JP2005002264A - シリコーン含有抗菌性樹脂 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリオルガノシロキサン基が分子中に導入されたアミノ基含有抗菌性ポリマー(例えばε−ポリリジン)とアミノ基と反応しうる官能基を持つ合成樹脂とを反応させて得られるシリコーン含有抗菌性樹脂である。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌剤が分子中に導入された合成樹脂に関する。更に詳しくは、ポリオルガノシロキサン基が分子中に導入されたアミノ基含有抗菌性ポリマー(以下、このポリマーをシリコーン変性された抗菌性ポリマーと略称する)が分子中に導入された合成樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
我々の生活空間には、様々な細菌やカビが存在している。これらの微生物は、しばしば食物を腐敗させたり、悪臭発生の原因となったりして我々に不快感を与える。また、人体に対して、食中毒を初めとする様々な疾病や白癬等の皮膚障害を引き起こす原因となったり、時としては抵抗力の弱い乳幼児や高齢者の生命を奪うことさえある。衛生的で快適な生活を送るために微生物増殖抑制は重要な課題であり、我々の身の回りの様々な医療用品、生活用品、衣料品等で抗菌機能の付加が望まれている。
【0003】
また、医療用品、生活用品、医療品等の材料には、軽くて強く、そして目的に合わせて自由に成形できる合成樹脂が好んで使用されている。しかしながら、ほとんどの合成樹脂は、それ単独では抗菌機能を有さないものである。このため、合成樹脂成形品に抗菌機能を付与させるために、種々の抗菌剤を添加し、抗菌効果を付与している。
合成樹脂等に抗菌性を付与させる方法として、合成樹脂に対し、銀、銅、亜鉛等の金属を含む化合物を添加する方法(特許文献1参照)、合成樹脂に対し、銀イオン、銅イオンでイオン交換したゼオライト系の固体粒子を添加する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、該合成樹脂成形品は、使用する用途によっては人体、特に皮膚の弱い乳幼児やアレルギー体質の人々に対して皮膚障害を起こす原因となる。
【0005】
これに対し、人体への安全性の高い天然物由来の抗菌性化合物を合成樹脂に添加する方法がある。これらの天然物由来の抗菌性化合物としては、カラシやワサビから抽出されるイソチオシアン酸アリル、鮭、鱒等の成熟精巣から抽出されるプロタミン、甲殻類から抽出されるキチンを脱アセチル化して得られるキトサンおよびストレプトマイセス属に属する微生物から得られるε−ポリリジン等を挙げることができる。
【0006】
しかし、これら天然物由来の抗菌性化合物は、安全性は高いものの、イソチオシアン酸アリルは熱により揮発しやすく、合成樹脂成形品の成形時に揮発してしまうため、抗菌性合成樹脂成形品に十分な抗菌性能を付与させるには多量に用いなければならず、また、プロタミンは蛋白質であるため熱に弱く、合成樹脂の加工温度に耐えることができない。また、キトサンは、溶剤に対する溶解性が乏しいため、そのままでは合成樹脂等に使用することは困難である。
【0007】
しかし、これら方法は、いずれも樹脂に抗菌剤をブレンドする技術である。抗菌剤を樹脂にブレンドして抗菌性を付与する場合、ブレンドした抗菌剤が徐々に溶出し抗菌性を付与しているが、樹脂表面に滲みが発生したり、あるいは長期間抗菌性を付与させるためには、樹脂中に多量の抗菌剤を添加しなければならず、これによりコストアップを招き、また、抗菌剤を徐放させる技術も必要となる。
また、シリコーンは、各種有機樹脂例えば熱可塑性樹脂にブレンドまたは該有機樹脂と共重合することにより、シリコーンの特性である耐候性、表面撥水性、潤滑性、低磨耗性、生体適合性、抗血栓性、ガス透過性等を付与できるため、有機樹脂の改質剤として有効であり、塗料、接着剤、コーティング剤、繊維処理剤、無機材料の表面改質剤、トイレタリー用品、化粧品等への利用が知られている。
【0008】
しかしながら、殆どのシリコーンには、抗菌性はなく、各種有機樹脂に、シリコーンの特性と抗菌性を持たすためには、シリコーンと抗菌剤をそれぞれ添加する必要があった。これまで、合成樹脂にシリコーンを固定化し、ブリードアウトを防ぐ方法は、多く報告されているが、合成樹脂にシリコーンと抗菌剤を同時に固定化する方法は、これまで報告されていない。
そこで、合成樹脂中に天然物由来の抗菌性化合物を固定化し、同時にシリコーンの特性を付与することが望まれてきた。
【0009】
【特許文献1】
特開昭54−147220号公報
【特許文献2】
特開昭59−133235号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは従来技術が有する上述の課題に鑑み鋭意研究を重ねた。その結果、特定のアミノ基含有抗菌性ポリマーにシロキサン基を導入することにより得られるポリマーを導入された合成樹脂は抗菌活性と撥水性があることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下に示される構成よりなる。
(1) ポリオルガノシロキサン基が分子中に導入されたアミノ基含有抗菌性ポリマー(以下、このポリマーをシリコーン変性された抗菌性ポリマーと略称する)とアミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂とを反応させて得られるポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜500,000であるシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0012】
