JP2005000786A - 描画装置、描画方法、デバイス及び電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の吐出ヘッドを配列させた吐出装置において、吐出装置の撓みに合わせて基板を撓ませることにより、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定に保ち、液状体の着弾精度を向上させる描画装置を提供する
【解決手段】基板P上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画装置1において、基板Pを所定方向に相対移動させる搬送部30と、基板Pの移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドから基板Pに向けて液状体を吐出する吐出部12と、吐出ヘッドと基板Pとの相対距離を検出する検出部と、基板Pの形状を変化させて吐出ヘッドとの相対距離を調整する基板形状調整部とを備えるようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】基板P上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画装置1において、基板Pを所定方向に相対移動させる搬送部30と、基板Pの移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドから基板Pに向けて液状体を吐出する吐出部12と、吐出ヘッドと基板Pとの相対距離を検出する検出部と、基板Pの形状を変化させて吐出ヘッドとの相対距離を調整する基板形状調整部とを備えるようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上の所定位置に吐出ヘッドから液状体を吐出してパターンを描く描画装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路など微細な配線パターンを有するデバイスの製造方法、及び液晶ディスプレイ或いは有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の製造方法として、インクジェット方式を用いた製造方法が注目されている。これらの製造技術では、パターン形成面にパターン形成用材料を含んだ液状材料を吐出ヘッド(インクジェット式ヘッド)から吐出することにより基板上に材料層を成膜(描画)させて、デバイスを形成するものであり、少量多種生産に対応可能である点などにおいて大変有効である。
そして、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの高精細画素化等の進展とともに、基板上に形成されるパターンの微細化、高精度化の要求が高まっている。このため、基板と吐出ヘッドとを近接させることにより、液状材料の着弾精度を向上させている。更に、特開平11−291475号公報に示すように、吐出ヘッドを基板に向けて移動可能に構成し、基板と吐出ヘッドとの距離を一定に保つように制御することにより、基板に反りやうねりが生じている場合であっても、液状材料の着弾精度を向上できるようにしている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−291475号公報(第4頁、第4図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した技術では、基板を定盤等に戴置するとともに、吐出ヘッドを定盤に平行に保ち、液滴が基板に対して略直角に吐出されるようにすることが前提である。
しかしながら、ディスプレイの大型化や製造効率の向上化のために、使用される基板のサイズが大型化しており、基板を戴置する定盤の平面度を確保することが困難になりつつあるという問題がある。また、大型基板に対応するために、複数の吐出ヘッドを配列させた長尺の吐出部が用いられるが、これら複数の吐出ヘッドのそれぞれを基板に向けて移動可能に構成すると、装置が大型化、複雑化し、設備コストが上昇してしまう。更に、吐出装置が長尺化するために、吐出部自体が撓んでしまい、吐出ヘッドを定盤に対して平行に保つことが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、吐出部が複数の吐出ヘッドを配列させたものであっても、ヘッド毎に移動装置を設けることなく、吐出部の撓みに合わせて基板を撓ませることにより、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定に保ち、液状体の着弾精度を向上させる描画装置等を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る描画装置等では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第1の発明では、基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画装置において、基板を所定方向に相対移動させる搬送部と、基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有し、吐出ヘッドから基板に向けて液状体を吐出する吐出部と、吐出ヘッドと基板との相対距離を検出する検出部と、基板の形状を変化させて吐出ヘッドとの相対距離を調整する基板形状調整部とを備えるようにした。この発明によれば、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定にするように、基板を撓ませることができるので、吐出ヘッドから基板に向けて吐出される液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0007】
また、基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画装置において、基板を所定方向に相対移動させる搬送部と、基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有し、吐出ヘッドから基板に向けて液状体を吐出する吐出部と、吐出部の撓みを検出する撓み検出部と、基板を撓ませて吐出ヘッドとの相対距離を調整する基板形状調整部とを備えるようにした。この発明によれば、吐出部が撓んでいる場合であっても、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定にするように、基板を撓ませることができるので、吐出ヘッドから基板に向けて吐出される液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0008】
また、基板形状調整部が、搬送部に設けられるものでは、基板を吐出部の撓みに合わせて変形させた状態で搬送することができる。
また、基板形状調整部が基板を押し付けて撓ませるもの、又は、基板を引き付けて撓ませるものでは、吐出部の撓みに合わせて基板を確実に撓ませることができる。
また、基板形状調整部が、基板を基板の送り方向に沿って撓ませるもの、又は、基板を基板の送り方向と略直交する方向に沿って撓ませるものでは、基板を吐出部の撓みに正確に合わせることができる。
【0009】
第2の発明は、基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画方法において、基板を所定方向に相対移動させる工程と、基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有する吐出部から基板に向けて液状体を吐出する工程と、吐出部と基板との相対距離を検出する工程と、基板の形状を変化させて吐出ヘッドとの相対距離を調整する工程とを有するようにした。この発明によれば、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定にするように、基板を撓ませることができるので、吐出ヘッドから基板に向けて吐出される液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0010】
また、基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画方法において、基板を所定方向に相対移動させる工程と、基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有する吐出部から基板に向けて液状体を吐出する工程と、吐出部の撓みを検出する工程と、基板を撓ませて吐出ヘッドとの相対距離を調整する工程とを有するようにした。この発明によれば、吐出部が撓んでいる場合であっても、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定にするように、基板を撓ませることができるので、吐出ヘッドから基板に向けて吐出される液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0011】
第3の発明は、デバイスが、第1の発明に係る描画装置により描画されたパターン、或いは第2に発明に係る描画方法により描画されたパターンを有するようにした。この発明によれば、高精細なパターンが形成されるので、高品質なデバイスを製造することができる。
【0012】
第4の発明は、電子機器が、第3の発明に係るデバイスを備えるようにした。この発明によれば、高品質なディスプレイを表示手段として備えるので、表示手段の表示が見やすい電子機器を製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる吐出装置、吐出方法、デバイス、電子機器の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る描画システム1を示す斜視図である。
描画システム(描画装置)1は、インクジェット方式を利用して、基板Pに向けて液状体を吐出してパターンPAを形成させるものであり、吐出装置10、基板移動装置30、制御装置80等を備える。
【0014】
図2は、吐出装置10を示す概念図である。吐出装置10は、複数のインクジェット式ヘッド(吐出ヘッド)200からなる吐出部12と、流動体を貯蔵したタンク14、タンク14内の流動体を吐出部12に送るパイプ16(不図示)、吐出部12等を支持するコラム18等を備える。
吐出部12は、複数のインクジェット式ヘッド200を基板PのY方向の幅と略同一の長さに配列して構成される。インクジェット式ヘッド200は、それぞれ複数のノズル211を備えるため(図3参照)、基板Pの幅方向(Y方向)に対して、略均一にノズル211が配置される。なお、ノズル211は、必ずしも一列に整列させる必要はなく、Y方向(基板の送り方向と略直交する方向)に均等に配置されていればよい。これにより、基板Pを吐出部12と略直交する方向(X方向、所定方向)に送ることにより、一度にパターン形成領域PAの全面に液状体を吐出することが可能である。
【0015】
また、吐出部12の下方には、計測装置(検出部)20が設けられる。吐出装置10は、大型の基板Pに対応するため、吐出部12を支持するコラム18の支点間の距離(スパン)を広げざるを得ない。このため、コラム18の中央部分が下方に撓んでしまう。計測装置20は、この撓み量を計測するものである。なお、計測装置20は、吐出部12の下方に配置される基板移動装置30とは、干渉しないように配置される。そして、後述する基板支持部34と計測装置20との距離が既知であるため、吐出部12の撓み量を計測することにより、吐出部12(インクジェット式ヘッド200)と基板Pとの相対距離を求めることができる。また、吐出部12の撓み量は、インクジェット式ヘッド200毎に計測されることが望ましい。各インクジェット式ヘッド200と基板Pとの相対距離を正確に求めるためである。なお、例えば、計測装置20により、吐出部12の中央部分のみを計測して、その計測結果とコラム18の剛性に基づいて、各インクジェット式ヘッド200の撓み量を求めるようにしてもよい。
なお、計測装置20による計測情報は、制御装置80に送られる。
【0016】
図3は、インクジェット式ヘッド200の一構成例を説明する分解斜視図、図4は、斜視図一部断面図である。
インクジェット式ヘッド200は、ノズル211の設けられたノズルプレート210および振動板230が設けられた圧力室基板220を筐体250に嵌め込んだ構成を備える。このインクジェット式ヘッド200の主要部構造は、図4に示すように、圧力室基板220をノズルプレート210と振動板230で挟み込んだ構造を備える。ノズルプレート210は、圧力室基板220と貼り合わせられたときにキャビティ221に対応することとなる位置にノズル211が形成される。圧力室基板220には、シリコン単結晶基板等をエッチングすることにより、各々が圧力室として機能可能にキャビティ221が複数設けられている。キャビティ221間は側壁(隔壁)222で分離されている。各キャビティ221は供給口224を介して共通の流路であるリザーバ223に繋がっている。振動板230は、例えば熱酸化層等により構成される。振動板230にはインクタンク口231が設けられ、タンク14から流動体を供給可能に構成されている。振動板230上のキャビティ221に相当する位置には、圧電体素子240が形成されている。圧電体素子240は、PZT素子等の圧電性セラミックスの結晶を上部電極および下部電極(図示略)で挟んだ構造を備える。圧電体素子240は、制御装置80から供給される吐出信号に対応して形状変化を生ずる。
なお、上記インクジェット式ヘッド200は、圧電体素子240に形状変化を生じさせて流動体を吐出させる構成に限らず、発熱体により流動体に熱を加え、その膨張によって液滴を吐出させるような構成であってもよい。
【0017】
図1に戻り、基板移動装置(搬送部)30は、吐出装置10の下方に配置され、テーブル駆動部31、基板支持テーブル32、等から構成される。基板支持テーブル32は、基板Pを保持し、テーブル駆動部31は、基板支持テーブル32とともに基板PをX方向に搬送する。なお、搬送中の基板Pの位置(X方向)は不図示の基板位置計測部により計測され、その情報は制御装置80に送られる。
図5は、基板支持テーブル32を示す概念図である。図5(a)は、基板支持テーブル32の平面図、図5(b),(d),(e)は、図5(a)におけるA−A断面図、図5(c)は、図5(a)におけるB−B断面図である。
