JP2005022066A - タップ立て用切り屑分断工具、およびめねじ加工方法 - Google Patents

タップ立て用切り屑分断工具、およびめねじ加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 展延性が高い材料に対してめねじをタップ立てする場合でも、めねじの強度を損なうことなく切り屑が確実に分断されるようにする。
【解決手段】 タップ立てに先立って、切り屑分断工具の刃部14を下穴22内に押し込むことにより、断面三角形の複数の溝加工刃16により下穴22の内周面に切り屑分断溝を切削加工する。これにより、ワーク20が展延性の高い材料であっても、切り屑分断溝によりタップ立て時の切り屑が確実に分断されて良好に排出されるようになり、長く連続してタップに絡みついたり、切り屑を噛み込んで切削タップが折損したりすることが防止されるとともに、切り屑の清掃などの処理が容易になる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、下穴に切削タップをねじ込んでめねじを切削加工するめねじ加工方法の改良に関するものである。
下穴に切削タップをねじ込んでめねじを切削加工するめねじ加工方法が、各種の分野で広く行われているが、このような切削タップを用いて、例えばSS400(一般構造用圧延鋼材)やアルミニウムなどの展延性が高い材料にタップ立てを行うと、切り屑が分断し難くて長く連なり易いため、図10に示すようにタップに絡みついて加工不可になる場合がある。このため、作業者が常に監視している必要があり、完全自動化が難しいなどの問題があった。また、切り屑の噛み込みでタップが折損する恐れがあるとともに、切り屑の清掃などの処理が困難であるなど、種々の問題を含んでいた。これに対し、例えば特許文献1に記載のように、切削タップのランドに相当する切欠が下穴外周部に複数設けられている場合には、その切欠によって切り屑が細かく分断されるため、上記問題が解消する。
特開昭52−26698号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の加工方法においては、切削タップのランドに相当する比較的大きな切欠によってめねじそのものが大きく分断されるため、めねじの強度が低下して所定のねじ締結強度が得られなくなる可能性がある。特に、展延性が高い材料の場合、強く締結することができないため、実質的に特許文献1の技術を適用することは困難である。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、展延性が高い材料に対してめねじをタップ立てする場合でも、めねじの強度を損なうことなく切り屑を確実に分断できるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、下穴に切削タップをねじ込んでめねじを切削加工する際に、切り屑が長く連続して排出されることを防止するタップ立て用切り屑分断工具であって、(a) 前記切削タップによる前記めねじの切削加工に先立って前記下穴内に挿入される本体部と、(b) その本体部に一体的に設けられて前記下穴の内周面に切り屑分断溝を形成する溝加工刃と、を有することを特徴とする。
第2発明は、第1発明のタップ立て用切り屑分断工具において、前記溝加工刃は、断面が略三角形のノッチ状の切り屑分断溝を切削加工するもので、その溝加工刃の径寸法は前記めねじの谷の径と略等しいことを特徴とする。
第3発明は、第1発明または第2発明のタップ立て用切り屑分断工具において、前記本体部は、前記下穴の内径と略等しい径寸法の円筒外周面を備えており、その円筒外周面によりその下穴と略同心に位置決めされた状態でその下穴内に挿入されることを特徴とする。
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかのタップ立て用切り屑分断工具において、前記本体部の先端には、前記下穴の径寸法と略等しい大径部から先端側へ向かうに従って小径となるテーパ形状の挿入ガイドが設けられていることを特徴とする。
