JP2005007810A - 追記型光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】波長350〜700nmのレーザー光により高密度記録が可能で多層化にも対応可能な、記録材料にTeを用いない追記型光記録媒体の提供。
【解決手段】基板上に少なくとも記録層を有し、該記録層が下記組成式(1)で表される原子比の記録材料を含有することを特徴とする追記型光記録媒体。
(InxSb1−x)α(GaySb1−y)βNγAδ (1)
(式中、0.2≦x≦0.45、0.05≦y≦0.2、0.05≦α≦0.5、0.35≦β≦0.95、0<γ≦0.5、0≦δ≦0.1、α+β+γ+δ=1、AはAl、Geのうちの少なくとも1種)
【選択図】 図1
【解決手段】基板上に少なくとも記録層を有し、該記録層が下記組成式(1)で表される原子比の記録材料を含有することを特徴とする追記型光記録媒体。
(InxSb1−x)α(GaySb1−y)βNγAδ (1)
(式中、0.2≦x≦0.45、0.05≦y≦0.2、0.05≦α≦0.5、0.35≦β≦0.95、0<γ≦0.5、0≦δ≦0.1、α+β+γ+δ=1、AはAl、Geのうちの少なくとも1種)
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザなどの光により情報の記録・再生などが行なわれる追記型(ライトワンス型)光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報量の増大に伴い、高密度でかつ高速に大量のデータの記録・再生ができる記録媒体が求められているが、光ディスクは正にこうした用途に応えるものとして市販され、利用されている。しかし、CPUの処理速度の更なる向上や周辺機器及びソフトウェア等の整備・発展を受けて、膨大な画像情報や音声信号を自由自在に取り扱う環境が整い、更に、インターネットに代表される広域情報通信網を経由して、世界中の有用かつ膨大な情報のやり取りを瞬時にしかも簡便に行うことのできるシステムが高度に構築されつつある今日、光記録媒体に対する高容量化、高密度化へのニーズはますます高まっているのが現状である。
これに呼応するように光ディスクにおいても、デジタル変調技術及びデータ圧縮技術の進歩とも歩調を合わせて、更に高密度・高容量化された新規光ディスクが次々と市場に投入されている。光ディスクを、ユーザーのデータ操作の観点から大別すると、再生専用型(リードオンリー型)、追記型(ライトワンス型)、書換可能型(リライタブル型)の3種類に分類できる。
【0003】
このうちユーザー自らが情報の記録を行うことのできるディスクは、追記型と書換可能型である。書換可能型は、情報の記録及び再生のみならず消去して再記録することも可能であることから繰り返し情報を書き換える用途に適している。
一方、追記型は、必要に応じて情報の記録・再生は可能であるが、消去再記録はできない。このことは、一見短所としてとられるが、むしろ、一度記録した情報は消去できないという長所でもある。従って、長期保管の必要な重要ファイルの保存には、書換可能型よりも好適な光ディスクとして使用できる。特に、改ざんされてはならない公文書用の保存ファイルは追記型光ディスクでなければならない。
このような追記型光ディスクは、例えば特許文献1〜2に提案されているが、これらの記録層に用いられているTeは有毒であり環境によくない。
また、記録容量を高めるやり方として、基板の片面側に少なくとも記録層と反射層からなる情報層を2つ重ねて、これら情報層間を紫外線硬化樹脂等で接着して作成される2層相変化型光記録媒体が、例えば特許文献3〜4に提案されている。
【0004】
しかし、近年の情報の大容量化に伴い更に高記録密度化の要求が高まることが予想され、例えば使用するレーザー波長を青紫色光領域まで短波長化すること、或いは記録・再生を行なうピックアップに用いられる対物レンズの開口数NAを大きくして、光記録媒体に照射されるレーザー光のスポットサイズを小さくすることが提案されており、それに対応した光ディスクが要求されている。
記録・再生に用いるレーザー光の波長が変わっても、記録材料の熱的特性は基本的に同じであるが、光学的特性、特に光学定数は材料によっては大きく変わることがある。特に赤色波長域に比べて青色波長域では、特許文献4記載のTeOxベースの記録材料では反射率変化が小さくなり、得られる信号振幅やC/N比も小さくなってしまう傾向にある。また、特許文献5には、In、Sb、Sn、Geからなる合金を記録材料に用いた追記型光記録媒体が開示されているが、波長680nm以下のレーザービームという記載はあるものの、青色波長領域付近については一切述べられていない。また、片面2層記録媒体についても言及されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開昭50−46317号公報
【特許文献2】
特開2000−222776号公報
【特許文献3】
特許第2702905号公報
【特許文献4】
特開2002−133712号公報
【特許文献5】
特開2002−11958号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、波長350〜700nmのレーザー光により高密度記録が可能で多層化にも対応可能な、記録材料にTeを用いない追記型光記録媒体の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明の追記型光記録媒体を見出した。即ち、上記課題は、次の1)〜10)の発明(以下、本発明1〜10という)によって解決される。
1) 基板上に少なくとも記録層を有し、該記録層が下記組成式(1)で表される原子比の記録材料を含有することを特徴とする追記型光記録媒体。
(InxSb1−x)α(GaySb1−y)βNγAδ (1)
(式中、0.2≦x≦0.45、0.05≦y≦0.2、0.05≦α≦0.5、0.35≦β≦0.95、0<γ≦0.5、0≦δ≦0.1、α+β+γ+δ=1、AはAl、Geのうちの少なくとも1種)
2) 基板が透明であり、該基板上に少なくとも誘電体保護層、記録層及び反射層をこの順序で積層した構造を有することを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
3) 基板上に少なくとも反射層、記録層及び誘電体保護層をこの順序で積層した構造を有することを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
4) 記録層と反射層の間にも誘電体保護層を有することを特徴とする2)又は3)記載の追記型光記録媒体。
5) 記録層の厚さが3〜50nmであることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
6) 反射層がAl又はAgを主成分とする合金からなり、厚さが5〜250nmであることを特徴とする2)〜5)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
