JP2005009443A - 圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】外側ケーシングと内側ケーシングとの間の空間に溜まった油を安定して内側ケーシング内へ戻す。
【解決手段】吸入管(52)は、その内端部が外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)に開口している。吸入管(52)にU字状の湾曲部(52a)を設ける。この湾曲部(52a)は、吸入空間(S1)内の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置している。吸入空間(S1)内の油溜まり(21)と吸入管(52)の湾曲部(52a)とを連通する連絡管(55)を設ける。
【選択図】図1
【解決手段】吸入管(52)は、その内端部が外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)に開口している。吸入管(52)にU字状の湾曲部(52a)を設ける。この湾曲部(52a)は、吸入空間(S1)内の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置している。吸入空間(S1)内の油溜まり(21)と吸入管(52)の湾曲部(52a)とを連通する連絡管(55)を設ける。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二重ケーシング構造の圧縮機に関し、特に、油戻し対策に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、圧縮機は、例えば蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路において冷媒を圧縮するのに用いられている。この種の圧縮機として、例えば特許文献1に開示されているように、外側ケーシング及び内側ケーシングを備える二重ケーシング構造のものが知られている。この圧縮機では、縦長密閉型の外側ケーシングの内側に縦長の内側ケーシングを備え、この内側ケーシングに圧縮機構と電動機とが設置された構成となっている。この圧縮機では、外側ケーシング及び内側ケーシングには、吐出管が双方を貫通するように設けられている。一方、外側ケーシングには外部吸込管が取り付けられ、また内側ケーシングには圧縮機構の吸入通路に連通する内部吸込管が取り付けられている。そして、外部吸込管の内端部が外側ケーシングと内側ケーシングとの間の空間に開口し、また内部吸込管の外端部がこの空間に開口することで、この空間は、冷媒ガスから油を分離するアキュムレーション空間として構成されている。そして、このアキュムレーション空間の底部は、分離された油が溜められた油溜まりとなっている。このアキュムレーション空間内には、油溜まりの油を吸い上げる油吸上管が設けられている。この油吸上管は、下端が油溜まり内で開口する一方、上端が上記内部吸込管に接続されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−96693号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のものでは、油溜まりの油を油吸上管を通して内部吸込管へ吸い上げる構成であるために、圧縮室へ吸入される冷媒ガスによって油を巻き込むことにより油を吸い上げているものと推測される。したがって、このような方式で油を吸い上げる構成のものでは、回転数の低い低速運転のときには、冷媒ガスの流速が低いために、安定して油を吸い上げることができないという問題があった。
【0005】
一方、アキュムレーション空間内の圧力はほぼ安定しているのに対し、圧縮機構の吸入通路内では吸入脈動により圧力が変動することを利用し、このアキュムレーション空間内の圧力と吸入通路内の圧力との圧力差により開閉する逆止弁を設けることで油を汲み上げる構成が考えられる。すなわち、上記圧力差が大きくなったときには、逆止弁を開放させることで上記圧力差により油を上方へ押し上げる一方、圧力差が小さくなったときには、逆止弁を閉鎖することにより油の逆流を防止することで、油溜まりの油を汲み上げることができるものと考えられる。しかし、このような構成とした場合には、弁開時にある一定の圧力差が必要となるために、逆止弁を幅広い運転領域に対して安定して開閉させるのは困難であると予想される。
【0006】
そこで、本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外側ケーシングと内側ケーシングとの間の空間に溜まった油を安定して内側ケーシング内へ戻すことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の空間(S1)内の油溜まり(21)の油が、この油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する吸入管(52,63)の湾曲部(52a,63a)へヘッド差によって流れるようにしたものである。
【0008】
具体的に、請求項1の発明は、外側ケーシング(11)と、該外側ケーシング(11)に支持された内側ケーシング(16)とを備え、該内側ケーシング(16)に圧縮機構(30)が収納された圧縮機を前提として、上記外側ケーシング(11)に接続され、該外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)に連通する吸入管(52)と、上記吸入空間(S1)と圧縮機構(30)の圧縮室(36)とを連通する吸入通路(37)とを備え、上記吸入管(52)には、底部が吸入空間(S1)の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する湾曲部(52a)が形成される一方、上記油溜まり(21)と吸入管(52)の湾曲部(52a)とに連通し、油溜まり(21)の油を吸入管(52)の湾曲部(52a)に導く連絡管(55)が設けられている。
【0009】
また、請求項2の発明は、外側ケーシング(11)と、該外側ケーシング(11)に支持された内側ケーシング(16)とを備え、該内側ケーシング(16)に圧縮機構(30)が収納された圧縮機を前提として、上記外側ケーシング(11)に接続され、該外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)に連通する第1の吸入管(52)と、上記吸入空間(S1)と圧縮機構(30)の圧縮室(36)とを連通する第2の吸入管(63)とを備え、上記第2の吸入管(63)には、底部が吸入空間(S1)の油溜まり(21)の油に浸漬する湾曲部(63a)が形成され、上記第2の吸入管(63)の湾曲部(63a)には、油溜まり(21)の油を第2の吸入管(63)の管内に導く油孔(69)が形成されている。
【0010】
また、請求項3の発明は、外側ケーシング(11)と、該外側ケーシング(11)に支持された内側ケーシング(16)とを備え、該内側ケーシング(16)に圧縮機構(30)が収納された圧縮機を前提として、機外から上記圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ吸入されるガスの通路には、上記外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位が設けられ、上記ガスの通路における油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位は、油溜まり(21)に連通し、該油溜まり(21)の油が流入するように構成されている。
【0011】
すなわち、請求項1の発明では、吸入管(52)では、ガスが外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)へ向かって流れる。一方、吸入管(52)の湾曲部(52a)は、連絡管(55)を通して吸入空間(S1)内の油溜まり(21)と連通している。この吸入管(52)の湾曲部(52a)は、少なくともその底部が油溜まり(21)の油面よりも下方に位置しているために、そのヘッド差により油溜まり(21)の油は、連絡管(55)を通して吸入管(52)へ導かれる。そして、この油は、ガスに同伴されて吸入空間(S1)へ導かれる。この吸入空間(S1)へ流入した油分が含まれるガスは、吸入通路(37)へ流入して圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ導かれる。
