JP2005013848A - 水素化処理触媒用担体、炭化水素油の水素化処理触媒及びそれを用いた水素化処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高活性で劣化の少ない水素化処理触媒に最適な水素化処理触媒用担体、それを利用した高活性かつ低コストで得られる水素化処理触媒、その水素化処理触媒を用いた低硫黄分の炭化水素油を効率的に製造する方法を提供すること。
【解決手段】酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を含有してなる担体であって、470μmol/g以上の全酸量を有し、かつ、強酸量と弱酸量の比が0.37以下であることを特徴とする水素化処理触媒用担体、その担体に周期表第6族、第8族〜第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させてなる炭化水素油の水素化処理触媒、並びにこの触媒を用いて炭化水素油を処理する水素化処理方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を含有してなる担体であって、470μmol/g以上の全酸量を有し、かつ、強酸量と弱酸量の比が0.37以下であることを特徴とする水素化処理触媒用担体、その担体に周期表第6族、第8族〜第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させてなる炭化水素油の水素化処理触媒、並びにこの触媒を用いて炭化水素油を処理する水素化処理方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素化処理触媒用担体、炭化水素油の水素化処理触媒及びそれを用いた水素化処理方法であり、詳しくは、酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を担持して酸性質を制御した水素化処理触媒用担体、該担体を用いた炭化水素油の水素化処理触媒及び該触媒を用いた水素化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭化水素油の水素化処理には、耐火性無機酸化物を担体とし、これに周期表第6族、第8族〜第10族金属成分の群から選択される少なくとも一種の水素化活性金属成分を担持させることにより調製した触媒が用いられてきた。これらの耐火性無機酸化物としては、主成分としてアルミナが使用され、水素化活性金属成分としては、例えば、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケルなどが選択されている。
ところが、近年の環境規制の強化により、従来の水素化処理触媒では炭化水素油の水素化処理効率に対するニーズに答えられないことが明らかになってきた。そこで、水素化処理活性向上のため、さまざまな工夫が行われてきた。例えば、チタニア(酸化チタン)を活性金属の担体として用い、その特異な水素化活性及び水素化脱硫活性を利用したものなどである(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、触媒活性及び触媒寿命については必ずしも満足のいくものではなく、さらなる改良が求められていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−106061号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、高活性で劣化の少ない水素化処理触媒に最適な担体、それを利用した高活性かつ低コストで得られる水素化処理触媒、その水素化処理触媒を用いた低硫黄分の炭化水素油を効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水素化処理用触媒担体の弱酸点と強酸点の関係が重要であり、担体として用いられる酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を担持させることで、これらの酸量および酸強度を制御することができ、前記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を担持してなる担体であって、470μmol/g以上の全酸量を有し、かつ、強酸量と弱酸量の比が0.37以下であることを特徴とする水素化処理触媒用担体、
(2)酸性を有する耐火性無機酸化物の強酸量に対して、95%以下の強酸量を有し、かつ酸性を有する耐火性無機酸化物の弱酸量に対して、95%以上の弱酸量を有する上記(1)に記載の水素化処理触媒用担体。
(3)塩基性酸化物が周期表第1族、第2族及び第3族金属から選ばれる金属の酸化物である上記(1)又は(2)に記載の水素化処理触媒用担体、
(4)塩基性酸化物が希土類金属の酸化物である上記(3)記載の水素化処理触媒用担体、
(5)希土類金属がセリウム及び/又はイットリウムである上記(4)記載の水素化処理触媒用担体、
(6)塩基性酸化物の含有量が0.1〜10質量%(酸化物基準)であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体、
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の担体に、周期表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させてなる炭化水素油の水素化処理触媒、
(8)上記(7)記載の水素化処理触媒を用いて炭化水素油を処理することを特徴とする水素化処理方法、
(9)炭化水素油中の硫黄含有量を50質量ppm以下に低減させる上記(8)記載の炭化水素油の水素化処理方法、
(10)炭化水素油中の硫黄含有量を30質量ppm以下に低減させる上記(8)記載の炭化水素油の水素化処理方法、
(11)炭化水素油中の硫黄含有量を10質量ppm以下に低減させる上記(8)記載の炭化水素油の水素化処理方法、
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の水素化処理触媒用担体は、酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を担持した担体であって、470μmol/g以上の全酸量を有し、かつ、強酸量と弱酸量の比が0.37以下であることを特徴とする。さらに、塩基性酸化物を担持させる前の酸性を有する耐火性無機酸化物の強酸量に対して、95%以下の強酸量を有し、かつ該酸性を有する耐火性無機酸化物の弱酸量に対して95%以上の弱酸量を有することが好ましい。
こうした全酸量を比較的多く有する担体の強酸量と弱酸量のバランスをとることにより、これらの担体を用いた水素化処理用触媒は高活性で劣化の少ないものとなる。以上のような効果の観点から、本発明の水素化処理用触媒担体の全酸量は500μmol/g以上であることが好ましく、また強酸量と弱酸量の比が0.35以下であることが好ましい。また強酸量及び弱酸量が塩基性酸化物を含有させる前の耐火性無機酸化物の強酸量に対して90%以下の強酸量を有し、かつ該耐火性無機酸化物の弱酸量に対して100%以上の弱酸量を有することがさらに好ましい。
ここで、酸量はアンモニア微分吸着熱測定(DHA;Differential Heat of Adsorption)により得られる値であり、80〜140kJ/molの値を示すものを弱酸、140〜200kJ/molの値を示すものを強酸と定義する。尚、強酸量と弱酸量の和を全酸量という。アンモニア微分吸着熱測定は、触媒上の酸点にアンモニアを吸着させた際の吸着熱量によって酸点の強度を評価し、またアンモニアの吸着量から酸量を求める手法である。吸着熱量は熱量計で測定し、吸着量はアンモニアガスの圧力変化から測定する。
【0008】
前記耐火性無機酸化物としては、酸性を有するものであればよく、特に制限はない。本発明の目的からはシリカ−アルミナ、シリカ−ボリア(酸化ホウ素)、アルミナ−ボリア(酸化ホウ素)、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト)、粘土鉱物及びそれらの混合物などが好適に使用される。これらの中でも、シリカ−アルミナが特に好適である。尚、ここでシリカ−アルミナはシリカとアルミナの複合酸化物、シリカとアルミナの混合物等を示し、シリカ−ボリア(酸化ホウ素)はシリカとボリアの複合酸化物、シリカとボリアの混合物等を示し、アルミナ−ボリア(酸化ホウ素)はアルミナとボリアの複合酸化物、アルミナとボリアの混合物等を示す。
