JP2005022033A - 研磨部材 - Google Patents

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公男 遠山
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Abstract

【課題】樹脂等で形成された部材の表面であっても滑らかに研磨することができ、かつ、研磨によって生ずる摩擦熱を放熱あるいは生じないようにした研磨部材を提供する。
【解決手段】有機化合物を主成分として所定形状に形成された研磨体12と、前記研磨体12を回転可能に支持する支持軸14とを有する研磨部材10であって、前記研磨体12の研磨面16には、回転研磨時において被研磨体に接触しない非接触部が設けられている。この非接触部は、研磨体12の研磨面16に形成された断面凹状の溝部18によって形成することができる。この溝部18が、非研磨体との接触により発生した摩擦熱を放熱するための放熱部として機能するとともに、研磨時に発生した研削屑を一時的に保有しておくためのポケット部として機能する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、合成樹脂や金属等の表面を研磨する研磨部材に関し、特に、歯科技工の分野において人工歯や金属製の歯冠を研磨するために用いられる研磨部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回転駆動される研磨体により金属等の表面を研磨する研磨部材に関する技術として、例えば[特許文献1]に開示された軸付ダイヤモンド砥石が知られている。
[特許文献1]に開示された軸付ダイヤモンド砥石によれば、金属軸上にダイヤモンド粉が固着されることで砥石(研磨体)が形成されるとともに、その砥石の表面に対してスパイラル状の溝部が形成されている。回転駆動されるその砥石によって被研磨体を研磨する際には、前記溝部が被研磨体との接触により生ずる摩擦熱を放熱するための放熱部として機能する。また、前記溝部は、被研磨体の研削屑を排出するためのパイパス路としても機能する。
【0003】
しかしながら、[特許文献1]に開示された研磨部材を用いた場合には、研磨体が樹脂よりもはるかに硬質のダイヤモンド粉で形成されているので、例えば樹脂等で形成される人工歯の表面を滑らかに研磨することができない。そこで、従来、歯科技工の分野などでは、合成樹脂などの有機化合物を主成分とするバインダ中に必要に応じて砥粒を含有した研磨体を使用することによって、樹脂等で形成される人工歯の表面であっても滑らかに研磨することのできる研磨部材が用いられている。
【0004】
【特許文献1】
実開昭56−176159
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、これらの従来技術によっては今まで解決することのできなかった問題点を解決するものである。すなわち、樹脂等で形成された部材の表面であっても滑らかに研磨することができ、かつ、研磨によって生ずる摩擦熱を放熱あるいは生じないようにした研磨部材を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、特許請求の範囲の各請求項に記載した発明が構成される。
請求項1に記載した発明は、有機化合物を主成分として所定形状に形成された研磨体と、前記研磨体を回転可能に支持する支持軸とを有する研磨部材であって、前記研磨体の研磨面には、回転研磨時において被研磨体に接触しない非接触部が設けられていることを特徴とする研磨部材である。ここで、「有機化合物を主成分として」とあるのは、研磨体が合成樹脂等の有機化合物のみによって形成される場合のみならず、研磨体が合成樹脂等の有機化合物からなるバインダ中に無機化合物からなる砥粒を含有して所定形状に形成される場合等をも広く含む趣旨である。
したがって、研磨体が有機化合物を主成分として形成されているので、例えば樹脂等で形成された人工歯の表面であっても滑らかに研磨することができる。また、研磨体による回転研磨時において、その研磨体の研磨面が被研磨体の表面に対して常時接触している状態にはならないので、被研磨体との接触により生ずる摩擦熱によって研磨体の表面温度が過度に上昇することが防止され、研磨体の過熱による軟化、摩耗等を抑制できる。すなわち、研磨体の形状による放熱効果によって研磨体の表面温度の上昇が抑制される。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の研磨部材であって、非接触部は、研磨面に形成された凹部あるいは孔部であることを特徴とする研磨部材である。
したがって、研磨体の研磨面に形成された凹部あるいは孔部の内側が、外気との接触により研磨面における摩擦熱を放熱するための放熱部として機能する。
また、研磨体の研磨面に非接触部としての凹部あるいは孔部が形成されている場合には、研磨体あるいは被研磨体から発生する研削屑を一時的に保有することのできるポケット部として機能し得る。
