JP2005019164A - コロナ放電電極およびコロナ放電装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電極材料による除電対象物の汚染を防止することができ、かつ耐久性の優れたコロナ放電電極を提供する。
【解決手段】電極の表面がダイヤモンドであるコロナ放電電極。また、少なくとも基材とダイヤモンド被膜層とから成るコロナ放電電極。この基材はタングステン又はその合金からなるものであってもよい。さらに、上記の放電電極を備えたコロナ放電装置及び静電気除電装置。
【選択図】 図5
【解決手段】電極の表面がダイヤモンドであるコロナ放電電極。また、少なくとも基材とダイヤモンド被膜層とから成るコロナ放電電極。この基材はタングステン又はその合金からなるものであってもよい。さらに、上記の放電電極を備えたコロナ放電装置及び静電気除電装置。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電気除去装置等に用いられるコロナ放電電極に関し、とくに電極表面の酸化物の生成や電極表面からの発塵が少なく、耐久性の大きいコロナ放電電極とこれを用いたコロナ放電装置、静電気除電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電気放電(ESD,electrostatic discharge)は、精密電子デバイスの製造工程や実装工程において、様々な障害の原因となる。半導体回路の微細化に伴って、許容される帯電量が微小化し、僅かな帯電でも、ESDによってシリコンの回路や酸化物の絶縁層が破壊される。また、帯電によって塵埃の付着が促進されることも問題である。半導体回路の高集積化には、帯電防止対策が不可欠であり、一般には放電装置によって発生した正、負イオンを気体ジェットにより除電対象物に吹き付けて、電荷を中和するという方法がとられており、このような装置は静電気除電装置と呼ばれる。
【0003】
静電気除電装置は、ニッケル・クロムやタングステン等の針に高電圧を印加し、先端部に局在したコロナ放電を発生させるものであるが、暗流コロナ領域に制限するため高抵抗を通して放電電流を制限している。放電電流を増加させてイオン発生量を増大させようとすると、電極の最先端部分が酸化され、形状変化によって当初のイオン発生量を維持できなくなるという問題があり、これが電極寿命を低下させる。
【0004】
また、酸化物の蓄積量が多くなるとバースト現象を起こして発塵したり、電極先端が局所的に加熱されて金属又は酸化物が蒸発したりして、除電対象物を汚染することも問題である。とくに半導体回路の超微細化に伴って、僅かな汚染も許容できなくなっている。そのため、針状のイオン発生電極が、タングステン電極の表面をニッケルで被覆した積層構造を有することを特徴とするクリーンルーム用イオナイザが提案されている。しかし、本発明者らの知見によれば、かかる手段によっても、電極先端が酸化され、形状変化や発塵が生じるのを根本的に回避することは難しい。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−21131号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、電極先端の酸化物の生成が極めて少なく、そのために電極材料による除電対象物の汚染を防止することができ、かつ耐久性の優れたコロナ放電電極を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明コロナ放電電極は、電極の表面がダイアモンドであることを特徴とする。コロナ放電は、放電電極と対極の間に高電圧を印加することにより起こる。
【0008】
本発明の放電電極は、少なくとも基材とダイヤモンド被膜の2層構造から構成される。また、基材としてはタングステン又はその合金が好適である。なお、上記のダイアモンド被膜は、CVD法や、マイクロ波プラズマCVD法、スパッタリング法であることが好ましい。ダイヤモンド被膜はDLC(Diamond Like Carbon)であってもよい。
【0009】
本発明によれば、金属製の放電電極基材をダイアモンド膜で被覆しているため、金属酸化物の生成を大幅に低減させることができる。ダイアモンド被膜は酸化されてもガスを発生させるだけで固体酸化物が生成しないため、発塵による除電対象物の汚染を防止することができる。また、ダイアモンド被膜は耐熱性や耐反応性に優れるため、電極の耐久性を高めることができる。さらに、ダイアモンドは熱伝導性が極めて良好であることから、電極表面からの放熱にも有利であり、コロナ放電の放電開始電圧の低下やイオン発生量の増大にもプラスの効果が期待される。なお、大気中において、ダイヤモンド被膜の電極により、プラズマ放電を実現した事例は見あたらない。
