JP2005021957A - 冷却装置およびストリップキャスティング装置ならびに鋳造薄片の冷却方法 - Google Patents

冷却装置およびストリップキャスティング装置ならびに鋳造薄片の冷却方法 Download PDF

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Abstract

【目的】冷却能が可変で、特に冷却時間に影響する低温域の冷却能を低めずに高温域の冷却能を低下させることができる冷却装置とそのような冷却装置を備えた希土類磁石合金のストリップキャスティング装置ならびに方法を実現することを目的とする。
【構成】そのような目的で用いられる本発明の冷却装置において、外管と中管と内管で構成される三重管方式の冷却管ユニットを用い、内管と中管で構成される経路に冷却媒体を流し、外管と中管の間の環状隙間部を真空排気あるいは冷却促進用のヘリウムを導入することによって冷却能を変化制御する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高温体を冷却する冷却装置および冷却方法に関わり、特に高温域の冷却能を変化させることができる冷却装置および冷却方法に関わる。特にNdFeB系磁石合金の製造法として普及しつつあるストリップキャスティング装置の冷却装置および冷却方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピューターおよびその周辺機器を始めとするエレクトロニクス機器の高性能化小型化にともない、高性能のNd系焼結磁石の需要が増加している。また、エアーコンディショナーや冷蔵庫等の家電の電力消費量の低減を目的とし、あるいはハイブリッドタイプ等の電気自動車も含め、より高効率のモーターが求められ、これらの分野でも確実にNd系焼結磁石の需要が増加している。
一方、Nd系焼結磁石の特性向上も進んでいる。特性向上のための技術は大きく分けて、二つに分けられる。その一つは原料合金の組織制御に関わるものである。他は、磁石の製造技術の向上に関わるものである。
【0003】
磁石の特性向上のためには、単に磁石の製造工程の改善だけでなく、原料となる磁石合金の製造技術の改善も重要となる。
例えば、その特性と経済性から希土類磁石の中で最も生産量の多いNdFeB系焼結磁石の場合、磁性の担い手となるNdFe14B相はNd−Fe−B三元系平衡状態図において、液相から包晶反応によって生成する。そのため、特により高性能のNdFe14B相の化学量論組成に近い磁石用合金ほど、溶解鋳造時に初晶のγFeが生成し易くなる。そして、このγFe相はデンドライト状に生成し、立体的に繋がっているため、インゴットの粉砕性を著しく害し、磁石の製造工程における粉砕時に得られる粉末の粒径分布が乱れたり組成ずれの原因になったりする。
【0004】
そのような問題を避けるため、最近は鋳造時の凝固速度を速められるストリップキャスティング法(以下SC法と呼ぶ)が採用されている(例えば、特許文献1参照)。SC法では、溶湯をタンディッシュを介して水冷ロールに導き、厚さ約0.3mm程度の鋳造薄片(以下SC材と呼ぶ)を得る方法である。SC材の厚さは薄いため、凝固点近傍の冷却速度は1000℃/s程度あるいはそれ以上となり、初晶のγFeが生成することなく、磁性相のNdFe14B相が直接液相から生成し、γFe相の存在しないインゴットを得ることができる(γFe相は温度の低下とともにαFeに変態する)。さらに、合金中に含まれているNdFe14B相より過剰のNdがNdリッチ相として存在する。
【0005】
SC材中に含まれるNdリッチ相は、従来の通常の金型を用いて鋳造する方式で得られる厚さ30mm程度のインゴットと比べて凝固速度が速いため、微細に分布する。このNdリッチ相は磁石製造工程において焼結時には液相となり、いわゆる液相焼結により密度の増加を促進する。また焼結後の磁石において、NdFe14B磁性相を磁気的に遮断し、保磁力向上に寄与する。そのためNdリッチ相は、原料合金中により細かく均一に分離していると、磁石の製造工程で粉砕した微粉の状態でも分散分布状態が改善され、磁気特性の向上に役立つことが知られている。
【0006】
ところで、一般的にNdFeB系焼結磁石には耐熱性の向上や経済性の観点から希土類元素としてNd以外にDyやPrがNdの一部を置換する形で添加されている。また、Feの一部は多くの場合キュリー点の上昇と耐食性の改善に効果のあるCoあるいはその他の遷移金属元素で置換されている。そのため以下ではNdの代わりにRをFeの代わりにTを用いて、NdFe14B相はR14B相と、Ndリッチ相はRリッチ相と表現する。
【0007】
Rリッチ相の鋳造時のSC材中における挙動についてさらに詳細に説明する。
Rリッチ相は水冷ロール上で冷却時に、主相のR14B相の成長とともに凝固界面から排出され、R14B相の結晶粒内にラメラー(lamellar)状に生成し、一部は粒界にも生成する。
Rリッチ相は例えばNd−Fe−B三元系平衡状態図ではその融点は660℃程度とされており、磁石組成合金の液相面温度と比べてかなり低い。一方、通常のSC法の鋳造条件では、SC材が水冷ロールから離脱する時の平均温度は700℃以上であり、Rリッチ相はまだ液相の状態である。
一般的に、液相中あるいは液相を介した原子の拡散は固相中の拡散減現象に比べて桁違いに早い。そのため、水冷ロールから離脱後のSC材の冷却速度によって、SC材中のRリッチ相はその形態が大きく変化する。
【0008】
冷却速度が遅い場合は、Rリッチ相は母相との界面エネルギーを低下しようとして、ラメラ(lamella)は収縮し丸味を帯びるようになる。また温度の低下とともにRリッチ相中のR濃度は増加し、Rリッチ相の体積比も低下する。一方、冷却速度が速い場合はロールから離脱した直後のより高温の状態がそのまま凍結される傾向が強まる。すなわち、凝固直後のラメラの状態がそのまま保たれ、SC材の断面組織には1次のラメラに加えて2次のラメラも鮮明に認められる。このような場合Rリッチ相の体積比も大きく、Rリッチ相中のR濃度は低くなる。
【0009】
このような状態は、例えばSC材の断面組織を走査電子顕微鏡にて反射電子線像により観察する場合、得られた顕微鏡写真(組成像)に長さLの線分を引き、線分がNdリッチ相と交差する点数Nを数え、線分の長さLをNで除し、Rリッチ相の平均間隔L/Nを求めることによる方法、すなわち線分法で定量的に評価することができる。そして、この値はSC材が水冷ロールから離脱後の冷却速度が速いほど小さくなる。
【0010】
このように、Rリッチ相の存在状態が変わると、以下に述べるように磁石製造工程の水素化、微粉砕工程にも影響し、得られる磁石の特性にも影響することになる。
焼結磁石を製造する際、一般的にはジェットミル等の粉砕機を用いて微粉砕する前に、水素解砕処理(HD処理)を行う。R14B系磁石用合金は水素を吸収、特にRリッチ相は水素を吸収しやすく水素化物を生成し、体積膨張するため、その時のくさび効果と水素化による脆化が相俟って、微細なクラックが合金内に発生する。そのため、もし水冷ロールから離脱後の冷却速度が速く、Rリッチ相の間隔が狭い場合は、より細かく割れやすくなる傾向となる。そして、粉砕した粉末粒子の平均粒径が小さくなりすぎると、粉末がより活性になり、大気中で燃えやすくなったり、あるいは得られる磁石の磁気特性に有害な酸素濃度が高くなりやすくなる。また微粉ほど磁場成型時の配向度が低下しやすく、磁石特性、特に磁化が低下してしまうといった問題を引き起こしやすくなる。
【0011】
そのため、SC材が水冷ロールから離脱後、直ちに急冷したような合金は、概して磁石用の原料合金として好まれない傾向にある。特に、冷却速度が速すぎる場合、Rリッチ相中のR濃度が低すぎて、水素化反応が起こりにくくあるいは遅過ぎて生産工程で問題となる場合もありうる。
