JP2005020634A - 弾性表面波素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧電基板上に、反射器を被覆するようにして反射電極上に貫通孔を有した絶縁膜を形成させるとともに、絶縁膜上に、両端部を貫通孔内で異なる反射電極の上面に被着させたコイル状配線導体を形成する。
【選択図】図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば携帯電話等の移動体通信機器や車載用機器、医療用機器等に用いられる弾性表面波素子に関し、詳しくは、反射器の構造に特徴を有する弾性表面波素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
弾性表面波共振器や弾性表面波フィルタ等の弾性表面波装置は、マイクロ波帯を利用する各種無線通信機器や車載用機器、医療用機器等に幅広く用いられており、弾性表面波装置の電気特性や信頼性の改善、或いは、弾性表面波装置を含む電子装置の特性改善や小型化などの目的により、弾性表面波素子上に所定のインダクタンスや抵抗値を有するパターンを形成するようにしたものが提案されている。
【0003】
ところが、弾性表面波素子上にインダクタや抵抗を形成する場合、弾性表面波素子上にインダクタや抵抗を形成するためのスペースを確保しなければならないことから、弾性表面波素子が大型化するという問題があった。
【0004】
そこで上述の問題を解消するために、弾性表面波素子上に形成されている反射器を利用して所定のインダクタンスや抵抗値を有するパターンを形成することにより、弾性表面波素子の大型化を防止することが検討されている。
【0005】
反射器を利用して所定のインダクタンスや抵抗値を有するパターンを形成した従来の弾性表面波素子としては、反射器を利用してミアンダパターンを形成したもの(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)や、反射器を利用してスパイラルパターンを形成したもの(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0006】
図5は反射器を利用してミアンダパターンを形成するようにした弾性表面波素子を模式的に示す平面図であり、図6は反射器を利用してスパイラルパターンを形成するようにした弾性表面波素子を模式的に示す平面図である。
【0007】
図5に示す従来例においては、弾性表面波素子100は、圧電基板101上に、一対の櫛歯状電極102a、102bから成るインターデジタルトランスデューサー(IDT)電極102が形成され、その両側に一対の反射器103、104が形成されている。そして、反射器103を構成する複数の反射電極103a、103bなどが相互に接続されてミアンダパターンを平面的に形成しており、その一端が櫛歯状電極102aに、他端が入力パッド電極105に接続されている。同様に反射器104においても、反射器104を構成する複数の反射電極が相互に接続されてミアンダパターンが平面的に形成されており、その一端が櫛歯状電極102bに、他端が出力パッド電極106に接続されている。よって電気的にはIDT電極102の両側に直列にインダクタ及び抵抗を接続させた構成となる。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−58915号公報 (図1、図3)
【0009】
【特許文献2】
特開2001−68960号公報 (図1)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の弾性表面波素子は以下の問題を有していた。
【0011】
即ち、図5に示す弾性表面波素子においては、圧電基板101の上面にミアンダパターンが平面的に形成されており、かかるミアンダパターンの長さを長くするほどパターンの形成領域は広くなって基板面積が大となることから、弾性表面波素子を小型に構成しようとすれば、あまり大きなインダクタンス及び抵抗値を得ることはできない。
【0012】
また一方、図6に示す弾性表面波素子においても、圧電基板101の上面にスパイラルパターンが平面的に形成されており、かかるスパイラルパターンを形成することによって大きなインダクタンスは得られるものの、この技術を実際の製品に適用する場合、スパイラルパターンの中心に金属細線やバンプを接続させるために例えば100μm×100μm程度の比較的大きなパッド電極を形成する必要があり、これによって弾性表面波素子の大型化を招く不都合があった。
【0013】
本発明は上述の課題に鑑み案出されたもので、その目的は、小型で、且つ大きなインダクタンスや抵抗値を有するパターンが形成された弾性表面波素子を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の弾性表面波素子は、圧電基板の一方主面に、複数の電極指を有した一対の櫛歯状電極を、一方の櫛歯状電極の電極指間に他方の櫛歯状電極の電極指が位置するように対向配置させて成るIDT電極と、弾性表面波の伝搬方向に沿って前記IDT電極の両側に配置され、前記電極指と平行に配置された複数個の反射電極を有する反射器とを配設してなる弾性表面波素子において、前記圧電基板上に、前記反射器を被覆するようにして前記反射電極上に少なくとも2個の貫通孔を有した絶縁膜を形成するとともに、該絶縁膜上に、中心軸線が前記圧電基板の一方主面に対して略直交する方向に配されたコイル状配線導体を形成し、該コイル状配線導体の一端部及び他端部を、電気的に分離されている2個の反射電極に前記貫通孔内でそれぞれ電気的に接続したことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の弾性表面波素子は、前記コイル状配線導体の一端部及び他端部を電気的に接続した2個の反射電極が異なる電位に保持されることを特徴とするものである。
