JP2004536577A - ミオイノシトールオキシゲナーゼ - Google Patents

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    • C12P17/04Oxygen as only ring hetero atoms containing a five-membered hetero ring, e.g. griseofulvin, vitamin C

Abstract

本発明は、グルクロン酸、アスコルビン酸、およびグルカン酸のような有機化合物の産生に関連した方法と材料に関する。具体的には本発明は、グルクロン酸、アスコルビン酸、およびグルカン酸のような有機化合物を産生するための、細胞、細胞の培養方法、単離された核酸分子、および方法と材料を提供する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸のような有機化合物の産生に関与する方法と材料に関する。
【背景技術】
【0002】
アスコルビン酸(ビタミンC)は、多くの重要な栄養的用途がある。実際アスコルビン酸は、ヒトの必須栄養素であり、壊血病のようなビタミンC欠乏症を防ぐために食事から得る必要がある。さらに一部の医療従事者は、アスコルビン酸が、感冒、インフルエンザウイルス、および癌を予防し治療する可能性を有すると主張している。従って、アスコルビン酸を含有する栄養補給食品が広く使用されている。
【0003】
アスコルビン酸は、多くの重要な工業的用途がある。例えばアスコルビン酸は、肉の加工、栄養補給食品、および動物食品に使用することができる。実際、いくつかの製造業者は、年間10,000メートルトンのアスコルビン酸とアスコルビン関連酸化合物(例えばアスコルビン酸カルシウムやアスコルビン酸ナトリウム)を生産している。
【0004】
「Reichstein」法は、D-グルコースまたはD-グルコース前駆体(例えばコーンシロップ)からアスコルビン酸を生産するために一般的に使用されている方法である。この方法は、6つの異なる化学的工程と発酵工程を含む。例えば化学的工程の1つは、2-ケト-L-グロン酸を酸で60℃より高い温度で処理することにより、2-ケト-L-グロン酸をアスコルビン酸に変換する。
【0005】
少なくとも1つの化学的工程を含むいくつかの他の生産プロセスも、アスコルビン酸を生産するのに使用することができる。具体的にはアスコルビン酸は、D-グルコースをL-ソルビトールに化学変換した後に発酵工程を行う方法、発酵工程後に2-ケト-L-グロン酸をアスコルビン酸に化学変換する方法、および発酵工程後に2-ケト-L-グロン酸をアスコルビン酸に化学変換する以外に、D-グルコースをL-ソルビトールに化学変換後に発酵工程を行う方法を使用して、生産されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は一般的には、ミオイノシトール、グルクロン酸、グルカン酸、およびアスコルビン酸のような有機化合物を産生するための方法と材料に関する。具体的には本発明は、種々の有機化合物を産生するための、細胞(例えば細菌、真菌、および昆虫細胞)、細胞の培養方法、単離された核酸分子、および方法と材料を提供する。本発明は、細胞が所望の有機産物を産生する能力を有するように、細胞を遺伝子操作することができるという発見に基づく。例えば本明細書に記載の細胞は、アスコルビン酸を産生することができる。「アスコルビン酸塩」、「アスコルビン酸」、「L-アスコルビン酸塩」、「L-アスコルビン酸」および「ビタミンC」という用語は、L-アスコルビン酸を意味するのに同義で使用することができることを理解されたい。また本明細書に記載の「グルカン酸」という用語は、グルカン酸、グルカロ-1,4-ラクトン、およびグルカロ-6,3-ラクトンを意味する(これらの3つの化合物は、溶液中で自由に相互変換できるためである)ことも理解されたい。
【0007】
本発明はまた、グルコースおよび/またはフィチン酸を使用してアスコルビン酸を産生する効率的な代謝経路の発見に基づく。具体的にはアスコルビン酸は、ミオイノシトールをグルクロン酸に変換できる代謝経路を使用して、グルコースおよび/またはフィチン酸から生産される。一般に、そのような経路は、グルコースからアスコルビン酸を産生するのに必要な酵素的工程は、植物や動物が使用する本来の代謝経路より少ない。グルコースまたはフィチン酸のような炭素源からアスコルビン酸を効率的に産生する方法は、大規模生産に有用であろう。さらに本明細書に記載の方法と材料は、高温(例えば60℃を超える温度)での酸性処理のような化学的工程を必要とせずに、有機化合物を生産するのに使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に本発明の1つの態様は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを細胞に提供する方法を特徴とする。本方法は、核酸分子を細胞中に導入することを含み、ここで核酸分子はポリペプチドをコードし、細胞はポリペプチドを発現する。細胞は、原核細胞(例えば、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、ラクトバチルス(Bacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)細胞)でもよい。細胞は、真核細胞(例えば、酵母、真菌、昆虫、または哺乳動物細胞)でもよい。細胞は、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、シュワニオミセス(Schwanniomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、スポドプテラ(Spodoptera)、クリセツルス(Cricetulus)、またはホモサピエンス(Homo sapiens)細胞でもよい。核酸分子は、細胞のゲノム中に組み込まれてよい。ポリペプチドは、配列番号12、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35に記載の配列と、少なくとも約50パーセント同一(例えば、少なくとも約55、60、70、75、80、または90パーセント同一)のアミノ酸配列を含有することができる。ポリペプチドは、配列番号12、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35に記載の配列と、少なくとも約70パーセント同一のアミノ酸配列を含有することができる。細胞は、L-アスコルビン酸を産生することができる。細胞は、グルクロネート還元酵素活性を有することができる。細胞は、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性、および/またはウロノラクトナーゼ活性を有することができる。細胞は、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、および/またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有することができる。細胞は、ホスファターゼ活性および/またはフィターゼ活性を有することができる。細胞は、L-グロネート3-脱水素酵素活性を欠如することができる。細胞は、1gの乾燥細胞重量当たり1時間当たり40mgグルクロン酸を超える比活性のミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を含有することができる。1×106 細胞からの抽出物が、10mgの総タンパク質あたり10分間に生成されるグルクロン酸が150μgを超える比活性を有する(ここで各1×106 細胞は、その細胞であるかまたは細胞の子孫である)ように、細胞はミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を含有することができる。核酸分子は、乳糖非応答性であるプロモーターを含有することができる。ポリペプチドは、N-末端ポリヒスチジンタグを欠如することができる。ポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ配列を欠如することができる。
【0009】
別の実施形態において本発明は、グルカン酸の産生方法ならびにグルカン酸を産生することができる細胞を特徴とする。これらの方法は、ミオイノシトールをグルクロン酸に変換し、グルクロン酸をグルカン酸に変換する。基質(例えばミオイノシトールとグルクロン酸)は、ポリペプチドまたは化学変換を使用して、その対応する生成物に変換することができる。本明細書において「化学変換」は、酵素活性を有するポリペプチドの助け無しで、基質を生成物に変換することができることを意味する。さらにこれらの方法は、in vivo、in vitro、またはin vitroとin vivo工程の組合せを使用して行われる。ポリペプチドを使用してグルクロン酸をグルカン酸に変換する時、ポリペプチドは、アルデヒド脱水素酵素活性、ヘキソースオキシダーゼ活性、またはアルデヒドオキシダーゼ活性を有することができる。ポリペプチドを使用してミオイノシトールをグルクロン酸に変換する時、ポリペプチドはミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有することができる。
【0010】
別の実施形態において本発明は、外因性核酸分子を含有する細胞を特徴とし、ここで外因性核酸分子は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、細胞はポリペプチドを発現する。細胞は、原核細胞(例えば、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、ラクトバチルス(Bacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)細胞)でもよい。細胞は、真核細胞(例えば、酵母、真菌、昆虫、または哺乳動物細胞)でもよい。細胞は、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、シュワニオミセス(Schwanniomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、スポドプテラ(Spodoptera)、クリセツルス(Cricetulus)、またはホモサピエンス(Homo sapiens)細胞でもよい。ポリペプチドは、配列番号12、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35に記載の配列と、少なくとも約50パーセント同一(例えば、少なくとも約55、60、70、75、80、または90パーセント同一)のアミノ酸配列を含有することができる。ポリペプチドは、配列番号12、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35に記載の配列と、少なくとも約70パーセント同一のアミノ酸配列を含有することができる。細胞は、第2の外因性核酸分子を含有することができ、ここで第2の外因性核酸分子は第2のポリペプチドをコードし、細胞は第2のポリペプチドを発現する。第2のポリペプチドは、グルクロネート還元酵素活性を有することができる。第2のポリペプチドは、配列番号36に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含有することができる。第2のポリペプチドは、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性、またはウロノラクトナーゼ活性を有することができる。第2のポリペプチドは、配列番号37または38に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含有することができる。第2のポリペプチドは、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有することができる。第2のポリペプチドは、配列番号39または40に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含有することができる。第2のポリペプチドは、ホスファターゼ活性を有することができる。第2のポリペプチドは、配列番号41または44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含有することができる。第2のポリペプチドは、フィターゼ活性を有することができる。第2のポリペプチドは、配列番号42または43に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含有することができる。細胞は、第2の外因性核酸分子と第3の外因性核酸分子を含有することができ、ここで第2の外因性核酸分子は第2のポリペプチドをコードし、第3の外因性核酸分子は第3のポリペプチドをコードし、細胞は第2のポリペプチドと第3のポリペプチドとを発現する。