【0010】
このようなダイアモンド被膜の特性を活かすためには、形成される被膜は結晶性の高いものであることが好ましく、かかる被膜を得るためには、マイクロ波プラズマCVD法により、ダイアモンド被膜を形成することが好ましい。
【0011】
また、本発明は上記のコロナ放電電極を備えたコロナ放電装置を含むものである。この装置は、直流コロナ放電でも交流コロナ放電でもよく、また直流の場合に極性の如何を問わない。また、本発明は上記コロナ放電電極を備えた静電気除電装置を含むものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のコロナ放電電極の一実施の形態は、金属製の基材表面にダイアモンド被膜を形成した電極である。ここで、基材金属の種類についてはとくに限定を要しないが、通常コロナ放電電極には、ニッケル・クロム、チタン、タングステン等の耐熱性と耐酸化性を有する高融点金属が用いられる。特に、融点の高いタングステン又はその合金が多用される。
【0013】
本発明は、基材が上記のような耐熱金属のいずれの場合にも適用できるが、とくに基材がタングステン又はその合金である場合に好適である。また、電極の形状もとくに限定を要しないが、放電電極には通常針状又は線状のものが用いられ、本発明はこれらのいずれにも適用できる。
【0014】
基材表面にダイアモンド被膜を形成する方法は、近年種々の方法が試みられ、イオンビーム、イオンプレーティング等のPVD法や、熱CVD、プラズマCVD等のCVD法を用いた被膜形成の事例が多数報告されている。発明の実施の形態においては、CVD法を用いた。
【0015】
CVD法は、炭化水素ガス等の気体原料を励起・分解して、化学的に基材上に炭素結晶を気相成長させるものである。CVD法は熱CVD法とプラズマCVD法に大別されるが、反応種に付与するエネルギーの制御が容易なプラズマCVD法によることが好ましい。また、ダイアモンド被膜は、結晶状態の如何によって、炭素(非晶質炭素又はグラファイト)に近いもの、ダイアモンド結晶化の進んだもの、その中間のもの等種々のものが存在する。本発明においては電極が、無定形炭素のインクルージョンが少なく、結晶性の高いダイアモンド被膜を得るという観点から、マイクロ波プラズマCVD法を採用した。
【0016】
後述する実施例にも示すように、ダイアモンド被膜は必ずしも一様な厚みの被膜が形成されるのではなく、ダイアモンド結晶が粒成長し、粒間がくっついて基材を被覆していくものと考えられる。ダイアモンド結晶粒の大きさは、製膜条件にもよるが、通常は1〜2μm程度である。本発明のコロナ放電電極は、基材の表面が必ずしも完全にダイアモンド粒で覆われている必要は無く、基材金属の露出面積が十分小さくなっていればよいと考えられる。このような被覆状態を膜厚で表現するのは困難であるが、後記実施例に示す装置で、マイクロ波プラズマCVD法で被覆する場合には、2〜3時間程度の製膜時間をとればよい。なお、本発明においては、放電電極の全表面がダイアモンドで被覆されている必要はなく、主にコロナ放電の起こる部位、例えば針状電極ならばその先端付近にダイアモンド被膜が形成されていれば良い。ダイヤモンドそのものを電極としてもよい。
【0017】
このようなダイアモンド膜で被覆した電極のコロナ放電特性については、従来の知見は無い。ダイアモンド自体は絶縁性であるが、ダイアモンドの電子放出性により、コロナ放電にプラスの寄与をすることが期待される。実際に後述する実施例に示すように、ダイアモンド被覆した電極は、被覆しないタングステン電極よりも、放電開始電圧が低下し、かつイオン生成量が増大することが確かめられている。
【0018】
また、ダイアモンド被覆した電極の耐久性の改善については、実施例に示すように、800時間の連続放電におけるイオン発生レベルの経時変化の比較から、ダイアモンド被覆の無い電極よりも、イオン発生レベルの低下が少ないことが明らかになり、ダイアモンド被覆により電極の耐久性が確実に改善されることが確かめられた。
【0019】
本発明は、コロナ放電でイオン化された気体を吹き付けて、帯電体の電荷の中和を行なう除電装置の電極のみならず、粉塵に電荷を与えて集塵や空気の清浄化を行なう除塵装置のコロナ放電電極や、画像形成装置等の感光体の帯電又は帯電の消去等に用いるコロナ放電電極等にも広く適用することができ、いずれも電極の耐久性の向上やコロナ放電へのプラスの寄与などが期待できる。
【0020】
【実施例】
