JP2005001171A - 摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗膜の密着性及び成形性に優れ,かつ,優れた導電性及び摺動性を有するプレコートアルミニウム合金板を提供すること。
【解決手段】基板2の片面又は両面に形成した化成皮膜3とその上に形成した導電層4とよりなる。導電層4は,ベース塗膜40と,0.2〜5μmの厚さ及び2〜50μmの長径を有する鱗片状のNiフィラー45又は0.3〜20μmの直径を有する球状のNiフィラー45の1種あるいは2種と,インナーワックスとよりなる。導電層4の乾燥後全体重量は,0.3〜5g/m2である。Niフィラー45の含有量は,導電層4の乾燥後全体重量100重量部に対し,3〜70重量部である。インナーワックスの含有量は,導電層4の乾燥後全体重量100重量部に対し,0.01〜10重量部である。導電層4は,表面の平均粗さRaが0.1〜0.8μmであると共に,摩擦係数が0.03〜0.5である。
【選択図】 図1
【解決手段】基板2の片面又は両面に形成した化成皮膜3とその上に形成した導電層4とよりなる。導電層4は,ベース塗膜40と,0.2〜5μmの厚さ及び2〜50μmの長径を有する鱗片状のNiフィラー45又は0.3〜20μmの直径を有する球状のNiフィラー45の1種あるいは2種と,インナーワックスとよりなる。導電層4の乾燥後全体重量は,0.3〜5g/m2である。Niフィラー45の含有量は,導電層4の乾燥後全体重量100重量部に対し,3〜70重量部である。インナーワックスの含有量は,導電層4の乾燥後全体重量100重量部に対し,0.01〜10重量部である。導電層4は,表面の平均粗さRaが0.1〜0.8μmであると共に,摩擦係数が0.03〜0.5である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は,例えば電気機器用筐体等に用いられ,特にCD−ROMドライブ等の帯電防止機能を発揮しながら摺動性が要求される用途に用いられる,摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より,アルミニウム合金板の表面を合成樹脂塗料にてコーティングしてなるプレコートアルミニウム合金板は,耐食性に優れ,軽量であり,かつ,成形後に塗装を施す必要がないという優れた特性を有している。そのため,プレコートアルミニウム合金板は,家電製品やOA機器の筐体等の材料として広く用いられている。
【0003】
上記合成樹脂塗料は電気的絶縁性を有していることから,帯電防止性能が不十分であるという難点を有している。これを解決する手段として,導電物質を塗膜中に含有させた種々の金属塗装板が提案されている。
例えば,0.1〜10μm厚さのポリエステル系,エポキシ系,フェノール系,アルキド系の樹脂に,最大長径0.1〜100μmの球状,スパイク状,鱗片状のNiを,樹脂100重量部に対して2〜60質量部含有させたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また,片面を導電性塗膜,もう片面を有機樹脂塗膜として,導電性塗膜には,厚さ1.0μm以下,最大長径100μm,平均15μm,樹脂100重量部に対し11〜200重量部の鱗片状Niと,最大44μm,平均2.5μm,樹脂100重量部に対し0〜10重量部の鎖状Niを含有させたものが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また,有機樹脂溶液に厚さ0.1〜5μm,幅1〜100μmのフレーク状Ni粉末及びフレーク状Al粉末を配合した組成物を電縫管に塗布・乾燥する方法も提案されている(特許文献3参照)。
また,塗膜中にNi微粒子を含有させたものもある(例えば,特許文献4〜6)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−205730号公報
【特許文献2】
特開平8−267656号公報
【特許文献3】
特開平7−211131号公報
【特許文献4】
特開平7−246679号公報
【特許文献5】
特開平5−320934号公報
【特許文献6】
特開平5−65664号公報
【0007】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上述したいずれの従来技術においても,有機樹脂に導電性を付与することはできるものの,摺動性に対しては不十分であった。特にCD−ROMドライブ用筐体などでは,何度もドライブを出し入れすることから,導電性に加え,摺動性も要求されるようになっている。しかし,従来技術は,この要求に満足するものではない。
【0008】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,塗膜の密着性及び成形性に優れ,かつ,優れた導電性及び摺動性を有するプレコートアルミニウム合金板を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
本発明は,アルミニウム合金板よりなる基板と,該基板の片面又は両面に形成した化成皮膜と,該化成皮膜上に形成した摺動性に優れた導電層とよりなり,
該導電層は,合成樹脂よりなるベース塗膜と,該ベース塗膜中に含有された,0.2〜5μmの厚さ及び2〜50μmの長径を有する鱗片状のNiフィラー,又は0.3〜20μmの直径を有する球状のNiフィラーの1種あるいは2種と,上記ベース塗膜中に含有されたインナーワックスとよりなり,
