JP2005021772A - 圧電アクチュエータ及び印刷ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】低電圧で駆動でき、小型化が可能な圧電アクチュエータを提供する。
【解決手段】圧電セラミック部材4と、該圧電セラミック部材4の対向する端面に設けられた一対の電極5、6と、からなる圧電変位素子7を、一対の支持基板2a、2bが挟持してなり、前記圧電変位素子7がd33振動を行うことを特徴とし、特に前記一対の支持基板2a、2bが、複数の圧電変位素子7を挟持していることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】圧電セラミック部材4と、該圧電セラミック部材4の対向する端面に設けられた一対の電極5、6と、からなる圧電変位素子7を、一対の支持基板2a、2bが挟持してなり、前記圧電変位素子7がd33振動を行うことを特徴とし、特に前記一対の支持基板2a、2bが、複数の圧電変位素子7を挟持していることが好ましい。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電変位素子及び圧電アクチュエータに関し、より詳しくは例えば加速度センサ、ノッキングセンサ、AEセンサ等の圧電センサ、燃料噴射用インクジェクター、インクジェットプリンタ用印刷ヘッド、圧電共振子、発振器、超音波モーター、超音波振動子、フィルタ等に適し、特に広がり振動、伸び振動、厚み立て振動を利用した印刷ヘッドとして好適に用いられる圧電体圧電アクチュエータ及び印刷ヘッドに関する。
【0002】
【従来技術】
従来から、圧電セラミックスを利用した製品としては、例えば圧電アクチュエータ、フィルタ、圧電共振子(発信子を含む)、超音波振動子、超音波モーター、圧電センサ等がある。
【0003】
これらの中で、圧電アクチュエータは、電気信号に対する応答速度が10−6秒台と非常に高速であるため、半導体製造装置のXYステージの位置決め用圧電アクチュエータやインクジェットプリンタの印刷ヘッドに用いられる圧電アクチュエータ等に応用されている。
【0004】
インクジェット方式を利用した印刷ヘッドは、例えば図3(a)に示したように、圧電アクチュエータ51が、流路部材53の上に設けられた構造を有する(例えば、特許文献1参照)。流路部材53は、複数のインク加圧室53aが隔壁53bによって仕切られ、インク加圧室53aは圧電アクチュエータ51に当接するように並設されている。
【0005】
圧電アクチュエータ51は、共通電極55を表面に具備する振動板52上に圧電セラミック層54が設けられ、圧電セラミック層54の上に個別電極56を設けている。個別電極56は、図3(b)に示したように、圧電セラミック層54の表面に複数配列されることにより、複数の圧電変位素子57が形成されたものである。この圧電アクチュエータ51は、数百個もの個別電極56が形成されており、インク加圧室53aの直上に個別電極56がそれぞれ位置するようにして流路部材53上に配置している。
【0006】
このような印刷ヘッドに用いられる圧電アクチュエータは、d31モードの変位を利用しており、振動板52の一部が流路部材53によって固定されているため、個別電極56側の圧電セラミック層54が伸縮すると、圧電アクチュエータ51は流路部材53の方に凸になるように変形し、インク加圧室53aの容積を縮小するため、その時の圧力によってインクをインク吐出口58から吐出することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−34321号公報図1
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載の圧電アクチュエータのように、径方向振動モードd31を利用した圧電変位素子は変位量が小さいことから、大きな変位量を得るためには、印加電圧を大きくするか、又は積層数を大きくしなければならないという問題があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、低電圧で駆動でき、小型化が可能な圧電アクチュエータを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、d33モードの圧電変位素子を用いることにより、大きな変位量が得られ、小型化の可能な圧電アクチュエータを実現したものである。また、d33モードを圧電アクチュエータに応用するにあたり、本発明においては、駆動方向に対して加圧保持した状態で駆動させすることによって、耐久性を保証できることを見出した。
【0011】
即ち、本発明の圧電アクチュエータは、圧電セラミック部材と、該圧電セラミック部材の対向する端面に設けられた一対の電極と、からなる圧電変位素子を、一対の支持基板が挟持してなり、前記圧電変位素子がd33振動を行うことを特徴とするものである。
