JP2005017079A - 次亜塩素酸濃度測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】3電極方式の測定装置であって、検出電極が炭素電極であり、測定開始に先立って検出電極に該電極を電気化学的に酸化、還元して洗浄/活性化するように電圧を印加する制御回路や、洗浄/活性化した検出電極を所定時間開放した後、定電位に設定し、所定時間経過後の一定期間内に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出する制御回路を有する制御部を具備してなることを特徴とする流水中の次亜塩素酸濃度測定装置。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は流水中の次亜塩素酸のみを選択的に分析する装置であって、長期間にわたって精度よく安定した分析が可能で、しかも自動化が容易な次亜塩素酸濃度測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塩素系消毒剤は消毒水の形で水道水の滅菌をはじめとして、食品工場、プール、温泉施設、病院などで広く使用されている。現在主に使用されている弱アルカリ性から弱酸性の消毒水中には、次亜塩素酸イオン〔ClO− 〕、次亜塩素酸〔HClO〕、そしてごく微量の溶存塩素〔Cl2 〕などが存在するが、その殺菌力は、主として次亜塩素酸〔HClO〕の強力な酸化力に起因すると考えられている。
これらの消毒水、あるいはこれらに由来する塩素系物質が溶存している各種用水や排水においては、工程管理上溶存している塩素系物質の濃度を測定することが重要で、種々の方法が実施されており、また、水溶液中の残留塩素濃度(遊離塩素濃度)を測定する装置も多数市販されている。
【0003】
次亜塩素酸などの残留塩素濃度の測定方法としては、比色法と電気化学的方法が代表的であるが、装置の自動化の観点から見ると電気化学的分析法が主流である。 電気化学的方法を用いる分析法の原理は次のとおりである。
水溶液中に次亜塩素酸が存在するとき、検出電極を適当な電位(基準電極に対する電位:基準電極としては銀/塩化銀電極が一般に用いられている)に設定(以下、電解電位と略)すると、次亜塩素酸〔HClO〕は、電極表面上で(1)の化学式に示すように電気化学的に還元される。
【化1】
HClO+H+ +2e=Cl− +H2 O・・・(1)
このとき、(1)式の電子〔e〕の量を電流値として計測し、次亜塩素酸濃度に換算する。
電解電位をマイナス方向にシフトすると(2)式により次亜塩素酸イオン〔ClO− 〕の電解還元が、さらにマイナスにシフトすると(3)式により溶存酸素〔O2 〕の電解還元による還元電流が加算される。
【化2】
ClO− +H2 O+2e=Cl− +2OH− ・・・(2)
O2 +2H2 O+4e=4OH− ・・・(3)
実際の測定における電解電位は、各電気化学反応式の単極電極電位(水素電極基準)を参考にして決定される。前記(1)、(2)及び(3)式の単極電極電位はそれぞれ〔1.49V〕、〔0.94V〕及び〔0.40V〕である。
【0004】
前記の電流値を計測して次亜塩素酸などの残留塩素濃度を測定する装置として、検出電極と基準電極の2電極を定電圧に保って、流れる電流値を計測する2電極・定電圧方式の装置がある(例えば、特許文献1、2参照)。2電極方式は制御回路が簡素化されることもあって広く採用され、市販品の多くはこの方式である。しかしながら、2電極方式は、基準電位を与える基準電極(銀/塩化銀電極)に電解電流が不可避的に流れ、基準電極値が不安定となり、結果として設定電位が一定しないという大きな欠陥がある。
そのため、電流を流すための補助電極を用いる3電極・定電位電解方式による装置も提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。しかしながら、この3電極・定電位電解装置は、2電極の定電圧方式と比べると制御回路が複雑となって大型するという問題がある。
【0005】
