JP2005011957A - 露光装置、露光方法及び半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

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直樹 福武
Toru Fujii
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Abstract

【課題】従来の露光装置の光学系のほとんどがそのまま使用でき、コンパティビリティがあり、多光子露光装置として使用可能な露光装置を提供する。
【解決手段】光源1から放出されたビーム状の照明光は、振動ミラー2、3により2次元の走査光となり、fθレンズを含む照明光学系4を通して、レチクル5を照明する。fθレンズの働きにより、走査光はレチクル5上を等速度で、ジグザグに走査する。照明光のスポットの大きさは、レチクル5上で、2つの隣り合うパターンに同時に光が入らない程度に絞られている。レチクル5上のパターンを透過した光は、投影光学系6によって、レチクル5上のパターンの像をウエハ7面に結像する。ウエハ7の表面には、2光子吸収レジスト又は多光子吸収レジストが塗布されており、それぞれ2光子状態の光、多光子状態の光のみに反応して感光する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レチクル上に形成されたパターンの像を、ウエハ等の感応基板上に露光転写する露光装置、及びそれを用いた露光方法、さらには、この露光方法を用いた半導体デバイスの製造方法の関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造工程においては、レチクルに形成されたパターンを、露光装置によりウエハ上に露光転写することが行われている。近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、露光転写するパターンのピッチが細かくなってきている。
【0003】
一方、光学的露光装置により露光可能な最小ピッチは、露光に使用する波長と投影レンズの開口数で制限される最大回折角によって決定され、波長をλ、投影レンズの開口数をNAとすると、λ/(2NA)で示される。よって、露光可能なピッチを小さくするためには、露光に使用する波長を短くするか、投影レンズの開口数を大きくする必要がある。
【0004】
現在の露光装置ではピッチ縮小のために短波長化を図っているが、波長が短くなるにつれて投影光学系の硝材質が制限されコストが指数関数的に高くなってきている。また同時にピッチ縮小のために、投影レンズの開口数の増大を図っているが、照明光学系や結像光学系(投影光学系)の設計が困難になると共に、大口径硝材が必要とされるために、材料のコスト面からも不利になる。
【0005】
最近では軟X線を使用した露光装置の開発が進められているが、レンズ系が使用できない等の制約のために、まだ実用化には至っていない。また、電子線を使用した露光装置の開発も行われているが、これもまだ実用の段階には至っていない。
【0006】
これらとは別の動きとして、光子集団を使用して露光を行うことにより、古典光解像限界(λ/(2NA))より細かなピッチのパターンを形成させる装置の開発も行われている。その一つが、多光子吸収に対して、相対的に高い感度を有する複数光子非線形吸収現象を利用したレジストを使用し、1光子吸収の感度を落とし、多光子吸収を利用して露光を行うものである。
【0007】
又、量子力学的な粒子状態の中には、もつれ状態、エンタングルド状態、EPRペア等、古典的現象には見られなかった複数粒子間の状態の相関が起こる状態があることが知られていて、近年は実験的にもその現象が多数実証されている。そのような現象の中でも、すでに多数のグループが実験を行っている光学パラメトリックダウンコンバージョンと呼ばれる現象により、1つの光子を消滅させ同時に複数の光子を発生させることで、時空相関を有する光子集団を発生させることが可能になっている。
【0008】
そのような光子集団の干渉現象において、特に周波数が同じ2つの時空相関を持つ光子対を用いることで、干渉計により、通常の干渉縞の半分の、前記古典光解像限界以下のピッチで露光を行うことが提案されている(USP6,252,665:特許文献1)。また、PHYSICAL REVIEW A, VOLUME 63, 063407(2001 The American Physical Society:非特許文献1)には、複雑な干渉計構成の組合せによって、任意のパターンを露光する提案もされている。
【0009】
【特許文献1】USP6,252,665
【非特許文献1】PHYSICAL REVIEW A, VOLUME 63, 063407
