JP2005004806A - フレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】MRヘッド、GMRヘッドといった耐摩耗性の低い高感度ヘッドを用いたシステム設計を可能とし、高性能で高信頼性を有し、かつ安価な強磁性金属薄膜を磁性層として用いたフレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法を提供すること。
【解決手段】可撓性高分子支持体の少なくとも一方の面に強磁性金属薄膜からなる磁性層、保護層、潤滑層をこの順に形成した後、該磁性層を有する側の表面をバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープでバーニッシュ加工を行うことを特徴とするフレキシブル磁気ディスクの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】可撓性高分子支持体の少なくとも一方の面に強磁性金属薄膜からなる磁性層、保護層、潤滑層をこの順に形成した後、該磁性層を有する側の表面をバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープでバーニッシュ加工を行うことを特徴とするフレキシブル磁気ディスクの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル情報の記録に使用するフレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの普及により、パーソナル・コンピュータを用いて大容量の動画情報や音声情報の処理を行う等、コンピュータの利用形態が変化してきている。これに伴い、ハードディスク等の磁気記録媒体に要求される記憶容量も増大している。
【0003】
ハードディスク装置においては、磁気ディスクの回転に伴い、磁気ヘッドが磁気ディスクの表面からわずかに浮上し、非接触で磁気記録を行っている。このため、磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触によって磁気ディスクが破損するのを防止している。高密度化に伴って磁気ヘッドの浮上高さは次第に低減されており、鏡面研磨された超平滑なガラス基板上に磁気記録層等を形成した磁気ディスクを用いることにより、現在では10nm〜20nmの浮上高さが実現されている。この様なヘッドの低浮上量化、ヘッド構造の改良、ディスク記録膜の改良等の技術革新によってハードディスクドライブの面記録密度と記録容量はここ数年で飛躍的に増大してきた。
【0004】
取り扱うことができるデジタルデータ量が増大することによって、動画データの様な大容量のデータを可換型媒体に記録して、移動させるというニーズが生まれてきた。しかしながら、ハードディスクは基板が硬質であって、しかも上述のようにヘッドとディスクの間隔が極わずかであるため、フレキシブル磁気ディスクや書き換え型光ディスクの様に可換媒体として使用しようとすると、動作中の衝撃や塵埃の巻き込みによって故障を発生する懸念が高く、使用できない。
【0005】
DVD−R/RWに代表される追記型および書き換え型光ディスクは磁気ディスクのようにヘッドとディスクが近接していないため、可換性に優れており、広く普及している。しかしながら光ディスクは、光ピックアップの厚みとコストの問題から、高容量化に有利な磁気ディスクのように両面を記録面としたディスク構造を用いることが困難であるといった問題がある。さらに、磁気ディスクと比較すると面記録密度が低く、データ転送速度も低いため、書き換え型の大容量記録媒体としての使用を考えると、未だ十分な性能とはいえない。また光ピックアップの構造が複雑であるため、ドライブの小型化が難しいという課題もある。
【0006】
デジタルカメラやデジタルビデオレコーダー用の記録媒体としては現在半導体メモリーを内蔵したスマートメディア等が主流となっているが、このような半導体メモリー媒体は記憶容量に対するコストが他の上記の磁気および光ディスク媒体と比較して非常に高く、高容量化と低価格化を同時に満たすことは難しい。
【0007】
一方、フレキシブル磁気ディスクは基板がフレキシブルであるため可換性に優れているが、現在市販されているフレキシブル磁気ディスクは記録膜が磁性体を高分子バインダーとともに高分子フィルム上に塗布した構造であるため、スパッタ法で磁性膜を形成しているハードディスクと比較すると、磁性層の高密度記録特性が悪く、ハードディスクの1/10以下の記録密度しか達成できていない。
【0008】
高分子フィルム上に強磁性金属薄膜を設けたフレキシブル磁気ディスクは、異常突起等の表面欠陥が少なからず存在する。この様な表面欠陥はMRヘッドやGMRヘッドなどの耐摩耗性が低い高感度ヘッドを使用する場合に、磁気信号のドロップアウトやエラーにつながるだけではなく、これらの磁気ヘッドを破壊してしまうことがある。
このような表面欠陥を除去する方法として、磁気ディスク表面をバーニッシュ加工することが知られている(特許文献1〜4等)。
また、ハードディスク型磁気ディスクのバーニッシュ方法としてはバーニッシュヘッド、グライドヘッドを実際に磁気ディスク上を浮上走行させ、バーニッシュ加工を行うことが一般的であるが、この方法でフレキシブル磁気ディスクを加工しようとすると、バーニッシュヘッドの浮上量が安定しないため、ディスク全面を均一な精度で加工することが難しかった。
そして、このようなフレキシブル磁気ディスクにおける近年の高密度化の要求は、高く、更に狭トラック化、高線記録密度化が望まれている。
ところが、大容量の書き換え可能なフレキシブル磁気ディスク媒体は、その要求が高いものの、性能、信頼性、コストを満足するものが存在しない。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−155271号公報
【特許文献2】
特開平9−54943号公報
【特許文献3】
特開2002−56525号公報
【特許文献4】
特開平5−318303号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、MRヘッド、GMRヘッドといった耐摩耗性の低い高感度ヘッドを用いたシステム設計を可能とし、高性能で高信頼性を有し、かつ安価な強磁性金属薄膜を磁性層として用いたフレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、以下の手段により達成できる。
(1)可撓性高分子支持体の少なくとも一方の面に強磁性金属薄膜からなる磁性層、保護層、潤滑層をこの順に形成した後、該磁性層を有する側の表面をバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープでバーニッシュ加工を行うことを特徴とするフレキシブル磁気ディスクの製造方法。
(2)前記バーニッシュ加工によって10点平均粗さRzを50nm以下とすることを特徴とする上記(1)に記載のフレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明により製造されるフレキシブル磁気ディスク媒体(以下、単に磁気ディスクともいう)は、その支持体として可撓性高分子支持体を用いるので、磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触時の衝撃が軽減され、磁気ヘッドと磁気ディスクとが安定に接触摺動するので、安定したヘッド走行が可能となり、さらに磁気ディスク表面を研磨テープでバーニッシュ加工することによってディスク表面欠陥によるヘッド破壊を激減させることができるため、MRヘッドやGMRヘッドといった磨耗に弱い高感度磁気ヘッドを用いた記録システムにおいても、ヘッドを破壊することなく、長期間の動作が可能となる。
【0013】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施の形態に係るフレキシブル磁気ディスク媒体は、中心部にセンターホールが形成された構造であり、金属やプラスチック等で形成されたカートリッジ内に格納されている。なお、カートリッジには、通常、金属性のシャッタで覆われたアクセス窓を備えており、このアクセス窓を介して磁気ヘッドが導入されることにより、磁気ディスクへの信号記録や再生が行われる。
【0014】
本発明の磁気ディスクは可撓性高分子支持体からなるディスク状支持体の少なくとも一方の面に、少なくとも、磁性層、保護層、潤滑層をこの順に有するものであるが、該支持体上に表面性とガスバリア性を改善する下塗り層、磁性層の磁気特性を改善する下地層、磁性層、保護層、潤滑層をこの順を有した構成が好ましい。
【0015】