第2のポリペプチドは、グルクロネート還元酵素活性、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、グロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性、ウロノラクトナーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ活性、フィターゼ活性、および/またはホスファターゼ活性を有することができる。第3のポリペプチドは、グルクロネート還元酵素活性、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、グロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性、ウロノラクトナーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ活性、フィターゼ活性、および/またはホスファターゼ活性を有することができる。細胞は、L-グロネート3-脱水素酵素活性を欠如することができる。細胞は、L-グロネート3-脱水素酵素活性を低下させる遺伝子修飾を有することができる。遺伝子修飾は、細胞のゲノム中の核酸欠失を含むことができる。細胞はアスコルビン酸を産生することができる。細胞は、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ活性を有することができる。細胞は、1グラムの乾燥細胞重量あたり1時間に40mgグルクロン酸を超える比活性のミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有することができる。1×106 細胞からの抽出物が、10mgの総タンパク質あたり10分間に生成されるグルクロネートが150μgを超える比活性を有する(ここで各1×106 細胞は、その細胞であるかまたは細胞の子孫である)ように、細胞はミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を含有することができる。外因性核酸分子は、乳糖非応答性であるプロモーターを含有することができる。ポリペプチドは、N-末端ポリヒスチジンタグを欠如することができる。ポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ配列を欠如することができる。外因性核酸分子は、細胞のゲノム中に組み込まれることができる。
【0011】
他の態様において本発明は、細胞中のミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を低下させる方法を特徴とする。この方法は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドの発現が低下するように、細胞のゲノムの遺伝子修飾を含む。細胞は、真核細胞(例えば植物細胞)でもよい。遺伝子修飾は、細胞のゲノム中に核酸欠失を含有してもよい。
【0012】
本発明の他の実施形態は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を低下させる遺伝子修飾を含有する細胞を特徴とする。細胞は真核細胞(例えば植物細胞)でもよい。遺伝子修飾は、細胞のゲノム中に核酸欠失を含有してもよい。細胞はミオイノシトールオキシゲナーゼ活性が欠如してもよい。
【0013】
本発明の他の実施形態は、L-グロネート3-脱水素酵素活性を低下させる遺伝子修飾を含有する細胞を特徴とする。細胞は、真核細胞でもよい。遺伝子修飾は、細胞のゲノム中に核酸欠失を含んでもよい。細胞は、L-グロネート3-脱水素酵素活性が欠如してもよい。
【0014】
本発明の他の態様は、配列番号1に記載の配列と少なくとも約50パーセント同一である核酸配列を含有する単離された核酸分子を特徴とする。単離された核酸分子は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードすることができる。核酸配列は、配列番号1に示すものでもよい。
【0015】
別の実施形態において本発明は、配列番号19に記載の配列と少なくとも約50パーセント同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子を特徴とする。ポリペプチドは、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有することができる。アミノ酸配列は、配列番号19に示すものでもよい。
【0016】
本発明の他の態様は、アスコルビン酸の産生方法を特徴とする。この方法は、(a) ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドを接触させてグルクロネートを形成させ(第1のポリペプチドは細胞内にある)、(b) グルクロネートに、グルクロネート還元酵素活性を有する第2のポリペプチドを接触させてグロネートを形成させ、(c) グロネートに第3のポリペプチドを接触させてグロノ-γ-ラクトンを形成させ(第3のポリペプチドは、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性および/またはD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性を有する)、そして(d) グロノ-γ-ラクトンに第4のポリペプチドを接触させてアスコルビン酸を形成させる(第4のポリペプチドは、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、および/またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有し、1グラムの乾燥細胞重量あたり1時間で少なくとも10mg(例えば、少なくとも20、30、40、50、100mg、またはそれ以上)のアスコルビン酸が産生される)、ことを含む。
【0017】
本発明の別の実施形態は、アスコルビン酸の産生方法を特徴とする。この方法は、(a) ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドを接触させてグルクロネートを形成させ(第1のポリペプチドは細胞内にある)、(b) グルクロネートに、ウロノラクトナーゼ活性を有する第2のポリペプチドを接触させてグルクロノ−ラクトンを形成させ、(c) グルクロノ−ラクトンに、グルクロネート還元酵素活性を有する第3のポリペプチドを接触させて、グロノ-γ-ラクトンを形成させ、そして(d) グロノ-γ-ラクトンに第4のポリペプチドを接触させてアスコルビン酸を形成させる(第4のポリペプチドは、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、および/またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有し、1グラムの乾燥細胞重量あたり1時間で少なくとも10mg(例えば、少なくとも20、30、40、50、100mg、またはそれ以上)のアスコルビン酸が産生される)、ことを含む。
【0018】
本発明の他の実施形態は、アスコルビン酸の産生方法を特徴とする。この方法は、(a) ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドを接触させてグルクロネートを形成させ(ここで、第1のポリペプチドは細胞外にある)、(b) グルクロネートに、グルクロネート還元酵素活性を有する第2のポリペプチドを接触させてグロネートを形成させ、(c) グロネートに第3のポリペプチドを接触させてグロノ-γ-ラクトンを形成させ(第3のポリペプチドは、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性および/またはD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性を有する)、そして(d) グロノ-γ-ラクトンに第4のポリペプチドを接触させてアスコルビン酸を形成させる(第4のポリペプチドは、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、および/またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有する)、ことを含む。
【0019】
本発明の他の実施形態は、アスコルビン酸の産生方法を特徴とする。この方法は、(a) ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドを接触させてグルクロネートを形成させ(ここで、第1のポリペプチドは細胞外にある)、(b) グルクロネートに、ウロノラクトナーゼ活性を有する第2のポリペプチドを接触させてグルクロノ−ラクトンを形成させ、(c) グルクロノ−ラクトンに、グルクロネート還元酵素活性を有する第3のポリペプチドを接触させて、グロノ-γ-ラクトンを形成させ、そして(d) グロノ-γ-ラクトンに第4のポリペプチドを接触させてアスコルビン酸を形成させる(第4のポリペプチドは、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、および/またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有する)、ことを含む。
【0020】
グルカン酸(2つのカルボン酸官能基を含有する)は、食物および動物の餌の業界で酸味物質として有用である。グルカン酸はまた、キレート剤として有用であることが証明されており、生分解性界面活性剤およびセメントの添加剤として使用することができる。グルカン酸はまた、酵素ベータグルクロニダーゼの強力インヒビターであるため、抗癌剤として有用であることが証明されており、哺乳動物において血清コレステロールを低下させることが証明されている。高レベルのグルカン酸を有する天然の供給源には、果実(例えばリンゴおよびグレープフルーツ)や植物(例えば芽キャベツおよびブロッコリ)がある。その金属キレート化性のために、これは、心筋梗塞の検出や腫瘍の放射イメージングのために、99Tcmのキレート剤として使用することができる。これはまた、ポリヒドロキシル化ポリマーの産生のための原料であり、従って繊維、フィルム、および接着剤の生産に使用することができる。
【0021】
特に明記しない場合は、すべての技術および科学用語は、本発明が関係する分野の当業者により通常理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法と材料を、本明細書の実施または試験に使用することができ、以下に適当な方法と材料を記載する。本明細書に記載のすべての刊行物、特許出願、特許、および他の文献は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書(その定義を含む)が支配する。さらに材料、方法、および実施例は例示のためであって、決して限定するものではない。
【0022】
本発明の他の特徴と利点は、以下の説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、ミオイノシトールやアスコルビン酸のような有機化合物の産生に関連する方法と材料を提供する。具体的には本発明は、種々の有機化合物を産生するための、細胞、細胞の培養方法、単離された核酸分子、および方法と材料を提供する。さらに本発明は、アスコルビン酸を産生するのに使用できるいくつかの代謝経路を提供する。
【0024】
1.7工程代謝経路
本発明は、グルコースからアスコルビン酸を産生することができるいくつかの7工程代謝経路を提供する(図1と2)。図1の工程1に記載するように、D-グルコースは、ヘキソキナーゼ活性(EC2.7.1.1)またはグルコキナーゼ活性(EC2.7.1.2)を有するポリペプチドにより、D-グルコース-6-ホスフェートに変換することができる。ヘキソキナーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、いろいろな種から得られ、特に限定されないが、ホモサピエンス(Homo sapiens)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana)、およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)がある。グルコキナーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、いろいろな種から得られ、特に限定されないが、ボス・タウルス(Bos taurus)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、ムス・ムスクルス(Mus musculus)、ホモサピエンス(Homo sapiens)、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、シストソマ・マンソニ(Schistosoma mansoni)、アスペルギルス・ニヅランス(Aspergillus nidulans)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、シュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(デバリオミセス・オクシデンタリス(Debaryomyces occidentalis)としても知られている)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、枯草菌(Bacillus subtilis)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、ブルセラ・アボルツス(Brucella abortus)、チモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、大腸菌(Escherichia coli)、およびストレプトコッカス・コエリカラー(Streptocossus coelicolor)がある。例えばグルコキナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号X99626に記載の配列を有してもよい。
