JP2005003059A - ローラクラッチ及びローラクラッチ内蔵型プーリ装置 - Google Patents

ローラクラッチ及びローラクラッチ内蔵型プーリ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ローラクラッチ5のロック不良を防止して、このローラクラッチ5を組み込んだ各種装置の信頼性の向上を図る。
【解決手段】各ばね11を形状記憶合金製とする。そして、この形状記憶合金の変態温度(A 点)を適正に規制して、上記ローラクラッチ5がオーバーラン状態からロック状態に移る際に必要となる、上記各ばね11が各ローラ10を押圧する力を確保する。これにより上記課題を解決できる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の発電機であるオルタネータや、アイドリングストップ車用のスタータモータ等の自動車用補機のプーリ装置に組み込むローラクラッチ、及び、このプーリ装置として使用するローラクラッチ内蔵型プーリ装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
オルタネータやスタータモータ等の自動車用補機のプーリ装置にローラクラッチを組み込んだローラクラッチ内蔵型プーリ装置が、例えば特許文献1〜3に記載されている様に従来から知られている。図7は、これら各特許文献に記載される等により従来から知られている、ローラクラッチ内蔵型プーリ装置の1例を示している。ローラクラッチ内蔵型プーリ装置1は、無端ベルトをその外周面に掛け渡す為の、請求項に記載した外径側部材であるプーリ素子2と、オルタネータ等の回転駆動軸の先端部に固定する為の、請求項に記載した内径側部材であるスリーブ3とを、互いに同心に配置している。
【0003】
そして、このスリーブ3の外周面と上記プーリ素子2の内周面との間に、それぞれがサポート軸受である、深溝型の玉軸受4、4と、ローラクラッチ5とを設けている。これら玉軸受4、4及びローラクラッチ5を設ける為に、上記プーリ素子2の内周面は単なる円筒面とし、上記スリーブ3の外周面は、軸方向中間部の大径部6と両端部の小径部7、7とを段差部で連続させた段付の円筒面としている。
【0004】
そして、上記スリーブ3の外周面とプーリ素子2の内周面との間に存在する環状空間の軸方向中間部に上記ローラクラッチ5を、同じくこの環状空間の軸方向両端寄り部分でこのローラクラッチ5を軸方向両側から挟む位置に上記各玉軸受4、4を、それぞれ配置している。このうちの玉軸受4、4は、上記プーリ素子2と上記スリーブ3とを互いに同心に配置すると共に、これら両部材2、3の相対回転を自在とする役目を有する。図示の例では、上記両玉軸受4、4を上記ローラクラッチ5の両側に設置する事により、ラジアル荷重を負荷するスパンを長くして、剛性を高くすると共に耐久性の確保を図っている。
【0005】
上記ローラクラッチ5に就いて、図7に加え、本発明の実施の形態の1例を示す図1〜3を参照しつつ説明する。このローラクラッチ5は、外輪相当部材である外輪8と、内輪相当部材である内輪9と、複数本のローラ10、10と、これら各ローラ10、10と同数のばね11、11と、保持器12とから成る。上記外輪8は、鋼材により円筒状に形成したもので、内周面に円周方向に亙る凹凸であるカム面13を設けている。即ち、この外輪8の内周面に、それぞれがランプ部と呼ばれる複数の凹部14、14を、円周方向に関し等間隔に形成する事により、この外輪8の内周面を上記カム面13としている。又、上記内輪9は、鋼製で、外周面を円筒面15としている。上記外輪8は、この内輪9の周囲に、この内輪9と同心に配置している。そして、この外輪8の内周面に設けたカム面13と上記内輪9の外周面に設けた円筒面15との間に、上記各ローラ10、10、上記各ばね11、11、及び上記保持器12を配置している。
【0006】
