JP2005000045A - 散水チューブ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シラン共重合ポリオレフィン系樹脂及びシラングラフトポリオレフィン系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂100重量部、及びシラノール縮合触媒0.001〜5重量部を含み、水架橋した散水チューブ。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水架橋性散水チューブに関する。詳しくは、水の存在下で加水分解、縮合が可能なポリオレフィン系樹脂から形成され、水架橋によって高度の耐久性能、耐圧性能、耐熱性能、耐薬品性能を有する均一散水性を保持した散水チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、農業用分野、土木用分野を中心に散水用、或いは潅水用として、合成樹脂製の散水チューブが利用されている。通常、これらの散水チューブは、散水孔を穿設した二枚の長尺状熱可塑性樹脂フィルムを重ね合わせて、幅方向の両端を長尺方向に融着することによって形成された貼合タイプのもの(例えば、特開昭58−63335号公報、特許文献1参照)、及び、溶融押出法によって熱可塑性樹脂を円筒状のスリットから溶融押出し、直接チューブ状に成形加工し、得られたチューブに散水孔を穿設した非貼合タイプのもの(例えば、特開平2−258187号公報、特許文献2参照)が存在する。
【0003】
何れの散水チューブも、供給水に所定水圧をかけて送水することによって、均一な散水特性を達成できるように、精度の高い穿孔処理、具体的にはポンチ打ち抜き法、熱針穿孔法、或いはレーザー穿孔法などの方法により、多数の小孔が高精度に規則正しく配列された形態を有している。
【0004】
このような散水チューブの材質としては、要求される物性が、特に、耐久性、耐圧性、耐熱性、柔軟性、加工性、穿孔処理性、均一散水性、取扱い利便性などであることを考慮して、主に熱可塑性樹脂が採用されている。熱可塑性樹脂の内でも、高圧法ポリエチレン樹脂、中低圧法エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が利用されている。
【0005】
しかしながら、最近では散水チューブの利用のされ方として、広範囲の面積をより均一に散水する傾向に有り、そのため散水チューブの敷設長さもそれに合わせて長くなり、併せて、より均一な散水形状と散水幅を達成することが必要とされている。このため、散水チューブの元水圧は、これまで以上に高圧値に設定して対応しなければならなくなっている。この場合、散水チューブの耐久性、耐圧性が限界を超え、長期間に亘る高品質の維持に問題を来すケースが発生している。
【0006】
また、夏季には高温度の外気環境下で長時間、未使用の状態で散水チューブを圃場に放置するケースが多々有る。この場合、潅水チューブの表面温度は60〜80℃と極めて高温に晒され、このような状態で散水チューブに物理的な応力が過度に加わると、チューブの破裂、変形、散水孔の変形など、散水チューブ本来の機能を損なう不具合が生じる恐れがある。
【0007】
さらに、畑作での圃場の土壌消毒の方法として、従来の臭化メチルなどの農薬による土壌消毒法に替って、環境に優しく、殺菌消毒効果が極めて高いことで市場で注目され普及の兆しのある熱水土壌消毒法において、従来潅水チューブとして実績を有するポリオレフィン系樹脂組成物から構成される散水チューブが、70〜95℃熱水を圃場に均一に散水する散水チューブとして、熱水ボイラー装置との組み合わせで実用化され始めている。ただし、この場合、従来のポリオレフィン系樹脂組成物の散水チューブでは、このような高温熱水を通した場合、長時間の耐熱性、耐圧性には耐えられず、また、散水孔の変形などによる散水ムラの発生など、品質上の不具合を来している。
【0008】
また、従来の蒸気土壌消毒法において、最近、土壌の消毒効果を高めることを目的として、蒸気放水用ホースと二次散水用チューブを組み合わせた散水併用型の方法が新たに市場にて進められている。その場合、散水チューブは110℃前後の水蒸気に晒されるため、従来の散水チューブでは耐熱性が不足して熱融着や熱変形を来すなど、品質上の不具合が生じている。
【0009】
また、別の利用のされ方として、最近、作物への各種農薬散布やクロルピクリンやカーバム剤等の土壌処理剤散布による土壌消毒の方法として、散水チューブを使用した新たな散布方法の実用化が進められている。その場合、散水チューブ樹脂組成が農薬や土壌処理剤の接触により、変質、劣化を来たし、チューブの耐久強度低下を引き起こすなど、品質上の不具合が生じ、散水チューブとしての耐薬品性の改良が市場にて望まれている。