また、研磨体の研磨面に非接触部としての凹部あるいは孔部が形成されている場合には、研磨体あるいは被研磨体から発生する研削屑を排出することのできるバイパス路として機能し得る。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に記載の研磨部材であって、研磨体は円板状の形状を有するとともに、その研磨体の側面に研磨面が形成されていることを特徴とする研磨部材である。
したがって、回転研磨時における研削屑が非接触部としての凹部あるいは孔部を通過して研磨面の裏側に速やかに排出される。これにより、被研磨体を連続的に効率良く研磨することができる。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の研磨部材であって、研磨体は、シリコン系化合物、ポリウレタン系化合物、ポリスルフォン系化合物、エポキシ系化合物、及びポリエステル系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物を主成分としている研磨部材である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1〜第3の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る研磨部材10の斜視図である。図2は、図1に示す研磨部材10のA−A線断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る研磨部材10は、シリコン樹脂等の有機化合物を主成分とした組成物が所定形状に形成された研磨体12と、電動加工装置の回転駆動部等に装着されることでその研磨体12を回転可能に支持する支持軸14とを備えている。
【0012】
研磨体12は、有機系化合物を主要構成成分とする組成物で形成されている。有機系化合物は、例えば、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルフォン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂など、特に、種類を限定しないで、用途に応じた研磨に使用できる有機高分子材料あるいは有機無機複合高分子材料を採用することができる。有機系化合物としては、少なくとも1種を組み合わせて使用することができる。研磨体12を構成する組成物が、有機系化合物のみを研磨成分として含有する場合には、ワークの表面に光沢を付与したい場合に好ましく用いることができる。
本組成物は、必要に応じて砥粒を含有していてもよい。通常、砥粒は、無機系材料の硬質粒子で構成される。無機系材料としては、ジルコニウム、アルミニウム、シリコン、チタン、ホウ素の各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、複合酸化物、炭窒化物などの各種セラミックス系の粒子を使用することができる。粒子形態は特に限定しないで、必要に応じて各種形態を採用することができる。砥粒の含有量は、特に限定せず、砥粒の種類、形状、大きさなどによって適宜設定することができる。一般的には、研磨体12の重量に対して約10wt%〜90wt%程度である。
【0013】
研磨体12は、被研磨体であるワークの種類あるいは研磨目的など、特に制限なく、必要に応じて各種形態を採ることができる。一般的には、三角錘状、円柱状、紡錘状、円盤状などを採ることができる。本実施の形態では、研磨体12は略円錐体状に形成されている。
研磨体12の表面には研磨面16が形成されており、研磨体12を回転させながらこの研磨面16をワークに接触させて研磨を実施することができる。この研磨面16には、回転研磨時においてもワークの表面に接触しない凹状の溝部18(凹部)が設けられている。ここでいう「凹状」とは、研磨面16を基準面としたときに、溝部18の断面が研磨体12の回転中心側に向けて少なくとも一部において凹状となるように形成されていることを指している。この断面凹状の溝部18が、本願発明における「非接触部」に対応している。
【0014】
具体的に説明すると、図1及び図2に示すように、研磨体12の研磨面16には、研磨体12に貫設された支持軸14に沿ってほぼ平行に細線状の溝部18が形成されている。この溝部18は、研磨面16から研磨体12の回転中心に向けて支持軸14にほぼ到達する程度の深さを備えており、この溝部18の内壁面がエア(大気)と接触することで摩擦熱を放熱するための放熱部として機能することができる。
この溝部18が備える研磨体表面における平面形態としては、円形状、不定形状、三角形状、方形状の他、直線状、ジクザグ状、ラセンを含む曲線状などの各種線状形態を採ることができる。
この溝部18が備える断面形状としては、特に限定しないが、図2に示すように一定の幅を有する形状であってもよいし、中心に向かうにつれて幅が広がるようなテーパ状の形状であってもよいし、例えばU字型の形状であってもよい。
