JP2005014392A - 平版印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】近赤外領域の光に感光し、明室で取り扱うことができ、現像や拭き取り操作が不要で、且つ湿し水の量を減らしても地汚れし難いCTP用の版を提供する。
【解決手段】平版印刷版は、親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物を架橋してなる親水性樹脂感光層を有する原版に、光照射して直接描画でき、照射部表面の親水性を親インク性に変化させて得られ、現像工程が不要な平版印刷版であって、親水性樹脂感光層中に珪酸塩を含有することを特徴とする。前記感光性樹脂組成物がさらに疎水性ポリマーを含んでなることが好ましい。前記珪酸塩としては、ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】平版印刷版は、親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物を架橋してなる親水性樹脂感光層を有する原版に、光照射して直接描画でき、照射部表面の親水性を親インク性に変化させて得られ、現像工程が不要な平版印刷版であって、親水性樹脂感光層中に珪酸塩を含有することを特徴とする。前記感光性樹脂組成物がさらに疎水性ポリマーを含んでなることが好ましい。前記珪酸塩としては、ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版、特に湿し水を用いる平版印刷版に関する。さらに詳しくは、版に光で直接描画でき、現像工程が不要な平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷、所謂オフセット印刷は紙への印刷に於いて主流であり、広く用いられている。従来このオフセット印刷で用いられる刷版は、印刷原稿を一旦紙等に出力した後、この原稿を写真撮影して版下フィルムを作成し、この版下フィルムを通して感光性の刷版を露光、現像することにより作られていた。
【0003】
しかし、近年情報のデジタル化とレーザーの高出力化により刷版の作成に於いて上記した版下フィルムを使用せずに、レーザーを走査して直接刷版に描画して版を作成する方法、所謂CTP(Computer To Plate)法が実用に供されている。
【0004】
現在実用化されているCTP用の版としては、波長500nm前後の可視光による光反応を利用したフォトポリマー型の刷版があるが、この版は勿論現像を必要とするだけでなく、解像度が劣り、又明室での取り扱いができないという問題点がある。
【0005】
そして、このような問題点を改良するために、特開平7−20629号公報には、近赤外線領域の光による熱反応を利用した平版印刷用の版が開示され、該版は既に市場に供されている。この版は明室で取り扱うことができ、且つ解像度も優れるが、依然、現像処理が必要である。
【0006】
そこで、湿式現像処理の不要な平版印刷版として、特開平9−127683号公報には、露光領域で自己分散性樹脂粒子が溶融・融着して画像を形成する版が開示されている。この版は感光層の非画線部が湿し水で除去が可能な刷版であり、いわゆる印刷機上現像ができ、専用の現像機を必要とはしない。しかし、印刷機上で現像した場合、湿し水やインクを汚染するだけでなく、保存時の湿度管理に厳しさが要求されると言う欠点を有する。
【0007】
湿式現像も印刷機上現像も必要としない平版印刷版として、米国特許3476937号には、独立し、且つ接触関係にある疎水性熱可塑性樹脂微粒子を含有する親水性樹脂層を有し、熱により疎水性熱可塑性樹脂微粒子が融着し親水性が変化する版が開示されている。しかし、この版は特に光照射で描画した際は感度が低く、且つ親水性樹脂層は強度が弱く耐刷性に劣る。又、着インク性を改善するために疎水性熱可塑性樹脂の量を増やすと地汚れしてしまうという欠点を有する。
【0008】
更に、特開平7−1850号公報には、親水性樹脂中に該親水性樹脂中の親水基と反応する親油性物質を含むマイクロカプセルを含有した感光層からなる版であり、光の照射によりマイクロカプセルを破壊して親水性樹脂を親油化する技術が開示されている。しかしこの方法は解像度を上げたり、地汚れを防止するにはマイクロカプセルの粒径を非常に小さくしなければならず、製造が困難であった。また、マイクロカプセルを破壊するには高エネルギーが必要で光に対する感度が悪いという欠点を有した。
【0009】
更に、特開平7−314934号公報には、チタン又はチタン酸化物等の、無機系の光吸収層の上にシリコーン樹脂の撥インク層を積層した構成の版も開示され市販されている。この版はシリコーン樹脂層がインクをはじき非画線部となり、近赤外光の照射により画線部が形成されるが、光の照射だけでは照射部のシリコーン樹脂層は除去されないので、印刷に際しては光を照射した部分のシリコーン樹脂を除去するために拭き取り操作を必要とする。このシリコーン樹脂の拭き取りが不十分な場合は照射部にインクが十分に付着せず、画線部に欠陥が生じ、うまく印刷できない。
【0010】
そこで本発明者らは親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物、あるいは親水性ポリマー、架橋剤、光吸収剤及び疎水性ポリマーからなる感光性樹脂組成物を架橋した親水性樹脂感光層からなり、光の照射により表面が親水性から親インク性に変化する平版印刷用の版を国際公開第01/083234号に開示した。この版は現像や拭き取り操作が不要で、且つ光照射部の表面だけが変化するため感度、解像度に優れているが、さらに印刷性能の向上が望まれる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、近赤外領域の光に感光し、明室で取り扱うことができ、現像や拭き取り操作が不要で、且つ湿し水の量を減らしても地汚れし難いCTP用の版を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物を架橋してなる親水性樹脂感光層、又は親水性ポリマー、架橋剤、光吸収剤及び疎水性ポリマーからなる感光性樹脂組成物を架橋してなる親水性樹脂感光層を有する平版印刷用原版において、親水性樹脂感光層に珪酸塩を含有させることによって上記の目的を達成することができることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下より示される。
【0013】
本発明に係る平版印刷版は、親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物を架橋してなる親水性樹脂感光層を有する原版に光照射して、照射部表面の親水性を親インク性に変化させて得られる平版印刷版であって、親水性樹脂感光層中に珪酸塩を含有することを特徴とする。
【0014】
前記感光性樹脂組成物がさらに疎水性ポリマーを含んでなることは、本発明の平版印刷版の好ましい態様である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の平版印刷版について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版に於いては、基板上に水に不溶性の親水性樹脂からなる感光層を設けてなる。この際用いられる基板の具体例としては、アルミ板、鋼板、ステンレス板、銅板等の金属板やポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂等のプラスチックフィルムや紙、アルミ箔ラミネート紙、金属蒸着紙、プラスチックフィルムラミネート紙等が挙げられる。これらの基材の厚さは特に制限はないが通常100〜400μm程度である。又、これらの基材には密着性の改良等のために酸化処理、クロメート処理、サンドブラスト処理、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。