【0012】
特に、前記一対の支持基板が、複数の圧電変位素子を挟持していることが好ましい。これにより、特定の領域に液滴を吐出するのに好適であり、特に印刷ヘッドとして適している。
【0013】
また、前記複数の圧電変位素子が、特定の間隔で配列していることが好ましい。これにより、液滴を均一に吐出することができる。
【0014】
さらに、前記複数の圧電変位素子間に絶縁体が設けられていることが好ましい。これにより、隣接する圧電変位素子への振動の影響を低減することが容易になる。
【0015】
また、前記圧電変位素子の厚みが10〜100μmであることが好ましい。これにより、大きな変位量を維持したまま、十分な機械的強度を備えることができる。
【0016】
さらに、前記圧電セラミック部材がPbを含むペロブスカイト型化合物であることが好ましい。これにより、変位量をより高めることができる。
【0017】
また、本発明の印刷ヘッドは、上記の圧電アクチュエータを、液体導入口と、液体加圧室と、液体吐出口とを具備する流路部材に接合してなることを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電アクチュエータを印刷ヘッドとして応用した場合について図を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の圧電アクチュエータを用いた印刷ヘッドを示すもので、(a)は断面図、(b)は平面図である。図1(a)に示したように、この印刷ヘッドは、流路部材3の上に、圧電アクチュエータ1が設けられた構造を有する。
【0020】
本発明の圧電アクチュエータ1は、例えば、図1(a)に示したように、圧電セラミック部材4の対向する端面に共通電極5と個別電極6とからなる一対の電極が形成され、さらに、下部支持基板2aと上部支持基板2bとからなる一対の支持基板2で圧電セラミック部材4を挟持する。
【0021】
そして、圧電セラミック部材4を、共通電極5と表面個別電極6とで挟持してなる圧電変位素子7が、下部支持基板2aと上部支持基板2bとに挟まれるように、設けられている。実際には、圧電変位素子7と下部支持基板2aと上部支持基板2bとを含む振動領域7aが変位する部位として示されている。
【0022】
流路部材3には複数の液体加圧室3aが並設され、液体加圧室3aを仕切る壁として隔壁3bが形成されている。液体加圧室3aの開口部の直上に表面個別電極6が配置するように、圧電アクチュエータ1と流路部材3とが接着されている。
【0023】
共通電極5と表面個別電極6との間に駆動電圧を印加すると、共通電極5と表面個別電極6とで挟持された圧電セラミック部材4が変形し、圧電変位素子7が変位する。この変位に伴って、圧電変位素子7と一体化されている支持基板2も圧電変位素子7と同一方向に変位し、変位領域7aが変位することとなり、その結果、液体加圧室3aの容積を変化させるため、その時に発生する圧力で液体加圧室3aの液体が液体吐出口8から吐出する。
【0024】
このような複数の圧電変位素子7が、振動板2の表面に設けられてなる圧電アクチュエータ1は、各圧電変位素子7を独立して制御し、微細な領域に振動を起こすため、例えば微量のインクを特定の微細領域に吐出する印刷ヘッドに好適な構造を有している。
【0025】
そして、圧電アクチュエータ1は、例えば図1(b)に示したように、個別電極6が等間隔で2次元的に配列され、それぞれ外部の電子制御回路に独立して接続され、それぞれの電極間に電圧が印加されると、電圧が印加された内部電極5と個別電極6に挟持された部位の圧電セラミック部材4が変位することができる。このような構造を有することにより、特定の領域に所望の液滴を吐出することができる。従って、印刷ヘッドに好適に用いることができ、インクジェットプリンタの高速化及び高精度化に大きな寄与ができる。
【0026】
本発明によれば、圧電アクチュエータ1の振動はd33モードであることが重要である。図1(a)のような構成を有する圧電アクチュエータを、d33モードで変位させることにより、大きな変位量を得ることができる。そして、変位量が大きいため、積層数を低減することができる、小型化に大きく寄与することができ、さらには一定の変位量であれば低電圧で駆動することが可能である。
【0027】
一対の支持基板2は、電圧印加前の状態で挟持される圧電セラミック部材を拘束するために用いられ、下部支持基板2aと上部支持基板2bとの間に複数の圧電セラミック部材4を挟むことで複数の圧電変位素子を設けることができる。
【0028】
圧電セラミック部材4は、特定の間隔で配列していることが好ましい。例えば、図1(b)に示したように、基板面内に個別電極6を等間隔で配列をすることができる。このような等間隔配置は、特定の面に液滴を均一に分布するように吐出することが容易になる。
【0029】
