JP2005008657A - 低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物 - Google Patents
低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】(A)分子中に2個以上のアルケニル基を含有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン;(B)ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に平均2個を越える数有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;(C)白金族金属化合物;(D)平均粒径が2.0〜100μmのマイカ;および(E)ケイ素原子に結合した水素原子と、ケイ素原子に結合した特定の官能基含有側鎖とを有する有機ケイ素化合物を含む低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物;ならびにそれを硬化させて得られるガスケット。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、付加反応によって硬化するポリオルガノシロキサン組成物に関し、特に低い透湿性を示すポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
未硬化状態で流動性を示し、硬化によってゴム状弾性体を形成する硬化性ポリオルガノシロキサン組成物としては、硬化機構により、縮合反応硬化型の組成物と、付加反応硬化型の組成物とがある。前者は室温で硬化し、良好な接着性を示すが、硬化に長時間を要するうえ、空気中の水分の供給が充分でない部位における硬化性が悪いこと、および硬化の際に副生物を発生させるので収縮を生じ、寸法安定性に欠けるばかりでなく、副生物によって処理対象や周辺の部品を汚染させるなどの問題がある。それに対して後者は、加熱により短時間に硬化することが可能で、空気中の水分の供給が充分でない部位においても硬化性が優れ、副生物の発生がないので、収縮や汚染を生じないなどの特徴を有する。
【0003】
このような流動性の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、電子素子の電子部品のシーリング材、封止剤、保護材、絶縁材料などの用途に広く用いられている。しかしながら、ポリオルガノシロキサンは、分子鎖の間隙が大きいために透湿性が大きく、ポリオルガノシロキサン層だけでは、湿気の透過による影響を防ぐことができないので、必要に応じて他の材料による防湿層を設けるなどの対策を要し、その改良が求められていた。
【0004】
特に、ハードディスク装置は、円盤に磁性体層を設けたハードディスクを密閉容器に収容し、磁気ヘッドにより情報を読み出す装置であり、塵埃および湿気の侵入を防止する必要から、容器と蓋の間に、透湿性の低いガスケットを備える必要がある。
【0005】
特許文献1および2には、縮合反応硬化型のポリオルガノシロキサン組成物においては、マイカおよび所望に応じて30重量%までのタルクを含む蒸気バリヤー性充填剤を含有することにより、硬化して透湿性の低い封止剤を与える室温硬化性シリコーン組成物が開示されている。しかしながら、このような封止剤は、縮合反応硬化型ポリオルガノシロキサンの欠点である、硬化時間が長くて作業性が劣ることと、硬化の際に生じる副生物によって、内容が汚染されるという問題点を有している。また、透湿性を抑制することにより、空気中の水分が硬化反応に寄与するこの種のポリオルガノシロキサン組成物は、深部硬化性が著しく低下する。
【0006】
このようなマイカによる透湿性の抑制を、付加反応硬化型のポリオルガノシロキサン組成物に適用する試みは、付加反応硬化型の場合に、ポリオルガノシロキサンのマイカへの親和性が乏しいために、均質で機械的性質の優れた硬化シロキサン層を形成させることができず、成功していなかった。
【0007】
ハードディスク装置用ガスケットに関しては、特許文献3に、未硬化の状態では流動性の付加反応硬化型シリコーンゴムを、パッキンとして用いることが開示されているが、水蒸気に対するシール性が悪い。
【0008】
上記の対策として、特許文献4には、付加反応硬化型シリコーンゴムの分子鎖を形成するケイ素原子の間に、エーテル酸素原子を含むフルオロカーボン鎖を導入したケイ素ポリマーをベースポリマーとして用いることにより、水蒸気に対するシール性を向上させることが開示されている。しかしながら、このような分子鎖の形成には、高価なフッ素資源と、煩雑な合成法を用いる必要があり、その実用性は乏しい。
【0009】
【特許文献1】
特開昭53−73251号公報
【特許文献2】
特開昭53−74560号公報
【特許文献3】
実開昭62−98098号公報
【特許文献4】
特開平05−144246号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、付加反応型ポリオルガノシロキサンの特徴を生かしながら、硬化して透湿性の低いシリコーンゴムを与えるポリオルガノシロキサン組成物を提供することである。本発明のもう一つの課題は、透湿性の低いガスケット、特にハードディスク装置用ガスケットを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、付加反応型ポリオルガノシロキサンに、特定範囲のマイカと、特定の側鎖を有する有機ケイ素化合物を配合することによって、その課題を解決しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(A)分子中に2個以上のR1(式中、R1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が、0.1〜500Pa・sであるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン 100重量部;