第5発明は、第4発明のタップ立て用切り屑分断工具において、(a) 前記溝加工刃は、切削加工により前記切り屑分断溝を形成するもので、(b) 前記挿入ガイドのうちその溝加工刃と一致する部分は部分的に切り欠かれ、その溝加工刃によって切削された切り屑を収容して前方へ排出するチップポケットが設けられていることを特徴とする。
第6発明は、第1発明〜第5発明の何れかのタップ立て用切り屑分断工具において、前記本体部には、軸方向に一体的にシャンクが設けられ、単独で工作機械に取り付けられて使用されることを特徴とする。
第7発明は、第1発明〜第5発明の何れかのタップ立て用切り屑分断工具において、前記溝加工刃を有する前記本体部は、前記切削タップの先端部に一体的に設けられていることを特徴とする。
第8発明は、第1発明〜第5発明の何れかのタップ立て用切り屑分断工具において、前記溝加工刃を有する前記本体部は、前記下穴を切削加工するドリルの溝部とシャンクとの間に一体的に設けられていることを特徴とする。
第9発明は、第1発明〜第5発明の何れかのタップ立て用切り屑分断工具において、前記溝加工刃を有する前記本体部は、ドリル付き切削タップのそのドリルとその切削タップとの間に一体的に設けられていることを特徴とする。
第10発明は、下穴に切削タップをねじ込んでめねじを切削加工するめねじ加工方法であって、前記切削タップによる前記めねじの切削加工に先立って、前記下穴の内周面にそのめねじのねじ溝と交差するように切り屑分断溝を形成する溝加工工程を有することを特徴とする。
第11発明は、第10発明のめねじ加工方法において、前記切り屑分断溝は、溝底の径寸法が前記めねじの谷の径と略等しくなるように設けられることを特徴とする。
第1発明のタップ立て用切り屑分断工具によれば、切削タップによるタップ立て(めねじの切削加工)に先立って下穴内に挿入されることにより、その下穴の内周面に切り屑分断溝を形成するため、展延性の高い材料にタップ立てを行う場合でも、その切り屑分断溝により切り屑が確実に分断されて良好に排出されるようになる。これにより、分断されずに長く連続した多数の切り屑がタップに絡みつくことが防止され、タップ立て作業の監視が不要になって完全自動化(無人化)を図ることができる。また、切り屑の噛み込みに起因する切削タップの折損が抑制されるとともに、切り屑の清掃などの処理が容易になる。
一方、タップ立てによって得られるめねじも切り屑分断溝によって分断されるが、この切り屑分断溝はタップ立ての際の切り屑を分断できれば良いため、例えば第2発明のように、断面が略三角形のノッチ状の切り屑分断溝をめねじの谷の径と略等しい径寸法で形成するなど、必要最小限の大きさで設ければ良く、前記特許文献1のようにタップのランドに相当する大きな切欠を設ける場合に比較してめねじの強度が高くなり、展延性の高い材料であっても所定のねじ締結強度を確保することができる。
第3発明では、本体部が下穴の内径と略等しい径寸法の円筒外周面を備えており、その円筒外周面により下穴と略同心に位置決めされた状態で下穴内に挿入されて切り屑分断溝を加工するため、その切り屑分断溝を高い精度で加工できるとともに、溝加工刃が1つであっても切り屑分断溝を容易に加工できる。
第4発明では、下穴の径寸法と略等しい大径部から先端側へ向かうに従って小径となるテーパ形状の挿入ガイドが本体部の先端に設けられているため、工具を下穴内へ容易且つ確実に挿入して切り屑分断溝を加工することができる。
第5発明では、上記挿入ガイドのうち溝加工刃と一致する部分が部分的に切り欠かれてチップポケットが設けられているため、溝加工刃によって切削された切り屑がチップポケットから前方へ良好に排出されるようになり、挿入ガイドと下穴との間に切り屑を噛み込んで加工負荷が増大したり下穴内周面に疵が付いたりすることが防止される。
