JP2005008075A - 走行装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】差動装置によらない簡単な構成で、走行装置を操舵可能とする。
【解決手段】本体1を移動可能に支持する少なくとも一対の主輪2と、前記主輪の回転を妨げない位置に回転駆動可能に取り付けられた支持部材3と、前記支持部材3の回転中心から変位した部位に取り付けられ支持部材3を足場に駆動されて先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることの可能なアーム4とを具備する走行装置において、前記主輪2を互いに独立に回転可能とし、かつ、前記アーム4の運動をそれぞれの主輪2に伝達しこれら主輪2を回転させる伝達手段8を設け、さらに前記伝達手段8に遊びを設けて、この遊びにより一方の主輪2の回転位相を他方の主輪2の回転位相に対して所定範囲でずらすことができるようにした。
【選択図】図1
【解決手段】本体1を移動可能に支持する少なくとも一対の主輪2と、前記主輪の回転を妨げない位置に回転駆動可能に取り付けられた支持部材3と、前記支持部材3の回転中心から変位した部位に取り付けられ支持部材3を足場に駆動されて先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることの可能なアーム4とを具備する走行装置において、前記主輪2を互いに独立に回転可能とし、かつ、前記アーム4の運動をそれぞれの主輪2に伝達しこれら主輪2を回転させる伝達手段8を設け、さらに前記伝達手段8に遊びを設けて、この遊びにより一方の主輪2の回転位相を他方の主輪2の回転位相に対して所定範囲でずらすことができるようにした。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に重量運搬装置、階段昇降機、電動式車椅子、介護支援機器、移乗支援機器、リハビリ機器、じょくそう予防機器、歩行支援機器、段差解消機、乗馬練習機、電動揺椅子、電動揺籃、フィットネス機器、電動盲導犬、車輪移動式ロボット等としての応用に好適な、走行装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種の走行装置として多様なものが存在している。例えば、荷物を運搬するための走行装置としてフォークリフト、リフタ、手押し車等が、人を運搬するための走行装置として車椅子等が、それぞれ周知のところである。これらの走行装置が走行する走行路には時として段差や障害物が存在しているが、下記特許文献1に示されるように、段差や障害物の存在する道程を踏破させるための段差昇降機構が既に発明されている。特許文献1に示されている段差昇降機構は、回転駆動可能な支持部材と、支持部材の回転中心から変位した部位に取り付けられその先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることができるアームとを具備してなり、アームの先端部を接地させながら支持部材及びアームを駆動することで走行装置本体を上下動させ得るものである。
【0003】
加えて、段差昇降機構の支持部材やアームを駆動するためのアクチュエータを利用して走行装置を走行させることも考えられている。特許文献1では、対をなす主輪間に単一の駆動輪を設けアームの動作を該駆動輪に伝達して回転駆動することで走行する態様や、アームを主輪に直接に接続し該主輪を回転駆動することで走行する態様が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−127866号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、比較的径寸法が小さい単一の駆動輪を回転駆動する態様は、走行路面に凹凸がある場合や、走行路が砂利道であるような場合に走行が不安定になるという不具合を有する。従って、駆動輪を複数としたり比較的径寸法が大きい主輪を回転駆動したりすることが望ましいのであるが、このようなものであると、差動装置を実装しない限り走行中の走行装置の進行方向を変えることが困難となる。
【0006】
以上の問題に鑑みて、本発明は、段差昇降機構が内包するアクチュエータを利用して走行運転し得るような走行装置において、その進行方向を容易に変えられるようにすることを、差動装置によらない簡単な構成で実現しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決すべく、本発明では、本体を移動可能に支持する少なくとも一対の駆動輪と、前記駆動輪の回転を妨げない位置に回転駆動可能に取り付けられた支持部材と、前記支持部材の回転中心から変位した部位に取り付けられ支持部材を足場に駆動されて先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることの可能なアームとを具備する走行装置において、前記駆動輪を互いに独立に回転可能とし、かつ、前記アームの運動をそれぞれの駆動輪に伝達しこれら駆動輪を回転させる伝達手段を設け、さらに前記伝達手段に遊びを設けて、この遊びにより一の駆動輪の回転位相を他の駆動輪の回転位相に対して所定範囲でずらすことができるように構成した。このようなものであれば、支持部材またはアームを駆動するアクチュエータが供給する駆動力を利用して駆動輪を回転駆動し、連続走行を行うことができる。その上で、アームの動作にかかわらず、一方の駆動輪の回転位相を他方の駆動輪のそれに対して容易にずらすことができるため、簡単に進行方向を変更できるものとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1、図2に示すように、本実施形態における走行装置の本体1は、一対の駆動輪たる主輪2によって走行可能に支持されている。本体1には、人や荷物を載置するためのシート部(図示せず)が設けられる。例えば、既存の車椅子等の如く、被介護者が着座できるシート部が本体1の適宜の部位に取り付けられる。かつ、該走行装置は、段差や障害物の存在する道程を踏破するための段差昇降機構を具備する。段差昇降機構は、前記主輪2の回転を妨げない位置に回転駆動可能に取り付けられた支持部材たるクランク3と、このクランク3の軸心即ち回転中心から変位した部位に取り付けられたアーム4と、これらクランク3、アーム4を駆動するための駆動力を出力するアクチュエータ6a、6bとを包含してなる。該アーム4は、前記クランク3を足場に駆動されて、その先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることが可能となっている。