7) 誘電体保護層がZnSとSiO2の混合物からなり、混合物に占めるSiO2の比率が5〜40モル%であることを特徴とする2)〜6)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
8) 基板上に、請求項1〜7の何れかに記載の層構成を有する情報層を、中間層を介して2層以上設けたことを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の多層追記型光記録媒体。
9) 基板上に情報層を2層有し、記録・再生用の光が入射する側に近い方の情報層の光透過率が、波長350〜700nmの光に対して40〜70%であることを特徴とする8)記載の多層追記型光記録媒体。
10) 基板が樹脂製であることを特徴とする1)〜9)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
【0008】
以下、上記本発明について詳細に説明する。
本発明の特徴の一つは、記録層材料として組成式(InxSb1−x)α(GaySb1−y)βNγAδで表わされる材料(組成比は原子比で、0.2≦x≦0.45、0.05≦y≦0.2、0.05≦α≦0.5、0.35≦β≦0.95、0<γ≦0.5、0≦δ≦0.1、α+β+γ+δ=1、AはAl、Geのうちの少なくとも1種)を用いることである。
元素Aを加えた場合には、保存安定性が向上し、記録に要するレーザーパワーが少なくて済むなど、記録システム上扱い易い追記型光記録媒体が得られる。
xが0.2より小さいとC/N比が低下し、0.45より大きいと保存信頼性が低下する。yが0.05より小さいと高線速下での記録・再生が困難になり、0.2より大きいとC/N比が低下する。αが0.05より小さいと記録感度やC/Nが低下し、0.5より大きいと保存信頼性が低下する。βが0.35より小さいか又は0.95より大きいと、記録マークの反射率と未記録部の反射率との変調度が0.4以下と小さくなってしまう。また、γが0の場合には青紫色レーザーのような短波長領域での反射率差が小さくなってしまう。γが0.5より大きいと記録感度やC/N比が低下する。δが0.1より大きいと記録感度が低下してしまう傾向にある。
記録層の厚さは3〜50nmが好ましく、この範囲を外れるとC/N比が低下したり、記録に要するエネルギーの許容幅(マージン)が低下したりすることがある。特に好ましい厚さは6〜30nmである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施形態の一つとしては、透明基板上に誘電体保護層、記録層及び反射層をこの順序で積層した構造を有するものが挙げられる。この実施形態では、感度がよく記録再生特性の優れた追記型光記録媒体が得られる。
また、この構造の追記型光記録媒体は、基板側から記録層上に光を照射して情報の記録・再生を行う基板入射型光記録媒体として使用することができる。記録層と反射層との間にも誘電体保護層を設けることが好ましい。
また、本発明のもう一つの好ましい実施形態としては、基板上に反射層、記録層及び誘電体保護層をこの順序で積層した構造を有するものが挙げられる。この実施形態では、レーザー光を誘電体保護層側から入射する(膜面入射)ことにより対物レンズの開口数を大きくし、光スポットを小さくすることが可能となり、光記録媒体の大容量化と高速アクセスが可能となる。
誘電体保護層の上には透明樹脂カバー層を設けることが好ましい。この構造の追記型光記録媒体は、膜面側から記録層上に光を照射して情報の記録・再生を行う膜面入射型光記録媒体として使用することができる。記録層と反射層の間にも誘電体保護層を設けることが好ましい。
【0010】
基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の樹脂やガラス製のものを用いることができるが、最も一般的なのは安価で特性の優れた樹脂基板である。なお、基板入射型光記録媒体の場合は、基板は記録・再生に用いる光に対して透明である必要がある。
誘電体保護層は、記録層を保護し且つ光の屈折率を調節する役割を担う。また樹脂基板を用いる場合には、レーザービームの照射により発生する熱から基板を保護する役割も担う。従って誘電体保護層は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度及び密着性などを考慮してその材料を選択するのが好ましい。
一般的には透明性が高く且つ高融点であるMg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ho、Er、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Si、Ge、Pbなどの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物や、Cg、Mg、Liなどのフッ化物などを用いる。これらは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0011】
具体例としては、酸化タンタル、又は酸化タンタルと硫化タンタルとの混合物が挙げられる。また、ZnS及び/又はZnSeと、上記の他の化合物との混合物を用いると、良好な記録特性及び経時安定性を有する追記型光記録媒体が得られるので好ましい。この場合、ZnS及び/又はZnSeの亜鉛と他の化合物に含まれる金属の合計に対する亜鉛の原子比率が95〜40%であるものが記録の保存安定性に優れるので好ましい。特に好ましいのは、ZnS60〜95モル%、SiO240〜5モル%から成るものである。
誘電体保護層の厚さは通常20〜200nmである。なお、記録層と反射層との間に誘電体保護層を設ける場合、その膜厚は、通常1〜30nm、好ましくは2〜20nmである。
【0012】
基板入射型光記録媒体の場合、記録層の上に反射層を設けるが、直接に反射層を設けるよりも記録層の上に先ず誘電体保護層を設け、その上に反射層を設ける方が好ましい。この誘電体保護層は、前述の誘電体保護層と同様の材料で形成すればよく、その膜厚は厚くても30nm程度で十分である。
反射層は、通常、Al又はAgを主成分とする材料で形成する。好ましくは、Al又はAgと、Ti、V、Cr、Zr、Mo、Rh、Pd、Ta、W、Pt、Auよりなる群から選ばれた金属から成る合金で形成する。この合金の組成に占めるTiなどの添加金属の原子比率は通常0.5〜10原子%である。
反射層の厚さは、膜の放熱性を適切なものとする見地から、5〜250nm、特に5〜150nmであることが好ましい。片面2層追記型光記録媒体のように反射層の更に奥側へ光を透過させる必要がある場合を除けば、放熱性の観点から、80〜150nmの範囲であることがより好ましい。
膜面入射型光記録媒体の場合、記録層の下に反射層を設けるが、反射層の直上又は直下に、誘電体保護層を設けることが好ましい。この誘電体保護層は、前述の誘電体保護層と同様の材料、膜厚で形成すればよく、反射層についても、前述の反射層と同様の材料、膜厚で形成すればよい。
【0013】
基板入射型光記録媒体の場合の各構成層は、マグネトロンDCスパッタリング、マグネトロンRFスパッタリングなど、この種の光記録媒体の製造に用いられることが公知の任意の方法で形成することができる。
