JP2005014047A - 溶融金属中の介在物除去方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課 題】溶融金属とりわけ高温の溶鋼等の非金属介在物を効果的に分離除去することを目的とし、特に溶融金属の滞留時間の短いタンディッシュのような中間容器で、従来は分離除去が困難であった微細な非金属介在物をも分離除去できる方法および装置を提案する。
【解決手段】溶融金属を保持した容器から中空の排出管を介して溶融金属を排出するにあたり、排出管内の溶融金属にガスを吹込むとともに、排出管内の溶融金属に電磁力による回転を付与する。
【選択図】 図1
【解決手段】溶融金属を保持した容器から中空の排出管を介して溶融金属を排出するにあたり、排出管内の溶融金属にガスを吹込むとともに、排出管内の溶融金属に電磁力による回転を付与する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、溶融金属中の介在物を除去する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属製品中の介在物は、当該金属製品の強度や表面品質を損なうことが多く、できるだけこれを低減することが望まれている。たとえば鉄鋼製品の場合、鋼中の非金属介在物は、機械部品や構造部材の場合には強度を損なったり、疲労特性を損なう。また自動車,電気製品,缶などに使用される鋼板では、スラブを圧延して熱延鋼板や冷延鋼板に加工する際に、鋼中の非金属介在物が表面に露出して鋼板の表面疵や膨れ,ヘゲなどの表面欠陥を生ずる。また板をプレス成形する際に疵を発生させることもある。さらには非金属介在物の露出部を起点として腐食が発生することもある。
【0003】
このような非金属介在物を除去することは、金属製品の製造過程では必須不可欠の処理である。アルミニウムなどの比較的低融点の金属や合金については、多孔質のセラミックフィルターを使用して溶融金属を濾過する方法が知られているが、溶鋼のような高融点の金属や合金を長時間にわたって濾過することのできる耐用性のあるセラミックフィルターは実現されていない。
【0004】
溶鋼中の非金属介在物を除去する最も一般的な方法は、非特許文献1に記載されているように、溶融金属にガスを吹込んで攪拌する方法(いわゆるガスバブリング法),真空処理によって溶鋼を循環させて攪拌する方法(RH法やDH法),電磁力によって溶鋼を攪拌する方法(ASEA−SKF)などのいわゆる取鍋精錬によって、介在物同士を衝突させて凝集肥大させて浮上分離を容易にすることである。
【0005】
これらの取鍋精錬技術はそれぞれに効果を上げているが、取鍋精錬後の溶鋼を連続鋳造装置に移送する間、あるいは連続鋳造中に取鍋内溶鋼がスラグや雰囲気等によって再酸化されて発生する非金属介在物に対しては無力である。これら取鍋精錬後の溶鋼中の介在物を除去する方法は、取鍋からタンディッシュへ注湯するためのロングノズル内に不活性ガスを吹込む方法(特許文献1),タンディッシュ内の溶鋼に不活性ガスを吹込んで攪拌し非金属介在物を凝集肥大化して浮上分離を促進する方法(特許文献2),タンディッシュ内に各種の堰を設けてタンディッシュ内溶鋼中のいわゆるショートサーキットを防止して非金属介在物の浮上時間を稼ぐ方法(特許文献3),タンディッシュ内溶鋼に電磁力によって旋回流を発生させて、溶鋼より比重の小さな非金属介在物を回転中心に凝集分離する方法(特許文献4)などが採用されている。
【0006】
しかし、再酸化によって生成する非金属介在物は微細であるため、タンディッシュ内を通過する極めて短時間のうちにこれを効果的に分離除去することは、上記の従来技術では未だ不十分であった。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−187239号公報
【特許文献2】
特開平3−32454 号公報
【特許文献3】
特開2003−145253 号公報
【特許文献4】
特公平6−49908 号公報
【特許文献5】
特公平3−64567 号公報
【非特許文献1】
