JP2005003599A - 液体試料の表面張力の測定装置およびその装置を用いた表面張力の測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体試料の表面張力測定装置に関し、低濃度の界面活性剤、高揮発性溶媒、腐食性試料等において、正確にかつ再現性良く測定できる表面張力の測定方法を提供することを課題とする.
【解決手段】押棒と筒体内壁との隙間に試料が進入することを防止するために遮蔽部が取り付けているられている液体試料の送液装置を用いる液滴法による測定方法において,液体試料出口部側面に被覆吸着した試料成分が吸着平衡中に濃縮する。液体試料を連続的に押し出し生成する事により、液体試料出口部側面に被覆吸着した液体試料を強制的に取り除き、測定に及ぼす影響を排除する。
【選択図】 図1
【解決手段】押棒と筒体内壁との隙間に試料が進入することを防止するために遮蔽部が取り付けているられている液体試料の送液装置を用いる液滴法による測定方法において,液体試料出口部側面に被覆吸着した試料成分が吸着平衡中に濃縮する。液体試料を連続的に押し出し生成する事により、液体試料出口部側面に被覆吸着した液体試料を強制的に取り除き、測定に及ぼす影響を排除する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、気相中での液体試料の表面に存在する液体分子間の張力、すなわち表面張力を正確にかつ再現性良く測定できる表面張力測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液体の表面張力を測定する装置として特開平8−152396に開示されているような液滴法による装置が考えられている。しかしながら、この装置は、滴下中の液体試料が外気にさらされている結果、表面張力測定中に液滴表面から試料成分が継続的に蒸発し、試料成分の重量が経過時間と共に連続的に減少する結果、正確に表面張力を測定できないと言う欠点を有している。
【0003】
かねてから本発明の発明者はこの欠点を認識しており、これを解決するため、表面Vol.34、No.3、26〜36(1996)に開示しているように測定温度条件下で、試料液滴の周囲に試料成分の飽和蒸気圧雰囲気を形成して、液滴からの連続的な成分の蒸発を防止するための試料容器を設置したことを特徴とした表面張力測定装置を開発し、当該装置について、特許出願を完了した(特願2000−162529号)。
【0004】
さらに、低濃度の界面活性剤、高揮発性溶媒、腐食性試料等の試薬を分析する場合には、送液装置の液体試料部に、液滴を形成すると共に、その液滴の周囲の流体の温度、および成分の吸着が平衡に達するまで放置した後、該液滴が落下もしくは浮上するときの時間と、液滴の体積を測定して行うものであるが、低濃度の界面活性剤の希薄な水溶液のような試料を測定する際には、前記送液装置の液体試料出口部に残留した少量の平衡に達した試料残留物が、次回の測定の際に影響して、液滴の大きさを不用意に小さくしてしまうという不具合が生じる。
【0005】
そこで、上記した課題を解決するために、低濃度の界面活性剤等の如何なる試料であっても、正確に再現性のある実験データを採取することのできる、液体試料の界面張力および表面張力測定方法に関する特許出願を行った(特願2001−223252)。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、さらに低濃度界面活性剤の表面張力を測定する場合は、液滴を落下させる際に、前記送液装置の液体試料出口部側面(以下出口部側面と記す)に被覆して吸着した試薬成分が、出口部側面の気液界面部で濃縮される。温度平衡及び吸着平衡後に低速で押し出し、該液滴が落下する時に濃縮された被覆吸着試薬成分が、液滴の液体試料出口部端面付近の表面張力を不用意に小さくしてしまい、再現性のあるデータが得られないという課題が生じていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の表面張力測定装置としての特徴は、液体試料の液滴形成のための送液装置と、液体試料の受槽と、送液装置の押棒を牽引するための固定部を有する液体試料の表面張力測定装置において、当該送液装置の押棒の先端部に中空の構造を有する遮蔽部を有していることである。