しかしながら、より細かい粒径分布の粉末を用いて、磁場成形さらに真空焼結した場合、より細かい粒径分布の磁石を得ることができ、より保磁力の大きな磁石を製造しやすくなる。そのため、例えばモーター用等に用いられる高保磁力の磁石用原料合金としては、Rリッチ相の間隔が小さめのSC材が適している。但し、その場合も前述したように、冷却速度が速すぎるのは適さず、水冷ロールから離脱後高温域を適度に遅い冷却速度で冷却することにより、Rリッチ相の2次のラメラが適度に消失した組織のSC材の方が適している。
【0012】
反対に、水冷ロールから離脱後のSC材の冷却速度が遅い場合、Rリッチ相の間隔が広くなり、微粉砕処理後の粉砕粒子の平均粒径も大きくなる傾向となる。その場合、磁場配向の際、配向度を高めやすく、例えばハードディスクドライブ(HDD)用のヘッドアクチュエーターであるボイスコイルモーター(VCM)等に用いられる磁化の大きな磁石を製造する場合は、そのような組織の合金が好まれる傾向にある。
【0013】
以上のように、SC法においては磁石特性に重要な影響を与えるRリッチ相の分布状態を制御する必要があり、そのためには、SC材が水冷ロールから離脱後の冷却条件の制御が重要となる。特にRリッチ相の融点以上での高温域での温度制御が重要となる。
SC材のロール離脱後の冷却条件の制御例としては、水冷ロール上の冷却を1次冷却、水冷ロールから離脱後のSC材の冷却を2次冷却と分けて、後者の2次冷却速度を制御するため、合金の固相線温度(凝固完了温度=三元共晶温度)以下に50℃/min〜2×10℃/minの冷却速度にて冷却する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0014】
上記に開示された技術における2次冷却は、「急冷ロールと鋳片収容箱間にてArガス等の不活性ガス冷却、あるいはコンベア又はベルトにて移送中にて冷却したり、更に鋳片収容箱内にて不活性ガス冷却して調節することができ、また、2対の回転するベルトによって、鋳片を挟んで冷却したり、液体Arに直接投入する方法などがあり、これらの方法の組合せでもよい。」とされている。しかしながら、高温域の冷却速度を制御した場合、同じ方法で低温域まで冷却しようとすると、温度差が小さくなるにつれて冷却が遅くなり、チャンバーからSC材を取り出しても酸化が問題なくなる温度まで低下するまでの時間が長くなってしまう。このような、問題点を解決するための具体的な手段については全く開示されていない。
【0015】
一方、800〜600℃間の平均冷却速度を1.0℃/秒以下にしてRリッチ相の間隔を広げ、3〜15μmにする方法も開示されている(例えば特許文献3参照)。
そのような目的で、「希土類元素含有合金の溶湯を真空又は不活性ガス雰囲気中の室内にて、冷却された回転ロール上に流し、冷却して薄帯状に凝固させた直後、該凝固薄帯を片状に破砕し、該破砕合金片を前記室内に置かれた収納容器内に収め、冷却媒体により前記破砕合金片の冷却速度を制御することを特徴とする希土類元素含有合金の組織制御方法」が開示されており、具体的な方法として、収納容器の内部に冷却用仕切り板を設け、その中に冷却媒体として気体又は液体を流通させて破砕合金片の冷却速度を制御する希土類元素含有合金の組織制御方法が提案されている(例えば特許文献4参照)。
【0016】
しかしながら、この方法では冷却媒体としてガスを用いた場合、ガスの体積当たりの熱容量は極めて小さいため、大量のガスを流す必要がある。ガスとして不活性ガスを用いる場合、堆積したSC材の間を直接流すことができるが、それにしても大口径の配管を巡らし加熱されたガスを回収し冷却し戻す十分広い伝熱面積を有した熱交換器が必要となり、設備的に大がかりになる。また、冷却に要する時間も長くなる。
【0017】
ガスとして空気を用いる例も示されているがその場合、密閉構造の仕切板を設ける必要がある。しかしながら、空気の体積当たりの熱容量は小さく、冷却速度を増すためには、大量の空気を流せてかつ極めて大きな伝熱面積の仕切板が必要となり、その隙間部にSC材を収納することになる。そのため、特に量産規模の装置では、収納容器はかなり大きくなる。さらに、鋳造チャンバーへの出し入れあるいは水冷ロールから落下するSC材を容器に満遍なく収納するために移動可能な構造とする必要があり、そのような収納容器に大径の配管を巡らし、大量の空気を送り込むのは、設備的な信頼性の上で難点がある。特に、希土類含有合金は化学的に極めて活性であり、そのような活性な合金でしかも高温で大きな比表面積のSC材を扱う装置として安全性の上でも大きな問題を抱えることになる。
【0018】
さらに、冷却媒体として水を用いる場合、鋳造後流すのでは、高温状態の仕切板内に水を直接流すことになり、急激な沸騰現象を招き安全性の点で問題がある。さらに、仕切板への熱衝撃が大き過ぎ、熱歪みによる割れや変形の原因となり、仕切板の耐久性の上でも難点がある。特に、もし破損した場合、漏れた水と高温のSC材が反応し、水素を発生し、安全上重大な問題を引き起こす。もし、そのような問題を避けるため、鋳造開始前から水を流していた場合、冷却能が大きすぎて、高温域で目的とする遅い冷却条件を達成することは困難である。
【0019】
また、SC材を入れた収納容器を隣接する別室に移し、そこで不活性ガス等を用いて冷却する方法が開示されている(例えば特許文献5参照)。この方法では高温域の冷却は概して遅くなる。しかしながら、この冷却方法は合金の組織の制御を目的としたものではなく、冷却速度を調整することは不可能である。また、低温域の冷却も遅く、大気中に開放できるような温度まで低下するのに長時間を要し、そのため数多くの収納容器を必要とする。
【0020】
【特許文献1】
特開昭63−317643号公報(第1頁、(要約))
【特許文献2】
特開平8−269643号公報(第1頁、(要約))
【特許文献3】
特開平10−36949号公報(第1頁、(要約))
【特許文献4】
特開2002−266006号公報(第1頁、(要約))
【特許文献5】
特開平9−155507号公報(第1頁、(要約))
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べてきたように、希土類磁石合金のSC法においては水冷ロール上での冷却速度に加えて、SC材が水冷ロールから離脱後の特に離脱直後からのRリッチ相が溶けている温度域での冷却速度の制御が重要であり、この温度域を適度に遅く、しかも磁石の要求特性に合わせて合金の組織を制御するため、冷却速度を自由に調整でき、かつその後は生産性を高めるため、短時間で冷やせる装置と方法が必要とされる。しかも、極めて活性でかつ比表面積の大きな希土類合金を扱う装置であり、組織制御の観点だけでなく、安全性の観点からも熱応力、歪み、腐食等に十分配慮した設備とする必要がある。
従来、このような信頼性の高い装置は開示されていないのが現状である。
本発明は、特に高性能用のR14B系焼結磁石の原料合金として最適な組織制御を行う際、冷却条件を自由に制御でき、かつ装置がコンパクトで安全性の高い冷却装置および冷却方法を提案することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明において、上記課題を達成するための基本要素として、大径の外管と中間径の中管と小径の内管の3重管方式の冷却管ユニットで構成された冷却装置を用いる。そして、この冷却装置ではそれぞれの冷却管ユニットの外管の一方の先端は閉じており、かつ中管の一方の先端も外管の内側で閉じており、外管と中管の間の環状隙間部は真空引きおよびガス置換が可能となるように構成し、内管の一方の先端は中管内で開放されており、内管の内部とそれにつながる内管と中管の間の環状空洞部で構成される経路に冷却媒体を流通させることにより、外管の外側の被冷却材を冷却するように構成したことを特徴とする冷却装置である。
