JP2005011585A - 陰極線管 - Google Patents
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Abstract
【課題】高コントラスト(高輝度)かつ高解像度の陰極線管を提供することを目的とする。
【解決手段】電子銃構体の電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードKと、カソードKの蛍光体スクリーン側に配置された制御電極G1と、を備えている。カソードKにおいて制御電極G1と対向するカソード面22は、その中央部22Cが窪んだ凹面形状であり、カソード面22から放出された電子ビームが管軸Oと交差するクロスオーバーを形成するとともに、カソード面22の中央部22Cから放出された電子ビームのクロスオーバー位置と、カソード面22の離軸部22Pから放出された電子ビームのクロスオーバー位置とが異なることを特徴とする。
【選択図】 図3
【解決手段】電子銃構体の電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードKと、カソードKの蛍光体スクリーン側に配置された制御電極G1と、を備えている。カソードKにおいて制御電極G1と対向するカソード面22は、その中央部22Cが窪んだ凹面形状であり、カソード面22から放出された電子ビームが管軸Oと交差するクロスオーバーを形成するとともに、カソード面22の中央部22Cから放出された電子ビームのクロスオーバー位置と、カソード面22の離軸部22Pから放出された電子ビームのクロスオーバー位置とが異なることを特徴とする。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、少なくとも1つ以上の電子ビームを放出する電子銃構体を備えた陰極線管に係り、特に、その電子ビームのフォーカス特性とドライブ特性を向上させて、高輝度で画面全域にわたり高解像度が得られる陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にカラー陰極線管は、電子銃構体から放出される3電子ビームを偏向装置の発生する水平偏向磁界及び垂直偏向磁界により偏向し、この偏向された電子ビームにより、シャドウマスクを介して、3色蛍光体層からなる蛍光体スクリーン上を水平及び垂直走査することによりカラー画像を表示する構造に形成されている。このような陰極線管において、特に電子銃構体を同一水平面上を通るセンタービーム及び一対のサイドビームからなる一列配置の3電子ビームを放出するインライン型電子銃とし、一方、偏向ヨークの発生する水平偏向磁界をピンクッション形、垂直偏向磁界をバレル形として、一列配置の3電子ビームを自己集中するセルフコンバーゼンス方式インライン型カラー陰極線管が、現在、陰極線管の主流となっている。
【0003】
図8に従来のカラー陰極線管に用いられるインライン型電子銃構体の一例を示す。この電子銃構体は、第1グリッドG1側に電子放射物質が形成されたカソードK、第1グリッドG1、第2グリッドG2、第3グリッドG3及び第4グリッドG4により構成され、カソードK〜第2グリッドG2により形成される3極部(電子ビーム発生部)により電子ビームを生成し、第3グリッドG3と第4グリッドG4とにより形成される主レンズによりその電子ビームを加速・集束する構造となっている。
【0004】
この電子銃構体においては、カソードKに映像信号に応じて変化する電圧(ドライブ電圧)が印加され、カソードKから放出される電子ビーム量を変化させることで蛍光体スクリーンの発光量を制御して、所望の画像を表示する仕組みとなっている。
【0005】
図9の(a)及び(b)は、電子ビーム量を制御する原理について説明するための図である。すなわち、図9の(a)にはカットオフ状態における電子ビーム発生部の等電位線図を示し、同図(b)にはドライブ電圧を30V印加した状態における電子ビーム発生部の等電位線図を示している。なお、第1グリッドG1は0Vに設定され、カットオフ時のカソード印加電圧は100Vに設定されている。
【0006】
この図より、第1グリッドG1の電子ビーム通過孔よりカソードKへ電界が浸透しており、カットオフ状態では、この浸透電界とカソード電圧とがほぼ同じ電位となり電子が放出されないということがわかる。一方、ドライブ電圧が印加されることにより、このバランスが崩れ、カソード中心部を最大とした正の電界が電子放出領域に発生し、この領域から電子が放出されることとなる。そして、ドライブ電圧が大きければ大きい程、電子放出領域及び電界強度は大きくなる。すなわち、このドライブ電圧の大きさを変化させることによりカソードから放出される電子ビーム量を制御している。
【0007】
しかしながら、電子銃構体は、電子ビーム量をこのような仕組みにより制御しているため、以下に説明する2つの潜在的問題を有している。まず1つ目は、ドライブ電圧の大きさにより電子放出領域が変化することに起因する問題である。すなわち、図10に示したように、電子放出領域から出射した電子ビームは、管軸と交差するクロスオーバーを形成するが、蛍光体スクリーンに形成されるビームスポットは、その最小錯乱円を物点とした像点であるため、電子放出領域が大きくなればその最小錯乱円(物点径)も大きくなり、したがって、ビームスポット径も大きくなり、逆に物点径が小さくなればビームスポット径も小さくなる。したがって、ドライブ電圧が小さい場合すなわち電子ビーム量(カソード電流量)が小さい場合には、ビームスポット径が小さくなりモアレの発生という問題が生ずる。また、電子ビーム量(カソード電流量)が大きい場合には、ビームスポット径が大きくなり解像度の劣化という問題が生じる。
【0008】
次に2つ目としては、浸透電界はカソード中心部が最大となるため、カソードから放出される電流は図11に示すような密度分布となることに起因する問題である。すなわち、カソードから放出される全電子ビーム量(カソード電流量)は、面積×電流密度の積分で表わされるのだが、面積が大きい電子放出領域端部の電流密度が小さいため、カソードから十分な電子を取り出されないということになる。これを解決する為にはドライブ電圧を大きくすればよいが、陰極線管は一般に高い周数数で使用されるため、印加できるドライブ電圧には制限がある。すなわち、低いドライブ電圧でより大きなカソード電流を得られる陰極線管が望まれており、この要望は益々高まっている。
【0009】
すなわち、上述したように、従来の陰極線管は、潜在的に以下の2つの問題を有している。1つ目は、ドライブ電圧の大きさによりビームスポット径が変化し、低電流域でのモアレの発生、高電流域での解像度の劣化という問題である。2つ目は、カソード電流量に大きく影響する電子放出領域端部の電界強度が小さいため、カソードが効率的に使用されておらず、カソード電流量を大きくすることができていないという問題である。
【0010】
これらの問題を解決する手段として次のような電子銃構体の構造が提案されている。この電子銃構体は、前述した電子銃構体とはカソードKの構造が異なり、図12に示すように、カソードの前面が第1グリッドG1に対して窪んだ球面形状をなしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
このように構成すると、低いドライブ電圧で大きなカソード電流(電子ビーム)を得られ、且つ、カソード電流の大きさによる電子ビームスポット径の変動を小さくすることができるが、その作用について以下で詳述する。
【0012】
まず、カソードKが、第1グリッドG1に対して窪んだ球面形状をなしているため、第1グリッドG1の電子ビーム通過孔から浸透してくる浸透電界がほとんどなくなる。したがって、カソードにドライブ電圧を印加すると、図13に示すように、ドライブ電圧の大きさに無関係にカソードKの全面から電子が放出され、さらにはカソードが球面形状をなしているため、電子ビームも理論上一点でクロスオーバーを形成することとなる。このため、従来生じていた電子放出領域変化に起因するモアレの発生や解像度の劣化という問題が解決される。
【0013】
さらに、カソード電流密度分布は、中心部に比べ端部の方が電流密度がやや高い分布となる。したがって、従来の電子銃構体とは異なり、カソードKから放出されるカソード電流を大きくすることができる。
【0014】
しかしながら、このような電子銃構体によれば、カソードが球面形状をなしているため、電子ビームも一点でクロスオーバーを形成するが、実際にこれが成立するのはカソード電流が小さい時だけである。なぜならば、実際にはある一定以上の電流値になると空間電荷による反発効果を無視できなくなるからであり、特に高輝度(高電流)領域になると、この影響はますます大きくなるため、高輝度時の物点径をあまり改良することはできない。さらには、主レンズ部と蛍光体スクリーンとの間に受ける同様な空間電荷反発効果もあり、高電流領域においてはこの影響による電子ビーム径の劣化が著しく大きい。これを解決するために電子ビーム発生部から放出される電子ビームの発散角を大きくする方法があるが、この場合、主レンズ部の球面収差の悪影響を受けることとなってしまう。
