インクジェット記録方式は種々の方法でインクの小液滴をノズルより飛翔させ、被記録体にインク液滴を付着吸収させて記録を行う方法である。この方法は騒音が少なく高速で記録することが可能であり、またカラー化にも対応できるなどの特徴を有している。近年パーソナルコンピューターの高性能化や、マルチメディアの普及により、カラーを含む文書や、カラーイメージなどを、オフィスや家庭で印刷出力したいという要望が高まり、インクジェット記録方式はこうした目的に最適な記録方式と考えられており、この方式に対応し、カラーの印刷出力に適したインクジェット記録体が望まれている。従来インクジェット記録紙としては、非コートタイプと称する、パルプ紙の表面に、インクの吸収と定着を促進する目的で、少量の薬剤を塗布したインクジェット記録体や、あるいはコートタイプと称する、平均粒子径が数μm〜十数μmのシリカや炭酸カルシウムなどの吸収性顔料と、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチンなどの水溶性樹脂を混合して調製した塗料をパルプ紙の表面に塗布したインクジェット記録紙が一般的に使用されていた。
ところが、これらのインクジェット記録体はシート状基体としてパルプ紙を使用するために、パルプ繊維に起因する微少な凹凸や、あるいは抄紙工程で発生する表面の不均一をなくすことが困難であった。またコートタイプのインクジェット記録体では、塗料の塗布において塗料の水分が紙に浸透するために、基材に収縮ムラやボコツキが生じ、光沢度が低下してしまうとの問題があり、引き続いてカレンダー処理などの仕上げ処理を施しても、いったん生じた収縮ムラやボコツキを完全に修復することは困難であった。したがって、こうしたインクジェット記録体で、カラーイメージを印刷出力した場合には、光沢感が不足する、鮮明性が劣る、あるいは像鮮鋭性が不足するという問題があり、デジタルスチルカメラで撮影したイメージ、CD−ROMなどのメディアで配布されるイメージ、グラフィックソフトウエアで作成したイメージなどのカラーイメージを印刷出力した場合、できあがったインクジェット記録体の光沢や像鮮明性は満足できるものではなく、市場の要求を満足させることができなかった。
特開平7−25133号公報(特許文献1)は、シート状支持体として中心線平均粗さが0.4μm未満である樹脂被覆紙またはポリエステルフィルムを使用し、インク受容層に粒子径5〜15μmの球状微粒子ポリマーを配合し、塗工量が5〜30mg/m2 であるインクジェット記録体を開示している。あるいは、特公平3−25352号公報(特許文献2)は、表面光沢度が80%以上のキャストコート紙または、ハンター白色度が80%以上のプラスチックシートなどのシート上に、ケン化度が50〜90モル%であるポリビニルアルコールと対ポリビニルアルコール5〜50重量%の架橋剤を含有する皮膜を形成したことを特徴とする強光沢を有するインクジェット記録体を開示している。シート状基体としてプラスチックシートを使用すれば、パルプ紙を用いる場合より比較的容易に光沢を高めることはできるが、特定白色度のプラスチックシートで必ずしも高い光沢と、解像性が得られるものではなかった。
また一般的にいって、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂をインク記録層としてプラスチックシートなどのシート状基材に塗工した場合、光沢性、像鮮明性は、紙基材を使用した場合に比べて得やすいが、基体は吸収性を持たないため、インク吸収性は劣りがちで、インクの吸収速度が遅く、十分な吸収量を得るためにはかなり厚く樹脂層を設ける必要があった。しかも、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂は、インク吸収の際、自身の膨潤・膨張により吸収するために、印字部分では樹脂が変形するために光沢が失われ、印字部分の印字光沢が低下するとの問題。あるいは、耐水性が劣り、インク記録層が水濡れすると、インク記録層が溶出する、またはインクがにじみ出すという問題があった。
特開平7−137431号公報(特許文献3)において、ベック平滑度1000秒以上の非吸収体をシート状支持体にし、インク受容層に粒径0.1μm未満のカチオン無機微粒子と、ケン化度85〜95モル%、重合度4000以上のPVAを使用するインクジェット記録用紙を開示しているが、同明細書で例示されるポリオレフィン樹脂被覆紙を使用しても、インク記録層の耐水性は満足できるものではなかった。特開平1−237187号公報(特許文献4)では、少なくとも透明層と、インク保持層とインク輸送層とを有し、該インク輸送層が一定量のインク保持性を有し、該一定量以上のインクはインク輸送層を通過して、インク保持層に保持される被記録材を開示している。また、特開平1−237188号公報(特許文献5)は、少なくとも透明層とインク輸送層とを有し、該インク輸送層が一定量のインク保持性を有し、該一定量以上のインクはインク輸送層を通過して、インク輸送層と透明層との界面に達する被記録材を用いたインクジェット記録方式を開示している。しかしながら、これらの方法ではインク保持層が水溶性樹脂を主体として構成されるため、インク吸収性と耐水性とを両立させることが困難であった。コートタイプのインクジェット記録体のインク記録層は、顔料としてシリカの他、アルミナ、擬ベーマイト、炭酸カルシウム、カオリンなどの顔料、水溶性樹脂として、澱粉、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体などを配合したインク記録層を有する。これらのインク記録層はインク吸収性や耐水性は優れるが、一般に平滑性、光沢性がないという問題があった。
