膜厚の表面から60%以内にあたる部分を上層と定義したとき、全インク受容層に含有される多価金属化合物総量の80モル%以上が上層に含有される。
【0030】
本発明のインクジェット記録用紙で規定する上記条件を達成する方法としては、表面に近いインク受容層領域、あるいは2層以上で構成されている場合には、より上部に位置するインク受容層を形成する塗布液に、予め多価金属化合物を添加し、支持体上に他のインク受容層とともに塗布するのが好ましい。
【0031】
前述の様に、多価金属化合物が水溶性である場合、インク受容層を形成する過程、例えば、塗布工程、乾燥工程などでは、多価金属化合物の一部が拡散し、添加した層以外の層にも分布することになるため、具体的には、拡散等を考慮し、インク受容層総膜厚の表面から50%以内の領域に、多価金属化合物を添加することが本発明の特徴の1つである。また、インク吸収性を阻害しない観点から、支持体から最も遠い位置にあるインク受容層層には、多価金属化合物を添加しないことが好ましい。
【0032】
本発明において、多価金属化合物の存在位置の確定と存在量の測定は、インク受容層の断面を、X線マイクロアナライザー(XMA)分析法を用いて行うことができる。具体的には、XMAのエリア分析でインク受容層膜厚の表面から60%以内にあたる領域と、インク受容層全層の多価金属元素のシグナルから含有量を求めて比較する。XMAはX線微小部分析の総称であり、具体的にはSEMによるEDX分析、EPMAによるEDX分析、WDX分析の他、TEM、STEMによるEDX分析もこれに含まれる。多価金属化合物の金属元素によって、定量し易い分析方法を適宜選択することができる。また、金属元素の含有量が低く、XMAで定量ができない場合には、より検出感度の高い分析方法として二次イオン質量分析法(SIMS)を用いることができる。さらに飛行時間質量分析計を用いたTOF−SIMSを用いるのも有効な方法である。
【0033】
これらの一例として、SEM−EDX分析を行う場合の手順は、次のようになる。
【0034】
多価金属化合物の存在位置は、インク受容層の切片をX線分析することにより、また含有量は金属元素のシグナルから定量的に分析することができる。いわゆるSEM−EDX分析法がそれにあたる。この方法による分析は次のような手順で行われる。
【0035】
(1)インクジェット記録用紙を樹脂で固めたのち、ミクロトームで切断する
(2)断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、支持体とインク受容層を見分ける
(3)インク受容層の一定の領域に対し、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を行い、目的とする元素のシグナルを検出する
(4)異なる領域のシグナルを比較することにより、目的とする元素の分布状態を計算する
EDX分析は目的とする元素にもよるが、検出限界が1%程度となる場合がある。より含有率が低い場合には、EDXに代えてSIMSを使用することができる。
【0036】
本発明においては、インク受容層膜厚の表面から60%以内にあたる領域とそれ以外の領域、あるいはインク受容層全域の多価金属元素の含有量を比較することによって、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上が、上記インク受容層膜厚の表面から60%以内に存在するか否かを判定する。
【0037】
次いで、本発明に係る多価金属化合物について説明する。
本発明に係る多価金属化合物は、例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、スカンジウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛などの金属化合物を挙げることができ、また多価金属化合物は多価金属塩であってもよい。中でもマグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛からなる化合物は無色の為好ましく、多価金属化合物がジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物であることが更に好ましく、多価金属化合物がジルコニウム原子を含む化合物であることが特に好ましい。
【0038】
本発明で用いることのできるジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物(但し、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムは除く)は、その化合物自身は水溶性であっても非水溶性であっても良いが、インク受容層の所望の位置に均一に添加できるものであることが好ましい。
【0039】
また、本発明で用いることのできるジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物は、無機酸や有機酸の単塩および複塩、有機金属化合物、金属錯体などのいずれであっても良いが、インク受容層の所望の位置に均一に添加できるものが好ましい。
【0040】
本発明で用いることのできるジルコニウム原子を含む化合物の具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(例えば、塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウムなどが挙げられる。
【0041】
これらのジルコニウム原子を含む化合物の中でも、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましく、特に酸塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニルが好ましい。
【0042】
本発明で用いることのできるアルミニウム原子を含む化合物の具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩等)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩等)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩など)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸ケイ酸アルミニウムが好ましい。
【0043】
本発明で用いることのできるマグネシウム原子を含む化合物の具体例としては、フッ化マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、チオシアン酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、硫化マグネシウム、炭化マグネシウム、リン酸マグネシウムがあげられ、これらの中でも塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムが好ましい。
【0044】
これらの多価金属化合物の中でも、特に好ましいものは、前述したジルコニウム原子を含む化合物で好ましいものとして例示したもの、アルミニウム原子含む化合物で好ましいものとして例示したもの、マグネシウム原子を含む化合物で好ましいものとして例示したものの中で、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、塩基性塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩基性硫酸ケイ酸アルミニウムである。特に酸塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニルが好ましく、酸塩化ジルコニウムが最も好ましい。
【0045】
本発明のインクジェット記録用紙においては、前記多価金属化合物と共に、アミノ酸を併せて用いることも好ましい方法の1つである。
【0046】
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
【0047】
本発明に係るアミノ酸の詳しい解説は、化学大辞典1縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
【0048】
本発明においては、アミノ酸として、下記一般式(2)で表されるアミノ酸が好ましい。
【0049】
一般式(2)
H2N−R−COOH
一般式(2)において、Rは任意の置換基を表し、炭素数が11以下の置換基が好ましく、更に好ましくは炭素数が8以下の置換基である。このうち、特に好ましいのは、炭素数11以下のα−モノアミノモノカルボン酸、β−モノアミノモノカルボン酸及びγ−モノアミノモノカルボン酸から選ばれる少なくとも1種である。
【0050】
具体的に好ましいアミノ酸として、アミノカルボン酸、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニンを挙げることができる。
【0051】
本発明のインクジェット記録用紙では、複数のインク受容層を有するが、本発明に係る多価金属化合物及びアミノ酸は同一の層に添加されても、別の層に添加されても構わないが、より有効に発揮させる観点からは、同一層に添加されるのが好ましい。
【0052】
添加方法は、インク受容層の塗工液(必要に応じて無機微粒子や親水性バインダーを含有する)に混合して添加してもよいし、インク受容層を一旦塗布乾燥後その上にオーバーコートしてもよいし、それらの組み合わせでもよい。多価金属化合物とアミノ酸は同一の添加方法を用いてもよく、異なる添加方法を用いてもよい。好ましい方法はインク受容層の塗工液に多価金属化合物とアミノ酸が添加された後、塗布が行われる方法である。この方法によれば、インク受容層形成後の多価金属化合物とアミノ酸の存在位置をある程度意図的に操作することができる。
【0053】
多価金属化合物及びアミノ酸を、インク受容層を形成する塗工液に添加する場合、水や有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に均一に溶解して添加すること、あるいはサンドミルなどの湿式粉砕法や乳化分散などの方法により微細な粒子に分散して添加することができる。インク受容層を一旦形成した後、オーバーコート方法により添加する場合には、均一な溶液に溶解して添加するのが好ましい。
【0054】
いずれの方法をとる場合でも、多価金属化合物及びアミノ酸は、塗布される前に予め混合されていることが好ましい。本発明は、インク受容層内で多価金属化合物とアミノ酸が共存することによってもたらされる効果利用するのが主たる目的であるが、多価金属化合物の溶液や分散物にアミノ酸を共存させることにより多価金属化合物溶液や分散物の安定性を増すことができる。かかる共存状態では、ある程度配位子置換が起こり、多価金属・アミノ酸錯体が形成されることは、アミノ酸の錯解離定数から容易に想像がつく。本発明において多価金属・アミノ酸錯体を用いることは必ずしも必須の要件ではないが、一つの実施態様ではある。予め多価金属イオンとアミノ酸を然るべき条件で反応させ、多価金属・アミノ酸錯体を形成させてからインク受容層の塗工液に添加したのち塗布するか、あるいはインク受容層にオーバーコートしても構わない。
【0055】
本発明に係るインク受容層の塗布方法の最も好ましい態様は、あらかじめ多価金属化合物とアミノ酸を混合した溶液あるいは分散液を、インク受容層塗工液の塗布直前にインライン添加することである。
【0056】
これらの各添加剤をインライン添加することにより、塗布液の他の構成要素との停滞保存時の相互作用を防止することができ、塗布液安定性を向上させるとともに、本発明に係る各添加剤の目的効果をいかんなく発揮させることができる。
【0057】
本発明において、上記各添加剤のインライン添加方法としては、塗布装置で支持体上に塗布する直前に、コーターへ主液として、例えば、インク受容層塗布液を供給する配管中に、副液として上記各溶液を送液管を合流させて混合し添加する方法である。
【0058】
インライン添加を行う地点の下流側には、インライン混合装置を設けることが好ましく、インライン混合装置としては一般によく知られているスタチックミキサー(静止型混合器)が特に好ましい。スタチックミキサーについては、N.Harmby,M.F.Edwards,A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されており、それを参考にすることができ、具体的には、例えば、東レエンジニアリング製のスタチックミキサー、Kenics社(アメリカ)製のスタティックミキサー、Sulger社(スイス)製のスタティックミキシングエレメントSMV型、晃立工業社製のシマザキパイプミキサー、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)、ノリタケ社製のスタティクミキサーN10等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
【0059】
次いで、本発明に係る分子量が200以下である前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0060】
前記一般式(1)において、R1は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基、シクロアルキル基等)、置換もしくは非置換のアルケニル基(例えば、プロペニル基、ブテニル基、ノネニル基等)、置換もしくは非置換のアリール基(例えば、フェニル基等)、置換もしくは非置換のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、置換もしくは非置換のヘテロアリール基(例えば、トリアゾール基、イミダゾール基、ピリジン基、フラン基、チオフェン基等)、置換もしくは非置換の複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、NR4R5、またはOR6を表す。また、R1とR2、R1とR3とがお互いに結合して環を形成しても良い。Xは酸素原子またはNHを表す。
【0061】
本発明においては、前記一般式(1)で表される化合物は、アルコール性水酸基を有しないことが、本発明の目的効果を発揮させる観点から好ましい。
【0062】
前記一般式(1)において、分子量は200以下であることが特徴であり、また水素原子を除く原子数が15以下であることが好ましく、また水溶性であることが、添加容易性の観点から好ましい。
【0063】
以下に、本発明に係る一般式(1)で表される化合物例を列挙するが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0064】
【化2】
【0065】
【化3】
【0066】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物は、当業者が公知の方法に従って容易に合成することができ、また市販品として入手することもできる。
【0067】
本発明のインクジェット記録用紙においては、前記一般式(1)で表される化合物の中でも、尿素またはその誘導体であることが好ましく、尿素誘導体は基本的には、尿素のアミノ基の水素原子を、他の官能基で修飾された構造を有する。その修飾基は1つでも複数でもよく、複数の修飾基が互いに連結して環をなしていてもよい。本発明で用いることのできる尿素及び尿素誘導体としては、尿素、アルキル尿素、例えば、メチル尿素、エチル尿素、N,N′−ジメチル尿素、エチレン尿素、N,N′−ジヒドロキシエチル尿素等が好ましく、その中でも、特に尿素が好ましい。
【0068】
本発明のインクジェット記録用紙においては、支持体上に少なくとも2層のインク受容層を設け、支持体から遠いインク受容層により多くの前記一般式(1)で表される化合物、その中でも、特に尿素誘導体を含有させることも好ましい。支持体上に3層以上のインク受容層を設けた場合、支持体から遠いインク受容層ほど、前記一般式(1)で表される化合物、その中でも、特に尿素誘導体の含有量が多くなる、もしくは同等量であることが好ましい。支持体に近いインク受容層に、前記一般式(1)で表される化合物、その中でも、特に尿素誘導体を多く含有させた場合、本発明の効果が大きく減少し好ましくない。
