JP2005014055A - 厚鋼板の圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】厚肉部を付与しない場合における通常の仕上圧延後の平面形状Pruを予測する工程と、予測平面形状Pruが目標とする矩形の平面形状Proから外れる部分の形状ΔPrを算出する工程と、外れる部分の形状ΔPrを、部分的に厚肉部を有する板厚分布を付与した後であって少なくとも1パスの圧延を受けた後の予測換算形状ΔPrcに換算する工程と、部分的に厚肉部を付与した後であって1パス圧延後の予測平面形状Prdaと厚肉部を付与しない場合であって1パス圧延後の予測平面形状Pruaとの差分として差形状ΔPrdを算出する工程と、予測換算形状ΔPrcの面積A1と差形状ΔPrdの面積A2との差分として面積差ΔAdを算出する工程と、面積差ΔAdが最小となるように、厚肉部の寸法および形状をそれぞれ決定する工程とを具備する。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚鋼板の幅方向に板厚分布を付与することにより、平面形状を制御して圧延する厚鋼板の圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、厚鋼板の圧延工程はスラブの表面手入れあるいは幅出し精度を保つため、板厚調整を行う調整圧延フェーズ、平面上で圧延方向を90度回転して所定の製品幅を得る幅出し圧延フェーズ、再び90度回転して所定の製品板厚を得る仕上圧延フェーズ、の3つの圧延フェーズから構成されている。厚鋼板の圧延はレバース圧延で行われており、これらの3つのフェーズを合わせて全部で10数パスの圧下を加えている。
【0003】
このようなプロセスを経て得られる製品の平面形状は、幅出し比(製品幅/スラブ幅)あるいは長手方向圧下比(製品長さ/スラブ長)をパラメータの1つとして変化する。例えば、幅出し比が小さく長手方向圧下比が大きい場合は鼓状となり、逆に幅出し比が大きく長手方向圧下比が小さい場合は太鼓状となることが一般的に知られている。圧延完了後の板取りにおいては、これらの平面形状で矩形から外れている部分はすべて切り落とされ、製品の歩留まりの低下を招く。
【0004】
これらの平面形状不良への対策として、予め最終的な平面形状を予測して圧延を行う方法がいくつか提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、圧延中にロール間隔を変えることにより、被圧延材に所定の板厚分布を付与した後、90°回転して幅出し圧延あるいは仕上圧延を行う厚板の平面形状制御方法が提案されている。この特許文献1の平面形状の制御では、次のようにしてタングあるいはフィッシュテールを矩形に近づけるようにしている。
【0006】
長手端面がタングとなる場合は、幅出し圧延フェーズの最終パスにおいて、長手方向の先後端部の板厚を中央部より厚くなるように板厚分布を付与し、その後、仕上圧延を行う。幅端面がタングとなる場合は、調整圧延フェーズの最終パスにおいて、長手方向の先後端部の板厚が中央部より厚くなるように板厚分布を付与し、その後、幅出し圧延を行えばよいとしている。
【0007】
また、付与する板厚分布の決め方としては、例えば特許文献2では通常圧延にて矩形から外れる体積と厚肉部の体積を同一とする、すなわち厚肉部の体積が全て圧延方向に流れると仮定した、マスフロー一定の法則を用いればよいとしている。
【0008】
また、特許文献3では、上記マスフロー一定の法則の考え方に加え、幅方向塑性流動の影響を板厚、板幅を用いた回帰式を用いて考慮している。
【0009】
さらに、非特許文献1〜3には、厚肉部を付与しないスラブ(鉛モデル)を実際に圧延したときの被圧延材の平面形状の実測値に基づいて、入り側板厚、板幅、ロール径、圧下率などのパラメータを含む予測式(実験式)を求め、予測式により被圧延材の平面形状を予測する方法がそれぞれ記載されている。
【0010】
【特許文献1】