また、基板入射型光記録媒体の場合は、反射層の上に樹脂から成る保護層を設けるのが好ましい。通常は反射層の上に紫外線硬化性の樹脂をスピンコート法などにより塗布し、次いで硬化させることにより保護層を形成する。更に、傷付き防止の目的で基板表面を硬くするため、透明基板の光入射側にも透明な樹脂から成る保護層を、上記と同様の手法により形成するのが好ましい。
膜面入射型光記録媒体の場合の各構成層は、基板入射型光記録媒体の場合と同様、公知の任意の方法で形成することができる。なお、誘電体保護層の上には、透明樹脂から成るカバー層を設けるのが好ましい。通常、紫外線硬化性の樹脂をスピンコート法などにより塗布・硬化させるか、或いは樹脂製のフィルムを接着することによって透明樹脂カバー層を形成する。
本発明1〜7の層構成を有する追記型光記録媒体は、そのままで用いることもできるし、該層構成を有する媒体を一つの情報層として扱い、2枚の媒体を基板の光入射面が互に外側になるように貼り合わせて、二つの情報層を有する形態とし、2倍の容量を有する形で用いることもできる。また、膜面入射型光記録媒体の場合には、1枚の基板の両面に膜形成することにより、2倍の容量とすることもできる。これにより光記録媒体の大容量化が可能となる。
【0014】
本発明の追記型光記録媒体に対して情報を記録・再生するには、光記録媒体を回転させ、対物レンズで集光した1ビームのレーザー光を基板側から入射する。その際、例えばパルス状に変調した波長350〜700nmのレーザービームを、開口数0.55以上の対物レンズを経て光記録媒体に入射させる。
従来の基板入射方式では基板の傾きや基板厚さのバラツキ等により光スポットの収差が増大するために、対物レンズの開口数を大きくすることができなかったが、膜面入射方式とすることにより対物レンズの開口数を大きくし、光スポットを小さくすることが可能となり、媒体の大容量化と高速アクセスが可能となる。
また、本発明の追記型光記録媒体の記録層材料は、片面に記録・再生可能な情報層を複数有する形態の多層追記型光記録媒体にも用いることができる。多層追記型光記録媒体の場合、中間層を介して記録層を有する情報層を基板上に設ける。中間層は、記録・再生のために照射する光の波長における光吸収が小さいことが好ましく、材料としては、成形性、コストの点で樹脂が好適であり、紫外線硬化性樹脂、遅効性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0015】
多層追記型光記録媒体の場合、記録・再生用の光を照射する側に近い方の情報層は、奥側の情報層にも光が到達する程度に光を透過しなければならない。そのために、記録層、反射層の膜厚は情報層が1層の光記録媒体に比べて薄くしなければならない。具体的には、記録層の膜厚は3〜20nmが好ましく、反射層は設けないか又は膜厚が20nm以下であることが好ましい。
図1に2層追記型光記録媒体の一例を示す。第1情報層、第2情報層は少なくとも記録層を有しており、誘電体保護層、反射層を有していても構わない。第2情報層の記録・再生を良好にするためには、第1情報層の光透過率は40%以上必要である。しかし、光透過率が70%よりも大きいと第1情報層の記録感度が低下してしまう。光透過率を40〜70%とするには、第1情報層の各層の膜厚を調整すればよい。
このように、記録・再生用の光を照射する側に近い方の情報層の光透過率を40〜70%とすれば、第1情報層、第2情報層共に感度がよく、記録再生特性の優れた2層追記型光記録媒体が得られる。
通常、記録マーク部の光透過率は未記録部に比べて小さいが、光ディスクにおける記録マーク部の割合は未記録部に比べて少ないので、未記録部の光透過率が40〜70%の範囲であれば問題はない。
【0016】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0017】
実施例1〜9、比較例1〜5
直径12cm、厚さ0.6mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂基板上に、誘電体保護層(厚さ50nm)、記録層(厚さ18nm)、誘電体保護層(厚さ12nm)、反射層(厚さ120nm)を順次製膜した。誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、記録層には組成式(InxSb1−x)α(GaySb1−y)βNγAδの材料(各実施例及び比較例の材料組成は表1参照)を、反射層にはAg−Pd(1原子%)−Cu(1原子%)を用い、Balzers社製枚葉スパッタ装置によりスパッタリングした。記録層に関しては、Ar+N2ガスの反応性スパッタ法を用い、製膜後の各元素の組成比を、ICP法により分析した。
次いで反射層の上に、スピンコーターによりオーバーコート層を設けて追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。
作成された各光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長 660nm
・NA=0.65
・線速 3.49m/s
・トラックピッチ 0.74μm
線密度0.267μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定した。結果を表1に示す。
表1から、実施例1〜9の光ディスクは何れも保存前後のC/N比が50dB以上で優れているのに対し、比較例1〜5の光ディスクは特に保存後のC/N比が40dB以下と悪いことが分る。
更に、記録層の各元素の組成を変化させて試作実験を行った結果、前述したような特性の振る舞いを示すことが分り、0.2≦x≦0.45、0.05≦y≦0.2、0.05≦α≦0.5、0.35≦β≦0.95、0<γ≦0.5、0≦δ≦0.1の範囲が良好であることが分った。
【0018】
実施例10
直径12cm、厚さ0.6mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂基板上に、記録層の材料を(In0.24Sb0.76)0.18(Ga0.15Sb0.85)0.7N0.05(Ge0.5Al0.5)0.07に変えた点以外は実施例1と同様にして誘電体保護層、記録層、誘電体保護層、反射層の順に製膜し、追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。それぞれの膜厚は、誘電体保護層:130nm、記録層:14nm、誘電体保護層:12nm、反射層:100nmである。
作成された光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長 407nm
・NA=0.65
・線速 6.0m/s
・トラックピッチ 0.43μm
線密度0.180μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定したところ、保存前で54dB、保存後で53dBであった。