特開平2−274587号公報(特許文献6)は、支持体上に少なくとも1層以上の走行性を有する記録層を設けた記録紙において、該記録層の最表層が少なくとも合成シリカおよびコロイダルシリカを主とする顔料並びに水溶性結合剤によって構成される共に、カチオン性高分子電解質を含む水溶液で処理され、且つ前記最表層が湿潤状態にある間に加熱処理された鏡面に圧着され乾燥されたことを特徴とする記録紙を開示している。しかしながら、インク吸収性を維持するため、比較的粒子の大きい合成シリカの含有が不可欠であるが、合成シリカは一般に粒径が大きく、平滑性と光沢性とを両立することが困難であった。特開平3−215080号公報(特許文献7)は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、ガラス転移点が−30〜20℃の範囲のコロイダルシリカ複合エマルジョンを主成分とするインキ定着層を設けたことを特徴とする印刷用フィルムを開示している。特開平7−89220号公報では、顔料および接着剤を含有する下塗り塗被層を設けた原紙上に、エチレン不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる40℃以上のガラス転移点を有する重合体を含有する塗被液を塗被してキャスト用塗被層を形成せしめ、該キャスト用塗被層が湿潤状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げるインクジェット記録用キャスト塗被紙の製造方法を開示している。
特開平7−101142号公報(特許文献8)では、支持体上にインク受理層を設けたインクジェット記録シートにおいて、支持体上に少なくとも1層以上のインク受理層、主成分として平均粒子径300nm以下のコロイダル粒子からなる光沢発現層を順次積層してなり、JIS Z8741に規定される75度鏡面光沢度が、25%以上であることを特徴とするインクジェット記録シートを開示している。
あるいは特開平7−117335号公報(特許文献9)では、コートタイプのインクジェット記録シートにおいて、支持体上に少なくとも1層以上のインク受理層、該インク受理層上に光沢発現層が順次積層され、該光沢発現層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ロールに圧接して、鏡面光沢仕上げされてなるものであり、且つ該光沢発現層が平均粒子径300nm以下のコロイド粒子を主成分とする塗被組成物からなることを特徴とするインクジェット記録シートを開示している。しかし、これらの光沢発現層では、主成分としてコロイダルシリカあるいはコロイダルシリカ複合体がよく利用されるが、一般に使用される光沢発現層はインク吸収性よりも光沢付与の目的で設けられているために、塗工量は少なく、キャスト処理(光沢発現層が湿潤状態で、加熱された鏡面ロールに圧着して鏡面仕上げされる)によって光沢が発現する。また下層はインク吸収性を持たすために、インク記録層内部には、比較的空隙が得られやすい、粒子径の大きい顔料が使用されているため、高精細記録が得られないとの問題があった。すなわち、このような構成のインクジェット記録体では、印字する際、ノズルから射出されたインクがまず光沢発現層表面に付着し、瞬間的にインク受容層に移り、インクに吸収定着されるので、インク記録層の空隙が大きく不均一であるために、得られたインクのドットは、大きく、その輪郭がギザギザであり不揃いとなる。したがって、画像は鮮明さがかなり欠けるものになるとの欠点があった。
特開昭62−111782号公報(特許文献10)では、紙面上に上下2層の異なる多孔性粒子層を有し、これら多孔質粒子層を形成する粒子の細孔径の重合度が細孔容積であらわして30%以下であり、かつ平均細孔径が下層より上層が小さいことを特徴とする記録用紙を開示している。しかしこの方法では、下層を形成する多孔質粒子が平均細孔径0.05〜2μmと比較的大きい顔料を使用するために、最近の高精細インクジェットプリンターで印字する場合(例えば720dpi ×720dpi などの印字ヘッドを有するプリンター)では、ドットの密度が高く密集しているために、ドットが大きくなると、複数のドットが接合し、微細な画像が得られない。さらにインク記録層の粒子が大きく、透明性が全くないため、高い印字濃度を得ることができなかった。インクジェット記録用シートに電離性放射線による硬化技術を応用する試みとしては、例えば、特開昭62−221591号公報(特許文献11)に、透明な紫外線硬化させたカチオン性アクリル共重合体層とアニオン性アクリル共重合体層とを設けたシートが開示されている。しかしながら単に紫外線硬化法を用いても、表面の平滑性、光沢性、解像性を高めることはできなかった。
特開平7−25133号公報
特公平3−25352号公報
特開平7−137431号公報
特開平1−237187号公報
特開平1−237188号公報
特開平2−274587号公報
特開平3−215080号公報
特開平7−101142号公報
特開平7−117335号公報
特開昭62−111782号公報