【0008】
さらに測定装置としての特徴は、液体試料入口部と液体試料保持部と液体試料出口部を有する筒体と、液体試料を筒体の液体試料出口部を介して筒体の外に排出する押棒を有する送液装置において、押棒と筒体内壁との隙間に試料が進入するために中空の構造を有した遮蔽部を具備し、好ましくは前記遮蔽部が、固体の有機高分子材料であることである。
【0009】
また、本発明の表面張力測定方法としての特徴は、液体試料入口部と液体試料保持部と液体試料出口部を有する筒体と、液体試料を筒体の液体試料出口部を介して筒体の外に排出する押棒と、押棒と筒体内壁との隙間に試料が進入することを防止するための遮蔽部を具備する液滴形成のための送液装置を有する液体試料の表面張力の測定装置を用いた液滴法による液体試料の表面張力の測定方法において、前記送液装置の液体試料出口部先端から液滴を落下させる際、液体試料出口部側面に吸着して被覆した液体試料を剥離する為に、当該出口部で液滴を形成するための液滴形成工程を経て、さらに続く液滴落下工程で連続的に液滴を増大させて落下させることである。
【0010】
さらに、本発明の測定方法としての特徴は、前記連続的な落下を行うために、液滴の落下数が1滴以上であることである。
【0011】
さらに、本発明の測定方法としての特徴は、前記連続的な落下における押し棒の押し出し速度を、前記液滴形成工程、前記液滴落下工程の各工程において差を付けることである。好ましくは、前記液滴形成工程において液体試料の液滴形成開始時間から、液滴試料が前記送液装置の液体試料出口部先端から落下する迄の時間を、概ね液滴界面が吸着平衡する時間とすることを特徴とすることである。
【0012】
さらに、本発明の測定方法としての特徴は、前記液体試料として、界面活性剤と水との混合溶液を用いることである。
【0013】
【発明の作用】
本発明による液体試料の表面張力の測定方法は、低濃度の界面活性剤を測定する場合に、液滴を落下させる際に、連続的に試料の液滴を排出することによって、液体試料出口部側面に吸着して被覆した液体試料を強制的に剥離することができ、当該出口部側面に被覆して吸着した液体試料の試薬成分が、液滴の停滞中に不用意に濃縮することを防止し、或いは不用意に濃縮しても除去できるので液滴を均一に形成することができ、落下する際のデータのばらつきを防止することができる。
【0014】
さらに詳細には、従来の静止吸着平衡測定方法(従来測定方法)は液滴を落下する大きさの約90〜95%で静止して界面を吸着平衡させる。静止させる時間を吸着平衡時間と規定している。
【0015】
出口部側面に被覆吸着した液体試料成分が、押し出しを停止した吸着平衡時間中に出口部側面の気液界面部で濃縮する。吸着平衡時間終了後に低速度追加押し出しして液滴を落下させる。
【0016】
静止状態で濃縮された被覆吸着試料成分が、追加押し出しによる液体試料移動により出口部側面から離れる。
【0017】
離れた液体試料成分が、液滴の液体試料出口部端面付近の表面張力を低下させ、結果として滴下するまでの押し出し量は、試薬濃度で決まる量よりも少ない量になる。
【0018】
出口部側面の被覆吸着試料成分濃縮を防止する事を目的として連続的に液体試料を押し出す、あるいは濃縮した出口部側面被覆吸着試料を、連続的に押し出す事により出口部側面から除去し滴下させる。
【0019】
さらに、押し出し速度を制御して押し出し時間、あるいは押し出し時間と液滴静止時間が液滴の吸着平衡時間となるように設定することによって、さらに液滴の形成の大きさを均一にすることが出来るため、データのばらつきをさらに少なくすることが出来る。
【0020】
以下、本発明の液体試料の表面張力測定装置およびその測定方法実施例に基づいて説明する。
【0021】
【実施例1】
図1から図4に本発明の測定装置を示す。図1は実験に用いたシステムの全体図を示す。1は測定装置、2は液滴の通過を検知する検知装置、3は液体試料を定量的に滴下させる自動マイクロメーターコントローラー、4はデーターを記録するためのパーソナルコンピューターである。
【0022】
図2は、測定装置1のメインの部分である、送液装置11と、液体試料の受槽12と、送液装置の押棒を牽引するための固定部13から構成されている。