更に、記録層の各元素の組成を変化させて試作実験を行った結果、本発明1の組成範囲内において良好な特性が得られ、とりわけ、レーザー波長が短くなるにつれて、αの値の小さい材料の方が、良好な特性を示すことが分った。
【0019】
実施例11
直径12cm、厚さ1.1mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂基板上に、反射層(厚さ100nm)、誘電体保護層(厚さ8nm)、記録層(厚さ12nm)、誘電体保護層(厚さ130nm)を順次製膜した。誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、記録層には実施例2と同様な材料を、反射層にはAg−Pd(1原子%)−Cu(1原子%)を用い、実施例1と同様にしてスパッタリングした。記録層の製膜後の組成比をICP法により分析したところ、実施例2と同様であった。
次いで、誘電体保護層の上に、直径12cm、厚さ50μmのポリカーボネートフィルムを、45μmの厚さの透明な両面粘着シートを介して貼り合わせ、透明カバー層を形成して追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。
作成された光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長:407nm
・NA=0.85
・線速:5.7m/s
・トラックピッチ:0.32μm
線密度0.13μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定したところ、保存前で57dB、保存後で56dBと良好であった。
【0020】
実施例12
直径12cm、厚さ0.6mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂製の第1基板上に、第1誘電体保護層(厚さ50nm)、記録層(厚さ10nm)、第2誘電体保護層(厚さ20nm)を順次製膜し、第1情報層を作成した。第1誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、第2誘電体保護層にはAlNを、記録層には実施例9と同様な組成の材料を用い、実施例1と同様にしてスパッタリングした。記録層の製膜後の組成比をICP法により分析したところ、実施例9と同様であった。
次に、第1基板と同様の基板を第2基板として、その上に反射層(厚さ80nm)、第1誘電体保護層(厚さ12nm)、記録層(厚さ12nm)、誘電体保護層(厚さ100nm)を順次製膜した。誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、記録層には第1情報層と同様な組成の材料を、反射層にはAg−Pd(1原子%)−Cu(1原子%)を用い、第1情報層と同様にして製膜した。ここで、第1情報層の波長407nmでの光透過率を、SHIMADZU製分光光度計を用いて第1基板側から測定したところ、54%であった。
次に、第1情報層の膜面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、第2基板の第2情報層面側と貼り合わせてスピンコートし、第1基板側から紫外線光を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させて中間層とし、2つの情報層を有する2層追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。中間層の厚さは50μmとした。
作成された光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長 660nm
・NA=0.65
・線速 3.49m/s
・トラックピッチ 0.74μm
線密度0.267μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定したところ、第1情報層、第2情報層共に、保存前後で45dB以上のC/N比を得ることができた。
また、その他の試作実験から、第2情報層を良好に記録・再生するためには、第1情報層の透過率が40%以上必要であり、第1情報層を良好に記録するためには、透過率を70%以下とする必要があることが分った。
【0021】
実施例13
直径12cm、厚さ1.1mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂基板上に、反射層(厚さ100nm)、誘電体保護層(厚さ14nm)、記録層(厚さ12nm)、誘電体保護層(厚さ65nm)を順次製膜し、第2情報層を形成した。各層の製膜は実施例1と同様にして行った。
この第2情報層上に樹脂を塗布し、2P(photo polymerization=フォト・ポリメリゼーション)法によって、連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つ中間層を形成した。中間層の厚さは30μmとした。
更にその上に、反射層(厚さ10nm)、誘電体保護層(厚さ8nm)、記録層(厚さ8nm)、誘電体保護層(厚さ130nm)の順に製膜し、第1情報層を形成した。誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、記録層には実施例2と同様な材料を、反射層にはAg−Pd(1原子%)−Cu(1原子%)を用い、実施例1と同様にしてスパッタリングした。記録層の製膜後の組成比をICP法により分析したところ、実施例2と同様であった。
更にその上に、直径12cm、厚さ50μmのポリカーボネートフィルムを、45μmの厚さの透明な両面粘着シートを介して貼り合わせて透明カバー層を形成し、追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。
作成された光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長:407nm
・NA=0.85
・線速:5.0m/s
・トラックピッチ:0.32μm
線密度0.13μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定したところ、第1情報層、第2情報層共に、保存前後で50dB以上と良好であった。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、波長350〜700nmのレーザー光により高密度記録が可能で多層化にも対応可能な記録材料にTeを用いない追記型光記録媒体を提供できる。
また、本発明4〜7によれば、反射率、記録感度、保存信頼性を記録・再生条件に合わせて最適化することができ、特性の優れた追記型光記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2層追記型光記録媒体の一例を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザなどの光により情報の記録・再生などが行なわれる追記型(ライトワンス型)光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報量の増大に伴い、高密度でかつ高速に大量のデータの記録・再生ができる記録媒体が求められているが、光ディスクは正にこうした用途に応えるものとして市販され、利用されている。しかし、CPUの処理速度の更なる向上や周辺機器及びソフトウェア等の整備・発展を受けて、膨大な画像情報や音声信号を自由自在に取り扱う環境が整い、更に、インターネットに代表される広域情報通信網を経由して、世界中の有用かつ膨大な情報のやり取りを瞬時にしかも簡便に行うことのできるシステムが高度に構築されつつある今日、光記録媒体に対する高容量化、高密度化へのニーズはますます高まっているのが現状である。