このうちの保持器12は、合成樹脂(例えば、ポリアミド46等の熱可塑性樹脂にガラス繊維を20%程度混入したもの)を射出成形する事により、籠型円筒状に形成している。この様な保持器12は、それぞれが円環状である1対のリム部16、16と、これら両リム部16、16の内側面の径方向内端部同士を連結する状態で円周方向に関し等間隔に配置された複数の連結部17、17とを備える。この様な保持器12は、上記両リム部16、16の外周面に形成した各突片18を上記カム面13を構成する各凹部14に係合させる事により、上記外輪8に対する相対回転を不能にしている。又、上記各連結部17、17の外周面にはそれぞれ、請求項に記載したばね係止部である支持板部19、19を径方向外方に突出する状態で形成している。上記両リム部16、16と円周方向に隣り合う各支持板部19、19とにより四方を囲まれる部分を、それぞれポケット20、20とし、これら各ポケット20、20内に前記各ローラ10、10を、転動並びに円周方向に関する若干の変位自在に設けている。
【0007】
又、前記各ばね11、11は、図3に示す様に、ステンレス鋼製の板材(弾性金属板)に曲げ加工を施す事により形成している。この様な各ばね11、11は、基部21と、この基部21の両側部分をこの基部21の厚さ方向片側(図3の上側)に鋭角に折り曲げて成る1対の押圧片22、22とを備える。この様に構成する各ばね11、11は、上記基部21を上記各支持板部19、19に係止する事により、上記保持器12の円周方向複数個所に係止されている。この様に各ばね11、11をこの保持器12に係止した状態では、これら各ばね11、11を構成する1対の押圧片22、22の先端部が、それぞれ上記各ローラ10、10の転動面に弾性的に当接する。そして、これら各押圧片22、22により、上記各ローラ10、10を、前記カム面13と円筒面15との間に存在する円筒状空間23の径方向に関する幅の狭い部分に向け、円周方向に関して同方向に弾性的に押圧する。この結果、次述する運転時に、ローラクラッチ5のロック状態とオーバラン状態との切り換えを行なえる様になる。
【0008】
上述の様に構成するローラクラッチ5の使用状態では、前記プーリ素子2に上記外輪8を内嵌し、前記スリーブ3に上記内輪9を外嵌する。そして、これらプーリ素子2とスリーブ3とが所定方向に相対回転する傾向となった場合、即ち、プーリ素子2に内嵌固定した外輪8に対してスリーブ3に外嵌固定した内輪9が、上記各ばね11、11が上記各ローラ10、10を押圧している方向(図1の左方=反時計方向)に相対回転する傾向になった場合に、上記各ローラ10、10が上記円筒状空間23のうちで直径方向の幅の狭い部分に食い込む。そして、上記スリーブ3と上記プーリ素子2との相対回転が不能(ロック状態)となり、これらスリーブ3とプーリ素子2との間で回転伝達される。
【0009】
これに対して、上記プーリ素子2とスリーブ3とが上記所定方向とは反対方向、即ち、このプーリ素子2に対してこのスリーブ3が、上記各ばね11、11が上記各ローラ10、10を押圧しているのと反対方向(図1の時計方向)に相対回転する傾向になった場合には、上記各ローラ10、10が上記各ばね11、11の弾力に抗して上記円筒状空間23の直径方向の幅の広い部分に退避し、上記プーリ素子2と上記スリーブ3との相対回転が自在(オーバラン状態)となり、これらプーリ素子2とスリーブ3との間で回転力の伝達が行なわれなくなる。
【0010】
尚、上述した様なローラクラッチ5を構成する場合、各ローラ10、10と当接する円筒面15及びカム面13は、それぞれ従動プーリ3の内周面及びスリーブ3の外周面に直接形成する場合もある。又、円筒面15とカム面13との径方向に関する配置は、上述した構造と逆にする場合もある。即ち、外輪8の内周面に円筒面15を、内輪9の外周面にカム面13をそれぞれ形成する場合もある。この場合、上記内輪9が、各ばね11、11の押圧方向と逆方向に回転する場合にロック状態となり、この押圧方向と同方向に回転する場合にオーバーラン状態となる。
【0011】
