JP2005019309A - 冷電子放出素子の電子放出端被覆方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷電子放出素子の電子放出端の被覆を確実に行うことができ、かつ、ゲート−エミッタ間の電流リークを良く抑制し得る電子放出端被覆方法を提供する。
【解決手段】被覆粒子を直進性良く照射できる被覆装置を用い、電子放出端12を被覆装置の粒子照射部に対し、ゲート主面14−1と平行な面内で中心軸CRの周りに相対的に回転させながら、ゲート主面14−1に対し斜めの角度θi方向から被覆粒子を照射させる。被覆粒子の照射軌跡である仮想的な直線Liがゲート主面14−1に対してなす斜めの角度θiを、当該直線Liがゲート開口Gaのゲート主面側の縁部どの一点Paを通っても、その直線Liは当該一点Paから電子放出端12の位置より基板10寄りの位置でエミッタ11を突き抜けた後、ゲート主面14−1と上記ゲート裏面14−2との間を結ぶ面であるゲート開口の内側面16に至るか、または、ゲート裏面14−2には至るが、絶縁層13には至らないという条件を満たせる範囲内の角度とする。
【選択図】 図1
【解決手段】被覆粒子を直進性良く照射できる被覆装置を用い、電子放出端12を被覆装置の粒子照射部に対し、ゲート主面14−1と平行な面内で中心軸CRの周りに相対的に回転させながら、ゲート主面14−1に対し斜めの角度θi方向から被覆粒子を照射させる。被覆粒子の照射軌跡である仮想的な直線Liがゲート主面14−1に対してなす斜めの角度θiを、当該直線Liがゲート開口Gaのゲート主面側の縁部どの一点Paを通っても、その直線Liは当該一点Paから電子放出端12の位置より基板10寄りの位置でエミッタ11を突き抜けた後、ゲート主面14−1と上記ゲート裏面14−2との間を結ぶ面であるゲート開口の内側面16に至るか、または、ゲート裏面14−2には至るが、絶縁層13には至らないという条件を満たせる範囲内の角度とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にフラットパネルディスプレイ(FPD)型の画像表示装置や光プリンタ、電子顕微鏡、電子ビーム露光装置等々、種々の電子ビーム利用装置の電子源ないし電子銃として、あるいはまた簡単な場合、単なる照明ランプ等の超小型照明源としても用い得る冷電子放出素子の電子放出端を被覆する際の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在なお、唯一汎用されている真空管と言っても良い陰極線管(カソードレイチューブ:CRT)に認められるように、カソードに大きな熱エネルギを与えて熱電子放出を起こすのではなく、一般には点状突起形状等、鋭利な形状をした電子放出端を有するエミッタに対し強電界を印加することで当該電子放出端から冷電子の放出を起こさせるタイプの電界放出型電子放出素子、すなわち冷電子放出素子の研究も盛んに行われている。冷電子は電界放出電子とか強電界放出電子とも呼ばれ、エミッタはまた冷陰極等とも呼ばれるが、こうしたタイプの素子が各所で実用化されれば、CRT等におけるように極めて大きな電力消費を伴う熱エネルギが不要となり、素子自体も極めて小型になり得るので、応用デバイスの消費電力も大いに低減し、筺体も飛躍的に小型化(薄型化)、軽量化する。
【0003】
このための研究の一環として、シリコンエミッタを用いた場合に同じシリコン系であるが故に集積、一体化し易いMOSFETを用い、これをエミッタに供給する電流の制御素子として用いる技術が例えば下記特許文献1にて開示されており、これによると非常に安定な電子放出が得られ、また低電圧で電子電流を制御できる等、種々の利点が得られる。しかし、シリコンそのものは非常に活性な材料のため、長時間動作させていると真空中の残留酸素等と反応してエミッタ表面に酸化物を形成し、表面の仕事関数が上昇して電子放出しにくくなり、結局、素子として短命に終わる。そこで、これを改善するために、下記特許文献2に認められるように、エミッタ表面に化学的に安定な抵抗材料(実質的に導電性の粒子)を被覆する技術も提案され、当該技術によると、低電圧化が可能であると同時に表面の酸化を防ぐことができるとされた。本発明者等はさらに、化学的に安定な導電性材料として、HfCに代表される遷移金属炭化物を用いての実験も行っており、その面方位を制御することで、良好な結果の得られることも確認した。
【0004】
【特許文献1】
特許第3170585号公報
【特許文献2】
特許第2718144号公報
【0005】
ところが、上記のようにエミッタ表面、特に少なくとも電子放出端を導電性の被覆粒子で被覆すると、時としてエミッタ11とゲート14間が短絡し、リーク電流が生ずることがあった。これは主として構造的原因による。すなわち、図4にこの種の冷電子放出素子の基本的構造例を挙げて説明するに、一般にはシリコンが選ばれる基板10には、当該基板11に接する根本から先端の電子放出端12に向かうに連れ、基板に対して垂直な中心軸に沿ってその断面直径を減じて行く円錐形状のエミッタ11が形成される。円錐形状は文字通りの断面三角形形状である他、根本に近くなるに連れて末広がりになる形状(ラッパ形状)になることもあるが、後者の場合をも含めて、本書では単に円錐形状のエミッタと称する。
【0006】
基板10上には、エミッタ11と直径方向に離間して絶縁層13が形成され、従ってその内側面はエミッタの外側面を取り囲むようになる。この絶縁層13の上にはエミッタに電界を印加し、電子放出端12から電子を引き出すため、自身に開けられているゲート開口Gaを介して電子放出端12を外部に露呈するゲート14が設けられている。図示の場合、ゲート開口Gaは円形開口で、エミッタ12の中心軸と同心の関係に有り、これが一般的な形状であるが、そうでない場合、例えば矩形形状なども考えられる。
