JP2005015716A - ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリカーボネートの透明性を維持し、紫外線吸収能および耐候性に優れ、金型汚染がほとんどなく、かつ耐薬品性に優れるのみならず離型性にも優れた、ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b)数平均分子量が200〜1,000の飽和脂肪族炭化水素0.05〜2重量部及び(c)蛍光増白剤0.001〜0.2重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b)数平均分子量が200〜1,000の飽和脂肪族炭化水素0.05〜2重量部及び(c)蛍光増白剤0.001〜0.2重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、紫外線吸収能、耐候性に優れ、且つ、耐薬品性及び離型性にすぐれた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、および該組成物から得られる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、透明で、強度、剛性、耐摩擦磨耗性等の機械的物性にも優れた樹脂であり、例えば、自動車部品、、電気・電子機器、光学機器、医療用機器、及びこれら機器の部品、各種精密機械部品等に広く用いられている。しかしながら、その用途によっては、ポリカーボネート樹脂が本来有する性能では不十分であり、更に種々の性能を付与することが試みられている。例えば、ポリカーボネート樹脂は、紫外線吸収能が十分ではなく、屋外で使用される場合は、紫外線による劣化により強度が低下したり変色するため使用が制限されていた。また、用途によっては耐薬品性の向上が求められていた。それ故、これらの性質を改良するため、従来より、種々の安定剤等を配合した組成物が提案されている。
【0003】
例えば、耐候性を改良して屋外使用するために、ポリカーボネート樹脂にベンゾトリアゾール化合物からなる紫外線吸収剤とクマリン化合物およびナフタルイミド化合物から選ばれる蛍光増白剤が添加されたポリカーボネート樹脂組成物(特許文献1)、ポリカーボネート樹脂とトリアジン化合物からなる紫外線吸収剤とクマリン化合物およびナフタルイミド化合物から選ばれる蛍光増白剤が添加されたポリカーボネート樹脂組成物(特許文献2)、ポリカーボネート樹脂に350〜400nmの紫外線領域に極大吸収波長を有しない紫外線吸収剤と、蛍光増白剤を含有してなるポリカーボネート樹脂組成物(特許文献3)等が提案されている。しかしながら、これらは十分な紫外線吸収能を有しているとはいえず、また、耐薬品性が不十分であった。また、紫外線吸収剤は揮発性を有するため、耐候性を上げるために添加量を増加させるに従い、金型汚染性が高くなるという問題があった。
耐薬品性を改良するためには、ポリカーボネート樹脂に共重合ポリエステル樹脂を配合した組成物(例えば特許文献4参照)が提案されており、さらに耐薬品性と耐候性を改良するために、ポリカーボネート樹脂に共重合ポリエステルと耐候安定剤としての紫外線吸収剤を配合した組成物(例えば特許文献5)が提案されている。しかしながら、更に優れた紫外線吸収能、耐薬品性等の性能を有するポリカーボネート樹脂材料が求められている。
【0004】
一方、ワックス類などの飽和脂肪族炭化水素類は、一般にプラスチックの離型剤であり、ポリカーボネート樹脂の離型剤としても知られているが、ポリカーボネートへの相溶性が悪いため成形品が不透明になる畏れがある(特許文献6、7)。そのため、特に透明性を要求される用途には用いられていなかった。また、飽和脂肪族炭化水素類が、ポリカーボネート樹脂の耐薬品性に与える効果は全く報告されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−196904号公報
【特許文献2】
特開平10−176103号公報
【特許文献3】
特開2002−3710号公報
【特許文献4】
特開2000−103948号公報
【特許文献5】
特開2001−207064号公報
【特許文献6】
特公昭47−41093号公報
【特許文献7】
特公昭56−34179号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ポリカーボネートの透明性を維持し、金型汚染がほとんどなく、かつ耐薬品性に優れるのみならず離型性にも優れた、ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは種々検討を重ね、蛍光増白剤を単独で用いると少量の添加量で紫外線吸収能を発現するため金型汚染の畏れがなく、且つ、特定の飽和脂肪族炭化水素を特定量用いると、驚くべきことに、ポリカーボネートの透明性を損なうことなく耐薬品性を奏することを知り本発明を達成した。すなわち、本発明の要旨は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b)数平均分子量が200〜1,000の飽和脂肪族炭化水素0.05〜2重量部及び(c)蛍光増白剤0.001〜0.2重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物、及びかかるポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明で使用する(a)芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネートの重合体または共重合体が挙げられる。
【0009】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、必要に応じ2種以上混合して使用してもよい。これらの中では特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好適に使用される。
【0010】
また、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上記の如きジヒドロキシ化合物と共に、フロログルシン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等で例示されるポリヒドロキシ化合物、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等のポリヒドロキシ化合物を使用すればよい。
【0011】
ジヒドロキシ化合物とホスゲン或いは炭酸ジエステルの反応は公知の方法が採用される。ホスゲンを使用する場合は、末端停止剤または分子量調節剤を使用してもよい。末端停止剤または分子量調節剤としては、一価のフェノール性水酸基を有する化合物が用いられ、例えば、フェノール、p−t−ブチルフェノール、トリブロモフェノール等の他に、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、アルキルエーテルフェノール等が例示される。本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の場合、末端停止剤または分子量調節剤は、必要に応じ2種以上混合して使用してもよい。
【0012】
本発明に使用される(a)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、通常20,000〜50,000であることが好ましく、より好ましくは20,000〜45,000であり、さらに好ましくは21,000〜40,000である。粘度平均分子量は、メチレンクロライド溶媒中25℃で測定された溶液粘度より換算される。
【0013】