上記導電層の乾燥後全体重量は,0.3〜5g/m2であり,
上記Niフィラーの含有量は,上記導電層の乾燥後全体重量100重量部に対し,3〜70重量部(上記Niフィラーを2種含有する場合にはその合計量)であり,
上記インナーワックスの含有量は,上記導電層の乾燥後全体重量100重量部に対し,0.01〜10重量部であり,
かつ,上記導電層は,その表面の平均粗さ(上記基板の圧延方向に対して直角方向の平均粗さ)Raが0.1〜0.8μmであると共に,摩擦係数が0.03〜0.5であることを特徴とする摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板にある(請求項1)。
【0010】
本発明において最も注目すべき点は,上記特定の厚さと長径を有する鱗片状のNiフィラー,あるいは上記特定の直径を有する球状のNiフィラーのうち1種又は2種を,上記特定の含有量で含有させ,さらに,これに加えて,上記特定の含有量のインナーワックスをも含有させることにより,上記導電層の表面の平均粗さRaを0.1〜0.8μmとし,かつ,摩擦係数を0.03〜0.5に調整した点にある。
そして,この特定の平均粗さ及び摩擦係数特性を具備することによって,上記導電層は,導電性と摺動性とを合わせ持つことができるのである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明における上記基板となるアルミニウム合金としては,用途に応じて様々なアルミニウム合金を適用することができる。具体的には,1000系,3000系,5000系,6000系その他の種々の合金系がある。
【0012】
また,上記基板上に形成される化成皮膜はその片面又は両面に形成され,この化成皮膜としては,リン酸クロメート,クロム酸クロメート等のクロメート処理,クロム化合物以外のリン酸チタンやリン酸ジルコニウム,リン酸モリブデン,リン酸亜鉛等によるノンクロメート処理等の化学皮膜処理,いわゆる化成処理により得られる皮膜が採用される。
【0013】
この化成皮膜よりなる下地処理層の存在によって,アルミニウム合金板よりなる基板と導電層を構成する上記ベース塗膜との密着性を効果的に向上させることができる。また,優れた耐食性が実現されて,水,塩素化合物等の腐食性物質がアルミニウム合金板の表面に浸透した際に惹起される塗膜下腐食が抑制され,塗膜割れや塗膜剥離の防止を図ることができる。
なお,上記クロメート処理やノンクロメート処理等の化成処理方法には,反応型及び塗布型があるが,本発明においてはいずれの手法が採用されても何ら差し支えない。
【0014】
また,上記導電層の上記ベース塗膜を形成する合成樹脂塗料は,Niフィラーとの相性が良く,柔軟性,密着性及び耐食性が良好である各種の合成樹脂塗料を適用することができる。例えば,ポリアクリル樹脂系塗料,ポリエステル樹脂系塗料,エポキシ樹脂系塗料,フッ素樹脂系塗料,ウレタン樹脂系塗料等がある。
【0015】
また,上記ベース塗膜となる合成樹脂塗料を塗装する方法としては,特に制限されるものではないが,ロールコート法,バーコート法,浸漬塗布法,スプレー法等の公知の各種手法を採用しうる。また,この合成樹脂塗料を上記基板の片面又は両面に塗布した後,硬化させるための硬化条件,即ち焼き付け条件等についても,各合成樹脂塗料の種類等に応じて種々の条件を選択することができる。
【0016】
また,上記導電層の量(塗膜量)は,上記のごとく,乾燥後の全体重量(ベース塗膜,Niフィラー,及びインナーワックスを含む合計重量)が0.3〜5g/m2の範囲となるように調整する。この塗膜量が0.3g/m2未満の場合には,含有されるNiフィラーの量も制限され導電性が低下すると共に,耐食性の維持が困難となるおそれがある。5g/m2を超える場合には,Niフィラーによる導電層表面(塗膜表面)の粗さ制御が困難となり,その平均粗さRaを0.1μm以上にすることが困難となり,摺動性が低下する。より好ましい範囲は,0.7〜1.5g/m2である。
【0017】
次に,上記導電層に含有させる上記Niフィラーであるが,その形状は,鱗片状あるいは球状,あるいは両者の混合であればよい。
鱗片状の場合,厚さは0.2〜5μm,長径は2〜50μmとする。厚さが0.2μm未満あるいは長径が2μm未満の場合には,導電性が低下すると共に,塗膜表面の平均粗さRaを0.1μm以上にすることが困難となり,摺動性が低下する。厚さが5μmを超える,あるいは長径が50μmを超える場合には,導電層表面の平均粗さRaを0.8μm以下に保つことが困難となり,この場合にも摺動性が低下する。より好ましいサイズは,厚さ0.5〜3μm,長径5〜30μmである。
【0018】
球状の場合,直径は0.3〜20μmとする。0.3μm未満の場合,導電性が低下すると共に,塗膜表面の平均粗さRaを0.1μm以上にすることが困難となり,摺動性が低下する。20μmを超える場合,導電層表面の平均粗さRaを0.8μm以下に保つことが困難となり,この場合も摺動性が低下する。より好ましい直径は1〜15μmである。
【0019】
なお,鱗片状Niフィラーと球状Niフィラーを混合する場合は,それらの重量比を,鱗片状Niフィラー量/球状Niフィラー量=1/3〜19/1とすることが好ましい上記重量比が1/3未満あるいは19/1を超える場合には,鱗片状Niフィラーと球状Niフィラーの存在バランスが悪く,導電性が低下しやすくなる。
【0020】
また,球状のNiフィラーの場合,個々のNiフィラーが真球に近く,かつ,ベース塗膜厚に対し1〜5倍の直径である方が導電性に対して有利である。ここでいう真球とは,最大径/最小径=0.7〜1のことを言う。