【0009】
段差昇降機構に関して詳述する。クランク駆動用アクチュエータ6a、アーム駆動用アクチュエータ6bは、主輪2を受ける車軸5と略同一軸線上に配置される。クランク駆動用アクチュエータ6aとアーム駆動用アクチュエータ6bとは、互いに独立に駆動可能である。クランク3は、基端を前記クランク駆動用アクチュエータ6aに軸6a1を介して固定され、その先端を主輪2間において軸6a1周りに回転し得るように延出させたものである。アーム4は、前記クランク3の延出端に水平支軸41を介して設けられる。即ち、アーム4はクランク3の延出端を足場(言い換えるならば、支点)として前記水平支軸41を軸に回動駆動される。また、アーム4の先端側には、側面視主輪2とほぼ同径の部分円弧状または楕円弧状をなす接地面を有する接地部42を設けてある。そして、前記水平支軸41には、スプロケット7aが固定されている。該スプロケット7aは、スプロケットチェーン7bを介して、前記アーム駆動用アクチュエータ6bの軸6b1に取り付けたスプロケット7cに接続されている。つまり、水平支軸41に固定されたスプロケット7aは、スプロケットチェーン7bを介してアーム駆動用アクチュエータ6bから駆動力の伝達を受ける。このように、クランク3はクランク駆動用アクチュエータ6aによって駆動可能とされ、アーム4はアーム駆動用アクチュエータ6bによって駆動可能とされている。
【0010】
走行装置が下段差を降りる際の動作について説明する。主輪2が下段差に臨んだとき、図3(a)に示すように、クランク駆動用アクチュエータ6aによってクランク3を回転し、かつアーム駆動用アクチュエータ6bによってアーム4を駆動して、該アーム4の端部若しくはアーム4の先端に設けた接地部42を下段差の段床に接地させる。そして、接地部42が転動しながら車軸5(あるいは、クランク駆動用アクチュエータ6aの軸心)に近づくようにクランク3及びアーム4を駆動し、図3(b)に示すように、走行装置を下降させて主輪2を下段床に接地させる。
【0011】
続いて、走行装置が上段差を昇る際の動作について説明する。主輪2が上段差に臨んだとき、図3(b)に示すように、クランク駆動用アクチュエータ6a及びアーム駆動用アクチュエータ6bによってクランク3及びアーム4を駆動して、接地部42を下段床に接地させる。そして、図3(a)に示すように、アーム4の先端に設けた接地部42を車軸5から遠ざかる方向へ移動させる。即ち、接地部42が下段床に接地して転動している状態において、クランク3の基端が軸着されている軸6a1を中心としてクランク3が回転運動をし、その反作用によって走行装置が上段差を越えることができる位置まで持ち上がることとなる。
【0012】
因みに、本体1には、上方または後上方に延出するハンドル部11を取り付けてある。走行装置を運転する運転者は、このハンドル部11を把持して、本体1を操作することができる。また、本体1に、平坦な走行路上にて前輪または後輪として機能し主輪2とともに本体1を移動可能に支持する副輪12を設けている。但し、ハンドル部11、副輪12は、必須の構成要素ではない。
【0013】
上記の如き走行装置において、本実施形態では、段差昇降機構が内包しているアクチュエータ即ちクランク駆動用アクチュエータ6a、アーム駆動用アクチュエータ6bよりもたらされる駆動力を利用して主輪2を回転駆動させ、走行装置を走行運転し得るように構成している。より具体的には、主輪2に接触させた状態で回転可能な伝達輪7と、アーム4の運動を伝達輪7に伝達して該伝達輪7を回転させる伝達手段8とを設け、アクチュエータ6a、6bがアーム4を駆動する駆動力を利用して主輪2の回転駆動を行い得るようにしている。
【0014】
伝達輪7は、車軸5の軸心方向に対し略平行な水平軸周りに回転可能であって、その外周面を主輪2の踏面または主輪2に取り付けられたドラム、ボス、リム等に接触させることができるものである。伝達輪7の踏面を主輪2に接触させているとき、伝達輪7の回転に伴い主輪2が回転することが言うまでもない。伝達輪7は主輪2の数と同数設けられる。本実施形態では、左右一対の主輪2に対応して左右一対の伝達輪7を設けている。伝達輪7は、支持リンク93の先端部に回転可能に支持される。本実施形態では、支持リンク93の先端部に略水平に延伸する第一支持軸91を固定してあって、伝達輪7を該第一支持軸91にその軸心周りに回転可能であるように支持させている。伝達輪7には、伝達軸82を介して従動スプロケット83を取り付けている。伝達軸82は、例えば第一支持軸91を挿入可能な筒状体であり、第一支持軸91に支持されて該第一支持軸91の軸心周りに回転可能である。言い換えるならば、回転可能な伝達軸82に、伝達輪7及び従動スプロケット83を取り付けてある。つまり、伝達輪7と該伝達輪7に取り付けられた従動スプロケット83とは同じ角速度で回転することとなる。一方側の伝達輪7と他方側の伝達輪7とは、互いに独立に回転可能である。同様に、一方側の従動スプロケット83と他方側の従動スプロケット83とは、互いに独立に回転可能である。
【0015】
支持リンク93は、本体1に固定された第二支持軸92にその基端部が支持されており、第二支持軸92の軸心周りに回転可能となっている。第二支持軸92の軸心方向と第一支持軸91の軸心方向とは略平行である。支持リンク93における、第二支持軸92より先端部寄りに変位した部位と本体1との間には、例えばバネ等の付勢手段94が介在している。支持リンク93は、付勢手段94により、その先端部で支持している伝達輪7を主輪2に押しつけるような方向に付勢されているが、この付勢力に抗って支持リンク93を変位させることで伝達輪7を主輪2より離間させることも可能である。
【0016】
しかして、それぞれの主輪2に駆動力を伝達するための伝達手段8は、回転駆動可能な連結板81と、連結板81に取り付けられ該連結板81と同じ角速度で回転する駆動スプロケット85と、前記従動スプロケット83と、駆動スプロケット85及び従動スプロケット83を接続するスプロケットチェーン86とを包含してなる。
【0017】