これに呼応するように光ディスクにおいても、デジタル変調技術及びデータ圧縮技術の進歩とも歩調を合わせて、更に高密度・高容量化された新規光ディスクが次々と市場に投入されている。光ディスクを、ユーザーのデータ操作の観点から大別すると、再生専用型(リードオンリー型)、追記型(ライトワンス型)、書換可能型(リライタブル型)の3種類に分類できる。
【0003】
このうちユーザー自らが情報の記録を行うことのできるディスクは、追記型と書換可能型である。書換可能型は、情報の記録及び再生のみならず消去して再記録することも可能であることから繰り返し情報を書き換える用途に適している。
一方、追記型は、必要に応じて情報の記録・再生は可能であるが、消去再記録はできない。このことは、一見短所としてとられるが、むしろ、一度記録した情報は消去できないという長所でもある。従って、長期保管の必要な重要ファイルの保存には、書換可能型よりも好適な光ディスクとして使用できる。特に、改ざんされてはならない公文書用の保存ファイルは追記型光ディスクでなければならない。
このような追記型光ディスクは、例えば特許文献1〜2に提案されているが、これらの記録層に用いられているTeは有毒であり環境によくない。
また、記録容量を高めるやり方として、基板の片面側に少なくとも記録層と反射層からなる情報層を2つ重ねて、これら情報層間を紫外線硬化樹脂等で接着して作成される2層相変化型光記録媒体が、例えば特許文献3〜4に提案されている。
【0004】
しかし、近年の情報の大容量化に伴い更に高記録密度化の要求が高まることが予想され、例えば使用するレーザー波長を青紫色光領域まで短波長化すること、或いは記録・再生を行なうピックアップに用いられる対物レンズの開口数NAを大きくして、光記録媒体に照射されるレーザー光のスポットサイズを小さくすることが提案されており、それに対応した光ディスクが要求されている。
記録・再生に用いるレーザー光の波長が変わっても、記録材料の熱的特性は基本的に同じであるが、光学的特性、特に光学定数は材料によっては大きく変わることがある。特に赤色波長域に比べて青色波長域では、特許文献4記載のTeOxベースの記録材料では反射率変化が小さくなり、得られる信号振幅やC/N比も小さくなってしまう傾向にある。また、特許文献5には、In、Sb、Sn、Geからなる合金を記録材料に用いた追記型光記録媒体が開示されているが、波長680nm以下のレーザービームという記載はあるものの、青色波長領域付近については一切述べられていない。また、片面2層記録媒体についても言及されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開昭50−46317号公報
【特許文献2】
特開2000−222776号公報
【特許文献3】
特許第2702905号公報
【特許文献4】
特開2002−133712号公報
【特許文献5】
特開2002−11958号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、波長350〜700nmのレーザー光により高密度記録が可能で多層化にも対応可能な、記録材料にTeを用いない追記型光記録媒体の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明の追記型光記録媒体を見出した。即ち、上記課題は、次の1)〜10)の発明(以下、本発明1〜10という)によって解決される。
1) 基板上に少なくとも記録層を有し、該記録層が下記組成式(1)で表される原子比の記録材料を含有することを特徴とする追記型光記録媒体。
(InxSb1−x)α(GaySb1−y)βNγAδ (1)
(式中、0.2≦x≦0.45、0.05≦y≦0.2、0.05≦α≦0.5、0.35≦β≦0.95、0<γ≦0.5、0≦δ≦0.1、α+β+γ+δ=1、AはAl、Geのうちの少なくとも1種)
2) 基板が透明であり、該基板上に少なくとも誘電体保護層、記録層及び反射層をこの順序で積層した構造を有することを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
3) 基板上に少なくとも反射層、記録層及び誘電体保護層をこの順序で積層した構造を有することを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
4) 記録層と反射層の間にも誘電体保護層を有することを特徴とする2)又は3)記載の追記型光記録媒体。
5) 記録層の厚さが3〜50nmであることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
6) 反射層がAl又はAgを主成分とする合金からなり、厚さが5〜250nmであることを特徴とする2)〜5)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
7) 誘電体保護層がZnSとSiO2の混合物からなり、混合物に占めるSiO2の比率が5〜40モル%であることを特徴とする2)〜6)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
8) 基板上に、請求項1〜7の何れかに記載の層構成を有する情報層を、中間層を介して2層以上設けたことを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の多層追記型光記録媒体。
9) 基板上に情報層を2層有し、記録・再生用の光が入射する側に近い方の情報層の光透過率が、波長350〜700nmの光に対して40〜70%であることを特徴とする8)記載の多層追記型光記録媒体。
10) 基板が樹脂製であることを特徴とする1)〜9)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
【0008】
以下、上記本発明について詳細に説明する。
本発明の特徴の一つは、記録層材料として組成式(InxSb1−x)α(GaySb1−y)βNγAδで表わされる材料(組成比は原子比で、0.2≦x≦0.45、0.05≦y≦0.2、0.05≦α≦0.5、0.35≦β≦0.95、0<γ≦0.5、0≦δ≦0.1、α+β+γ+δ=1、AはAl、Geのうちの少なくとも1種)を用いることである。
元素Aを加えた場合には、保存安定性が向上し、記録に要するレーザーパワーが少なくて済むなど、記録システム上扱い易い追記型光記録媒体が得られる。
