JP2005005198A - 導電性ペーストの製造方法、および積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

導電性ペーストの製造方法、および積層セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属粉末の凝集を低減、あるいは無くすることによって、導電性ペースト中の未解砕の凝集粒子を低減し、積層セラミックコンデンサに代表される積層セラミック電子部品の歩留まりを大幅に向上させることのできる導電性ペーストの製造方法を提供する。
【解決手段】溶液中の金属イオンまたは金属化合物を還元剤で還元して金属粉末を得る工程と、該金属粉末を溶液中に分散させたスラリーを周速4m/s以上で回転するローター12と、該ローター12と0.1mm以上1.5mm以下のクリアランス14を有して設置されたステーター12を通過させることにより、せん断力を加えて前記金属粉末を湿式解砕する工程と、該湿式解砕後に前記金属粉末を乾燥させることなく有機ビヒクルを添加し混合する工程と、を備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサやセラミック多層基板の内部電極等の形成に用いられる導電性ペーストの製造方法、および積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクス分野においては、電子回路や抵抗、コンデンサ、ICパッケージ等の部品を製造するために、有機ビヒクル中に導電性金属粉末等を分散させた導電性ペーストや抵抗ペースト等が一般的に使用されている。
【0003】
前記導電性ペーストや抵抗ペーストは、金属、合金、金属酸化物等の導電性粉末を、必要に応じてガラスフリットやその他の添加剤と共に有機ビヒクル中に均一に混合分散させたものであり、これを基板やセラミックグリーンシート上に印刷等の方法で塗布した後、高温で焼成することによって導体被膜や抵抗体被膜を形成する。導電性ペーストに用いられる導電性金属粉末としては、導電性、安定性、およびコスト等の面からAu、Ag、Pt、およびPd等の貴金属や、Ni、Cu、Co、Fe、Al、MoおよびW等の卑金属、またはこれらの合金等が適宜使用されている。
【0004】
また、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品の製造では、セラミックグリーンシート層と導電性ペースト層とを交互に複数積層し、同時焼成することによって、前記誘電体層に挟まれた内部電極層が形成される。
【0005】
前記積層セラミックコンデンサは、近年ますます小型化しており、必然的に、誘電体層および内部電極層の薄膜多層化が進み、現在、誘電体層厚み2μm以下、内部電極層厚み1.5μm以下、積層数100枚以上のものが作られている。
【0006】
前記積層セラミックコンデンサの内部電極形成に用いられる導電性ペースト用金属粉末、特にニッケル粉末や銅粉末について、該金属粉末の有機ビヒクル中の分散性は、形成される内部電極層の善し悪しに多大な影響を及ぼす。すなわち、分散性が悪い前記金属粉末を用いた導電性ペーストでは、該導電性ペースト中に凝集粉が残留してしまうため、そのままの状態で内部電極層を形成すると内部電極層上に凹凸を生じたり、隣接する内部電極層間で短絡が生じたりするという不具合が発生しやすい。したがって、導電性ペースト中の前記金属粉末の分散性が高いことが望ましい。
【0007】
一方、積層セラミックコンデンサにおいては、より薄い誘電体層を設けた際に生じる問題点の1つとして、隣接の内部電極層間の接触短絡による絶縁破壊が挙げられる。その原因としては、導電性ペースト内の金属粉中の粗粉が内部電極上に突起物を形成し、該突起物が薄い誘電体層を突き破るもの、金属粉が加熱溶融されて内部電極層が形成される際に金属粉中の不純物が表面に析出し、かつ該不純物が電解質成分であるために、導通が生じることによるもの等が挙げられる。
【0008】
上述のような問題点を解決するための手段として、たとえば、湿式還元法により溶液中で金属粉末を形成し、該金属粉末を溶液から分離せずに導電性ペーストを作製することを特徴とした、導電性ペースト用金属粉末(特許文献1参照)や、嵩密度やタップ密度等を所定の範囲内に調整することを特徴とした、金属粉末(特許文献2参照)等が提案されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−167631号公報