(B)ケイ素原子に結合した、分子中に平均2個を越える数の水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン (A)に存在するアルケニル基1個に対するケイ素原子に結合した水素原子の数が、0.5〜5.0になる量;
(C)白金族金属化合物 白金系金属原子を、(A)の量に対して0.1〜1,000重量ppm含有する量;
(D)平均粒径が2.0〜100μmのマイカ 20〜200重量部;ならびに
(E)ケイ素原子に結合した水素原子と、ケイ素原子に結合した下記一般式(I):
【化2】
(式中、Q1は、ケイ素原子とエステル結合の間に2個以上の炭素原子を有する炭素鎖を形成する、直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し;Q2は、酸素原子と側鎖のケイ素原子の間に3個以上の炭素原子を有する炭素鎖を形成する、直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し;R3は、炭素数1〜3のアルキル基を表し;nは、1〜3の整数である)
で示される側鎖とを有する有機ケイ素化合物 0.5〜20重量部
を含む低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、そのようなポリオルガノシロキサン組成物を硬化させて得られるガスケットに関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる(A)成分のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンは、本発明の低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物において、ベースポリマーとなる成分である。この(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有し、(B)成分のSi−H結合との付加反応により、網状構造を形成することができるものであれば、どのようなものであってもよい。代表的には、一般式(II):
(R1)a(R2)bSiO(4−a−b)/2 (II)
(式中、
R1は、アルケニル基を表し;
R2は、脂肪族不飽和炭素−炭素結合を含まない、非置換または置換の1価の炭化水素基を表し;
aは、1または2であり;
bは0〜2の整数であり、ただし、a+bは2または3である)
で示されるアルケニル基含有シロキサン単位を、分子中に少なくとも2個有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンである。
【0015】
(A)成分のシロキサン骨格は、直鎖状でも分岐状でもよく、両者を併用しても差支えない。合成および平均重合度の制御が容易なことから、(A)成分は、直鎖状のものが好ましく、硬化後の組成物に優れた機械的性質を与える必要がある場合は、(A)成分全体の20重量%までの範囲で、分岐状のものを併用することがより好ましい。
【0016】
R1としては、ビニル、アリル、3−ブテニル、5−ヘキセニルなどが例示され、合成が容易で、また硬化前の組成物の流動性や、硬化後の組成物の耐熱性を損ねないという点から、ビニル基が最も好ましい。aは、合成が容易なことから、1が好ましい。
【0017】
R2および(A)成分中の他のシロキサン単位のケイ素原子に結合した有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルのようなアルキル基;シクロヘキシルのようなシクロアルキル基;フェニルのようなアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルのようなアラルキル基;クロロメチル、クロロフェニル、2−シアノエチル、3,3,3−トリフルオロプロピルのような置換炭化水素基が例示される。これらのうち、合成が容易であって、機械的強度および硬化前の流動性などの特性のバランスが優れているという点から、メチル基が最も好ましい。
【0018】
R1は、ポリオルガノシロキサン(A)の分子鎖の末端または途中のいずれに存在してもよく、その両方に存在してもよいが、硬化後の組成物に優れた機械的性質を与えるためには、少なくともその両末端に存在していることが好ましい。なお、(A)成分のシロキサン骨格は、実質的に直鎖状であるが、若干の分岐が存在してもよい。
【0019】
(A)成分の粘度は、未硬化状態の組成物が、良好な流動性を示して、注型やポッティングの際に優れた作業性を示し、硬化後の組成物が、優れた機械的強度、および適度の弾性と硬さを示すために、23℃における粘度は、0.1〜500Pa・sの範囲である。この粘度範囲は、代表的な(A)成分である、両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキシ単位からなるポリメチルビニルシロキサンの場合、数平均重合度として80〜2,000に該当する。23℃における粘度の下限は、0.2Pa・sが好ましく、0.3Pa・sがさらに好ましい。上限は、300Pa・sが好ましく、200Pa・sがさらに好ましい。(A)成分は、1種を用いても、2種以上のものを混合して用いても差支えなく、後者の場合、粘度とは、混合されたアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンの粘度を意味する。