除電装置のコロナ放電用針状タングステン電極について、ダイアモンド被覆をした本発明の電極を作製し(本発明例)、被覆なしの従来電極(比較例)とで、放電特性、除電特性、電極耐久性等を比較した。
放電電極のダイアモンド被膜の形成は、マイクロ波プラズマCVD法によって行なった。図1は、本実施例で用いた製膜装置(ASTEX社製AX−6300)の反応室の構造を示す断面概要図である。反応室は石英管1の内部に形成され、上部のガス導入口2から、原料ガス3が導入される。被覆対象物である針状電極4は、基板支持棒5の上に載置された電極保持治具6で支持されている。
【0021】
図の左側にある図示していない発振器で発振されたマイクロ波は、導波管8により反応室に伝送され、石英管1内の原料ガスを励起して、電極保持治具6の上部付近にプラズマを形成する。これにより、原料ガス中の炭化水素が分解されて、ダイアモンドの結晶が針状電極4の表面に気相成長する。
【0022】
本実施例においては、針状電極4として直径0.6mm、平均長さ6mmで先端を10度以下に尖鋭に研磨したタングステン電極を用いた。電極保持治具6は、熱伝導性の良いアルミニウム円板(外径50mm)に多数の孔を等間隔で精密加工した。各孔に微小なスプリングを挿入し、針状電極4の根元をスプリングで固定して、針先が劒山のように空中に突出してプラズマにさらされるようにした。また、中空の基板支持棒5の内部に冷却用気体7を吹き込んで、その先端及び電極保持治具6を冷却するようにした。
【0023】
この製膜装置を用いて、2.45GHZ、1kWのマイクロ波により、原料ガスとして水素95sccm、メタン4sccm、酸素1sccmの混合ガスを流して、圧力6.6kPaでプラズマを励起し、1時間の製膜を行なった。針先にプラズマが集中するとタングステンが溶融してしまうため、この装置の通常の運転条件(圧力15kPa、電力5kW)に比して、低圧、低電力で製膜を行なった。
【0024】
上記のようにダイアモンド被覆された電極表面の走査型電子顕微鏡写真の例を図2に示す。図2(a)は先端付近の外観を示し、白色部がダイアモンドの結晶粒で、暗色部が地のタングステン又はグラファイトの部分である。ダイアモンドの結晶粒が密接し又は重なり合って、電極表面が高密度に被覆されている様子がうかがえる。図2(b)は側面の外観を示し、縦方向に延在する研磨傷に沿って、ダイアモンド粒子が析出・成長していることがうかがえる。
【0025】
以下、このダイアモンド被覆電極(本発明例)をコロナ放電電極として用いて、被覆無しの電極(比較例)と諸性能を比較した結果について説明する。用いたコロナ放電装置は、静電気除電装置として用いられるもので、図3にその垂直断面の概要図を示す。この装置は、並列に取り付けられた電極によりACコロナ放電を起こし、ワ−クピースに低密度のイオンを含む空気ジェットを吹き付ける方式である。
【0026】
本装置は、接地電位のグリッド12と導電性壁面13に囲まれた針状電極4と、放電空間に空気流を供給するためのライン・フロー・ファン15やフィルター16等から構成せれている(なお本装置は、紙面と直角な方向に複数の電極対が並列に配置された、広幅のものである)。一対の針状電極4には、高抵抗と金属ポストを介して高電圧トランス(図示していない)の二次側から商用周波数の交番電圧が印加され、ACコロナ放電により空気をイオン化する。
【0027】
図4は、高電圧トランス回路の一次側電圧と正負のイオン発生量の関係の例を示す図で、図4(a)は本発明例の電極、図4(b)は同一形状の比較例の電極の場合である。一次側電圧の100Vは二次側で4200Vに相当している。図4(a)の本発明例の方が、イオン発生量が立ち上がる電圧がやや低くなっているように判断される。
【0028】
本図でイオン発生量は、エーベルト法に準じて測定したイオンのカウント数である。なお、図4(a)の本発明例は電極数が2本の場合で、図4(b)の比較例は電極数が4本の場合である。この結果から、ダイアモンド被覆すると、電極数が半分でも被覆無しの場合と同等以上のイオンが発生することが知れる。
【0029】
図5に、長時間の連続放電を行なって、イオン発生量の経時変化を測定した結果の例を示す。この測定結果は大電流のストリーマ放電領域の連続直流放電によって得られたものである。図5(a)の本発明例の電極では、図5(b)の比較例の場合と比して、イオン発生量の減少傾向は緩やかであり、さらに、90%付近で減少傾向が飽和するようである。この結果から、ダイアモンド被覆によりタングステン電極の耐久性が改善されることが確かめられた。
【0030】
【発明の効果】