【0069】
本発明においては、前記一般式(1)で表される化合物、その中でも、特に尿素誘導体とポリビニルアルコールの質量比が0.02以上、1.0以下になるように用いることが好ましく、さらに好ましくは0.05以上、0.5以下である。なお、支持体上に複数のインク受容層を設けた場合には、前記一般式(1)で表される化合物の総量とポリビニルアルコール総量の質量比とする。前記一般式(1)で表される化合物とポリビニルアルコールの質量比が0.02以上であれば、本発明の効果を十分に発現することができ、また1.0以下であれば、ひび割れの劣化、滲みの劣化、ステインの発生等を防ぐことができる。
【0070】
本発明のインクジェット記録用紙は、支持体上に親水性バインダーと無機微粒子を含有する多孔質インク受容層を形成する水溶性塗布液を塗布し、空隙を有するインク受容層を形成したものである。本発明に係るインク受容層は、主に無機微粒子と親水性バインダーから形成される。インク受容層を形成する無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料を挙げることができる。上記無機微粒子は1次粒子のまま用いても、また2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0071】
本発明においては、インクジェット記録用紙で高品位なプリントを得る観点から、無機微粒子として、シリカまたはアルミナが好ましく、更にアルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカ、もしくは気相法により合成された微粒子シリカ等が好ましく、気相法で合成された微粒子シリカが特に好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がアルミニウムで修飾されたものであってもく、気相法シリカのアルミニウム含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
【0072】
上記無機微粒子の粒径は、いかなる粒径のものも用いることができるが、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。1μmを越えると光沢性、または発色性が低下しやすく、そのため200nm以下が好ましい。更に100nm以下のシリカが最も好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、無機微粒子の製造上の観点から、概ね3nm以上、特に5nm以上が好ましい。
【0073】
上記無機微粒子の平均粒径は、インク受容層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0074】
上記無機微粒子は、1次粒子のままで或いは2次粒子もしくはそれ以上の高次凝集粒子で多孔質皮膜に存在していてもいが、上記平均粒径は、電子顕微鏡で観察した時にインク受容層中で独立の粒子を形成しているものの粒径をいう。
【0075】
上記無機微粒子の平均1次粒子径は、多孔質膜中で観測される平均粒径以下である必要があり、無機微粒子の1次粒子径としては100nm以下のものが好ましく、より好ましくは30nm以下、最も好ましくは4〜20nmの微粒子である。
【0076】
上記無機微粒子の水溶性塗布液における含有量は、5〜40質量%であり、特に7〜30質量%が好ましい。上記無機微粒子は、十分なインク吸収性があり、皮膜のひび割れ等が少ないインク吸収層を形成する必要があり、インク受容層中には、5〜50g/m2の付き量になることが好ましい。更に、10〜25g/m2になることが特に好ましい。
【0077】
インク受容層に含有される親水性バインダーとしては、特に制限は無く、従来公知の親水性バインダーを用いることができ、例えばゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等を用いることができるが、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0078】
ポリビニルアルコールは、無機微粒子と相互作用を有しており、無機微粒子に対する保持力が特に高く、更に吸湿性の湿度依存性が比較的小さなポリマーであり、塗布乾燥時の収縮応力が比較的小さいため、塗布乾燥時のひび割れに対する適性が優れる。本発明に好ましく用いられるポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0079】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,000〜5,000のものが好ましく用いられ、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.8%のものが特に好ましい。
【0080】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されるような、第1〜3級アミノ基や第4級アミノ基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0081】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−メチルビニルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0082】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0083】
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平1−206088号に記載されているアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号に記載されている水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0084】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平7−9758号に記載されているポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0085】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類の違いなど、2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め無機微粒子に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい増粘が無く好ましい。
【0086】
インク受容層の親水性バインダーに対する無機微粒子の比率は、質量比で2〜20倍であることが好ましい。質量比が2倍以上であれば、十分な空隙率の多孔質膜が得られ、十分な空隙容量を得やすくなり、維持できる親水性バインダーによるインクジェット記録時の膨潤によって空隙を塞ぐ状況を招かず、高インク吸収速度を維持できる要因となる。一方、この比率が20倍以下であれば、インク受容層を厚膜で塗布した際、ひび割れが生じにくくなる。特に好ましい親水性バインダーに対する無機微粒子の比率は2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0087】
本発明のインクジェット記録用紙には、記録後の保存による画像の滲みを防止する目的でカチオン性ポリマーを用いることが好ましい。
【0088】
カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、等が挙げられる。
【0089】
また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0090】
本発明で好ましく用いられるカチオン性ポリマーとして、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂が挙げられ、前記化合物と併用することで、皮膜が膨潤するのを防ぎ、インク吸収性や褪色防止効果が更に向上する。
【0091】
ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の中でも、特にポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂が好ましい。ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の使用量は、塗布液中の無機微粒子や水溶性樹脂の量によって変り得るが、記録媒体にした時にインク吸収層中に0.01〜1.0g/m2であることが好ましく、0.01〜0.5g/m2であることがより好ましい。0.01g/m2未満ではインク吸収性及び褪色を改善する効果が少なく、1.0g/m2を越えると塗布乾燥時にクラックが発生するなどの故障が生じることがある。
【0092】
ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は、エポキシ化ポリアミド樹脂とも呼ばれ、下記式で示される構造を有する化合物である。
【0093】
【化4】
【0094】
前記式中、nは重合度を表す。前記重合度としては、500〜10000が好ましい。前記重合度が、500未満であると人体に害を与える可能性が考えられ、10000を越えると安定性に欠けることがある。
【0095】
本発明に用いられるポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造方法としては、例えば特開平6−1842に記載された方法が挙げられる。
【0096】
前記ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂としては、1種単独で使用してもよいし、異なる重合度のものを混合して併用してもよい。また、前記ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は、適宜合成したものでもよいし、市販品を用いてもよい。
【0097】
本発明のインクジェット記録用紙は、多孔質インク受容層を形成する水溶性バインダーの硬膜剤を添加することが好ましい。
【0098】
本発明で用いることのできる硬化剤としては、水溶性バインダーと硬化反応を起こすものであれば特に制限は無いが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性バインダーと反応し得る基を有する化合物或いは水溶性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0099】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸及びそれらの塩が挙げられる。
【0100】
硬化剤としての硼素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0101】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
【0102】
上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性バインダー1g当たり1〜600mgが好ましい。また、請求項3に対応する供給量としては、上記水溶性バインダー1g当たり100〜600mgが好ましい。
【0103】
本発明に用いる支持体は従来インクジェット記録用紙用として公知のものを適宜使用でき、吸水性支持体であってもいが、非吸水性支持体であることが好ましい。
【0104】
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば一般の紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。また、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0105】
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0106】
紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。また、必要に応じて抄紙段階または抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0107】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、透明支持体または不透明支持体がある。透明支持体としてはポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用された時の輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、50μm〜200μmが好ましい。
【0108】
また、不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0109】
前記各種支持体とインク吸収層の接着強度を大きくする等の目的で、インク吸収層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明のインクジェット記録用紙は必ずしも無色である必要は無く、着色された記録シートであってもい。
【0110】
本発明のインクジェット記録用紙では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0111】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及びまたはLDPの比率は10質量%〜70質量%が好ましい。
【0112】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0113】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0114】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0115】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0116】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0117】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもく、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0118】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0119】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0120】
特にインク吸収層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3質量%〜20質量%、好ましくは4質量%〜13質量%である。
【0121】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0122】
上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3質量%〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
【0123】
本発明のインクジェット記録用紙には、各種の添加剤を添加することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている褪色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0124】
次に、本発明のインクジェット記録用紙の製造方法について説明する。
インクジェット記録用紙の製造方法としては、インク吸収層を含む各構成層を、各々単独に或いは同時に、公知の塗布方式から適宜選択して、支持体上に塗布、乾燥して製造することができる。塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、或いは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0125】
