JP2005001997A - 新規化合物およびその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケイ素を中心金属として有する芳香族性基と加水分解可能なシリル基とを有する新規化合物、該新規化合物を部分加水分解縮合せしめてなる部分加水分解縮合物、該部分加水分解縮合物と溶剤とを含む塗布用組成物、該塗布用組成物を用いて得られる部分加水分解縮合物の薄膜を硬化させてなる薄膜及び該薄膜を有する電子・電気部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子デバイス及び多層配線板等がますます微細化及び高集積化されるに伴い、それらに適用するために、より低い比誘電率の絶縁膜が要求されている。従来、絶縁膜としてはシリカ系の無機絶縁膜(例えば特許文献1及び2参照)、ポリフェニレン等の耐熱性有機ポリマー絶縁膜(例えば特許文献3参照)が公知であるが、いずれも低い比誘電率値と高い耐熱性、接着性及び機械強度を両立させることが困難であり、その改良が求められている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−2992号公報
【特許文献2】
特開2001−98224号公報
【特許文献3】
米国特許第6172128号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、ケイ素を中心金属として有する芳香族性基と加水分解可能なシリル基とを有する新規化合物、該新規化合物を部分加水分解縮合させて得られる部分加水分解縮合物、該部分加水分解縮合物と溶剤とを含む塗布用組成物、該部分加水分解縮合物を硬化させてなる比誘電率が低く、かつ機械特性、耐プラズマ性等に優れる薄膜及び該薄膜を有する電子・電気部品の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は下記式(1)で表される新規化合物を提供する。
【0006】
【化2】
【0007】
[式中、Zは1個以上加水分解性基を有するシリル基を示し、mは1〜3の整数を示す。]
前記式(1)において、mは1又は2であることが好ましい。
また本発明は、前記新規化合物を部分加水分解縮合させてなる部分加水分解縮合物を提供する。
さらに本発明は、前記新規化合物を、共縮合成分として他の加水分解縮合可能なケイ素化合物存在下に部分加水分解縮合させてなる部分加水分解縮合物を提供する。
また本発明は、前記部分加水分解縮合物と溶剤とを含む塗布用組成物を提供する。
さらに本発明は、前記塗布用組成物を用いて基材上に部分加水分解縮合物の膜を形成し、次いで又は該膜の形成と同時に、該部分加水分解縮合物を硬化させることにより形成される薄膜を提供する。
本発明の薄膜において、膜中に空孔を含有する構成としてもよい。
また本発明は、薄膜を有する電子・電気部品を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の新規化合物は下記式(1)で表される。
【0009】
【化3】
【0010】
式中、Zは1個以上加水分解性基を有するシリル基を示し、mは1〜3の整数を示す。
【0011】
式(1)において、1個以上加水分解性基を有するシリル基Zは、下記式(2)で表される。
【0012】
【化4】
【0013】
ここで、X1、X2及びX3は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、水素原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基である。ただしX1、X2及びX3のうち少なくとも1個以上が加水分解性基、すなわち水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基である。
アルキル基の炭素数は1〜8、アリール基の炭素数は6〜8が好ましい。好適なアルキル基及びアリール基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子が好ましい。アミノ基としては炭素数1〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は1〜8が好ましい。好適なアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0014】
本発明において、加水分解性基を1個以上有するシリル基Zの具体例としては、加水分解性基を3個有するものとして、例えばトリフルオロシリル基、トリクロロシリル基、トリヒドロシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、トリブトキシシリル基が挙げられる。加水分解性基を2個有するシリル基Zとしては、例えばメチルジフルオロシリル基、メチルジクロロシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、フェニルジクロロシリル基、フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基、メチルメトキシシリル基が挙げられる。加水分解性基を1個有するシリル基としては、例えばジメチルクロロシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、ジメチルシリル基、ジフェニルメトキシシリル基、ジフェニルエトキシシリル基等が挙げられる。
【0015】
本発明におけるシリル基Zに含まれる加水分解性基としては、アルコキシ基が最も好ましく、なかでもメトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。シリル基Zとしては、メチルジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基が好ましい。メチルジアルコキシシリル基としては、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基が最も好ましい。トリアルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が最も好ましい。
【0016】
上述した式(1)で表される新規化合物は、部分加水分解縮合させることによって部分加水分解縮合物を形成することができる。部分加水分解縮合とは、加水分解性基の一部が加水分解して生成したシラノール基(HO−Si)どうし、または該シラノール基と加水分解していない加水分解性基が縮合することをいう。この新規化合物は、比誘電率が低く、かつ機械特性、耐プラズマ性等に優れる薄膜を形成できる部分加水分解縮合物製造用モノマーとして特に好適である。
【0017】
本発明の新規化合物として特に好ましい化合物は、例えば下記式(3−1)〜(3−4)で表されるものが挙げられる。
【0018】
【化5】
【0019】
式(3−1)〜(3−4)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示し、メチル基、又はエチル基が特に好ましい。
【0020】
本発明の新規化合物は、式(4−1)で表される前駆体化合物を製造し、次いで式(4−2)に示すように、該前駆体化合物と(H−Z)で表されるハイドロシランとのカップリング反応により得ることができる。
【0021】
【化6】
【0022】
前記式(4−1)、(4−2)中、Zは1個以上加水分解性基を有するシリル基を示し、mは1〜3の整数を示し、Xは脱離基を表す。脱離基Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子である。
また、前駆体化合物(4−1)は、既知の方法により製造可能であり、例えばテトラクロロシランのようなテトラハロゲン化シランと、式(5)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0023】
【化7】
【0024】
前記式(5)において、Mはリチウム、カリウム、ナトリウムなどの一価の金属を表し、mは1〜3の整数を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を表す。
【0025】
式(4−2)で表される前駆体化合物とハイドロシランとのカップリング反応は、触媒存在下に行う。触媒としては、例えば1価のロジウム錯体から選択される1種または2種以上が挙げられ、好ましくはクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム、(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]、トランス−ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレートからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。これらの内、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]が最も好ましい。
【0026】
ハイドロシランは、下記式(6)で表されるハイドロシランが用いられ、なかでも下記式(7)で表されるハイドロアルコキシシランを使用することが好ましい。