その場合に、圧電セラミック部材14間は、空間であっても良いが、絶縁体19が設けられていることが好ましい。これにより、隣接する圧電変位素子17の振動の影響つまり、クロストークの影響を小さくすることができる。
【0030】
また、現在の電子部品における技術動向として要求される高実装密度化、高集積化を達成するという観点から、図2に示したように、個別電極を等間隔での配列した複数の圧電変位素子を厚み方向に積層することもできる。
【0031】
具体的には、圧電セラミック部材を横に配列するのに加えて、縦に複数並べて変位量をさらに大きくすることができる。即ち、圧電セラミック部材14aの両端に共通電極15aと個別電極16aを形成した圧電変位素子17aを下部支持基板12aの上に所望の間隔を取って配列し、圧電変位素子下部支持基板12aの上に、上部支持基板12bを載置し、さらにその上に、圧電セラミック部材14bの両端に共通電極15bと個別電極16bを形成した圧電変位素子17bを載置し、さらにその上に最上部支持基板12cを載置する。
【0032】
このような圧電アクチュエータ11は、縦方向に長い変位領域17aを有し、変位領域17aの各々が流路部材13の液体加圧室13aの直上に配置し、駆動電圧を圧電アクチュエータ11に印加すると、液体加圧室13a内の液体を加圧して液体吐出口18から液滴が吐出する。
【0033】
絶縁体9としては、PZT以外に、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂を用いることができるが、これらの中でも、ガラセラが同時焼成で製造できる点で好ましく、製造工程簡略化の点で好ましく、また、クロストークの影響を防止できる点ではポリイミド樹脂が好ましい。
【0034】
圧電セラミック部材4は、配線パターンを予め表面に形成しておいた支持基板の上に半田を用いて接合することができる。即ち、これらの間に接合層が設けられていることが好ましい。両者をより強固に接着することができる。
【0035】
本発明によれば、圧電アクチュエータ1の厚みTは、支持基板12を含めた厚みを示すものであり、Tが100μm以下であることが好ましい。このように薄層にすることで、大きな変位を得ることができ、また低電圧で高効率の駆動を実現できる。従って、特に最近のカラープリンタの性能向上に伴う高速化及び高精度化の要求に対して、本発明においては、100μm以下の厚みにすることにより、その要求に対応することができ、圧電アクチュエータ及びそれを用いた印刷ヘッドの高性能化に寄与することができる。特に、圧電アクチュエータ1としての特性をさらに高めるため、80μm以下、更には65μm以下、より好適には50μm以下が良い。
【0036】
また、圧電アクチュエータ1の厚みTの下限値は、十分な機械的強度を有し、取扱い及び作動中の破壊を防止するため、10μm、特に15μm、更には20μmであることが好ましい。
【0037】
圧電セラミック部材4は、圧電性を示すセラミックスを用いることができ、具体的には、Bi層状化合物、タングステンブロンズ構造物質、Nb酸アルカリ化合物のペロブスカイト構造化合物、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛等を含有する物質を例示できる。
【0038】
これらのうち、特に、少なくともPbを含むペロブスカイト型化合物であるのが圧電特性が優れる点で好ましい。例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛等を含有する物質が好ましい。このような組成にすることで、高い圧電定数を有する圧電セラミック部材が得られる。
【0039】
本発明に用いる支持体2a、2bは、アルミナ、ベリリア、ジルコニア、マグネシア、ムライト、スピネル、ビスマス層状化合物、タングステンブロンズ構造化合物、Pb系ペロブスカイト構造化合物、ニオブ系ペロブスカイト構造化合物及びタンタル系ペロブスカイト構造化合物のうち少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0040】
d33モードの振動は、上下方向に膨張するように変位するため、圧電アクチュエータを駆動する際には、個別電極6側から一定の圧力を印加し、上部支持基板2bを変位させないように固定して拘束することにより、液体加圧室3aに対してさらに大きな変位をさせることが可能となる。また、圧電セラミック部材4が、積層体からなる場合には、変位によって界面剥離が発生するのを防止するために、上部支持基板2bを拘束することが好ましい。
【0041】
上部支持基板2bの拘束を行うためには、例えば、ばね圧を利用して保持固定したり、上部から一定圧力を印加させたりすることによって実施できる。
【0042】
内部電極5、個別電極6の材質としては、導電性を有するものならば何れでも良く、Au、Ag、Pd、Pt、Cu、Alやそれらの合金などが用いられる。
【0043】