上述の様に構成する本例のローラクラッチ内蔵型プーリ装置1を、例えばアイドリングストップ車用のスタータモータのプーリ装置として使用した場合、アイドリングストップ状態からエンジンを始動する際に、このスタータモータの回転軸からエンジンのクランクシャフトに動力を伝えエンジンを始動する。そして、エンジン始動後はこのクランクシャフトからスタータモータの回転軸への動力の伝達を断つ。従って、エンジン運転時には、このスタータモータの回転軸が回転する事がない。一方、上記ローラクラッチ内蔵型プーリ装置1をオルタネータ用のプーリ装置として使用した場合、無端ベルトを掛け渡したプーリからオルタネータの回転軸に対しては回転力の伝達を行なうが、この回転軸からプーリへの回転力の伝達は行なわない。この結果、クランクシャフトの回転角速度の変動により無端ベルトとプーリ素子とが擦れ合う事を防止できる。そして、鳴きと呼ばれる異音の発生や摩耗による上記無端ベルトの寿命低下を防止すると共に、上記オルタネータの発電量の増大を図れる。尚、上記ローラクラッチ内蔵型プーリ装置1を上記アイドリングストップ車用のスタータモータやオルタネータ等に使用した場合の作用に就いては、従来から広く知られている為、詳しい説明は省略する。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−63170号公報
【特許文献2】
特公平7−72585号公報
【特許文献3】
特開2002−130433号公報
【非特許文献1】
鈴木雄一著、「工業調査会の実践入門シリーズ 実用形状記憶合金」、工業調査会、1987年10月1日、p16、p25、p50
【非特許文献2】
「NRIM FATIGUE DATA SHEET 」、NO.42 、1984、 p5
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ローラクラッチ内蔵型プーリ装置1に組み込むローラクラッチ5は、オーバーラン状態とロック状態とを繰り返す。この様なオーバーラン状態とロック状態との繰り返しにより、上記各ローラ10、10が上記各ポケット20、20内を上記ローラクラッチ5の円周方向に関して移動する。これに伴い、上記各ローラ10、10から上記各ばね11、11に対して荷重が繰り返し負荷され、これら各ばね11、11にへたりが生じる場合がある。この様に各ばね11、11にへたりが生じた場合には、これら各ばね11、11の弾性力が低下して、これら各ばね11、11により上記各ローラ10、10を押圧する力が低下する。この結果、上記ローラクラッチ5にロック不良が生じる場合がある。
本発明は、この様な事情に鑑みて、各ばねのへたりによるロック不良を防止すべく発明したものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のローラクラッチ及びローラクラッチ内蔵型プーリ装置のうち、請求項1に記載したローラクラッチは、前述した従来構造と同様に、外輪相当部材と、内輪相当部材と、カム面と、円筒面と、複数本のローラと、保持器と、複数のばねとを備える。
このうちの内輪相当部材は、上記外輪相当部材の内側に、この外輪相当部材と同心に配置されている。
又、上記カム面は、上記外輪相当部材の内周面と内輪相当部材の外周面とのうちの一方の周面に形成された、円周方向に亙る凹凸である。
又、上記円筒面は、同じく他方の周面に形成されている。
又、上記各ローラは、上記カム面と円筒面との間の円筒状空間内に設けられている。
又、上記保持器は、上記カム面を形成した部材に対する回転を不能として上記円筒状空間内に配置され、上記各ローラを、転動並びに円周方向に関する若干の変位自在に保持する。
又、上記各ばねは、上記保持器の円周方向複数個所に設けられたばね係止部に係止され、上記各ローラを円周方向に関して同方向に押圧する。
特に、請求項1に記載したローラクラッチに於いては、上記各ばねが形状記憶合金製である。
又、この形状記憶合金として、請求項2に記載したNi−Ti 合金、或は、請求項3に記載したCu−Zn−Al合金が、好ましく使用できる。
更に、請求項4に記載した様に、オーバーラン時の温度上昇により、上記各ばねの形状が形状記憶効果に基づいて復元するか、或は、請求項5に記載した様に、上記各ばねを構成する形状記憶合金の形状記憶効果が生じる温度以上で使用される事が好ましい。この場合に、不使用時の温度は、形状記憶効果が生じない温度とする。
【0015】
又、請求項6に記載したローラクラッチ内蔵型プーリ装置は、内径側部材と、外径側部材と、ローラクラッチと、サポート軸受とを備える。
このうちの内径側部材は、回転軸の端部に固定する。
又、上記外径側部材は、上記内径側部材の周囲にこの内径側部材と同心に配置され、外周面にベルトを掛け渡す為のベルト溝を設けた、筒状の部材である。