【0007】
このような構造において、例えばエミッタ11の中心軸方向に沿い、ゲート14の垂直方向上方からゲート開口Ga内に向けて真空蒸着等により導電性被覆粒子を照射すると、エミッタ11の表面のみならず、絶縁層13の内側面にも相当量の被覆粒子が被着してしまうことがある。そして、この被着が絶縁層内側面の高さ方向の全てに亘ると、当然のことながら、ゲート14とエミッタ11が構築されていて導電性の基板10との間、結局はゲート14とエミッタ11間に電気的短絡路が形成され、電流リークを生じてしまうのである。ゲート開口Gaは図示の場合、その内側面がゲート主面(表面)に対し垂直に切り立った関係にあるが、そうではなくて、後に本発明の一実施形態に即し説明するように、図2(A) に示すようなオーバ・ハング形状、つまり、ゲート主面14−1の開口縁部よりもゲート厚み方向で対向するゲート裏面側の開口縁部の方が半径方向外方に位置する結果、ゲート開口内側面16が内向きに倒れるような断面端面形状になっているような場合でも、絶縁層内側面への被覆粒子の被着は若干、抑えられるとは言え、満足ではなく、本発明者の実験では、例えば5nm程度以上に及ぶ膜厚の薄膜を形成すると、リーク電流の発生する確率が極端に高くなった。
【0008】
もっとも、従来からも、このような電流リークは重大な問題として認識されており、これを解決すべく、下記特許文献3には、フォトレジストを用いてエミッタ−ゲート間の絶縁層内側面を予め保護しておいてから、露呈させているエミッタ表面を被覆する方法が開示されている。
【0009】
【特許文献3】
特開平8−148083号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法はフォトレジストを用いるために、余り基板温度を上げることはできないと言う問題がある。基板温度を上げてしまうとフォトレジストが炭化してしまうことがあり、そうなればもう、除去することができなくなってしまうからである。ところが、表面被覆する材料として、単体の金属ではなく化合物が好ましいとされることが多く、そうした場合、良質の薄膜を得るためには基板温度を相当程度、上げることが望ましいし、また、高融点の材料を蒸着する際には、輻射熱によっても必然的に基板温度がかなり上がってしまう。こうしたことから、この方法は使えないことが多い。
【0011】
さらに、非常に鋭利な電子放出端を持つエミッタの場合、エミッタの上方から被覆粒子を照射して表面被覆を行う方法では、そもそも当該電子放出端部分には被覆粒子を被着させ得ないこともあった。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、作製されたエミッタの電子放出端を低仕事関数材料や耐酸化性材料等を含む総体的な意味での導電性材料で被覆する必要のある時、被覆対象の電子放出端が例え相当に先鋭なものであっても当該電子放出端の被覆が確実に行え、かつ、エミッタ周囲に位置する絶縁層内側面への被覆粒子の被着ないしは少なくともゲート−エミッタ(基板)間に亘る被覆粒子による電気的短絡路形成を良く抑制し得る新たなる被覆方法を提供せんとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記目的を達成するため、基板に接する根本から先端の電子放出端に向かうに連れ、基板に対して垂直な中心軸に沿ってその断面直径を減じて行く円錐形状のエミッタと,基板上においてエミッタとは直径方向に離間して形成された絶縁層の上に設けられており、エミッタに電界を印加し、上記の電子放出端から電子を引き出すため、主面である表面から当該表面と軸方向に対向する裏面に抜けるように自身に開けられているゲート開口を介して電子放出端を外部に露呈するゲートと,を有して成る冷電子放出素子において、当該電子放出端の表面に被覆装置の照射する導電性の被覆粒子を付着させる電子放出端被覆方法であって;
電子放出端を被覆装置の粒子照射部に対し、ゲート主面と平行な面内で中心軸の周りに相対的に回転させながら;
被覆装置として被覆粒子を粒子照射部から直進性良く照射できる被覆装置を用い、この被覆装置により、ゲート主面に対し斜めの方向から被覆粒子を照射すること;
を特徴とする冷電子放出素子の電子放出端被覆方法を提案する。
【0014】
本発明ではまた、上記構成に加え、より確実に電子放出端のみを被覆し、絶縁層内側面への被覆粒子の被着を防止する手法として、
被覆粒子の照射軌跡である仮想的な直線がゲート主面に対してなす斜めの角度を、当該直線がゲート主面側の縁部のどの一点を通っても、その直線は当該一点から電子放出端の位置より基板寄りの位置にてエミッタを突き抜けた後、ゲート主面とゲート裏面との間を結ぶ面であるゲート開口の内側面に至るか、または、ゲート裏面には至るが、絶縁層には至らないという条件を満たせる範囲内の角度とすること;
を特徴とする冷電子放出素子の電子放出端被覆方法も提案する。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明による電子放出端被覆方法を説明する図面が示されている。被覆対象の電子放出端12を持つ円錐形状のエミッタ11や、自身に印可される電圧によって電子放出端12に電子を引き出すための電界を印可するゲート14、そして基板10に対して当該ゲート14を高さ方向所定位置に保持するための絶縁層13の構造や相対的位置関係等は、既に図4に即して説明したと同様の従来構成に従うものであって良い。つまり、円錐形状エミッタ11の先端に鋭利な電子放出端12を有し、その周囲に離間してゲート14が位置していて、当該ゲート14はまた、エミッタ11に対し半径方向に離間しながらその内側面で当該エミッタ11を取り囲む絶縁層13により支持されている構造である限り、本発明の適用を受ける冷電子放出素子の構造自体には限定はない。例えば最も良く知られている、下記非特許文献1にて開示のスピント法により作製されていても良いし、あるいはまた下記非特許文献2により作製された円錐形状エミッタを持つものである等して良い。