これらの耐火性無機酸化物の平均細孔径は水素化処理を行う炭化水素油の大きさによって適宜選択されるが、通常8〜30nmの範囲、さらには5〜15nmの範囲、特には8〜15nmの範囲のものが好ましい。形状については特に限定されないが、粉体、円柱、三つ葉、四つ葉などの成形体が好適に使用される。
【0009】
耐火性無機酸化物に含有させる塩基性酸化物とは、酸と作用して塩をつくり、水と反応して塩基性水溶液を与え、酸素との反応により酸化物となる化合物をいい、本発明においては、周期表の第1族、第2族及び第3族から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物であることが好ましい。
より具体的には、アルカリ金属としてナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが、希土類金属として、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムなどが挙げられる。これらのうち希土類金属、特にイットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム及びサマリウムが好ましく、なかでもイットリウム及び/又はセリウムが最も好ましい。これらの金属は1種又は2種以上を混合して使用することができ、特にランタノイドに属する元素は性質が互いに類似するため、その混合物は好適に使用し得る。
【0010】
上記、塩基性酸化物の添加方法としては、前記したアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属等の化合物を溶解した水溶液を使用することが好ましい。用いる化合物としては水溶液を構成し得るものであれば特に限定されず、例えば、有機酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、酸化物、水酸化物等を用いることができる。これらのうち取り扱いやすさ等の観点から有機酸塩、硝酸塩が好ましい。
【0011】
本発明の水素化処理触媒用担体における、耐火性無機酸化物に担持させる希土類金属等の塩基性酸化物を構成する金属の含有量は、酸化物基準で、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%である。含有量が少なすぎると希土類金属の酸化物等の塩基性酸化物を添加する効果が十分発揮されない場合があり、また含有量が多すぎると、触媒体の酸性質が大きく変化し、かえって水素化処理活性の劣化を速めることになるため好ましくない。
【0012】
次に、塩基性酸化物を構成する金属を耐火性無機酸化物に担持させる方法については、特に制限はなく、塩基性酸化物を構成する金属の水溶液を耐火性無機酸化物が吸水する量に調整して含浸させるポアフィリング法(含浸法)、大過剰の塩基性酸化物を構成する金属の水溶液に耐火性無機酸化物を浸漬する方法などの一般的な手法で、常圧又は減圧下で行なうことができる。なお、本発明で使用する水溶液はpH2〜12の範囲であることが好ましく、アンモニア水や有機酸などによりpHを調整することができる。一般的には表面水酸基の状態を考慮して、例えば、シリカ−アルミナに担持する場合はpH3〜5程度で担持すると好ましい。
【0013】
塩基性酸化物を構成する金属の含浸後は、乾燥、焼成などの一般的な手法で処理することにより、希土類金属等の塩基性酸化物を構成する金属を含有する水素化処理触媒用担体を得ることができる。乾燥は、通常、常圧又は減圧で、好ましくは50〜300℃、より好ましくは80〜250℃、さらに好ましくは100〜120℃の温度で、0.5〜100時間程度行う。なお、減圧下で乾燥する場合、乾燥速度の調整のため温度を下げることが一般的に行われる。さらに耐火性無機酸化物と塩基性酸化物を構成する金属との結合性を高めるために、必要により焼成を実施する。焼成温度は、通常300〜650℃、好ましくは450〜600℃で、焼成時間は、通常0.5〜100時間程度である。
【0014】
本発明の水素化処理触媒用担体は、様々な水素化処理触媒として用いることができる。すなわち、ナフサ、ガソリン、灯油、軽質軽油、重質軽油、分解軽油等の留出油、常圧残油、減圧残油、脱瀝減圧残油、アスファルテン油、タールサンド油等の残渣油等の石油留分を、水素化(脱オレフィン、脱芳香族)水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱酸素、水素化脱金属、水素化脱ろう、水素化脱瀝及び水素化分解する担体として用いることができる。
【0015】
次に、本発明の炭化水素油の水素化処理触媒について説明する。
本発明の炭化水素油の水素化処理触媒は、前述のようにして得られた担体に、周期表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも一種の金属を担持させることにより、調製することができる。
この触媒の活性金属種は、周期表第6族金属としてモリブデン、タングステンなどが使用されるが、特にモリブデンが好適に使用される。モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、パラモリブデン酸アンモニウムなどが好適である。タングステン化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウムなどが好適である。
【0016】
第8〜10族金属としては、通常コバルトまたはニッケルが好適に使用される。コバルト化合物としては、炭酸コバルトや硝酸コバルトなどが好ましく、ニッケル化合物としては、炭酸ニッケルや硝酸ニッケルなどが好ましい。
さらに、リン化合物を担持させることができ、このリン化合物としては、五酸化リン、正リン酸などが使用される。
上記の活性金属化合物は、通常含浸法により担持される。上記の第6族及び第8〜10族金属ならびにリン化合物は別々に含浸してもよいが、同時に行なうのが効率的である。通常は、含浸液中の第6族金属、第8族金属〜第10族金属及びリンの含有量は、目標とする担持量から計算で求める。これらの金属を脱イオン水に溶解させた後、その含浸液の液量を、用いる担体の吸水量に等しくなるように調整した後、含浸させる。含浸時のpHは含浸液の安定性を考慮し、一般には酸性領域では1〜4、好ましくは1.5〜3.5であり、アルカリ領域では9〜12、好ましくは10〜11である。pHの調整は、有機酸やアンモニアなどを用いて行なうことができる。
【0017】
また、特にリン化合物で安定化させた含浸液には、上述した活性金属を高分散化するために界面活性剤を添加することができ、その中でも分子量が90〜10000のポリエチレングリコールなどの水溶性有機化合物を添加することが特に好ましい。添加量は、担体に対して、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%の範囲がよい。
上記含浸の後に、通常熱処理を行う。逐次的に含浸を実施する場合は、含浸の度に熱処理を行うことも可能であるし、複数の含浸を行った後、最後に熱処理を行うこともできる。熱処理は空気中で、通常550℃以下、好ましくは300℃以下、さらには70〜300℃の範囲、特には80〜150℃の範囲で行うことが好ましい。また、熱処理時間としては2〜48時間程度、さらに好ましくは3〜16時間程度行うことが好ましい。
【0018】
上述のようにして調製された本発明の触媒は、炭化水素油の水素化処理触媒として好適に用いられるが、軽質油の水素化処理触媒として使用される場合と、重質油の水素化処理触媒として使用される場合では、水素化処理の目的の相違から担体の物性及び担持金属の含有量等の最適範囲が異なる。