本発明に使用される(b)飽和脂肪族炭化水素は、数平均分子量が200〜1,000の飽和脂肪族炭化水素であり、通常、パラフィンワックスと呼ばれるものである。分子量が200より小さい飽和脂肪族炭化水素は、成形時に揮発しやすいため、金型汚染を惹起する畏れがあり、結果的に添加量を減少させるため、耐薬品性及び離型性が不足するおそれがある。また分子量が1,000より大きいと、ポリカーボネートとの相溶性が悪く、得られる成形品の透明性が低下するので好ましくない。好ましい分子量は300〜1,000、より好ましくは300〜800である。
【0014】
本発明樹脂組成物中の、(b)飽和脂肪族炭化水素の量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.05〜2重量部であり、好ましくは0.07〜1.7重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。飽和脂肪族炭化水素の量が0.05重量部よりも少ない場合は、耐薬品性が不十分であり、一方、2重量部より多いと、成形品の透明性が低下し、或いは成形時の揮発による金型汚染を惹起するので好ましくない。
【0015】
本発明に使用される(c)蛍光増白剤は、紫外線を吸収し、そのエネルギーを可視部の青紫色の光線に変えて放射する作用を有するものであれば、特に限定されないが、クマリン系化合物およびベンゾオキサゾ−ル系化合物が好ましい。
【0016】
好ましいクマリン系化合物の蛍光増白剤としては、3−フェニル−7−アミノクマリン,3−フェニル−7−(イミノ−1’3’5’−トリアジン−2’−ジエチルアミノ−4’−クロロ)−クマリン、3−フェニル−7−(イミノ−1’3’5’−トリアジン−2’−ジエチルアミノ−4’−メトキシ)−クマリン、3−フェニル−7−(2H−ナフト(1,2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン、4−メチル−7−ヒドロキシ−クマリンなどをあげることができる。
【0017】
好ましいベンゾトリアゾ−ル系化合物の蛍光増白剤としては、2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール)、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン,4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)−4’−(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)フランなどをあげることができる。また、商品名「ハッコールPSR」(ハコール産業社)や商品名「UVITEX OB、UVITEX OB−ONE」(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)等の市販品を使用することも出来る。
【0018】
本発明組成物中の(c)蛍光増白剤の量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の範囲から選ばれる。蛍光増白剤の量が0.001重量部未満であると、成形品の黄色味を消し、明るさを増加させるという機能、および紫外線を吸収し可視部の青紫色に放射する機能が十分に発揮されず、一方、0.2重量部を超えてもそれ以上の蛍光増白剤としての添加効果は見られない。蛍光増白剤の配合量の好ましい範囲は、0.003〜0.15重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.12重量部である。
【0019】
本発明樹脂組成物は、上記の(a)、(b)、(c)成分を必須成分として含有するものであるが、更に(d)亜リン酸エステル系安定剤を含有することが好ましい。本発明において用いられる(d)亜リン酸エステル系安定剤(以下、単に「リン系安定剤」ということがある)としては、種々のものが使用されるが、耐加水分解性が要求される組成物については、ペンタエリスリトール構造を有する亜リン酸エステル系安定剤の使用は、プレッシャークッカ−試験(120℃,100%RH,5hr)後に、成形品が白濁する場合があり好ましくない。
【0020】
本発明において用いられる(d)亜リン酸エステル系安定剤としては、下記一般式(1)および/または(2)で示される化合物が好ましく用いられる。
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、R1は、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)。
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、R2〜R4は、同じまたは異なって、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、p及びqは、それぞれ0〜4の整数を表す。)。
これらR1およびR2〜R4で示される基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基などの脂環族炭化水素基、フェニル基などの芳香族炭化水素基が好ましい。また、これらの基はヒドロキシル基などの置換基で置換されていてもよい。
【0025】
上記一般式(1)または(2)の構造を有する亜リン酸エステル系安定剤としては、具体的には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイト及びトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。これらの安定剤のうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0026】
本発明組成物中の(d)亜リン酸エステル系安定剤の含有量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部である。亜リン酸エステル系安定剤の量が0.01重量部より少ないと、安定剤としての効果が不十分であり、一方、2重量部を超えてもそれ以上の安定剤としての効果は得られない。亜リン酸エステル系安定剤の量は,0.02〜1重量部が好ましい。
上記リン系安定剤を用いることにより耐候性(紫外線吸収能)、耐衝撃性、透明性、色調安定性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られるが、このリン系安定剤に加えて、さらに(e)フェノール系抗酸化剤を配合することにより、さらに耐候性、色調安定性が優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
本発明に使用される(e)フェノール系抗酸化剤としては,特に制限はないがヒンダードフェノール系化合物が好適に用いられる。代表的な例としてはペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’、3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
上記のうちで、特にペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキ−シ−2,)5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]1,1−ジメチルエチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。
【0028】
本発明組成物中の(e)フェノール系抗酸化剤の量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部である。配合量が0.01重量部より少ない場合には、抗酸化剤としての効果が不十分であり、一方、2重量部を超えて添加してもそれ以上の抗酸化剤としての効果は得られない。フェノール系抗酸化剤の配合量は、0.02〜1重量部が好ましい。