【0016】
次に本発明の水に不溶性の親水性樹脂からなる感光層に関して詳しく説明する。
本発明の平版印刷版は湿し水を用いるオフセット印刷用の無現像型の版であり、感光層の光照射部以外は非画像部である。従って本発明の感光層は親水性で、且つ水に溶けないことが必要である。そして、光を照射した部分の感光層はアブレーションにより取り除かれることはなく、感光層の親水性が親インク性に変化する。そのため、本発明の版は光の照射後に現像や拭き取り等が不要となる。
【0017】
上記したような特性の変化を具現化するために、本発明の感光層は、親水性ポリマー、架橋剤、光吸収剤及び珪酸塩を含有してなる感光性樹脂組成物、あるいは親水性ポリマー、架橋剤、疎水性ポリマー、光吸収剤及び珪酸塩を含有してなる感光性樹脂組成物を架橋してなるものであることが好ましい。親水性ポリマーは架橋することにより水に不溶性となる。
【0018】
本発明の感光層に用いられる親水性ポリマーは、親水性基及び架橋剤と反応する官能基(架橋官能基)を有する。親水性ポリマーの親水性基としては、例えば、水酸基、アミド基、アミノ基、スルホンアミド基、オキシメチレン基、オキシエチレン基等、更にカルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基やこれら酸性基のアルカリ金属塩やアミン塩等が挙げられる。
【0019】
又架橋官能基としては、水酸基、アミド基、アミノ基、イソシアナート基、グリシジル基、オキサゾリン基、メチロール基、及びメチロール基とメタノールやブタノール等のアルコールとが縮合したメトキシメチル基やブトキシメチル基等、更にカルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基やこれら酸性基のアルカリ金属塩やアミン塩等が挙げられる。
【0020】
親水性ポリマーのより具体的な例としては、水溶性の以下のポリマーが挙げられる。即ち、セルロース類、ゼラチン、前記した親水性基や架橋官能基を有する不飽和酸及びその誘導体類やN―ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル、ビニルエーテル等を重合、又は共重合してなるポリマー及びこのポリマーの加水分解ポリマー等である。
【0021】
前記した親水性基や架橋官能基を有する不飽和酸及びその誘導体の具体例として、水酸基を有する不飽和酸誘導体としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチロール(メタ)アクリルアミドや、該メチロール(メタ)アクリルアミドとメチルアルコールやブチルアルコールとの縮合物であるメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0022】
アミド基を有する不飽和酸誘導体としては、無置換又は置換(メタ)アクリルアミド、無置換又は置換イタコン酸アミド、無置換又は置換フマル酸アミド、無置換又は置換フタル酸アミド、N―ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。無置換又は置換(メタ)アクリルアミドのより具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、スルホン酸プロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。前記イタコン酸アミド等の二塩基酸アミドの場合は一方のカルボキシル基がアミド化されたモノアミドであっても良く、両方のカルボキシル基がアミド化されたジアミドであっても良い。更に、グリシジル基を有する不飽和酸誘導体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、パラビニルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0023】
カルボキシル基を有する不飽和酸としては、(メタ)アクリル酸等の一塩基不飽和酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びその無水物等の二塩基不飽和酸やこれら二塩基不飽和酸のモノエステル、モノアミド等が挙げられる。
【0024】
又、スルホン酸基を有する不飽和酸としては、スルホエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルメチルスルホン酸、イソプロぺニルメチルスルホン酸、(メタ)アクリル酸にエチレンオキシド、又はプロピレンオキシドを付加したアルコールの硫酸エステル、(メタ)アクリロイロキシエチルスルホン酸、モノアルキルスルホコハク酸エステルとアリル基を有する化合物とのエステル、モノアルキルスルホコハク酸エステルとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物等が、ホスホン酸基を有する重合性不飽和モノマーとしては、ビニルリン酸、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート、リン酸モノアルキルエステルのモノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
これらのカルボキシル基、スルホン酸基やホスホン酸基はアルカリ金属、アルカリ土類金属やアミン類で中和されていても良い。中和に用いられるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が、及びアミン類としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0026】
重合するに際しては、前記した不飽和酸及びその誘導体と共重合可能なモノマーを併用しても良い。共重合可能なモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソポロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。尚、前記の記載に於いて、(メタ)アクリルアミドや(メタ)アクリル酸等に於ける(メタ)アクリル、(メタ)アクリロイル、更に(メタ)アクリレート等は、それぞれアクリルまたはメタクリル、アクリロイルまたはメタクリロイル、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0027】
本発明の親水性ポリマーを架橋するのに用いられる架橋剤としては、前記親水性ポリマーと架橋反応して親水性ポリマーを水に不溶性にすることにより親水性樹脂感光層の耐刷性を向上させるものであればよく、例えば、親水性ポリマー中の架橋性官能基である水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、グリシジル基、場合によってはアミド基と反応する公知の多価アルコール化合物類、多価カルボン酸化合物やその無水物類、多価グリシジル化合物類、多価アミン、多価イソシアネート化合物やブロックイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、オキサゾリン樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。
