JP2005002839A - エンジンのオイル通路構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メインギャラリ17からのオイルをオイル分配路19を経てクランク軸4の軸受部に供給し、軸受部に設けたオイル溝18,20内を流通させた後に、オイル供給路21及びオイル受取路を経てバランサ軸の軸受部に供給し、これらのオイル分配路19、オイル供給路21、オイル受取路を直列に配置する。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンのオイル通路構造に係り、詳しくはクランク軸の軸受部及びバランサ軸の軸受部にオイルを供給するためのオイル通路の構造に関するものである。
【0002】
【関連する背景技術】
運転中のエンジンの振動低減を目的として、クランク軸の回転に同期してバランサ軸を回転駆動して、ピストンやコンロッドの上下運動によって発生する起振力を相殺するようにした対策が実施されている。この種のバランサ軸の軸受部は、クランク軸の軸受部と同様にオイルによる潤滑を要することから、バランサ軸の軸受部の箇所にオイルを供給するための種々のオイル通路構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
当該特許文献1に記載されたエンジンは、シリンダブロックに対してベアリングキャップによりクランク軸を支持し、このクランク軸の回転に同期してシリンダブロック内に設けられた一対のバランサ軸を回転駆動している。シリンダブロック側に設けられたオイルポンプからのオイルは、一旦ベアリングキャップの下側に固定されたギャラリ部材に供給されて、ギャラリ部材内でクランク軸やバランサ軸毎に分配された後、それぞれ専用のオイル通路を経てクランク軸の軸受部及び両バランサ軸の軸受部に供給されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】
特公平6−72527号公報(第4図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたエンジンのオイル通路構造では、クランク軸やバランサ軸毎に個別にオイル通路を設けているため、シリンダブロック、ベアリングキャップ、ギャラリ部材のそれぞれに各オイル通路を併設する必要がある。よって、複雑なオイル通路を形成するためにこれらの部材の形状や構造が制約される上に、オイル通路の加工が煩雑化するという問題があった。
【0006】
しかも、このようにオイル通路を併設した場合、各オイル通路には対応する軸受部の潤滑に要する量のオイルをそれぞれ供給するため、結果として各軸受部のオイル要求量の総和以上のオイルを供給可能な容量がオイルポンプに求められ、ポンプ容量の増大に伴って製造コストが高騰するという問題もあった。
本発明の目的は、クランク軸及びバランサ軸の軸受部にオイルを供給するオイル通路を簡単な構成とすることで、オイル通路を設ける対象となる部材の形状や構造上の制約及びオイル通路の加工の煩雑化を抑制でき、しかも、各軸受部の全体としてのオイル要求量を低減して、オイルポンプの容量増大による製造コスト高騰を未然に防止することができるエンジンのオイル通路構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、円形状をなすベアリング保持部によりクランクベアリングを介してクランク軸のジャーナル部を回転可能に支持して軸受部を構成し、ベアリング保持部に内周に沿ってオイル溝を形成して、オイル溝内をクランクベアリングに形成したオイル孔を介してクランク軸のジャーナル部と連通させ、オイル溝を第1オイル通路を介してオイル供給源側と接続すると共に、オイル溝を第2オイル通路を介してバランサ軸の軸受部と接続したものである。
【0008】
従って、オイル供給源からのオイルは第1オイル通路を経てベアリング保持部のオイル溝内に供給され、オイル溝内からクランクベアリングのオイル孔を経てクランク軸の軸受部に供給されて潤滑に利用される一方、オイル溝内から第2オイル通路を経てバランサ軸の軸受部に供給されて潤滑に利用される。