【0020】
本発明で用いられる(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、分子中に含まれるヒドロシリル基が、(A)成分中のR1との間で付加反応することにより、(A)成分の架橋剤として機能するものであるが、一部に、後述のように鎮長延長剤として機能するものを含んでいてもよい。そのうち、架橋剤として機能するものは、硬化物を網状化するために、該付加反応に関与するケイ素原子に結合した水素原子を、分子中に少なくとも3個有している。また、目的に応じて、良好な作業性を得るために、未硬化の組成物の見掛け粒度を下げながら、硬化後のゴムの硬さを下げ、伸びを向上させるために、(B)成分の一部として鎮長延長剤を配合することがある。鎮長延長剤としては、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に2個有するものが用いられ、そのような水素原子は、直鎖状の(B)成分の両末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0021】
(B)成分は、代表的には、一般式(III):
(R4)cHdSiO(4−c−d)/2 (III)
(式中、
R4は、脂肪族不飽和炭素−炭素結合を含まない、非置換または置換の1価の炭化水素基を表し;
cは、0〜2の整数であり;
dは、1または2であり、ただし、c+dは1〜3の整数である)
で示される単位を、(B)成分が架橋剤のみからな場合は分子中に少なくとも3個有し、架橋剤と鎮長延長剤からなる場合は分子中に平均2個を越える数有する。
【0022】
R4および(B)成分の他のシロキサン単位のケイ素原子に結合した有機基としては、前述の(A)成分におけるR2と同様のものが例示され、それらの中でも、合成が容易な点から、メチル基が最も好ましい。また、合成が容易なことから、dは1が好ましい。
【0023】
(B)成分におけるシロキサン骨格は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。また、これらの混合物を用いてもよい。
【0024】
(B)成分の重合度は特に限定されないが、同一のケイ素原子に2個以上の水素原子が結合したポリオルガノハイドロジェンシロキサンは合成が困難なので、3個以上のシロキサン単位からなることが好ましく、硬化温度に加熱しても発揮せず、かつ流動性に優れて(A)成分と混合しやすいことから、シロキサン単位の数は、6〜200個がさらに好ましく、10〜150個が特に好ましい。
【0025】
(B)成分の配合量は、充分な接着力が得られ、また硬化して得られるシリコーンゴムが優れた機械的性質を有することから、(A)成分中のR1基に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の比(H/Vi)が、0.5〜5.0、好ましくは1.0〜3.0となるような量である。H/Viが0.5未満では、優れた機械的強度を有するゴム状弾性体が得られず、5.0を越えると、硬化の際に発泡したり、(D)成分とマトリックスの間に空隙を生じたりして、透湿性を上げる。
【0026】
本発明で用いられる(C)成分の白金系触媒は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のヒドロシリル基との間の付加反応を促進させ、また同様の付加反応によって、架橋重合体のシロキサン網状骨格に、(E)成分を導入するための触媒である。
【0027】
白金族金属化合物としては、白金、ロジウム、パラジウムのような白金族金属原子の化合物が用いられ、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールの反応生成物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ケトン錯体、白金−ホスフィン錯体のような白金化合物;ロジウム−ホスフィン錯体、ロジウム−スルフィド錯体のようなロジウム化合物;パラジウム−ホスフィン錯体のようなパラジウム化合物などが例示される。
【0028】
これらのうち、触媒活性が良好な点から、塩化白金酸とアルコールの反応生成物および白金−ビニルシロキサン錯体が好ましく、短時間に硬化して接着性を発現する必要がある場合には、白金−1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体が特に好ましい。しかし、必要な硬化速度は、低透湿性シリコーンゴムを設ける部位の形状や、それに伴って必要な作業時間によっても異なるので、(C)成分と硬化遅延剤との組合せで、任意に選択することができる。
【0029】
(C)成分の配合量は、優れた硬化速度が得られることから、(A)成分と(B)成分の合計量に対して、白金族金属原子換算で通常0.1〜1,000重量ppmであり、好ましくは0.5〜200重量ppmである。
【0030】
本発明で用いられる(D)成分は、本発明の組成物を硬化させて得られるゴム状弾性体の透湿性を低下させる、本発明において特徴的な成分である。(D)成分は、平均粒径が2.0〜100μmであり、5.0〜60μmが好ましい。2.0μm未満では、透湿性を低下させる効果が低く、100μmを越えると、成形性が悪く、押出しによってビードを形成しようとしても、表面が平滑なビードが得られない。(D)成分としては、白雲母、金雲母、黒雲母のような天然マイカのほか;合成マイカを挙げることができる。不純物が少なく、硬化した組成物に優れた機械的性質を与えることから、白雲母が好ましい。これらのマイカは、一般に扁平な粉末であり、ここで粒径とは、扁平面の最大径をいう。