特開昭52−57061号公報(2〜4頁、第1図〜第4図)
【0011】
【特許文献2】
特開昭55−77907号公報(2〜4頁、第1図〜第5図)
【0012】
【特許文献3】
特開昭57−097803号公報(2〜5頁、第1図〜第3図)
【0013】
【非特許文献1】
岡戸、中内他:鉄と鋼(1976年)、236頁
【0014】
【非特許文献2】
岡戸、中内他:鉄と鋼(1978年)、278頁
【0015】
【非特許文献3】
岡戸、中内他:鉄と鋼、66(1980年)、964頁
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術では、通常圧延にて矩形から外れる体積と厚肉部が先後端に流れる体積が一致するように、厚肉部形状を決定している。
【0017】
しかしながら、平面形状を矩形に近づける場合に、矩形から外れた部分の体積を考慮するだけでは不十分である。例えば、図1の(a)および(b)に示すような通常圧延時の先端クロップ3の形状を考えたとき、幅方向に板厚分布を付与された被圧延材2を圧延した場合に、パターンAとパターンBとで厚肉部が先端部に流れる体積が同じ場合であっても(SA=SB)、クロップ3の切捨て体積はパターンBの方が大きくなり、製品の歩留まりが異なる。つまり図2に示すような幅方向に板厚分布を付与された被圧延材を圧延した場合に生じるフィッシュテール形状を正確に予測しなければ、通常圧延時に発生する矩形から外れた部分(クロップ)を効率的に低減できないという問題がある。
【0018】
例えば、図3に示すようなテーパ状の板厚分布(長さL、高さΔH)を付与する場合を考えたとき、付与する板厚分布を決定する方法として特許文献3では次のようにしている。
【0019】
まず、通常圧延時の最終クロップ形状として、図4に示すように肩落ち幅Wfとクロップ長Lcを予測し、補うべき面積(SO=Wf×Lc)を算出する。次に、長さL=Wfとしてマスフロー一定則より高さΔH*を算出した後、幅方向塑性流動係数によりΔH*をΔHに補正する。このようにして特許文献3の従来法ではクロップロスが最小となる長さLと高さΔHを算出する。
【0020】
しかしながら、従来法におけるL=Wfの前提は、図4に示すような板厚分布を有する材料を、90℃回転した後に水平圧延したときに生じるフィッシュテールの幅(図2のWcrop)が肩落ち幅Wfと一致するという仮定のもとに決定されているものであり、この前提条件を支える仮定が崩れると、必ずしも最適な板厚分布(長さLと高さΔH)を算出できていないという問題がある。
【0021】
非特許文献1〜3の方法では、一様な厚さの単純断面形状スラブを圧延する場合には平面形状をある程度の精度で予測することはできるが、予め幅方向に板厚分布を付与したスラブを圧延する場合については圧延後の平面形状を予測することはできない。
【0022】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、最終平面形状を矩形に近づけるために必要な厚肉部の断面形状を高精度に算出することができる厚鋼板の圧延方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る厚鋼板の圧延方法は、厚鋼板の幅方向に部分的に厚肉部を有する板厚分布を付与することにより、厚鋼板の平面形状を制御する圧延方法において、(a)厚肉部を付与しない場合における通常の仕上圧延後の平面形状Pruを予測する工程と、(b)前記予測平面形状Pruが目標とする矩形の平面形状Proから外れる部分の形状ΔPrを算出する工程と、(c)前記外れる部分の形状ΔPrを、部分的に厚肉部を有する板厚分布を付与した後であって少なくとも1パスの圧延を受けた後の予測換算形状ΔPrcに換算する工程と、(d)部分的に厚肉部を付与した後であって1パス圧延後の予測平面形状Prdaと厚肉部を付与しない場合であって1パス圧延後の予測平面形状Pruaとの差分として差形状ΔPrdを算出する工程と、(e)前記予測換算形状ΔPrcの面積A1と前記差形状ΔPrdの面積A2との差分として面積差ΔAdを算出する工程と、(f)前記面積差ΔAdが最小となるような板厚分布が付与されるように、厚肉部の寸法および形状をそれぞれ決定する工程と、を具備することを特徴とする。