【特許文献2】
特開2001−266652号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
導電性ペーストに含まれる金属粉末の従来の製造方法においては、一旦、得られた粉末を洗浄および乾燥の各工程を経た後、粉砕および解砕処理するようにしている。
【0011】
しかしながら、一般に金属粉末は、湿中からの乾燥時に発生する塩架橋により凝集が進むとされている。したがって、洗浄および乾燥の各工程を経た金属粉末を、粉砕および解砕処理する工程では、反応時または洗浄時の溶液内で発生する粉末凝集と乾燥時の塩架橋により発生する粉末凝集というような2つの凝集因子をもつ粉末を粉砕および解砕処理する必要があり、単分散に近い状態にまで粉末を粉砕させることが困難となる場合がある。
【0012】
上述のように、金属粉末の解砕が不十分であると、大きな凝集粒子が、該金属粉末中に存在することになる。そして、前記凝集粒子が、そのまま解砕または分散されずに残った金属粉末を含む導電性ペーストを用いて、たとえば積層セラミックコンデンサに備える内部電極層を形成すると、特に、内部電極に挟まれたセラミック層の焼結後の厚みが、たとえば5μm以下と薄い場合、セラミック層を挟む内部電極間で接触短絡による絶縁破壊が発生し、積層セラミックコンデンサの歩留まりを大きく低下させるという問題が生じる。
【0013】
上述の問題を解決するため、金属粉末の分級処理を予め行い、凝集粒子を除去した上でペースト化するといった方法も採られるが、この場合には、金属粉末の歩留まりが著しく低下してしまうことになる。
【0014】
また、金属粉末や有機ビヒクルを用いてペースト化する工程において、凝集粒子を分散および解砕する場合もあるが、特に凝集が強固な場合、3本ロールミル等によって加える分散力では十分に解砕できなかったり、あるいは、分散工程での処理時間に長時間を必要としたりするなどの不具合が生じることがある。
【0015】
そこで、本発明の目的は、金属粉末の洗浄から乾燥に至る工程で発生する凝集を低減させることで、導電性ペーストにおける未解砕の凝集粒子の存在を無くする、もしくは低減することにより、積層セラミックコンデンサに代表される積層セラミック電子部品の歩留まりを著しく向上させることが可能な導電性ペーストの製造方法、および該導電性ペーストを用いた積層セラミック電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の導電性ペーストの製造方法は、溶液中の金属イオンまたは金属化合物を還元剤で還元して金属粉末を得る工程と、該金属粉末を溶液中に分散させたスラリーを、周速4m/s以上で回転するローターと、該ローターと0.1mm以上1.5mm以下のクリアランスを有して設置されたステーターとの間を通過させることにより、せん断力を加えて前記金属粉末を湿式解砕する工程と、該湿式解砕後に前記金属粉末を乾燥させることなく有機ビヒクルを添加し混合する工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の前記溶液中の金属イオン、または金属化合物を還元剤で還元して金属粉末を得る工程において、見かけ密度が真密度の1/6以下の金属粉末を得ることを特徴とする。なお、本発明における見かけ密度は、タップ密度と同義である。また、真密度は各金属元素に固有の密度と同義である。
【0018】
さらに、本発明の前記せん断力を加えて金属粉末を湿式解砕する工程において、ローターの回転速度を周速15m/s以上とすることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法は、複数のセラミックグリーンシートおよび導電性ペースト層を積層し、焼成する工程を備える、セラミック電子部品の製造方法であって、前記導電性ペースト層は、上述の製造方法にて作製された導電性ペーストの焼結体であることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法の一例としての積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【0021】