特開昭62−221591号公報
本発明のインクジェット記録体は、シート状基体のインク記録層が設けられる面に、成型面により極微細凹凸模様が転写された耐水性表面樹脂被覆層を設け、更に微細顔料と接着剤を含有するインク記録層が設けられたものである。支持体(シート状基体ともいう)としては、紙、合成紙、プラスチックシート、布、不織布、金属シート、等が例示できるが紙が好ましい。耐水性表面樹脂被覆層は、1層であってもあるいは2層以上の多層構造であってもよく、材料はポリオレフィン樹脂である。また白色顔料を配合添加することも可能である。ポリオレフィン樹脂である場合には溶融押し出しラミネート法により塗工し、表面に極微細な凹凸模様が彫刻されたつまり梨地加工されたクーリングロールに接触され前記凹凸模様を転写し、冷却固化することにより得られる。このような表面処理により最終的に得られるインクジェット記録体の光沢性、平滑性が極めて優れ、写真調の美しい画像を得ることができる。
中間層は粘着性若しくは接着性を有し、インク記録層を耐水性表面樹脂被覆層に固定するもので、接着剤、感圧接着剤、粘着剤、などから適宜選択して構成される。インク記録層は微細顔料と接着剤(好ましくは水溶性樹脂)を含有する多層、すなわち、インク受容層とインク吸収層とから構成することもできる。インク受容層はインクジェットインクの染料成分を固定する層であり、染料の定着保持および透明性光沢性機能を有するものである。インク吸収層は主にインクジェットインクの組成の大部分をしめるインク溶媒を吸収する機能を有するものである。またインク記録層は成型面に塗工して塗膜形成した後、粘着性若しくは接着性を有する中間層を介して耐水性表面樹脂被覆層に接着転写すると優れた光沢が得られる。
微細顔料の好ましい例としてはコロイダルシリカが、また接着剤としては水溶性樹脂の好ましい例としてはポリビニルアルコールが挙げられる。インク記録層の好ましい形態は、ポリエステルフィルム上に平均粒子径20〜200nmのコロイダルシリカとポリビニルアルコールから調製した塗料を形成面に塗工し成膜させたのち、この上面に上述のコロイダルシリカより平均粒子径が大きいコロイダルシリカとポリビニルアルコールから調製した塗料を塗工して成膜させて2層のインク記録層を形成したのち、さらにコロイダルシリカと微細顔料(シリカ)とポリビニルアルコールから調製した塗料をインク吸収層として塗工して、3層構成のインク記録層を構成したものである。インク記録層は、耐水性表面樹脂被覆層を設けたシート状支持体のオモテ側面に、例えばポリエステル系接着剤などの接着剤を塗工して、ポリエステルフィルム等の成型面上のインク記録層と重ね合わせ押しあてて、インク記録層と支持体上に設けた表面樹脂被覆層を接着させた後、成型面をインク記録層から剥離して、インクジェット記録体を得ることができる。
本発明で使用する、紙支持体としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、広葉樹針葉樹混合パルプ、などの木材パルプからなるパルプ紙が用いられる。またクラフトパルプ、サルファイトパルプ、ソーダパルプなど通常使用されている晒パルプからなるパルプ紙であってもよい。また必要によっては合成パルプ、合成繊維を適宜添加することもできる。本発明で支持体として使用するパルプ紙には、通常の各種添加剤、例えば乾式紙力増強剤(カチオン化澱粉、カチオン化ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミドなど)、サイズ剤(脂肪酸塩、ロジン、マレイン化ロジン、カチオン化サイズ剤、反応性サイズ剤)、填料(クレー、タルク、カオリンなど)、湿潤紙力増強剤(メラミン樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂など)、定着剤(硫酸アルミニウム、カチオン化澱粉など)、pH調整剤(水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、導電剤、染料などの1種類以上を含んでいても良い。
またパルプ紙は、水溶性高分子添加剤、サイズ剤、無機電解質、吸湿性物質、顔料、pH調節剤、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコールなどの1種以上を含む処理液でタブサイズ、あるいはサイズプレスされたものであってもよい。紙支持体の坪量は特に限定しないが50〜300g/m2 の範囲であることが好ましく、さらに好ましい範囲は100〜200g/m2 の範囲である。坪量が少ないと基材の剛度が不足し、インクジェット記録体を手に持って観察する際しなりが大きく不都合を生じたり、あるいはインクジェットプリンターでの給紙走行で不都合が生じることがある。また300g/m2 より多いと全体が厚ぼったく取り扱い難くなるほか、剛直になり、給紙走行で不都合が生じることがある。厚さと緊度に関して特別の制限はないが、シート状基体を製造した後、これにマシンカレンダー、熱カレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダーなどにより圧力や熱を加えて圧縮し、表面平滑性を改善したものが好ましい。厚さは概ね20〜30μm程度、緊度は概ね0.7〜1.2g/cm3 の範囲にあることが好ましい。