【0028】
本発明に於いては前記した架橋剤の中でも、架橋速度と感光性樹脂組成物の安定性や感光層の親水性と耐水性のバランス等から、水性エポキシ樹脂、オキサゾリン樹脂、アミノ樹脂、水性ブロックイソシアネート化合物が好ましい。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂やグリコールウリル樹脂等やこれらの樹脂の変性樹脂、例えばカルボキシ変性メラミン樹脂等が挙げられる。又、架橋反応を促進するために、前記したエポキシ樹脂を用いる際には3級アミン類を、アミノ樹脂を用いる場合にはパラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸類、塩化アンモニウム等の酸性化合物を併用しても良い。
【0029】
上記架橋剤の主な役割は、前記親水性ポリマーを架橋し親水性ポリマーを水に不溶性にすることであるが、さらに架橋剤が自己重合性を有する場合には、感光層において該架橋剤が親水性ポリマー中に重合体の島相を形成し、光照射で光照射部表面の親水性を親インク性に変化させることも含まれる。これは、感光層中の光吸収剤が光を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する際、発生した熱により該島相が発泡することにより親水性が親インク性に変化するものと推定される。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物には、光の照射により照射部表面の親水性が親インク性に変化しやすいように疎水性ポリマーを用いることも好ましい。疎水性ポリマーとしては、版の感度、光照射した際の親インク化のしやすさ等から、動的光散乱法で測定した平均粒子径が0.005〜0.5μmの水分散疎水性樹脂が好ましく、平均粒子径が0.01〜0.2μmのものが更に好ましい。水分散疎水性樹脂とは、微細な疎水性ポリマー粒子と必要に応じて該粒子を覆う保護剤とを水性液に分散させた疎水性ポリマーを意味し、不飽和モノマーを乳化重合や懸濁重合することによって作られた疎水性ポリマー、特に酸性基を有する疎水性ポリマー、又は該ポリマーの有機溶剤溶液を必要ならば酸性基を中和したり、分散安定剤を加えて水中に分散させた疎水性ポリマー、さらに必要ならば該有機溶剤を溜去して得られる疎水性ポリマー等が挙げられる。水分散疎水性樹脂は、より具体的には例えば、ビニルポリマー系ラテックス、共役ジエンポリマー系ラテックス、アクリル系ラテックス、水分散ポリウレタン樹脂、水分散ポリエステル樹脂、水分散エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
上記水分散疎水性樹脂の役割は、感光層において該水分散疎水性樹脂が親水性ポリマー中に島相として形成され、感光層中の光吸収剤が光を吸収剤して光エネルギーを熱エネルギーに変換した際、発生した熱により島相の水分散疎水性樹脂が溶融・融着し、光照射部表面の親水性を親インク性に変化させることであると推定される。この溶融・融着による親インク性への変化を効率よく行わせるには、水分散疎水性樹脂の平均粒子径が前記したように0.005〜0.5μmであることが好ましい。この粒子径の範囲であれば、発生した熱で疎水性樹脂が溶融・融着しやすく、感度に優れる。
【0032】
本発明の感光層に上記水分散疎水性樹脂を使用する場合、疎水性ポリマー量は光照射部の親インク化の点からは多い方が好ましいが、多くなり過ぎると地汚れを起こし好ましくない。この点から本発明に於ける感光性樹脂組成物中の疎水性ポリマー量は、固形分として70重量%以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の感光層に用いられる光吸収剤としては、光を吸収して熱を生じるものであればよく、光の照射に際しては光吸収剤が吸収する波長域の光を適宜用いればよい。光吸収剤の具体例としては、シアニン系色素、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アントラシアニン系色素、ポルフィリン系色素、アゾ系色素、ベンゾキノン系色素、ナフトキノン系色素、ジチオール金属錯体類、ジアミンの金属錯体類、ニグロシン等の各種色素、及びカーボンブラック等が挙げられる。
【0034】
これらの色素に於いては、明室での取り扱い性、露光機に用いる光源の出力や使い易さの点から波長750〜1100nmの領域の光を吸収する色素が好ましい。色素の吸収波長域に関しては置換基やπ電子の共役系の長さ等により変えることが出来る。これらの光吸収剤は感光性樹脂組成物に溶解していても、又分散していても良い。前記した光吸収剤の中では、本発明に於いては親水性の光吸収剤が好ましい。
【0035】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物には、印刷条件に対する安定性を広げるため、種々の界面活性剤を添加することが望ましい。前記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。また、感光性樹脂組成物水溶液の塗布性を良化するため、ハジキ防止剤、レベリング剤等の添加剤を添加しても良い。
【0036】
本発明では、親水性樹脂組成物に珪酸塩を添加することが重要な特徴である。珪酸塩を添加することにより感光層の親水性が向上するとともに、非画線部に付着したインクの脱離速度が向上する。珪酸塩の添加による親水性及びインク脱離性向上効果発現の理由は明らかではないが、珪酸塩の高い湿潤性により湿し水に対する濡れ性が高まるためと考えられる。珪酸塩の添加により、親水性に優れPS版並みに水量を減らしても非画線部は地汚れせず、かつインク脱離速度が速い現像工程不要なCTP用の版が得られる。
【0037】
本発明の感光層に用いられる珪酸塩のカチオンは、印刷特性に影響しないものであれば特に限定されないが、具体例としては、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等のアルカリ金属塩、珪酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらのなかではアルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩およびカリウム塩が望ましい。
【0038】
親水性樹脂組成物への珪酸塩の添加量は0.05〜5重量%であることが好ましく、さらに0.1〜3重量%であることが好ましい。添加量がこの範囲であれば、親水性及びインキ脱離性向上効果が現われ、耐刷性が悪化することがない。
【0039】
本発明の水に不溶性の親水性樹脂からなる感光層は、親水性ポリマー、架橋剤、光吸収剤及び珪酸塩を含有する感光性樹脂組成物からなる溶液、あるいは親水性ポリマー、架橋剤、疎水性ポリマー、光吸収剤及び珪酸塩を含有する感光性樹脂組成物からなる溶液を基板に塗布し、乾燥、硬化すればよい。塗布する方法としては塗布する溶液の粘度や塗布速度等によって異なるが、通常例えば、ロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンフローコーター、ダイコーターやスプレー法等を用いれば良い。塗布溶液を塗布した後、加熱して乾燥及び親水性ポリマーの架橋を行う。加熱温度は通常50〜200℃程度である。