【0010】
このような従来の散水チューブの耐久性、耐圧性、耐熱性、耐薬品性を改良する方策として、散水チューブ自身の樹脂組成物の見直し、具体的には、高分子量熱可塑性樹脂の採用、高剛性熱可塑性樹脂の採用、高融点熱可塑性樹脂の採用、或いは高密度熱可塑性樹脂の採用などの方法が一般的には考えられる。しかし、これらの何れの方法でも散水チューブを作製する際の溶融押出加工性の制約、穿孔処理加工性の制約、チューブ自身の柔軟性の低下による散水チューブの取扱い利便性の不具合などの問題を来し、散水チューブの材質として要求される耐久性、耐圧性、耐熱性、耐薬品性、柔軟性、加工性、穿孔処理性、均一散水性、取扱い利便性などの諸性能の全ての性能を満足することはできない。
【0011】
上述のように、従来のポリオレフィン系樹脂組成物より構成された散水チューブは、これまで農場用分野や土木用分野を中心に散水用、或いは潅水用として幅広く使用されてきたが、更に高度の耐久性、耐圧性、耐熱性、耐薬品性、及び均一散水性が要求される用途には品質上の不具合を呈して、使用上の制限があるという問題があった。
【0012】
【特許文献1】
特開昭58−63335号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平2−258187号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特願2002−288193号(特許請求の範囲)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題に鑑み、特願2002−288193号(特許文献3参照)に係わる特許出願において、ポリオレフィン系樹脂から形成され、ポリオレフィン系樹脂の架橋度を示すゲル分率が少なくとも40重量%であることを特徴とする散水チューブを提案した。該散水チューブは、常温から100℃近傍の高温度環境下においても柔軟性と耐熱非変形性の相反する特性を保持し、散水チューブとしての取扱い利便性と60〜100℃温度域での優れた耐熱性を有し、併せて優れた耐久性、耐圧性等を有する散水チューブである。
【0014】
本発明者らは、更に研究を重ねた結果、ポリオレフィン系樹脂の内でも特にシラン共重合ポリオレフィン系樹脂及びシラングラフトポリオレフィン系樹脂に着目して、これら樹脂を主原料とすることにより、前記特許出願に係わる散水チューブとほぼ同等の特性を有し、しかも生産性良く安価で製造し得ることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明の目的は、柔軟性、加工性、穿孔処理性、均一散水性、取扱い利便性などの諸特性は従来の諸性能を保持して、優れた耐久性、耐圧性、耐熱性、耐薬品性等の特性を有する散水チューブを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、水架橋性のポリオレフィン系樹脂から形成した散水チューブ、具体的には、シラン共重合ポリオレフィン系樹脂、シラングラフトポリオレフィン系樹脂、又はこれらの混合樹脂に対して、特定量のシラノール縮合触媒を配合してなる水架橋性散水チューブが、上記課題を解決し得るものであることを見出し、本発明に到った。
【0017】
すなわち、本発明は、シラン共重合ポリオレフィン系樹脂及びシラングラフトポリオレフィン系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂100重量部、及びシラノール縮合触媒0.001〜5重量部を含み、水架橋した散水チューブである。本発明に係わる散水チューブは、水架橋度を示すゲル分率が少なくとも40重量%であることが好ましい。
【0018】
本発明に係わる散水チューブは、常温から110℃近傍の高温度環境下においても柔軟性と耐熱非変形性の相反する特性を保持し、散水チューブとしての取扱い利便性と60〜110℃温度域での優れた耐熱性を発現し、併せて優れた耐久性、耐圧性、耐薬品性等を有する散水チューブである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の散水チューブについて詳細に説明する。先ず、本発明の散水チューブを構成する樹脂について説明する。
【0020】