この溝部18の深さは、特に限定しないが、研磨体12の回転時においてエアの存在、出入りあるいは動きを許容する深さであればよい。また、深さは、溝部18の全体にわたって同じ深さである必要はなく、もっとも磨耗する先端側(先鋭側)では相対的に深く、磨耗を受けにくい基端側(太径側)の部分では相対的に浅くすることができる。特に、もっとも摩耗し易い研磨体12の先端側においては(好ましくは先端側から基端側に至る範囲においては)、支持軸14に至る程度の深さを有していると、研磨体12が磨耗されていく過程において長期にわたってその機能を発揮できる。
研磨面16の全表面積に対する溝部18の開口面積の割合は、約20%以下であることが好ましい。20%を超えて溝部18が形成されていると、研磨効率が低下しすぎるからである。好ましくは10%以下である。
【0015】
また、溝部18は、研磨体12による回転研磨時において、研磨体12あるいはワークの表面から発生する研削屑を一時的に保有しておくためのポケット部として機能する。したがって、研磨体12の研磨面16において研削屑が堆積することが防止されるので、研磨体12が長時間にわたって優れた研磨効果を発揮することができる。
【0016】
〔第2の実施の形態〕
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る研磨部材20の斜視図である。
図3に示すように、本実施の形態に係る研磨部材20では、溝部28が曲線状に形成されている点以外は、上記した第1の形態と同様となっている。この形態によれば、溝部28の内壁面がより広い範囲においてエアと接触するので、回転研磨時に生ずる摩擦熱をより効率的に放熱することができる。
【0017】
〔第3の実施の形態〕
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る研磨部材30の斜視図である。図5は、図4における研磨部材30のB−B線断面図である。
図4、図5に示すように、本実施の形態に係る研磨部材30では、研磨体32は、円柱状の外形形態を備えており、その研磨面36には、外周に沿って螺旋状に旋回する溝部38を備えている。この形態によれば、研磨面36の外周面の全体にわたって溝部38を備えているので、研磨体32の回転時におけるエアの流れによって効率的に熱を逃がすことができる。また、このように溝部38が螺旋状に形成されていると、研磨体32の外表面において溝部38をより長く形成できる点において有利である。
【0018】
また、本実施の形態における研磨部材30によれば、図5に示すように、溝部38が研磨体32の中心を指向せず、中心からやや逸れた部位を指向するようになっている。かかる形態によれば、支持軸34に到達する深さよりも深い奥行きを有する溝部38を形成することができる。この場合、溝部38の内壁面の面積をより大きくすることができるので、ワークとの接触により生ずる摩擦熱をより効率的に放熱することができる。
【0019】
〔第4の実施の形態〕
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る研磨部材40の斜視図である。
図6に示すように、本実施の形態における研磨部材40では、研磨体42は、略円板状の外形形態を備えている。研磨体42の円中心には、その研磨体42を回転可能に支持する支持軸44が設けられている。研磨体42の側面(横面)には、研磨面46が形成されており、研磨体42を回転させながらその研磨面46をワークに接触させることで研磨を実施することができる。研磨体42の研磨面46には、回転研磨時においてもワークに接触しない非接触部としての溝部48が形成されている。この溝部48は、研磨体42を上下に貫くように形成されている。したがって、研磨体42による回転研磨時には、この溝部48の内壁面が摩擦熱を放熱するための放熱部として機能するとともに、研磨体42あるいはワークの表面から発生する研削屑を下方に排出するためのバイパス路として機能する。研磨時に発生する研削屑は、溝部48を通過して速やかに排出されるので、ワークの表面を長時間研磨する場合においても目詰まり等が発生せずに効率良く研磨を実施することができる。
【0020】
〔第5の実施の形態〕
図7は、本発明の第5の実施の形態に係る研磨部材50の斜視図である。