連結板81は第二支持軸92に支持されており、アーム4と係合することで、アーム4の運動に伴い第二支持軸92の軸心周りに回転する。本実施形態において、連結板81は、アーム4より駆動力の作用を受ける第一の作用面811、第二の作用面812を有している。これら作用面811、812はそれぞれ、連結板81の回転軸方向、即ち第二支持軸92の軸心方向に略平行な面である。但し、これら作用面811、812が平面であるとは限られない。第一の作用面811と第二の作用面812との間には、連結板81の回転軸たる第二支持軸92周りに所定の角度の範囲で空隙が形成される。図示例では、第一の作用面811と第二の作用面812とが略180度の角度をなしており、略180度の範囲にわたる側面視略半月形の空隙を形成している。他方、アーム4には、走行装置の本体1の幅方向に沿って延伸し連結板81の第一の作用面811または第二の作用面812に臨む位置に位置づけられる作動体43を突設してある。作動体43は、例えばピン、カムフォロア等である。図示例では、作動体43を、アーム4の接地部42より内向きに突出させている。支持部材3及びアーム4を動作させ、作動体43を連結板81の径内、特に連結板81を回転させた場合に第一の作用面811、第二の作用面812が描く軌跡に交差するような位置に位置づけることで、作動体43を介してアーム4を連結板81に係わり合わせることができる。そして、作動体43が第二支持軸92周りに公転運動するように支持部材3、アーム4を駆動すれば、作動体43が第一の作用面811または第二の作用面812の何れかに当接して連結板81を正逆回転させることができる。なお、作動体43が連結板81の径内に存在している状態でアーム4を不動としても、連結板81は所定角度の範囲内で、即ち第一の作用面811と第二の作用面812との間に介在する空隙の範囲内で揺動することが可能である。総じて言えば、アーム4の作動体43と連結板81の作用面811、812との間に形成される係合構造に(空隙による)遊びが存在し、この遊びによりアーム4の位置を一定としても連結板81の回転位相を所定範囲で変化させることが許容されている。さらに、上記の構成により、アーム4と連結板81との係合あるいはその解除が簡単である。即ち、アーム4の作動体43を空隙に差し入れることで該作動体43を第一の作用面811、第二の作用面812に臨ませることができ、逆に第一の作用面811、第二の作用面812に臨む作動体43を空隙外に導くことで容易にアーム4と連結板81との係わり合いを解消できる。
【0018】
加えて、連結板81は主輪2の数と同数設けられる。本実施形態では、左右一対の主輪2に対応して左右一対の連結板81を設けている。連結板81には、駆動軸84を介して駆動スプロケット85を取り付けている。駆動軸84は、例えば第二支持軸92を挿入可能な筒状体であり、第二支持軸92に支持されて該第二支持軸92の軸心周りに回転可能である。言い換えるならば、回転可能な駆動軸84に、連結板81及び駆動スプロケット85を取り付けてある。つまり、連結板81と該連結板81に取り付けられた駆動スプロケット85とは同じ角速度で回転することとなる。一方側の連結板81と他方側の連結板81とは、互いに独立に回転可能である。同様に、一方側の駆動スプロケット85と他方側の駆動スプロケット85とは、互いに独立に回転可能である。
【0019】
一方側の従動スプロケット83はスプロケットチェーン86を介して一方側の駆動スプロケット85に接続され、他方側の従動スプロケット83はスプロケットチェーン86を介して他方側の駆動スプロケット85に接続されている。従って、アーム4が各連結板81を回転駆動すると、各駆動スプロケット85が連結板81と同じ角速度で回転し、各従動スプロケット83が駆動スプロケット85に従動して回転する。結果、各伝達輪7が回転して、駆動力の摩擦伝達により確実に主輪2を回転させることができる。
【0020】
また、一対の主輪2も、互いに独立に回転可能である。既に述べたように、連結板81はアーム4の作動体43に対し第二支持軸92周りに略180度の遊びを備えているため、この遊びの範囲内で対をなす連結板81(及び、駆動スプロケット85)の回転位相に差を持たせることができる。よって、対をなす伝達輪7(及び、従動スプロケット83)の回転位相に差を持たせることができ、ひいては対をなす主輪2の回転位相に差を持たせることができる。即ち、アーム4の作動体43の位置にかかわらず、主輪2の一方を他方に対して所定角度の範囲内で回動させることが可能となっている。このことにより、主輪2を路面に対して強引に引きずったりせずに走行装置の本体1の方向を容易に変更でき、あたかも差動装置を搭載しているかのようにスムーズに旋回走行することが可能となる。
【0021】
因みに、走行運転の際に主輪2のブレーキングを行うためには、運転者が操作可能なレバー、スイッチ等(図示せず)を例えばハンドル部11の所要の部位に設けておき、このレバー、スイッチ等が操作されたときにアクチュエータ6a、6bが制動されるように構成すればよい。あるいは、レバー、スイッチ等が支持リンク93を本体1に対して相対的に変位させ、伝達輪7を主輪2より離間させることで駆動力の伝達を断つようにすることも考えられる。
【0022】
本実施形態によれば、本体1を移動可能に支持する少なくとも一対の駆動輪2と、前記駆動輪2の回転を妨げない位置に回転駆動可能に取り付けられた支持部材3と、前記支持部材3の回転中心から変位した部位に取り付けられ支持部材3を足場に駆動されて先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることの可能なアーム4とを具備する走行装置において、前記駆動輪2を互いに独立に回転可能とし、かつ、前記アーム4の運動をそれぞれの駆動輪2に伝達しこれら駆動輪2を回転させる伝達手段8を設け、さらに前記伝達手段8に遊びを設けて、この遊びにより一の駆動輪2の回転位相を他の駆動輪2の回転位相に対して所定範囲でずらすことができるように構成した。このようなものであれば、支持部材3またはアーム4を駆動するアクチュエータ6a、6bが供給する駆動力を利用して駆動輪2を回転駆動し、連続走行を行うことができる。その上で、アーム4の動作やその位置等にかかわらず、一方の駆動輪2の回転位相を他方の駆動輪2のそれに対して容易にずらすことができるため、簡単に進行方向を変更できるものとなる。
【0023】
また、前記駆動輪たる主輪2に接触させた状態で回転可能な伝達輪7と、前記アーム4の運動を前記伝達輪7に伝達して該伝達輪7を回転させる伝達手段8とを設け、前記アーム4を駆動する駆動力を利用して前記伝達輪7並びに前記主輪2を回転駆動可能としている。即ち、アーム4を主輪2に直接に接続し駆動力を伝達するのではなく、主輪2に接触させた伝達輪7を介して駆動力を伝達するものとしたため、主輪2の形状や主輪2を本体1に取り付ける構造等を徒に複雑化させることがない。