本発明において、シラン共重合ポリオレフィン系樹脂とは、エチレンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体樹脂である。好適なエチレン性不飽和シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0021】
エチレン性不飽和シラン化合物の共重合量は、通常0.1〜15重量%、特に0.1〜5重量%であることが好ましい。これらシラン共重合ポリオレフィン系樹脂は、例えば、圧力50〜400MPa、温度100〜400℃の条件下、重合開始剤および連鎖移動剤の存在下で、エチレンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合を行うことで得られる。
【0022】
エチレンとエチレン性不飽和シラン化合物の他に、エチレンと共重合し得る共単量体、具体的には、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの単量体を添加して三元系以上の共重合を行って得られた樹脂を用いることもできる。
【0023】
また、本発明に用いるシラングラフトポリオレフィン系樹脂とは、遊離ラジカル発生剤の存在下で、ポリオレフィン系樹脂とエチレン性不飽和シラン化合物とを遊離ラジカル発生剤の分解温度以上に加熱することによって得られる。エチレン性不飽和シラン化合物のグラフト量は、通常0.1〜15重量%、特に0.1〜5重量%であることが好ましい。
【0024】
この場合、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、または、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体などのエチレン系共重合体などが挙げられる。また、エチレン性不飽和シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0025】
遊離ラジカル発生剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクロルベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ブチルパーアセテート、t−ブチルパーベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどの有機過酸化物などが使用される。
【0026】
好ましいシラングラフトポリオレフィン系樹脂の製造方法としては、上述したポリオレフィン系樹脂とエチレン性不飽和シラン化合物と遊離ラジカル発生剤とを一軸または二軸押出機などを用いて溶融混合して、150〜250℃の温度条件下でグラフト反応させる方法が挙げられる。
【0027】
本発明に用いるシラノール縮合触媒としては、シリコーンのシラノール間の脱水縮合を促進し得るものが一般に本発明で対象となる。このようなシラノール縮合触媒は、一般に、錫、亜鉛、鉄、鉛、コバルト等の金属のカルボン酸塩、有機塩基、無機酸、および有機酸である。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトレート、ジオクチル錫ラウレート、酢酸第一錫、カブリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウムなどが好ましく用いられる。
【0028】
そして、その使用量は、エチレンとエチレン性不飽和シラン化合物を共重合してなるシラン共重合ポリオレフィン系樹脂、シラングラフトポリオレフィン系樹脂、又はこれらの混合樹脂100重量部に対して、シラノール縮合触媒0.001〜5重量部である。好ましくは0.01〜3重量部である。0.01重量部未満であると、水架橋処理を施した際の散水チューブの架橋度が低くなり目的とする耐久性、耐熱性が発現されない。一方、3重量部を超えると散水チューブ表面肌が荒れて製品価値が損なわれ、また、散水チューブの引張伸びが著しく低下して品質に問題を来す。
【0029】
本発明の散水チューブは、上記シラン共重合ポリオレフィン系樹脂、シラングラフトポリオレフィン系樹脂、又はこれらの混合樹脂、及び、シラノール縮合触媒を上記配合比率で含む樹脂組成物からチューブを成形し、得られたチューブに穿孔処理を施してチューブの所定位置に穿孔を設ける。次いで、常温での自然熟成処理や加熱加湿熟成処理、または温熱通水処理などの公知の水架橋処理を施すことにより製造される。或いは、得られたチューブに上記のような水架橋処理を施した後に穿孔処理を施してもよい。
【0030】