第54・55回西山記念技術講座「取鍋精錬技術と鋼材特性」(昭和53年、日本鉄鋼協会刊)p25〜53
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶融金属とりわけ高温の溶鋼等の非金属介在物を効果的に分離除去することを目的とし、特に上述したように溶融金属の滞留時間の短いタンディッシュのような中間容器で、従来は分離除去が困難であった微細な非金属介在物をも分離除去できる方法および装置を提案することを目的とするものである。
【0009】
【発明を解決するための手段】
すなわち本発明は、溶融金属を保持した容器から中空の排出管を介して溶融金属を排出するにあたり、前記排出管内の溶融金属にガスを吹込むとともに、該排出管内の溶融金属に電磁力による回転を付与することを特徴とする溶融金属中の介在物の除去方法である。
【0010】
また、本発明は溶融金属の保持容器の下部にノズルを設け、該ノズルの下方に中空の溶融金属排出管を連接し、該溶融金属排出管にはその内壁に開口したガス吹込み手段を設けるとともに、該溶融金属排出管の外側には該溶融金属排出管内の溶融金属に回転力を付与する磁場発生装置を設けたことを特徴とする溶融金属中の介在物の除去装置である。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、本発明をなすに到った知見について説明する。本発明者らは連続鋳造されたスラブ内の気泡欠陥や介在物の分布を調査しているうちに、凝固シェルにトラップされたと思われる気泡表面付近にしばしば微細な非金属介在物が存在することに気が付いた。特に、気泡径が小さいほど気泡表面に存在する介在物は多くまた微細なものが多いことも明らかとなった。
【0012】
そこで、溶鋼中に微細な気泡を多数分散させることによって溶鋼中の微細介在物を気泡に付着させ、これによって微細介在物の見掛け比重を著しく小さくすることを着想した。
【0013】
溶鋼中に不活性ガスを供給する方法としては、ポーラス耐火物やステンレスパイプを用いる方法が実用化されているが、いずれも気泡径は数mmが限度であり、それより小さい径の気泡を得ることは困難である。そこで本発明者らは、特許文献5に開示される、溶鋼に回転力を付与し、溶鋼の回転流によって気泡を分断して微細化することを考えた。
【0014】
予備実験のために図2に示すような水銀モデル実験装置を製作し、透明アクリル製の円筒容器13内に保持した水銀11中に不活性ガス6を吹込むとともに、水銀に回転磁界(3相モーターのステーターを使用)を印加して回転力9を与えた。なお円筒容器の直径は46mmとし、水銀の高さは56mmとした。不活性ガスはN2 ガスを使用し、10.3cc/分,25.7cc/分の2水準のガス吹込み量で実験を行なった。水銀内の気泡径は、測定することが困難であるので、水銀上に水10を満たし、水銀中から水中に浮上してきた気泡3をカメラ12で撮影することによって気泡径を測定した。図4に水銀の回転数と気泡径の関係を示す。この結果から、回転数を上げていくと気泡径が減少することが明らかとなった。
【0015】
また図5に、気泡径の分布の一例を示す。回転を与えない場合(すなわち0回/分)の気泡径はほぼ1.2mm であったが、 450回/分の回転を与えた場合には0.45mmに最大のピークが観察された。
【0016】
このように溶融金属の回転によって気泡が微細化するのは、図3に示すように容器壁近傍では溶融金属内に大きな速度差があるため、気泡に剪断力が働くためと推察される。
【0017】
このように溶融金属によって気泡を分断し、微細化できる可能性が明らかとなったので、これを実際の溶鋼の清浄化プロセスに適用することを考えた。図1に本発明の好ましい形態の一例を示す。取鍋1の下方に設けられたノズル5から中空の排出管7を介して溶鋼2(すなわち溶融金属)を排出する。その際に、排出管内の溶鋼に不活性ガス6を吹込むとともに、その外部には移動磁界発生装置8を設けて排出管内の溶鋼に回転力を与える。
【0018】