【0016】
更に、本発明の弾性表面波素子は、前記コイル状配線導体の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と前記反射電極とが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていることを特徴とするものである。
【0017】
また更に、本発明の弾性表面波素子は、前記コイル状配線導体の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と、前記コイル状配線導体と前記貫通孔内で電気的に接続された前記反射電極とが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていると共に、該重なり合う部分において、前記コイル状配線導体を流れる電流の向きと前記反射電極を流れる電流の向きとが一致していることを特徴とするものである。
【0018】
更にまた、本発明の弾性表面波素子は、前記コイル状配線導体が複数個並設されており、該複数個のコイル状配線導体が前記反射電極を介して直列的に接続されていることを特徴とするものである。
【0019】
また更に、本発明の弾性表面波素子は、前記コイル状配線導体が、前記絶縁膜と同質の材料から成る保護膜によって被覆されていることを特徴とするものである。
【0020】
更にまた、本発明の弾性表面波素子は、前記コイル状配線導体の厚みが前記絶縁膜の厚みよりも厚いことを特徴とするものである。
【0021】
また更に、本発明の弾性表面波素子は、前記絶縁膜の上面と前記貫通孔の内壁面との間に形成される角部の角度θ1が鈍角であり、且つ、前記絶縁膜の下面と前記貫通孔の内壁面との間に形成される角度θ2が鋭角であることを特徴とするものである。
【0022】
【作用】
本発明の弾性表面波素子によれば、圧電基板上に、前記反射器を被覆するようにして前記反射電極上に少なくとも2個の貫通孔を有した絶縁膜を形成するとともに、該絶縁膜上に、中心軸線が前記圧電基板の一方主面に対して略直交する方向に配されたコイル状配線導体を形成し、該コイル状配線導体の一端部及び他端部を、電気的に分離されている2個の反射電極に前記貫通孔内でそれぞれ電気的に接続するようにしたことから、従来、一平面上にコイル状配線導体を形成した際に必要だったコイルの内側に位置する電気的接続用のパッド電極を無くすことができ、小さい占有面積と大きなインダクタンス及び抵抗値を併せ持つパターンを得ることができる。
【0023】
しかもこの場合、コイル状配線導体は絶縁膜の上に形成されている為、圧電基板上に直接形成する場合と比較して、弾性表面波の伝搬領域上に位置する場所でコイル状配線導体を屈曲させることによる弾性表面波の散乱及びそれによる弾性表面波素子の特性悪化が生じ難く、弾性表面波の伝搬領域上に位置する場所でコイル状配線導体を屈曲させることも可能となる。よってこの点からも、従来に比較して小さい占有面積と大きなインダクタンス及び抵抗値を併せ持つパターンを形成することが可能となる。
【0024】
また、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体の一端部及び他端部を電気的に接続した2個の反射電極同士が異なる電位に保持されることから、前記コイル状配線導体を所定のインダクタンス及び抵抗値を持つ回路部品として機能させることができる。
【0025】
更に、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と反射電極とが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていることから、前記コイル状配線導体による弾性表面波の反射及び散乱によって生じる弾性表面波素子の電気特性の悪化を有効に抑制することができる。
【0026】
また更に、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と、前記コイル状配線導体と前記貫通孔内で電気的に接続された反射電極とが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていると共に、該重なり合う部分において、前記コイル状配線導体を流れる電流の向きと前記反射電極を流れる電流の向きとが一致していることから、前記コイル状配線導体を流れる電流による磁界と前記反射電極を流れる電流による磁界とが打ち消し合うことによって生じるインダクタンスの低下を有効に防止することができる。
【0027】