【0016】
【非特許文献1】
C.A.Spindt, I.Brodie, L.Humphery and E.R.Westerberg,”Physical properties of thin−film field emission cathodes with molybdenum cones”, Journal of Applied Physics, Vol.47, No.12, p.5248 (1976)
【非特許文献2】
K.Betsui, Technical Digest of 4th International Vacuum Microelectronics Conference, p.26 (1991)
【0017】
しかるに、作成されたエミッタ11の先端である電子放出端12を、既述したように必要に応じて導電性被覆粒子で被覆する場合、本発明ではまず、その粒子照射部から被覆粒子を直進性良く照射できる被覆装置(図示せず)を用いる。このような装置としては、望ましい一つとして、下記非特許文献3に開示されているコリメートスパッタリング法に見られるように、ターゲットと基板との間に、ある一定の方向に飛んできた粒子しか通さないコリメーターを挿入したコリメートスパッタ装置があるが、要は導電性の被覆粒子を直線的に飛ばせれば良いので、電子ビーム加熱や抵抗加熱を用いた真空蒸着装置、蒸着粒子をイオン化して成膜するイオンビーム蒸着装置、真空蒸着法にイオンビームを併用したイオンビーム援用蒸着装置(イオンビームアシスト蒸着装置)等を挙げることができる。
【0018】
【非特許文献3】
G.N.A.van Veen, B.Theunissen, K.van de Heuvel, R.Horne, and A.L.J.Burgmans, ”Collimated sputter deposition, a novel method for large area deposition of Spindt type field emission tips”, Journal of Vacuum Science and Technology, B 13 (2) p.478, (1995)
【0019】
こうした被覆装置を用いた上で、その粒子照射部(図示せず)より、ゲート主面(表面)14−1に対し、本図では角度θiで示す斜めの方向から被覆粒子を照射する。直線Liはこの被着粒子の照射軌跡を示している。この条件で、矢印Rで示すように、電子放出端12をゲート主面14−1と平行な面内で円錐形状エミッタ11の幾何的な中心軸CRの周りに被覆装置の粒子照射部に対し相対的に回転させながら、当該被覆粒子による被覆を行う。
【0020】
こうすることで、被着粒子が直接に絶縁層13の内側面を狙わないで済む照射角度θiを設定することができ、絶縁層13の内側面には被着粒子を全く付着させないか、付着したとしてもその内側面の高さの全部には亘らないようにすることができるようになって、結局、絶縁層13に堆積した導電性被着粒子が災いしてゲート14と基板10、ひいてはエミッタ11とが電気的に短絡する恐れを大幅に低減することができる。
【0021】
しかも、電子放出端12に対し、斜め方向から被着粒子を飛ばしているので、幾ら先鋭な電子放出端であっても、これを良く被覆することができる。なお、電子放出端12と被覆装置の粒子照射部とは相対的な回転関係にあれば良いので、一般には基板10をエミッタ中心軸CRの周りに面内回転させるが、粒子照射部の方を回転させても構わない。
【0022】
ここで、さらに望ましくは、絶縁層13の内側面に被着粒子を全く、ないしは少なくとも極力付着させない上での幾何的な相対関係というものも考えることができる。図1中に示されている仮想的な直線Ltは、ゲート14のゲート開口Gaのゲート主面14−1の側の縁部(ゲート開口上縁部と呼ぶ)の一点Paを通り、電子放出端12の位置よりも基板10寄りの位置でエミッタ11を突き抜けた後、その伸び行く先が、ゲート主面14−1と対向するゲート裏面14−2側のゲート開口縁部(ゲート開口下縁部と称する)の一点Pbを掠め、絶縁層13の内側面の一点Pcに至っている。この直線Ltがゲート主面14−1となす角度をθtとすると、この角度は、図示のようにゲート開口内側面16がゲート主面14−1、裏面14−2に対して直交関係になるように切り立っているのならば、ゲート14の厚みtとゲート開口Gaの直径に応じて変わる角度となるが、どの場合においても、もし、この角度θtより大きな角度で被着粒子を飛ばした場合、それは絶縁層13の内側面に相当程度、被着粒子を付着させてしまうことが考えられる。
【0023】
しかし、逆に、この角度θtを一種の臨界角度とするならば、これよりも小さな角度θi(<θt)で被着粒子を飛ばすように図れば、照射軌跡である直線Liの行き着く先が、ゲート主面14−1とゲート裏面14−2との間を結ぶ面であるゲート開口Gaの内側面16には至るが、ゲート開口下縁部をさらに下側に越えて絶縁層13の内側面にまでは至らないようになるため、当該絶縁層内側面に対する被着粒子の付着は完全に、ないし少なくとも殆ど認められないようにすることができる。
【0024】
