JP2005011771A - アルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極 - Google Patents
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Abstract
【課題】大電流放電特性と活物質利用率に優れたアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極を提供すること。
【解決手段】主活物質が酸化カドミウム又は水酸化カドミウム粉末からなるペーストを導電芯体に塗布したアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極であって、該ペースト中にフィラメント状構造を持つニッケル粉末を含有させる。前記ペースト中へのフィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量を全活物質量の2質量%〜20質量%とすることが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】主活物質が酸化カドミウム又は水酸化カドミウム粉末からなるペーストを導電芯体に塗布したアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極であって、該ペースト中にフィラメント状構造を持つニッケル粉末を含有させる。前記ペースト中へのフィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量を全活物質量の2質量%〜20質量%とすることが好ましい。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、アルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極に関し、特に主活物質として酸化カドミウム(CdO)もしくは水酸化カドミウム(Cd(OH)2)粉末を使用した大電流放電特性と活物質利用率に優れたアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池に用いられるカドミウム負極の製造方法としては、大別してニッケル金属からなる多孔性焼結基板を硝酸カドミウム中に含浸後アルカリ処理することにより水酸化カドミウムを多孔性焼結基板中に担持させて作製する焼結式製法と、酸化カドミウム、水酸化カドミウムもしくは金属カドミウム等と結着材及び溶媒とからなるペーストを導電性基板に塗布して作製するペースト式製法との2つがある。
【0003】
そして、製造工程が比較的簡単で且つ製造コストが安価であるということから、ペースト式カドミウム負極が広く用いられている。このペースト式カドミウム負極の導電性は、焼結式負極で使用されているニッケル金属からなる多孔性焼結基板のような導電性の骨格を持たないために、活物質としても機能するカドミウム金属が主に担っている。すなわち、カドミウム金属は放電時に導電性のない水酸化カドミウムへ変化するため、孤立したカドミウム金属が増加し、放電が進むとペースト式カドミウム負極の導電性は順次低下していく。このため、ペースト式カドミウム負極は活物質利用率が低いという問題がある。また、ペースト式カドミウム負極は、導電性が低いことから、大電流で放電したときの放電特性が焼結式カドミウム負極の場合と比較すると大きく劣るという問題もある。
【0004】
一方、従来からカドミウム負極活物質の導電性を向上させるため、ニッケル粉末をカドミウム負極活物質中に添加することが行われていた(下記特許文献1〜4参照)。これらのニッケル粉末を添加したペースト式カドミウム負極を使用したアルカリ蓄電池は、ニッケル粉末が導電性を付与するためにある程度大電流域での放電特性が改善されるにしても、その改善の程度は十分なものではなく、更なる大電流域での放電特性の改善及び活物質利用率の向上が求められていた。
【0005】
【特許文献1】
特公昭54− 6689号公報
【特許文献2】
特公昭58− 32743号公報
【特許文献3】
特公昭58− 32745号公報
【特許文献4】
特公平 3− 743号公報
【0006】
本発明者等は上述のような従来のニッケル粉末を添加したペースト式カドミウム負極の挙動について種々検討を重ねた結果、使用するニッケル粉末は、粒度が規定されているにしてもその形状については何も規定されておらず、慣用的に球状に近い粉末が使用されているため、カドミウム活物質同士を点でつなげることになるので、導電性向上の点では限度があるとともに、放電が進むと孤立しているカドミウムが増加するので、大電流域での放電特性の低下及び活物質利用率の低下につながることを知見した。
【0007】
そして、本発明者等は、カドミウム負極活物質中に添加するニッケル粉末として、従来例のような球状に近いニッケル粉末に変えてフィラメント状構造を持つニッケル粉末を使用すると、カドミウム活物質同士が点及び線でつながったことになるので、大電流域での放電特性及び活物質利用率が劇的に改善されることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
即ち、本発明は、主活物質として酸化カドミウムもしくは水酸化カドミウムを使用した大電流放電特性と活物質利用率に優れたアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極を提供することを目的とする。
【発明の実施の形態】
【0009】
本発明の上記目的は以下の構成により達成し得る。すなわち、本発明の第1の態様によれば、主活物質が酸化カドミウム又は水酸化カドミウム粉末からなるペーストを導電芯体に塗布したアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極であって、該ペースト中にフィラメント状構造を持つニッケル粉末を含有しているアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極が提供される。
【0010】
係る態様によれば、フィラメント状構造を持つニッケル粉末は、微細なニッケルが3次元的につながった形状をしているおり、負極の放電時にもその形態と導電性は変化しないため、放電時にカドミウムが水酸化カドミウムへ変化しても残りのカドミウム同士が点及び線でつながっているために、導電性の低下が抑制され、活物質利用率が大幅に改善される。また、カドミウム負極の大電流放電特性を向上させるには、カドミウム上に生成する中間生成物の溶解を促進することが有効であるが、フィラメント状構造を持つニッケル粉末は水酸化カドミウムの析出核として働くために、中間生成物の溶解を促進し、大電流放電特性を向上させていると考えられる。実際、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)観察によりニッケル上に水酸化カドミウムが析出していることが確認された。