軽質油の水素化処理の目的は、水素化脱硫、水素化(脱オレフィン、脱アロマ)、脱窒素等であり、特に軽油留分中の硫黄含有量を50ppm以下まで低減する水素化脱硫反応においては、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンのような難脱硫硫黄化合物を脱硫しなければ硫黄含有量を50ppm以下にすることは困難である。そのため、反応初期から反応温度を高くする必要があるため、従来の触媒では触媒寿命が著しく短くなる。従って、従来の触媒より活性点の数を多くすることが必要であり、そのためには本発明における触媒の好ましい物性は以下のようになる。
まず、上記した周期表第6族金属の担持量は触媒全量に対して、酸化物基準で4〜40質量%の範囲であることが好ましく、特には8〜35質量%の範囲が好ましい。次に周期表第8〜10族金属の担持量は、酸化物基準で1〜12質量%の範囲であることが好ましく、特には2〜10質量%の範囲が好ましい。これらの水素化金属がこの範囲内であると水素化脱硫活性が高くなる。
また、上述したリンの担持量は触媒全量に対して、酸化物基準で0.5〜8質量%の範囲であることが好ましく、さらには1〜6質量%の範囲が好ましい。
【0019】
軽質油の水素化処理触媒として使用される場合の耐火性無機酸化物として、シリカ−アルミナが好適に使用され、触媒担体の細孔径としては、8〜25nmの範囲であることが好ましく、さらには10〜22nmの範囲が好ましい。比表面積は80〜300m2/gの範囲であることが好ましく、さらには100〜250m2/gの範囲が好ましい。細孔容積は0. 4〜1.0ミリリットル/gの範囲が好ましく、さらには0.5〜0.9ミリリットル/gの範囲が好ましい。
【0020】
本発明に係る触媒を常圧残油や減圧残油等の重質油を原料として低硫黄重油を生産する水素化触媒として使用する場合の好適な物性等について以下に説明する。
通常、前記重質油の水素化処理等の用途においては、重油直接脱硫装置が用いられるが、使用によって触媒の脱硫性能が低下するため、触媒寿命は1年以内と短く、短い周期で脱硫装置を停止し、触媒を交換する必要がある。また、灯軽油等の脱硫と異なり運転初期から高い温度を必要とし、さらに触媒活性が低下していくために、一定の活性を維持するため反応温度を徐々に上げていく必要がある。特に重質油にはバナジウム、ニッケル等の金属分が含まれ、反応中に触媒に堆積して水素化処理活性を被毒するため、触媒の劣化が著しい。
また、重質油の水素化処理に本触媒を適用する場合には、重質油を構成する炭化水素分子が軽質油に比較して大きいこと、触媒の寿命を伸ばすためには反応塔の上流側に水素化脱金属触媒を用い、下流側に水素化処理(主に水素化脱硫)触媒を用いた触媒システムが好適に採用されるということが重要である。
このような重質油の水素化処理という用途にも本発明の触媒は有効であり、重質油の水素化脱金属触媒として使用する場合の好ましい物性等は以下のようになる。すなわち、周期表第6族金属の担持量は触媒全量に対して、酸化物基準で2〜15質量%の範囲であることが好ましく、特には4〜12質量%の範囲が好ましい。次に周期表第8〜10族金属の担持量は、酸化物基準で1〜4質量%の範囲であることが好ましく、特には1.5〜3.5質量%の範囲が好ましい。これらの水素化金属がこの範囲内であると水素化脱金属活性が高くなる。
【0021】
重質油の水素化脱金属触媒として使用される場合の耐火性無機酸化物として、シリカ−アルミナが好適に使用され、触媒担体の細孔径としては、10〜30nmの範囲であることが好ましく、さらには12〜25nmの範囲が好ましい。比表面積は80〜250m2/gの範囲であることが好ましく、さらには100〜200m2/gの範囲が好ましい。細孔容積は0. 4〜1.0ミリリットル/gの範囲が好ましく、さらには0.5〜0.9ミリリットル/gの範囲が好ましい。
【0022】
次に重質油の水素化処理(主に脱硫)触媒として使用する場合の好ましい態様は以下のようになる。すなわち、周期表第6族金属の担持量は触媒全量に対して、酸化物基準で4〜25質量%の範囲であることが好ましく、特には8〜20質量%の範囲が好ましい。次に周期表第8〜10族金属の担持量は、酸化物基準で1〜8質量%の範囲であることが好ましく、特には2〜5質量%の範囲が好ましい。これらの水素化金属がこの範囲内であると水素化脱硫活性が高くなる。また、リンの担持量としては、触媒全量に対して、酸化物基準で0.5〜5質量%の範囲であることが好ましく、さらには1〜4質量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
重質油の水素化処理(主に脱硫)触媒として使用される場合の耐火性無機酸化物としてシリカ−アルミナが好適に使用され、触媒担体の細孔径としては、8〜25nmの範囲であることが好ましい。8nm未満であると原料油中のバナジウム、ニッケル等の金属の堆積及びコーク前駆体の堆積により、短時間で細孔が閉塞し、脱硫活性が低下する場合がある。一方25nmを超えると、運転初期において、脱硫活性が低くなる場合がある。以上の観点から触媒担体の細孔径はさらには10〜22nmの範囲であることが好ましい。比表面積は100〜250m2/gの範囲であることが好ましい。比表面積が100m2/g未満であると、触媒の脱硫活性が低くなる場合があり、一方、比表面積が250m2/gを超えても脱硫活性は飽和し、有効ではない。以上の観点から比表面積は120〜230m2/gの範囲であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明の炭化水素油の水素化処理方法について説明する。
本発明の炭化水素油の水素化処理方法は、前記した本発明の水素化処理触媒を用いて炭化水素油を処理する方法である。
本発明の触媒を用いて処理する炭化水素油として、全ての石油留分を用いることができるが、具体的には、灯油、軽質軽油、重質軽油、分解軽油等から常圧残油、減圧残油、脱蝋減圧残油、アスファルテン油、タールサンド油まで広く挙げることができる。特に、軽質軽油留分の超深脱領域(硫黄分50ppm以下、さらには10質量ppm以下)のための水素化処理触媒として有用である。
さらに、石油留分を混合して原料油とすることも可能である。特に、主な原料油と同等か、より軽質な原料油を混合することが、触媒の劣化を抑制しつつ、処理原料油の範囲を拡大する観点から好適に採用される。例えば、軽質軽油留分の水素化脱硫処理に関しては、流動接触分解装置から得られる同沸点範囲の分解軽油留分を0〜40容量%混合することができる。また、重質油の水素化処理(水素化脱金属、水素化脱硫等)に関しても同様に、該分解軽油、重質分解軽油や重質軽油等を0〜40容量%混合することができる。
【0025】
前記石油留分をそのまま、あるいは石油留分を混合した原料油を水素化処理する場合の条件としては、通常の水素化処理と同様であればよく、例えば反応温度250〜400℃、反応圧力2〜10MPa、水素/原料油比50〜500Nm3/キロリットル、液空間速度(LHSV)0.2〜5.0hr−1で処理することができる。
本発明の水素化処理方法は、沸点が140〜400℃である炭化水素油を水素化処理することにより、硫黄含有量が50質量ppm以下、好ましくは30質量ppm以下、さらに好ましくは10質量ppm以下の炭化水素油を製造するのに好ましく用いられる。
また、上記低硫黄炭化水素油を製造する際に、本発明の水素化処理用触媒を用い、触媒反応圧力と水素原料油比をさらに上げることにより、低硫黄炭化水素油中の芳香族分を低減することもできる。例えば、反応温度250〜400℃、反応圧力4〜20MPa、水素/原料油比200〜1000Nm3/kL、液空間速度(LHSV)0.2〜5.0hr−1で処理することにより、二環以上の芳香族分を5容量%以下に、一環芳香族分を15容量%以下に容易に低減することができる。さらに、上記の反応条件を適切に選択することにより、二環以上の芳香族分を1容量%以下に、一環芳香族分を5容量%以下に低減することができる。
【0026】
また、本発明の水素化処理触媒を用いて水素化処理を行う際には、予め安定化処理として予備硫化を行うことが好ましい。この予備硫化処理の条件は特に限定されないが、通常、予備硫化剤として、硫化水素、二硫化炭素に加えて、チオフェン、ジメチルサルファイド、ジメチルジサルファイド、ジオクチルポリサルファイド、ジアルキルペンタサルファイド、ジブチルポリサルファイド等の分解温度が300℃以下(好ましくは250℃以下)の有機硫黄化合物及びそれらの混合物を挙げることができる。さらには、原料油による予備硫化も可能である。この場合、触媒中の水素化処理金属を還元することなく十分に硫化させるために、硫黄分濃度が0.3質量%以上(好ましくは0.5質量%以上)の原料油を予備硫化剤として使用することが好ましい。ただし、水素化処理を行う原料油よりも重質な留分の混合はコーキング等の触媒劣化を招くため好ましくない。