同時重層塗布を行う際の各塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0126】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、更に好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0127】
塗布及び乾燥方法としては、塗布液を30℃以上に加温して、同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましい。塗布液調製時、塗布時及び乾燥時おいて、表層に含まれる熱可塑性樹脂が製膜しないように、該熱可塑性樹脂のTg以下の温度で塗布液の調製、塗布、乾燥することが好ましい。より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0128】
また、その製造過程で35℃以上、70℃以下の条件で24時間以上、60日以下保存する工程を有することが好ましい。
【0129】
加温条件は、35℃以上、70℃以下の条件で24時間以上、60日以下保存する条件であれば特に制限は無いが、好ましい例としては、例えば、36℃で3日〜4週間、40℃で2日〜2週間、或いは55℃で1〜7日間である。この熱処理を施すことにより、水溶性バインダーの硬化反応の促進、或いは水溶性バインダーの結晶化を促進することができ、その結果、好ましいインク吸収性を達成することができる。
【0130】
次いで、本発明のインクジェット記録方法で用いるインクについて説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、特に水溶性染料インクを用いたインクジェット記録方法において特に効果が大きく好ましいが、顔料インクを用いたインクジェット記録方法でも使用することができる。また、本発明のインクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いたインクジェット記録方法が好ましく用いられる。
【0131】
上記水性インクとは、下記着色剤及び溶媒、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料或いは食品用色素等の水溶性染料、或いは水分散性顔料が使用できる。
【0132】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0133】
本発明のインクジェット記録方法においては、本発明のインクジェット記録用紙上に、上記有機溶媒含有比率が20質量%以上のインクを吐出して画像記録することが特徴であり、インクの有機溶媒含有比率として好ましくは20〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%である。
【0134】
その他の水性インクの添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤、等が挙げられる。
【0135】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常、25〜60mN/m、好ましくは30〜50mN/mの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。上記インクのpHは、好ましくは5〜10であり、特に好ましくは6〜9である。
【0136】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は、特に断りの無いかぎり質量%を表す。
【0137】
実施例1
《記録用紙1の作製》
〔シリカ分散液の調製〕
(シリカ分散液D−1の調製)
予め均一に分散されている一次粒子の平均粒子径が約0.007μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製;アエロジル300)を25%含むシリカ分散液B−1(pH2.6、エタノール0.5%含有)の400Lを、カチオン性ポリマーP−1を12%、n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有する水溶液C−1(pH2.5、サンノプコ社製の消泡剤SN−381を2g含有)の110Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。次いで、硼酸とホウ砂の1:1質量比の混合水溶液A−1(各々3%の濃度)の54Lを攪拌しながら、徐々に添加した。
【0138】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D−1を得た。
【0139】
(シリカ分散液D−2の調製)
上記シリカ分散液B−1の400Lを、カチオン性ポリマーP−2を12%、n−プロパノール10%およびエタノールを2%含有する水溶液C−2(pH=2.5)の120Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加し、次いで、上記混合水溶液A−1の52Lを攪拌しながら徐々に添加した。次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D−2を得た。
【0140】
上記シリカ分散液D−1及びシリカ分散液D−2は、それぞれ調製した後、30μmの濾過精度を有するアドバンテック東洋社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。
【0141】
【化5】
【0142】
〔塗布液の調製〕
上記調製した各分散液を使用して、以下に記載の各添加剤を順次混合して、多孔質インク受容層用の各塗布液を調製した。なお、各添加量は塗布液1L当りの量で表示した。
【0143】
(第1層用塗布液:最下層)
シリカ分散液D−1 625ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度99.7%、クラレ
社製 PVA135H)5%水溶液 363ml
エタノール 8.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0144】
(第2層用塗布液)
シリカ分散液D−1 625ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度99.7%、クラレ
社製 PVA135H)5%水溶液 363ml
エタノール 8ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0145】
(第3層用塗布液)
シリカ分散液D−2 625ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度99.7%、クラレ
社製 PVA135H)5%水溶液 363ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0146】
(第4層用塗布液:最上層)
シリカ分散液D−2 625ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度99.7%、クラレ
社製 PVA135H)5%水溶液 363ml
カチオン性界面活性剤−1の4%水溶液 3ml
サポニンの25%水溶液 2ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0147】
【化6】
【0148】
上記の様に調製した各層用塗布液を、20μmの濾過精度を持つアドバンテック東洋社製のTCPD−30フィルターで濾過した後、TCPD−10フィルターで濾過した。
【0149】
〔塗布〕
上記調製した各塗布液を、下記に記載の湿潤膜厚となるよう、40℃で両面にポリエチレンを被覆した紙支持体1上に、スライドホッパー型コーターを用いて4層同時塗布した。
【0150】
〈湿潤膜厚〉
第1層:40μm
第2層:40μm
第3層;40μm
第4層:40μm
なお、上記紙支持体1は、幅が約1.5m、長さが約4000mのロール状に巻かれた下記の支持体を用いた。
【0151】
使用した紙支持体1は、含水率が8%で、坪量が170gの写真用原紙表面を、アナターゼ型酸化チタンを6%含有するポリエチレンを厚さ35μmで押し出し溶融塗布し、裏面には厚さ40μmのポリエチレンを厚さ35μmで押し出し溶融塗布した。表面側はコロナ放電した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)を記録媒体1m2当り0.05gになるように下引き層を塗布し、裏面側にはコロナ放電した後、Tgが約80℃のスチレン−アクリル酸エステル系ラテックスバインダー約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)0.1gおよび約2μmのシリカ0.1gをマット剤として含有するバック層を塗布した。
【0152】
各層塗布液を紙支持体1上に塗布して、各インク受容層を形成した後の乾燥は、5℃に保った冷却ゾーンを15秒間通過させて膜面の温度を13℃にまで低下させた後、複数設けた乾燥ゾーンにて20〜40℃の温風を6〜7分間吹付けて乾燥を行った後、ロール状に巻き取って記録用紙1を得た。
【0153】
《記録用紙2〜8の作製》
上記記録用紙1の作製において、第1層〜第4層の各塗布液に表1に記載の様に、10%尿素水溶液及び/または20%酢酸ジルコニル水溶液(ジルコゾールZA:第一希元素化学工業(株)製を水で希釈して使用)を所定量添加した以外は同様にして、記録用紙2〜8を作製した。
【0154】
《ジルコニウム含有率(モル%)の測定》
上記作製した各試料をミクロトームを用いて断面を切り出し、その断面を前述の方法に従ってSEM−EDX分析を行うことにより、深さ方向のジルコニウムのシグナルを検出し、深さ方向の定量分析を行った。その結果より、インク受容層表面から60%以内に存在するジルコニウム原子の含有率(モル%)を求め、これをジルコニウム化合物(多価金属化合物)の分布と見なした。得られた結果を、同じく表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
《記録用紙の評価》
以上の様にして得られた記録用紙1〜8について、以下の特性評価を行なった。
【0157】
〔ひび割れ耐性の評価〕
各記録用紙のインク受容層塗布面を、0.1m2をルーペを用いてひび割れ状態を観察し、下記の基準に則りひび割れ耐性の評価を行った。
【0158】
AA:ひび割れがほとんど観察されない
A:0.5mm未満の微小なひび割れが数点観察される
B:0.5mm以上の粗大なひび割れが数点観察される
C:0.5mm以上の粗大なひび割れが全面に観察される
〔発色性の評価:画像濃度の測定〕
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM950Cを用いて、純正の黒インクにより黒ベタ画像を印字し、その反射濃度(DR、DG、DB)を反射濃度計を用いて測定した。
【0159】
〔ブロンジング耐性の評価〕
上記形成した黒ベタ画像を、23℃、相対湿度80%の雰囲気下で1週間保存した後、プリント画像の状態(ブロンジングの発生具合)を目視観察し、下記の基準に則りブロンジング耐性の評価を行った。
【0160】
A:ブロンジングの発生が認められない
B:わずかにブロンジングが認められるが問題ない
C:一部でブロンジングが認められるが実用上問題ない
D:ブロンジングが激しく認められる
〔滲み耐性の評価〕
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM950Cを用いて、純正マゼンタインクによるマゼンタベタ画像を背景として、ブラックインクによる線幅が約0.3mmの細線を印字した。次いで、印字後直ちに、試料の両面を、記録用紙の作製に用いた紙支持体1により上下各3枚ずつ重ねた後、輪ゴムで固定し、この積層試料を、50℃、相対湿度85%の雰囲気下で7日間保存した。次いで、保存前後でのブラックインクの線幅をマイクロデンシトメーターで測定(反射濃度が最大濃度の50%部分の幅を線幅とした)し、下式にしたがって滲み率を測定し、下記の基準に則り滲み耐性の評価を行った。
【0161】
滲み率=(画像保存後の線幅)/(画像保存前の線幅)
A:滲み率が1.00〜1.20である
B:滲み率が1.21〜1.40である
C:滲み率が1.41〜1.60である
D:滲み率が1.61以上である
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0162】
【表2】
【0163】
表2の結果より明らかな様に、比較例に対して本発明の記録用紙は、滲み耐性、ブロンジング耐性、発色性(画像濃度)において優れていることが分かる。その中でも、特に記録用紙7、8はひび割れの発生が大きく抑制されており好ましいことが分かる。
【0164】
実施例2
実施例1に記載の記録用紙2の作製において、第1層〜第4層塗布液の調製に用いた酢酸ジルコニルに代えて、表3に記載の各多価金属化合物の種類及び各層添加量に変更した以外は同様にして、記録用紙9〜15を作製した。
【0165】
次いで、作製した記録用紙9〜15と、実施例1で作製した記録用紙2、3、5、7について、実施例1に記載の方法と同様にして、ブロンジング耐性、滲み耐性及び発色性の評価を行い、得られた結果を同じく表3に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
表3の結果より明らかな様に、多価金属化合物としてジルコニウム化合物に代えて、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物を用いても、滲み耐性、ブロンジング耐性、発色性(画像濃度)に優れた記録用紙を得られることが分かる。ただし、得られる効果としては、多価金属化合物の中でもジルコニウム化合物を用いた場合に特に顕著である。
【0168】
実施例3
実施例1で作製した記録用紙7において、尿素に代えて、一般式(1)で表される化合物である例示化合物2、25、28、39、50を、第1層〜第4層にそれぞれ10ml/L添加した以外は同様にして、記録用紙16〜20を作製し、実施例1に記載の方法と同様にして、ブロンジング耐性、滲み耐性及び発色性の評価を行った結果、記録用紙7とほぼ同様の良好な結果を得ることができた。
【0169】
実施例4
《インクジェット画像の形成》
実施例1で作製した記録用紙3、5、6について、下記の組成からなるインクセットを用いて印字して、インクジェット画像を形成した。
【0170】
〔インクセットの調製〕
(インクセットAの調製)
〈イエロー濃色インクY1〉
C.I.Acid Yellow 132 3.0質量%
ジエチレングリコール 10.0質量%
グリセリン 10.0質量%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 5.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 25.0質量%
〈イエロー淡色インクY2〉
C.I.Acid Yellow 132 0.75質量%
ジエチレングリコール 10.0質量%
グリセリン 10.0質量%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 30.0質量%
〈マゼンタ濃色インクM1〉
C.I.Acid Red 249 4.0質量%
ジプロピレングリコール 10.0質量%
テトラエチレングリコール 10.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 30.0質量%
〈マゼンタ淡色インクM2〉
C.I.Acid Red 249 1.0質量%
ジエチレングリコール 12.0質量%
グリセリン 12.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 34.0質量%
〈シアン濃色インクC1〉
C.I.Direct Blue 199 3.0質量%
エチレングリコール 10.0質量%