xが0.2より小さいとC/N比が低下し、0.45より大きいと保存信頼性が低下する。yが0.05より小さいと高線速下での記録・再生が困難になり、0.2より大きいとC/N比が低下する。αが0.05より小さいと記録感度やC/Nが低下し、0.5より大きいと保存信頼性が低下する。βが0.35より小さいか又は0.95より大きいと、記録マークの反射率と未記録部の反射率との変調度が0.4以下と小さくなってしまう。また、γが0の場合には青紫色レーザーのような短波長領域での反射率差が小さくなってしまう。γが0.5より大きいと記録感度やC/N比が低下する。δが0.1より大きいと記録感度が低下してしまう傾向にある。
記録層の厚さは3〜50nmが好ましく、この範囲を外れるとC/N比が低下したり、記録に要するエネルギーの許容幅(マージン)が低下したりすることがある。特に好ましい厚さは6〜30nmである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施形態の一つとしては、透明基板上に誘電体保護層、記録層及び反射層をこの順序で積層した構造を有するものが挙げられる。この実施形態では、感度がよく記録再生特性の優れた追記型光記録媒体が得られる。
また、この構造の追記型光記録媒体は、基板側から記録層上に光を照射して情報の記録・再生を行う基板入射型光記録媒体として使用することができる。記録層と反射層との間にも誘電体保護層を設けることが好ましい。
また、本発明のもう一つの好ましい実施形態としては、基板上に反射層、記録層及び誘電体保護層をこの順序で積層した構造を有するものが挙げられる。この実施形態では、レーザー光を誘電体保護層側から入射する(膜面入射)ことにより対物レンズの開口数を大きくし、光スポットを小さくすることが可能となり、光記録媒体の大容量化と高速アクセスが可能となる。
誘電体保護層の上には透明樹脂カバー層を設けることが好ましい。この構造の追記型光記録媒体は、膜面側から記録層上に光を照射して情報の記録・再生を行う膜面入射型光記録媒体として使用することができる。記録層と反射層の間にも誘電体保護層を設けることが好ましい。
【0010】
基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の樹脂やガラス製のものを用いることができるが、最も一般的なのは安価で特性の優れた樹脂基板である。なお、基板入射型光記録媒体の場合は、基板は記録・再生に用いる光に対して透明である必要がある。
誘電体保護層は、記録層を保護し且つ光の屈折率を調節する役割を担う。また樹脂基板を用いる場合には、レーザービームの照射により発生する熱から基板を保護する役割も担う。従って誘電体保護層は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度及び密着性などを考慮してその材料を選択するのが好ましい。
一般的には透明性が高く且つ高融点であるMg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ho、Er、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Si、Ge、Pbなどの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物や、Cg、Mg、Liなどのフッ化物などを用いる。これらは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0011】
具体例としては、酸化タンタル、又は酸化タンタルと硫化タンタルとの混合物が挙げられる。また、ZnS及び/又はZnSeと、上記の他の化合物との混合物を用いると、良好な記録特性及び経時安定性を有する追記型光記録媒体が得られるので好ましい。この場合、ZnS及び/又はZnSeの亜鉛と他の化合物に含まれる金属の合計に対する亜鉛の原子比率が95〜40%であるものが記録の保存安定性に優れるので好ましい。特に好ましいのは、ZnS60〜95モル%、SiO240〜5モル%から成るものである。
誘電体保護層の厚さは通常20〜200nmである。なお、記録層と反射層との間に誘電体保護層を設ける場合、その膜厚は、通常1〜30nm、好ましくは2〜20nmである。
【0012】
基板入射型光記録媒体の場合、記録層の上に反射層を設けるが、直接に反射層を設けるよりも記録層の上に先ず誘電体保護層を設け、その上に反射層を設ける方が好ましい。この誘電体保護層は、前述の誘電体保護層と同様の材料で形成すればよく、その膜厚は厚くても30nm程度で十分である。
反射層は、通常、Al又はAgを主成分とする材料で形成する。好ましくは、Al又はAgと、Ti、V、Cr、Zr、Mo、Rh、Pd、Ta、W、Pt、Auよりなる群から選ばれた金属から成る合金で形成する。この合金の組成に占めるTiなどの添加金属の原子比率は通常0.5〜10原子%である。
反射層の厚さは、膜の放熱性を適切なものとする見地から、5〜250nm、特に5〜150nmであることが好ましい。片面2層追記型光記録媒体のように反射層の更に奥側へ光を透過させる必要がある場合を除けば、放熱性の観点から、80〜150nmの範囲であることがより好ましい。
膜面入射型光記録媒体の場合、記録層の下に反射層を設けるが、反射層の直上又は直下に、誘電体保護層を設けることが好ましい。この誘電体保護層は、前述の誘電体保護層と同様の材料、膜厚で形成すればよく、反射層についても、前述の反射層と同様の材料、膜厚で形成すればよい。
【0013】
基板入射型光記録媒体の場合の各構成層は、マグネトロンDCスパッタリング、マグネトロンRFスパッタリングなど、この種の光記録媒体の製造に用いられることが公知の任意の方法で形成することができる。
また、基板入射型光記録媒体の場合は、反射層の上に樹脂から成る保護層を設けるのが好ましい。通常は反射層の上に紫外線硬化性の樹脂をスピンコート法などにより塗布し、次いで硬化させることにより保護層を形成する。更に、傷付き防止の目的で基板表面を硬くするため、透明基板の光入射側にも透明な樹脂から成る保護層を、上記と同様の手法により形成するのが好ましい。
膜面入射型光記録媒体の場合の各構成層は、基板入射型光記録媒体の場合と同様、公知の任意の方法で形成することができる。なお、誘電体保護層の上には、透明樹脂から成るカバー層を設けるのが好ましい。通常、紫外線硬化性の樹脂をスピンコート法などにより塗布・硬化させるか、或いは樹脂製のフィルムを接着することによって透明樹脂カバー層を形成する。
本発明1〜7の層構成を有する追記型光記録媒体は、そのままで用いることもできるし、該層構成を有する媒体を一つの情報層として扱い、2枚の媒体を基板の光入射面が互に外側になるように貼り合わせて、二つの情報層を有する形態とし、2倍の容量を有する形で用いることもできる。また、膜面入射型光記録媒体の場合には、1枚の基板の両面に膜形成することにより、2倍の容量とすることもできる。これにより光記録媒体の大容量化が可能となる。
【0014】
本発明の追記型光記録媒体に対して情報を記録・再生するには、光記録媒体を回転させ、対物レンズで集光した1ビームのレーザー光を基板側から入射する。その際、例えばパルス状に変調した波長350〜700nmのレーザービームを、開口数0.55以上の対物レンズを経て光記録媒体に入射させる。