本発明の製造方法により作製された導電性ペーストを、たとえば、内部電極層4および5の形成のために用いて、図1に示すような積層セラミックコンデンサ1が次のようにして製造される。
【0022】
まず、セラミック層3となるべき、たとえばチタン酸バリウム系のような誘電体セラミックのための原料粉末を含むセラミックグリーンシートが用意され、セラミックグリーンシート上に、上述した導電性ペーストを用いて、所望のパターンを有する内部電極層4および5のための導電性ペースト膜が印刷等によって形成される。
【0023】
上述の印刷に際しては、導電性ペーストの粘度を調整することにより、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビア−オフセット印刷、インクジェット印刷等の様々な印刷方法を適用することができる。
【0024】
次に、上述のように、導電性ペースト膜がそれぞれ形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートが積層され、熱圧着されることによって、一体化された積層体2の生の状態のものが得られる。
【0025】
次に、生の積層体2を焼成する。該焼成では、導電性ペースト膜がニッケルを含んでいるので、還元性雰囲気が適用される。前記焼成によって、セラミックグリーンシートは、焼結されて、セラミック層3となり、導電性ペースト膜は、焼結されて、内部電極層4および5となる。
【0026】
次に、焼成後の積層体2の端面6および7上に、それぞれ、外部電極8および9が形成される。外部電極8および9は、金属粉末およびガラスフリットを含む導電性ペーストを付与し、該導電性ペーストを焼き付けることによって形成される。外部電極8および9上には、必要に応じて、ニッケル、銅、半田または錫などのめっきが施される。
【0027】
なお、以上の説明は、積層セラミックコンデンサについて行なったが、本発明による製造方法によって得られた導電性ペーストは、積層された複数のセラミック層およびセラミック層間の特定の界面に沿って延びる内部導体膜とを備える積層セラミック電子部品であれば、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品においても、内部電極層を形成するために有利に用いることができる。
【0028】
次に内部電極層4および5となるべき導電性ペーストは、金属粉末を有機バインダおよび有機溶剤からなる有機ビヒクルならびに必要な添加剤と混合して分散混合処理を行なうことによって得られる。
【0029】
以下、本発明の実施形態の1つである前記金属粉末がニッケル粉末の場合を例に説明する。
【0030】
まず、ニッケル粉末の製造方法における特徴は、水溶液等の溶液中のニッケルイオンを還元剤で還元して析出させたニッケル粉末について、水洗時に乾燥後の見かけ密度を調整する(小さくする)ために、ニッケル粉末が分散した溶液のpHをアルカリ領域にすることである。ここで前記溶液のpHをアルカリ領域にするために、炭酸水素アンモニウムや炭酸アンモニウム、あるいはアニオン系界面活性剤を用いる。上述の操作により、乾燥後のニッケル粉末に弱い凝集状態を形成させることになる。
【0031】
また、導電性ペーストの製造方法における特徴として、乾燥したニッケル粉末に、たとえば、せん断力による解砕を加えるのではなく、溶液中のニッケル粉末を、未乾燥の状態で解砕することにある。
【0032】
すなわち、乾燥前のニッケル粉末は、洗浄から乾燥に至る工程において生じる塩架橋による凝集を受けていないため、凝集自身を低減することができる。しかも、前記乾燥前のニッケル粉末を解砕するようにすれば、乾燥後の金属粉末を解砕する場合に比べて、より容易にかつより効果的に凝集を解くことができ、たとえば、乾燥後の分散工程において解砕できないような凝集であっても、これを解砕することが可能となる。
【0033】
上述の還元剤としては、金属ニッケルをアルカリ性領域で還元析出できるものであることが好ましく、たとえば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、次亜リン酸塩または水素化ホウ素塩を有利に用いることができる。
【0034】
前記ヒドラジンまたはヒドラジン水和物は、これを還元剤として用いると、析出した金属ニッケルを主成分とするニッケル粒子に不必要な残留物が残らない点で好ましい。実際には、水素化ホウ素ナトリウムや次亜リン酸ナトリウムを用いた場合、ニッケル粒子中に生成するホウ素成分やリン成分を少なくする目的で、水素化ホウ素ナトリウムまたは次亜リン酸ナトリウムと抱水ヒドラジンとの混合物を用いることが好都合である場合がある。