【0012】
また、請求項2の発明では、第1の吸入管(52)を流れたガスは、外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)へ流入する。この吸入空間(S1)内のガスは、第2の吸入管(63)を流れて圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ向かう。一方、この第2の吸入管(63)の湾曲部(63a)は、少なくともその底部が油溜まり(21)の油に浸漬されており、この第2の吸入管(63)の湾曲部(63a)には、油溜まり(21)内で開口する油孔(69)が形成されている。この油孔(69)は、油溜まり(21)の油面よりも下方に位置しているために、油溜まり(21)の油は、そのヘッド差により油孔(69)を通して第2の吸入管(63)の管内へ流入する。そして、この油はガスに同伴されて第2の吸入管(63)を流れて圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ導かれる。
【0013】
また、請求項3の発明では、ガスの通路を流れるガスは、その途中で外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)内の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位を通過する。この油面よりも下方の部位では、油溜まり(21)の油の油面とのヘッド差により、油溜まり(21)の油が流入する。そして、この油はガスに同伴されてガスの通路を流れて圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ導かれる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(実施形態1)
本実施形態1は、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路において圧縮行程を行う圧縮機に関するものである。図1及び図2に示すように、この圧縮機(1) は、外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)とからなる二重構造のケーシング(10)を備えている。内側ケーシング(16)内には、圧縮機構(30)と、該圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)とが収納されている。
【0016】
外側ケーシング(11)は、縦長円筒状の外側胴部(12)と、該外側胴部(12)の上端に固定された椀状の外側上蓋部(13)と、外側胴部(12)の下端に固定された椀状の外側下蓋部(14)とを備えている。外側上蓋部(13)及び外側下蓋部(14)は、それぞれ上記外側胴部(12)に溶接により気密に接合されている。
【0017】
上記内側ケーシング(16)は、縦長円筒状で且つ上記外側胴部(12)よりも小径で長さの短い内側胴部(17)と、該内側胴部(17)の上端に固定された平板状の内側上蓋部(18)と、内側胴部(17)の下端に固定された平板状の内側下蓋部(19)とを備えている。内側上蓋部(18)及び内側下蓋部(19)は、それぞれ上記内側胴部(17)に溶接により気密に接合されている。
【0018】
外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間には、後述するように、運転中に吸入冷媒で満たされる空間(以下、吸入空間(S1)という)が区画されている。この吸入空間(S1)の底部は、油が貯溜された油溜まり(21)となっている。
【0019】
内側ケーシング(16)は、外側ケーシング(11)の内側で弾性的に支持されている。具体的に、外側ケーシング(11)の外側下蓋部(14)には、油溜まり(21)のすぐ上方に位置して平板状の台座部(23)が固定されている。この台座部(23)と内側下蓋部(19)とには、互いに向かい合う一対の突起部(24)が設けられている。この突起部(24)には、コイルバネ(25)が嵌められている。このコイルバネ(25)は、その上端が内側下蓋部(19)の下端面に当接する一方、下端が上記台座部(23)の上端面に当接している。
【0020】
上記圧縮機構(30)は、ロータリーピストン式の圧縮機構(30)である。この圧縮機構(30)は、シリンダ(31)と、フロントヘッド(32)と、リアヘッド(33)と、回転ピストン(34)とを備えている。シリンダ(31)は、内側胴部(17)に圧入されて固定されている。このシリンダ(31)は、厚肉の円筒状に形成され、電動機(40)の駆動軸(43)と同心状に配置されている。フロントヘッド(32)はシリンダ(31)の上端面に、またリアヘッド(33)はシリンダ(31)の下端面にそれぞれ配置されており、シリンダ(31)、フロントヘッド(32)及びリアヘッド(33)は、図示しないボルト等で締結されて一体に組み立てられてている。そして、シリンダ(31)の内周面と、フロントヘッド(32)の下端面と、リアヘッド(33)の上端面と、回転ピストン(34)の外周面との間に、円環状の圧縮室(36)が区画形成されている。シリンダ(31)から内側ケーシング(16)に亘り、内端部が圧縮室(36)に開口する一方、半径方向に延びる吸入通路(37)が貫通形成されている。この吸入通路(37)の外端部は、吸入空間(S1)に開口している。尚、図示省略するが、シリンダ(31)には上下方向に貫通する油戻し孔が形成されている。
【0021】
フロントヘッド(32)には、上下方向に貫通して内側ケーシング(16)内の空間(以下、吐出空間(S2)という)と圧縮室(36)とに連通する吐出口(図示省略)が形成されるとともに、該吐出口を開閉する吐出弁(図示省略)が設けられている。吐出弁は、圧縮室(36)内の圧力と吐出空間(S2)内の圧力との圧力差が所定値以上に大きくなると吐出口を開放するように構成されている。また、フロントヘッド(32)及びリアヘッド(33)には、マフラー(38)が取り付けられている。このマフラー(38)は、冷媒吐出時に生ずる騒音を低減するためのものである。
【0022】
上記電動機(40)には、ブラシレスDCモータが用いられている。上記電動機(40)は、内側胴部(17)における上端寄りの位置に固定された筒状の固定子(41)と、該固定子(41)の内側に回転自在に装着された回転子(42)とを備えている。上記駆動軸(43)は、回転子(42)に連結され、回転子(42)と一体に回転するように構成されている。固定子(41)と回転子(42)との間には、エアギャップ(44)が形成されている。
【0023】
固定子(41)は、固定子鉄心(41a)と、コイル(41b)とから構成されている。固定子鉄心(41a)は、円筒状に形成された鉄心本体(41c)と、この鉄心本体(41c)から内側に突出するコイル(41b)を巻き付けるためのティース(41d)とからなる。ティース(41d)は、複数本設けられており、周方向に等間隔に配置されている。鉄心本体(41c)には、ボルト挿通孔(41e)が上下方向に貫通するように形成されている。
【0024】
固定子(41)には、コイル(41b)の巻線方式として、集中巻(直巻)方式が採用されている。すなわち、各ティース(41d)にコイル(41b)がそれぞれ個別に巻き付けられている。そして、コイル(41b)が巻き付けられた互いに隣り合うティース(41d)同士の間には、図示省略するが隙間(ギャップ)が形成されている。
【0025】
上記電動機(40)の駆動軸(43)は、内側ケーシング(16)の中心線上を上下方向に延びるように配置され、圧縮室(36)を貫通している。駆動軸(43)は、圧縮室(36)の中に位置する部分が、該駆動軸(43)の回転中心から所定量偏心し、その上下の部分よりも大径の偏心部(43a)に構成されている。この偏心部(43a)に、上記圧縮機構(30)の回転ピストン(34)が嵌め込まれている。回転ピストン(34)は円環状で、運転中に、その外周面が実質的にシリンダ(31)の内周面と一点で接触する(実際には僅かなクリアランスが設けられている)ように形成されている。そして、駆動軸(43)の回転により、回転ピストン(34)がシリンダ(31)内を回動し、これにより、圧縮室(36)は、その容積を縮小させるように構成されている。
【0026】