【0040】
本発明の平版印刷版は光吸収剤の吸収波長域の光、例えば750〜1100nmの領域の光を照射すると、光吸収剤が光を吸収して発熱する。この発熱により感光層の光照射部は、自己重合した架橋剤や疎水性ポリマーが発泡したり熱融着したりして親水性が失われ親インク化する。この際、光の照射量を大きくし過ぎたり、又光吸収剤を多量に添加し過ぎたりすると、感光層が分解、燃焼等によって除去、融除されてしまい、照射部の周辺に分解物が飛散するので、このようなことは避けなければならない。
【0041】
このように本発明の平版印刷版は光を照射した部分の感光層表面の親水性が親インク性に変化し、現像や拭き取り操作をしなくても光の照射部にはインクが付着し、印刷が可能となる。
【0042】
本発明の平版印刷版の光照射に際しては、照射速度の点から収束光を高速で走査するのが好ましく、使用し易い。また、光源としては高出力のものが適しており、この点から、照射する光としてはレーザー光、特に750〜1100nmの波長域の発振波長を有するレーザー光が好ましく、例えば830nmの高出力半導体レーザーや1064nmのYAGレーザーが好ましく用いられる。これらのレーザーを搭載した露光機は所謂サーマル用プレートセッター(露光機)として既に市場に供されている。
【0043】
【実施例】
[実施例1]
(親水性ポリマーP−1の合成)
1000ccのフラスコに水500gを入れ、窒素をバブリングして溶存酸素を除去した後、80℃に昇温した。窒素ガスを上記フラスコに流しながら、そこにアクリルアミド137.1g、アクリロイルモルホリン7.9g、2−ヒドロキシエチルアクリレート5g、水150g、ホスフィン酸ナトリウム一水和物0.3gからなるモノマー溶液と過硫酸カリウム1.5gを水100gに溶解した開始剤の水溶液を、内温を80℃に維持しながら、別々に2時間に渡り連続滴下した。滴下終了後80℃で3時間重合を続けた。最後に水100gを加え、親水性ポリマーP−1の15%水溶液を合成した。
【0044】
(平版印刷用の原版の作成)
接着性向上のため予めプライマーとして1μmの厚さのウレタン樹脂(三井化学(株)製ウレタン樹脂オレスター(登録商標)UD350)を塗布した厚さ0.3mmのアルミニウム板に、下記組成(単位重量部、以下同様)からなる感光性樹脂組成物の水溶液をワイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で30分間乾燥し、2μmの膜厚の感光層を成膜して平版印刷版を作成した。
【0045】
上記親水性ポリマーP−1の水溶液(固形分15重量%):400部
メチル化メラミン樹脂(三井サイテック(株)製サイメル(登録商標)701、固形分80重量%):50部
シアニン色素水溶液(日本感光性色素(株)製IR−125、固形分5重量%):100部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製ネオコール(登録商標)YSK、固形分70重量%):1部
珪酸ナトリウム水溶液(固形分10重量%):20部(親水性樹脂組成物中の固形分で2.0重量%)
【0046】
(描画)
この原版に波長830nmの半導体レーザー光を400mJ/cm2の照射エネルギー密度となるように集光しながら走査照射して、200線/インチの画像情報の描画を行った。
【0047】
(印刷評価)
この描画した版をオフセット印刷機(株)小森コーポレーション製スプリント26にセットし、湿し水として(株)日研化学研究所のH液アストロマーク3の2%水溶液、インクとしてサカタインクス(株)製のエコピュアHP−Mを使用して印刷を行った。その結果湿し水量は水量目盛りで12%まで減らしても光の未照射部にはインクが全く付かず、一方、照射部にはインクが十分に付着し、描画した画像が印刷用紙上に再現された。通常PS版を用いる場合水量目盛り15〜20%で使用するため、2割以上の湿し水量削減ができた。また、印刷途中で湿し水量を7%まで下げると、光の未照射部にインキ汚れが発生したが、湿し水量を12%に戻すと30枚で汚れが回復した。
【0048】
[実施例2]
実施例1の珪酸ナトリウム水溶液を珪酸カリウム水溶液(固形分10重量%)に代えた以外は実施例1と同様にして印刷版を作り、描画および印刷評価を行なったところ、湿し水量を水量目盛りで12%まで減らしても光の未照射部にはインクが全く付かず、一方、照射部にはインクが十分に付着し、描画した画像が印刷用紙上に再現された。また、印刷途中で湿し水量を7%まで下げると、光の未照射部にインキ汚れが発生したが、湿し水量を12%に戻すと25枚で汚れが回復した。
【0049】
[実施例3]
実施例1の感光性樹脂組成物を下記組成に代えた以外は実施例1と同様にして平版印刷版を作った。
上記親水性ポリマーP−1の水溶液(固形分15重量%):267部
メチル化メラミン樹脂(三井サイテック(株)製サイメル(登録商標)385、固形分80重量%):12.5部
水分散ウレタン樹脂(三井化学(株)製オレスター(登録商標)UD350、固形分40重量%):100部
シアニン色素水溶液(日本感光性色素(株)製IR−125、固形分5重量%):100部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製ネオコール(登録商標)YSK、固形分70重量%):0.15部
珪酸ナトリウム水溶液(固形分10重量%):10部(親水性樹脂組成物中の固形分で0.9重量%)
【0050】
この版に波長830nmの半導体レーザー光を270mJ/cm2の照射エネルギー密度となるように集光しながら走査照射して、200線/インチの画像情報の描画を行い、印刷評価を行ったところ、湿し水量を水量目盛りで12%まで減らしても光の未照射部にはインクが全く付かず、一方、照射部にはインクが十分に付着し、描画した画像が印刷用紙上に再現された。また、印刷途中で湿し水量を7%まで下げると、光の未照射部にインキ汚れが発生したが、湿し水量を12%に戻すと65枚で汚れが回復した。
【0051】
[比較例1]
実施例3の珪酸ナトリウム水溶液を添加しないこと以外は実施例3と同様にして平版印刷用の原版を作り、描画および印刷評価を行なった。その結果PS版とほぼ同等の水量である20%で光の未照射部にはインクが全く付かず、一方、照射部にはインクが十分に付着し、描画した画像が印刷用紙上に再現されたが、15%まで減らすと一部に汚れが発生した。その後、湿し水量を20%に戻したが汚れが回復するのに135枚必要であった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の平版印刷版を用いれば、現像や拭き取り等の工程が不要で、且つ湿し水の量を減らしても地汚れし難いとともに、非画線部に付着したインクの脱離速度が速いCTP用の版を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版、特に湿し水を用いる平版印刷版に関する。さらに詳しくは、版に光で直接描画でき、現像工程が不要な平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷、所謂オフセット印刷は紙への印刷に於いて主流であり、広く用いられている。従来このオフセット印刷で用いられる刷版は、印刷原稿を一旦紙等に出力した後、この原稿を写真撮影して版下フィルムを作成し、この版下フィルムを通して感光性の刷版を露光、現像することにより作られていた。