【0035】
前記還元剤水溶液に含まれる苛性アルカリとしては、たとえば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよびアンモニアの中から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0036】
さらに、ニッケル粉末の粒径を制御する目的で、錯化剤が反応系に添加されてもよい。前記錯化剤としては、たとえば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸等のカルボン酸や、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸等の窒素含有のカルボン酸などを適宜使用することができる。
【0037】
より特定的な好ましい実施形態では、水が反応溶媒として用いられ、苛性アルカリとして、水酸化ナトリウムが単独で用いられる。そして、還元剤水溶液を得るため、前記の溶液中に水酸化ナトリウムを0.5〜15モル/リットルのモル濃度で溶解させるとともに、ヒドラジンまたはヒドラジン水和物を、硫酸ニッケルを還元するための化学量論的に必要な量から、この量の15倍までの範囲で溶解させる。
【0038】
上述した還元剤水溶液とニッケル水溶液との混合方法については、特に限定はしないが、還元剤水溶液中にニッケル水溶液を投入した方が好ましい。反応温度についても、特に限定はしないが、通常、還元剤の還元力を高めるため、40〜90℃の温度範囲に設定される。
【0039】
次に、析出したニッケル粉末を水洗し、アニオン系界面活性剤などを添加してpHをアルカリ領域にした水溶液に分散し、未乾燥の状態で解砕した後、同じく乾燥させずに導電性ペーストを作製する。
【0040】
上述の解砕方法としては、ローターとステーターとの間を通過させてせん断力を作用させることによる分散機(解砕機)を適用することができる。その一例について図2に基づいて説明する。
【0041】
前記分散機は、図2に示すように、有底円筒状のステーター11と前記ステーター11に対して同軸上にて回転するローター12とを有している。ステーター11は、円筒状の周壁部11aと、底面部11bと、その底面部11bと同軸上に円形状の開口部11cとを備えている。
【0042】
ローター12には、外形が円錐台形状の有底筒状のローター本体12aと、そのローター本体12aを回転するための回転軸12bとが同軸上に設けられている。ローター本体12aにおいては、リング状の先端面12cと、円錐台形状の外周面12dと、該外周面12dに対し略平行な内周面12eとが形成されている。
【0043】
これにより、前記外周面12dおよび内周面12eは、それぞれ、底部の先端面12cに向かって、順次、外径および内径が大きくなるテーパー形状となっている。
【0044】
また、前記先端面12cは、ステーター11の底面部11bの内底面に対して略平行に対面している。前記先端面12cと前記内底面との間となるクリアランス(間隙)14は、ローター12を回転軸に沿って移動させることにより調節可能となっている。
【0045】
一方、ステーター11の周壁部11aの内径は、ローター本体12aの外周面12dの最大外径より大きく設定されている。よって、ローター本体12aは、ステーター11内にて回転自在となっている。さらに、ステータ11の開口部11cの内径は、ローター本体12aの内周面12eにおける先端面12c側となる最大外径より小さく設定されている。これにより、ローター本体12aの先端面12cの全面は、ステーター11の底面部11bの内底面と、前記クリアランス14を有して対面することになる。
【0046】
このような分散機では、ステーター11に対してローター12が回転すると、遠心力により、スラリー13を吸い込み、前記クリアランス14を介して、ステーター11の上部開口部から外部へ排出するようになっている。
【0047】
このとき、前記クリアランス14では、スラリー13は乱流となっていて、通過するスラリー13に対して大きなせん断力が発生する。また前記クリアランス14においては、ローター本体12aの先端面12cの内径側から外径側に向かって、順次、周速が大きくなっているから、同様に、せん断力も順次大きくなっている。ここで、前記周速は、ローター12の外径部分の線速を示す。