【0029】
更に必要あれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、上記の(a)〜(e)の成分の他に、離型剤、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料などの添加剤や、その目的に応じ、所望の特性を付与する他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤、発泡剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維、繊維状マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカー、セラミックウィスカー、マイカ、タルク等の補強剤、充填剤などの一種または二種以上を含有させてもよい。
【0030】
離型剤を使用する場合は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種の化合物等芳香族ポリカーボネート樹脂に使用されるものが用いられる。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0031】
脂肪族カルボン酸としては、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸、特に、脂肪族飽和モノカルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコール、特に脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
離型剤の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して5重量部以下であり、好ましくは1重量部以下である。5重量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
【0032】
イオウ系酸化防止剤を配合する場合は、例えば、ジラウリル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ジトリルデシル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などを上げることが出来る。上記の中、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
【0033】
イオウ系酸化防止剤を添加すると、組成物の安定性を向上させると共に、特にリサイクル安定性、すなわち本発明樹脂組成物から形成された成形品を再度樹脂材料として再使用する場合、成形品の着色を抑制する効果がある。
イオウ系酸化防止剤の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、0.01〜2重量部である。配合量が0.01重量部より少ないと、成形時のリサイクル安定性が不十分であり、一方、2重量部を超えて添加してもそれ以上の効果は得られない。イオウ系酸化防止剤の添加量は、好ましくは0.02〜1重量部であり、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。
【0034】
本発明樹脂組成物は紫外線吸収能を有するが、更に必要であれば紫外線吸収剤を併用することもできる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系などがあげられる。
【0035】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキジ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0036】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0037】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリーブチルフェニル−3,5−ジターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートなどが挙げられる。
【0038】
紫外線吸収剤には、上に挙げた4種類の化合物類以外に紫外線の保有するエネルギーを、分子内で振動エネルギーに変換し、その振動エネルギーを、熱エネルギーなどとして放出する機能を有する化合物が含まれる。さらに、酸化防止剤または着色剤などと併用することによって相乗効果を発揮するもの、またはクエンチャーと呼ばれる、光エネルギー変換剤的に作用する光安定剤などを併用することもできる。
【0039】
紫外線吸収剤の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.01〜2重量部の範囲で選ばれる。紫外線吸収剤が0.01重量部未満であると、その効果が不十分であり、2重量部を越えると成形品の黄味が強くなって調色性が劣ったり、また成形品表面にブリードアウトし易い傾向がある。紫外線吸収剤の好ましい配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.05〜1.8重量部であり、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。
【0040】
また、必要に応じて添加される顔料や染料は、従来から目的に応じて芳香族ポリカーボネート樹脂に適宜使用されるそれ自体公知のものが使用される。
【0041】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、最終成形品を成形する直前迄の任意の段階で、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)数平均分子量が200〜1,500の飽和脂肪族炭化水素、(c)蛍光増白剤、さらに必要であれば(d)亜リン酸エステル系安定剤、(e)フェノール系抗酸化剤及び必要に応じて用いられるその他の添加剤を配合し、溶融混練する方法が挙げられる。配合方法は、当業者に周知の種々の方法を採用することが出来、例えばタンブラー、ヘンシェルミキサーなどを使用する方法、フィーダーにより定量的に押出機ホッパーに供給して混合する方法などが挙げられる。混練方法としては一軸押出機、二軸押出機などが使用出来る。
【0042】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形など、慣用の熱可塑性樹脂の成形方法に従って、所望の成形品とすることが出来る。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は透明性に優れ、厚さ3mmの試験片での測定値として、曇り度(ヘーズ値)が通常3%以下、更には2%以下の成形品を得ることが出来るが、通常のポリカーボネートの透明成形品に求められるヘーズは17%以下、好ましくは10%以下程度(特許文献5の第10欄末〜11欄2行)であることを考慮すると、極めて透明性に優れていることが分かる。また、本発明のポリカーボネート樹脂は耐薬品性を有すると共に、紫外線吸収能に優れ、厚み3mmにおける波長410nmの光線透過率が3%以下であり、かつ、波長400nmの光線透過率が0.4%以下、更には波長410nmの光線透過率が1%以下であり、かつ、波長400nmの光線透過率が0.3%以下の成形品を得ることが出来る。また、後記実施例に示すように、少量の蛍光増白剤の添加で3mm厚みにおける光線透過率が0.05%以下となる(実質的に光線を透過しない)波長が400〜410nmに有り、紫外線吸収剤(特許文献1,3,5で使用の耐候性改良剤)を用いた組成物に比し、透明性を維持し、広い波長範囲で紫外線透過を阻止することができ、かつ添加量が紫外線吸収剤より少量で優れた紫外線吸収能を示すので、金型汚染性も良好である。