また、電極5及、6の厚みとしては、導電性を有し且つ変位を妨げない程度である必要があり、0.5〜5μm、特に1〜3μm程度が好ましい。
【0044】
本発明の圧電アクチュエータをインクジェットプリンタの印刷ヘッドとして用いる場合、圧電歪定数として、例えばd33モードを利用することができる。インクジェットプリンタの印刷ヘッドとして十分な吐出能力を発揮し、高速で精細な印刷を実現するために、d33が500pm/V以上、特に550pm/V以上、更には600pm/V以上であることが好ましい。
【0045】
以上のような構成を圧電アクチュエータは、小型、低電圧駆動、高信頼性という特長を有し、インクジェットプリンタ用圧電アクチュエータ、超音波モーター、及び携帯電話用バイブレータ等の電子部品や、d33モードを利用した圧電アクチュエータ用途に好適に応用することができる。
【0046】
また、本発明の圧電アクチュエータは、インクジェットプリンタの印刷ヘッドに適応することで、小型、低消費電力、高速、高精度な印刷が可能な優れた特性を有する。
【0047】
【実施例】
実施例
まず、チタン酸ジルコン酸鉛を含有する圧電体粉末を成形してグリーンシートを作製した。また、内部電極ペーストを作製した。得られた内部電極ペーストを、グリーンシートの表面に厚さ4μmで印刷し、内部電極を形成し、積層成形体を作製した後、焼成した。
【0048】
得られた焼結体を所定の大きさに切断し、支持基板に半田接合を行った。この時、圧電セラミック部材の配列は、図1に示すものと同じ物を作製した。
【0049】
圧電セラミック部材の厚みは、10、50、85μm、であった。
【0050】
変位量の測定は、図1に示したように、溝3aと隔壁3bを有する流路部材3に、上記作製した圧電アクチュエータ1を接着し、圧電セラミック部材4を内部電極5と個別電極6で挟持する構造となるように圧電変位素子7を作製した。そして、レーザードップラー変位計により流路部材3側から溝3aを通して圧電アクチュエータにレーザービームを照射し、流路部材3の溝3aに当接している圧電アクチュエータの中心部及び周辺部7点を測定して変位を測定し、平均値を算出した。
【0051】
なお、上記変位量の測定に用いた流路部材3の液滴吐出口8は、レーザービームを照射し、変位量の測定が可能なように、液滴吐出口8の径が十分大きいものを用いた。
【0052】
その結果、d33がそれぞれ504pm/V、610pm/V、551pm/V、変位は駆動電圧10Vで、153μm、195μm、174μmと大きかった。
【0053】
比較例
チタン酸ジルコン酸鉛を含有する圧電体粉末を成形してグリーンシートを作製し、一部のグリーンシートには導体ペーストを表面に塗布し、これを内部電極とした。また、一部のグリーンシートにはビアホールを設け、内部に導体ペーストを充填した。内部電極を形成したグリーンシートとグリーンシートを積層し、これを積層して積層体を作製した。
【0054】
得られた積層体を焼成し、得られた焼結体の表面に、個別電極を形成した。そして、図3に示したような圧電アクチュエータを作製した。
【0055】
実施例と同様の評価を行った。その結果、比較例のd33がそれぞれ20pm/Vと小さく、変位も駆動電圧が20Vで25μmしかなかった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の圧電アクチュエータに使用する積層圧電体は、d33モードを利用しているため小型、低電圧駆動が可能となり、従来の課題であった長期変位駆動による信頼性を確保できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電アクチュエータの応用例としての印刷ヘッドの構造を示すもので、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明の圧電アクチュエータの他の構造を示す概略断面図である。
【図3】従来の圧電アクチュエータを用いた印刷ヘッドの構造を示すもので、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
1・・・圧電アクチュエータ
2・・・支持基板
2a・・・上部支持基板
2b・・・下部支持基板
3・・・流路部材
3a・・・液体加圧室
3b・・・隔壁
4・・・圧電セラミック部材
5・・・共通電極
6・・・個別電極
7・・・圧電変位素子
7a・・・変位領域
8・・・液滴吐出口
9・・・絶縁体
T・・・圧電アクチュエータの厚み
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電変位素子及び圧電アクチュエータに関し、より詳しくは例えば加速度センサ、ノッキングセンサ、AEセンサ等の圧電センサ、燃料噴射用インクジェクター、インクジェットプリンタ用印刷ヘッド、圧電共振子、発振器、超音波モーター、超音波振動子、フィルタ等に適し、特に広がり振動、伸び振動、厚み立て振動を利用した印刷ヘッドとして好適に用いられる圧電体圧電アクチュエータ及び印刷ヘッドに関する。