【0048】
これらのことにより、前記分散機では、前記スラリー13中における凝集した金属粉末を解砕することが可能となる。
【0049】
このステーター11とローター12との互いに接する接液部には、相対する凹凸があってもよいし、また無い場合においても、十分なせん断力が期待できる。より具体的にこのような機構を備えた設備として、特殊機化工業株式会社製のT.KホモミクサーMARKII型や、同じくT.Kホモミックラインフロー型等が
挙げられる。
【0050】
なお、本発明の効果は、上記分散設備に限定されるものではなく、同様なせん断機構を有する設備であれば使用可能である。たとえば、固定体と、その固定体に対して、0.1mm以上1.5mm以下のクリアランス14に調整された移動体(回転体)とを有し、この移動体が固定体に対して周速4m/秒以上の速度で相対移動(回転)するような機構を備えた設備であればよい。
【0051】
前記のようなステーター11とローター12との間を通過させてせん断力により解砕する形式の分散機を用いると、ニッケル粒子の変形やメディアからの汚染の問題がなく、メディアを用いた解砕の場合のように、メディアに付着する粉末のロスの問題が生じず、溶液中に存在するニッケル粉末に対して、効果的なせん断力を加えることができる。
【0052】
前記ステーター11とローター12とのクリアランス14は、0.1〜1.5mmに設定される。また、前記ローター12は、4m/秒以上の周速をもって回転し、さらには、15m/秒以上の周速をもって回転されることが、より好ましい。なお、周速の上限値としては、各分散機が有する最大限の周速まで可能である。
【0053】
上述のように、前記ステーター11とローター12とが与えるせん断力は、該ステーター11と該ローター12との前記クリアランス14が狭いほど、および該ローター12の周速が高いほど、向上する。
【0054】
なお、前記ステーター11とローター12との前記クリアランス14の下限値として、上述のように、0.1mmを選んだのは、該ステーター11と該ローター12との現状での機械的な加工精度の問題のためであり、この機械的な加工精度が向上した場合には、該ステーター11と該ローター12との前記クリアランス14を0.1mm未満にしてもよい。また、上述のクリアランス14が1.5mmよりも大きくなると、溶液中のニッケル粉末に対して、該ステーター11と該ローター12とが与えるせん断力が小さくなり、上述のニッケル粉の解砕が不十分となって好ましくない。
【0055】
次に、本発明の導電性ペーストの製造方法を、以下の実験例に基づいて、より具体的に説明する。
【0056】
(実験例1)
ニッケルを金属粉末とする、表1に示す比較試料1〜3、実施試料1〜5の導電性ペーストを作製した。
【0057】
(1)ニッケル粉末の製造
まず、水酸化ナトリウム240gを水700mlに溶解したものに、抱水ヒドラジン300gを添加した後、さらに水を加えて、全量を1500mlとして、還元剤水溶液とした。前記還元剤水溶液を、湯浴上にて60℃に加温した。他方、硫酸ニッケル6水和物517gおよびクエン酸三ナトリウム200gを水に溶解後、さらに水を加えて、全量を1500mlとし、ニッケルイオンおよび錯化剤を含有するニッケル水溶液とした。前記ニッケル水溶液についても、湯浴上にて60℃に加温した。
【0058】
【表1】
Figure 2005005198
【0059】
次いで、前記ニッケル水溶液を、前記還元剤水溶液中に、500ml/分の速度で添加し、反応溶液とした。反応終了後、前記反応溶液をろ過し、ニッケル粉末を取り出した後、該ニッケル粉末を水洗した。水洗は、水洗に使用した水の導電率が20μS/cm以下になるまで行い、最後に水を加えて全量1Lとした。
【0060】
次いで、乾燥した場合の見かけ密度を調整するために、実施試料2には炭酸アンモニウムを10g、比較試料2,3及び実施試料3から5にはアニオン系界面活性剤を15g添加し、20分攪拌してニッケル粉末の凝集体を形成させた混合溶液とした。次に前記混合溶液のろ過を行い、ろ過後の該混合溶液中の水を全量エタノールに置換し、100℃のオーブンで乾燥後、ニッケル粉末を得た。該ニッケル粉末を100mlのシリンダに入れ、見かけ密度を測定した。結果を表1に示す。また、見かけ密度/真密度比(但し、ニッケル粉末の真密度は、8.9g/cmである。)も表1に併せて示す。