【0043】
本発明により得られた成形品は、透明性、紫外線吸収能、及び耐薬品性に優れると共に、ポリカーボネート樹脂が有する種々の優れた機械的、熱的性質を有している。その用途としては、紫外線や薬品による劣化が懸念される用途のみならず、広い範囲の用途に使用可能であり、例えば、シート、フィルム、雑貨、家電部品、自動車部品、建築材料、中空容器などが挙げられる。更に具体的には、アーケード、カーポート、屋内プール等の屋根用パネル、表示板カバー、スイッチボタン、表示ボタン、表示パネル、メーターパネル等の透過光式成型品、デリニエーター、信号灯、遮音壁、自動車のサイドウィンドー、リアクオーターウィンドー、サンルーフ、リアパネルガーニッシュ、ヘッドランプレンズ、テールランプ等の自動車部品、鉄道用灯具カバー、カメラレンズ、電話ジャック、リレーカバー、端子台カバー、太陽電池ハウジング、アイロン水タンク、コントロールボックス、パチンコ用玉入れケース、飾り治具、スキー用などのゴーグル、保護眼鏡レンズ、サングラスレンズ、保護面体、人工透析器、人工肺ケース及びそのキャップ並びにコネクター、街灯カバー等が挙げられる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した原材料および評価方法は次の通りである。
【0045】
(1)ポリカーボネート樹脂:粘度平均分子量が25,000のポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート。
【0046】
(2)飽和脂肪族炭化水素−1:日本精蝋製「パラフィンワックス155」、平均分子量約480。
(3)飽和脂肪族炭化水素−2:ヘキスト社製「ヘキストワックスPE520」、平均分子量約2,000.
【0047】
(4)共重合ポリエステル樹脂:ナフタレンジカルボン酸8モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、極限粘度0.81;三菱化学社製「ノバペックス NC102Z」。
【0048】
(5)蛍光増白剤−1:3−フェニル−7−(2H−ナフト(1,2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン;ハッコールケミカル社製「ハッコールPSR」。
(6)蛍光増白剤−2:2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール);チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「UVITEX OB」。
(7)蛍光増白剤−3:4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「UVITEX OB−ONE」。
【0049】
(8)リン系安定剤−1:トリス(2,4―ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト。
(9)リン系安定剤−2:2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト。
【0050】
(10)フェノール系抗酸化剤:ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「IRGANOX1010」。
【0051】
(11)紫外線吸収剤:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール。
【0052】
<評価方法>
(A)曇度(ヘーズ値):3mm厚みのプレートを成形し、濁度計NDH−2000(日本電色工業(株)製)で測定した。
(B)光線透過率:3mm厚みのプレートを成形し、分光光度計UV−3100PC(島津製作所製)を用いて、JIS−K7361に準拠して、波長410nm、波長400nmの光線透過率、及び光線透過率が0.05%以下となる波長を測定した。
【0053】
(C)成形品の離型性:コップ金型を用いて、成形温度290℃でコップ型成形品を成形した際の離型性を、以下の基準で評価した。
○;離型性良好 △;離型性普通 ×;離型性不良
【0054】
(D)耐薬品性:厚さ4mmのISO試験片に、0.5%の歪みを与え、この試験片を20℃、濃度100%のブタノール中に浸漬し、クラック発生までの時間を測定し、次の基準で評価した。
○:クラック発生までの時間が60秒以上
△:クラック発生までの時間が30〜60秒
×:クラック発生までの時間が30秒未満
【0055】
(E)金型汚染性:日精樹脂製PS−40成形機を用い、しずく型金型を用いて、成形温度290℃で500ショット連続成形し、終了後金型の付着物の有無を観察し,次の基準で評価した。
○:金型の付着物が少ない。△:金型の付着物が多い。×:金型の付着物が非常に多い。
【0056】
実施例1〜9および比較例1〜5
表−1〜表−3に示す配合処方で、原料を秤量し、タンブラーによって20分混合した後、40mmφ単軸押出機によって、シリンダー温度290℃でペレット化した。得られたペレットを用い、射出成形機にて、シリンダー温度290℃にて3mm厚プレートを成形し、(A)及び(B)の評価を行った。また,(C),(D),(E)記載の方法により試験片を成形しこれらの評価を行った。評価結果を表−1〜表−3に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【発明の効果】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、特定の分子量の脂肪族炭化水素を少量配合することにより、透明性、紫外線吸収能が優れると共に、耐薬品性、離型性に優れ、金型汚染性も良好であり、さらにポリカーボネート樹脂が本来有する優れた耐衝撃性、耐熱性等の諸特性を有しており、各種成形品の材料として使用される。例えば、ヘッドランプレンズ、テールランプ等の自動車部品、鉄道用灯具カバー、保護眼鏡レンズ、サングラスレンズ等の高度の透明性とともに特に薬品との接触及び、又は紫外線照射により劣化する分野への用途が期待される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、紫外線吸収能、耐候性に優れ、且つ、耐薬品性及び離型性にすぐれた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、および該組成物から得られる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、透明で、強度、剛性、耐摩擦磨耗性等の機械的物性にも優れた樹脂であり、例えば、自動車部品、、電気・電子機器、光学機器、医療用機器、及びこれら機器の部品、各種精密機械部品等に広く用いられている。しかしながら、その用途によっては、ポリカーボネート樹脂が本来有する性能では不十分であり、更に種々の性能を付与することが試みられている。例えば、ポリカーボネート樹脂は、紫外線吸収能が十分ではなく、屋外で使用される場合は、紫外線による劣化により強度が低下したり変色するため使用が制限されていた。また、用途によっては耐薬品性の向上が求められていた。それ故、これらの性質を改良するため、従来より、種々の安定剤等を配合した組成物が提案されている。
【0003】