第6発明のタップ立て用切り屑分断工具は、軸方向に一体的にシャンクが設けられ、単独で工作機械に取り付けられて使用されるため、下穴径が同じであればピッチ等が異なる複数種類のめねじのタップ立てに共通に使用できるとともに、第7発明〜第9発明のように切削タップやドリルと一体的に設ける場合に比較して、工具毎に摩耗や損傷などにより工具寿命に達するまで使用することが可能で、各工具を有効に利用できる。
第7発明では、切り屑分断工具が切削タップの先端部に一体的に設けられているため、切り屑分断工具による切り屑分断溝の加工に続いて、工具交換することなく切削タップによるタップ立てを連続して能率良く行うことができる。なお、タップ立て後に切り屑分断工具をめねじから引き抜く際には、めねじに存在する切り屑分断溝に溝加工刃の位相を合わせて引き抜くようにすれば良い。
第8発明では、切り屑分断工具がドリルに一体的に設けられているため、ドリルによる下穴加工に続いて、工具交換することなく切り屑分断工具による切り屑分断溝の加工を連続して能率良く行うことができる。また、第6発明と同様に下穴径が同じであればピッチ等が異なる複数種類のめねじのタップ立てに共通に使用できる。
第9発明では、切り屑分断工具がドリル付き切削タップに一体的に設けられているため、ドリルによる下穴加工、切り屑分断工具による切り屑分断溝の加工、および切削タップによるタップ立てを、工具交換することなく連続して能率良く行うことができる。なお、タップ立て後に切り屑分断工具をめねじから引き抜く際には、めねじに存在する切り屑分断溝に溝加工刃の位相を合わせて引き抜くようにすれば良い。
第10発明のめねじ加工方法では、切削タップによるタップ立てに先立って下穴の内周面に切り屑分断溝を形成するため、展延性の高い材料にタップ立てを行う場合でも、その切り屑分断溝により切り屑が確実に分断されて良好に排出されるようになり、第1発明と同様の効果が得られる。
第11発明では、切り屑分断溝の溝底の径寸法がめねじの谷の径と略等しく、めねじのねじ溝と略同じ深さで切り屑分断溝が設けられるため、前記特許文献1のようにタップのランドに相当する大きな切欠を設ける場合に比較してめねじの強度が高くなり、展延性の高い材料であっても所定のねじ締結強度を確保することができる。
本発明の切り屑分断溝は、切り屑分断工具を軸心まわりに回転させることなく下穴の軸心と平行に挿入することにより、下穴の軸心と平行に形成される直線溝であっても良いが、第10発明のように下穴の内周面に形成されるめねじのねじ溝と交差するように設けられれば良く、切り屑分断工具を軸心まわりに回転させながら下穴内に挿入してらせん状の切り屑分断溝を形成するようにしても良い。直線溝の場合は、溝加工刃も軸心と平行に直線状に本体部に設ければ良く、らせん状の場合は溝加工刃も軸心まわりに捩じって設ければ良い。
切り屑分断工具は、溝加工刃の先端に切れ刃が設けられて切り屑分断溝を切削加工するものでも良いが、溝加工刃が下穴の内周面に食い込んで塑性変形させることにより切り屑分断溝を形成するものでも良い。溝加工刃は、切削加工による削り出しやワイヤカット放電加工などで本体部と一体に設けることもできるが、別体に構成してねじや溶接、焼嵌めなどの固設手段により本体部に一体的に固設したものでも良い。
溝加工刃の数は、軸心まわりに離間して例えば等角度間隔で3つ以上設けることが望ましいが、第3発明のように下穴の内径と略等しい径寸法(厳密には、下穴より僅かに小さい)の円筒外周面を有する場合には、単一または2つの溝加工刃を設けるだけでも十分な加工精度で切り屑分断溝を加工することができる。第3発明以外では、本体部の断面形状が三角形や四角形などの多角形で、その頂点を溝加工刃として使用することもできるなど、種々の態様が可能である。なお、切り屑分断溝の数が多い程、タップ立て時の切り屑は細かく分断されて排出され易くなるため、溝加工刃を複数設けて複数の切り屑分断溝を同時に形成することが望ましい。
第2発明では、溝加工刃の断面が略三角形で、断面が略三角形のノッチ状の切り屑分断溝が形成されるが、U字形断面やI字形断面とすることもできるなど、溝加工刃や切り屑分断溝の断面形状は適宜設定できる。なお、切り屑分断溝は、前記引用文献1のように切削タップのランドが通過できる必要はなく、ランドよりも十分に小さい幅寸法で設けられれば良い。