従って、改めて直線Liに関する条件を定性的に整理すると、請求項記載の通りに、直線Liがゲート主面に対してなす斜めの角度θiを、その直線Liがゲート開口Gaのゲート主面側の縁部のどの一点Paを通っても、この直線Liは当該一点Paから電子放出端12の位置より基板10寄りの位置でエミッタ12を突き抜けた後、ゲート主面14−1とゲート裏面14−2との間を結ぶ面であるゲート開口の内側面16に至るが、絶縁層13には至らないという条件を満たせる範囲内の角度とする,と言うことになる。
【0025】
なお、上記の記載中で、「直線Liがゲート開口Gaのゲート主面側の縁部の“どの一点Pa”を通っても」とあるのは、ゲート開口が非円形の場合にも本発明を適用可能なことを示すためである。つまり、図2(B) の部分平面図に示すように、例えばゲート開口Gaが矩形であったとしよう。ここで、既述した臨界角度θtを求める時に、例えば同図中、破線で示した直線Lt’のように、矩形の短辺に跨る方向でゲート主面に対する斜めの直線を考え、その臨界角度を求めて、これより小さな角度を被着粒子の照射角度として定めたとしても、電子放出端12を相対回転させるために基板10を相対回転させると、照射軌跡が短辺方向を外れた場合、その回転角位置では絶縁層内側面を狙ってしまう状態になり得る。
【0026】
そこで、こうした矩形ゲート開口の場合には、エミッタ11を挟んで直径方向にゲート開口縁部が対向し合う二点が一番長い距離となる対角線方向での直線Ltに従い臨界角度θtを求め、これよりも小さい角度に照射角度θiを設定すれば良いことになる。つまり、矩形ゲート開口にも限らず、さらに任意、不定形なゲート開口の場合であっても、そうしたゲート開口のゲート主面側の縁部のどの一点を通っても、その行き着く先が絶縁層内側面には至らないようになる直線Liの角度θiを照射角度として決定すれば良い,ということになる。
【0027】
さらに、上記において「直線Liは当該一点Paから電子放出端12の位置より基板10寄りの位置でエミッタ12を突き抜けた後」とあるのは、照射軌跡上に少なくとも電子放出端12が位置していなければ、換言すれば直線Liよりも外方空間側(図面上では上方)に電子放出端12が位置していなければ、そもそも電子放出端12にも被着粒子が付着しないからである。最近の形状では、電子放出端12はゲート主面14−1と同じかやや突き出る高さ位置になっていたり、少なくともゲート開口内側面16にて取り囲まれる高さ位置にはあるように作られることが多いので、実際上、この限定に従っても、多くの冷電子放出素子に対し、本発明を適用することができる。
【0028】
もちろん、先に従来例の説明にも使用したように、図2(A) に示すような、一見、斜め照射が難しく思えるいわゆるゲート開口のオーバ・ハング形状を持つ冷電子放出素子の場合にも、図示のように、上述した角度条件θi<θtを見つけることができる。なお、本図を初め、本願添付の図面中において同一の符号は同一ないし同様の構成要素を示し、あえて各図ごとにそれらの説明を繰り返すのは避けている。
【0029】
ゲート開口の形状について言うならば、図3に示すように、最近の冷電子放出素子作成法によると、ゲート開口Gaの開口縁部付近がめくり上がるような形状に仕上がることもある。こうした場合には、臨界角度θtを決めるに際し、ゲート開口Gaのゲート主面14−1側の縁部の任意の一点Paを通る直線Ltを考えた時、その行き着く先が、既述のようにゲート開口の内側面16ではなくて、当該内側面16がめくり上がって上を向いているために、点Pbにてゲート裏面14−2に至ることがある。この点Pbは実質的に絶縁層内側面上の一点Pcでもある。従って、このようにして幾何的に求めた臨界角度θtより小さな角度θiに設定すべき直線Liの行き着く先は、絶縁層内側面13には至らないことは同じであっても、既述のようにゲート開口内側面16ではなく、ゲート開口裏面14−2に至ることもある。もっとも、エミッタの突き出し量が大きく、電子放出端12が十分にゲート開口Gaから突出しているのであれば、めくり上がったゲート開口Gaを有する場合にも、被着粒子の照射軌跡である直線Liはエミッタ11を突き抜けた後にゲート開口内側面16に至るように設定される場合もある。いずれにしても、このように、ゲート開口内側面に至る場合とゲート裏面に至る場合を併せ考えて定義しているのが本願請求項記載の限定条件である。
【0030】
以上、本願発明をその望ましい実施形態に即し説明したが、その原理からして明らかなように、本願発明の適用範囲は十分広く、原則としてエミッタ11の材料や被覆材料に何らの制約もない。
【0031】
【発明の効果】
本発明によると、ゲート−エミッタ間の電流リークを抑制し、極めて先鋭な電子放出端であっても確実に被覆し得る技術が提供される。その汎用性は極めて高く、この種の技術分野に貢献する所、大なるものが有る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子放出端被覆方法を説明する説明図である。
【図2】本発明の適用可能な素子形態の一例と、被着粒子照射方向の設定に関する説明図である。
【図3】本発明の適用可能な他の素子形態の概略構成図である。
【図4】一般的な円錐形状エミッタを持つ冷電子放出素子の構造例を説明する説明図である。
【符号の説明】
10 基板
11 エミッタ
12 電子放出端
13 絶縁層
14 ゲート
14−1 ゲート主面(表面)
14−2 ゲート裏面
16 ゲート開口内側面
Ga ゲート開口
Li 被着粒子の照射軌跡を表す直線