基板支持テーブル32は、ベース部33、基板支持部34、ロッド部35とからなる。ベース部33は、保持する基板Pと略同一サイズの板状部材であり、その上面のY方向の両端には、基板支持部34が設けられる。基板支持部34は、基板Pを支持する部材であって、その上端面に吸着装置を備え、基板支持テーブル32に戴置された基板Pの端部と接触して、吸着保持する。また、ロッド部(基板形状調整部)35は、複数の棒状部材からなり、ベース部33の上面に均等に配置された穴部36に嵌合し、上下方向に伸び縮み(変位)可能に構成される。そして、ロッド部35は、基板支持部34に支持された基板Pの下面側と接触して基板Pを支持する。したがって、各ロッド部35の張り出し長さを調整することにより、基板Pを押し上げる等して、基板Pを上下方向に変形させることができる。
例えば、ロッド部35の張り出し長さを外周側から中央側に向けて徐々に低くした場合には、図5(b)に示すの様に、基板Pを凹状に撓ませることができる。逆に、外周側から中央側に向けて徐々に高くした場合には、図5(d)に示す様に、基板Pを凸状に撓ませることができる。また、図5(e)の様に、基板Pを波打つように撓ませることも可能である。
なお、各ロッド部35の上端面には、基板Pを吸着保持する吸着装置を設けてもよい。吸着装置を設けることにより、基板Pを下方に引き下げて変形させることが可能になる。
また、ロッド部35の張り出し長さ(変位)は、基板支持部34の高さと同一の高さ位置から、上下方向にそれぞれ数mm程度であり、吐出部12の最大撓み量よりも大きければよい。すなわち、吐出部12の最大撓み量よりも基板Pを撓ませることができることが望ましい。したがって、吐出部12の剛性に合わせて、ロッド部35の張り出し長さが設定される。
更に、ロッド部35の本数は、基板Pの剛性等の条件により変更可能である。すなわち、基板Pの形状を吐出部12の撓みに合わせることが可能な程度の本数であればよい。
【0018】
制御装置80(不図示)は、コンピュータ装置でありCPU、メモリ、インターフェース回路等を備える。制御装置80は所定のプログラムを実行することにより吐出装置10に、発光材料等を含むの流動体の吐出を実施させる。
さらに、計測装置20から送られてくるコラム18の撓み量に基づいて、基板支持テーブル32に指令して、ロッド部35を伸縮させて、基板Pをコラム18(インクジェット式ヘッド200)の撓みに略一致するように変形させる。
【0019】
基板Pは、ガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの合成樹脂等の材料により形成される。そして、例えば、数m角程度の大型基板が用いられ、1枚の基板Pには、複数のパターン形成領域PAが設けられる。基板Pのサイズとパターン形成領域PAのサイズ及び数は、製造するデバイスDSに応じて任意に決められる。なお、基板Pが大型基板の場合には、基板支持部34のみ基板Pを支持すると、その中央部分では、おおよそ数mm程度の撓み量が発生する。
また、基板Pに吐出される流動体は、製造するデバイスに応じて変更可能である。EL素子を製造する場合には、流動体として発光材料を用いる場合があり、発光材料としては、例えば、有機材料であり、低分子の有機材料としてアルミキノリノール錯体(Alq3)等があり、高分子の有機材料としてポリパラフェニレンビニレン(PPV)等がある。いずれの場合でも、流動体はインクジェット式ヘッド200から液滴として吐出可能な流動性を呈するように溶媒等で粘度が調整される場合がある。
【0020】
以上のような構成を備える描画システム1は、以下のように作用する。
まず、計測装置20により吐出部12の撓みを測定する。そして、その計測情報は、制御装置80に送られる。制御装置80は、計測結果に基づいて、基板支持テーブル32に指令して、ロッド部35を伸縮させる。ロッド部35の伸縮(移動)量は、各ロッド部35と同一位置(Y方向)に配置されるインクジェット式ヘッド200の変位量(撓み量)に略同一である。すなわち、吐出部12の撓みに合わせて、ロッド部35を伸縮させる。
次に、不図示の基板搬送装置により、基板Pが基板支持テーブル32上に戴置されと、基板Pの端部は、基板支持部34に吸着保持されるとともに、パターン形成領域等は、ロッド部35により支持される。上述したように、ロッド部35が吐出部12の撓みに合わせて伸縮しているので、ロッド部35上に戴置された基板Pも吐出部12の撓みに合わせた形状に変形する。これにより、吐出部12の各インクジェット式ヘッド200と基板Pとの距離が略一定距離になる。
次に、制御装置80からの指令により、テーブル駆動部31が駆動し、基板Pは、基板支持テーブル32とともに吐出部12に向けて搬送される。そして、基板Pが吐出部12の直下に搬送されると、制御装置80から吐出装置10に向けて吐出命令が出され、基板Pに向けて液状体が吐出されて、パターンPAが描画される。
【0021】
このように、基板Pを吐出部12の撓みに合わせて撓ませることにより、基板Pとインクジェット式ヘッド200との距離を略一定に保ち、吐出装置10からの液状体の弾精度を向上させることができる。
なお、ロッド部35の変位量は、吐出部12のインクジェット式ヘッド200をメンテナンス等により交換する毎に調整し直す必要がある。逆に言えば、吐出部12の撓み量が変化しなければ、ロッド部35の変位量を変更しなくてもよいので、長時間に渡って液状体の弾精度を安定させることが可能である。
【0022】
次に、上述した構成を有する描画システム1を用いて、基板Pに対して吐出装置10から発光材料等を吐出することにより、基板P上に発光層360等を積層して、基板Pに積層配線パターンPAを形成する方法の一例について詳述する。
以下の説明では有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスDS及びこれを駆動するTFT(薄膜トランジスタ)を製造する手順を示す。
【0023】
EL表示デバイスDSは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。
【0024】
EL表示デバイスDSを製造する装置としては、描画システム1を複数台連結した装置が用いられる。そして、各描画システム1の吐出装置10(吐出部12)からはそれぞれ異なる材料を含む発光材料が吐出されるようになっている。発光材料は、材料を微粒子状にし、溶媒及びバインダーを用いてペースト化したものであって、吐出部12が吐出可能な粘度(例えば50cps以下)に設定されている。
そして、基板Pに対して、複数の描画システム1のうち、第1の描画システム1から第1の材料を含む液状材料を吐出した後これを乾燥(焼成)し、次いで第2の描画システム1から第2の材料を含む液状材料を第1の材料層に対して吐出した後これを乾燥(焼成)し、以下、複数の描画システム1を用いて同様の処理を行うことにより、基板P上に複数の材料層が積層され、多層配線パターンが形成されるようになっている。
【0025】
図6,図7,図8は、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置の一例を示す図であって、図6は有機EL表示デバイスDSの回路図、図7は対向電極や有機エレクトロルミネッセンス素子を取り除いた状態での画素部の拡大平面図である。
【0026】
図6に示す回路図のように、この有機EL表示デバイスDSは、基板上に、複数の走査線311と、これら走査線311に対して交差する方向に延びる複数の信号線312と、これら信号線312に並列に延びる複数の共通給電線313とがそれぞれ配線されたもので、走査線311及び信号線312の各交点毎に、画素ARが設けられて構成されたものである。
【0027】
信号線312に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ線駆動回路302が設けられている。
一方、走査線311に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路304が設けられている。また、画素領域ARの各々には、走査線311を介して走査信号がゲート電極に供給される第1の薄膜トランジスタ322と、この第1の薄膜トランジスタ322を介して信号線312から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される第2の薄膜トランジスタ324と、この第2の薄膜トランジスタ324を介して共通給電線313に電気的に接続したときに共通給電線313から駆動電流が流れ込む画素電極323と、この画素電極(陽極)323と対向電極(陰極)522との間に挟み込まれる発光部(発光層)360とが設けられている。
【0028】
このような構成のもとに、走査線311が駆動されて第1の薄膜トランジスタ322がオンとなると、そのときの信号線312の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、第2の薄膜トランジスタ324の導通状態が決まる。そして、第2の薄膜トランジスタ324のチャネルを介して共通給電線313から画素電極323に電流が流れ、さらに発光層360を通じて対向電極522に電流が流れることにより、発光層360は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
【0029】
ここで、各画素ARの平面構造は、図7に示すように、平面形状が長方形の画素電極323の四辺が、信号線312、共通給電線313、走査線311及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。
【0030】
図8は図6のA−A矢視断面図である。ここで、図8に示す有機EL表示デバイスDSは、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が配置された基板P側とは反対側から光を取り出す形態、いわゆるトップエミッション型である。
【0031】
なお、上述したが、基板Pの形成材料としては、ガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの合成樹脂などが挙げられる。ここで、有機EL表示デバイスDSがトップエミッション型である場合、基板Pは不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセラミック、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0032】
一方、TFTが配置された基板側から光を取り出す形態、いわゆるバックエミッション型においては、基板としては透明なものが用いられ、光を透過可能な透明あるいは半透明材料、例えば、透明なガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などが挙げられる。特に、基板の形成材料としては、安価なソーダガラスが好適に用いられる。
【0033】
図8に示すように、トップエミッション型の有機EL表示デバイスDSは、基板Pと、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等の透明電極材料からなる陽極(画素電極)323と、陽極323から正孔を輸送可能な正孔輸送層370と、電気光学物質の1つである有機EL物質を含む発光層(有機EL層、電気光学素子)360と、発光層360の上面に設けられている電子輸送層350と、電子輸送層350の上面に設けられているアルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)、カルシウム(Ca)等からなる陰極(対向電極)522と、基板P上に形成され、画素電極323にデータ信号を書き込むか否かを制御する通電制御部としての薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と称する)324とを有している。TFT324は、走査線駆動回路304及びデータ線駆動回路302からの作動指令信号に基づいて作動し、画素電極323への通電制御を行う。
【0034】
TFT324は、SiO2を主体とする下地保護層581を介して基板Pの表面に設けられている。このTFT324は、下地保護層581の上層に形成されたシリコン層541と、シリコン層541を覆うように下地保護層581の上層に設けられたゲート絶縁層582と、ゲート絶縁層582の上面のうちシリコン層541に対向する部分に設けられたゲート電極542と、ゲート電極542を覆うようにゲート絶縁層582の上層に設けられた第1層間絶縁層583と、ゲート絶縁層582及び第1層間絶縁層583にわたって開孔するコンタクトホールを介してシリコン層541と接続するソース電極543と、ゲート電極542を挟んでソース電極543と対向する位置に設けられ、ゲート絶縁層582及び第1層間絶縁層583にわたって開孔するコンタクトホールを介してシリコン層541と接続するドレイン電極544と、ソース電極543及びドレイン電極544を覆うように第1層間絶縁層583の上層に設けられた第2層間絶縁層584とを備えている。
【0035】
そして、第2層間絶縁層584の上面に画素電極323が配置され、画素電極323とドレイン電極544とは、第2層間絶縁層584に設けられたコンタクトホール323aを介して接続されている。また、第2層間絶縁層584の表面のうち有機EL素子が設けられている以外の部分と陰極522との間には、合成樹脂などからなる第3絶縁層(バンク層)521が設けられている。
【0036】
なお、シリコン層541のうち、ゲート絶縁層582を挟んでゲート電極542と重なる領域がチャネル領域とされている。また、シリコン層541のうち、チャネル領域のソース側にはソース領域が設けられている一方、チャネル領域のドレイン側にはドレイン領域が設けられている。このうち、ソース領域が、ゲート絶縁層582と第1層間絶縁層583とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極543に接続されている。一方、ドレイン領域が、ゲート絶縁層582と第1層間絶縁層583とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極543と同一層からなるドレイン電極544に接続されている。画素電極323は、ドレイン電極544を介して、シリコン層541のドレイン領域に接続されている。