フロントヘッド(32)とリアヘッド(33)には、駆動軸(43)の下端を支持する下部軸受部(32a,33a)が形成されている。この下軸受部(32a,33a)は、それぞれ滑り軸受けからなる。一方、電動機(40)の固定子(41)の上側には、軸受プレート(47)が配設されている。この軸受プレート(47)には、駆動軸(43)の上端を支持する転がり軸受からなる上軸受部(47a)と、冷媒を通過させるための貫通孔(47b)と、ボルト(49)を挿通させるためのボルト挿通孔(47c)とが設けられている。ボルト(49)は、軸受プレート(47)及び固定子鉄心(41a)のボルト挿通孔(47c,41e)に挿通されるとともにフロントヘッド(32)の締結孔(32b)に螺合されている。
【0027】
駆動軸(43)の下端部には、油ポンプ(43b)が設けられている。この油ポンプ(43b)は内側ケーシング(16)の底部に溜まった油を吸い上げ、この油を駆動軸(43)内に形成された油給油路(図示省略)を通して各摺動部へ供給するためのものである。
【0028】
外側ケーシング(11)の外側胴部(12)には、その上下方向の中間部において僅かに外側に膨出した膨出部(51)が形成されている。この膨出部(51)には、吸入空間(S1)へ冷媒ガスを導く吸入管(52)が取り付けられている。この吸入管(52)と上記吸入空間(S1)と上記圧縮機構(30)の吸入通路(37)とは、機外から圧縮室(36)へ吸入されるガスの通路を構成している。吸入管(52)は、膨出部(51)を貫通しており、その内端部は、上記吸入通路(37)の外端部に対向する位置で且つ膨出部(51)の内面と面一の状態になるように設けられている。外側胴部(12)の内面には、膨出部(51)の内側を覆うようにガスフィルター(53)が取り付けられている。このガスフィルター(53)は、冷媒ガス中に含まれる不純物を除去するためのものである。尚、吸入管(52)は、その内端部が吸入通路(37)の外端部に対向する位置に設けられる構成に限られるものではない。例えば、吸入管(52)は、その内端部が吸入通路(37)の外端部とは周方向あるいは図1における上下方向に位置ずれしている構成であってもよい。
【0029】
上記吸入管(52)は、内端部が膨出部(51)に接続される一方、径方向外側へ向かって延びるとともにその先で下方へ向かって湾曲している。そして、吸入管(52)における管の延びる方向の中間部には、ケーシング(10)の下端部とほぼ同じ高さの位置でU字状に折り曲げられた湾曲部(52a)が形成されており、この湾曲部(52a)よりも外側の外側部は上方に向かって延びている。この吸入管(52)の外側部における先端部は、吸入管(52)の内端部とほぼ同じ高さの位置で上方に開口している。すなわち、吸入管(52)は、管の延びる方向における湾曲部(52a)の中央部が底部となるように配置されている。
【0030】
吸入管(52)の湾曲部(52a)には、細管からなる連絡管(55)が接続されている。この連絡管(55)の外端部は、吸入管(52)の管壁を貫通して管内で開口している。連絡管(55)は、外側胴部(12)の径方向に延びるように水平に配置されていて、外側ケーシング(11)の外側下蓋部(19)を貫通している。この連絡管(55)の内端部は、吸入空間(S1)の底部の油溜まり(21)内で開口している。つまり、吸入管(52)の湾曲部(52a)の底部が、油溜まり(21)の油面よりも下方に位置するとともに、油溜まり(21)と吸入管(52)の湾曲部(52a)とが連通していて、油溜まり(21)の油が連絡管(55)を通して吸入管(52)へ向かって流れるようになっている。
【0031】
外側ケーシング(11)及び内側ケーシング(16)の上端部には、冷媒ガスを機外へ導く吐出管(57)が設けられている。吐出管(57)は、外側ケーシング(11)の外側上蓋部(13)と内側ケーシング(16)の内側上蓋部(18)との双方を上下方向に貫通している。この吐出管(57)は、圧縮機構(30)から吐出されて吐出空間(S2)に充満する吐出冷媒を機外へ案内する通路を構成している。吐出管(57)には、外側上蓋部(13)と内側上蓋部(18)との中間部において、吸入空間(S1)内で略1周周回するように形成された周回部が設けられている。この周回部は、内側ケーシング(16)が外側ケーシング(11)に対して変位するのを許容するために設けられるものである。
【0032】
外側ケーシング(11)には外側ターミナル(59)が、また内側ケーシング(16)には内側ターミナル(60)がそれぞれ固定されている。上記電動機(40)は、内側ターミナル(60)及び外側ターミナル(59)にリード線(図示省略)を介して接続されている。外側ターミナル(59)には外部の電源配線が接続されており、電源電圧が図外のインバータを介して電動機(40)に印加されるようになっている。つまり、電動機(40)は、インバータを介して電源に接続されることで、回転数を調整可能に構成されている。
【0033】
次に、この圧縮機(1)の運転動作について説明する。まず、上記電動機(40)に通電すると、駆動軸(43)が回転し、圧縮機構(30)では、回転ピストン(34)がシリンダ(31)の内周面にほぼ内接する状態を保ちながら所定の周回軌道上を旋回する。これにより、吸入管(52)では、冷媒ガスが吸入空間(S1)へ向かって流れる。このとき、吸入管(52)の湾曲部(52a)において連絡管(55)から油溜まり(21)の油が少しずつ流入している。つまり、吸入管(52)の湾曲部(52a)が油溜まり(21)の油面よりも下方に配置されているために、この油面と吸入管(52)の湾曲部(52a)とのヘッド差により、油溜まり(21)の油が吸入管(52)内へ流入している。そして、この油は吸入管(52)内で冷媒ガス中に溶け込み、この油分を含んだ冷媒ガスは、吸入管(52)から吸入空間(S1)へ導入される。吸入空間(S1)の冷媒ガスは、圧縮機構(30)の吸入通路(37)へ吸入されて圧縮室(36)へ導入される。尚、吸入空間(S1)では、油分の一部が冷媒ガスから分離され、この分離された油分は、油溜まり(21)に貯溜される。
【0034】
圧縮機構(30)では、冷媒ガスは、圧縮室(36)の容積が縮小するのに伴って圧縮されて高圧になる。そして、圧縮室(36)の圧力が内側ケーシング(16)内の圧力よりも所定値以上に大きくなると、圧縮機構(30)の吐出弁が開口し、冷媒ガスは圧縮室(36)から吐出空間(S2)へ吐出される。そして、吐出空間(S2)では、冷媒ガスが上方に向かって流れる。この冷媒ガスは、電動機(40)のエアギャップ(44)及びティース(41d)間のギャップを流れ、これにより電動機(40)が冷却されている。そして、この冷媒ガスは、その一部が軸受プレート(47)の貫通孔(47b)を流れる一方、その他が上軸受部(47a)を流れる。このため、上軸受部(47a)を構成するこりがり軸受が冷媒中の油分によって潤滑されている。そして、この冷媒ガスは、吐出管(57)を通して圧縮機(1)の外へ吐出される。
【0035】
一方、吐出空間(S2)内では、冷媒ガスに含まれる油分が分離されて内側ケーシング(16)内の底部に溜められる。すなわち、吸入空間(S1)内の油溜まり(21)の油は連絡管(55)を通して一旦吸入管(52)へと流れ、この油は冷媒ガスに同伴されて内側ケーシング(16)内に戻されている。
【0036】
したがって、本実施形態1によれば、油溜まり(21)の油面と吸入管(52)の湾曲部(52a)とのヘッド差を利用して吸入管(52)内へ油が流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)へ戻すことができる。この結果、電動機(40)の回転数によらず低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【0037】
(実施形態2)
図3は本発明の実施形態2を示す。尚、ここでは、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0038】
この実施形態2では、外側ケーシング(11)を貫通する第1吸入管(52)と、内側ケーシング(16)を貫通する第2吸入管(63)とが設けられている。そして、第2吸入管(63)をその中間部において油溜まり(21)の油に浸漬するようにしている。上記第1吸入管(52)と吸入空間(S1)と第2吸入管(63)とは、機外から圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ吸入されるガスの通路を構成している。
【0039】