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にフラットパネルディスプレイ(FPD)型の画像表示装置や光プリンタ、電子顕微鏡、電子ビーム露光装置等々、種々の電子ビーム利用装置の電子源ないし電子銃として、あるいはまた簡単な場合、単なる照明ランプ等の超小型照明源としても用い得る冷電子放出素子の電子放出端を被覆する際の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在なお、唯一汎用されている真空管と言っても良い陰極線管(カソードレイチューブ:CRT)に認められるように、カソードに大きな熱エネルギを与えて熱電子放出を起こすのではなく、一般には点状突起形状等、鋭利な形状をした電子放出端を有するエミッタに対し強電界を印加することで当該電子放出端から冷電子の放出を起こさせるタイプの電界放出型電子放出素子、すなわち冷電子放出素子の研究も盛んに行われている。冷電子は電界放出電子とか強電界放出電子とも呼ばれ、エミッタはまた冷陰極等とも呼ばれるが、こうしたタイプの素子が各所で実用化されれば、CRT等におけるように極めて大きな電力消費を伴う熱エネルギが不要となり、素子自体も極めて小型になり得るので、応用デバイスの消費電力も大いに低減し、筺体も飛躍的に小型化(薄型化)、軽量化する。
【0003】
このための研究の一環として、シリコンエミッタを用いた場合に同じシリコン系であるが故に集積、一体化し易いMOSFETを用い、これをエミッタに供給する電流の制御素子として用いる技術が例えば下記特許文献1にて開示されており、これによると非常に安定な電子放出が得られ、また低電圧で電子電流を制御できる等、種々の利点が得られる。しかし、シリコンそのものは非常に活性な材料のため、長時間動作させていると真空中の残留酸素等と反応してエミッタ表面に酸化物を形成し、表面の仕事関数が上昇して電子放出しにくくなり、結局、素子として短命に終わる。そこで、これを改善するために、下記特許文献2に認められるように、エミッタ表面に化学的に安定な抵抗材料(実質的に導電性の粒子)を被覆する技術も提案され、当該技術によると、低電圧化が可能であると同時に表面の酸化を防ぐことができるとされた。本発明者等はさらに、化学的に安定な導電性材料として、HfCに代表される遷移金属炭化物を用いての実験も行っており、その面方位を制御することで、良好な結果の得られることも確認した。
【0004】
【特許文献1】
特許第3170585号公報
【特許文献2】
特許第2718144号公報
【0005】
ところが、上記のようにエミッタ表面、特に少なくとも電子放出端を導電性の被覆粒子で被覆すると、時としてエミッタ11とゲート14間が短絡し、リーク電流が生ずることがあった。これは主として構造的原因による。すなわち、図4にこの種の冷電子放出素子の基本的構造例を挙げて説明するに、一般にはシリコンが選ばれる基板10には、当該基板11に接する根本から先端の電子放出端12に向かうに連れ、基板に対して垂直な中心軸に沿ってその断面直径を減じて行く円錐形状のエミッタ11が形成される。円錐形状は文字通りの断面三角形形状である他、根本に近くなるに連れて末広がりになる形状(ラッパ形状)になることもあるが、後者の場合をも含めて、本書では単に円錐形状のエミッタと称する。
【0006】
基板10上には、エミッタ11と直径方向に離間して絶縁層13が形成され、従ってその内側面はエミッタの外側面を取り囲むようになる。この絶縁層13の上にはエミッタに電界を印加し、電子放出端12から電子を引き出すため、自身に開けられているゲート開口Gaを介して電子放出端12を外部に露呈するゲート14が設けられている。図示の場合、ゲート開口Gaは円形開口で、エミッタ12の中心軸と同心の関係に有り、これが一般的な形状であるが、そうでない場合、例えば矩形形状なども考えられる。
【0007】
このような構造において、例えばエミッタ11の中心軸方向に沿い、ゲート14の垂直方向上方からゲート開口Ga内に向けて真空蒸着等により導電性被覆粒子を照射すると、エミッタ11の表面のみならず、絶縁層13の内側面にも相当量の被覆粒子が被着してしまうことがある。そして、この被着が絶縁層内側面の高さ方向の全てに亘ると、当然のことながら、ゲート14とエミッタ11が構築されていて導電性の基板10との間、結局はゲート14とエミッタ11間に電気的短絡路が形成され、電流リークを生じてしまうのである。ゲート開口Gaは図示の場合、その内側面がゲート主面(表面)に対し垂直に切り立った関係にあるが、そうではなくて、後に本発明の一実施形態に即し説明するように、図2(A) に示すようなオーバ・ハング形状、つまり、ゲート主面14−1の開口縁部よりもゲート厚み方向で対向するゲート裏面側の開口縁部の方が半径方向外方に位置する結果、ゲート開口内側面16が内向きに倒れるような断面端面形状になっているような場合でも、絶縁層内側面への被覆粒子の被着は若干、抑えられるとは言え、満足ではなく、本発明者の実験では、例えば5nm程度以上に及ぶ膜厚の薄膜を形成すると、リーク電流の発生する確率が極端に高くなった。
【0008】
もっとも、従来からも、このような電流リークは重大な問題として認識されており、これを解決すべく、下記特許文献3には、フォトレジストを用いてエミッタ−ゲート間の絶縁層内側面を予め保護しておいてから、露呈させているエミッタ表面を被覆する方法が開示されている。
【0009】
【特許文献3】
特開平8−148083号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法はフォトレジストを用いるために、余り基板温度を上げることはできないと言う問題がある。基板温度を上げてしまうとフォトレジストが炭化してしまうことがあり、そうなればもう、除去することができなくなってしまうからである。ところが、表面被覆する材料として、単体の金属ではなく化合物が好ましいとされることが多く、そうした場合、良質の薄膜を得るためには基板温度を相当程度、上げることが望ましいし、また、高融点の材料を蒸着する際には、輻射熱によっても必然的に基板温度がかなり上がってしまう。こうしたことから、この方法は使えないことが多い。