【0024】
上記工程(d)では、厚肉部を付与しない場合の前記予測平面形状Pruaと比較した場合に、厚肉部を付与することにより最も大きく伸びる量Lmaxと伸びが増加する領域の幅Wcropとをそれぞれ予測し、これらの予測LmaxおよびWcropを用いて前記予測平面形状Prdaを予測する。厚肉部を付与することにより最も大きく伸びる量Lmaxと伸びが増加する領域の幅Wcropとの予測においては、少なくとも厚肉部の幅L、肉厚分布ΔH、および板幅Wに対する厚肉部幅Lの比W/Lを用いることが望ましい。なお、図2に示す最大伸び量Lmaxと伸び増加領域幅Wcropに関しては従前の圧延実績から多くのデータを得ることができるので、予測平面形状Prdaをさらに高精度に予測することができる。
【0025】
また、上記工程(d)では、厚肉部の幅L、肉厚分布ΔH、および板幅Wに対する厚肉部幅Lの比(W/L)を用いて前記予測平面形状Prdaを予測することが好ましい。これらのパラメータ(Lmax,Wcrop,L,ΔH,W,W/L)および所定の数式を用いる数値解析法(Finite Element Method;FEM)により、および/または鉛モデル圧延模擬試験により、板厚分布付与後の1パスでの予測平面形状Prdaをさらに高精度に予測することができる。
【0026】
以下、図6〜図10を参照しながら予測平面形状Prdaを求める方法について説明する。
図6の(a)は平坦部の拘束が無いと仮定した場合に厚肉部がすべて圧延方向に伸びた状態を示す平面模式図、図6の(b)は平坦部の拘束が有ると仮定した場合に厚肉部を1パス圧延後の実際の状態を示す平面模式図である。
【0027】
厚肉部の断面形状を三角形と仮定すると式(1)〜(4)の関係が成立する。但し、C11〜C23は実験条件(板厚、板幅、圧下条件、ロール径など)および圧延後の平面形状測定結果から求める係数である。
【0028】
図7は、WcropとLmaxから後端部の平面形状プロフィールの計算予測方法を説明する図である。平面形状の曲線を4次と仮定すると、平面形状yは式(5)で与えられる。
【0029】
【数1】
【0030】
上記のように、LmaxとWcrop(既知)および対称の5条件から、上記4次式の5個の係数C1〜C5を決定することができる。例えば、Lmaxとなる座標(xL,Lmax)と突出する部分のもう1点(変曲点)の座標(xa,ya)とを実験に基づいて予測する簡易式を作成し、その簡易式を用いて係数C1〜C5を決定する。この4次式(5)が板厚分布付与後の1パスでの予測平面形状Prdaを与えるものとなる。つまり、本発明では平面形状のプロフィールをWcropおよびLmaxの2つの代表値で表現することとしている。
【0031】
図8の(a)は最終平面形状が矩形となる理想的圧延状態を示す平面模式図、図8の(b)は通常圧延で矩形から不足する部分に基づく幅出し完了後の目標形状の設定方法を説明する図である。
【0032】
さらに高精度に幅出し完了後の形状ΔPrcを求める場合は、幅端部の幅方向メタルフローも考慮に入れて、上記の一次近似で得られた幅出し完了時の平面形状から求められたΔPr1、ΔPrc1を用いて、従来の通常圧延における厚肉部の無い場合の平面形状予測式で最終平面形状を求め、不足する(または過剰となる)ΔPr2を再度求める。
【0033】
上記と同様の方法で幅出し完了時に換算した形状(ΔPrc2)を求める。つまり、より精度の良いΔPrc=ΔPrc1+ΔPrc2とすればよい。なお、符号Yf(x)は最終圧延後の不足分を表わし、符号Yw(x)は断面に厚肉部を有するときの1パス圧延後の不足分を表わす。上記の方法を繰り返すことにより精度が向上する。
【0034】