重質油(常圧残油、減圧残油等)の水素化処理触媒のための予備硫化については、前記硫化剤の使用に加えて、軽質軽油、重質軽油の順に予備硫化を行った後に、最後に原料油で予備硫化を行うことも好適に行われる。
【0027】
なお、本発明を重質油の水素化処理(水素化脱金属、水素化脱硫等)に適用する場合は、反応温度200〜550℃(好ましくは220〜500℃)、水素分圧5〜30MPa(好ましくは10〜25MPa)の範囲で行う。反応形式は特に限定されないが、通常は、固定床、移動床、沸騰床、懸濁床等の種々のプロセスから選択できるが、特に固定床が好ましい。固定床の場合の温度、圧力以外の反応条件としては、液空間速度(LHSV)は0.05〜10hr−1(好ましくは0.1〜5hr−1)、水素/原料油比は500〜2500Nm3/キロリットル(好ましくは700〜2000Nm3/キロリットル)である。
【0028】
【実施例】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
製造実施例1(シリカ・アルミナ担体の製造)
硫酸アルミにウム水溶液60ミリリットルとアルミン酸ナトリウム水溶液80ミリリットルを混合する工程を5回行い、形成された沈殿物をろ過し、洗浄してアルミナゲル約0.21キログラムを得た。これにシリカ含有量(シリカとアルミナの合計量に対するシリカの含有量)が5質量となるようにシリカゾル(触媒化成工業(株)製「Cataloid−S」)を加えて、十分に混合した後に円柱状に押し出し成形した。この成形物を120℃で16時間乾燥し、500℃で2時間焼成して、シリカ・アルミナ担体B0を得た。得られたシリカ・アルミナ担体はシリカ含有量が5質量%、円柱状(直径1.4mm、平均長さ3mm)であり、比表面積250m2/g、細孔容量0.80ミリリットル/gであった。
【0029】
実施例1(担体の製造)
酢酸イットリウムn水和物(Y(NO3)3・nH2O)を3.0g取り、脱イオン水に溶解させ、全量を80ミリリットルになるように調整した。該水溶液を製造実施例1にて製造したシリカ・アルミナ担体(B0)100gに常圧下、ポアフィリング法により含浸した。70℃で1時間減圧乾燥後、120℃で3時間常圧乾燥し、さらに500℃で4時間焼成して酸化イットリウム(Y2O3)1質量%担持シリカ・アルミナ担体(B1)を得た。得られた担体B1のアンモニア微分吸着熱測定を実施した。結果を第1表に示す。
尚、アンモニア微分吸着熱測定は、16〜32メッシュに成形した上記担体を0.5〜1.0g採取し、400℃で10時間以上真空排気を行った後に、150℃の一定温度でアンモニアガスを導入して行った。
【0030】
比較例1(担体の製造)
酢酸イットリウムn水和物に代えて、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化マグネシウム(MgO)1質量%担持シリカ・アルミナ担体(B2)を得た。得られた担体B2のアンモニア微分吸着熱測定を実施した。結果を第1表に示す。
【0031】
実施例2(水素化処理触媒の製造)
炭酸ニッケル50g、三酸化モリブデン97g、正リン酸25g(純度80質量%)に脱イオン水を250ミリリットル加え、攪拌しながら80℃で溶解し、室温にて冷却後、脱イオン水にて250ミリリットルに希釈し、含浸液(S)を調製した。
含浸液(S)を50ミリリットル採取し、ポリエチレングリコール(分子量400)6gを添加して、実施例1で得られた担体(B1)100gの吸水量に見合うように脱イオン水にて希釈し、常圧にて担体(B1)に含浸させ、70℃で1時間減圧にて乾燥した後、120℃で16時間乾燥し、水素化処理触媒(C1)を製造した。
【0032】
比較例2(水素化処理触媒の製造)
実施例2で調製した含浸液(S)を50ミリリットル採取し、ポリエチレングリコール(分子量400)6gを添加して、比較例1で得られた担体(B2)100gの吸水量に見合うように脱イオン水にて希釈し、常圧にて担体(B2)に含浸させ、70℃で1時間減圧にて乾燥した後、120℃で16時間乾燥し、水素化処理触媒(C2)を製造した。
【0033】
比較例3(水素化処理触媒の製造)
実施例2で調製した含浸液(S)を50ミリリットル採取し、ポリエチレングリコール(分子量400)6gを添加して、担体B1及び担体B2のベースである担体(B0)100gの吸水量に見合うように脱イオン水にて希釈し、常圧にて該担体(B0)に含浸させ、70℃で1時間減圧にて乾燥した後、120℃で16時間乾燥し、水素化処理触媒(C0)を製造した。
【0034】
実施例3、比較例4及び5(軽油の水素化処理)
固定床流通式の反応管に、それぞれ実施例2、比較例2及び比較例3で製造した水素化処理触媒(C1)、(C2)及び(C0)を100ミリリットル充填した。原料油は水素ガスとともに反応管の下段から導入するアップフロー形式で流通させて反応性を評価した。
前処理として第2表に示す性状の原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスとともに流通させて予備硫化した。予備硫化後、上記の原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスと共に流通させて水素化脱硫反応を行った。反応温度は320℃〜360℃、水素分圧4.9MPa、水素/原料油比250Nm3/キロリットル、LHSV=1.5hr−1の条件で実施した。
硫黄分40質量ppm、10質量ppmを実現するための反応温度を第3表に示す。
【0035】
実施例4、比較例6及び7(軽油の水素化処理)
固定床流通式の反応管に、それぞれ実施例2、比較例2及び比較例3で製造した水素化処理触媒(C1)、(C2)及び(C0)を100ミリリットル充填した。原料油は水素ガスとともに反応管の下段から導入するアップフロー形式で流通させて反応性を評価した。
前処理として第2表に示す性状の原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスとともに流通させて予備硫化した。予備硫化後、第4表に示す原料油「中東系直留軽油(LGO)」に切り替えて、水素ガスと共に流通させて水素化脱硫反応を行った。反応温度は320℃〜360℃、水素分圧4.9MPa、水素/原料油比250Nm3/キロリットル、LHSV=1.0hr−1の条件で実施した。
生成油の硫黄分10質量ppmを保持し、1ヶ月間運転した後、さらに30日間運転を行ったときの反応温度の上昇(℃/30日)で触媒の劣化速度を評価した。結果を第5表に示す。
【0036】
【表1】
*1 担体B0の強酸量を基準としたときの各担体の強酸量の相対値
*2 担体B0の弱酸量を基準としたときの各担体の弱酸量の相対値
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
第3表に示したように、本発明の水素化処理触媒を用いた実施例3は、比較例4及び5に対し、いずれも低い反応温度にて硫黄分40質量ppm、10質量ppmを実現することができ、水素化処理触媒が高活性であり、低コストで効率的に低硫黄分の軽油を製造できる。
また、本発明の水素化処理触媒を用いた実施例4は比較例6及び7に対し、触媒の劣化速度が小さく、触媒寿命が長いことが確認された。