【0025】
あるいは、ポリホスフェート:D-グルコース-6-ホスホトランスフェラーゼ活性(EC2.7.1.63)またはD-グルコース-6-ホスフェートホスホヒドロラーゼ活性(EC3.1.3.9)を有するポリペプチドにより、D-グルコースをD-グルコース-6-ホスフェートに変換することができ、または細胞外D-グルコースを細胞内に移送し、タンパク質-N(パイ)-ホスホヒスチジン-糖ホスホトランスフェラーゼ活性(EC2.7.1.69)を有するポリペプチドによりD-グルコース-6-ホスフェートに変換することができる。ポリホスフェート:D-グルコース-6-ホスホトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を含むいろいろな種から得られる。D-グルコース-6-ホスフェートホスホヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)およびホモサピエンス(Homo sapiens)を含むいろいろな種から得られる。例えばD-グルコース-6-ホスフェートホスホヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号U07993に記載の配列を有することができる。タンパク質-N(パイ)-ホスホヒスチジン-糖ホスホトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、大腸菌(Escherichia coli)および枯草菌(Bacillus subtilis)を含むいろいろな種から得られる。
【0026】
工程2では、得られるD-グルコース-6-ホスフェートを、ミオイノシトール-1-ホスフェートシンターゼ活性(EC5.5.1.4)を有するポリペプチドによりD-ミオイノシトール-1-ホスフェートに変換することができる。ミオイノシトール-1-ホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana)、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、シトラス・パラジシ(Citrus paradisi)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびスピロデラ・ポリリザ(Spirodela polyrrhiza)を含むいろいろな種から得られる。例えばミオイノシトール-1-ホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号J04453に記載の配列を有することができる。
【0027】
工程3では、D-ミオイノシトール-1-ホスフェートは、ミオイノシトール-1(または4)モノホスファターゼ活性(EC3.1.3.25)を有するポリペプチドによりD-ミオイノシトールに変換することができる。ミオイノシトール-1(または4)モノホスファターゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ホモサピエンス(Homo sapiens)、ボス・タウルス(Bos taurus)、ムス・ムスクルス(Mus musculus)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、リコペルシコン・エスクレンツム(Lycopersicon esculentum)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)、およびメセンブリアンテムム・クリスタリヌム(Mesembryanthemum crystallinum)を含むいろいろな種から得られる。例えばミオイノシトール-1(または4)モノホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、ホモサピエンス(Homo sapiens)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号NM_005536に記載の配列を有することができる。
【0028】
工程4では、得られるD-ミオイノシトールを、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性(EC1.13.99.1)を有するポリペプチドによりD-グルクロネートに変換することができる。ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、スス・スクロファ(Sus scrofa)、ボス・タウルス(Bos taurus)、クリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)、シュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、ホモサピエンス(Homo sapiens)、マカラスムギ(Avena sativa)、ピヌス・ラジアータ(Pinus radiata)、クリプトコッカス・テレウス(Cryptococcus terreus)、アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana)、プレウロツス・オストレアツス(Pleurotus ostreatus)を含むいろいろな種から得られる。
【0029】
工程5では、D-グルクロネートは、グルクロネート還元酵素活性(EC1.1.1.19)を有するポリペプチドによりL-グロネートに変換することができる。グルクロネート還元酵素活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、スス・スクロファ(Sus scrofa)、およびボス・タウルス(Bos taurus)を含むいろいろな種から得られる。
【0030】
工程6では、得られるL-グロネートを、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.25)、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.17)、またはウロノラクトナーゼ活性(E.C.3.1.1.19)を有するポリペプチドによりL-グロノ-γ-ラクトンに変換することができる。1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ホモサピエンス(Homo sapiens)およびラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)を含むいろいろな種から得られる。D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、チモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、スス・スクロファ(Sus scrofa)、およびボス・タウルス(Bos taurus)を含むいろいろな種から得られる。例えばD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、チモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号X67189に記載の配列を有することができる。ウロノラクトナーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、アリクトラグス・クニクラス(Aryctolagus cuniculas)、テンジクネズミ(Cavia porcellus)、カニス・ファミリアリス(Canis familiaris)、マカカ・フィリピネンシス(Macaca philippinensis)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、スス・スクロファ(Sus scrofa)、およびボス・タウルス(Bos taurus)を含むいろいろな種から得られる。例えばウロノラクトナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号BAA34218に記載の配列をコードすることができる。
【0031】
工程7では、L-グロノ-γ-ラクトンは、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性(EC1.1.3.8)を有するポリペプチド、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性(EC1.1.3.24)を有するポリペプチド、またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有するポリペプチドによりL-アスコルビン酸に変換することができる。グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、タキグロッスス・アクレアツス(Tachyglossus aculeatus)、カモノハシ(Ornithorhynchus anatinus)、ペラメレス・ナスタ(Perameles nasuta)、イスードン・マクロウルス(Isoodon macrourus)、マクロプス・ルホギセウス(Macropus rufogiseus)、チロゲール・テティス(Thylogale thetis)、リムルス・ポリフェムス(Limulus polyphemus)、ガルス・ガルス(Gallus gallus)、ウシガエル(Rana catesbeiana)、カプラ・ヒルクス(Capra hircus)、およびムス・ムスクルス(Mus musculus)を含むいろいろな種から得られる。例えばグロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、ラットから得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号P10867に記載の配列をコードすることができる。ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)を含むいろいろな種から得られる。例えばガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号BAA23804に記載の配列をコードすることができる。グロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ミドリムシ(Euglena gracilis)を含むいろいろな種から得られる(US Patent No. 5,250,428を参照)。
【0032】
図2に記載の7工程代謝経路は、図1に記載の経路と同一であるが、ただし、工程5では、D-グルクロネートは、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.25)またはD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.17)またはウロノラクトナーゼ活性(EC3.1.1.19)を有するポリペプチドによりD-グルクロノ-3,6-ラクトンに変換することができ、工程6では、生じるD-グルクロノ-3,6-ラクトンは、グルクロノラクトン還元酵素活性(EC1.1.1.20)を有するポリペプチドによりL-グロノ-γ-ラクトンに変換することができる。ウロノラクトナーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、オリクトラグス・クニクラス(Oryctolagus cuniculas)、テンジクネズミ(Cavia porcellus)、カニス・ファミリアリス(Canis familiaris)、マカカ・フィリピネンシス(Macaca philippinensis)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、スス・スクロファ(Sus scrofa)、およびボス・タウルス(Bos taurus)を含むいろいろな種から得られ、グルクロノラクトン還元酵素活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)を含むいろいろな種から得られる。例えばウロノラクトナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号BAA34218に記載の配列をコードすることができる。