そして、このようにオイル供給源からのオイルをクランク軸の軸受部を経てバランサ軸の軸受部に供給しているため、オイル供給源側とクランク軸の軸受部に設けたオイル溝との間、及びオイル溝とバランサ軸の軸受部との間にかけて第1オイル通路及び第2オイル通路を直列に設けるだけでよく、オイル通路の構成が簡単なものとなる。その結果、オイル通路を設ける対象となる部材の形状や構造を制約することなく、簡単な加工によりオイル通路を形成可能となる。
【0009】
又、オイル供給源から供給されたオイルの一部がクランク軸の軸受部で潤滑のために消費され、軸受部で消費されなかった残りのオイルがバランサ軸の軸受部に供給されて当該軸受部の潤滑に用いられる。つまり、クランク軸で消費されなかった余剰オイルをバランサ軸の潤滑に有効利用することから、両軸受部の全体としてのオイル要求量が低減される。
【0010】
一方、ベアリング保持部に内周に沿ってオイル溝が形成され、このオイル溝内を常にオイルが流通することから、クランクベアリングが裏面側より冷却されてクランク軸の軸受部の焼付きを抑制する。しかも、クランク軸の回転速度が上昇すると焼付きの可能性は高まるが、それに伴ってバランサ軸の回転速度も上昇してバランサ軸の軸受部でのオイル消費量が増加するため、オイル溝内でのオイル流通量の増加によりクランクベアリングの冷却がより促進され、その結果、高回転域でもクランク軸の焼付きが確実に抑制される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、クランク軸の下方にバランサ軸を配設し、クランク軸の軸受部におけるオイル溝の上部に第1オイル通路を接続すると共に、オイル溝の下部に第2オイル通路を接続したものである。
従って、オイル供給源からのオイルは第1オイル通路を経てオイル溝の上部に供給され、オイル溝内において上部で左右2方向に分流した後に下部で合流し、オイル溝の下部から第2オイル通路を経て下方に位置するバランサ軸の軸受部に供給される。その結果、重力に逆らうことなく上方から下方へとオイルを効率良く案内しながら、オイル溝にオイルを流通させてクランクベアリングを良好に冷却可能となる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2において、オイル溝の上部で、且つ、クランク軸の回転によりくさび油膜圧力が発生する側に偏った位置に第1オイル通路を接続したものである。
クランク軸のジャーナル部はクランクベアリング内で油膜により保持され、この油膜により軸受部が潤滑される。このときのジャーナル部は、ピストンが受ける燃焼圧力やクランク軸自体の重量等の影響でクランクベアリング内の下方に位置しており、ジャーナル部の直下付近の油膜が最も薄いことから、クランク軸の回転に伴って油膜はジャーナル部の直下に引き込まれながら所謂くさび油膜圧力を発生して温度上昇する。
【0013】
ここで、くさび油膜圧力が発生する側に偏った位置で第1オイル通路がオイル溝の上部に接続されているため、第1オイル通路からオイル溝の上部に供給されたオイルは、くさび油膜圧力が発生する側により多量に分流されてクランクベアリングの冷却を促進し、くさび油膜圧力による温度上昇が抑制される。つまり、焼付きの可能性が高い側の冷却を特に促進することで、オイル溝内を流通する限られたオイルを有効に利用して最大限の焼付き抑制の効果が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化したエンジンのオイル通路構造の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のオイル通路構造が適用されたエンジンを示す断面図、図2は同じくエンジンを示す側断面図、図3は同じくエンジンを示す底面図、図4はクランク軸の軸受部を示す部分拡大断面図、図5はシリンダブロック側のオイル溝を示す図4のV−V線断面図、図6はベアリングキャップ側のオイル溝を示す図4のVI−VI線断面図である。
【0015】
エンジン1は直列3気筒ガソリンエンジンとして構成され、図1に示すように傾斜状態で車両に搭載されている。エンジン1のシリンダブロック2には図2,3の右方より#1、#2、#3の各気筒の順にシリンダ3が形成され、シリンダブロック2の左側(後方)には図示しない変速機が接続されている。シリンダブロック2内にはシリンダ3の列設方向に沿って4箇所に断面半円状をなすベアリング保持部2aが形成され、これらのベアリング保持部2aと対応するようにシリンダ3の列設方向に沿ってクランク軸4(図2に先端のみを示す)が配設されている。