この場合、本発明の散水チューブを構成する樹脂のゲル分率は、少なくとも40重量%であることが好ましく、さらにはゲル分率が少なくとも45重量%であることが好ましい。散水チューブを構成する樹脂のゲル分率は、ポリオレフィン系樹脂の架橋度を示す指標である。ゲル分率が低すぎると、ポリオレフィン系樹脂の架橋度が不十分であり、目的とする耐熱非変形性が不十分となり、併せて耐久性、耐圧性、耐薬品性の改善効果が小さく、高度の品質が要求される用途には使用できない。
【0031】
本発明の散水チューブを構成する樹脂としては、上記配合比率のシラン共重合ポリオレフィン系樹脂、シラングラフトポリオレフィン系樹脂、又はこれらの混合樹脂とシラノール縮合触媒を含む水架橋性の樹脂組成物であれば、特に制限はない。しかしながら、散水チューブの材質物性、特には耐久性、耐圧性、耐熱性、柔軟性、押出加工性、架橋特性、穿孔処理性、均一散水性、取扱い利便性などの諸性能を勘案すると、密度(測定法;JIS K7112に準拠)が0.90〜0.95g/cm3、好ましくは0.91〜0.94g/cm3である、エチレン性不飽和シラン化合物が共重合またはグラフト重合したポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0032】
この場合、樹脂の密度が低すぎると、散水チューブの機械強度が低くなり、優れた耐圧性、耐熱性を有するものが得難くなる。一方、樹脂の密度が高すぎると、散水チューブの柔軟性が損なわれ、保管時での収納性、散水時での均一散水性、取扱い利便性などに問題を来すことがある。
【0033】
また、上記ポリオレフィン系樹脂のメルトインデックス(測定法:JIS K7210に準拠、温度;190℃、荷重;2160g)は、成形加工性、得られる散水チューブの外観等に影響を及ぼす。メルトインデックスが低すぎると、押出加工を行う際に、溶融樹脂が高粘度過ぎて押出成形加工性が劣り、得られるフィルム表面の外観不良を引き起こすことがある。一方、高すぎると、低粘度過ぎて安定した成形加工性が得難くなる。かかる点を考慮すると、上記ポリオレフィン系樹脂のメルトインデックスは0.05〜20g/10分の範囲が好ましい。さらに好ましくは0.1〜10g/10分の範囲である。
【0034】
本発明の散水チューブを構成する上記ポリオレフィン系樹脂には、上記のシラノール縮合触媒の他に、散水チューブの耐久性、耐候性を高める目的で、予め樹脂にカーボン、耐候安定剤、酸化防止剤などを適量添加することができる。また、その他、無機フィラー、滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤などの各種添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。
【0035】
上記ポリオレフィン系樹脂にカーボンを添加することにより、例えば、レーザー穿孔法により穿孔する場合、近赤外線領域のエネルギー吸収性を向上させることができ、穿孔速度を大幅に上げることができる。通常、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、カーボン3〜8重量部を添加することが好ましい。
【0036】
散水チューブを成形する方法としては、円筒状ダイが装着された溶融押出機を用いて、シラノール縮合触媒を含む上記ポリオレフィン系樹脂組成物を混練、溶融して円筒状ダイから押出してチューブ状に成形する方法、Tダイが装着された溶融押出機を用いて、上記ポリオレフィン系樹脂組成物を混練、溶融してTダイから押出してフィルム状に成形し、得られたフィルムの2枚を重ね合わせて、幅方向(以下、TD方向という)の両端を長尺方向(以下、MD方向という)に融着してチューブ状に形成する方法が挙げられる。通常、成形温度は120〜220℃程度である。
【0037】
円筒状ダイが装着された溶融押出機を用いてチューブ状フィルムを成形する場合は、チューブの側面にMD方向の継ぎ目がない、所謂、シームレスチューブが得られる。また、Tダイが装着された溶融押出機を用いて平板状フィルムを成形する場合は、フィルム2枚を重ね合わせて、TD方向の両端をMD方向に融着してチューブ状に形成する。
【0038】
上記方法により製造されたチューブに穿孔を施す方法には特に制限はなく、公知の方法が適用できる。公知の方法としては、レーザー穿孔法、ポンチ打ち抜き法、熱針穿孔法などの方法が挙げられる。例えば、レーザー穿孔法としては、特開平2−258187号公報(特許文献2参照)に記載された方法が挙げられる。
【0039】