【0033】
2.8工程代謝経路
本発明は、グルコースからアスコルビン酸を産生することができるいくつかの8工程代謝経路を提供する(図3と4)。図3の工程1に記載のように、D-グルコースは、図1と2に記載の7工程代謝経路に記載の方法と同じ方法で、D-グルコース-6-ホスフェートに変換することができる。例えばD-グルコースは、ヘキソキナーゼ活性(EC2.7.1.1)、グルコキナーゼ活性(EC2.7.1.2)、ポリホスフェート:D-グルコース-6-ホスホトランスフェラーゼ活性(EC2.7.1.63)、またはD-グルコース-6-ホスフェートホスホヒドロラーゼ活性(EC3.1.3.9)を有するポリペプチドにより、D-グルコース-6-ホスフェートに変換することができ、または細胞外D-グルコースを細胞内に移送し、タンパク質-N(パイ)-ホスホヒスチジン-糖ホスホトランスフェラーゼ活性(EC2.7.1.69)を有するポリペプチドによりD-グルコース-6-ホスフェートに変換することができる。
【0034】
工程2では、得られるD-グルコース-6-ホスフェートを、ホスホグルコムターゼ活性(EC5.4.2.2)を有するポリペプチドによりD-グルコース-1-ホスフェートに変換することができる。ホスホグルコムターゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana)、ホモサピエンス(Homo sapiens)、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、およびキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)を含むいろいろな種から得られる。例えばホスホグルコムターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号X72016に記載の配列を有することができる。
【0035】
工程3では、D-グルコース-1-ホスフェートは、UTP-グルコース-1-ホスフェートウリジルトランスフェラーゼ活性(EC2.7.7.9)を有するポリペプチドによりUDP-D-グルコースに変換することができる。UTP-グルコース-1-ホスフェートウリジルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ボス・タウルス(Bos taurus)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、枯草菌(Bacillus subtilis)、および大腸菌(Escherichia coli)を含むいろいろな種から得られる。例えばUTP-グルコース-1-ホスフェートウリジルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、ボス・タウルス(Bos taurus)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号L14019に記載の配列を有することができる。
【0036】
工程4では、得られるUDP-D-グルコースを、UDP-グルコース脱水素酵素活性(EC1.1.1.22)を有するポリペプチドによりUDP-D-グルクロネートに変換することができる。UDP-グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ホモサピエンス(Homo sapiens)、ボス・タウルス(Bos taurus)、ムス・ムスクルス(Mus musculus)、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含むいろいろな種から得られる。例えばUDP-グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号AJ010734に記載の配列を有することができる。
【0037】
工程5では、得られるUDP-D-グルクロネートは、UDP-グルクロネートβ-D-グルクロノシルトランスフェラーゼ活性(EC2.4.1.17)を有するポリペプチドによりD-グルクロネートに変換することができる。UDP-グルクロネートβ-D-グルクロノシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ホモサピエンス(Homo sapiens)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、ムス・ムスクルス(Mus musculus)を含むいろいろな種から得られる。例えばUDP-グルクロネートβ-D-グルクロノシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、ホモサピエンス(Homo sapiens)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号NM_001072に記載の配列を有することができる。
【0038】
工程6では、D-グルクロネートを、グルクロネート還元酵素活性(EC1.1.1.19)を有するポリペプチドによりL-グロネートに変換することができる。グルクロネート還元酵素活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、スス・スクロファ(Sus scrofa)、およびボス・タウルス(Bos taurus)を含むいろいろな種から得られる。
【0039】
工程7では、得られるL-グロネートは、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.25)またはD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.17)またはウロノラクトナーゼ活性(EC3.1.1.19)を有するポリペプチドによりL-グロノ-γ-ラクトンに変換することができる。1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)とホモサピエンス(Homo sapiens)を含むいろいろな種から得られ、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、チモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、スス・スクロファ(Sus scrofa)、およびボス・タウルス(Bos taurus)を含むいろいろな種から得られる。例えばD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、チモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号X67189およびS53050に記載の配列を有することができる。
【0040】
工程8では、 L-グロノ-γ-ラクトンは、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性(EC1.1.3.8)を有するポリペプチド、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性(EC1.1.3.24)を有するポリペプチド、またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有するポリペプチドによりL-アスコルビン酸に変換することができる。グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、タキグロッスス・アクレアツス(Tachyglossus aculeatus)、カモノハシ(Ornithorhynchus anatinus)、ペラメレス・ナスタ(Perameles nasuta)、イスードン・マクロウルス(Isoodon macrourus)、マクロプス・ルホギセウス(Macropus rufogiseus)、チロゲール・テティス(Thylogale thetis)、リムルス・ポリフェムス(Limulus polyphemus)、ガルス・ガルス(Gallus gallus)、ウシガエル(Rana catesbeiana)、およびカプラ・ヒルクス(Capra hircus)を含むいろいろな種から得られる。例えばグルノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、ラットから得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号P10867に記載の配列をコードすることができる。ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)を含むいろいろな種から得られる。例えばガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドは、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号BAA23804に記載の配列をコードすることができる。グロノ-γ-ラクトン脱水素酵素を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ミドリムシ(Euglena gracilis)を含むいろいろな種から得られる(例えばUS Patent No. 5,250,428を参照)。
【0041】
図4に記載の8工程代謝経路は、図3に記載の経路と同一であるが、ただし、工程6では、D-グルクロネートは、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.25)またはD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.17)またはウロノラクトナーゼ活性(EC3.1.1.19)を有するポリペプチドによりD-グルクロノ-3,6-ラクトンに変換することができ、工程7では、得られるD-グルクロノ-3,6-ラクトンは、グルクロノラクトン還元酵素活性(EC1.1.1.20)を有するポリペプチドによりL-グロノ-γ-ラクトンに変換することができる。ウロノラクトナーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、オリクトラグス・クニクラス(Oryctolagus cuniculas)、テンジクネズミ(Cavia porcellus)、カニス・ファミリアリス(Canis familiaris)、マカカ・フィリピネンシス(Macaca philippinensis)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、スス・スクロファ(Sus scrofa)、およびボス・タウルス(Bos taurus)を含むいろいろな種から得られ、グルクロノラクトン還元酵素活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)を含むいろいろな種から得られる。
【0042】
3.9工程代謝経路
本発明は、グルコースからアスコルビン酸を産生することができるいくつかの9工程代謝経路を提供する(図5と6)。図5と6に記載の9工程代謝経路は、それぞれ図3と4に記載の8工程代謝経路と同様であるが、ただし、UDP-D-グルクロネートからD-グルクロネートへの変換は、D-グルクロネート-1-ホスフェート中間体を使用する。図5と6に記載のように、工程5は、UTP:1-ホスホ-α-D-グルクロネートウリジルトランスフェラーゼ活性(EC2.7.7.44)を有するポリペプチドにより、UDP-D-グルクロネートからD-グルクロネート-1-ホスフェートへの変換を含む。UTP:1-ホスホ-α-D-グルクロネートウリジルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、オオムギ(Hordeum vulgare)とガマ(Typha latifolia)を含むいろいろな種から得られる。
【0043】
工程6では、生じるD-グルクロネート-1-ホスフェートは、ATP:D-グルクロネート-1-ホスホトランスフェラーゼ活性(EC2.7.1.43)を有するポリペプチドによりD-グルクロネートに変換することができる。ATP:D-グルクロネート-1-ホスホトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、ビグナ・ラディアータ(Vigna radiata)、タバコ(Nicotiana tabacum)、リリウム・ロンギフロルム(Lilium longiflorum)、トウモロコシ(Zea mays)、およびダイズ(Glycine max)を含むいろいろな種から得られる。
