JP2004538043A - 粘弾性溶液を注入するためのシリンジ - Google Patents

Abstract

粘弾性溶液を投与する装置であって、前記装置は、異なる特性を有する少なくとも２種類の粘弾性溶液（Ｖ１，Ｖ２）を格納するシリンジ（１）から成り、前記溶液（Ｖ１，Ｖ２）は、予め決められた順序で連続して投与され、特徴となるのは、前記シリンジ（１）が、前記少なくとも２種類の粘弾性溶液（Ｖ１，Ｖ２）を分離する、少なくとも１つ移動隔膜（１０）を有する点である、という前記装置。

Description

【技術分野】
【０００１】
本発明は、医療分野や外科分野において使われる粘弾性溶液を注入するためのシリンジに関する。こうした溶液が現在使われているのは、リューマチ治療における関節内注入、皮膚科における皺のばしのための充填、形成外科、腹部手術、そして、眼科手術などであり、将来新たに他の用途が出現することもありうる。
【背景技術】
【０００２】
さらに詳しく言えば、本発明は、白内障手術において眼内レンズの挿入の際にも用いることができる。その場合、粘弾性溶液は手術のために必要なスペースを作る働きをし、さらに、目の組織（特に、角膜内皮）を保護する働きをする。重要な条件として、この種の溶液は、手術終了時に吸入によって取り除かれなければならない。それを怠ると、有害な眼圧上昇を引き起こすおそれがあるからだ。
【０００３】
白内障手術では一般的に、せん断速度が高いと動的粘度も高まる、という物質が最初に用いられる。これは普通、「capsulorhexis」や「phacoemulsification」（これらは、当業者にはよく知られた外科的技術である）として知られる外科的ステップの間に用いられる。そして、好ましい順序として、同様のせん断条件の下での動的粘度の値がより小さい物質が、眼内レンズが挿入される間に、２番目に用いられる。
【０００４】
現在のところ、外科医は、それぞれに異なる粘弾性溶液が格納された２つのシリンジを操作する必要がある。ただし、単一の粘弾性溶液を用いることも可能である。前者の場合は、複数のシリンジを使用するため手術が複雑になり、後者の場合は、使用される溶液が、質の劣る中間物となってしまう。その結果、少なくとも１つの問題が生じる。すなわち、phacoemulsificationステップにおいて、それが正しい位置に留まらない、あるいは、眼内レンズが挿入された後、手術終了の段階でそれを取り出すのが難しくなる、という問題のいずれかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明の目的は、医学分野において粘弾性溶液の注入に用いられるシリンジであって、しかも上記の問題が生じないシリンジ、を提供することである。
さらに詳しく言えば、本発明の目的は、粘弾性溶液を注入するためのシリンジであって、外科医の作業を単純化し、かつ、手術の各段階において優れた特性を有する物質の使用を可能とする、というシリンジを提供することである。
【０００６】
さらに、本発明は、簡単かつ安価に製造および組立することのできる、粘弾性溶液注入用のシリンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的の達成のために、本発明は、粘弾性溶液を投与する装置であって、前記装置は、異なる特性を有する少なくとも２種類の粘弾性溶液を格納するシリンジから成り、前記溶液は、予め決められた順序で連続して投与され、特徴となるのは、前記シリンジが、前記少なくとも２種類の粘弾性溶液を分離する、少なくとも１つ移動隔膜を有する点である、という前記装置を提供する。
【発明の効果】
【０００８】
また、前記隔膜が密封用ガスケットを有すること、とするのが効果的である。
また、隔膜の下流側に配置された粘弾性溶液が完全に投与された後に、隔膜の上流側に配置された粘弾性溶液が放出されることを可能とする、好ましくは小さな開口部が、前記移動隔膜の中に設けられていること、とするのが効果的である。
また、変形例として、前記開口部は膜によって密封されており、前記シリンジが、隔膜の下流に配置された粘弾性溶液が完全に投与された後で前記膜に穴を開けるのに適した、穴あけスパイクなどの開口手段を備えること、とする。
【０００９】
また、隔膜内の前記開口部内に小さい気泡を配置することで、粘弾性溶液同士のいかなる接触も防止すること、とするのが効果的である。
また、前記隔膜は、隔膜の下流側に配置されている粘弾性溶液が投与されている間、一時的な機械継手によってシリンジのプランジャに接続されており、前記一時的な機械継手は、前記粘弾性溶液が全部投与された後に除去され、それによって、隔膜の上流側に配置される粘弾性溶液の投与を可能とすること、とするのが効果的である。
【００１０】
また、前記少なくとも２種類の粘弾性溶液は、異なる流動学的特性を有すること、とするのが効果的である。
また、前記少なくとも２種類の粘弾性溶液が、化学組成、および／または、それらの有効物質（active-principle）の分子量、および／または、前記有効物質の濃度、の点で異なること、という場合に効果的である。
【００１１】
また、前記少なくとも２種類の粘弾性溶液は、高いせん断速度では異なる、という動的粘度を有すること、とするのが効果的である。