金属製基材をダイアモンドで被覆した本発明のコロナ放電電極により、その放電特性や耐久性を改善することが可能になった。すなわち、ダイアモンド被覆した本発明の電極では、被覆無しのものと比較して、イオン発生開始電圧は低下の傾向にあり、発生イオン量が増加し、連続放電時のイオン発生量の減少傾向が緩やかになることが確かめられた。また、本発明の電極は、電極からの発塵による除電対象物の汚染を防止することができ、半導体回路等の除電を行なう場合に本発明の意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例で用いた製膜装置の反応室の構成を示す断面概要図である。
【図2】本実施例で製作したダイアモンド被覆電極表面の走査型電子顕微鏡写真の例である。
【図3】本実施例で用いたコロナ放電装置の断面概要図である。
【図4】高電圧トランス回路の一次側電圧と正負のイオン発生量の関係の例を示す図である。
【図5】連続放電時のイオン発生量の経時変化を測定した結果の例を示す図である。
【符号の説明】
1 石英管
2 ガス導入口
3 原料ガス
4 針状電極
5 基板支持棒
6 電極保持治具
7 冷却用ガス
8 導波管
9 パイプ状銅箔
10 テーパー
11 窓
12 グリッド
13 導電性壁面
14 空気流
15 ライン・フロー・ファン
16 フィルター
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電気除去装置等に用いられるコロナ放電電極に関し、とくに電極表面の酸化物の生成や電極表面からの発塵が少なく、耐久性の大きいコロナ放電電極とこれを用いたコロナ放電装置、静電気除電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電気放電(ESD,electrostatic discharge)は、精密電子デバイスの製造工程や実装工程において、様々な障害の原因となる。半導体回路の微細化に伴って、許容される帯電量が微小化し、僅かな帯電でも、ESDによってシリコンの回路や酸化物の絶縁層が破壊される。また、帯電によって塵埃の付着が促進されることも問題である。半導体回路の高集積化には、帯電防止対策が不可欠であり、一般には放電装置によって発生した正、負イオンを気体ジェットにより除電対象物に吹き付けて、電荷を中和するという方法がとられており、このような装置は静電気除電装置と呼ばれる。
【0003】
静電気除電装置は、ニッケル・クロムやタングステン等の針に高電圧を印加し、先端部に局在したコロナ放電を発生させるものであるが、暗流コロナ領域に制限するため高抵抗を通して放電電流を制限している。放電電流を増加させてイオン発生量を増大させようとすると、電極の最先端部分が酸化され、形状変化によって当初のイオン発生量を維持できなくなるという問題があり、これが電極寿命を低下させる。
【0004】
また、酸化物の蓄積量が多くなるとバースト現象を起こして発塵したり、電極先端が局所的に加熱されて金属又は酸化物が蒸発したりして、除電対象物を汚染することも問題である。とくに半導体回路の超微細化に伴って、僅かな汚染も許容できなくなっている。そのため、針状のイオン発生電極が、タングステン電極の表面をニッケルで被覆した積層構造を有することを特徴とするクリーンルーム用イオナイザが提案されている。しかし、本発明者らの知見によれば、かかる手段によっても、電極先端が酸化され、形状変化や発塵が生じるのを根本的に回避することは難しい。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−21131号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、電極先端の酸化物の生成が極めて少なく、そのために電極材料による除電対象物の汚染を防止することができ、かつ耐久性の優れたコロナ放電電極を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明コロナ放電電極は、電極の表面がダイアモンドであることを特徴とする。コロナ放電は、放電電極と対極の間に高電圧を印加することにより起こる。
【0008】
本発明の放電電極は、少なくとも基材とダイヤモンド被膜の2層構造から構成される。また、基材としてはタングステン又はその合金が好適である。なお、上記のダイアモンド被膜は、CVD法や、マイクロ波プラズマCVD法、スパッタリング法であることが好ましい。ダイヤモンド被膜はDLC(Diamond Like Carbon)であってもよい。
【0009】