支持体は、磁気ヘッドと磁気ディスクとが接触した時の衝撃を回避するために、可撓性を備えた樹脂フィルム(可撓性高分子支持体)で構成されている。このような樹脂フィルムとしては、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセテートセルロース、フッ素樹脂等からなる樹脂フィルムが挙げられる。本発明では基板を加熱することなく良好な記録特性を達成することができるため、価格や表面性の観点からポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートが特に好ましい。
【0016】
また、支持体として樹脂フィルムを複数枚ラミネートしたものを用いてもよい。ラミネートフィルムを用いることにより、支持体自身に起因する反りやうねりを軽減することができ、磁気記録層の耐傷性を著しく改善することがきる。
【0017】
ラミネート手法としては、熱ローラによるロールラミネート、平板熱プレスによるラミネート、接着面に接着剤を塗布してラミネートするドライラミネート、予めシート状に成形された接着シートを用いるラミネート等が挙げられる。接着剤の種類は、特に限定されず、一般的なホットメルト接着剤、熱硬化性接着剤、UV硬化型接着剤、EB硬化型接着剤、粘着シート、嫌気性接着剤などを使用することがきる。
【0018】
支持体の大きさ、つまり磁気ディスクの大きさは直径20mm〜150mmであって、厚みは、通常、10μm〜200μm、好ましくは20μm〜100μm、さらに好ましくは30μm〜70μmである。支持体の厚みが薄いと、高速回転時の安定性が低下し、面ぶれが増加する。一方、支持体の厚みが厚いと、回転時の剛性が高くなり、接触時の衝撃を回避することが困難になり、磁気ヘッドの跳躍を招く。
【0019】
支持体の腰の強さは、下記式で表され、b=10mmでの値が0.5kgf/mm2〜2.0kgf/mm2(≒4.9〜19.6MPa)の範囲にあることが好ましく、0.7kgf/mm2〜1.5kgf/mm2(≒6.9〜14.7MPa)がより好ましい。
支持体の腰の強さ=Ebd3/12
なお、この式において、Eはヤング率、bはフィルム幅、dはフィルム厚さを各々表す。
【0020】
支持体の表面は、磁気ヘッドによる記録を行うために、可能な限り平滑であることが好ましい。支持体表面の凹凸は、信号の記録再生特性を著しく低下させる。具体的には、後述する下塗り層を使用する場合では、光学式の表面粗さ計で測定した表面粗さが平均中心線粗さRaで5nm以内、好ましくは2nm以内、触針式粗さ計で測定した突起高さが1μm以内、好ましくは0.1μm以内、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した10点平均粗さRzで500nm以内、好ましくは200nm以内である。また、下塗り膜を用いない場合では、光学式の表面粗さ計で測定した表面粗さが平均中心線粗さRaで3nm以内、好ましくは1nm以内、触針式粗さ計で測定した突起高さが0.1μm以内、好ましくは0.06μm以内、AFMで測定した10点平均粗さRzで60nm以内、好ましくは30nm以内である。
【0021】
支持体表面には、平面性の改善とガスバリア性を目的として下塗り層を設けることが好ましい。磁性層をスパッタリング等で形成するため、下塗り層は耐熱性に優れることが好ましく、下塗り層の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、フッ素系樹脂等を使用することができる。熱硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化型シリコン樹脂は、平滑化効果が高く、特に好ましい。下塗り層の厚みは、0.1μm〜3.0μmが好ましい。支持体に他の樹脂フィルムをラミネートする場合には、ラミネート加工前に下塗り層を形成してもよく、ラミネート加工後に下塗り層を形成してもよい。
【0022】
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えば、丸善石油化学社製のビスアリルナジイミド「BANI」のように、分子内に末端不飽和基を2つ以上有するイミドモノマーを、熱重合して得られるポリイミド樹脂が好適に用いられる。このイミドモノマーは、モノマーの状態で支持体表面に塗布した後に、比較的低温で熱重合させることができるので、原料となるモノマーを支持体上に直接塗布して硬化させることができる。また、このイミドモノマーは汎用溶剤に溶解させて使用することができ、生産性、作業性に優れると共に、分子量が小さく、その溶液粘度が低いために、塗布時に凹凸に対する回り込みが良く、平滑化効果が高い。
【0023】
熱硬化性シリコン樹脂としては、有機基が導入されたケイ素化合物を原料としてゾルゲル法で重合したシリコン樹脂が好適に用いられる。このシリコン樹脂は、二酸化ケイ素の結合の一部を有機基で置換した構造からなりシリコンゴムよりも大幅に耐熱性に優れると共に、二酸化ケイ素膜よりも柔軟性に優れるため、可撓性フィルムからなる支持体上に樹脂膜を形成しても、クラックや剥離が生じ難い。また、原料となるモノマーを支持体上に直接塗布して硬化させることができるため、汎用溶剤を使用することができ、凹凸に対する回り込みも良く、平滑化効果が高い。更に、縮重合反応は、酸やキレート剤などの触媒の添加により比較的低温から進行するため、短時間で硬化させることができ、汎用の塗布装置を用いて樹脂膜を形成することができる。また熱硬化性シリコン樹脂はガスバリア性に優れており、磁性層形成時に支持体から発生する磁性層または下地層の結晶性、配向性を阻害するガスを遮蔽するガスバリア性が高く、特に好適である。
【0024】
下塗り層の表面には、磁気ヘッドと磁気ディスクとの真実接触面積を低減し、摺動特性を改善することを目的として、微小突起(テクスチャ)を設けることが好ましい。また、微小突起を設けることにより、支持体のハンドリング性も良好になる。微小突起を形成する方法としては、球状シリカ粒子を塗布する方法、エマルジョンを塗布して有機物の突起を形成する方法などが使用できるが、下塗り層の耐熱性を確保するため、球状シリカ粒子を塗布して微小突起を形成するのが好ましい。
【0025】
微小突起の高さは5nm〜50nmが好ましく、10nm〜30nmがより好ましい。微小突起の高さをこの範囲とすると、記録再生ヘッドと媒体のスペーシングロスが小さくなり、信号の記録再生特性が良化し、摺動特性の改善効果が得られる。高さ5nm〜50nmの微小突起の密度は0.1〜100個/μm2が好ましく、0.1〜10個/μm2がより好ましい。微小突起の密度を上記範囲とすることにより、摺動特性の改善効果が大きくなり、凝集粒子の減少によって高い突起が減少して記録再生特性が良化する。
上記突起密度は、原子間力顕微鏡(AFM)により測定され、具体的には、DIGITAL INSTRUMENT社製のNANOSCOPEIIIを用い、コンタクトモードで30μm平方(900μm2)を測定し、突起と窪みの体積が等しくなる面を基準面とし、基準面から5〜50nmの高さの面でスライスした場合に面にスライスされるか、面に接触される突起のカウントをして求められる。
【0026】
また、バインダーを用いて前記微小突起を支持体表面、あるいは平滑化下塗膜表面に固定することもできる。バインダーには、十分な耐熱性を備えた樹脂を使用することが好ましく、耐熱性を備えた樹脂としては、溶剤可溶型ポリイミド樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化型シリコン樹脂を使用することが特に好ましい。
【0027】
支持体と後述の下地層の間には、支持体あるいは下塗り層から発生するガス性分を遮蔽することを目的としたガスバリア層を設けることが好ましい。このガスバリア層は下地層の結晶配向性を高めるために用いられるシード層となる材料も使用することができる。このようなガスバリア層としてはC、ダイヤモンドライクカーボン、Ni−P、Ni−Al、Ti、Auやその合金、Agやその合金などを使用することができる。
【0028】
支持体と磁性層との間、あるいはガスバリア層と磁性層の間には、下地層を設けることが好ましい。下地層としてはCrまたはCrとTi、Si、W、Ta、Zr、Mo、Nb等から選ばれる金属との合金、Ruなどを挙げることができる。これらの物質は単独で用いてもよく、二層以上を組合せて用いてもよい。この様な下地層を用いることによって、磁性層の配向性を改善できるため、記録特性が向上する。下地層の厚みは10nm〜200nmが好ましく、20nm〜100nmが特に好ましい。
【0029】
磁性層は、ディスク面に対して垂直方向に磁化容易軸を有するいわゆる垂直磁気記録膜でもよいし、現在のハードディスクで主流となっている面内磁気記録膜でもかまわない。この磁化容易軸の方向は下地層の材料や結晶構造および磁性膜の組成と成膜条件によって制御することができる。
