JP3558815B2 - 底部を密閉した固定堰を備えたタンディッシュによる高清浄度鋼連続鋳造方法 - Google Patents
底部を密閉した固定堰を備えたタンディッシュによる高清浄度鋼連続鋳造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐火物施工性に優れたタンディッシュを用いて、介在物を効率良く浮上分離することができる、高清浄度鋼の連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
転炉、電気炉等の精錬炉で溶製された溶鋼は、取鍋に受けられ、RH真空脱ガス等の二次精錬工程を経由した後、タンディッシュを経て連続鋳造用鋳型に送り込まれ、連鋳スラブに製造される。
スラブの清浄度を高めるため、精錬炉における操業条件や取鍋内での精錬条件等に関し種々改良されてきている。清浄度が高められた溶鋼は、タンディッシュを介して連続鋳造用鋳型に注湯される。しかし、溶鋼は、タンディッシュを通過する間に雰囲気ガスや耐火物ライニングと接触し、ガス吸収やライニング材の溶出等によって汚染され易い。また、取鍋からタンディッシュに供給された溶鋼には、精錬反応によって生成したAl2 O3 等の介在物が溶鋼から除去されずに残留している。
【0003】
溶鋼に含まれている介在物は、連鋳時には浸漬ノズル等を閉塞させる原因となり、鋳造条件を不安定にする。介在物が連鋳スラブに持ち込まれると、後続する圧延段階で疵発生原因となり、歩留まりを低下させる。
そこで、タンディッシュ内の溶鋼に含まれている介在物を除去するため、種々の提案がなされている。例えば、特開昭63−72452号公報では、溶湯流通方向に関し上向きに傾斜した孔を設けた固定堰が紹介されている。その他にタンディッシュ本体と取鍋からの溶鋼注入部との間にも固定堰が設置されている。また、特開平1−224152号公報では、下堰と上堰とで三重堰とし、さらに、下堰下方に設けた通過孔からの溶鋼の流動方向を強制的に変更させて上昇流を作り、溶鋼に含まれている介在物の浮上分離を促進させるようにしたタンディッシュが紹介されている。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】
タンディッシュ内部に堰を設けると、浮上分離効果によって溶鋼の清浄度は確かに向上する。
しかし、せっかく堰により介在物が溶鋼湯面まで浮上しても、溶鋼湯面に留まらずに溶鋼流とともに再びタンディッシュ内部に引き込まれてしまう介在物がかなり多く、分離効率の点で問題があった。
【0005】
また、上堰や下堰でタンディッシュの内部空間を複雑に仕切ったものでは、保守管理が面倒になり、堰の取り替えに多大の手数が必要になる。
また、下堰のあるタンディッシュでは、注湯終了期の溶鋼をタンディッシュから排出するため、タンディッシュの底面と堰の下部との間に通称「ねずみ通し」といわれる開口部が設けられている。ねずみ通しを通過して短時間に排出されてしまう介在物がかなり多く、堰の浮上分離効果を著しく低下させる原因となっている。それだけでなく、1キャスト終了後、ねずみ通しのため残塊が堰で分離されることなく、巨大な、一連の残塊となる。その結果残塊の排出及び廃棄処分に多大の手数と時間がかかる。
【0006】
最近では、生産性を高め且つ耐火物コストの低減を図るため、タンディッシュを熱間のままで次のキャストに使用することが検討されている。次のキャストに使用する場合、タンディッシュ内に複数の堰があったり、複雑な形状の堰である場合には、タンディッシュ内の修復に工数や時間がかかり、熱間のままで次回の使用に可能な状態にすることが難しい。この点、堰は可能な限り簡単な構造をもつことが要求される。
しかし、取鍋から注湯された溶鋼は、種々の介在物を多量に含み、特に取鍋からの注湯終了期には取鍋内に浮遊するスラグの影響を受け、汚染が著しい。汚染された溶鋼が連続鋳造用鋳型内に供給されると、得られる連鋳スラブの品質を低下させる。タンディッシュから連続鋳造鋳型に流出する汚染溶鋼を可能な限り少なくする手段として固定堰はきわめて有効であり、固定堰の作用を確保した上で構造を簡単化したタンディッシュが望まれている。