更にまた、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体が複数個並設されており、該複数個のコイル状配線導体が前記反射電極を介して直列的に接続されていることから、全体で大きなインダクタンスを有するパターンを形成することができる。
【0028】
また更に、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体を絶縁膜と同質の材料から成る保護膜によって被覆しておくことにより、下地に対する保護膜の密着性を良好に維持しつつ、前記コイル状配線導体の上に導電性の異物が付着すること等に起因したインダクタンスの減少やコイル状配線導体の損傷を有効に防止することができる。
【0029】
更にまた、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体の厚みが絶縁膜の厚みよりも厚くされているため、絶縁膜に設けた貫通孔を介して反射電極とコイル状配線導体とを接続する際に、貫通孔の端部で接続不良が発生するのを有効に防止することができる。
【0030】
また更に、本発明の弾性表面波素子によれば、絶縁膜の上面と貫通孔の内壁面との間に形成される角部の角度θ1を鈍角とし、且つ、絶縁膜の下面と貫通孔の内壁面との間に形成される角部の角度θ2を鋭角とすることにより、絶縁膜に設けた貫通孔を介して反射電極とコイル状配線導体とを接続する際に、貫通孔の端部で接続不良が発生するのを有効に防止することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る弾性表面波素子を模式的に示す分解斜視図、図2は図1の弾性表面波素子において保護膜50を省略した平面図であり、これらの図に示す弾性表面波素子1は、圧電基板10の上面に、IDT電極21、反射器22、パッド電極23等からなる各種電極20を形成し、パッド電極23上と反射器22上の一部を除く上面を絶縁膜30で被覆し、絶縁膜30上の所定位置に、一部が反射器22に接触するようにコイル状配線導体40を被着し、その上面を更に保護膜50でパッド電極23を露出させた状態で被覆した構造を有している。
【0033】
前記圧電基板10は、例えば、水晶、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶、四ホウ酸リチウム単結晶等の圧電性の単結晶、或いはチタン酸鉛、ジルコン酸鉛等の圧電セラミックスから成り、その上面で各種電極20、絶縁膜30等を支持する支持母材として機能するとともに、各種電極20を介して圧電基板10に電力が印加されると、その一主面で所定の弾性表面波を発生させる作用を為す。
【0034】
また、各種電極20は、例えば、アルミニウム、アルミニウムを主成分とする合金等の金属材料から成り、弾性表面波を励振するIDT電極21、弾性表面波の伝搬方向に沿ってIDT電極21の両側に配置される反射器22、IDT電極21に電気的に接続される外部接続用のパッド電極23等によって構成される。
【0035】
前記IDT電極21は、各々が帯状の共通電極と該共通電極に対し直交する方向に延びる複数の電極指とで形成されている一対の櫛歯状電極21a、21bを、その共通電極同士が平行に配置され、且つ両共通電極の対向領域内で櫛歯状電極21a、21bの電極指が弾性表面波の伝搬方向に交互に配置されるようにかみ合わせた状態で対向配置させて構成される。
【0036】
かかるIDT電極21は、外部から所定の電力が印加されると、圧電基板10の上面に電極指の配列ピッチに対応した所定の弾性表面波、具体的には、電極指の配列ピッチを1/2波長とする弾性表面波を発生する作用を為す。
【0037】
一方、前記反射器22は、IDT電極21の形成領域内で発生する弾性表面波を一対の反射器22a、22bの間に閉じ込めて定在波を良好に発生させるためのものである。帯状の複数の反射電極22cをIDT電極21の電極指とほぼ同じピッチで配列させた形状とされており、IDT電極21の外側に、IDT電極21の電極指の配列ピッチとほぼ同じ間隔だけ離れて配置される。
【0038】
このような一対の反射器22a、22bと、その間に配置されるIDT電極21とで一端子対共振器が構成されている。
【0039】
そして、パッド電極23は、外部との電気的接続をなす金属細線やバンプが接合される部分であり、IDT電極21と電気的に接続されている。
【0040】
以上のような各種電極20は、従来周知の蒸着やスパッタリングによって圧電基板10上に形成した電極膜上にレジストをスピンコートし、ステッパー装置などを用いて露光・現像した後に、RIE装置などを用いてエッチングすることによって形成される。
【0041】
また、前記絶縁膜30は、酸化シリコンや窒化シリコンなどの絶縁性材料もしくはシリコン等の半導電性材料のような無機質材料から成り、パッド電極23及び反射電極22c上の一部を除く圧電基板10の上面に形成される。
【0042】
前記絶縁膜30は、コイル状配線導体40と反射電器22とが所定の場所以外で接触することによって、所望のインダクタンス及び抵抗値が得られなくなることを防止するとともに、電導性異物などによるIDT電極21の短絡や損傷を防ぐためのものであり、反射電極22cとコイル状配線導体40との接続部以外の箇所における絶縁性を確保するためには、絶縁膜30の厚みを200Å以上に設定しておくことが好ましい。
【0043】