【0030】
磁性層は前述の通り、強磁性金属薄膜が使用できるが、好ましくはコバルトを含有する強磁性金属合金であり、特に好ましくはコバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物からなる磁性層である。この磁性層では強磁性金属合金と非磁性酸化物はマクロ的には混合されているが、ミクロ的には強磁性金属合金微粒子を非磁性酸化物が被覆するような構造となっており、強磁性金属合金粒子の大きさは1nmから50nm程度である。この様な構造となることで、高い保磁力を達成でき、また磁性粒子サイズの分散性が均一となるため、低ノイズ媒体を達成することができる。
【0031】
コバルトを含有する強磁性金属合金としてはCoとCr、Ni、Fe、Pt、B、Si、Ta等の元素との合金が使用できるが、記録特性を考慮するCo−Pt、Co−Cr、Co−Pt−Cr、Co−Pt−Cr−Ta、Co−Pt−Cr−B等が特に好ましい。
【0032】
コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物を用いる場合の非磁性酸化物としてはSi、Zr、Ta、B、Ti、Al等の酸化物が使用できるが、記録特性を考慮するとSiOxが最も好ましい。またこの酸化物を窒化物で置き換えることも可能である。
【0033】
コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物を用いる場合の混合比は、強磁性金属合金:非磁性酸化物=95:5〜80:20(モル比)の範囲であることが好ましく、90:10〜85:15の範囲であることが特に好ましい。これよりも強磁性金属合金が多くなると、磁性粒子間の分離が不十分となり、保持力が低下してしまう。逆にこれよりも少なくなると、磁化量が減少するため、信号出力が著しく低下してしまう。
【0034】
磁性層の厚みとしては好ましくは5nm〜60nm、さらに好ましくは10nm〜25nmの範囲である。これよりも厚みが厚くなるとノイズが著しく増加してしまい、逆に厚みが薄くなると、出力が著しく減少してしまう。
【0035】
強磁性金属合金、あるいは強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物からなる磁性層を形成する方法としては真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法が使用できる。中でもスパッタ法は良質な超薄膜が容易に成膜可能であることから、本発明に好適である。スパッタ法としては公知のDCスパッタ法、RFスパッタ法のいずれも使用可能である。スパッタ方式は連続フィルム上に連続して成膜するウェブスパッタ装置が好適であるが、ハードディスクの製造に使用されるような枚様式スパッタ装置や通過型スパッタ装置も使用可能である。
【0036】
スパッタ時のスパッタガスとしては一般的なアルゴンガスが使用できるが、その他の希ガスを使用しても良い。また強磁性金属合金の粒子分離を促進するため、あるいは非磁性酸化物の酸素含有率を調整するために微量の酸素ガスを導入してもかまわない。
【0037】
スパッタ法で強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物からなる磁性層を形成するためには強磁性金属合金ターゲットと非磁性酸化物ターゲットの2種を用い、これらの共スパッタ法を使用することも可能であるが、磁性粒子サイズの分散性を改善し、均質な膜を作成するため、コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性酸化物の合金ターゲットを用いることが好ましい。この合金ターゲットはホットプレス法で作製することができる。
【0038】
保護層は、磁性層に含まれる金属材料の腐蝕を防止し、磁気ヘッドと磁気ディスクとの擬似接触または接触摺動による摩耗を防止して、走行耐久性、耐食性を改善するために設けられる。保護層には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物、グラファイト、無定型カーボンなどの炭素等の材料を使用することができる。
【0039】
保護層としては、磁気ヘッド材質と同等またはそれ以上の硬度を有する硬質膜が好ましく、摺動中に焼き付きを生じ難くその効果が安定して持続するものが、摺動耐久性に優れており好ましい。また、同時にピンホールが少ないものが、耐食性に優れておりより好ましい。このような保護膜としては、CVD法、反応性スパッタ法で作製されるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)と呼ばれる硬質炭素膜が挙げられる。
【0040】
保護層は、性質の異なる2種類以上の薄膜を積層した構成とすることができる。例えば、表面側に摺動特性を改善するための硬質炭素保護膜を設け、磁気記録層側に耐食性を改善するための窒化珪素などの窒化物保護膜を設けることで、耐食性と耐久性とを高い次元で両立することが可能となる。
【0041】
保護層上には、走行耐久性および耐食性を改善するために、潤滑層が設けられる。潤滑層には、公知の炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、極圧添加剤等の潤滑剤が使用される。
【0042】
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類、ステアリン酸ブチル等のエステル類、オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類、リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類、ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類、ステアリルアミン等のアミン類などが挙げられる。
【0043】
フッ素系潤滑剤としては、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部または全部をフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基としては パーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)n、またはこれらの共重合体等である。具体的には、分子量末端に水酸基を有するパーフルオロメチレン−パーフルオロエチレン共重合体(アウジモント社製、商品名FOMBLIN Z−DOL)等が挙げられる。
【0044】
極圧添加剤としては、リン酸トリラウリル等のリン酸エステル類、亜リン酸トリラウリル等の亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸トリラウリル等のチオ亜リン酸エステルやチオリン酸エステル類、二硫化ジベンジル等の硫黄系極圧剤などが挙げられる。
【0045】
上記の潤滑剤は単独もしくは複数を併用して使用することができ、潤滑剤を有機溶剤に溶解した溶液を、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ディップコート法等で保護層表面に塗布するか、真空蒸着法により保護層表面に付着させればよい。潤滑剤の厚みとしては、0.1〜3nmが好ましく、0.5〜2nmが特に好ましい。
【0046】
また、耐食性をさらに高めるために、防錆剤を併用することが好ましい。防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類およびこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトンベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素および硫黄含有複素環類およびこの誘導体等が挙げられる。これら防錆剤は、潤滑剤に混合して保護層上に塗布してもよく、潤滑剤を塗布する前に保護層上に塗布し、その上に潤滑剤を塗布してもよい。防錆剤量としては、前記潤滑剤への混合比として0.01〜100質量%が好ましく、0.1〜50質量%が特に好ましい。
【0047】
本発明においては上記の様な構成の強磁性金属薄膜を磁性層とするフレキシブル磁気ディスクに対してバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープを用いてバーニッシュ加工を施すことを特徴とする。
【0048】