【0024】
並びに、前記駆動輪たる主輪2を互いに独立に回転可能とし、かつ、前記主輪2とともに回転する連結板81を主輪2と同数設けこれら連結板81もまた互いに独立に回転可能として、前記アーム4を前記連結板81に係合させることで該アーム4を駆動する駆動力を利用して前記主輪2を回転駆動可能とするとともに、前記アーム4と前記連結板81との係合構造に遊びを存在させ、この遊びにより前記アーム4が一定位置にある状態で前記連結板81及び前記主輪2の回転位相を所定範囲で変化させ得るものとしたため、アーム4を連結板81に係合させ該連結板81を回転駆動することを通じて主輪2を回転させることができる。よって、アーム4を主輪2に直接に接続せずともよく、主輪2の形状や主輪2を本体1に取り付ける構造等を徒に複雑化させることがない。しかも、一方の主輪2の回転位相を他方の主輪2の回転位相に対してずらすことが許容されるので、その進行方向を容易に変更可能で、簡便に運転できる好適なものとなる。
【0025】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例示すると、上記実施形態における連結板は側面視概ね半月形をなすものであったが、これを例えば扇形のものとして、第一の作用面と第二の作用面との間に180度よりも大きい角度にわたる空隙を形成してもよい。このとき、アームと連結板との係合構造における遊びがより大きくなる。
【0026】
伝達手段の構成は、上記実施形態におけるようなものには限られない。駆動軸から伝達軸への駆動力の伝達は、スプロケット及びスプロケットチェーンによるものには限られず、例えばベルトを用いてもよく、あるいはギアを用いてもよい。
【0027】
伝達輪から主輪への駆動力の伝達は、摩擦伝達に限られない。伝達輪と主輪とをチェーンやベルト等により接続してもよく、あるいは両者の間にギアが介在してもよい。
【0028】
アームと連結板との係わり合いを解除する替わりに、伝達輪を主輪より離間させるようにしてもよい。片側の伝達輪のみを対応する一方の主輪より離間させ得るように構成し(即ち、一対の支持リンクの一方のみを変位させ得るようにするか、一方の伝達輪を他方の伝達輪とは独立に支持リンクに対して変位可能とする)、その主輪にのみブレーキをかけて(主輪に対するブレーキと連動させてもよい)、進行方向を変えるようにしてもよい。これにより、運転者のハンドル操作がなくても操舵でき、自走も可能である。この場合、伝達手段に遊びがなくとも操舵可能であるので、左右の伝達手段が独立したものでなくともよい。駆動力の伝達のためのチェーンも単一でよい。
【0029】
伝達輪、伝達軸、駆動軸、伝達手段等の一部若しくは全部を本体より着脱可能とし、段差昇降動作時等には取り外せるようにしてもよい。
【0030】
駆動軸や伝達軸にドラムを設け、該ドラムにワイヤ等を巻き取らせるようにすることも可能である。この機能は、例えば、走行装置に搭載すべき人や荷物を移載するために利用される移乗装置のワイヤを巻き取る場合等に効果を発揮する。
【0031】
さらに、例えば、図4及び図5に示すように、主輪2と駆動輪2Xとを別個のものとしてもよい。このような態様のものであっても、上記実施形態と同様の効果を奏し得ることは言うまでもない。図示例の走行装置において、それぞれの駆動輪2Xに駆動力を伝達するための伝達手段8Xは、駆動輪2Xに対して固定され回転駆動可能な連結板81Xを包含してなる。このように、連結板81X(または、連結板を取り付けている駆動軸)に直接に駆動輪2Xを取り付けることを妨げない。連結板81Xの形状、アーム4に設けた作動体43の形状等は、上記実施形態におけるものと同様とすることができる。連結板81X及び駆動輪2Xは、本体1に固定された支持軸92Xの軸心周りに回転可能であるように支持されている。そして、本体1の姿勢をやや傾倒させて駆動輪2Xを走行路面に接地させ、作動体43を介してアーム4の運動を連結板81X及び駆動輪2Xに伝達しこれらを回転させることで、該走行装置を走行させることができる。因みに、連結板81X及び駆動輪2Xは、支持軸92Xの軸心方向に沿って移動可能である。また、一対の駆動輪2Xの互いに対向する内向面には凹陥部2X1が形成されている。一方、この凹陥部に係合し得るストッパーピンを、本体1の所定部位より駆動輪2Xに向けて突出させて設けてある。例えば、段差昇降機構による昇降動作を行おうとする場合、連結板81X及び駆動輪2Xを支持軸92Xの軸心方向に移動させて連結板81Xと作動体43との係わり合いを解除するとともに、凹陥部2X1にストッパーピン13を係合させることで、駆動輪2Xを制止することができる。ストッパーピン13により回転が制止された駆動輪2Xは、路面や段床面に摩擦するブレーキ輪として使用することが可能である。
【0032】
加えて、シート部を本体より着脱可能とし、段差昇降時にはこのシート部をいわばサイドカーのように本体の側方、車輪の隣に位置づけこれをできるだけ下方に(段床面に近づけて)取り付けることにより、該走行装置に搭乗する人や荷物の重心を下げるようにしてもよい。こうすることで、走行装置全体の重心が低下し、バランス取りが容易になる。かつ、搭乗する人がちょうど段床の踏面に腰掛けて足を下段側に置いているような姿勢となり、走行装置が前傾即ち下段側に向けて傾倒しても搭乗している人の足が下段床に着地することとなるため、走行装置の転落を防ぐことが可能である。
【0033】
その他各部の具体的構成は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0034】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明によれば、差動装置によらない簡単な構成で、容易に進行方向を変更可能な走行装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における走行装置を示す要部側面図。
【図2】同要部下面図。
【図3】走行装置の段差昇降機構の動作を説明する図。
【図4】本発明の一変形例における走行装置を示す要部側面図。
【図5】同要部下面図。
【符号の説明】
1…本体
2…主輪
4…アーム
7…伝達輪
8…伝達手段
81…連結板