【0061】
次に0.1mm以上1.5mm以下のステーター11とローター12のクリアランス14を保ちつつ該ローター12について周速を設定値で回転させる解砕機を用いて、前記クリアランス14を0.5mmに調整し、比較試料3及び実施試料1から5を表1に示す周速により水中で解砕処理を施した。容器は10リットルビーカーを用い、液量は水5リットルとした。解砕時間はいずれも60分で各1回とした。なお、解砕処理中のスラリー温度の上昇を防止する目的で、10リットルビーカーの周りを15℃に設定した冷水で冷却しつつ解砕を行った。
【0062】
上述の方法により解砕したニッケル粉末を5リットルビーカー中に投入し、エタノール3リットルを加えてニッケル粉溶液とした。該ニッケル粉溶液を、さらに2m/sの周速で10分攪拌し、その後、新しいエタノール溶液に置換した。前記エタノール溶液による置換は、新しいエタノール溶液を用いて、いずれも2回行い、その都度、遠心分離による粉末分離を行った。その後、実施試料1から5はそのままエタノール中で保管した。比較試料3については、ろ過後、100℃のオーブンで乾燥して保管した。そして、得られたニッケル粉末を100mlのシリンダに入れ、見かけ密度を測定した。結果を表1の「解砕後に乾燥」の欄に示す。
(2)ニッケル導電性ペーストの製造
次に、実施試料1から5について、上記ニッケル粉末を含むエタノールスラリーの比重を予め測定しておき、該エタノールスラリー中に含まれるニッケル粉末重量比率を算出した。次に、前記ニッケル粉末を用いて導電性ペーストを作製した。すなわち、前記ニッケル粉末100gに対し、分散剤としてステアリン酸1g、希釈溶剤としてエタノール200mlを混合して第1ミルベースを得た。
【0063】
なお、実施試料1から5のニッケル粉末は、スラリー中に含まれるニッケル粉末重量比率によりエタノールスラリーとして秤量、添加した。希釈溶剤のエタノールについては、ニッケル粉末を含む前記エタノールスラリー中のエタノールを合算して200mlとなるように調合した。
【0064】
また、比較試料1から3は乾燥したニッケル粉末であるためそのまま計量して第1ミルベースを得た。
【0065】
次に得られた第1ミルベースを12時間、ポットミル分散し、第1スラリーを得た。次に、前記第1スラリー中に、エチルセルロース系バインダ10重量部をテルピネオール90重量部に溶解して作製した有機ビヒクル99gを添加して第2ミルベースとし、さらに12時間、ポットミル分散処理を行い、第2スラリーを得た。次に、前記第2スラリーを減圧下で70℃に加熱して希釈溶剤を除去し、減圧蒸留して導電性ペーストを得た。
(3)評価
上述のように作製したそれぞれの導電性ペーストを、スクリーン印刷によりガラス基板上に印刷、乾燥させた。前記乾燥塗膜の表面粗さ(Ra)を、干渉縞を用いた表面形状測定装置により測定した。ここで、前記乾燥塗膜の表面粗さ(Ra)は、その大小が粉末の分散度を現す指標となる。すなわち、表面粗さ(Ra)が小さい程、ペースト中の金属粉末の分散性が良いということになる。表面粗さ(Ra)の測定結果を、表1に併記する。
【0066】
次に、電子顕微鏡を用いて、前記乾燥塗膜1mmあたりの0.5μm以上の突起物の数を比較した。前記突起物数は、乾燥凝結などの強い凝集力による粗粒の数に左右される。前記突起物数が多いと、積層セラミックコンデンサの接触短絡の発生率が増加することが経験的に明らかとなっている。前記突起物数の測定結果を、表1に併記する。
【0067】
さらに、作製したペースト中の粗粒を、グラインドメーターを用いて計測した。その結果を表1に最大粗粒値として併記する。なお、グラインドメーターでの測定では5μm以下の粗粒の正確な測定は困難であったため、5μm以下の粗粒を示したサンプルについてはすべて5以下と記載している。
【0068】
表1に示すように、比較試料1と実施試料1の結果から、見かけ密度2.5g/cm(見かけ密度/真密度比=1/3.6)のニッケル粉末を周速20m/sで解砕処理を行ったところ、最大粗粒値、表面粗さ(Ra)については、解砕処理を行うことにより、減少傾向にあることがわかった。また、突起物の数も1/2程度に低減できていた。
【0069】