上記の様な構成の強磁性金属薄膜を磁性層とするフレキシブル磁気ディスクはそのままの状態では支持体起因の欠陥(異常突起)、下塗り表面上に塗布した微小突起の凝集物、各層を成膜する際に付着するコンタミネーション、潤滑剤や防錆剤の凝集物等の表面欠陥が少なからず存在する。この様な表面欠陥はMRヘッドやGMRヘッドなどの耐摩耗性が低い高感度ヘッドを使用する場合に、磁気信号のドロップアウトやエラーにつながるだけではなく、これらの磁気ヘッドを破壊してしまうことがある。特にディスクとヘッドが接触摺動するフレキシブル磁気システムの場合、この影響が顕著となる。
【0049】
前記したようにハードディスク型磁気ディスクのバーニッシュ方法としてはバーニッシュヘッド、グライドヘッドを実際に磁気ディスク上を浮上走行させ、バーニッシュ加工を行うことが一般的であるが、この方法でフレキシブル磁気ディスクを加工しようとすると、バーニッシュヘッドの浮上量が安定しないため、ディスク全面を均一な精度で加工することが難しかった。
【0050】
本発明は、磁性層を有する側の磁気ディスク表面をバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープでバーニッシュ加工を行うものである。
バーニッシュ加工は、バックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープをディスク表面に押し当て、磁気ディスク表面の欠陥を取り除くものである。この際、このバックアップロールやバックアップパッドの規制力を利用してディスクと研磨テープを接触させれば良い。フレキシブル磁気ディスクは研磨テープの押し付けによって容易に変形するため、その反対面からも、規制部材を押し付けることが好ましく、更に好ましくは同様にバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープを押し付けて両面同時にバーニッシュ加工することが好ましい。また反対面からエアーでディスクを研磨テープに押し付けることもできるが、エアー流によって逆にコンタミネーションが付着することがあるので、好ましくない。
本発明に用いられるバックアップロールやバックアップパッドは、例えば、特許文献2等に記載の公知のものを用いることができる。
【0051】
テープの押し付け圧としては50〜200gf/cm(49〜196N/m)の範囲が好ましい。研磨テープの種類にも依存するが、この範囲に圧力を設定することによりバーニッシュ効果を確保すると共に磁気ディスクへの加工キズの発生が抑制されるので好ましい。バーニッシュの適切な加工については詳細に後述する。
【0052】
研磨テープの送り速度は10mm/min〜100mm/minの範囲が、研磨テープに加工くずが付着し難く、そのため加工キズが発生し難く、かつ研磨テープの消費量も抑制されるため好ましい。
【0053】
磁気ディスクの回転速度は500rpm〜3000rpmが、加工キズが発生し難く、磁気ディスクの回転が安定となり、加工の均一性が得られるので好ましい。
【0054】
研磨テープ幅と磁気ディスクの加工幅が同じか、研磨テープの方が広い場合には、研磨テープと磁気ディスクは相対的に移動せず、加工が可能であるが、研磨テープ幅の法が磁気ディスク加工幅よりも狭い場合には磁気ディスクに対して研磨テープ位置を移動させて加工幅を確保する。この際、加工位置の最内周から外周に研磨テープを引き抜く方法が最も好ましい。引き抜き速度は50〜700mm/secとすると、加工キズが発生し難く、バーニッシュ効果が確保されるので好ましい。加工方向を外周から内周に向けることも可能であるが、フレキシブル磁気ディスクの場合、回転が不安定になりやすい。
【0055】
研磨テープとしては粒度が10000番以上の高精度加工用研磨テープが使用できる。研磨テープに使用される研磨剤種としてはダイヤモンド、アルミナ、酸化クロム、酸化鉄などがあげられる。中でも研磨性の観点からアルミナが最も好ましい。研磨テープはこれらの研磨剤を樹脂結合剤とともに溶剤中に分散させ、これを可撓性支持体上に塗布、乾燥させた後、必要な幅に裁断して使用する。この際、必要に応じて研磨剤と樹脂結合剤の他に、硬化剤、潤滑剤、分散剤等の添加剤を用いることができる。
【0056】
バーニッシュ加工の効果については、AFMで測定した10点平均粗さRzが50nm以下となるようにすることが好ましい。この様に加工することでMRヘッドやGMRヘッドの破壊を防止することができる。Rzは小さい方が好ましく、10〜30nmとすることがさらに好ましい。Rzの評価方法は30μm×30μmの面積についてAFMで測定を行い、10点平均粗さを求める。測定個所は3個所以上が好ましく、さらに好ましくは5個所以上である。バーニッシュ加工によってRzが50nm以下とならない場合には、上記バーニッシュ加工条件の調整によって50nm以下とすることができる。
【0057】
【実施例】
以下の実施例により本発明の新規な効果をさらに具体的に説明する。
実施例1
厚み52μm、表面粗さRa=1.4nmのポリエチレンナフタレートフィルム上に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、塩酸、アルミニウムアセチルアセトネート、エタノールからなる下塗り液をグラビアコート法で塗布した後、100℃で乾燥と硬化を行い、厚み1.0μmのシリコン樹脂からなる下塗り層を作成した。この下塗り層上に粒子径25nmのシリカゾルをグラビアコート法で塗布して、下塗り層上に高さ25nmの突起を3個/μm2の密度で形成した。この下塗り層は支持体フィルムの両面に形成した。次に図に示したウェブスパッタ装置にこの原反を設置し、水冷したキャン上にフィルムを密着させながら搬送し、下塗り層上に、DCマグネトロンスパッタ法でCからなるガスバリア層を20nmの厚みで形成した後、Ruからなる下地層を30nmの厚みで、(Co70−Pt20−Cr10)88−(SiO2)12からなる磁性層を20nmの厚みで、Cからなる保護層を20nmの厚みで形成した。この下地層、磁性層、保護層はフィルムの両面に成膜した。次にこの保護層表面に分子末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤(モンテフルオス社製FOMBLIN Z−DOL)をフッ素系潤滑剤(住友スリーエム社製HFE−7200)に溶解した溶液をグラビアコート法で塗布し、厚み1nmの潤滑層を形成した。この潤滑層もフィルムの両面に形成した。次にこの原反から2.5inchサイズのディスクを打ち抜き、これを1/2inch幅の30000番アルミナ研磨テープを用いて下記条件で両面同時にバーニッシュ加工した後、金属製カートリッジに組み込んで、フレキシブル磁気ディスク媒体を作製した。
ディスク回転数:1500rpm
押し付け方法:バックアップローラー(ゴム製)
押し付け圧力:100gf/cm(98N/m)
引き抜き速度:100mm/sec
テープ送り速度:80mm/min
【0058】
実施例2〜6
また上記実施例1を基準として、そのバーニッシュ加工条件を表1のように変更して加工した試料を作製した。
【0059】
比較例1
実施例1においてテープバーニッシュを施さなかった試料を作製した。
【0060】
得られた試料を以下により評価し、結果を表1に示した。
▲1▼Rz
AFMを用いて30μm×30μmの領域を5箇所測定して各測定個所について10点平均粗さRzを測定し、その平均値をRzとした。
▲2▼SNR
再生トラック幅0.28μm、記録トラック幅0.44μmのGMRヘッドを用いて、線記録密度200kFCIの記録再生を行い、再生信号/ノイズ比(SNR)を測定した。なおこのとき、ノイズの積分範囲は400kFCIまでとし、ディスク回転数は4200rpm、半径位置は25.4mm、ヘッド加重は1gf(9.8mN)とした。
【0061】
【表1】
【0062】
比較例のAFM観察の結果、ディスク表面にはところどころに下塗り上に塗布した微小突起の凝集体や支持体起因の異常突起が観察され、これらの欠陥によってRzは63nmと非常に高くなっていることがわかった。この試料をGMRヘッドで記録再生しようと試みたがヘッドが破壊され、評価できなかった。一方、本発明を用いて作製した実施例はGMRヘッドで記録再生が可能であり、Rzが少なくなるにしたがって、SNRが改善された。
【0063】
【発明の効果】