【0023】
図3は、さらに、送液装置11を詳細に示したもので、液体試料入口部(11a)と液体試料保持部(11b)と液体試料出口部(11c)を有する筒体(11d)と、液体試料を筒体の液体試料出口部(11c)を介して筒体の外に排出する押棒(11e)と、押棒(11e)と筒体内壁との隙間に試料が進入することを防止するために、中空の構造を有する遮蔽部(11f)を具備している。
【0024】
図4は、遮蔽部(11f)をさらに、詳細に示したものである。1は試料液シール部、2は中空部。中空の構造により外筒内面の真円度偏差があっても、シール部が中空でない場合よりも偏差に対応して変形し易く液漏れ防止を容易にする。
【0025】
本実施例では、液体試料として陰イオン界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を用いた。試料濃度が6.022ミリモル/kgの水溶液を試料にして吸着平衡測定した結果を図5に示す。ここで、ミリモルとは試料の物質量の単位(m mol)のことを示している。
【0026】
図5について詳細に説明すると次のようになる。すなわち、表面張力低下は三段階で起こる。1は気液界面吸着平衡により3分以内に表面張力が急激に低下する。2は、液体試料出口部側面に被覆吸着した試料成分が濃縮し低下する。3は液滴表面に水蒸気が凝縮し増量するので押し出し量が少なくなり僅かに低下する。
【0027】
一方、従来法測定では吸着平衡時に液滴を一定時間静止させるので、二段階目の濃縮作用が作用する。故に測定結果は吸着平衡時間に大きく影響される。
【0028】
【比較例1】
次に、従来法測定による比較例1を説明する。ただし、測定装置と実験に用いたシステムの全体の構成は、実施例1と同じであるため、ここでは説明を省略する。詳細には、試料濃度が3.61ミリモル/kgの水溶液を試料にして、一定量の液滴を生成し吸着平衡時間として一定時間静止する。実施した結果を図6に示す。吸着平衡値は明確にならず表面張力は吸着平衡時間が長くなるほど低下する。
【0029】
【実施例2】
次に、本発明による別の実施例を説明する。ただし、測定装置と実験に用いたシステムの全体の構成は、実施例1と同じであるため、ここでは説明を省略する。試料濃度が3.61ミリモル/kgの水溶液を試料にして、連続的に押し出す方法で吸着平衡測定を実施した結果を図7に示す。全移動時間として凡そ100〜300秒の間は同様の結果を得た。
【0030】
【実施例3】
さらに、本発明による別の実施例を説明する。本実施例では、液体試料として陰イオン界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を用いた。試料濃度が3.61ミリモル/kgの水溶液を試料にして本発明方法により測定した結果を表1に示す。なお、本実施例では、次の工程に従って測定した。
1)測定開始時に液滴残留物を2回以上除去。
2)予め調べた滴下までの押し出し量から低速押し出し時間が約3分になる量だけ引いた量まで高速に液滴を増大する。
3)液滴を静止させる事無く滴下まで低速(約5μm/秒)で押し出す。
4)液滴残留物除去を1回実施。
5)2)〜4)工程を繰り返し測定する。
【0031】
【表1】
【0032】
表1の結果より明らかなように、従来測定方法に比べ、本発明によると、液体試料出口部側面に被覆吸着した試料成分濃縮の影響が軽減される。
【0033】
【実施例5】
さらに、本発明による別の実施例を説明する。本実施例では、液体試料として陰イオン界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を用いた。試料濃度が3.61ミリモル/kgの水溶液を試料にして従来測定方法により測定した結果を表2に示す。なお、本実施例では、次の工程に従って測定した。
1)測定開始時に液滴残留物を2回以上除去。
2)予め調べた滴下量の約90%までの押し出し液滴を高速に生成し3分静止する。
3)滴下するまで低速で押し出す。
4)液滴残留物除去を1回実施。
5)2)〜4)工程を繰り返し測定する。
【0034】
【表2】