そして前記絶縁膜30には、図1に示すように、パッド電極23及び反射電極22c上の一部に複数の貫通孔30aが形成されており、反射電極22c上に形成された貫通孔30aを介して、反射電極22cとコイル状配線導体40とが電気的に接続される。
【0044】
ここで、絶縁膜30の上面と貫通孔30aの内壁面との間に形成される角部の角度θ1を鈍角とし、且つ、絶縁膜30の下面と貫通孔30aの内壁面との間に形成される角部の角度θ2を鋭角とすることにより、絶縁膜30に形成した貫通孔30aを介して反射電極22cとコイル状配線導体40とを接続する際に、貫通孔30aの端部で接続不良が発生するのを防止することができる。このような断面形状の貫通孔30aを得る為には、蒸着やスパッタ等によって形成した絶縁膜30に、エッチングによって貫通孔30aを形成することが望ましい。
【0045】
一方、前記コイル状配線導体40はアルミニウムもしくはアルミニウムを主成分とする合金から成り、中心軸線が前記圧電基板の一方主面に対して略直交する方向に配された所定のインダクタンス及び抵抗値を有するコイル状パターンとされている。そしてその両端部は異なる貫通孔30aを介して、電気的に分離された異なる反射電極22cと接続されており、電気的に分離された二つの反射電極22cとコイル状配線導体40とが直列的に接続されている。このようにコイル状配線導体40の一方端部を電気的に接続した反射電極22cとコイル状配線導体40の他方端部を電気的に接続した反射電極22cとを異なる電位に保持することにより、コイル状配線導体40を所定のインダクタンス及び抵抗値を持つ回路部品として機能させることができる。ここで、コイル状配線導体40の厚みを絶縁膜30の厚みよりも大とすることにより、絶縁膜30に形成された貫通孔30aの端部で接続不良が発生することを防止でき、反射電極22cとコイル状配線導体40とを確実に電気的に接続することができる。このようなコイル状配線導体40は、蒸着やスパッタによる導体膜形成及びエッチングやリフトオフ法によるパターンニングにより形成できる。
【0046】
また、前記保護膜50は、絶縁膜30と同様に酸化シリコンや窒化シリコンなどの絶縁性材料もしくはシリコン等の半導電性材料のような無機質材料から成り、コイル状配線導体40を被覆するように、従来周知のスパッタリングや蒸着などによって形成される。
【0047】
かかる保護膜50は、コイル状配線導体40に対する導電性異物等の付着によって生じる電気的短絡や断線などによって、所定のインダクタンス及び抵抗値が得られなくなることを防止している。このような保護膜50も絶縁膜30と同様にパッド電極23を露出するように形成されており、保護膜50を形成した後においても、パッド電極23に金属細線やバンプを接続することによって、外部と電気的に接続できるようにされている。尚、前記保護膜50の厚みとしては、導電性異物によるショート防止の観点から、200Å以上とすることが望ましい。
【0048】
また、保護膜50を絶縁膜30と同質の材料とすることにより、絶縁膜30との密着性が向上し、保護膜50の剥離等の発生を防止することができる。但しこの場合、構成元素の比率まで厳密に同一である必要はない。
【0049】
以上のような構成の弾性表面波素子1においては、IDT電極21の一方の櫛歯状電極21aが反射器22aの一つの反射電極22cを介してコイル状配線導体40の一方端部に接続され、更にコイル状配線導体40の他方端部に接続された反射器22aの他の反射電極22cを介して入力パッド電極23aに電気的に接続されている。同様に、IDT電極21の他方の櫛歯状電極21bは、反射器22bの一つの反射電極22cを介してコイル状配線導体40の一方端部に接続され、更にコイル状配線導体40の他方端部に接続された反射器22bの他の反射電極22cを介して出力パッド電極23bに電気的に接続されている。よって、電気的にはIDT電極21の両側に直列にインダクタ及び抵抗が接続された構成となっている。
【0050】
本実施形態に係る弾性表面波装置においては、図1、図2に示すように、従来、一平面上にコイル状配線導体を形成した際に必要だったコイルの内側に位置する電気的接続用のパッド電極を無くすことができ、小さい占有面積と大きなインダクタンス及び抵抗値を併せ持つパターンを得ることができる。
【0051】
また、IDT電極21の電極指の交差領域の延長線上である弾性表面波の伝搬領域上で反射電極22cを屈曲させると、反射器の不連続部分(屈曲点)において弾性表面波の散乱が生じ弾性表面波素子の電気特性が悪化してしまうが、コイル状配線導体40は絶縁膜30の上に形成されている為、反射器22cと比較して屈曲による弾性表面波の散乱が低減され、それによる弾性表面波素子の特性悪化も低減される。よって、弾性表面波の伝搬領域上に位置する場所でコイル状配線導体40を屈曲させることが可能となる為、この点からも、反射電極を利用してコイルパターンを形成する従来例に比較して小さい占有面積と大きなインダクタンスを併せ持つパターンを形成することが可能となる。
【0052】
更に、本実施形態に係る弾性表面波装置においては、コイル状配線導体40の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と反射電極22cとが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていることから、コイル状配線導体40による弾性表面波の反射及び散乱によって生じる弾性表面波素子の電気特性の悪化を有効に抑制することができる。