【0042】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、酸性を有する耐火性無機酸化物に希土類金属等の塩基性酸化物を添加し、固体酸の性質を一定範囲内に制御することによって、水素化処理活性の低下が少ない(高活性、長寿命の)水素化処理触媒を提供できる。また、この触媒を用いることにより低硫黄分の炭化水素油を低コストで効率的に製造することができ、特に、該触媒を軽油の超深度脱硫処理(硫黄分50質量ppm以下、さらには10質量ppm以下)に使用した場合、著しい活性向上と長寿命が期待される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素化処理触媒用担体、炭化水素油の水素化処理触媒及びそれを用いた水素化処理方法であり、詳しくは、酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を担持して酸性質を制御した水素化処理触媒用担体、該担体を用いた炭化水素油の水素化処理触媒及び該触媒を用いた水素化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭化水素油の水素化処理には、耐火性無機酸化物を担体とし、これに周期表第6族、第8族〜第10族金属成分の群から選択される少なくとも一種の水素化活性金属成分を担持させることにより調製した触媒が用いられてきた。これらの耐火性無機酸化物としては、主成分としてアルミナが使用され、水素化活性金属成分としては、例えば、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケルなどが選択されている。
ところが、近年の環境規制の強化により、従来の水素化処理触媒では炭化水素油の水素化処理効率に対するニーズに答えられないことが明らかになってきた。そこで、水素化処理活性向上のため、さまざまな工夫が行われてきた。例えば、チタニア(酸化チタン)を活性金属の担体として用い、その特異な水素化活性及び水素化脱硫活性を利用したものなどである(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、触媒活性及び触媒寿命については必ずしも満足のいくものではなく、さらなる改良が求められていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−106061号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、高活性で劣化の少ない水素化処理触媒に最適な担体、それを利用した高活性かつ低コストで得られる水素化処理触媒、その水素化処理触媒を用いた低硫黄分の炭化水素油を効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水素化処理用触媒担体の弱酸点と強酸点の関係が重要であり、担体として用いられる酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を担持させることで、これらの酸量および酸強度を制御することができ、前記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を担持してなる担体であって、470μmol/g以上の全酸量を有し、かつ、強酸量と弱酸量の比が0.37以下であることを特徴とする水素化処理触媒用担体、
(2)酸性を有する耐火性無機酸化物の強酸量に対して、95%以下の強酸量を有し、かつ酸性を有する耐火性無機酸化物の弱酸量に対して、95%以上の弱酸量を有する上記(1)に記載の水素化処理触媒用担体。
(3)塩基性酸化物が周期表第1族、第2族及び第3族金属から選ばれる金属の酸化物である上記(1)又は(2)に記載の水素化処理触媒用担体、
(4)塩基性酸化物が希土類金属の酸化物である上記(3)記載の水素化処理触媒用担体、
(5)希土類金属がセリウム及び/又はイットリウムである上記(4)記載の水素化処理触媒用担体、
(6)塩基性酸化物の含有量が0.1〜10質量%(酸化物基準)であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体、
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の担体に、周期表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させてなる炭化水素油の水素化処理触媒、
(8)上記(7)記載の水素化処理触媒を用いて炭化水素油を処理することを特徴とする水素化処理方法、
(9)炭化水素油中の硫黄含有量を50質量ppm以下に低減させる上記(8)記載の炭化水素油の水素化処理方法、
(10)炭化水素油中の硫黄含有量を30質量ppm以下に低減させる上記(8)記載の炭化水素油の水素化処理方法、
(11)炭化水素油中の硫黄含有量を10質量ppm以下に低減させる上記(8)記載の炭化水素油の水素化処理方法、
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の水素化処理触媒用担体は、酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を担持した担体であって、470μmol/g以上の全酸量を有し、かつ、強酸量と弱酸量の比が0.37以下であることを特徴とする。さらに、塩基性酸化物を担持させる前の酸性を有する耐火性無機酸化物の強酸量に対して、95%以下の強酸量を有し、かつ該酸性を有する耐火性無機酸化物の弱酸量に対して95%以上の弱酸量を有することが好ましい。
こうした全酸量を比較的多く有する担体の強酸量と弱酸量のバランスをとることにより、これらの担体を用いた水素化処理用触媒は高活性で劣化の少ないものとなる。以上のような効果の観点から、本発明の水素化処理用触媒担体の全酸量は500μmol/g以上であることが好ましく、また強酸量と弱酸量の比が0.35以下であることが好ましい。また強酸量及び弱酸量が塩基性酸化物を含有させる前の耐火性無機酸化物の強酸量に対して90%以下の強酸量を有し、かつ該耐火性無機酸化物の弱酸量に対して100%以上の弱酸量を有することがさらに好ましい。
ここで、酸量はアンモニア微分吸着熱測定(DHA;Differential Heat of Adsorption)により得られる値であり、80〜140kJ/molの値を示すものを弱酸、140〜200kJ/molの値を示すものを強酸と定義する。尚、強酸量と弱酸量の和を全酸量という。アンモニア微分吸着熱測定は、触媒上の酸点にアンモニアを吸着させた際の吸着熱量によって酸点の強度を評価し、またアンモニアの吸着量から酸量を求める手法である。吸着熱量は熱量計で測定し、吸着量はアンモニアガスの圧力変化から測定する。
【0008】
前記耐火性無機酸化物としては、酸性を有するものであればよく、特に制限はない。本発明の目的からはシリカ−アルミナ、シリカ−ボリア(酸化ホウ素)、アルミナ−ボリア(酸化ホウ素)、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト)、粘土鉱物及びそれらの混合物などが好適に使用される。これらの中でも、シリカ−アルミナが特に好適である。尚、ここでシリカ−アルミナはシリカとアルミナの複合酸化物、シリカとアルミナの混合物等を示し、シリカ−ボリア(酸化ホウ素)はシリカとボリアの複合酸化物、シリカとボリアの混合物等を示し、アルミナ−ボリア(酸化ホウ素)はアルミナとボリアの複合酸化物、アルミナとボリアの混合物等を示す。
これらの耐火性無機酸化物の平均細孔径は水素化処理を行う炭化水素油の大きさによって適宜選択されるが、通常8〜30nmの範囲、さらには5〜15nmの範囲、特には8〜15nmの範囲のものが好ましい。形状については特に限定されないが、粉体、円柱、三つ葉、四つ葉などの成形体が好適に使用される。
【0009】
耐火性無機酸化物に含有させる塩基性酸化物とは、酸と作用して塩をつくり、水と反応して塩基性水溶液を与え、酸素との反応により酸化物となる化合物をいい、本発明においては、周期表の第1族、第2族及び第3族から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物であることが好ましい。
より具体的には、アルカリ金属としてナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが、希土類金属として、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムなどが挙げられる。これらのうち希土類金属、特にイットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム及びサマリウムが好ましく、なかでもイットリウム及び/又はセリウムが最も好ましい。これらの金属は1種又は2種以上を混合して使用することができ、特にランタノイドに属する元素は性質が互いに類似するため、その混合物は好適に使用し得る。