(2) シリコーン変性された抗菌性ポリマーが、アミノ基含有抗菌性ポリマーと、下記一般式(1)で表されるアミノ基と反応しうる官能基を持つポリオルガノシロキサンとを、反応させて得られるポリマーである(1)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0013】
【化8】
(1)
式(1)中、R1は炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、aは0〜1000、bは0〜1000の整数であり、a+bは1〜1000の整数であり、A1、A2、A3は下記一般式(2)で表される基または炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、A1、A2、A3のうち少なくとも1つが一般式(2)で表される基であり、
【0014】
【化9】
−Y−Z (2)
式(2)中、Yは、炭素数1〜1000のアルキレンを表し、基中の相隣接しない任意のメチレンは−O−で置換されてもよく、Zは、
【0015】
【化10】
の何れかであり、ここで、R2は炭素数1〜5のアルキレン、炭素数2〜5のアルケニレンまたは炭素数6〜10のアリーレンであり、R3は炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数6〜10のアリール若しくはトリメチルシリルであり、Xは塩素、臭素若しくはヨウ素原子である。
【0016】
(3) ポリオルガノシロキサン基が分子中に導入される前のアミノ基含有抗菌性ポリマーが、ε−ポリリジンである(2)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0017】
(4) 一般式(2)においてZが、
【化11】
で表される基の何れかである(2)又は(3)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0018】
(5) 一般式(2)中のZが、
【化12】
で表される基の何れかである(2)又は(3)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。ここで、R2は炭素数1〜5のアルキレン、炭素数2〜5のアルケニレンまたは炭素数6〜10のアリーレンである。
【0019】
(6) 一般式(2)においてZが、
【化13】
で表される基の何れかである(2)又は(3)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。ここで、R2は炭素数1〜5のアルキレン、炭素数2〜5のアルケニレンまたは炭素数6〜10のアリーレンであり、R3は炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数6〜10のアリール若しくはトリメチルシリルであり、Xは塩素、臭素若しくはヨウ素原子である。
【0020】
(7) 一般式(2)においてZが、塩素、臭素若しくはヨウ素原子である(2)又は(3)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0021】
(8) 一般式(2)においてZが、
【化14】
で表される基の何れかである(2)又は(3)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0022】
(9) アミノ基と反応し得る官能基が、エポキシ、カルボキシル、カルボン酸エステル、ハロゲン化カルボン酸、カルボン酸無水物、ハロゲン化アルキルまたは不飽和基である(1)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0023】
(10) アミノ基と反応し得る官能基が、エポキシ、塩化カルボン酸またはカルボン酸無水物である(9)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0024】
(11) アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がビニル系重合体である(1)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0025】
(12) アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がポリオレフィン系樹脂である(1)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0026】
(13) アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がシリコーン系樹脂である(1)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0027】
(14) アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がアクリル系樹脂である(1)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0028】
(15) アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がエポキシ樹脂である(1)項記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明におけるアミノ基含有抗菌性ポリマーとは、ポリマー分子中にアミノ基を含有し、且つ抗菌活性を示す化合物のことであり、天然物由来の化合物でも合成的に製造されたものでも良い。具体的には、α−ポリリジン、ε−ポリリジン、キトサン、プロタミン、ラクトフェリン等が挙げられる。これらのうち好ましくは天然物由来の化合物であるε−ポリリジン、キトサン、プロタミンが挙げられ、より好ましくは、熱的に安定であり、溶剤に対しても比較的に溶解しやすいε−ポリリジンが最も好ましい。