例えば、耐候性を改良して屋外使用するために、ポリカーボネート樹脂にベンゾトリアゾール化合物からなる紫外線吸収剤とクマリン化合物およびナフタルイミド化合物から選ばれる蛍光増白剤が添加されたポリカーボネート樹脂組成物(特許文献1)、ポリカーボネート樹脂とトリアジン化合物からなる紫外線吸収剤とクマリン化合物およびナフタルイミド化合物から選ばれる蛍光増白剤が添加されたポリカーボネート樹脂組成物(特許文献2)、ポリカーボネート樹脂に350〜400nmの紫外線領域に極大吸収波長を有しない紫外線吸収剤と、蛍光増白剤を含有してなるポリカーボネート樹脂組成物(特許文献3)等が提案されている。しかしながら、これらは十分な紫外線吸収能を有しているとはいえず、また、耐薬品性が不十分であった。また、紫外線吸収剤は揮発性を有するため、耐候性を上げるために添加量を増加させるに従い、金型汚染性が高くなるという問題があった。
耐薬品性を改良するためには、ポリカーボネート樹脂に共重合ポリエステル樹脂を配合した組成物(例えば特許文献4参照)が提案されており、さらに耐薬品性と耐候性を改良するために、ポリカーボネート樹脂に共重合ポリエステルと耐候安定剤としての紫外線吸収剤を配合した組成物(例えば特許文献5)が提案されている。しかしながら、更に優れた紫外線吸収能、耐薬品性等の性能を有するポリカーボネート樹脂材料が求められている。
【0004】
一方、ワックス類などの飽和脂肪族炭化水素類は、一般にプラスチックの離型剤であり、ポリカーボネート樹脂の離型剤としても知られているが、ポリカーボネートへの相溶性が悪いため成形品が不透明になる畏れがある(特許文献6、7)。そのため、特に透明性を要求される用途には用いられていなかった。また、飽和脂肪族炭化水素類が、ポリカーボネート樹脂の耐薬品性に与える効果は全く報告されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−196904号公報
【特許文献2】
特開平10−176103号公報
【特許文献3】
特開2002−3710号公報
【特許文献4】
特開2000−103948号公報
【特許文献5】
特開2001−207064号公報
【特許文献6】
特公昭47−41093号公報
【特許文献7】
特公昭56−34179号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ポリカーボネートの透明性を維持し、金型汚染がほとんどなく、かつ耐薬品性に優れるのみならず離型性にも優れた、ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは種々検討を重ね、蛍光増白剤を単独で用いると少量の添加量で紫外線吸収能を発現するため金型汚染の畏れがなく、且つ、特定の飽和脂肪族炭化水素を特定量用いると、驚くべきことに、ポリカーボネートの透明性を損なうことなく耐薬品性を奏することを知り本発明を達成した。すなわち、本発明の要旨は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b)数平均分子量が200〜1,000の飽和脂肪族炭化水素0.05〜2重量部及び(c)蛍光増白剤0.001〜0.2重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物、及びかかるポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明で使用する(a)芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネートの重合体または共重合体が挙げられる。
【0009】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、必要に応じ2種以上混合して使用してもよい。これらの中では特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好適に使用される。
【0010】
また、分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上記の如きジヒドロキシ化合物と共に、フロログルシン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等で例示されるポリヒドロキシ化合物、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等のポリヒドロキシ化合物を使用すればよい。
【0011】
ジヒドロキシ化合物とホスゲン或いは炭酸ジエステルの反応は公知の方法が採用される。ホスゲンを使用する場合は、末端停止剤または分子量調節剤を使用してもよい。末端停止剤または分子量調節剤としては、一価のフェノール性水酸基を有する化合物が用いられ、例えば、フェノール、p−t−ブチルフェノール、トリブロモフェノール等の他に、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、アルキルエーテルフェノール等が例示される。本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の場合、末端停止剤または分子量調節剤は、必要に応じ2種以上混合して使用してもよい。
【0012】
本発明に使用される(a)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、通常20,000〜50,000であることが好ましく、より好ましくは20,000〜45,000であり、さらに好ましくは21,000〜40,000である。粘度平均分子量は、メチレンクロライド溶媒中25℃で測定された溶液粘度より換算される。
【0013】
本発明に使用される(b)飽和脂肪族炭化水素は、数平均分子量が200〜1,000の飽和脂肪族炭化水素であり、通常、パラフィンワックスと呼ばれるものである。分子量が200より小さい飽和脂肪族炭化水素は、成形時に揮発しやすいため、金型汚染を惹起する畏れがあり、結果的に添加量を減少させるため、耐薬品性及び離型性が不足するおそれがある。また分子量が1,000より大きいと、ポリカーボネートとの相溶性が悪く、得られる成形品の透明性が低下するので好ましくない。好ましい分子量は300〜1,000、より好ましくは300〜800である。
【0014】
本発明樹脂組成物中の、(b)飽和脂肪族炭化水素の量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.05〜2重量部であり、好ましくは0.07〜1.7重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。飽和脂肪族炭化水素の量が0.05重量部よりも少ない場合は、耐薬品性が不十分であり、一方、2重量部より多いと、成形品の透明性が低下し、或いは成形時の揮発による金型汚染を惹起するので好ましくない。
【0015】
本発明に使用される(c)蛍光増白剤は、紫外線を吸収し、そのエネルギーを可視部の青紫色の光線に変えて放射する作用を有するものであれば、特に限定されないが、クマリン系化合物およびベンゾオキサゾ−ル系化合物が好ましい。
【0016】
好ましいクマリン系化合物の蛍光増白剤としては、3−フェニル−7−アミノクマリン,3−フェニル−7−(イミノ−1’3’5’−トリアジン−2’−ジエチルアミノ−4’−クロロ)−クマリン、3−フェニル−7−(イミノ−1’3’5’−トリアジン−2’−ジエチルアミノ−4’−メトキシ)−クマリン、3−フェニル−7−(2H−ナフト(1,2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン、4−メチル−7−ヒドロキシ−クマリンなどをあげることができる。
【0017】