グリセリン 10.0質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 30.0質量%
〈シアン淡色インクC2〉
C.I.Direct Blue 199 1.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
グリセリン 10.0質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 25.0質量%
〈ブラック濃色インクK1〉
Basacid Black X34 30.0質量%
エチレングリコール 7.0質量%
ジエチレングリコール 7.0質量%
グリセリン 7.0質量%
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 3.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 24.0質量%
〈ブラック淡色インクK2〉
Basacid Black X34 9.0質量%
エチレングリコール 7.0質量%
プロピレングリコール 7.0質量%
グリセリン 7.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 24.0質量%
(インクセットBの調製)
〈イエロー濃色インクY3〉
C.I.Acid Yellow 132 3.0質量%
ジエチレングリコール 7.5質量%
グリセリン 7.5質量%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 2.5質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 17.5質量%
〈イエロー淡色インクY4〉
C.I.Acid Yellow 132 0.75質量%
ジエチレングリコール 6.0質量%
グリセリン 6.0質量%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 18.0質量%
〈マゼンタ濃色インクM3〉
C.I.Acid Red 249 4.0質量%
ジプロピレングリコール 6.0質量%
テトラエチレングリコール 6.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 6.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 18.0質量%
〈マゼンタ淡色インクM4〉
C.I.Acid Red 249 1.0質量%
ジエチレングリコール 6.0質量%
グリセリン 6.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 5.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 17.0質量%
〈シアン濃色インクC3〉
C.I.Direct Blue 199 3.0質量%
エチレングリコール 6.0質量%
グリセリン 6.0質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 6.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 18.0質量%
〈シアン淡色インクC4〉
C.I.Direct Blue 199 1.0質量%
ジプロピレングリコール 2.5質量%
グリセリン 7.5質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 7.5質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 17.5質量%
〈ブラック濃色インクK3〉
Basacid Black X34 30.0質量%
エチレングリコール 5.0質量%
ジエチレングリコール 5.0質量%
グリセリン 5.0質量%
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 3.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 18.0質量%
〈ブラック淡色インクK4〉
Basacid Black X34 9.0質量%
エチレングリコール 4.0質量%
プロピレングリコール 4.0質量%
グリセリン 7.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 4.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 19.0質量%
《記録用紙の評価》
上記調製した各インクセットと各記録用紙を用いて、表4に記載の組み合わせで、画像印字を行い、実施例1に記載の方法と同様の評価基準で、ブロンジング耐性と、下記の方法に従って発色性とインク吸収性の評価を行った。
【0171】
(画像印字)
実施例1で作製した記録用紙3、5、6について、ノズル直径23μm、駆動周波数12kHz、1色当たりのノズル数128、同色ノズル密度90dpi(以下、dpiとは2.54cm当たりのドットの数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型インクジェットプリンタに、上記調製した各インクセットを装填して、各色ベタ画像の印字を行った。
【0172】
(発色性の評価)
上記方法により印字した黒ベタ画像の反射濃度(DR、DG、DB)を反射濃度計を用いて測定した。
【0173】
(インク吸収性の評価)
各記録用紙に印字した各色ベタ画像について、印字直後の印字部分を指でこすって画像の乱れを目視観察し、下記の基準に則りインク吸収性の評価を行った。
【0174】
なお、評価は、各色インクの平均値で表示した。
A:指で擦ってもほとんど画像の乱れがない
B:指で擦ると、やや画像がこすれて汚れが発生する
C:指で擦ると、画像がこすれてひどく汚れる
以上により得られた結果を、表4に示す。
【0175】
【表4】
【0176】
表4の結果より明らかな様に、本発明の記録用紙5は、いずれのインクセットを用いて画像形成した場合にも、ブロンジング耐性、インク吸収性、発色性において、比較の記録用紙3及び6に対し優れた特性を有していることが分かる。その中でも、全てが有機溶媒含有率が20質量%以上のインクから構成されたインクセットAを用いたときに、発色性が顕著に向上していることが分かる。
【0177】
【発明の効果】
本発明により、インク吸収性が高く、発色性に優れ、ブロンジングを生じにくく、ひび割れ等の品質低下がなく、さらに画像保存中の滲み耐性に優れたインクジェット記録用紙及びインクジェット記録方法を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規のインクジェット記録用紙及びインクジェット記録方法に関し、詳しくは、発色性、ブロンッジング耐性、ひび割れ耐性、滲み耐性及びインク吸収性が改良されたインクジェット記録用紙及びそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録材料は、急速にその画質向上が図られ、写真画質に迫りつつある。特に、写真画質に匹敵する画質をインクジェット記録で達成するため、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)の面からもその改良が進んでおり、高平滑性の支持体上に微粒子と親水性ポリマーからなる微小な空隙層を設けた空隙型の記録用紙は、高い光沢を有し、鮮やかな発色を示し、インク吸収性及び乾燥性に優れていることから、最も写真画質に近いものの一つになりつつある。特に、非吸水性支持体を使用した場合は、吸水性支持体に見られるようなプリント後のコックリング、いわゆる「しわ」の発生がなく、高平滑な表面を維持できるため、より高品位なプリントを得ることができる。
【0003】
インクジェット記録は、一般に、水溶性染料インクを用いる場合と顔料インクを用いる場合とに大きく分けられる。顔料インクは、画像の耐久性が高いが、画像様に光沢が変化しやすく、その結果、写真画質に近いプリントを得にくく、一方、水溶性染料インクを用いると、画像の鮮明性が高く、かつ均一な表面光沢を有する写真画質に匹敵するカラープリントが得られる。
【0004】
しかしながら、この水溶性染料は親水性が高いため、滲みが発生したり耐水性が劣るという欠点を有している。すなわち、画像記録後に、高湿下で長期間保存したり、プリント面上に水滴が付着した場合、染料が滲みやすい特性を有している。
【0005】
この問題を解決するため、一般には、カチオン性物質のような染料固着性物質をインク受容層中に添加しておくことが行われている。例えば、カチオン性ポリマーを用いてアニオン性の染料と結合させ、強固に不動化する方法が好ましく用いられている。このようなカチオン性ポリマーとしては、4級アンモニウム塩の重合物等が挙げられ、例えば、「インクジェットプリンター技術と材料」(株式会社シーエムシー発行 1998年7月)や特開平9−193532号に記載されている。また、水溶性の多価金属イオンを予めインクジェット記録用紙中に添加しておき、インクジェット記録時に染料を凝集固着させて不動化させる方法も提案されている。
【0006】
しかしながら、後述の様なカチオン性ポリマーや水溶性多価金属イオンの添加により、滲み耐性や耐水性を高めれば、染料が凝集して表面で凝集しやすくなり、その結果として、画像表面が金属光沢状のブロンジング現象を起こしやすくなる。このブロンジング現象は、一般にプリントを高湿状態で保管した場合に起きやすくなる。
【0007】
一方、ジルコニウム原子やアルミニウム原子を含有する化合物をインクジェット記録用紙に用いることが既に知られている。例えば、特開昭55−53591号、同55−150396号、同56−86789号、同58−89391号および同58−94491号には、水溶性染料と結合して難溶性塩を形成する水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開昭60−67190号、同61−10484号及び同61−57379号には、カチオン性ポリマーと水溶性多価金属塩を添加したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開昭60−257286号には、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物を含有したインクジェット記録用紙が開示されている。また、特開平10−258567号には、親水性高分子と第4A族元素含有水溶性化合物を併用する方法が、特開平10−309862号には親水性高分子と多価カルボン酸にジルコニル化合物を併用する方法が開示されている。さらに、ジルコニウム元素を含む化合物に関しては、特開平4−7189号に多孔性顔料と酸塩化ジルコニウム化合物を用いた方法が開示されている。同公報には、酸塩化ジルコニウム塩の添加により、比較的少量のバインダーで接着強度が得られ、画質向上が図れたと記載されている。また、特開平6−32046号には、ジルコニウム化合物をシリカと変性ポリビニルアルコールと組み合わせた方法が開示されている。さらに、欧州特許第754,560号には、水溶性バインダー、顔料、ジルコニウム化合物、カチオン性ポリマーを併用する方法が開示されている。
【0008】
更に、ジルコニウム化合物またはアルミニウム化合物と共に、微量の多価金属化合物を併用して、滲み耐性、耐水性、ブロンジングを改良したインクジェット記録用紙が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、ジルコニウム化合物とポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミド系重縮合化合物とを併用して、滲み耐性及び耐光性を改良したインクジェット記録用紙が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
しかしながら、上記のような水溶性多価金属塩を含有させる場合、充分な滲み耐性や耐水性を向上させる効果を得るまで添加量を増すと、ブロンジングを引き起こしやすく、又はブロンジングを引き起こさないように添加量を減らすと滲み耐性が不十分になりやすい欠点があることが判明した。
【0010】
一方、インクジェット記録用紙のインク吸収性、乾燥性を改良する目的で、尿素を用いることが知られている。例えば、水溶性樹脂と尿素を用いて、印字濃度が高く、インク吸収性、乾燥性、保存性を改良したインクジェット用記録シートが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。また、下層部にカルバミド系化合物を添加し、上層部に無機微粒子の比率を規定したインクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献4参照。)
更に、上記課題を解決する他の方法として、特願2002−119151には多価金属化合物と尿素化合物等の水溶性保湿剤とを使用することにより、滲み耐性とブロンジングを両立したインクジェット記録用紙が提案されている。しかしこの方法で作製されたインクジェット記録用紙を用いてプリントを行なった場合、最高濃度が十分に得られないことやひび割れ等の品質低下を生じるなどの問題を抱えており、更なる性能改良が求められていた。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−274013号公報 (特許請求の範囲)
【0012】
【特許文献2】
特開2002−301860号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【特許文献3】
特開2000−118127号公報 (特許請求の範囲)
【0014】
【特許文献4】
特開2003−1931号公報 (特許請求の範囲)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、インク吸収性が高く、発色性に優れ、ブロンジングを生じにくく、ひび割れ等の品質低下がなく、さらに画像保存中の滲み耐性に優れたインクジェット記録用紙及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0017】
1.支持体上に、無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である前記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される該多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0018】
2.前記一般式(1)で表される化合物が、尿素またはその誘導体であることを特徴とする前記1項記載のインクジェット記録用紙。
【0019】
3.前記インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される前記多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の90モル%以上であることを特徴とする前記1または2項に記載のインクジェット記録用紙。
【0020】
4.支持体上に無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である前記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該多価金属化合物が、該インク受容層総膜厚の表面から50%以内の領域に添加されていることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0021】
5.前記一般式(1)で表される化合物が、尿素またはその誘導体であることを特徴とする前記4項記載のインクジェット記録用紙。
【0022】
6.支持体から最も遠い位置にあるインク受容層には、前記多価金属化合物が添加されていないことを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0023】