【0003】
しかし、近年情報のデジタル化とレーザーの高出力化により刷版の作成に於いて上記した版下フィルムを使用せずに、レーザーを走査して直接刷版に描画して版を作成する方法、所謂CTP(Computer To Plate)法が実用に供されている。
【0004】
現在実用化されているCTP用の版としては、波長500nm前後の可視光による光反応を利用したフォトポリマー型の刷版があるが、この版は勿論現像を必要とするだけでなく、解像度が劣り、又明室での取り扱いができないという問題点がある。
【0005】
そして、このような問題点を改良するために、特開平7−20629号公報には、近赤外線領域の光による熱反応を利用した平版印刷用の版が開示され、該版は既に市場に供されている。この版は明室で取り扱うことができ、且つ解像度も優れるが、依然、現像処理が必要である。
【0006】
そこで、湿式現像処理の不要な平版印刷版として、特開平9−127683号公報には、露光領域で自己分散性樹脂粒子が溶融・融着して画像を形成する版が開示されている。この版は感光層の非画線部が湿し水で除去が可能な刷版であり、いわゆる印刷機上現像ができ、専用の現像機を必要とはしない。しかし、印刷機上で現像した場合、湿し水やインクを汚染するだけでなく、保存時の湿度管理に厳しさが要求されると言う欠点を有する。
【0007】
湿式現像も印刷機上現像も必要としない平版印刷版として、米国特許3476937号には、独立し、且つ接触関係にある疎水性熱可塑性樹脂微粒子を含有する親水性樹脂層を有し、熱により疎水性熱可塑性樹脂微粒子が融着し親水性が変化する版が開示されている。しかし、この版は特に光照射で描画した際は感度が低く、且つ親水性樹脂層は強度が弱く耐刷性に劣る。又、着インク性を改善するために疎水性熱可塑性樹脂の量を増やすと地汚れしてしまうという欠点を有する。
【0008】
更に、特開平7−1850号公報には、親水性樹脂中に該親水性樹脂中の親水基と反応する親油性物質を含むマイクロカプセルを含有した感光層からなる版であり、光の照射によりマイクロカプセルを破壊して親水性樹脂を親油化する技術が開示されている。しかしこの方法は解像度を上げたり、地汚れを防止するにはマイクロカプセルの粒径を非常に小さくしなければならず、製造が困難であった。また、マイクロカプセルを破壊するには高エネルギーが必要で光に対する感度が悪いという欠点を有した。
【0009】
更に、特開平7−314934号公報には、チタン又はチタン酸化物等の、無機系の光吸収層の上にシリコーン樹脂の撥インク層を積層した構成の版も開示され市販されている。この版はシリコーン樹脂層がインクをはじき非画線部となり、近赤外光の照射により画線部が形成されるが、光の照射だけでは照射部のシリコーン樹脂層は除去されないので、印刷に際しては光を照射した部分のシリコーン樹脂を除去するために拭き取り操作を必要とする。このシリコーン樹脂の拭き取りが不十分な場合は照射部にインクが十分に付着せず、画線部に欠陥が生じ、うまく印刷できない。
【0010】
そこで本発明者らは親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物、あるいは親水性ポリマー、架橋剤、光吸収剤及び疎水性ポリマーからなる感光性樹脂組成物を架橋した親水性樹脂感光層からなり、光の照射により表面が親水性から親インク性に変化する平版印刷用の版を国際公開第01/083234号に開示した。この版は現像や拭き取り操作が不要で、且つ光照射部の表面だけが変化するため感度、解像度に優れているが、さらに印刷性能の向上が望まれる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、近赤外領域の光に感光し、明室で取り扱うことができ、現像や拭き取り操作が不要で、且つ湿し水の量を減らしても地汚れし難いCTP用の版を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物を架橋してなる親水性樹脂感光層、又は親水性ポリマー、架橋剤、光吸収剤及び疎水性ポリマーからなる感光性樹脂組成物を架橋してなる親水性樹脂感光層を有する平版印刷用原版において、親水性樹脂感光層に珪酸塩を含有させることによって上記の目的を達成することができることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下より示される。
【0013】
本発明に係る平版印刷版は、親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物を架橋してなる親水性樹脂感光層を有する原版に光照射して、照射部表面の親水性を親インク性に変化させて得られる平版印刷版であって、親水性樹脂感光層中に珪酸塩を含有することを特徴とする。
【0014】
前記感光性樹脂組成物がさらに疎水性ポリマーを含んでなることは、本発明の平版印刷版の好ましい態様である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の平版印刷版について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版に於いては、基板上に水に不溶性の親水性樹脂からなる感光層を設けてなる。この際用いられる基板の具体例としては、アルミ板、鋼板、ステンレス板、銅板等の金属板やポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂等のプラスチックフィルムや紙、アルミ箔ラミネート紙、金属蒸着紙、プラスチックフィルムラミネート紙等が挙げられる。これらの基材の厚さは特に制限はないが通常100〜400μm程度である。又、これらの基材には密着性の改良等のために酸化処理、クロメート処理、サンドブラスト処理、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。
【0016】
次に本発明の水に不溶性の親水性樹脂からなる感光層に関して詳しく説明する。
本発明の平版印刷版は湿し水を用いるオフセット印刷用の無現像型の版であり、感光層の光照射部以外は非画像部である。従って本発明の感光層は親水性で、且つ水に溶けないことが必要である。そして、光を照射した部分の感光層はアブレーションにより取り除かれることはなく、感光層の親水性が親インク性に変化する。そのため、本発明の版は光の照射後に現像や拭き取り等が不要となる。
【0017】
上記したような特性の変化を具現化するために、本発明の感光層は、親水性ポリマー、架橋剤、光吸収剤及び珪酸塩を含有してなる感光性樹脂組成物、あるいは親水性ポリマー、架橋剤、疎水性ポリマー、光吸収剤及び珪酸塩を含有してなる感光性樹脂組成物を架橋してなるものであることが好ましい。親水性ポリマーは架橋することにより水に不溶性となる。
【0018】
本発明の感光層に用いられる親水性ポリマーは、親水性基及び架橋剤と反応する官能基(架橋官能基)を有する。親水性ポリマーの親水性基としては、例えば、水酸基、アミド基、アミノ基、スルホンアミド基、オキシメチレン基、オキシエチレン基等、更にカルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基やこれら酸性基のアルカリ金属塩やアミン塩等が挙げられる。
【0019】