【0011】
さらに、非常に鋭利な電子放出端を持つエミッタの場合、エミッタの上方から被覆粒子を照射して表面被覆を行う方法では、そもそも当該電子放出端部分には被覆粒子を被着させ得ないこともあった。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、作製されたエミッタの電子放出端を低仕事関数材料や耐酸化性材料等を含む総体的な意味での導電性材料で被覆する必要のある時、被覆対象の電子放出端が例え相当に先鋭なものであっても当該電子放出端の被覆が確実に行え、かつ、エミッタ周囲に位置する絶縁層内側面への被覆粒子の被着ないしは少なくともゲート−エミッタ(基板)間に亘る被覆粒子による電気的短絡路形成を良く抑制し得る新たなる被覆方法を提供せんとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記目的を達成するため、基板に接する根本から先端の電子放出端に向かうに連れ、基板に対して垂直な中心軸に沿ってその断面直径を減じて行く円錐形状のエミッタと,基板上においてエミッタとは直径方向に離間して形成された絶縁層の上に設けられており、エミッタに電界を印加し、上記の電子放出端から電子を引き出すため、主面である表面から当該表面と軸方向に対向する裏面に抜けるように自身に開けられているゲート開口を介して電子放出端を外部に露呈するゲートと,を有して成る冷電子放出素子において、当該電子放出端の表面に被覆装置の照射する導電性の被覆粒子を付着させる電子放出端被覆方法であって;
電子放出端を被覆装置の粒子照射部に対し、ゲート主面と平行な面内で中心軸の周りに相対的に回転させながら;
被覆装置として被覆粒子を粒子照射部から直進性良く照射できる被覆装置を用い、この被覆装置により、ゲート主面に対し斜めの方向から被覆粒子を照射すること;
を特徴とする冷電子放出素子の電子放出端被覆方法を提案する。
【0014】
本発明ではまた、上記構成に加え、より確実に電子放出端のみを被覆し、絶縁層内側面への被覆粒子の被着を防止する手法として、
被覆粒子の照射軌跡である仮想的な直線がゲート主面に対してなす斜めの角度を、当該直線がゲート主面側の縁部のどの一点を通っても、その直線は当該一点から電子放出端の位置より基板寄りの位置にてエミッタを突き抜けた後、ゲート主面とゲート裏面との間を結ぶ面であるゲート開口の内側面に至るか、または、ゲート裏面には至るが、絶縁層には至らないという条件を満たせる範囲内の角度とすること;
を特徴とする冷電子放出素子の電子放出端被覆方法も提案する。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明による電子放出端被覆方法を説明する図面が示されている。被覆対象の電子放出端12を持つ円錐形状のエミッタ11や、自身に印可される電圧によって電子放出端12に電子を引き出すための電界を印可するゲート14、そして基板10に対して当該ゲート14を高さ方向所定位置に保持するための絶縁層13の構造や相対的位置関係等は、既に図4に即して説明したと同様の従来構成に従うものであって良い。つまり、円錐形状エミッタ11の先端に鋭利な電子放出端12を有し、その周囲に離間してゲート14が位置していて、当該ゲート14はまた、エミッタ11に対し半径方向に離間しながらその内側面で当該エミッタ11を取り囲む絶縁層13により支持されている構造である限り、本発明の適用を受ける冷電子放出素子の構造自体には限定はない。例えば最も良く知られている、下記非特許文献1にて開示のスピント法により作製されていても良いし、あるいはまた下記非特許文献2により作製された円錐形状エミッタを持つものである等して良い。
【0016】
【非特許文献1】
C.A.Spindt, I.Brodie, L.Humphery and E.R.Westerberg,”Physical properties of thin−film field emission cathodes with molybdenum cones”, Journal of Applied Physics, Vol.47, No.12, p.5248 (1976)
【非特許文献2】
K.Betsui, Technical Digest of 4th International Vacuum Microelectronics Conference, p.26 (1991)
【0017】
しかるに、作成されたエミッタ11の先端である電子放出端12を、既述したように必要に応じて導電性被覆粒子で被覆する場合、本発明ではまず、その粒子照射部から被覆粒子を直進性良く照射できる被覆装置(図示せず)を用いる。このような装置としては、望ましい一つとして、下記非特許文献3に開示されているコリメートスパッタリング法に見られるように、ターゲットと基板との間に、ある一定の方向に飛んできた粒子しか通さないコリメーターを挿入したコリメートスパッタ装置があるが、要は導電性の被覆粒子を直線的に飛ばせれば良いので、電子ビーム加熱や抵抗加熱を用いた真空蒸着装置、蒸着粒子をイオン化して成膜するイオンビーム蒸着装置、真空蒸着法にイオンビームを併用したイオンビーム援用蒸着装置(イオンビームアシスト蒸着装置)等を挙げることができる。
【0018】
【非特許文献3】