取鍋の下方に設けられるノズル5は、通常、スライディングゲートと呼ばれている。溶鋼の排出管7は、取鍋からタンディッシュに溶鋼を注湯する際に使用される耐火物製の管(いわゆるロングノズルと呼ばれるもの)でよい。移動磁界発生装置8aは、予備実験で使用したような回転磁界発生装置8bが最も効率が良く好ましいが、設置条件等で排出管の全周を囲繞して設けることが困難な場合は、水平方向に移動する磁界によって溶鋼に回転力9を付与しても構わない。吹込む不活性ガスは、鋼の性質に悪影響を与えないことが必須であり、最も好ましいのはアルゴンであるが、窒素規制の緩やかな鋼種や高窒素鋼の場合は窒素ガスでも良い。
【0019】
ガス吹込み手段は、ポーラス耐火物あるいはステンレスパイプが使用可能である。なお、ポーラス耐火物の場合は、通気孔の大きさや分布によっては供給された不活性ガスがポーラス耐火物を出た直後に気泡同士が互いに合体して粗大化する傾向があるので、適切なものを選択することが必要である。この点ではステンレスパイプによって供給することがより好ましい。
【0020】
排出管内に吹込まれた気泡3は溶鋼の回転によって分断され微細化し、浮力によって排出管内を上昇し、さらに取鍋内に入って浮上を続ける。この過程で溶鋼内の微細な非金属介在物を吸着し、その浮上を助け、最終的に取鍋内溶鋼浴面上のスラグに到達する。そして非金属介在物はスラグ中に溶解あるいは吸収され、不活性ガスのみが雰囲気へと逸散する。
【0021】
一方、 気泡の一部は溶鋼とともに排出管内を下降し、下部に設けられたタンディッシュ等の中間容器(図示せず)に排出される。タンディッシュ内においても、微細気泡は溶鋼内の微細な非金属介在物を吸着し、その浮上を助け、最終的にタンディッシュ内溶鋼浴面上のスラグに到達する。なお、排出管の下流に設ける容器は必ずしもタンディッシュである必要はない。すなわち、排出管の下にもう一つ取鍋を配置して、いわゆるリレードルを行なう際にも、本発明を利用して介在物の分離を促進することも可能だからである。
【0022】
また、排出管の上部の容器をタンディッシュとして、排出管の下流は連続鋳造等の鋳型とすることも可能である。すなわち、排出管は浸漬ノズルを兼用する。この場合、排出管を下降した気泡は鋳型内に入ってしまうことになるが、非金属介在物が単独で鋳型内に流入する場合に比べると、気泡と合体した非金属介在物はより浮上しやすいので、鋳型内溶鋼上面のモールドパウダー中に浮上して吸収されやすく、製品中に欠陥として残存する確率は格段に低くなる。
【0023】
【実施例】
容量5トンの取鍋に保持した低炭素アルミキルド鋼(組成を表1に示す)を、試験連鋳機にて連続鋳造する際に、本発明を適用した実施例(発明例)と、 本発明を用いない従来例(比較例)を実施して、得られた連鋳鋳片に含有される非金属介在物の量と分布を調査した。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例(発明例),従来例(比較例)とも取鍋底には直径50mmの開口を有するスライディングゲートを設け、 その下に内径60mm,長さ700mm のアルミナグラファイト質耐火物製のロングノズルを配置し、このロングノズルを介してタンディッシュ内に溶鋼を注入した。タンディッシュは、短辺が600mm ,長辺が1100mm(容量2トン)の矩形形状であり、一方の端部に上記ロングノズルによって取鍋からの溶鋼を注入し、一方の端部からスライディングノズルと2孔浸漬ノズルを介して連鋳鋳型に溶鋼を注入した。ロングノズル内には内径2mmのステンレスパイプから30N−liter/分のアルゴンを吹込んだ。
【0026】
連続鋳造装置は、鋳型の断面サイズが厚み110mm ×幅400mm ,機長11.4m,垂直部長さ 1.5m,7点曲げ7点矯正の垂直曲げ型連鋳機であり、鋳込み速度を 1.5m/分にて実験を行なった。
【0027】