又架橋官能基としては、水酸基、アミド基、アミノ基、イソシアナート基、グリシジル基、オキサゾリン基、メチロール基、及びメチロール基とメタノールやブタノール等のアルコールとが縮合したメトキシメチル基やブトキシメチル基等、更にカルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸性基やこれら酸性基のアルカリ金属塩やアミン塩等が挙げられる。
【0020】
親水性ポリマーのより具体的な例としては、水溶性の以下のポリマーが挙げられる。即ち、セルロース類、ゼラチン、前記した親水性基や架橋官能基を有する不飽和酸及びその誘導体類やN―ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル、ビニルエーテル等を重合、又は共重合してなるポリマー及びこのポリマーの加水分解ポリマー等である。
【0021】
前記した親水性基や架橋官能基を有する不飽和酸及びその誘導体の具体例として、水酸基を有する不飽和酸誘導体としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチロール(メタ)アクリルアミドや、該メチロール(メタ)アクリルアミドとメチルアルコールやブチルアルコールとの縮合物であるメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0022】
アミド基を有する不飽和酸誘導体としては、無置換又は置換(メタ)アクリルアミド、無置換又は置換イタコン酸アミド、無置換又は置換フマル酸アミド、無置換又は置換フタル酸アミド、N―ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。無置換又は置換(メタ)アクリルアミドのより具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、スルホン酸プロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。前記イタコン酸アミド等の二塩基酸アミドの場合は一方のカルボキシル基がアミド化されたモノアミドであっても良く、両方のカルボキシル基がアミド化されたジアミドであっても良い。更に、グリシジル基を有する不飽和酸誘導体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、パラビニルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0023】
カルボキシル基を有する不飽和酸としては、(メタ)アクリル酸等の一塩基不飽和酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸及びその無水物等の二塩基不飽和酸やこれら二塩基不飽和酸のモノエステル、モノアミド等が挙げられる。
【0024】
又、スルホン酸基を有する不飽和酸としては、スルホエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルメチルスルホン酸、イソプロぺニルメチルスルホン酸、(メタ)アクリル酸にエチレンオキシド、又はプロピレンオキシドを付加したアルコールの硫酸エステル、(メタ)アクリロイロキシエチルスルホン酸、モノアルキルスルホコハク酸エステルとアリル基を有する化合物とのエステル、モノアルキルスルホコハク酸エステルとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物等が、ホスホン酸基を有する重合性不飽和モノマーとしては、ビニルリン酸、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート、リン酸モノアルキルエステルのモノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
これらのカルボキシル基、スルホン酸基やホスホン酸基はアルカリ金属、アルカリ土類金属やアミン類で中和されていても良い。中和に用いられるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が、及びアミン類としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0026】
重合するに際しては、前記した不飽和酸及びその誘導体と共重合可能なモノマーを併用しても良い。共重合可能なモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソポロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。尚、前記の記載に於いて、(メタ)アクリルアミドや(メタ)アクリル酸等に於ける(メタ)アクリル、(メタ)アクリロイル、更に(メタ)アクリレート等は、それぞれアクリルまたはメタクリル、アクリロイルまたはメタクリロイル、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0027】
本発明の親水性ポリマーを架橋するのに用いられる架橋剤としては、前記親水性ポリマーと架橋反応して親水性ポリマーを水に不溶性にすることにより親水性樹脂感光層の耐刷性を向上させるものであればよく、例えば、親水性ポリマー中の架橋性官能基である水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、グリシジル基、場合によってはアミド基と反応する公知の多価アルコール化合物類、多価カルボン酸化合物やその無水物類、多価グリシジル化合物類、多価アミン、多価イソシアネート化合物やブロックイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、オキサゾリン樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。
【0028】
本発明に於いては前記した架橋剤の中でも、架橋速度と感光性樹脂組成物の安定性や感光層の親水性と耐水性のバランス等から、水性エポキシ樹脂、オキサゾリン樹脂、アミノ樹脂、水性ブロックイソシアネート化合物が好ましい。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂やグリコールウリル樹脂等やこれらの樹脂の変性樹脂、例えばカルボキシ変性メラミン樹脂等が挙げられる。又、架橋反応を促進するために、前記したエポキシ樹脂を用いる際には3級アミン類を、アミノ樹脂を用いる場合にはパラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸類、塩化アンモニウム等の酸性化合物を併用しても良い。
【0029】