図7に示すように、本実施の形態に係る研磨部材50では、研磨体52は、略円板状の外形形態を備えている。研磨体52の回転中心には、その研磨体52を回転可能に支持する支持軸54が設けられている。研磨体52の側面には研磨面56が形成されており、研磨体52を回転させながらその研磨面56をワークに接触させることで研磨を実施することができる。研磨体52の研磨面56には、回転研磨時においてもワークに接触しない非接触部としての孔部58が複数形成されている。この孔部58は、研磨体52を上下に貫くように複数形成されている。したがって、研磨体52による回転研磨時には、この孔部58の内壁面が摩擦熱を放熱するための放熱部として機能するとともに、研磨体52あるいはワークの表面から発生する研削屑を排出するためのバイパス路として機能する。研磨時に発生する研削屑は、孔部58を通過して研磨体52の下方に速やかに排出されるので、ワークの表面を長時間研磨する場合においても目詰まり等が発生せずに効率良く研磨を実施することができる。また、研磨面56の摩耗が進行すると、その研磨面56よりも中心側に形成されていた孔部58が次々と研磨面56に現れることで新たな非接触部(バイパス路)として機能する。したがって、本実施の形態における研磨部材50によれば、研磨体52の研磨面56がたとえ摩耗した場合であっても、研磨面56に研削屑が堆積することが極めて有効に防止される。
また、研磨体52の研磨面56に孔部58を形成した場合には、上述した第4の実施の形態のように細線状の溝部48を形成する場合よりも、研磨体52の剛性を高く保つことができる。したがって、本実施の形態における研磨部材50によれば、長時間連続して金属等の硬質のワーク(被研磨体)を研磨する場合においても、研磨体52が変形等せずに精密な研磨加工を実現することができる。
【0021】
本願発明における研磨部材は、上述した第1〜第5の実施の形態で説明したように構成することができる。
このような研磨部材における研磨体は、前記有機系化合物の原材料と重合反応触媒、あるいはこれらと砥粒とを混合して、所望の形状のキャビティを備える成形型内に注入して、反応硬化させることにより得ることができる。前記有機系化合物、あるいはこれと砥粒とを混合し、所定の温度以上に加熱して冷却固化させることによっても得ることができる。前記有機系化合物を主要構成成分とする成形体の製造方法自体は、本分野においてはよく知られた手法である。
【0022】
研磨体を回転可能に支持するための支持軸は、研磨体の成形時に例えばインサート成形により一体的に設けることができる。支持軸は、例えばステンレス等の金属で形成された軸を用いてもよいし、金属以外の例えば樹脂や木材等で形成された軸を用いてもよい。
【0023】
研磨面に形成する凹部あるいは孔部は、研磨体の成形時において金型等によって同時一体的に設けるようにしてもよいし、研磨体を所定形状に成形した後に切削等の後加工によって設けるようにしてもよい。
【0024】
本発明の研磨部材によれば、研磨時における研磨面の温度の上昇を抑制することができる。この結果、研磨体の熱変形や摩耗、研磨体からの砥粒の脱落等を抑制できるので、研磨体の使用寿命を大幅に延長させることができる。また、研磨時に発生する研削屑の堆積や目詰まり等を防止できるので、長時間連続的に研磨を行った場合でも研磨体の「切れ味」が低下せず、単位時間当たりの作業効率を著しく向上させることができる。
【0025】
本発明の研磨部材は、微細加工や正確性が要求される研磨・切削加工や研磨量が小さい研磨・切削加工に適しており、特に、人工歯(硬質レジン歯、軟質レジン歯など)や歯冠などの歯科領域において好ましく使用できる。また、小品のワークの研磨・切削加工に用いることも好ましい。さらに、小サイズの研磨体に適用することが好ましい。
【0026】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細に具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
シリコン化合物(東レ(株)製、SH851U)13.5重量部、このシリコン化合物用触媒(日本油脂(株)製ナイパーFF)0.5重量部、砥粒用無機材料(昭和電工(株)製モランダムA#220)86.0重量部を混合して成形用組成物を得た。この組成物を円錐体状のキャビティを備える成形型に注入し、ステンレス製の芯棒が得ようとする成形体の中心軸に一致するように配設した。成形型を閉じ、所定の反応硬化温度に加熱し、反応硬化させた。
【0027】
得られた成形体について、上記第1の実施の形態で説明したような細線状の溝部をカッターにより切削加工して付与し、研磨体とした。なお、溝部の幅は、平均で約0.5mmであり、溝部の深さは、支持軸に到達させるようにした。
この研磨体につき、硬質レジン歯(山八歯材工業株式会社製エフセラ)の下顎左第一大臼歯を研磨した。比較検討のために、このような溝部が形成されていないこと以外は同様な条件で作成した研磨体(コントロール)を用いて研磨を実施した。その結果を[表1]に示す。
【0028】
【表1】
Figure 2005022033
【0029】
上記[表1]に示すように、本発明の研磨体によれば、研磨体の表面温度の上昇を抑制することができた。また、研磨体の軟化や目詰まり等がなく連続して安定した研磨作業が可能となった。この結果、研磨体の使用寿命が大幅に延長されるとともに、単位時間あたりの作業効率が著しく向上した。なお、ワーク(上記第一大臼歯)の研磨状態はいずれも良好であった。
【0030】
(実施例2)