具体的には、実質的にYAGで形成された励起体に励起光が集光し、その励起体から近赤外線を放出する構造のレーザー光発生装置を用いて、穿孔しようとするチューブを所定の速度で移送しながらレーザー光を照射することにより穿孔部が形成される。レーザー光の出力、レーザー光の照射時間、レーザー光照射部の数などを適宜選択することにより、チューブに所望の穿孔部を形成することができる。穿孔は、MD方向に向かって一列に施してもよいし、複数列に施してもよい。又、孔の間隔(ピッチ)は、通常、一定間隔とすることが好ましいが、被散水物の分布などを考慮してランダムであってもよい。
【0040】
本発明の散水チューブを構成するポリオレフィン系樹脂を水架橋化する方法には、特に制限はなく、常温での自然熟成処理や加熱加湿熟成処理、または温熱通水処理などの方法が適用される。すなわち、架橋して分子間を結合し、部分的に三次元構造の骨格を呈して、好ましくは40重量%以上のゲル分率化を達成する水架橋処理方法であれば、特には方法は問わない。
【0041】
なお、本発明において、有機系シラン化合物の存在下で、上記ポリオレフィン系樹脂組成の含有水分によって加水分解・シラノール縮合に基づく化学的分子間架橋を引き起こす方法は、ポリオレフィン系樹脂に電子線、或いはガンマ線などの放射線を照射することでラジカル部位を生成させて分子間の架橋を引き起こす方法(前者)や、有機系過酸化物の存在下でポリオレフィン系樹脂を加熱処理することによってラジカル部位を生成させて分子間架橋を引き起こす方法(後者)に比べて種々の利点がある。すなわち、前者と比較しては、比較的安価設備で架橋が施される利点がある。また、後者と比較しては、散水チューブの良好な外観適性を保持して大幅に耐久性、耐圧性、耐熱性、耐薬品性などの品質を改善し得る利点がある。
【0042】
上記方法により製造される本発明の散水チューブは、内径が2〜8cm、肉厚が0.2〜1.5mm程度である。通常、偏平状に押しつぶしてリール等に巻いた状態で保管、搬送される。このときの折幅は3〜12cm程度である。通常、散水孔の孔径は0.2〜1.5mm程度であり、散水孔の間隔は1〜30cm程度、散水孔の列数は1〜15列程度である。
【0043】
本発明の散水チューブを用いて散水する際は、0.05〜0.5MPa程度の水圧で送水することにより散水することができる。散水する場所としては、畑などの農業用地、土木工事場、運動場、芝生などが挙げられる。
【0044】
本発明の散水チューブは、常温から110℃近傍の高温度環境下においても柔軟性と耐熱非変形性の相反する特性を保持し、併せて優れた耐久性、耐圧性を有する。そのため、通常の散水用としてだけでなく、熱水又は水蒸気による土壌消毒を目的とする散水用チューブとしても用いることが可能である。
【0045】
【実施例】
本発明について、以下の具体的な実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。尚、実施例に示した各特性値は下記方法により測定した値である。
【0046】
(1)ゲル分率(重量%)
還流冷却器付の容器に試料1.5g及びp−キシレン(沸点:138℃)100gを加えて加熱し、沸騰下で24時間可溶分を抽出する。p−キシレン未溶解物を単離し、局所排気環境下で室温において1時間放置した後、加熱減圧(80℃、10Pa)下で2時間乾燥して、含浸溶剤を完全に除去した後、p−キシレン未溶解物の重量を計測する。下記数式(1)によりゲル分率(重量%)を算出する。
G=(B/A)×100 ・・・(1)
ここで、G:ゲル分率(重量%)、A:試料重量(g)、B:p−キシレン未溶解物重量(g)。
【0047】
(2)引張弾性率(MPa)、引張降伏点荷重(N)
各試料フィルム(厚み:0.6mm)をJIS2号の引張測定用ダンベルでMD方向に沿って打ち抜き、試料片を作成する。この試料片を、JIS K7113に準拠して引張速度300mm/分の条件にて引張試験を行い、試料フィルムの引張弾性率(MPa)、及び引張降伏点荷重(N)の測定を行う(測定雰囲気温度23℃)。
【0048】
(3)耐熱クリープ性(%)
各試料フィルム(厚み:0.6mm)をJIS2号の引張測定用ダンベルでMD方向に沿って打ち抜き、試料片を作成する。試料片のMD方向に約40mmの間隔で2本の標線を施す。各試料片に400g荷重の錘を吊り下げ(荷重の付加方向:MD方向)、100℃のオーブン中に2時間放置する。次いで、試料片を取り出して標線間距離を測定し、下記数式(2)に基づいて標線間の伸度を算出し、耐熱クリープ性とする。
E=[(L1−L0)/L0]×100 ・・・(2)
ここで、E:伸度(%)、L0:初期標線間距離(mm)、L1:加熱荷重処理後の標線間距離(mm)
(4)耐圧試験(MPa)