【0031】
(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して20〜200重量部であり、40〜100重量部が好ましい。20重量部未満では、透湿性を低下させる効果が低く、200重量部を越えてもそれに伴う透湿性を低下させる効果がなく、一方、硬化によって得られるゴム状弾性体の硬さが高すぎて、ガスケットとして用いる際のシール性を損う。
【0032】
本発明に用いられる(E)成分は、(D)成分と、本発明の組成物においてマトリックスを形成する他の成分との間の親和性を高めて、組成物の硬化物、たとえばガスケットの成形性を向上させ、かつ硬化後に、機械的応力によって(D)成分の面で裂けることを防ぐ機能があり、また本発明の組成物に基材への接着性を付与する機能をも有する。
【0033】
(E)成分は、組成物の硬化のための付加反応の際に、(A)成分との付加反応によって、架橋したシロキサン構造に導入され、式(I)で示される側鎖が、架橋ポリシロキサンの(D)成分への親和性を高めるとともに、基材への接着性を発揮する部分として、組成物の接着性に寄与する。
【0034】
(E)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子と、ケイ素原子に結合した下記式(I):
【0035】
【化3】
【0036】
(式中、Q1、Q2およびR3は、それぞれ前述のとおりである)
で示される側鎖とを有する有機ケイ素化合物である。Q1としては、エチレン、トリメチレン、2−メチルエチレン、テトラメチレンなどのアルキレン基が例示され、合成および取扱いが容易なことから、エチレン基および2−メチルエチレン基が好ましい。Q2としては、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、テトラメチレンなどのアルキレン基が例示され、合成および取扱いが容易なことから、トリメチレン基が好ましい。R3としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどのアルキル基;および2−メトキシエトキシ基が例示され、良好な接着性を与え、かつ加水分解によって生じるアルコールが揮発しやすいことから、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0037】
(E)成分の特徴である上記の水素原子と上記の側鎖とは、合成が容易なことから、別個のケイ素原子に結合していることが好ましい。したがって、(E)成分の基本部分は、鎖状、分岐状または環状シロキサン骨格を形成していることが好ましく、特定の化合物を制御よく合成し、精製しうることから、環状シロキサン骨格がさらに好ましい。(E)成分に含まれるSi−H結合の数は、1個以上の任意の数であり、環状シロキサン化合物の場合、2個または3個が好ましい。
【0038】
このような(E)成分としては、下記の化合物ならびにその異性体および同族体が例示され、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても差支えない。
【0039】
【化4】
【0040】
(E)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲であり、特に基材への接着性が必要な場合は2〜20重量部が好ましく、3〜15重量部がさらに好ましい。(E)成分が0.5重量部未満では、(D)成分への親和性および基材への接着性が充分でなく、20重量部を越えると、(A)成分と(B)成分の間の付加反応による架橋の密度が減少して、硬化によって得られた接着層の機械的強度が減少するばかりではなく、200℃以上の高温にさらされると、硬化して得られたゴムに残存するアルコキシ基の縮合反応による架橋が進行して、硬さが上昇し、伸びが低下して、接着層が破壊される。
【0041】
本発明の組成物は、使用目的や使用形態に応じて、硬化の際に基材への接着性を示さないタイプでも、接着性を発現するタイプでもよく、(E)成分の量、および併用する接着性付与剤の種類と量を任意に選択することによって、いずれのタイプのものも調製できる。処理によって処理対象に優れた防透湿性を与えるためには、接着性を発現するタイプであることが好ましい。
【0042】
本発明の組成物に、基材への優れた接着性を得る必要がある場合には、(C)成分の触媒能を阻害しない範囲で、接着性付与剤を併用しても差支えない。そのような接着性付与剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシランのような3−グリシドキシプロピル基含有アルコキシシラン類;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランのような2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基含有アルコキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルビニルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メチルアリルジメトキシシランのようなアルケニルアルコキシシラン類;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシランのような(メタ)アクリロキシプロピルアルコキシシラン類;アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリプロポキシド、アルミニウムトリブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド;チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトライソプロペニルオキシドのようなチタンアルコキシド;ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシドのようなジルコニウムアルコキシドなどが例示される。このような接着性付与剤を(E)成分と併用することにより、基材への接着強さを高めることができる。接着性付与剤の配合量は、その種類によっても異なるが、金属アルコキシドの場合、(A)成分100重量部に対して0.2〜5重量部が好ましい。