【0030】
ε−ポリリジンは、例えば、具体的には、特許第1245361号公報に記載のストレプトマイセス・アルプラス・サブスピーシーズ・リジノポリメラスを、その組成が、グルコース5重量%、酵母エキス0.5重量%、硫酸アンモニウム1重量%、リン酸水素二カリウム0.08重量%、リン酸二水素カリウム0.136重量%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05重量%、硫酸亜鉛・7水和物0.004重量%、および硫酸鉄・7水和物0.03重量%であり、pHが6.8に調整された培地にて培養し、得られた培養物からε−ポリリジンを分離・採取することによって得られる。またはそれを酸、アルカリまたは酵素により適当な分子量に分解したε−ポリリジンなども挙げられる。
【0031】
また、アミノ基と反応しうる官能基を持つポリオルガノシロキサンとしては、エポキシ基を持つポリオルガノシロキサン、カルボン酸またはカルボン酸誘導体を官能基に持つポリオルガノシロキサン、ハロゲン化アルキル基を持つポリオルガノシロキサンおよび不飽和基を持つポリオルガノシロキサンを挙げることができる。本発明において、アミノ基と反応しうる官能基を持つポリオルガノシロキサンとしては、エポキシ基を持つポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0032】
前記一般式(1)において、R1は炭素数1〜20のアルキルであり、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル及びフェネチルなどを挙げることができ、炭素数6〜10のアリールとしては、フェニル、トルイル、キシリル及びエチルフェニルなどを挙げることができる。
【0033】
また、上記一般式(1)において、aは0〜1000の整数であり、上記一般式(1)において、bは0〜1000、a+bは1〜1000の整数である。また、A1、A2、A3は上記一般式(2)で表される基または炭素数1〜20のアルキルであり、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル及びフェネチルなどを挙げることができ、炭素数6〜10のアリールとしては、フェニル、トルイル、キシリル及びエチルフェニルなどを挙げることができる。また、A1、A2、A3のうち必ず1つ以上が一般式(2)で表される基である。
【0034】
上記一般式(2)において、Yは炭素数1〜1000のアルキレン基を表し、この基中の相隣接しない任意のメチレン基は−O−で置換されてもよい。具体例として、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、テトラデカメチレン、2−メチルエチレン、2−メチルトリメチレン、2−メチルテトラメチレン、2−メチルペンタメチレン、2−メチルヘキサメチレン、2−メチルヘプタメチレン、2−メチルオクタメチレン、2−メチルノナメチレン、2−メチルデカメチレン、2−メチルウンデカメチレン、−CH2CH2CH2O−、−CH2CH2CH2OCH2CH2O−、−CH2CH2CH2OCH2−、または−CH2CH2CH2O(CH2CH2O)m−、−CH2CH2CH2O(CH2CH(CH3)O)m−、−CH2CH2CH2O(CH(CH3)CH2O)m−(mは1以上の整数である)などが挙げられる。
【0035】
本発明において、Yは特に限定されるものではないが、前述の基のうちトリメチレン、デカメチレン、2−メチルエチレン、−CH2CH2CH2O−、−CH2CH2CH2OCH2CH2O−、−CH2CH2CH2OCH2−、−CH2CH2CH2O(CH2CH2O)m−(mは1以上の整数である)であることが好ましい。
【0036】
上記一般式(2)において、Zは
【0037】
【化15】
で表される基である。
【0038】
ここで、R2は炭素数1〜5のアルキレン、炭素数2〜5のアルケニレンまたは炭素数6〜10のアリーレンであり、R3は炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数6〜10のアリール若しくはトリメチルシリルであり、Xは塩素、臭素、ヨウ素原子である。
【0039】
より詳しくは、R2において、炭素数1〜5のアルキレンとしては、−CH2CH2−、−CH2−CH(−CH3)−、−CH2CH(−C2H5)−、−CH(−CH3)−CH(−CH3)−などの直鎖状若しくは分岐状のアルキレンが挙げられ、炭素数2〜5のアルケニレンとしては、−CH=CH−、−CH2−C(=CH2)−、−CH=C(−CH3)−、−C(CH3)=C(−CH3)−などの直鎖状若しくは分岐状のアルケニレンが挙げられる。
【0040】
また、炭素数6〜10のアリーレンとしては、1,2−フェニレン、4−メチル−1,2−フェニレン、ジメチル−1,2−フェニレン、4−エチル−1,2−フェニレンなどが挙げられる。本発明において上記R2は特に限定されるものではないが、−CH2CH2−、−CH=CH−、−CH2−C(=CH2)−、−CH=C(−CH3)−、1,2−フェニレンであることが好ましい。
【0041】
R3は、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数6〜10のアリール若しくはトリメチルシリルであるが、炭素数1〜20のアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、及びフェネチルなどを挙げることができ、また、炭素数6〜10のアリールとしては、フェニル、トルイル、キシリル、およびエチルフェニルなどを挙げることができる。