各実施例、又は各比較例で得られた穿孔のないチューブ(チューブ肉厚み:0.6mm、チューブ長さ:500mm)の一端部をヒートシールして密閉し、チューブ内に水を充填した後、端部を圧力計付きのプランジャー式水注入ポンプに接続する。この装置一式を60℃の温水槽に浸漬して、60℃の温水をポンプにてチューブ内に350ml/分の給水速度で送り込み、徐々にチューブ内を加圧化する。チューブが水内圧に耐え切れずに破壊する時のチューブ内圧を計測して、破壊圧力とする。
【0049】
(5)耐熱変形性試験
各実施例、又は各比較例で得られた穿孔のないチューブ(チューブ肉厚み:0.6mm、折り径幅:60mm、チューブ長さ:300mm)を120℃のオーブン中に2時間放置する。次いで、室温下に戻して、チューブの耐熱変形の有無を観察し、以下の基準により評価する。<良好>:チューブ内面同士が熱融着すること無く、また、チューブ全体が形状を保持している。<不良>:チューブ内面同士が熱融着を起こし、また、チューブ全体が形状崩れを起こしている。
【0050】
(6)95℃熱水散水試験
各実施例、又は各比較例で得られた散水チューブ(チューブ肉厚み:0.6mm、チューブ長さ:30m、散水用孔径:0.4mm、孔ピッチ:80mm、孔列数:2列)の一端部を専用の止め具を用いて密閉し、試料とする。試料の他端を吸水ポンプに接続して、送水元圧:0.1MPa、散水量:約0.3リットル/分・mにて95℃の熱水を連続して4時間/回、計10回の熱水散水試験を実施する。散水状況及び散水後の散水孔の形状を観察し、以下の基準により評価する。<良好>:全散水時間に亘って全ての散水孔から均一に散水が行われ、且つ、全散水孔が熱により変形しておらず、また、チューブ本体が熱変形、熱収縮、熱膨張などが認められない。<不良>:時間の経過と共に各散水孔ごとに散水ムラが認められる。又は、熱により変形した散水孔が認められ、また、チューブ本体が熱変形、熱収縮、熱膨張などが認められる。
【0051】
実施例1
ジクミルパーオキサイドを用いてビニルトリメトキシシランが2重量部グラフト重合された低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.92g/cm3、メルトインデックス:0.5g/10分)(A)100重量部に対して、シラノール縮合触媒マスターバッチ(低密度ポリエチレン樹脂ベース、ジブチル錫ジラウレート1重量%配合)(B)10重量部(ジブチル錫ジラウレート換算では0.1重量部)と、カーボンブラックマスターバッチ(低密度ポリエチレン樹脂ベース、カーボンブラック40重量%配合)(C)15重量部(カーボンブラック換算では6重量部)を、ブレンダーで均一混合した後、空冷インフレーションフィルム成形装置(溶融押出温度:160℃)を用いて押出成形を行い、フィルム厚さが0.6mm、フィルム折り径が60mm(管直径:38mm)のチューブ状のフィルムを作成した。得られたフィルムを、50℃で75%相対湿度の恒温恒湿の雰囲気下で3日間の熟成処理を行って、水架橋化により架橋されたチューブ状のフィルムを作成した。得られたチューブ状フィルムから試料を採取して、上記方法により、ゲル分率、引張弾性率、引張降伏点荷重、耐熱クリープ性能、耐圧試験、耐熱変形性試験などの測定を実施した。
【0052】
別途、上記の空冷インフレーションフィルム成形法にてチューブ状フィルムを製造する過程において、レーザー穿孔装置を用いて、得られたチューブ状フィルムの片面側に孔径が0.4mm、孔ピッチが80mm、孔列数が2列の連続した穿孔を施して、有孔のチューブを製造した。得られた有孔チューブに対し、上記と同条件にして熟成処理を行って、架橋された散水チューブを得た。得られた散水チューブについて、上記方法により95℃熱水散水試験を実施した。チューブの樹脂組成、及び得られた結果を表1に示す。
【0053】
実施例2
実施例1において、配合するシラノール縮合触媒マスターバッチ(低密度ポリエチレン樹脂ベース、ジブチル錫ジラウレート1重量%配合)(B)を3重量部(ジブチル錫ジラウレート換算では0.03重量部)に変更した以外は、実施例1と同様にして散水チューブを作成した。各種特性値を実施例1と同様にして測定した。チューブの樹脂組成、及び得られた結果を表1に示す。
【0054】
実施例3
実施例1において、シラングラフト低密度ポリエチレン樹脂(A)100重量部を、ジクミルパーオキサイドを用いてビニルトリメトキシシランが2重量部グラフト重合されたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(酢酸ビニル含有量:6重量%、密度:0.93g/cm3、メルトインデックス:1g/10分)(D)100重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして散水チューブを作成した。各種特性値を実施例1と同様にして測定した。チューブの樹脂組成、及び得られた結果を表1に示す。