また、本発明は、上記のように定義されたシリンジの白内障手術における使用法を提示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
本発明に関するその他の特徴および効果は、非制限的な例として示す２つの効果的な実施の形態に関する以下の詳細な説明を、添付の図面を参照しながら読めば、いっそう明らかになるであろう。
通常、シリンジ１は円筒形をしたシリンジ本体２を有し、当該本体は、第１に投与開口部３を、第２に、駆動ロッド５によって駆動されるプランジャ４を備える、というのが一般的な構造である。ユーザが駆動ロッド５を押下すると、本体２の内部でプランジャ４が移動し、それによって、シリンジ内に含まれた物質が投与開口部３を通って投与される。
【００１３】
本発明では、シリンジ１には少なくとも２種類の粘弾性溶液Ｖ１、Ｖ２が格納されており、これら溶液は異なる特性を有する。そして、前記溶液Ｖ１、V２は、あらかじめ決められた順序で連続して投与される。
より具体的に言えば、これら少なくとも２種類の粘弾性溶液Ｖ１、V２は、それの化学的性質、および／または、それらの有効物質（active-principle）の分子量、および／または、前記有効物質の濃度の点で異なる。さらに広い言い方をすれば、本発明の粘弾性溶液は異なる流動学的特性を有しており、さらに、せん断速度が高い場合の動的粘度が異なる、とするのが効果的である。
【００１４】
本発明では、移動隔膜１０を、溶液Ｖ１とＶ２との間に挟まる形で設けている。好ましい構成として、隔膜１０はその外周部分に密封用ガスケット１５を備えており、当該ガスケットはシリンジ１の本体２と協働する。従って、隔膜１０は、シリンジにおけるプランジャと同じようにガイドされている間、耐漏洩様態でシリンジ本体の内部の壁に接してスライド移動することができる。第１の粘弾性溶液Ｖ１が投与されると、隔膜１０は、第２の粘弾性溶液V２を介して伝えられるスラストの力を受け、プランジャ４と同時に移動する。変形例として、隔膜１０をプランジャ４に接続する一時的な機械継手（mechanical coupling）を考えることも可能であり、当該継手の目的は、第１の粘弾性溶液Ｖ１の放出中に、これらの２つの要素を同時に移動させることである。そして、前記機械継手は、第２の粘弾性溶液V２が投与される際に除去される。
【００１５】
第２の粘弾性溶液V２の投与を可能にするために、隔膜１０は開口部１１を備えるが、当該開口部については、隔壁の中央部に配置されるのが好ましく、さらに、サイズも小さい方が好ましい。一般的には、これで充分、溶液Ｖ１が全部投与される前の段階での溶液Ｖ１と溶液V２との混合を防止することができる（図１の例に示すように、前記開口部１１が閉じられていない場合でも）。
【００１６】
そうして、ユーザが駆動ロッド５を圧迫すると、先ず、第１の溶液Ｖ１が投与開口部３を通って放出され、そして、隔膜はシリンジ本体２の端部壁に対して受け台接触の状態となり、その後、第２の粘弾性溶液V２が隔膜内の開口部１１を通って放出される。機械継手が用いられてそれが存在する場合、シリンジを適正に動作させるためには、第２の粘弾性溶液V２に小さい開口部１１を通過させるために加えられる力は、一般的に、隔膜１０とシリンジの壁との間の摩擦よりも強くなければならない。開口部１１内に、例えば、小さな気泡を入れておくなどの形で、気体による小さな境界を設けておけば、２種類の溶液が使用前の段階で接触することを防止するうえで効果的である。
【００１７】
図２に示す実施の形態では、隔膜１０は完全に耐漏洩性のものとして示してあり、開口部１１（図１に示す実施の形態におけるものより大きくすることもできる）を密封する膜１２を備えている。こうした形の実装が考えられるのは、溶液Ｖ１とV２が混合しやすい傾向があるとき、例えば、単に浸透平衡に戻ることによって混合してしまう、あるいは、第１の溶液Ｖ１を投与している間に混合してしまう、という場合である。そして、シリンジ１は、隔膜１０がシリンジの端部壁と接触するタイミング（すなわち、隔膜の下流側に位置する第１の粘弾性溶液Ｖ１が残らず投与された時点）で前記膜１２に穴を開けるように作られた、穴あけスパイク８などの開口手段を備えている。
【００１８】
このようにして、２つの溶液Ｖ１とV２とが、装置の駆動前そして駆動中に接触する事態は完全に防止される。
図面に概略的に示すように、シリンジは、その投与開口部３の位置にLuer-Lock安全接続システムを備えることとしてもよい。これは、注入用ニードルまたはカニューレをシリンジの端部部材に固定することを可能にするものである。
【００１９】
上で述べたように、本発明の特に効果的な用法は白内障手術に関するものであるが、本発明の用途はこれに限定されない。
以上、本発明をその２つの効果的な実施の形態に関連づけて説明してきたが、本発明はここに示した実施例に限定されるわけではなく、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱しない形で、変形を施すことが可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】図１は、本発明のシリンジの第１の実施例の概略断面図である;
【図２】本発明のシリンジの第２の実施例の概略断面図である。