Xは塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子である。
【0042】
アミノ基と反応しうる官能基を持つポリオルガノシロキサンとしては、官能基を片末端に有する片末端変性ポリオルガノシロキサン、官能基を両末端に有する両末端変性ポリオルガノシロキサン、官能基を側鎖に有する側鎖変性ポリオルガノシロキサンを挙げることができる。本発明において、何れのポリオルガノシロキサンも使用することができるが、両末端変性ポリオルガノシロキサン及び官能基を複数持つ側鎖変性ポリオルガノシロキサンの使用は、単一分子内に官能基が複数存在するため、反応により得られたシリコーン変性された抗菌性ポリマーが、ゲル化する可能性がある。従って、片末端変性ポリオルガノシロキサンまたは、官能基を一つ持つ側鎖変性ポリオルガノシロキサンの使用が好ましい。
【0043】
本発明のアミノ基含有抗菌性ポリマーとアミノ基と反応しうる官能基をもつポリオルガノシロキサンとを反応させて得られるシリコーン変性された抗菌性ポリマーは、アミノ基含有抗菌性ポリマーと上記一般式(1)で表されるアミノ基と反応しうる官能基を有するポリオルガノシロキサンとを溶剤中で反応させて得られるものである。本反応では、アミノ基含有抗菌性ポリマー中のアミノ基と等モルのアミノ基と反応しうる官能基を有するポリオルガノシロキサンを反応させることができるが、抗菌性を持たすため、且つ続いて行う合成樹脂との反応のためには、ある程度アミノ基を残す必要がある。従って、本反応後におけるアミノ基数の残存率として、好ましくは10〜99%、より好ましくは50〜99%にするのが良い。
【0044】
アミノ基含有抗菌性ポリマーとアミノ基と反応しうる官能基をもつポリオルガノシロキサンとを反応させて得られるシリコーン変性された抗菌性ポリマー中のポリオルガノシロキサン含有量は、アミノ基含有抗菌性ポリマーに対するアミノ基と反応しうる官能基を有するポリオルガノシロキサンの仕込比及び該ポリオルガノシロキサンの分子量で制御することができる。ポリオルガノシロキサン含量は1〜99重量%であり、好ましくは10〜90重量%である。ポリオルガノシロキサン含量が1%未満であるとポリオルガノシロキサンを導入した効果、即ち溶剤に対する溶解性の改善、撥水性の改善等の効果が減少し、逆に99重量%を超えると抗菌性が低下するからである。
【0045】
反応に使用する溶剤は、アミノ基含有抗菌性ポリマーが溶解する溶剤であれば特に限定されないが、例えば、メタノール、水−メタノール混合溶剤、水−エタノール混合溶剤、水−ジメチルホルムアミド混合溶剤、メタノール−2−プロパノール混合溶剤、メタノール−エタノール混合溶剤等が挙げられる。反応溶剤の使用量は、アミノ基含有抗菌性ポリマーの重量に対して1〜100倍量、好ましくは1〜10倍量である。反応温度は、特に高温で行う必要はなく、室温でも進行すると思われるが、温度が低いほど反応時間が長くなるため、好ましくは、30〜70℃である。
【0046】
反応は、アミノ基含有抗菌性ポリマーを溶剤に溶解後、アミノ基と反応しうる官能基を持つポリオルガノシロキサンを滴下して行う。滴下時間は0.01〜2時間が好ましい。反応時間は、官能基とアミノ基との反応であることから、短時間で反応が進行すると思われるが、好ましくは、1〜24時間である。また、使用するアミノ基と反応しうる官能基を持つポリオルガノシロキサンによっては上記溶剤に溶解しない可能性がある為、十分に混合する速度で攪拌することが望ましい。反応終了後、溶剤を留去してシリコーン変性された抗菌性ポリマーを得ることができる。
【0047】
本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂は、シリコーン変性された抗菌性ポリマーと合成樹脂とを反応させて得ることができる。詳しくは、シリコーン変性された抗菌性ポリマー中に残存するアミノ基と、アミノ基と反応しうる官能基をもつ合成樹脂を反応させて得ることができる。従って、合成樹脂中に必ずアミノ基と反応しうる官能基が必要である。具体的には、前記一般式(2)におけるZに相当するものであり、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸誘導体、ハロゲン化アルキル基、不飽和基などが挙げられるが、エポキシ基が好ましい。
【0048】
本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂に用いられる合成樹脂としては、アミノ基と反応しうる官能基を持っているものならばいずれの樹脂を用いても良い。具体例として、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂及び酢酸ビニル樹脂等のビニル系重合体、ポリプロピレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの二元若しくは三元系の結晶性共重合体、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレン−プロピレン共重合体ゴム等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びスチレン−ブタジエン共重合体熱可塑性エラストマー等のポリスチレン系樹脂、ポリオルガノシロキサン等のシリコーン系樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン−アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリ尿素樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。