【0016】
図4に示すように、シリンダブロック2の各ベアリング保持部2aにはそれぞれベアリングキャップ5が配設され、各ベアリングキャップ5はボルト6によりシリンダブロック2に固定されている。これらのベアリングキャップ5に形成された断面半円状のベアリング保持部5aはシリンダブロック2側のベアリング保持部2aと対応し、両ベアリング保持部2a,5aの内周には断面半円状のクランクベアリング2b,5bがそれぞれ嵌め込まれている。クランクベアリング2b,5bの内周にはクランク軸4のジャーナル部4aが配設され、ジャーナル部4aはクランクベアリング2b,5bを介して両ベアリング保持部2a,5aにより回転可能に支持されている。
【0017】
シリンダブロック2の下側には図示しないボルトによりオイルパン7が固定され、このオイルパン7によりシリンダブロック2の下側が閉鎖されている。オイルパン7内において、シリンダブロック2の下面の周囲4箇所にはねじ孔8が形成される一方、各ベアリングキャップ5の下面にはそれぞれ雌ねじボス9及び供給側ボス10が隣接して突設されている。
【0018】
上記ねじ孔8及び各雌ねじボス9に形成されたねじ孔9aを用いて、オイルパン7内のシリンダブロック2の下側にはバランサハウジング11がボルト12(図1に示す)により固定されており、上記各ベアリングキャップ5の雌ねじボス9及び供給側ボス10の下面10aには、バランサハウジング11上に形成された受取側ボス13の上面13aが当接している。
【0019】
図2に示すように、#1気筒の前側のベアリングキャップ5、及び#2気筒と#3気筒との間のベアリングキャップ5と略対応するように、バランサハウジング11内の前後2箇所には断面円状の軸受孔11aが形成されている。バランサハウジング11内には偏心位置に複数のウエイト14aを備えたバランサ軸14が上記クランク軸4と平行に配設され、バランサ軸14の前後2箇所のジャーナル部14bは軸受孔11aによりそれぞれ回転可能に支持されている。
【0020】
クランク軸4の先端には駆動ギア15が装着され、この駆動ギア15はバランサ軸14の先端に装着された被動ギア16と噛合している。クランク軸4の回転に同期してバランサ軸14は逆方向に回転され、これにより各気筒のピストンやコンロッドの上下運動によって発生する起振力が相殺される。
一方、図1,2に示すように、シリンダブロック2内の一側にはクランク軸4と平行にオイル供給用のメインギャラリ17が形成され、エンジン1の運転中には図示しないオイルポンプ(オイル供給源)からのオイルがメインギャラリ17内に供給される。シリンダブロック2の各ベアリング保持部2aには半円状の内周に沿って上部オイル溝18が形成され、各上部オイル溝18内はオイル分配路19(第1オイル通路)を介して上記メインギャラリ17とそれぞれ連通する一方、上記クランクベアリング2bに形成された図示しないオイル孔を介してクランク軸4のジャーナル部4aと連通している。
【0021】
図2,4〜6に示すように、#1気筒の前側のベアリングキャップ5、及び#2気筒と#3気筒との間のベアリングキャップ5のベアリング保持部5aには、半円状の内周に沿って下部オイル溝20が形成され、これらの下部オイル溝20はシリンダブロック2側の上部オイル溝18と連続して環状をなし、クランクベアリング2b,5bの全周を取り囲んでいる。それぞれの下部オイル溝20の一側にはオイル供給路21(第2オイル通路)の一端が接続され、オイル供給路21の他端は上記供給側ボス10の下面10aに開口している。
【0022】
尚、本実施形態ではベアリングキャップ5の共用化のために、下部オイル溝20及びオイル供給路21を形成しない側の2つのベアリングキャップ5にも供給側ボス10を設けたが、これらのベアリングキャップ5については供給側ボス10を省略してもよい。
ここで、図4に示すようにエンジン1のシリンダ軸線Lを基準として、オイル溝18,20に対するオイル分配路19及びオイル供給路21の接続位置を詳述すると、オイル供給路21がシリンダ軸線Lと一致する下部オイル溝20の直下で接続されるのに対し、オイル分配路19は、右側に偏って配置されたメインギャラリ17と対応するように、シリンダ軸線Lと一致する上部オイル溝18の直上より若干右方に偏った位置で接続されている。そして、このオイル分配路19の接続位置の右方への偏りは、後述するように時計回りのクランク軸4の回転に伴ってくさび油膜圧力が発生する側と一致している。