又、上記ローラクラッチは、上記内径側部材の外周面と外径側部材の内周面との間に設けられ、この外径側部材がこの内径側部材に対し所定方向に相対回転する傾向となる場合のみ、これら外径側部材と内径側部材との間での回転力の伝達を自在とする。
又、上記サポート軸受は、上記ローラクラッチに隣接する位置で上記内径側部材の外周面と上記外径側部材の内周面との間に設けられ、この外径側部材に加わるラジアル荷重を支承しつつこれら内径側部材と外径側部材との相対回転を自在とする。
特に、請求項6に記載したローラクラッチ内蔵型プーリ装置に於いては、上記ローラクラッチが上述した様なローラクラッチである。
【0016】
【作用】
本発明のローラクラッチ及びローラクラッチ内蔵型プーリ装置は、上述の様に構成される為、各ばねのへたりによる弾性力の低下を防いで、ローラクラッチのロック不良を防ぐ事ができる。即ち、これら各ばねを構成する形状記憶合金の、形状記憶効果が生じる温度(マルテンサイト逆変態温度、A 点)を、所定値とした場合、これら各ばねがへたって(塑性変形して)も、これら各ばねの温度がこの所定値以上になると、これら各ばねが元の形状に復元する。従って、この所定値を適正に設定する事により、これら各ばねにへたりが生じた場合でも、オーバーラン状態からロック状態となるのに伴って、このへたりが解消される。この為、ロック状態となる際には上記各ばねの弾性力を確保して、上記ローラクラッチのロック不良を防止できる。
一方、上記A 点を低く設定して、上記各ばねが、使用時に於けるエンジンルーム内の温度上昇に基づき、A 点以上で使用される様にすれば、形状記憶合金の有する超弾性により、上記各ばねにへたりが生じる事を防止できる。この為、これら各ばねの弾性力を常に確保して、上記ローラクラッチのロック不良を防ぐ事ができる。この場合でも、不使用時の温度は、形状記憶効果が生じない温度として、仮にへたりが生じた場合でも、温度上昇時に、このへたりを修正する様にする。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1〜3は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、ローラクラッチ5にロック不良が生じない様に、このローラクラッチ5に組み込む各ばね11、11を形状記憶合金製とした点にある。その他の構造及び作用は、前述した通りなので、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。本例の場合、上記各ばね11、11は、形状記憶合金であるNi−Ti 合金により形成している。即ち、このNi−Ti 合金製の板材に曲げ加工を施して、図3に示す様な形状とする。そして、この形状で形状記憶処理を施す。これにより、上記各ばね11、11は、仮にへたりに基づいて塑性変形しても、形状記憶効果が生じる温度(A 点)以上になると、上記図3の形状に復元する。
【0018】
本例の場合、上記A 点は、上記ローラクラッチ5のオーバーラン時の温度上昇により、上記各ばね11、11の形状が形状記憶効果に基づいて復元するか、或は、これら各ばね11、11が、使用時に於けるエンジンルーム内の温度上昇により、常に、形状記憶効果が生じる温度(A 点)以上で使用される様に規制する。即ち、オーバーラン時には、内輪9の外周面に形成した円筒面15と各ローラ10、10の転動面との摩擦により、上記ローラクラッチ5内の温度が上昇する。従って、上記A 点を、オーバーラン時の発熱により上昇する温度以下にすれば、このオーバーラン時の温度上昇により、上記各ばね11、11の温度がA 点を越えて、これら各ローラ11、11の形状が形状記憶効果に基づいて復元する。これに対して、上記A 点を低く設定して、上記各ばね11、11が常にA 点以上で使用される様にした場合、上記ローラクラッチ5の使用中には、これら各ばね11、11が超弾性効果を有する。
【0019】