【0049】
これらのうちではアクリル系樹脂などのビニル系重合体、中でもエポキシ基を有するアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂中でも無水マレイン酸をグラフト重合したポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、中でもエポキシ基あるいは酸無水物基を有するシリコーン系樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0050】
シリコーン含有抗菌性樹脂の製造方法として、加熱溶融時に反応させる方法と溶剤に溶解させ溶液系で反応させる方法がある。何れの方法でも製造可能である。加熱溶融時に反応させる方法としてアミノ基含有抗菌性ポリマーと合成樹脂を混合し押出機中で反応させることもできる。しかし、熱的安定性や反応性を考慮すると溶液系で反応させることが好ましい。この場合、使用される溶剤は、合成樹脂とシリコーン変性された抗菌性ポリマーが共に均一に溶解し、反応が十分に行われるものならば、何れのものを用いても良い。その具体例として、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサンのような炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類を挙げることができ、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0051】
溶液系で反応させたシリコーン含有抗菌性樹脂を得る場合の反応温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは50〜100℃である。
【0052】
また、溶液系で反応させたシリコーン含有抗菌性樹脂を得る場合の反応時間は、反応が十分に進行すれば、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは1〜5時間である。
【0053】
こうして得られた反応液の溶媒を除去後、減圧乾燥し、シリコーン含有抗菌性樹脂を得ることができる。シリコーン含有抗菌性樹脂の分子量はポリスチレン換算重量平均分子量で表すと2,000〜500,000であり、好ましくは10,000〜200,000である。
【0054】
また、シリコーン変性された抗菌性ポリマーの配合量についても特に限定はないが、シリコーン含有抗菌性樹脂中のシリコーン変性された抗菌性ポリマーの含有率が、0.01〜50重量%であることが好ましく、0.1〜20重量%がより好ましいが、この場合、シリコーン変性された抗菌性ポリマー中のアミノ基を残す必要がある。シリコーン変性された抗菌性ポリマー中のアミノ基数の残存率として、好ましくは10〜99%、より好ましくは、50〜99%である。
【0055】
本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂は、成形品用のペレットの形状や溶剤に溶解したコーティング用樹脂組成物等の中間製品として提供することができる。これらの中間製品は成形品、繊維、フィルムあるいはシート等の形状を有する最終製品に加工され、実用に供される。
【0056】
成形品として使用する場合、その製造方法は、シリコーン含有抗菌性樹脂に使用されている樹脂の種類によって、さまざまな製造方法を用いることができるが、大別して熱可塑性樹脂を成形するための一般的な方法である押出成形、カレンダー成形、射出成形および熱硬化製樹脂を成形するための一般的な方法である圧縮成形、トランスファー成形等を挙げることができる。
【0057】
また、この場合には、通常合成樹脂に広く使用されている各種添加剤が配合されていてもよい。
各種添加剤には、耐熱安定性、耐熱劣化防止性、耐熱性付加のための熱安定剤、耐候性付加のための耐候剤、耐光性付加のための耐光剤、機能性付加のための各種安定剤、中和剤、添加剤、界面活性剤、有機系若しくは無機系の顔料、成形品の機械強度の向上、機能性付与のための有機系若しくは無機系のフィラーを挙げることができる。また、必要によっては、シリコーン変性された抗菌性ポリマーの抗菌性を増すために抗菌助長物質を用いてもよい。
【0058】
コーティング用樹脂組成物として使用する場合は、本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂が均一に溶解する溶剤に溶解させるか、反応液をそのまま使用しても良い。
溶剤に溶解させる場合、シリコーン含有抗菌性樹脂が均一に溶解するならば、何れの溶剤を用いても良い。その具体例として、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサンのような炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチルのような酢酸エステル類、セロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートのようなエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールのようなケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類を挙げることができ、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