【0044】
4.フィチン酸
本発明は、フィチン酸からミオイノシトールまたはアスコルビン酸を産生するのに使用できるいくつかの経路を提供する。例えばフィチン酸は、フィターゼ活性を有するポリペプチド、ホスフェートは活性を有するポリペプチド(または、異なるホスファターゼ活性を有するポリペプチドの集合)、またはフィターゼ活性を有するポリペプチドとホスファターゼ活性(または、異なるホスファターゼ活性を有するポリペプチドの集合)を有するポリペプチドとの混合物により、ミオイノシトールに変換することができる。例えばフィターゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、シュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、大腸菌(E. coli)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、ホモサピエンス(Homo sapiens)、およびトウモロコシ(Zea mays)を含むいろいろな種から得られる。例えばフィターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は大腸菌(E. coli)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号M58708に記載の配列を有することができるか、または枯草菌(Bacillus subtilis)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号AF298179またはAI277890に記載の配列を有することができる。また、フィターゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、US Patent No. 5,830,733;5,840,561;または5,830,732に記載のようにして得ることができる。ある実施形態において、図16に記載の配列を有するポリペプチドは、フィチン酸をミオイノシトールに変換するのに使用することができる。あるいは、複数のイノシトールポリホスフェートホスファターゼ活性を有するポリペプチド混合物を使用して、フィチン酸をミオイノシトールに変換することができる。ホスファターゼ活性(例えば酸性ホスファターゼ活性)を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、大腸菌(E. coli)、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を含むいろいろな種から得られる。例えばホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は大腸菌(E. coli)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号P07102に記載の配列をコードすることができる。また、ホスファターゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、US Patent No. 5,830,733に記載のように得られる。US Patent No. 5,830,733に記載のように、フィターゼ活性を有するポリペプチドとホスファターゼ活性を有するポリペプチドとの混合物を使用して、フィチン酸をイノシトールに変換することができる。さらにフィチン酸は、熱または蒸気処理のような任意の化学的方法を使用して、ミオイノシトールに変換することができる。
【0045】
生じるミオイノシトールは、本明細書に記載の任意の酵素工程を使用して他の有機化合物(例えばアスコルビン酸)に変換することができる。例えばミオイノシトールは、図1の7工程代謝経路の工程4〜7を使用して、アスコルビン酸に変換することができる。
【0046】
5.グルカン酸
本発明は、グルカン酸を産生するのに使用することができる経路を提供する(図18)。例えばグルコースまたはフィチン酸は、本明細書に記載のようにグルクロン酸に変換することができる。得られるグルクロン酸は、非特異的ヘキソースオキシダーゼ活性(EC1.1.3.5)を有するポリペプチドにより、アルデヒド脱水素酵素[NAD(P)]活性(EC1.2.1.5、EC1.2.1.3(NAD)、またはEC1.2.1.4(NADP))を有するポリペプチドにより、またはアルデヒドオキシダーゼ活性(EC1.2.3.1)を有するポリペプチドにより、グルカン酸に変換することができる。例えば非特異的ヘキソースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドを使用して、グルクロン酸をグルカン酸に変換することができる。非特異的ヘキソースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、コンドルス・クリスプス(Chondrus crispus)、ペスト菌(Yersinia pestis)、偽結核エルシニア菌(Yersinia pseudotuberculosis)、ラルストニア・ソラナセアルム(Ralstonia solanacearum)を含むいろいろな種から得られる。例えば非特異的ヘキソースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、コンドルス・クリスプス(Chondrus crispus)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号AAB49376.1に記載の配列をコードすることができ、またはペスト菌(Yersinia pestis)から得ることができ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号NP_403959.1に記載のアミノ酸配列をコードすることができ、またはラルストニア・ソラナセアルム(Ralstonia solanacearum)から得られ、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号NP_518171.1に記載のアミノ酸配列をコードすることができる。また、ヘキソースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、別に記載のように(US Patent No. 6,251,626、およびSullivanとIkawa、Biochim. et Biophys. Acta, 309:11-22 (1973))得ることができる。さらに、グルクロン酸は、任意の化学的方法(例えば分子酸素と触媒を使用する酸化)を使用して、グルカン酸に変換することができる。例えばUS Patent No. 5,817,870またはGallezotら(Chem. Ind. (Dekker), 62:331-40 (1995))に記載の方法と類似の方法を使用して、グルクロン酸をグルカン酸に変換することができる。
【0047】
さらに、アルデヒド脱水素酵素活性を有するポリペプチドを使用して、グルクロン酸をグルカン酸に変換することができる。アルデヒド脱水素酵素活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(gi:1169292)および枯草菌(Bacillus subtilis)(gi:16077316またはNP_388129.1)を含むいろいろな種から得られる。同様に、アルデヒドオキシダーゼ活性を有するポリペプチドを使用して、グルクロン酸をグルカン酸に変換することができる。アルデヒドオキシダーゼ活性を有するポリペプチドならびにそのようなポリペプチドをコードする核酸は、特に限定されないが、イネ(Oryza sativa)(gi:1844950またはAAL700116.1)、トウモロコシ(Zea mays)(BAA23226.1)、およびトマト(Lycopersicon esculentum)(AAG22607.1またはAF258810)を含むいろいろな種から得られる。
【0048】
6.核酸
本発明は、配列番号1に記載の配列と、少なくとも約50パーセント同一(例えば、少なくとも約55、65、70、75、80、85、90、95、または99パーセント同一)の核酸配列を含有する単離された核酸分子を提供する。本発明はまた、配列番号19に記載の配列と少なくとも約50パーセント同一(例えば、少なくとも約55、65、70、75、80、85、90、95、または99パーセント同一)のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供する。
【0049】
本明細書において用語「核酸」は、RNAとDNAの両方を包含し、cDNA、ゲノムDNA、および合成(例えば化学合成)DNAを含む。核酸は、2本鎖でも1本鎖でもよい。1本鎖の場合は、核酸はセンス鎖またはアンチセンス鎖でもよい。さらに核酸は、環状または線状でもよい。
【0050】
本明細書において核酸に関して使用される用語「単離された」は、それが誘導される天然に存在する生物のゲノム中で直接隣接している配列の両方(5'末端で1つおよび3'末端で1つ)と直接隣接してはいない天然に存在する核酸を意味する。例えば単離された核酸は、特に限定されないが、任意の長さの組換えDNA分子でもよいが、ただし、天然に存在するゲノム中で通常この組換えDNA分子に直接フランクしている核酸配列の1つは、除去されているかまたは欠如している。すなわち単離された核酸は、特に限定されないが、他の配列からは独立している分かれた分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理により産生されるcDNAまたはゲノムDNA断片)として存在する組換えDNA、ならびにベクター、自律的複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)中に取り込まれたか、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に取り込まれた組換えDNAを含む。さらに、単離された核酸は、ハイブリッドまたは融合核酸配列の一部である組換えDNA分子を含有してもよい。
【0051】
天然に存在しない核酸配列は、天然には存在せず、天然に存在するゲノム中で直接の連続配列を持たないため、本明細書において核酸に関して使用される用語「単離された」は、天然に存在しない任意の核酸を含む。例えば天然に存在しない核酸(例えば操作された核酸)は、単離された核酸であると考えられる。操作された核酸は、一般的な分子クローニングまたは化学的核酸合成法を使用して作製することができる。単離された天然に存在しない核酸は、他の配列から独立しているか、またはベクター、自律的複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)中に取り込まれるか、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に取り込まれた組換えDNAを含む。さらに、天然に存在しない核酸は、ハイブリッドまたは融合核酸配列の一部である核酸分子を含有してもよい。
【0052】
例えばcDNAまたはゲノムライブラリー、またはゲノムDNA制限消化物を含有するゲルスライス内の、数百〜数百万の他の核酸分子中に存在する核酸は、単離された核酸とは見なされないことは、当業者には明らかであろう。
【0053】
本明細書において核酸と特定の細胞に関して使用される用語「外因性」は、天然に存在する特定の細胞に由来するものではない核酸を意味する。すなわち、すべての天然に存在しない核酸はいったん細胞中でに導入されると、細胞にとって外因性であると見なされる。ある核酸が全体として天然に存在しないなら、天然に存在しない核酸は、天然に存在する核酸配列または核酸配列の断片を含有することができる。例えば発現ベクター中にゲノムDNA配列を含有する核酸分子は、天然に存在しない核酸であり、従って、核酸分子が全体(ゲノムDNA+ベクターDNA)として天然に存在しないため、いったん細胞中に導入されると、細胞にとって外因性である。すなわち、全体としては天然に存在しない任意のベクター、自律的複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)は、天然に存在しない核酸と見なされる。従って、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理により産生されるゲノムDNA断片ならびにcDNAは、これらが天然に存在しない分かれた分子として存在するため、天然に存在しない核酸と見なされる。また従って、天然に存在しない配置で存在するプロモーター配列およびポリペプチドをコードする配列(例えばcDNAまたはゲノムDNA)を含有する任意の核酸は、天然に存在しない核酸である。
【0054】
天然に存在する核酸は、特定の細胞に対して外因性でもよい。例えばXさんの細胞から単離された全染色体は、いったんその染色体がYさんの細胞に導入されると、Yさんの細胞にとって外因性の核酸である。
【0055】