【0015】
すなわち、このような電子銃構体によれば、主レンズ部から蛍光体スクリーンに至るまでの間及びクロスオーバー部で受ける空間電荷反発効果を考慮すると、高輝度領域においてはほとんど解像度を改良することができないどころか、寧ろ解像度が劣化する場合すらある。
【0016】
【特許文献1】
特開昭54−123866号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、通常の陰極線管は潜在的に以下の2つの問題を有している。1つ目は、ドライブ電圧の大きさによりビームスポット径が変化し、低電流域でのモアレの発生、高電流域での解像度の劣化という問題である。2つ目は、カソード電流量に大きく影響する電子放出領域端部の電界強度が小さいため、カソードが効率的に使用されず、カソード電流量を大きくすることができていないという問題である。
【0018】
これらの問題を解決する電子銃構体として、カソードを第1グリッドに対して窪んだ球面形状とすることが提案されている。しかしながら、単にこのような構造としただけでは、低電流域での電子ビームは一点でクロスオーバーを形成するが、高電流域では空間電荷による反発効果を無視できなくなり、高輝度時の物点径をあまり改良することはできず、さらには、主レンズ部と蛍光体スクリーンとの間の空間電荷反発効果や主レンズの球面収差も改良できないため、高輝度領域においてはほとんど解像度を改良することができないどころか、寧ろ解像度が劣化する場合すらある。
【0019】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、高コントラスト(高輝度)で高解像度の陰極線管を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
この発明の第1の様態による陰極線管は、
電子ビームを発生する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から発生した電子ビームを蛍光体スクリーン上にフォーカスする主レンズ部と、を有する電子銃構体を備えた陰極線管であって、
前記電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードと、前記カソードの前記蛍光体スクリーン側に配置された制御電極と、を備え、
前記カソードにおいて前記制御電極と対向するカソード面は、その中央部が窪んだ凹面形状であり、
前記カソード面から放出された電子ビームが管軸と交差するクロスオーバーを形成するとともに、前記カソード面の中央部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置と、前記カソード面の離軸部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置とが異なることを特徴とする。
【0021】
この発明の第2の様態による陰極線管は、
電子ビームを発生する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から発生した電子ビームを蛍光体スクリーン上にフォーカスする主レンズ部と、を有する電子銃構体を備えた陰極線管であって、
前記電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードと、前記カソードの前記蛍光体スクリーン側に配置された制御電極と、を備え、
前記カソードにおいて前記制御電極と対向するカソード面は、前記カソード面から放出された電子ビームが管軸と交差するクロスオーバーを形成するよう、その中央部が窪んだ凹面形状であり、
前記カソード面において、その中央部よりも離軸部の曲率が小さいことを特徴とする。
【0022】
この発明の第3の様態による陰極線管は、
電子ビームを発生する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から発生した電子ビームを蛍光体スクリーン上にフォーカスする主レンズ部と、を有する電子銃構体を備えた陰極線管であって、
前記電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードと、前記カソードの前記蛍光体スクリーン側に配置された制御電極と、を備え、
前記カソードにおいて前記制御電極と対向するカソード面は、その中央部が窪んだ非球面の凹面形状であり、
前記カソード面から放出された電子ビームが管軸と交差するクロスオーバーを形成するとともに、前記カソード面の中央部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置が、前記カソード面の離軸部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置より前記カソード側に位置することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態に係る陰極線管について図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、陰極線管装置、すなわちセルフコンバージェンス方式のインライン型カラー陰極線管装置は、真空外囲器9を備えている。この真空外囲器9は、パネル1及びこのパネル1と一体に接合されたファンネル2を有している。蛍光体スクリーン3は、パネル1の内面に配置されている。この蛍光体スクリーン3は、青、緑、赤にそれぞれ発光するドット状またはストライプ状の3色蛍光体層によって構成されている。シャドウマスク4は、蛍光体スクリーン3に対向して配置されている。このシャドウマスク4は、その面内に多数のアパーチャを有している。
【0025】
インライン型電子銃構体7は、ファンネル2の径小部に相当する円筒状のネック5の内部に配置されている。この電子銃構体7は、同一水平面上を通るセンタービーム6Gおよび一対のサイドビーム6B,6Rからなる一列配置の3電子ビームを放出する。
【0026】
偏向ヨーク8は、ファンネル2の径大部からネック5にわたる外面に装着されている。この偏向ヨーク8は、電子銃構体7から放出された3電子ビーム6B,6G,6Rを水平方向(X)及び垂直方向(Y)に偏向する非斉一な偏向磁界を発生する。この非斉一磁界は、ピンクッション型の水平偏向磁界及びバレル型の垂直偏向磁界によって形成される。
【0027】
電子銃構体7から放出された3電子ビーム6B、6G、6Rは、蛍光体スクリーン3に向けてセルフコンバージェンスするとともに、蛍光体スクリーン3における対応する色の蛍光体層上にフォーカスされる。また、これらの3電子ビーム6B、6G、6Rは、偏向ヨーク8によって発生された非斉一磁界により偏向され、シャドウマスク4を介して蛍光体スクリーン3を水平方向X及び垂直方向Yに走査する。これにより、カラー画像が表示される。
【0028】
図2に示すように、電子銃構体7は、水平方向Xに一列に配置された3個のカソードK(R、G、B)、これらカソードK(R、G、B)を個別に加熱する3個のヒータ、及び4個の電極を有している。4個の電極、すなわち第1グリッド(制御電極)G1、第2グリッドG2、第3グリッド(フォーカス電極)G3、及び、第4グリッド(アノード電極)G4は、カソードK(R、G、B)から蛍光体スクリーンに向かって管軸方向Zに沿って順次配置されている。これらカソードK(R、G、B)、及び4個の電極は、一対の絶縁支持体によって一体に支持・固定されている。
【0029】
4個の各グリッドは、それぞれ水平方向Xに並列した所定の大きさの3個の電子ビーム通過孔を有している。すなわち、第1グリッドG1及び第2グリッドG2は、それぞれ薄い板状電極によって構成されている。これらの板状電極は、その板面に、3個のカソードK(R、G、B)に対応して水平方向Xに一列に配列された3個の電子ビーム通過孔を有している。これら3個の電子ビーム通過孔は、径小の円形状に形成されている。
【0030】
第3グリッドG3、及び、第4グリッドG4は、一体構造の筒状電極によって構成されている。これらの筒状電極は、複数のカップ状電極の開放端を突き合わせた構造を有している。すなわち、第3グリッドG3は、第2グリッドG2との対向面に、3個のカソードK(R、G、B)に対応して水平方向Xに一列に配列された3個の電子ビーム通過孔を有している。これら3個の電子ビーム通過孔は、第2グリッドG2に形成された電子ビーム通過孔よりやや径大な円形状に形成されている。また、第3グリッドG3は、第4グリッドG4との対向面に、3個のカソードK(R、G、B)に対応して水平方向Xに一列に配列された3個の電子ビーム通過孔を有している。これら3個の電子ビーム通過孔は、径大な円形状に形成されている。
【0031】
第4グリッドG4は、第3グリッドG3との対向面及び蛍光体スクリーン側の対向面に、それぞれ3個のカソードK(R、G、B)に対応して水平方向Xに一列に配列された3個の電子ビーム通過孔を有している。これら3個の電子ビーム通過孔は、径大な円形状に形成されている。
【0032】