結果より明らかなように、従来測定方法では、静止時間が液体試料出口部側面に被覆吸着する試料成分の濃縮時間として働く。濃縮した試料成分の影響を受け真の平衡値を測定するのが難しくなる。
【0035】
【発明の効果】
上述した様に、本発明の方法は、液滴法による液体試料の表面張力測定方法において、送液装置の液体試料出口部の先端から連続的に液滴形成して落下させたため、出口部側面に被覆吸着した試料成分が濃縮し難くなり、その結果、常に安定した測定を行うことが可能になった。
【0036】
さらに、本発明によって、従来の滴容法で精確な測定が出来なかった超低濃度のアニオン性界面活性剤等の液体試料出口部側面に被覆吸着し易い試料の測定精度と再現性を向上した。
【0037】
さらに、本発明では超低濃度のアニオン性の界面活性剤は言うまでもなく、他に、カチオン性、ノニオン性、およびそれらの二種以上の混合物の界面活性剤に対しても有効である。要は、液体試料出口側面に被覆しやすい超低濃度の成分を有する液体試料に全て有効なのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面張力および界面張力測定システム
【図2】本発明の測定装置の詳細
【図3】本発明の送液装置の詳細
【図4】本発明の送液装置の詳細(先端の詳細図)
【図5】本発明の実施例 (低濃度SDS長時間吸着平衡測定)
【図6】従来技術としての比較例 (低濃度SDSを従来測定方法で吸着平衡測定)
【図7】本発明の実施例 (低濃度SDSを本発明方法で吸着平衡測定)
【産業上の利用分野】本発明は、気相中での液体試料の表面に存在する液体分子間の張力、すなわち表面張力を正確にかつ再現性良く測定できる表面張力測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液体の表面張力を測定する装置として特開平8−152396に開示されているような液滴法による装置が考えられている。しかしながら、この装置は、滴下中の液体試料が外気にさらされている結果、表面張力測定中に液滴表面から試料成分が継続的に蒸発し、試料成分の重量が経過時間と共に連続的に減少する結果、正確に表面張力を測定できないと言う欠点を有している。
【0003】
かねてから本発明の発明者はこの欠点を認識しており、これを解決するため、表面Vol.34、No.3、26〜36(1996)に開示しているように測定温度条件下で、試料液滴の周囲に試料成分の飽和蒸気圧雰囲気を形成して、液滴からの連続的な成分の蒸発を防止するための試料容器を設置したことを特徴とした表面張力測定装置を開発し、当該装置について、特許出願を完了した(特願2000−162529号)。
【0004】
さらに、低濃度の界面活性剤、高揮発性溶媒、腐食性試料等の試薬を分析する場合には、送液装置の液体試料部に、液滴を形成すると共に、その液滴の周囲の流体の温度、および成分の吸着が平衡に達するまで放置した後、該液滴が落下もしくは浮上するときの時間と、液滴の体積を測定して行うものであるが、低濃度の界面活性剤の希薄な水溶液のような試料を測定する際には、前記送液装置の液体試料出口部に残留した少量の平衡に達した試料残留物が、次回の測定の際に影響して、液滴の大きさを不用意に小さくしてしまうという不具合が生じる。
【0005】
そこで、上記した課題を解決するために、低濃度の界面活性剤等の如何なる試料であっても、正確に再現性のある実験データを採取することのできる、液体試料の界面張力および表面張力測定方法に関する特許出願を行った(特願2001−223252)。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、さらに低濃度界面活性剤の表面張力を測定する場合は、液滴を落下させる際に、前記送液装置の液体試料出口部側面(以下出口部側面と記す)に被覆して吸着した試薬成分が、出口部側面の気液界面部で濃縮される。温度平衡及び吸着平衡後に低速で押し出し、該液滴が落下する時に濃縮された被覆吸着試薬成分が、液滴の液体試料出口部端面付近の表面張力を不用意に小さくしてしまい、再現性のあるデータが得られないという課題が生じていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の表面張力測定装置としての特徴は、液体試料の液滴形成のための送液装置と、液体試料の受槽と、送液装置の押棒を牽引するための固定部を有する液体試料の表面張力測定装置において、当該送液装置の押棒の先端部に中空の構造を有する遮蔽部を有していることである。