従来の基板入射方式では基板の傾きや基板厚さのバラツキ等により光スポットの収差が増大するために、対物レンズの開口数を大きくすることができなかったが、膜面入射方式とすることにより対物レンズの開口数を大きくし、光スポットを小さくすることが可能となり、媒体の大容量化と高速アクセスが可能となる。
また、本発明の追記型光記録媒体の記録層材料は、片面に記録・再生可能な情報層を複数有する形態の多層追記型光記録媒体にも用いることができる。多層追記型光記録媒体の場合、中間層を介して記録層を有する情報層を基板上に設ける。中間層は、記録・再生のために照射する光の波長における光吸収が小さいことが好ましく、材料としては、成形性、コストの点で樹脂が好適であり、紫外線硬化性樹脂、遅効性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0015】
多層追記型光記録媒体の場合、記録・再生用の光を照射する側に近い方の情報層は、奥側の情報層にも光が到達する程度に光を透過しなければならない。そのために、記録層、反射層の膜厚は情報層が1層の光記録媒体に比べて薄くしなければならない。具体的には、記録層の膜厚は3〜20nmが好ましく、反射層は設けないか又は膜厚が20nm以下であることが好ましい。
図1に2層追記型光記録媒体の一例を示す。第1情報層、第2情報層は少なくとも記録層を有しており、誘電体保護層、反射層を有していても構わない。第2情報層の記録・再生を良好にするためには、第1情報層の光透過率は40%以上必要である。しかし、光透過率が70%よりも大きいと第1情報層の記録感度が低下してしまう。光透過率を40〜70%とするには、第1情報層の各層の膜厚を調整すればよい。
このように、記録・再生用の光を照射する側に近い方の情報層の光透過率を40〜70%とすれば、第1情報層、第2情報層共に感度がよく、記録再生特性の優れた2層追記型光記録媒体が得られる。
通常、記録マーク部の光透過率は未記録部に比べて小さいが、光ディスクにおける記録マーク部の割合は未記録部に比べて少ないので、未記録部の光透過率が40〜70%の範囲であれば問題はない。
【0016】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0017】
実施例1〜9、比較例1〜5
直径12cm、厚さ0.6mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂基板上に、誘電体保護層(厚さ50nm)、記録層(厚さ18nm)、誘電体保護層(厚さ12nm)、反射層(厚さ120nm)を順次製膜した。誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、記録層には組成式(InxSb1−x)α(GaySb1−y)βNγAδの材料(各実施例及び比較例の材料組成は表1参照)を、反射層にはAg−Pd(1原子%)−Cu(1原子%)を用い、Balzers社製枚葉スパッタ装置によりスパッタリングした。記録層に関しては、Ar+N2ガスの反応性スパッタ法を用い、製膜後の各元素の組成比を、ICP法により分析した。
次いで反射層の上に、スピンコーターによりオーバーコート層を設けて追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。
作成された各光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長 660nm
・NA=0.65
・線速 3.49m/s
・トラックピッチ 0.74μm
線密度0.267μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定した。結果を表1に示す。
表1から、実施例1〜9の光ディスクは何れも保存前後のC/N比が50dB以上で優れているのに対し、比較例1〜5の光ディスクは特に保存後のC/N比が40dB以下と悪いことが分る。
更に、記録層の各元素の組成を変化させて試作実験を行った結果、前述したような特性の振る舞いを示すことが分り、0.2≦x≦0.45、0.05≦y≦0.2、0.05≦α≦0.5、0.35≦β≦0.95、0<γ≦0.5、0≦δ≦0.1の範囲が良好であることが分った。
【0018】
実施例10
直径12cm、厚さ0.6mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂基板上に、記録層の材料を(In0.24Sb0.76)0.18(Ga0.15Sb0.85)0.7N0.05(Ge0.5Al0.5)0.07に変えた点以外は実施例1と同様にして誘電体保護層、記録層、誘電体保護層、反射層の順に製膜し、追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。それぞれの膜厚は、誘電体保護層:130nm、記録層:14nm、誘電体保護層:12nm、反射層:100nmである。
作成された光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長 407nm
・NA=0.65
・線速 6.0m/s
・トラックピッチ 0.43μm
線密度0.180μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定したところ、保存前で54dB、保存後で53dBであった。
更に、記録層の各元素の組成を変化させて試作実験を行った結果、本発明1の組成範囲内において良好な特性が得られ、とりわけ、レーザー波長が短くなるにつれて、αの値の小さい材料の方が、良好な特性を示すことが分った。
【0019】
実施例11
直径12cm、厚さ1.1mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂基板上に、反射層(厚さ100nm)、誘電体保護層(厚さ8nm)、記録層(厚さ12nm)、誘電体保護層(厚さ130nm)を順次製膜した。誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、記録層には実施例2と同様な材料を、反射層にはAg−Pd(1原子%)−Cu(1原子%)を用い、実施例1と同様にしてスパッタリングした。記録層の製膜後の組成比をICP法により分析したところ、実施例2と同様であった。
次いで、誘電体保護層の上に、直径12cm、厚さ50μmのポリカーボネートフィルムを、45μmの厚さの透明な両面粘着シートを介して貼り合わせ、透明カバー層を形成して追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。
作成された光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長:407nm
・NA=0.85
・線速:5.7m/s
・トラックピッチ:0.32μm
線密度0.13μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定したところ、保存前で57dB、保存後で56dBと良好であった。