外管と中管の間の環状隙間部は真空引きすることにより、冷却能を低下させることができる。一方真空引き後冷却促進用のガスを導入することにより、そのガス種類の選択と圧力の調整により、冷却能力を高めかつ制御することが可能となる。
【0023】
あるいは、外管と中管の環状隙間部に1層あるいは2層以上の熱遮蔽材を設けることにより、特に高温域の輻射伝熱を抑制し冷却能を低減した冷却装置とする。
【0024】
さらにこのような冷却装置の中で3重管方式の冷却管ユニットを1列状あるいはマトリックス状に並べることによって伝熱面積を大きくした冷却装置である。
【0025】
さらに、希土類合金を溶解し水冷ロールを用いて薄片状の合金すなわちSC材を得るSC装置において、水冷ロールから離脱後のSC材を破砕する手段と破砕したSC材を収容する容器に冷却装置として上記の3重管方式の冷却管ユニットを一列状あるいはマトリックス状に並べた冷却装置を設けたことを特徴とするSC装置である。
溶解鋳造規模に合わせて伝熱面積を増やすことにより、冷却制御が可能な小型から量産規模の大型の全てのSC装置の実現が可能となる。
【0026】
さらに、SC法において水冷ロールから離脱後の高温のSC材を収納容器に収容して冷却するにあたり、該収納容器に具備された大径の外管と中間径の中管と小径の内管の3重管方式の冷却管ユニットで構成された冷却装置を用いて冷却する方法であって、前記外管の一方の先端は閉じており、前記中管の一方の先端も外管の内側で閉じており、前記内管の一方の先端は中管内で開放されており、内管の内部とそれにつながる内管と中管の間の環状空洞部で構成される経路に冷却媒体を流通させ、合わせて外管と中管の間の環状隙間部を真空引きまたはガス置換することにより、冷却能を変化させてかつ冷却能を制御しながら冷却することを特徴とするSC材の冷却方法である。
特に、希土類磁石合金に適用した場合、組織の変化に影響の大きな高温域の冷却速度を変化させて制御することができ、最適な組織を得ることが可能となる。
【0027】
特に、前記SC法における鋳造方法において、鋳造開始前から内管の内部とそれにつながる内管と中管の間の環状空洞部で構成される経路に冷却媒体を流し、合わせて外管と中管の間の環状隙間部は真空引きし、もしくは真空引きした後希薄なガスを導入して冷却能を低めておき、鋳造終了後適宜時間が経過した後、外管と内管の間の環状隙間部に冷却促進用のガスを導入することにより冷却能を高めて冷却することを特徴とするSC材の冷却方法である。
特に、希土類磁石合金に適用した場合、高温域の冷却が遅く、そのためRリッチ相の間隔が広くなり、高磁化型の磁石の原料合金として最適な組織を実現するのに適したSC材の冷却方法である。低温域の冷却は、冷却促進用のガスの導入といった簡単な操作で速めることができ、冷却時間を短くすることができる。
【0028】
あるいは、前記SC法における鋳造方法において、鋳造開始前から内管の内部とそれにつながる内管と中管の間の環状空洞部で構成される経路に冷却媒体を流し、合わせて外管と中管の間の環状隙間部は真空引きした後、冷却促進用のガスを導入して冷却能を高めておき、鋳造することを特徴とするSC材の冷却方法である。
特に、希土類磁石合金に適用した場合、高温域の冷却速度が適度に速いため、Rリッチ相の間隔の狭い、高保磁力型の磁石の原料合金として最適なSC材を得るのに適した鋳造法である。
【0029】
さらに、特に、冷却媒体として水を用い、外管と中管の環状隙間部に導入するガスとしてヘリウムを用いることを特徴とするSC材の冷却方法である。水は比熱が大きく、また経済性の観点からも最適な冷却媒体である。ヘリウムは熱伝導が大きく、真空排気状態と比べて冷却能を他のガスと比べて最も大きくすることが可能となり、さらに外管と中管の間の環状隙間部に導入する圧力を変えることにより、冷却能を調整することも容易となる。かつ、ヘリウムは不活性ガスであり、もし外管が破損したりして漏れて化学的に極めて活性な高温のSC材と接しても安全上の問題はない。
【0030】
あるいは、前記冷却媒体として空気あるいは水を噴霧した空気を用い、外管と中管の環状隙間部に導入する冷却促進用のガスとしてヘリウムを用いることを特徴とするSC法におけるSC材の冷却方法である。
冷却媒体として空気を用いることにより、冷却装置自体の熱容量を小さくでき、冷却媒体として水を用いた場合よりも高温域の冷却速度を小さくすることができる。さらに最初空気のみを用い、その後水を噴霧した空気に切り替えることにより、冷却装置に熱衝撃を与えることなく冷却能を高め冷却時間を短くすることができる。
【0031】
さらに、対象合金がR14B系磁石合金であることを特徴とするSC材の冷却方法である。本発明の冷却方法はR14B系磁石合金に適用したときにもっとも効果的である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、具体例を挙げて本発明を詳細に説明する。先ず、本発明のSC材の冷却装置について説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1に本発明の第1の実施形態に係わる冷却装置の断面図を示す。当該実施形態は最も単純な例であり、冷却装置が一組の3重管方式の冷却管ユニットで構成されている例を示す。
本発明において、上記課題を達成するため、図1に示すように大径の外管1と中間径の中管2と小径の内管3の3重管で構成された冷却装置24を用いる。そして、その冷却装置の外管1の一方の先端は閉じており、かつ中管2の一方の先端も外管1の内側で閉じている。外管1の他端は径を絞って中管2に溶接されている。
【0034】
内管3の一方の先端は中管2の内側で開放されており、中管2は外管1と同様に他端の径を絞り内管2に溶接されており、冷却媒体出口用のヘッダーパイプ10を設けてあり、その先端にフランジ40を取り付けてある。冷却媒体を、内管3の他端に設けた冷却媒体入口用のヘッダーパイプ9から導入し、内管3の内側13aの経路から内管3と中管2の間の環状空洞部13bの経路13を通して、冷却媒体出口用のヘッダーパイプ10から排出し、あるいはその反対方向の経路で流すことにより外管1の外側の高温の被冷却材(図示省略)を冷却する。外管1と中管2の間の環状隙間部12は真空排気及びガス導入用のヘッダーパイプ8を介して図示省略の真空排気系に繋がっており、真空引きすることにより冷却能を低下させることができる。そのため、例えば冷却媒体を流しながら用いても、冷却能は低下しており、外管1の外側の被冷却材の冷却速度を小さくすることが可能である。さらにバルブ等を用いて真空排気を停止し、冷却促進用のガスを導入することも可能な構造となっており、それにより冷却能を高めることができる。
【0035】
外管1と中管2の間の環状隙間部12を真空排気した状態では、冷却能は低下しているため、外管1は高温に曝される。しかしながら、外管1は熱応力に対して最も強い管状であり、熱膨張が最も大きな長手方向についても、先端は自由であり、熱応力はかからない構造となっている。そのため、加熱冷却の繰り返しの熱負荷に対しても十分耐久性は保証される。
【0036】
(第2の実施形態)
図2に本発明の第2の実施形態に係わる冷却装置25の断面図を示す。当該実施形態の冷却装置25が先の第1の実施形態と異なる点は、外管1、中管1および内管3はそれぞれ外管用管板4、中管用管板5および内管用管板6に溶接固定してある点である。それぞれの管板4、5、6を囲む側板11a、11b、11cと管板4、5、6との接合も含めて全て溶接で接合してあり、ヘッダー41、42、43を構成して気密性を保てるように製作してある。その他の機能は実施例1と同じである。