7.前記多価金属化合物が、ジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物であることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0024】
8.前記1〜7項のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙を用いたインクジェット記録方法であって、該インクジェット記録用紙上に、有機溶媒含有比率が20質量%以上のインクを吐出して画像記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0025】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、多孔質インク受容層に特定の構造を有する化合物、好ましくは尿素またはその誘導体と多価金属化合物とを含有するインクジェット記録用紙において、複数で構成されるインク受容層全膜厚における多価金属化合物を、特定の位置に分布させることにより解決できることを見出し、本発明に至った次第である。すなわち、上記構成のインクジェット記録用紙において、多価金属化合物を複数で構成されるインク受容層の全層にわたり均一に分布させるのではなく、インク受容層の表面に近い側に多く分布させることによって、発色性が改良されることを見出した。従来の知見によれば、多価金属化合物をインク受容層の表面に近い面側に局在させると、ブロンジングやひび割れを生じやすいことが知られていたが、本発明では前記一般式(1)で表される化合物、好ましくは尿素またはその誘導体を共存させることにより、これらの特性を取り崩すことなく発色性を改良することができたものである。
【0026】
本発明のインクジェット記録用紙には、2層以上の多孔質インク受容層を有することを特徴とする。本発明のインクジェット記録用紙の製造方法としては、特に限定されるものではないが、表面近くに配置するインク受容層を構成する塗布液に予め多価金属化合物を添加し、支持体上に他の多価金属化合物を含まないインク受容層塗布液とともに塗布するのが好ましい。多価金属化合物が水溶性である場合、インク受容層を形成する過程、例えば、塗布工程、乾燥工程などでは、多価金属化合物の一部が拡散し、添加した層以外の層にも分布することになる。その分布量は、一般に知られている分析方法によって調べることができ、その代表的な方法は、後述のSEM−EDX分析法である。一般に、インク受容層のバインダーとしてアニオン性基を有する水溶性高分子化合物を用いた場合、水溶性高分子化合物が多価金属イオンの正電荷と静電的相互作用を持つため、多価金属化合物の層間拡散は低く抑えられる。本発明者らの知見によれば、多価金属化合物の層間拡散量は、多くの場合5%以内であり、最大でも10%以内である。
【0027】
また、本発明のインクジェット記録用紙を用いて、有機溶媒含有率の高いインクにより画像形成した場合に、本発明の目的効果が特に効果的に発揮される。近年は、プリンタインクヘッドにおける目詰まり防止を目的として、インク中における有機溶媒含有率が高まってきているが、このことは、同時にインクジェット記録用紙に対してもインク吸収性の向上を要求しているものである。この有機溶媒は、一般に、水よりもインク受容層に吸収されにくい特性を有していることがその理由である。インクジェット記録用紙のインク吸収能が低下すると、インク受容層表面に残った色素によって、ブロンジングや滲みの劣化を引き起こす。本発明のインクジェット記録材料の構成では、前記一般式(1)で表される化合物、好ましくは尿素またはその誘導体の添加と多価金属化合物の分布を制御することによって、高いインク吸収性を維持することができた。その結果、有機溶媒含有率の高いインクで画像印字した場合に、特に顕著な性能改良効果を得ることができた。
【0028】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のインクジェット記録用紙においては、支持体上に、無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である前記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される該多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上であることが特徴であり、好ましくは80〜100%であり、より好ましくは90〜100%であり、更に好ましくは95〜100%である。
【0029】
すなわち、本発明のインクジェット記録用紙においては、2層以上の複数層で構成されているインク受容層を有し、多価金属化合物をインク受容層全膜厚の表層から60%までの深さの領域に、より多く存在させることが特徴である。具体的には、インク受容層膜厚の表面から60%以内にあたる部分を上層と定義したとき、全インク受容層に含有される多価金属化合物総量の80モル%以上が上層に含有される。
【0030】
本発明のインクジェット記録用紙で規定する上記条件を達成する方法としては、表面に近いインク受容層領域、あるいは2層以上で構成されている場合には、より上部に位置するインク受容層を形成する塗布液に、予め多価金属化合物を添加し、支持体上に他のインク受容層とともに塗布するのが好ましい。
【0031】
前述の様に、多価金属化合物が水溶性である場合、インク受容層を形成する過程、例えば、塗布工程、乾燥工程などでは、多価金属化合物の一部が拡散し、添加した層以外の層にも分布することになるため、具体的には、拡散等を考慮し、インク受容層総膜厚の表面から50%以内の領域に、多価金属化合物を添加することが本発明の特徴の1つである。また、インク吸収性を阻害しない観点から、支持体から最も遠い位置にあるインク受容層層には、多価金属化合物を添加しないことが好ましい。
【0032】
本発明において、多価金属化合物の存在位置の確定と存在量の測定は、インク受容層の断面を、X線マイクロアナライザー(XMA)分析法を用いて行うことができる。具体的には、XMAのエリア分析でインク受容層膜厚の表面から60%以内にあたる領域と、インク受容層全層の多価金属元素のシグナルから含有量を求めて比較する。XMAはX線微小部分析の総称であり、具体的にはSEMによるEDX分析、EPMAによるEDX分析、WDX分析の他、TEM、STEMによるEDX分析もこれに含まれる。多価金属化合物の金属元素によって、定量し易い分析方法を適宜選択することができる。また、金属元素の含有量が低く、XMAで定量ができない場合には、より検出感度の高い分析方法として二次イオン質量分析法(SIMS)を用いることができる。さらに飛行時間質量分析計を用いたTOF−SIMSを用いるのも有効な方法である。
【0033】
これらの一例として、SEM−EDX分析を行う場合の手順は、次のようになる。
【0034】
多価金属化合物の存在位置は、インク受容層の切片をX線分析することにより、また含有量は金属元素のシグナルから定量的に分析することができる。いわゆるSEM−EDX分析法がそれにあたる。この方法による分析は次のような手順で行われる。
【0035】
(1)インクジェット記録用紙を樹脂で固めたのち、ミクロトームで切断する
(2)断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、支持体とインク受容層を見分ける
(3)インク受容層の一定の領域に対し、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を行い、目的とする元素のシグナルを検出する
(4)異なる領域のシグナルを比較することにより、目的とする元素の分布状態を計算する
EDX分析は目的とする元素にもよるが、検出限界が1%程度となる場合がある。より含有率が低い場合には、EDXに代えてSIMSを使用することができる。
【0036】
本発明においては、インク受容層膜厚の表面から60%以内にあたる領域とそれ以外の領域、あるいはインク受容層全域の多価金属元素の含有量を比較することによって、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上が、上記インク受容層膜厚の表面から60%以内に存在するか否かを判定する。
【0037】
次いで、本発明に係る多価金属化合物について説明する。
本発明に係る多価金属化合物は、例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、スカンジウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛などの金属化合物を挙げることができ、また多価金属化合物は多価金属塩であってもよい。中でもマグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛からなる化合物は無色の為好ましく、多価金属化合物がジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物であることが更に好ましく、多価金属化合物がジルコニウム原子を含む化合物であることが特に好ましい。
【0038】
本発明で用いることのできるジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物(但し、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムは除く)は、その化合物自身は水溶性であっても非水溶性であっても良いが、インク受容層の所望の位置に均一に添加できるものであることが好ましい。
【0039】
また、本発明で用いることのできるジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物は、無機酸や有機酸の単塩および複塩、有機金属化合物、金属錯体などのいずれであっても良いが、インク受容層の所望の位置に均一に添加できるものが好ましい。
【0040】
本発明で用いることのできるジルコニウム原子を含む化合物の具体例としては、二フッ化ジルコニウム、三フッ化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸塩(例えば、カリウム塩)、ヘプタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩やアンモニウム塩)、オクタフルオロジルコニウム酸塩(例えば、リチウム塩)、フッ化酸化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、ヘキサクロロジルコニウム酸塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、酸塩化ジルコニウム(例えば、塩化ジルコニル)、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、臭化酸化ジルコニウム、三ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、過酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、p−トルエンスルホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、硫酸ジルコニルナトリウム、酸性硫酸ジルコニル三水和物、硫酸ジルコニウムカリウム、セレン酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、酢酸ジルコニルアンモニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、リン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウム、ジルコニウムイソプロピレート、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセテート、ビス(アセチルアセトナト)ジクロロジルコニウム、トリス(アセチルアセトナト)クロロジルコニウムなどが挙げられる。
【0041】
これらのジルコニウム原子を含む化合物の中でも、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましく、特に酸塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニルが好ましい。
【0042】
本発明で用いることのできるアルミニウム原子を含む化合物の具体例としては、フッ化アルミニウム、ヘキサフルオロアルミン酸(例えば、カリウム塩等)、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム(ポリ塩化アルミニウム)、テトラクロロアルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩等)、臭化アルミニウム、テトラブロモアルミン酸塩(例えば、カリウム塩など)、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等)、塩素酸アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、燐酸水素アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセトネート)等を挙げることができる。これらの中でも、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性硫酸ケイ酸アルミニウムが好ましい。
【0043】
本発明で用いることのできるマグネシウム原子を含む化合物の具体例としては、フッ化マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、チオシアン酸マグネシウム、チオ硫酸マグネシウム、硫化マグネシウム、炭化マグネシウム、リン酸マグネシウムがあげられ、これらの中でも塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムが好ましい。
【0044】
これらの多価金属化合物の中でも、特に好ましいものは、前述したジルコニウム原子を含む化合物で好ましいものとして例示したもの、アルミニウム原子含む化合物で好ましいものとして例示したもの、マグネシウム原子を含む化合物で好ましいものとして例示したものの中で、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、塩基性塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩基性硫酸ケイ酸アルミニウムである。特に酸塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニルが好ましく、酸塩化ジルコニウムが最も好ましい。
【0045】
本発明のインクジェット記録用紙においては、前記多価金属化合物と共に、アミノ酸を併せて用いることも好ましい方法の1つである。
【0046】
本発明でいうアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
【0047】
本発明に係るアミノ酸の詳しい解説は、化学大辞典1縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268頁〜270頁の記載を参照することができる。
【0048】
本発明においては、アミノ酸として、下記一般式(2)で表されるアミノ酸が好ましい。
【0049】
一般式(2)
H2N−R−COOH
一般式(2)において、Rは任意の置換基を表し、炭素数が11以下の置換基が好ましく、更に好ましくは炭素数が8以下の置換基である。このうち、特に好ましいのは、炭素数11以下のα−モノアミノモノカルボン酸、β−モノアミノモノカルボン酸及びγ−モノアミノモノカルボン酸から選ばれる少なくとも1種である。
【0050】
具体的に好ましいアミノ酸として、アミノカルボン酸、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニンを挙げることができる。
【0051】
本発明のインクジェット記録用紙では、複数のインク受容層を有するが、本発明に係る多価金属化合物及びアミノ酸は同一の層に添加されても、別の層に添加されても構わないが、より有効に発揮させる観点からは、同一層に添加されるのが好ましい。