【0055】
実施例4
実施例1において、シラングラフト低密度ポリエチレン樹脂(A)100重量部を、エチレン−ビニルトリメトキシシラン共重合体樹脂(ビニルトリメトキシシラン含有量:2重量%、密度:0.92g/cm3、メルトインデックス:1g/10分)(E)100重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして散水チューブを作成した。各種特性値を実施例1と同様にして測定した。チューブの樹脂組成、及び得られた結果を表1に示す。
【0056】
比較例1
実施例1において、シラノール縮合触媒マスターバッチ(低密度ポリエチレン樹脂ベース、ジブチル錫ジラウレート1重量%配合)(B)を配合しない以外は、実施例1と同様にして散水チューブを作成した。各種特性値を実施例1と同様にして測定した。チューブの樹脂組成、及び得られた結果を表2に示す。
【0057】
比較例2
比較例1において、シラングラフト低密度ポリエチレン樹脂(A)100重量部を、シラングラフトされていない汎用の低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.92g/cm3、メルトインデックス:0.5g/10分)(F)に変更した以外は、比較例1と同様にして散水チューブを作成した。各種特性値を比較例1と同様にして測定した。チューブの樹脂組成、及び得られた結果を表2に示す。
【0058】
比較例3
比較例1において、シラングラフト低密度ポリエチレン樹脂(A)100重量部を、シラングラフトされていない汎用のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(酢酸ビニル含有量:6重量%、密度:0.93g/cm3、メルトインデックス:1g/10分)(G)に変更した以外は、比較例1と同様にして散水チューブを作成した。各種特性値を比較例1と同様にして測定した。チューブの樹脂組成、及び得られた結果を表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】
本発明の散水チューブは、常温から110℃近傍の高温度環境下においても柔軟性と耐熱非変形性の相反する特性を保持し、散水チューブとしての取扱い利便性と60〜110℃温度域での優れた耐熱性を有し、併せて優れた耐久性、耐圧性、耐薬品性等を有する散水チューブである。従って、農業用地、土木工事場、運動場、芝生などにおける散水用資材、及び農業用地の熱水又は水蒸気による土壌消毒の散水用資材として極めて有用である。
Claims (2)
- シラン共重合ポリオレフィン系樹脂及びシラングラフトポリオレフィン系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂100重量部、及びシラノール縮合触媒0.001〜5重量部を含み、水架橋した散水チューブ。
- 水架橋度を示すゲル分率が少なくとも40重量%である請求項1記載の散水チューブ。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003165870A JP2005000045A (ja) | 2003-06-11 | 2003-06-11 | 散水チューブ |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2003165870A JP2005000045A (ja) | 2003-06-11 | 2003-06-11 | 散水チューブ |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2005000045A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013037972A (ja) * | 2011-08-10 | 2013-02-21 | Suzuki Motor Corp | 燃料電池用水系ホース |
-
2003
- 2003-06-11 JP JP2003165870A patent/JP2005000045A/ja active Pending
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