【0011】
このようにニッケルが水酸化カドミウムの析出核として働く理由を考察すると、アルカリ水溶液中でニッケル表面は金属として存在しているとは考えられず、その一部は水酸化カドミウムと結晶構造が同じ水酸化ニッケルに変化しているのではないかと考えられる。なお、水酸化ニッケルが水酸化カドミウムの析出核となることは既知の事実である。
【0012】
係る態様においては、前記活物質中へのフィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量は全活物質量の2質量%〜20質量%とすることが好ましい。フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量が1質量%以上であれば活物質の利用率が向上するが、大電流放電特性はフィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量が2質量%以上で向上する。したがって、好ましいフィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量は全活物質量の2質量%以上である。
【0013】
また、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量が全活物質量の20%以上でも比較例の電池に比べて利用率及び大電流放電特性が大幅に向上しているが、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加割合が多いとその分だけカドミウム活物質量が減少して負極のエネルギー密度が低下していくため、ニッケル粉末をあまり多量に添加することは好ましくない。よって、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量は全活物質量の20質量%以下が妥当である。
【0014】
以下、本発明の具体例を実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。
【実施例】
まず、各実施例及び比較例に共通するフィラメント状構造を持つニッケル粉末の製造方法及び各カドミウム負極の製造方法について説明する。
[ニッケル粉末]
ニッケル粉末としては、下記表1に示した特性を持つ2種類のニッケル粉末を使用した。
【表1】
【0015】
このうち、フィラメント状構造を持つニッケル粉末におけるフィッシャー粒径は、フィラメントの太さと考えられる。よって、上記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末のフィラメントの太さは、球状のニッケル粉末の粒径と同等である。また、フィラメント状構造を持つ粉末のかさ密度は3次元的に伸びているフィラメントの長さの和と相関があるが、上記フィラメント状構造を持つニッケル粉末は、かさ密度が低いことから、3次元的に伸びたフィラメント構造であることが分かる。
【0016】
[フィラメント状構造ニッケル粉末の製法]
フィラメント状のニッケル粉末は、カーボニル法の製造条件を調製することにより、ニッケルカーボニルからフィラメント状のニッケル粉末を得ることができる。
Ni(CO)4[気体] → Ni[フィラメント状]+4CO
【0017】
[負極の作製方法]
(実施例1)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末1質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルメッキした鉄で作られたパンチングメタルからなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板1)を作製した。
【0018】
(実施例2)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末2質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板2)を作製した。
【0019】
(実施例3)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末5質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板3)を作製した。
【0020】
(実施例4)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末10質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板4)を作製した。
【0021】
(実施例5)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末20質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板5)を作製した。
【0022】
(比較例1)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板6)を作製した。
【0023】
(比較例2)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び上記表1に示した球状のニッケル粉末5質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板7)を作製した。
【0024】
[利用率の測定]
上記実施例1〜5、比較例1及び2で作製した負極板1〜7を用い、対極としてニッケル極を用い、20質量%の水酸化カリウム溶液中で以下の条件で充放電を行い、以下の計算式に基いて利用率の測定を行った。
充放電条件:
充電条件:負極理論容量(1It)に対して0.3Itで5時間充電
放電条件:0.3ItでNi対極に対して1.5Vとなるまで放電。
利用率(%)=((放電電流(mA)×時間(h))/理論容量(mAh))×100
得られた結果を表2に示した。
【0025】
【表2】
【0026】