【0027】
【化8】
【0028】
ここで、X1,X2,X3は前記のものを表す。またR2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基またはフェニル基を、R1は炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは0、1または2である。前記式(7)で表されるハイドロアルコキシシランの具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン等が例示される。
【0029】
本発明は、前記新規化合物を部分加水分解縮合せしめた部分加水分解縮合物を提供する。部分加水分解縮合反応は、触媒及び水を添加することにより行われるのが好ましい。アルコキシシリル基1モル当たり、0.3〜5.0モルの水を添加することが好ましく、0.5〜2.0モルの水を添加することが特に好ましい。添加する水の量が0.3〜5.0モルの範囲内であれば、本発明の塗布用組成物の保存安定性が良好に保たれる。
【0030】
触媒としては、有機酸、無機酸、有機の塩基性化合物、無機の塩基性化合物等を挙げることができる。有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができる。無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができる。有機の塩基性化合物としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等を挙げることができる。無機の塩基性化合物としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。触媒の使用量は、加水分解性基の総量に対して、モル比で0.0001〜1、好ましくは0.001〜0.1である。
【0031】
この部分加水分解縮合反応は、無溶剤で行っても良いが、溶剤希釈下で行うことが好ましい。溶剤としては、本発明の新規化合物、水、触媒及び後述の共縮合成分が溶解あるいは分散すれば制限は無く、芳香族炭化水素類、双極子非プロトン系溶剤類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、キュメン、メシチレン、テトラリン、メチルナフタレン等が挙げられる。
双極子非プロトン系溶剤類としては、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
ケトン類としては、例えばメチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
エーテル類としては、例えばテトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジフェニルエーテル、アニソール、フェネトール、ジグライム、トリグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
エステル類としては、例えば乳酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素類としては、例えば四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0032】
前記部分加水分解縮合反応は、部分加水分解縮合物の濃度として1〜90質量%で行うのが好ましく、5〜60質量%がより好ましい。
反応条件としては、0〜150℃で1時間〜200時間が好ましい。より好ましくは10〜100℃で2時間〜120時間、最も好ましくは20〜80℃で3時間〜80時間である。通常は溶媒の沸点以下で行うことが好ましいが、必要に応じて加圧下で行っても良い。
【0033】
反応終了後、添加した水及び生成するアルコール類等を除去することが好ましい。本操作により、得られる塗布用組成物の保存安定性が良好に保たれる。除去方法としては、エパポレーション法、限外濾過法等が例示できる。
本発明における部分加水分解縮合物の数平均分子量は、500〜500000の範囲であることが好ましい。この範囲にあると、塗布用組成物の保存安定性が良好に保たれ、又均一性が高い薄膜が得られる。さらに好ましくは500〜100000、最も好ましくは800〜50000の範囲である。
【0034】
本発明の部分加水分解縮合物は、他の加水分解縮合可能なケイ素化合物(以下、共縮合成分という。)を含んでいても良い。共縮合成分としては、例えば下記式(8)、(9)及び(10)で表されるアルコキシシランからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0035】
X4X5Si(OR1)2 …式(8)
X6Si(OR2)3 …式(9)
Si(OR3)4 …式(10)
【0036】
式(8)〜(10)中、X4、X5及びX6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基又はビニル基を表し、それぞれ同じであっても相異なっていてもよい。R1、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0037】
式(8)で表されるアルコキシシランとしては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン等が挙げられ、特にジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びジフェニルジエトキシシランが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0038】
式(9)で表されるアルコキシシランとしては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン等が挙げられ、特にメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン及びトリエトキシシランが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0039】
式(10)で表されるアルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられ、特にテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0040】
本発明の部分加水分解縮合物中の共縮合成分量としては、5〜95モル%が好ましい。この範囲にあると、低誘電率で高い機械特性を有する膜が得られる。さらに好ましくは10〜90モル%、最も好ましくは20〜80モル%である。
【0041】
本発明の部分加水分解縮合物は、中和、再沈殿、抽出、濾過等の方法で精製されることが好ましい。電子部品関連の用途においては、縮合反応触媒であるカリウム、ナトリウム等の金属イオン及び遊離したハロゲン原子はトランジスタの動作不良や配線の腐食等を引き起こす原因物質と成りうるので充分に精製することが好ましい。
【0042】
本発明の部分加水分解縮合物は、適当な基材上にコーティングして縮合反応を進行させ、硬化させて薄膜を形成するために用いる塗布用組成物の材料として好適に用いることができる。本発明の塗布用組成物は、例えば上述した本発明の部分加水分解縮合物を溶剤に溶解するか、または分散して得られる。溶剤としては、該部分加水分解縮合物が溶解あるいは分散し、所望の方法で所望の膜厚、均一性、又は埋め込み平坦性を有する薄膜が得られれば特に制限は無く、例えば上述した部分加水分解縮合物製造時の反応溶剤と同様のものが挙げられる。塗布用組成物の溶剤は、部分加水分解縮合物製造時の反応溶剤と同じであっても、異なっていても良い。異なる溶剤を使用する場合には、エパポレーション法、限外濾過法等の公知の手法を用いて溶剤置換を行うことができる。
【0043】
本発明の塗布用組成物において、部分加水分解縮合物の濃度は1〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましい。この塗布用組成物は部分加水分解縮合物と溶剤以外に、可塑剤、増粘剤などのコーティング分野で周知の各種添加剤の中から選択される少なくとも1種の添加剤を配合してもよい。また、本発明の塗布用組成物には、前記本発明の新規化合物を配合してもよい。さらに、空孔を有する薄膜を形成する場合には、後述する中空体及び薄膜形成後除去可能な物質等を適宜配合することができる。
【0044】
本発明の薄膜は、前記塗布用組成物を適当な基体表面に塗布して湿潤膜を形成し、次いで溶剤を揮散等で除去した後、または除去すると同時に部分加水分解縮合物を縮合、硬化させて形成される。この湿潤膜の形成方法としては、コーティング方法を採用することが好ましい。例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ダイコート法、バーコート法、ドクターコート法、押し出しコート法、スキャンコート法、はけ塗り法、ポッティング法等の公知のコーティング方法が挙げられる。電子デバイス用絶縁膜として用いる場合には、膜厚の均一性の観点からスピンコート法又はスキャンコート法が好ましい。