特定の核酸配列またはアミノ酸配列と特定の配列識別番号により参照される配列の間の同一性パーセントは、以下のように測定される。まず、BLASTNバージョン2.0.14とBLASTPバージョン2.0.14を含有するBLASTZのスタンドアローンバージョンからのBLAST2配列(Bl2seq)プログラムを使用して、核酸配列またはアミノ酸配列が、特定の配列識別番号に記載の配列と比較される。このBLASTZのスタンドアローンバージョンは、Fish & Richardsonのウェブサイト(例えば、www.fr.com/blast)から得られるか、アメリカ合衆国政府のNational Center for Biotechnology Information ウェブサイト(例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov)から得られる。B12seqプログラムの使い方を説明する使用説明書は、BLASTZに添付のリードミーファイル中にある。B12seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して、2つの配列の比較を行う。BLASTNは核酸配列を比較するのに使用され、BLASTPはアミノ酸配列を比較するのに使用される。2つの核酸配列を比較するために、以下の選択肢がある:-iは、比較すべき第1の核酸配列を含有するファイルに設定され(例えば、C:|seq1.txt);-jは、比較すべき第2の核酸配列を含有するファイルに設定され(例えば、C|seq2.txt);-pはblastnに設定され;-oは任意の所望のファイル名に設定され(例えば、C|output.txt);-qは-1に設定され;-rは2に設定され;そして、他のすべての選択肢は、デフォルト設定のままである。例えば以下の命令を使用して、2つの配列の比較を含有する出力ファイルを作成することができる:C: |B12seq-i c: |seq1.txt-j c: |seq2.txt-p blastn-o c: |output.txt-q-1-r2。2つのアミノ酸配列を比較するために、B12seqの選択肢は以下の通りである:-iは、比較すべき第1のアミノ酸配列を含有するファイルに設定され(例えば、C: |seq1.txt);-jは、比較すべき第2のアミノ酸配列を含有するファイルに設定され(例えば、C: |seq2.txt);-pはblastpに設定され;-oは任意の所望のファイル名に設定され(例えば、C: |output.txt);そして、他のすべての選択肢は、デフォルト設定のままである。例えば、以下の命令を使用して、2つのアミノ酸配列の比較を含有する出力ファイルを作成することができる:C: |B12seq-i c: |seq1.txt-j c: |seq2.txt-p blastp-o c: |output.txt。2つの比較された配列が相同性を共有するなら、記載の出力ファイルは、整列した配列として相同性の領域を示すであろう。2つの比較された配列が相同的でないなら、記載の出力ファイルはアラインメントした配列を示さないであろう。
【0056】
いったんアラインメントされると、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が両方配列で示される位置の数を計測することにより、一致の数が決定される。一致の数を、同定された配列(例えば配列番号1)に記載の配列の長さで割って、次に得られた値に100を掛けることにより、同一性パーセントが計算される。例えば配列番号1に記載の配列と整列させた時、711の一致を有する核酸配列は、配列番号1に記載の配列と75パーセント同一である(すなわち、711÷948*100=75)。
【0057】
同一パーセントは、小数点1桁に四捨五入される。例えば、78.11、78.12、78.13、および78.14は四捨五入して78.1になり、78.15、78.16、78.17、78.18、および78.19は四捨五入して78.2になる。長さの値は、いつも整数であることに注意されたい。
【0058】
本発明はまた、(1) ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、そして(2) 配列番号1に記載の配列を有する核酸のセンスまたはアンチセンス鎖に、ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする、単離された核酸分子を提供する。ハイブリダイゼーション条件は、中程度のまたは高度に厳密性のハイブリダイゼーション条件である。
【0059】
本発明の目的において、中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約42℃で25mM KPO4(pH7.4)、5xSSC、5xデンハルツ溶液、50μg/ml変性超音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、および1〜15ng/mlプローブ(約5x107cpm/μg)を含有するハイブリダイゼーション溶液中で行われ、洗浄は、約50℃で、2xSSCと0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する洗浄溶液で行われることを意味する。
【0060】
高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約42℃で25mM KPO4(pH7.4)、5xSSC、5xデンハルツ溶液、50μg/ml変性超音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、および1〜15ng/mlプローブ(約5x107cpm/μg)を含有するハイブリダイゼーション溶液中で行われ、洗浄は、約65℃で、0.2xSSCと0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有する洗浄溶液で行われることを意味する。
【0061】
本発明の範囲内の単離された核酸分子は、特に限定されないが、一般的な分子クローニングと化学的核酸合成法を含む任意の方法を使用して得られる。例えばPCRを使用して、配列番号1に記載の配列と類似性を共有する核酸配列を含有する単離された核酸分子を得ることができる。PCRは、標的核酸がUS Patent No. 4,683,195に記載の方法と類似の方法により増幅され、以後の操作はそこに記載のように修飾される、方法または技術を意味する。一般に、目的の領域の末端またはそれを超える領域からの配列情報は、増幅すべき鋳型候補の反対の鎖と配列が同一かまたは似ているオリゴヌクレオチドプライマーを設計するのに使用される。PCRを使用して、RNAまたはDNAから核酸配列を増幅することができる。例えば総細胞RNA、総ゲノムDNA、およびcDNAならびにバクテリオファージ配列、プラスミド配列、ウイルス配列などから、PCR増幅により核酸配列を単離することができる。鋳型源としてRNAを使用する時は、逆転写酵素を使用して相補的DNA鎖が合成される。
【0062】
本発明の範囲内の単離された核酸分子はまた、突然変異誘発により得ることができる。例えば配列番号1に記載の配列を含有する単離された核酸は、通常分子クローニング技術(例えば部位特異的突然変異誘発)を使用して突然変異させることができる。可能な突然変異には、特に限定されないが、欠失、挿入、および置換、ならびに欠失、挿入、および置換の組合せがある。
【0063】
さらに、核酸とアミノ酸のデータベース(例えばジーンバンク(GenBank)(登録商標))を使用して、本発明の範囲内の単離された核酸分子を得ることができる。例えば配列番号1に記載の配列と一部の相同性を有する任意の核酸配列、または配列番号19に記載の配列と一部の相同性を有する任意のアミノ酸配列をクエリーとして使用して、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)を検索することができる。
【0064】
さらに、核酸ハイブリダイゼーション技術を使用して、本発明の範囲内の単離された核酸分子を得ることができる。簡単に説明すると、配列番号1に記載の配列と一部の相同性を有する任意の核酸分子をプローブとして使用して、中程度から高いストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションにより、同様の核酸を同定することができる。いったん同定されると、次に核酸分子を精製し、配列決定し、分析して、これが前記の本発明の範囲内であるかどうかを決定することができる。
【0065】
ハイブリダイゼーションは、プローブにハイブリダイズするDNAまたはRNA配列を同定するために、サザンまたはノーザン解析により行われる。プローブは、ビオチン、ジゴキシゲニン、酵素、またはラジオアイソトープ(例えば32P)により標識することができる。分析されるDNAまたはRNAは、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル上で電気泳動分離され、ニトロセルロース、ナイロン、または他の適当な膜に移され、当該分野で公知の標準的方法、例えばSambrookら(1989)、モレキュラークローニング、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー、Plainview、ニューヨーク州の7.39〜7.52節に記載のように、プローブとハイブリダイズされる。典型的には、プローブは少なくとも約20ヌクレオチドの長さである。例えば配列番号1に記載の20ヌクレオチドの配列に対応するプローブを使用して、同一のまたは類似の核酸を同定することができる。さらに、20ヌクレオチドより長いまたは短いヌクレオチドを使用することができる。
【0066】
7.遺伝子修飾細胞
本発明は、遺伝子修飾細胞(例えば外因性核酸分子を含有する細胞)を提供する。そのような細胞を使用して、アスコルビン酸、グルクロン酸、およびグルカン酸のような有機化合物を産生することができる。細胞は真核生物でも原核生物でもよい。例えば本発明の遺伝子修飾細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト、ネズミ、およびウシ細胞)、植物細胞(例えば、トウモロコシ、コムギ、イネ、およびダイズ細胞)、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、または細菌細胞(例えば大腸菌(E. coli)細胞)でもよい。本発明の細胞は、微生物でもよい。本明細書において用語「微生物」は、すべての微生物を意味し、特に限定されないが、細菌、藻類、真菌、および原生動物を含む。従って、大腸菌(E. coli)、エス・セレビッシェ(S. cerevisiae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、シーアール・テレウス(Cr. terreus)、シュ・オクシデンタリス(Sch. occidentalis)、およびシゾ・ポンベ(Sz. pombe)は、微生物と考えられる。
【0067】
典型的には本発明の細胞は、特定の有機化合物が産生されるように遺伝子修飾される。そのような細胞は、酵素活性を有するポリペプチドをコードする1つ以上の外因性核酸分子を含有することができる。例えば微生物は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸を含有することができる。この場合、D-ミオイノシトールはD-グルクロネートに変換され、これはアスコルビン酸の産生に至る。通常は細胞が産生しない化合物の産生を触媒する酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を、細胞に与えることができる。あるいは、通常細胞が産生する化合物の産生を触媒する酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を、細胞に与えることができる。この場合遺伝子修飾細胞は、遺伝子修飾の無い類似の細胞が産生するより多くの化合物を産生するか、またはより効率的に化合物を産生することができる。
【0068】
特定の酵素活性を有するポリペプチドは、天然に存在するかまたは天然に存在しないポリペプチドでもよい。天然に存在するポリペプチドは、天然に存在するアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、野生型と多型ポリペプチドを含む。そのような天然に存在するポリペプチドは、特に限定されないが、哺乳動物、真菌、および細菌種を含む任意の種から得ることができる。天然に存在しないポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を有する任意のポリペプチドである。すなわち、天然に存在しないポリペプチドは、天然に存在するポリペプチドの突然変異されたものまたは操作されたポリペプチドでもよい。例えばミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する天然に存在しないポリペプチドは、少なくとも一部のミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を保持する、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する天然に存在するポリペプチドの突然変異されたものでもよい。ポリペプチドは、例えば対応する核酸コード配列の部位特異的突然変異誘発のような標準的方法を使用して、例えば配列付加、欠失、および/または置換により突然変異させることができる。