カソードK(R、G、B)は、図3に示すように、円筒状の支持体20の先端部に、電子ビームを放出する電子ビーム放出部21を備えている。この電子ビーム放出部21は、第1グリッドG1と対向して、電子ビームを放出するカソード面22を有している。電子ビーム放出部21は、少なくともその表面が電子放射物質によって形成されている。また、カソード面22は、第1グリッドG1に対してその中央部22Cが窪んだ凹面形状をなしている。
【0033】
このカソード面22は、その中央部22Cと離軸部22Pとで曲率が異なる非球面形状である。ここで、中央部22Cとは、第1グリッドG1に形成された円形電子ビーム通過孔G1Hの中心軸Oを中心とした円形領域である。また、離軸部22Pとは、中心軸Oから離れた中央部22Cの周辺のドーナツ状領域に相当する。なお、中心軸Oは、管軸Zと平行であり、センタービーム6Gを放出するカソードKについては、中心軸Oと管軸Zとが実質的に一致する。
【0034】
すなわち、カソード面22は、複数の曲率を組み合わせて形成された非球面形状であり、中央部22Cの曲率よりも離軸部22Pの曲率が小さく形成されている。例えば、中央部22Cの曲率をR1とし、離軸部22Pの曲率をR2とすると、カソード面22は、R1>R2の関係になるよう形成されている。
【0035】
なお、ここの説明では、便宜上、カソード面22を2つの領域に分類したが、中心軸Oから周辺部に向かうにしたがって曲率が徐々に小さくなるように形成されることで、カソード面22を滑らかな非球面に形成することができ、より望ましいことは言うまでもない。このような場合、カソード面22において、中心軸Oに近い近軸部分での曲率R1と中心軸Oから離れた離軸部分での曲率R2とを比較した場合に、R1>R2の関係になるよう形成されていればよい。
【0036】
上述した構成の電子銃構体7において、動作時には、カソードK(R、G、B)に、ほぼ0乃至10V程度の直流電圧に映像信号が重畳された変調信号(ドライブ電圧)が印加される。第1グリッドG1は、接地されている。第2グリッドG2には、約300乃至1000V程度の直流電圧Ecが印加される。第3グリッドG3には、約6乃至10kV程度の一定のフォーカス電圧Vfが印加される。第4グリッドG4には、約20乃至35kV程度のアノード電圧Ebが印加される。
【0037】
上述した構成の電子銃構体7は、各グリッドに上述したような電圧を印加することにより、電子ビーム発生部、プリフォーカスレンズ部、及び、主レンズ部を形成する。すなわち、電子ビーム発生部は、カソードK、第1グリッドG1、及び第2グリッドG2によって形成される。この電子ビーム発生部は、電子ビームを発生し、クロスオーバを形成する。
【0038】
プリフォーカスレンズ部は、第2グリッドG2及び第3グリッドG3によって形成される。このプリフォーカスレンズ部は、電子ビーム発生部から発生された電子ビームを加速するとともにプリフォーカスする。主レンズ部は、第3グリッドG3及び第4グリッドG4によって形成される。この主レンズ部は、プリフォーカスレンズ部によりプリフォーカスされた電子ビームを加速するとともに最終的に蛍光体スクリーン上にフォーカスする。
【0039】
このように構成された電子銃構体7によれば、低いドライブ電圧で大きなカソード電流(電子ビーム量)を得ることができ、しかも、カソード電流の変動による蛍光体スクリーン上でのビームスポット径の変動を小さくすることができる。特に、高輝度時(高カソード電流時)でのビームスポット径を小さくすることができるが、その作用について以下で詳述する。
【0040】
まず、カソードKが、第1グリッドG1に対して窪んだ形状をなしたカソード面22を有している。このため、第1グリッドG1の電子ビーム通過孔G1Hからカソード面22に浸透してくる浸透電界がほとんどなくなる。したがって、カソードKにドライブ電圧を印加すると、ドライブ電圧の大きさに無関係にカソード面22の全面から電子ビームが放出されることとなる。
【0041】
これにより、電子銃構体7のカソード電流密度分布は、図4に示すように、中心部(中心軸O付近)に比べて離軸部の方が電流密度がやや高い分布となる。カソード電流量は、(電子放出に寄与するカソード面の面積)×(電流密度)の積分で表わされる。このため、カソード面22から放出されるカソード電流を大きくすることができるため、低いドライブ電圧であっても大きなカソード電流(電子ビーム量)を得ることができる。また、カソード電流の大きさが変動したとしても、蛍光体スクリーン上でのビームスポット径の変動を小さく抑制することができる。
【0042】
次に、蛍光体スクリーン3上に到達した電子ビームによって形成されるビームスポット径について説明する。カソードKにおいて、カソード面22は、その中央部22Cが窪んだ凹面形状でありながら、カソード面22から放出された電子ビームが中心軸O(または管軸Z)と交差するクロスオーバを形成するが、このクロスオーバが一点に集中しなくなる。
【0043】
つまり、図5に示すように、カソード面22の中央部22Cから放出された電子ビームのクロスオーバ位置と、カソード面22の離軸部22Pから放出された電子ビームのクロスオーバ位置とが異なる。このため、クロスオーバーが一点に集中していたことによる空間電荷反発効果が軽減され、主レンズ部に対する物点径を小さくすることができる。
【0044】
このようなクロスオーバ位置の差は、カソード面22が非球面形状となっているためである。この実施の形態によれば、カソード面22において、その中央部22Cの曲率よりも離軸部22Pの曲率が小さく形成されているため、中央部22Cから放出された電子ビームのクロスオーバー位置が離軸部22Pから放出された電子ビームのクロスオーバー位置よりもカソードK側に位置している。
【0045】
したがって、主レンズ部からみた物点距離は、中心軸Oから離軸している電子ビームほど小さくなるため、主レンズ部から受ける球面収差を打ち消すことができる。このため、電子ビームの発散角をある程度大きくしても主レンズ部においてほとんど球面収差を受けることがない。
【0046】
このように、物点径及び球面収差の影響を小さくすることができ、さらには、電子ビームの発散角を大きくすることができるため、主レンズ部と蛍光体スクリーン3との間で受ける空間電荷反発効果も小さくできる。したがって、高輝度時でのビームスポット径も劇的に小さくすることが可能となる。
【0047】
上述したように、この実施の形態に係る陰極線管によれば、低いドライブ電圧で大きなカソード電流を得ることができるため、高い周波数で使用される陰極線管の使用環境での制限に適応可能である。また、カソード電流の変動によるビームスポット径の変動を抑制できるため、低カソード電流時においてビームスポット径が過剰に小さく形成されることに伴うモアレの発生を防止でき、しかも、高カソード電流時においてビームスポット径が過剰に大きく形成されることに伴う解像度の劣化を防止することができる。さらに、カソード面の中央部から放出された電子ビームと離軸部から放出された電子ビームとのクロスオーバ位置が異なり、一点で集中することがないため、空間電荷反発効果が軽減され、主レンズ部に対する物点径を小さくすることができる。またさらに、カソード面の中央部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置が離軸部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置よりもカソード側に位置しているため、主レンズ部からみた物点距離は、中心軸から離軸している電子ビームほど小さくなり、主レンズ部から受ける球面収差を打ち消すことができる。したがって、物点径及び球面収差の影響を小さくすることができ、さらには、電子ビームの発散角を大きくすることができるため、高輝度時でのビームスポット径も劇的に小さくすることが可能となり、高解像度の陰極線管を提供することができる。
【0048】
次に、他の実施の形態について説明する。
【0049】
図6に示すように、カソードKは、カソード本体30と、補助体40とを備えて構成されている。すなわち、カソード本体30は、円筒状の支持体20の先端部に、電子ビームを放出する電子ビーム放出部21を備えている。この電子ビーム放出部21は、第1グリッドG1と対向して、電子ビームを放出するカソード面22を有している。電子ビーム放出部21は、少なくともその表面が電子放射物質によって形成されている。また、カソード面22は、第1グリッドG1に対してその中央部22Cが窪んだ凹面形状をなしている。
【0050】
このカソード面22は、その中央部22Cと離軸部22Pとで曲率が異なる非球面形状である。すなわち、カソード面22は、複数の曲率を組み合わせて形成された非球面形状であり、中央部22Cの曲率よりも離軸部22Pの曲率が小さく形成されている。
【0051】