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複数光子非線形吸収現象を利用したレジストを使用した従来型投影露光装置では、実際には高い分解能を得ることができなかった。このことは、後に示すようにシミュレーションの結果からも証明され、本質的な問題であることが分かる。又、干渉計を利用した多光子露光では、複雑な機構を用いる必要があり、かつ従来の露光装置とのコンパティビリティが無く、たとえ実用化されたとしても、非常に高コストの装置となることが予想される。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、従来の露光装置の光学系のほとんどがそのまま使用でき、コンパティビリティがあり、多光子露光装置として使用可能な露光装置、及びそれを使用した露光方法、さらにはこの露光方法を使用した半導体デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、照明光学系によりレチクルを照明し、当該レチクルに形成された複数のパターンを、感応基板に露光転写する露光装置であって、前記照明光学系により、前記レチクル上に形成された前記複数のパターンのうち1つのパターンを含み、かつ、隣接する他のパターンは含まないように絞られた光で前記レチクル上を照射しながら走査して、露光転写を行うことを特徴とする露光装置(請求項1)である。
【0013】
本手段は、多光子吸収現象を用いて露光を行うことにより、従来行われていた1光子吸収を用いた場合には得られなかったような露光可能な最小ピッチのパターンの露光転写を可能にするものである。その際、相隣る2つ以上のパターンに光が入射すると、それぞれのパターンを透過した光子が、同時に感応基板の同一位置に到達して、多光子吸収する可能性を有し、そのために、目標とするような細かいパターンの露光転写を行うことができない。
【0014】
本手段においては、露光に用いる光の寸法を小さくして、複数個のパターンが同時に照射されないようにしている。よって、隣のパターンとの干渉がなくなるので、従来よりも細かなパターンの露光転写を行うことができる。
【0015】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、照明光を走査光に変える手段として、ポリゴンミラーを用いていることを特徴とするもの(請求項2)である。
【0016】
前記第1の手段においては、照明光の大きさをレチクル上のパターン幅と同程度まで絞る必要があるので、レチクルの所定面を一括露光することができず、ビームを走査して露光を行わなければならない。ポリゴンミラーは高速回転が可能であるので、高速で光ビームを走査させることが可能となり、走査光を形成する手段として好ましい。
【0017】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段の露光装置を用いて、レチクル上に形成されたパターンの像を、感応基板上に露光転写する方法であって、前記感応基板上に設けられたレジストに、多光子吸収レジストを用いることを特徴とする露光方法(請求項3)である。
【0018】
1光子吸収に対して感度が低い多光子吸収レジストを使用すれば、1光子吸収の影響を無視することができるので、所望の細かい線幅のパターンをレジスト上に形成することができる。
【0019】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第3の手段である露光方法を用いて、レチクル上に形成されたパターンの像を、ウエハ等の感応基板上に露光転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法(請求項4)である。
【0020】
本手段によれば、従来よりも細かなピッチを有するパターンを露光転写することが可能になり、集積度の高い半導体デバイスを製造することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1に、露光転写に用いる波長をλとするとき、0.7λの間隔で設けられたスリットパターン(スリット幅は無限小とする)を露光転写した場合の、被転写面での感光の強度分布のパターン(シミュレーション結果)を示す。横軸は被露光面位置であり単位はλである。縦軸は、レジストに吸収された光による相対感光強度である。なお、投影光学系の倍率は1とし、図のA、Bの曲線は、結像NAが1であり、照明NAがゼロ、すなわち、レチクル直上からの平面波によるコヒーレント照明を行ったものであり、Aが従来の光による露光方法によるもの、Bがこれまでに提案された通常の2光子吸収非線形現象を利用したときのものである。
【0022】
図のCの曲線は、結像NAが1であり、これまで提案された干渉計タイプの量子リソグラフィーによるものと、M. D’Angeloらの提案方法での計算結果である。Dの曲線が、本発明の手法を使用したもので、2つのスリットに光が同時に入射しないようにスポットを絞り、走査により露光を行ったものである。なお、結像NAは1である。
【0023】