また、第2発明では溝加工刃の径寸法がめねじの谷の径と略等しく、めねじのねじ溝と略等しい溝深さで切り屑分断溝が形成されるが、所定のめねじ強度が得られる範囲でめねじのねじ溝より深い切り屑分断溝を加工するようにしても良い。また、切り屑分断溝の溝深さがめねじのねじ溝より浅い場合でも、その切り屑分断溝の溝深さの範囲では切り屑が確実に分断されて排出されるため、タップに対する切り屑の絡みつきが抑制される。
第4発明の挿入ガイドや第5発明のチップポケットは、必要に応じて設けられれば良く、他の発明の実施に際しては、それ等の挿入ガイドやチップポケットを備えていなくても良い。
第7発明〜第9発明では、切り屑分断工具をドリルや切削タップ、ドリル付き切削タップと共通の工具素材に一体に設けることもできるが、別体に構成して溶接や焼嵌めなどで一体的に接合したものでも良い。切削タップとしては、直溝タップやスパイラルタップなど種々のタップを採用することが可能で、ドリルについても同様である。
第10発明、第11発明のめねじ加工方法では、第1発明〜第9発明の切り屑分断工具が好適に用いられるが、レーザ加工や放電加工など他の溝加工技術で切り屑分断溝を加工することも可能である。
切り屑分断溝を加工した後のタップ立ては、下穴の内周面がそのままめねじの山頂を構成するようにねじ溝のみを切削加工するものでも、めねじの山頂まで切削加工するものでも良い。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるタップ立て用の切り屑分断工具10を示す図で、(a) は軸心と直角方向から見た正面図、(b) は先端側から見た底面図である。この切り屑分断工具10は、図2に示すようにワーク20に予め設けられた下穴22内に先端側から挿入されることにより、図3に示す切り屑分断溝30を、その下穴22の内周面に切削加工するためのもので、高速度工具鋼などで構成されているとともに、円柱形状を成しているシャンク12および刃部14を軸方向に一体に備えており、刃部14の外周面には、上記切り屑分断溝30を切削加工するための溝加工刃16が軸心まわりに等角度間隔で3本設けられている。刃部14は、下穴22の内径より僅かに小さい径寸法の円筒外周面18を備えており、その円筒外周面18により下穴22と略同心に位置決めされた状態でその下穴22内に挿入されるようになっている。刃部14のうち、下穴22より僅かに小さい径寸法の円柱形状の部分は本体部に相当する。
3本の溝加工刃16は、それぞれ断面が略三角形を成していて、その頂点が外周側へ突き出すように、例えばワイヤカット放電加工などで刃部16に一体に設けられているとともに、前記ワーク20の板厚すなわち加工すべきめねじ32(図4参照)の長さより長い軸方向長さを有して、軸心と平行に直線状に形成されており、その軸方向の先端が切れ刃として機能するようになっている。この溝加工刃16の外周側へ突き出す頂点の径寸法は、めねじ32の谷の径と略等しく、下穴22の内周面には、めねじ32のねじ溝34と略同じ溝深さで断面が略三角形のノッチ状の切り屑分断溝30が切削加工される。図3は、めねじ32をタップ立てする前の状態であるが、切り屑分断溝30との比較のためにめねじ32のねじ溝34の溝底の位置を一点鎖線で示したものである。図3、図4の(a) はそれぞれ平面図で、(b) は(a) におけるB−B断面図である。
切り屑分断工具10にはまた、その先端部に挿入ガイド24が一体に設けられている。挿入ガイド24は、前記円筒外周面18と同じ径寸法で下穴22の径寸法と略等しい大径部から先端側へ向かうに従って小径となるテーパ形状を成しており、そのテーパ面26により下穴22と略同心となるように下穴22内に挿入される。また、上記挿入ガイド24のうち溝加工刃16と一致する部分は部分的に切り欠かれ、溝加工刃16によって切削された切り屑を収容して前方へ排出するチップポケット28が設けられている。