図9は、次材以降へのフィードバックを説明する図である。図中にて実線で示す特性線Pは実測値を、破線で示す特性線Qは予測値をそれぞれ表わす。予測値と実測値との平面形状プロフィールを比較し、LmaxおよびWcropそれぞれのずれ割合を算出した。前提条件として、予測値が次材でも同じようなずれを生じると仮定し、また、ベースとなる厚肉部を付与しない場合の従来の平面形状予測式の精度は良好であると仮定した。
【0035】
RL=δLmax/Lmax
RW=δWcrop/Wcrop
そのずれ割合の何%(係数:CoeR,CoeW)かを次材の予測値に付加する。
【0036】
次材の修正Lmax=RL×CoeR×Lmax(次材の予測値)
次材の修正Wcrop=RL×CoeW×Wcrop(次材の予測値)
これらの修正により図5のフローチャートから求まる厚肉部形状が変更される。
【0037】
なお、上記の予測式(1)〜(4)の精度向上を目的として、多数の実測値(計測値)とそれぞれの圧延条件に基づき式中の係数C11〜C23を重回帰法のような統計的手法を用いて学習する。
【0038】
図10は、水平圧延による平面形状変化を説明するモデル図である。
【0039】
(i)1パス水平圧延による平面形状変化モデルの例
矩形鋼板を水平圧延した場合の平面形状変化モデルを図10に示す。幅異形量とクロップ長はそれぞれ式(6)と式(7)から得られる。板幅変動と先後端クロップ長は式(8)と式(9)で近似できる。但し、式中の記号はそれぞれ、R:ワークロール半径、Δh:水平圧延圧下量、Hi:入側板厚、Wo:板幅の中央値である。
【0040】
【数2】
【0041】
(ii)多パス圧延による平面形状変化モデルの例
多パス圧延後の形状は、各パスの積算値として取り扱われる。式(10)と式(11)に多パス圧延時の板幅変動と先後端クロップ形状を示す。但し、式中の記号はそれぞれ、yw(n),yw(n−1):nパス目,n−1パス目の出側板幅変動、yw:nパス目で生じる板幅変動、yL(n),yL(n−1):nパス目,n−1パス目の出側クロップ形状、yL:nパス目で生じるクロップ形状変化、α:伸び率補正係数、h(n),h(n−1):nパス目,n−1パス目の出側板厚である。
【0042】
【数3】
【0043】
(iii)平面形状予測精度の検証
幅方向に厚肉部を付与した場合のエッジングによる平面形状変化モデルと水平圧延による平面形状変化モデルを重ね合わせて、矩形スラブから仕上圧延終了後の平面形状まで予測する一貫シミュレータを構成した。圧延終了後の平面形状予測精度は、例えば、板内幅偏差で±10mm、クロップ長で±100mmであり、平面形状制御に適用するのに十分な予測精度が得られた。クロップ長の予測精度が板内幅偏差に比べて劣るのは、予測誤差が長手方向に延ばされて拡大されていくからである。
【0044】
本発明は、圧延中に付与した板厚分布が、その後の水平圧延によりどのように変形するのかを検討する中でなされた。材料の変形を検討するにあたり、本発明者らは純鉛を用いたモデル圧延実験を行った。
【0045】
図11は横軸に板幅エッジからの距離(mm)をとり、縦軸に後端クロップのタング長さ(mm)をとって、板幅方向における後端クロップのタング長さ分布を示す特性線図である。図中にて特性線Aはマスフロー一定則に基づいて計算した理論値曲線を示し、特性線Bは実際に試料を用いて測定した実験値曲線を示す。板厚12mm×幅180mm×長さ300mmサイズの素材に対してL=40mm、ΔH=1.0mmのような板厚分布を付与した。この板厚分布付与材料を板厚10.5mmまで圧延したときの後端部クロップ形状について理論値と実験値をそれぞれ調べた。
【0046】
図11から明らかなように、いわゆるフィッシュテール形状となっており、伸びの最大値(Lmax)はほぼ幅端部で生じている。ここで、特許文献3に記載されたマスフロー一定則に基づいて予測した形状を図中に示すが、幅端部についてはマスフロー一定則での予測値よりも伸びは小さいことが判明した。これは幅端部では幅広がりの影響が大きいためである。また、伸びが大きい領域の幅(Wcrop)はL(=40mm)よりも大きいことが判明した。