図を見ると分かるように、Aの曲線では、2つのスリットの像が解像できていない。これは、従来知られていた事実と一致する。しかしながら、Bの曲線を見ると分かるように、これまでに提案された通常の2光子吸収非線形現象を利用した場合でも、従来の光によるものと大差はなく、2つのスリットの解像ができていないことが分かる。
【0024】
Cの曲線によれば、干渉計タイプの量子リソグラフィーによるものと、M. D’Angeloらの提案方法では、十分な解像ができていることが分かる。しかしこれらの方法が、実用上は実現困難であることは、先に述べたとおりである。
【0025】
Dの曲線が示す本発明の方法では、ほぼ完全な解像ができていることが分かる。
【0026】
以下、本発明を用いた場合の解像度(曲線D)が、これまでに提案された通常の2光子吸収非線形現象を利用したものの解像度(曲線B)よりも良い理由を、図2を用いて理論的に説明する。
【0027】
図2において、(a)は、本発明の実施の形態である露光方法、(b)は従来の露光方法を示したものである。レチクル11には、パターンA、Bが形成されている。
(a)においては、まずパターンAを照明光で照射し、その像を投影光学系12により、2光子吸収レジストを塗布したウエハ3に投影する。そして、それと時間を異にして、パターンBを照明光で照射し、その像を投影光学系12により、2光子吸収レジストを塗布したウエハ13に投影する。これに対し、(b)においては、パターンAとパターンBを同時に照明光で照射し、これらの像を2光子吸収レジストを塗布したウエハ13に投影する。
【0028】
ψは、パターンAを透過した光による像面(ウエハ13)上での複素電場を示し、ψは、パターンBを透過した光による像面(ウエハ13)上での複素電場を示す。(a)においては、ψとψが時間を異にして別々に形成されるのに対し、(b)においては(ψ+ψ)の複素電場が形成される。
【0029】
今、ウエハ13上の位置をxで示し、Aのパターンの像の中心をx、Bのパターンの像の中心をxとし、ψとψが同じ関数形ψをとるものとすると、(a)の場合、ウエハ13上の位置がxである点では、ψ(x−x)、ψ(x−x)の電場が違った時間に形成され、(b)の場合は、
{ψ(x−x)+ψ(x−x)}
の電場が形成されることになる。
【0030】
2光子吸収レジストに吸収される光による相対感光強度は、複素電場の2乗の絶対値の2乗に比例する。なお、複素電場を2乗するのは、2光子吸収を考えているためであり、その絶対値をさらに2乗するのは、光強度に変換するためである。よって、(a)の場合、ウエハ13上の位置をxでの2光子吸収レジストに吸収される光による相対感光強度はIは、
=|ψ(x−x)|+|ψ(x−x)|
となり、(b)の場合、ウエハ13上の位置をxでの2光子吸収レジストに吸収される光による相対感光強度はIは、
=|{ψ(x−x)+ψ(x−x)}
となる。
これらの式と図2から分かるように、Iの方がIに比べて、xとxの間で値が小さくなり、(a)の方が(b)に比べて、解像度が高くなる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態の1例である露光装置とそれを使用した露光方法の概要を図3に基づいて説明する。
【0032】
光源1から放出されたビーム状の照明光は、振動ミラー2、3により2次元の走査光となり、fθレンズを含む照明光学系4を通して、レチクル5を照明する。fθレンズの働きにより、走査光はレチクル5上を等速度で、ジグザグに走査する。照明光のスポットの大きさは、レチクル5上で、2つの隣り合うパターンに同時に光が入らない程度に絞られている。
【0033】
レチクル5上のパターンを透過した光は、投影光学系6によって、レチクル5上のパターンの像をウエハ7面に結像する。ウエハ7の表面には、2光子吸収レジスト又は多光子吸収レジストが塗布されており、それぞれ2光子状態の光、多光子状態の光のみに反応して感光する。
【0034】
走査光の形成方式は、上述のようなものに限られず、現在実用化されているスキャナと呼ばれている露光装置の走査光学系を使用することができる。又、図3では、光のスポットは一つとしているが、互いの光が干渉しない程度に離れていれば、複数のスポットを同時に使用することができる。これにより、レチクル全面を走査するのに必要な時間を短縮することができる。又、走査光の形成手段としてポリゴンミラーを使用すると、高速の走査が可能となる。
【0035】
以上説明したように、この実施の形態の露光装置は、投影光学系は、ほとんど従来のものと同じものを使用できるので、製造するのが簡単である。
【0036】
以下、本発明に係る半導体デバイスの製造方法の実施の形態の例を説明する。図4は、本発明の半導体デバイス製造方法の一例を示すフローチャートである。この例の製造工程は以下の各主工程を含む。
▲1▼ウエハを製造するウエハ製造工程(又はウエハを準備するウエハ準備工程)
▲2▼露光に使用するマスクを製作するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)
▲3▼ウエハに必要な加工処理を行うウエハプロセッシング工程