外側ケーシング(11)の外側下蓋部(14)には、外側胴部(12)のすぐ内方で環状で且つ上方に盛り上がる保持部(65)が形成されており、この保持部(65)の上に台座部(23)が固定されている。そして、この台座部(23)上に配置されたコイルバネ(25)の上には保持プレート(67)が設けられている。この保持プレート(67)は、円形のプレートをプレス加工して成形したものであり、平板状の周縁部にコイルバネ(25)が当接している一方、中央部が、椀状の内側下蓋部(19)に沿う曲面形状に形成されて該内側下蓋部(19)に固定されている。
【0040】
上記第1吸入管(52)は、外側胴部(12)の下端部を貫通しており、水平方向に延びるように配置されている。そして、第1吸入管(52)の内端部は、先細形状に形成されるとともに、内側下蓋部(19)と台座部(23)との間に開口している。
【0041】
上記第2吸入管(63)には、管の延びる方向の中間部においてU字状に折り曲げられた湾曲部(63a)が形成されている。そして、湾曲部(63a)よりも内側の第2吸入管(63)の内側部と、湾曲部(63a)よりも外側の第2吸入管(63)の外側部とは、それぞれ上方に向かって延びて上記台座部(23)を貫通している。すなわち、第2吸入管(63)は、管の延びる方向における湾曲部(63a)の中央部が底部となるように配置されている。
【0042】
台座部(23)の下方は油溜まり(21)となっており、上記第2吸入管(63)の湾曲部(63a)は、この油溜まり(21)の油に浸漬されている。この湾曲部(63a)には、細孔からなる油孔(69)が設けられている。この油孔(69)は、第2吸入管(63)の管壁を貫通しており、油溜まり(21)内に開口している。つまり、第2吸入管(63)の湾曲部(63a)が油溜まり(21)の油面よりも下方に位置するとともに、この湾曲部(63a)に油孔(69)が形成されることで、油溜まり(21)の油が油孔(69)を通して第2吸入管(63)の管内に導入されるようになっている。
【0043】
第2吸入管(63)の内側部における上端部は、第1吸入管(52)の内端部のすぐ内方で上方に向かって開口している。一方、第2吸入管(63)の外側部における上端部は、第2吸入管(63)の内側部における上端部よりもさらに上方に位置している。この外側部の上端部は、圧縮機構(30)のリアヘッド(33)を貫通してシリンダ(31)に嵌入されている。シリンダ(31)には、径方向に貫通する横孔(71)が形成されている。この横孔(71)は、内端部が圧縮室(36)に連通する一方、外端部はキャップ(72)によって塞がれている。また、シリンダ(31)には、横孔(71)の径方向の中間部から下端に亘って貫通する縦孔(73)が形成されている。上記第2吸入管(63)の外側部における上端部は、この縦孔(73)に嵌め込まれている。これにより、第2吸入管(63)を通して吸入空間(S1)と圧縮室(36)とが連通可能となっている。
【0044】
次に、この圧縮機(1)の運転動作について説明する。この圧縮機(1)では、圧縮機構(30)の駆動により、冷媒ガスが第1吸入管(52)を流れて吸入空間(S1)へ流入する。吸入空間(S1)では、油分の一部が冷媒ガスから分離され、この分離された油分は、油溜まり(21)に貯溜される。一方、吸入空間(S1)内の冷媒ガスは、第2吸入管(63)へ流入し、圧縮室(36)へ向かって流れる。このとき、第2吸入管(63)の湾曲部(63a)において油孔(69)を通して油溜まり(21)の油が少しずつ第2吸入管(63)内へ流入している。つまり、油孔(69)が油溜まり(21)の油面よりも下方に配置されているために、この油面と油孔(69)とのヘッド差により、油溜まり(21)の油が第2吸入管(63)内へ導入されている。そして、この油は第2吸入管(63)内で冷媒ガス中に溶け込み、この油分を含んだ冷媒ガスは、シリンダ(31)内の圧縮室(36)へ吸入される。その後、冷媒ガスは、圧縮室(36)から吐出され、吐出空間(S2)に一時的に貯溜された後、吐出管(57)を通して機外へ吐出される。
【0045】
一方、吐出空間(S2)内では、冷媒ガスに含まれる油分が分離されて内側ケーシング(16)内の底部に溜められる。すなわち、吸入空間(S1)内の油溜まり(21)の油は油孔(69)を通して第2吸入管(63)の管内へと流れ、この油は冷媒ガスに同伴されて内側ケーシング(16)内に戻されている。
【0046】
したがって、本実施形態2によれば、油溜まり(21)の油面と第2吸入管(63)の油孔(69)とのヘッド差を利用して該第2吸入管(63)内へ油が流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。この結果、電動機(40)の回転数によらず低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【0047】
その他の構成、作用及び効果は上記実施形態1と同様である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0049】
請求項1の発明によれば、油溜まり(21)の油面と吸入管(52)の湾曲部(52a)とのヘッド差を利用して吸入管(52)内へ油が流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。この結果、低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【0050】
また、請求項2の発明によれば、油溜まり(21)の油面と第2吸入管(63)の油孔(69)とのヘッド差を利用して第2吸入管(63)の管内へ油が流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。この結果、低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【0051】
また、請求項3の発明によれば、機外から圧縮室(36)へ導入されるガスの通路の少なくとも一部に油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位を設け、この部位と油溜まり(21)の油面とのヘッド差を利用して油がガスの通路へ流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。この結果、低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る圧縮機の正面方向から見たときの断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る圧縮機の側面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る圧縮機の図1相当図である。
【符号の説明】
(11) 外側ケーシング
(16) 内側ケーシング
(21) 油溜まり
(30) 圧縮機構
(36) 圧縮室
(37) 吸入通路
(52) 吸入管(第1吸入管)
(52a) 湾曲部
(55) 連絡管
(63) 第2吸入管
(63a) 湾曲部
(69) 油孔
(S1) 吸入空間
【発明の属する技術分野】
本発明は、二重ケーシング構造の圧縮機に関し、特に、油戻し対策に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、圧縮機は、例えば蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路において冷媒を圧縮するのに用いられている。この種の圧縮機として、例えば特許文献1に開示されているように、外側ケーシング及び内側ケーシングを備える二重ケーシング構造のものが知られている。この圧縮機では、縦長密閉型の外側ケーシングの内側に縦長の内側ケーシングを備え、この内側ケーシングに圧縮機構と電動機とが設置された構成となっている。この圧縮機では、外側ケーシング及び内側ケーシングには、吐出管が双方を貫通するように設けられている。一方、外側ケーシングには外部吸込管が取り付けられ、また内側ケーシングには圧縮機構の吸入通路に連通する内部吸込管が取り付けられている。そして、外部吸込管の内端部が外側ケーシングと内側ケーシングとの間の空間に開口し、また内部吸込管の外端部がこの空間に開口することで、この空間は、冷媒ガスから油を分離するアキュムレーション空間として構成されている。そして、このアキュムレーション空間の底部は、分離された油が溜められた油溜まりとなっている。このアキュムレーション空間内には、油溜まりの油を吸い上げる油吸上管が設けられている。この油吸上管は、下端が油溜まり内で開口する一方、上端が上記内部吸込管に接続されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−96693号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のものでは、油溜まりの油を油吸上管を通して内部吸込管へ吸い上げる構成であるために、圧縮室へ吸入される冷媒ガスによって油を巻き込むことにより油を吸い上げているものと推測される。したがって、このような方式で油を吸い上げる構成のものでは、回転数の低い低速運転のときには、冷媒ガスの流速が低いために、安定して油を吸い上げることができないという問題があった。