【0037】
次に、図9及び図10を参照しながら図8に示した有機EL表示デバイスDSの製造プロセスについて説明する。
はじめに、基板P上にシリコン層541を形成する。シリコン層541を形成する際には、まず、図9(a)に示すように、基板Pの表面にTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護層581を形成する。
【0038】
次に、図9(b)に示すように、基板Pの温度を約350℃に設定して、下地保護層581の表面にプラズマCVD法あるいはICVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜からなる半導体層541Aを形成する。次いで、この半導体層541Aに対してレーザアニール法、急速加熱法、または固相成長法などによって結晶化工程を行い、半導体層541Aをポリシリコン層に結晶化する。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は例えば200mJ/cm2 とする。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0039】
次いで、図9(c)に示すように、半導体層(ポリシリコン層)541Aをパターニングして島状のシリコン層541とした後、その表面に対して、TEOSや酸化ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜又は窒化膜からなるゲート絶縁層582を形成する。なお、シリコン層541は、図6に示した第2の薄膜トランジスタ324のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においては第1の薄膜トランジスタ322のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。つまり、二種類のトランジスタ322、324は同時に形成されるが、同じ手順で作られるため、以下の説明において、トランジスタに関しては、第2の薄膜トランジスタ324についてのみ説明し、第1の薄膜トランジスタ322についてはその説明を省略する。
【0040】
なお、ゲート絶縁層582を多孔性を有するシリコン酸化膜(SiO2膜)としてもよい。多孔性を有するSiO2膜からなるゲート絶縁層582は、反応ガスとしてSi2H6とO3とを用いて、CVD法(化学的気相成長法)により形成される。これらの反応ガスを用いると、気相中に粒子の大きいSiO2が形成され、この粒子の大きいSiO2がシリコン層541や下地保護層581の上に堆積する。そのため、ゲート絶縁層582は、層中に多くの空隙を有し、多孔質体となる。そして、ゲート絶縁層582は多孔質体となることによって低誘電率を有するようになる。
【0041】
なお、ゲート絶縁層582の表面にH(水素)プラズマ処理をしてもよい。これにより、空隙の表面のSi−O結合中のダングリングボンドがSi−H結合に置き換えられ、膜の耐吸湿性が良くなる。そして、このプラズマ処理されたゲート絶縁層582の表面に別のSiO2層を設けてもよい。こうすることにより、低誘電率な絶縁層が形成できる。
また、ゲート絶縁層582をCVD法で形成する際の反応ガスは、Si2H6+O3の他に、Si2H6+O2、Si3H8+O3、Si3H8+O2としてもよい。更に、上記の反応ガスに加えて、B(ホウ素)含有の反応ガス、F(フッ素)含有の反応ガスを用いてもよい。
【0042】
更に、ゲート絶縁層582をインクジェット法を用いて形成してもよい。ゲート絶縁層582を形成するための吐出部12から吐出させる液状材料としては、上述したSiO2等の材料を適当な溶媒に分散してペースト化したものや、絶縁性材料含有ゾルなどが挙げられる。絶縁性材料含有ゾルとしては、テトラエトキシシラン等のシラン化合物をエタノール等の適当な溶媒に溶かしたものや、アルミニウムのキレート塩、有機アルカリ金属塩または有機アルカリ土類金属塩等を含有する組成物で、焼成すると無機酸化物のみになるように調合したものでもよい。インクジェット法によって形成されたゲート絶縁層582は、この後、予備乾燥される。
【0043】
インクジェット法によってゲート絶縁層582を形成する際には、ゲート絶縁層582を形成するための吐出動作をする前に、下地保護層581やシリコン層541に対して液状材料の親和性を制御する表面処理をしておいてもよい。この場合の表面処理は、UV、プラズマ処理等の親液処理である。こうすることにより、ゲート絶縁層582を形成するための液状材料は下地保護層581などに密着するとともに、平坦化される。
【0044】
次いで、図9(d)に示すように、ゲート絶縁層582上にアルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を含む導電膜をスパッタ法により形成した後、これをパターニングし、ゲート電極542を形成する。次いで、この状態で高濃度のリンイオンを打ち込み、シリコン層541に、ゲート電極542に対して自己整合的にソース領域541s及びドレイン領域541dを形成する。この場合、ゲート電極542はパターニング用マスクとして用いられる。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域541cとなる。
【0045】
次いで、図9(e)に示すように、第1層間絶縁層583を形成する。第1層間絶縁層583は、ゲート絶縁層582同様、シリコン酸化膜または窒化膜、多孔性を有するシリコン酸化膜などによって構成され、ゲート絶縁層582の形成方法と同様の手順でゲート絶縁層582の上層に形成される。
更に、第1層間絶縁層583の形成工程を、ゲート絶縁層582の形成工程と同様、インクジェット法によって行ってもよい。第1層間絶縁層583を形成するための吐出部12から吐出させる液状材料としては、ゲート絶縁層582同様、SiO2等の材料を適当な溶媒に分散してペースト化したものや、絶縁性材料含有ゾルなどが挙げられる。絶縁性材料含有ゾルとしては、テトラエトキシシラン等のシラン化合物をエタノール等の適当な溶媒に溶かしたものや、アルミニウムのキレート塩、有機アルカリ金属塩または有機アルカリ土類金属塩等を含有する組成物で、焼成すると無機酸化物のみになるように調合したものでもよい。インクジェット法によって形成された第1層間絶縁層583は、この後、予備乾燥される。
【0046】
インクジェット法によって第1層間絶縁層583を形成する際には、第1層間絶縁層583を形成するための吐出動作をする前に、ゲート絶縁層582上面に対して液状材料の親和性を制御する表面処理をしておいてもよい。この場合の表面処理は、UV、プラズマ処理等の親液処理である。こうすることにより、第1層間絶縁層583を形成するための液状材料はゲート絶縁層582に密着するとともに、平坦化される。
【0047】
そして、この第1層間絶縁層583及びゲート絶縁層582にフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより、ソース電極及びドレイン電極に対応するコンタクトホールを形成する。次いで、第1層間絶縁層583を覆うように、アルミニウムやクロム、タンタル等の金属からなる導電層を形成した後、この導電層のうち、ソース電極及びドレイン電極が形成されるべき領域を覆うようにパターニング用マスクを設けるとともに、導電層をパターニングすることにより、ソース電極543及びドレイン電極544を形成する。
【0048】
次に、図示はしないが、第1層間絶縁層583上に、信号線、共通給電線、走査線を形成する。このとき、これらに囲まれる箇所は後述するように発光層等を形成する画素となることから、例えばバックエミッション型とする場合には、TFT324が前記各配線に囲まれた箇所の直下に位置しないよう、各配線を形成する。
【0049】
次いで、図10(a)に示すように、第2層間絶縁層584を、第1層間絶縁層583、各電極543、544、前記不図示の各配線を覆うように形成する。
第1層間絶縁層583はインクジェット法によって形成される。ここで、描画システム1の制御装置80は、図10(a)に示すように、ドレイン電極544の上面に非吐出領域(非滴下領域)Hを設定し、ドレイン電極544のうち非吐出領域H以外の部分、ソース電極543及び第1層間絶縁層583を覆うように、第2層間絶縁層584を形成するための液状材料を吐出し、第2層間絶縁層584を形成する。こうすることによって、コンタクトホール323aが形成される。あるいは、コンタクトホール323aをフォトリソグラフィ法で形成してもよい。
【0050】
ここで、第2層間絶縁層584を形成するための吐出部12から吐出させる液状材料としては、第1層間絶縁層583同様、SiO2等の材料を適当な溶媒に分散してペースト化したものや、絶縁性材料含有ゾルなどが挙げられる。絶縁性材料含有ゾルとしては、テトラエトキシシラン等のシラン化合物をエタノール等の適当な溶媒に溶かしたものや、アルミニウムのキレート塩、有機アルカリ金属塩または有機アルカリ土類金属塩等を含有する組成物で、焼成すると無機酸化物のみになるように調合したものでもよい。インクジェット法によって形成された第2層間絶縁層584は、この後、予備乾燥される。
【0051】
インクジェット法によって第2層間絶縁層584を形成する際には、第2層間絶縁層584を形成するための吐出動作をする前に、ドレイン電極544の非吐出領域Hに対して液状材料の親和性を制御する表面処理をしておいてもよい。この場合の表面処理は、撥液処理である。こうすることにより、非吐出領域Hには液状材料が配置されず、コンタクトホール323aを安定して形成できる。また、非吐出領域H以外のドレイン電極544上面、ソース電極543上面、第1層間絶縁層583上面には、予め親液処理を施しておくことにより、第2層間絶縁層584を形成するための液状材料は第1層間絶縁層583やソース電極543、ドレイン電極544のうち非吐出領域H以外に部分に密着するとともに、平坦化される。
【0052】
こうして、第2層間絶縁層584のうちドレイン電極544に対応する部分にコンタクトホール323aを形成しつつ、ドレイン電極544の上層に第2層間絶縁層584を形成したら、図10(b)に示すように、コンタクトホール323aにITO等の導電性材料を充填するように、すなわち、コンタクトホール323aを介してドレイン電極544に連続するように導電性材料をパターニングし、画素電極(陽極)323を形成する。
【0053】
有機EL素子に接続する陽極323は、ITOやフッ素をドープしてなるSnO2、更にZnOやポリアミン等の透明電極材料からなり、コンタクトホール323aを介してTFT324のドレイン電極544に接続されている。陽極323を形成するには、前記透明電極材料からなる膜を第2層間絶縁層584上面に形成し、この膜をパターニングすることにより形成される。
【0054】
陽極323を形成したら、図10(c)に示すように、第2層間絶縁層584の所定位置及び陽極323の一部を覆うように、第3絶縁層521である有機バンク層を形成する。第3絶縁層521はアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂によって構成されている。具体的な第3絶縁層521の形成方法としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に融かしたものを、スピンコート、ディップコート等により塗布して絶縁層を形成する。なお、絶縁層の構成材料は、後述する液状材料の溶媒に溶解せず、しかもエッチング等によってパターニングしやすいものであればどのようなものでもよい。更に、絶縁層をフォトリソグラフィ技術等により同時にエッチングして、開口部521aを形成することにより、開口部521aを備えた第3絶縁層521が形成される。
【0055】
ここで、第3絶縁層521の表面には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とが形成される。本実施形態においてはプラズマ処理工程により、各領域を形成するものとしている。具体的にプラズマ処理工程は、予備加熱工程と、開口部521aの壁面並びに画素電極323の電極面を親液性にする親液化工程と、第3絶縁層521の上面を撥液性にする撥液化工程と、冷却工程とを有している。
すなわち、基材(第3絶縁層等を含む基板P)を所定温度(例えば70〜80度程度)に加熱し、次いで親液化工程として大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。続いて、撥液化工程として大気雰囲気中で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、プラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親液性及び撥液性が所定箇所に付与されることとなる。なお、画素電極323の電極面についても、このCF4プラズマ処理の影響を多少受けるが、画素電極323の材料であるITO等はフッ素に対する親和性に乏しいため、親液化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれる。
【0056】
次いで、図10(d)に示すように、陽極323の上面に正孔輸送層370を形成する。ここで、正孔輸送層370の形成材料としては、特に限定されることなく公知のものが使用可能であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等からなる。具体的には、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示されるが、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく、中でも4,4’−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルが好適とされる。
【0057】
なお、正孔輸送層に代えて正孔注入層を形成するようにしてもよく、さらに正孔注入層と正孔輸送層を両方形成するようにしてもよい。その場合、正孔注入層の形成材料としては、例えば銅フタロシアニン(CuPc)や、ポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等が挙げられるが、特に銅フタロシアニン(CuPc)を用いるのが好ましい。