好ましいベンゾトリアゾ−ル系化合物の蛍光増白剤としては、2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール)、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン,4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)−4’−(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)フランなどをあげることができる。また、商品名「ハッコールPSR」(ハコール産業社)や商品名「UVITEX OB、UVITEX OB−ONE」(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)等の市販品を使用することも出来る。
【0018】
本発明組成物中の(c)蛍光増白剤の量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の範囲から選ばれる。蛍光増白剤の量が0.001重量部未満であると、成形品の黄色味を消し、明るさを増加させるという機能、および紫外線を吸収し可視部の青紫色に放射する機能が十分に発揮されず、一方、0.2重量部を超えてもそれ以上の蛍光増白剤としての添加効果は見られない。蛍光増白剤の配合量の好ましい範囲は、0.003〜0.15重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.12重量部である。
【0019】
本発明樹脂組成物は、上記の(a)、(b)、(c)成分を必須成分として含有するものであるが、更に(d)亜リン酸エステル系安定剤を含有することが好ましい。本発明において用いられる(d)亜リン酸エステル系安定剤(以下、単に「リン系安定剤」ということがある)としては、種々のものが使用されるが、耐加水分解性が要求される組成物については、ペンタエリスリトール構造を有する亜リン酸エステル系安定剤の使用は、プレッシャークッカ−試験(120℃,100%RH,5hr)後に、成形品が白濁する場合があり好ましくない。
【0020】
本発明において用いられる(d)亜リン酸エステル系安定剤としては、下記一般式(1)および/または(2)で示される化合物が好ましく用いられる。
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、R1は、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、または芳香族炭化水素基を表す。)。
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、R2〜R4は、同じまたは異なって、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、p及びqは、それぞれ0〜4の整数を表す。)。
これらR1およびR2〜R4で示される基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基などの脂肪族炭化水素基、シクロアルキル基などの脂環族炭化水素基、フェニル基などの芳香族炭化水素基が好ましい。また、これらの基はヒドロキシル基などの置換基で置換されていてもよい。
【0025】
上記一般式(1)または(2)の構造を有する亜リン酸エステル系安定剤としては、具体的には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイト及びトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。これらの安定剤のうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0026】
本発明組成物中の(d)亜リン酸エステル系安定剤の含有量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部である。亜リン酸エステル系安定剤の量が0.01重量部より少ないと、安定剤としての効果が不十分であり、一方、2重量部を超えてもそれ以上の安定剤としての効果は得られない。亜リン酸エステル系安定剤の量は,0.02〜1重量部が好ましい。
上記リン系安定剤を用いることにより耐候性(紫外線吸収能)、耐衝撃性、透明性、色調安定性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られるが、このリン系安定剤に加えて、さらに(e)フェノール系抗酸化剤を配合することにより、さらに耐候性、色調安定性が優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
本発明に使用される(e)フェノール系抗酸化剤としては,特に制限はないがヒンダードフェノール系化合物が好適に用いられる。代表的な例としてはペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’、3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
上記のうちで、特にペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキ−シ−2,)5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]1,1−ジメチルエチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。
【0028】
本発明組成物中の(e)フェノール系抗酸化剤の量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部である。配合量が0.01重量部より少ない場合には、抗酸化剤としての効果が不十分であり、一方、2重量部を超えて添加してもそれ以上の抗酸化剤としての効果は得られない。フェノール系抗酸化剤の配合量は、0.02〜1重量部が好ましい。
【0029】
更に必要あれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、上記の(a)〜(e)の成分の他に、離型剤、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料などの添加剤や、その目的に応じ、所望の特性を付与する他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤、発泡剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維、繊維状マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカー、セラミックウィスカー、マイカ、タルク等の補強剤、充填剤などの一種または二種以上を含有させてもよい。
【0030】
離型剤を使用する場合は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種の化合物等芳香族ポリカーボネート樹脂に使用されるものが用いられる。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0031】
脂肪族カルボン酸としては、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸、特に、脂肪族飽和モノカルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコール、特に脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
離型剤の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して5重量部以下であり、好ましくは1重量部以下である。5重量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