【0008】
さらに測定装置としての特徴は、液体試料入口部と液体試料保持部と液体試料出口部を有する筒体と、液体試料を筒体の液体試料出口部を介して筒体の外に排出する押棒を有する送液装置において、押棒と筒体内壁との隙間に試料が進入するために中空の構造を有した遮蔽部を具備し、好ましくは前記遮蔽部が、固体の有機高分子材料であることである。
【0009】
また、本発明の表面張力測定方法としての特徴は、液体試料入口部と液体試料保持部と液体試料出口部を有する筒体と、液体試料を筒体の液体試料出口部を介して筒体の外に排出する押棒と、押棒と筒体内壁との隙間に試料が進入することを防止するための遮蔽部を具備する液滴形成のための送液装置を有する液体試料の表面張力の測定装置を用いた液滴法による液体試料の表面張力の測定方法において、前記送液装置の液体試料出口部先端から液滴を落下させる際、液体試料出口部側面に吸着して被覆した液体試料を剥離する為に、当該出口部で液滴を形成するための液滴形成工程を経て、さらに続く液滴落下工程で連続的に液滴を増大させて落下させることである。
【0010】
さらに、本発明の測定方法としての特徴は、前記連続的な落下を行うために、液滴の落下数が1滴以上であることである。
【0011】
さらに、本発明の測定方法としての特徴は、前記連続的な落下における押し棒の押し出し速度を、前記液滴形成工程、前記液滴落下工程の各工程において差を付けることである。好ましくは、前記液滴形成工程において液体試料の液滴形成開始時間から、液滴試料が前記送液装置の液体試料出口部先端から落下する迄の時間を、概ね液滴界面が吸着平衡する時間とすることを特徴とすることである。
【0012】
さらに、本発明の測定方法としての特徴は、前記液体試料として、界面活性剤と水との混合溶液を用いることである。
【0013】
【発明の作用】
本発明による液体試料の表面張力の測定方法は、低濃度の界面活性剤を測定する場合に、液滴を落下させる際に、連続的に試料の液滴を排出することによって、液体試料出口部側面に吸着して被覆した液体試料を強制的に剥離することができ、当該出口部側面に被覆して吸着した液体試料の試薬成分が、液滴の停滞中に不用意に濃縮することを防止し、或いは不用意に濃縮しても除去できるので液滴を均一に形成することができ、落下する際のデータのばらつきを防止することができる。
【0014】
さらに詳細には、従来の静止吸着平衡測定方法(従来測定方法)は液滴を落下する大きさの約90〜95%で静止して界面を吸着平衡させる。静止させる時間を吸着平衡時間と規定している。
【0015】
出口部側面に被覆吸着した液体試料成分が、押し出しを停止した吸着平衡時間中に出口部側面の気液界面部で濃縮する。吸着平衡時間終了後に低速度追加押し出しして液滴を落下させる。
【0016】
静止状態で濃縮された被覆吸着試料成分が、追加押し出しによる液体試料移動により出口部側面から離れる。
【0017】
離れた液体試料成分が、液滴の液体試料出口部端面付近の表面張力を低下させ、結果として滴下するまでの押し出し量は、試薬濃度で決まる量よりも少ない量になる。
【0018】
出口部側面の被覆吸着試料成分濃縮を防止する事を目的として連続的に液体試料を押し出す、あるいは濃縮した出口部側面被覆吸着試料を、連続的に押し出す事により出口部側面から除去し滴下させる。
【0019】
さらに、押し出し速度を制御して押し出し時間、あるいは押し出し時間と液滴静止時間が液滴の吸着平衡時間となるように設定することによって、さらに液滴の形成の大きさを均一にすることが出来るため、データのばらつきをさらに少なくすることが出来る。
【0020】
以下、本発明の液体試料の表面張力測定装置およびその測定方法実施例に基づいて説明する。
【0021】
【実施例1】
図1から図4に本発明の測定装置を示す。図1は実験に用いたシステムの全体図を示す。1は測定装置、2は液滴の通過を検知する検知装置、3は液体試料を定量的に滴下させる自動マイクロメーターコントローラー、4はデーターを記録するためのパーソナルコンピューターである。