【0037】
(第3の実施形態)
図3に本発明の第3の実施形態に係わる冷却装置の一部断面を示した正面図を示す。本発明の実施形態は第1の実施形態における3重管方式の冷却管ユニットを直列に並べた例を示す。隣接する冷却管同士の対応する冷却媒体出口用のヘッダーパイプと入口用のヘッダーパイプ(9a−10a、9b−10b)を繋ぎ、冷却媒体がこれらの冷却管の経路を直列に流れるように構成する。同時に隣接する冷却管ユニットの外管1同士は、ヘッダーパイプ8a、8bで繋ぎ、全ての冷却管ユニットの外管と中管の間の環状隙間部を同時に真空排気および冷却促進用のガスを導入できるようにする。
図3には冷却管ユニットを3本並べた例を示したが、3本に限らず本数を増やし、さらにそのように構成した冷却管ユニット列を並列に並べ、マトリックス状に並べることもできる。
【0038】
(第4の実施形態)
図4に本発明の第4の実施形態に係わる冷却装置の一部断面を示した正面図を示す。図5に図4の線A−A’に沿った断面図を示し、図6には図5の上部の管板近傍の拡大図を示す。
これらの図に示すように、第4の実施形態に示す冷却装置27は外管用管板4、中管用管板5および内管用管板6を細長くして、3重管方式の複数の冷却管ユニット7を一列に並べた方式としたものである。伝熱面積を大きくする場合、第3の実施形態と同様に、複数の冷却管ユニット7を並べる必要がある。このように細長い管板を用いてヘッダー41、42、43を形成することにより、冷却管ユニット7同士の配管が不必要となり、各冷却管ユニットに並列で冷却媒体やガスを送り込むことができる。そのため、簡単な構造で複数の冷却管ユニット7に冷却媒体の導入排出が同時に行えるようになる。
なお、本実施形態では図6の拡大図に示すように、外管1と中管2の環状隙間部には熱遮蔽材14を二層挿入してあるが、熱遮蔽材は1層でも構わない。あるいは必要に応じて2層以上挿入する。熱遮蔽材の挿入により、特に高温域の輻射伝熱を抑制し冷却能を低減した冷却装置とすることができる。なお、側板11a、11b、11cの外側はカバー16で覆われている。
また、外管1の外管用管板4に取り付ける近傍と中管2を中管用管板5に取り付ける近傍は管板の最大幅を狭くするため径を絞ってある。
【0039】
(第5の実施形態)
図7に本発明の第5の実施形態に係わる冷却装置28の斜視図を示す。本実施形態はSC法のSC材収納容器に組み込むに当たり、伝熱面積を増やすため第4の実施形態の冷却装置27を間隔を開けて横方向に並べフレーム15aと15bで固定し、全体として3重管方式の冷却管ユニット7をマトリックス状に配置した構造としたものである。ヘッダーパイプ8、9、10の先端はフランジ38、39、40を介して図示省略の排気装置又はガス供給装置に接続されている。
第4の実施形態と同様に、外管1の外管用管板4に取り付ける近傍と中管2を中管用管板5に取り付ける近傍は径を絞って、管板の最大幅を狭くしている。そのため、3重管同士の距離を適度に保った状態で、隣接する管板間に隙間を確保することが可能となる。
【0040】
すなわち、図8に冷却装置28をSC材収納容器17にセットした状態を、冷却管の中心軸を通る断面図で示す。隣接する管板同士の間に十分な間隙を設けることが可能となるため、冷却装置28をSC材19の収納容器17に上方から設置しても、SC材19をこれらの管板の間隙の間を通過して、SC材収納容器17に落下させることが可能となる。18は破砕されたSC材19をSC材収納容器17に落下させるためのSC材落下ガイドである。
【0041】
この場合、冷却装置28はSC材収納容器17に上方から置くだけでセットできる。そのため、SC終了後、SC材を冷却した後、チャンバーの外に収納容器17を取りだし、さらに、冷却装置28をクレーン等で上方に引き上げることにより、簡単に冷却装置28を収納容器17から取り外し可能である。冷却装置28を取り外した状態では、収納容器17に入っているSC材は剥き出しの状態になり、それをドラム缶等に移し替えるのは、簡単な装置を用いることにより容易に行うことが可能となる。
【0042】
なお、冷却装置28をSC材収納容器17に設置する際、3重管方式の冷却管ユニット7の先端(すなわち外管1の先端)は、数mmから数cm浮くように設計する。それにより、外管1の温度が上昇し熱膨張しても、SC材収納容器の底部に接触せず、外管1に無理がかからないようにする。
冷却管ユニット7は管板から吊り下がった状態であり、自重が重力方向にかかるのみである。SC材が落下しても、その荷重はかからず、強度的にも問題が起きにくい設計とすることができる。
【0043】
(第6の実施形態)
図9に本発明の第6の実施形態に係わる冷却装置29の斜視図を示す。当該実施形態の冷却装置29は広い面積の管板4、5、6に複数の3重管方式の冷却管ユニット7をマトリックス状に取り付けた例を示す。外管1、中管2および内管3はそれぞれ外管用管板4、中管用管板5および内管用管板6に固定されている。それぞれの管板はフランジ構造とし、分解可能な構造とすることも可能である。そのようなフランジ構造とした場合、分解して点検することも可能となり、メンテナンスが容易になる利点がある。また、外板用管板5をフランジ構造として、SC装置のチャンバーの外側から、該フランジ部分で固定し、冷却管ユニット7の部分のみをチャンバー内のSC材収納容器に差し込む構造とすることも可能である。
【0044】
本実施形態の冷却装置29をSC材収納容器に組み込む場合、3重管方式の冷却管ユニットが水平方向になるように組み込む。あるいは、斜め上方から、差し込むこともできる。SC材は水平方向あるいは斜め上方から差し込まれた冷却管ユニット7の間を通り抜けて落下する。そのため、冷却管ユニット7は、上方から眺めた場合に、一列状に並びSC材が落下しやすいように配置する。
【0045】
次に、本発明のSC材の冷却方法に用いる冷却媒体と外管と中管2の間の環状隙間部に導入する冷却促進用のガスについて説明する。
冷却媒体としては、比熱が大きな水が最適である。水の中でも、カルシウム等の溶解イオン濃度が低い軟水が好ましい。また、上水道水も含め工業用水等の冷却水には、塩素イオンが比較的高濃度で含まれる場合があり、冷却装置の構成材料として特にオーステナイト系ステンレス鋼を用いる場合、応力腐食割れの原因になりうるため、その含有量には十分留意する必要がある。そのような問題を避けるため、冷却水中の塩素イオン濃度は100ppm以下、さらに望ましくは50ppm以下とする。
【0046】
冷却媒体としては水の他、経済性も考慮して空気を用いることもできる。本発明の場合、外管1と中管2の間の環状隙間部を真空排気した状態では外管1と中管2の間の熱伝導が起こりにくく冷却管ユニットへの入熱が少ないため、空気のような体積当たりの熱容量が小さい冷却媒体を流した場合でも、中管2の壁面温度を十分低下させることができる。その後、水を噴霧混合した空気に冷却媒体を変えることにより、中管2に急激な熱衝撃を与えることを避けつつ冷却能を高めることができる。その後、外管1と中管2の間の環状隙間部12に冷却促進用のガス、特に後述するようにヘリウムを導入することにより、冷却速度を速めることができる。
【0047】
空気のみを冷却媒体として用いる場合、空気は水に比べて体積当たりの熱容量が小さく、水の場合と同等の冷却能を得ようとすると流量を増やす必要がある。そのためには、冷却管も大量の空気を流せるように設計する必要があり、外管1や中管2、内管3等冷却器を構成する全ての管の径を大きくする必要がある。したがって、SC材収納容器の中で冷却器の体積が占める容積が大きくなってしまうといった問題が生じる。