【0007】
本発明はこのような要求に答えるべく案出されたものであり、介在物を効率良く浮上分離させる固定堰の作用を確保しながら、内部構造を簡単にしたタンディッシュを用いて、保守管理を容易にすると共に、タンディッシュの熱間再使用を可能にすることを目的とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段】
本発明は、その目的を達成するため、取鍋からロングノズルを介して、底部を密閉した固定堰を1ストランド当り1枚設けたタンディッシュに溶鋼を供給する連続鋳造方法であって、前記ロングノズルの内径及び浸漬深さを、式(1)及び式(2)を満足する条件に規制することを特徴とする。
2.2×10-4×(L×H)≦D≦3.0×10-4×(L×H) ・・・(1)
0.25×H≦h≦0.45×H ・・・(2)
ただし、
D:ロングノズルの内径(mm)
h:ロングノズルの浸漬深さ(mm)
L:固定堰間の水平距離(mm)
H:タンディッシュ底壁から固定堰頂面までの高さ(mm)
【0009】
【作用】
以下、図面を参照しながら、本発明をその作用と共に具体的に説明する。本発明で使用するタンディッシュは、図1に示すように、上広がりのタンディッシュ本体10に固定堰20を固定し、この固定堰20でタンディッシュ底部を密閉している。タンディッシュ本体10は、耐火レンガを施工した炉壁11に耐火物ライニング12を施しており、上広がりの台形状断面をもっている。
また、図2に本発明で使用するタンディッシュの概要を示す。タンディッシュ本体10に設けた固定堰20、20のほぼ中央に、図示しない取鍋からロングノズル1を介して溶鋼2を注湯する。溶鋼表面にはフラックス層6を浮遊させておく。溶鋼2は、ストッパー4及び図示しないスライディングノズルで調節されながら、浸漬ノズル3から連続鋳造鋳型に注入される。
【0010】
溶鋼2をタンディッシュに供給するに際しては、取鍋からの注湯開始時は送り込まれた溶鋼2が固定堰20の内側に溜まる。その後、溶鋼2の湯面が固定堰20の頂面に達すると、固定堰20の外側に流出していく。この状態で、タンディッシュの内部が固定堰20によって上流域と下流域に区分される。
ロングノズル1から供給された溶鋼2は図2に矢印で示すように、上流域で固定堰20に沿った上昇流5となって湯面近傍まで流動する。上昇の過程で、溶鋼2に含まれている介在物は、比重差によって溶鋼2から浮上分離する。
このとき、固定堰20の一部をポーラスレンガとし、ポーラスレンガからArガスを導入すると、ガス気泡に介在物が確実に捕捉されると共に、ガス気泡の浮上駆動力が加わりさらに浮上分離が促進される。また、湯面にフラックス層6を浮遊させておくとき、浮上した介在物がフラックス層6に効率良く吸収される。
介在物が分離された溶鋼2は高い清浄度を維持しながら下降流7となって下流域に流入し、浸漬ノズル3を経て連続鋳造用鋳型に供給される。
【0011】
1キャスト分の連鋳作業を終了し、次のキャストに備えるときには、タンディッシュ内の残塊を取り出し、耐火物を補修する。補修に際して、ねずみ通しを形成した固定堰で発生するようなタンディッシュ底部全面にわたって繋がっている巨大な残塊が発生することがないので、残塊の処理が極めて容易になる。また、固定堰の枚数もストランド当たり1枚と必要最小限であり、かつねずみ通しがない等シンプルな構造であるため、耐火物の施工作業も極めて簡単になる。
【0012】
一般に、ロングノズルのサイズ及び浸漬深さがタンディッシュ内での介在物の浮上分離性に及ぼす影響は大きく、ロングノズルのサイズ及び浸漬深さの適正化を図ることが高清浄度鋼を得る上で非常に重要である。そこで、本発明者らは、図2に示すようなロングノズル1を用いたタンディッシュにおいて、介在物が鋳型に流出する状況を把握するため、模型を使い、ロングノズル1から投入した模擬介在物で、水モデル実験を行った。水モデル実験では、ロングノズルの内径D及びロングノズルの浸漬深さhを種々変化させ、模擬介在物流出割合に及ぼすロングノズルの内径D及び浸漬深さhの影響を調査した。