【0069】
本発明は、本明細書に記載の代謝経路の1つ以上の工程を行うのに使用できる遺伝子修飾細胞を提供する。例えば個々の微生物は、7工程代謝経路のすべての7つの工程を行うのに必要なポリペプチドのそれぞれが発現されるように、外因性核酸分子を含有することができる。そのような細胞が任意の数の外因性核酸分子を含有することが重要である。例えば特定の細胞は7つの外因性核酸分子を含有して、そのそれぞれが7工程代謝経路を行うのに必要な7つのポリペプチドの1つをコードするか、または特定の細胞が7工程代謝経路の7つの工程の最初の6つを行うのに必要なポリペプチドを内因性に産生し、一方7番目の工程を行うのに必要なポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有することができる。特定の活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有する細胞はまた、同様の活性を有するポリペプチドを内因性に発現することができることに注意されたい。そのような場合、内因性に発現されるポリペプチドと類似の活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を細胞に提供することは、外因性核酸分子が欠如した同様の細胞と比較して活性が上昇した細胞を提供することが期待される。また細胞は、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有することができることに注意されたい。そのようなポリペプチドを使用して、化学反応(例えばNADH+NADP→NAD+NADPH)を触媒することにより、細胞内でNADPHを生成することができる。ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードする核酸を得るのに、任意の供給源を使用することができる。例えばピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、別に記載されているように得ることができる(例えば、US Patent No. 5,830,716、Nissenら、Yeast 18:19-32 (2001))。
【0070】
さらに、単一の外因性核酸分子は1つ以上のポリペプチドをコードすることができる。例えば単一の外因性核酸分子は、3つの異なるポリペプチドをコードする配列を含有することができる。さらに本明細書に記載の細胞は、特定の外因性核酸分子の単一のコピー、または複数のコピー(例えば、約5、10、20、35、50、75、100または150コピー)を含有することができる。例えば特定の細胞は、外因性核酸分子Xの約50コピーを含有することができる。再度、本明細書に記載の細胞は、2つ以上の特定の外因性核酸分子を含有することができる。例えば特定の細胞は、約50コピーの外因性核酸分子Xとともに、約75コピーの外因性核酸分子Yを含有することができる。
【0071】
ある実施形態において本発明は、アスコルビン酸の生成に至る酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有する細胞を提供する。産生されるアスコルビン酸は細胞から分泌され、有機化合物を回収するために細胞膜を破壊する必要が無いことに注意されたい。典型的には本発明の細胞は、少なくとも約0.1g/L(例えば、少なくとも約1g/L、5g/L、10g/L、または80g/L)の濃度の有機化合物を産生する。特定の細胞のための有機化合物産生の収率を決定する時、任意の方法が使用できる。例えばKiersら、Yeast 14(5):450-469 (1998)を参照されたい。典型的には本発明の範囲内の細胞(例えば微生物)は、ヘキソース炭素源(例えばグルコース)を異化することができる。しかし細胞は、種々の炭素源、例えばペントース糖(例えば、リボース、アラビノース、キシロース、およびリキソース)、グリセロール、またはミオイノシトールを異化することができる。すなわち本発明の範囲内の細胞は、種々の炭素源を利用することができる。
【0072】
別の実施形態において本発明の範囲内の細胞は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有することができる。そのような細胞は、任意のレベルのミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有することができる。例えばミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有する細胞は、1gの乾燥細胞重量当たり1時間に生成するグルクロン酸が約5mgより多い比活性を有するミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有することができる(例えば1gの乾燥細胞重量当たり1時間に、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、400、500、またはそれ以上のグルクロン酸が生成する)。あるいは細胞は、1×106細胞からの細胞抽出物が、10mgの総タンパク質当たり10分間に生成するグルクロン酸が約5μgより多い比活性を有してもよい(例えば、10mgの総タンパク質当たり10分間に、約10、20、30、40、50、60、80、90、100、125、150、200、250、300、350、400、500、またはそれ以上のグルクロン酸が生成する)。
【0073】
任意の方法を使用して、酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を同定することができ得ることができる。例えば標準的核酸配列決定法と、遺伝コードに基づき核酸配列をアミノ酸配列に翻訳するソフトウェアプログラムとを使用して、特定の核酸が既知の酵素性ポリペプチドと配列相同性を有するかどうかを決定することができる。種々の配列を比較するのに、MEGALIGN(登録商標)(DNASTAR、マジソン、ウィスコンシン州、1997)のような配列アラインメントソフトウェアを使用することができる。さらに既知の酵素性ポリペプチドをコードする核酸分子は、一般的な分子クローニング法(例えば部位特異的突然変異誘発)を使用して突然変異させることができる。可能な突然変異には、特に限定されないが、欠失、挿入、および置換、ならびに欠失、挿入、および置換の組合せがある。さらに核酸とアミノ酸のデータベース(例えばジーンバンク(GenBank)(登録商標))を使用して、酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を同定することができる。簡単に説明すると、酵素活性を有するポリペプチドと一部の相同性を有する任意のアミノ酸配列、または酵素活性を有するポリペプチドをコードする配列と一部の相同性を有する任意の核酸配列を質問として使用して、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)を検索することができる。
【0074】
酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子は、PCRを含む一般的な分子クローニングまたは化学的核酸合成方法および技術を使用して、同定しかつ得ることができる。PCRは、標的核酸がUS Patent No. 4,683,195に記載の方法と類似の方法により増幅され、以後の操作はそこに記載のように修飾される方法または技術を意味する。一般に、目的の領域の末端またはそれを超える領域からの配列情報は、増幅すべき鋳型候補の反対の鎖と配列が同一かまたは似ているオリゴヌクレオチドプライマーを設計するのに使用される。PCRを使用して、RNAまたはDNAから核酸配列を増幅することができる。例えば総細胞RNA、総ゲノムDNA、およびcDNAならびにバクテリオファージ配列、プラスミド配列、ウイルス配列などから、PCR増幅により核酸配列を単離することができる。鋳型源としてRNAを使用する時は、逆転写酵素を使用して相補的DNA鎖が合成される。
【0075】
さらに、核酸ハイブリダイゼーション技術を使用して、酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を同定しかつ得ることができる。簡単に説明すると、既知の酵素性ポリペプチドをコードする任意の核酸分子またはその断片をプローブとして使用して、高い厳密性条件下でのハイブリダイゼーションにより、同様の核酸分子を同定することができる。そのような類似の核酸分子を単離し、配列決定し、分析して、コードされたポリペプチドが酵素活性を有するかどうかを決定することができる。
【0076】
ハイブリダイゼーションは、プローブにハイブリダイズするDNAまたはRNA配列を同定するために、サザンまたはノーザン解析により行われる。プローブは、32Pのようなラジオアイソトープ、酵素、ジゴキシゲニン、酵素、またはビオチン化により標識することができる。分析されるDNAまたはRNAは、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル上で電気泳動分離され、ニトロセルロース、ナイロン、または他の適当な膜に移され、当該分野で公知の標準的方法、例えばSambrookら(1989)、モレキュラークローニング、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー、Plainview、ニューヨーク州の7.39〜7.52節に記載のように、プローブとハイブリダイズされる。典型的には、プローブは少なくとも約20ヌクレオチドの長さである。例えば哺乳動物ミオイノシトールオキシゲナーゼをコードする20ヌクレオチド配列に対応するプローブを使用して、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する真菌ポリペプチドをコードする核酸分子を同定することができる。さらに、20ヌクレオチドより長いまたは短いプローブを使用することができる。
【0077】
酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を同定しかつ得るために、発現クローニング法を使用することもできる。例えば特定の酵素性ポリペプチドと相互作用することが知られている基質を使用して、その酵素性ポリペプチドを含有するファージ表示ライブラリー(phage display library)をスクリーニングすることができる。ファージ表示ライブラリーは、別に記載のように作成できる(Burrittら、Anal. Biochem. 238:1-13 (1990))か、または Novagen(マジソン、ウィスコンシン州)のような販売業者から入手できる。
【0078】
さらに酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を同定しかつ得るために、ポリペプチド配列決定法を使用することができる。例えば精製ポリペプチドをゲル電気泳動で分離し、そのアミノ酸配列を、例えばアミノ酸微量配列決定法により決定することができる。いったん決定されると、アミノ酸配列を使用して縮重オリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。縮重オリゴヌクレオチドプライマーは、PCRによりポリペプチドをコードする核酸を得るのに使用することができる。いったん得られると、核酸を配列決定し、適切な発現ベクター中にクローン化し、微生物中に導入することができる。
【0079】
外因性核酸分子を細胞中に導入するのに任意の方法が使用できる。実際、細菌や酵母のような微生物中に核酸を導入するための多くの方法が当業者に公知である。例えば熱ショック、リポフェクション、電気穿孔法、接合、プロトプラスト融合、およびバイオリスティック送達は、細菌や酵母中に核酸を導入するための一般的な方法である。例えばItoら、J. Bacteriol. 153:163-168 (1983);Durrensら、Curr. Genet. 18:7-12 (1990);およびBeckerとGuarente、Methods in Enzymology 194:182-187 (1991)を参照されたい。
【0080】
本発明の特定の細胞内に含有される外因性核酸分子は、その細胞中で任意の形で維持することができる。例えば外因性核酸分子は細胞のゲノム中に組み込んでもよいし、エピソームの状態でもよい。すなわち本発明の細胞は、安定なまたは一過性の形質転換体でもよい。さらに本明細書に記載の微生物は、単一のコピーまたは複数のコピー(例えば、約5、10、20、35、50、75、100、または150コピー)の特定の上記外因性核酸分子を含有することができる。
【0081】