【0045】
部分加水分解縮合反応により得られた部分加水分解縮合物は分子内に加水分解性基が加水分解して生成したシラノール基及び未反応の加水分解性基等を含んでいる。これらが多量に膜中に残存していると電気特性及び機械特性が損なわれるため、コーティングを行った後に縮合反応を進行させ、硬化させる。縮合反応を進行させる方法としては、加熱、及び/又は電磁波の照射を行う方法が好ましい。加熱条件は50℃〜500℃で1分間〜360分間が好ましく、80〜450℃で2分間〜240分間がさらに好ましく、80〜400℃で5分間〜120分間が最も好ましい。加熱装置としては、ホットプレート、オーブン、ファーネス(炉)が好ましく、加熱雰囲気は、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気、空気、酸素、減圧などが例示でき、不活性ガス雰囲気及び減圧が好ましい。薄膜の表面平滑性を確保したり、薄膜の微細スペース埋込性を向上させるために、加熱工程を何段階かに分けて実施することが好ましい。
【0046】
電磁波としては、電子線、紫外線等が好ましい。加熱と電磁波照射を併用してもよい。電磁波照射の際の雰囲気は、前記の加熱の場合と同様のものが好ましい。電磁波照射条件としては、例えば電子線を用いる場合、照射エネルギーは0.1〜50keVが好ましく、照射量は1〜1000μC/cm2が好ましい。
薄膜の厚さは0.01〜50μmが好ましく、0.1〜30μmがより好ましい。
【0047】
本発明の薄膜は、さらに比誘電率を低減させるために、空孔を含有する多孔質の薄膜とすることもできる。多孔質の薄膜を得る具体的な手法としては、中空シリカゾル等の中空体、又は薄膜形成後除去可能な物質を塗布用組成物中に添加する手法等が挙げられる。中空体及び薄膜形成後除去可能な物質は、部分加水分解縮合物と共有結合、水素結合等の分子間相互作用を有することが好ましい。この分子間相互作用を有することにより、相分離が抑制され、その結果として平均孔径の小さな多孔質の薄膜が得られる。小さな平均孔径は、多孔質の薄膜の機械特性、耐薬品性、耐プラズマ性等を向上させる。
【0048】
薄膜形成後除去可能な物質の具体例としては、(イ)熱により揮散する物質又は熱により分解して、該分解物が揮散する物質、(ロ)紫外線又は電子線等の電磁波等の照射により分解して、該分解物が揮散する物質、(ハ)薬液によって溶出する物質又は薬液により分解して、該分解物が溶出する物質等が挙げられる。この中で、部分加水分解縮合物硬化時の加熱、及び/又は電磁波照射工程において、該物質の除去が同時に行えるため、(イ)又は(ロ)の物質が好ましく、特に(イ)の物質が好ましい。具体的には、常圧での沸点が200℃〜400℃の化合物、及び熱分解性ポリマー等が例示される。
【0049】
常圧での沸点が200〜400℃の化合物の具体例としては、アミルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレン、テトラデカン、デカリン、テトラリン、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、ペンタンジオール、グリセリン、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジブチル、フタル酸ジメチル等が挙げられる。
【0050】
前記熱分解性ポリマーは、熱分解温度がおよそ400℃以下のポリマーであり、特に熱分解温度が350℃以下のポリマーであることが好ましい。ここで、熱分解温度とは、不活性ガス雰囲気下、10℃/分の昇温条件における熱重量分析(TGA)測定による3%重量減少温度を意味する。具体的には、脂肪族ポリオレフィン、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、アクリル系重合体、スチレン系重合体等が挙げられる。このなかでも、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、アクリル系重合体が良好な熱分解特性を示し、かつ本発明の部分加水分解縮合物との相溶性が良好であるので好ましい。
【0051】
また、デンドリマー、星型ポリマー等、一次構造として分岐構造を有するものも好ましい。分岐構造を有するものを用いるとポリマーの占有体積が小さくなるため、平均孔径の小さな多孔質体が容易に得られる。熱分解性ポリマーの数平均分子量は、300〜100000が好ましく、より好ましくは500〜20000である。数平均分子量がこの範囲にあると、本発明の部分加水分解縮合物との相溶性が良好であり、平均孔径の小さな多孔質の薄膜が得られる。
【0052】
該多孔質の薄膜の空孔率としては、1〜70体積%が好ましい。この範囲にあると空孔を導入することによる機械特性の低下を最小限に押さえることができる。さらに好ましくは、2〜60体積%である。前記中空体又は薄膜形成後除去可能な物質の添加量が空孔率を決定する。
【0053】
本発明の部分加水分解縮合物及び該部分加水分解縮合物を硬化させることにより形成される薄膜の用途としては、各種絶縁膜、保護膜、燃料電池等の各種電池用膜材料、フォトレジスト、反射防止膜、光導波材料、被覆材、電子用部材、封止剤、オーバーコート剤、透明フィルム材、接着剤、繊維材、耐候性塗料、撥水剤、撥油剤、防湿コート剤等が挙げられる。特に、電子デバイス用絶縁膜、多層配線板用絶縁膜、ディスプレイ用絶縁膜の用途が好ましく、さらには層間絶縁膜、ハードマスク膜、エッチストップ膜、CMPストップ膜、又はキャップ膜(銅の拡散防止膜)、フォトレジスト反射防止膜等の電子デバイス用絶縁膜の用途が最も好ましい。
【0054】
電子デバイスとしては、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリ)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリ)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリ)、フラッシュメモリなどの記憶素子、マイクロプロセッサ、DSP、ASICなどの理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体などの集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子などの光電変換素子等が挙げられる。
多層配線板とは、電子デバイス等を実装するための各種基板であり、プリント配線板、ビルドアップ配線板、MCMなどの高密度配線板等が挙げられる。
【0055】
【実施例】
本発明を以下の実施例及び比較例より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。例1〜3は本発明に係る新規化合物(以下、モノマーとも記す。)の合成例、例4〜15は該新規化合物の部分加水分解縮合物の合成、薄膜形成及び物性測定例、例17は空孔を含有する薄膜の形成例、例18は電子デバイス用絶縁膜としての評価例である。例16は比較例である。
【0056】
[例1]モノマーの合成例(モノマーA)
容量2Lの四つ口フラスコに1,4−ジブロモベンゼン(121g)およびジエチルエーテル(1150g)を仕込み、攪拌しながら−78℃に冷却した。そこへn−ブチルリチウム(2.64Mヘキサン溶液、155mL)を内温が−70℃を超えないように1時間かけて滴下した。そのままの温度で1時間攪拌した後、四塩化ケイ素(17.4g)のヘキサン(34.4g)溶液を内温が−70℃を超えないように1時間かけて滴下した。そのままの温度で90分攪拌した後、0℃に昇温した。
内温が0℃になったところで粗液に水(26mL)を加え、エバポレーターで溶媒を留去し、得られた粗液にメタノール(500mL)を加えると固体が析出した。固体を濾過で回収し、メタノール(300mL)で1回、水(400mL)で2回、メタノール(300mL)で1回、最後にメタノールと塩化メチレンとの混合溶媒(100mL)で1回洗浄した。得られた固体を塩化メチレンに溶解させ、不溶物を濾過で取り除き、得られた濾液からエバポレーターで全体の重量が570gになるまで溶媒を留去した。得られた粗液にメタノール(600mL)を加えて固体を析出させ、濾過で回収した。得られた固体をトルエン溶媒で再結晶を行うことで、下記化合物(28.8g)を得た。濾液から再度再結晶を行うことで下記化合物(12.3g)を得た。
【0057】
【化9】
【0058】
次いで、容量2Lのガラス製三ツ口フラスコに、前記化合物(41.0g)、トリエチルアミン(77.3g)、ヨウ化ナトリウム(37.7)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](1.8g)およびN,N−ジメチルホルムアミド(820g)を仕込み、80℃に加熱した。トリエトキシシラン(165.3g)を6時間かけて滴下し、そのままの温度で1時間攪拌し、冷却した。
粗液から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/3)を行った。得られた固体をヘキサンで再結晶を行うことで、化合物(44.2g)を得た。NMR分析およびマススペクトル分析により、下記構造を有する化合物(以下、モノマーAという。)と同定された。