そして、このような切り屑分断工具10を用いて、ワーク20にめねじ32を切削加工する際には、先ず、図示しない3軸加工機などによりドリルを軸心まわりに回転駆動しつつ下降させて下穴22を切削加工する。この工程は、下穴加工工程である。
次に、ドリルから切り屑分断工具10へ工具交換するなどして、図2に白抜き矢印で示すように、その切り屑分断工具10を軸心まわりに回転させることなく軸方向の先端側、すなわち下方へ直線移動させることにより、挿入ガイド24によって下穴22と略同心になるように案内されつつ、その下穴22内に切り屑分断工具10を押し込む。これにより、3本の溝加工刃16で下穴22の内周面に切削加工が施され、図3に示すように下穴22の中心線と平行な直線状を成しているとともに、溝深さがめねじ32のねじ溝34の溝深さと略等しいノッチ状の3本の切り屑分断溝30が切削加工される。この工程は、溝加工工程である。
ここで、ワーク20は、SS400やアルミニウムなどの展延性が高い材料製で、切り屑分断工具10を軸方向へ押し込むだけで比較的容易に切り屑分断溝30を切削加工することができるが、必要に応じて溝加工刃16に対応する切れ刃を有するダイスを用いることも可能である。また、挿入ガイド24には溝加工刃16に対応してチップポケット28が設けられているため、溝加工刃16によって切削された切り屑は、そのチップポケット28から前方(実施例では下方)へ良好に排出され、挿入ガイド24と下穴22との間に切り屑を噛み込んで加工負荷が増大したり下穴22の内周面に疵が付いたりすることが防止される。また、溝加工刃16の先端が下穴22の反対側(下方)へ突き出し、切り屑分断溝30の切削加工が終了したら、切り屑分断工具10の下降を停止してそのまま上方へ引き抜けば良いが、本実施例では切り屑分断工具10の刃部14の長さ寸法、すなわち溝加工刃16の長さ寸法が、ワーク20の板厚よりも大きいため、溝加工刃16の後端は下穴22の上方に出ており、容易に引き抜くことができる。
その後、切り屑分断工具10から更に図示しない切削タップへ工具交換するなどして、その切削タップをめねじ32のリードに合わせて軸心まわりに回転させつつ軸方向の先端側へ移動させ、食付き部側から下穴22にねじ込んでタップ立てを行うことにより、図4に示すようにめねじ32が切削加工される。本実施例では、下穴22の内周面がそのままめねじ32の山頂を構成し、下穴22の内径がそのままめねじ32の内径となるように、ねじ溝34のみを切削加工するようになっている。タップ立てが終了したら、その切削タップをめねじ32のリードに合わせて軸心まわりに逆回転させつつ上方へ移動させて引き抜けば良い。この工程は、タップ立て工程である。
このように、本実施例では切削タップによるタップ立て(めねじの切削加工)に先立って、切り屑分断工具10を下穴22内に押し込んで下穴22の内周面に切り屑分断溝30を切削加工するため、ワーク20が展延性の高い材料であっても、その切り屑分断溝30により切り屑が確実に分断されて良好に排出されるようになる。これにより、例えば図10に示すように長く連続した多数の切り屑がタップに絡みつくことが防止され、タップ立て作業の監視が不要になって完全自動化(無人化)を図ることができる。また、切り屑の噛み込みに起因する切削タップの折損が抑制されるとともに、切り屑の清掃などの処理が容易になる。
一方、タップ立てによって得られるめねじ32も切り屑分断溝30によって分断されるが、この切り屑分断溝30はタップ立ての際の切り屑を分断できれば良く、本実施例では断面が略三角形のノッチ状の切り屑分断溝30がめねじ32のねじ溝34と略同じ溝深さで形成されるため、前記特許文献1のようにタップのランドに相当する大きな切欠を設ける場合に比較してめねじ32の強度が高くなり、展延性の高い材料であっても所定のねじ締結強度を確保することができる。
また、刃部14は下穴22の内径と略等しい径寸法の円筒外周面18を備えており、その円筒外周面18により下穴22と略同心に位置決めされた状態で下穴22内に挿入されるため、切り屑分断溝30を容易に高い精度で加工できる。