シート状基体の一面に設ける耐水性表面樹脂被覆層は、ポリオレフィン樹脂被覆層や、あるいはこれらを多層構成にして構成したものである。ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、α−オレフィン類、例えばプロピレンなどの単独重合体、ないし前記オレフィンの少なくとも2種類の共重合体、およびこれらの各種重合体の混合物などから選ぶことができる。
好ましいポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの混合物である。ポリオレフィン樹脂の分子量に特に制限はないが、20,000〜200,000の範囲のものが通常使用できる。ポリエチレン樹脂としては市販品から適宜選択して使用することができるが、その密度は0.915〜0.950、メルトインデックスは2〜20g/10分であることが好ましい(JIS K−6760)。さらにポリオレフィン樹脂には顔料を配合することが、白色度、鮮明性、像解像性の点から好ましい。顔料としては、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、合成ゼオライトなどから適宜選択して、その1種または2種類以上を混合して使用することができ、特に光沢と白色度の点からアナターゼ型二酸化チタンあるいは、ルチル型二酸化チタンを使用することが好ましい。また顔料の表面はポリオレフィン樹脂との分散性を向上させる目的で、表面処理を施すこともできる。さらにポリオレフィン樹脂被覆層には添加剤として、有色顔料、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、可塑剤、および分散剤などを必要に応じて添加することもできる。
ポリオレフィン樹脂被覆層は、溶融押し出し塗工法によりシート上基体に塗工形成される。溶融押し出し塗工を実施するには、通常ポリオレフィン樹脂を顔料と溶融混練し、走行するシート状基体の上に押し出し機のスリットダイからフィルム状に押し出し塗工する。通常、溶融押し出し温度は250〜350℃であることが好ましい。また表面を冷却固化する際にはクロームメッキなどで鏡面仕上げされたクーリングロールを使用することが、表面光沢を向上させるため好ましい。例えばクーリングロールの表面あらさ(JIS B 0601)は、Ra=0.5μm以下、より好ましくはRa=0.05μm以下である。
またポリオレフィン樹脂層が2層以上の多層構造であってもよく、共押し出し塗工法で形成された多層構造であっても差し支えない。
および、これらの1種あるいは2種類以上を適宜選択して使用することも差し支えない。また塗料粘度あるいは塗工性を調節する目的で、オリゴマーやモノマーを適宜混合して使用することができる。
さらにシート状基体のウラ側の面に、すなわちインク記録層を設ける面に対して反対側の面に、フィルム形成性合成樹脂を含有する裏面樹脂被覆層を設けることができる。裏面樹脂被覆層はオモテ側の面と同様にして、ポリオレフィン樹脂含有層を塗工することにより形成できる。裏面樹脂被覆層には必ずしも顔料を添加する必要なはい。裏面樹脂被覆層によりカール改善や、耐水性の改良効果が得られる。また裏面の樹脂被覆層に、インク記録層とのブロッキング防止、筆記性の付与、帯電防止、プリンターでの給紙走行性の改善などの目的で、更に裏面塗工層を設けることもできる。
本発明の耐水性表面樹脂被覆層の塗工量は、1層あるいは2層以上の多層構成である場合のどちらでも、全体として5〜50g/m2 の範囲であることが好ましい。少ないと、本発明の効果が十分に発揮されず、逆に多くても効果が飽和するばかりでなく、無用にコストを引き上げ、またシート状支持体が厚ぼったくなるなど不都合が生じる。
図1に示された本発明方法により製造方法により製造されたインクジェット記録体の一例は、支持体8の表面上に耐水性表面樹脂被覆層5が形成され、その上に中間層4が形成され、その上にインク記録層1が形成されており、また支持体8の裏面側には、裏面被覆層が形成されている。
図2に示された本発明方法により製造されたインクジェット記録体の他の例は、支持体8の表面上にポリオレフィン樹脂組成物層7、下層6B及び上層6Aからなる耐水性表面樹脂被覆層が形成され、その上に中間層4が形成され、その上に形成されたインク記録層がインク吸収層3と、インク受容下層2Bとインク受容上層2Aとからなり、支持体8の裏面側に裏面被覆層9が形成されている。
インク記録層は、微細顔料と接着剤(好ましくは水溶性樹脂)を含有するものである。インク記録層は図1に示されているように単層でもよいしインク受容層とインク吸収層による2層構成でもよい、更に図2に示されているようにインク受容層を上層と下層の2層に分けて更にその下にインク吸収層を設けてもよい。微細顔料としては、コロイダルシリカ、アニオン性コロイダルシリカ、カチオン性コロイダルシリカ、アルミナゾル、擬ベーマイトアルミナゾル、無定型シリカ、気相法合成シリカ、合成微粒子シリカ、合成微粒子アルミナシリケート、カオリン、クレー、焼成クレー、硫酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、ゼオライト、珪藻土、モンモリロナイト群鉱物、ハイドロタルサイト群鉱物、スメクタイト群鉱物、ベントナイト粘土鉱物、合成炭酸カルシウム、チタンゾル、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポリ水酸化アルミニウム化合物、アルミナ水和物、プラスチックピグメント、尿素樹脂顔料、スチレン系樹脂顔料、ベンゾグアナミン系樹脂顔料、トウモロコシ澱粉粒子や馬鈴薯澱粉粒子などの穀物澱粉粒子、加工澱粉粒子、結晶化セルロース粒子、非結晶性セルロース粒子などの無機系あるいは有機系の各種顔料を例示することができる。これらから適宜選択して、あるいは組み合わせて使用することができる。