また、補助体40は、カソード本体30のカソード面22の周辺、すなわちカソード本体30より離軸側に配置されている。この補助体40は、カソード面22の離軸部22Pから放出された電子ビームの軌道を制御する。すなわち、この補助体40は、少なくとも第1グリッドG1と対向する表面41が電子ビームを発生しない(あるいはカソード面より電子ビームを発生しにくい)物質によって形成されている。また、補助体表面41は、例えば第1グリッドG1に対して窪んだ凹面形状をなしている。また、補助体40は、カソード面22の周縁部22Eの全周にわたってドーナツ状に配置されることが望ましい。
【0052】
このような構成のカソードKによれば、カソード本体30のカソード面22における周縁部22Eへの電界集中による電界の乱れを近接配置された補助体40によって防ぐことができる。このため、カソード面22の周縁部22Eから放出された電子ビームを適切な軌道で中心軸O上に集束する(集中する)ことが可能となる。
【0053】
また、カソードKは、カソード本体30と補助体40とを離間する溝部50を有している。このような構造としたことにより、含浸型カソードの場合に発生するカソード本体30から補助体40へのバリウムなどの金属物質のマイグレーションを防ぐことができる。これにより、不所望な電子ビームの発生を防ぐことが可能となる。すなわち、この実施の形態で説明したカソードによれば、不所望な電子ビームの発生を防ぎ、電子ビームを適切な軌道で集束することができるため、さらに高品質な陰極線管を提供出来る。
【0054】
なお、上述した各実施の形態では、偏向収差のダイナミック補償に関して論じていないが、さらに解像度を向上するために、電子銃構体が水平方向Hと垂直方向Yとで電子ビームのフォーカス作用が異なる少なくとも1つの4極子レンズを備えても良い。
【0055】
すなわち、上述した実施の形態では、主レンズ部が2つのグリッドすなわち第3グリッドG3及び第4グリッドG4にそれぞれ印加された固定電圧よって形成された電子銃構体7について説明したが、例えば、主レンズ部の内部に4極子レンズを形成しても良い。
【0056】
例えば、図7に示すように、主レンズ部は、第31グリッドG31、第32グリッドG32、及び第4グリッドG4によって構成される。第31グリッドG31には、所定の直流電圧Vfが印加される。第32グリッドG32には、所定の直流電圧Vfにパラボラ状に変化する交流電圧成分Vdを重畳したダイナミックフォーカス電圧(Vf+Vd)が印加される。また、第4グリッドG4には、アノード電圧Ebが印加される。さらに、第31グリッドG31及び第32グリッドG32間には、4極子レンズが形成される。このダイナミックフォーカス電圧(Vf+Vd)は、鋸歯状の偏向電流に同期し、かつ、電子ビームの偏向量の変化に伴ってパラボラ状に変化する。このような4極子レンズにより、偏向収差をダイナミックに補償することができ、蛍光体スクリーン全域に亘って歪みの少ないビームスポットを形成することができる。
【0057】
また、上述した各実施の形態では、カソードにおけるカソード面の曲率の軸対称性(水平方向H及び垂直方向Yに対する対称性)に関して論じていないが、例えばいずれか一方の軸について対称な曲率に形成したり、両方の軸について対称な曲率に形成したり、さらには水平方向Hと垂直方向Yとで異なる曲率として形成しても良い。つまり、カソード面の曲率は、陰極線管のサイズや種類、主レンズ系の形態などに合わせて、カソードの各方向の曲率を適宜自由に選択することが可能である。
【0058】
さらに、上述した各実施の形態では、インライン型のカラー陰極線管を例に説明したが、上述した電子銃構体は、3電子ビームに対応して3個独立の構成であるから、この発明は、デルタ型電子銃構体を備えるカラー陰極線管にも適用可能であり、また白黒陰極線管など単電子ビームを放出する他の陰極線管にも適用可能である。
【0059】
以上説明したように、この実施の形態の陰極線管によれば、電子銃構体は、少なくとも電子ビームを放出するカソードと、カソードの蛍光体スクリーン側に配置された制御電極すなわち第1グリッドとを備え、カソードにおいて制御電極と対向するカソード面は、その中央部が窪んだ凹面形状であり、カソード面の中央部よりも離軸部の曲率が小さく形成された構造を有している。
【0060】
カソード面が第1グリッドに対して窪んだ形状をなしているため、第1グリッドの電子ビーム通過孔から浸透してくる浸透電界がほとんどなくなる。このため、カソードにドライブ電圧を印加した場合、ドライブ電圧の大きさに無関係にカソード面の全面から電子ビームが放出される。これにより、カソード電流密度分布は、中央部に比べ離軸部の方が電流密度がやや高い分布となる。カソード電流量は、面積×電流密度の積分で表わされるため、カソードから放出されるカソード電流を大きくすることができる。このため、低いドライブ電圧で大きなカソード電流を得ることができる。
【0061】
また、カソード面が非球面形状に形成されているため、カソード面から放出された電子ビームのクロスオーバーが一点に集中しなくなり、従来生じていた空間電荷反発効果が著しく軽減され、物点径を小さくすることができる。
【0062】
さらに、カソード面の中央部よりも離軸部の方がその曲率が小さく形成されているため、離軸部から放出された電子ビームより中央部から放出された電子ビームがカソード側でクロスオーバーを形成する。このため、主レンズ系からみた物点距離は、より離軸側の電子ビームほど小さくなるため、主レンズ系の球面収差を打ち消すこととなり、ある程度発散角を大きくしてもほとんど球面収差を受けることがない。したがって、物点径及び球面収差を小さくでき、さらには、発散角を大きくできることにより、主レンズ部と蛍光体スクリーンとの間で受ける空間電荷反発効果も小さくでき、高輝度時でのビームスポット径も劇的に小さくすることが可能となる。この結果、低いドライブ電圧で大きなカソード電流を得ることができ、且つ、カソード電流の大きさによるビームスポット径の変動を小さくできるため、モアレの発生がなく、かつ高コントラスト(高輝度)で高解像度を得ることができる。
【0063】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、高コントラスト(高輝度)かつ高解像度の陰極線管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係るカラー陰極線管装置の構造を概略的に示す水平断面図である。
【図2】図2は、図1に示した陰極線管装置に適用可能な電子銃構体の構造を概略的に示す水平断面図である。
【図3】図3は、図2に示した電子銃構体に適用可能なカソードの構造を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、カソードの電流密度分布の一例を示す図である。
【図5】図5は、図3に示したカソードから放出される電子ビーム軌道を示す図である。
【図6】図6は、図2に示した電子銃構体に適用可能な他のカソードの構造を概略的に示す断面図である。
【図7】図7は、図1に示した陰極線管装置に適用可能な他の電子銃構体の構造を概略的に示す水平断面図である。
【図8】図8は、従来の電子銃構体の構造を概略的に示す水平断面図である。
【図9】図9は、従来の電子銃構体における電子放出の原理を説明するための図であり、(a)はカットオフ状態の場合を説明するための図であり、(b)はドライブ電圧を印加した場合を説明するための図である。
【図10】図10は、図8に示した電子銃構体によるカソードから放出された電子ビーム軌道を示す図である。
【図11】図11は、従来のカソードの電流密度分布の一例を示す図である。
【図12】図12は、従来のカソードの構造を概略的に示す断面図である。
【図13】図13は、図12に示したカソードから放出された電子ビーム軌道を示す図である。
【符号の説明】
1・・・パネル、2・・・ファンネル、3・・・蛍光体スクリーン、4・・・シャドウマスク、5・・・ネック、6(R、G、B)・・・電子ビーム、7・・・電子銃構体、22・・・カソード面、22C・・・カソード面中央部、22P・・・カソード面離軸部、30・・・カソード本体、40・・・補助体、50・・・溝部、K(R、G、B)・・・カソード、G1・・・第1グリッド(制御電極)、G2・・・第2グリッド、G3・・・第3グリッド、G4・・・第4グリッド
【発明の属する技術分野】
この発明は、少なくとも1つ以上の電子ビームを放出する電子銃構体を備えた陰極線管に係り、特に、その電子ビームのフォーカス特性とドライブ特性を向上させて、高輝度で画面全域にわたり高解像度が得られる陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にカラー陰極線管は、電子銃構体から放出される3電子ビームを偏向装置の発生する水平偏向磁界及び垂直偏向磁界により偏向し、この偏向された電子ビームにより、シャドウマスクを介して、3色蛍光体層からなる蛍光体スクリーン上を水平及び垂直走査することによりカラー画像を表示する構造に形成されている。このような陰極線管において、特に電子銃構体を同一水平面上を通るセンタービーム及び一対のサイドビームからなる一列配置の3電子ビームを放出するインライン型電子銃とし、一方、偏向ヨークの発生する水平偏向磁界をピンクッション形、垂直偏向磁界をバレル形として、一列配置の3電子ビームを自己集中するセルフコンバーゼンス方式インライン型カラー陰極線管が、現在、陰極線管の主流となっている。