【0052】
添加方法は、インク受容層の塗工液(必要に応じて無機微粒子や親水性バインダーを含有する)に混合して添加してもよいし、インク受容層を一旦塗布乾燥後その上にオーバーコートしてもよいし、それらの組み合わせでもよい。多価金属化合物とアミノ酸は同一の添加方法を用いてもよく、異なる添加方法を用いてもよい。好ましい方法はインク受容層の塗工液に多価金属化合物とアミノ酸が添加された後、塗布が行われる方法である。この方法によれば、インク受容層形成後の多価金属化合物とアミノ酸の存在位置をある程度意図的に操作することができる。
【0053】
多価金属化合物及びアミノ酸を、インク受容層を形成する塗工液に添加する場合、水や有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に均一に溶解して添加すること、あるいはサンドミルなどの湿式粉砕法や乳化分散などの方法により微細な粒子に分散して添加することができる。インク受容層を一旦形成した後、オーバーコート方法により添加する場合には、均一な溶液に溶解して添加するのが好ましい。
【0054】
いずれの方法をとる場合でも、多価金属化合物及びアミノ酸は、塗布される前に予め混合されていることが好ましい。本発明は、インク受容層内で多価金属化合物とアミノ酸が共存することによってもたらされる効果利用するのが主たる目的であるが、多価金属化合物の溶液や分散物にアミノ酸を共存させることにより多価金属化合物溶液や分散物の安定性を増すことができる。かかる共存状態では、ある程度配位子置換が起こり、多価金属・アミノ酸錯体が形成されることは、アミノ酸の錯解離定数から容易に想像がつく。本発明において多価金属・アミノ酸錯体を用いることは必ずしも必須の要件ではないが、一つの実施態様ではある。予め多価金属イオンとアミノ酸を然るべき条件で反応させ、多価金属・アミノ酸錯体を形成させてからインク受容層の塗工液に添加したのち塗布するか、あるいはインク受容層にオーバーコートしても構わない。
【0055】
本発明に係るインク受容層の塗布方法の最も好ましい態様は、あらかじめ多価金属化合物とアミノ酸を混合した溶液あるいは分散液を、インク受容層塗工液の塗布直前にインライン添加することである。
【0056】
これらの各添加剤をインライン添加することにより、塗布液の他の構成要素との停滞保存時の相互作用を防止することができ、塗布液安定性を向上させるとともに、本発明に係る各添加剤の目的効果をいかんなく発揮させることができる。
【0057】
本発明において、上記各添加剤のインライン添加方法としては、塗布装置で支持体上に塗布する直前に、コーターへ主液として、例えば、インク受容層塗布液を供給する配管中に、副液として上記各溶液を送液管を合流させて混合し添加する方法である。
【0058】
インライン添加を行う地点の下流側には、インライン混合装置を設けることが好ましく、インライン混合装置としては一般によく知られているスタチックミキサー(静止型混合器)が特に好ましい。スタチックミキサーについては、N.Harmby,M.F.Edwards,A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されており、それを参考にすることができ、具体的には、例えば、東レエンジニアリング製のスタチックミキサー、Kenics社(アメリカ)製のスタティックミキサー、Sulger社(スイス)製のスタティックミキシングエレメントSMV型、晃立工業社製のシマザキパイプミキサー、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)、ノリタケ社製のスタティクミキサーN10等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
【0059】
次いで、本発明に係る分子量が200以下である前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0060】
前記一般式(1)において、R1は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基、シクロアルキル基等)、置換もしくは非置換のアルケニル基(例えば、プロペニル基、ブテニル基、ノネニル基等)、置換もしくは非置換のアリール基(例えば、フェニル基等)、置換もしくは非置換のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、置換もしくは非置換のヘテロアリール基(例えば、トリアゾール基、イミダゾール基、ピリジン基、フラン基、チオフェン基等)、置換もしくは非置換の複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、NR4R5、またはOR6を表す。また、R1とR2、R1とR3とがお互いに結合して環を形成しても良い。Xは酸素原子またはNHを表す。
【0061】
本発明においては、前記一般式(1)で表される化合物は、アルコール性水酸基を有しないことが、本発明の目的効果を発揮させる観点から好ましい。
【0062】
前記一般式(1)において、分子量は200以下であることが特徴であり、また水素原子を除く原子数が15以下であることが好ましく、また水溶性であることが、添加容易性の観点から好ましい。
【0063】
以下に、本発明に係る一般式(1)で表される化合物例を列挙するが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0064】
【化2】
【0065】
【化3】
【0066】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物は、当業者が公知の方法に従って容易に合成することができ、また市販品として入手することもできる。
【0067】
本発明のインクジェット記録用紙においては、前記一般式(1)で表される化合物の中でも、尿素またはその誘導体であることが好ましく、尿素誘導体は基本的には、尿素のアミノ基の水素原子を、他の官能基で修飾された構造を有する。その修飾基は1つでも複数でもよく、複数の修飾基が互いに連結して環をなしていてもよい。本発明で用いることのできる尿素及び尿素誘導体としては、尿素、アルキル尿素、例えば、メチル尿素、エチル尿素、N,N′−ジメチル尿素、エチレン尿素、N,N′−ジヒドロキシエチル尿素等が好ましく、その中でも、特に尿素が好ましい。
【0068】
本発明のインクジェット記録用紙においては、支持体上に少なくとも2層のインク受容層を設け、支持体から遠いインク受容層により多くの前記一般式(1)で表される化合物、その中でも、特に尿素誘導体を含有させることも好ましい。支持体上に3層以上のインク受容層を設けた場合、支持体から遠いインク受容層ほど、前記一般式(1)で表される化合物、その中でも、特に尿素誘導体の含有量が多くなる、もしくは同等量であることが好ましい。支持体に近いインク受容層に、前記一般式(1)で表される化合物、その中でも、特に尿素誘導体を多く含有させた場合、本発明の効果が大きく減少し好ましくない。
【0069】
本発明においては、前記一般式(1)で表される化合物、その中でも、特に尿素誘導体とポリビニルアルコールの質量比が0.02以上、1.0以下になるように用いることが好ましく、さらに好ましくは0.05以上、0.5以下である。なお、支持体上に複数のインク受容層を設けた場合には、前記一般式(1)で表される化合物の総量とポリビニルアルコール総量の質量比とする。前記一般式(1)で表される化合物とポリビニルアルコールの質量比が0.02以上であれば、本発明の効果を十分に発現することができ、また1.0以下であれば、ひび割れの劣化、滲みの劣化、ステインの発生等を防ぐことができる。
【0070】
本発明のインクジェット記録用紙は、支持体上に親水性バインダーと無機微粒子を含有する多孔質インク受容層を形成する水溶性塗布液を塗布し、空隙を有するインク受容層を形成したものである。本発明に係るインク受容層は、主に無機微粒子と親水性バインダーから形成される。インク受容層を形成する無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料を挙げることができる。上記無機微粒子は1次粒子のまま用いても、また2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0071】
本発明においては、インクジェット記録用紙で高品位なプリントを得る観点から、無機微粒子として、シリカまたはアルミナが好ましく、更にアルミナ、擬ベーマイト、コロイダルシリカ、もしくは気相法により合成された微粒子シリカ等が好ましく、気相法で合成された微粒子シリカが特に好ましい。この気相法で合成されたシリカは、表面がアルミニウムで修飾されたものであってもく、気相法シリカのアルミニウム含有率は、シリカに対して質量比で0.05〜5%のものが好ましい。
【0072】
上記無機微粒子の粒径は、いかなる粒径のものも用いることができるが、平均粒径が1μm以下であることが好ましい。1μmを越えると光沢性、または発色性が低下しやすく、そのため200nm以下が好ましい。更に100nm以下のシリカが最も好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、無機微粒子の製造上の観点から、概ね3nm以上、特に5nm以上が好ましい。
【0073】
上記無機微粒子の平均粒径は、インク受容層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0074】
上記無機微粒子は、1次粒子のままで或いは2次粒子もしくはそれ以上の高次凝集粒子で多孔質皮膜に存在していてもいが、上記平均粒径は、電子顕微鏡で観察した時にインク受容層中で独立の粒子を形成しているものの粒径をいう。
【0075】
上記無機微粒子の平均1次粒子径は、多孔質膜中で観測される平均粒径以下である必要があり、無機微粒子の1次粒子径としては100nm以下のものが好ましく、より好ましくは30nm以下、最も好ましくは4〜20nmの微粒子である。
【0076】
上記無機微粒子の水溶性塗布液における含有量は、5〜40質量%であり、特に7〜30質量%が好ましい。上記無機微粒子は、十分なインク吸収性があり、皮膜のひび割れ等が少ないインク吸収層を形成する必要があり、インク受容層中には、5〜50g/m2の付き量になることが好ましい。更に、10〜25g/m2になることが特に好ましい。
【0077】
インク受容層に含有される親水性バインダーとしては、特に制限は無く、従来公知の親水性バインダーを用いることができ、例えばゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等を用いることができるが、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0078】
ポリビニルアルコールは、無機微粒子と相互作用を有しており、無機微粒子に対する保持力が特に高く、更に吸湿性の湿度依存性が比較的小さなポリマーであり、塗布乾燥時の収縮応力が比較的小さいため、塗布乾燥時のひび割れに対する適性が優れる。本発明に好ましく用いられるポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0079】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,000〜5,000のものが好ましく用いられ、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.8%のものが特に好ましい。
【0080】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されるような、第1〜3級アミノ基や第4級アミノ基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0081】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−メチルビニルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0082】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0083】
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平1−206088号に記載されているアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号に記載されている水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0084】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平7−9758号に記載されているポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0085】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類の違いなど、2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め無機微粒子に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい増粘が無く好ましい。
【0086】
インク受容層の親水性バインダーに対する無機微粒子の比率は、質量比で2〜20倍であることが好ましい。質量比が2倍以上であれば、十分な空隙率の多孔質膜が得られ、十分な空隙容量を得やすくなり、維持できる親水性バインダーによるインクジェット記録時の膨潤によって空隙を塞ぐ状況を招かず、高インク吸収速度を維持できる要因となる。一方、この比率が20倍以下であれば、インク受容層を厚膜で塗布した際、ひび割れが生じにくくなる。特に好ましい親水性バインダーに対する無機微粒子の比率は2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
【0087】
本発明のインクジェット記録用紙には、記録後の保存による画像の滲みを防止する目的でカチオン性ポリマーを用いることが好ましい。
【0088】
カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、等が挙げられる。
【0089】
また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0090】
本発明で好ましく用いられるカチオン性ポリマーとして、ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂が挙げられ、前記化合物と併用することで、皮膜が膨潤するのを防ぎ、インク吸収性や褪色防止効果が更に向上する。
【0091】
ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の中でも、特にポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂が好ましい。ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の使用量は、塗布液中の無機微粒子や水溶性樹脂の量によって変り得るが、記録媒体にした時にインク吸収層中に0.01〜1.0g/m2であることが好ましく、0.01〜0.5g/m2であることがより好ましい。0.01g/m2未満ではインク吸収性及び褪色を改善する効果が少なく、1.0g/m2を越えると塗布乾燥時にクラックが発生するなどの故障が生じることがある。
【0092】
ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は、エポキシ化ポリアミド樹脂とも呼ばれ、下記式で示される構造を有する化合物である。
【0093】
【化4】
【0094】
前記式中、nは重合度を表す。前記重合度としては、500〜10000が好ましい。前記重合度が、500未満であると人体に害を与える可能性が考えられ、10000を越えると安定性に欠けることがある。
【0095】