コーティング用樹脂組成物の濃度としては、均一な溶液であれば、特に限定しないが、コーティングのし易さから好ましくは1〜80重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
【0060】
コーティング用樹脂組成物として使用する場合、必要に応じてさらに各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、硬化剤、顔料、分散剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、たれ防止剤、レベリング剤、艶消し剤、擦り傷防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌助長物質等が挙げられる。
【0061】
コーティング用樹脂組成物を塗布するにあたっては、ロールコーター法、スピンコーター法、ブレードコーター法、グラビアコーター法、ビートコーター法、カーテンフローコーター法及びスプレー塗布法のいずれを用いてもよく、基材の片面または両面に塗布することができる。塗布後、塗膜形成に際しては得られる塗膜の性能の点から、100℃以上の温度で1分〜240分、好ましくは5〜120分間加熱乾燥することが好ましい。100℃未満では溶剤の除去が不充分になる可能性がある。
【0062】
また、シリコーン含有抗菌性樹脂の被塗物として、金属、無機材料、プラスチック、複合材料が挙げられる。金属としては、ステンレス、アルミニウム、ブリキ、トタン、軟鋼板、銅、真鍮、各種メッキ鋼板及びチタン等が挙げられる。化成処理、アルマイト処理などの表面処理を施した基材でも好適に使用できる。無機材料としては、ガラス、モルタル、スレート、コンクリート、及び瓦等が挙げられる。プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、PET、ナイロン、ポリエステル、ゴム及びエラストマーのようなプラスチック成形品及びこれらをフィルム状に加工した製品等が挙げられる。複合材料としては、FRP、FRTP、積層板及び金属と有機物を圧着したサンドイッチ材等が挙げられる。
【0063】
【実施例】
以下に実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
シリコーン変性された抗菌性ポリマーの合成
(合成例1)
磁器攪拌子、冷却管、温度計を取り付けた100ミリリットルの三ツ口フラスコに、ε−ポリリジン(数平均分子量=4090)10.0g、メタノールを30g入れ、室温にて攪拌し、ε−ポリリジンを溶解する。温度を50℃に昇温後、下記一般式(3)
【化16】
(3)
で表される(3−グリシドキシプロピル)−ペンタメチルジシロキサン2.1g(8.05×10−3mol)を5分間で滴下した。50℃の温度を保持した状態で3時間反応させた。3時間経過後、反応液を冷却し、エタノールを10.0g加えた。次に、エバポレーターを用いて反応液中の揮発分を減圧溜去し、生成物として11.8gの微黄色の固体であるシリコーン変性された抗菌性ポリマー(1)を得た。このポリマーのアミノ基数の残存率は91%、シリコーン/ε−ポリリジン=17/83(重量比)であった。
【0064】
(合成例2)
磁器攪拌子、冷却管、温度計を取り付けた100ミリリットルの三ツ口フラスコに、ε−ポリリジン(数平均分子量=4090)10.0g、メタノールを20.0g入れ、室温にて攪拌し、ε−ポリリジンを溶解する。次いで2−プロパノールを20.0g加え、温度を70℃に昇温後、下記一般式(4)
【化17】
(4)
で表される片末端エポキシ基をもつ数平均分子量1000のポリジメチルシロキサン2.9gを5分で滴下した。70℃の温度を保持した状態で3時間反応させた。反応液を室温に冷却後、エバポレーターを用いて反応液中の揮発分を減圧溜去し、生成物として12.6gの微黄色の固体であるシリコーン変性された抗菌性ポリマー(2)を得た。このポリマーのアミノ基数の残存率は97%、シリコーン/ε−ポリリジン=23/77(重量比)であった。
【0065】
(合成例3)
磁器攪拌子、冷却管、温度計を取り付けた100ミリリットルの三ツ口フラスコに、ε−ポリリジン(数平均分子量=4090)5.0g、メタノールを20.0g入れ、室温にて攪拌し、ε−ポリリジンを溶解する。次いで2−プロパノールを20.0g加え、温度を70℃に昇温後、合成例3で用いたのと同様の片末端エポキシ基をもつ数平均分子量1000のポリジメチルシロキサン5.0gを5分間で滴下した。50℃の温度を保持した状態で3時間反応させた。反応液を室温に冷却後、エバポレーターを用いて反応液中の揮発分を減圧溜去し、生成物として9.9gの微黄色の固体であるシリコーン変性された抗菌性ポリマー(3)を得た。このポリマーのアミノ基数の残存率は91%、シリコーン/ε−ポリリジン=50/50(重量比)であった。
【0066】
(アクリル系樹脂の合成)
実施例1
撹拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を取り付けた50ml三つ口フラスコに、アゾビスイソブチロニトリル0.1g、メタクリル酸メチル4.0g、アクリル酸ブチル1.0g、メタクリル酸グリシジル0.06g、トルエン7.2gを仕込み、30秒間窒素ガスにてバブリング後、70℃で反応を5時間行い、室温に冷却し重合を停止した。次いで、合成例1のシリコーン変性された抗菌性ポリマー(1)を0.69g、メタノール7.7gを加え、70℃で5時間反応を行った。次いで、反応液中の揮発分を減圧溜去し、生成物として4.8gの微黄色固体である本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂を得た。この樹脂の表面は滲みはなく均一であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は42,000であった。また、該化合物は、赤外吸収スペクトル法による分析によって、構造を確認した(図1)。