【0003】
図8に従来のカラー陰極線管に用いられるインライン型電子銃構体の一例を示す。この電子銃構体は、第1グリッドG1側に電子放射物質が形成されたカソードK、第1グリッドG1、第2グリッドG2、第3グリッドG3及び第4グリッドG4により構成され、カソードK〜第2グリッドG2により形成される3極部(電子ビーム発生部)により電子ビームを生成し、第3グリッドG3と第4グリッドG4とにより形成される主レンズによりその電子ビームを加速・集束する構造となっている。
【0004】
この電子銃構体においては、カソードKに映像信号に応じて変化する電圧(ドライブ電圧)が印加され、カソードKから放出される電子ビーム量を変化させることで蛍光体スクリーンの発光量を制御して、所望の画像を表示する仕組みとなっている。
【0005】
図9の(a)及び(b)は、電子ビーム量を制御する原理について説明するための図である。すなわち、図9の(a)にはカットオフ状態における電子ビーム発生部の等電位線図を示し、同図(b)にはドライブ電圧を30V印加した状態における電子ビーム発生部の等電位線図を示している。なお、第1グリッドG1は0Vに設定され、カットオフ時のカソード印加電圧は100Vに設定されている。
【0006】
この図より、第1グリッドG1の電子ビーム通過孔よりカソードKへ電界が浸透しており、カットオフ状態では、この浸透電界とカソード電圧とがほぼ同じ電位となり電子が放出されないということがわかる。一方、ドライブ電圧が印加されることにより、このバランスが崩れ、カソード中心部を最大とした正の電界が電子放出領域に発生し、この領域から電子が放出されることとなる。そして、ドライブ電圧が大きければ大きい程、電子放出領域及び電界強度は大きくなる。すなわち、このドライブ電圧の大きさを変化させることによりカソードから放出される電子ビーム量を制御している。
【0007】
しかしながら、電子銃構体は、電子ビーム量をこのような仕組みにより制御しているため、以下に説明する2つの潜在的問題を有している。まず1つ目は、ドライブ電圧の大きさにより電子放出領域が変化することに起因する問題である。すなわち、図10に示したように、電子放出領域から出射した電子ビームは、管軸と交差するクロスオーバーを形成するが、蛍光体スクリーンに形成されるビームスポットは、その最小錯乱円を物点とした像点であるため、電子放出領域が大きくなればその最小錯乱円(物点径)も大きくなり、したがって、ビームスポット径も大きくなり、逆に物点径が小さくなればビームスポット径も小さくなる。したがって、ドライブ電圧が小さい場合すなわち電子ビーム量(カソード電流量)が小さい場合には、ビームスポット径が小さくなりモアレの発生という問題が生ずる。また、電子ビーム量(カソード電流量)が大きい場合には、ビームスポット径が大きくなり解像度の劣化という問題が生じる。
【0008】
次に2つ目としては、浸透電界はカソード中心部が最大となるため、カソードから放出される電流は図11に示すような密度分布となることに起因する問題である。すなわち、カソードから放出される全電子ビーム量(カソード電流量)は、面積×電流密度の積分で表わされるのだが、面積が大きい電子放出領域端部の電流密度が小さいため、カソードから十分な電子を取り出されないということになる。これを解決する為にはドライブ電圧を大きくすればよいが、陰極線管は一般に高い周数数で使用されるため、印加できるドライブ電圧には制限がある。すなわち、低いドライブ電圧でより大きなカソード電流を得られる陰極線管が望まれており、この要望は益々高まっている。
【0009】
すなわち、上述したように、従来の陰極線管は、潜在的に以下の2つの問題を有している。1つ目は、ドライブ電圧の大きさによりビームスポット径が変化し、低電流域でのモアレの発生、高電流域での解像度の劣化という問題である。2つ目は、カソード電流量に大きく影響する電子放出領域端部の電界強度が小さいため、カソードが効率的に使用されておらず、カソード電流量を大きくすることができていないという問題である。
【0010】
これらの問題を解決する手段として次のような電子銃構体の構造が提案されている。この電子銃構体は、前述した電子銃構体とはカソードKの構造が異なり、図12に示すように、カソードの前面が第1グリッドG1に対して窪んだ球面形状をなしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
このように構成すると、低いドライブ電圧で大きなカソード電流(電子ビーム)を得られ、且つ、カソード電流の大きさによる電子ビームスポット径の変動を小さくすることができるが、その作用について以下で詳述する。
【0012】
まず、カソードKが、第1グリッドG1に対して窪んだ球面形状をなしているため、第1グリッドG1の電子ビーム通過孔から浸透してくる浸透電界がほとんどなくなる。したがって、カソードにドライブ電圧を印加すると、図13に示すように、ドライブ電圧の大きさに無関係にカソードKの全面から電子が放出され、さらにはカソードが球面形状をなしているため、電子ビームも理論上一点でクロスオーバーを形成することとなる。このため、従来生じていた電子放出領域変化に起因するモアレの発生や解像度の劣化という問題が解決される。
【0013】
さらに、カソード電流密度分布は、中心部に比べ端部の方が電流密度がやや高い分布となる。したがって、従来の電子銃構体とは異なり、カソードKから放出されるカソード電流を大きくすることができる。
【0014】
しかしながら、このような電子銃構体によれば、カソードが球面形状をなしているため、電子ビームも一点でクロスオーバーを形成するが、実際にこれが成立するのはカソード電流が小さい時だけである。なぜならば、実際にはある一定以上の電流値になると空間電荷による反発効果を無視できなくなるからであり、特に高輝度(高電流)領域になると、この影響はますます大きくなるため、高輝度時の物点径をあまり改良することはできない。さらには、主レンズ部と蛍光体スクリーンとの間に受ける同様な空間電荷反発効果もあり、高電流領域においてはこの影響による電子ビーム径の劣化が著しく大きい。これを解決するために電子ビーム発生部から放出される電子ビームの発散角を大きくする方法があるが、この場合、主レンズ部の球面収差の悪影響を受けることとなってしまう。
【0015】
すなわち、このような電子銃構体によれば、主レンズ部から蛍光体スクリーンに至るまでの間及びクロスオーバー部で受ける空間電荷反発効果を考慮すると、高輝度領域においてはほとんど解像度を改良することができないどころか、寧ろ解像度が劣化する場合すらある。
【0016】
【特許文献1】
特開昭54−123866号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、通常の陰極線管は潜在的に以下の2つの問題を有している。1つ目は、ドライブ電圧の大きさによりビームスポット径が変化し、低電流域でのモアレの発生、高電流域での解像度の劣化という問題である。2つ目は、カソード電流量に大きく影響する電子放出領域端部の電界強度が小さいため、カソードが効率的に使用されず、カソード電流量を大きくすることができていないという問題である。
【0018】
これらの問題を解決する電子銃構体として、カソードを第1グリッドに対して窪んだ球面形状とすることが提案されている。しかしながら、単にこのような構造としただけでは、低電流域での電子ビームは一点でクロスオーバーを形成するが、高電流域では空間電荷による反発効果を無視できなくなり、高輝度時の物点径をあまり改良することはできず、さらには、主レンズ部と蛍光体スクリーンとの間の空間電荷反発効果や主レンズの球面収差も改良できないため、高輝度領域においてはほとんど解像度を改良することができないどころか、寧ろ解像度が劣化する場合すらある。
【0019】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、高コントラスト(高輝度)で高解像度の陰極線管を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
この発明の第1の様態による陰極線管は、
電子ビームを発生する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から発生した電子ビームを蛍光体スクリーン上にフォーカスする主レンズ部と、を有する電子銃構体を備えた陰極線管であって、
前記電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードと、前記カソードの前記蛍光体スクリーン側に配置された制御電極と、を備え、
前記カソードにおいて前記制御電極と対向するカソード面は、その中央部が窪んだ凹面形状であり、
前記カソード面から放出された電子ビームが管軸と交差するクロスオーバーを形成するとともに、前記カソード面の中央部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置と、前記カソード面の離軸部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置とが異なることを特徴とする。