上記架橋剤の主な役割は、前記親水性ポリマーを架橋し親水性ポリマーを水に不溶性にすることであるが、さらに架橋剤が自己重合性を有する場合には、感光層において該架橋剤が親水性ポリマー中に重合体の島相を形成し、光照射で光照射部表面の親水性を親インク性に変化させることも含まれる。これは、感光層中の光吸収剤が光を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する際、発生した熱により該島相が発泡することにより親水性が親インク性に変化するものと推定される。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物には、光の照射により照射部表面の親水性が親インク性に変化しやすいように疎水性ポリマーを用いることも好ましい。疎水性ポリマーとしては、版の感度、光照射した際の親インク化のしやすさ等から、動的光散乱法で測定した平均粒子径が0.005〜0.5μmの水分散疎水性樹脂が好ましく、平均粒子径が0.01〜0.2μmのものが更に好ましい。水分散疎水性樹脂とは、微細な疎水性ポリマー粒子と必要に応じて該粒子を覆う保護剤とを水性液に分散させた疎水性ポリマーを意味し、不飽和モノマーを乳化重合や懸濁重合することによって作られた疎水性ポリマー、特に酸性基を有する疎水性ポリマー、又は該ポリマーの有機溶剤溶液を必要ならば酸性基を中和したり、分散安定剤を加えて水中に分散させた疎水性ポリマー、さらに必要ならば該有機溶剤を溜去して得られる疎水性ポリマー等が挙げられる。水分散疎水性樹脂は、より具体的には例えば、ビニルポリマー系ラテックス、共役ジエンポリマー系ラテックス、アクリル系ラテックス、水分散ポリウレタン樹脂、水分散ポリエステル樹脂、水分散エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
上記水分散疎水性樹脂の役割は、感光層において該水分散疎水性樹脂が親水性ポリマー中に島相として形成され、感光層中の光吸収剤が光を吸収剤して光エネルギーを熱エネルギーに変換した際、発生した熱により島相の水分散疎水性樹脂が溶融・融着し、光照射部表面の親水性を親インク性に変化させることであると推定される。この溶融・融着による親インク性への変化を効率よく行わせるには、水分散疎水性樹脂の平均粒子径が前記したように0.005〜0.5μmであることが好ましい。この粒子径の範囲であれば、発生した熱で疎水性樹脂が溶融・融着しやすく、感度に優れる。
【0032】
本発明の感光層に上記水分散疎水性樹脂を使用する場合、疎水性ポリマー量は光照射部の親インク化の点からは多い方が好ましいが、多くなり過ぎると地汚れを起こし好ましくない。この点から本発明に於ける感光性樹脂組成物中の疎水性ポリマー量は、固形分として70重量%以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の感光層に用いられる光吸収剤としては、光を吸収して熱を生じるものであればよく、光の照射に際しては光吸収剤が吸収する波長域の光を適宜用いればよい。光吸収剤の具体例としては、シアニン系色素、ポリメチン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アントラシアニン系色素、ポルフィリン系色素、アゾ系色素、ベンゾキノン系色素、ナフトキノン系色素、ジチオール金属錯体類、ジアミンの金属錯体類、ニグロシン等の各種色素、及びカーボンブラック等が挙げられる。
【0034】
これらの色素に於いては、明室での取り扱い性、露光機に用いる光源の出力や使い易さの点から波長750〜1100nmの領域の光を吸収する色素が好ましい。色素の吸収波長域に関しては置換基やπ電子の共役系の長さ等により変えることが出来る。これらの光吸収剤は感光性樹脂組成物に溶解していても、又分散していても良い。前記した光吸収剤の中では、本発明に於いては親水性の光吸収剤が好ましい。
【0035】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物には、印刷条件に対する安定性を広げるため、種々の界面活性剤を添加することが望ましい。前記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。また、感光性樹脂組成物水溶液の塗布性を良化するため、ハジキ防止剤、レベリング剤等の添加剤を添加しても良い。
【0036】
本発明では、親水性樹脂組成物に珪酸塩を添加することが重要な特徴である。珪酸塩を添加することにより感光層の親水性が向上するとともに、非画線部に付着したインクの脱離速度が向上する。珪酸塩の添加による親水性及びインク脱離性向上効果発現の理由は明らかではないが、珪酸塩の高い湿潤性により湿し水に対する濡れ性が高まるためと考えられる。珪酸塩の添加により、親水性に優れPS版並みに水量を減らしても非画線部は地汚れせず、かつインク脱離速度が速い現像工程不要なCTP用の版が得られる。
【0037】
本発明の感光層に用いられる珪酸塩のカチオンは、印刷特性に影響しないものであれば特に限定されないが、具体例としては、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等のアルカリ金属塩、珪酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらのなかではアルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩およびカリウム塩が望ましい。
【0038】
親水性樹脂組成物への珪酸塩の添加量は0.05〜5重量%であることが好ましく、さらに0.1〜3重量%であることが好ましい。添加量がこの範囲であれば、親水性及びインキ脱離性向上効果が現われ、耐刷性が悪化することがない。
【0039】
本発明の水に不溶性の親水性樹脂からなる感光層は、親水性ポリマー、架橋剤、光吸収剤及び珪酸塩を含有する感光性樹脂組成物からなる溶液、あるいは親水性ポリマー、架橋剤、疎水性ポリマー、光吸収剤及び珪酸塩を含有する感光性樹脂組成物からなる溶液を基板に塗布し、乾燥、硬化すればよい。塗布する方法としては塗布する溶液の粘度や塗布速度等によって異なるが、通常例えば、ロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンフローコーター、ダイコーターやスプレー法等を用いれば良い。塗布溶液を塗布した後、加熱して乾燥及び親水性ポリマーの架橋を行う。加熱温度は通常50〜200℃程度である。
【0040】
本発明の平版印刷版は光吸収剤の吸収波長域の光、例えば750〜1100nmの領域の光を照射すると、光吸収剤が光を吸収して発熱する。この発熱により感光層の光照射部は、自己重合した架橋剤や疎水性ポリマーが発泡したり熱融着したりして親水性が失われ親インク化する。この際、光の照射量を大きくし過ぎたり、又光吸収剤を多量に添加し過ぎたりすると、感光層が分解、燃焼等によって除去、融除されてしまい、照射部の周辺に分解物が飛散するので、このようなことは避けなければならない。
【0041】
このように本発明の平版印刷版は光を照射した部分の感光層表面の親水性が親インク性に変化し、現像や拭き取り操作をしなくても光の照射部にはインクが付着し、印刷が可能となる。
【0042】
本発明の平版印刷版の光照射に際しては、照射速度の点から収束光を高速で走査するのが好ましく、使用し易い。また、光源としては高出力のものが適しており、この点から、照射する光としてはレーザー光、特に750〜1100nmの波長域の発振波長を有するレーザー光が好ましく、例えば830nmの高出力半導体レーザーや1064nmのYAGレーザーが好ましく用いられる。これらのレーザーを搭載した露光機は所謂サーマル用プレートセッター(露光機)として既に市場に供されている。
【0043】
【実施例】
[実施例1]
(親水性ポリマーP−1の合成)
1000ccのフラスコに水500gを入れ、窒素をバブリングして溶存酸素を除去した後、80℃に昇温した。窒素ガスを上記フラスコに流しながら、そこにアクリルアミド137.1g、アクリロイルモルホリン7.9g、2−ヒドロキシエチルアクリレート5g、水150g、ホスフィン酸ナトリウム一水和物0.3gからなるモノマー溶液と過硫酸カリウム1.5gを水100gに溶解した開始剤の水溶液を、内温を80℃に維持しながら、別々に2時間に渡り連続滴下した。滴下終了後80℃で3時間重合を続けた。最後に水100gを加え、親水性ポリマーP−1の15%水溶液を合成した。