【0067】
実施例2
撹拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を取り付けた50ml三つ口フラスコに、アゾビスイソブチロニトリル0.1g、メタクリル酸メチル4.0g、アクリル酸ブチル1.0g、メタクリル酸グリシジル0.03g、トルエン7.2gを仕込み、30秒間窒素ガスにてバブリング後、70℃で反応を5時間行い、室温に冷却し重合を停止した。次いで、合成例1のシリコーン変性された抗菌性ポリマー(1)を0.32g、メタノール7.7gを加え、70℃で5時間反応を行った。次いで、反応液中の揮発分を減圧溜去し、生成物として4.4gの微黄色固体である本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂を得た。この樹脂の表面は滲みはなく均一であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は31,000であった。また、該化合物は、赤外吸収スペクトル法による分析によって、構造を確認した(図2)。
【0068】
実施例3
撹拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を取り付けた50ml三つ口フラスコに、アゾビスイソブチロニトリル0.1g、メタクリル酸メチル4.0g、アクリル酸ブチル1.0g、メタクリル酸グリシジル0.04g、トルエン7.4gを仕込み、30秒間窒素ガスにてバブリング後、70℃で反応を5時間行い、室温に冷却し重合を停止した。次いで、合成例2のシリコーン変性された抗菌性ポリマー(2)を0.49g、メタノール11.6gを加え、70℃で5時間反応を行った。次いで、反応液中の揮発分を減圧溜去し、生成物として4.5gの微黄色固体である本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂を得た。この樹脂の表面は滲みはなく均一であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は35,000であった。また、該化合物は、赤外吸収スペクトル法による分析によって、構造を確認した(図3)。
【0069】
実施例4
撹拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を取り付けた50ml三つ口フラスコに、アゾビスイソブチロニトリル0.1g、メタクリル酸メチル4.0g、アクリル酸ブチル1.0g、メタクリル酸グリシジル0.03g、トルエン7.4gを仕込み、30秒間窒素ガスにてバブリング後、70℃で反応を5時間行い、室温に冷却し重合を停止した。次いで、合成例3のシリコーン変性された抗菌性ポリマー(3)を0.57g、メタノール11.5gを加え、70℃で5時間反応を行った。次いで、反応液中の揮発分を減圧溜去し、生成物として4.6gの微黄色固体である本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂を得た。この樹脂の表面は滲みはなく均一であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は39,000であった。また、該化合物は、赤外吸収スペクトル法による分析によって、構造を確認した(図4)。
【0070】
比較例1
撹拌装置、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管を取り付けた100ml四つ口フラスコに、アゾビスイソブチロニトリル0.5g、メタクリル酸メチル20.0g、アクリル酸ブチル5.0g、トルエン38.3gを仕込み、30秒間窒素ガスにてバブリング後、70℃で反応を5時間行い、室温に冷却し重合を停止した。次いで、反応液を800mlのメタノール中に滴下し、重合物を析出させ、析出させた重合物を80℃で予備乾燥後、ミルにて粉砕し、さらに80℃、133Paで6時間減圧乾燥し、重量平均分子量28,000のアクリル系共重合体を得た。
【0071】
(塗膜の作成)
実施例1〜4及び比較例1で得た樹脂2.5gをトルエン3.0g、メタノール4.5gに溶解し、コーティング用樹脂組成物を調製した。次いで、スピンコーターによりガラス板(5×5cm)に塗装を行い(回転数2000rpm/min、回転時間10sec)、80℃で10分間予備乾燥後、150℃で120分間乾燥して樹脂で被覆されたガラス板を作製し、試験片とした。
【0072】
(抗菌性試験)
“銀等無機抗菌剤研究会 銀等無機抗菌剤の抗菌評価試験法(1995年)”に定められた合成樹脂抗菌試験法である“フィルム密着法”に準じて下記内容の抗菌性試験を行った。
【0073】
また一方、普通ブイヨン培地を滅菌精製水で500倍に希釈し、pHを7.0±0.2に調整した「1/500培地」に、滅菌したピペットで大腸菌(Escherichia coli、IFO3972)を、培地中の生菌数が6.0×105個/mLの濃度となるように試験菌液を調整した。
【0074】
次に、試験片を各々滅菌シャーレへ入れ、その試験面に試験菌液0.5mLを接種し、さらにその上に滅菌処理を施したポリエチレン製フィルムを被せて蓋をしたのち、温度36±1℃、相対湿度90%以上の条件で24時間培養を行った。培養終了後、各々の試験片、該フィルムに付着している菌を滅菌水(10mL)を用いて滅菌シャーレ中に十分に洗い出し、この洗い出した液1mL中の生菌数を標準寒天培地法により測定した。試験終了後、下記計算式により増減値差を算出し、表1に示した。
【0075】
抗菌無加工試料