【0021】
Niフィラーの含有量は,上記導電層の乾燥後の全体重量(ベース塗膜,Niフィラー,及びインナーワックスを含む合計重量)を100とした場合,3〜70重量部とする。鱗片状と球状の混合の場合は,両者の合計量が3〜70重量部とする。3重量部未満の場合,導電性が低下すると共に,塗膜表面の平均粗さRaを0.1μm以上にすることが困難となり,摺動性が低下する。70重量部を超える場合,導電層表面の平均粗さRaを0.8μm以下に保つことが困難となり,この場合にも摺動性が低下する。
【0022】
次に,上記導電層には,該導電層の表面の摩擦係数を低減させるためのインナーワックスを含有する。インナーワックスの存在によって,摩擦係数低減のみならず,成形性の向上も図ることができる。そのための含有量は,上記導電層の乾燥後の全体重量(ベース塗膜,Niフィラー,及びインナーワックスを含む合計重量)を100とした場合に,0.01〜10重量部とする。0.01重量部未満の場合,前記効果が得られない。10重量部を超える場合,上記プレコートアルミニウム合金板を量産する際の製造過程においてコイルアップ等した場合に,インナーワックスが染み出して生産性を低下させる等の問題がある。
ここで,上記インナーワックスとしては,例えば,ラノリン,カルナバ,ポリエチレン等がある。
【0023】
また,上記導電層の表面の平均粗さRaは,0.1μm〜0.8μmとする。この平均粗さRaが0.1μm未満の場合には,摺動性が低下する。また,0.8μmを超える場合においても,摺動性が低下する。より好ましい平均粗さRaの上限値は,0.5μmである。
【0024】
また,上記導電層の表面の摩擦係数は,0.03〜0.5とする。摩擦係数は小さければ小さいほどよいが,Niフィラーとインナーワックスを含有する合成樹脂塗膜において,表面の摩擦係数を0.03未満とすることは困難である。0.5を超える場合は,摺動性が低下する。より好ましい摩擦係数の上限は0.3である。
【0025】
上記摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板は,電子機器用筐体あるいは電気機器用筐体に用いられることがことが好ましい。この場合には,上述した優れた導電性および摺動性,さらには成形性を生かして,優れた電気機器用筐体あるいは電子機器用筐体を得ることができる。
【0026】
なお,上記電気機器用筐体あるいは電子機器用筐体としては,例えば,CD−ROM,DVD,PDA等の電子機器の筐体,FDD,MD,MO等の記憶媒体ケースのシャッター部分,パソコン本体,テレビ等の電気機器の筐体,その他様々なものがある。
【0027】
【実施例】
本発明の実施例に係る摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板につき,さらに具体的に説明する。
本例では,表3に示すごとく,本発明品としての5種類の試料E1〜E5と,比較品としての6種類の試料C1〜C6を作製し,種々の性能評価試験を実施した。
【0028】
試料E1〜E5の摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板1は,いずれも,図1に示すごとく,アルミニウム合金板よりなる基板2と,該基板2の片面に形成した化成皮膜3と,該化成皮膜3上に形成した摺動性に優れた導電層4とよりなる。導電層4は,合成樹脂よりなるベース塗膜40と,ベース塗膜40中に含有された鱗片状および/または球状のNiフィラー45と,さらにベース塗膜40中に含有されたインナーワックス(図示略)よりなると共に,その塗膜量は5g/mm2以下である。
【0029】
試料C1〜C6は,基本的な構成は試料E1〜E5と同様であるが,導電層に含有するNiフィラーの大きさ及び量,インナーワックス量のいずれかを本発明の範囲外としたものである。
これらの試料E1〜E5,C1〜C6を作製するに当たっては,まず,アルミニウム合金板よりなる基板2として,板厚1.0mmの5052−H34材を準備した。
【0030】
次に,この基板2に,化成皮膜3を形成する化成皮膜処理を施した。表1には,本例で採用した5種類の化成処理(a〜e)を示す。
化成処理aは,リン酸クロメート処理によって,クロム量が20mg/m2となるように反応型クロメート皮膜を形成するものである。具体的には,化成処理液に試料を浸漬するどぶ漬け法により化成処理を行い,その後,約100℃の雰囲気で乾燥させた。
【0031】
化成処理bは,クロム酸クロメート処理によって,クロム量が100mg/m2となるように反応型クロメート皮膜を形成するものである。処理方法は上記化成処理aと同様である。
化成処理cは,ジルコニウム処理によって,ジルコニウム量が20mg/m2となるように反応型ノンクロメート皮膜を形成するものである。処理方法は上記化成処理aと同様である。
【0032】
化成処理dは,塗布型クロメート処理によって,クロム量が20mg/m2となるように塗布型クロメート皮膜を形成するものである。具体的には,基板の脱脂処理を行った後,バーコート法により処理剤を塗布し,その後,約100℃の雰囲気で乾燥させた。
化成処理eは,塗布型ジルコニウム処理によって,ジルコニウム量が20mg/m2となるように塗布型ノンクロメート皮膜を形成するものである。処理方法は上記化成処理dと同様である。
【0033】