発明例ではロングノズルの外側に3相の回転磁界発生装置を設け、 溶鋼の回転数にして 400回/分となるように磁場を印加した。鋳造後の鋳片の定常鋳込み部から鋳片幅方向の両端部および中央部の計3ケ所から50×50×200mm のサンプルを切り出し、Otot の分析およびスライム抽出法による非金属介在物量と粒径分布を求めた。発明例と比較例の結果を比較して表2に示す。なお非金属介在物量は、溶鋼1kgあたりの質量(g)で示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2から、発明例ではスラブ中の非金属介在物量は少なく、また介在物の分布も、鋼材の品質に悪影響のない、より微細側にシフトしていることが明らかとなった。
【0030】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明によれば溶鋼等の溶融金属中の非金属介在物の量を低減することが可能であり、とりわけ溶融金属の滞留時間の短いタンディッシュのような中間容器で、従来は分離除去が困難であった微細な非金属介在物をも分離除去できることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する装置の例を模式的に示す図であり、(a) は断面図、(b) は気泡の拡大断面図である。
【図2】水銀モデル実験装置を模式的に示す断面図である。
【図3】図2中のA部の拡大断面図である。
【図4】水銀浴回転数と気泡径との関係を示すグラフである。
【図5】気泡径の分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 取鍋
2 溶融金属
3 気泡
4 非金属介在物
5 ノズル
6 不活性ガス
7 排出管
8a 移動磁界発生装置
8b 回転磁界発生装置
9 回転力
10 水
11 水銀
12 カメラ
13 円筒容器
【発明の属する技術分野】
この発明は、溶融金属中の介在物を除去する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属製品中の介在物は、当該金属製品の強度や表面品質を損なうことが多く、できるだけこれを低減することが望まれている。たとえば鉄鋼製品の場合、鋼中の非金属介在物は、機械部品や構造部材の場合には強度を損なったり、疲労特性を損なう。また自動車,電気製品,缶などに使用される鋼板では、スラブを圧延して熱延鋼板や冷延鋼板に加工する際に、鋼中の非金属介在物が表面に露出して鋼板の表面疵や膨れ,ヘゲなどの表面欠陥を生ずる。また板をプレス成形する際に疵を発生させることもある。さらには非金属介在物の露出部を起点として腐食が発生することもある。
【0003】
このような非金属介在物を除去することは、金属製品の製造過程では必須不可欠の処理である。アルミニウムなどの比較的低融点の金属や合金については、多孔質のセラミックフィルターを使用して溶融金属を濾過する方法が知られているが、溶鋼のような高融点の金属や合金を長時間にわたって濾過することのできる耐用性のあるセラミックフィルターは実現されていない。
【0004】
溶鋼中の非金属介在物を除去する最も一般的な方法は、非特許文献1に記載されているように、溶融金属にガスを吹込んで攪拌する方法(いわゆるガスバブリング法),真空処理によって溶鋼を循環させて攪拌する方法(RH法やDH法),電磁力によって溶鋼を攪拌する方法(ASEA−SKF)などのいわゆる取鍋精錬によって、介在物同士を衝突させて凝集肥大させて浮上分離を容易にすることである。
【0005】
これらの取鍋精錬技術はそれぞれに効果を上げているが、取鍋精錬後の溶鋼を連続鋳造装置に移送する間、あるいは連続鋳造中に取鍋内溶鋼がスラグや雰囲気等によって再酸化されて発生する非金属介在物に対しては無力である。これら取鍋精錬後の溶鋼中の介在物を除去する方法は、取鍋からタンディッシュへ注湯するためのロングノズル内に不活性ガスを吹込む方法(特許文献1),タンディッシュ内の溶鋼に不活性ガスを吹込んで攪拌し非金属介在物を凝集肥大化して浮上分離を促進する方法(特許文献2),タンディッシュ内に各種の堰を設けてタンディッシュ内溶鋼中のいわゆるショートサーキットを防止して非金属介在物の浮上時間を稼ぐ方法(特許文献3),タンディッシュ内溶鋼に電磁力によって旋回流を発生させて、溶鋼より比重の小さな非金属介在物を回転中心に凝集分離する方法(特許文献4)などが採用されている。