Claims (10)

1. 粘弾性溶液を投与する装置であって、
   前記装置は、異なる特性を有する少なくとも２種類の粘弾性溶液（Ｖ１，Ｖ２）を格納するシリンジ（１）から成り、
   前記溶液（Ｖ１，Ｖ２）は、予め決められた順序で連続して投与され、
   特徴となるのは、前記シリンジ（１）が、前記少なくとも２種類の粘弾性溶液（Ｖ１，Ｖ２）を分離する、少なくとも１つ移動隔膜（１０）を有する点である、
   という前記装置。
2. 前記隔膜（１０）が密封用ガスケット（１５）を有すること、
   を特徴とする請求項１に記載の装置。
3. 隔膜（１０）の下流側に配置された粘弾性溶液（Ｖ１）が完全に投与された後に、隔膜（１０）の上流側に配置された粘弾性溶液（V２）が放出されることを可能とする、好ましくは小さな開口部（１１）が、前記移動隔膜（１０）の中に設けられていること、
   を特徴とする請求項１または２に記載の装置。
4. 前記開口部（１１）は膜（１２）によって密封されており、
   前記シリンジ（１）が、隔膜（１０）の下流に配置された粘弾性溶液（Ｖ１）が完全に投与された後で前記膜（１２）に穴を開けるのに適した、穴あけスパイクなどの開口手段（８）を備えること、
   を特徴とする請求項３に記載の装置。
5. 隔膜（１０）内の前記開口部（１１）内に小さい気泡を配置することで、粘弾性溶液（Ｖ１，Ｖ２）同士のいかなる接触も防止すること、
   を特徴とする請求項３または４に記載の装置。
6. 前記隔膜（１０）は、隔膜（１０）の下流側に配置されている粘弾性溶液（Ｖ１）が投与されている間、一時的な機械継手によってシリンジのプランジャ（４）に接続されており、
   前記一時的な機械継手は、前記粘弾性溶液（Ｖ１）が全部投与された後に除去され、それによって、隔膜（１０）の上流側に配置される粘弾性溶液（V２）の投与を可能とすること、
   を特徴とする請求項１乃至５のいずれかに記載の装置。
7. 前記少なくとも２種類の粘弾性溶液（Ｖ１，Ｖ２）は、異なる流動学的特性を有すること、
   を特徴とする請求項１乃至６のいずれかに記載の装置。
8. 前記少なくとも２種類の粘弾性溶液（Ｖ１，Ｖ２）は、化学組成、および／または、それらの有効物質（active-principle）の分子量、および／または、前記有効物質の濃度、の点で異なること、
   を特徴とする請求項１乃至７のいずれかに記載の装置。
9. 前記少なくとも２種類の粘弾性溶液は、高いせん断速度では異なる、という動的粘度を有すること、
   を特徴とする請求項１乃至８のいずれかに記載の装置。
10. 請求項１乃至９のいずれかに記載の装置の、白内障手術における使用法。

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