また、刃部14の先端側にはテーパ形状の挿入ガイド24が一体に設けられているため、切り屑分断工具10を下穴22内へ容易且つ確実に挿入して切り屑分断溝30を切削加工することができる。
また、上記挿入ガイド24には溝加工刃16に対応してチップポケット28が設けられているため、溝加工刃16によって切削された切り屑がチップポケット28から前方へ良好に排出されるようになり、挿入ガイド24と下穴22との間に切り屑を噛み込んで加工負荷が増大したり下穴22の内周面に疵が付いたりすることが防止される。
また、本実施例の切り屑分断工具10は、軸方向に一体的にシャンク12が設けられ、単独で工作機械に取り付けられて使用されるため、下穴22の径寸法が同じであればピッチ等が異なる複数種類のめねじ32のタップ立てに共通に使用できるとともに、切削タップやドリルと一体的に設ける場合に比較して、工具毎に摩耗や損傷などにより工具寿命に達するまで使用することが可能で、各工具を有効に利用できる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において、前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図5は、前記めねじ32をタップ立てするための切削タップ40の先端部に切り屑分断工具42を同軸に一体的に設けた複合工具で、切り屑分断工具42は、前記3本の溝加工刃16、円筒外周面18、および挿入ガイド24を備えていて、実質的に前記刃部14と同様に構成されており、下穴22よりも小径でめねじ32の長さ寸法(ワーク20の板厚)より長い接続部44を介して切削タップ40に一体的に設けられている。
このような複合工具においても、切削タップ40によるタップ立てに先立って切り屑分断工具42により下穴22の内周面に切り屑分断溝30が切削加工されることにより、タップ立ての際の切り屑が確実に分断されて良好に排出されるようになるため、前記実施例と同様の効果が得られる。加えて、切り屑分断工具42が切削タップ40の先端部に一体的に設けられているため、切り屑分断工具42による切り屑分断溝30の加工(溝加工工程)に続いて、工具交換することなく切削タップ40によるタップ立て(タップ立て工程)を連続して能率良く行うことができる。なお、切削タップ40によるタップ立て後に切り屑分断工具42をめねじ32から引き抜く際には、めねじ32に存在する切り屑分断溝30と溝加工刃16とを一致させて引き抜くようにすれば良い。
図6は、前記下穴22を切削加工するためのドリル50に切り屑分断工具52を同軸に一体的に設けた複合工具で、切り屑分断工具52は、前記3本の溝加工刃16、円筒外周面18、および挿入ガイド24を備えていて、実質的に前記刃部14と同様に構成されており、シャンク54の前端部、すなわち溝部56とシャンク54との間の部分に一体的に設けられている。なお、溝部56と挿入ガイド24との間には小径部58が設けられ、溝加工刃16によって切削された切り屑は、その小径部58の外周側の環状空間を経て排出される。
このような複合工具によれば、ドリル50による下穴22の切削加工に続いて切り屑分断工具52により下穴22の内周面に切り屑分断溝30が切削加工されることにより、タップ立ての際の切り屑が確実に分断されて良好に排出されるようになるため、前記実施例と同様の効果が得られる。加えて、切り屑分断工具52がドリル50に一体的に設けられているため、ドリル50による下穴加工(下穴加工工程)に続いて、工具交換を行うことなく切り屑分断工具52による切り屑分断溝30の加工(溝加工工程)を連続して能率良く行うことができる。また、下穴22の径寸法が同じであればピッチ等が異なる複数種類のめねじ32のタップ立てに共通に使用できる。