二液型ウレタン樹脂として、日本ポリウレタン社製コロネート4370を17.5重量部、及び日本ポリウレタン社製ニッポラン4378を12.0重量部、砥粒用無機材料(昭和電工(株)製モランダムA#220)70.5重量部を混合して成形用組成物を得た。この組成物を円柱体状のキャビティを備える成形型に注入し、ステンレス製の芯棒が得ようとする成形体の中心軸に一致するように配設した。成形型を閉じ、室温で反応させ硬化させた。
【0031】
得られた成形体について、上記第3の実施の形態で説明したようなスパイラル状の溝部をカッターにより切削加工して付与し、研磨体とした。なお、溝部の幅は、平均で約0.3mmであり、溝部の深さは、支持軸に到達させるようにした。
この研磨体につき、貴金属製の歯冠(金12%、パラジウム20%、銀49%、銅19%)を研磨した。比較検討のために、このような溝部を形成しない以外は同様な条件で作成した研磨体を用いて研磨を実施した。その結果を[表2]に示す。
【0032】
【表2】
Figure 2005022033
【0033】
上記[表2]に示すように、本発明の研磨体によれば、研磨体の表面温度の上昇を抑制することができた。また、研磨体の軟化や目詰まり等がなく連続して安定した研磨作業が可能となった。この結果、研磨体の使用寿命が大幅に延長されるとともに、単位時間あたりの作業効率が著しく向上した。なお、ワーク(上記金属製歯冠)の研磨状態はいずれも良好であった。
【0034】
(実施例3)
シリコン化合物(東レ(株)製、SH851U)99.5重量部、このシリコン化合物用触媒(日本油脂(株)製ナイパーFF)0.5重量部を混合して成形用組成物を得た。この組成物を円錐体状のキャビティを備える成形型に注入し、ステンレス製の芯棒が得ようとする成形体の中心軸に一致するように配設した。成形型を閉じ、所定の反応硬化温度に加熱し、反応硬化させた。
【0035】
得られた成形体について、上記第2の実施の形態で説明したような曲線状の溝部をカッターにより切削加工して付与し、研磨体とした。なお、溝部の幅は、平均で約0.3mmであり、溝部の深さは、支持軸に到達させるようにした。
この研磨体につき、硬質レジン歯(山八歯材工業株式会社製エフセラ)の上顎左中切歯を研磨した。比較検討のために、このような溝部を形成しない以外は同様な条件で作成した研磨体を用いて研磨を実施した。その結果を[表3]に示す。
【0036】
【表3】
Figure 2005022033
【0037】
上記[表3]に示すように、本発明の研磨体によれば、研磨体の表面温度の上昇を抑制することができた。また、研磨体の軟化や目詰まり等がなく連続して安定した研磨作業が可能となった。この結果、研磨体の使用寿命が大幅に延長されるとともに、単位時間あたりの作業効率が著しく向上した。なお、ワーク(上記左中切歯)の研磨状態はいずれも良好であった。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂等で形成された部材の表面であっても滑らかに研磨することができ、かつ、研磨によって生ずる摩擦熱を放熱あるいは生じないようにした研磨部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る研磨部材の斜視図である。
【図2】図1に示す研磨部材のA−A線断面図である。
【図3】第2の実施の形態に係る研磨部材の斜視図である。
【図4】第3の実施の形態に係る研磨部材の斜視図である。
【図5】図4における研磨部材のB−B線断面図である。
【図6】第4の実施の形態に係る研磨部材の斜視図である。
【図7】第5の実施の形態に係る研磨部材の斜視図である。
【符号の説明】
10、20、30、40、50 研磨部材
12、32、42、52 研磨体
14、34、44、54 支持軸
16、36、46、56 研磨面
18、28、38、48 溝部(凹部)
58 孔部

Claims (4)

  1. 有機化合物を主成分として所定形状に形成された研磨体と、前記研磨体を回転可能に支持する支持軸とを有する研磨部材であって、
    前記研磨体の研磨面には、回転研磨時において被研磨体に接触しない非接触部が設けられていることを特徴とする研磨部材。
  2. 請求項1に記載の研磨部材であって、
    非接触部は、研磨面に形成された凹部あるいは孔部であることを特徴とする研磨部材。
  3. 請求項1または請求項2に記載の研磨部材であって、
    研磨体は円板状の形状を有するとともに、その研磨体の側面に研磨面が形成されていることを特徴とする研磨部材。
  4. 請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の研磨部材であって、
    研磨体は、シリコン系化合物、ポリウレタン系化合物、ポリスルフォン系化合物、エポキシ系化合物、及びポリエステル系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物を主成分としている研磨部材。
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