【0021】
この発明の第2の様態による陰極線管は、
電子ビームを発生する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から発生した電子ビームを蛍光体スクリーン上にフォーカスする主レンズ部と、を有する電子銃構体を備えた陰極線管であって、
前記電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードと、前記カソードの前記蛍光体スクリーン側に配置された制御電極と、を備え、
前記カソードにおいて前記制御電極と対向するカソード面は、前記カソード面から放出された電子ビームが管軸と交差するクロスオーバーを形成するよう、その中央部が窪んだ凹面形状であり、
前記カソード面において、その中央部よりも離軸部の曲率が小さいことを特徴とする。
【0022】
この発明の第3の様態による陰極線管は、
電子ビームを発生する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から発生した電子ビームを蛍光体スクリーン上にフォーカスする主レンズ部と、を有する電子銃構体を備えた陰極線管であって、
前記電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードと、前記カソードの前記蛍光体スクリーン側に配置された制御電極と、を備え、
前記カソードにおいて前記制御電極と対向するカソード面は、その中央部が窪んだ非球面の凹面形状であり、
前記カソード面から放出された電子ビームが管軸と交差するクロスオーバーを形成するとともに、前記カソード面の中央部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置が、前記カソード面の離軸部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置より前記カソード側に位置することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態に係る陰極線管について図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、陰極線管装置、すなわちセルフコンバージェンス方式のインライン型カラー陰極線管装置は、真空外囲器9を備えている。この真空外囲器9は、パネル1及びこのパネル1と一体に接合されたファンネル2を有している。蛍光体スクリーン3は、パネル1の内面に配置されている。この蛍光体スクリーン3は、青、緑、赤にそれぞれ発光するドット状またはストライプ状の3色蛍光体層によって構成されている。シャドウマスク4は、蛍光体スクリーン3に対向して配置されている。このシャドウマスク4は、その面内に多数のアパーチャを有している。
【0025】
インライン型電子銃構体7は、ファンネル2の径小部に相当する円筒状のネック5の内部に配置されている。この電子銃構体7は、同一水平面上を通るセンタービーム6Gおよび一対のサイドビーム6B,6Rからなる一列配置の3電子ビームを放出する。
【0026】
偏向ヨーク8は、ファンネル2の径大部からネック5にわたる外面に装着されている。この偏向ヨーク8は、電子銃構体7から放出された3電子ビーム6B,6G,6Rを水平方向(X)及び垂直方向(Y)に偏向する非斉一な偏向磁界を発生する。この非斉一磁界は、ピンクッション型の水平偏向磁界及びバレル型の垂直偏向磁界によって形成される。
【0027】
電子銃構体7から放出された3電子ビーム6B、6G、6Rは、蛍光体スクリーン3に向けてセルフコンバージェンスするとともに、蛍光体スクリーン3における対応する色の蛍光体層上にフォーカスされる。また、これらの3電子ビーム6B、6G、6Rは、偏向ヨーク8によって発生された非斉一磁界により偏向され、シャドウマスク4を介して蛍光体スクリーン3を水平方向X及び垂直方向Yに走査する。これにより、カラー画像が表示される。
【0028】
図2に示すように、電子銃構体7は、水平方向Xに一列に配置された3個のカソードK(R、G、B)、これらカソードK(R、G、B)を個別に加熱する3個のヒータ、及び4個の電極を有している。4個の電極、すなわち第1グリッド(制御電極)G1、第2グリッドG2、第3グリッド(フォーカス電極)G3、及び、第4グリッド(アノード電極)G4は、カソードK(R、G、B)から蛍光体スクリーンに向かって管軸方向Zに沿って順次配置されている。これらカソードK(R、G、B)、及び4個の電極は、一対の絶縁支持体によって一体に支持・固定されている。
【0029】
4個の各グリッドは、それぞれ水平方向Xに並列した所定の大きさの3個の電子ビーム通過孔を有している。すなわち、第1グリッドG1及び第2グリッドG2は、それぞれ薄い板状電極によって構成されている。これらの板状電極は、その板面に、3個のカソードK(R、G、B)に対応して水平方向Xに一列に配列された3個の電子ビーム通過孔を有している。これら3個の電子ビーム通過孔は、径小の円形状に形成されている。
【0030】
第3グリッドG3、及び、第4グリッドG4は、一体構造の筒状電極によって構成されている。これらの筒状電極は、複数のカップ状電極の開放端を突き合わせた構造を有している。すなわち、第3グリッドG3は、第2グリッドG2との対向面に、3個のカソードK(R、G、B)に対応して水平方向Xに一列に配列された3個の電子ビーム通過孔を有している。これら3個の電子ビーム通過孔は、第2グリッドG2に形成された電子ビーム通過孔よりやや径大な円形状に形成されている。また、第3グリッドG3は、第4グリッドG4との対向面に、3個のカソードK(R、G、B)に対応して水平方向Xに一列に配列された3個の電子ビーム通過孔を有している。これら3個の電子ビーム通過孔は、径大な円形状に形成されている。
【0031】
第4グリッドG4は、第3グリッドG3との対向面及び蛍光体スクリーン側の対向面に、それぞれ3個のカソードK(R、G、B)に対応して水平方向Xに一列に配列された3個の電子ビーム通過孔を有している。これら3個の電子ビーム通過孔は、径大な円形状に形成されている。
【0032】
カソードK(R、G、B)は、図3に示すように、円筒状の支持体20の先端部に、電子ビームを放出する電子ビーム放出部21を備えている。この電子ビーム放出部21は、第1グリッドG1と対向して、電子ビームを放出するカソード面22を有している。電子ビーム放出部21は、少なくともその表面が電子放射物質によって形成されている。また、カソード面22は、第1グリッドG1に対してその中央部22Cが窪んだ凹面形状をなしている。
【0033】
このカソード面22は、その中央部22Cと離軸部22Pとで曲率が異なる非球面形状である。ここで、中央部22Cとは、第1グリッドG1に形成された円形電子ビーム通過孔G1Hの中心軸Oを中心とした円形領域である。また、離軸部22Pとは、中心軸Oから離れた中央部22Cの周辺のドーナツ状領域に相当する。なお、中心軸Oは、管軸Zと平行であり、センタービーム6Gを放出するカソードKについては、中心軸Oと管軸Zとが実質的に一致する。
【0034】
すなわち、カソード面22は、複数の曲率を組み合わせて形成された非球面形状であり、中央部22Cの曲率よりも離軸部22Pの曲率が小さく形成されている。例えば、中央部22Cの曲率をR1とし、離軸部22Pの曲率をR2とすると、カソード面22は、R1>R2の関係になるよう形成されている。
【0035】
なお、ここの説明では、便宜上、カソード面22を2つの領域に分類したが、中心軸Oから周辺部に向かうにしたがって曲率が徐々に小さくなるように形成されることで、カソード面22を滑らかな非球面に形成することができ、より望ましいことは言うまでもない。このような場合、カソード面22において、中心軸Oに近い近軸部分での曲率R1と中心軸Oから離れた離軸部分での曲率R2とを比較した場合に、R1>R2の関係になるよう形成されていればよい。
【0036】
上述した構成の電子銃構体7において、動作時には、カソードK(R、G、B)に、ほぼ0乃至10V程度の直流電圧に映像信号が重畳された変調信号(ドライブ電圧)が印加される。第1グリッドG1は、接地されている。第2グリッドG2には、約300乃至1000V程度の直流電圧Ecが印加される。第3グリッドG3には、約6乃至10kV程度の一定のフォーカス電圧Vfが印加される。第4グリッドG4には、約20乃至35kV程度のアノード電圧Ebが印加される。
【0037】
上述した構成の電子銃構体7は、各グリッドに上述したような電圧を印加することにより、電子ビーム発生部、プリフォーカスレンズ部、及び、主レンズ部を形成する。すなわち、電子ビーム発生部は、カソードK、第1グリッドG1、及び第2グリッドG2によって形成される。この電子ビーム発生部は、電子ビームを発生し、クロスオーバを形成する。
【0038】