【0058】
正孔注入/輸送層370を形成する際には、インクジェット法が用いられる。すなわち、上述した正孔注入/輸送層材料を含む組成物液状材料を陽極323の電極面上に吐出した後に、予備乾燥処理を行うことにより、陽極323上に正孔注入/輸送層370が形成される。なお、この正孔注入/輸送層形成工程以降は、正孔注入/輸送層370及び発光層(有機EL層)360の酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。例えば、吐出部12に正孔注入/輸送層材料を含む組成物液状材料を充填し、吐出部12のインクジェット式ヘッド200を陽極323の電極面に対向させ、吐出部12と基材(基板P)とを相対移動させながら、インクジェット式ヘッド200から1滴当たりの液量が制御されたインキ滴を電極面に吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理して組成物液状材料に含まれる極性溶媒を蒸発させることにより、正孔注入/輸送層370が形成される。
【0059】
なお、組成物液状材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体と、ポリスチレンスルホン酸等との混合物を、イソプロピルアルコール等の極性溶媒に溶解させたものを用いることができる。ここで、吐出された液滴は、親液処理された陽極323の電極面上に広がり、開口部521aの底部近傍に満たされる。その一方で、撥液処理された第3絶縁層521の上面には液滴がはじかれて付着しない。したがって、液滴が所定の吐出位置からはずれて第3絶縁層521の上面に吐出されたとしても、該上面が液滴で濡れることがなく、はじかれた液滴が第3絶縁層521の開口部521a内に転がり込むものとされている。
【0060】
次いで、正孔注入/輸送層370上面に発光層360を形成する。発光層360の形成材料としては、特に限定されることなく、低分子の有機発光色素や高分子発光体、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質からなる発光物質が使用可能である。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン構造を含むものが特に好ましい。低分子蛍光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、または特開昭57−51781、同59−194393号公報等に記載されている公知のものが使用可能である。
【0061】
発光層360は、正孔注入/輸送層370の形成方法と同様の手順で形成される。すなわち、インクジェット法によって発光層材料を含む組成物液状材料を正孔注入/輸送層370の上面に吐出した後に、予備乾燥処理を行うことにより、第3絶縁層521に形成された開口部521a内部の正孔注入/輸送層370上に発光層360が形成される。この発光層形成工程も上述したように不活性ガス雰囲気下で行われる。吐出された組成物液状材料は撥液処理された領域ではじかれるので、液滴が所定の吐出位置からはずれたとしても、はじかれた液滴が第3絶縁層521の開口部521a内に転がり込む。
【0062】
次いで、発光層360の上面に電子輸送層350を形成する。電子輸送層350も発光層360の形成方法と同様、インクジェット法により形成される。電子輸送層350の形成材料としては、特に限定されることなく、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等が例示される。具体的には、先の正孔輸送層の形成材料と同様に、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。インクジェット法により組成物液状材料を吐出した後、予備乾燥処理が行われる。
【0063】
なお、前述した正孔注入/輸送層370の形成材料や電子輸送層350の形成材料を発光層360の形成材料に混合し、発光層形成材料として使用してもよく、その場合に、正孔注入/輸送層形成材料や電子輸送層形成材料の使用量については、使用する化合物の種類等によっても異なるものの、十分な成膜性と発光特性を阻害しない量範囲でそれらを考慮して適宜決定される。通常は、発光層形成材料に対して1〜40重量%とされ、さらに好ましくは2〜30重量%とされる。
【0064】
次いで、図10(e)に示すように、電子輸送層350及び第3絶縁層521の上面に陰極522を形成する。陰極522は、電子輸送層350及び第3絶縁層521の表面全体、あるいはストライプ状に形成されている。陰極522については、もちろんAl、Mg、Li、Caなどの単体材料やMg:Ag(10:1合金)の合金材料からなる1層で形成してもよいが、2層あるいは3層からなる金属(合金を含む。)層として形成してもよい。具体的には、Li2 O(0.5nm程度)/AlやLiF(0.5nm程度)/Al、MgF2 /Alといった積層構造のものも使用可能である。陰極222は上述した金属からなる薄膜であり、光を透過可能である。
【0065】
なお、上記実施形態では、各絶縁層を形成する際にインクジェット法を用いているが、ソース電極543やドレイン電極544、あるいは陽極323や陰極522を形成する際にインクジェット法を用いてもよい。予備乾燥処理は、組成物液状材料のそれぞれを吐出後、行われる。
【0066】
なお、導電性材料層を構成する導電性材料(デバイス形成用材料)としては、所定の金属、あるいは導電性ポリマーが挙げられる。
金属としては、金属ペーストの用途によって銀、金、ニッケル、インジウム、錫、鉛、亜鉛、チタン、銅、クロム、タンタル、タングステン、パラジウム、白金、鉄、コバルト、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、スカンジウム、ロジウム、イリジウム、バナジウム、ルテニウム、オスミウム、ニオブ、ビスマス、バリウムなどのうち少なくとも1種の金属又はこれらの合金が挙げられる。また、酸化銀(AgO又はAg2O)や酸化銅なども挙げられる。
【0067】
また、上記導電性材料を吐出部12から吐出可能にペースト化する際の有機溶媒としては、炭素数5以上のアルコール類(例えばテルピネオール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、フェネチルアルコール)の1種以上を含有する溶媒、又は有機エステル類(例えば酢酸エチル、オレイン酸メチル、酢酸ブチル、グリセリド)の1種以上を含有する溶媒であればよく、使用する金属又は金属ペーストの用途によって適宜選択できる。更には、ミネラルスピリット、トリデカン、ドデシルベンゼンもしくはそれらの混合物、又はそれらにα−テルピネオールを混合したもの、炭素数5以上の炭化水素(例えば、ピネン等)、アルコール(例えば、n−ヘプタノール等)、エーテル(例えば、エチルベンジルエーテル等)、エステル(例えば、n−ブチルステアレート等)、ケトン(例えば、ジイソブチルケトン等)、有機窒素化合物(例えば、トリイソプロパノールアミン等)、有機ケイ素化合物(シリコーン油等)、有機硫黄化合物もしくはそれらの混合物を用いることもできる。なお、有機溶媒中に必要に応じて適当な有機物を添加してもよい。そして、これら溶媒に応じて、予備乾燥処理の際のガス温度が設定される。
【0068】
上記実施形態の有機EL表示デバイスDSを備えた電子機器EQの例について図11を参照して説明する。
図11(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図11(a)において、携帯電話1000(電子機器EQ)は、上記の有機EL表示デバイスDSを用いた表示部1001を備える。
図11(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図11(b)において、腕時計1100(電子機器EQ)は、上記の有機EL表示デバイスDSを用いた表示部1101を備える。
図11(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図11(c)において、情報処理装置1200(電子機器EQ)は、キーボードなどの入力部1202、情報処理装置本体1204、上記の有機EL表示デバイスDSを用いた表示部1206を備える。
以上のように、図11(a)〜(c)に示す電子機器EQは、上記実施の形態の有機EL表示デバイスDSを表示部として備えているので、表示品位に優れ、明るい画面の有機EL表示部を備えた電子機器を実現することができる。
【0069】
上記実施形態は、本発明のデバイスの製造方法を、有機EL表示デバイスの駆動用TFTの配線パターン形成に適用したものであるが、有機EL表示デバイスに限らず、PDP(プラズマディスプレイパネル)デバイスの配線パターンの製造、液晶表示デバイスの配線パターンの製造など、各種多層配線デバイスの製造に適用可能である。そして、各種多層配線デバイスを製造するに際し、導電性材料層及び絶縁性材料層のうちいずれの材料層を形成する際にもインクジェット法を適用できる。
【0070】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、実施の形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。本発明は、例えば以下のような変更をも含むものとする。
【0071】
上述した実施形態では、パターンの描画処理に先立て、吐出部12の撓み量を計測し、予めロッド部35の張り出し長さ(変位量)を調整しておいたが、これに限らない。例えは、基板Pがガラス等の透過性基板の場合には、計測装置20を基板支持テーブル32の各ロッド部35の間に配置し、吐出部12の撓み量を計測すると略同時にロッド部35を伸縮させて、基板Pを撓ませるように制御し、その直後に描画処理を行ってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、基板Pを送り方向と直交する方向に沿って撓ませる場合について説明したが、これに限らない。基板Pを送り方向に沿って撓ませることも可能である。すなわち、吐出部12が基板Pを送り方向に沿って撓みが発生している場合には、基板Pを送り方向に沿って撓ませることにより、基板Pと吐出部12との相対距離を一定にすることができ、液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0073】
また、ロッド部35は、基板移動装置30に設ける場合に限られない。図12は、ロッド部の変更例を示す概念図である。
例えば、基板Pが基板支持テーブル32に戴置されず、直接コンベア上を搬送される場合や、シート状の連続した基板が用いられる場合には、図12(a)に示すように、ロッド部41を吐出部12の直下に配置して、吐出部12とロッド部41との間を搬送される基板Pをロッド部41により押し上げる等するようにしてもよい。
また、ロッド部42を吐出装置10に設けることも可能である。図12(b)に示すように、吐出部12の直下に搬送されてきた基板Pの上面をロッド部42により押し付けて、撓ませるようにしてもよい。特に、基板Pの上面を押し付けて撓ませるので、基板Pの厚みにばらつきがある場合であっても、基板Pと吐出部12との距離を一定にすることができるので有効である。
なお、ロッド部41,42の先端には、ローラを設けて、基板Pとの摩擦を軽減することが望ましい。
【0074】
また、計測装置20を吐出部12の直下に配置して、吐出部12の撓み量を検出する場合について説明したが、これに限らない。例えば、計測装置20を吐出部12に配置し、吐出部12(インクジェット式ヘッド200)と基板Pとの相対距離を検出するようにしてもよい。そして、その相対距離が常に一定になるようにロッド部35を伸縮させて制御すればよい。
【0075】
また、基板移動装置30により基板Pを固定された吐出装置10に向けて搬送する構成について説明したが、これに限らない。基板Pに対して吐出装置10が移動する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】描画システムを示す斜視図
【図2】吐出装置を示す概念図
【図3】インクジェット式ヘッドの一構成例を示す分解斜視図
【図4】インクジェット式ヘッドを示す斜視図一部断面図
【図5】基板支持テーブルを示す概念図
【図6】アクティブマトリクス型有機EL表示装置を示す回路図
【図7】有機EL表示装置における画素部の平面構造を示す拡大図
【図8】有機EL表示装置の層構成を示す図
【図9】有機EL表示装置の製造方法を示す図
【図10】有機EL表示装置の製造方法を示す図
【図11】有機EL表示装置を備えた電子機器を示す図
【図12】ロッド部の配置を変更した図
【符号の説明】
1 描画システム(描画装置)、 10 吐出装置、 12 吐出部、 20 計測装置(検出部)、 30 基板移動装置(搬送部)、 35,41,42 ロッド部(基板形状調整部)、 200 インクジェット式ヘッド(吐出ヘッド)、 P 基板、 DS デバイス(表示デバイス)、 EQ 電子機器
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上の所定位置に吐出ヘッドから液状体を吐出してパターンを描く描画装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路など微細な配線パターンを有するデバイスの製造方法、及び液晶ディスプレイ或いは有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の製造方法として、インクジェット方式を用いた製造方法が注目されている。これらの製造技術では、パターン形成面にパターン形成用材料を含んだ液状材料を吐出ヘッド(インクジェット式ヘッド)から吐出することにより基板上に材料層を成膜(描画)させて、デバイスを形成するものであり、少量多種生産に対応可能である点などにおいて大変有効である。