【0020】
実施例12
直径12cm、厚さ0.6mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂製の第1基板上に、第1誘電体保護層(厚さ50nm)、記録層(厚さ10nm)、第2誘電体保護層(厚さ20nm)を順次製膜し、第1情報層を作成した。第1誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、第2誘電体保護層にはAlNを、記録層には実施例9と同様な組成の材料を用い、実施例1と同様にしてスパッタリングした。記録層の製膜後の組成比をICP法により分析したところ、実施例9と同様であった。
次に、第1基板と同様の基板を第2基板として、その上に反射層(厚さ80nm)、第1誘電体保護層(厚さ12nm)、記録層(厚さ12nm)、誘電体保護層(厚さ100nm)を順次製膜した。誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、記録層には第1情報層と同様な組成の材料を、反射層にはAg−Pd(1原子%)−Cu(1原子%)を用い、第1情報層と同様にして製膜した。ここで、第1情報層の波長407nmでの光透過率を、SHIMADZU製分光光度計を用いて第1基板側から測定したところ、54%であった。
次に、第1情報層の膜面上に紫外線硬化樹脂を塗布し、第2基板の第2情報層面側と貼り合わせてスピンコートし、第1基板側から紫外線光を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させて中間層とし、2つの情報層を有する2層追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。中間層の厚さは50μmとした。
作成された光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長 660nm
・NA=0.65
・線速 3.49m/s
・トラックピッチ 0.74μm
線密度0.267μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定したところ、第1情報層、第2情報層共に、保存前後で45dB以上のC/N比を得ることができた。
また、その他の試作実験から、第2情報層を良好に記録・再生するためには、第1情報層の透過率が40%以上必要であり、第1情報層を良好に記録するためには、透過率を70%以下とする必要があることが分った。
【0021】
実施例13
直径12cm、厚さ1.1mmで表面に連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂基板上に、反射層(厚さ100nm)、誘電体保護層(厚さ14nm)、記録層(厚さ12nm)、誘電体保護層(厚さ65nm)を順次製膜し、第2情報層を形成した。各層の製膜は実施例1と同様にして行った。
この第2情報層上に樹脂を塗布し、2P(photo polymerization=フォト・ポリメリゼーション)法によって、連続溝によるトラッキングガイド用の凹凸を持つ中間層を形成した。中間層の厚さは30μmとした。
更にその上に、反射層(厚さ10nm)、誘電体保護層(厚さ8nm)、記録層(厚さ8nm)、誘電体保護層(厚さ130nm)の順に製膜し、第1情報層を形成した。誘電体保護層にはZnS−SiO2(20モル%)を、記録層には実施例2と同様な材料を、反射層にはAg−Pd(1原子%)−Cu(1原子%)を用い、実施例1と同様にしてスパッタリングした。記録層の製膜後の組成比をICP法により分析したところ、実施例2と同様であった。
更にその上に、直径12cm、厚さ50μmのポリカーボネートフィルムを、45μmの厚さの透明な両面粘着シートを介して貼り合わせて透明カバー層を形成し、追記型光記録媒体(光ディスク)を得た。
作成された光ディスクについて下記条件で記録した。
・レーザー波長:407nm
・NA=0.85
・線速:5.0m/s
・トラックピッチ:0.32μm
線密度0.13μm/bitでのC/N比、及び80℃、85%RHの条件下で300時間保存後のC/N比を測定したところ、第1情報層、第2情報層共に、保存前後で50dB以上と良好であった。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、波長350〜700nmのレーザー光により高密度記録が可能で多層化にも対応可能な記録材料にTeを用いない追記型光記録媒体を提供できる。
また、本発明4〜7によれば、反射率、記録感度、保存信頼性を記録・再生条件に合わせて最適化することができ、特性の優れた追記型光記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2層追記型光記録媒体の一例を示す図。
Claims (10)
- 基板上に少なくとも記録層を有し、該記録層が下記組成式(1)で表される原子比の記録材料を含有することを特徴とする追記型光記録媒体。
(InxSb1−x)α(GaySb1−y)βNγAδ (1)(式中、0.2≦x≦0.45、0.05≦y≦0.2、0.05≦α≦0.5、0.35≦β≦0.95、0<γ≦0.5、0≦δ≦0.1、α+β+γ+δ=1、AはAl、Geのうちの少なくとも1種) - 基板が透明であり、該基板上に少なくとも誘電体保護層、記録層及び反射層をこの順序で積層した構造を有することを特徴とする請求項1記載の追記型光記録媒体。
- 基板上に少なくとも反射層、記録層及び誘電体保護層をこの順序で積層した構造を有することを特徴とする請求項1記載の追記型光記録媒体。
- 記録層と反射層の間にも誘電体保護層を有することを特徴とする請求項2又は3記載の追記型光記録媒体。
- 記録層の厚さが3〜50nmであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 反射層がAl又はAgを主成分とする合金からなり、厚さが5〜250nmであることを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 誘電体保護層がZnSとSiO2の混合物からなり、混合物に占めるSiO2の比率が5〜40モル%であることを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 基板上に、請求項1〜7の何れかに記載の層構成を有する情報層を、中間層を介して2層以上設けたことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の多層追記型光記録媒体。
- 基板上に情報層を2層有し、記録・再生用の光が入射する側に近い方の情報層の光透過率が、波長350〜700nmの光に対して40〜70%であることを特徴とする請求項8記載の多層追記型光記録媒体。
- 基板が樹脂製であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の追記型光記録媒体。
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