【0023】
一方、供給側ボス10のオイル供給路21の開口部と対応するように、バランサハウジング11側の受取側ボス13の上面13aにはオイル受取路22(第2オイル通路)の一端が開口し、各オイル受取路22の他端はバランサハウジング11の前後の軸受孔11a内にそれぞれ開口している。
尚、詳細は説明しないが、オイル供給路21とオイル受取路22との結合箇所にはシール性を確保するための対策が施されている。
【0024】
次に,以上のように構成されたエンジン1のオイル通路構造においてクランク軸4の軸受部及びバランサ軸14の軸受部へのオイルの供給状態を説明する。
オイルポンプからのオイルはメインギャラリ17から各オイル分配路19を経て対応する上部オイル溝18内に供給され、更にクランクベアリング2bのオイル孔を経てクランク軸4の軸受部に供給され、ジャーナル部4aとクランクベアリング2b,5bとの間で潤滑作用を奏する。
【0025】
一方、#1気筒の前側、及び#2気筒と#3気筒との間のベアリングキャップ5では、オイル分配路19から供給されたオイルが上部オイル溝18の上部で左右2方向に分流し、その後に下部オイル溝20の下部で合流する2系統の流れを形成しており、この流れに従って上記のようにクランク軸4の軸受部にオイルが供給される一方、クランク軸4の軸受部で消費されなかった残りのオイルが下部オイル溝20の下部からオイル供給路21側に案内される。
【0026】
そして、オイル供給路21及びオイル受取路22を経てオイルは下方に位置するバランサ軸14の軸受部に供給され、ジャーナル部14bとバランサハウジング11の軸受孔11aとの間で潤滑作用を奏する。
このように本実施形態のエンジン1のオイル通路構造では、メインギャラリ17からのオイルをクランク軸4の軸受部を経てバランサ軸14の軸受部に供給しているため、オイル分配路19、オイル供給路21、オイル受取路22を直列に設けるだけでよく、オイル通路の構成が非常に簡単なものとなる。詳述すると、先行技術として説明した特許文献1のように、クランク軸4及びバランサ軸14の軸受部毎に個別にオイル通路を設けた場合には、双方のオイル通路をシリンダブロック2に重複して設ける必要が生じる上に、バランサ軸14側のオイル通路はクランク軸4の軸受部を迂回するように屈曲した形状となるため、結果としてオイル通路が複雑化してしまう。
【0027】
これに対して本実施形態では、重複する無駄なオイル通路を必要としない上に、メインギャラリ17、クランク軸4の軸受部、バランサ軸14の軸受部を接続する単純な直線状のオイル通路19,21,22を形成するだけでよい。その結果、シリンダブロック2、ベアリングキャップ5、バランサハウジング11の各部材の形状や構造を制約することなく、且つ、簡単な加工によりオイル通路19,21,22を形成することができる。
【0028】
又、上記のようにメインギャラリ17から供給されたオイルの一部がクランク軸4の軸受部で潤滑のために消費され、軸受部で消費されなかった残りのオイルがバランサ軸14の軸受部に供給されて当該軸受部の潤滑に用いられる。つまり、クランク軸4で消費されなかった余剰オイルをバランサ軸14の潤滑に有効利用することから、両軸受部の全体としてのオイル要求量を低減できる。よって、オイルポンプの容量を増大する必要がなくなり、ポンプ容量の増大による製造コスト高騰を未然に防止することができる。
【0029】
一方、上部オイル溝18及び下部オイル溝20内を流通するオイルは、クランクベアリング2b,5bを裏面側より冷却して温度を低下させる作用を奏するため、クランク軸4の焼付きを抑制する効果も得られる。しかも、クランク軸4の回転速度が上昇すると、油膜を維持し難くなって焼付きの可能性が高まるが、それに伴ってバランサ軸14の回転速度も上昇してバランサ軸14の軸受部でのオイル消費量が増加するため、オイル溝18,20内でのオイル流通量の増加によりクランクベアリング2b,5bの冷却がより促進される。その結果、高回転域でもクランク軸4の焼付きを確実に抑制することができる。
【0030】