【0006】
しかし、再酸化によって生成する非金属介在物は微細であるため、タンディッシュ内を通過する極めて短時間のうちにこれを効果的に分離除去することは、上記の従来技術では未だ不十分であった。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−187239号公報
【特許文献2】
特開平3−32454 号公報
【特許文献3】
特開2003−145253 号公報
【特許文献4】
特公平6−49908 号公報
【特許文献5】
特公平3−64567 号公報
【非特許文献1】
第54・55回西山記念技術講座「取鍋精錬技術と鋼材特性」(昭和53年、日本鉄鋼協会刊)p25〜53
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶融金属とりわけ高温の溶鋼等の非金属介在物を効果的に分離除去することを目的とし、特に上述したように溶融金属の滞留時間の短いタンディッシュのような中間容器で、従来は分離除去が困難であった微細な非金属介在物をも分離除去できる方法および装置を提案することを目的とするものである。
【0009】
【発明を解決するための手段】
すなわち本発明は、溶融金属を保持した容器から中空の排出管を介して溶融金属を排出するにあたり、前記排出管内の溶融金属にガスを吹込むとともに、該排出管内の溶融金属に電磁力による回転を付与することを特徴とする溶融金属中の介在物の除去方法である。
【0010】
また、本発明は溶融金属の保持容器の下部にノズルを設け、該ノズルの下方に中空の溶融金属排出管を連接し、該溶融金属排出管にはその内壁に開口したガス吹込み手段を設けるとともに、該溶融金属排出管の外側には該溶融金属排出管内の溶融金属に回転力を付与する磁場発生装置を設けたことを特徴とする溶融金属中の介在物の除去装置である。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、本発明をなすに到った知見について説明する。本発明者らは連続鋳造されたスラブ内の気泡欠陥や介在物の分布を調査しているうちに、凝固シェルにトラップされたと思われる気泡表面付近にしばしば微細な非金属介在物が存在することに気が付いた。特に、気泡径が小さいほど気泡表面に存在する介在物は多くまた微細なものが多いことも明らかとなった。
【0012】
そこで、溶鋼中に微細な気泡を多数分散させることによって溶鋼中の微細介在物を気泡に付着させ、これによって微細介在物の見掛け比重を著しく小さくすることを着想した。
【0013】
溶鋼中に不活性ガスを供給する方法としては、ポーラス耐火物やステンレスパイプを用いる方法が実用化されているが、いずれも気泡径は数mmが限度であり、それより小さい径の気泡を得ることは困難である。そこで本発明者らは、特許文献5に開示される、溶鋼に回転力を付与し、溶鋼の回転流によって気泡を分断して微細化することを考えた。
【0014】
予備実験のために図2に示すような水銀モデル実験装置を製作し、透明アクリル製の円筒容器13内に保持した水銀11中に不活性ガス6を吹込むとともに、水銀に回転磁界(3相モーターのステーターを使用)を印加して回転力9を与えた。なお円筒容器の直径は46mmとし、水銀の高さは56mmとした。不活性ガスはN2 ガスを使用し、10.3cc/分,25.7cc/分の2水準のガス吹込み量で実験を行なった。水銀内の気泡径は、測定することが困難であるので、水銀上に水10を満たし、水銀中から水中に浮上してきた気泡3をカメラ12で撮影することによって気泡径を測定した。図4に水銀の回転数と気泡径の関係を示す。この結果から、回転数を上げていくと気泡径が減少することが明らかとなった。
【0015】
また図5に、気泡径の分布の一例を示す。回転を与えない場合(すなわち0回/分)の気泡径はほぼ1.2mm であったが、 450回/分の回転を与えた場合には0.45mmに最大のピークが観察された。
【0016】
このように溶融金属の回転によって気泡が微細化するのは、図3に示すように容器壁近傍では溶融金属内に大きな速度差があるため、気泡に剪断力が働くためと推察される。