【0047】
以上の実験結果より、このような板厚分布を有した材料を圧延した場合に発生する平面形状変化を予測するためには)代表寸法として、少なくとも図2の(a)に示す最大伸び長さLmaxと厚肉部の影響により伸びが大きくなっている領域の幅Wcropを用いる必要がある。例えば、4次曲線等を利用して形状を近似することにより、フィッシュテール形状を予測することが可能である。
【0048】
さらに、部分的に厚肉部を付与した後の圧延パス後において、圧延材の平面形状Prdrを測定し、この平面形状Prdrの測定値と上記予測平面形状Prdaの値との差分を、次材以降の圧延にフィードバックするようにしてもよい。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図5のフローチャートを用いて本発明の実施形態を説明する。
先ず通常圧延でのクロップ形状Pruを図中に実線で示すように予測する(工程S1)。このクロップ形状Pruの予測には、例えば特許文献3に記載された所定の実験式を用いてもよいし、数値解析法(Finite Element Method;FEM)を用いるようにしてもよい。
【0050】
次いで、通常圧延クロップ予測形状Pruを目標とする矩形の平面形状Pro(図中の破線)と比較し、前者が後者から外れる部分の形状ΔPrを算出する(工程S2)。
【0051】
算出した矩形から外れる部分の形状ΔPrを幅出し圧延完了したときに予測される形状に換算する(工程S3)。この換算工程S3では、幅出し圧延完了パスで板厚分布を付与する場合を考えると、図1の(a)に示すパターンAの形状を仕上圧延圧下比(=幅出し完了板厚/製品板厚)で割り戻し、パターンAの形状を幅出し圧延完了時点での図1の(b)に示すパターンBに近似する形状A´に換算する。この一次近似形状A´は、厚肉部を付与しない場合に不足する部分の形状を圧下比分だけ圧延方向に縮小した形状を算出し、この算出形状を通常圧延における幅出し圧延完了時の平面形状にプラスした平面形状が、最終の仕上圧延で平面形状が矩形となる平面形状Pro(幅出し圧延完了時の形状)となる。
【0052】
なお、本実施例では一次近似形状A´を用いるようにしているが、さらに精度良く目標平面形状を求める手法としてFEMを採用してもよい。すなわち、FEMを用いて線形計画法に準じた演算を何回も繰り返すことにより、最終的に目標平面形状を求めることができる。また、FEMから加工の最終段階までを逆に溯って帰納的に演算して形状を求めるようにしてもよい。
【0053】
換算した一次近似の予測形状A´に基いて幅出し圧延完了時の厚肉部を付与しない場合の平面形状Pruaを求める(工程S4)。
【0054】
この幅出し圧延完了時の厚肉部を付与しない場合の平面形状Pruaに基いて初期の板厚分布を仮定する(工程S5)。この仮定した板厚分布を厚鋼板端部に板厚分布を付与するときに用いる。
【0055】
板厚分布付与後に、1パスでの予測平面形状Prdaを算出する(工程S6)。板厚分布付与後の1パスでは、ほとんど厚肉部のみを圧下して平らにするように圧延する。このとき、板厚が厚い部分は圧延方向に伸びようとするが、ほとんど圧下されない部分は伸ばされずに伸びようとする厚肉部を拘束し、かつ幅端部に近いメタルは幅方向にも流れ、その結果、(i)厚肉部の圧延方向に突出する長さ(クロップ長さ)は短くなり、(ii)伸びようとする厚肉部に圧下されない部分が引っ張られて、突出する幅Wcropは厚肉部を付与した幅Lより大きくなる。すなわち図6の(a)に示すように、素材断面において厚肉部の占める部分(断面積S2)とそれ以外の部分(断面積S1)との割合、例えばS1/(S1+S2)、S2/(S1+S2)、および厚肉部の圧下率ε2(圧下歪み:伸びようとする大きさ)とそれ以外の圧下率ε1とが、WcropとLmaxを予測する主要なパラメータであり、これらを用いて予測式として上記の2つの式(1)と式(2)を作成した。なお、断面積S1,S2は上記の式(3)と式(4)に示すようにΔHとW/Lを用いて表わすことができる。