加えて、上部オイル溝18の上部でオイルを分流させて下部オイル溝20の下部で合流させているため、重力に逆らうことなく上方から下方へとオイルを効率良く案内しながら、オイル溝18,20の全周にオイルを流通させてクランクベアリング2b,5bを良好に冷却でき、もって、クランク軸4の焼付きを一層確実に抑制することができる。
【0031】
一方、上記のように上部オイル溝18,20の上部に対してオイル分配路19を右方に偏った位置で接続しており、この構成もクランク軸4の焼付き抑制に貢献し、以下、その作用を詳述する。
クランク軸4のジャーナル部4aはクランクベアリング2b,5b内で油膜により保持され、この油膜により軸受部が潤滑されている。このときのジャーナル部4aは、ピストンが受ける燃焼圧力やクランク軸自体の重量等の影響でクランクベアリング2b,5b内の下方に位置しており、ジャーナル部4aの直下付近の油膜が最も薄いことから、クランク軸4の回転に伴って油膜はジャーナル部4aの直下に引き込まれながら所謂くさび油膜圧力を発生して温度上昇する。
【0032】
図7はクランク軸4のくさび油膜圧力の発生状況とオイル溝18,20内でのオイルの分流状況を示す模式図であり、前側より見てクランク軸4が時計回りに回転していることから、矢印で示すようにくさび油膜圧力は主にシリンダ軸線Lより右側で発生しており、この側で顕著な温度上昇が生じて焼付きの可能性が高まっていることが推測できる。
【0033】
ここで、オイル分配路19が上部オイル溝18の直上(シリンダ軸線L上)より若干右方に偏った位置で接続されているため、下部オイル溝20の直下(同じくシリンダ軸線L上)との間の経路長は左側に比較して右側の方が短くなり、白抜きの矢印で示すようにオイル分配路19から供給されたオイルは左側より右側に多量に分流される。その結果、多量のオイルにより主にシリンダ軸線Lより右側においてクランクベアリング5bの冷却が促進されて、くさび油膜圧力による温度上昇が抑制される。つまり、焼付きの可能性が高いシリンダ軸線Lより右側の冷却を特に促進することで、オイル溝18,20内を流通する限られたオイルを有効に利用して最大限の焼付き抑制の効果を得ることができる。
【0034】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、直列3気筒ガソリンエンジン1のオイル通路構造として具体化したが、クランク軸により同期して回転駆動されるバランサ軸を備えたエンジンであれば、その種別や形式はこれに限ることはなく、例えばディーゼルエンジンに適用したり、気筒数や気筒配列を変更したりしてもよい。
【0035】
又、上記実施形態では、メインギャラリ17をシリンダブロック2のクランク軸4より上方に配設する一方、バランサ軸14をクランク軸4より下方のオイルパン7内に配設したが、各部材のレイアウトはこれに限定されることはなく、例えばメインギャラリ17とバランサ軸14の位置を逆転させて、オイルパン7内に設けたメインギャラリ17からクランク軸4の軸受部を経てシリンダブロック2側に設けたバランサ軸14の軸受部にオイルを供給するように構成してもよい。
【0036】
更に、上記実施形態では、くさび油膜圧力が主にシリンダ軸線Lより右側で発生することを鑑みて、上部オイル溝18に対するオイル分配路19の接続位置を右方に偏らせたが、当然ながらクランク軸4の回転方向が逆の場合には、左側で発生するくさび油膜圧力に合わせてオイル分配路19の接続位置を左方に偏らせればよい。又、オイル分配路19の接続位置を偏らせる代わりに、オイル溝18,20の左右の断面積を相違させたり、オイル溝18,20内の左右何れかにオイルの流通を制限する障害物を設けたりしてもよい。
【0037】
一方、上記実施形態では、#1気筒の前側のベアリングキャップ5、及び#2気筒と#3気筒との間のベアリングキャップ5のベアリング保持部5aのみに下部オイル溝20を形成し、下方のバランサ軸14の軸受部を利用して内部にオイルを流通させたが、全てのベアリングキャップ5に下部オイル溝20を形成してオイルを流通させるようにしてもよい。
【0038】
具体的には、#1気筒と#2気筒との間のベアリングキャップ5、及び#3気筒の後側のベアリングキャップ5の箇所にも、クランクベアリング2b,5bの全周を取り囲むように上部オイル溝18及び下部オイル溝20を形成する。そして、#1気筒と#2気筒との間のベアリングキャップ5の下部オイル溝20を、管路により#1気筒の前側のオイル供給路21と接続し、#3気筒の後側のベアリングキャップ5の下部オイル溝20を、管路により#2気筒と#3気筒との間のオイル供給路21と接続する。その結果、全てのベアリングキャップ5においてオイル溝18,20内をオイルが流通し、もって、クランク軸4の全軸受部で焼付きを抑制することができる。