また、電気化学的方法を用いて安定した再現性のある測定結果を得るためには、検出電極表面は、常に一定の状態を保つ必要がある。従来、検出電極としては高価な白金、金等の貴金属が用いられており、適宜、洗浄・活性化を行いながら使用されている。なお、参考文献3、4などには電極材料として白金、金に加えてカーボンも例示されているが、従来、炭素電極を使用した装置は実現されていない。電極の洗浄/活性化方法として、酸素発生の陽極処理と水素発生の陰極処理を交互に行わせる電気化学的方法(例えば、特許文献1参照)と、機械的に研磨する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、電気化学的洗浄/活性化は不十分な結果を与える場合が多く、一方、機械的研磨法は特に自動化を視野に入れたとき、装置が複雑化し、従って装置の制作費が上昇してしまうという欠点がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−185871号公報
【特許文献2】
特開2000−46794号公報
【特許文献3】
特開2001−174431号公報
【特許文献4】
特開2001−108652号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来技術における問題点を解決し、高価な貴金属電極を使用することがなく、従来に比べてより正確な測定値を長期間にわたって安定して得ることができ、しかもコンパクトで自動化が容易な次亜塩素酸濃度測定装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決する手段として次の(1)〜(5)の構成の装置を提供するものである。
(1)検出電極、補助電極及び基準電極を備え、検出電極を定電位に設定し、該検出電極と基準電極との間に流れる電解電流を計測して流水試料中の次亜塩素酸濃度を電気化学的に測定する3電極方式の次亜塩素酸濃度測定装置であって、検出電極が炭素電極、基準電極が銀/塩化銀電極であり、測定開始に先立って検出電極に該電極を電気化学的に酸化、還元して洗浄/活性化するように電圧を印加する制御回路を有する制御部を具備してなることを特徴とする次亜塩素酸濃度測定装置。
(2)洗浄/活性化した検出電極を所定時間開放した後、定電位に設定し、所定時間経過後の一定期間内に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出する制御回路を有する制御部を具備してなることを特徴とする前記(1)の次亜塩素酸濃度測定装置。
(3)補助電極が炭素電極であることを特徴とする前記(1)又は(2)の次亜塩素酸濃度測定装置。
【0009】
(4)検出電極、補助電極及び基準電極を備え、検出電極を定電位に設定し、該検出電極と基準電極との間に流れる電解電流を計測して流水試料中の次亜塩素酸濃度を電気化学的に測定する3電極方式の次亜塩素酸濃度測定装置であって、1つの支持体に炭素電極である検出電極及び補助電極、銀/塩化銀電極である基準電極、pH計測手段及び温度計測手段が集約一体化された構成のセンサー部を有し、測定開始に先立って検出電極に該電極を電気化学的に酸化、還元して洗浄/活性化するように電圧を印加する制御回路と、洗浄/活性化した検出電極を所定時間開放した後、定電位に設定し、所定時間経過後の一定期間内に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出する制御回路を有する制御部を具備してなることを特徴とする次亜塩素酸濃度測定装置。
(5)測定開始に先立って検出電極に該電極を電気化学的に酸化、還元して洗浄/活性化するように電圧を印加する制御回路と、洗浄/活性化した検出電極を所定時間開放した後、定電位に設定し、所定時間経過後の一定期間内に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出する制御回路を有する制御部が、pH、温度及び流水量を測定するアナログ測定機能と周辺機器の動作を制御するデジタル入出力機能を内蔵した制御部であることを特徴とする前記(4)の次亜塩素酸濃度測定装置。
【0010】
本発明の装置においては、電気化学的洗浄/活性化工程を確実なものにするため、検出電極として炭素電極を使用し、電気化学的活性化及びその後の電極開放時間の時間管理を厳密化する制御回路を組み込んでいる。
電気化学的方法を用いて分析装置を作製するとき、電極材質として採用されてきたのは、白金や金などの貴金属電極であって、現在市販されているすべての装置においてこれら貴金属電極が採用されている。貴金属は化学的に安定な酸化膜で覆われていると考えられ、この酸化膜上に有機物などが付着しやすいという欠点があり、その解決策として機械的研磨が推奨されてきた。しかしながら、機械的研磨行程を共存させた装置は機械的要素を含むため安定性がなく、さらに装置全体が複雑化するなどの問題が発生する。