【0002】
【従来技術】
従来から、圧電セラミックスを利用した製品としては、例えば圧電アクチュエータ、フィルタ、圧電共振子(発信子を含む)、超音波振動子、超音波モーター、圧電センサ等がある。
【0003】
これらの中で、圧電アクチュエータは、電気信号に対する応答速度が10−6秒台と非常に高速であるため、半導体製造装置のXYステージの位置決め用圧電アクチュエータやインクジェットプリンタの印刷ヘッドに用いられる圧電アクチュエータ等に応用されている。
【0004】
インクジェット方式を利用した印刷ヘッドは、例えば図3(a)に示したように、圧電アクチュエータ51が、流路部材53の上に設けられた構造を有する(例えば、特許文献1参照)。流路部材53は、複数のインク加圧室53aが隔壁53bによって仕切られ、インク加圧室53aは圧電アクチュエータ51に当接するように並設されている。
【0005】
圧電アクチュエータ51は、共通電極55を表面に具備する振動板52上に圧電セラミック層54が設けられ、圧電セラミック層54の上に個別電極56を設けている。個別電極56は、図3(b)に示したように、圧電セラミック層54の表面に複数配列されることにより、複数の圧電変位素子57が形成されたものである。この圧電アクチュエータ51は、数百個もの個別電極56が形成されており、インク加圧室53aの直上に個別電極56がそれぞれ位置するようにして流路部材53上に配置している。
【0006】
このような印刷ヘッドに用いられる圧電アクチュエータは、d31モードの変位を利用しており、振動板52の一部が流路部材53によって固定されているため、個別電極56側の圧電セラミック層54が伸縮すると、圧電アクチュエータ51は流路部材53の方に凸になるように変形し、インク加圧室53aの容積を縮小するため、その時の圧力によってインクをインク吐出口58から吐出することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−34321号公報図1
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載の圧電アクチュエータのように、径方向振動モードd31を利用した圧電変位素子は変位量が小さいことから、大きな変位量を得るためには、印加電圧を大きくするか、又は積層数を大きくしなければならないという問題があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、低電圧で駆動でき、小型化が可能な圧電アクチュエータを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、d33モードの圧電変位素子を用いることにより、大きな変位量が得られ、小型化の可能な圧電アクチュエータを実現したものである。また、d33モードを圧電アクチュエータに応用するにあたり、本発明においては、駆動方向に対して加圧保持した状態で駆動させすることによって、耐久性を保証できることを見出した。
【0011】
即ち、本発明の圧電アクチュエータは、圧電セラミック部材と、該圧電セラミック部材の対向する端面に設けられた一対の電極と、からなる圧電変位素子を、一対の支持基板が挟持してなり、前記圧電変位素子がd33振動を行うことを特徴とするものである。
【0012】
特に、前記一対の支持基板が、複数の圧電変位素子を挟持していることが好ましい。これにより、特定の領域に液滴を吐出するのに好適であり、特に印刷ヘッドとして適している。
【0013】
また、前記複数の圧電変位素子が、特定の間隔で配列していることが好ましい。これにより、液滴を均一に吐出することができる。
【0014】
さらに、前記複数の圧電変位素子間に絶縁体が設けられていることが好ましい。これにより、隣接する圧電変位素子への振動の影響を低減することが容易になる。
【0015】
また、前記圧電変位素子の厚みが10〜100μmであることが好ましい。これにより、大きな変位量を維持したまま、十分な機械的強度を備えることができる。
【0016】
さらに、前記圧電セラミック部材がPbを含むペロブスカイト型化合物であることが好ましい。これにより、変位量をより高めることができる。
【0017】
また、本発明の印刷ヘッドは、上記の圧電アクチュエータを、液体導入口と、液体加圧室と、液体吐出口とを具備する流路部材に接合してなることを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電アクチュエータを印刷ヘッドとして応用した場合について図を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の圧電アクチュエータを用いた印刷ヘッドを示すもので、(a)は断面図、(b)は平面図である。図1(a)に示したように、この印刷ヘッドは、流路部材3の上に、圧電アクチュエータ1が設けられた構造を有する。