【0048】
本発明では、冷却の開始直後に空気を用いるのは主に中管2の温度を下げるためであり、その熱容量も大きくないため、大流量の空気を吹き込む必要はない。中管2の温度を低下させた後は、水を噴霧混合した空気に切り替えるため、空気のみを用いた場合に比べて、冷却能は大きく径の小さな管を用いることが可能となる。
また、空気が通る中管2は外管1で覆われており、それらの間は真空あるいは不活性ガスで満たされており、もし中管2に割れ等の損傷が発生しても、空気が漏れることはない。また、熱的な負荷も軽減されており、損傷も起こりにくい。このように、安全面でも信頼性の高い設計となっている。
【0049】
空気と空気に水を噴霧混合した冷却媒体を用いる場合、冷却器そのものの熱容量が小さく、しかも外管1と中管2の間の環状隙間部は真空排気した状態では、冷却能が極めて小さく、被冷却材の冷却速度を冷却媒体として水を選ぶ場合に比べて、さらに高温域の冷却速度を小さくできる利点がある。
【0050】
外管1と中管2の間の環状隙間部に導入するガスの種類としては、熱伝導度の大きなヘリウムを用いることにより、真空排気状態と比べて冷却能を大きく高めることができる。それにより、SC材の組織制御に関係ない低温域の冷却を速め冷却時間を短縮することができる。また、ヘリウムは不活性ガスであり、もし外管3が損傷し、ガスが漏れたとしても問題にならない。
【0051】
本発明に用いる外管1の外径は、例えば25.4mm以上、76.2mm以下が望ましい。本発明の冷却器は3重管構造であり、中管2の外径は外管1の内径未満で両者間には、適当な環状隙間を設ける必要がある。さらに内管3と中管2の間にも冷却媒体の経路を確保し、内管3の内側も経路となる。外管1の径を25.4mm未満とすると、中管2や内管3の径がかなり小さくなり、経路を確保するのが難しくなり、圧損も大きくなるからである。また、冷却器の冷却能力は、冷却管の全表面積、特に中管2の表面積に比例し、管の径を小さくした場合、数を増やす必要が生じ、加工費が増大し、冷却器全体の製造コストが増加するためである。
【0052】
一方、76.2mmを越えると、外管1と中管2の間の環状隙間部を真空排気するときに、特にSC法の冷却器として用いる場合、外管1は高温に曝されクリープ現象で潰れやすくなる。そのような現象を防ぐため、肉厚を増すと、熱容量が増え、高温域の冷却速度を遅くする上で不都合となる。また、外管1は加熱冷却を繰り返し受けるため、熱疲労に強い構造とする必要があり、そのためにも径は76.2mmを越えない方が望ましい。
【0053】
内管3の外径は、例えば5mm以上が望ましい。5mm未満では、冷却器として組み立てる際、管板への溶接固定等が難しくなるためである。
なお、管の径を決める際、特に元管から各冷却器に並列して冷却媒体を流す場合、全体により均一に流れるよう、配慮する必要がある。
【0054】
内管3の内外面と中管2の内面には、水あるいは水を噴霧混合した空気が流れるため、水への耐食性が十分な材料を選択するのが望ましい。また、機械加工性や溶接施工性が良好で、さらに入手性、経済性等も考慮して、SUS304、SUS316、SUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼が選択される。
特に、冷却水中に含まれる塩素イオンに起因する応力腐食割れ等の腐食に対して良好な特性を有するMo入りのSUS316やSUS316Lがより最適な材料として選択される。
【0055】
外管1は、高温強度、加熱冷却の繰り返しに対する熱疲労に対し強い材料として、さらに加工性、溶接施工性等も考慮してSUH310、SUH330等の耐熱オーステナイト鋼が選択される。あるいはインコネル等のNi系耐熱材料が最適な材料として選択される。
さらに、本発明の冷却器においては、管径が小さいため、また、SC装置の冷却器として用いられる場合においても、被冷却材すなわちSC材の最高温度は800℃程度であり、外管1の温度はそれ以下となり、入手性、経済性も考慮しSUS310S、SUS304等の汎用の耐食材料を用いることも可能である。
【0056】
三重管方式の冷却管ユニット7を構成する外管1は直管のまま用いることもできる。さらに、長さ方向に波形の凹凸を設けた管とすることにより、高温強度を高めることができる。また、外管1が潰れたり、あるいは外管1や中管2が曲がった場合にも両者が面接触しにくくなり、局部的に断熱性が阻害されるのを防ぐことができる。また、中管2についても、同様に波形成形を施すことができる。
それにより、冷却媒体が管内を流れる際、乱流現象を起こし、熱伝達係数を高めるといった効果も期待できる。
波形はスパイラル状に設けても良いし、あるいはリング状すなわち管の中心軸に対して回転対称に設けても良い。
【0057】
特に、冷却媒体として水を用いる場合、水の比熱は大きいため、水量はそれほど大きくする必要はなくなる。ただし、メイン配管から、複数の三重管方式の冷却管ユニット7に並列して冷却水を供給する際、各冷却管ユニット7に均一に冷却水が流れるよう、設計する必要があり、ヘッダーの設置が有効である。
そのためには、例えば、内管3の内径を小さくすると同時に、冷却水を供給するメイン配管の内径を大きくし、メイン配管内の水の流れが律速にならないように設計する。なお、内管3内の冷却水の流速が0.5m/s以上となるようにするのが望ましい。
【0058】
一方、既に述べたように、中管2と外管1の表面積は、冷却能力に影響するため、適度に大きくする必要がある。その場合、特に冷却水として水を用いる場合においては、管板に取り付ける部分はスエージング加工により径を細めることができる。あるいは、レジューサーを用いて径の小さな管を溶接で繋ぐこともできる。そのようにすることで、例えば、三重管方式の冷却管ユニット7を、直線上に管板に取り付ける際、管板の最大幅を小さく設計できるようになる。
【0059】
既に述べたように、特に冷却媒体として水を用いる場合で、外管1と中管2の間の環状隙間部を真空排気した状態でも、高温域の冷却速度が速すぎるときは、外管1と中管2の間の環状隙間部に1層あるいは2層以上の熱遮蔽材を挿入することにより、高温域の冷却能をさらに低下させることができる。特に、高温域では輻射伝熱の寄与率が大きく、熱遮蔽材の挿入はこの輻射伝熱を低下させる効果が大きい。熱遮蔽材としては、例えばステンレス鋼の薄板を用いることもできる。しかし、対流伝熱も抑制し高温域の冷却能だけでなく低温域の冷却能も抑制するため、より好ましい材料として、熱遮蔽材の面方向のガスの流通が可能で、したがって低温域の対流伝熱の低下の度合いが低いパンチングメタルやメッシュ状の材料を1層あるいは必要に応じて2層以上重ねて用いるのが望ましい。
【0060】
次に本発明のSC法の冷却装置についてより詳細に説明する。図10に本発明のSC装置の概略構成を示す。
本発明のSC装置50は、希土類磁石合金を溶解するルツボ22と、溶湯を水冷ロール20に注ぐタンディシュ23と、溶湯を急冷凝固させる水冷ロール20と、凝固したSC材を破砕する破砕機21及び本発明の冷却装置28を設置したSC材収納容器17を主要設備として構成されている。
図7に示した第5の実施形態や図9に示した第6の実施形態に示すような本発明の冷却装置をSC材収納容器の冷却装置として用いる場合、SC材が水冷ロールから離脱しSC材収納容器17に落下する中間に、破砕機21を設ける必要がある。破砕機としては、例えば、二つの破砕ローラーが互いに噛み合って、内側に回転する方式のいわゆる2ローター式の破砕機を用いることができる。破砕機21を通過後のSC材の大きさは最大50mm以下、さらに望ましくは30mm以下にできるような機種を選定するのが望ましい。