本発明により得られる磁気ディスクは、表面特性が改善されるので磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触時の衝撃が軽減され、安定したヘッド走行が可能となり、またMRヘッドやGMRヘッドといった磨耗に弱い高感度磁気ヘッドを用いても、磁気ヘッドを破壊することなく、長期間の動作が可能な高性能で高信頼性を有し、かつ安価な高密度記録が可能な磁気ディスクを提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル情報の記録に使用するフレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの普及により、パーソナル・コンピュータを用いて大容量の動画情報や音声情報の処理を行う等、コンピュータの利用形態が変化してきている。これに伴い、ハードディスク等の磁気記録媒体に要求される記憶容量も増大している。
【0003】
ハードディスク装置においては、磁気ディスクの回転に伴い、磁気ヘッドが磁気ディスクの表面からわずかに浮上し、非接触で磁気記録を行っている。このため、磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触によって磁気ディスクが破損するのを防止している。高密度化に伴って磁気ヘッドの浮上高さは次第に低減されており、鏡面研磨された超平滑なガラス基板上に磁気記録層等を形成した磁気ディスクを用いることにより、現在では10nm〜20nmの浮上高さが実現されている。この様なヘッドの低浮上量化、ヘッド構造の改良、ディスク記録膜の改良等の技術革新によってハードディスクドライブの面記録密度と記録容量はここ数年で飛躍的に増大してきた。
【0004】
取り扱うことができるデジタルデータ量が増大することによって、動画データの様な大容量のデータを可換型媒体に記録して、移動させるというニーズが生まれてきた。しかしながら、ハードディスクは基板が硬質であって、しかも上述のようにヘッドとディスクの間隔が極わずかであるため、フレキシブル磁気ディスクや書き換え型光ディスクの様に可換媒体として使用しようとすると、動作中の衝撃や塵埃の巻き込みによって故障を発生する懸念が高く、使用できない。
【0005】
DVD−R/RWに代表される追記型および書き換え型光ディスクは磁気ディスクのようにヘッドとディスクが近接していないため、可換性に優れており、広く普及している。しかしながら光ディスクは、光ピックアップの厚みとコストの問題から、高容量化に有利な磁気ディスクのように両面を記録面としたディスク構造を用いることが困難であるといった問題がある。さらに、磁気ディスクと比較すると面記録密度が低く、データ転送速度も低いため、書き換え型の大容量記録媒体としての使用を考えると、未だ十分な性能とはいえない。また光ピックアップの構造が複雑であるため、ドライブの小型化が難しいという課題もある。
【0006】
デジタルカメラやデジタルビデオレコーダー用の記録媒体としては現在半導体メモリーを内蔵したスマートメディア等が主流となっているが、このような半導体メモリー媒体は記憶容量に対するコストが他の上記の磁気および光ディスク媒体と比較して非常に高く、高容量化と低価格化を同時に満たすことは難しい。
【0007】
一方、フレキシブル磁気ディスクは基板がフレキシブルであるため可換性に優れているが、現在市販されているフレキシブル磁気ディスクは記録膜が磁性体を高分子バインダーとともに高分子フィルム上に塗布した構造であるため、スパッタ法で磁性膜を形成しているハードディスクと比較すると、磁性層の高密度記録特性が悪く、ハードディスクの1/10以下の記録密度しか達成できていない。
【0008】
高分子フィルム上に強磁性金属薄膜を設けたフレキシブル磁気ディスクは、異常突起等の表面欠陥が少なからず存在する。この様な表面欠陥はMRヘッドやGMRヘッドなどの耐摩耗性が低い高感度ヘッドを使用する場合に、磁気信号のドロップアウトやエラーにつながるだけではなく、これらの磁気ヘッドを破壊してしまうことがある。
このような表面欠陥を除去する方法として、磁気ディスク表面をバーニッシュ加工することが知られている(特許文献1〜4等)。
また、ハードディスク型磁気ディスクのバーニッシュ方法としてはバーニッシュヘッド、グライドヘッドを実際に磁気ディスク上を浮上走行させ、バーニッシュ加工を行うことが一般的であるが、この方法でフレキシブル磁気ディスクを加工しようとすると、バーニッシュヘッドの浮上量が安定しないため、ディスク全面を均一な精度で加工することが難しかった。
そして、このようなフレキシブル磁気ディスクにおける近年の高密度化の要求は、高く、更に狭トラック化、高線記録密度化が望まれている。
ところが、大容量の書き換え可能なフレキシブル磁気ディスク媒体は、その要求が高いものの、性能、信頼性、コストを満足するものが存在しない。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−155271号公報
【特許文献2】
特開平9−54943号公報
【特許文献3】
特開2002−56525号公報
【特許文献4】
特開平5−318303号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、MRヘッド、GMRヘッドといった耐摩耗性の低い高感度ヘッドを用いたシステム設計を可能とし、高性能で高信頼性を有し、かつ安価な強磁性金属薄膜を磁性層として用いたフレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、以下の手段により達成できる。
(1)可撓性高分子支持体の少なくとも一方の面に強磁性金属薄膜からなる磁性層、保護層、潤滑層をこの順に形成した後、該磁性層を有する側の表面をバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープでバーニッシュ加工を行うことを特徴とするフレキシブル磁気ディスクの製造方法。
(2)前記バーニッシュ加工によって10点平均粗さRzを50nm以下とすることを特徴とする上記(1)に記載のフレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明により製造されるフレキシブル磁気ディスク媒体(以下、単に磁気ディスクともいう)は、その支持体として可撓性高分子支持体を用いるので、磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触時の衝撃が軽減され、磁気ヘッドと磁気ディスクとが安定に接触摺動するので、安定したヘッド走行が可能となり、さらに磁気ディスク表面を研磨テープでバーニッシュ加工することによってディスク表面欠陥によるヘッド破壊を激減させることができるため、MRヘッドやGMRヘッドといった磨耗に弱い高感度磁気ヘッドを用いた記録システムにおいても、ヘッドを破壊することなく、長期間の動作が可能となる。
【0013】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施の形態に係るフレキシブル磁気ディスク媒体は、中心部にセンターホールが形成された構造であり、金属やプラスチック等で形成されたカートリッジ内に格納されている。なお、カートリッジには、通常、金属性のシャッタで覆われたアクセス窓を備えており、このアクセス窓を介して磁気ヘッドが導入されることにより、磁気ディスクへの信号記録や再生が行われる。
【0014】
本発明の磁気ディスクは可撓性高分子支持体からなるディスク状支持体の少なくとも一方の面に、少なくとも、磁性層、保護層、潤滑層をこの順に有するものであるが、該支持体上に表面性とガスバリア性を改善する下塗り層、磁性層の磁気特性を改善する下地層、磁性層、保護層、潤滑層をこの順を有した構成が好ましい。
【0015】
支持体は、磁気ヘッドと磁気ディスクとが接触した時の衝撃を回避するために、可撓性を備えた樹脂フィルム(可撓性高分子支持体)で構成されている。このような樹脂フィルムとしては、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセテートセルロース、フッ素樹脂等からなる樹脂フィルムが挙げられる。本発明では基板を加熱することなく良好な記録特性を達成することができるため、価格や表面性の観点からポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートが特に好ましい。
【0016】
また、支持体として樹脂フィルムを複数枚ラミネートしたものを用いてもよい。ラミネートフィルムを用いることにより、支持体自身に起因する反りやうねりを軽減することができ、磁気記録層の耐傷性を著しく改善することがきる。
【0017】
ラミネート手法としては、熱ローラによるロールラミネート、平板熱プレスによるラミネート、接着面に接着剤を塗布してラミネートするドライラミネート、予めシート状に成形された接着シートを用いるラミネート等が挙げられる。接着剤の種類は、特に限定されず、一般的なホットメルト接着剤、熱硬化性接着剤、UV硬化型接着剤、EB硬化型接着剤、粘着シート、嫌気性接着剤などを使用することがきる。