【0010】
上記、塩基性酸化物の添加方法としては、前記したアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属等の化合物を溶解した水溶液を使用することが好ましい。用いる化合物としては水溶液を構成し得るものであれば特に限定されず、例えば、有機酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、酸化物、水酸化物等を用いることができる。これらのうち取り扱いやすさ等の観点から有機酸塩、硝酸塩が好ましい。
【0011】
本発明の水素化処理触媒用担体における、耐火性無機酸化物に担持させる希土類金属等の塩基性酸化物を構成する金属の含有量は、酸化物基準で、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%である。含有量が少なすぎると希土類金属の酸化物等の塩基性酸化物を添加する効果が十分発揮されない場合があり、また含有量が多すぎると、触媒体の酸性質が大きく変化し、かえって水素化処理活性の劣化を速めることになるため好ましくない。
【0012】
次に、塩基性酸化物を構成する金属を耐火性無機酸化物に担持させる方法については、特に制限はなく、塩基性酸化物を構成する金属の水溶液を耐火性無機酸化物が吸水する量に調整して含浸させるポアフィリング法(含浸法)、大過剰の塩基性酸化物を構成する金属の水溶液に耐火性無機酸化物を浸漬する方法などの一般的な手法で、常圧又は減圧下で行なうことができる。なお、本発明で使用する水溶液はpH2〜12の範囲であることが好ましく、アンモニア水や有機酸などによりpHを調整することができる。一般的には表面水酸基の状態を考慮して、例えば、シリカ−アルミナに担持する場合はpH3〜5程度で担持すると好ましい。
【0013】
塩基性酸化物を構成する金属の含浸後は、乾燥、焼成などの一般的な手法で処理することにより、希土類金属等の塩基性酸化物を構成する金属を含有する水素化処理触媒用担体を得ることができる。乾燥は、通常、常圧又は減圧で、好ましくは50〜300℃、より好ましくは80〜250℃、さらに好ましくは100〜120℃の温度で、0.5〜100時間程度行う。なお、減圧下で乾燥する場合、乾燥速度の調整のため温度を下げることが一般的に行われる。さらに耐火性無機酸化物と塩基性酸化物を構成する金属との結合性を高めるために、必要により焼成を実施する。焼成温度は、通常300〜650℃、好ましくは450〜600℃で、焼成時間は、通常0.5〜100時間程度である。
【0014】
本発明の水素化処理触媒用担体は、様々な水素化処理触媒として用いることができる。すなわち、ナフサ、ガソリン、灯油、軽質軽油、重質軽油、分解軽油等の留出油、常圧残油、減圧残油、脱瀝減圧残油、アスファルテン油、タールサンド油等の残渣油等の石油留分を、水素化(脱オレフィン、脱芳香族)水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱酸素、水素化脱金属、水素化脱ろう、水素化脱瀝及び水素化分解する担体として用いることができる。
【0015】
次に、本発明の炭化水素油の水素化処理触媒について説明する。
本発明の炭化水素油の水素化処理触媒は、前述のようにして得られた担体に、周期表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも一種の金属を担持させることにより、調製することができる。
この触媒の活性金属種は、周期表第6族金属としてモリブデン、タングステンなどが使用されるが、特にモリブデンが好適に使用される。モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、パラモリブデン酸アンモニウムなどが好適である。タングステン化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウムなどが好適である。
【0016】
第8〜10族金属としては、通常コバルトまたはニッケルが好適に使用される。コバルト化合物としては、炭酸コバルトや硝酸コバルトなどが好ましく、ニッケル化合物としては、炭酸ニッケルや硝酸ニッケルなどが好ましい。
さらに、リン化合物を担持させることができ、このリン化合物としては、五酸化リン、正リン酸などが使用される。
上記の活性金属化合物は、通常含浸法により担持される。上記の第6族及び第8〜10族金属ならびにリン化合物は別々に含浸してもよいが、同時に行なうのが効率的である。通常は、含浸液中の第6族金属、第8族金属〜第10族金属及びリンの含有量は、目標とする担持量から計算で求める。これらの金属を脱イオン水に溶解させた後、その含浸液の液量を、用いる担体の吸水量に等しくなるように調整した後、含浸させる。含浸時のpHは含浸液の安定性を考慮し、一般には酸性領域では1〜4、好ましくは1.5〜3.5であり、アルカリ領域では9〜12、好ましくは10〜11である。pHの調整は、有機酸やアンモニアなどを用いて行なうことができる。
【0017】
また、特にリン化合物で安定化させた含浸液には、上述した活性金属を高分散化するために界面活性剤を添加することができ、その中でも分子量が90〜10000のポリエチレングリコールなどの水溶性有機化合物を添加することが特に好ましい。添加量は、担体に対して、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%の範囲がよい。
上記含浸の後に、通常熱処理を行う。逐次的に含浸を実施する場合は、含浸の度に熱処理を行うことも可能であるし、複数の含浸を行った後、最後に熱処理を行うこともできる。熱処理は空気中で、通常550℃以下、好ましくは300℃以下、さらには70〜300℃の範囲、特には80〜150℃の範囲で行うことが好ましい。また、熱処理時間としては2〜48時間程度、さらに好ましくは3〜16時間程度行うことが好ましい。
【0018】
上述のようにして調製された本発明の触媒は、炭化水素油の水素化処理触媒として好適に用いられるが、軽質油の水素化処理触媒として使用される場合と、重質油の水素化処理触媒として使用される場合では、水素化処理の目的の相違から担体の物性及び担持金属の含有量等の最適範囲が異なる。
軽質油の水素化処理の目的は、水素化脱硫、水素化(脱オレフィン、脱アロマ)、脱窒素等であり、特に軽油留分中の硫黄含有量を50ppm以下まで低減する水素化脱硫反応においては、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンのような難脱硫硫黄化合物を脱硫しなければ硫黄含有量を50ppm以下にすることは困難である。そのため、反応初期から反応温度を高くする必要があるため、従来の触媒では触媒寿命が著しく短くなる。従って、従来の触媒より活性点の数を多くすることが必要であり、そのためには本発明における触媒の好ましい物性は以下のようになる。
まず、上記した周期表第6族金属の担持量は触媒全量に対して、酸化物基準で4〜40質量%の範囲であることが好ましく、特には8〜35質量%の範囲が好ましい。次に周期表第8〜10族金属の担持量は、酸化物基準で1〜12質量%の範囲であることが好ましく、特には2〜10質量%の範囲が好ましい。これらの水素化金属がこの範囲内であると水素化脱硫活性が高くなる。
また、上述したリンの担持量は触媒全量に対して、酸化物基準で0.5〜8質量%の範囲であることが好ましく、さらには1〜6質量%の範囲が好ましい。
【0019】
軽質油の水素化処理触媒として使用される場合の耐火性無機酸化物として、シリカ−アルミナが好適に使用され、触媒担体の細孔径としては、8〜25nmの範囲であることが好ましく、さらには10〜22nmの範囲が好ましい。比表面積は80〜300m2/gの範囲であることが好ましく、さらには100〜250m2/gの範囲が好ましい。細孔容積は0. 4〜1.0ミリリットル/gの範囲が好ましく、さらには0.5〜0.9ミリリットル/gの範囲が好ましい。
【0020】
本発明に係る触媒を常圧残油や減圧残油等の重質油を原料として低硫黄重油を生産する水素化触媒として使用する場合の好適な物性等について以下に説明する。