【0061】
量産規模のSC装置においては、SC材収納容器17も大きくなり、収納容器にSC材を均等に受けるため、鋳造中にSC材収納容器17を往復運動させるか、SC材収納容器17の上部に、SC材を分散させるための何らかの手段を講じる必要がある。前者の方法を用いる場合においても、本発明の冷却装置では水量は少ないため、ケーブルベア30等の既存の道具を用いて、移動する装置にも問題なく水を供給することが可能となる。なお、同時に、真空排気、ヘリウム導入のための配管も必要となるが、それも大径の配管は必要とせず、ケーブルベア29を用いて供給可能である。
【0062】
なお、空気および水を噴霧した空気を冷却媒体として用いる場合、冷却媒体として水を用いる場合より、流量を十分大きくする必要がある。その場合は、図9の第6の実施形態に示すような広い面積の管板を用いて、冷却管がSC材収納容器の片側から水平方向に差し込むような構造を選択するのが望ましい。あるいは、斜め上方から、差し込むこともできる。
この場合においても冷却媒体として空気のみを用いる場合より、流量は少なくでき、メイン配管の直径も小さくできる。
しかしながら、管板も厚くする必要があり、全体として重量も増すため、冷却装置を組み込んだSC材収納容器は固定とし、破砕機21とSC材収納容器17との間に、SC材を分散落下させるためのフラッパーあるいはその他の装置を組み合わせて用いるのが望ましい。
【0063】
本発明の冷却装置においては、高温に曝され、加熱冷却の厳しい環境に曝されるのは外管1のみである。特に、冷却媒体が流れる中管2は直接、高温のSC材に接することなく、外管1で覆われている。そして外管1と中管2の間の環状の隙間部は、真空かヘリウムに置換されて使用されるため、万が一管板に取り付けた溶接部分も含めて中管2が破損し、水あるいは空気が漏れても、外管1で阻止され、SC材収納容器内に漏れることはない。
【0064】
外管1と中管2の間の環状隙間部は、溶解バッチ毎に真空引きする。そのため、万が一中管2が損傷して、冷却媒体が外管1と中管2の間の環状隙間部に漏れた場合、真空引きの際、真空度が上がらなくなり、確実にトラブルを察知することが可能となる。
【0065】
希土類磁石合金は活性な希土類を多量に含有しており、特に高温状態では、空気や水と反応しやすく、製品品質が劣化するだけでなく、安全上も問題となる。特に、水と反応し水素ガスを発生するため、それを知らずにチャンバーを開けると爆発を起こす危険性すらある。
本発明の冷却装置は、冷却媒体として水や空気を用いる場合においても、既に説明したように、これらの冷却媒体と直接触れることがないよう、十分安全対策を考慮した設計となっており、極めて信頼性の高いものである。
【0066】
冷却装置の冷却能力は、被冷却材の重量に対し冷却管特に中管2の総伝熱面積を大きくし、三重方式の冷却管ユニット7同士の間隔を狭くすることにより、大きくできる。これらの値は、SC材をどの程度の時間で冷却する必要性があるかにより異なる。
例えば、高温域の冷却速度を遅くした上で、2時間以下で、チャンバー外に取りだし可能な150℃以下まで下げるためには伝熱面積はSC材100kg当たり0.6m以上さらに望ましくは0.8m以上とする。そして、冷却管ユニット7同士の間隔(隣接する外管1の表面同士の間隔)は100mm以下とするのが望ましい。さらに望ましくは70mm以下である。一方、伝熱面積が大きすぎて、冷却管ユニット7同士の間隔が小さすぎると、高温域の冷却速度を小さくするのが難しくなる。これらの設計値は、水冷ロールから落下するSC材を細かくする破砕機の性能によっても異なるため、実際にこれらの最適な数値は実験で確認して決めるのが望ましい。
【0067】
外管1と中管2の間の環状隙間部は、鋳造開始前に、真空引きを行う。鋳造終了後、適当な時間をおいて、ガスを導入し、外管1と中管2の熱伝達を促進する。ガスの種類としては、既に述べたように、熱伝導が良好で、かつ不活性ガスであるヘリウムが最も望ましいガスとして選択される。ヘリウムは高価であるが、本発明の冷却器において、途中の配管も含めて、外管1と中管2の間の環状隙間部の占める体積は極めて小さく、ガスの使用量は極めて少なく、経済性の点でも問題にならない。冷却速度を増すため、必要に応じて、導入するヘリウムの圧力を例えば1気圧以上に高めることもできる。
【0068】
なお、ヘリウムを導入するタイミングは、実際に実験を行って決めるのが望ましい。希土類磁石用合金を製造するためのSC装置において、一般にロール周速度が大きいほど、SC材の板厚が厚いほど、ロールから離脱落下するときのSC材の温度は高くなる。また、SC材中に含まれる希土類の含有量が少ないほど、この温度は高くなる傾向にある。SC材のロールから離脱落下するときの温度が高いほど、Rリッチ相が液相状態に保たれている時間が長くなり、組織変化も起こりやすくなる。したがって、これらの条件によっても、ヘリウムを導入する最適なタイミングは異なる。
また、磁石の製造装置や製造条件によっても、磁石合金に要求される最適な組織は異なり、これらも含めて、ヘリウムを導入するタイミングは、総合的に検討して決める必要がある。
【0069】
なお、特に高保磁力型の磁石用の原料合金を製造する場合において、Rリッチ相の間隔の狭い、急冷型の組織の合金を必要とする場合は、鋳造開始前から、外管1と中管2の間の環状隙間部にヘリウムを導入し、最初から冷却速度を大きくすることもできる。
本発明の冷却装置においては、冷却媒体が通る中管2は外管1で覆われており、直接被冷却材と接せず、最初からヘリウムを導入した場合においても、冷却速度は緩和されている。そのため、水冷された冷却装置を用いて冷却する場合に比べて、高温域の冷却速度は遅く、細かな二次のラメラー状のRリッチ相は消滅する傾向が見られ、Rリッチ相の間隔が適度に大きくなった組織が得られる。
【0070】
以下に、実施例を用いて、さらに詳細に本発明の冷却装置およびSC装置、SC法について説明する。
【0070】
【実施例】
(実施例1)
図7に示すような三重管方式の冷却管5個を1列に並べさらに3列組み合わせた冷却装置28を作製した。用いた外管1、中管2、内管3の外径と肉厚ならびに外管1を取り付けた管板の下面からの各管の長さは、下記に示す通りとした。
外管1:φ48.6mm×t2.8mm×L600mm
中管2:φ34mm×t2.0mm×L580mm
内管3:φ9.5mm×1.5t×L560mm
外管1は耐熱性の優れたSUH310、中管2と内管3は耐食性に優れたSUS316Lのシームレス管を用いて作製した。外管1、中管2、内管3を固定する管板および側板は全てSUS304を用いて、接合部分は全てTIG溶接で接合した。なお、外管1と中管2の管板に取り付ける部分は、スエージング加工により、径を絞った。そのため、管板の幅は46mmとすることができた。なお、外管1と中管2の間の環状隙間部には、図5に示すような60メッシュ、線径0.19mm、空間率が約30%のステンレス製金網を2層になるように挿入した。また、管板の部分は1.0mm厚さのSUS304板を用いて作製したカバー16(図6参照)で覆い、管板部分に熱負荷がかかるのを防ぐと同時に、SC材が管板近傍を通過する時の冷却を防止した。
【0072】
列間の間隔は冷却管の中心軸間の距離で90mmとなるように装着した。SC材収納容器の形状は、内寸法で、幅320mm×長さ800mm×高さ620mmであり、冷却管の下部に20mmの隙間が生じるように設置した。
このような冷却装置28をセットした収納容器を、図10に示すように100kg真空高周波誘導溶解炉を備えたSC装置50に設置した。