好ましい微細顔料として、アニオン系、カチオン系、あるいは酸性のコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカ中にそれ以外の顔料を併用する場合、他の顔料の平均粒子径は2μm以下であることが望ましい。他の顔料の使用量はコロイダルシリカ100重量部に対して、乾燥重量で25重量部以下であることが好ましい。接着剤としてはインク受容層の下層の接着剤として下記するものが例示できる。
以下にインク記録層が少なくとも2層以上のインク受容層から構成される場合について説明する。インク受容層の下層は、微細顔料と接着剤を含有して構成される。下層に使用されるコロイダルシリカなどの微細顔料の平均粒子径(BET法により表面積を測定し、平均粒子径を算出する。以下の平均粒子径は特にことわらない限りすべてこの方法により測定したものである。)は10〜300nm。好ましくは20〜200nmに調製されたものである。もちろん必要に応じ、2種類以上の微細顔料を混合して使用することも可能である。好ましい例としては、耐水性や高湿保存時のインク染料のニジミ抑制効果などから、カチオン系コロイダルシリカを使用することが有効である。また酸性コロイダルシリカは一般のアニオン性コロイダルシリカの不純物を除去し酸性領域で安定化させたものであるが、水溶性樹脂との塗料調製において、塗膜の成膜性あるいは透明性がすぐれるため有効に使用することができる。
接着剤としては、例えば完全ケン化ポリビニルアルコール、不完全ケン化ポリビニルアルコール、カチオン化ポリビニルアルコール、珪素含有ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カゼイン、大豆カゼイン、変性大豆カゼイン、合成蛋白質類、ゼラチン、澱粉、カチオン化澱粉、リン酸エステル化澱粉、変性澱粉等の水溶性樹脂や、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレートブタジエン共重合体の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基、カチオン性基などの官能基含有モノマーによる官能基含有変性重合体ラテックス等のラテックス類、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性樹脂などの各種水性接着剤。無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタアクリレートの重合体または共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など、塩化ビニル−酢酸ビニルの共重合体、ポリビニルブチラールなどのアクリル酸エステル、アルキッド樹脂系なども例示される。
なかでも、微細顔料との分散性からポリビニルアルコールが最も有効である。微細顔料と水溶性樹脂の固形分重量比は、コロイダルシリカ等の微細顔料100重量部に対して水溶性樹脂2〜25重量部、好ましくは5〜15重量部の範囲である。25重量部より多いと下層が必要とするインク吸収速度が得られなく、一方2重量部より少ないとインク受容層にヒビワレが生じて、不適当である。
一般に、インクジェット用紙については、印字発色濃度を向上させる目的でカチオン性樹脂をインク記録層中に添加することが知られている。本発明のインク記録層の中にカチオン性樹脂を添加することも差し支えない。添加されるカチオン性樹脂としては、例えばポリエチレンアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、第3級アミノ基や題級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミンなどがあげられる。なお、カチオン樹脂の添加量としては顔料100重量部に対して、1〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の範囲である。そのほか一般塗工紙製造において使用される分散剤、粘度調節剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤などの各種助剤を適宜添加することも差し支えない。またインク受容層の下層の塗工量は3〜60g/m2 、好ましくは5〜40g/m2 の範囲であることが好ましい。3g/m2 未満ではインクの吸収層が少なく、下層を設ける意味がなく、40g/m2 を越えると効果が飽和して無意味である。15g/m2 以上の高塗工量を得るためには塗料の増粘、高濃度化の他に、2回以上の塗工により実現することも可能である。