通常、前記重質油の水素化処理等の用途においては、重油直接脱硫装置が用いられるが、使用によって触媒の脱硫性能が低下するため、触媒寿命は1年以内と短く、短い周期で脱硫装置を停止し、触媒を交換する必要がある。また、灯軽油等の脱硫と異なり運転初期から高い温度を必要とし、さらに触媒活性が低下していくために、一定の活性を維持するため反応温度を徐々に上げていく必要がある。特に重質油にはバナジウム、ニッケル等の金属分が含まれ、反応中に触媒に堆積して水素化処理活性を被毒するため、触媒の劣化が著しい。
また、重質油の水素化処理に本触媒を適用する場合には、重質油を構成する炭化水素分子が軽質油に比較して大きいこと、触媒の寿命を伸ばすためには反応塔の上流側に水素化脱金属触媒を用い、下流側に水素化処理(主に水素化脱硫)触媒を用いた触媒システムが好適に採用されるということが重要である。
このような重質油の水素化処理という用途にも本発明の触媒は有効であり、重質油の水素化脱金属触媒として使用する場合の好ましい物性等は以下のようになる。すなわち、周期表第6族金属の担持量は触媒全量に対して、酸化物基準で2〜15質量%の範囲であることが好ましく、特には4〜12質量%の範囲が好ましい。次に周期表第8〜10族金属の担持量は、酸化物基準で1〜4質量%の範囲であることが好ましく、特には1.5〜3.5質量%の範囲が好ましい。これらの水素化金属がこの範囲内であると水素化脱金属活性が高くなる。
【0021】
重質油の水素化脱金属触媒として使用される場合の耐火性無機酸化物として、シリカ−アルミナが好適に使用され、触媒担体の細孔径としては、10〜30nmの範囲であることが好ましく、さらには12〜25nmの範囲が好ましい。比表面積は80〜250m2/gの範囲であることが好ましく、さらには100〜200m2/gの範囲が好ましい。細孔容積は0. 4〜1.0ミリリットル/gの範囲が好ましく、さらには0.5〜0.9ミリリットル/gの範囲が好ましい。
【0022】
次に重質油の水素化処理(主に脱硫)触媒として使用する場合の好ましい態様は以下のようになる。すなわち、周期表第6族金属の担持量は触媒全量に対して、酸化物基準で4〜25質量%の範囲であることが好ましく、特には8〜20質量%の範囲が好ましい。次に周期表第8〜10族金属の担持量は、酸化物基準で1〜8質量%の範囲であることが好ましく、特には2〜5質量%の範囲が好ましい。これらの水素化金属がこの範囲内であると水素化脱硫活性が高くなる。また、リンの担持量としては、触媒全量に対して、酸化物基準で0.5〜5質量%の範囲であることが好ましく、さらには1〜4質量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
重質油の水素化処理(主に脱硫)触媒として使用される場合の耐火性無機酸化物としてシリカ−アルミナが好適に使用され、触媒担体の細孔径としては、8〜25nmの範囲であることが好ましい。8nm未満であると原料油中のバナジウム、ニッケル等の金属の堆積及びコーク前駆体の堆積により、短時間で細孔が閉塞し、脱硫活性が低下する場合がある。一方25nmを超えると、運転初期において、脱硫活性が低くなる場合がある。以上の観点から触媒担体の細孔径はさらには10〜22nmの範囲であることが好ましい。比表面積は100〜250m2/gの範囲であることが好ましい。比表面積が100m2/g未満であると、触媒の脱硫活性が低くなる場合があり、一方、比表面積が250m2/gを超えても脱硫活性は飽和し、有効ではない。以上の観点から比表面積は120〜230m2/gの範囲であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明の炭化水素油の水素化処理方法について説明する。
本発明の炭化水素油の水素化処理方法は、前記した本発明の水素化処理触媒を用いて炭化水素油を処理する方法である。
本発明の触媒を用いて処理する炭化水素油として、全ての石油留分を用いることができるが、具体的には、灯油、軽質軽油、重質軽油、分解軽油等から常圧残油、減圧残油、脱蝋減圧残油、アスファルテン油、タールサンド油まで広く挙げることができる。特に、軽質軽油留分の超深脱領域(硫黄分50ppm以下、さらには10質量ppm以下)のための水素化処理触媒として有用である。
さらに、石油留分を混合して原料油とすることも可能である。特に、主な原料油と同等か、より軽質な原料油を混合することが、触媒の劣化を抑制しつつ、処理原料油の範囲を拡大する観点から好適に採用される。例えば、軽質軽油留分の水素化脱硫処理に関しては、流動接触分解装置から得られる同沸点範囲の分解軽油留分を0〜40容量%混合することができる。また、重質油の水素化処理(水素化脱金属、水素化脱硫等)に関しても同様に、該分解軽油、重質分解軽油や重質軽油等を0〜40容量%混合することができる。
【0025】
前記石油留分をそのまま、あるいは石油留分を混合した原料油を水素化処理する場合の条件としては、通常の水素化処理と同様であればよく、例えば反応温度250〜400℃、反応圧力2〜10MPa、水素/原料油比50〜500Nm3/キロリットル、液空間速度(LHSV)0.2〜5.0hr−1で処理することができる。
本発明の水素化処理方法は、沸点が140〜400℃である炭化水素油を水素化処理することにより、硫黄含有量が50質量ppm以下、好ましくは30質量ppm以下、さらに好ましくは10質量ppm以下の炭化水素油を製造するのに好ましく用いられる。
また、上記低硫黄炭化水素油を製造する際に、本発明の水素化処理用触媒を用い、触媒反応圧力と水素原料油比をさらに上げることにより、低硫黄炭化水素油中の芳香族分を低減することもできる。例えば、反応温度250〜400℃、反応圧力4〜20MPa、水素/原料油比200〜1000Nm3/kL、液空間速度(LHSV)0.2〜5.0hr−1で処理することにより、二環以上の芳香族分を5容量%以下に、一環芳香族分を15容量%以下に容易に低減することができる。さらに、上記の反応条件を適切に選択することにより、二環以上の芳香族分を1容量%以下に、一環芳香族分を5容量%以下に低減することができる。
【0026】
また、本発明の水素化処理触媒を用いて水素化処理を行う際には、予め安定化処理として予備硫化を行うことが好ましい。この予備硫化処理の条件は特に限定されないが、通常、予備硫化剤として、硫化水素、二硫化炭素に加えて、チオフェン、ジメチルサルファイド、ジメチルジサルファイド、ジオクチルポリサルファイド、ジアルキルペンタサルファイド、ジブチルポリサルファイド等の分解温度が300℃以下(好ましくは250℃以下)の有機硫黄化合物及びそれらの混合物を挙げることができる。さらには、原料油による予備硫化も可能である。この場合、触媒中の水素化処理金属を還元することなく十分に硫化させるために、硫黄分濃度が0.3質量%以上(好ましくは0.5質量%以上)の原料油を予備硫化剤として使用することが好ましい。ただし、水素化処理を行う原料油よりも重質な留分の混合はコーキング等の触媒劣化を招くため好ましくない。
重質油(常圧残油、減圧残油等)の水素化処理触媒のための予備硫化については、前記硫化剤の使用に加えて、軽質軽油、重質軽油の順に予備硫化を行った後に、最後に原料油で予備硫化を行うことも好適に行われる。
【0027】
なお、本発明を重質油の水素化処理(水素化脱金属、水素化脱硫等)に適用する場合は、反応温度200〜550℃(好ましくは220〜500℃)、水素分圧5〜30MPa(好ましくは10〜25MPa)の範囲で行う。反応形式は特に限定されないが、通常は、固定床、移動床、沸騰床、懸濁床等の種々のプロセスから選択できるが、特に固定床が好ましい。固定床の場合の温度、圧力以外の反応条件としては、液空間速度(LHSV)は0.05〜10hr−1(好ましくは0.1〜5hr−1)、水素/原料油比は500〜2500Nm3/キロリットル(好ましくは700〜2000Nm3/キロリットル)である。
【0028】
【実施例】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
製造実施例1(シリカ・アルミナ担体の製造)