溶解重量を80kgとし、配合組成でネオジウムが31.5wt%、ボロンが1.0wt%となるように金属ネオジウム、フェロボロンを配合し、通常の溶解方法にて、アルゴン0.3気圧の雰囲気中で溶解後、鋳造幅:300mm、水冷ロール周速度:1.0m/sで鋳造した。
【0073】
なお、鋳造開始前から冷却水をヘッダーパイプ9から導入しヘッダーパイプ10へと流した。流量は30L/分とした。内管3内の流速は約1.0m/sである。また、鋳造開始前から外管1と中管2の間の環状隙間部を真空引きしておき、鋳造が終了し10分間経過後に、ヘリウムを1気圧になるように導入した。導入後、ガスの温度上昇により、一時的に圧力は上昇し、その後、冷却とともに圧力が低下する。圧力が1気圧を下回る時に、適宜ヘリウムを追加導入し、1気圧を保つようにした。
【0074】
なお、SC材収納容器には測定端子の位置が4個の冷却管ユニットで囲まれる中央部で底から約100mmの位置となるように予め熱電対を設置しておいた。
図11曲線aに鋳造開始後2時間の間のSC材の温度変化を示す。高温域で冷却速度が遅くなっており、ヘリウム導入後冷却が速くなっている様子が分かる。
鋳造終了後、2時間後に、チャンバーを開けて、SC材の中にシース熱電対の測定端子を差し込み温度を測定した。その結果、最高温度を示す部分でも、120℃以下と十分低く、酸化による変色は全く起こらなかった。
【0075】
SC材の平均厚さは0.31mmであった。SC材の面に直角方向の断面を観察できるように樹脂に埋め込み、研磨し、走査電子顕微鏡を用いて、反射電子線像にて組織観察を行った。そのようにして得た組織写真を用いて、断面10カ所、SC材の厚さ方向ほぼ中央部について、線分法でRリッチ相の間隔を測定した。その結果、Rリッチ相の間隔は5.2μmであり、二次のラメラー状のRリッチ相がほとんど消えた、高温域の冷却速度が十分遅い場合の組織を示しており、高磁化型の磁石用原料として最適な組織であると判断された。
【0076】
なお、SC材収納容器から冷却装置を上方に引き上げ外した状態では、SC材は剥き出し状態になっており、収納容器を反転させることにより、極めて作業性よく、ドラム缶に移し替えることができた。
【0077】
(実施例2)
実施例1と同じ冷却装置、SC装置を用いて、溶解重量80kgとして、配合組成で、ネオジウムが27.0wt%、ディスプロシウムが5wt%、ボロンが1.0wt%となるように金属ネオジウム、フェロボロンを配合し、溶解鋳造した。ただし、外管1と中管2の間の環状隙間部にはヘリウムを鋳造前から導入しておいた。その他の点については実施例1と全く同様にした。
【0078】
図11曲線bに鋳造開始後2時間の間のSC材の温度変化を示す。鋳造開始前から冷却促進用のヘリウムを導入しているため、実施例1と比べて高温域の冷却速度が速いことが分かる。
鋳造終了後、2時間後チャンバーを開けて、SC材の中にシース熱電対の測定端子を差し込み温度を測定した。その結果、最高温度を示す部分でも、110℃以下と十分低く、酸化による変色は全く起こらなかった。
SC材の平均厚さは0.29mmであった。実施例1と同様にしてSC材の断面の組織観察を行った。その結果、Rリッチ相の間隔は3.5μmであり、高保磁力型の磁石の製造原料として最適と考えられる合金組織を示していた。
【0079】
(比較例1)
実施例1と同じSC装置を用いて、実施例1と同じ配合組成の合金を溶解量も同じ条件にして溶解鋳造した。但し、SC材の収納容器には冷却装置を設置しなかった。
図11曲線cに鋳造開始後2時間の間のSC材の温度変化を示す。実施例1や実施例2と比べて冷却速度が極めて遅いことが分かる。
鋳造終了後、24時間経過後、チャンバーを開けて、SC材の中にシース熱電対の測定端子を差し込み温度を測定した。その結果、250℃以上の温度を示す部分が残っており、収納容器からドラム缶に移す際に、SC材が酸化し、かなりの部分が変色してしまった。
【0080】
SC材の平均厚さは0.30mmであった。実施例1と同様にしてSC材の断面の組織観察を行った。その結果、Rリッチ相の間隔は7.3μmであり、実施例1よりさらに広いRリッチ相の間隔を示していた。組織的には、高磁化型の磁石用原料として利用できる組織であると考えられた。しかしながら、酸化を防ぐには24時間以上チャンバー内に保持する必要があり、生産性が悪く、量産設備として採用はできないと判断された。
【0081】
(比較例2)
実施例1と同じSC材収納容器に、幅50×長さ780×高さ600mmの矩形の水冷ボックスを3列50mm間隔でセットした冷却装置を準備した。
そして、実施例1と同じSC装置を用いて、実施例1と同じ配合組成の合金を溶解鋳造した。溶解重量も実施例1と同じく80kgとした。
図11曲線dに鋳造開始後2時間の間のSC材の温度変化を示す。実施例1や実施例2と比べて冷却速度がかなり速いことが分かる。 鋳造終了後、2時間後にチャンバーを開けて、SC材の中にシース熱電対の測定端子を差し込み温度を測定した。その結果、最高温度を示す部分でも、90℃以下と十分低く、酸化による変色は全く起こらなかった。
SC材の平均厚さは0.31mmであった。実施例1と同様にしてSC材の断面の組織観察を行った。その結果、Rリッチ相の間隔は3μm以上の部分も認められたが、3μm未満の部分も多く認められ、概してRリッチ相の間隔は狭く、かつバラツキも大きく、希土類磁石用合金の原料としては適さない組織を示していた。
【0082】
(実施例3)
図9に示すような三重管方式の冷却管を管板に7本/列×3列=計21本、ピッチ90mmで配列した冷却装置29を作製した。用いた外管1、中管2、内管3の外径と肉厚ならびに外管用管板4の端面からの各管の長さは、下記に示す通りとした。
外管1:φ48.6mm×t2.8mm×L700mm
中管2:φ38.1mm×t2.0mm×L680mm
内管3:φ25.4mm×1.6t×L660mm
外管1、中管2と内管3に用いた材料、管板に用いた材料は実施例1と同じとした。
【0083】
上記冷却装置を三重管方式の冷却管ユニットが水平方向になるように、内寸法で、幅320mm×長さ720mm×高さ800mmのSC材収納容器に取り付けた。SC材収納容器と破砕機の間には、SC材を分散させるためのフラッパーを取り付けた。
このような冷却装置を装着した収納容器を、100kg誘導溶解炉を備えたSC装置に設置した。
配合組成で、実施例1と同じ配合組成のNdFeB合金を、通常の溶解方法にて、実施例1と同じ条件で鋳造した。溶解重量は実施例1と同様80kgとした。 なお、鋳造開始前から空気を内管3から、内管3と中管2の間の環状空洞部の経路で流した。風量は2Nm/分とした。内管3内の流速は約4.1m/sである。また、鋳造開始前から外管1と中管2の間の環状隙間部を真空引きしておき、鋳造が終了し10分間経過後に、ヘリウムを1気圧になるように導入した。
その後、さらに冷却用空気中に水を空気体積当たり約2g/L噴霧した。
【0084】
鋳造終了後、2時間後に、チャンバーを開けて、SC材の中にシース熱電対の測定端子を差し込み温度を測定した。その結果、最高温度を示す部分でも、150℃以下と十分低く、酸化による変色は全く起こらなかった。
SC材の平均厚さは0.31mmであった。SC材の面に直角方向の断面を観察できるように樹脂に埋め込み、研磨し、走査電子顕微鏡を用いて、反射電子線像にて組織観察を行った。そのようにして得た組織写真を用いて、断面10カ所、SC材の厚さ方向ほぼ中央部について、線分法でRリッチ相の間隔を測定した。その結果、Rリッチ相の間隔は5.6μmであり、二次のRリッチ相がほとんど消えた、十分高温域の冷却速度が遅い場合の組織を示していた。
【0085】
(実施例4)