つぎに、インク受容層の上層(支持体から遠い方の層)について説明する。上層は下層に隣接して積層される。上層の基本的な構成は下層と同じであるが、印字濃度を得るために微細顔料の粒子径が下層より小さい方が有効である。10〜300nmが好ましく、より好ましくは20〜200nm範囲である。その他、必要に応じて前記に示した顔料、水溶性樹脂、カチオン樹脂や、一般の塗工紙の製造で使用される分散剤、粘度調節剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤などの各種助剤が適宜添加される。またインク受容層の上層の塗工量は3〜60g/m2 、好ましくは5〜40g/m2 の範囲であることが好ましい。
次にインク吸収層を設ける態様について説明する。上記2層のインク受容層で、インク量の多い印字部分(すなわち印字濃度の高い部分)のインクを吸収できない場合には、下層に隣接してインク吸収層をもうけることができる。インク吸収層は微細顔料と接着剤を含有するインク受容層と同等の組成であっても、本発明の目的とする高いインク吸収速度、高い印字濃度、高光沢、印字適正、耐水性とも良好なインクジェット記録体が得られる。しかしインクジェットインク組成のうちインク染料はインク記録層の表面付近に留まることが印字濃度や光沢性の観点から好ましく、上述の本発明のインク記録層のうち、インク吸収層はそうした性能を発揮する目的で設けられる。またインク吸収層は、おもに余剰のインクの溶媒を吸収する目的で設けられるものである。
インク吸収層は、微細顔料と接着剤(好ましくは水溶性樹脂)を含有するものであり、微細顔料の粒子径がインク受容層組成の粒子径よりも大きいことが好ましい。インク吸収層に使用される顔料としては、前述の微細顔料やあるいは無定型シリカ、クレー、アルミナ、スメクタイト、などの各種顔料から適宜選択して使用することができる。印字濃度やインク吸収性などの点から、シリカとアルミナが好ましく用いられ、これらの粒子径は0.1〜10μmであることが好ましい。顔料と併用する接着剤としては、(インク受容層の接着剤として)前記に示したポリビニルアルコール、カゼイン、澱粉などの水溶性樹脂等が例示できる。接着剤の添加量は顔料100重量部に対し、5〜150重量部、好ましくは10〜50重量部の範囲である。またインク定着性を向上する目的として使用されるカチオン樹脂を添加することも差し支えない。例えば前述のアミン系などの各種化合物を例示することができる。なおカチオン樹脂の添加量は顔料100重量部に対し、1〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の範囲である。
そのほか、一般の塗工紙に使用される分散剤、粘度剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防止剤などの各種助剤も適宜添加される。インク吸収層の塗工量は特に限定するものではないが、3〜30g/m2 の範囲であることが好ましい。少ないとインク吸収が不足して好ましくない。一方、多すぎると効果が飽和して無意味である。本発明のインク記録層、インク受容層、インク吸収層を得るための塗工方式としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーターなどの各種塗工方式が例示される。
つぎに、インク記録層を成型面に塗工成膜したあと、接着性若しくは粘着性を有する中間層を介して支持体に転写する態様につき説明する。接着方法としては、種々のラミネート法(ドライラミネート法、ウエットラミネート法、ホットメルトラミネート法、溶融ラミネート法などの公知のラミネート法を例示することができる)が有効である。ウエットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法では、支持体に接着性樹脂や接着剤や粘着剤を塗工して中間層を設け、中間層とインク記録層が対面するように貼合せて圧着した後、成型面を剥がして、所望のインクジェット記録用シートが得られる。あるいはインク記録層に接着性樹脂や接着剤や粘着剤を塗工することも可能である。
溶融ラミネート法では溶融押し出し機中に250〜350℃で加熱溶融されたポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂あるいは組成物が表面に塗工され、成型面上に設けられたインク記録層と貼合せ、クーリングロールにより冷却圧着した後、成形体を剥がして、所望のインクジェット記録体が得られる。中間層として接着性樹脂、接着剤、粘着剤を利用する場合は、バーコーター、ロールコーター、リップコーターなどの種々の塗工方式を利用して、支持体あるいはインク記録層に塗工乾燥した後、インク記録層あるいは支持体と貼合せてから、成型面を剥がし、所望のインクジェット記録体を得ることができる。中間層の塗工量はインク記録層と支持体が接着さえできれば特に限定するものではないが、熱可塑性樹脂、接着剤、感圧接着剤、粘着剤の何れを使用する場合でも2〜50g/m2 の範囲である。塗工量が少ないと、十分な接着力が得られにくく、一方、多くても効果が飽和して、しかも無用にインクジェット記録体の厚さを増すため、無意味である。