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl3、基準:TMS)δ(ppm): 1.26(t,J=7.1Hz,36H), 3.89(q,J=7.1Hz,24H), 7.56(d,J=7.8Hz,8H), 7.66(d,J=7.8Hz,8H)。
【0059】
【化10】
【0060】
[例2]モノマーの合成例(モノマーB)
トリエトキシシランの代わりにジエトキシメチルシランを用いた以外は例1と同様の実験を行い、化合物(38.2g)を得た。マススペクトル分析により、下記構造を有する化合物(以下、モノマーBという。)と同定された。
【0061】
【化11】
【0062】
[例3]モノマーの合成例(モノマーC)
1,4−ジブロモベンゼンの代わりに4,4’−ジブロモビフェニルを用いた以外は例1と同様の実験を行い、化合物(47.7g)を得た。マススペクトル分析により、下記構造を有する化合物(以下、モノマーCという。)と同定された。
【0063】
【化12】
【0064】
[例4]部分加水分解縮合物の合成、薄膜形成及び物性測定
容量100mlのフラスコにモノマーとしてモノマーAの4.93g(5mmol)を、共加水分解縮合成分としてテトラエトキシシランの1.04g(5mmol)を、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PEGMEAという。)の47.8g(全モノマー量に対して8質量倍量)を仕込み、撹袢してモノマーを溶解させた。室温で激しく撹袢しながら0.7質量%のマレイン酸水溶液1.31g(水72mmol、すなわち水のモル数が全アルコキシシリル基のモル数に対して0.9当量)を約30分かけて滴下し、滴下終了後、60℃、5時間オイルバス上で加熱した。その後、エバポレーターを用いて全量が20.0g(固形分濃度15質量%)となるまで濃縮して、部分加水分解縮合物溶液組成物を得た。キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は、約4000であった。
次に、得られた溶液組成物をポア径0.2μmのPTFE製フィルタでろ過し、4インチシリコンウェハ上にスピンコートして湿潤膜を形成した。スピン条件は2000rpm×30秒とし、ホットプレートによる100℃×90秒、200℃×90秒の乾燥、プリベークの後、縦型炉で400℃×1時間、窒素雰囲気下でのファイナルベークを行って、膜中の部分加水分解縮合物の縮合反応を進行させ、硬化させて薄膜を形成した。形成された薄膜の厚さを分光エリプソメータによって求めたところ、550nmであった。SSM社製SSM−495を用いて、水銀プローバーによるCV測定を行うことにより、薄膜の1MHzの比誘電率を求めたところ、2.9であった。MTS社製ナノインデンターDCM−SA2を用いて、ナノインデンテーション法により、薄膜の弾性率を測定したところ、10GPaであった。
【0065】
[例5]部分加水分解縮合物の合成、薄膜形成及び物性測定
容量20mlのフラスコに0.5質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液の0.28g(水15mmol、すなわち水のモル数が全アルコキシシリル基のモル数に対して1.0当量)とN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという。)の4.72g(全モノマー量に対して4質量倍量)を仕込み室温で攪拌した。その液に、モノマーとしてモノマーAの1.00g(1.0mmol)と共加水分解縮合成分としてメチルトリエトキシシランの0.18g(1.0mmol)をDMAcの2.36g(全モノマー量に対して2質量倍量)に溶解させた液を室温で10分間かけて滴下し、滴下終了後、そのままの温度で5時間攪拌した。その後、1.0質量%の硝酸水溶液の0.14gを加え、エバポレーター用いて全量が4.57gとなるまで濃縮して、部分加水分解縮合物溶液組成物を得た。キャリア溶液としてテトラヒドロフランを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は、約20000であった。
例4と同様の方法にてシリコンウェハ上に前記溶液組成物をスピンコートし、乾燥、ベークして、膜中の部分加水分解縮合物の縮合反応を進行させ、硬化させて薄膜を形成した。形成された薄膜の比誘電率、及び弾性率を求めたところ、それぞれ2.6、7GPaであった。
【0066】
[例6〜16]部分加水分解縮合物の合成、薄膜形成及び物性測定
例6〜15は、例4と同様の方法により、例1〜3で得られたモノマーA〜Cを用い、単独加水分解縮合反応又は他種アルコキシシランとの共加水分解縮合反応を行って部分加水分解縮合物を合成し、薄膜形成及び物性測定を行った。
例16は、前記モノマーA〜C以外のモノマー(テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン)を用い、例4と同様に部分加水分解縮合物を合成し、薄膜形成及び物性測定を行った。
部分加水分解縮合物組成、使用した溶剤種類、及び得られたポリマーの物性(数平均分子量、比誘電率、弾性率)測定結果を表1に示した。この際、溶剤の添加量は全モノマー量に対して8倍量とし、添加する0.6%マレイン酸水溶液量は、水のモル数が全アルコキシシリル基のモル数に対して0.9当量となるようにし、エバポレーターによる濃縮は固形分濃度15質量%となるまで行った。また、製膜評価において、500〜700nm厚さの薄膜が得られるようにスピン回転数を調整した。
【0067】
【表1】
【0068】
[例17]空孔を含有する薄膜の形成
例9で得られた部分加水分解縮合物の溶液組成物(部分加水分解縮合物15質量%シクロヘキサノン溶液)2gに、ポリ(メチルメタクリレート)(Aldrich社製、重量平均分子量約15,000)を0.1g添加し、室温で振とうすることにより溶解させ、ポア径0.2μmのPTFE製フィルタでろ過を行った。4インチシリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレートによる100℃×90秒、200℃×90秒の乾燥、プリベークの後、縦型炉で400℃×1時間、窒素雰囲気下でのファイナルベークを行うことより、空孔を含有するポリマー薄膜を得た。続いて例6と同様の方法により薄膜の比誘電率及び弾性率を測定したところ、それぞれ2.3、7GPaであった。また、理学電機社製ATX−Gを用いたX線小角散乱法により求めた平均空孔径は、約2nmであった。
【0069】
[例18]電子デバイス用絶縁膜としての評価(積層構造の安定性、微細加工及び耐薬品性)
例5で得られた部分加水分解縮合物の溶液組成物(部分加水分解縮合物15質量%DMAc溶液)を8インチシリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレートで150℃×1分乾燥、プリベークを行った。この上に有機SOG(スピン・オン・グラス)溶液(ハネウェル社製ACCUGLASS211)をスピンコートし、ホットプレートで150℃×1分プリベークを行い、さらにホットプレートで400℃×10分、窒素雰囲気下でのファイナルベークを行った。前記の方法により、部分加水分解縮合物の硬化膜(膜厚400nm)/有機SOG膜(膜厚150nm)の積層体が形成されたシリコンウェハを複数枚作成した。前記の方法にて測定した本積層体の比誘電率は2.9であった。
得られたシリコンウェハの1枚を水素雰囲気下425℃で60分ベークを行い、熱ストレスによるクラック耐性を金属顕微鏡にて調べたところ、クラックの発生及びその他の欠陥はなかった。さらに、JIS D0202に記載のゴバン目テープ剥離テストを行ったところ、剥離は見られなかった。
得られたシリコンウェハの別の1枚上にフォトレジストを形成し、フォトリソグラフィーによりパターニングを行った後に、窒素/酸素/アルゴン混合ガスを用いたRIE(リアクティブ・イオン・エッチング)法によりエッチングを行った。フォトレジスト残さ剥離液EKC265(商品名、EKCテクノロジー社製)による洗浄工程を経た後の薄膜を金属顕微鏡にて調べたところ、欠陥等は観察されなかった。また、積層体の比誘電率は2.6を示し、製膜直後の値と変化無かった。すなわち、微細加工及びレジスト除去工程による本積層体へのダメージは無いことが確認された。
【0070】
【発明の効果】
本発明の新規化合物は、比誘電率が低く、かつ機械特性に優れた下記薄膜を形成できる化合物である。