【0018】
支持体の大きさ、つまり磁気ディスクの大きさは直径20mm〜150mmであって、厚みは、通常、10μm〜200μm、好ましくは20μm〜100μm、さらに好ましくは30μm〜70μmである。支持体の厚みが薄いと、高速回転時の安定性が低下し、面ぶれが増加する。一方、支持体の厚みが厚いと、回転時の剛性が高くなり、接触時の衝撃を回避することが困難になり、磁気ヘッドの跳躍を招く。
【0019】
支持体の腰の強さは、下記式で表され、b=10mmでの値が0.5kgf/mm2〜2.0kgf/mm2(≒4.9〜19.6MPa)の範囲にあることが好ましく、0.7kgf/mm2〜1.5kgf/mm2(≒6.9〜14.7MPa)がより好ましい。
支持体の腰の強さ=Ebd3/12
なお、この式において、Eはヤング率、bはフィルム幅、dはフィルム厚さを各々表す。
【0020】
支持体の表面は、磁気ヘッドによる記録を行うために、可能な限り平滑であることが好ましい。支持体表面の凹凸は、信号の記録再生特性を著しく低下させる。具体的には、後述する下塗り層を使用する場合では、光学式の表面粗さ計で測定した表面粗さが平均中心線粗さRaで5nm以内、好ましくは2nm以内、触針式粗さ計で測定した突起高さが1μm以内、好ましくは0.1μm以内、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した10点平均粗さRzで500nm以内、好ましくは200nm以内である。また、下塗り膜を用いない場合では、光学式の表面粗さ計で測定した表面粗さが平均中心線粗さRaで3nm以内、好ましくは1nm以内、触針式粗さ計で測定した突起高さが0.1μm以内、好ましくは0.06μm以内、AFMで測定した10点平均粗さRzで60nm以内、好ましくは30nm以内である。
【0021】
支持体表面には、平面性の改善とガスバリア性を目的として下塗り層を設けることが好ましい。磁性層をスパッタリング等で形成するため、下塗り層は耐熱性に優れることが好ましく、下塗り層の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、フッ素系樹脂等を使用することができる。熱硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化型シリコン樹脂は、平滑化効果が高く、特に好ましい。下塗り層の厚みは、0.1μm〜3.0μmが好ましい。支持体に他の樹脂フィルムをラミネートする場合には、ラミネート加工前に下塗り層を形成してもよく、ラミネート加工後に下塗り層を形成してもよい。
【0022】
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えば、丸善石油化学社製のビスアリルナジイミド「BANI」のように、分子内に末端不飽和基を2つ以上有するイミドモノマーを、熱重合して得られるポリイミド樹脂が好適に用いられる。このイミドモノマーは、モノマーの状態で支持体表面に塗布した後に、比較的低温で熱重合させることができるので、原料となるモノマーを支持体上に直接塗布して硬化させることができる。また、このイミドモノマーは汎用溶剤に溶解させて使用することができ、生産性、作業性に優れると共に、分子量が小さく、その溶液粘度が低いために、塗布時に凹凸に対する回り込みが良く、平滑化効果が高い。
【0023】
熱硬化性シリコン樹脂としては、有機基が導入されたケイ素化合物を原料としてゾルゲル法で重合したシリコン樹脂が好適に用いられる。このシリコン樹脂は、二酸化ケイ素の結合の一部を有機基で置換した構造からなりシリコンゴムよりも大幅に耐熱性に優れると共に、二酸化ケイ素膜よりも柔軟性に優れるため、可撓性フィルムからなる支持体上に樹脂膜を形成しても、クラックや剥離が生じ難い。また、原料となるモノマーを支持体上に直接塗布して硬化させることができるため、汎用溶剤を使用することができ、凹凸に対する回り込みも良く、平滑化効果が高い。更に、縮重合反応は、酸やキレート剤などの触媒の添加により比較的低温から進行するため、短時間で硬化させることができ、汎用の塗布装置を用いて樹脂膜を形成することができる。また熱硬化性シリコン樹脂はガスバリア性に優れており、磁性層形成時に支持体から発生する磁性層または下地層の結晶性、配向性を阻害するガスを遮蔽するガスバリア性が高く、特に好適である。
【0024】
下塗り層の表面には、磁気ヘッドと磁気ディスクとの真実接触面積を低減し、摺動特性を改善することを目的として、微小突起(テクスチャ)を設けることが好ましい。また、微小突起を設けることにより、支持体のハンドリング性も良好になる。微小突起を形成する方法としては、球状シリカ粒子を塗布する方法、エマルジョンを塗布して有機物の突起を形成する方法などが使用できるが、下塗り層の耐熱性を確保するため、球状シリカ粒子を塗布して微小突起を形成するのが好ましい。
【0025】
微小突起の高さは5nm〜50nmが好ましく、10nm〜30nmがより好ましい。微小突起の高さをこの範囲とすると、記録再生ヘッドと媒体のスペーシングロスが小さくなり、信号の記録再生特性が良化し、摺動特性の改善効果が得られる。高さ5nm〜50nmの微小突起の密度は0.1〜100個/μm2が好ましく、0.1〜10個/μm2がより好ましい。微小突起の密度を上記範囲とすることにより、摺動特性の改善効果が大きくなり、凝集粒子の減少によって高い突起が減少して記録再生特性が良化する。
上記突起密度は、原子間力顕微鏡(AFM)により測定され、具体的には、DIGITAL INSTRUMENT社製のNANOSCOPEIIIを用い、コンタクトモードで30μm平方(900μm2)を測定し、突起と窪みの体積が等しくなる面を基準面とし、基準面から5〜50nmの高さの面でスライスした場合に面にスライスされるか、面に接触される突起のカウントをして求められる。
【0026】
また、バインダーを用いて前記微小突起を支持体表面、あるいは平滑化下塗膜表面に固定することもできる。バインダーには、十分な耐熱性を備えた樹脂を使用することが好ましく、耐熱性を備えた樹脂としては、溶剤可溶型ポリイミド樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化型シリコン樹脂を使用することが特に好ましい。
【0027】
支持体と後述の下地層の間には、支持体あるいは下塗り層から発生するガス性分を遮蔽することを目的としたガスバリア層を設けることが好ましい。このガスバリア層は下地層の結晶配向性を高めるために用いられるシード層となる材料も使用することができる。このようなガスバリア層としてはC、ダイヤモンドライクカーボン、Ni−P、Ni−Al、Ti、Auやその合金、Agやその合金などを使用することができる。
【0028】
支持体と磁性層との間、あるいはガスバリア層と磁性層の間には、下地層を設けることが好ましい。下地層としてはCrまたはCrとTi、Si、W、Ta、Zr、Mo、Nb等から選ばれる金属との合金、Ruなどを挙げることができる。これらの物質は単独で用いてもよく、二層以上を組合せて用いてもよい。この様な下地層を用いることによって、磁性層の配向性を改善できるため、記録特性が向上する。下地層の厚みは10nm〜200nmが好ましく、20nm〜100nmが特に好ましい。
【0029】
磁性層は、ディスク面に対して垂直方向に磁化容易軸を有するいわゆる垂直磁気記録膜でもよいし、現在のハードディスクで主流となっている面内磁気記録膜でもかまわない。この磁化容易軸の方向は下地層の材料や結晶構造および磁性膜の組成と成膜条件によって制御することができる。
【0030】
磁性層は前述の通り、強磁性金属薄膜が使用できるが、好ましくはコバルトを含有する強磁性金属合金であり、特に好ましくはコバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物からなる磁性層である。この磁性層では強磁性金属合金と非磁性酸化物はマクロ的には混合されているが、ミクロ的には強磁性金属合金微粒子を非磁性酸化物が被覆するような構造となっており、強磁性金属合金粒子の大きさは1nmから50nm程度である。この様な構造となることで、高い保磁力を達成でき、また磁性粒子サイズの分散性が均一となるため、低ノイズ媒体を達成することができる。
【0031】
コバルトを含有する強磁性金属合金としてはCoとCr、Ni、Fe、Pt、B、Si、Ta等の元素との合金が使用できるが、記録特性を考慮するCo−Pt、Co−Cr、Co−Pt−Cr、Co−Pt−Cr−Ta、Co−Pt−Cr−B等が特に好ましい。
【0032】
コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物を用いる場合の非磁性酸化物としてはSi、Zr、Ta、B、Ti、Al等の酸化物が使用できるが、記録特性を考慮するとSiOxが最も好ましい。またこの酸化物を窒化物で置き換えることも可能である。
【0033】
コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物を用いる場合の混合比は、強磁性金属合金:非磁性酸化物=95:5〜80:20(モル比)の範囲であることが好ましく、90:10〜85:15の範囲であることが特に好ましい。これよりも強磁性金属合金が多くなると、磁性粒子間の分離が不十分となり、保持力が低下してしまう。逆にこれよりも少なくなると、磁化量が減少するため、信号出力が著しく低下してしまう。
【0034】
磁性層の厚みとしては好ましくは5nm〜60nm、さらに好ましくは10nm〜25nmの範囲である。これよりも厚みが厚くなるとノイズが著しく増加してしまい、逆に厚みが薄くなると、出力が著しく減少してしまう。
【0035】
強磁性金属合金、あるいは強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物からなる磁性層を形成する方法としては真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法が使用できる。中でもスパッタ法は良質な超薄膜が容易に成膜可能であることから、本発明に好適である。スパッタ法としては公知のDCスパッタ法、RFスパッタ法のいずれも使用可能である。スパッタ方式は連続フィルム上に連続して成膜するウェブスパッタ装置が好適であるが、ハードディスクの製造に使用されるような枚様式スパッタ装置や通過型スパッタ装置も使用可能である。
【0036】
スパッタ時のスパッタガスとしては一般的なアルゴンガスが使用できるが、その他の希ガスを使用しても良い。また強磁性金属合金の粒子分離を促進するため、あるいは非磁性酸化物の酸素含有率を調整するために微量の酸素ガスを導入してもかまわない。
【0037】
スパッタ法で強磁性金属合金と非磁性酸化物の混合物からなる磁性層を形成するためには強磁性金属合金ターゲットと非磁性酸化物ターゲットの2種を用い、これらの共スパッタ法を使用することも可能であるが、磁性粒子サイズの分散性を改善し、均質な膜を作成するため、コバルトを含有する強磁性金属合金と非磁性酸化物の合金ターゲットを用いることが好ましい。この合金ターゲットはホットプレス法で作製することができる。
【0038】
保護層は、磁性層に含まれる金属材料の腐蝕を防止し、磁気ヘッドと磁気ディスクとの擬似接触または接触摺動による摩耗を防止して、走行耐久性、耐食性を改善するために設けられる。保護層には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物、グラファイト、無定型カーボンなどの炭素等の材料を使用することができる。
【0039】
保護層としては、磁気ヘッド材質と同等またはそれ以上の硬度を有する硬質膜が好ましく、摺動中に焼き付きを生じ難くその効果が安定して持続するものが、摺動耐久性に優れており好ましい。また、同時にピンホールが少ないものが、耐食性に優れておりより好ましい。このような保護膜としては、CVD法、反応性スパッタ法で作製されるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)と呼ばれる硬質炭素膜が挙げられる。
【0040】
保護層は、性質の異なる2種類以上の薄膜を積層した構成とすることができる。例えば、表面側に摺動特性を改善するための硬質炭素保護膜を設け、磁気記録層側に耐食性を改善するための窒化珪素などの窒化物保護膜を設けることで、耐食性と耐久性とを高い次元で両立することが可能となる。
【0041】
保護層上には、走行耐久性および耐食性を改善するために、潤滑層が設けられる。潤滑層には、公知の炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、極圧添加剤等の潤滑剤が使用される。
【0042】
炭化水素系潤滑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等のカルボン酸類、ステアリン酸ブチル等のエステル類、オクタデシルスルホン酸等のスルホン酸類、リン酸モノオクタデシル等のリン酸エステル類、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類、ステアリン酸アミド等のカルボン酸アミド類、ステアリルアミン等のアミン類などが挙げられる。
【0043】
フッ素系潤滑剤としては、上記炭化水素系潤滑剤のアルキル基の一部または全部をフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基で置換した潤滑剤が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基としては パーフルオロメチレンオキシド重合体、パーフルオロエチレンオキシド重合体、パーフルオロ−n−プロピレンオキシド重合体(CF2CF2CF2O)n、パーフルオロイソプロピレンオキシド重合体(CF(CF3)CF2O)n、またはこれらの共重合体等である。具体的には、分子量末端に水酸基を有するパーフルオロメチレン−パーフルオロエチレン共重合体(アウジモント社製、商品名FOMBLIN Z−DOL)等が挙げられる。
【0044】
極圧添加剤としては、リン酸トリラウリル等のリン酸エステル類、亜リン酸トリラウリル等の亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸トリラウリル等のチオ亜リン酸エステルやチオリン酸エステル類、二硫化ジベンジル等の硫黄系極圧剤などが挙げられる。
【0045】
上記の潤滑剤は単独もしくは複数を併用して使用することができ、潤滑剤を有機溶剤に溶解した溶液を、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ディップコート法等で保護層表面に塗布するか、真空蒸着法により保護層表面に付着させればよい。潤滑剤の厚みとしては、0.1〜3nmが好ましく、0.5〜2nmが特に好ましい。
【0046】
また、耐食性をさらに高めるために、防錆剤を併用することが好ましい。防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピリミジン等の窒素含有複素環類およびこれらの母核にアルキル側鎖等を導入した誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトンベンゾチアゾール、テトラザインデン環化合物、チオウラシル化合物等の窒素および硫黄含有複素環類およびこの誘導体等が挙げられる。これら防錆剤は、潤滑剤に混合して保護層上に塗布してもよく、潤滑剤を塗布する前に保護層上に塗布し、その上に潤滑剤を塗布してもよい。防錆剤量としては、前記潤滑剤への混合比として0.01〜100質量%が好ましく、0.1〜50質量%が特に好ましい。
【0047】
本発明においては上記の様な構成の強磁性金属薄膜を磁性層とするフレキシブル磁気ディスクに対してバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープを用いてバーニッシュ加工を施すことを特徴とする。
【0048】
上記の様な構成の強磁性金属薄膜を磁性層とするフレキシブル磁気ディスクはそのままの状態では支持体起因の欠陥(異常突起)、下塗り表面上に塗布した微小突起の凝集物、各層を成膜する際に付着するコンタミネーション、潤滑剤や防錆剤の凝集物等の表面欠陥が少なからず存在する。この様な表面欠陥はMRヘッドやGMRヘッドなどの耐摩耗性が低い高感度ヘッドを使用する場合に、磁気信号のドロップアウトやエラーにつながるだけではなく、これらの磁気ヘッドを破壊してしまうことがある。特にディスクとヘッドが接触摺動するフレキシブル磁気システムの場合、この影響が顕著となる。
【0049】
前記したようにハードディスク型磁気ディスクのバーニッシュ方法としてはバーニッシュヘッド、グライドヘッドを実際に磁気ディスク上を浮上走行させ、バーニッシュ加工を行うことが一般的であるが、この方法でフレキシブル磁気ディスクを加工しようとすると、バーニッシュヘッドの浮上量が安定しないため、ディスク全面を均一な精度で加工することが難しかった。
【0050】
本発明は、磁性層を有する側の磁気ディスク表面をバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープでバーニッシュ加工を行うものである。