本発明によれば、金属製の放電電極基材をダイアモンド膜で被覆しているため、金属酸化物の生成を大幅に低減させることができる。ダイアモンド被膜は酸化されてもガスを発生させるだけで固体酸化物が生成しないため、発塵による除電対象物の汚染を防止することができる。また、ダイアモンド被膜は耐熱性や耐反応性に優れるため、電極の耐久性を高めることができる。さらに、ダイアモンドは熱伝導性が極めて良好であることから、電極表面からの放熱にも有利であり、コロナ放電の放電開始電圧の低下やイオン発生量の増大にもプラスの効果が期待される。なお、大気中において、ダイヤモンド被膜の電極により、プラズマ放電を実現した事例は見あたらない。
【0010】
このようなダイアモンド被膜の特性を活かすためには、形成される被膜は結晶性の高いものであることが好ましく、かかる被膜を得るためには、マイクロ波プラズマCVD法により、ダイアモンド被膜を形成することが好ましい。
【0011】
また、本発明は上記のコロナ放電電極を備えたコロナ放電装置を含むものである。この装置は、直流コロナ放電でも交流コロナ放電でもよく、また直流の場合に極性の如何を問わない。また、本発明は上記コロナ放電電極を備えた静電気除電装置を含むものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のコロナ放電電極の一実施の形態は、金属製の基材表面にダイアモンド被膜を形成した電極である。ここで、基材金属の種類についてはとくに限定を要しないが、通常コロナ放電電極には、ニッケル・クロム、チタン、タングステン等の耐熱性と耐酸化性を有する高融点金属が用いられる。特に、融点の高いタングステン又はその合金が多用される。
【0013】
本発明は、基材が上記のような耐熱金属のいずれの場合にも適用できるが、とくに基材がタングステン又はその合金である場合に好適である。また、電極の形状もとくに限定を要しないが、放電電極には通常針状又は線状のものが用いられ、本発明はこれらのいずれにも適用できる。
【0014】
基材表面にダイアモンド被膜を形成する方法は、近年種々の方法が試みられ、イオンビーム、イオンプレーティング等のPVD法や、熱CVD、プラズマCVD等のCVD法を用いた被膜形成の事例が多数報告されている。発明の実施の形態においては、CVD法を用いた。
【0015】
CVD法は、炭化水素ガス等の気体原料を励起・分解して、化学的に基材上に炭素結晶を気相成長させるものである。CVD法は熱CVD法とプラズマCVD法に大別されるが、反応種に付与するエネルギーの制御が容易なプラズマCVD法によることが好ましい。また、ダイアモンド被膜は、結晶状態の如何によって、炭素(非晶質炭素又はグラファイト)に近いもの、ダイアモンド結晶化の進んだもの、その中間のもの等種々のものが存在する。本発明においては電極が、無定形炭素のインクルージョンが少なく、結晶性の高いダイアモンド被膜を得るという観点から、マイクロ波プラズマCVD法を採用した。
【0016】
後述する実施例にも示すように、ダイアモンド被膜は必ずしも一様な厚みの被膜が形成されるのではなく、ダイアモンド結晶が粒成長し、粒間がくっついて基材を被覆していくものと考えられる。ダイアモンド結晶粒の大きさは、製膜条件にもよるが、通常は1〜2μm程度である。本発明のコロナ放電電極は、基材の表面が必ずしも完全にダイアモンド粒で覆われている必要は無く、基材金属の露出面積が十分小さくなっていればよいと考えられる。このような被覆状態を膜厚で表現するのは困難であるが、後記実施例に示す装置で、マイクロ波プラズマCVD法で被覆する場合には、2〜3時間程度の製膜時間をとればよい。なお、本発明においては、放電電極の全表面がダイアモンドで被覆されている必要はなく、主にコロナ放電の起こる部位、例えば針状電極ならばその先端付近にダイアモンド被膜が形成されていれば良い。ダイヤモンドそのものを電極としてもよい。
【0017】
このようなダイアモンド膜で被覆した電極のコロナ放電特性については、従来の知見は無い。ダイアモンド自体は絶縁性であるが、ダイアモンドの電子放出性により、コロナ放電にプラスの寄与をすることが期待される。実際に後述する実施例に示すように、ダイアモンド被覆した電極は、被覆しないタングステン電極よりも、放電開始電圧が低下し、かつイオン生成量が増大することが確かめられている。
【0018】
また、ダイアモンド被覆した電極の耐久性の改善については、実施例に示すように、800時間の連続放電におけるイオン発生レベルの経時変化の比較から、ダイアモンド被覆の無い電極よりも、イオン発生レベルの低下が少ないことが明らかになり、ダイアモンド被覆により電極の耐久性が確実に改善されることが確かめられた。
【0019】
本発明は、コロナ放電でイオン化された気体を吹き付けて、帯電体の電荷の中和を行なう除電装置の電極のみならず、粉塵に電荷を与えて集塵や空気の清浄化を行なう除塵装置のコロナ放電電極や、画像形成装置等の感光体の帯電又は帯電の消去等に用いるコロナ放電電極等にも広く適用することができ、いずれも電極の耐久性の向上やコロナ放電へのプラスの寄与などが期待できる。