【0020】
本発明の圧電アクチュエータ1は、例えば、図1(a)に示したように、圧電セラミック部材4の対向する端面に共通電極5と個別電極6とからなる一対の電極が形成され、さらに、下部支持基板2aと上部支持基板2bとからなる一対の支持基板2で圧電セラミック部材4を挟持する。
【0021】
そして、圧電セラミック部材4を、共通電極5と表面個別電極6とで挟持してなる圧電変位素子7が、下部支持基板2aと上部支持基板2bとに挟まれるように、設けられている。実際には、圧電変位素子7と下部支持基板2aと上部支持基板2bとを含む振動領域7aが変位する部位として示されている。
【0022】
流路部材3には複数の液体加圧室3aが並設され、液体加圧室3aを仕切る壁として隔壁3bが形成されている。液体加圧室3aの開口部の直上に表面個別電極6が配置するように、圧電アクチュエータ1と流路部材3とが接着されている。
【0023】
共通電極5と表面個別電極6との間に駆動電圧を印加すると、共通電極5と表面個別電極6とで挟持された圧電セラミック部材4が変形し、圧電変位素子7が変位する。この変位に伴って、圧電変位素子7と一体化されている支持基板2も圧電変位素子7と同一方向に変位し、変位領域7aが変位することとなり、その結果、液体加圧室3aの容積を変化させるため、その時に発生する圧力で液体加圧室3aの液体が液体吐出口8から吐出する。
【0024】
このような複数の圧電変位素子7が、振動板2の表面に設けられてなる圧電アクチュエータ1は、各圧電変位素子7を独立して制御し、微細な領域に振動を起こすため、例えば微量のインクを特定の微細領域に吐出する印刷ヘッドに好適な構造を有している。
【0025】
そして、圧電アクチュエータ1は、例えば図1(b)に示したように、個別電極6が等間隔で2次元的に配列され、それぞれ外部の電子制御回路に独立して接続され、それぞれの電極間に電圧が印加されると、電圧が印加された内部電極5と個別電極6に挟持された部位の圧電セラミック部材4が変位することができる。このような構造を有することにより、特定の領域に所望の液滴を吐出することができる。従って、印刷ヘッドに好適に用いることができ、インクジェットプリンタの高速化及び高精度化に大きな寄与ができる。
【0026】
本発明によれば、圧電アクチュエータ1の振動はd33モードであることが重要である。図1(a)のような構成を有する圧電アクチュエータを、d33モードで変位させることにより、大きな変位量を得ることができる。そして、変位量が大きいため、積層数を低減することができる、小型化に大きく寄与することができ、さらには一定の変位量であれば低電圧で駆動することが可能である。
【0027】
一対の支持基板2は、電圧印加前の状態で挟持される圧電セラミック部材を拘束するために用いられ、下部支持基板2aと上部支持基板2bとの間に複数の圧電セラミック部材4を挟むことで複数の圧電変位素子を設けることができる。
【0028】
圧電セラミック部材4は、特定の間隔で配列していることが好ましい。例えば、図1(b)に示したように、基板面内に個別電極6を等間隔で配列をすることができる。このような等間隔配置は、特定の面に液滴を均一に分布するように吐出することが容易になる。
【0029】
その場合に、圧電セラミック部材14間は、空間であっても良いが、絶縁体19が設けられていることが好ましい。これにより、隣接する圧電変位素子17の振動の影響つまり、クロストークの影響を小さくすることができる。
【0030】
また、現在の電子部品における技術動向として要求される高実装密度化、高集積化を達成するという観点から、図2に示したように、個別電極を等間隔での配列した複数の圧電変位素子を厚み方向に積層することもできる。
【0031】
具体的には、圧電セラミック部材を横に配列するのに加えて、縦に複数並べて変位量をさらに大きくすることができる。即ち、圧電セラミック部材14aの両端に共通電極15aと個別電極16aを形成した圧電変位素子17aを下部支持基板12aの上に所望の間隔を取って配列し、圧電変位素子下部支持基板12aの上に、上部支持基板12bを載置し、さらにその上に、圧電セラミック部材14bの両端に共通電極15bと個別電極16bを形成した圧電変位素子17bを載置し、さらにその上に最上部支持基板12cを載置する。
【0032】
このような圧電アクチュエータ11は、縦方向に長い変位領域17aを有し、変位領域17aの各々が流路部材13の液体加圧室13aの直上に配置し、駆動電圧を圧電アクチュエータ11に印加すると、液体加圧室13a内の液体を加圧して液体吐出口18から液滴が吐出する。
【0033】