また、実施試料1、2、5を比較すると周速20m/sにおいては、ニッケル粉の見かけ密度が小さくなるほど最大粗粒値、突起物数、表面粗さ(Ra)の全てが低減していく傾向にあり、見かけ密度が1.5g/cm(見かけ密度/真密度比=1/6)と小さい場合、最大粗粒値は5個/mm以下、突起物数も5個以下にまで低減することを確認した。これは、見かけ密度が真密度の1/6以下となる方が、ニッケル粉をペースト化した際の塗膜の分散性がより向上するといえる。
【0070】
しかし、解砕処理後に乾燥させた比較試料3は、最大粗粒値、突起物数、表面粗さ(Ra)のいずれも実施試料5に比べて増加した。上述の測定結果から、いったん解砕処理をした後に乾燥して生じる凝結粒子は、再分散させることが困難であることがわかった。
【0071】
なお、今回は溶液中での凝集剤として、炭酸アンモニウム、またはアニオン系界面活性剤を用いたが、脂肪酸アンモニウム、リン酸塩、ケイ酸塩などマイナスに帯電する添加剤を用いても金属粉末の見かけ密度/真密度比を1/6以下として、同様の効果が期待できる。さらには、本実施例における周速は20m/sを上限としているが、20m/sを超える周速でも、同様な効果が期待できる。
【0072】
(実験例2)
銅を金属粉末とする、表2に示す比較試料4、および実施試料6〜8の導電性ペーストを作製した。
【0073】
(1)銅粉末の製造
比較試料4、および実施試料7、8は、水酸化ナトリウム160gを水500mlに溶解したものに、抱水ヒドラジン200gを添加した後、さらに全量で1000mlとなるように水を加えて、還元剤水溶液とした。該還元剤水溶液を、湯浴にて45℃に加熱した。実施試料6は、水500mlと抱水ヒドラジン200gを混合し、さらに全量で1000mlとなるように水を加えて、還元剤水溶液とした。該還元剤水溶液を、湯浴にて35℃に加熱した。
【0074】
【表2】
Figure 2005005198
【0075】
他方、炭酸銅200gを水2000mlに分散し、全量3000mlの炭酸銅水溶液を作製した。次いで前記炭酸銅水溶液に、前記還元剤水溶液を各2分間で一定の割合で全量添加し、混合溶液とした。添加後20分後には、比較試料4、および実施試料7、8は60℃に、実施試料6は80℃に加熱し1時間熟成した。反応終了後、実施例1と同様に前記混合溶液からの粉末の取り出し、粉末の水洗を行った。その後、混合溶液中の水を全量エタノールで置換し、真空で乾燥した。上述の操作にて得られた銅粉末を100mlのシリンダにいれて見かけ密度を測定したところ比較試料4、および実施試料7、8は1.3g/cm、実施試料6は2.5g/cmであった。結果を表2に示す。また、見かけ密度/真密度比(但し、銅粉末の真密度は、8,9g/cmである。)も表2に併せて示す。
【0076】
次に0.1mm以上1.5mm以下のステーター11とローター12のクリアランス14を保ちつつ、該ローター12について周速を設定値で回転させる解砕機を用いて、前記クリアランス14を0.5mmに調整し、実施試料6から8を表2に示す周速により水中で解砕処理を施した。容器は10リットルビーカーを用い、液量は水5リットルとし、解砕時間はいずれも60分で各1回とした。なお、解砕処理中のスラリー温度の上昇を防止する目的で、10リットルビーカーの周りを15℃に設定した冷水で冷却しつつ解砕を行った。
【0077】
上述の方法により解砕した銅粉末を5リットルビーカー中に投入し、エタノール3リットルを加えて銅粉溶液とした。該銅粉溶液を、さらに2m/sの周速で10分攪拌し、その後、新しいエタノール溶液に置換した。前記エタノール溶液による置換は、新しいエタノール溶液を用いて、いずれも2回行い、その都度、遠心分離による粉末分離を行った。その後、実施試料6から8はそのままエタノール中で保管した。比較試料4は、乾燥粉末であるのでそのまま乾燥状態で保管した。
【0078】
(2)銅導電性ペーストの製造
次に、実施試料6から8について、前記銅粉末を含むエタノールスラリーの比重を測定しておき、該エタノールスラリー中に含まれる前記銅粉末の重量比率を算出した。
【0079】
次に、前記銅粉末100gに対し、分散剤としてステアリン酸1g、希釈溶剤としてエタノール200mlを混合して第1ミルベースを得た。実施試料6から8の前記銅粉末は、スラリー中に含まれる銅粉末の重量比率によりエタノールスラリーとして秤量、添加した。希釈溶剤のエタノールについても、銅粉末を含むエタノールスラリー中のエタノールを合算して200mlとなるように調合した。