【0020】
【実施例】
除電装置のコロナ放電用針状タングステン電極について、ダイアモンド被覆をした本発明の電極を作製し(本発明例)、被覆なしの従来電極(比較例)とで、放電特性、除電特性、電極耐久性等を比較した。
放電電極のダイアモンド被膜の形成は、マイクロ波プラズマCVD法によって行なった。図1は、本実施例で用いた製膜装置(ASTEX社製AX−6300)の反応室の構造を示す断面概要図である。反応室は石英管1の内部に形成され、上部のガス導入口2から、原料ガス3が導入される。被覆対象物である針状電極4は、基板支持棒5の上に載置された電極保持治具6で支持されている。
【0021】
図の左側にある図示していない発振器で発振されたマイクロ波は、導波管8により反応室に伝送され、石英管1内の原料ガスを励起して、電極保持治具6の上部付近にプラズマを形成する。これにより、原料ガス中の炭化水素が分解されて、ダイアモンドの結晶が針状電極4の表面に気相成長する。
【0022】
本実施例においては、針状電極4として直径0.6mm、平均長さ6mmで先端を10度以下に尖鋭に研磨したタングステン電極を用いた。電極保持治具6は、熱伝導性の良いアルミニウム円板(外径50mm)に多数の孔を等間隔で精密加工した。各孔に微小なスプリングを挿入し、針状電極4の根元をスプリングで固定して、針先が劒山のように空中に突出してプラズマにさらされるようにした。また、中空の基板支持棒5の内部に冷却用気体7を吹き込んで、その先端及び電極保持治具6を冷却するようにした。
【0023】
この製膜装置を用いて、2.45GHZ、1kWのマイクロ波により、原料ガスとして水素95sccm、メタン4sccm、酸素1sccmの混合ガスを流して、圧力6.6kPaでプラズマを励起し、1時間の製膜を行なった。針先にプラズマが集中するとタングステンが溶融してしまうため、この装置の通常の運転条件(圧力15kPa、電力5kW)に比して、低圧、低電力で製膜を行なった。
【0024】
上記のようにダイアモンド被覆された電極表面の走査型電子顕微鏡写真の例を図2に示す。図2(a)は先端付近の外観を示し、白色部がダイアモンドの結晶粒で、暗色部が地のタングステン又はグラファイトの部分である。ダイアモンドの結晶粒が密接し又は重なり合って、電極表面が高密度に被覆されている様子がうかがえる。図2(b)は側面の外観を示し、縦方向に延在する研磨傷に沿って、ダイアモンド粒子が析出・成長していることがうかがえる。
【0025】
以下、このダイアモンド被覆電極(本発明例)をコロナ放電電極として用いて、被覆無しの電極(比較例)と諸性能を比較した結果について説明する。用いたコロナ放電装置は、静電気除電装置として用いられるもので、図3にその垂直断面の概要図を示す。この装置は、並列に取り付けられた電極によりACコロナ放電を起こし、ワ−クピースに低密度のイオンを含む空気ジェットを吹き付ける方式である。
【0026】
本装置は、接地電位のグリッド12と導電性壁面13に囲まれた針状電極4と、放電空間に空気流を供給するためのライン・フロー・ファン15やフィルター16等から構成せれている(なお本装置は、紙面と直角な方向に複数の電極対が並列に配置された、広幅のものである)。一対の針状電極4には、高抵抗と金属ポストを介して高電圧トランス(図示していない)の二次側から商用周波数の交番電圧が印加され、ACコロナ放電により空気をイオン化する。
【0027】
図4は、高電圧トランス回路の一次側電圧と正負のイオン発生量の関係の例を示す図で、図4(a)は本発明例の電極、図4(b)は同一形状の比較例の電極の場合である。一次側電圧の100Vは二次側で4200Vに相当している。図4(a)の本発明例の方が、イオン発生量が立ち上がる電圧がやや低くなっているように判断される。
【0028】
本図でイオン発生量は、エーベルト法に準じて測定したイオンのカウント数である。なお、図4(a)の本発明例は電極数が2本の場合で、図4(b)の比較例は電極数が4本の場合である。この結果から、ダイアモンド被覆すると、電極数が半分でも被覆無しの場合と同等以上のイオンが発生することが知れる。
【0029】
図5に、長時間の連続放電を行なって、イオン発生量の経時変化を測定した結果の例を示す。この測定結果は大電流のストリーマ放電領域の連続直流放電によって得られたものである。図5(a)の本発明例の電極では、図5(b)の比較例の場合と比して、イオン発生量の減少傾向は緩やかであり、さらに、90%付近で減少傾向が飽和するようである。この結果から、ダイアモンド被覆によりタングステン電極の耐久性が改善されることが確かめられた。