そして、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの高精細画素化等の進展とともに、基板上に形成されるパターンの微細化、高精度化の要求が高まっている。このため、基板と吐出ヘッドとを近接させることにより、液状材料の着弾精度を向上させている。更に、特開平11−291475号公報に示すように、吐出ヘッドを基板に向けて移動可能に構成し、基板と吐出ヘッドとの距離を一定に保つように制御することにより、基板に反りやうねりが生じている場合であっても、液状材料の着弾精度を向上できるようにしている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−291475号公報(第4頁、第4図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した技術では、基板を定盤等に戴置するとともに、吐出ヘッドを定盤に平行に保ち、液滴が基板に対して略直角に吐出されるようにすることが前提である。
しかしながら、ディスプレイの大型化や製造効率の向上化のために、使用される基板のサイズが大型化しており、基板を戴置する定盤の平面度を確保することが困難になりつつあるという問題がある。また、大型基板に対応するために、複数の吐出ヘッドを配列させた長尺の吐出部が用いられるが、これら複数の吐出ヘッドのそれぞれを基板に向けて移動可能に構成すると、装置が大型化、複雑化し、設備コストが上昇してしまう。更に、吐出装置が長尺化するために、吐出部自体が撓んでしまい、吐出ヘッドを定盤に対して平行に保つことが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、吐出部が複数の吐出ヘッドを配列させたものであっても、ヘッド毎に移動装置を設けることなく、吐出部の撓みに合わせて基板を撓ませることにより、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定に保ち、液状体の着弾精度を向上させる描画装置等を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る描画装置等では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第1の発明では、基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画装置において、基板を所定方向に相対移動させる搬送部と、基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有し、吐出ヘッドから基板に向けて液状体を吐出する吐出部と、吐出ヘッドと基板との相対距離を検出する検出部と、基板の形状を変化させて吐出ヘッドとの相対距離を調整する基板形状調整部とを備えるようにした。この発明によれば、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定にするように、基板を撓ませることができるので、吐出ヘッドから基板に向けて吐出される液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0007】
また、基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画装置において、基板を所定方向に相対移動させる搬送部と、基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有し、吐出ヘッドから基板に向けて液状体を吐出する吐出部と、吐出部の撓みを検出する撓み検出部と、基板を撓ませて吐出ヘッドとの相対距離を調整する基板形状調整部とを備えるようにした。この発明によれば、吐出部が撓んでいる場合であっても、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定にするように、基板を撓ませることができるので、吐出ヘッドから基板に向けて吐出される液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0008】
また、基板形状調整部が、搬送部に設けられるものでは、基板を吐出部の撓みに合わせて変形させた状態で搬送することができる。
また、基板形状調整部が基板を押し付けて撓ませるもの、又は、基板を引き付けて撓ませるものでは、吐出部の撓みに合わせて基板を確実に撓ませることができる。
また、基板形状調整部が、基板を基板の送り方向に沿って撓ませるもの、又は、基板を基板の送り方向と略直交する方向に沿って撓ませるものでは、基板を吐出部の撓みに正確に合わせることができる。
【0009】
第2の発明は、基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画方法において、基板を所定方向に相対移動させる工程と、基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有する吐出部から基板に向けて液状体を吐出する工程と、吐出部と基板との相対距離を検出する工程と、基板の形状を変化させて吐出ヘッドとの相対距離を調整する工程とを有するようにした。この発明によれば、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定にするように、基板を撓ませることができるので、吐出ヘッドから基板に向けて吐出される液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0010】
また、基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画方法において、基板を所定方向に相対移動させる工程と、基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有する吐出部から基板に向けて液状体を吐出する工程と、吐出部の撓みを検出する工程と、基板を撓ませて吐出ヘッドとの相対距離を調整する工程とを有するようにした。この発明によれば、吐出部が撓んでいる場合であっても、吐出ヘッドと基板との相対距離を一定にするように、基板を撓ませることができるので、吐出ヘッドから基板に向けて吐出される液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0011】
第3の発明は、デバイスが、第1の発明に係る描画装置により描画されたパターン、或いは第2に発明に係る描画方法により描画されたパターンを有するようにした。この発明によれば、高精細なパターンが形成されるので、高品質なデバイスを製造することができる。
【0012】
第4の発明は、電子機器が、第3の発明に係るデバイスを備えるようにした。この発明によれば、高品質なディスプレイを表示手段として備えるので、表示手段の表示が見やすい電子機器を製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる吐出装置、吐出方法、デバイス、電子機器の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る描画システム1を示す斜視図である。
描画システム(描画装置)1は、インクジェット方式を利用して、基板Pに向けて液状体を吐出してパターンPAを形成させるものであり、吐出装置10、基板移動装置30、制御装置80等を備える。
【0014】
図2は、吐出装置10を示す概念図である。吐出装置10は、複数のインクジェット式ヘッド(吐出ヘッド)200からなる吐出部12と、流動体を貯蔵したタンク14、タンク14内の流動体を吐出部12に送るパイプ16(不図示)、吐出部12等を支持するコラム18等を備える。
吐出部12は、複数のインクジェット式ヘッド200を基板PのY方向の幅と略同一の長さに配列して構成される。インクジェット式ヘッド200は、それぞれ複数のノズル211を備えるため(図3参照)、基板Pの幅方向(Y方向)に対して、略均一にノズル211が配置される。なお、ノズル211は、必ずしも一列に整列させる必要はなく、Y方向(基板の送り方向と略直交する方向)に均等に配置されていればよい。これにより、基板Pを吐出部12と略直交する方向(X方向、所定方向)に送ることにより、一度にパターン形成領域PAの全面に液状体を吐出することが可能である。
【0015】
また、吐出部12の下方には、計測装置(検出部)20が設けられる。吐出装置10は、大型の基板Pに対応するため、吐出部12を支持するコラム18の支点間の距離(スパン)を広げざるを得ない。このため、コラム18の中央部分が下方に撓んでしまう。計測装置20は、この撓み量を計測するものである。なお、計測装置20は、吐出部12の下方に配置される基板移動装置30とは、干渉しないように配置される。そして、後述する基板支持部34と計測装置20との距離が既知であるため、吐出部12の撓み量を計測することにより、吐出部12(インクジェット式ヘッド200)と基板Pとの相対距離を求めることができる。また、吐出部12の撓み量は、インクジェット式ヘッド200毎に計測されることが望ましい。各インクジェット式ヘッド200と基板Pとの相対距離を正確に求めるためである。なお、例えば、計測装置20により、吐出部12の中央部分のみを計測して、その計測結果とコラム18の剛性に基づいて、各インクジェット式ヘッド200の撓み量を求めるようにしてもよい。
なお、計測装置20による計測情報は、制御装置80に送られる。
【0016】
図3は、インクジェット式ヘッド200の一構成例を説明する分解斜視図、図4は、斜視図一部断面図である。
インクジェット式ヘッド200は、ノズル211の設けられたノズルプレート210および振動板230が設けられた圧力室基板220を筐体250に嵌め込んだ構成を備える。このインクジェット式ヘッド200の主要部構造は、図4に示すように、圧力室基板220をノズルプレート210と振動板230で挟み込んだ構造を備える。ノズルプレート210は、圧力室基板220と貼り合わせられたときにキャビティ221に対応することとなる位置にノズル211が形成される。圧力室基板220には、シリコン単結晶基板等をエッチングすることにより、各々が圧力室として機能可能にキャビティ221が複数設けられている。キャビティ221間は側壁(隔壁)222で分離されている。各キャビティ221は供給口224を介して共通の流路であるリザーバ223に繋がっている。振動板230は、例えば熱酸化層等により構成される。振動板230にはインクタンク口231が設けられ、タンク14から流動体を供給可能に構成されている。振動板230上のキャビティ221に相当する位置には、圧電体素子240が形成されている。圧電体素子240は、PZT素子等の圧電性セラミックスの結晶を上部電極および下部電極(図示略)で挟んだ構造を備える。圧電体素子240は、制御装置80から供給される吐出信号に対応して形状変化を生ずる。
なお、上記インクジェット式ヘッド200は、圧電体素子240に形状変化を生じさせて流動体を吐出させる構成に限らず、発熱体により流動体に熱を加え、その膨張によって液滴を吐出させるような構成であってもよい。
【0017】
図1に戻り、基板移動装置(搬送部)30は、吐出装置10の下方に配置され、テーブル駆動部31、基板支持テーブル32、等から構成される。基板支持テーブル32は、基板Pを保持し、テーブル駆動部31は、基板支持テーブル32とともに基板PをX方向に搬送する。なお、搬送中の基板Pの位置(X方向)は不図示の基板位置計測部により計測され、その情報は制御装置80に送られる。
図5は、基板支持テーブル32を示す概念図である。図5(a)は、基板支持テーブル32の平面図、図5(b),(d),(e)は、図5(a)におけるA−A断面図、図5(c)は、図5(a)におけるB−B断面図である。
基板支持テーブル32は、ベース部33、基板支持部34、ロッド部35とからなる。ベース部33は、保持する基板Pと略同一サイズの板状部材であり、その上面のY方向の両端には、基板支持部34が設けられる。基板支持部34は、基板Pを支持する部材であって、その上端面に吸着装置を備え、基板支持テーブル32に戴置された基板Pの端部と接触して、吸着保持する。また、ロッド部(基板形状調整部)35は、複数の棒状部材からなり、ベース部33の上面に均等に配置された穴部36に嵌合し、上下方向に伸び縮み(変位)可能に構成される。そして、ロッド部35は、基板支持部34に支持された基板Pの下面側と接触して基板Pを支持する。したがって、各ロッド部35の張り出し長さを調整することにより、基板Pを押し上げる等して、基板Pを上下方向に変形させることができる。
例えば、ロッド部35の張り出し長さを外周側から中央側に向けて徐々に低くした場合には、図5(b)に示すの様に、基板Pを凹状に撓ませることができる。逆に、外周側から中央側に向けて徐々に高くした場合には、図5(d)に示す様に、基板Pを凸状に撓ませることができる。また、図5(e)の様に、基板Pを波打つように撓ませることも可能である。
なお、各ロッド部35の上端面には、基板Pを吸着保持する吸着装置を設けてもよい。吸着装置を設けることにより、基板Pを下方に引き下げて変形させることが可能になる。
また、ロッド部35の張り出し長さ(変位)は、基板支持部34の高さと同一の高さ位置から、上下方向にそれぞれ数mm程度であり、吐出部12の最大撓み量よりも大きければよい。すなわち、吐出部12の最大撓み量よりも基板Pを撓ませることができることが望ましい。したがって、吐出部12の剛性に合わせて、ロッド部35の張り出し長さが設定される。
更に、ロッド部35の本数は、基板Pの剛性等の条件により変更可能である。すなわち、基板Pの形状を吐出部12の撓みに合わせることが可能な程度の本数であればよい。
【0018】
制御装置80(不図示)は、コンピュータ装置でありCPU、メモリ、インターフェース回路等を備える。制御装置80は所定のプログラムを実行することにより吐出装置10に、発光材料等を含むの流動体の吐出を実施させる。
さらに、計測装置20から送られてくるコラム18の撓み量に基づいて、基板支持テーブル32に指令して、ロッド部35を伸縮させて、基板Pをコラム18(インクジェット式ヘッド200)の撓みに略一致するように変形させる。
【0019】
基板Pは、ガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの合成樹脂等の材料により形成される。そして、例えば、数m角程度の大型基板が用いられ、1枚の基板Pには、複数のパターン形成領域PAが設けられる。基板Pのサイズとパターン形成領域PAのサイズ及び数は、製造するデバイスDSに応じて任意に決められる。なお、基板Pが大型基板の場合には、基板支持部34のみ基板Pを支持すると、その中央部分では、おおよそ数mm程度の撓み量が発生する。
