JP2005020828A - 交流−交流直接変換形電力変換器の制御装置 - Google Patents

交流−交流直接変換形電力変換器の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】出力電流がゼロ付近であっても、フィードバック作用による転流失敗を発生させずに確実に転流を行うことができる、構成簡単かつ安価な直接変換器の制御装置を提供する。
【解決手段】マトリクスコンバータ等の直接変換器において、出力電流検出手段18と、検出された出力電流が出力電流指令と一致するようにコンバータの出力電圧を制御する出力電流調節手段14と、出力電流指令の正負を判定する正負判定手段17と、この正負判定結果及び出力電流調節手段14の出力を用いてコンバータの単方向スイッチに対する転流パターンを決定する転流パターン発生手段16と、を備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサ等の大形のエネルギーバッファを用いることなく、半導体スイッチング素子を用いて多相交流電圧を任意の大きさ及び周波数を有する多相交流電圧に直接変換する交流−交流直接変換形電力変換器(以下、単に直接変換器ともいう)の制御装置に関し、特に、電源の短絡や負荷端の開放を防止するための転流パターンの作成方法に特徴を有する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3は、この種の直接変換器として周知であるマトリクスコンバータの概念的な回路図である。なお、図3では、入力相のR,S,T相と出力相のU相との間に接続される交流スイッチ(双方向スイッチ)を示してあるが、入力相のR,S,T相と他の出力相であるV相、W相との間に接続される交流スイッチも同様の接続構成であり、図4に示すように、三相交流電源ACとモータ等の負荷Mとの間に、合計9個の交流スイッチS,S,Sからなる交流スイッチ群が接続されることになる。
【0003】
図3において、マトリクスコンバータの出力相(U相)一相分は、交流入力端子R,S,T及び交流出力端子U,V,Wの間に接続されるIGBT等の単方向スイッチSru,Sur,Sus,Ssu,Sut,Stuにより、双方向性の交流スイッチS,S,Sが構成される。
【0004】
上記マトリクスコンバータにおいて、電源の短絡は過大な短絡電流によってスイッチを破壊する原因となり、また、負荷が誘導性の場合には負荷端の開放により誘導性エネルギーの還流経路が消失し、過大なサージ電圧がスイッチに印加されてスイッチを破壊する。従って、これらの電源短絡や負荷端開放を防止するために、転流時間を設けることが必要である。
そこで、例えば図3の交流スイッチS,Sをオン、オフするには、まず対向アームの逆バイアスが印加される単方向スイッチをオンし、転流発生時間が経過した後に、順バイアスが印加される単方向スイッチをオフする必要がある。例えば、線間電圧vRSが正のときには、まずスイッチSsuをオンし、転流発生時間が経過した後にスイッチSruをオフしている。
【0005】
この種の技術は、例えば後述する特許文献1に開示されており、PWMサイクロコンバータの出力電流の極性(方向)を電流方向検出回路によって検出し、その出力と、PWM指令と、同一出力相内の順方向半導体スイッチを駆動する他のゲート信号の論理状態とに基づき、電源短絡や負荷端開放が起きないように双方向スイッチの点弧順序を切り替える転流シーケンスを作成している。
【0006】
図5は、出力電流の極性を監視して転流する方法を説明するための原理図である。この図は、例えば図3における入力端子R,S間に接続された交流スイッチS,Sを単相交流電源AC’と単相負荷M’とに接続した状態で示してあり、図5における単方向スイッチS1aは図3のSruに、同じくS1bはSurに、同じくS2aはSusに、同じくS2bはSsuにそれぞれ相当している。
【0007】
ここで、交流スイッチSからSへ転流する場合のパルスパターン(転流パターン)を図6に示す。
いま、出力電流iの正方向を図5の矢印方向と仮定して交流スイッチSからSへ転流する場合を考えると、出力電流iの極性を監視して転流する場合には、
▲1▼転流元の電流の流れていない方向の単方向スイッチをオフ、
▲2▼転流先の出力電流を流せる方向の単方向スイッチをオン、
▲3▼転流元の電流が流れている単方向スイッチをオフ、
▲4▼転流先の別の単方向スイッチをオン、