G.N.A.van Veen, B.Theunissen, K.van de Heuvel, R.Horne, and A.L.J.Burgmans, ”Collimated sputter deposition, a novel method for large area deposition of Spindt type field emission tips”, Journal of Vacuum Science and Technology, B 13 (2) p.478, (1995)
【0019】
こうした被覆装置を用いた上で、その粒子照射部(図示せず)より、ゲート主面(表面)14−1に対し、本図では角度θiで示す斜めの方向から被覆粒子を照射する。直線Liはこの被着粒子の照射軌跡を示している。この条件で、矢印Rで示すように、電子放出端12をゲート主面14−1と平行な面内で円錐形状エミッタ11の幾何的な中心軸CRの周りに被覆装置の粒子照射部に対し相対的に回転させながら、当該被覆粒子による被覆を行う。
【0020】
こうすることで、被着粒子が直接に絶縁層13の内側面を狙わないで済む照射角度θiを設定することができ、絶縁層13の内側面には被着粒子を全く付着させないか、付着したとしてもその内側面の高さの全部には亘らないようにすることができるようになって、結局、絶縁層13に堆積した導電性被着粒子が災いしてゲート14と基板10、ひいてはエミッタ11とが電気的に短絡する恐れを大幅に低減することができる。
【0021】
しかも、電子放出端12に対し、斜め方向から被着粒子を飛ばしているので、幾ら先鋭な電子放出端であっても、これを良く被覆することができる。なお、電子放出端12と被覆装置の粒子照射部とは相対的な回転関係にあれば良いので、一般には基板10をエミッタ中心軸CRの周りに面内回転させるが、粒子照射部の方を回転させても構わない。
【0022】
ここで、さらに望ましくは、絶縁層13の内側面に被着粒子を全く、ないしは少なくとも極力付着させない上での幾何的な相対関係というものも考えることができる。図1中に示されている仮想的な直線Ltは、ゲート14のゲート開口Gaのゲート主面14−1の側の縁部(ゲート開口上縁部と呼ぶ)の一点Paを通り、電子放出端12の位置よりも基板10寄りの位置でエミッタ11を突き抜けた後、その伸び行く先が、ゲート主面14−1と対向するゲート裏面14−2側のゲート開口縁部(ゲート開口下縁部と称する)の一点Pbを掠め、絶縁層13の内側面の一点Pcに至っている。この直線Ltがゲート主面14−1となす角度をθtとすると、この角度は、図示のようにゲート開口内側面16がゲート主面14−1、裏面14−2に対して直交関係になるように切り立っているのならば、ゲート14の厚みtとゲート開口Gaの直径に応じて変わる角度となるが、どの場合においても、もし、この角度θtより大きな角度で被着粒子を飛ばした場合、それは絶縁層13の内側面に相当程度、被着粒子を付着させてしまうことが考えられる。
【0023】
しかし、逆に、この角度θtを一種の臨界角度とするならば、これよりも小さな角度θi(<θt)で被着粒子を飛ばすように図れば、照射軌跡である直線Liの行き着く先が、ゲート主面14−1とゲート裏面14−2との間を結ぶ面であるゲート開口Gaの内側面16には至るが、ゲート開口下縁部をさらに下側に越えて絶縁層13の内側面にまでは至らないようになるため、当該絶縁層内側面に対する被着粒子の付着は完全に、ないし少なくとも殆ど認められないようにすることができる。
【0024】
従って、改めて直線Liに関する条件を定性的に整理すると、請求項記載の通りに、直線Liがゲート主面に対してなす斜めの角度θiを、その直線Liがゲート開口Gaのゲート主面側の縁部のどの一点Paを通っても、この直線Liは当該一点Paから電子放出端12の位置より基板10寄りの位置でエミッタ12を突き抜けた後、ゲート主面14−1とゲート裏面14−2との間を結ぶ面であるゲート開口の内側面16に至るが、絶縁層13には至らないという条件を満たせる範囲内の角度とする,と言うことになる。
【0025】
なお、上記の記載中で、「直線Liがゲート開口Gaのゲート主面側の縁部の“どの一点Pa”を通っても」とあるのは、ゲート開口が非円形の場合にも本発明を適用可能なことを示すためである。つまり、図2(B) の部分平面図に示すように、例えばゲート開口Gaが矩形であったとしよう。ここで、既述した臨界角度θtを求める時に、例えば同図中、破線で示した直線Lt’のように、矩形の短辺に跨る方向でゲート主面に対する斜めの直線を考え、その臨界角度を求めて、これより小さな角度を被着粒子の照射角度として定めたとしても、電子放出端12を相対回転させるために基板10を相対回転させると、照射軌跡が短辺方向を外れた場合、その回転角位置では絶縁層内側面を狙ってしまう状態になり得る。
【0026】
そこで、こうした矩形ゲート開口の場合には、エミッタ11を挟んで直径方向にゲート開口縁部が対向し合う二点が一番長い距離となる対角線方向での直線Ltに従い臨界角度θtを求め、これよりも小さい角度に照射角度θiを設定すれば良いことになる。つまり、矩形ゲート開口にも限らず、さらに任意、不定形なゲート開口の場合であっても、そうしたゲート開口のゲート主面側の縁部のどの一点を通っても、その行き着く先が絶縁層内側面には至らないようになる直線Liの角度θiを照射角度として決定すれば良い,ということになる。
【0027】
さらに、上記において「直線Liは当該一点Paから電子放出端12の位置より基板10寄りの位置でエミッタ12を突き抜けた後」とあるのは、照射軌跡上に少なくとも電子放出端12が位置していなければ、換言すれば直線Liよりも外方空間側(図面上では上方)に電子放出端12が位置していなければ、そもそも電子放出端12にも被着粒子が付着しないからである。最近の形状では、電子放出端12はゲート主面14−1と同じかやや突き出る高さ位置になっていたり、少なくともゲート開口内側面16にて取り囲まれる高さ位置にはあるように作られることが多いので、実際上、この限定に従っても、多くの冷電子放出素子に対し、本発明を適用することができる。