【0044】
(平版印刷用の原版の作成)
接着性向上のため予めプライマーとして1μmの厚さのウレタン樹脂(三井化学(株)製ウレタン樹脂オレスター(登録商標)UD350)を塗布した厚さ0.3mmのアルミニウム板に、下記組成(単位重量部、以下同様)からなる感光性樹脂組成物の水溶液をワイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で30分間乾燥し、2μmの膜厚の感光層を成膜して平版印刷版を作成した。
【0045】
上記親水性ポリマーP−1の水溶液(固形分15重量%):400部
メチル化メラミン樹脂(三井サイテック(株)製サイメル(登録商標)701、固形分80重量%):50部
シアニン色素水溶液(日本感光性色素(株)製IR−125、固形分5重量%):100部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製ネオコール(登録商標)YSK、固形分70重量%):1部
珪酸ナトリウム水溶液(固形分10重量%):20部(親水性樹脂組成物中の固形分で2.0重量%)
【0046】
(描画)
この原版に波長830nmの半導体レーザー光を400mJ/cm2の照射エネルギー密度となるように集光しながら走査照射して、200線/インチの画像情報の描画を行った。
【0047】
(印刷評価)
この描画した版をオフセット印刷機(株)小森コーポレーション製スプリント26にセットし、湿し水として(株)日研化学研究所のH液アストロマーク3の2%水溶液、インクとしてサカタインクス(株)製のエコピュアHP−Mを使用して印刷を行った。その結果湿し水量は水量目盛りで12%まで減らしても光の未照射部にはインクが全く付かず、一方、照射部にはインクが十分に付着し、描画した画像が印刷用紙上に再現された。通常PS版を用いる場合水量目盛り15〜20%で使用するため、2割以上の湿し水量削減ができた。また、印刷途中で湿し水量を7%まで下げると、光の未照射部にインキ汚れが発生したが、湿し水量を12%に戻すと30枚で汚れが回復した。
【0048】
[実施例2]
実施例1の珪酸ナトリウム水溶液を珪酸カリウム水溶液(固形分10重量%)に代えた以外は実施例1と同様にして印刷版を作り、描画および印刷評価を行なったところ、湿し水量を水量目盛りで12%まで減らしても光の未照射部にはインクが全く付かず、一方、照射部にはインクが十分に付着し、描画した画像が印刷用紙上に再現された。また、印刷途中で湿し水量を7%まで下げると、光の未照射部にインキ汚れが発生したが、湿し水量を12%に戻すと25枚で汚れが回復した。
【0049】
[実施例3]
実施例1の感光性樹脂組成物を下記組成に代えた以外は実施例1と同様にして平版印刷版を作った。
上記親水性ポリマーP−1の水溶液(固形分15重量%):267部
メチル化メラミン樹脂(三井サイテック(株)製サイメル(登録商標)385、固形分80重量%):12.5部
水分散ウレタン樹脂(三井化学(株)製オレスター(登録商標)UD350、固形分40重量%):100部
シアニン色素水溶液(日本感光性色素(株)製IR−125、固形分5重量%):100部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製ネオコール(登録商標)YSK、固形分70重量%):0.15部
珪酸ナトリウム水溶液(固形分10重量%):10部(親水性樹脂組成物中の固形分で0.9重量%)
【0050】
この版に波長830nmの半導体レーザー光を270mJ/cm2の照射エネルギー密度となるように集光しながら走査照射して、200線/インチの画像情報の描画を行い、印刷評価を行ったところ、湿し水量を水量目盛りで12%まで減らしても光の未照射部にはインクが全く付かず、一方、照射部にはインクが十分に付着し、描画した画像が印刷用紙上に再現された。また、印刷途中で湿し水量を7%まで下げると、光の未照射部にインキ汚れが発生したが、湿し水量を12%に戻すと65枚で汚れが回復した。
【0051】
[比較例1]
実施例3の珪酸ナトリウム水溶液を添加しないこと以外は実施例3と同様にして平版印刷用の原版を作り、描画および印刷評価を行なった。その結果PS版とほぼ同等の水量である20%で光の未照射部にはインクが全く付かず、一方、照射部にはインクが十分に付着し、描画した画像が印刷用紙上に再現されたが、15%まで減らすと一部に汚れが発生した。その後、湿し水量を20%に戻したが汚れが回復するのに135枚必要であった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の平版印刷版を用いれば、現像や拭き取り等の工程が不要で、且つ湿し水の量を減らしても地汚れし難いとともに、非画線部に付着したインクの脱離速度が速いCTP用の版を提供することができる。
Claims (2)
- 親水性ポリマー、架橋剤及び光吸収剤からなる感光性樹脂組成物を架橋してなる親水性樹脂感光層を有する原版に光照射して、照射部表面の親水性を親インク性に変化させて得られる平版印刷版において、親水性樹脂感光層中に珪酸塩を含有することを特徴とする平版印刷版。
- 前記感光性樹脂組成物がさらに疎水性ポリマーを含んでなることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版。
Priority Applications (1)
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JP2003182125A JP2005014392A (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 平版印刷版 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003182125A JP2005014392A (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 平版印刷版 |
Publications (1)
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JP2005014392A true JP2005014392A (ja) | 2005-01-20 |
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JP2003182125A Pending JP2005014392A (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 平版印刷版 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2005014392A (ja) |
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2003
- 2003-06-26 JP JP2003182125A patent/JP2005014392A/ja active Pending
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