図7は、前記図5の複合工具の先端側に、更に図6のドリル50の溝部56を小径部58を介して同軸に一体的に設けたもので、溝部56による下穴22の切削加工に続いて切り屑分断工具42により下穴22の内周面に切り屑分断溝30が切削加工されることにより、タップ立ての際の切り屑が確実に分断されて良好に排出されるようになるため、前記実施例と同様の効果が得られる。また、切り屑分断工具42が切削タップ40およびドリルとして機能する溝部56と一体的に設けられているため、溝部56による下穴加工(下穴加工工程)に続いて切り屑分断工具42による切り屑分断溝30の加工(溝加工工程)、更に切削タップ40によるタップ立て(タップ立て工程)を、工具交換することなく連続して能率良く行うことができる。なお、切削タップ40によるタップ立て後に切り屑分断工具42をめねじ32から引き抜く際には、めねじ32に存在する切り屑分断溝30と溝加工刃16とを一致させて引き抜くようにすれば良い。
図8の切り屑分断工具60は、刃部62の溝加工刃64が所定のねじれ角で捩じれている場合で、その捩れに沿って前記下穴22内にねじ込まれることにより、らせん状の切り屑分断溝を切削加工するもので、実質的に前記切り屑分断工具10と同様の作用効果が得られる。溝加工刃64のねじれ角は、タップ立てされるめねじ32のねじ溝34と交差するように適宜設定されれば良いが、一般には30°程度以下の比較的小さなねじれ角で良い。刃部62のうち、下穴22より僅かに小さい径寸法の円柱形状の部分は本体部に相当する。なお、この実施例では刃部62の長さ寸法、すなわち溝加工刃64の軸方向長さが比較的短いため、溝加工刃64が切り屑分断溝内に完全に入り込んでしまう可能性があるが、加工した切り屑分断溝に沿って逆回転させながら軸方向へ後退させることにより、下穴22から引く抜くことができる。図8は前記図1に対応する図で、(a) は正面図、(b) は先端側から見た底面図である。また、前記図5〜図7の複合工具の切り屑分断工具42、52の代わりに、上記溝加工刃64を有する刃部62を設けることもできる。
図9の(a) 〜(c) は、それぞれ切り屑分断工具の別の態様を説明する図で、(a) は本体部70の断面が三角形で、下穴22よりも大径の3つの頂点70a〜70cをそのまま溝加工刃として用いる場合である。(b) は、本体部72の断面が正方形で、下穴22よりも大径の4つの頂点72a〜72dをそのまま溝加工刃として用いる場合である。また、(c) は、本体部74の断面が、前記切り屑分断工具10、60と同様に下穴22より僅かに小さい径寸法の円形で、単一の溝加工刃74aが設けられている場合である。上記本体部70、72は、一直線の角柱であっても良いが、所定のねじれ角で捩じれていて、頂点70a〜70c、72a〜72dすなわち溝加工刃が軸心まわりに捩じれていても良い。(c) の溝加工刃74aについても、前記溝加工刃16のように直線であっても良いし、溝加工刃64のように捩れていても良い。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例のタップ立て用切り屑分断工具を示す図で、(a) は軸心と直角な方向から見た正面図、(b) は先端側から見た底面図である。 図1の切り屑分断工具を用いて下穴に切り屑分断溝を加工する際の断面図である。 図2のようにして切り屑分断溝が設けられた下穴を示す図で、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB−B断面図である。 図3の下穴にタップ立てによりめねじが切削加工された状態を示す図で、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB−B断面図である。 本発明の他の実施例を示す図で、切削タップと一体的に切り屑分断工具が設けられた場合である。 本発明の更に別の実施例を示す図で、ドリルと一体的に切り屑分断工具が設けられた場合である。 本発明の更に別の実施例を示す図で、切削タップおよびドリルと一体的に切り屑分断工具が設けられた場合である。 本発明の更に別の実施例を示す図で、軸心まわりに捩じれた溝加工刃が設けられた場合で、図1に対応する図である。 本発明の更に別の幾つかの実施例を説明する断面図である。 タップ立て時に分断されずに長く連続した多数の切り屑が切削タップに絡まった状態を示す図である。