表2より、極板1〜5(実施例1〜5)の利用率は、極板6及び7(比較例1及び2)の利用率に比べて利用率が高く、フィラメント状構造を持つニッケル粉末を1%以上添加すると利用率が向上することが分かる。また、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の含有量が全活物質含有量の20質量%でも比較例電池に比べて利用率は大幅に向上しているが、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の割合が多いとその分だけカドミウム活物質量が減少して負極のエネルギー密度が低下していくため、フィラメント状構造を持つニッケル粉末を多量に添加することは好ましくない。よって、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量は全活物質の20質量%以下が妥当であると考えられる。
【0027】
[大電流放電特性の測定]
次に、上記実施例1〜5、比較例1及び2で作製した負極板1〜7及び公知のニッケル正極板及び水酸化カリウム電解液とを組み合わせて公称容量1500mAhのニッケルカドミウム電池1〜7を作製し、以下の条件で充放電試験を行い、下式にて大電流放電特性を算出した。
大電流放電特性 = 条件2の放電容量/条件1の放電容量
(注:「E.V.」は放電終了時の電圧を表す。)
結果をまとめて表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
表3より、電池1(実施例1)は電池6、7(比較例1、2)に比べて大電流特性は向上していないが、電池2〜5(実施例2〜5)は電池6、7に比べて大電流特性の向上が見られる。よって、大電流特性の向上にはフィラメント状構造を持つニッケル粉末が2%以上であることが望ましい。また、電池5(実施例5)は電池6、7(比較例1、2)に比べて大電流特性は向上しているが、最も良好な結果が得られた電池4(実施例4)よりも効果が劣っている。従って、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の含有量は、前記活物質利用率のところで述べたのと同様の理由で、全活物質量の20質量%以下が妥当であると考えられる。
【0030】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、フィラメント状構造を持つニッケル粉末を2%〜20%添加することにより、利用率及び大電流特性に優れたアルカリ蓄電池用ペースト式負極を得ることができる。
【発明が属する技術分野】
この発明は、アルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極に関し、特に主活物質として酸化カドミウム(CdO)もしくは水酸化カドミウム(Cd(OH)2)粉末を使用した大電流放電特性と活物質利用率に優れたアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池に用いられるカドミウム負極の製造方法としては、大別してニッケル金属からなる多孔性焼結基板を硝酸カドミウム中に含浸後アルカリ処理することにより水酸化カドミウムを多孔性焼結基板中に担持させて作製する焼結式製法と、酸化カドミウム、水酸化カドミウムもしくは金属カドミウム等と結着材及び溶媒とからなるペーストを導電性基板に塗布して作製するペースト式製法との2つがある。
【0003】
そして、製造工程が比較的簡単で且つ製造コストが安価であるということから、ペースト式カドミウム負極が広く用いられている。このペースト式カドミウム負極の導電性は、焼結式負極で使用されているニッケル金属からなる多孔性焼結基板のような導電性の骨格を持たないために、活物質としても機能するカドミウム金属が主に担っている。すなわち、カドミウム金属は放電時に導電性のない水酸化カドミウムへ変化するため、孤立したカドミウム金属が増加し、放電が進むとペースト式カドミウム負極の導電性は順次低下していく。このため、ペースト式カドミウム負極は活物質利用率が低いという問題がある。また、ペースト式カドミウム負極は、導電性が低いことから、大電流で放電したときの放電特性が焼結式カドミウム負極の場合と比較すると大きく劣るという問題もある。
【0004】
一方、従来からカドミウム負極活物質の導電性を向上させるため、ニッケル粉末をカドミウム負極活物質中に添加することが行われていた(下記特許文献1〜4参照)。これらのニッケル粉末を添加したペースト式カドミウム負極を使用したアルカリ蓄電池は、ニッケル粉末が導電性を付与するためにある程度大電流域での放電特性が改善されるにしても、その改善の程度は十分なものではなく、更なる大電流域での放電特性の改善及び活物質利用率の向上が求められていた。
【0005】
【特許文献1】
特公昭54− 6689号公報
【特許文献2】
特公昭58− 32743号公報
【特許文献3】
特公昭58− 32745号公報
【特許文献4】
特公平 3− 743号公報
【0006】
本発明者等は上述のような従来のニッケル粉末を添加したペースト式カドミウム負極の挙動について種々検討を重ねた結果、使用するニッケル粉末は、粒度が規定されているにしてもその形状については何も規定されておらず、慣用的に球状に近い粉末が使用されているため、カドミウム活物質同士を点でつなげることになるので、導電性向上の点では限度があるとともに、放電が進むと孤立しているカドミウムが増加するので、大電流域での放電特性の低下及び活物質利用率の低下につながることを知見した。
【0007】
そして、本発明者等は、カドミウム負極活物質中に添加するニッケル粉末として、従来例のような球状に近いニッケル粉末に変えてフィラメント状構造を持つニッケル粉末を使用すると、カドミウム活物質同士が点及び線でつながったことになるので、大電流域での放電特性及び活物質利用率が劇的に改善されることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
即ち、本発明は、主活物質として酸化カドミウムもしくは水酸化カドミウムを使用した大電流放電特性と活物質利用率に優れたアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極を提供することを目的とする。
【発明の実施の形態】
【0009】
本発明の上記目的は以下の構成により達成し得る。すなわち、本発明の第1の態様によれば、主活物質が酸化カドミウム又は水酸化カドミウム粉末からなるペーストを導電芯体に塗布したアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極であって、該ペースト中にフィラメント状構造を持つニッケル粉末を含有しているアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極が提供される。