【0056】
図7に示すように、平面形状のプロフィールを4次式(5)で近似すると、WcropとLmaxから平面形状のプロフィールを決定することができる。この4次式(5)が板厚分布付与後の1パスでの予測平面形状Prdaを与えるものとなる。
【0057】
1パスでの予測平面形状Prdaから厚肉部を付与しない場合の平面形状Pruaを差し引き、その差分を差形状ΔPrdとする(工程S7)。
【0058】
形状ΔPrcの面積A1から差形状ΔPrdの面積A2を差し引き、その差分を面積差ΔAd(=A1−A2)とする(工程S8)。
【0059】
求めた面積差ΔAdを所定の許容面積差Asと比較し、その大小を判定する(工程S9)。面積差ΔAdが許容面積差Asより小さいか又は等しい場合は合格判定とし、演算を終了する。なお、所定の許容面積差Asは、ゼロではないが限りなくゼロに近い値であり、板厚と板幅との組合せごとに予め実験により求めておいたものである。
【0060】
面積差ΔAdが許容面積差Asより大きい場合は、不合格と判定し、先の初期板厚分布を修正し(工程S10)、工程S5に戻る。工程S5では修正板厚分布を実圧延の板厚分布と仮定する。そして、この修正板厚分布を用いて上記工程S6〜S8の手順に従って面積差ΔAdを求め、求めた面積差ΔAdと許容面積差Asとの大小を繰り返し比較判定する(工程S9)。具体的には、厚肉部形状(長さL、高さΔH)の初期値に対してこれを圧延したときの形状Bを予測し、形状Bが一次近似形状A´に近づくように、厚肉部形状の修正を繰り返す。この処理により、クロップロスが最小となるような、長さL、高さΔHの最適値が算出可能である。なお、本発明では、厚肉部形状の修正量および修正方法については特に問わない。
【0061】
なお、部分的に厚肉部を付与した後の圧延パス後に、圧延材の平面形状(Prdr)を測定し、この測定値と予測した平面形状(Prda)との差を、次材以降の圧延にフィードバックするようにしてもよい。
【0062】
【実施例】
次に、本発明方法を適用した実施例について説明する。
【0063】
本発明方法に従って平面形状を制御した厚板サンプルを実施例とし、上記特許文献3の方法に従って平面形状を制御した厚板サンプルを比較例として、両者に生じるクロップロスの比較を行った。
【0064】
厚板サンプルとして初期サイズが板厚251mm×幅1320mm×長さ2095mmのスラブを採用し、このスラブから板厚9.8mm×幅2394mm×長さ29500mmの圧延製品を得ることを想定した。厚板に付与する板厚分布は図2(b)に示す断面形状とした。
【0065】
表1に調整圧延、幅出圧延、仕上圧延のパススケジュールをそれぞれ示す。調整圧延は3パス、幅出圧延は4パス、仕上圧延は9パスとした。調整圧延の3パス目では厚板を90°回転させてクロスロールを行った。幅出圧延の4パス目では、1〜3パスで厚板に板厚分布を付与した後に、これを90°回転させてクロスロールを行った。
【0066】
通常圧延時のクロップ長Lcは430mm、肩落ち幅Wは400mmであるため、比較例では長さLc=W=400mm、高さΔH=7.0mmであった。これに対して、本発明方法を適用した実施例では、長さLc=350mm、高さΔH=16.2mmであった。
【0067】
【表1】
【0068】
図12に通常圧延時のクロップロスCR1に対する、従来法(特許文献3の方法を用いた比較例)と本発明方法(上記の実施例)をそれぞれ適用した場合のクロップロスCR2の比(CR2/CR1)を示す。この図から明らかなように、従来法を適用した場合にはクロップロスが約35%低減するが、本発明方法を適用すればクロップロスを約65%も削減することができた。
【0069】
【発明の効果】