符号の説明
10、42、52、60:切り屑分断工具 14、62:刃部(本体部) 16、64、74a:溝加工刃 18:円筒外周面 22:下穴 24:挿入ガイド 28:チップポケット 30:切り屑分断溝 32:めねじ 40:切削タップ 50:ドリル 56:溝部(ドリル) 70、72、74:本体部 70a〜70c、72a〜72d:頂点(溝加工刃)

Claims (11)

  1. 下穴に切削タップをねじ込んでめねじを切削加工する際に、切り屑が長く連続して排出されることを防止するタップ立て用切り屑分断工具であって、
    前記切削タップによる前記めねじの切削加工に先立って前記下穴内に挿入される本体部と、
    該本体部に一体的に設けられて前記下穴の内周面に切り屑分断溝を形成する溝加工刃と、
    を有することを特徴とするタップ立て用切り屑分断工具。
  2. 前記溝加工刃は、断面が略三角形のノッチ状の切り屑分断溝を切削加工するもので、該溝加工刃の径寸法は前記めねじの谷の径と略等しい
    ことを特徴とする請求項1に記載のタップ立て用切り屑分断工具。
  3. 前記本体部は、前記下穴の内径と略等しい径寸法の円筒外周面を備えており、該円筒外周面により該下穴と略同心に位置決めされた状態で該下穴内に挿入される
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のタップ立て用切り屑分断工具。
  4. 前記本体部の先端には、前記下穴の径寸法と略等しい大径部から先端側へ向かうに従って小径となるテーパ形状の挿入ガイドが設けられている
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のタップ立て用切り屑分断工具。
  5. 前記溝加工刃は、切削加工により前記切り屑分断溝を形成するもので、
    前記挿入ガイドのうち該溝加工刃と一致する部分は部分的に切り欠かれ、該溝加工刃によって切削された切り屑を収容して前方へ排出するチップポケットが設けられている
    ことを特徴とする請求項4に記載のタップ立て用切り屑分断工具。
  6. 前記本体部には、軸方向に一体的にシャンクが設けられ、単独で工作機械に取り付けられて使用される
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のタップ立て用切り屑分断工具。
  7. 前記溝加工刃を有する前記本体部は、前記切削タップの先端部に一体的に設けられている
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のタップ立て用切り屑分断工具。
  8. 前記溝加工刃を有する前記本体部は、前記下穴を切削加工するドリルの溝部とシャンクとの間に一体的に設けられている
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のタップ立て用切り屑分断工具。
  9. 前記溝加工刃を有する前記本体部は、ドリル付き切削タップの該ドリルと該切削タップとの間に一体的に設けられている
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のタップ立て用切り屑分断工具。
  10. 下穴に切削タップをねじ込んでめねじを切削加工するめねじ加工方法であって、
    前記切削タップによる前記めねじの切削加工に先立って、前記下穴の内周面に該めねじのねじ溝と交差するように切り屑分断溝を形成する溝加工工程を有する
    ことを特徴とするめねじ加工方法。
  11. 前記切り屑分断溝は、溝底の径寸法が前記めねじの谷の径と略等しくなるように設けられる
    ことを特徴とする請求項10に記載のめねじ加工方法。
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