本発明の装置では、検出電極として炭素電極を採用し、電気化学的活性化工程の時間管理を厳密化することにより効果的な洗浄/活性化が可能になり、正確な測定値を安定して得られるようになった。
【0011】
炭素電極とすることにより効果的な洗浄/活性化が可能になった理由は、炭素電極上で電気化学的に酸素を発生させる(電解電位をプラス数Vに設定する)と、電極表面の数層の炭素原子が酸化され二酸化炭素、あるいは一酸化炭素ガスとして取り除かれ、この反応に伴って表面に付着した汚染物は取り除かれ、同時に活性の高い表面が現出するためと考えられる。従って、炭素電極を検出電極として用い電気化学的活性化手段を採用すると、常に新しい電極を用いたのと同じ分析結果、すなわち再現性、安定性の高い測定結果を得ることができる。電気化学的に洗浄/活性化する工程は、例えば10ミリ秒から500ミリ秒間隔でマイナス数Vの還元電位、プラス数Vの酸化電位、マイナス数Vの還元電位、1V程度の安定化電位の順にパルス分極を行い、電極を開回路して所定の時間開放することによって行えばよい。
【0012】
電気化学的活性化により検出電極は洗浄/活性化されるが、その後、電極表面の不活性化が急速に進行する。従って、検出電極は分析操作の直前に必ず活性化する必要性があり、また、活性化後電極を解放し、その解放時間を厳密な一定時間に設定しなければならない。この電気化学的活性化工程後の一定解放時間は、(イ)活性化時の影響を取り除くこと、(ロ)活性化後の不活性化を極力小さく押さえること、(ハ)測定時間の短縮、などの点を考慮して決定する。この電極開放時間は(ハ)の点を考慮すれば短い方が好ましいが、(イ)及び(ロ)の点を考慮して決定する(例えば2秒程度)。この開放時間は同一、一定間隔として厳密に管理する必要があるので、洗浄/活性化工程は制御回路によりコンピュータ制御する。
【0013】
電気化学的手法により次亜塩素酸濃度を測定するためには、設定電解電位を長期間安定に保つ必要があり、そのためには基準電極が長期間安定である必要がある。現在、基準電極として、一般に用いられているのは銀/塩化銀電極であり、本発明の装置においてもこの銀/塩化銀電極を使用する。また、基準電極に電解電流が流れると設定電解電位が不安定になる。そのため本発明の装置では検出電極、基準電極の他に電解電流部分を担う電極(補助電極)を設けた3電極方式の定電位電解方式を採用している。しかし、この3電極・定電位電解方式の装置は、2電極の定電圧方式の装置と比べると制御回路が複雑となって大型するため、市販されている分析装置は2電極方式が主流である。本発明の装置は、定電位電解部をコンピュータ制御部と一体化し、かつ小型化するように回路設計することによって、3電極方式が採用されているにかかわらず、コンパクトな装置とすることができた。
補助電極は化学的に不活性で、毒性のないものであれば特に材質に制限はな区、従来使用されていた金、白金等が使用できるが、検出電極と同様に炭素電極を使用するのが経済的であり好ましい。補助電極は電流を捕捉しやすいよう検出電極に比べて表面積が大きいものを使用し、流水との接触効率がよくなるような形で設置する。
【0014】
本発明の装置により水溶液中の次亜塩素酸濃度を測定する場合、洗浄/活性化した検出電極を所定時間開放した後、定電位に設定し、検出電極と補助電極間に流れる電解電流を計測する。従来の電気化学的分析装置では、検出電極を電解電位に設定後直ちに電解電流値を測定し、その電流値を濃度に換算して分析値としているが、本発明の装置では、定電位に設定した直後の電解電流の計測値は採用せず、所定の除外期間をおいたあとの一定期間内に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出する制御回路を設けている。このようにして電解初期に観察される電解電流を測定結果から取り除くことによって、初期の電極近傍に高濃度に存在する物質に起因する不安定電流領域を取り除くことができ、流動によって運ばれる流水検体中の電気化学的活性物質濃度のみを直接分析結果に反映させることができる。また、測定値は所定時間間隔の電流の積分値であることから、測定時に誤差の原因となる周期的ノイズを必然的に取り除くことになる。
本発明の場合、次亜塩素酸濃度測定用の電解電位は50mV±100mV(銀/塩化銀基準電極基準)の範囲とする。この電解電位は前記の式(1)〜(3)における単極電極電位(水素電極基準)を参考として多数の実験を重ね、思考錯誤により決定したものである。
【0015】