▲4▼ウエハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程
▲5▼できたチップを検査するチップ検査工程
なお、それぞれの工程はさらにいくつかのサブ工程からなっている。
【0037】
これらの主工程の中で、半導体のデバイスの性能に決定的な影響を及ぼす主工程がウエハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウエハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウエハプロセッシング工程は以下の各工程を含む。
▲1▼絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、あるいは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
▲2▼この薄膜層やウエハ基板を酸化する酸化工程
▲3▼薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストのパターンを形成するリソグラフィー工程
▲4▼レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
▲5▼イオン・不純物注入拡散工程
▲6▼レジスト剥離工程
▲7▼さらに加工されたウエハを検査する検査工程
なお、ウエハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
【0038】
図5は、図4のウエハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を示すフローチャートである。このリソグラフィー工程は以下の各工程を含む。
▲1▼前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程
▲2▼レジストを露光する露光工程
▲3▼露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程
▲4▼現像されたレジストパターンを安定化させるためのアニール工程
【0039】
以上の半導体デバイス製造工程、ウエハプロセッシング工程、リソグラフィー工程については、周知のものであり、これ以上の説明を要しないであろう。本発明においては、リソグラフィー工程に本発明の露光方法を使用しているので、従来の露光装置では製造できなかった微細なパターンを有する半導体デバイスを製造することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来の露光装置の光学系のほとんどがそのまま使用でき、コンパティビリティがあり、多光子露光装置として使用可能な露光装置、及びそれを使用した露光方法、さらにはこの露光方法を使用した半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】0.7λの間隔で設けられたスリットパターンを各種の方法で露光転写した場合の、被転写面での光の強度分布のパターンを示す図である。
【図2】本発明により、従来の方法より高い解像度が得られる原理を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態の1例である露光装置の概要を示す図である。
【図4】本発明に係る半導体デバイスの製造方法の実施の形態の例を説明する図である。
【図5】リソグラフィー工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…光源
2…振動ミラー
3…振動ミラー
4…照明光学系
5…レチクル
6…投影光学系
7…ウエハ

Claims (4)

  1. 照明光学系によりレチクルを照明し、当該レチクルに形成された複数のパターンを、感応基板に露光転写する露光装置であって、前記照明光学系により、前記レチクル上に形成された前記複数のパターンのうち1つのパターンを含み、かつ、隣接する他のパターンは含まないように絞られた光で前記レチクル上を照射しながら走査して、露光転写を行うことを特徴とする露光装置。
  2. 請求項1に記載の露光装置であって、照明光を走査光に変える手段として、ポリゴンミラーを用いていることを特徴とする露光装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の露光装置を用いて、レチクル上に形成されたパターンの像を、感応基板上に露光転写する方法であって、前記感応基板上に設けられたレジストに、多光子吸収レジストを用いることを特徴とする露光方法。
  4. 請求項3に記載の露光方法を用いて、レチクル上に形成されたパターンの像を、感応基板上に露光転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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