【0010】
係る態様によれば、フィラメント状構造を持つニッケル粉末は、微細なニッケルが3次元的につながった形状をしているおり、負極の放電時にもその形態と導電性は変化しないため、放電時にカドミウムが水酸化カドミウムへ変化しても残りのカドミウム同士が点及び線でつながっているために、導電性の低下が抑制され、活物質利用率が大幅に改善される。また、カドミウム負極の大電流放電特性を向上させるには、カドミウム上に生成する中間生成物の溶解を促進することが有効であるが、フィラメント状構造を持つニッケル粉末は水酸化カドミウムの析出核として働くために、中間生成物の溶解を促進し、大電流放電特性を向上させていると考えられる。実際、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)観察によりニッケル上に水酸化カドミウムが析出していることが確認された。
【0011】
このようにニッケルが水酸化カドミウムの析出核として働く理由を考察すると、アルカリ水溶液中でニッケル表面は金属として存在しているとは考えられず、その一部は水酸化カドミウムと結晶構造が同じ水酸化ニッケルに変化しているのではないかと考えられる。なお、水酸化ニッケルが水酸化カドミウムの析出核となることは既知の事実である。
【0012】
係る態様においては、前記活物質中へのフィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量は全活物質量の2質量%〜20質量%とすることが好ましい。フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量が1質量%以上であれば活物質の利用率が向上するが、大電流放電特性はフィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量が2質量%以上で向上する。したがって、好ましいフィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量は全活物質量の2質量%以上である。
【0013】
また、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量が全活物質量の20%以上でも比較例の電池に比べて利用率及び大電流放電特性が大幅に向上しているが、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加割合が多いとその分だけカドミウム活物質量が減少して負極のエネルギー密度が低下していくため、ニッケル粉末をあまり多量に添加することは好ましくない。よって、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量は全活物質量の20質量%以下が妥当である。
【0014】
以下、本発明の具体例を実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。
【実施例】
まず、各実施例及び比較例に共通するフィラメント状構造を持つニッケル粉末の製造方法及び各カドミウム負極の製造方法について説明する。
[ニッケル粉末]
ニッケル粉末としては、下記表1に示した特性を持つ2種類のニッケル粉末を使用した。
【表1】
【0015】
このうち、フィラメント状構造を持つニッケル粉末におけるフィッシャー粒径は、フィラメントの太さと考えられる。よって、上記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末のフィラメントの太さは、球状のニッケル粉末の粒径と同等である。また、フィラメント状構造を持つ粉末のかさ密度は3次元的に伸びているフィラメントの長さの和と相関があるが、上記フィラメント状構造を持つニッケル粉末は、かさ密度が低いことから、3次元的に伸びたフィラメント構造であることが分かる。
【0016】
[フィラメント状構造ニッケル粉末の製法]
フィラメント状のニッケル粉末は、カーボニル法の製造条件を調製することにより、ニッケルカーボニルからフィラメント状のニッケル粉末を得ることができる。
Ni(CO)4[気体] → Ni[フィラメント状]+4CO
【0017】
[負極の作製方法]
(実施例1)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末1質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルメッキした鉄で作られたパンチングメタルからなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板1)を作製した。
【0018】
(実施例2)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末2質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板2)を作製した。
【0019】
(実施例3)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末5質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板3)を作製した。
【0020】
(実施例4)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末10質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板4)を作製した。
【0021】
(実施例5)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び前記表1に示したフィラメント状構造を持つニッケル粉末20質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板5)を作製した。
【0022】
(比較例1)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板6)を作製した。
【0023】
(比較例2)