【0005】
一方、アキュムレーション空間内の圧力はほぼ安定しているのに対し、圧縮機構の吸入通路内では吸入脈動により圧力が変動することを利用し、このアキュムレーション空間内の圧力と吸入通路内の圧力との圧力差により開閉する逆止弁を設けることで油を汲み上げる構成が考えられる。すなわち、上記圧力差が大きくなったときには、逆止弁を開放させることで上記圧力差により油を上方へ押し上げる一方、圧力差が小さくなったときには、逆止弁を閉鎖することにより油の逆流を防止することで、油溜まりの油を汲み上げることができるものと考えられる。しかし、このような構成とした場合には、弁開時にある一定の圧力差が必要となるために、逆止弁を幅広い運転領域に対して安定して開閉させるのは困難であると予想される。
【0006】
そこで、本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外側ケーシングと内側ケーシングとの間の空間に溜まった油を安定して内側ケーシング内へ戻すことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の空間(S1)内の油溜まり(21)の油が、この油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する吸入管(52,63)の湾曲部(52a,63a)へヘッド差によって流れるようにしたものである。
【0008】
具体的に、請求項1の発明は、外側ケーシング(11)と、該外側ケーシング(11)に支持された内側ケーシング(16)とを備え、該内側ケーシング(16)に圧縮機構(30)が収納された圧縮機を前提として、上記外側ケーシング(11)に接続され、該外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)に連通する吸入管(52)と、上記吸入空間(S1)と圧縮機構(30)の圧縮室(36)とを連通する吸入通路(37)とを備え、上記吸入管(52)には、底部が吸入空間(S1)の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する湾曲部(52a)が形成される一方、上記油溜まり(21)と吸入管(52)の湾曲部(52a)とに連通し、油溜まり(21)の油を吸入管(52)の湾曲部(52a)に導く連絡管(55)が設けられている。
【0009】
また、請求項2の発明は、外側ケーシング(11)と、該外側ケーシング(11)に支持された内側ケーシング(16)とを備え、該内側ケーシング(16)に圧縮機構(30)が収納された圧縮機を前提として、上記外側ケーシング(11)に接続され、該外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)に連通する第1の吸入管(52)と、上記吸入空間(S1)と圧縮機構(30)の圧縮室(36)とを連通する第2の吸入管(63)とを備え、上記第2の吸入管(63)には、底部が吸入空間(S1)の油溜まり(21)の油に浸漬する湾曲部(63a)が形成され、上記第2の吸入管(63)の湾曲部(63a)には、油溜まり(21)の油を第2の吸入管(63)の管内に導く油孔(69)が形成されている。
【0010】
また、請求項3の発明は、外側ケーシング(11)と、該外側ケーシング(11)に支持された内側ケーシング(16)とを備え、該内側ケーシング(16)に圧縮機構(30)が収納された圧縮機を前提として、機外から上記圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ吸入されるガスの通路には、上記外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位が設けられ、上記ガスの通路における油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位は、油溜まり(21)に連通し、該油溜まり(21)の油が流入するように構成されている。
【0011】
すなわち、請求項1の発明では、吸入管(52)では、ガスが外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)へ向かって流れる。一方、吸入管(52)の湾曲部(52a)は、連絡管(55)を通して吸入空間(S1)内の油溜まり(21)と連通している。この吸入管(52)の湾曲部(52a)は、少なくともその底部が油溜まり(21)の油面よりも下方に位置しているために、そのヘッド差により油溜まり(21)の油は、連絡管(55)を通して吸入管(52)へ導かれる。そして、この油は、ガスに同伴されて吸入空間(S1)へ導かれる。この吸入空間(S1)へ流入した油分が含まれるガスは、吸入通路(37)へ流入して圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ導かれる。
【0012】
また、請求項2の発明では、第1の吸入管(52)を流れたガスは、外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)へ流入する。この吸入空間(S1)内のガスは、第2の吸入管(63)を流れて圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ向かう。一方、この第2の吸入管(63)の湾曲部(63a)は、少なくともその底部が油溜まり(21)の油に浸漬されており、この第2の吸入管(63)の湾曲部(63a)には、油溜まり(21)内で開口する油孔(69)が形成されている。この油孔(69)は、油溜まり(21)の油面よりも下方に位置しているために、油溜まり(21)の油は、そのヘッド差により油孔(69)を通して第2の吸入管(63)の管内へ流入する。そして、この油はガスに同伴されて第2の吸入管(63)を流れて圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ導かれる。
【0013】
また、請求項3の発明では、ガスの通路を流れるガスは、その途中で外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)内の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位を通過する。この油面よりも下方の部位では、油溜まり(21)の油の油面とのヘッド差により、油溜まり(21)の油が流入する。そして、この油はガスに同伴されてガスの通路を流れて圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ導かれる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(実施形態1)
本実施形態1は、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路において圧縮行程を行う圧縮機に関するものである。図1及び図2に示すように、この圧縮機(1) は、外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)とからなる二重構造のケーシング(10)を備えている。内側ケーシング(16)内には、圧縮機構(30)と、該圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)とが収納されている。
【0016】
外側ケーシング(11)は、縦長円筒状の外側胴部(12)と、該外側胴部(12)の上端に固定された椀状の外側上蓋部(13)と、外側胴部(12)の下端に固定された椀状の外側下蓋部(14)とを備えている。外側上蓋部(13)及び外側下蓋部(14)は、それぞれ上記外側胴部(12)に溶接により気密に接合されている。
【0017】
上記内側ケーシング(16)は、縦長円筒状で且つ上記外側胴部(12)よりも小径で長さの短い内側胴部(17)と、該内側胴部(17)の上端に固定された平板状の内側上蓋部(18)と、内側胴部(17)の下端に固定された平板状の内側下蓋部(19)とを備えている。内側上蓋部(18)及び内側下蓋部(19)は、それぞれ上記内側胴部(17)に溶接により気密に接合されている。