プリフォーカスレンズ部は、第2グリッドG2及び第3グリッドG3によって形成される。このプリフォーカスレンズ部は、電子ビーム発生部から発生された電子ビームを加速するとともにプリフォーカスする。主レンズ部は、第3グリッドG3及び第4グリッドG4によって形成される。この主レンズ部は、プリフォーカスレンズ部によりプリフォーカスされた電子ビームを加速するとともに最終的に蛍光体スクリーン上にフォーカスする。
【0039】
このように構成された電子銃構体7によれば、低いドライブ電圧で大きなカソード電流(電子ビーム量)を得ることができ、しかも、カソード電流の変動による蛍光体スクリーン上でのビームスポット径の変動を小さくすることができる。特に、高輝度時(高カソード電流時)でのビームスポット径を小さくすることができるが、その作用について以下で詳述する。
【0040】
まず、カソードKが、第1グリッドG1に対して窪んだ形状をなしたカソード面22を有している。このため、第1グリッドG1の電子ビーム通過孔G1Hからカソード面22に浸透してくる浸透電界がほとんどなくなる。したがって、カソードKにドライブ電圧を印加すると、ドライブ電圧の大きさに無関係にカソード面22の全面から電子ビームが放出されることとなる。
【0041】
これにより、電子銃構体7のカソード電流密度分布は、図4に示すように、中心部(中心軸O付近)に比べて離軸部の方が電流密度がやや高い分布となる。カソード電流量は、(電子放出に寄与するカソード面の面積)×(電流密度)の積分で表わされる。このため、カソード面22から放出されるカソード電流を大きくすることができるため、低いドライブ電圧であっても大きなカソード電流(電子ビーム量)を得ることができる。また、カソード電流の大きさが変動したとしても、蛍光体スクリーン上でのビームスポット径の変動を小さく抑制することができる。
【0042】
次に、蛍光体スクリーン3上に到達した電子ビームによって形成されるビームスポット径について説明する。カソードKにおいて、カソード面22は、その中央部22Cが窪んだ凹面形状でありながら、カソード面22から放出された電子ビームが中心軸O(または管軸Z)と交差するクロスオーバを形成するが、このクロスオーバが一点に集中しなくなる。
【0043】
つまり、図5に示すように、カソード面22の中央部22Cから放出された電子ビームのクロスオーバ位置と、カソード面22の離軸部22Pから放出された電子ビームのクロスオーバ位置とが異なる。このため、クロスオーバーが一点に集中していたことによる空間電荷反発効果が軽減され、主レンズ部に対する物点径を小さくすることができる。
【0044】
このようなクロスオーバ位置の差は、カソード面22が非球面形状となっているためである。この実施の形態によれば、カソード面22において、その中央部22Cの曲率よりも離軸部22Pの曲率が小さく形成されているため、中央部22Cから放出された電子ビームのクロスオーバー位置が離軸部22Pから放出された電子ビームのクロスオーバー位置よりもカソードK側に位置している。
【0045】
したがって、主レンズ部からみた物点距離は、中心軸Oから離軸している電子ビームほど小さくなるため、主レンズ部から受ける球面収差を打ち消すことができる。このため、電子ビームの発散角をある程度大きくしても主レンズ部においてほとんど球面収差を受けることがない。
【0046】
このように、物点径及び球面収差の影響を小さくすることができ、さらには、電子ビームの発散角を大きくすることができるため、主レンズ部と蛍光体スクリーン3との間で受ける空間電荷反発効果も小さくできる。したがって、高輝度時でのビームスポット径も劇的に小さくすることが可能となる。
【0047】
上述したように、この実施の形態に係る陰極線管によれば、低いドライブ電圧で大きなカソード電流を得ることができるため、高い周波数で使用される陰極線管の使用環境での制限に適応可能である。また、カソード電流の変動によるビームスポット径の変動を抑制できるため、低カソード電流時においてビームスポット径が過剰に小さく形成されることに伴うモアレの発生を防止でき、しかも、高カソード電流時においてビームスポット径が過剰に大きく形成されることに伴う解像度の劣化を防止することができる。さらに、カソード面の中央部から放出された電子ビームと離軸部から放出された電子ビームとのクロスオーバ位置が異なり、一点で集中することがないため、空間電荷反発効果が軽減され、主レンズ部に対する物点径を小さくすることができる。またさらに、カソード面の中央部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置が離軸部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置よりもカソード側に位置しているため、主レンズ部からみた物点距離は、中心軸から離軸している電子ビームほど小さくなり、主レンズ部から受ける球面収差を打ち消すことができる。したがって、物点径及び球面収差の影響を小さくすることができ、さらには、電子ビームの発散角を大きくすることができるため、高輝度時でのビームスポット径も劇的に小さくすることが可能となり、高解像度の陰極線管を提供することができる。
【0048】
次に、他の実施の形態について説明する。
【0049】
図6に示すように、カソードKは、カソード本体30と、補助体40とを備えて構成されている。すなわち、カソード本体30は、円筒状の支持体20の先端部に、電子ビームを放出する電子ビーム放出部21を備えている。この電子ビーム放出部21は、第1グリッドG1と対向して、電子ビームを放出するカソード面22を有している。電子ビーム放出部21は、少なくともその表面が電子放射物質によって形成されている。また、カソード面22は、第1グリッドG1に対してその中央部22Cが窪んだ凹面形状をなしている。
【0050】
このカソード面22は、その中央部22Cと離軸部22Pとで曲率が異なる非球面形状である。すなわち、カソード面22は、複数の曲率を組み合わせて形成された非球面形状であり、中央部22Cの曲率よりも離軸部22Pの曲率が小さく形成されている。
【0051】
また、補助体40は、カソード本体30のカソード面22の周辺、すなわちカソード本体30より離軸側に配置されている。この補助体40は、カソード面22の離軸部22Pから放出された電子ビームの軌道を制御する。すなわち、この補助体40は、少なくとも第1グリッドG1と対向する表面41が電子ビームを発生しない(あるいはカソード面より電子ビームを発生しにくい)物質によって形成されている。また、補助体表面41は、例えば第1グリッドG1に対して窪んだ凹面形状をなしている。また、補助体40は、カソード面22の周縁部22Eの全周にわたってドーナツ状に配置されることが望ましい。
【0052】
このような構成のカソードKによれば、カソード本体30のカソード面22における周縁部22Eへの電界集中による電界の乱れを近接配置された補助体40によって防ぐことができる。このため、カソード面22の周縁部22Eから放出された電子ビームを適切な軌道で中心軸O上に集束する(集中する)ことが可能となる。
【0053】
また、カソードKは、カソード本体30と補助体40とを離間する溝部50を有している。このような構造としたことにより、含浸型カソードの場合に発生するカソード本体30から補助体40へのバリウムなどの金属物質のマイグレーションを防ぐことができる。これにより、不所望な電子ビームの発生を防ぐことが可能となる。すなわち、この実施の形態で説明したカソードによれば、不所望な電子ビームの発生を防ぎ、電子ビームを適切な軌道で集束することができるため、さらに高品質な陰極線管を提供出来る。
【0054】
なお、上述した各実施の形態では、偏向収差のダイナミック補償に関して論じていないが、さらに解像度を向上するために、電子銃構体が水平方向Hと垂直方向Yとで電子ビームのフォーカス作用が異なる少なくとも1つの4極子レンズを備えても良い。
【0055】
すなわち、上述した実施の形態では、主レンズ部が2つのグリッドすなわち第3グリッドG3及び第4グリッドG4にそれぞれ印加された固定電圧よって形成された電子銃構体7について説明したが、例えば、主レンズ部の内部に4極子レンズを形成しても良い。
【0056】
例えば、図7に示すように、主レンズ部は、第31グリッドG31、第32グリッドG32、及び第4グリッドG4によって構成される。第31グリッドG31には、所定の直流電圧Vfが印加される。第32グリッドG32には、所定の直流電圧Vfにパラボラ状に変化する交流電圧成分Vdを重畳したダイナミックフォーカス電圧(Vf+Vd)が印加される。また、第4グリッドG4には、アノード電圧Ebが印加される。さらに、第31グリッドG31及び第32グリッドG32間には、4極子レンズが形成される。このダイナミックフォーカス電圧(Vf+Vd)は、鋸歯状の偏向電流に同期し、かつ、電子ビームの偏向量の変化に伴ってパラボラ状に変化する。このような4極子レンズにより、偏向収差をダイナミックに補償することができ、蛍光体スクリーン全域に亘って歪みの少ないビームスポットを形成することができる。
【0057】