バーニッシュ加工は、バックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープをディスク表面に押し当て、磁気ディスク表面の欠陥を取り除くものである。この際、このバックアップロールやバックアップパッドの規制力を利用してディスクと研磨テープを接触させれば良い。フレキシブル磁気ディスクは研磨テープの押し付けによって容易に変形するため、その反対面からも、規制部材を押し付けることが好ましく、更に好ましくは同様にバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープを押し付けて両面同時にバーニッシュ加工することが好ましい。また反対面からエアーでディスクを研磨テープに押し付けることもできるが、エアー流によって逆にコンタミネーションが付着することがあるので、好ましくない。
本発明に用いられるバックアップロールやバックアップパッドは、例えば、特許文献2等に記載の公知のものを用いることができる。
【0051】
テープの押し付け圧としては50〜200gf/cm(49〜196N/m)の範囲が好ましい。研磨テープの種類にも依存するが、この範囲に圧力を設定することによりバーニッシュ効果を確保すると共に磁気ディスクへの加工キズの発生が抑制されるので好ましい。バーニッシュの適切な加工については詳細に後述する。
【0052】
研磨テープの送り速度は10mm/min〜100mm/minの範囲が、研磨テープに加工くずが付着し難く、そのため加工キズが発生し難く、かつ研磨テープの消費量も抑制されるため好ましい。
【0053】
磁気ディスクの回転速度は500rpm〜3000rpmが、加工キズが発生し難く、磁気ディスクの回転が安定となり、加工の均一性が得られるので好ましい。
【0054】
研磨テープ幅と磁気ディスクの加工幅が同じか、研磨テープの方が広い場合には、研磨テープと磁気ディスクは相対的に移動せず、加工が可能であるが、研磨テープ幅の法が磁気ディスク加工幅よりも狭い場合には磁気ディスクに対して研磨テープ位置を移動させて加工幅を確保する。この際、加工位置の最内周から外周に研磨テープを引き抜く方法が最も好ましい。引き抜き速度は50〜700mm/secとすると、加工キズが発生し難く、バーニッシュ効果が確保されるので好ましい。加工方向を外周から内周に向けることも可能であるが、フレキシブル磁気ディスクの場合、回転が不安定になりやすい。
【0055】
研磨テープとしては粒度が10000番以上の高精度加工用研磨テープが使用できる。研磨テープに使用される研磨剤種としてはダイヤモンド、アルミナ、酸化クロム、酸化鉄などがあげられる。中でも研磨性の観点からアルミナが最も好ましい。研磨テープはこれらの研磨剤を樹脂結合剤とともに溶剤中に分散させ、これを可撓性支持体上に塗布、乾燥させた後、必要な幅に裁断して使用する。この際、必要に応じて研磨剤と樹脂結合剤の他に、硬化剤、潤滑剤、分散剤等の添加剤を用いることができる。
【0056】
バーニッシュ加工の効果については、AFMで測定した10点平均粗さRzが50nm以下となるようにすることが好ましい。この様に加工することでMRヘッドやGMRヘッドの破壊を防止することができる。Rzは小さい方が好ましく、10〜30nmとすることがさらに好ましい。Rzの評価方法は30μm×30μmの面積についてAFMで測定を行い、10点平均粗さを求める。測定個所は3個所以上が好ましく、さらに好ましくは5個所以上である。バーニッシュ加工によってRzが50nm以下とならない場合には、上記バーニッシュ加工条件の調整によって50nm以下とすることができる。
【0057】
【実施例】
以下の実施例により本発明の新規な効果をさらに具体的に説明する。
実施例1
厚み52μm、表面粗さRa=1.4nmのポリエチレンナフタレートフィルム上に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、塩酸、アルミニウムアセチルアセトネート、エタノールからなる下塗り液をグラビアコート法で塗布した後、100℃で乾燥と硬化を行い、厚み1.0μmのシリコン樹脂からなる下塗り層を作成した。この下塗り層上に粒子径25nmのシリカゾルをグラビアコート法で塗布して、下塗り層上に高さ25nmの突起を3個/μm2の密度で形成した。この下塗り層は支持体フィルムの両面に形成した。次に図に示したウェブスパッタ装置にこの原反を設置し、水冷したキャン上にフィルムを密着させながら搬送し、下塗り層上に、DCマグネトロンスパッタ法でCからなるガスバリア層を20nmの厚みで形成した後、Ruからなる下地層を30nmの厚みで、(Co70−Pt20−Cr10)88−(SiO2)12からなる磁性層を20nmの厚みで、Cからなる保護層を20nmの厚みで形成した。この下地層、磁性層、保護層はフィルムの両面に成膜した。次にこの保護層表面に分子末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤(モンテフルオス社製FOMBLIN Z−DOL)をフッ素系潤滑剤(住友スリーエム社製HFE−7200)に溶解した溶液をグラビアコート法で塗布し、厚み1nmの潤滑層を形成した。この潤滑層もフィルムの両面に形成した。次にこの原反から2.5inchサイズのディスクを打ち抜き、これを1/2inch幅の30000番アルミナ研磨テープを用いて下記条件で両面同時にバーニッシュ加工した後、金属製カートリッジに組み込んで、フレキシブル磁気ディスク媒体を作製した。
ディスク回転数:1500rpm
押し付け方法:バックアップローラー(ゴム製)
押し付け圧力:100gf/cm(98N/m)
引き抜き速度:100mm/sec
テープ送り速度:80mm/min
【0058】
実施例2〜6
また上記実施例1を基準として、そのバーニッシュ加工条件を表1のように変更して加工した試料を作製した。
【0059】
比較例1
実施例1においてテープバーニッシュを施さなかった試料を作製した。
【0060】
得られた試料を以下により評価し、結果を表1に示した。
▲1▼Rz
AFMを用いて30μm×30μmの領域を5箇所測定して各測定個所について10点平均粗さRzを測定し、その平均値をRzとした。
▲2▼SNR
再生トラック幅0.28μm、記録トラック幅0.44μmのGMRヘッドを用いて、線記録密度200kFCIの記録再生を行い、再生信号/ノイズ比(SNR)を測定した。なおこのとき、ノイズの積分範囲は400kFCIまでとし、ディスク回転数は4200rpm、半径位置は25.4mm、ヘッド加重は1gf(9.8mN)とした。
【0061】
【表1】
【0062】
比較例のAFM観察の結果、ディスク表面にはところどころに下塗り上に塗布した微小突起の凝集体や支持体起因の異常突起が観察され、これらの欠陥によってRzは63nmと非常に高くなっていることがわかった。この試料をGMRヘッドで記録再生しようと試みたがヘッドが破壊され、評価できなかった。一方、本発明を用いて作製した実施例はGMRヘッドで記録再生が可能であり、Rzが少なくなるにしたがって、SNRが改善された。
【0063】
【発明の効果】
本発明により得られる磁気ディスクは、表面特性が改善されるので磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触時の衝撃が軽減され、安定したヘッド走行が可能となり、またMRヘッドやGMRヘッドといった磨耗に弱い高感度磁気ヘッドを用いても、磁気ヘッドを破壊することなく、長期間の動作が可能な高性能で高信頼性を有し、かつ安価な高密度記録が可能な磁気ディスクを提供できる。
Claims (2)
- 可撓性高分子支持体の少なくとも一方の面に強磁性金属薄膜からなる磁性層、保護層、潤滑層をこの順に形成した後、該磁性層を有する側の表面をバックアップロールあるいはバックアップパッドに沿わせた研磨テープでバーニッシュ加工を行うことを特徴とするフレキシブル磁気ディスクの製造方法。
- 前記バーニッシュ加工によって10点平均粗さRzを50nm以下とすることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法。
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JP2003163871A JP2005004806A (ja) | 2003-06-09 | 2003-06-09 | フレキシブル磁気ディスク媒体の製造方法 |
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-
2003
- 2003-06-09 JP JP2003163871A patent/JP2005004806A/ja active Pending
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