【0022】
図2は、測定装置1のメインの部分である、送液装置11と、液体試料の受槽12と、送液装置の押棒を牽引するための固定部13から構成されている。
【0023】
図3は、さらに、送液装置11を詳細に示したもので、液体試料入口部(11a)と液体試料保持部(11b)と液体試料出口部(11c)を有する筒体(11d)と、液体試料を筒体の液体試料出口部(11c)を介して筒体の外に排出する押棒(11e)と、押棒(11e)と筒体内壁との隙間に試料が進入することを防止するために、中空の構造を有する遮蔽部(11f)を具備している。
【0024】
図4は、遮蔽部(11f)をさらに、詳細に示したものである。1は試料液シール部、2は中空部。中空の構造により外筒内面の真円度偏差があっても、シール部が中空でない場合よりも偏差に対応して変形し易く液漏れ防止を容易にする。
【0025】
本実施例では、液体試料として陰イオン界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を用いた。試料濃度が6.022ミリモル/kgの水溶液を試料にして吸着平衡測定した結果を図5に示す。ここで、ミリモルとは試料の物質量の単位(m mol)のことを示している。
【0026】
図5について詳細に説明すると次のようになる。すなわち、表面張力低下は三段階で起こる。1は気液界面吸着平衡により3分以内に表面張力が急激に低下する。2は、液体試料出口部側面に被覆吸着した試料成分が濃縮し低下する。3は液滴表面に水蒸気が凝縮し増量するので押し出し量が少なくなり僅かに低下する。
【0027】
一方、従来法測定では吸着平衡時に液滴を一定時間静止させるので、二段階目の濃縮作用が作用する。故に測定結果は吸着平衡時間に大きく影響される。
【0028】
【比較例1】
次に、従来法測定による比較例1を説明する。ただし、測定装置と実験に用いたシステムの全体の構成は、実施例1と同じであるため、ここでは説明を省略する。詳細には、試料濃度が3.61ミリモル/kgの水溶液を試料にして、一定量の液滴を生成し吸着平衡時間として一定時間静止する。実施した結果を図6に示す。吸着平衡値は明確にならず表面張力は吸着平衡時間が長くなるほど低下する。
【0029】
【実施例2】
次に、本発明による別の実施例を説明する。ただし、測定装置と実験に用いたシステムの全体の構成は、実施例1と同じであるため、ここでは説明を省略する。試料濃度が3.61ミリモル/kgの水溶液を試料にして、連続的に押し出す方法で吸着平衡測定を実施した結果を図7に示す。全移動時間として凡そ100〜300秒の間は同様の結果を得た。
【0030】
【実施例3】
さらに、本発明による別の実施例を説明する。本実施例では、液体試料として陰イオン界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を用いた。試料濃度が3.61ミリモル/kgの水溶液を試料にして本発明方法により測定した結果を表1に示す。なお、本実施例では、次の工程に従って測定した。
1)測定開始時に液滴残留物を2回以上除去。
2)予め調べた滴下までの押し出し量から低速押し出し時間が約3分になる量だけ引いた量まで高速に液滴を増大する。
3)液滴を静止させる事無く滴下まで低速(約5μm/秒)で押し出す。
4)液滴残留物除去を1回実施。
5)2)〜4)工程を繰り返し測定する。
【0031】
【表1】
【0032】
表1の結果より明らかなように、従来測定方法に比べ、本発明によると、液体試料出口部側面に被覆吸着した試料成分濃縮の影響が軽減される。
【0033】
【実施例5】
さらに、本発明による別の実施例を説明する。本実施例では、液体試料として陰イオン界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を用いた。試料濃度が3.61ミリモル/kgの水溶液を試料にして従来測定方法により測定した結果を表2に示す。なお、本実施例では、次の工程に従って測定した。
1)測定開始時に液滴残留物を2回以上除去。
2)予め調べた滴下量の約90%までの押し出し液滴を高速に生成し3分静止する。
3)滴下するまで低速で押し出す。
4)液滴残留物除去を1回実施。