前記の除外期間の長さは、測定条件等により異なるが、要は電流値がほぼ一定になるまでとすればよく、通常は15秒程度で十分である。積算電気量を求める期間は長い方が平均したデータが得られるが、長くなればそれだけ分析所要時間が長くなる。本発明の装置によれば十分安定した計測値が得られるので10秒程度で十分である。制御回路には予め測定した電解電気量と次亜塩素酸濃度との相関データが入力されており、計測した積算電気量から次亜塩素酸の濃度を算出することができる。
本発明の装置による次亜塩素酸の分析操作は、検出電極を洗浄/活性化した後(開放時間を含む)、定電位に設定して電流の計測を開始し、計測開始初期のデータを除外してその後の所定時間に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出するものである。この一連の分析操作において各工程の操作条件は常に一定としておくことが必要である。
【0016】
分析装置の信頼のおける運転には、常に装置の安定動作と分析結果の信頼性を確認する必要性がある。本発明装置は、流水中の物質の分析を目的として構築され、しかも検出電極を定電位に設定し、所定時間経過後の計測値を分析値として採用するようにしている。次亜塩素酸の電気化学的還元反応は速度が大きく、電解電流は拡散律速電流(電解物質の電極への拡散によって電解電流が律速されている)を電流値として測定していると考えられる。本発明において流水中と規定したのは、電解物質である次亜塩素酸の電極表面への拡散速度を大きくするためである。その結果、測定電気量は大きな値をとり、一定時間後、理論的には一定の値となる。一方、理想的静水時の電流測定値は、時間とともに減少し理論的には「ゼロ」に近づく。実験結果からも本発明装置のように一定時間後の電解電気量を測定した場合、静水時の電気量測定値を「ゼロ濃度」の値と推定できることが確認された。これは本発明装置の一つの大きな特徴であって、必要に応じて静水時の状態を作り「ゼロ濃度」を確認することができ、測定結果の信頼性を高めることができた。
【0017】
本発明の装置の好ましい形態として、センサー部をプラスチックなどの1つの支持体に炭素電極である検出電極及び補助電極、銀/塩化銀電極である基準電極、pH計測電極及び温度計測手段が集約一体化された構成とすることができる。このように構成したセンサー部は各種パイプ内の流水中に直接設置し次亜塩素酸濃度分析を行うことができる。また、本発明装置にはpHや温度の測定、さらには流水量測定などアナログ測定の機能や、ポンプなどの動作を制御するデジタル入出力機能を内蔵させることにより、消毒システムのエンジニアリングにおいて中心的制御装置としても充分に機能する能力を持たせることができる。
【0018】
なお、本発明装置は流水中に設置して次亜塩素酸濃度を測定する装置として開発されたが、従来の分析装置と比べて、流水時の測定結果が静水時の場合と比較して極端に大きく、また流水速度による測定値の影響が小さいことから、流水量を定量化できないマグネチックスターラーによるサンプル水の攪拌によっても良好な分析結果を与えることが確認された。このことから、適当な攪拌手段を備えれば本発明装置はサンプル水の分析にも応用可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の次亜塩素酸濃度測定装置について具体的に説明する。
図1は本発明の次亜塩素酸濃度測定装置の1構成例を模式的に示す説明図である。図1において符号1及び5はそれぞれ測定対象の試験水が流れるパイプ10内に挿入されたセンサー部と、流水量センサーであり、2はアナログ制御部3とデジタル制御部4を有する制御部である。デジタル制御部4はレコーダ6とパーソナルコンピュータ(又はタッチパネル)7に接続されており、デジタル入力8及びデジタル出力9により周辺器具を制御するように構成されている。制御部2は測定開始に先立ってセンサー部1の検出電極に該電極を電気化学的に酸化、還元して洗浄/活性化するように電圧を印加する制御回路、及び洗浄/活性化した検出電極を所定時間開放した後、定電位に設定し、所定時間経過後の一定期間内に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出する制御回路を備えている。この例では、制御部2は1枚のプリント板(105×270mm)上に、アナログ計測回路とデジタル制御回路が共存している。このプリント基板回路は、パソコンまたはタッチパネルとRS232Cのシリアル通信を介しての命令によって、センサー部を操作して分析結果を得、各種デジタル機器を制御することができる。
【0020】