次に,化成皮膜3の上に,導電層4としての合成樹脂塗膜(ベース塗膜40中にNiフィラー45及びインナーワックスを含有するもの)を形成した。合成樹脂塗料の塗装方法としては上述した様々な方法があるが,本例では,バーコート法により行い,その後,基板の表面温度が約230℃となる雰囲気に40秒保持する焼き付け処理を行って硬化させた。
また,表3に示すごとく,各試料によって,ベース塗膜となる合成樹脂塗料の種類,含有させるNiフィラーの種類,塗膜厚(乾燥時),インナーワックスの含有量等を変化させた。
【0034】
上記合成樹脂塗料としては,表2に示すごとく,5種類のもの(A〜E)を準備した。
合成樹脂塗料Aはポリアクリル樹脂系塗料,合成樹脂塗料Bはポリエステル樹脂系塗料,合成樹脂塗料Cはエポキシ樹脂系塗料,合成樹脂塗料Dはフッ素樹脂系塗料,合成樹脂塗料Dはウレタン樹脂系塗料である。
また,上記インナーワックスととしては,ポリエチレンを用いた。
【0035】
また,表3に示すごとく,導電層40としての合成樹脂塗膜量(ベース塗膜,Niフィラー,及びインナーワックスを含む合計重量)は0.5〜10g/m2の範囲で変化させ,Niフィラー含有量は導電層全体の乾燥重量を100として,1〜90の範囲で変化させ,インナーワックス量は導電層全体の乾燥重量を100として,0.005〜5の範囲で変化させ,導電層の表面粗さRaは,0.05〜1.2μmの範囲で変化させた。
【0036】
次に,本例では,表4に示す9種類の試料(E1〜E5及びC1〜C6)に対して,表4に示すごとく,各種の評価試験等を行った。
【0037】
<摺動性>
摺動性は,図2に示されるバウデン試験にて行った。即ち,荷重100gで直径3/16インチのSUJ2製鋼球51を,サンプル台59上に載置した試料50の導電層の表面において摺動させ,摺動1回,10回,50回100回目のひずみ量と摩擦力から摩擦係数を計算し,平均値をもって摩擦係数とした。実際の摩擦係数を表3に示す。
評価点は5段階とし,0.03〜0.09の場合を5点,0.1〜0.19の場合を4点,0.2〜0.5の場合を3点,0.6〜0.8の場合を2点,0.9以上の場合を1点とした。
【0038】
<導電性>
導電性は,針状電極法により電気抵抗値を測定することにより評価した。針状電極法は,0.2mmφの球面状の針先を有する純銅製の針を,導電層の表面に載せ,針先が導電層を貫通しない荷重である50〜200gの荷重を針に付与し,この状態で,脱膜して露出させた基板と針との間を導通させることにより,針先が接触している部分の導電層の電気抵抗値を測定する方法である。本例では,針に付与する荷重を一律100gとして行った。
【0039】
<プレス加工性>
プレス加工性は,図3に示されるように,各試料50に対して,それぞれ曲げ加工を繰り返して行い,曲げ加工部の導電層の塗膜割れが消滅する曲げ回数で評価した。
評価点は5段階とし,曲げ回数1回の場合を5点,曲げ回数2回の場合を4点,曲げ回数3回の場合を3点,曲げ回数4回の場合を2点,曲げ回数5回の場合を1点とした。
【0040】
<塗膜密着性>
塗膜密着性は,試料を沸騰水に2時間浸漬させた後,JIS K5400に規定された碁盤目テープ剥離試験を行い,1mm×1mmの碁盤目総数100個中の塗膜の残存数により評価した。
評価点は5段階とし,残存数100個の場合を5点,残存数90個以上100個未満の場合を4点,残存数80個以上90個未満の場合を3点,残存数60個以上80個未満の場合を2点,残存数60個未満の場合を14点とした。
【0041】
<耐食性>
耐食性は,試料の導電層の表面から,カッターナイフを用いてクロスカットを入れ,JIS K5400に規定された塩水噴霧試験に準拠し,噴霧時間を720時間として行った後,試料の外観を観察した。
評価点は5段階とし,外観上変化ない場合を5点,0.5mm未満の塗膜膨れがあった場合を4点,0.5mm以上1mm未満の塗膜膨れがあった場合を3点,1mm以上3mm未満の塗膜膨れがあった場合を2点,3mm以上の塗膜膨れがあった場合を1点とした。
【0042】
表4に評価結果を示す。
表4より知られるごとく,本発明品としての試料E1〜E5は,すべての評価項目において優れた特性を示した。
一方,比較品としての試料C1〜C6は,すべて,いずれかの評価項目であまり良くない結果が得られた。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における,導電性プレコートアルミニウム合金板の構造を示す説明図。
【図2】実施例における,耐傷付き性の評価方法であるバウデン試験方法を示す説明図。
【図3】実施例における,プレス加工性の評価方法を示す説明図。
【符号の説明】
1...導電性プレコートアルミニウム合金板,
2...基板,
3...化成皮膜,
4...導電層,
45...Niフィラー,
50...試料,
51...鋼球,
【技術分野】
本発明は,例えば電気機器用筐体等に用いられ,特にCD−ROMドライブ等の帯電防止機能を発揮しながら摺動性が要求される用途に用いられる,摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より,アルミニウム合金板の表面を合成樹脂塗料にてコーティングしてなるプレコートアルミニウム合金板は,耐食性に優れ,軽量であり,かつ,成形後に塗装を施す必要がないという優れた特性を有している。そのため,プレコートアルミニウム合金板は,家電製品やOA機器の筐体等の材料として広く用いられている。
【0003】
上記合成樹脂塗料は電気的絶縁性を有していることから,帯電防止性能が不十分であるという難点を有している。これを解決する手段として,導電物質を塗膜中に含有させた種々の金属塗装板が提案されている。