という4ステップで転流が行われ、上記▲1▼,▲4▼によって電源短絡を防止し、▲2▼,▲3▼によって負荷端の開放を防止している。
【0008】
なお、単方向スイッチのオンオフの禁止条件としては、出力電流iの極性が正の時は単方向スイッチS1a,S2bの同時オフ、出力電流iの極性が負の時は単方向スイッチS2a,S1bの同時オフ、のほか、何れの場合にも上下アームの同時オンが禁止条件として挙げられている。
【0009】
上記により、図5において出力電流iが正方向に流れている場合のパルスパターンは、図6の左側に示す如く、S1bオフ→S2bオン→S1aオフ→S2aオンとなる。図6において、Tは転流時間である。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−98840号公報(請求項1、請求項2、[0009]、図3、図5等)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように出力電流の極性を監視して転流する方法では、出力電流がゼロ付近の時に出力電流の極性を誤認し、負荷端開放や電源短絡の原因となる転流失敗が発生する可能性が高い。また、いったん転流失敗が発生すると、その影響で出力電流に歪みが発生して波形が乱れ、これが出力電流極性の誤認を招き、フィードバック作用によって新たな転流失敗を招来する。
そこで、前記特許文献1に記載された発明では、各双方向スイッチに流れる電流の方向を直接検出して転流失敗を防止しているが、このように各スイッチに電流方向検出回路を設けることは回路構成を複雑化し、コストを上昇させる要因となっていた。
【0012】
そこで本発明は、出力電流がゼロ付近であっても、フィードバック作用による転流失敗を発生させずに確実に転流を行うことができる、構成簡単かつ安価な直接変換器の制御装置を提供しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、単方向の電流を制御可能な少なくとも二つの単方向スイッチからなる双方向性の交流スイッチを複数設けて交流スイッチ群を構成し、三相交流電源の各相に接続される前記交流スイッチ群により三相交流電圧を任意の大きさ及び周波数を有する多相交流電圧に直接変換する交流−交流直接変換形電力変換器において、
前記電力変換器の出力電流を検出する手段と、
この手段により検出された出力電流が出力電流指令と一致するように前記電力変換器の出力電圧を制御する出力電流調節手段と、
前記出力電流指令の正負を判定する正負判定手段と、
この正負判定手段による判定結果及び前記出力電流調節手段の出力を用いて前記単方向スイッチに対する転流パターンを決定する転流パターン発生手段と、
を備えた制御装置を、その要旨とする。
【0014】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した制御装置において、
前記出力電流調節手段を含む電流制御系の時間遅れ分だけ前記出力電流指令を遅延させる遅延発生手段を備え、この遅延発生手段により遅延させた出力電流指令を前記正負判定手段に入力するものである。
【0015】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した制御装置において、
交流−交流直接変換形電力変換器がマトリクスコンバータにより構成されると共に、
前記電力変換器の入力電流指令と前記出力電流調節手段から出力される出力電圧指令とを用いてPWMパルス指令を生成するPWM発生手段を備え、
前記転流パターン発生手段は、前記PWM発生手段から出力されるPWMパルス指令と前記正負判定手段による判定結果とを用いて転流パターンを決定するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の第1実施形態を示しており、直接変換器としてのマトリクスコンバータを制御するための制御装置のブロック図である。この実施形態は、請求項1,3に記載した発明に相当する。
【0017】
図1において、マトリクスコンバータの制御に当たっては、まず三相交流電源電圧を電圧位相検出手段11に入力して電源電圧の位相を検出する。そして、検出した電圧位相に基づき、入力力率制御手段12により入力力率及び入力電流を制御し、これらを入力電流指令としてPWM発生手段15に入力する。
一方、出力電流指令発生手段13から出力された出力電流指令と、出力電流検出手段18により検出した出力電流(負荷電流)とが一致するように、出力電流調節手段14が出力電圧指令を出力し、この出力電圧指令は、入力力率制御手段12からの入力電流指令と共にPWM発生手段15に入力される。