図2はセンサー部1の要部(先端部)を示す説明図であり、図2(a)は概略見取り図であり、図2(b)はその側面断面の展開図である。このセンサー部1は複合電極であって、検出電極11、基準電極12、補助電極14、温度センサー19を入れる温度センサー室16、オプションで半導体pH電極15が塩化ビニル樹脂製の支持体17(直径15mm)により一体化されたものである。この例において、検出電極11は直径3ミリの炭素棒で、20ppmまでの低濃度分析には支持体17から15ミリ露出させた炭素棒の円柱側面を電極として使用し、2000ppmまでの高濃度分析には支持体17からの露出部分を少なくしその断面を電極面として使用した。補助電極14としては、直径10ミリの炭素棒を使用した。銀/塩化銀電極である基準電極12を収納した標準電極室18はマイクロフィルタ13を隔てて試験水と接触するように支持体17で支持されており、その標準電極室18は、飽和塩化カリウム水溶液で満たされ、塩化銀がメッキされた銀線(基準電極12)が封入されている。
【0021】
このような構成の装置により内径20mmのパイプ中の流水中の次亜塩素酸濃度の分析試験を行った。
全ての測定に先立って、検出電極11を図3に示す標準的なパターンによる電解電位操作で電気化学的に洗浄/活性化した。すなわち、検出電極11を10ミリ秒間隔で、マイナス5Vの還元電位、5Vの酸化電位、マイナス5Vの還元電位、1Vの安定化電位、の順にパルス分極を行い、その後電極を開回路して2秒間放置した。引き続き直ちに、検出電極の電解電位をプラス50mVに設定し、15秒間の電解電流を除外し、その後の10秒間に消費された電解電気量を計測し次亜塩素酸濃度に換算して分析値とした。なお、図3には電解電位をプラス50mVに設定した後の15秒間の除外期間の初めの部分までを示した。このパターンによる分析所要時間は1回当たり約30秒であった。
【0022】
図4及び図5はpH6.5、流水量10リットル/分の条件で所定濃度の次亜塩素酸を含む試験水について測定した電解電気量(クーロンの相対値)と次亜塩素酸濃度(ppm)との関係を示すグラフである。図4は低濃度用の検出電極を用いて濃度10ppmまでの低濃度溶液について測定した結果であり、図5は高濃度用の検出電極を用いて1000ppmまでの高濃度溶液について測定した結果である。いずれの場合も電解電気量と次亜塩素酸濃度とは良好な相関関係を示し、測定の再現性は測定値平均の1%以内であった。なお、図4及び図5において点線は静水状態で測定した結果を示しており、いずれも静水の状態では電気量はほとんどゼロであることがわかる。
【0023】
また、図6は次亜塩素酸濃度が50ppmの試験水について、流水量を変えて電気量を測定した結果(高濃度用電極を使用)であり、流水量がゼロ、すなわち静止水の場合、測定値はゼロに近く、また試験水中の次亜塩素酸濃度による変化は小さい。また、5から15リットル/分における測定電気量の差は、0から5リットル/分における変化分と比べて非常に小さく、5リットル/分以上の流量があれば安定した測定値が得られることがわかる。さらに、静水中では電解電気量がほとんどゼロになることから、流水中での測定時に随時静止状態として測定を行い、測定値がゼロになることを確認することによって、装置が正常に作動していることを確認することができる。
以上の結果を総括すると、この装置は消毒システムのエンジニアリングにおいて中心的制御装置として充分に機能する能力を有する次亜塩素酸濃度分析装置であり、0〜2000ppmの測定範囲で、最大測定設定値の±1%という高い精度/感度で、分析所要時間約30秒という優れた性能を有することがわかる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の次亜塩素酸濃度測定装置は、高価な貴金属電極を使用することがなく、従来の装置に比べてより正確な測定値を長期間にわたって安定して得ることができ、しかもコンパクトで自動化が容易な次亜塩素酸濃度測定装置である。
また、この分析装置は分析試薬などを一切使用しないので、分析による殺菌水などの分析対象水の汚染も皆無であるため、センサー部を消毒水パイプラインの中などに直接組み込むことが可能である。
本発明の装置は、塩素系消毒剤を含む消毒水、あるいはこれらに由来する塩素系物質が溶存している各種用水や排水中の次亜塩素酸の濃度測定装置として極めて優れた性能を有するものである。また、消毒水の流量測定や、薬液注入ポンプ制御などの周辺の機器の制御指令が可能なように制御回路を設計することにより、システムエンジニアリングの中心部を担う装置として活用することができるので、殺菌工程を必要とする産業上での利用分野は無限に広がっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の次亜塩素酸濃度測定装置の1構成例を模式的に示す説明図。