例えば,0.1〜10μm厚さのポリエステル系,エポキシ系,フェノール系,アルキド系の樹脂に,最大長径0.1〜100μmの球状,スパイク状,鱗片状のNiを,樹脂100重量部に対して2〜60質量部含有させたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また,片面を導電性塗膜,もう片面を有機樹脂塗膜として,導電性塗膜には,厚さ1.0μm以下,最大長径100μm,平均15μm,樹脂100重量部に対し11〜200重量部の鱗片状Niと,最大44μm,平均2.5μm,樹脂100重量部に対し0〜10重量部の鎖状Niを含有させたものが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また,有機樹脂溶液に厚さ0.1〜5μm,幅1〜100μmのフレーク状Ni粉末及びフレーク状Al粉末を配合した組成物を電縫管に塗布・乾燥する方法も提案されている(特許文献3参照)。
また,塗膜中にNi微粒子を含有させたものもある(例えば,特許文献4〜6)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−205730号公報
【特許文献2】
特開平8−267656号公報
【特許文献3】
特開平7−211131号公報
【特許文献4】
特開平7−246679号公報
【特許文献5】
特開平5−320934号公報
【特許文献6】
特開平5−65664号公報
【0007】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上述したいずれの従来技術においても,有機樹脂に導電性を付与することはできるものの,摺動性に対しては不十分であった。特にCD−ROMドライブ用筐体などでは,何度もドライブを出し入れすることから,導電性に加え,摺動性も要求されるようになっている。しかし,従来技術は,この要求に満足するものではない。
【0008】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,塗膜の密着性及び成形性に優れ,かつ,優れた導電性及び摺動性を有するプレコートアルミニウム合金板を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
本発明は,アルミニウム合金板よりなる基板と,該基板の片面又は両面に形成した化成皮膜と,該化成皮膜上に形成した摺動性に優れた導電層とよりなり,
該導電層は,合成樹脂よりなるベース塗膜と,該ベース塗膜中に含有された,0.2〜5μmの厚さ及び2〜50μmの長径を有する鱗片状のNiフィラー,又は0.3〜20μmの直径を有する球状のNiフィラーの1種あるいは2種と,上記ベース塗膜中に含有されたインナーワックスとよりなり,
上記導電層の乾燥後全体重量は,0.3〜5g/m2であり,
上記Niフィラーの含有量は,上記導電層の乾燥後全体重量100重量部に対し,3〜70重量部(上記Niフィラーを2種含有する場合にはその合計量)であり,
上記インナーワックスの含有量は,上記導電層の乾燥後全体重量100重量部に対し,0.01〜10重量部であり,
かつ,上記導電層は,その表面の平均粗さ(上記基板の圧延方向に対して直角方向の平均粗さ)Raが0.1〜0.8μmであると共に,摩擦係数が0.03〜0.5であることを特徴とする摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板にある(請求項1)。
【0010】
本発明において最も注目すべき点は,上記特定の厚さと長径を有する鱗片状のNiフィラー,あるいは上記特定の直径を有する球状のNiフィラーのうち1種又は2種を,上記特定の含有量で含有させ,さらに,これに加えて,上記特定の含有量のインナーワックスをも含有させることにより,上記導電層の表面の平均粗さRaを0.1〜0.8μmとし,かつ,摩擦係数を0.03〜0.5に調整した点にある。
そして,この特定の平均粗さ及び摩擦係数特性を具備することによって,上記導電層は,導電性と摺動性とを合わせ持つことができるのである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明における上記基板となるアルミニウム合金としては,用途に応じて様々なアルミニウム合金を適用することができる。具体的には,1000系,3000系,5000系,6000系その他の種々の合金系がある。
【0012】
また,上記基板上に形成される化成皮膜はその片面又は両面に形成され,この化成皮膜としては,リン酸クロメート,クロム酸クロメート等のクロメート処理,クロム化合物以外のリン酸チタンやリン酸ジルコニウム,リン酸モリブデン,リン酸亜鉛等によるノンクロメート処理等の化学皮膜処理,いわゆる化成処理により得られる皮膜が採用される。
【0013】
この化成皮膜よりなる下地処理層の存在によって,アルミニウム合金板よりなる基板と導電層を構成する上記ベース塗膜との密着性を効果的に向上させることができる。また,優れた耐食性が実現されて,水,塩素化合物等の腐食性物質がアルミニウム合金板の表面に浸透した際に惹起される塗膜下腐食が抑制され,塗膜割れや塗膜剥離の防止を図ることができる。
なお,上記クロメート処理やノンクロメート処理等の化成処理方法には,反応型及び塗布型があるが,本発明においてはいずれの手法が採用されても何ら差し支えない。
【0014】