【0043】
本発明の組成物に、場合によっては配合してもよい接着性付与剤として、マレイン酸ジアリルのような分子中に極性基を含む有機化合物を挙げることができる。この種の接着性付与剤は、組成物の硬化反応速度を抑制して、取扱いの作業性、および接着性の発現と硬化速度とのバランスの向上にも寄与する。硬化抑制剤としては、上記のほか、アセチレンアルコール類やその誘導体のような、不飽和を含む既知の化合物を用いることができる。
【0044】
本発明の組成物に、硬化前の段階で適度の流動性を与え、硬化して得られるゴム状弾性体に、その用途に応じて要求される高い機械的強度を付与するために、無機質充填剤を添加することが好ましい。無機質充填剤は、平均粒径0.1〜50μmのものが好ましい。そのような無機質充填剤としては、けいそう土、粉砕石英、溶融石英、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム、有機酸表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄などが例示され、押出し作業性と、硬化して得られるゴム状弾性体に必要な物性に応じて選択される。また、目的に応じてカーボンブラックのような導電性充填剤を配合してもよい。これらの充填剤は、平均粒径が50μm以下であることが好ましい。その添加量は、通常、(A)成分100重量部に対して100重量部以下である。
【0045】
さらに、本発明の組成物には、目的に応じて、顔料、チクソトロピー性付与剤、押出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線防止剤、防かび剤、耐熱性向上剤、難燃化剤など、各種の添加剤を加えてもよい。また、用途によっては、本発明の組成物を、トルエン、キシレンのような有機溶媒に溶解ないし分散させて用いてもよい。
【0046】
本発明の組成物は、(A)〜(E)成分、およびさらに必要に応じて配合される他の成分を、万能混練機、ニーダーなどの混合手段によって均一に混練して調製することができる。また、安定に長期間貯蔵するために、(B)成分と(E)成分に対して(C)成分が別の容器になるように、適宜、2個の容器に配分して保存しておき、使用直前に混合し、減圧で脱泡して使用に供してもよい。
【0047】
本発明のポリオルガノシロキサン組成物を、湿気を遮断すべき部位、たとえばその目的でガスケットを形成すべき部位に注入、滴下、流延、注型、押出し成形などの方法により、またはトランスファー成形や射出成形による一体成形によって、処理対象物に付着させ、加熱して硬化させることにより、シリコーンゴムを得ることができる。硬化条件は、(C)成分と反応抑制剤の種類および添加量によって、室温から250℃の間の温度で任意に設定できるが、通常130〜170℃で5〜30分であり、前述のように、組成を選択することにより、硬化の際に、基材に対する接着性を発現させることができる。また、圧縮永久ひずみを小さくするために、硬化後、さらに150〜200℃で2〜4時間加熱することもできる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例において、部は重量部を示し、粘度は23℃における粘度を示す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
実施例および比較例に、(A)および(B)成分として、下記のポリシロキサンを用いた。以下、シロキサン単位を、次のような記号で示す。
M 単位: (CH3)3SiO1/2−
MH単位: (CH3)2HSiO1/2−
Mv単位: (CH3)2(CH2=CH)SiO1/2−
D 単位: −(CH3)2SiO−
DH単位: −(CH3)HSiO−
Q単位: SiO4/2(4官能性)
A−1:両末端がMv単位で封鎖され、中間単位がD単位からなり、23℃における粘度が3Pa・sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン;
A−2:M単位、Mv単位およびQ単位からなり、モル単位比がM5MvQ8で示される分岐状ポリメチルビニルシロキサン;
B−1:両末端がM単位で封鎖され、中間単位が50モル%のDH単位と残余のD単位からなり、23℃における粘度が20mPa・sである直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン;
B−2:両末端がMH単位で封鎖され、中間単位がD単位からなり、23℃における粘度が20mPa・sである直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン。
【0050】
実施例および比較例に、(C)成分として、下記の白金錯体を用いた。
C−1:塩化白金酸をオクチルアルコールと加熱することによって得られ、白金含有量が4重量%である錯体。
C−2:塩化白金酸をMvMvで示されるシロキサン二量体と加熱することによって得られ、白金含有量が2重量%である錯体;
【0051】
実施例および比較例に、下記のマイカ粉末を用いた。