【0018】
外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間には、後述するように、運転中に吸入冷媒で満たされる空間(以下、吸入空間(S1)という)が区画されている。この吸入空間(S1)の底部は、油が貯溜された油溜まり(21)となっている。
【0019】
内側ケーシング(16)は、外側ケーシング(11)の内側で弾性的に支持されている。具体的に、外側ケーシング(11)の外側下蓋部(14)には、油溜まり(21)のすぐ上方に位置して平板状の台座部(23)が固定されている。この台座部(23)と内側下蓋部(19)とには、互いに向かい合う一対の突起部(24)が設けられている。この突起部(24)には、コイルバネ(25)が嵌められている。このコイルバネ(25)は、その上端が内側下蓋部(19)の下端面に当接する一方、下端が上記台座部(23)の上端面に当接している。
【0020】
上記圧縮機構(30)は、ロータリーピストン式の圧縮機構(30)である。この圧縮機構(30)は、シリンダ(31)と、フロントヘッド(32)と、リアヘッド(33)と、回転ピストン(34)とを備えている。シリンダ(31)は、内側胴部(17)に圧入されて固定されている。このシリンダ(31)は、厚肉の円筒状に形成され、電動機(40)の駆動軸(43)と同心状に配置されている。フロントヘッド(32)はシリンダ(31)の上端面に、またリアヘッド(33)はシリンダ(31)の下端面にそれぞれ配置されており、シリンダ(31)、フロントヘッド(32)及びリアヘッド(33)は、図示しないボルト等で締結されて一体に組み立てられてている。そして、シリンダ(31)の内周面と、フロントヘッド(32)の下端面と、リアヘッド(33)の上端面と、回転ピストン(34)の外周面との間に、円環状の圧縮室(36)が区画形成されている。シリンダ(31)から内側ケーシング(16)に亘り、内端部が圧縮室(36)に開口する一方、半径方向に延びる吸入通路(37)が貫通形成されている。この吸入通路(37)の外端部は、吸入空間(S1)に開口している。尚、図示省略するが、シリンダ(31)には上下方向に貫通する油戻し孔が形成されている。
【0021】
フロントヘッド(32)には、上下方向に貫通して内側ケーシング(16)内の空間(以下、吐出空間(S2)という)と圧縮室(36)とに連通する吐出口(図示省略)が形成されるとともに、該吐出口を開閉する吐出弁(図示省略)が設けられている。吐出弁は、圧縮室(36)内の圧力と吐出空間(S2)内の圧力との圧力差が所定値以上に大きくなると吐出口を開放するように構成されている。また、フロントヘッド(32)及びリアヘッド(33)には、マフラー(38)が取り付けられている。このマフラー(38)は、冷媒吐出時に生ずる騒音を低減するためのものである。
【0022】
上記電動機(40)には、ブラシレスDCモータが用いられている。上記電動機(40)は、内側胴部(17)における上端寄りの位置に固定された筒状の固定子(41)と、該固定子(41)の内側に回転自在に装着された回転子(42)とを備えている。上記駆動軸(43)は、回転子(42)に連結され、回転子(42)と一体に回転するように構成されている。固定子(41)と回転子(42)との間には、エアギャップ(44)が形成されている。
【0023】
固定子(41)は、固定子鉄心(41a)と、コイル(41b)とから構成されている。固定子鉄心(41a)は、円筒状に形成された鉄心本体(41c)と、この鉄心本体(41c)から内側に突出するコイル(41b)を巻き付けるためのティース(41d)とからなる。ティース(41d)は、複数本設けられており、周方向に等間隔に配置されている。鉄心本体(41c)には、ボルト挿通孔(41e)が上下方向に貫通するように形成されている。
【0024】
固定子(41)には、コイル(41b)の巻線方式として、集中巻(直巻)方式が採用されている。すなわち、各ティース(41d)にコイル(41b)がそれぞれ個別に巻き付けられている。そして、コイル(41b)が巻き付けられた互いに隣り合うティース(41d)同士の間には、図示省略するが隙間(ギャップ)が形成されている。
【0025】
上記電動機(40)の駆動軸(43)は、内側ケーシング(16)の中心線上を上下方向に延びるように配置され、圧縮室(36)を貫通している。駆動軸(43)は、圧縮室(36)の中に位置する部分が、該駆動軸(43)の回転中心から所定量偏心し、その上下の部分よりも大径の偏心部(43a)に構成されている。この偏心部(43a)に、上記圧縮機構(30)の回転ピストン(34)が嵌め込まれている。回転ピストン(34)は円環状で、運転中に、その外周面が実質的にシリンダ(31)の内周面と一点で接触する(実際には僅かなクリアランスが設けられている)ように形成されている。そして、駆動軸(43)の回転により、回転ピストン(34)がシリンダ(31)内を回動し、これにより、圧縮室(36)は、その容積を縮小させるように構成されている。
【0026】
フロントヘッド(32)とリアヘッド(33)には、駆動軸(43)の下端を支持する下部軸受部(32a,33a)が形成されている。この下軸受部(32a,33a)は、それぞれ滑り軸受けからなる。一方、電動機(40)の固定子(41)の上側には、軸受プレート(47)が配設されている。この軸受プレート(47)には、駆動軸(43)の上端を支持する転がり軸受からなる上軸受部(47a)と、冷媒を通過させるための貫通孔(47b)と、ボルト(49)を挿通させるためのボルト挿通孔(47c)とが設けられている。ボルト(49)は、軸受プレート(47)及び固定子鉄心(41a)のボルト挿通孔(47c,41e)に挿通されるとともにフロントヘッド(32)の締結孔(32b)に螺合されている。
【0027】
駆動軸(43)の下端部には、油ポンプ(43b)が設けられている。この油ポンプ(43b)は内側ケーシング(16)の底部に溜まった油を吸い上げ、この油を駆動軸(43)内に形成された油給油路(図示省略)を通して各摺動部へ供給するためのものである。
【0028】
外側ケーシング(11)の外側胴部(12)には、その上下方向の中間部において僅かに外側に膨出した膨出部(51)が形成されている。この膨出部(51)には、吸入空間(S1)へ冷媒ガスを導く吸入管(52)が取り付けられている。この吸入管(52)と上記吸入空間(S1)と上記圧縮機構(30)の吸入通路(37)とは、機外から圧縮室(36)へ吸入されるガスの通路を構成している。吸入管(52)は、膨出部(51)を貫通しており、その内端部は、上記吸入通路(37)の外端部に対向する位置で且つ膨出部(51)の内面と面一の状態になるように設けられている。外側胴部(12)の内面には、膨出部(51)の内側を覆うようにガスフィルター(53)が取り付けられている。このガスフィルター(53)は、冷媒ガス中に含まれる不純物を除去するためのものである。尚、吸入管(52)は、その内端部が吸入通路(37)の外端部に対向する位置に設けられる構成に限られるものではない。例えば、吸入管(52)は、その内端部が吸入通路(37)の外端部とは周方向あるいは図1における上下方向に位置ずれしている構成であってもよい。
【0029】
上記吸入管(52)は、内端部が膨出部(51)に接続される一方、径方向外側へ向かって延びるとともにその先で下方へ向かって湾曲している。そして、吸入管(52)における管の延びる方向の中間部には、ケーシング(10)の下端部とほぼ同じ高さの位置でU字状に折り曲げられた湾曲部(52a)が形成されており、この湾曲部(52a)よりも外側の外側部は上方に向かって延びている。この吸入管(52)の外側部における先端部は、吸入管(52)の内端部とほぼ同じ高さの位置で上方に開口している。すなわち、吸入管(52)は、管の延びる方向における湾曲部(52a)の中央部が底部となるように配置されている。
【0030】
吸入管(52)の湾曲部(52a)には、細管からなる連絡管(55)が接続されている。この連絡管(55)の外端部は、吸入管(52)の管壁を貫通して管内で開口している。連絡管(55)は、外側胴部(12)の径方向に延びるように水平に配置されていて、外側ケーシング(11)の外側下蓋部(19)を貫通している。この連絡管(55)の内端部は、吸入空間(S1)の底部の油溜まり(21)内で開口している。つまり、吸入管(52)の湾曲部(52a)の底部が、油溜まり(21)の油面よりも下方に位置するとともに、油溜まり(21)と吸入管(52)の湾曲部(52a)とが連通していて、油溜まり(21)の油が連絡管(55)を通して吸入管(52)へ向かって流れるようになっている。