また、基板Pに吐出される流動体は、製造するデバイスに応じて変更可能である。EL素子を製造する場合には、流動体として発光材料を用いる場合があり、発光材料としては、例えば、有機材料であり、低分子の有機材料としてアルミキノリノール錯体(Alq3)等があり、高分子の有機材料としてポリパラフェニレンビニレン(PPV)等がある。いずれの場合でも、流動体はインクジェット式ヘッド200から液滴として吐出可能な流動性を呈するように溶媒等で粘度が調整される場合がある。
【0020】
以上のような構成を備える描画システム1は、以下のように作用する。
まず、計測装置20により吐出部12の撓みを測定する。そして、その計測情報は、制御装置80に送られる。制御装置80は、計測結果に基づいて、基板支持テーブル32に指令して、ロッド部35を伸縮させる。ロッド部35の伸縮(移動)量は、各ロッド部35と同一位置(Y方向)に配置されるインクジェット式ヘッド200の変位量(撓み量)に略同一である。すなわち、吐出部12の撓みに合わせて、ロッド部35を伸縮させる。
次に、不図示の基板搬送装置により、基板Pが基板支持テーブル32上に戴置されと、基板Pの端部は、基板支持部34に吸着保持されるとともに、パターン形成領域等は、ロッド部35により支持される。上述したように、ロッド部35が吐出部12の撓みに合わせて伸縮しているので、ロッド部35上に戴置された基板Pも吐出部12の撓みに合わせた形状に変形する。これにより、吐出部12の各インクジェット式ヘッド200と基板Pとの距離が略一定距離になる。
次に、制御装置80からの指令により、テーブル駆動部31が駆動し、基板Pは、基板支持テーブル32とともに吐出部12に向けて搬送される。そして、基板Pが吐出部12の直下に搬送されると、制御装置80から吐出装置10に向けて吐出命令が出され、基板Pに向けて液状体が吐出されて、パターンPAが描画される。
【0021】
このように、基板Pを吐出部12の撓みに合わせて撓ませることにより、基板Pとインクジェット式ヘッド200との距離を略一定に保ち、吐出装置10からの液状体の弾精度を向上させることができる。
なお、ロッド部35の変位量は、吐出部12のインクジェット式ヘッド200をメンテナンス等により交換する毎に調整し直す必要がある。逆に言えば、吐出部12の撓み量が変化しなければ、ロッド部35の変位量を変更しなくてもよいので、長時間に渡って液状体の弾精度を安定させることが可能である。
【0022】
次に、上述した構成を有する描画システム1を用いて、基板Pに対して吐出装置10から発光材料等を吐出することにより、基板P上に発光層360等を積層して、基板Pに積層配線パターンPAを形成する方法の一例について詳述する。
以下の説明では有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスDS及びこれを駆動するTFT(薄膜トランジスタ)を製造する手順を示す。
【0023】
EL表示デバイスDSは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。
【0024】
EL表示デバイスDSを製造する装置としては、描画システム1を複数台連結した装置が用いられる。そして、各描画システム1の吐出装置10(吐出部12)からはそれぞれ異なる材料を含む発光材料が吐出されるようになっている。発光材料は、材料を微粒子状にし、溶媒及びバインダーを用いてペースト化したものであって、吐出部12が吐出可能な粘度(例えば50cps以下)に設定されている。
そして、基板Pに対して、複数の描画システム1のうち、第1の描画システム1から第1の材料を含む液状材料を吐出した後これを乾燥(焼成)し、次いで第2の描画システム1から第2の材料を含む液状材料を第1の材料層に対して吐出した後これを乾燥(焼成)し、以下、複数の描画システム1を用いて同様の処理を行うことにより、基板P上に複数の材料層が積層され、多層配線パターンが形成されるようになっている。
【0025】
図6,図7,図8は、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置の一例を示す図であって、図6は有機EL表示デバイスDSの回路図、図7は対向電極や有機エレクトロルミネッセンス素子を取り除いた状態での画素部の拡大平面図である。
【0026】
図6に示す回路図のように、この有機EL表示デバイスDSは、基板上に、複数の走査線311と、これら走査線311に対して交差する方向に延びる複数の信号線312と、これら信号線312に並列に延びる複数の共通給電線313とがそれぞれ配線されたもので、走査線311及び信号線312の各交点毎に、画素ARが設けられて構成されたものである。
【0027】
信号線312に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ線駆動回路302が設けられている。
一方、走査線311に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路304が設けられている。また、画素領域ARの各々には、走査線311を介して走査信号がゲート電極に供給される第1の薄膜トランジスタ322と、この第1の薄膜トランジスタ322を介して信号線312から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される第2の薄膜トランジスタ324と、この第2の薄膜トランジスタ324を介して共通給電線313に電気的に接続したときに共通給電線313から駆動電流が流れ込む画素電極323と、この画素電極(陽極)323と対向電極(陰極)522との間に挟み込まれる発光部(発光層)360とが設けられている。
【0028】
このような構成のもとに、走査線311が駆動されて第1の薄膜トランジスタ322がオンとなると、そのときの信号線312の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、第2の薄膜トランジスタ324の導通状態が決まる。そして、第2の薄膜トランジスタ324のチャネルを介して共通給電線313から画素電極323に電流が流れ、さらに発光層360を通じて対向電極522に電流が流れることにより、発光層360は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
【0029】
ここで、各画素ARの平面構造は、図7に示すように、平面形状が長方形の画素電極323の四辺が、信号線312、共通給電線313、走査線311及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。
【0030】
図8は図6のA−A矢視断面図である。ここで、図8に示す有機EL表示デバイスDSは、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が配置された基板P側とは反対側から光を取り出す形態、いわゆるトップエミッション型である。
【0031】
なお、上述したが、基板Pの形成材料としては、ガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの合成樹脂などが挙げられる。ここで、有機EL表示デバイスDSがトップエミッション型である場合、基板Pは不透明であってもよく、その場合、アルミナ等のセラミック、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0032】
一方、TFTが配置された基板側から光を取り出す形態、いわゆるバックエミッション型においては、基板としては透明なものが用いられ、光を透過可能な透明あるいは半透明材料、例えば、透明なガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などが挙げられる。特に、基板の形成材料としては、安価なソーダガラスが好適に用いられる。
【0033】
図8に示すように、トップエミッション型の有機EL表示デバイスDSは、基板Pと、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等の透明電極材料からなる陽極(画素電極)323と、陽極323から正孔を輸送可能な正孔輸送層370と、電気光学物質の1つである有機EL物質を含む発光層(有機EL層、電気光学素子)360と、発光層360の上面に設けられている電子輸送層350と、電子輸送層350の上面に設けられているアルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)、カルシウム(Ca)等からなる陰極(対向電極)522と、基板P上に形成され、画素電極323にデータ信号を書き込むか否かを制御する通電制御部としての薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と称する)324とを有している。TFT324は、走査線駆動回路304及びデータ線駆動回路302からの作動指令信号に基づいて作動し、画素電極323への通電制御を行う。
【0034】
TFT324は、SiO2を主体とする下地保護層581を介して基板Pの表面に設けられている。このTFT324は、下地保護層581の上層に形成されたシリコン層541と、シリコン層541を覆うように下地保護層581の上層に設けられたゲート絶縁層582と、ゲート絶縁層582の上面のうちシリコン層541に対向する部分に設けられたゲート電極542と、ゲート電極542を覆うようにゲート絶縁層582の上層に設けられた第1層間絶縁層583と、ゲート絶縁層582及び第1層間絶縁層583にわたって開孔するコンタクトホールを介してシリコン層541と接続するソース電極543と、ゲート電極542を挟んでソース電極543と対向する位置に設けられ、ゲート絶縁層582及び第1層間絶縁層583にわたって開孔するコンタクトホールを介してシリコン層541と接続するドレイン電極544と、ソース電極543及びドレイン電極544を覆うように第1層間絶縁層583の上層に設けられた第2層間絶縁層584とを備えている。
【0035】
そして、第2層間絶縁層584の上面に画素電極323が配置され、画素電極323とドレイン電極544とは、第2層間絶縁層584に設けられたコンタクトホール323aを介して接続されている。また、第2層間絶縁層584の表面のうち有機EL素子が設けられている以外の部分と陰極522との間には、合成樹脂などからなる第3絶縁層(バンク層)521が設けられている。
【0036】
なお、シリコン層541のうち、ゲート絶縁層582を挟んでゲート電極542と重なる領域がチャネル領域とされている。また、シリコン層541のうち、チャネル領域のソース側にはソース領域が設けられている一方、チャネル領域のドレイン側にはドレイン領域が設けられている。このうち、ソース領域が、ゲート絶縁層582と第1層間絶縁層583とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極543に接続されている。一方、ドレイン領域が、ゲート絶縁層582と第1層間絶縁層583とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極543と同一層からなるドレイン電極544に接続されている。画素電極323は、ドレイン電極544を介して、シリコン層541のドレイン領域に接続されている。
【0037】
次に、図9及び図10を参照しながら図8に示した有機EL表示デバイスDSの製造プロセスについて説明する。
はじめに、基板P上にシリコン層541を形成する。シリコン層541を形成する際には、まず、図9(a)に示すように、基板Pの表面にTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護層581を形成する。
【0038】
次に、図9(b)に示すように、基板Pの温度を約350℃に設定して、下地保護層581の表面にプラズマCVD法あるいはICVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜からなる半導体層541Aを形成する。次いで、この半導体層541Aに対してレーザアニール法、急速加熱法、または固相成長法などによって結晶化工程を行い、半導体層541Aをポリシリコン層に結晶化する。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は例えば200mJ/cm2 とする。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0039】
次いで、図9(c)に示すように、半導体層(ポリシリコン層)541Aをパターニングして島状のシリコン層541とした後、その表面に対して、TEOSや酸化ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜又は窒化膜からなるゲート絶縁層582を形成する。なお、シリコン層541は、図6に示した第2の薄膜トランジスタ324のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においては第1の薄膜トランジスタ322のチャネル領域及びソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。つまり、二種類のトランジスタ322、324は同時に形成されるが、同じ手順で作られるため、以下の説明において、トランジスタに関しては、第2の薄膜トランジスタ324についてのみ説明し、第1の薄膜トランジスタ322についてはその説明を省略する。
【0040】
なお、ゲート絶縁層582を多孔性を有するシリコン酸化膜(SiO2膜)としてもよい。多孔性を有するSiO2膜からなるゲート絶縁層582は、反応ガスとしてSi2H6とO3とを用いて、CVD法(化学的気相成長法)により形成される。これらの反応ガスを用いると、気相中に粒子の大きいSiO2が形成され、この粒子の大きいSiO2がシリコン層541や下地保護層581の上に堆積する。そのため、ゲート絶縁層582は、層中に多くの空隙を有し、多孔質体となる。そして、ゲート絶縁層582は多孔質体となることによって低誘電率を有するようになる。
【0041】
なお、ゲート絶縁層582の表面にH(水素)プラズマ処理をしてもよい。これにより、空隙の表面のSi−O結合中のダングリングボンドがSi−H結合に置き換えられ、膜の耐吸湿性が良くなる。そして、このプラズマ処理されたゲート絶縁層582の表面に別のSiO2層を設けてもよい。こうすることにより、低誘電率な絶縁層が形成できる。