A:接種直後の生菌数
B:定時間培養操作後の生菌数
抗菌加工試料
C:定時間培養操作後の生菌数
増減値差 = log10(B/A) − log10(C/A)
【0076】
(接触角測定)
協和界面科学社製接触角計CA−X型を用い、コーティングした塗膜の室温での水の接触角を測定した。結果を表1に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例1〜4で示される本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂は、抗菌剤を含まない比較例1で示される樹脂と比較すると、明らかに大腸菌に対する抗菌性が高い。また、実施例1〜4のシリコーン含有抗菌性樹脂は、比較例1の樹脂と比較すると、接触角が明らかに高い。従って、実施例1〜5のシリコーン含有抗菌性樹脂は、抗菌性とシリコーンの特性の一つである撥水性の両方を併せ持つシリコーン含有抗菌性樹脂である。
【0079】
【発明の効果】
ポリオルガノシロキサン基が分子中に導入されたアミノ基含有抗菌性ポリマーと合成樹脂とを反応させることにより、抗菌剤を分子中に取り込んだ樹脂であるシリコーン含有抗菌性樹脂を得ることができた。本発明で使用しているシリコーン変性された抗菌ポリマーは、天然に存在する抗菌性化合物とシリコーンの反応により合成された化合物であるため、人体に対する危険性が極めて低い。
これにより本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂は、抗菌性とシリコーンの特性を求められる種々の成形品やフィルム、シート、繊維製品等の合成樹脂成形品、塗料等のコーティング剤、接着剤、インキ、化粧品等に広く好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂である実施例1で合成したポリマーの赤外線吸収スペクトルを示す図面である。
【図2】本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂である実施例2で合成したポリマーの赤外線吸収スペクトルを示す図面である。
【図3】本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂である実施例3で合成したポリマーの赤外線吸収スペクトルを示す図面である。
【図4】本発明のシリコーン含有抗菌性樹脂である実施例4で合成したポリマーの赤外線吸収スペクトルを示す図面である。
Claims (15)
- ポリオルガノシロキサン基が分子中に導入されたアミノ基含有抗菌性ポリマー(以下、このポリマーをシリコーン変性された抗菌性ポリマーと略称する)と、アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂とを反応させて得られるポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜500,000であるシリコーン含有抗菌性樹脂。
- シリコーン変性された抗菌性ポリマーが、アミノ基含有抗菌性ポリマーと、下記一般式(1)で表されるアミノ基と反応しうる官能基を持つポリオルガノシロキサンとを、反応させて得られるポリマーである請求項1記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
- ポリオルガノシロキサン基が分子中に導入される前のアミノ基含有抗菌性ポリマーが、ε−ポリリジンである請求項2記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
- 一般式(2)においてZが、塩素、臭素若しくはヨウ素原子である請求項2又は3記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
- アミノ基と反応し得る官能基が、エポキシ、カルボキシル、カルボン酸エステル、ハロゲン化カルボン酸、カルボン酸無水物、ハロゲン化アルキルまたは不飽和基である請求項1記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
- アミノ基と反応し得る官能基が、エポキシ、塩化カルボン酸またはカルボン酸無水物である請求項9記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
- アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がビニル系重合体である請求項1記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
- アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項1記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
- アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がシリコーン系樹脂である請求項1記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
- アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がアクリル系樹脂である請求項1記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
- アミノ基と反応し得る官能基を有する合成樹脂がエポキシ樹脂である請求項1記載のシリコーン含有抗菌性樹脂。
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