また,上記導電層の上記ベース塗膜を形成する合成樹脂塗料は,Niフィラーとの相性が良く,柔軟性,密着性及び耐食性が良好である各種の合成樹脂塗料を適用することができる。例えば,ポリアクリル樹脂系塗料,ポリエステル樹脂系塗料,エポキシ樹脂系塗料,フッ素樹脂系塗料,ウレタン樹脂系塗料等がある。
【0015】
また,上記ベース塗膜となる合成樹脂塗料を塗装する方法としては,特に制限されるものではないが,ロールコート法,バーコート法,浸漬塗布法,スプレー法等の公知の各種手法を採用しうる。また,この合成樹脂塗料を上記基板の片面又は両面に塗布した後,硬化させるための硬化条件,即ち焼き付け条件等についても,各合成樹脂塗料の種類等に応じて種々の条件を選択することができる。
【0016】
また,上記導電層の量(塗膜量)は,上記のごとく,乾燥後の全体重量(ベース塗膜,Niフィラー,及びインナーワックスを含む合計重量)が0.3〜5g/m2の範囲となるように調整する。この塗膜量が0.3g/m2未満の場合には,含有されるNiフィラーの量も制限され導電性が低下すると共に,耐食性の維持が困難となるおそれがある。5g/m2を超える場合には,Niフィラーによる導電層表面(塗膜表面)の粗さ制御が困難となり,その平均粗さRaを0.1μm以上にすることが困難となり,摺動性が低下する。より好ましい範囲は,0.7〜1.5g/m2である。
【0017】
次に,上記導電層に含有させる上記Niフィラーであるが,その形状は,鱗片状あるいは球状,あるいは両者の混合であればよい。
鱗片状の場合,厚さは0.2〜5μm,長径は2〜50μmとする。厚さが0.2μm未満あるいは長径が2μm未満の場合には,導電性が低下すると共に,塗膜表面の平均粗さRaを0.1μm以上にすることが困難となり,摺動性が低下する。厚さが5μmを超える,あるいは長径が50μmを超える場合には,導電層表面の平均粗さRaを0.8μm以下に保つことが困難となり,この場合にも摺動性が低下する。より好ましいサイズは,厚さ0.5〜3μm,長径5〜30μmである。
【0018】
球状の場合,直径は0.3〜20μmとする。0.3μm未満の場合,導電性が低下すると共に,塗膜表面の平均粗さRaを0.1μm以上にすることが困難となり,摺動性が低下する。20μmを超える場合,導電層表面の平均粗さRaを0.8μm以下に保つことが困難となり,この場合も摺動性が低下する。より好ましい直径は1〜15μmである。
【0019】
なお,鱗片状Niフィラーと球状Niフィラーを混合する場合は,それらの重量比を,鱗片状Niフィラー量/球状Niフィラー量=1/3〜19/1とすることが好ましい上記重量比が1/3未満あるいは19/1を超える場合には,鱗片状Niフィラーと球状Niフィラーの存在バランスが悪く,導電性が低下しやすくなる。
【0020】
また,球状のNiフィラーの場合,個々のNiフィラーが真球に近く,かつ,ベース塗膜厚に対し1〜5倍の直径である方が導電性に対して有利である。ここでいう真球とは,最大径/最小径=0.7〜1のことを言う。
【0021】
Niフィラーの含有量は,上記導電層の乾燥後の全体重量(ベース塗膜,Niフィラー,及びインナーワックスを含む合計重量)を100とした場合,3〜70重量部とする。鱗片状と球状の混合の場合は,両者の合計量が3〜70重量部とする。3重量部未満の場合,導電性が低下すると共に,塗膜表面の平均粗さRaを0.1μm以上にすることが困難となり,摺動性が低下する。70重量部を超える場合,導電層表面の平均粗さRaを0.8μm以下に保つことが困難となり,この場合にも摺動性が低下する。
【0022】
次に,上記導電層には,該導電層の表面の摩擦係数を低減させるためのインナーワックスを含有する。インナーワックスの存在によって,摩擦係数低減のみならず,成形性の向上も図ることができる。そのための含有量は,上記導電層の乾燥後の全体重量(ベース塗膜,Niフィラー,及びインナーワックスを含む合計重量)を100とした場合に,0.01〜10重量部とする。0.01重量部未満の場合,前記効果が得られない。10重量部を超える場合,上記プレコートアルミニウム合金板を量産する際の製造過程においてコイルアップ等した場合に,インナーワックスが染み出して生産性を低下させる等の問題がある。
ここで,上記インナーワックスとしては,例えば,ラノリン,カルナバ,ポリエチレン等がある。
【0023】
また,上記導電層の表面の平均粗さRaは,0.1μm〜0.8μmとする。この平均粗さRaが0.1μm未満の場合には,摺動性が低下する。また,0.8μmを超える場合においても,摺動性が低下する。より好ましい平均粗さRaの上限値は,0.5μmである。
【0024】
また,上記導電層の表面の摩擦係数は,0.03〜0.5とする。摩擦係数は小さければ小さいほどよいが,Niフィラーとインナーワックスを含有する合成樹脂塗膜において,表面の摩擦係数を0.03未満とすることは困難である。0.5を超える場合は,摺動性が低下する。より好ましい摩擦係数の上限は0.3である。
【0025】
上記摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板は,電子機器用筐体あるいは電気機器用筐体に用いられることがことが好ましい。この場合には,上述した優れた導電性および摺動性,さらには成形性を生かして,優れた電気機器用筐体あるいは電子機器用筐体を得ることができる。
【0026】
なお,上記電気機器用筐体あるいは電子機器用筐体としては,例えば,CD−ROM,DVD,PDA等の電子機器の筐体,FDD,MD,MO等の記憶媒体ケースのシャッター部分,パソコン本体,テレビ等の電気機器の筐体,その他様々なものがある。
【0027】
【実施例】