また、ゲート絶縁層582をCVD法で形成する際の反応ガスは、Si2H6+O3の他に、Si2H6+O2、Si3H8+O3、Si3H8+O2としてもよい。更に、上記の反応ガスに加えて、B(ホウ素)含有の反応ガス、F(フッ素)含有の反応ガスを用いてもよい。
【0042】
更に、ゲート絶縁層582をインクジェット法を用いて形成してもよい。ゲート絶縁層582を形成するための吐出部12から吐出させる液状材料としては、上述したSiO2等の材料を適当な溶媒に分散してペースト化したものや、絶縁性材料含有ゾルなどが挙げられる。絶縁性材料含有ゾルとしては、テトラエトキシシラン等のシラン化合物をエタノール等の適当な溶媒に溶かしたものや、アルミニウムのキレート塩、有機アルカリ金属塩または有機アルカリ土類金属塩等を含有する組成物で、焼成すると無機酸化物のみになるように調合したものでもよい。インクジェット法によって形成されたゲート絶縁層582は、この後、予備乾燥される。
【0043】
インクジェット法によってゲート絶縁層582を形成する際には、ゲート絶縁層582を形成するための吐出動作をする前に、下地保護層581やシリコン層541に対して液状材料の親和性を制御する表面処理をしておいてもよい。この場合の表面処理は、UV、プラズマ処理等の親液処理である。こうすることにより、ゲート絶縁層582を形成するための液状材料は下地保護層581などに密着するとともに、平坦化される。
【0044】
次いで、図9(d)に示すように、ゲート絶縁層582上にアルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を含む導電膜をスパッタ法により形成した後、これをパターニングし、ゲート電極542を形成する。次いで、この状態で高濃度のリンイオンを打ち込み、シリコン層541に、ゲート電極542に対して自己整合的にソース領域541s及びドレイン領域541dを形成する。この場合、ゲート電極542はパターニング用マスクとして用いられる。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域541cとなる。
【0045】
次いで、図9(e)に示すように、第1層間絶縁層583を形成する。第1層間絶縁層583は、ゲート絶縁層582同様、シリコン酸化膜または窒化膜、多孔性を有するシリコン酸化膜などによって構成され、ゲート絶縁層582の形成方法と同様の手順でゲート絶縁層582の上層に形成される。
更に、第1層間絶縁層583の形成工程を、ゲート絶縁層582の形成工程と同様、インクジェット法によって行ってもよい。第1層間絶縁層583を形成するための吐出部12から吐出させる液状材料としては、ゲート絶縁層582同様、SiO2等の材料を適当な溶媒に分散してペースト化したものや、絶縁性材料含有ゾルなどが挙げられる。絶縁性材料含有ゾルとしては、テトラエトキシシラン等のシラン化合物をエタノール等の適当な溶媒に溶かしたものや、アルミニウムのキレート塩、有機アルカリ金属塩または有機アルカリ土類金属塩等を含有する組成物で、焼成すると無機酸化物のみになるように調合したものでもよい。インクジェット法によって形成された第1層間絶縁層583は、この後、予備乾燥される。
【0046】
インクジェット法によって第1層間絶縁層583を形成する際には、第1層間絶縁層583を形成するための吐出動作をする前に、ゲート絶縁層582上面に対して液状材料の親和性を制御する表面処理をしておいてもよい。この場合の表面処理は、UV、プラズマ処理等の親液処理である。こうすることにより、第1層間絶縁層583を形成するための液状材料はゲート絶縁層582に密着するとともに、平坦化される。
【0047】
そして、この第1層間絶縁層583及びゲート絶縁層582にフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより、ソース電極及びドレイン電極に対応するコンタクトホールを形成する。次いで、第1層間絶縁層583を覆うように、アルミニウムやクロム、タンタル等の金属からなる導電層を形成した後、この導電層のうち、ソース電極及びドレイン電極が形成されるべき領域を覆うようにパターニング用マスクを設けるとともに、導電層をパターニングすることにより、ソース電極543及びドレイン電極544を形成する。
【0048】
次に、図示はしないが、第1層間絶縁層583上に、信号線、共通給電線、走査線を形成する。このとき、これらに囲まれる箇所は後述するように発光層等を形成する画素となることから、例えばバックエミッション型とする場合には、TFT324が前記各配線に囲まれた箇所の直下に位置しないよう、各配線を形成する。
【0049】
次いで、図10(a)に示すように、第2層間絶縁層584を、第1層間絶縁層583、各電極543、544、前記不図示の各配線を覆うように形成する。
第1層間絶縁層583はインクジェット法によって形成される。ここで、描画システム1の制御装置80は、図10(a)に示すように、ドレイン電極544の上面に非吐出領域(非滴下領域)Hを設定し、ドレイン電極544のうち非吐出領域H以外の部分、ソース電極543及び第1層間絶縁層583を覆うように、第2層間絶縁層584を形成するための液状材料を吐出し、第2層間絶縁層584を形成する。こうすることによって、コンタクトホール323aが形成される。あるいは、コンタクトホール323aをフォトリソグラフィ法で形成してもよい。
【0050】
ここで、第2層間絶縁層584を形成するための吐出部12から吐出させる液状材料としては、第1層間絶縁層583同様、SiO2等の材料を適当な溶媒に分散してペースト化したものや、絶縁性材料含有ゾルなどが挙げられる。絶縁性材料含有ゾルとしては、テトラエトキシシラン等のシラン化合物をエタノール等の適当な溶媒に溶かしたものや、アルミニウムのキレート塩、有機アルカリ金属塩または有機アルカリ土類金属塩等を含有する組成物で、焼成すると無機酸化物のみになるように調合したものでもよい。インクジェット法によって形成された第2層間絶縁層584は、この後、予備乾燥される。
【0051】
インクジェット法によって第2層間絶縁層584を形成する際には、第2層間絶縁層584を形成するための吐出動作をする前に、ドレイン電極544の非吐出領域Hに対して液状材料の親和性を制御する表面処理をしておいてもよい。この場合の表面処理は、撥液処理である。こうすることにより、非吐出領域Hには液状材料が配置されず、コンタクトホール323aを安定して形成できる。また、非吐出領域H以外のドレイン電極544上面、ソース電極543上面、第1層間絶縁層583上面には、予め親液処理を施しておくことにより、第2層間絶縁層584を形成するための液状材料は第1層間絶縁層583やソース電極543、ドレイン電極544のうち非吐出領域H以外に部分に密着するとともに、平坦化される。
【0052】
こうして、第2層間絶縁層584のうちドレイン電極544に対応する部分にコンタクトホール323aを形成しつつ、ドレイン電極544の上層に第2層間絶縁層584を形成したら、図10(b)に示すように、コンタクトホール323aにITO等の導電性材料を充填するように、すなわち、コンタクトホール323aを介してドレイン電極544に連続するように導電性材料をパターニングし、画素電極(陽極)323を形成する。
【0053】
有機EL素子に接続する陽極323は、ITOやフッ素をドープしてなるSnO2、更にZnOやポリアミン等の透明電極材料からなり、コンタクトホール323aを介してTFT324のドレイン電極544に接続されている。陽極323を形成するには、前記透明電極材料からなる膜を第2層間絶縁層584上面に形成し、この膜をパターニングすることにより形成される。
【0054】
陽極323を形成したら、図10(c)に示すように、第2層間絶縁層584の所定位置及び陽極323の一部を覆うように、第3絶縁層521である有機バンク層を形成する。第3絶縁層521はアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂によって構成されている。具体的な第3絶縁層521の形成方法としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に融かしたものを、スピンコート、ディップコート等により塗布して絶縁層を形成する。なお、絶縁層の構成材料は、後述する液状材料の溶媒に溶解せず、しかもエッチング等によってパターニングしやすいものであればどのようなものでもよい。更に、絶縁層をフォトリソグラフィ技術等により同時にエッチングして、開口部521aを形成することにより、開口部521aを備えた第3絶縁層521が形成される。
【0055】
ここで、第3絶縁層521の表面には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とが形成される。本実施形態においてはプラズマ処理工程により、各領域を形成するものとしている。具体的にプラズマ処理工程は、予備加熱工程と、開口部521aの壁面並びに画素電極323の電極面を親液性にする親液化工程と、第3絶縁層521の上面を撥液性にする撥液化工程と、冷却工程とを有している。
すなわち、基材(第3絶縁層等を含む基板P)を所定温度(例えば70〜80度程度)に加熱し、次いで親液化工程として大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。続いて、撥液化工程として大気雰囲気中で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、プラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親液性及び撥液性が所定箇所に付与されることとなる。なお、画素電極323の電極面についても、このCF4プラズマ処理の影響を多少受けるが、画素電極323の材料であるITO等はフッ素に対する親和性に乏しいため、親液化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれる。
【0056】
次いで、図10(d)に示すように、陽極323の上面に正孔輸送層370を形成する。ここで、正孔輸送層370の形成材料としては、特に限定されることなく公知のものが使用可能であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等からなる。具体的には、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示されるが、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく、中でも4,4’−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルが好適とされる。
【0057】
なお、正孔輸送層に代えて正孔注入層を形成するようにしてもよく、さらに正孔注入層と正孔輸送層を両方形成するようにしてもよい。その場合、正孔注入層の形成材料としては、例えば銅フタロシアニン(CuPc)や、ポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等が挙げられるが、特に銅フタロシアニン(CuPc)を用いるのが好ましい。
【0058】
正孔注入/輸送層370を形成する際には、インクジェット法が用いられる。すなわち、上述した正孔注入/輸送層材料を含む組成物液状材料を陽極323の電極面上に吐出した後に、予備乾燥処理を行うことにより、陽極323上に正孔注入/輸送層370が形成される。なお、この正孔注入/輸送層形成工程以降は、正孔注入/輸送層370及び発光層(有機EL層)360の酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。例えば、吐出部12に正孔注入/輸送層材料を含む組成物液状材料を充填し、吐出部12のインクジェット式ヘッド200を陽極323の電極面に対向させ、吐出部12と基材(基板P)とを相対移動させながら、インクジェット式ヘッド200から1滴当たりの液量が制御されたインキ滴を電極面に吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理して組成物液状材料に含まれる極性溶媒を蒸発させることにより、正孔注入/輸送層370が形成される。
【0059】
なお、組成物液状材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体と、ポリスチレンスルホン酸等との混合物を、イソプロピルアルコール等の極性溶媒に溶解させたものを用いることができる。ここで、吐出された液滴は、親液処理された陽極323の電極面上に広がり、開口部521aの底部近傍に満たされる。その一方で、撥液処理された第3絶縁層521の上面には液滴がはじかれて付着しない。したがって、液滴が所定の吐出位置からはずれて第3絶縁層521の上面に吐出されたとしても、該上面が液滴で濡れることがなく、はじかれた液滴が第3絶縁層521の開口部521a内に転がり込むものとされている。
【0060】
次いで、正孔注入/輸送層370上面に発光層360を形成する。発光層360の形成材料としては、特に限定されることなく、低分子の有機発光色素や高分子発光体、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質からなる発光物質が使用可能である。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン構造を含むものが特に好ましい。低分子蛍光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、または特開昭57−51781、同59−194393号公報等に記載されている公知のものが使用可能である。
【0061】
発光層360は、正孔注入/輸送層370の形成方法と同様の手順で形成される。すなわち、インクジェット法によって発光層材料を含む組成物液状材料を正孔注入/輸送層370の上面に吐出した後に、予備乾燥処理を行うことにより、第3絶縁層521に形成された開口部521a内部の正孔注入/輸送層370上に発光層360が形成される。この発光層形成工程も上述したように不活性ガス雰囲気下で行われる。吐出された組成物液状材料は撥液処理された領域ではじかれるので、液滴が所定の吐出位置からはずれたとしても、はじかれた液滴が第3絶縁層521の開口部521a内に転がり込む。