【0013】
調査結果を図3に示す。図3では、ロングノズルの内径Dと固定堰間の水平距離L及びタンディッシュ底壁から固定堰頂面までの高さHの積との比D/(L×H)を横軸にとり、ロングノズルの浸漬深さhとタンディッシュ底壁から固定堰頂面までの高さHとの比h/Hを縦軸にとった。そして、タンディッシュに固定堰を設けない場合の流出介在物量に対する固定堰使用時の流出介在物量の割合(%)をD/(L×H)−h/Hの関係で整理し、介在物流出率ηの等高線で示した。
図3から明らかなようにD/(L×H)=2.2×10−4〜3.0×10−4及びh/H=0.25〜0.45となる条件を満たすロングノズルを固定堰付きタンディッシュに使用した場合、固定堰を設けない場合に比較して模擬介在物の流出割合が50%以下に抑えられていた。
【0014】
D/(L×H)、h/Hが前述した範囲を外れると、介在物流出率ηが増加する。介在物流出率ηが増加する原因は、水モデル実験中の目視観察の結果から次のように推察される。すなわち、ロングノズルの内径Dに関しては、D/(L×H)が2.2×10−4に達しない場合、ロングノズルからの溶鋼の吐出速度が著しく増大し、それに伴って上昇流速も増大するため、湯面に浮上した介在物を再びタンディッシュ内深く巻き込む。逆にD/(L×H)が3.0×10−4を越えると、ロングノズルからの吐出流速が低下しすぎ、固定堰による上昇流形成とそれに伴う介在物浮上効果が低下する。ロングノズルの浸漬深さに関しては、h/Hが0.25に満たないと、ロングノズルからの溶鋼流に引き込まれる形で湯面近傍に浮上した介在物が再び巻き込まれる頻度が増加する。逆にh/Hが0.45を越えると、固定堰の間の内部に旋回流が形成されるようになり、固定堰本来の目的である上昇流の形成による介在物の浮上促進の効果が弱まる。また、ロングノズルそのものの長さが必然的に長くなるため、取鍋交換時のロングノズル着脱の際に不便を生じる。
このように、ロングノズルの内径Dと浸漬深さhを適正に調節することによって、タンディッシュ内での介在物浮上効果を常に高位に維持することができる。
【0015】
【実施例】
次に、実際に溶鋼を連続鋳造した実施例を示す。図2に示すタンディッシュを使用して、転炉−RH真空脱ガス工程で溶製した低炭素Alキルド鋼を連続鋳造した。鋳型幅は1200mm、鋳片厚は250mm、鋳造速度は1.4m/minとした。タンディッシュは定常状態で浴深1200mm、内包する溶鋼量約65トンである。固定堰はロングノズルの中心から下流側に水平距離300mmの位置に設置した。すなわち固定堰間の水平距離は600mmである。タンディッシュ底壁から固定堰頂面までの高さは600mmとした。一方、ロングノズルについては、内径を95mm、浸漬深さを200mmにセットした。この条件下では、D/(L×H)=2.7×10−4、h/H=0.33となる。
比較例1〜4として、同一のタンディッシュを使用して、ロングノズルの内径D及び浸漬深さhを表1に示すように変化させ、同様な条件下で連続鋳造した。
【0016】
【0017】
また、比較例5として、図4に示すような、上流側から下流側に向かって中央下堰41、上堰42及び外下堰43の順に配置され、中央下堰41及び外下堰43にねずみ通し44を設けた三重堰40を設置した同容量のタンディッシュを用い、実施例と同様に溶製した低炭素Alキルド鋼を連続鋳造した。
定常時及び取鍋交換時においてタンディッシュ出口で溶鋼をサンプリングし、分析して求めた溶鋼中全酸素量T.[O]TDとRH真空脱ガス処理後の溶鋼中全酸素量T.[O]RHとの比を介在物流出率ηとして算出した。実施例と比較例とでは、図5に比較して示すように介在物流出率ηに大きな差がみられた。すなわち、実施例の定常時では、介在物流出率η=0.2弱が得られ、三重堰を使用した比較例5の定常時のη=0.3強に比べて、鋳型への介在物流出量が2/3に低減していることがわかった。また、比較例5の取鍋交換時ではη=0.4と定常時よりも清浄度が劣っていたが、実施例の取鍋交換時では、定常時と同様にη=0.2と低位で安定していた。