本発明に用いられるポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造方法としては、例えば特開平6−1842に記載された方法が挙げられる。
【0096】
前記ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂としては、1種単独で使用してもよいし、異なる重合度のものを混合して併用してもよい。また、前記ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂は、適宜合成したものでもよいし、市販品を用いてもよい。
【0097】
本発明のインクジェット記録用紙は、多孔質インク受容層を形成する水溶性バインダーの硬膜剤を添加することが好ましい。
【0098】
本発明で用いることのできる硬化剤としては、水溶性バインダーと硬化反応を起こすものであれば特に制限は無いが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性バインダーと反応し得る基を有する化合物或いは水溶性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0099】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸及びそれらの塩が挙げられる。
【0100】
硬化剤としての硼素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0101】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
【0102】
上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性バインダー1g当たり1〜600mgが好ましい。また、請求項3に対応する供給量としては、上記水溶性バインダー1g当たり100〜600mgが好ましい。
【0103】
本発明に用いる支持体は従来インクジェット記録用紙用として公知のものを適宜使用でき、吸水性支持体であってもいが、非吸水性支持体であることが好ましい。
【0104】
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば一般の紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。また、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0105】
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0106】
紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。また、必要に応じて抄紙段階または抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0107】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、透明支持体または不透明支持体がある。透明支持体としてはポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用された時の輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、50μm〜200μmが好ましい。
【0108】
また、不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0109】
前記各種支持体とインク吸収層の接着強度を大きくする等の目的で、インク吸収層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明のインクジェット記録用紙は必ずしも無色である必要は無く、着色された記録シートであってもい。
【0110】
本発明のインクジェット記録用紙では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0111】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及びまたはLDPの比率は10質量%〜70質量%が好ましい。
【0112】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0113】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0114】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0115】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0116】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0117】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもく、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0118】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0119】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0120】
特にインク吸収層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3質量%〜20質量%、好ましくは4質量%〜13質量%である。
【0121】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0122】
上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3質量%〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
【0123】
本発明のインクジェット記録用紙には、各種の添加剤を添加することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている褪色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0124】
次に、本発明のインクジェット記録用紙の製造方法について説明する。
インクジェット記録用紙の製造方法としては、インク吸収層を含む各構成層を、各々単独に或いは同時に、公知の塗布方式から適宜選択して、支持体上に塗布、乾燥して製造することができる。塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、或いは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0125】
同時重層塗布を行う際の各塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0126】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、更に好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0127】
塗布及び乾燥方法としては、塗布液を30℃以上に加温して、同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましい。塗布液調製時、塗布時及び乾燥時おいて、表層に含まれる熱可塑性樹脂が製膜しないように、該熱可塑性樹脂のTg以下の温度で塗布液の調製、塗布、乾燥することが好ましい。より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0128】
また、その製造過程で35℃以上、70℃以下の条件で24時間以上、60日以下保存する工程を有することが好ましい。
【0129】
加温条件は、35℃以上、70℃以下の条件で24時間以上、60日以下保存する条件であれば特に制限は無いが、好ましい例としては、例えば、36℃で3日〜4週間、40℃で2日〜2週間、或いは55℃で1〜7日間である。この熱処理を施すことにより、水溶性バインダーの硬化反応の促進、或いは水溶性バインダーの結晶化を促進することができ、その結果、好ましいインク吸収性を達成することができる。
【0130】
次いで、本発明のインクジェット記録方法で用いるインクについて説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、特に水溶性染料インクを用いたインクジェット記録方法において特に効果が大きく好ましいが、顔料インクを用いたインクジェット記録方法でも使用することができる。また、本発明のインクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いたインクジェット記録方法が好ましく用いられる。
【0131】
上記水性インクとは、下記着色剤及び溶媒、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料或いは食品用色素等の水溶性染料、或いは水分散性顔料が使用できる。
【0132】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0133】
本発明のインクジェット記録方法においては、本発明のインクジェット記録用紙上に、上記有機溶媒含有比率が20質量%以上のインクを吐出して画像記録することが特徴であり、インクの有機溶媒含有比率として好ましくは20〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%である。
【0134】
その他の水性インクの添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤、等が挙げられる。
【0135】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常、25〜60mN/m、好ましくは30〜50mN/mの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。上記インクのpHは、好ましくは5〜10であり、特に好ましくは6〜9である。
【0136】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は、特に断りの無いかぎり質量%を表す。
【0137】
実施例1
《記録用紙1の作製》
〔シリカ分散液の調製〕
(シリカ分散液D−1の調製)
予め均一に分散されている一次粒子の平均粒子径が約0.007μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製;アエロジル300)を25%含むシリカ分散液B−1(pH2.6、エタノール0.5%含有)の400Lを、カチオン性ポリマーP−1を12%、n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有する水溶液C−1(pH2.5、サンノプコ社製の消泡剤SN−381を2g含有)の110Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。次いで、硼酸とホウ砂の1:1質量比の混合水溶液A−1(各々3%の濃度)の54Lを攪拌しながら、徐々に添加した。
【0138】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D−1を得た。
【0139】
(シリカ分散液D−2の調製)
上記シリカ分散液B−1の400Lを、カチオン性ポリマーP−2を12%、n−プロパノール10%およびエタノールを2%含有する水溶液C−2(pH=2.5)の120Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加し、次いで、上記混合水溶液A−1の52Lを攪拌しながら徐々に添加した。次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D−2を得た。
【0140】
上記シリカ分散液D−1及びシリカ分散液D−2は、それぞれ調製した後、30μmの濾過精度を有するアドバンテック東洋社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。
【0141】
【化5】
【0142】
〔塗布液の調製〕
上記調製した各分散液を使用して、以下に記載の各添加剤を順次混合して、多孔質インク受容層用の各塗布液を調製した。なお、各添加量は塗布液1L当りの量で表示した。
【0143】
(第1層用塗布液:最下層)
シリカ分散液D−1 625ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度99.7%、クラレ
社製 PVA135H)5%水溶液 363ml
エタノール 8.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0144】
(第2層用塗布液)
シリカ分散液D−1 625ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度99.7%、クラレ
社製 PVA135H)5%水溶液 363ml
エタノール 8ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0145】
(第3層用塗布液)
シリカ分散液D−2 625ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度99.7%、クラレ
社製 PVA135H)5%水溶液 363ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0146】
(第4層用塗布液:最上層)
シリカ分散液D−2 625ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3500 ケン化度99.7%、クラレ
社製 PVA135H)5%水溶液 363ml
カチオン性界面活性剤−1の4%水溶液 3ml
サポニンの25%水溶液 2ml
エタノール 3ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0147】
【化6】
【0148】
上記の様に調製した各層用塗布液を、20μmの濾過精度を持つアドバンテック東洋社製のTCPD−30フィルターで濾過した後、TCPD−10フィルターで濾過した。
【0149】
〔塗布〕
上記調製した各塗布液を、下記に記載の湿潤膜厚となるよう、40℃で両面にポリエチレンを被覆した紙支持体1上に、スライドホッパー型コーターを用いて4層同時塗布した。
【0150】
〈湿潤膜厚〉
第1層:40μm
第2層:40μm
第3層;40μm
第4層:40μm
なお、上記紙支持体1は、幅が約1.5m、長さが約4000mのロール状に巻かれた下記の支持体を用いた。
【0151】
使用した紙支持体1は、含水率が8%で、坪量が170gの写真用原紙表面を、アナターゼ型酸化チタンを6%含有するポリエチレンを厚さ35μmで押し出し溶融塗布し、裏面には厚さ40μmのポリエチレンを厚さ35μmで押し出し溶融塗布した。表面側はコロナ放電した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)を記録媒体1m2当り0.05gになるように下引き層を塗布し、裏面側にはコロナ放電した後、Tgが約80℃のスチレン−アクリル酸エステル系ラテックスバインダー約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)0.1gおよび約2μmのシリカ0.1gをマット剤として含有するバック層を塗布した。
【0152】
各層塗布液を紙支持体1上に塗布して、各インク受容層を形成した後の乾燥は、5℃に保った冷却ゾーンを15秒間通過させて膜面の温度を13℃にまで低下させた後、複数設けた乾燥ゾーンにて20〜40℃の温風を6〜7分間吹付けて乾燥を行った後、ロール状に巻き取って記録用紙1を得た。