中間層に使用される材料としては、例えば、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂およびその誘導体、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレン、炭化水素樹脂、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂。尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリビニールアセタール/フェノール樹脂、ゴム=フェノール樹脂、エポキシ/ナイロン樹脂などの複合ポリマー型接着剤、ラテックス型ゴム基などのゴム基接着剤、澱粉、膠、カゼインなどの親水性天然高分子接着剤などの種々の接着剤。溶剤型感圧接着剤、エマルジョン型感圧接着剤、ホットメルト型感圧接着剤、ディレードタイプ感圧接着剤などの各種の感圧接着剤、あるいは各種の粘着剤などが例示され、適宜使用することができる。インク記録層の成型面として使用する材料としては、高表面平滑性を有するセロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、高湿ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどのフィルム類、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、含侵紙、蒸着紙などの各種紙類、金属フォイル、合成紙などのシート類および無機ガラス、金属、プラスチックなどの高平滑表面を有する板類が適宜使用される。特に、塗工適正および、成型面とインク記録層の剥離適正などの観点から、高分子フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなど)、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、無機ガラスが好ましい。この際成型面の表面あらさRa(JIS B 0601)は1μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。成型面は無処理のままでも、成型面とインク記録層の剥離性を良くするために、成型面の塗工面にシリコーンやフッ素樹脂などの剥離性を有する樹脂を塗工して使用することも可能である。
中間層を介して支持体に転写する時のインク記録層の塗工工程は、成型面にインク記録層の最も上の層が(すなわち多層構成のインク記録層が設けられる場合にはインク受容層の上層が)先に塗工され、その上面にインク記録層の下層が塗工される。さらに必要に応じてインク吸収層がこの上面に塗工積層される。支持体に転写することによって得られたインクジェット記録体のインク記録層は、(インク受容層の上層)/(インク受容層の下層)/(インク吸収層)/(中間層)/(シート状基体)の順序で積層されたものである。
本発明のインクジェット記録方式で使用されるインクとしては、像を形成するための色素と該色素を溶解または分散するための液媒体を必須成分とし、必要に応じて各種分散剤、界面活性剤、粘度調節剤、摩擦調節剤、帯電防止剤、pH調節剤、防カビ剤、記録剤の溶解または、分散安定化剤などを添加して調整される。インクに使用される記録剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素、分散染料、油性染料および、各種顔料などが例示できるが、従来公知のものは特に問題なく使用することができる。記録剤の含有量は、液媒体成分の種類、インクに要求される特性などに依存して決定されるが、通常、0.1〜20重量%程度である。
本発明で用いられるインクの溶媒としては、水および水溶性の各種有機溶剤、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトンまたはケトンアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2〜6個のアルキレングリコール類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(エチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類などが例示できる。
以下に実施例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもちろんこれらに限定されるものではない。特にことわらない限り、%は重量%を示し、部は重量部を示す。
実施例1
(1)シート状支持体の製造
カナディアンスタンダードフリーネス(JIS P−8121)が250mlになるまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、同じくカナディアンスタンダードフリーネスが280mlになるまで叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを、重量比2:8の割合で混合し、濃度0.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中に下記の製紙用添加剤を、パルプ絶乾重量に対して下記の添加量で添加し、十分に撹拌して分散させた。カチオン化澱粉 2.0%、アルキルケテンダイマー0.4%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂 0.1%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂 0.7%、苛性ソーダを加えてpH7.5に調節。上記組成のパルプスラリーを長網マシンで抄紙し、ドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量170g/m2 、緊度1.0g/cm2 、水分含有率8.0%のパルプ紙基体を製造した。上記サイズプレス工程に用いたサイズプレス液は、カルボキシル変性ポリビニルアルコールと塩化ナトリウムとを2:1の重量比率で混合し、これを水に加えて加熱溶解し、濃度5%に調整したもので、これを紙の両面に塗工量25g/m2 になるように塗工した。