D−1:平均粒径1.5μmの白雲母粉末;
D−2;平均粒径5.2μmの白雲母粉末;
D−3;平均粒径22.5μmの白雲母粉末;
D−4;平均粒径55.1μmの白雲母粉末;
D−5;平均粒径150μmの白雲母粉末;
【0052】
実施例および比較例に、(E)成分として、下記の有機ケイ素化合物を用いた。
E−1:式:
【0053】
【化5】
【0054】
で示される環状シロキサン。
【0055】
実施例および比較例に、下記の無機質充填剤を用いた。
S−1:平均粒径1.2μmの粉砕石英。
【0056】
実施例1〜8、比較例1〜3
表1に示す配合により、万能混練機にA−1とA−2の混合物(実施例7はA−1単独)をとり、(D)成分とS−1を添加して、100℃で3時間減圧下に混練し、40℃以下まで冷却して、マレイン酸ジアリルとC−1を混合した。次に、あらかじめ調製しておいたB−1とE−1(実施例8はさらにB−2)の混合物を添加して、10分間すばやく減圧混練することにより、脱泡を行って、ポリオルガノシロキサン組成物を調製した。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例および比較例の組成物の、成形性、透湿度および機械的性質の評価には、次のような方法を用いた。
(1)成形性
調製した組成物を液状ガスケット押出し用カートリッジに充填し、50mm×200mm×2mmのアルミニウム板の表面に、直径5mmのビード状に押出して、加熱炉中で150℃に10分間加熱して硬化させ、ビードの状態を観察した。
(2)透湿度
調製した組成物を、表面にポリテトラフルオロエチレン処理を施したステンレス鋼製金型に注型し、150℃で1時間加熱して硬化させることにより、厚さ1.0mmのシリコーンゴムシートを作製した。これを、JIS Z0208に準拠して、温度40℃、湿度90%RHで透湿性を評価した。
(3)機械的性質
150℃で1時間加熱して硬化させることにより作製した、所定の厚さのシートを用いて、JIS K6249により、硬さ(タイプAデュロメータ)、引張強さおよび切断時伸びの測定を行った。
【0059】
評価結果を、表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2から明らかなように、平均粒径が2.0μm以上のマイカを配合した組成物を硬化させて得られた試験片は、透湿性が充分に低下していた。ただし、平均粒径が150μmのマイカを配合した比較例1の組成物は、その粒径が大きいために、成形の際にむらを生じ、ビード表面が平滑でなくなって、シール性の良好なビードが得られず、機械的性質も劣っていた。一方、平均粒径が1.5μmのマイカを用いた比較例2の組成物では、粉砕石英のみを用いた比較例1に比べると低い当湿度を示すものの、その透湿性は満足すべき水準でなかった。
【0062】
【発明の効果】
本発明によって、短時間の加熱で硬化し、収縮や、副生物による部品への汚染がないという付加反応型シリコーンゴムの特徴を生かしながら、容易に入手できる材料を用いて、透湿性の低い硬化物を与えるポリオルガノシロキサン組成物を提供することができる。本発明のポリオルガノシロキサン組成物は、使用目的に応じて、非接着、片面接着または両面接着のFIPGとして施工し、硬化させて、電子部品や電子機器の防湿ガスケットを形成させることができる。本発明の組成物を硬化させて得られるガスケットは、透湿性が低く、電子部品や電子機器の周辺に用いるガスケット、特にハードディスク装置の容器と蓋の間の防湿に用いるガスケットとして有用である。
Claims (6)
- (A)分子中に2個以上のR1(式中、R1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が、0.1〜500Pa・sであるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン 100重量部;
(B)ケイ素原子に結合した、分子中に平均2個を越える数の水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン (A)に存在するアルケニル基1個に対するケイ素原子に結合した水素原子の数が、0.5〜5.0になる量;
(C)白金族金属化合物 白金系金属原子を、(A)の量に対して0.1〜1,000重量ppm含有する量;
(D)平均粒径が2.0〜100μmのマイカ 20〜200重量部;ならびに
(E)ケイ素原子に結合した水素原子と、ケイ素原子に結合した下記一般式(I):
で示される側鎖とを有する有機ケイ素化合物 0.5〜20重量部
を含む低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物。 - (A)の23℃における粘度が、0.2〜300Pa・sである、請求項1記載の低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物。
- (A)のR1が、ビニル基である、請求項1または2記載の低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物。
- (D)の平均粒径が、5.0〜60μmである、請求項1〜3のいずれか1項記載の低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の低透湿性ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させて得られるガスケット。
- ハードディスク装置用である、請求項5記載のガスケット。
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