本発明の実施例に係る摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板につき,さらに具体的に説明する。
本例では,表3に示すごとく,本発明品としての5種類の試料E1〜E5と,比較品としての6種類の試料C1〜C6を作製し,種々の性能評価試験を実施した。
【0028】
試料E1〜E5の摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板1は,いずれも,図1に示すごとく,アルミニウム合金板よりなる基板2と,該基板2の片面に形成した化成皮膜3と,該化成皮膜3上に形成した摺動性に優れた導電層4とよりなる。導電層4は,合成樹脂よりなるベース塗膜40と,ベース塗膜40中に含有された鱗片状および/または球状のNiフィラー45と,さらにベース塗膜40中に含有されたインナーワックス(図示略)よりなると共に,その塗膜量は5g/mm2以下である。
【0029】
試料C1〜C6は,基本的な構成は試料E1〜E5と同様であるが,導電層に含有するNiフィラーの大きさ及び量,インナーワックス量のいずれかを本発明の範囲外としたものである。
これらの試料E1〜E5,C1〜C6を作製するに当たっては,まず,アルミニウム合金板よりなる基板2として,板厚1.0mmの5052−H34材を準備した。
【0030】
次に,この基板2に,化成皮膜3を形成する化成皮膜処理を施した。表1には,本例で採用した5種類の化成処理(a〜e)を示す。
化成処理aは,リン酸クロメート処理によって,クロム量が20mg/m2となるように反応型クロメート皮膜を形成するものである。具体的には,化成処理液に試料を浸漬するどぶ漬け法により化成処理を行い,その後,約100℃の雰囲気で乾燥させた。
【0031】
化成処理bは,クロム酸クロメート処理によって,クロム量が100mg/m2となるように反応型クロメート皮膜を形成するものである。処理方法は上記化成処理aと同様である。
化成処理cは,ジルコニウム処理によって,ジルコニウム量が20mg/m2となるように反応型ノンクロメート皮膜を形成するものである。処理方法は上記化成処理aと同様である。
【0032】
化成処理dは,塗布型クロメート処理によって,クロム量が20mg/m2となるように塗布型クロメート皮膜を形成するものである。具体的には,基板の脱脂処理を行った後,バーコート法により処理剤を塗布し,その後,約100℃の雰囲気で乾燥させた。
化成処理eは,塗布型ジルコニウム処理によって,ジルコニウム量が20mg/m2となるように塗布型ノンクロメート皮膜を形成するものである。処理方法は上記化成処理dと同様である。
【0033】
次に,化成皮膜3の上に,導電層4としての合成樹脂塗膜(ベース塗膜40中にNiフィラー45及びインナーワックスを含有するもの)を形成した。合成樹脂塗料の塗装方法としては上述した様々な方法があるが,本例では,バーコート法により行い,その後,基板の表面温度が約230℃となる雰囲気に40秒保持する焼き付け処理を行って硬化させた。
また,表3に示すごとく,各試料によって,ベース塗膜となる合成樹脂塗料の種類,含有させるNiフィラーの種類,塗膜厚(乾燥時),インナーワックスの含有量等を変化させた。
【0034】
上記合成樹脂塗料としては,表2に示すごとく,5種類のもの(A〜E)を準備した。
合成樹脂塗料Aはポリアクリル樹脂系塗料,合成樹脂塗料Bはポリエステル樹脂系塗料,合成樹脂塗料Cはエポキシ樹脂系塗料,合成樹脂塗料Dはフッ素樹脂系塗料,合成樹脂塗料Dはウレタン樹脂系塗料である。
また,上記インナーワックスととしては,ポリエチレンを用いた。
【0035】
また,表3に示すごとく,導電層40としての合成樹脂塗膜量(ベース塗膜,Niフィラー,及びインナーワックスを含む合計重量)は0.5〜10g/m2の範囲で変化させ,Niフィラー含有量は導電層全体の乾燥重量を100として,1〜90の範囲で変化させ,インナーワックス量は導電層全体の乾燥重量を100として,0.005〜5の範囲で変化させ,導電層の表面粗さRaは,0.05〜1.2μmの範囲で変化させた。
【0036】
次に,本例では,表4に示す9種類の試料(E1〜E5及びC1〜C6)に対して,表4に示すごとく,各種の評価試験等を行った。
【0037】
<摺動性>
摺動性は,図2に示されるバウデン試験にて行った。即ち,荷重100gで直径3/16インチのSUJ2製鋼球51を,サンプル台59上に載置した試料50の導電層の表面において摺動させ,摺動1回,10回,50回100回目のひずみ量と摩擦力から摩擦係数を計算し,平均値をもって摩擦係数とした。実際の摩擦係数を表3に示す。
評価点は5段階とし,0.03〜0.09の場合を5点,0.1〜0.19の場合を4点,0.2〜0.5の場合を3点,0.6〜0.8の場合を2点,0.9以上の場合を1点とした。
【0038】
<導電性>
導電性は,針状電極法により電気抵抗値を測定することにより評価した。針状電極法は,0.2mmφの球面状の針先を有する純銅製の針を,導電層の表面に載せ,針先が導電層を貫通しない荷重である50〜200gの荷重を針に付与し,この状態で,脱膜して露出させた基板と針との間を導通させることにより,針先が接触している部分の導電層の電気抵抗値を測定する方法である。本例では,針に付与する荷重を一律100gとして行った。
【0039】
<プレス加工性>
プレス加工性は,図3に示されるように,各試料50に対して,それぞれ曲げ加工を繰り返して行い,曲げ加工部の導電層の塗膜割れが消滅する曲げ回数で評価した。