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に重量運搬装置、階段昇降機、電動式車椅子、介護支援機器、移乗支援機器、リハビリ機器、じょくそう予防機器、歩行支援機器、段差解消機、乗馬練習機、電動揺椅子、電動揺籃、フィットネス機器、電動盲導犬、車輪移動式ロボット等としての応用に好適な、走行装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種の走行装置として多様なものが存在している。例えば、荷物を運搬するための走行装置としてフォークリフト、リフタ、手押し車等が、人を運搬するための走行装置として車椅子等が、それぞれ周知のところである。これらの走行装置が走行する走行路には時として段差や障害物が存在しているが、下記特許文献1に示されるように、段差や障害物の存在する道程を踏破させるための段差昇降機構が既に発明されている。特許文献1に示されている段差昇降機構は、回転駆動可能な支持部材と、支持部材の回転中心から変位した部位に取り付けられその先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることができるアームとを具備してなり、アームの先端部を接地させながら支持部材及びアームを駆動することで走行装置本体を上下動させ得るものである。
【0003】
加えて、段差昇降機構の支持部材やアームを駆動するためのアクチュエータを利用して走行装置を走行させることも考えられている。特許文献1では、対をなす主輪間に単一の駆動輪を設けアームの動作を該駆動輪に伝達して回転駆動することで走行する態様や、アームを主輪に直接に接続し該主輪を回転駆動することで走行する態様が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−127866号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、比較的径寸法が小さい単一の駆動輪を回転駆動する態様は、走行路面に凹凸がある場合や、走行路が砂利道であるような場合に走行が不安定になるという不具合を有する。従って、駆動輪を複数としたり比較的径寸法が大きい主輪を回転駆動したりすることが望ましいのであるが、このようなものであると、差動装置を実装しない限り走行中の走行装置の進行方向を変えることが困難となる。
【0006】
以上の問題に鑑みて、本発明は、段差昇降機構が内包するアクチュエータを利用して走行運転し得るような走行装置において、その進行方向を容易に変えられるようにすることを、差動装置によらない簡単な構成で実現しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決すべく、本発明では、本体を移動可能に支持する少なくとも一対の駆動輪と、前記駆動輪の回転を妨げない位置に回転駆動可能に取り付けられた支持部材と、前記支持部材の回転中心から変位した部位に取り付けられ支持部材を足場に駆動されて先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることの可能なアームとを具備する走行装置において、前記駆動輪を互いに独立に回転可能とし、かつ、前記アームの運動をそれぞれの駆動輪に伝達しこれら駆動輪を回転させる伝達手段を設け、さらに前記伝達手段に遊びを設けて、この遊びにより一の駆動輪の回転位相を他の駆動輪の回転位相に対して所定範囲でずらすことができるように構成した。このようなものであれば、支持部材またはアームを駆動するアクチュエータが供給する駆動力を利用して駆動輪を回転駆動し、連続走行を行うことができる。その上で、アームの動作にかかわらず、一方の駆動輪の回転位相を他方の駆動輪のそれに対して容易にずらすことができるため、簡単に進行方向を変更できるものとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1、図2に示すように、本実施形態における走行装置の本体1は、一対の駆動輪たる主輪2によって走行可能に支持されている。本体1には、人や荷物を載置するためのシート部(図示せず)が設けられる。例えば、既存の車椅子等の如く、被介護者が着座できるシート部が本体1の適宜の部位に取り付けられる。かつ、該走行装置は、段差や障害物の存在する道程を踏破するための段差昇降機構を具備する。段差昇降機構は、前記主輪2の回転を妨げない位置に回転駆動可能に取り付けられた支持部材たるクランク3と、このクランク3の軸心即ち回転中心から変位した部位に取り付けられたアーム4と、これらクランク3、アーム4を駆動するための駆動力を出力するアクチュエータ6a、6bとを包含してなる。該アーム4は、前記クランク3を足場に駆動されて、その先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることが可能となっている。
【0009】
段差昇降機構に関して詳述する。クランク駆動用アクチュエータ6a、アーム駆動用アクチュエータ6bは、主輪2を受ける車軸5と略同一軸線上に配置される。クランク駆動用アクチュエータ6aとアーム駆動用アクチュエータ6bとは、互いに独立に駆動可能である。クランク3は、基端を前記クランク駆動用アクチュエータ6aに軸6a1を介して固定され、その先端を主輪2間において軸6a1周りに回転し得るように延出させたものである。アーム4は、前記クランク3の延出端に水平支軸41を介して設けられる。即ち、アーム4はクランク3の延出端を足場(言い換えるならば、支点)として前記水平支軸41を軸に回動駆動される。また、アーム4の先端側には、側面視主輪2とほぼ同径の部分円弧状または楕円弧状をなす接地面を有する接地部42を設けてある。そして、前記水平支軸41には、スプロケット7aが固定されている。該スプロケット7aは、スプロケットチェーン7bを介して、前記アーム駆動用アクチュエータ6bの軸6b1に取り付けたスプロケット7cに接続されている。つまり、水平支軸41に固定されたスプロケット7aは、スプロケットチェーン7bを介してアーム駆動用アクチュエータ6bから駆動力の伝達を受ける。このように、クランク3はクランク駆動用アクチュエータ6aによって駆動可能とされ、アーム4はアーム駆動用アクチュエータ6bによって駆動可能とされている。
【0010】
走行装置が下段差を降りる際の動作について説明する。主輪2が下段差に臨んだとき、図3(a)に示すように、クランク駆動用アクチュエータ6aによってクランク3を回転し、かつアーム駆動用アクチュエータ6bによってアーム4を駆動して、該アーム4の端部若しくはアーム4の先端に設けた接地部42を下段差の段床に接地させる。そして、接地部42が転動しながら車軸5(あるいは、クランク駆動用アクチュエータ6aの軸心)に近づくようにクランク3及びアーム4を駆動し、図3(b)に示すように、走行装置を下降させて主輪2を下段床に接地させる。