【図2】図1のセンサー1の要部(先端部)を示す説明図。
【図3】電気化学的洗浄/活性化の電解電位操作の1パターンを示す説明図。
【図4】低濃度の次亜塩素酸を含む試験水について測定した電解電気量と次亜塩素酸濃度との関係を示すグラフ。
【図5】高濃度の次亜塩素酸を含む試験水について測定した電解電気量と次亜塩素酸濃度との関係を示すグラフ。
【図6】次亜塩素酸を含む試験水について流水量を変えて電気量を測定した結果を示すグラフ。
【符号の説明】
1 センサー部 2 制御部 3 アナログ制御部
4 デジタル制御部 5 流水量センサー 6 レコーダ
7 パーソナルコンピュータ(又はタッチパネル) 8 デジタル入力
9 デジタル出力 10 パイプ 11 検出電極 12 基準電極
13 マイクロフィルタ 14 補助電極 15 半導体pH電極
16 温度センサー室 17 支持体 18 標準電極室
19 温度センサー
Claims (5)
- 検出電極、補助電極及び基準電極を備え、検出電極を定電位に設定し、該検出電極と基準電極との間に流れる電解電流を計測して流水試料中の次亜塩素酸濃度を電気化学的に測定する3電極方式の次亜塩素酸濃度測定装置であって、検出電極が炭素電極、基準電極が銀/塩化銀電極であり、測定開始に先立って検出電極に該電極を電気化学的に酸化、還元して洗浄/活性化するように電圧を印加する制御回路を有する制御部を具備してなることを特徴とする次亜塩素酸濃度測定装置。
- 洗浄/活性化した検出電極を所定時間開放した後、定電位に設定し、所定時間経過後の一定期間内に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出する制御回路を有する制御部を具備してなることを特徴とする請求項1に記載の次亜塩素酸濃度測定装置。
- 補助電極が炭素電極であることを特徴とする請求項1又は2に記載の次亜塩素酸濃度測定装置。
- 検出電極、補助電極及び基準電極を備え、検出電極を定電位に設定し、該検出電極と基準電極との間に流れる電解電流を計測して流水試料中の次亜塩素酸濃度を電気化学的に測定する3電極方式の次亜塩素酸濃度測定装置であって、1つの支持体に炭素電極である検出電極及び補助電極、銀/塩化銀電極である基準電極、pH計測電極及び温度計測手段が集約一体化された構成のセンサー部を有し、測定開始に先立って検出電極に該電極を電気化学的に酸化、還元して洗浄/活性化するように電圧を印加する制御回路と、洗浄/活性化した検出電極を所定時間開放した後、定電位に設定し、所定時間経過後の一定期間内に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出する制御回路を有する制御部を具備してなることを特徴とする次亜塩素酸濃度測定装置。
- 測定開始に先立って検出電極に該電極を電気化学的に酸化、還元して洗浄/活性化するように電圧を印加する制御回路と、洗浄/活性化した検出電極を所定時間開放した後、定電位に設定し、所定時間経過後の一定期間内に流れる電解電流を計測し、その積算電気量から次亜塩素酸濃度を算出する制御回路を有する制御部が、pH、温度及び流水量を測定するアナログ測定機能と周辺機器の動作を制御するデジタル入出力機能を内蔵した制御部であることを特徴とする請求項4に記載の次亜塩素酸濃度測定装置。
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Cited By (3)
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JP2005274226A (ja) * | 2004-03-23 | 2005-10-06 | Akifumi Yamada | 遊離残留塩素濃度測定装置および遊離残留塩素測定方法 |
JP2009533658A (ja) * | 2006-04-10 | 2009-09-17 | ディアグノスイス ソシエテ アノニム | 最適化電流測定検出を用いる小型バイオセンサー |
JP2011027584A (ja) * | 2009-07-27 | 2011-02-10 | Horiba Advanced Techno Co Ltd | 水質測定装置 |
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