【0039】
又、#1気筒と#2気筒との間のベアリングキャップ5、及び#3気筒の後側のベアリングキャップ5の下部オイル溝20については、上記のようにバランサ軸14の軸受部と接続することなく、オリフィスを介して内部のオイルが排出されるように構成してもよく、この場合でもオイル溝18,20内にオイルを流通できる。更に、口径を可変可能なオリフィスを用いて、エンジン回転速度の増加に伴ってオリフィスの口径を拡大側に制御すれば、オイル溝18,20内でのオイル流通量が増加するため、上記バランサ軸14の回転変化と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明のエンジンのオイル通路構造によれば、クランク軸及びバランサ軸の軸受部にオイルを供給するオイル通路を簡単な構成とすることで、オイル通路を設ける対象となる部材の形状や構造上の制約及びオイル通路の加工の煩雑化を抑制でき、しかも、各軸受部の全体としてのオイル要求量を低減して、オイル供給源の容量増大による製造コスト高騰を未然に防止することができる。
【0041】
請求項2の発明のエンジンのオイル通路構造によれば、請求項1に加えて、上方から下方へとオイルを効率良く案内しながらオイル溝に流通させてクランクベアリングを良好に冷却でき、もって、クランク軸の焼付きを一層確実に抑制することができる。
請求項3の発明のエンジンのオイル通路構造によれば、請求項2に加えて、くさび油膜圧力により焼付きの可能性が高い側により多量のオイルを供給して冷却を促進し、もって、オイル溝内を流通する限られたオイルを有効に利用して最大限の焼付き抑制の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のオイル通路構造が適用されたエンジンを示す断面図である。
【図2】同じくエンジンを示す側断面図である。
【図3】同じくエンジンを示す底面図である。
【図4】クランク軸の軸受部を示す部分拡大断面図である。
【図5】シリンダブロック側のオイル溝を示す図4のV−V線断面図である。
【図6】ベアリングキャップ側のオイル溝を示す図4のVI−VI線断面図である。
【図7】クランク軸のくさび油膜圧力の発生状況とオイル溝内でのオイルの分流状況を示す模式図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2a,5a ベアリング保持部
2b,5b クランクベアリング
4 クランク軸
4a ジャーナル部
14 バランサ軸
18 上部オイル溝
19 オイル分配路(第1オイル通路)
20 下部オイル溝
21 オイル供給路(第2オイル通路)
22 オイル受取路(第2オイル通路)
Claims (3)
- クランク軸に対して平行にバランサ軸を配設し、該バランサ軸をクランク軸により同期して回転駆動すると共に、上記クランク軸の軸受部及び上記バランサ軸の軸受部にオイル供給源からオイルを供給するエンジンにおいて、円形状をなすベアリング保持部によりクランクベアリングを介して上記クランク軸のジャーナル部を回転可能に支持して上記軸受部を構成し、上記ベアリング保持部に内周に沿ってオイル溝を形成して、該オイル溝内を上記クランクベアリングに形成したオイル孔を介して上記クランク軸のジャーナル部と連通させ、該オイル溝を第1オイル通路を介して上記オイル供給源側と接続すると共に、該オイル溝を第2オイル通路を介して上記バランサ軸の軸受部と接続したことを特徴とするエンジンのオイル通路構造。
- 上記クランク軸の下方に上記バランサ軸を配設し、該クランク軸の軸受部における上記オイル溝の上部に上記第1オイル通路を接続すると共に、該オイル溝の下部に上記第2オイル通路を接続したことを特徴とする請求項1記載のエンジンのオイル通路構造。
- 上記オイル溝の上部で、且つ、上記クランク軸の回転によりくさび油膜圧力が発生する側に偏った位置に上記第1オイル通路を接続したことを特徴とする請求項2記載のエンジンのオイル通路構造。
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