【0011】
続いて、走行装置が上段差を昇る際の動作について説明する。主輪2が上段差に臨んだとき、図3(b)に示すように、クランク駆動用アクチュエータ6a及びアーム駆動用アクチュエータ6bによってクランク3及びアーム4を駆動して、接地部42を下段床に接地させる。そして、図3(a)に示すように、アーム4の先端に設けた接地部42を車軸5から遠ざかる方向へ移動させる。即ち、接地部42が下段床に接地して転動している状態において、クランク3の基端が軸着されている軸6a1を中心としてクランク3が回転運動をし、その反作用によって走行装置が上段差を越えることができる位置まで持ち上がることとなる。
【0012】
因みに、本体1には、上方または後上方に延出するハンドル部11を取り付けてある。走行装置を運転する運転者は、このハンドル部11を把持して、本体1を操作することができる。また、本体1に、平坦な走行路上にて前輪または後輪として機能し主輪2とともに本体1を移動可能に支持する副輪12を設けている。但し、ハンドル部11、副輪12は、必須の構成要素ではない。
【0013】
上記の如き走行装置において、本実施形態では、段差昇降機構が内包しているアクチュエータ即ちクランク駆動用アクチュエータ6a、アーム駆動用アクチュエータ6bよりもたらされる駆動力を利用して主輪2を回転駆動させ、走行装置を走行運転し得るように構成している。より具体的には、主輪2に接触させた状態で回転可能な伝達輪7と、アーム4の運動を伝達輪7に伝達して該伝達輪7を回転させる伝達手段8とを設け、アクチュエータ6a、6bがアーム4を駆動する駆動力を利用して主輪2の回転駆動を行い得るようにしている。
【0014】
伝達輪7は、車軸5の軸心方向に対し略平行な水平軸周りに回転可能であって、その外周面を主輪2の踏面または主輪2に取り付けられたドラム、ボス、リム等に接触させることができるものである。伝達輪7の踏面を主輪2に接触させているとき、伝達輪7の回転に伴い主輪2が回転することが言うまでもない。伝達輪7は主輪2の数と同数設けられる。本実施形態では、左右一対の主輪2に対応して左右一対の伝達輪7を設けている。伝達輪7は、支持リンク93の先端部に回転可能に支持される。本実施形態では、支持リンク93の先端部に略水平に延伸する第一支持軸91を固定してあって、伝達輪7を該第一支持軸91にその軸心周りに回転可能であるように支持させている。伝達輪7には、伝達軸82を介して従動スプロケット83を取り付けている。伝達軸82は、例えば第一支持軸91を挿入可能な筒状体であり、第一支持軸91に支持されて該第一支持軸91の軸心周りに回転可能である。言い換えるならば、回転可能な伝達軸82に、伝達輪7及び従動スプロケット83を取り付けてある。つまり、伝達輪7と該伝達輪7に取り付けられた従動スプロケット83とは同じ角速度で回転することとなる。一方側の伝達輪7と他方側の伝達輪7とは、互いに独立に回転可能である。同様に、一方側の従動スプロケット83と他方側の従動スプロケット83とは、互いに独立に回転可能である。
【0015】
支持リンク93は、本体1に固定された第二支持軸92にその基端部が支持されており、第二支持軸92の軸心周りに回転可能となっている。第二支持軸92の軸心方向と第一支持軸91の軸心方向とは略平行である。支持リンク93における、第二支持軸92より先端部寄りに変位した部位と本体1との間には、例えばバネ等の付勢手段94が介在している。支持リンク93は、付勢手段94により、その先端部で支持している伝達輪7を主輪2に押しつけるような方向に付勢されているが、この付勢力に抗って支持リンク93を変位させることで伝達輪7を主輪2より離間させることも可能である。
【0016】
しかして、それぞれの主輪2に駆動力を伝達するための伝達手段8は、回転駆動可能な連結板81と、連結板81に取り付けられ該連結板81と同じ角速度で回転する駆動スプロケット85と、前記従動スプロケット83と、駆動スプロケット85及び従動スプロケット83を接続するスプロケットチェーン86とを包含してなる。
【0017】
連結板81は第二支持軸92に支持されており、アーム4と係合することで、アーム4の運動に伴い第二支持軸92の軸心周りに回転する。本実施形態において、連結板81は、アーム4より駆動力の作用を受ける第一の作用面811、第二の作用面812を有している。これら作用面811、812はそれぞれ、連結板81の回転軸方向、即ち第二支持軸92の軸心方向に略平行な面である。但し、これら作用面811、812が平面であるとは限られない。第一の作用面811と第二の作用面812との間には、連結板81の回転軸たる第二支持軸92周りに所定の角度の範囲で空隙が形成される。図示例では、第一の作用面811と第二の作用面812とが略180度の角度をなしており、略180度の範囲にわたる側面視略半月形の空隙を形成している。他方、アーム4には、走行装置の本体1の幅方向に沿って延伸し連結板81の第一の作用面811または第二の作用面812に臨む位置に位置づけられる作動体43を突設してある。作動体43は、例えばピン、カムフォロア等である。図示例では、作動体43を、アーム4の接地部42より内向きに突出させている。支持部材3及びアーム4を動作させ、作動体43を連結板81の径内、特に連結板81を回転させた場合に第一の作用面811、第二の作用面812が描く軌跡に交差するような位置に位置づけることで、作動体43を介してアーム4を連結板81に係わり合わせることができる。そして、作動体43が第二支持軸92周りに公転運動するように支持部材3、アーム4を駆動すれば、作動体43が第一の作用面811または第二の作用面812の何れかに当接して連結板81を正逆回転させることができる。なお、作動体43が連結板81の径内に存在している状態でアーム4を不動としても、連結板81は所定角度の範囲内で、即ち第一の作用面811と第二の作用面812との間に介在する空隙の範囲内で揺動することが可能である。総じて言えば、アーム4の作動体43と連結板81の作用面811、812との間に形成される係合構造に(空隙による)遊びが存在し、この遊びによりアーム4の位置を一定としても連結板81の回転位相を所定範囲で変化させることが許容されている。さらに、上記の構成により、アーム4と連結板81との係合あるいはその解除が簡単である。即ち、アーム4の作動体43を空隙に差し入れることで該作動体43を第一の作用面811、第二の作用面812に臨ませることができ、逆に第一の作用面811、第二の作用面812に臨む作動体43を空隙外に導くことで容易にアーム4と連結板81との係わり合いを解消できる。