【0032】
イオウ系酸化防止剤を配合する場合は、例えば、ジラウリル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ジトリルデシル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などを上げることが出来る。上記の中、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
【0033】
イオウ系酸化防止剤を添加すると、組成物の安定性を向上させると共に、特にリサイクル安定性、すなわち本発明樹脂組成物から形成された成形品を再度樹脂材料として再使用する場合、成形品の着色を抑制する効果がある。
イオウ系酸化防止剤の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、0.01〜2重量部である。配合量が0.01重量部より少ないと、成形時のリサイクル安定性が不十分であり、一方、2重量部を超えて添加してもそれ以上の効果は得られない。イオウ系酸化防止剤の添加量は、好ましくは0.02〜1重量部であり、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。
【0034】
本発明樹脂組成物は紫外線吸収能を有するが、更に必要であれば紫外線吸収剤を併用することもできる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系などがあげられる。
【0035】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキジ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0036】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0037】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリーブチルフェニル−3,5−ジターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートなどが挙げられる。
【0038】
紫外線吸収剤には、上に挙げた4種類の化合物類以外に紫外線の保有するエネルギーを、分子内で振動エネルギーに変換し、その振動エネルギーを、熱エネルギーなどとして放出する機能を有する化合物が含まれる。さらに、酸化防止剤または着色剤などと併用することによって相乗効果を発揮するもの、またはクエンチャーと呼ばれる、光エネルギー変換剤的に作用する光安定剤などを併用することもできる。
【0039】
紫外線吸収剤の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.01〜2重量部の範囲で選ばれる。紫外線吸収剤が0.01重量部未満であると、その効果が不十分であり、2重量部を越えると成形品の黄味が強くなって調色性が劣ったり、また成形品表面にブリードアウトし易い傾向がある。紫外線吸収剤の好ましい配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.05〜1.8重量部であり、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。
【0040】
また、必要に応じて添加される顔料や染料は、従来から目的に応じて芳香族ポリカーボネート樹脂に適宜使用されるそれ自体公知のものが使用される。
【0041】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、最終成形品を成形する直前迄の任意の段階で、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)数平均分子量が200〜1,500の飽和脂肪族炭化水素、(c)蛍光増白剤、さらに必要であれば(d)亜リン酸エステル系安定剤、(e)フェノール系抗酸化剤及び必要に応じて用いられるその他の添加剤を配合し、溶融混練する方法が挙げられる。配合方法は、当業者に周知の種々の方法を採用することが出来、例えばタンブラー、ヘンシェルミキサーなどを使用する方法、フィーダーにより定量的に押出機ホッパーに供給して混合する方法などが挙げられる。混練方法としては一軸押出機、二軸押出機などが使用出来る。
【0042】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形など、慣用の熱可塑性樹脂の成形方法に従って、所望の成形品とすることが出来る。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は透明性に優れ、厚さ3mmの試験片での測定値として、曇り度(ヘーズ値)が通常3%以下、更には2%以下の成形品を得ることが出来るが、通常のポリカーボネートの透明成形品に求められるヘーズは17%以下、好ましくは10%以下程度(特許文献5の第10欄末〜11欄2行)であることを考慮すると、極めて透明性に優れていることが分かる。また、本発明のポリカーボネート樹脂は耐薬品性を有すると共に、紫外線吸収能に優れ、厚み3mmにおける波長410nmの光線透過率が3%以下であり、かつ、波長400nmの光線透過率が0.4%以下、更には波長410nmの光線透過率が1%以下であり、かつ、波長400nmの光線透過率が0.3%以下の成形品を得ることが出来る。また、後記実施例に示すように、少量の蛍光増白剤の添加で3mm厚みにおける光線透過率が0.05%以下となる(実質的に光線を透過しない)波長が400〜410nmに有り、紫外線吸収剤(特許文献1,3,5で使用の耐候性改良剤)を用いた組成物に比し、透明性を維持し、広い波長範囲で紫外線透過を阻止することができ、かつ添加量が紫外線吸収剤より少量で優れた紫外線吸収能を示すので、金型汚染性も良好である。
【0043】
本発明により得られた成形品は、透明性、紫外線吸収能、及び耐薬品性に優れると共に、ポリカーボネート樹脂が有する種々の優れた機械的、熱的性質を有している。その用途としては、紫外線や薬品による劣化が懸念される用途のみならず、広い範囲の用途に使用可能であり、例えば、シート、フィルム、雑貨、家電部品、自動車部品、建築材料、中空容器などが挙げられる。更に具体的には、アーケード、カーポート、屋内プール等の屋根用パネル、表示板カバー、スイッチボタン、表示ボタン、表示パネル、メーターパネル等の透過光式成型品、デリニエーター、信号灯、遮音壁、自動車のサイドウィンドー、リアクオーターウィンドー、サンルーフ、リアパネルガーニッシュ、ヘッドランプレンズ、テールランプ等の自動車部品、鉄道用灯具カバー、カメラレンズ、電話ジャック、リレーカバー、端子台カバー、太陽電池ハウジング、アイロン水タンク、コントロールボックス、パチンコ用玉入れケース、飾り治具、スキー用などのゴーグル、保護眼鏡レンズ、サングラスレンズ、保護面体、人工透析器、人工肺ケース及びそのキャップ並びにコネクター、街灯カバー等が挙げられる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した原材料および評価方法は次の通りである。
【0045】
(1)ポリカーボネート樹脂:粘度平均分子量が25,000のポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート。
【0046】
(2)飽和脂肪族炭化水素−1:日本精蝋製「パラフィンワックス155」、平均分子量約480。
(3)飽和脂肪族炭化水素−2:ヘキスト社製「ヘキストワックスPE520」、平均分子量約2,000.