【0153】
《記録用紙2〜8の作製》
上記記録用紙1の作製において、第1層〜第4層の各塗布液に表1に記載の様に、10%尿素水溶液及び/または20%酢酸ジルコニル水溶液(ジルコゾールZA:第一希元素化学工業(株)製を水で希釈して使用)を所定量添加した以外は同様にして、記録用紙2〜8を作製した。
【0154】
《ジルコニウム含有率(モル%)の測定》
上記作製した各試料をミクロトームを用いて断面を切り出し、その断面を前述の方法に従ってSEM−EDX分析を行うことにより、深さ方向のジルコニウムのシグナルを検出し、深さ方向の定量分析を行った。その結果より、インク受容層表面から60%以内に存在するジルコニウム原子の含有率(モル%)を求め、これをジルコニウム化合物(多価金属化合物)の分布と見なした。得られた結果を、同じく表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
《記録用紙の評価》
以上の様にして得られた記録用紙1〜8について、以下の特性評価を行なった。
【0157】
〔ひび割れ耐性の評価〕
各記録用紙のインク受容層塗布面を、0.1m2をルーペを用いてひび割れ状態を観察し、下記の基準に則りひび割れ耐性の評価を行った。
【0158】
AA:ひび割れがほとんど観察されない
A:0.5mm未満の微小なひび割れが数点観察される
B:0.5mm以上の粗大なひび割れが数点観察される
C:0.5mm以上の粗大なひび割れが全面に観察される
〔発色性の評価:画像濃度の測定〕
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM950Cを用いて、純正の黒インクにより黒ベタ画像を印字し、その反射濃度(DR、DG、DB)を反射濃度計を用いて測定した。
【0159】
〔ブロンジング耐性の評価〕
上記形成した黒ベタ画像を、23℃、相対湿度80%の雰囲気下で1週間保存した後、プリント画像の状態(ブロンジングの発生具合)を目視観察し、下記の基準に則りブロンジング耐性の評価を行った。
【0160】
A:ブロンジングの発生が認められない
B:わずかにブロンジングが認められるが問題ない
C:一部でブロンジングが認められるが実用上問題ない
D:ブロンジングが激しく認められる
〔滲み耐性の評価〕
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM950Cを用いて、純正マゼンタインクによるマゼンタベタ画像を背景として、ブラックインクによる線幅が約0.3mmの細線を印字した。次いで、印字後直ちに、試料の両面を、記録用紙の作製に用いた紙支持体1により上下各3枚ずつ重ねた後、輪ゴムで固定し、この積層試料を、50℃、相対湿度85%の雰囲気下で7日間保存した。次いで、保存前後でのブラックインクの線幅をマイクロデンシトメーターで測定(反射濃度が最大濃度の50%部分の幅を線幅とした)し、下式にしたがって滲み率を測定し、下記の基準に則り滲み耐性の評価を行った。
【0161】
滲み率=(画像保存後の線幅)/(画像保存前の線幅)
A:滲み率が1.00〜1.20である
B:滲み率が1.21〜1.40である
C:滲み率が1.41〜1.60である
D:滲み率が1.61以上である
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0162】
【表2】
【0163】
表2の結果より明らかな様に、比較例に対して本発明の記録用紙は、滲み耐性、ブロンジング耐性、発色性(画像濃度)において優れていることが分かる。その中でも、特に記録用紙7、8はひび割れの発生が大きく抑制されており好ましいことが分かる。
【0164】
実施例2
実施例1に記載の記録用紙2の作製において、第1層〜第4層塗布液の調製に用いた酢酸ジルコニルに代えて、表3に記載の各多価金属化合物の種類及び各層添加量に変更した以外は同様にして、記録用紙9〜15を作製した。
【0165】
次いで、作製した記録用紙9〜15と、実施例1で作製した記録用紙2、3、5、7について、実施例1に記載の方法と同様にして、ブロンジング耐性、滲み耐性及び発色性の評価を行い、得られた結果を同じく表3に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
表3の結果より明らかな様に、多価金属化合物としてジルコニウム化合物に代えて、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物を用いても、滲み耐性、ブロンジング耐性、発色性(画像濃度)に優れた記録用紙を得られることが分かる。ただし、得られる効果としては、多価金属化合物の中でもジルコニウム化合物を用いた場合に特に顕著である。
【0168】
実施例3
実施例1で作製した記録用紙7において、尿素に代えて、一般式(1)で表される化合物である例示化合物2、25、28、39、50を、第1層〜第4層にそれぞれ10ml/L添加した以外は同様にして、記録用紙16〜20を作製し、実施例1に記載の方法と同様にして、ブロンジング耐性、滲み耐性及び発色性の評価を行った結果、記録用紙7とほぼ同様の良好な結果を得ることができた。
【0169】
実施例4
《インクジェット画像の形成》
実施例1で作製した記録用紙3、5、6について、下記の組成からなるインクセットを用いて印字して、インクジェット画像を形成した。
【0170】
〔インクセットの調製〕
(インクセットAの調製)
〈イエロー濃色インクY1〉
C.I.Acid Yellow 132 3.0質量%
ジエチレングリコール 10.0質量%
グリセリン 10.0質量%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 5.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 25.0質量%
〈イエロー淡色インクY2〉
C.I.Acid Yellow 132 0.75質量%
ジエチレングリコール 10.0質量%
グリセリン 10.0質量%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 30.0質量%
〈マゼンタ濃色インクM1〉
C.I.Acid Red 249 4.0質量%
ジプロピレングリコール 10.0質量%
テトラエチレングリコール 10.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 30.0質量%
〈マゼンタ淡色インクM2〉
C.I.Acid Red 249 1.0質量%
ジエチレングリコール 12.0質量%
グリセリン 12.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 34.0質量%
〈シアン濃色インクC1〉
C.I.Direct Blue 199 3.0質量%
エチレングリコール 10.0質量%
グリセリン 10.0質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 30.0質量%
〈シアン淡色インクC2〉
C.I.Direct Blue 199 1.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
グリセリン 10.0質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 10.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 25.0質量%
〈ブラック濃色インクK1〉
Basacid Black X34 30.0質量%
エチレングリコール 7.0質量%
ジエチレングリコール 7.0質量%
グリセリン 7.0質量%
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 3.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 24.0質量%
〈ブラック淡色インクK2〉
Basacid Black X34 9.0質量%
エチレングリコール 7.0質量%
プロピレングリコール 7.0質量%
グリセリン 7.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 24.0質量%
(インクセットBの調製)
〈イエロー濃色インクY3〉
C.I.Acid Yellow 132 3.0質量%
ジエチレングリコール 7.5質量%
グリセリン 7.5質量%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 2.5質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 17.5質量%
〈イエロー淡色インクY4〉
C.I.Acid Yellow 132 0.75質量%
ジエチレングリコール 6.0質量%
グリセリン 6.0質量%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 18.0質量%
〈マゼンタ濃色インクM3〉
C.I.Acid Red 249 4.0質量%
ジプロピレングリコール 6.0質量%
テトラエチレングリコール 6.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 6.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 18.0質量%
〈マゼンタ淡色インクM4〉
C.I.Acid Red 249 1.0質量%
ジエチレングリコール 6.0質量%
グリセリン 6.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 5.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 17.0質量%
〈シアン濃色インクC3〉
C.I.Direct Blue 199 3.0質量%
エチレングリコール 6.0質量%
グリセリン 6.0質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 6.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 18.0質量%
〈シアン淡色インクC4〉
C.I.Direct Blue 199 1.0質量%
ジプロピレングリコール 2.5質量%
グリセリン 7.5質量%
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 7.5質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 17.5質量%
〈ブラック濃色インクK3〉
Basacid Black X34 30.0質量%
エチレングリコール 5.0質量%
ジエチレングリコール 5.0質量%
グリセリン 5.0質量%
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 3.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 18.0質量%
〈ブラック淡色インクK4〉
Basacid Black X34 9.0質量%
エチレングリコール 4.0質量%
プロピレングリコール 4.0質量%
グリセリン 7.0質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 4.0質量%
界面活性剤(オルフィンE1010 日信化学製) 1.0質量%
イオン交換水 残部
インク中の総有機溶剤量 19.0質量%
《記録用紙の評価》
上記調製した各インクセットと各記録用紙を用いて、表4に記載の組み合わせで、画像印字を行い、実施例1に記載の方法と同様の評価基準で、ブロンジング耐性と、下記の方法に従って発色性とインク吸収性の評価を行った。
【0171】
(画像印字)
実施例1で作製した記録用紙3、5、6について、ノズル直径23μm、駆動周波数12kHz、1色当たりのノズル数128、同色ノズル密度90dpi(以下、dpiとは2.54cm当たりのドットの数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型インクジェットプリンタに、上記調製した各インクセットを装填して、各色ベタ画像の印字を行った。
【0172】
(発色性の評価)
上記方法により印字した黒ベタ画像の反射濃度(DR、DG、DB)を反射濃度計を用いて測定した。
【0173】
(インク吸収性の評価)
各記録用紙に印字した各色ベタ画像について、印字直後の印字部分を指でこすって画像の乱れを目視観察し、下記の基準に則りインク吸収性の評価を行った。
【0174】
なお、評価は、各色インクの平均値で表示した。
A:指で擦ってもほとんど画像の乱れがない
B:指で擦ると、やや画像がこすれて汚れが発生する
C:指で擦ると、画像がこすれてひどく汚れる
以上により得られた結果を、表4に示す。
【0175】
【表4】
【0176】
表4の結果より明らかな様に、本発明の記録用紙5は、いずれのインクセットを用いて画像形成した場合にも、ブロンジング耐性、インク吸収性、発色性において、比較の記録用紙3及び6に対し優れた特性を有していることが分かる。その中でも、全てが有機溶媒含有率が20質量%以上のインクから構成されたインクセットAを用いたときに、発色性が顕著に向上していることが分かる。
【0177】
【発明の効果】
本発明により、インク吸収性が高く、発色性に優れ、ブロンジングを生じにくく、ひび割れ等の品質低下がなく、さらに画像保存中の滲み耐性に優れたインクジェット記録用紙及びインクジェット記録方法を提供することができた。
Claims (8)
- 支持体上に、無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である下記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される該多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の80モル%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 前記一般式(1)で表される化合物が、尿素またはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用紙。
- 前記インク受容層総膜厚の表面から60%以内の領域に含有される前記多価金属化合物量が、全インク受容層に含有される多価金属化合物量の90モル%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用紙。
- 支持体上に無機微粒子とバインダーとを含有する多孔質インク受容層を2層以上有するインクジェット記録用紙において、該インク受容層が分子量が200以下である前記一般式(1)で表される化合物及び多価金属化合物を含有し、該多価金属化合物が、該インク受容層総膜厚の表面から50%以内の領域に添加されていることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 前記一般式(1)で表される化合物が、尿素またはその誘導体であることを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録用紙。
- 支持体から最も遠い位置にあるインク受容層には、前記多価金属化合物が添加されていないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記多価金属化合物が、ジルコニウム原子、アルミニウム原子またはマグネシウム原子を含む化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙を用いたインクジェット記録方法であって、該インクジェット記録用紙上に、有機溶媒含有比率が20質量%以上のインクを吐出して画像記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
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