【0018】
PWM発生手段15では、入力電流指令及び出力電圧指令からマトリクスコンバータの交流スイッチ群である9個の交流スイッチのオンオフを決定するパルス指令を生成する。具体的には、マトリクスコンバータ内にPWM制御される整流器及びインバータを仮想し、前記入力電流指令から仮想整流器の交流スイッチに対するパルス指令を生成すると共に、前記出力電圧指令から仮想インバータの交流スイッチに対するパルス指令を生成し、その後、これらのパルス指令を合成して最終的なパルス指令を生成している。
なお、この種のマトリクスコンバータの制御方法は、例えば、「マトリクスコンバータにおける入出力無効電力の非干渉制御法」(伊東里枝・高橋勲,電気学会半導体電力変換研究会,SPC−01−121,IEA−01−64)等に記載されている。
【0019】
PWM発生手段15から出力されるパルス指令に対し、転流パターン発生手段16では、各交流スイッチを構成する単方向スイッチのオンオフを制御して電源短絡または負荷端開放を防止するための転流パターンを付加し、図4に示した全て(18個)の単方向スイッチに対するスイッチングパルスが出力される。
以下に、この実施形態の中心部分について述べる。
【0020】
従来では、直接変換器の実際の出力電流を検出し、その正負から出力電流の極性を判別している。そして、判別した出力電流の極性に応じ、図6に示したような転流パターンを生成して転流を行っている。
これに対し、本実施形態では、転流パターンを生成するために極性を判別する情報として、出力電流の検出値ではなく出力電流指令を用いることにより、転流失敗を防止するようにした。
【0021】
以下、出力電流指令を用いることで転流失敗を防止できる理由について説明する。
マトリクスコンバータにおいて、出力電流は単方向スイッチのオンオフに依存して流れる。従来のように出力電流の極性により転流する方式は、その単方向スイッチのオンオフを出力電流の極性により決定するのでフィードバック作用となり、転流失敗が発生するとその影響で出力電流の波形が乱れ、これが出力電流極性を誤認させて新たな転流失敗を招く。すなわち、出力電流のゼロ付近では、
転流失敗→出力電流波形の歪み発生→この歪みによる極性誤認→転流失敗
という連続したプロセスとなる。
【0022】
そこで本実施形態では、極性判別用の出力電流情報として、実際に流れる出力電流の検出値ではなく、上位の制御器(出力電流指令発生手段13)から与えられる出力電流指令を用いるようにしたものである。
具体的には、図1における出力電流指令発生手段13から出力される出力電流指令を正負判定手段17に入力して出力電流指令の極性を判別する。転流パターン発生手段16は、PWM発生手段15からのパルス指令と正負判定手段17から出力される極性とに応じて、図6の如く所定の禁止条件のもとで電源短絡及び負荷端開放を防止する転流パターンを作成し、マトリクスコンバータの各単方向スイッチに対するスイッチングパルスを出力する。
【0023】
これにより、仮に実際の出力電流に歪みが発生したとしても、出力電流指令の極性に従って所定の転流パターンが新たに生成されるようになり、従来のフィードバック作用による連続的な転流失敗を未然に防止することができる。
【0024】
次に、図2は本発明の第2実施形態を示す制御装置のブロック図であり、請求項2,3に記載した発明に相当する。
第1実施形態と同様の部分については説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
【0025】
出力電流指令に対し、実際には、出力電流調節手段14やPWM発生手段15を含む電流制御系に遅れがあるため、出力電流は遅れて追従する。従って、出力電流指令の極性が反転しても、実際の出力電流の極性は遅れて反転することとなる。よって、出力電流指令の極性に応じて図6に示したような転流パターンを発生させるとしても、実際の出力電流の極性によっては転流失敗が生じるおそれがある。
【0026】
そこで第2実施形態では、図2に示す如く、電流制御系の遅れを模擬する遅延発生手段19を正負判定手段17の前段に設け、電流制御系の遅れによる転流失敗への影響を補正することとした。
すなわち、出力電流指令を遅延発生手段19に入力し、電流制御系の遅れに相当する時間遅れを出力電流指令に与えて正負判定手段17に入力し、その極性を判別する。
【0027】