【0018】
加えて、連結板81は主輪2の数と同数設けられる。本実施形態では、左右一対の主輪2に対応して左右一対の連結板81を設けている。連結板81には、駆動軸84を介して駆動スプロケット85を取り付けている。駆動軸84は、例えば第二支持軸92を挿入可能な筒状体であり、第二支持軸92に支持されて該第二支持軸92の軸心周りに回転可能である。言い換えるならば、回転可能な駆動軸84に、連結板81及び駆動スプロケット85を取り付けてある。つまり、連結板81と該連結板81に取り付けられた駆動スプロケット85とは同じ角速度で回転することとなる。一方側の連結板81と他方側の連結板81とは、互いに独立に回転可能である。同様に、一方側の駆動スプロケット85と他方側の駆動スプロケット85とは、互いに独立に回転可能である。
【0019】
一方側の従動スプロケット83はスプロケットチェーン86を介して一方側の駆動スプロケット85に接続され、他方側の従動スプロケット83はスプロケットチェーン86を介して他方側の駆動スプロケット85に接続されている。従って、アーム4が各連結板81を回転駆動すると、各駆動スプロケット85が連結板81と同じ角速度で回転し、各従動スプロケット83が駆動スプロケット85に従動して回転する。結果、各伝達輪7が回転して、駆動力の摩擦伝達により確実に主輪2を回転させることができる。
【0020】
また、一対の主輪2も、互いに独立に回転可能である。既に述べたように、連結板81はアーム4の作動体43に対し第二支持軸92周りに略180度の遊びを備えているため、この遊びの範囲内で対をなす連結板81(及び、駆動スプロケット85)の回転位相に差を持たせることができる。よって、対をなす伝達輪7(及び、従動スプロケット83)の回転位相に差を持たせることができ、ひいては対をなす主輪2の回転位相に差を持たせることができる。即ち、アーム4の作動体43の位置にかかわらず、主輪2の一方を他方に対して所定角度の範囲内で回動させることが可能となっている。このことにより、主輪2を路面に対して強引に引きずったりせずに走行装置の本体1の方向を容易に変更でき、あたかも差動装置を搭載しているかのようにスムーズに旋回走行することが可能となる。
【0021】
因みに、走行運転の際に主輪2のブレーキングを行うためには、運転者が操作可能なレバー、スイッチ等(図示せず)を例えばハンドル部11の所要の部位に設けておき、このレバー、スイッチ等が操作されたときにアクチュエータ6a、6bが制動されるように構成すればよい。あるいは、レバー、スイッチ等が支持リンク93を本体1に対して相対的に変位させ、伝達輪7を主輪2より離間させることで駆動力の伝達を断つようにすることも考えられる。
【0022】
本実施形態によれば、本体1を移動可能に支持する少なくとも一対の駆動輪2と、前記駆動輪2の回転を妨げない位置に回転駆動可能に取り付けられた支持部材3と、前記支持部材3の回転中心から変位した部位に取り付けられ支持部材3を足場に駆動されて先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることの可能なアーム4とを具備する走行装置において、前記駆動輪2を互いに独立に回転可能とし、かつ、前記アーム4の運動をそれぞれの駆動輪2に伝達しこれら駆動輪2を回転させる伝達手段8を設け、さらに前記伝達手段8に遊びを設けて、この遊びにより一の駆動輪2の回転位相を他の駆動輪2の回転位相に対して所定範囲でずらすことができるように構成した。このようなものであれば、支持部材3またはアーム4を駆動するアクチュエータ6a、6bが供給する駆動力を利用して駆動輪2を回転駆動し、連続走行を行うことができる。その上で、アーム4の動作やその位置等にかかわらず、一方の駆動輪2の回転位相を他方の駆動輪2のそれに対して容易にずらすことができるため、簡単に進行方向を変更できるものとなる。
【0023】
また、前記駆動輪たる主輪2に接触させた状態で回転可能な伝達輪7と、前記アーム4の運動を前記伝達輪7に伝達して該伝達輪7を回転させる伝達手段8とを設け、前記アーム4を駆動する駆動力を利用して前記伝達輪7並びに前記主輪2を回転駆動可能としている。即ち、アーム4を主輪2に直接に接続し駆動力を伝達するのではなく、主輪2に接触させた伝達輪7を介して駆動力を伝達するものとしたため、主輪2の形状や主輪2を本体1に取り付ける構造等を徒に複雑化させることがない。
【0024】
並びに、前記駆動輪たる主輪2を互いに独立に回転可能とし、かつ、前記主輪2とともに回転する連結板81を主輪2と同数設けこれら連結板81もまた互いに独立に回転可能として、前記アーム4を前記連結板81に係合させることで該アーム4を駆動する駆動力を利用して前記主輪2を回転駆動可能とするとともに、前記アーム4と前記連結板81との係合構造に遊びを存在させ、この遊びにより前記アーム4が一定位置にある状態で前記連結板81及び前記主輪2の回転位相を所定範囲で変化させ得るものとしたため、アーム4を連結板81に係合させ該連結板81を回転駆動することを通じて主輪2を回転させることができる。よって、アーム4を主輪2に直接に接続せずともよく、主輪2の形状や主輪2を本体1に取り付ける構造等を徒に複雑化させることがない。しかも、一方の主輪2の回転位相を他方の主輪2の回転位相に対してずらすことが許容されるので、その進行方向を容易に変更可能で、簡便に運転できる好適なものとなる。
【0025】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例示すると、上記実施形態における連結板は側面視概ね半月形をなすものであったが、これを例えば扇形のものとして、第一の作用面と第二の作用面との間に180度よりも大きい角度にわたる空隙を形成してもよい。このとき、アームと連結板との係合構造における遊びがより大きくなる。
【0026】
伝達手段の構成は、上記実施形態におけるようなものには限られない。駆動軸から伝達軸への駆動力の伝達は、スプロケット及びスプロケットチェーンによるものには限られず、例えばベルトを用いてもよく、あるいはギアを用いてもよい。
【0027】