【0053】
また更に、本実施形態に係る弾性表面波装置においては、コイル状配線導体40の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と、コイル状配線導体40と貫通孔30a内で電気的に接続された反射電極22cとが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていると共に、該重なり合う部分において、コイル状配線導体40を流れる電流の向きと反射電極22cを流れる電流の向きとが一致していることから、コイル状配線導体40を流れる電流による磁界と反射電極22cを流れる電流による磁界とが打ち消し合うことによって生じるインダクタンスの低下を有効に防止することができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態に係る弾性表面波素子について図3及び図4を用いて説明する。図3は本発明の第2実施形態に係る弾性表面波素子を模式的に示す分解斜視図、図4は図3の弾性表面波素子において保護膜50を省略した平面図である。尚、本実施形態においては先に述べた第1実施形態と異なる特徴的な点についてのみ説明し、同様の構成要素については同一の参照符を用いて、重複する説明を省略するものとする。
【0055】
図3及び図4に示す第2実施形態に係る弾性表面波素子の特徴的な点は、コイル状配線導体40が複数個並設されており、複数個のコイル状配線導体40が反射電極22cを介して直列的に接続されている点である。このような構成とすることにより、全体で大きなインダクタンス及び抵抗値を有するパターンを形成することができる。
【0056】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更・改良などが可能である。
【0057】
例えば、上述の実施形態においては、積層方向に近接配置されるコイル状配線導体40と反射電極22cとを流れる電流の向きを一致させることによってインダクタンスを大きくする構成としたが、水平方向に隣接する二つのコイル状配線導体40の最近接する導体パターン同士を流れる電流の向きも一致するような構成とすることにより、全体のインダクタンスを更に増加させることができる。
【0058】
また、図2及び図4においては、コイル状配線導体40が反射器22の形成領域上のみに形成されているが、反射器22の形成領域外にはみ出して形成しても良い。コイル状配線導体40の形状及び反射電極22cとの接続方法は、反射電極22cの形状、本数、必要なインダクタンスや抵抗値等に応じて、如何様にも変更可能である。
【0059】
更に、上述の実施形態においては、各種電極20及びコイル状配線導体40をアルミニウムやアルミニウム合金等の金属によって形成するようにしたが、他の導電性材料を用いて各種電極20及びコイル状配線導体40を形成するようにしても構わない。
【0060】
また更に、上述の実施形態においては、本発明を一端子対共振器に適用した例について説明したが、それ以外の弾性表面波素子、例えば、ラダー型フィルタや多重モードフィルタ等の弾性表面波フィルタやデュプレクサ等の弾性表面波装置にも本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【0061】
【発明の効果】
本発明の弾性表面波素子によれば、圧電基板上に、前記反射器を被覆するようにして前記反射電極上に少なくとも2個の貫通孔を有した絶縁膜を形成するとともに、該絶縁膜上に、中心軸線が前記圧電基板の一方主面に対して略直交する方向に配されたコイル状配線導体を形成し、該コイル状配線導体の一端部及び他端部を、電気的に分離されている2個の反射電極に前記貫通孔内でそれぞれ電気的に接続したことから、従来に比較して小さい占有面積と大きなインダクタンスを併せ持つパターンを形成することが可能となる。
【0062】
また、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体の一端部及び他端部を電気的に接続した2個の反射電極が異なる電位に保持されることから、前記コイル状配線導体を所定のインダクタンス及び抵抗値を持つ回路部品として機能させることができる。
【0063】
更に、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と反射電極とが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていることから、弾性表面波素子の電気特性の悪化を有効に抑制することができる。
【0064】
また更に、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と、前記コイル状配線導体と前記貫通孔内で電気的に接続された反射電極とが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていると共に、該重なり合う部分において、前記コイル状配線導体を流れる電流の向きと前記反射電極を流れる電流の向きとが一致していることから、インダクタンスの低下を有効に防止することができる。