上述した様にA 点を規制する為には、上記Ni−Ti 合金の組成及び熱処理条件を適正に選択する。このA 点とNi−Ti 合金の組成及び熱処理条件との関係は、例えば非特許文献1に記載されて、従来から知られている。図4及び次述する表1は、上記非特許文献1に記載されているもので、このうちの図4は、Ni−Ti 合金の組成と変態温度(A 点)との関係を示している。同図の実線aは、このNi−Ti 合金を1000℃で焼入れした場合の関係を、破線bは、このNi−Ti 合金を480℃で熱処理を施した場合の関係をそれぞれ示している。又、次述する表1は、形状記憶効果を示す各種合金の組成と変態温度(M 点)との関係を示している。
【0020】
【表1】
Figure 2005003059
【0021】
又、上記非特許文献1に記載されている、図5は、Ni−Ti 合金の繰り返し引張試験のS−N線図を示している。実線イは、673Kから3600秒氷水中焼入れしたものを、破線ロは、1273Kから3600秒氷水中焼入れし、更に673Kから3600秒氷水中焼入れしたものを、それぞれ293Kで試験を行なった場合に就いて示している。このうちの実線イの直線部に基づき、繰り返し回数が10 回の繰り返し応力を予想すると、約20kgf /mm (≒196N/mm )となる。これは、図6に示す様に、SUS304(ステンレス鋼板)の曲げ試験の繰り返し回数が10 回の場合の繰り返し応力とほぼ同等の値である。尚、この図6は、非特許文献2に記載されている。
【0022】
上述の様に、形状記憶合金であるNi−Ti 合金は、破断に結び付く疲労強度に関して、ローラクラッチに組み込むばねとして通常使用されるSUS304と同程度の強度があると考えられる。この為、前記各ばね11、11を上記Ni−Ti 合金により形成した場合であっても、繰り返し応力に基づく破断に関して、従来構造と比べて耐久性の低下は殆どないと考えられる。尚、本例では、形状記憶合金としてNi−Ti 合金を使用しているが、Cu−Zn−Al合金を使用しても良い。又、上記表1に示した形状記憶効果を示す合金に就いても、条件を満たすものであれば使用可能である。更に、上記各ばね11、11の形状として、前述の図3に示した板ばねに限らず、コイルばね等のその他の形状のばねであっても良い。
【0023】
上述の様に構成する本例の場合、上記各ばね11、11のへたりによる弾性力の低下を防いで、上記ローラクラッチ5のロック不良を防ぐ事ができる。即ち、前記A 点を、上記ローラクラッチ5のオーバーラン時の温度上昇により、上記各ばね11、11の形状が形状記憶効果に基づいて復元する様に規制した場合、オーバーラン時の温度上昇により、これら各ばね11、11の形状が復元する。この為、これら各ばね11、11にへたりが生じていた場合でも、オーバーラン状態からロック状態となる際に、これら各ばね11、11のへたりが解消される。この為、ロック状態となる時にはこれら各ばね11、11の弾性力を確保して、上記ローラクラッチ5のロック不良を防止できる。
【0024】
これに対して、上記A 点を、上記各ばね11、11が、常に、形状記憶効果が生じる温度以上で使用される様に規制した場合、使用時には、これら各ローラ11、11が超弾性効果を有する為、これら各ばね11、11にへたりが生じる事を防止できる。この為、これら各ばね11、11の弾性力を常に確保して、上記ローラクラッチ5のロック不良を防ぐ事ができる。更に、不使用時の温度を上記A 点より低く設定すれば、仮にへたりが生じても、使用再開に伴う温度上昇時に、このへたりが修正される。
【0025】
上述の様な本例のローラクラッチ5を組み込んだローラクラッチ内蔵型プーリ装置は、例えばアイドリングストップ車用のスタータモータや、オルタネータ等に使用する。例えば、上記ローラクラッチ5を組み込んだローラクラッチ内蔵型プーリ装置1(図7参照)をアイドリングストップ車用のスタータモータに使用する場合、スリーブ3をスタータモータの回転軸の端部に固定すると共に、プーリ素子2と、エンジンのクランクシャフトの端部に固定した従動プーリとの間に無端ベルトを掛け渡す。そして、上記回転軸から上記プーリ素子2に向かう方向には回転力を伝達するが、逆方向には回転力を伝達しない。
【0026】