また、ロングノズルの内径や浸漬深さを変更した比較例1〜4では、η=0.3〜0.6と、三重堰と同等、あるいは若干劣る結果となった。
以上の結果を総合すると、浸漬管の設置条件を適正範囲に設定することにより、三重堰よりもシンプルな構造をもつタンディッシュを使用し、しかも三重堰を凌駕する介在物分離効果が奏せられ、清浄度の高い鋳片が製造されることがわかる。
【0018】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は取鍋からロングノズルを介して、底部を密閉した固定堰を1ストランド当り1枚設けたタンディッシュに溶鋼を供給する連続鋳造方法において、ロングノズルのサイズ及び浸漬深さと固定堰の高さ及び設置位置を適正な条件に規制することによって、タンディッシュ中で溶鋼中の介在物を効率良く浮上分離することができ、極めて清浄度の高い連鋳スラブを製造することができる。
本発明により、定常状態ではもちろん、取鍋交換時等の非定常状態においても、高位に安定した高清浄度鋼の連続鋳造が可能となる。また、一連の鋳造終了後にタンディッシュ内にある残塊を処理する際でも、固定堰によって小塊に分割されるため、残塊の抜き取りが極めて簡単になる。さらに、ねずみ通しを持たない、また流通孔を持たないシンプルな構造の固定堰を必要最小限の枚数だけ施工すれば良く、耐火物施工性の観点からも簡便となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】底部を密閉する固定堰を備えたタンディッシュ
【図2】タンディッシュの概要
【図3】介在物の流出割合に及ぼすロングノズルの内径及び浸漬深さの影響を示すグラフ
【図4】ねずみ通し付き三重堰を備えたタンディッシュ
【図5】実施例及び比較例における介在物流出率ηを示すグラフ
【符号の説明】
1:ロングノズル 2:溶鋼 3:浸漬ノズル 4:ストッパー
5:上昇流 6:フラックス層 7:下降流
10:タンディッシュ本体 11:炉壁 12:耐火物ライニング
14:底壁 15:側壁
20:固定堰
40:三重堰 41:中央下堰 42:上堰 43:外下堰 44:ねずみ通し
Claims (1)
- 取鍋からロングノズルを介して、底部を密閉した固定堰を1ストランド当り1枚設けたタンディッシュに溶鋼を供給する連続鋳造方法であって、前記ロングノズルの内径及び浸漬深さを、式(1)及び式(2)を満足する条件に規制することを特徴とする、高清浄度鋼連続鋳造方法。
2.2×10-4×(L×H)≦D≦3.0×10-4×(L×H) ・・・(1)
0.25×H≦h≦0.45×H ・・・(2)
ただし、
D:ロングノズルの内径(mm)
h:ロングノズルの浸漬深さ(mm)
L:固定堰間の水平距離(mm)
H:タンディッシュ底壁から固定堰頂面までの高さ(mm)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP05137697A JP3558815B2 (ja) | 1997-03-06 | 1997-03-06 | 底部を密閉した固定堰を備えたタンディッシュによる高清浄度鋼連続鋳造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JPH10249499A JPH10249499A (ja) | 1998-09-22 |
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- 1997-03-06 JP JP05137697A patent/JP3558815B2/ja not_active Expired - Fee Related
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