本発明の部分加水分解縮合物、該縮合物を含む塗布用組成物及び該部分加水分解縮合物を硬化させることにより形成される薄膜は、比誘電率が低く、かつ機械特性に優れている。また電子デバイス用絶縁膜の製造工程中のプラズマ処理、洗浄処理に対する耐性が高いため、電子デバイス用絶縁膜としての適用性に優れる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケイ素を中心金属として有する芳香族性基と加水分解可能なシリル基とを有する新規化合物、該新規化合物を部分加水分解縮合せしめてなる部分加水分解縮合物、該部分加水分解縮合物と溶剤とを含む塗布用組成物、該塗布用組成物を用いて得られる部分加水分解縮合物の薄膜を硬化させてなる薄膜及び該薄膜を有する電子・電気部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子デバイス及び多層配線板等がますます微細化及び高集積化されるに伴い、それらに適用するために、より低い比誘電率の絶縁膜が要求されている。従来、絶縁膜としてはシリカ系の無機絶縁膜(例えば特許文献1及び2参照)、ポリフェニレン等の耐熱性有機ポリマー絶縁膜(例えば特許文献3参照)が公知であるが、いずれも低い比誘電率値と高い耐熱性、接着性及び機械強度を両立させることが困難であり、その改良が求められている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−2992号公報
【特許文献2】
特開2001−98224号公報
【特許文献3】
米国特許第6172128号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、ケイ素を中心金属として有する芳香族性基と加水分解可能なシリル基とを有する新規化合物、該新規化合物を部分加水分解縮合させて得られる部分加水分解縮合物、該部分加水分解縮合物と溶剤とを含む塗布用組成物、該部分加水分解縮合物を硬化させてなる比誘電率が低く、かつ機械特性、耐プラズマ性等に優れる薄膜及び該薄膜を有する電子・電気部品の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は下記式(1)で表される新規化合物を提供する。
【0006】
【化2】
【0007】
[式中、Zは1個以上加水分解性基を有するシリル基を示し、mは1〜3の整数を示す。]
前記式(1)において、mは1又は2であることが好ましい。
また本発明は、前記新規化合物を部分加水分解縮合させてなる部分加水分解縮合物を提供する。
さらに本発明は、前記新規化合物を、共縮合成分として他の加水分解縮合可能なケイ素化合物存在下に部分加水分解縮合させてなる部分加水分解縮合物を提供する。
また本発明は、前記部分加水分解縮合物と溶剤とを含む塗布用組成物を提供する。
さらに本発明は、前記塗布用組成物を用いて基材上に部分加水分解縮合物の膜を形成し、次いで又は該膜の形成と同時に、該部分加水分解縮合物を硬化させることにより形成される薄膜を提供する。
本発明の薄膜において、膜中に空孔を含有する構成としてもよい。
また本発明は、薄膜を有する電子・電気部品を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の新規化合物は下記式(1)で表される。
【0009】
【化3】
【0010】
式中、Zは1個以上加水分解性基を有するシリル基を示し、mは1〜3の整数を示す。
【0011】
式(1)において、1個以上加水分解性基を有するシリル基Zは、下記式(2)で表される。
【0012】
【化4】
【0013】
ここで、X1、X2及びX3は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、水素原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基である。ただしX1、X2及びX3のうち少なくとも1個以上が加水分解性基、すなわち水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基である。
アルキル基の炭素数は1〜8、アリール基の炭素数は6〜8が好ましい。好適なアルキル基及びアリール基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子が好ましい。アミノ基としては炭素数1〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は1〜8が好ましい。好適なアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0014】
本発明において、加水分解性基を1個以上有するシリル基Zの具体例としては、加水分解性基を3個有するものとして、例えばトリフルオロシリル基、トリクロロシリル基、トリヒドロシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、トリブトキシシリル基が挙げられる。加水分解性基を2個有するシリル基Zとしては、例えばメチルジフルオロシリル基、メチルジクロロシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、フェニルジクロロシリル基、フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基、メチルメトキシシリル基が挙げられる。加水分解性基を1個有するシリル基としては、例えばジメチルクロロシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、ジメチルシリル基、ジフェニルメトキシシリル基、ジフェニルエトキシシリル基等が挙げられる。
【0015】
本発明におけるシリル基Zに含まれる加水分解性基としては、アルコキシ基が最も好ましく、なかでもメトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。シリル基Zとしては、メチルジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基が好ましい。メチルジアルコキシシリル基としては、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基が最も好ましい。トリアルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が最も好ましい。
【0016】
上述した式(1)で表される新規化合物は、部分加水分解縮合させることによって部分加水分解縮合物を形成することができる。部分加水分解縮合とは、加水分解性基の一部が加水分解して生成したシラノール基(HO−Si)どうし、または該シラノール基と加水分解していない加水分解性基が縮合することをいう。この新規化合物は、比誘電率が低く、かつ機械特性、耐プラズマ性等に優れる薄膜を形成できる部分加水分解縮合物製造用モノマーとして特に好適である。
【0017】
本発明の新規化合物として特に好ましい化合物は、例えば下記式(3−1)〜(3−4)で表されるものが挙げられる。
【0018】
【化5】
【0019】
式(3−1)〜(3−4)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示し、メチル基、又はエチル基が特に好ましい。
【0020】
本発明の新規化合物は、式(4−1)で表される前駆体化合物を製造し、次いで式(4−2)に示すように、該前駆体化合物と(H−Z)で表されるハイドロシランとのカップリング反応により得ることができる。
【0021】
【化6】
【0022】
前記式(4−1)、(4−2)中、Zは1個以上加水分解性基を有するシリル基を示し、mは1〜3の整数を示し、Xは脱離基を表す。脱離基Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子である。
また、前駆体化合物(4−1)は、既知の方法により製造可能であり、例えばテトラクロロシランのようなテトラハロゲン化シランと、式(5)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0023】
【化7】
【0024】
前記式(5)において、Mはリチウム、カリウム、ナトリウムなどの一価の金属を表し、mは1〜3の整数を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を表す。
【0025】
式(4−2)で表される前駆体化合物とハイドロシランとのカップリング反応は、触媒存在下に行う。触媒としては、例えば1価のロジウム錯体から選択される1種または2種以上が挙げられ、好ましくはクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム、(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]、トランス−ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレートからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。これらの内、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]が最も好ましい。
【0026】
ハイドロシランは、下記式(6)で表されるハイドロシランが用いられ、なかでも下記式(7)で表されるハイドロアルコキシシランを使用することが好ましい。
【0027】
【化8】
【0028】
ここで、X1,X2,X3は前記のものを表す。またR2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基またはフェニル基を、R1は炭素数1〜8のアルキル基を表し、nは0、1または2である。前記式(7)で表されるハイドロアルコキシシランの具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン等が例示される。