5)2)〜4)工程を繰り返し測定する。
【0034】
【表2】
結果より明らかなように、従来測定方法では、静止時間が液体試料出口部側面に被覆吸着する試料成分の濃縮時間として働く。濃縮した試料成分の影響を受け真の平衡値を測定するのが難しくなる。
【0035】
【発明の効果】
上述した様に、本発明の方法は、液滴法による液体試料の表面張力測定方法において、送液装置の液体試料出口部の先端から連続的に液滴形成して落下させたため、出口部側面に被覆吸着した試料成分が濃縮し難くなり、その結果、常に安定した測定を行うことが可能になった。
【0036】
さらに、本発明によって、従来の滴容法で精確な測定が出来なかった超低濃度のアニオン性界面活性剤等の液体試料出口部側面に被覆吸着し易い試料の測定精度と再現性を向上した。
【0037】
さらに、本発明では超低濃度のアニオン性の界面活性剤は言うまでもなく、他に、カチオン性、ノニオン性、およびそれらの二種以上の混合物の界面活性剤に対しても有効である。要は、液体試料出口側面に被覆しやすい超低濃度の成分を有する液体試料に全て有効なのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面張力および界面張力測定システム
【図2】本発明の測定装置の詳細
【図3】本発明の送液装置の詳細
【図4】本発明の送液装置の詳細(先端の詳細図)
【図5】本発明の実施例 (低濃度SDS長時間吸着平衡測定)
【図6】従来技術としての比較例 (低濃度SDSを従来測定方法で吸着平衡測定)
【図7】本発明の実施例 (低濃度SDSを本発明方法で吸着平衡測定)
Claims (8)
- 液体試料の液滴形成のための送液装置と、液体試料の受槽と、送液装置の押棒を牽引するための固定部を有する液体試料の表面張力測定装置において、当該送液装置の押棒の先端部に中空の構造を有する遮蔽部を有していることを特徴とする液体試料の表面張力測定装置。
- 液体試料入口部と液体試料保持部と液体試料出口部を有する筒体と、液体試料を筒体の液体試料出口部を介して筒体の外に排出する押棒を有する送液装置において、押棒と筒体内壁との隙間に試料が進入するために中空の構造を有した遮蔽部を具備する液体試料の表面張力の測定装置。
- 前記遮蔽部が、固体の有機高分子材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体試料の表面張力の測定装置。
- 液体試料入口部と液体試料保持部と液体試料出口部を有する筒体と、液体試料を筒体の液体試料出口部を介して筒体の外に排出する押棒と、押棒と筒体内壁との隙間に試料が進入することを防止するための遮蔽部を具備する液滴形成のための送液装置を有する液体試料の表面張力測定装置を用いた液滴法による液体試料の表面張力測定方法において、前記送液装置の液体試料出口部先端から液滴を落下させる際、液体試料出口部側面に吸着して被覆した液体試料を剥離する為に、当該出口部で液滴を形成するための液滴形成工程を経て、さらに続く液滴落下工程で連続的に液滴を増大させて落下させることを特徴とする液体試料の表面張力の測定方法。
- 前記連続的な落下を行うために、液滴の落下数が1滴以上であることを特徴とする請求項4に記載の液体試料の表面張力の測定方法。
- 前記連続的な落下における押し棒の押し出し速度を、前記液滴形成工程、前記液滴落下工程の各工程において変化させることを特徴とする請求項4又は5に記載の液体試料の表面張力測定方法。
- 前記液滴形成工程において液体試料の液滴形成開始時間から液滴落下工程で液滴が落下する迄の時間を、液滴試料界面が平衡する時間とすることを特徴とする、請求項4乃至6に記載の液体試料表面張力測定方法。
- 前記液体試料として、界面活性剤と水との混合溶液を用いることを特徴とする請求項4乃至7に記載の液体試料の表面張力の測定方法。
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- 2003-06-13 JP JP2003169344A patent/JP2005003599A/ja active Pending
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