【0017】
このように溶融金属によって気泡を分断し、微細化できる可能性が明らかとなったので、これを実際の溶鋼の清浄化プロセスに適用することを考えた。図1に本発明の好ましい形態の一例を示す。取鍋1の下方に設けられたノズル5から中空の排出管7を介して溶鋼2(すなわち溶融金属)を排出する。その際に、排出管内の溶鋼に不活性ガス6を吹込むとともに、その外部には移動磁界発生装置8を設けて排出管内の溶鋼に回転力を与える。
【0018】
取鍋の下方に設けられるノズル5は、通常、スライディングゲートと呼ばれている。溶鋼の排出管7は、取鍋からタンディッシュに溶鋼を注湯する際に使用される耐火物製の管(いわゆるロングノズルと呼ばれるもの)でよい。移動磁界発生装置8aは、予備実験で使用したような回転磁界発生装置8bが最も効率が良く好ましいが、設置条件等で排出管の全周を囲繞して設けることが困難な場合は、水平方向に移動する磁界によって溶鋼に回転力9を付与しても構わない。吹込む不活性ガスは、鋼の性質に悪影響を与えないことが必須であり、最も好ましいのはアルゴンであるが、窒素規制の緩やかな鋼種や高窒素鋼の場合は窒素ガスでも良い。
【0019】
ガス吹込み手段は、ポーラス耐火物あるいはステンレスパイプが使用可能である。なお、ポーラス耐火物の場合は、通気孔の大きさや分布によっては供給された不活性ガスがポーラス耐火物を出た直後に気泡同士が互いに合体して粗大化する傾向があるので、適切なものを選択することが必要である。この点ではステンレスパイプによって供給することがより好ましい。
【0020】
排出管内に吹込まれた気泡3は溶鋼の回転によって分断され微細化し、浮力によって排出管内を上昇し、さらに取鍋内に入って浮上を続ける。この過程で溶鋼内の微細な非金属介在物を吸着し、その浮上を助け、最終的に取鍋内溶鋼浴面上のスラグに到達する。そして非金属介在物はスラグ中に溶解あるいは吸収され、不活性ガスのみが雰囲気へと逸散する。
【0021】
一方、 気泡の一部は溶鋼とともに排出管内を下降し、下部に設けられたタンディッシュ等の中間容器(図示せず)に排出される。タンディッシュ内においても、微細気泡は溶鋼内の微細な非金属介在物を吸着し、その浮上を助け、最終的にタンディッシュ内溶鋼浴面上のスラグに到達する。なお、排出管の下流に設ける容器は必ずしもタンディッシュである必要はない。すなわち、排出管の下にもう一つ取鍋を配置して、いわゆるリレードルを行なう際にも、本発明を利用して介在物の分離を促進することも可能だからである。
【0022】
また、排出管の上部の容器をタンディッシュとして、排出管の下流は連続鋳造等の鋳型とすることも可能である。すなわち、排出管は浸漬ノズルを兼用する。この場合、排出管を下降した気泡は鋳型内に入ってしまうことになるが、非金属介在物が単独で鋳型内に流入する場合に比べると、気泡と合体した非金属介在物はより浮上しやすいので、鋳型内溶鋼上面のモールドパウダー中に浮上して吸収されやすく、製品中に欠陥として残存する確率は格段に低くなる。
【0023】
【実施例】
容量5トンの取鍋に保持した低炭素アルミキルド鋼(組成を表1に示す)を、試験連鋳機にて連続鋳造する際に、本発明を適用した実施例(発明例)と、 本発明を用いない従来例(比較例)を実施して、得られた連鋳鋳片に含有される非金属介在物の量と分布を調査した。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例(発明例),従来例(比較例)とも取鍋底には直径50mmの開口を有するスライディングゲートを設け、 その下に内径60mm,長さ700mm のアルミナグラファイト質耐火物製のロングノズルを配置し、このロングノズルを介してタンディッシュ内に溶鋼を注入した。タンディッシュは、短辺が600mm ,長辺が1100mm(容量2トン)の矩形形状であり、一方の端部に上記ロングノズルによって取鍋からの溶鋼を注入し、一方の端部からスライディングノズルと2孔浸漬ノズルを介して連鋳鋳型に溶鋼を注入した。ロングノズル内には内径2mmのステンレスパイプから30N−liter/分のアルゴンを吹込んだ。