【0062】
次いで、発光層360の上面に電子輸送層350を形成する。電子輸送層350も発光層360の形成方法と同様、インクジェット法により形成される。電子輸送層350の形成材料としては、特に限定されることなく、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等が例示される。具体的には、先の正孔輸送層の形成材料と同様に、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。インクジェット法により組成物液状材料を吐出した後、予備乾燥処理が行われる。
【0063】
なお、前述した正孔注入/輸送層370の形成材料や電子輸送層350の形成材料を発光層360の形成材料に混合し、発光層形成材料として使用してもよく、その場合に、正孔注入/輸送層形成材料や電子輸送層形成材料の使用量については、使用する化合物の種類等によっても異なるものの、十分な成膜性と発光特性を阻害しない量範囲でそれらを考慮して適宜決定される。通常は、発光層形成材料に対して1〜40重量%とされ、さらに好ましくは2〜30重量%とされる。
【0064】
次いで、図10(e)に示すように、電子輸送層350及び第3絶縁層521の上面に陰極522を形成する。陰極522は、電子輸送層350及び第3絶縁層521の表面全体、あるいはストライプ状に形成されている。陰極522については、もちろんAl、Mg、Li、Caなどの単体材料やMg:Ag(10:1合金)の合金材料からなる1層で形成してもよいが、2層あるいは3層からなる金属(合金を含む。)層として形成してもよい。具体的には、Li2 O(0.5nm程度)/AlやLiF(0.5nm程度)/Al、MgF2 /Alといった積層構造のものも使用可能である。陰極222は上述した金属からなる薄膜であり、光を透過可能である。
【0065】
なお、上記実施形態では、各絶縁層を形成する際にインクジェット法を用いているが、ソース電極543やドレイン電極544、あるいは陽極323や陰極522を形成する際にインクジェット法を用いてもよい。予備乾燥処理は、組成物液状材料のそれぞれを吐出後、行われる。
【0066】
なお、導電性材料層を構成する導電性材料(デバイス形成用材料)としては、所定の金属、あるいは導電性ポリマーが挙げられる。
金属としては、金属ペーストの用途によって銀、金、ニッケル、インジウム、錫、鉛、亜鉛、チタン、銅、クロム、タンタル、タングステン、パラジウム、白金、鉄、コバルト、ホウ素、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、スカンジウム、ロジウム、イリジウム、バナジウム、ルテニウム、オスミウム、ニオブ、ビスマス、バリウムなどのうち少なくとも1種の金属又はこれらの合金が挙げられる。また、酸化銀(AgO又はAg2O)や酸化銅なども挙げられる。
【0067】
また、上記導電性材料を吐出部12から吐出可能にペースト化する際の有機溶媒としては、炭素数5以上のアルコール類(例えばテルピネオール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、フェネチルアルコール)の1種以上を含有する溶媒、又は有機エステル類(例えば酢酸エチル、オレイン酸メチル、酢酸ブチル、グリセリド)の1種以上を含有する溶媒であればよく、使用する金属又は金属ペーストの用途によって適宜選択できる。更には、ミネラルスピリット、トリデカン、ドデシルベンゼンもしくはそれらの混合物、又はそれらにα−テルピネオールを混合したもの、炭素数5以上の炭化水素(例えば、ピネン等)、アルコール(例えば、n−ヘプタノール等)、エーテル(例えば、エチルベンジルエーテル等)、エステル(例えば、n−ブチルステアレート等)、ケトン(例えば、ジイソブチルケトン等)、有機窒素化合物(例えば、トリイソプロパノールアミン等)、有機ケイ素化合物(シリコーン油等)、有機硫黄化合物もしくはそれらの混合物を用いることもできる。なお、有機溶媒中に必要に応じて適当な有機物を添加してもよい。そして、これら溶媒に応じて、予備乾燥処理の際のガス温度が設定される。
【0068】
上記実施形態の有機EL表示デバイスDSを備えた電子機器EQの例について図11を参照して説明する。
図11(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図11(a)において、携帯電話1000(電子機器EQ)は、上記の有機EL表示デバイスDSを用いた表示部1001を備える。
図11(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図11(b)において、腕時計1100(電子機器EQ)は、上記の有機EL表示デバイスDSを用いた表示部1101を備える。
図11(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図11(c)において、情報処理装置1200(電子機器EQ)は、キーボードなどの入力部1202、情報処理装置本体1204、上記の有機EL表示デバイスDSを用いた表示部1206を備える。
以上のように、図11(a)〜(c)に示す電子機器EQは、上記実施の形態の有機EL表示デバイスDSを表示部として備えているので、表示品位に優れ、明るい画面の有機EL表示部を備えた電子機器を実現することができる。
【0069】
上記実施形態は、本発明のデバイスの製造方法を、有機EL表示デバイスの駆動用TFTの配線パターン形成に適用したものであるが、有機EL表示デバイスに限らず、PDP(プラズマディスプレイパネル)デバイスの配線パターンの製造、液晶表示デバイスの配線パターンの製造など、各種多層配線デバイスの製造に適用可能である。そして、各種多層配線デバイスを製造するに際し、導電性材料層及び絶縁性材料層のうちいずれの材料層を形成する際にもインクジェット法を適用できる。
【0070】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、実施の形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。本発明は、例えば以下のような変更をも含むものとする。
【0071】
上述した実施形態では、パターンの描画処理に先立て、吐出部12の撓み量を計測し、予めロッド部35の張り出し長さ(変位量)を調整しておいたが、これに限らない。例えは、基板Pがガラス等の透過性基板の場合には、計測装置20を基板支持テーブル32の各ロッド部35の間に配置し、吐出部12の撓み量を計測すると略同時にロッド部35を伸縮させて、基板Pを撓ませるように制御し、その直後に描画処理を行ってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、基板Pを送り方向と直交する方向に沿って撓ませる場合について説明したが、これに限らない。基板Pを送り方向に沿って撓ませることも可能である。すなわち、吐出部12が基板Pを送り方向に沿って撓みが発生している場合には、基板Pを送り方向に沿って撓ませることにより、基板Pと吐出部12との相対距離を一定にすることができ、液状体の着弾精度を向上させることができる。
【0073】
また、ロッド部35は、基板移動装置30に設ける場合に限られない。図12は、ロッド部の変更例を示す概念図である。
例えば、基板Pが基板支持テーブル32に戴置されず、直接コンベア上を搬送される場合や、シート状の連続した基板が用いられる場合には、図12(a)に示すように、ロッド部41を吐出部12の直下に配置して、吐出部12とロッド部41との間を搬送される基板Pをロッド部41により押し上げる等するようにしてもよい。
また、ロッド部42を吐出装置10に設けることも可能である。図12(b)に示すように、吐出部12の直下に搬送されてきた基板Pの上面をロッド部42により押し付けて、撓ませるようにしてもよい。特に、基板Pの上面を押し付けて撓ませるので、基板Pの厚みにばらつきがある場合であっても、基板Pと吐出部12との距離を一定にすることができるので有効である。
なお、ロッド部41,42の先端には、ローラを設けて、基板Pとの摩擦を軽減することが望ましい。
【0074】
また、計測装置20を吐出部12の直下に配置して、吐出部12の撓み量を検出する場合について説明したが、これに限らない。例えば、計測装置20を吐出部12に配置し、吐出部12(インクジェット式ヘッド200)と基板Pとの相対距離を検出するようにしてもよい。そして、その相対距離が常に一定になるようにロッド部35を伸縮させて制御すればよい。
【0075】
また、基板移動装置30により基板Pを固定された吐出装置10に向けて搬送する構成について説明したが、これに限らない。基板Pに対して吐出装置10が移動する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】描画システムを示す斜視図
【図2】吐出装置を示す概念図
【図3】インクジェット式ヘッドの一構成例を示す分解斜視図
【図4】インクジェット式ヘッドを示す斜視図一部断面図
【図5】基板支持テーブルを示す概念図
【図6】アクティブマトリクス型有機EL表示装置を示す回路図
【図7】有機EL表示装置における画素部の平面構造を示す拡大図
【図8】有機EL表示装置の層構成を示す図
【図9】有機EL表示装置の製造方法を示す図
【図10】有機EL表示装置の製造方法を示す図
【図11】有機EL表示装置を備えた電子機器を示す図
【図12】ロッド部の配置を変更した図
【符号の説明】
1 描画システム(描画装置)、 10 吐出装置、 12 吐出部、 20 計測装置(検出部)、 30 基板移動装置(搬送部)、 35,41,42 ロッド部(基板形状調整部)、 200 インクジェット式ヘッド(吐出ヘッド)、 P 基板、 DS デバイス(表示デバイス)、 EQ 電子機器
Claims (11)
- 基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画装置において、
前記基板を所定方向に相対移動させる搬送部と、前記基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有し、該吐出ヘッドから前記基板に向けて液状体を吐出する吐出部と、前記吐出ヘッドと前記基板との相対距離を検出する検出部と、前記基板の形状を変化させて前記吐出ヘッドとの相対距離を調整する基板形状調整部と、を備えることを特徴とする描画装置。 - 基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画装置において、
前記基板を所定方向に相対移動させる搬送部と、前記基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有し、該吐出ヘッドから前記基板に向けて液状体を吐出する吐出部と、前記吐出部の撓みを検出する撓み検出部と、前記基板を撓ませて前記吐出ヘッドとの相対距離を調整する基板形状調整部と、を備えることを特徴とする描画装置。 - 前記基板形状調整部は、前記搬送部に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の描画装置。
- 前記基板形状調整部は、前記基板を押し付けて撓ませることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記基板形状調整部は、前記基板を引き付けて撓ませることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記基板形状調整部は、前記基板を該基板の送り方向に沿って撓ませることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の描画装置。
- 前記基板形状調整部は、前記基板を該基板の送り方向と略直交する方向に沿って撓ませることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の描画装置。
- 基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画方法において、
前記基板を所定方向に相対移動させる工程と、前記基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有する吐出部から前記基板に向けて液状体を吐出する工程と、前記吐出部と前記基板との相対距離を検出する工程と、前記基板の形状を変化させて前記吐出ヘッドとの相対距離を調整する工程と、を有することを特徴とする描画方法。 - 基板上の所定位置に液状体を配置してパターンを描く描画方法において、
前記基板を所定方向に相対移動させる工程と、前記基板の移動方向と略直交する方向に配列された複数の吐出ヘッドを有する吐出部から前記基板に向けて液状体を吐出する工程と、前記吐出部の撓みを検出する工程と、前記基板を撓ませて前記吐出ヘッドとの相対距離を調整する工程と、を有することを特徴とする描画装置。 - 請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の描画装置により描画されたパターン、或いは請求項8又は請求項9に記載の描画方法により描画されたパターンを有することを特徴とするデバイス。
- 請求項10に記載のデバイスを備えることを特徴とする電子機器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003166351A JP2005000786A (ja) | 2003-06-11 | 2003-06-11 | 描画装置、描画方法、デバイス及び電子機器 |
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Family Applications (1)
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- 2003-06-11 JP JP2003166351A patent/JP2005000786A/ja not_active Withdrawn
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