伝達輪から主輪への駆動力の伝達は、摩擦伝達に限られない。伝達輪と主輪とをチェーンやベルト等により接続してもよく、あるいは両者の間にギアが介在してもよい。
【0028】
アームと連結板との係わり合いを解除する替わりに、伝達輪を主輪より離間させるようにしてもよい。片側の伝達輪のみを対応する一方の主輪より離間させ得るように構成し(即ち、一対の支持リンクの一方のみを変位させ得るようにするか、一方の伝達輪を他方の伝達輪とは独立に支持リンクに対して変位可能とする)、その主輪にのみブレーキをかけて(主輪に対するブレーキと連動させてもよい)、進行方向を変えるようにしてもよい。これにより、運転者のハンドル操作がなくても操舵でき、自走も可能である。この場合、伝達手段に遊びがなくとも操舵可能であるので、左右の伝達手段が独立したものでなくともよい。駆動力の伝達のためのチェーンも単一でよい。
【0029】
伝達輪、伝達軸、駆動軸、伝達手段等の一部若しくは全部を本体より着脱可能とし、段差昇降動作時等には取り外せるようにしてもよい。
【0030】
駆動軸や伝達軸にドラムを設け、該ドラムにワイヤ等を巻き取らせるようにすることも可能である。この機能は、例えば、走行装置に搭載すべき人や荷物を移載するために利用される移乗装置のワイヤを巻き取る場合等に効果を発揮する。
【0031】
さらに、例えば、図4及び図5に示すように、主輪2と駆動輪2Xとを別個のものとしてもよい。このような態様のものであっても、上記実施形態と同様の効果を奏し得ることは言うまでもない。図示例の走行装置において、それぞれの駆動輪2Xに駆動力を伝達するための伝達手段8Xは、駆動輪2Xに対して固定され回転駆動可能な連結板81Xを包含してなる。このように、連結板81X(または、連結板を取り付けている駆動軸)に直接に駆動輪2Xを取り付けることを妨げない。連結板81Xの形状、アーム4に設けた作動体43の形状等は、上記実施形態におけるものと同様とすることができる。連結板81X及び駆動輪2Xは、本体1に固定された支持軸92Xの軸心周りに回転可能であるように支持されている。そして、本体1の姿勢をやや傾倒させて駆動輪2Xを走行路面に接地させ、作動体43を介してアーム4の運動を連結板81X及び駆動輪2Xに伝達しこれらを回転させることで、該走行装置を走行させることができる。因みに、連結板81X及び駆動輪2Xは、支持軸92Xの軸心方向に沿って移動可能である。また、一対の駆動輪2Xの互いに対向する内向面には凹陥部2X1が形成されている。一方、この凹陥部に係合し得るストッパーピンを、本体1の所定部位より駆動輪2Xに向けて突出させて設けてある。例えば、段差昇降機構による昇降動作を行おうとする場合、連結板81X及び駆動輪2Xを支持軸92Xの軸心方向に移動させて連結板81Xと作動体43との係わり合いを解除するとともに、凹陥部2X1にストッパーピン13を係合させることで、駆動輪2Xを制止することができる。ストッパーピン13により回転が制止された駆動輪2Xは、路面や段床面に摩擦するブレーキ輪として使用することが可能である。
【0032】
加えて、シート部を本体より着脱可能とし、段差昇降時にはこのシート部をいわばサイドカーのように本体の側方、車輪の隣に位置づけこれをできるだけ下方に(段床面に近づけて)取り付けることにより、該走行装置に搭乗する人や荷物の重心を下げるようにしてもよい。こうすることで、走行装置全体の重心が低下し、バランス取りが容易になる。かつ、搭乗する人がちょうど段床の踏面に腰掛けて足を下段側に置いているような姿勢となり、走行装置が前傾即ち下段側に向けて傾倒しても搭乗している人の足が下段床に着地することとなるため、走行装置の転落を防ぐことが可能である。
【0033】
その他各部の具体的構成は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0034】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明によれば、差動装置によらない簡単な構成で、容易に進行方向を変更可能な走行装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における走行装置を示す要部側面図。
【図2】同要部下面図。
【図3】走行装置の段差昇降機構の動作を説明する図。
【図4】本発明の一変形例における走行装置を示す要部側面図。
【図5】同要部下面図。
【符号の説明】
1…本体
2…主輪
4…アーム
7…伝達輪
8…伝達手段
81…連結板
Claims (1)
- 本体を移動可能に支持する少なくとも一対の駆動輪と、前記駆動輪の回転を妨げない位置に回転駆動可能に取り付けられた支持部材と、前記支持部材の回転中心から変位した部位に取り付けられ支持部材を足場に駆動されて先端部を回転中心から遠ざける方向へ移動させることの可能なアームとを具備する走行装置であって、
前記駆動輪が互いに独立に回転可能に構成され、かつ、前記アームの運動をそれぞれの駆動輪に伝達しこれら駆動輪を回転させる伝達手段が設けられて、前記アームを駆動する駆動力を利用した連続走行が可能であるとともに、
前記伝達手段に遊びが設けられ、この遊びにより一の駆動輪の回転位相を他の駆動輪の回転位相に対して所定範囲でずらすことができることを特徴とする走行装置。
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Cited By (2)
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CN112977581A (zh) * | 2021-03-01 | 2021-06-18 | 李伦伟 | 建筑施工用推车 |
CN112972137A (zh) * | 2021-02-03 | 2021-06-18 | 金华市伊凯动力科技有限公司 | 一种康复训练轮椅车 |
-
2003
- 2003-06-19 JP JP2003175304A patent/JP2005008075A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN112972137B (zh) * | 2021-02-03 | 2021-08-31 | 金华市伊凯动力科技有限公司 | 一种康复训练轮椅车 |
CN112977581A (zh) * | 2021-03-01 | 2021-06-18 | 李伦伟 | 建筑施工用推车 |
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