これに対して、オルタネータの場合、円筒面15とカム面13との径方向の配置を逆にした構造を有するローラクラッチを使用する。即ち、外輪8の内周面に円筒面15を、内輪9の外周面にカム面13をそれぞれ形成したローラクラッチを使用する。この様なローラクラッチを組み込んだローラクラッチ内蔵型プーリ装置1(図7参照)を、上記オルタネータに使用する場合、スリーブ3をこのオルタネータの回転軸の端部に固定すると共に、プーリ素子2と、エンジンのクランクシャフトの端部に固定した駆動プーリとの間に無端ベルトを掛け渡す。そして、上記プーリ素子2から上記回転軸に向かう方向には回転力を伝達するが、逆方向には回転力を伝達しない。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた様に構成され作用するので、ローラクラッチのロック不良が生じる事を防止して、ローラクラッチ及びローラクラッチ内蔵型プーリ装置を組み込んだ、アイドリングストップ車用のスタータモータや、オルタネータ等の各種装置の信頼性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例をロック状態で示す、図2のA部拡大断面図。
【図2】本発明の対象となるローラクラッチの1例を示す断面図。
【図3】同じくばねの1例を示す平面図。
【図4】Ni−Ti 合金の組成と変態温度との関係を示す線図。
【図5】Ni−Ti 合金に加える引っ張り応力と、破断に至る応力の繰り返し回数との関係を示す線図。
【図6】ステンレス鋼板に加える曲げ応力と、破断に至る応力の繰り返し回数との関係を示すグラフ。
【図7】従来から知られているローラクラッチ内蔵型プーリ装置の1例を示す断面図。
【符号の説明】
1 ローラクラッチ内蔵型プーリ装置
2 プーリ素子
3 スリーブ
4 玉軸受
5 ローラクラッチ
6 大径部
7 小径部
8 外輪
9 内輪
10 ローラ
11 ばね
12 保持器
13 カム面
14 凹部
15 円筒面
16 リム部
17 連結部
18 突片
19 支持板部
20 ポケット
21 基部
22 押圧片
23 円筒状空間

Claims (6)

  1. 外輪相当部材と、この外輪相当部材の内側にこの外輪相当部材と同心に配置された内輪相当部材と、これら外輪相当部材の内周面と内輪相当部材の外周面とのうちの一方の周面に形成された、円周方向に亙る凹凸であるカム面と、同じく他方の周面に形成された円筒面と、これらカム面と円筒面との間の円筒状空間内に設けられた複数本のローラと、このカム面を形成した部材に対する回転を不能として上記円筒状空間内に配置され、上記各ローラを転動並びに円周方向に関する若干の変位自在に保持する保持器と、この保持器の円周方向複数個所に設けられたばね係止部に係止され、上記各ローラを円周方向に関して同方向に押圧する複数のばねとを備えたローラクラッチに於いて、これら各ばねが形状記憶合金製である事を特徴とするローラクラッチ。
  2. 形状記憶合金がNi−Ti 合金である、請求項1に記載したローラクラッチ。
  3. 形状記憶合金がCu−Zn−Al合金である、請求項1に記載したローラクラッチ。
  4. オーバーラン時の温度上昇により、各ばねの形状が形状記憶効果に基づいて復元する、請求項1〜3に記載したローラクラッチ。
  5. 各ばねを構成する形状記憶合金の形状記憶効果が生じる温度以上で使用され、不使用時の温度は形状記憶効果が生じない温度である、請求項1〜3に記載したローラクラッチ。
  6. 回転軸の端部に固定する内径側部材と、この内径側部材の周囲にこの内径側部材と同心に配置され、外周面にベルトを掛け渡す為のベルト溝を設けた筒状の外径側部材と、これら内径側部材の外周面と外径側部材の内周面との間に設けられ、この外径側部材がこの内径側部材に対し所定方向に相対回転する傾向となる場合のみ、これら外径側部材と内径側部材との間での回転力の伝達を自在とするローラクラッチと、このローラクラッチに隣接する位置で上記内径側部材の外周面と上記外径側部材の内周面との間に設けられ、この外径側部材に加わるラジアル荷重を支承しつつこれら内径側部材と外径側部材との相対回転を自在とするサポート軸受とを備えたローラクラッチ内蔵型プーリ装置に於いて、上記ローラクラッチが、請求項1〜5の何れかに記載したローラクラッチである事を特徴とするローラクラッチ内蔵型プーリ装置。
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