また、上述した各実施の形態では、カソードにおけるカソード面の曲率の軸対称性(水平方向H及び垂直方向Yに対する対称性)に関して論じていないが、例えばいずれか一方の軸について対称な曲率に形成したり、両方の軸について対称な曲率に形成したり、さらには水平方向Hと垂直方向Yとで異なる曲率として形成しても良い。つまり、カソード面の曲率は、陰極線管のサイズや種類、主レンズ系の形態などに合わせて、カソードの各方向の曲率を適宜自由に選択することが可能である。
【0058】
さらに、上述した各実施の形態では、インライン型のカラー陰極線管を例に説明したが、上述した電子銃構体は、3電子ビームに対応して3個独立の構成であるから、この発明は、デルタ型電子銃構体を備えるカラー陰極線管にも適用可能であり、また白黒陰極線管など単電子ビームを放出する他の陰極線管にも適用可能である。
【0059】
以上説明したように、この実施の形態の陰極線管によれば、電子銃構体は、少なくとも電子ビームを放出するカソードと、カソードの蛍光体スクリーン側に配置された制御電極すなわち第1グリッドとを備え、カソードにおいて制御電極と対向するカソード面は、その中央部が窪んだ凹面形状であり、カソード面の中央部よりも離軸部の曲率が小さく形成された構造を有している。
【0060】
カソード面が第1グリッドに対して窪んだ形状をなしているため、第1グリッドの電子ビーム通過孔から浸透してくる浸透電界がほとんどなくなる。このため、カソードにドライブ電圧を印加した場合、ドライブ電圧の大きさに無関係にカソード面の全面から電子ビームが放出される。これにより、カソード電流密度分布は、中央部に比べ離軸部の方が電流密度がやや高い分布となる。カソード電流量は、面積×電流密度の積分で表わされるため、カソードから放出されるカソード電流を大きくすることができる。このため、低いドライブ電圧で大きなカソード電流を得ることができる。
【0061】
また、カソード面が非球面形状に形成されているため、カソード面から放出された電子ビームのクロスオーバーが一点に集中しなくなり、従来生じていた空間電荷反発効果が著しく軽減され、物点径を小さくすることができる。
【0062】
さらに、カソード面の中央部よりも離軸部の方がその曲率が小さく形成されているため、離軸部から放出された電子ビームより中央部から放出された電子ビームがカソード側でクロスオーバーを形成する。このため、主レンズ系からみた物点距離は、より離軸側の電子ビームほど小さくなるため、主レンズ系の球面収差を打ち消すこととなり、ある程度発散角を大きくしてもほとんど球面収差を受けることがない。したがって、物点径及び球面収差を小さくでき、さらには、発散角を大きくできることにより、主レンズ部と蛍光体スクリーンとの間で受ける空間電荷反発効果も小さくでき、高輝度時でのビームスポット径も劇的に小さくすることが可能となる。この結果、低いドライブ電圧で大きなカソード電流を得ることができ、且つ、カソード電流の大きさによるビームスポット径の変動を小さくできるため、モアレの発生がなく、かつ高コントラスト(高輝度)で高解像度を得ることができる。
【0063】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、高コントラスト(高輝度)かつ高解像度の陰極線管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係るカラー陰極線管装置の構造を概略的に示す水平断面図である。
【図2】図2は、図1に示した陰極線管装置に適用可能な電子銃構体の構造を概略的に示す水平断面図である。
【図3】図3は、図2に示した電子銃構体に適用可能なカソードの構造を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、カソードの電流密度分布の一例を示す図である。
【図5】図5は、図3に示したカソードから放出される電子ビーム軌道を示す図である。
【図6】図6は、図2に示した電子銃構体に適用可能な他のカソードの構造を概略的に示す断面図である。
【図7】図7は、図1に示した陰極線管装置に適用可能な他の電子銃構体の構造を概略的に示す水平断面図である。
【図8】図8は、従来の電子銃構体の構造を概略的に示す水平断面図である。
【図9】図9は、従来の電子銃構体における電子放出の原理を説明するための図であり、(a)はカットオフ状態の場合を説明するための図であり、(b)はドライブ電圧を印加した場合を説明するための図である。
【図10】図10は、図8に示した電子銃構体によるカソードから放出された電子ビーム軌道を示す図である。
【図11】図11は、従来のカソードの電流密度分布の一例を示す図である。
【図12】図12は、従来のカソードの構造を概略的に示す断面図である。
【図13】図13は、図12に示したカソードから放出された電子ビーム軌道を示す図である。
【符号の説明】
1・・・パネル、2・・・ファンネル、3・・・蛍光体スクリーン、4・・・シャドウマスク、5・・・ネック、6(R、G、B)・・・電子ビーム、7・・・電子銃構体、22・・・カソード面、22C・・・カソード面中央部、22P・・・カソード面離軸部、30・・・カソード本体、40・・・補助体、50・・・溝部、K(R、G、B)・・・カソード、G1・・・第1グリッド(制御電極)、G2・・・第2グリッド、G3・・・第3グリッド、G4・・・第4グリッド
Claims (7)
- 電子ビームを発生する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から発生した電子ビームを蛍光体スクリーン上にフォーカスする主レンズ部と、を有する電子銃構体を備えた陰極線管であって、
前記電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードと、前記カソードの前記蛍光体スクリーン側に配置された制御電極と、を備え、
前記カソードにおいて前記制御電極と対向するカソード面は、その中央部が窪んだ凹面形状であり、
前記カソード面から放出された電子ビームが管軸と交差するクロスオーバーを形成するとともに、前記カソード面の中央部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置と、前記カソード面の離軸部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置とが異なることを特徴とする陰極線管。 - 電子ビームを発生する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から発生した電子ビームを蛍光体スクリーン上にフォーカスする主レンズ部と、を有する電子銃構体を備えた陰極線管であって、
前記電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードと、前記カソードの前記蛍光体スクリーン側に配置された制御電極と、を備え、
前記カソードにおいて前記制御電極と対向するカソード面は、前記カソード面から放出された電子ビームが管軸と交差するクロスオーバーを形成するよう、その中央部が窪んだ凹面形状であり、
前記カソード面において、その中央部よりも離軸部の曲率が小さいことを特徴とする陰極線管。 - 電子ビームを発生する電子ビーム発生部と、この電子ビーム発生部から発生した電子ビームを蛍光体スクリーン上にフォーカスする主レンズ部と、を有する電子銃構体を備えた陰極線管であって、
前記電子ビーム発生部は、少なくとも、電子ビームを放出するカソードと、前記カソードの前記蛍光体スクリーン側に配置された制御電極と、を備え、
前記カソードにおいて前記制御電極と対向するカソード面は、その中央部が窪んだ非球面の凹面形状であり、
前記カソード面から放出された電子ビームが管軸と交差するクロスオーバーを形成するとともに、前記カソード面の中央部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置が、前記カソード面の離軸部から放出された電子ビームのクロスオーバー位置より前記カソード側に位置することを特徴とする陰極線管。 - 前記カソードは、電子ビームを放出するカソード面を有するカソード本体と、前記カソード面の周辺に配置され前記カソード面の離軸部から放出された電子ビームの軌道を制御する補助体とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の陰極線管。
- 前記カソードは、前記カソード本体と前記補助体とを離間する溝部を有することを特徴とする請求項4に記載の陰極線管。
- 前記カソード面において、水平方向の曲率と垂直方向の曲率とが異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の陰極線管。
- 前記電子銃構体は、水平方向と垂直方向とで電子ビームのフォーカス作用が異なる少なくとも1つの4極子レンズを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の陰極線管。
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