絶縁体9としては、PZT以外に、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂を用いることができるが、これらの中でも、ガラセラが同時焼成で製造できる点で好ましく、製造工程簡略化の点で好ましく、また、クロストークの影響を防止できる点ではポリイミド樹脂が好ましい。
【0034】
圧電セラミック部材4は、配線パターンを予め表面に形成しておいた支持基板の上に半田を用いて接合することができる。即ち、これらの間に接合層が設けられていることが好ましい。両者をより強固に接着することができる。
【0035】
本発明によれば、圧電アクチュエータ1の厚みTは、支持基板12を含めた厚みを示すものであり、Tが100μm以下であることが好ましい。このように薄層にすることで、大きな変位を得ることができ、また低電圧で高効率の駆動を実現できる。従って、特に最近のカラープリンタの性能向上に伴う高速化及び高精度化の要求に対して、本発明においては、100μm以下の厚みにすることにより、その要求に対応することができ、圧電アクチュエータ及びそれを用いた印刷ヘッドの高性能化に寄与することができる。特に、圧電アクチュエータ1としての特性をさらに高めるため、80μm以下、更には65μm以下、より好適には50μm以下が良い。
【0036】
また、圧電アクチュエータ1の厚みTの下限値は、十分な機械的強度を有し、取扱い及び作動中の破壊を防止するため、10μm、特に15μm、更には20μmであることが好ましい。
【0037】
圧電セラミック部材4は、圧電性を示すセラミックスを用いることができ、具体的には、Bi層状化合物、タングステンブロンズ構造物質、Nb酸アルカリ化合物のペロブスカイト構造化合物、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛等を含有する物質を例示できる。
【0038】
これらのうち、特に、少なくともPbを含むペロブスカイト型化合物であるのが圧電特性が優れる点で好ましい。例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛等を含有する物質が好ましい。このような組成にすることで、高い圧電定数を有する圧電セラミック部材が得られる。
【0039】
本発明に用いる支持体2a、2bは、アルミナ、ベリリア、ジルコニア、マグネシア、ムライト、スピネル、ビスマス層状化合物、タングステンブロンズ構造化合物、Pb系ペロブスカイト構造化合物、ニオブ系ペロブスカイト構造化合物及びタンタル系ペロブスカイト構造化合物のうち少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0040】
d33モードの振動は、上下方向に膨張するように変位するため、圧電アクチュエータを駆動する際には、個別電極6側から一定の圧力を印加し、上部支持基板2bを変位させないように固定して拘束することにより、液体加圧室3aに対してさらに大きな変位をさせることが可能となる。また、圧電セラミック部材4が、積層体からなる場合には、変位によって界面剥離が発生するのを防止するために、上部支持基板2bを拘束することが好ましい。
【0041】
上部支持基板2bの拘束を行うためには、例えば、ばね圧を利用して保持固定したり、上部から一定圧力を印加させたりすることによって実施できる。
【0042】
内部電極5、個別電極6の材質としては、導電性を有するものならば何れでも良く、Au、Ag、Pd、Pt、Cu、Alやそれらの合金などが用いられる。
【0043】
また、電極5及、6の厚みとしては、導電性を有し且つ変位を妨げない程度である必要があり、0.5〜5μm、特に1〜3μm程度が好ましい。
【0044】
本発明の圧電アクチュエータをインクジェットプリンタの印刷ヘッドとして用いる場合、圧電歪定数として、例えばd33モードを利用することができる。インクジェットプリンタの印刷ヘッドとして十分な吐出能力を発揮し、高速で精細な印刷を実現するために、d33が500pm/V以上、特に550pm/V以上、更には600pm/V以上であることが好ましい。
【0045】
以上のような構成を圧電アクチュエータは、小型、低電圧駆動、高信頼性という特長を有し、インクジェットプリンタ用圧電アクチュエータ、超音波モーター、及び携帯電話用バイブレータ等の電子部品や、d33モードを利用した圧電アクチュエータ用途に好適に応用することができる。
【0046】
また、本発明の圧電アクチュエータは、インクジェットプリンタの印刷ヘッドに適応することで、小型、低消費電力、高速、高精度な印刷が可能な優れた特性を有する。
【0047】
【実施例】
実施例
まず、チタン酸ジルコン酸鉛を含有する圧電体粉末を成形してグリーンシートを作製した。また、内部電極ペーストを作製した。得られた内部電極ペーストを、グリーンシートの表面に厚さ4μmで印刷し、内部電極を形成し、積層成形体を作製した後、焼成した。
【0048】
得られた焼結体を所定の大きさに切断し、支持基板に半田接合を行った。この時、圧電セラミック部材の配列は、図1に示すものと同じ物を作製した。