【0030】
【発明の効果】
金属製基材をダイアモンドで被覆した本発明のコロナ放電電極により、その放電特性や耐久性を改善することが可能になった。すなわち、ダイアモンド被覆した本発明の電極では、被覆無しのものと比較して、イオン発生開始電圧は低下の傾向にあり、発生イオン量が増加し、連続放電時のイオン発生量の減少傾向が緩やかになることが確かめられた。また、本発明の電極は、電極からの発塵による除電対象物の汚染を防止することができ、半導体回路等の除電を行なう場合に本発明の意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例で用いた製膜装置の反応室の構成を示す断面概要図である。
【図2】本実施例で製作したダイアモンド被覆電極表面の走査型電子顕微鏡写真の例である。
【図3】本実施例で用いたコロナ放電装置の断面概要図である。
【図4】高電圧トランス回路の一次側電圧と正負のイオン発生量の関係の例を示す図である。
【図5】連続放電時のイオン発生量の経時変化を測定した結果の例を示す図である。
【符号の説明】
1 石英管
2 ガス導入口
3 原料ガス
4 針状電極
5 基板支持棒
6 電極保持治具
7 冷却用ガス
8 導波管
9 パイプ状銅箔
10 テーパー
11 窓
12 グリッド
13 導電性壁面
14 空気流
15 ライン・フロー・ファン
16 フィルター
Claims (5)
- コロナ放電装置の電極であって、該電極の表面がダイアモンドであることを特徴とするコロナ放電電極。
- 前記コロナ放電電極は、少なくとも基材とダイヤモンド被膜層とから成ることを特徴とするコロナ放電電極。
- 前記基材がタングステン又はその合金からなるものである請求項2に記載のコロナ放電電極。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放電電極を備えたコロナ放電装置。
- 放電電極と対極の間に高電圧を印加してコロナ放電を行う放電電極であって、前記放電電極の表面がダイアモンドである放電電極を備えた静電気除電装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003181655A JP2005019164A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | コロナ放電電極およびコロナ放電装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003181655A JP2005019164A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | コロナ放電電極およびコロナ放電装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005019164A true JP2005019164A (ja) | 2005-01-20 |
Family
ID=34182297
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003181655A Pending JP2005019164A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | コロナ放電電極およびコロナ放電装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2005019164A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102343307A (zh) * | 2011-09-29 | 2012-02-08 | 清华大学 | 一种荷电装置 |
PL422949A1 (pl) * | 2017-09-22 | 2019-03-25 | Katarzyna Anna Mitura | Sposób wytwarzania bioaktywnych folii opakowaniowych |
-
2003
- 2003-06-25 JP JP2003181655A patent/JP2005019164A/ja active Pending
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CN102343307A (zh) * | 2011-09-29 | 2012-02-08 | 清华大学 | 一种荷电装置 |
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