酸化カドミウム90質量部と金属カドミウム10質量部を活物質とし、これにナイロン繊維1質量部、水和防止剤としてリン酸水素ナトリウム1質量部、2.5%PVA(ポリビニルアルコール)水溶液20質量部(乾燥PVA換算:0.5質量部)、及び上記表1に示した球状のニッケル粉末5質量部を加えて混合し、活物質ペーストを調製した。次に、前記活物質ペーストをニッケルパンチングメタルよりなる導電性芯体に塗布し、ペーストを乾燥させた後、所定寸法に切断してカドミウム負極(極板7)を作製した。
【0024】
[利用率の測定]
上記実施例1〜5、比較例1及び2で作製した負極板1〜7を用い、対極としてニッケル極を用い、20質量%の水酸化カリウム溶液中で以下の条件で充放電を行い、以下の計算式に基いて利用率の測定を行った。
充放電条件:
充電条件:負極理論容量(1It)に対して0.3Itで5時間充電
放電条件:0.3ItでNi対極に対して1.5Vとなるまで放電。
利用率(%)=((放電電流(mA)×時間(h))/理論容量(mAh))×100
得られた結果を表2に示した。
【0025】
【表2】
【0026】
表2より、極板1〜5(実施例1〜5)の利用率は、極板6及び7(比較例1及び2)の利用率に比べて利用率が高く、フィラメント状構造を持つニッケル粉末を1%以上添加すると利用率が向上することが分かる。また、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の含有量が全活物質含有量の20質量%でも比較例電池に比べて利用率は大幅に向上しているが、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の割合が多いとその分だけカドミウム活物質量が減少して負極のエネルギー密度が低下していくため、フィラメント状構造を持つニッケル粉末を多量に添加することは好ましくない。よって、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量は全活物質の20質量%以下が妥当であると考えられる。
【0027】
[大電流放電特性の測定]
次に、上記実施例1〜5、比較例1及び2で作製した負極板1〜7及び公知のニッケル正極板及び水酸化カリウム電解液とを組み合わせて公称容量1500mAhのニッケルカドミウム電池1〜7を作製し、以下の条件で充放電試験を行い、下式にて大電流放電特性を算出した。
大電流放電特性 = 条件2の放電容量/条件1の放電容量
(注:「E.V.」は放電終了時の電圧を表す。)
結果をまとめて表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】
表3より、電池1(実施例1)は電池6、7(比較例1、2)に比べて大電流特性は向上していないが、電池2〜5(実施例2〜5)は電池6、7に比べて大電流特性の向上が見られる。よって、大電流特性の向上にはフィラメント状構造を持つニッケル粉末が2%以上であることが望ましい。また、電池5(実施例5)は電池6、7(比較例1、2)に比べて大電流特性は向上しているが、最も良好な結果が得られた電池4(実施例4)よりも効果が劣っている。従って、フィラメント状構造を持つニッケル粉末の含有量は、前記活物質利用率のところで述べたのと同様の理由で、全活物質量の20質量%以下が妥当であると考えられる。
【0030】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、フィラメント状構造を持つニッケル粉末を2%〜20%添加することにより、利用率及び大電流特性に優れたアルカリ蓄電池用ペースト式負極を得ることができる。
Claims (2)
- 主活物質が酸化カドミウム又は水酸化カドミウム粉末からなるペーストを導電芯体に塗布したアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極であって、該ペースト中にフィラメント状構造を持つニッケル粉末を含有していることを特徴とするアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極。
- 前記フィラメント状構造を持つニッケル粉末の添加量は、全活物質量の2質量%〜20質量%であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003177175A JP2005011771A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | アルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003177175A JP2005011771A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | アルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極 |
Publications (1)
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JP2005011771A true JP2005011771A (ja) | 2005-01-13 |
Family
ID=34099838
Family Applications (1)
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JP2003177175A Pending JP2005011771A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | アルカリ蓄電池用ペースト式カドミウム負極 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005011771A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016525263A (ja) * | 2013-06-24 | 2016-08-22 | ジェナックス インコーポレイテッド | 二次電池用集電体及びこれを用いた電極 |
-
2003
- 2003-06-20 JP JP2003177175A patent/JP2005011771A/ja active Pending
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JP2016525263A (ja) * | 2013-06-24 | 2016-08-22 | ジェナックス インコーポレイテッド | 二次電池用集電体及びこれを用いた電極 |
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