更にまた、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体が複数個並設されており、該複数個のコイル状配線導体が前記反射電極を介して直列的に接続されていることから、全体で大きなインダクタンスを有するパターンを形成することができる。
【0065】
また更に、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体を絶縁膜と同質の材料から成る保護膜によって被覆しておくことにより、下地に対する保護膜の密着性を良好に維持しつつ、弾性表面波素子の特性の劣化やコイル状配線導体の損傷を有効に防止することができる。
【0066】
更にまた、本発明の弾性表面波素子によれば、コイル状配線導体の厚みが絶縁膜の厚みよりも厚くされているため、貫通孔の端部で接続不良が発生するのを有効に防止することができる。
【0067】
また更に、本発明の弾性表面波素子によれば、絶縁膜の上面と貫通孔の内壁面との間に形成される角部の角度θ1を鈍角とし、且つ、絶縁膜の下面と貫通孔の内壁面との間に形成される角部の角度θ2を鋭角とすることにより、貫通孔の端部で接続不良が発生するのを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る弾性表面波素子を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】図1の弾性表面波素子の保護膜50を省略した平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る弾性表面波素子を模式的に示す分解斜視図である。
【図4】図3の弾性表面波素子の保護膜50を省略した平面図である。
【図5】従来の弾性表面波素子を模式的に示す平面図である。
【図6】従来の弾性表面波素子を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
1・・・弾性表面波素子
10・・・圧電基板
21・・・IDT電極
22・・・反射器
22c・・・反射電極
23・・・パッド電極
30・・・絶縁膜
30a・・・貫通穴
40・・・コイル状配線導体
50・・・保護膜
Claims (8)
- 圧電基板の一方主面に、複数の電極指を有した一対の櫛歯状電極を、一方の櫛歯状電極の電極指間に他方の櫛歯状電極の電極指が位置するように対向配置させて成るIDT電極と、弾性表面波の伝搬方向に沿って前記IDT電極の両側に配置され、前記電極指と平行に配置された複数個の反射電極を有する反射器とを配設してなる弾性表面波素子において、
前記圧電基板上に、前記反射器を被覆するようにして前記反射電極上に少なくとも2個の貫通孔を有した絶縁膜を形成するとともに、該絶縁膜上に、中心軸線が前記圧電基板の一方主面に対して略直交する方向に配されたコイル状配線導体を形成し、該コイル状配線導体の一端部及び他端部を、電気的に分離されている2個の反射電極に前記貫通孔内でそれぞれ電気的に接続したことを特徴とする弾性表面波素子。 - 前記コイル状配線導体の一端部及び他端部を電気的に接続した2個の反射電極が異なる電位に保持されることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
- 前記コイル状配線導体の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と前記反射電極とが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弾性表面波素子。
- 前記コイル状配線導体の弾性表面波伝搬方向と垂直な方向に延在する部分と、前記コイル状配線導体と前記貫通孔内で電気的に接続された前記反射電極とが、平面視した際に部分的に重なり合うように配されていると共に、該重なり合う部分において、前記コイル状配線導体を流れる電流の向きと前記反射電極を流れる電流の向きとが一致していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の弾性表面波素子。
- 前記コイル状配線導体が複数個並設されており、該複数個のコイル状配線導体が前記反射電極を介して直列的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の弾性表面波素子。
- 前記コイル状配線導体が、前記絶縁膜と同質の材料から成る保護膜によって被覆されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の弾性表面波素子。
- 前記コイル状配線導体の厚みが前記絶縁膜の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の弾性表面波素子。
- 前記絶縁膜の上面と前記貫通孔の内壁面との間に形成される角部の角度θ1が鈍角であり、且つ、前記絶縁膜の下面と前記貫通孔の内壁面との間に形成される角度θ2が鋭角であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の弾性表面波素子。
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