【0026】
連続鋳造装置は、鋳型の断面サイズが厚み110mm ×幅400mm ,機長11.4m,垂直部長さ 1.5m,7点曲げ7点矯正の垂直曲げ型連鋳機であり、鋳込み速度を 1.5m/分にて実験を行なった。
【0027】
発明例ではロングノズルの外側に3相の回転磁界発生装置を設け、 溶鋼の回転数にして 400回/分となるように磁場を印加した。鋳造後の鋳片の定常鋳込み部から鋳片幅方向の両端部および中央部の計3ケ所から50×50×200mm のサンプルを切り出し、Otot の分析およびスライム抽出法による非金属介在物量と粒径分布を求めた。発明例と比較例の結果を比較して表2に示す。なお非金属介在物量は、溶鋼1kgあたりの質量(g)で示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2から、発明例ではスラブ中の非金属介在物量は少なく、また介在物の分布も、鋼材の品質に悪影響のない、より微細側にシフトしていることが明らかとなった。
【0030】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明によれば溶鋼等の溶融金属中の非金属介在物の量を低減することが可能であり、とりわけ溶融金属の滞留時間の短いタンディッシュのような中間容器で、従来は分離除去が困難であった微細な非金属介在物をも分離除去できることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する装置の例を模式的に示す図であり、(a) は断面図、(b) は気泡の拡大断面図である。
【図2】水銀モデル実験装置を模式的に示す断面図である。
【図3】図2中のA部の拡大断面図である。
【図4】水銀浴回転数と気泡径との関係を示すグラフである。
【図5】気泡径の分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 取鍋
2 溶融金属
3 気泡
4 非金属介在物
5 ノズル
6 不活性ガス
7 排出管
8a 移動磁界発生装置
8b 回転磁界発生装置
9 回転力
10 水
11 水銀
12 カメラ
13 円筒容器
Claims (2)
- 溶融金属を保持した容器から中空の排出管を介して溶融金属を排出するにあたり、前記排出管内の溶融金属にガスを吹込むとともに、該排出管内の溶融金属に電磁力による回転を付与することを特徴とする溶融金属中の介在物の除去方法。
- 溶融金属の保持容器の下部にノズルを設け、該ノズルの下方に中空の溶融金属排出管を連接し、該溶融金属排出管にはその内壁に開口したガス吹込み手段を設けるとともに、該溶融金属排出管の外側には該溶融金属排出管内の溶融金属に回転力を付与する磁場発生装置を設けたことを特徴とする溶融金属中の介在物の除去装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003182268A JP2005014047A (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 溶融金属中の介在物除去方法および装置 |
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2003
- 2003-06-26 JP JP2003182268A patent/JP2005014047A/ja active Pending
Cited By (2)
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CN113698074A (zh) * | 2021-06-23 | 2021-11-26 | 南通市国光光学玻璃有限公司 | 一种低气泡率高折射率的光学玻璃制备工艺 |
CN113698074B (zh) * | 2021-06-23 | 2022-11-04 | 南通市国光光学玻璃有限公司 | 一种低气泡率高折射率的光学玻璃制备工艺 |
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