【0080】
また、比較試料4は乾燥した銅粉末であるためそのまま計量し、第1ミルベースを得た。
【0081】
次に得られた第1ミルベースを12時間、ポットミル分散処理を行い、第1スラリーを得た。
【0082】
次に、前記第1スラリー中に、エチルセルロース系バインダ10重量部をテルピネオール90重量部に溶解して作製した有機ビヒクル99gを添加して第2ミルベースとし、12時間、ポットミル分散処理を行い、第2スラリーを得た。次に、第2スラリーを減圧下で70℃に加熱して希釈溶剤を除去し、減圧蒸留して導電性ペーストを得た。
【0083】
(3)評価
上述のように作製して得られた、導電性ペーストは実施例1と同様の方法で印刷塗膜を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0084】
表2に示すように、実施試料8から、見かけ密度が1.3g/cm(見かけ密度/真密度比=1/6.9)と小さく、さらに周速15m/sの場合に、最大粗粒値は5個/mm以下、突起物数も5個以下にまで低減することを確認した。
【0085】
また、比較試料4及び実施試料7、8を比較すると、見かけ密度が1.3g/cm(見かけ密度/真密度比=1/6.9)と小さくても解砕処理を行っていない比較試料4は、最大粗粒値が20μm以上、表面粗さ(Ra)300nmであった。実施試料7は、解砕処理を行っていない比較試料4に比べて最大粗粒値、突起物数ともに1/2程度にまで低減した。上述の結果から、実施例1のニッケル粉末だけでなく、銅粉末においても本発明の効果が高いことを示している。
【0086】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の導電性ペーストの製造方法を用いれば、金属粉末の洗浄から乾燥に至る工程で発生する凝集を防止、もしくは低減し、導電性ペースト中の未解砕の凝集粒子の存在を無くする、もしくは低減することにより、導電性ペースト中の粗粒が低減し、積層セラミックコンデンサに代表される積層セラミック電子部品の歩留まりを大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法で得られる積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【図2】本発明の導電性ペースト用金属粉末の製造方法に用いる分散機の一例を示す概略断面図である
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
2 積層体
3 セラミック層
4、5 内部電極層
11 ステーター
12 ローター
13 スラリー
14 クリアランス(間隙)

Claims (4)

  1. 溶液中の金属イオンまたは金属化合物を還元剤で還元して金属粉末を得る工程と、
    該金属粉末を溶液中に分散させたスラリーを、周速4m/s以上で回転するローターと、該ローターと0.1mm以上1.5mm以下のクリアランスを有して設置されたステーターとの間を通過させることにより、せん断力を加えて前記金属粉末を湿式解砕する工程と、
    該湿式解砕後に前記金属粉末を乾燥させることなく有機ビヒクルを添加し混合する工程と、
    を備えることを特徴とする、導電性ペーストの製造方法。
  2. 前記溶液中の金属イオンを還元剤で還元して金属粉末を得る工程において、見かけ密度が真密度の1/6以下の金属粉末を得ることを特徴とする、請求項1に記載の導電性ペーストの製造方法。
  3. 前記せん断力を加えて金属粉末を湿式解砕する工程において、ローターの回転速度を周速15m/s以上とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の導電性ペーストの製造方法。
  4. 複数のセラミックグリーンシートおよび導電性ペースト層を積層し、焼成する工程を備える、セラミック電子部品の製造方法において、前記導電性ペースト層は、請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の製造方法にて作製された導電性ペーストの乾燥膜であることを特徴とする、積層セラミック電子部品の製造方法。
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