【0029】
本発明は、前記新規化合物を部分加水分解縮合せしめた部分加水分解縮合物を提供する。部分加水分解縮合反応は、触媒及び水を添加することにより行われるのが好ましい。アルコキシシリル基1モル当たり、0.3〜5.0モルの水を添加することが好ましく、0.5〜2.0モルの水を添加することが特に好ましい。添加する水の量が0.3〜5.0モルの範囲内であれば、本発明の塗布用組成物の保存安定性が良好に保たれる。
【0030】
触媒としては、有機酸、無機酸、有機の塩基性化合物、無機の塩基性化合物等を挙げることができる。有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができる。無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができる。有機の塩基性化合物としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等を挙げることができる。無機の塩基性化合物としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。触媒の使用量は、加水分解性基の総量に対して、モル比で0.0001〜1、好ましくは0.001〜0.1である。
【0031】
この部分加水分解縮合反応は、無溶剤で行っても良いが、溶剤希釈下で行うことが好ましい。溶剤としては、本発明の新規化合物、水、触媒及び後述の共縮合成分が溶解あるいは分散すれば制限は無く、芳香族炭化水素類、双極子非プロトン系溶剤類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、キュメン、メシチレン、テトラリン、メチルナフタレン等が挙げられる。
双極子非プロトン系溶剤類としては、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
ケトン類としては、例えばメチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルアミルケトン等が挙げられる。
エーテル類としては、例えばテトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジフェニルエーテル、アニソール、フェネトール、ジグライム、トリグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
エステル類としては、例えば乳酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素類としては、例えば四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0032】
前記部分加水分解縮合反応は、部分加水分解縮合物の濃度として1〜90質量%で行うのが好ましく、5〜60質量%がより好ましい。
反応条件としては、0〜150℃で1時間〜200時間が好ましい。より好ましくは10〜100℃で2時間〜120時間、最も好ましくは20〜80℃で3時間〜80時間である。通常は溶媒の沸点以下で行うことが好ましいが、必要に応じて加圧下で行っても良い。
【0033】
反応終了後、添加した水及び生成するアルコール類等を除去することが好ましい。本操作により、得られる塗布用組成物の保存安定性が良好に保たれる。除去方法としては、エパポレーション法、限外濾過法等が例示できる。
本発明における部分加水分解縮合物の数平均分子量は、500〜500000の範囲であることが好ましい。この範囲にあると、塗布用組成物の保存安定性が良好に保たれ、又均一性が高い薄膜が得られる。さらに好ましくは500〜100000、最も好ましくは800〜50000の範囲である。
【0034】
本発明の部分加水分解縮合物は、他の加水分解縮合可能なケイ素化合物(以下、共縮合成分という。)を含んでいても良い。共縮合成分としては、例えば下記式(8)、(9)及び(10)で表されるアルコキシシランからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0035】
X4X5Si(OR1)2 …式(8)
X6Si(OR2)3 …式(9)
Si(OR3)4 …式(10)
【0036】
式(8)〜(10)中、X4、X5及びX6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基又はビニル基を表し、それぞれ同じであっても相異なっていてもよい。R1、R2及びR3は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0037】
式(8)で表されるアルコキシシランとしては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン等が挙げられ、特にジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン及びジフェニルジエトキシシランが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0038】
式(9)で表されるアルコキシシランとしては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン等が挙げられ、特にメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン及びトリエトキシシランが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0039】
式(10)で表されるアルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられ、特にテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0040】
本発明の部分加水分解縮合物中の共縮合成分量としては、5〜95モル%が好ましい。この範囲にあると、低誘電率で高い機械特性を有する膜が得られる。さらに好ましくは10〜90モル%、最も好ましくは20〜80モル%である。
【0041】
本発明の部分加水分解縮合物は、中和、再沈殿、抽出、濾過等の方法で精製されることが好ましい。電子部品関連の用途においては、縮合反応触媒であるカリウム、ナトリウム等の金属イオン及び遊離したハロゲン原子はトランジスタの動作不良や配線の腐食等を引き起こす原因物質と成りうるので充分に精製することが好ましい。
【0042】
本発明の部分加水分解縮合物は、適当な基材上にコーティングして縮合反応を進行させ、硬化させて薄膜を形成するために用いる塗布用組成物の材料として好適に用いることができる。本発明の塗布用組成物は、例えば上述した本発明の部分加水分解縮合物を溶剤に溶解するか、または分散して得られる。溶剤としては、該部分加水分解縮合物が溶解あるいは分散し、所望の方法で所望の膜厚、均一性、又は埋め込み平坦性を有する薄膜が得られれば特に制限は無く、例えば上述した部分加水分解縮合物製造時の反応溶剤と同様のものが挙げられる。塗布用組成物の溶剤は、部分加水分解縮合物製造時の反応溶剤と同じであっても、異なっていても良い。異なる溶剤を使用する場合には、エパポレーション法、限外濾過法等の公知の手法を用いて溶剤置換を行うことができる。
【0043】
本発明の塗布用組成物において、部分加水分解縮合物の濃度は1〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましい。この塗布用組成物は部分加水分解縮合物と溶剤以外に、可塑剤、増粘剤などのコーティング分野で周知の各種添加剤の中から選択される少なくとも1種の添加剤を配合してもよい。また、本発明の塗布用組成物には、前記本発明の新規化合物を配合してもよい。さらに、空孔を有する薄膜を形成する場合には、後述する中空体及び薄膜形成後除去可能な物質等を適宜配合することができる。
【0044】
本発明の薄膜は、前記塗布用組成物を適当な基体表面に塗布して湿潤膜を形成し、次いで溶剤を揮散等で除去した後、または除去すると同時に部分加水分解縮合物を縮合、硬化させて形成される。この湿潤膜の形成方法としては、コーティング方法を採用することが好ましい。例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ダイコート法、バーコート法、ドクターコート法、押し出しコート法、スキャンコート法、はけ塗り法、ポッティング法等の公知のコーティング方法が挙げられる。電子デバイス用絶縁膜として用いる場合には、膜厚の均一性の観点からスピンコート法又はスキャンコート法が好ましい。
【0045】