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/m2 、メルトインデックス20g/10分)65重量部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/m2 、メルトインデックス4g/10分)35重量部からなる裏面用ポリオレフィン樹脂被覆層組成物をバンバリーミキサーで分散した。上記パルプ紙の表裏両面にコロナ放電処理を施した後、これにバンバリーミキサーで混合分散したポリオレフィン樹脂被覆層組成物を、パルプ紙(紙基体)のワイヤー面側に塗工量が25g/m2 になるようにして、T型ダイを有する溶融押し出し機(溶融温度320℃)で塗工した。
(2)耐水性表面樹脂被覆層の塗工
引き続いてパルプ紙のフェルト面に、下記の手順により溶融押し出しラミネート塗工を行い、ポリオレフィン樹脂からなる耐水性表面樹脂被覆層を設けた。まず、ポリオレフィン樹脂と白色顔料とから構成される表面用ポリオレフィン樹脂被覆用組成物、直鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926、メルトインデックス20g/10分)35重量部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919、メルトインデックス2g/10分)50重量部、アナターゼ型二酸化チタン(商標:A−220、石原産業製)15重量部、ステアリン酸亜鉛0.1重量部、酸化防止剤(商標:Irganox1010、チバガイギー製)0.03重量部、群青(第一化成製、商標:青口群青 No. 2000)0.09重量部、蛍光増白剤(商標:UVITEX OB、チバガイギー製、)0.3重量部を調製した。ついで、溶融押し出しラミネート法により、パルプ紙表面に20g/m2 塗工した。なおこの際、クロムメッキされ鏡面仕上げされた表面(表面粗さRa=0.05μm)を有するクーリングロールを使用して溶融樹脂面を冷却固化した。
(3)インク記録層の塗工
平均粒子径45nmのカチオン変性コロイダルシリカ(商標:スノーテックスAK−XL、日産化学製)100重量部に、珪素含有変性ポリビニルアルコール(商標:R−2105、クラレ製)8重量部を混合した15%水溶液をメイヤーバーで塗工量が8g/m2 となるように、成型面として使用するPETフィルム(商標:ルミラーTタイプ、表面粗さRa=0.02μm)に塗工乾燥した。次に、上記塗工層上に平均粒子径85nmのカチオン変性コロイダルシリカ(商標:スノーテックス AK−ZL、日産化学製)100重量部に、珪素含有ポリビニルアルコール(商標:R−2105、クラレ製)15重量部を混合した15%水溶液をメイヤーバーで塗工量が15g/m2 になるように塗工乾燥した。
(4)インクジェット記録体の製造
以上の手順で作成した、シート状基体と耐水性表面樹脂被覆層の積層体に、中間層として使用するポリエステル接着剤(東洋モートン製、商標:AD−578A)100重量部、ポリイソシアネート系架橋剤(東洋モートン性、商標:CAT−50)15重量部の組成物を酢酸エチルで10重量%に溶解し、メイヤーバーで乾燥塗工量10g/m2 になるように塗工乾燥した。ついで上記のPETフィルム上に設けたインク記録層と対面させ重ねあわせ、一対の金属ロールで加圧して(線圧15kg/cm)接着した。温度50℃で1週間接着硬化を促進させたのち、PETフィルムを剥離して、インクジェット記録体を完成させた。
比較例1
実施例1と同じシート状紙基体に、無定型シリカ(商標:ファインシールX−45、トクヤマ製)100重量部、ポリビニルアルコール(商標:PVA−117、クラレ製)30重量部、インク定着性カチオン樹脂(商標:SR−1001、住友化学工業製)15重量部を混合した15%水溶液を用い、ワイヤーバーで塗工量が20g/m2 となるように塗工して乾燥させた。
以上の手順で作成した。各実施例および比較例1のインクジェット記録体の評価を下記の通りに行った。
光沢度とインク吸収性の評価は、市販のインクジェットプリンター(商標:デスクジェット560J、ヒューレットパッカー社製)で印字記録して評価した。
光沢度:ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクのベタ部分について、JIS Z 8714の方法によって、入射角60度、20度の鏡面光沢度を測定した。
インク吸収性:インク吸収性の評価は、印字直後から5秒毎に、プリントした印字面に上質紙を重ね、インクが上質紙に転写するかどうかを観察し、全く転写しなくなるまでの時間を測定した。測定した秒数を4段階に評価した(◎:5秒以下、○:5〜10秒、△:10〜30秒、×:30秒以上)。
印字濃度:黒ベタ部分の濃度をマクベス濃度計(商標:Macbeth RD−920)を用いて測定した。表中の値は5回測定の平均値である。
表1から明らかなように、実施例1で得られたインクジェット記録体は、光沢度、像鮮明性、印字濃度、耐水性が優れたものであった。