本発明は、材料の幅方向に薄肉部と厚肉部を有する板厚分布を付与することにより、平面形状を制御して圧延する厚鋼板の圧延方法において、付与する板厚分布を決定するにあたり、板厚分布を付与した後の圧延における平面形状変化を予測することにより、最終平面形状を矩形に近づけるために必要な厚肉部の断面形状を高精度に算出することができる。このため、クロップロスが従来に比べて大幅に低減され、製品歩留りを飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は通常圧延時における厚鋼板の後端部(パターンA)を示す断面模式図、(b)は通常圧延時における他の厚鋼板の後端部(パターンB)を示す断面模式図。
【図2】(a)は厚鋼板の後端部を示す平面模式図、(b)は厚鋼板の後端部を示す断面模式図。
【図3】厚鋼板の後端部を示す断面模式図。
【図4】通常圧延されたクロップ形状を示す平面模式図。
【図5】(a)は本発明の厚鋼板の圧延方法を示すフローチャート、(b)は各工程に対応する厚鋼板の断面をそれぞれ示す模式図。
【図6】(a)は平坦部の拘束が無いと仮定した場合に厚肉部がすべて圧延方向に伸びた状態を示す平面模式図、(b)は平坦部の拘束が有ると仮定した場合に厚肉部を1パス圧延後の実際の状態を示す平面模式図。
【図7】WcropとLmaxから後端部の平面形状プロフィールの計算予測方法を説明する図。
【図8】(a)は最終平面形状が矩形となる理想的圧延状態を示す平面模式図、(b)は通常圧延で矩形から不足する部分に基づく幅出し完了後の目標形状の設定方法を説明する図。
【図9】次材以降へのフィードバックを説明する図。
【図10】水平圧延による平面形状変化を説明するモデル図。
【図11】板幅方向における後端クロップのタング長さ分布を示す特性線図。
【図12】クロップロスについて本発明方法と従来法とを比較して示すグラフ図。
【符号の説明】
2…厚鋼板、
3…クロップ、
Pru…通常圧延でのクロップ形状(予測平面形状)、
Pro…目標とする矩形の平面形状、
ΔPr…矩形から外れる部分の形状、
ΔPrc…1パス後の予測換算形状、
Prua…厚肉部を付与しない場合の1パス後の予測平面形状、
Prda…板厚分布付与後の1パスでの予測平面形状、
ΔPrd…差形状(=Prda−Prua)、
A1…予測換算形状ΔPrcの面積、
A2…差形状ΔPrdの面積、
ΔAd…面積差(=A1−A2)。
Claims (3)
- 厚鋼板の幅方向に部分的に厚肉部を有する板厚分布を付与することにより、厚鋼板の平面形状を制御する圧延方法において、
(a)厚肉部を付与しない場合における通常の仕上圧延後の平面形状Pruを予測する工程と、
(b)前記予測平面形状Pruが目標とする矩形の平面形状Proから外れる部分の形状ΔPrを算出する工程と、
(c)前記外れる部分の形状ΔPrを、部分的に厚肉部を有する板厚分布を付与した後であって少なくとも1パスの圧延を受けた後の予測換算形状ΔPrcに換算する工程と、
(d)部分的に厚肉部を付与した後であって1パス圧延後の予測平面形状Prdaと厚肉部を付与しない場合であって1パス圧延後の予測平面形状Pruaとの差分として差形状ΔPrdを算出する工程と、
(e)前記予測換算形状ΔPrcの面積A1と前記差形状ΔPrdの面積A2との差分として面積差ΔAdを算出する工程と、
(f)前記面積差ΔAdが最小となるような板厚分布が付与されるように、厚肉部の寸法および形状をそれぞれ決定する工程と、
を具備することを特徴とする厚鋼板の圧延方法。 - 前記工程(d)では、厚肉部を付与しない場合の前記予測平面形状Pruaと比較した場合に、厚肉部を付与することにより最も大きく伸びる量Lmaxと伸びが増加する領域の幅Wcropとをそれぞれ予測し、これらの予測LmaxおよびWcropを用いて前記予測平面形状Prdaを予測することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記工程(d)では、厚肉部の幅L、肉厚分布ΔH、および板幅Wに対する厚肉部幅Lの比(W/L)を用いて前記予測平面形状Prdaを予測することを特徴とする請求項1または2のいずれか一方に記載の方法。
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