実施例3と同じ冷却装置、SC装置を用いて、配合組成で、実施例2と同じ配合組成となるようにして、(NdDy)FeB合金を溶解鋳造した。ただし、中管2と外管1の間の環状隙間部にはヘリウムを鋳造前から導入しておき、冷却用の空気は最初から水を噴霧し送り込んだ。その他の点については実施例3と全く同様にした。
【0086】
鋳造終了後、2時間後チャンバーを開けて、SC材の中にシース熱電対の測定端子を差し込み温度を測定した。その結果、最高温度を示す部分でも、135℃以下と十分低く、酸化による変色は全く起こらなかった。
SC材の平均厚さは0.31mmであった。実施例1と同様にしてSC材の断面の組織観察を行った。その結果、Rリッチ相の間隔は3.7μmであり、高保磁力型の磁石の製造原料として最適と考えられる合金組織を示していた。
【0087】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を有する。
冷却装置そのものに故障の原因となる駆動部を有せず、高温域の冷却速度を遅く、低温域の冷却速度を速くすることが可能である。特にR14B系希土類磁石の原料合金の製法のSC装置において、水冷ロールから離脱したSC材を冷却する装置として組み込んで用いた場合、磁石の用途に応じた最適な組織を有した合金の製造が可能な装置とすることができる。かつ、冷却時間も短くできるため、生産性を高めることができる。
【0088】
さらに、同じ装置を用いて、ヘリウムの導入のタイミングを変えるだけで、SC材の高温域の冷却速度を変え、SC材の組織を制御することが可能である。そのため、高磁化型から高保磁力型の磁石まで、全ての種類の磁石の原料として最適な組織の合金を製造することが可能である。
【0089】
冷却媒体として、冷却能が大きな水や、経済的な空気を用いた場合においても、もしこれらの冷却媒体が流れる中管2に割れ等の欠陥が生じても、中管2は外管1で覆われているため活性なSC材とこれらの冷却媒体が接触する危険性は極めて少なく、安全な装置とすることが可能である。
【0090】
溶解鋳造量が増えても、マトリックス状に冷却管ユニットを並べて、総伝熱面積を増やすだけで、同じ冷却条件でSC材の組織制御が可能であり、小型装置から大型装置まで対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる冷却装置の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係わる冷却装置の断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係わる冷却装置の一部破断外観図である
【図4】本発明の第4の実施形態に係わる冷却装置の一部破断外観図である
【図5】図4に示す冷却装置の線A−A’に沿った断面図である。
【図6】図5に示す断面図の管板近傍の拡大図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係わる冷却装置の外観斜視図である。
【図8】図7の冷却装置をストリップキャスト材収納容器に設置した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係わる冷却装置の外観斜視図である。
【図10】本発明のストリップキャスティング装置の概略構成を説明する図である。
【図11】実施例1、実施例2、比較例1および比較例2におけるSC材の温度の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
1 外管
2 中管
3 内管
4 外管用管板
5 中管用管板
6 内管用管板
7 冷却管ユニット
8、8a、8b ヘッダーパイプ
9、9a、9b ヘッダーパイプ
10、10a、10b ヘッダーパイプ
11a、11b、11c 管板側板
12 外管と中管の間の環状隙間部
13 経路 (13a、13b 冷却媒体経路)
14 熱遮蔽材
15a、15b フレーム
16 カバー
17 SC材収納容器
18 SC材落下ガイド
19 SC材
20 水冷ロール
21 破砕機
22 ルツボ
23 タンディッシュ
24、25、26、27、28、29 冷却装置
30 ケーブルベア
38、39、40 フランジ
41、42、43 ヘッダー
50 ストリップキャスティング装置

Claims (10)

  1. 大径の外管と中間径の中管と小径の内管の3重管方式の冷却管ユニットで構成された冷却装置であって、それぞれの冷却管ユニットの前記外管の一方の先端は閉じており、かつ中管の一方の先端も外管の内側で閉じており、外管と中管の間の環状隙間部は真空引きおよびガス置換が可能となるように構成し、内管の一方の先端は中管内で開放されており、内管の内部とそれにつながる内管と中管の間の環状空洞部で構成される経路に冷却媒体を流通させることにより、外管の外側の被冷却材を冷却するように構成したことを特徴とする冷却装置。
  2. 外管と中管の間の環状隙間部に1層あるいは2層以上の熱遮蔽材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
  3. 複数の3重管方式の冷却管ユニットを一列状あるいはマトリックス状に並べて配置したことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
  4. 水冷ロールから離脱後の鋳造薄片を破砕するための手段と鋳造薄片の収納容器を具備し、該収納容器に請求項1に記載の3重管方式の冷却ユニットで構成された冷却装置を設けたことを特徴とするストリップキャスティング装置。
  5. ストリップキャスティング法において水冷ロールから離脱後の高温の鋳造薄片を収納容器に収容して冷却するにあたり、該収納容器に具備された大径の外管と中間径の中管と小径の内管の3重管方式の冷却管ユニットで構成された冷却装置を用いて冷却する方法であって、それぞれの冷却管ユニットの外管の一方の先端は閉じており、中管の一方の先端も外管の内側で閉じており、内管の一方の先端は中管内で開放されており、内管の内部とそれにつながる内管と中管の間の環状空洞部で構成される経路に冷却媒体を流通させ、合わせて外管と中管の間の環状隙間部を真空引きまたはガス置換することにより、冷却能を変化させてかつ冷却能を制御しながら冷却することを特徴とする鋳造薄片の冷却方法。
  6. 鋳造開始前から内管の内部とそれにつながる内管と中管の間の環状空洞部で構成される経路に冷却媒体を流し、合わせて外管と中管の間の環状隙間部は真空引きし、もしくは真空引きした後希薄なガスを導入して冷却能を低めておき、鋳造終了後適宜時間が経過した後、外管と中管の間の環状隙間部に冷却促進用のガスを導入することにより冷却能を高めて冷却することを特徴とする請求項5に記載の鋳造薄片の冷却方法。
  7. 鋳造開始前から内管の内部とそれにつながる内管と中管の間の環状空洞部で構成される経路に冷却媒体を流し、合わせて外管と中管の間の環状隙間部は真空引きした後、冷却促進用のガスを導入して冷却能を高めておき、鋳造開始することを特徴とする請求項5に記載の鋳造薄片の冷却方法。
  8. 前記冷却媒体として水を用い、外管と中管の環状隙間部に導入する冷却促進用ガスとしてヘリウムを用いることを特徴とする請求項5に記載の鋳造薄片の冷却方法。
  9. 前記冷却媒体として空気あるいは水を噴霧した空気を用い、外管と中管の環状隙間部に導入する冷却促進用のガスとしてヘリウムを用いることを特徴とする請求項5に記載の鋳造薄片の冷却方法。
  10. 前記鋳造薄片がNdFeB系磁石合金であることを特徴とする、請求項5に記載の鋳造薄片の冷却方法。
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