このため、出力電流指令発生手段13から出力される出力電流指令に従い電流制御系の遅れをもって制御される出力電流と、遅延発生手段19を経て正負判定手段17に入力される出力電流指令とは時間的にほぼ一致することになり、正負判定手段17は実際の出力電流に対して時間遅れのない出力電流指令の極性を判定できることとなる。
【0028】
これにより、出力電流指令と実際の出力電流との間の時間遅れを見かけ上なくすことができると共に、第1実施形態と同様に出力電流指令に基づく正負判定によって連続的な転流失敗を防止することができる。
なお、遅延発生手段19としては、例えば電流制御系の応答と等価な応答を有するローパルスフィルタを用いればよい。
【0029】
また、第1,第2実施形態では、三相交流座標上で制御した電流制御系を示しているが、直交2軸の回転座標上に変換した電流調節手段を用いる場合には、直交2軸の各軸出力電流指令から三相の出力電流指令の符号を換算して正負を判定し、転流パターンの発生に使用してもよい。
【0030】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の発明によれば、マトリクスコンバータをはじめとする直接変換器において、実際の出力電流ではなく出力電流指令の正負に基づいて転流パターンを発生させることにより、従来のフィードバック作用による連続的な転流失敗を発生させずに変換器を安定して運転することができる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加えて、電流制御系の遅れに起因した転流失敗を未然に防止することができる。
従って本発明では、各交流スイッチにそれぞれ電流方向検出回路を設ける必要がなく、従来技術よりも回路構成が簡略化されて安価かつ小形の直接変換器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す制御ブロック図である。
【図3】マトリクスコンバータの概念的な回路図である。
【図4】マトリクスコンバータの使用状態を示す回路図である。
【図5】出力電流の極性を監視して転流する方法を説明するための原理図である。
【図6】図5における転流パターンの説明図である。
【符号の説明】
11:電圧位相検出手段
12:入力力率制御手段
13:出力電流指令発生手段
14:出力電流調節手段
15:PWM発生手段
16:転流パターン発生手段
17:正負判定手段
18:出力電流検出手段
19:遅延発生手段

Claims (3)

  1. 単方向の電流を制御可能な少なくとも二つの単方向スイッチからなる双方向性の交流スイッチを複数設けて交流スイッチ群を構成し、三相交流電源の各相に接続される前記交流スイッチ群により三相交流電圧を任意の大きさ及び周波数を有する多相交流電圧に直接変換する交流−交流直接変換形電力変換器において、
    前記電力変換器の出力電流を検出する手段と、
    この手段により検出された出力電流が出力電流指令と一致するように前記電力変換器の出力電圧を制御する出力電流調節手段と、
    前記出力電流指令の正負を判定する正負判定手段と、
    この正負判定手段による判定結果及び前記出力電流調節手段の出力を用いて前記単方向スイッチに対する転流パターンを決定する転流パターン発生手段と、
    を備えたことを特徴とする交流−交流直接変換形電力変換器の制御装置。
  2. 請求項1に記載した交流−交流直接変換形電力変換器の制御装置において、
    前記出力電流調節手段を含む電流制御系の時間遅れ分だけ前記出力電流指令を遅延させる遅延発生手段を備え、この遅延発生手段により遅延させた出力電流指令を前記正負判定手段に入力することを特徴とする交流−交流直接変換形電力変換器の制御装置。
  3. 請求項1または2に記載した交流−交流直接変換形電力変換器の制御装置において、
    交流−交流直接変換形電力変換器がマトリクスコンバータにより構成されると共に、
    前記電力変換器の入力電流指令と前記出力電流調節手段から出力される出力電圧指令とを用いてPWMパルス指令を生成するPWM発生手段を備え、
    前記転流パターン発生手段は、前記PWM発生手段から出力されるPWMパルス指令と前記正負判定手段による判定結果とを用いて転流パターンを決定することを特徴とする交流−交流直接変換形電力変換器の制御装置。
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