【0028】
もちろん、先に従来例の説明にも使用したように、図2(A) に示すような、一見、斜め照射が難しく思えるいわゆるゲート開口のオーバ・ハング形状を持つ冷電子放出素子の場合にも、図示のように、上述した角度条件θi<θtを見つけることができる。なお、本図を初め、本願添付の図面中において同一の符号は同一ないし同様の構成要素を示し、あえて各図ごとにそれらの説明を繰り返すのは避けている。
【0029】
ゲート開口の形状について言うならば、図3に示すように、最近の冷電子放出素子作成法によると、ゲート開口Gaの開口縁部付近がめくり上がるような形状に仕上がることもある。こうした場合には、臨界角度θtを決めるに際し、ゲート開口Gaのゲート主面14−1側の縁部の任意の一点Paを通る直線Ltを考えた時、その行き着く先が、既述のようにゲート開口の内側面16ではなくて、当該内側面16がめくり上がって上を向いているために、点Pbにてゲート裏面14−2に至ることがある。この点Pbは実質的に絶縁層内側面上の一点Pcでもある。従って、このようにして幾何的に求めた臨界角度θtより小さな角度θiに設定すべき直線Liの行き着く先は、絶縁層内側面13には至らないことは同じであっても、既述のようにゲート開口内側面16ではなく、ゲート開口裏面14−2に至ることもある。もっとも、エミッタの突き出し量が大きく、電子放出端12が十分にゲート開口Gaから突出しているのであれば、めくり上がったゲート開口Gaを有する場合にも、被着粒子の照射軌跡である直線Liはエミッタ11を突き抜けた後にゲート開口内側面16に至るように設定される場合もある。いずれにしても、このように、ゲート開口内側面に至る場合とゲート裏面に至る場合を併せ考えて定義しているのが本願請求項記載の限定条件である。
【0030】
以上、本願発明をその望ましい実施形態に即し説明したが、その原理からして明らかなように、本願発明の適用範囲は十分広く、原則としてエミッタ11の材料や被覆材料に何らの制約もない。
【0031】
【発明の効果】
本発明によると、ゲート−エミッタ間の電流リークを抑制し、極めて先鋭な電子放出端であっても確実に被覆し得る技術が提供される。その汎用性は極めて高く、この種の技術分野に貢献する所、大なるものが有る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子放出端被覆方法を説明する説明図である。
【図2】本発明の適用可能な素子形態の一例と、被着粒子照射方向の設定に関する説明図である。
【図3】本発明の適用可能な他の素子形態の概略構成図である。
【図4】一般的な円錐形状エミッタを持つ冷電子放出素子の構造例を説明する説明図である。
【符号の説明】
10 基板
11 エミッタ
12 電子放出端
13 絶縁層
14 ゲート
14−1 ゲート主面(表面)
14−2 ゲート裏面
16 ゲート開口内側面
Ga ゲート開口
Li 被着粒子の照射軌跡を表す直線
Claims (2)
- 基板に接する根本から先端の電子放出端に向かうに連れ、該基板に対して垂直な中心軸に沿ってその断面直径を減じて行く円錐形状のエミッタと,該基板上において上記エミッタとは直径方向に離間して形成された絶縁層の上に設けられており、該エミッタに電界を印加し、該電子放出端から電子を引き出すため、主面である表面から該表面と対向する裏面に抜けるように自身に開けられているゲート開口を介して上記電子放出端を外部に露呈するゲートと,を有して成る冷電子放出素子において、該電子放出端の表面に対し、被覆装置の照射する導電性の被覆粒子を付着させる電子放出端被覆方法であって;
上記電子放出端を、上記被覆装置の粒子照射部に対し、上記ゲート主面と平行な面内で上記中心軸の周りに相対的に回転させながら;
上記被覆装置として上記被覆粒子を該粒子照射部から直進性良く照射できる被覆装置を用い、該被覆装置により、上記ゲート主面に対し斜めの方向から該被覆粒子を照射すること;
を特徴とする冷電子放出素子の電子放出端被覆方法。 - 請求項1記載の電子放出端被覆方法であって;
上記被覆粒子の照射軌跡である仮想的な直線が上記ゲート主面に対してなす上記斜めの角度を、該直線が上記ゲート開口の上記ゲート主面側の縁部のどの一点を通っても、該直線は該一点から上記電子放出端の位置より上記基板寄りの位置で上記エミッタを突き抜けた後、上記ゲート主面と上記ゲート裏面との間を結ぶ面である上記ゲート開口の内側面に至るか、または上記ゲート裏面には至るが、上記絶縁層には至らないという条件を満たせる範囲内の角度とすること;
を特徴とする冷電子放出素子の電子放出端被覆方法。
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JP2003184988A JP2005019309A (ja) | 2003-06-27 | 2003-06-27 | 冷電子放出素子の電子放出端被覆方法 |
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US11072542B2 (en) | 2019-01-17 | 2021-07-27 | A. O. Smith Corporation | High water efficiency TDS creep solution |
-
2003
- 2003-06-27 JP JP2003184988A patent/JP2005019309A/ja active Pending
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