部分加水分解縮合反応により得られた部分加水分解縮合物は分子内に加水分解性基が加水分解して生成したシラノール基及び未反応の加水分解性基等を含んでいる。これらが多量に膜中に残存していると電気特性及び機械特性が損なわれるため、コーティングを行った後に縮合反応を進行させ、硬化させる。縮合反応を進行させる方法としては、加熱、及び/又は電磁波の照射を行う方法が好ましい。加熱条件は50℃〜500℃で1分間〜360分間が好ましく、80〜450℃で2分間〜240分間がさらに好ましく、80〜400℃で5分間〜120分間が最も好ましい。加熱装置としては、ホットプレート、オーブン、ファーネス(炉)が好ましく、加熱雰囲気は、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気、空気、酸素、減圧などが例示でき、不活性ガス雰囲気及び減圧が好ましい。薄膜の表面平滑性を確保したり、薄膜の微細スペース埋込性を向上させるために、加熱工程を何段階かに分けて実施することが好ましい。
【0046】
電磁波としては、電子線、紫外線等が好ましい。加熱と電磁波照射を併用してもよい。電磁波照射の際の雰囲気は、前記の加熱の場合と同様のものが好ましい。電磁波照射条件としては、例えば電子線を用いる場合、照射エネルギーは0.1〜50keVが好ましく、照射量は1〜1000μC/cm2が好ましい。
薄膜の厚さは0.01〜50μmが好ましく、0.1〜30μmがより好ましい。
【0047】
本発明の薄膜は、さらに比誘電率を低減させるために、空孔を含有する多孔質の薄膜とすることもできる。多孔質の薄膜を得る具体的な手法としては、中空シリカゾル等の中空体、又は薄膜形成後除去可能な物質を塗布用組成物中に添加する手法等が挙げられる。中空体及び薄膜形成後除去可能な物質は、部分加水分解縮合物と共有結合、水素結合等の分子間相互作用を有することが好ましい。この分子間相互作用を有することにより、相分離が抑制され、その結果として平均孔径の小さな多孔質の薄膜が得られる。小さな平均孔径は、多孔質の薄膜の機械特性、耐薬品性、耐プラズマ性等を向上させる。
【0048】
薄膜形成後除去可能な物質の具体例としては、(イ)熱により揮散する物質又は熱により分解して、該分解物が揮散する物質、(ロ)紫外線又は電子線等の電磁波等の照射により分解して、該分解物が揮散する物質、(ハ)薬液によって溶出する物質又は薬液により分解して、該分解物が溶出する物質等が挙げられる。この中で、部分加水分解縮合物硬化時の加熱、及び/又は電磁波照射工程において、該物質の除去が同時に行えるため、(イ)又は(ロ)の物質が好ましく、特に(イ)の物質が好ましい。具体的には、常圧での沸点が200℃〜400℃の化合物、及び熱分解性ポリマー等が例示される。
【0049】
常圧での沸点が200〜400℃の化合物の具体例としては、アミルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレン、テトラデカン、デカリン、テトラリン、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、ペンタンジオール、グリセリン、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジブチル、フタル酸ジメチル等が挙げられる。
【0050】
前記熱分解性ポリマーは、熱分解温度がおよそ400℃以下のポリマーであり、特に熱分解温度が350℃以下のポリマーであることが好ましい。ここで、熱分解温度とは、不活性ガス雰囲気下、10℃/分の昇温条件における熱重量分析(TGA)測定による3%重量減少温度を意味する。具体的には、脂肪族ポリオレフィン、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、アクリル系重合体、スチレン系重合体等が挙げられる。このなかでも、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、アクリル系重合体が良好な熱分解特性を示し、かつ本発明の部分加水分解縮合物との相溶性が良好であるので好ましい。
【0051】
また、デンドリマー、星型ポリマー等、一次構造として分岐構造を有するものも好ましい。分岐構造を有するものを用いるとポリマーの占有体積が小さくなるため、平均孔径の小さな多孔質体が容易に得られる。熱分解性ポリマーの数平均分子量は、300〜100000が好ましく、より好ましくは500〜20000である。数平均分子量がこの範囲にあると、本発明の部分加水分解縮合物との相溶性が良好であり、平均孔径の小さな多孔質の薄膜が得られる。
【0052】
該多孔質の薄膜の空孔率としては、1〜70体積%が好ましい。この範囲にあると空孔を導入することによる機械特性の低下を最小限に押さえることができる。さらに好ましくは、2〜60体積%である。前記中空体又は薄膜形成後除去可能な物質の添加量が空孔率を決定する。
【0053】
本発明の部分加水分解縮合物及び該部分加水分解縮合物を硬化させることにより形成される薄膜の用途としては、各種絶縁膜、保護膜、燃料電池等の各種電池用膜材料、フォトレジスト、反射防止膜、光導波材料、被覆材、電子用部材、封止剤、オーバーコート剤、透明フィルム材、接着剤、繊維材、耐候性塗料、撥水剤、撥油剤、防湿コート剤等が挙げられる。特に、電子デバイス用絶縁膜、多層配線板用絶縁膜、ディスプレイ用絶縁膜の用途が好ましく、さらには層間絶縁膜、ハードマスク膜、エッチストップ膜、CMPストップ膜、又はキャップ膜(銅の拡散防止膜)、フォトレジスト反射防止膜等の電子デバイス用絶縁膜の用途が最も好ましい。
【0054】
電子デバイスとしては、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリ)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリ)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリ)、フラッシュメモリなどの記憶素子、マイクロプロセッサ、DSP、ASICなどの理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体などの集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子などの光電変換素子等が挙げられる。
多層配線板とは、電子デバイス等を実装するための各種基板であり、プリント配線板、ビルドアップ配線板、MCMなどの高密度配線板等が挙げられる。
【0055】
【実施例】
本発明を以下の実施例及び比較例より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。例1〜3は本発明に係る新規化合物(以下、モノマーとも記す。)の合成例、例4〜15は該新規化合物の部分加水分解縮合物の合成、薄膜形成及び物性測定例、例17は空孔を含有する薄膜の形成例、例18は電子デバイス用絶縁膜としての評価例である。例16は比較例である。
【0056】
[例1]モノマーの合成例(モノマーA)
容量2Lの四つ口フラスコに1,4−ジブロモベンゼン(121g)およびジエチルエーテル(1150g)を仕込み、攪拌しながら−78℃に冷却した。そこへn−ブチルリチウム(2.64Mヘキサン溶液、155mL)を内温が−70℃を超えないように1時間かけて滴下した。そのままの温度で1時間攪拌した後、四塩化ケイ素(17.4g)のヘキサン(34.4g)溶液を内温が−70℃を超えないように1時間かけて滴下した。そのままの温度で90分攪拌した後、0℃に昇温した。
内温が0℃になったところで粗液に水(26mL)を加え、エバポレーターで溶媒を留去し、得られた粗液にメタノール(500mL)を加えると固体が析出した。固体を濾過で回収し、メタノール(300mL)で1回、水(400mL)で2回、メタノール(300mL)で1回、最後にメタノールと塩化メチレンとの混合溶媒(100mL)で1回洗浄した。得られた固体を塩化メチレンに溶解させ、不溶物を濾過で取り除き、得られた濾液からエバポレーターで全体の重量が570gになるまで溶媒を留去した。得られた粗液にメタノール(600mL)を加えて固体を析出させ、濾過で回収した。得られた固体をトルエン溶媒で再結晶を行うことで、下記化合物(28.8g)を得た。濾液から再度再結晶を行うことで下記化合物(12.3g)を得た。
【0057】
【化9】
【0058】
次いで、容量2Lのガラス製三ツ口フラスコに、前記化合物(41.0g)、トリエチルアミン(77.3g)、ヨウ化ナトリウム(37.7)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](1.8g)およびN,N−ジメチルホルムアミド(820g)を仕込み、80℃に加熱した。トリエトキシシラン(165.3g)を6時間かけて滴下し、そのままの温度で1時間攪拌し、冷却した。
粗液から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/3)を行った。得られた固体をヘキサンで再結晶を行うことで、化合物(44.2g)を得た。NMR分析およびマススペクトル分析により、下記構造を有する化合物(以下、モノマーAという。)と同定された。
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl3、基準:TMS)δ(ppm): 1.26(t,J=7.1Hz,36H), 3.89(q,J=7.1Hz,24H), 7.56(d,J=7.8Hz,8H), 7.66(d,J=7.8Hz,8H)。
【0059】
【化10】
【0060】
[例2]モノマーの合成例(モノマーB)