【0031】
外側ケーシング(11)及び内側ケーシング(16)の上端部には、冷媒ガスを機外へ導く吐出管(57)が設けられている。吐出管(57)は、外側ケーシング(11)の外側上蓋部(13)と内側ケーシング(16)の内側上蓋部(18)との双方を上下方向に貫通している。この吐出管(57)は、圧縮機構(30)から吐出されて吐出空間(S2)に充満する吐出冷媒を機外へ案内する通路を構成している。吐出管(57)には、外側上蓋部(13)と内側上蓋部(18)との中間部において、吸入空間(S1)内で略1周周回するように形成された周回部が設けられている。この周回部は、内側ケーシング(16)が外側ケーシング(11)に対して変位するのを許容するために設けられるものである。
【0032】
外側ケーシング(11)には外側ターミナル(59)が、また内側ケーシング(16)には内側ターミナル(60)がそれぞれ固定されている。上記電動機(40)は、内側ターミナル(60)及び外側ターミナル(59)にリード線(図示省略)を介して接続されている。外側ターミナル(59)には外部の電源配線が接続されており、電源電圧が図外のインバータを介して電動機(40)に印加されるようになっている。つまり、電動機(40)は、インバータを介して電源に接続されることで、回転数を調整可能に構成されている。
【0033】
次に、この圧縮機(1)の運転動作について説明する。まず、上記電動機(40)に通電すると、駆動軸(43)が回転し、圧縮機構(30)では、回転ピストン(34)がシリンダ(31)の内周面にほぼ内接する状態を保ちながら所定の周回軌道上を旋回する。これにより、吸入管(52)では、冷媒ガスが吸入空間(S1)へ向かって流れる。このとき、吸入管(52)の湾曲部(52a)において連絡管(55)から油溜まり(21)の油が少しずつ流入している。つまり、吸入管(52)の湾曲部(52a)が油溜まり(21)の油面よりも下方に配置されているために、この油面と吸入管(52)の湾曲部(52a)とのヘッド差により、油溜まり(21)の油が吸入管(52)内へ流入している。そして、この油は吸入管(52)内で冷媒ガス中に溶け込み、この油分を含んだ冷媒ガスは、吸入管(52)から吸入空間(S1)へ導入される。吸入空間(S1)の冷媒ガスは、圧縮機構(30)の吸入通路(37)へ吸入されて圧縮室(36)へ導入される。尚、吸入空間(S1)では、油分の一部が冷媒ガスから分離され、この分離された油分は、油溜まり(21)に貯溜される。
【0034】
圧縮機構(30)では、冷媒ガスは、圧縮室(36)の容積が縮小するのに伴って圧縮されて高圧になる。そして、圧縮室(36)の圧力が内側ケーシング(16)内の圧力よりも所定値以上に大きくなると、圧縮機構(30)の吐出弁が開口し、冷媒ガスは圧縮室(36)から吐出空間(S2)へ吐出される。そして、吐出空間(S2)では、冷媒ガスが上方に向かって流れる。この冷媒ガスは、電動機(40)のエアギャップ(44)及びティース(41d)間のギャップを流れ、これにより電動機(40)が冷却されている。そして、この冷媒ガスは、その一部が軸受プレート(47)の貫通孔(47b)を流れる一方、その他が上軸受部(47a)を流れる。このため、上軸受部(47a)を構成するこりがり軸受が冷媒中の油分によって潤滑されている。そして、この冷媒ガスは、吐出管(57)を通して圧縮機(1)の外へ吐出される。
【0035】
一方、吐出空間(S2)内では、冷媒ガスに含まれる油分が分離されて内側ケーシング(16)内の底部に溜められる。すなわち、吸入空間(S1)内の油溜まり(21)の油は連絡管(55)を通して一旦吸入管(52)へと流れ、この油は冷媒ガスに同伴されて内側ケーシング(16)内に戻されている。
【0036】
したがって、本実施形態1によれば、油溜まり(21)の油面と吸入管(52)の湾曲部(52a)とのヘッド差を利用して吸入管(52)内へ油が流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)へ戻すことができる。この結果、電動機(40)の回転数によらず低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【0037】
(実施形態2)
図3は本発明の実施形態2を示す。尚、ここでは、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0038】
この実施形態2では、外側ケーシング(11)を貫通する第1吸入管(52)と、内側ケーシング(16)を貫通する第2吸入管(63)とが設けられている。そして、第2吸入管(63)をその中間部において油溜まり(21)の油に浸漬するようにしている。上記第1吸入管(52)と吸入空間(S1)と第2吸入管(63)とは、機外から圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ吸入されるガスの通路を構成している。
【0039】
外側ケーシング(11)の外側下蓋部(14)には、外側胴部(12)のすぐ内方で環状で且つ上方に盛り上がる保持部(65)が形成されており、この保持部(65)の上に台座部(23)が固定されている。そして、この台座部(23)上に配置されたコイルバネ(25)の上には保持プレート(67)が設けられている。この保持プレート(67)は、円形のプレートをプレス加工して成形したものであり、平板状の周縁部にコイルバネ(25)が当接している一方、中央部が、椀状の内側下蓋部(19)に沿う曲面形状に形成されて該内側下蓋部(19)に固定されている。
【0040】
上記第1吸入管(52)は、外側胴部(12)の下端部を貫通しており、水平方向に延びるように配置されている。そして、第1吸入管(52)の内端部は、先細形状に形成されるとともに、内側下蓋部(19)と台座部(23)との間に開口している。
【0041】
上記第2吸入管(63)には、管の延びる方向の中間部においてU字状に折り曲げられた湾曲部(63a)が形成されている。そして、湾曲部(63a)よりも内側の第2吸入管(63)の内側部と、湾曲部(63a)よりも外側の第2吸入管(63)の外側部とは、それぞれ上方に向かって延びて上記台座部(23)を貫通している。すなわち、第2吸入管(63)は、管の延びる方向における湾曲部(63a)の中央部が底部となるように配置されている。
【0042】
台座部(23)の下方は油溜まり(21)となっており、上記第2吸入管(63)の湾曲部(63a)は、この油溜まり(21)の油に浸漬されている。この湾曲部(63a)には、細孔からなる油孔(69)が設けられている。この油孔(69)は、第2吸入管(63)の管壁を貫通しており、油溜まり(21)内に開口している。つまり、第2吸入管(63)の湾曲部(63a)が油溜まり(21)の油面よりも下方に位置するとともに、この湾曲部(63a)に油孔(69)が形成されることで、油溜まり(21)の油が油孔(69)を通して第2吸入管(63)の管内に導入されるようになっている。
【0043】
第2吸入管(63)の内側部における上端部は、第1吸入管(52)の内端部のすぐ内方で上方に向かって開口している。一方、第2吸入管(63)の外側部における上端部は、第2吸入管(63)の内側部における上端部よりもさらに上方に位置している。この外側部の上端部は、圧縮機構(30)のリアヘッド(33)を貫通してシリンダ(31)に嵌入されている。シリンダ(31)には、径方向に貫通する横孔(71)が形成されている。この横孔(71)は、内端部が圧縮室(36)に連通する一方、外端部はキャップ(72)によって塞がれている。また、シリンダ(31)には、横孔(71)の径方向の中間部から下端に亘って貫通する縦孔(73)が形成されている。上記第2吸入管(63)の外側部における上端部は、この縦孔(73)に嵌め込まれている。これにより、第2吸入管(63)を通して吸入空間(S1)と圧縮室(36)とが連通可能となっている。
【0044】