【0049】
圧電セラミック部材の厚みは、10、50、85μm、であった。
【0050】
変位量の測定は、図1に示したように、溝3aと隔壁3bを有する流路部材3に、上記作製した圧電アクチュエータ1を接着し、圧電セラミック部材4を内部電極5と個別電極6で挟持する構造となるように圧電変位素子7を作製した。そして、レーザードップラー変位計により流路部材3側から溝3aを通して圧電アクチュエータにレーザービームを照射し、流路部材3の溝3aに当接している圧電アクチュエータの中心部及び周辺部7点を測定して変位を測定し、平均値を算出した。
【0051】
なお、上記変位量の測定に用いた流路部材3の液滴吐出口8は、レーザービームを照射し、変位量の測定が可能なように、液滴吐出口8の径が十分大きいものを用いた。
【0052】
その結果、d33がそれぞれ504pm/V、610pm/V、551pm/V、変位は駆動電圧10Vで、153μm、195μm、174μmと大きかった。
【0053】
比較例
チタン酸ジルコン酸鉛を含有する圧電体粉末を成形してグリーンシートを作製し、一部のグリーンシートには導体ペーストを表面に塗布し、これを内部電極とした。また、一部のグリーンシートにはビアホールを設け、内部に導体ペーストを充填した。内部電極を形成したグリーンシートとグリーンシートを積層し、これを積層して積層体を作製した。
【0054】
得られた積層体を焼成し、得られた焼結体の表面に、個別電極を形成した。そして、図3に示したような圧電アクチュエータを作製した。
【0055】
実施例と同様の評価を行った。その結果、比較例のd33がそれぞれ20pm/Vと小さく、変位も駆動電圧が20Vで25μmしかなかった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の圧電アクチュエータに使用する積層圧電体は、d33モードを利用しているため小型、低電圧駆動が可能となり、従来の課題であった長期変位駆動による信頼性を確保できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電アクチュエータの応用例としての印刷ヘッドの構造を示すもので、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明の圧電アクチュエータの他の構造を示す概略断面図である。
【図3】従来の圧電アクチュエータを用いた印刷ヘッドの構造を示すもので、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
1・・・圧電アクチュエータ
2・・・支持基板
2a・・・上部支持基板
2b・・・下部支持基板
3・・・流路部材
3a・・・液体加圧室
3b・・・隔壁
4・・・圧電セラミック部材
5・・・共通電極
6・・・個別電極
7・・・圧電変位素子
7a・・・変位領域
8・・・液滴吐出口
9・・・絶縁体
T・・・圧電アクチュエータの厚み
Claims (7)
- 圧電セラミック部材と、該圧電セラミック部材の対向する端面に設けられた一対の電極と、からなる圧電変位素子を、一対の支持基板が挟持してなり、前記圧電変位素子がd33振動を行うことを特徴とする圧電アクチュエータ。
- 前記一対の支持基板が、複数の圧電変位素子を挟持していることを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
- 前記複数の圧電変位素子が、特定の間隔で配列していることを特徴とする請求項2記載の圧電アクチュエータ。
- 前記複数の圧電変位素子間に絶縁体が設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の圧電アクチュエータ。
- 前記圧電変位素子の厚みが10〜100μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 前記圧電セラミック部材がPbを含むペロブスカイト型化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の圧電アクチュエータを、液体導入口と、液体加圧室と、液体吐出口とを具備する流路部材に接合してなることを特徴とする印刷ヘッド。
Priority Applications (1)
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Publications (1)
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2003
- 2003-06-30 JP JP2003188608A patent/JP2005021772A/ja active Pending
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