硫酸アルミにウム水溶液60ミリリットルとアルミン酸ナトリウム水溶液80ミリリットルを混合する工程を5回行い、形成された沈殿物をろ過し、洗浄してアルミナゲル約0.21キログラムを得た。これにシリカ含有量(シリカとアルミナの合計量に対するシリカの含有量)が5質量となるようにシリカゾル(触媒化成工業(株)製「Cataloid−S」)を加えて、十分に混合した後に円柱状に押し出し成形した。この成形物を120℃で16時間乾燥し、500℃で2時間焼成して、シリカ・アルミナ担体B0を得た。得られたシリカ・アルミナ担体はシリカ含有量が5質量%、円柱状(直径1.4mm、平均長さ3mm)であり、比表面積250m2/g、細孔容量0.80ミリリットル/gであった。
【0029】
実施例1(担体の製造)
酢酸イットリウムn水和物(Y(NO3)3・nH2O)を3.0g取り、脱イオン水に溶解させ、全量を80ミリリットルになるように調整した。該水溶液を製造実施例1にて製造したシリカ・アルミナ担体(B0)100gに常圧下、ポアフィリング法により含浸した。70℃で1時間減圧乾燥後、120℃で3時間常圧乾燥し、さらに500℃で4時間焼成して酸化イットリウム(Y2O3)1質量%担持シリカ・アルミナ担体(B1)を得た。得られた担体B1のアンモニア微分吸着熱測定を実施した。結果を第1表に示す。
尚、アンモニア微分吸着熱測定は、16〜32メッシュに成形した上記担体を0.5〜1.0g採取し、400℃で10時間以上真空排気を行った後に、150℃の一定温度でアンモニアガスを導入して行った。
【0030】
比較例1(担体の製造)
酢酸イットリウムn水和物に代えて、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)を用いた以外は実施例1と同様にして酸化マグネシウム(MgO)1質量%担持シリカ・アルミナ担体(B2)を得た。得られた担体B2のアンモニア微分吸着熱測定を実施した。結果を第1表に示す。
【0031】
実施例2(水素化処理触媒の製造)
炭酸ニッケル50g、三酸化モリブデン97g、正リン酸25g(純度80質量%)に脱イオン水を250ミリリットル加え、攪拌しながら80℃で溶解し、室温にて冷却後、脱イオン水にて250ミリリットルに希釈し、含浸液(S)を調製した。
含浸液(S)を50ミリリットル採取し、ポリエチレングリコール(分子量400)6gを添加して、実施例1で得られた担体(B1)100gの吸水量に見合うように脱イオン水にて希釈し、常圧にて担体(B1)に含浸させ、70℃で1時間減圧にて乾燥した後、120℃で16時間乾燥し、水素化処理触媒(C1)を製造した。
【0032】
比較例2(水素化処理触媒の製造)
実施例2で調製した含浸液(S)を50ミリリットル採取し、ポリエチレングリコール(分子量400)6gを添加して、比較例1で得られた担体(B2)100gの吸水量に見合うように脱イオン水にて希釈し、常圧にて担体(B2)に含浸させ、70℃で1時間減圧にて乾燥した後、120℃で16時間乾燥し、水素化処理触媒(C2)を製造した。
【0033】
比較例3(水素化処理触媒の製造)
実施例2で調製した含浸液(S)を50ミリリットル採取し、ポリエチレングリコール(分子量400)6gを添加して、担体B1及び担体B2のベースである担体(B0)100gの吸水量に見合うように脱イオン水にて希釈し、常圧にて該担体(B0)に含浸させ、70℃で1時間減圧にて乾燥した後、120℃で16時間乾燥し、水素化処理触媒(C0)を製造した。
【0034】
実施例3、比較例4及び5(軽油の水素化処理)
固定床流通式の反応管に、それぞれ実施例2、比較例2及び比較例3で製造した水素化処理触媒(C1)、(C2)及び(C0)を100ミリリットル充填した。原料油は水素ガスとともに反応管の下段から導入するアップフロー形式で流通させて反応性を評価した。
前処理として第2表に示す性状の原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスとともに流通させて予備硫化した。予備硫化後、上記の原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスと共に流通させて水素化脱硫反応を行った。反応温度は320℃〜360℃、水素分圧4.9MPa、水素/原料油比250Nm3/キロリットル、LHSV=1.5hr−1の条件で実施した。
硫黄分40質量ppm、10質量ppmを実現するための反応温度を第3表に示す。
【0035】
実施例4、比較例6及び7(軽油の水素化処理)
固定床流通式の反応管に、それぞれ実施例2、比較例2及び比較例3で製造した水素化処理触媒(C1)、(C2)及び(C0)を100ミリリットル充填した。原料油は水素ガスとともに反応管の下段から導入するアップフロー形式で流通させて反応性を評価した。
前処理として第2表に示す性状の原料油「中東系直留軽油(LGO)」を水素ガスとともに流通させて予備硫化した。予備硫化後、第4表に示す原料油「中東系直留軽油(LGO)」に切り替えて、水素ガスと共に流通させて水素化脱硫反応を行った。反応温度は320℃〜360℃、水素分圧4.9MPa、水素/原料油比250Nm3/キロリットル、LHSV=1.0hr−1の条件で実施した。
生成油の硫黄分10質量ppmを保持し、1ヶ月間運転した後、さらに30日間運転を行ったときの反応温度の上昇(℃/30日)で触媒の劣化速度を評価した。結果を第5表に示す。
【0036】
【表1】
*1 担体B0の強酸量を基準としたときの各担体の強酸量の相対値
*2 担体B0の弱酸量を基準としたときの各担体の弱酸量の相対値
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
第3表に示したように、本発明の水素化処理触媒を用いた実施例3は、比較例4及び5に対し、いずれも低い反応温度にて硫黄分40質量ppm、10質量ppmを実現することができ、水素化処理触媒が高活性であり、低コストで効率的に低硫黄分の軽油を製造できる。
また、本発明の水素化処理触媒を用いた実施例4は比較例6及び7に対し、触媒の劣化速度が小さく、触媒寿命が長いことが確認された。
【0042】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、酸性を有する耐火性無機酸化物に希土類金属等の塩基性酸化物を添加し、固体酸の性質を一定範囲内に制御することによって、水素化処理活性の低下が少ない(高活性、長寿命の)水素化処理触媒を提供できる。また、この触媒を用いることにより低硫黄分の炭化水素油を低コストで効率的に製造することができ、特に、該触媒を軽油の超深度脱硫処理(硫黄分50質量ppm以下、さらには10質量ppm以下)に使用した場合、著しい活性向上と長寿命が期待される。
Claims (11)
- 酸性を有する耐火性無機酸化物に塩基性酸化物を担持してなる担体であって、470μmol/g以上の全酸量を有し、かつ、強酸量と弱酸量の比が0.37以下であることを特徴とする水素化処理触媒用担体。
- 酸性を有する耐火性無機酸化物の強酸量に対して、95%以下の強酸量を有し、かつ酸性を有する耐火性無機酸化物の弱酸量に対して、95%以上の弱酸量を有する請求項1に記載の水素化処理触媒用担体。
- 塩基性酸化物が周期表第1族、第2族及び第3族金属から選ばれる金属の酸化物である請求項1又は2に記載の水素化処理触媒用担体。
- 塩基性酸化物が希土類金属の酸化物である請求項3記載の水素化処理触媒用担体。
- 希土類金属がセリウム及び/又はイットリウムである請求項4記載の水素化処理触媒用担体。
- 塩基性酸化物の含有量が0.1〜10質量%(酸化物基準)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の担体に、周期表第6族、第8族、第9族及び第10族に属する金属の中から選ばれる少なくとも1種の金属を担持させてなる炭化水素油の水素化処理触媒。
- 請求項7記載の水素化処理触媒を用いて炭化水素油を処理することを特徴とする水素化処理方法。
- 炭化水素油中の硫黄含有量を50質量ppm以下に低減させる請求項8記載の炭化水素油の水素化処理方法。
- 炭化水素油中の硫黄含有量を30質量ppm以下に低減させる請求項8記載の炭化水素油の水素化処理方法。
- 炭化水素油中の硫黄含有量を10質量ppm以下に低減させる請求項8記載の炭化水素油の水素化処理方法。
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