次に、この圧縮機(1)の運転動作について説明する。この圧縮機(1)では、圧縮機構(30)の駆動により、冷媒ガスが第1吸入管(52)を流れて吸入空間(S1)へ流入する。吸入空間(S1)では、油分の一部が冷媒ガスから分離され、この分離された油分は、油溜まり(21)に貯溜される。一方、吸入空間(S1)内の冷媒ガスは、第2吸入管(63)へ流入し、圧縮室(36)へ向かって流れる。このとき、第2吸入管(63)の湾曲部(63a)において油孔(69)を通して油溜まり(21)の油が少しずつ第2吸入管(63)内へ流入している。つまり、油孔(69)が油溜まり(21)の油面よりも下方に配置されているために、この油面と油孔(69)とのヘッド差により、油溜まり(21)の油が第2吸入管(63)内へ導入されている。そして、この油は第2吸入管(63)内で冷媒ガス中に溶け込み、この油分を含んだ冷媒ガスは、シリンダ(31)内の圧縮室(36)へ吸入される。その後、冷媒ガスは、圧縮室(36)から吐出され、吐出空間(S2)に一時的に貯溜された後、吐出管(57)を通して機外へ吐出される。
【0045】
一方、吐出空間(S2)内では、冷媒ガスに含まれる油分が分離されて内側ケーシング(16)内の底部に溜められる。すなわち、吸入空間(S1)内の油溜まり(21)の油は油孔(69)を通して第2吸入管(63)の管内へと流れ、この油は冷媒ガスに同伴されて内側ケーシング(16)内に戻されている。
【0046】
したがって、本実施形態2によれば、油溜まり(21)の油面と第2吸入管(63)の油孔(69)とのヘッド差を利用して該第2吸入管(63)内へ油が流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。この結果、電動機(40)の回転数によらず低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【0047】
その他の構成、作用及び効果は上記実施形態1と同様である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0049】
請求項1の発明によれば、油溜まり(21)の油面と吸入管(52)の湾曲部(52a)とのヘッド差を利用して吸入管(52)内へ油が流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。この結果、低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【0050】
また、請求項2の発明によれば、油溜まり(21)の油面と第2吸入管(63)の油孔(69)とのヘッド差を利用して第2吸入管(63)の管内へ油が流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。この結果、低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【0051】
また、請求項3の発明によれば、機外から圧縮室(36)へ導入されるガスの通路の少なくとも一部に油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位を設け、この部位と油溜まり(21)の油面とのヘッド差を利用して油がガスの通路へ流入するようにしているので、圧縮機構(30)によるガスの吸入圧力の変動の影響を受けることなく、油を内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。この結果、低速運転時においても、吸入空間(S1)に溜まった油を安定して内側ケーシング(16)内へ戻すことができる。これにより、潤滑不良を起こすことのない信頼性の高い圧縮機(1)とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る圧縮機の正面方向から見たときの断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る圧縮機の側面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る圧縮機の図1相当図である。
【符号の説明】
(11) 外側ケーシング
(16) 内側ケーシング
(21) 油溜まり
(30) 圧縮機構
(36) 圧縮室
(37) 吸入通路
(52) 吸入管(第1吸入管)
(52a) 湾曲部
(55) 連絡管
(63) 第2吸入管
(63a) 湾曲部
(69) 油孔
(S1) 吸入空間
Claims (3)
- 外側ケーシング(11)と、該外側ケーシング(11)に支持された内側ケーシング(16)とを備え、該内側ケーシング(16)に圧縮機構(30)が収納された圧縮機であって、
上記外側ケーシング(11)に接続され、該外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)に連通する吸入管(52)と、
上記吸入空間(S1)と圧縮機構(30)の圧縮室(36)とを連通する吸入通路(37)とを備え、
上記吸入管(52)には、底部が吸入空間(S1)の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する湾曲部(52a)が形成される一方、
上記油溜まり(21)と吸入管(52)の湾曲部(52a)とに連通し、油溜まり(21)の油を吸入管(52)の湾曲部(52a)に導く連絡管(55)が設けられている
ことを特徴とする圧縮機。 - 外側ケーシング(11)と、該外側ケーシング(11)に支持された内側ケーシング(16)とを備え、該内側ケーシング(16)に圧縮機構(30)が収納された圧縮機であって、
上記外側ケーシング(11)に接続され、該外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)に連通する第1の吸入管(52)と、
上記吸入空間(S1)と圧縮機構(30)の圧縮室(36)とを連通する第2の吸入管(63)とを備え、
上記第2の吸入管(63)には、底部が吸入空間(S1)の油溜まり(21)の油に浸漬する湾曲部(63a)が形成され、
上記第2の吸入管(63)の湾曲部(63a)には、油溜まり(21)の油を第2の吸入管(63)の管内に導く油孔(69)が形成されている
ことを特徴とする圧縮機。 - 外側ケーシング(11)と、該外側ケーシング(11)に支持された内側ケーシング(16)とを備え、該内側ケーシング(16)に圧縮機構(30)が収納された圧縮機であって、
機外から上記圧縮機構(30)の圧縮室(36)へ吸入されるガスの通路には、上記外側ケーシング(11)と内側ケーシング(16)との間の吸入空間(S1)の油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位が設けられ、
上記ガスの通路における油溜まり(21)の油面よりも下方に位置する部位は、油溜まり(21)に連通し、該油溜まり(21)の油が流入するように構成されている
ことを特徴とする圧縮機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003176451A JP2005009443A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | 圧縮機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003176451A JP2005009443A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | 圧縮機 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2005009443A true JP2005009443A (ja) | 2005-01-13 |
Family
ID=34099332
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003176451A Pending JP2005009443A (ja) | 2003-06-20 | 2003-06-20 | 圧縮機 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2005009443A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112253458A (zh) * | 2020-10-13 | 2021-01-22 | 珠海格力电器股份有限公司 | 一种双层壳体压缩机及空调器 |
-
2003
- 2003-06-20 JP JP2003176451A patent/JP2005009443A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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