評価点は5段階とし,曲げ回数1回の場合を5点,曲げ回数2回の場合を4点,曲げ回数3回の場合を3点,曲げ回数4回の場合を2点,曲げ回数5回の場合を1点とした。
【0040】
<塗膜密着性>
塗膜密着性は,試料を沸騰水に2時間浸漬させた後,JIS K5400に規定された碁盤目テープ剥離試験を行い,1mm×1mmの碁盤目総数100個中の塗膜の残存数により評価した。
評価点は5段階とし,残存数100個の場合を5点,残存数90個以上100個未満の場合を4点,残存数80個以上90個未満の場合を3点,残存数60個以上80個未満の場合を2点,残存数60個未満の場合を14点とした。
【0041】
<耐食性>
耐食性は,試料の導電層の表面から,カッターナイフを用いてクロスカットを入れ,JIS K5400に規定された塩水噴霧試験に準拠し,噴霧時間を720時間として行った後,試料の外観を観察した。
評価点は5段階とし,外観上変化ない場合を5点,0.5mm未満の塗膜膨れがあった場合を4点,0.5mm以上1mm未満の塗膜膨れがあった場合を3点,1mm以上3mm未満の塗膜膨れがあった場合を2点,3mm以上の塗膜膨れがあった場合を1点とした。
【0042】
表4に評価結果を示す。
表4より知られるごとく,本発明品としての試料E1〜E5は,すべての評価項目において優れた特性を示した。
一方,比較品としての試料C1〜C6は,すべて,いずれかの評価項目であまり良くない結果が得られた。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における,導電性プレコートアルミニウム合金板の構造を示す説明図。
【図2】実施例における,耐傷付き性の評価方法であるバウデン試験方法を示す説明図。
【図3】実施例における,プレス加工性の評価方法を示す説明図。
【符号の説明】
1...導電性プレコートアルミニウム合金板,
2...基板,
3...化成皮膜,
4...導電層,
45...Niフィラー,
50...試料,
51...鋼球,
Claims (1)
- アルミニウム合金板よりなる基板と,該基板の片面又は両面に形成した化成皮膜と,該化成皮膜上に形成した摺動性に優れた導電層とよりなり,
該導電層は,合成樹脂よりなるベース塗膜と,該ベース塗膜中に含有された,0.2〜5μmの厚さ及び2〜50μmの長径を有する鱗片状のNiフィラー,又は0.3〜20μmの直径を有する球状のNiフィラーの1種あるいは2種と,上記ベース塗膜中に含有されたインナーワックスとよりなり,
上記導電層の乾燥後全体重量は,0.3〜5g/m2であり,
上記Niフィラーの含有量は,上記導電層の乾燥後全体重量100重量部に対し,3〜70重量部(上記Niフィラーを2種含有する場合にはその合計量)であり,
上記インナーワックスの含有量は,上記導電層の乾燥後全体重量100重量部に対し,0.01〜10重量部であり,
かつ,上記導電層は,その表面の平均粗さ(上記基板の圧延方向に対して直角方向の平均粗さ)Raが0.1〜0.8μmであると共に,摩擦係数が0.03〜0.5であることを特徴とする摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003165192A JP2005001171A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | 摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003165192A JP2005001171A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | 摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
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ID=34091753
Family Applications (1)
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JP2003165192A Pending JP2005001171A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | 摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005001171A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008273116A (ja) * | 2007-05-02 | 2008-11-13 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 摺動性に優れた導電性プレコートアルミニウム合金板 |
KR100884256B1 (ko) * | 2008-05-29 | 2009-02-17 | 주식회사 테라텍 | 진공 라인용 개폐 밸브 |
-
2003
- 2003-06-10 JP JP2003165192A patent/JP2005001171A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR100884256B1 (ko) * | 2008-05-29 | 2009-02-17 | 주식회사 테라텍 | 진공 라인용 개폐 밸브 |
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