トリエトキシシランの代わりにジエトキシメチルシランを用いた以外は例1と同様の実験を行い、化合物(38.2g)を得た。マススペクトル分析により、下記構造を有する化合物(以下、モノマーBという。)と同定された。
【0061】
【化11】
【0062】
[例3]モノマーの合成例(モノマーC)
1,4−ジブロモベンゼンの代わりに4,4’−ジブロモビフェニルを用いた以外は例1と同様の実験を行い、化合物(47.7g)を得た。マススペクトル分析により、下記構造を有する化合物(以下、モノマーCという。)と同定された。
【0063】
【化12】
【0064】
[例4]部分加水分解縮合物の合成、薄膜形成及び物性測定
容量100mlのフラスコにモノマーとしてモノマーAの4.93g(5mmol)を、共加水分解縮合成分としてテトラエトキシシランの1.04g(5mmol)を、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PEGMEAという。)の47.8g(全モノマー量に対して8質量倍量)を仕込み、撹袢してモノマーを溶解させた。室温で激しく撹袢しながら0.7質量%のマレイン酸水溶液1.31g(水72mmol、すなわち水のモル数が全アルコキシシリル基のモル数に対して0.9当量)を約30分かけて滴下し、滴下終了後、60℃、5時間オイルバス上で加熱した。その後、エバポレーターを用いて全量が20.0g(固形分濃度15質量%)となるまで濃縮して、部分加水分解縮合物溶液組成物を得た。キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は、約4000であった。
次に、得られた溶液組成物をポア径0.2μmのPTFE製フィルタでろ過し、4インチシリコンウェハ上にスピンコートして湿潤膜を形成した。スピン条件は2000rpm×30秒とし、ホットプレートによる100℃×90秒、200℃×90秒の乾燥、プリベークの後、縦型炉で400℃×1時間、窒素雰囲気下でのファイナルベークを行って、膜中の部分加水分解縮合物の縮合反応を進行させ、硬化させて薄膜を形成した。形成された薄膜の厚さを分光エリプソメータによって求めたところ、550nmであった。SSM社製SSM−495を用いて、水銀プローバーによるCV測定を行うことにより、薄膜の1MHzの比誘電率を求めたところ、2.9であった。MTS社製ナノインデンターDCM−SA2を用いて、ナノインデンテーション法により、薄膜の弾性率を測定したところ、10GPaであった。
【0065】
[例5]部分加水分解縮合物の合成、薄膜形成及び物性測定
容量20mlのフラスコに0.5質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液の0.28g(水15mmol、すなわち水のモル数が全アルコキシシリル基のモル数に対して1.0当量)とN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという。)の4.72g(全モノマー量に対して4質量倍量)を仕込み室温で攪拌した。その液に、モノマーとしてモノマーAの1.00g(1.0mmol)と共加水分解縮合成分としてメチルトリエトキシシランの0.18g(1.0mmol)をDMAcの2.36g(全モノマー量に対して2質量倍量)に溶解させた液を室温で10分間かけて滴下し、滴下終了後、そのままの温度で5時間攪拌した。その後、1.0質量%の硝酸水溶液の0.14gを加え、エバポレーター用いて全量が4.57gとなるまで濃縮して、部分加水分解縮合物溶液組成物を得た。キャリア溶液としてテトラヒドロフランを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は、約20000であった。
例4と同様の方法にてシリコンウェハ上に前記溶液組成物をスピンコートし、乾燥、ベークして、膜中の部分加水分解縮合物の縮合反応を進行させ、硬化させて薄膜を形成した。形成された薄膜の比誘電率、及び弾性率を求めたところ、それぞれ2.6、7GPaであった。
【0066】
[例6〜16]部分加水分解縮合物の合成、薄膜形成及び物性測定
例6〜15は、例4と同様の方法により、例1〜3で得られたモノマーA〜Cを用い、単独加水分解縮合反応又は他種アルコキシシランとの共加水分解縮合反応を行って部分加水分解縮合物を合成し、薄膜形成及び物性測定を行った。
例16は、前記モノマーA〜C以外のモノマー(テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン)を用い、例4と同様に部分加水分解縮合物を合成し、薄膜形成及び物性測定を行った。
部分加水分解縮合物組成、使用した溶剤種類、及び得られたポリマーの物性(数平均分子量、比誘電率、弾性率)測定結果を表1に示した。この際、溶剤の添加量は全モノマー量に対して8倍量とし、添加する0.6%マレイン酸水溶液量は、水のモル数が全アルコキシシリル基のモル数に対して0.9当量となるようにし、エバポレーターによる濃縮は固形分濃度15質量%となるまで行った。また、製膜評価において、500〜700nm厚さの薄膜が得られるようにスピン回転数を調整した。
【0067】
【表1】
【0068】
[例17]空孔を含有する薄膜の形成
例9で得られた部分加水分解縮合物の溶液組成物(部分加水分解縮合物15質量%シクロヘキサノン溶液)2gに、ポリ(メチルメタクリレート)(Aldrich社製、重量平均分子量約15,000)を0.1g添加し、室温で振とうすることにより溶解させ、ポア径0.2μmのPTFE製フィルタでろ過を行った。4インチシリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレートによる100℃×90秒、200℃×90秒の乾燥、プリベークの後、縦型炉で400℃×1時間、窒素雰囲気下でのファイナルベークを行うことより、空孔を含有するポリマー薄膜を得た。続いて例6と同様の方法により薄膜の比誘電率及び弾性率を測定したところ、それぞれ2.3、7GPaであった。また、理学電機社製ATX−Gを用いたX線小角散乱法により求めた平均空孔径は、約2nmであった。
【0069】
[例18]電子デバイス用絶縁膜としての評価(積層構造の安定性、微細加工及び耐薬品性)
例5で得られた部分加水分解縮合物の溶液組成物(部分加水分解縮合物15質量%DMAc溶液)を8インチシリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレートで150℃×1分乾燥、プリベークを行った。この上に有機SOG(スピン・オン・グラス)溶液(ハネウェル社製ACCUGLASS211)をスピンコートし、ホットプレートで150℃×1分プリベークを行い、さらにホットプレートで400℃×10分、窒素雰囲気下でのファイナルベークを行った。前記の方法により、部分加水分解縮合物の硬化膜(膜厚400nm)/有機SOG膜(膜厚150nm)の積層体が形成されたシリコンウェハを複数枚作成した。前記の方法にて測定した本積層体の比誘電率は2.9であった。
得られたシリコンウェハの1枚を水素雰囲気下425℃で60分ベークを行い、熱ストレスによるクラック耐性を金属顕微鏡にて調べたところ、クラックの発生及びその他の欠陥はなかった。さらに、JIS D0202に記載のゴバン目テープ剥離テストを行ったところ、剥離は見られなかった。
得られたシリコンウェハの別の1枚上にフォトレジストを形成し、フォトリソグラフィーによりパターニングを行った後に、窒素/酸素/アルゴン混合ガスを用いたRIE(リアクティブ・イオン・エッチング)法によりエッチングを行った。フォトレジスト残さ剥離液EKC265(商品名、EKCテクノロジー社製)による洗浄工程を経た後の薄膜を金属顕微鏡にて調べたところ、欠陥等は観察されなかった。また、積層体の比誘電率は2.6を示し、製膜直後の値と変化無かった。すなわち、微細加工及びレジスト除去工程による本積層体へのダメージは無いことが確認された。
【0070】
【発明の効果】
本発明の新規化合物は、比誘電率が低く、かつ機械特性に優れた下記薄膜を形成できる化合物である。
本発明の部分加水分解縮合物、該縮合物を含む塗布用組成物及び該部分加水分解縮合物を硬化させることにより形成される薄膜は、比誘電率が低く、かつ機械特性に優れている。また電子デバイス用絶縁膜の製造工程中のプラズマ処理、洗浄処理に対する耐性が高いため、電子デバイス用絶縁膜としての適用性に優れる。
Claims (8)
- mが1又は2である請求項1に記載の新規化合物。
- 請求項1又は2に記載の新規化合物を部分加水分解縮合させてなる部分加水分解縮合物。
- 請求項1又は2に記載の新規化合物を、共縮合成分として他の加水分解縮合可能なケイ素化合物存在下に部分加水分解縮合させてなる部分加水分解縮合物。
- 請求項3又は4に記載の部分加水分解縮合物と溶剤とを含む塗布用組成物。
- 請求項5に記載の塗布用組成物を用いて基材上に部分加水分解縮合物の膜を形成し、次いで又は該膜の形成と同時に、該部分加水分解縮合物を硬化させることにより形成される薄膜。
- 膜中に空孔を含有する請求項6に記載の薄膜。
- 請求項6又は7に記載の薄膜を有する電子・電気部品。
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