【0047】
(4)共重合ポリエステル樹脂:ナフタレンジカルボン酸8モル%共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂、極限粘度0.81;三菱化学社製「ノバペックス NC102Z」。
【0048】
(5)蛍光増白剤−1:3−フェニル−7−(2H−ナフト(1,2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン;ハッコールケミカル社製「ハッコールPSR」。
(6)蛍光増白剤−2:2,5−チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール);チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「UVITEX OB」。
(7)蛍光増白剤−3:4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「UVITEX OB−ONE」。
【0049】
(8)リン系安定剤−1:トリス(2,4―ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト。
(9)リン系安定剤−2:2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト。
【0050】
(10)フェノール系抗酸化剤:ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「IRGANOX1010」。
【0051】
(11)紫外線吸収剤:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール。
【0052】
<評価方法>
(A)曇度(ヘーズ値):3mm厚みのプレートを成形し、濁度計NDH−2000(日本電色工業(株)製)で測定した。
(B)光線透過率:3mm厚みのプレートを成形し、分光光度計UV−3100PC(島津製作所製)を用いて、JIS−K7361に準拠して、波長410nm、波長400nmの光線透過率、及び光線透過率が0.05%以下となる波長を測定した。
【0053】
(C)成形品の離型性:コップ金型を用いて、成形温度290℃でコップ型成形品を成形した際の離型性を、以下の基準で評価した。
○;離型性良好 △;離型性普通 ×;離型性不良
【0054】
(D)耐薬品性:厚さ4mmのISO試験片に、0.5%の歪みを与え、この試験片を20℃、濃度100%のブタノール中に浸漬し、クラック発生までの時間を測定し、次の基準で評価した。
○:クラック発生までの時間が60秒以上
△:クラック発生までの時間が30〜60秒
×:クラック発生までの時間が30秒未満
【0055】
(E)金型汚染性:日精樹脂製PS−40成形機を用い、しずく型金型を用いて、成形温度290℃で500ショット連続成形し、終了後金型の付着物の有無を観察し,次の基準で評価した。
○:金型の付着物が少ない。△:金型の付着物が多い。×:金型の付着物が非常に多い。
【0056】
実施例1〜9および比較例1〜5
表−1〜表−3に示す配合処方で、原料を秤量し、タンブラーによって20分混合した後、40mmφ単軸押出機によって、シリンダー温度290℃でペレット化した。得られたペレットを用い、射出成形機にて、シリンダー温度290℃にて3mm厚プレートを成形し、(A)及び(B)の評価を行った。また,(C),(D),(E)記載の方法により試験片を成形しこれらの評価を行った。評価結果を表−1〜表−3に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【発明の効果】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、特定の分子量の脂肪族炭化水素を少量配合することにより、透明性、紫外線吸収能が優れると共に、耐薬品性、離型性に優れ、金型汚染性も良好であり、さらにポリカーボネート樹脂が本来有する優れた耐衝撃性、耐熱性等の諸特性を有しており、各種成形品の材料として使用される。例えば、ヘッドランプレンズ、テールランプ等の自動車部品、鉄道用灯具カバー、保護眼鏡レンズ、サングラスレンズ等の高度の透明性とともに特に薬品との接触及び、又は紫外線照射により劣化する分野への用途が期待される。
Claims (7)
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b)数平均分子量が200〜1,000の飽和脂肪族炭化水素0.05〜2重量部及び(c)蛍光増白剤0.001〜0.2重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が20,000〜50,000である請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (c)蛍光増白剤がクマリン系化合物および/またはベンゾオキサゾール系化合物である請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、更に(d)亜リン酸エステル系安定剤0.01〜2重量部を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、更に(e)フェノール系抗酸化剤0.01〜2重量部を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
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