外因性核酸分子からアミノ酸配列を発現する方法は、当業者に公知である。そのような方法には、特に限定されないが、制御要素が、ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を促進するような核酸の構築がある。典型的には制御要素は、転写レベルで他のDNA配列の発現を制御するDNA配列である。すなわち制御要素は、特に限定されないが、プロモーター、エンハンサーなどを含む。外因性核酸分子からアミノ酸配列を発現するのに、任意の型のプロモーターが使用できる。プロモーターの例には、特に限定されないが、構成性プロモーター、組織特異的プロモーター、および特定の刺激(例えば、光、酸素、化学的濃度など)に対して応答性または非応答性のプロモーターがある。例えば乳糖に対して非応答性のプロモーターを使用して、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを発現することができる。さらに細菌細胞や酵母細胞のような細胞中の外因性核酸分子からポリペプチドを発現する方法は、当業者に公知である。例えば大腸菌(E. coli)内で外因性ポリペプチドを発現することができる核酸構築体は、公知である。例えばSambrookら、Molecular cloning: a laboratory manual、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、ニューヨーク、アメリカ合衆国、第2版(1989)を参照されたい。
【0082】
本明細書に記載のように本発明の範囲内の細胞は、アスコルビン酸の生成に至る酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有することができる。外因性核酸分子を含有する細胞を同定する方法は、当業者に公知である。そのような方法には、特に限定されないが、PCRおよび核酸ハイブリダイゼーション法(例えばノーザンおよびサザン分析)がある。ある場合には、特定の核酸分子によりコードされる酵素性ポリペプチドの発現を検出することにより、細胞が特定の核酸を含有するかどうかを決定するのに、免疫組織化学または生化学的技術を使用することができる。例えばコードされた酵素に対する特異性を有する抗体を使用して、特定の細胞がそのコードされた酵素を含有するかどうかを決定することができる。さらに酵素性ポリペプチドの発現の結果として産生される有機生成物を検出することにより、細胞が、酵素性ポリペプチドをコードする特定の核酸分子を含有するかどうかを決定するのに、生化学的法を使用することができる。例えばL-グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を、通常はそのようなポリペプチドを発現しない細胞に導入した後にアスコルビン酸が検出されることは、細胞が、導入された核酸分子を含有するのみでなく、コードされた酵素性ポリペプチドをその導入された外因性核酸分子から発現することができることを示している。特定の酵素活性または特定の有機生成物の存在を検出する方法は、当業者に公知である。例えばアスコルビン酸の存在は、別に記載のように測定することができる。例えば、SullivanとClarke、J. Assoc Offic. Agr. Chemists, 38:514-518 (1955)。
【0083】
本発明はまた、低下したポリペプチド活性を有する遺伝子修飾細胞を提供する。細胞および特定のポリペプチドの活性について本明細書において使用される用語「低下した」は、同じ種の同等の細胞中で測定される活性より低いレベルの活性を意味する。例えば酵素活性Xが欠如した特定の微生物は、同等の微生物が少なくとも一部の酵素活性Xを有するなら、低下した酵素活性Xを有すると見なされる。細胞は、特に限定されないが、酵素、転写因子、トランスポーター、受容体、シグナル分子などを含む任意の型のポリペプチドの活性が低下してもよい。例えば細胞は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドの制御配列および/またはコード配列を破壊する外因性核酸分子を含有することができる。ミオイノシトールオキシゲナーゼ発現を破壊することは、D-ミオイノシトールまたは誘導体の蓄積を引き起こす。また低下したポリペプチド活性は、より低いポリペプチド濃度、ポリペプチドのより低い比活性、またはこれらの組合せの結果でもよいことに注意されたい。低下したポリペプチド活性を有する細胞を作成するのに、多くの方法を使用することができる。例えば一般的な突然変異誘発またはノックアウト技術を使用して、破壊された制御配列またはポリペプチドコード配列を有する細胞を作成することができる。例えば、Methods in Yeast Genetics (1997版)、Adams, Gottschling, KaiserおよびSterns、コールドスプリングハーバープレス(1998)を参照されたい。あるいは特定のポリペプチドの活性を低下させるのに、アンチセンス技術を使用することができる。例えばポリペプチドの翻訳を妨害するアンチセンス分子をコードするcDNAを含有する細胞を、作成することができる。本明細書において用語「アンチセンス分子」は、内因性ポリペプチドのコード鎖に対応する配列を含有する任意の核酸分子もしくは核酸類似体(例えばペプチド核酸)を包含する。アンチセンス分子はまた、フランキング配列(例えば制御配列)を有することができる。すなわちアンチセンス分子は、リボザイムまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。リボザイムは、特に限定されないが、ヘアピン、ハンマーヘッド、またはおの頭(ax head)構造を含む任意の一般的な構造を有することができるが、ただし分子はRNAを切断する。
【0084】
活性の低下したポリペプチドを有する細胞は、任意の方法を使用して同定することができる。例えばミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を測定するための実施例に記載のアッセイのような生物学的アッセイを使用して、低下したミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する細胞を同定することができる。
【0085】
ある実施形態において本発明は、低下したミオイノシトールトランスポーター活性を含有する微生物を提供する。低下したミオイノシトールトランスポーター活性を含有する微生物は、イノシトールの存在下でイノシトールおよびイノシトール関連生成物(例えば、ミオイノシトール、メソイノシトール、ヘキサヒドロキシシクロヘキサン、およびビタミンB8)を産生することができる。すなわちイノシトール-1-ホスフェートシンターゼ活性(EC5.5.1.4)は、ミオイノシトールトランスポーター活性が欠如した微生物中ではイノシトールにより制御されない。一般にそのような微生物は、itr1、itr2、opi1、または同様のポリペプチドの活性を低下させることにより産生される。再度、低下したミオイノシトールトランスポーター活性を含有する微生物は、特に限定されないが、突然変異誘発、ノックアウト、およびアンチセンス技術を有する方法により産生することができる。エス・セレビッシェ(S. cerevisiae)のitr1をコードする核酸は、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号D90352に記載され、エス・セレビッシェ(S. cerevisiae)のitr2をコードする核酸は、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)受け入れ番号D90353に記載されている。
【0086】
別の実施形態において本発明は、基質を輸送または産生する能力、または上昇した能力を有する細胞を提供する。これらの細胞はトランスポーター活性(例えばエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)のitr1)および/または上記のイノシトール-1-ホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を有することができる。
【0087】
別の実施形態において本発明は、低下したL-グロネート3-脱水素酵素活性(E.C.1.1.1.45)を有する細胞を提供する。そのような細胞はまた、フィターゼ活性を有するポリペプチド、ホスファターゼ活性を有するポリペプチド(または、異なるホスファターゼ活性を有するポリペプチドの混合物)、および/またはフィターゼ活性を有するポリペプチドとホスファターゼ活性を有するポリペプチドの混合物(または、異なるホスファターゼ活性を有するポリペプチド)を含有することができる。さらにそのような細胞は、フィターゼ活性を有するポリペプチド、ホスファターゼ活性を有するポリペプチド(または、異なるホスファターゼ活性を有するポリペプチドの混合物)、および/またはフィターゼ活性を有するポリペプチドとホスファターゼ活性を有するポリペプチドの混合物(または、異なるホスファターゼ活性を有するポリペプチド)をコードする外因性核酸分子を含有することができる。例えば細胞は、複数のイノシトールポリホスフェートホスファターゼ活性を有するポリペプチド、または複数のイノシトールポリホスフェートホスファターゼ活性を有するポリペプチドをコードする外因性核酸分子を含有することができる。フィターゼ活性、ホスファターゼ活性、および/またはこれらの混合物、ならびに低下したL-グロネート3-脱水素酵素活性を有する細胞は、フィチン酸から上昇したレベルのミオイノシトールを産生するのに使用することができる。
【0088】
8.有機化合物産生と培養法
本発明は、有機化合物の産生方法を提供する。例えば本明細書に記載の方法と材料を使用して、D-グルコース、D-グルコース-1-ホスフェート、D-グルコース-6-ホスフェート、UDP-D-グルコース、D-ミオイノシトール、D-ミオイノシトール-1-ホスフェート、D-グルクロネート、D-グルクロネート-1-ホスフェート、UDP-D-グルクロネート、D-グルクロノ-3,6-ラクトン、L-グロネート、L-グロノ-γ-ラクトン、グルカン酸、およびL-アスコルビン酸を産生することができる。産生される化合物の他の例には、特に限定されないが、L-デヒドロアスコルビン酸、L-スレオニン、および3-デヒドロ-L-スレオニンがある。産生される化合物はD型でもL型でもよいことに注意されたい。さらに、所望の有機化合物が光学的に純粋(例えば純度が約75、80、85、90、95、99、または99.9%)であるように、特定の酵素活性を有するポリペプチドを使用することができる。
【0089】
本明細書に記載の細胞を使用して、特定の有機化合物(例えば、ミオイノシトール、アスコルビン酸、またはグルカン酸)を産生することができる。例えば図1に記載のように、グルコースからアスコルビン酸を産生するのに必要なすべてのポリペプチドを含有する微生物を使用して、アスコルビン酸を産生することができる。あるいは異なる微生物を使用して、特定の有機化合物を産生することができる。それぞれが、グルコースからアスコルビン酸を産生するのに必要な異なるセットのポリペプチドを含有する3つの異なる混合物を使用して、アスコルビン酸を産生することができる。すなわち1つ以上の群の細胞を使用して、特定の有機化合物を産生することができる。
【0090】
さらに、有機化合物を産生するのに、酵素活性を有する精製ポリペプチドを単独または組合せで使用することができる。例えば図1について、工程1〜6を触媒するのに必要なポリペプチドを含有する微生物を使用してグルコースからL-グロノ-γ-ラクトンを産生することができ、一方グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性(EC1.1.3.8)を有する精製ポリペプチドを使用して、L-グロノ-γ-ラクトンをL-アスコルビン酸に変換することができる。特定のポリペプチドを精製するのに任意の方法が使用可能である。例えば酵素活性を有するポリペプチドを精製するのに、サイズ分画、イオン交換、HPLC、および親和性クロマトグラフィーを使用することができる。さらに、精製されたポリペプチドを、固体支持体(例えば、ガラスビーズ、ポリマー構造体、および他のプラスチック)上または溶液中で使用することができる。
【0091】
さらに、酵素活性を有するポリペプチドを含有する無細胞抽出物を単独または精製ポリペプチドおよび/または細胞と組合せて使用して、有機化合物を産生することができる。例えば図1について、工程1〜5を触媒するのに必要なポリペプチドを含有する微生物を使用して、グルコースからLグロネートを産生することができ、一方、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性(EC3.1.1.25)を有するポリペプチドを含有する無細胞抽出物を使用して、L-グロネートをL-グロノ-γ-ラクトンに変換することができ、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性(EC1.1.3.8)を有する精製ポリペプチドを使用して、L-グロノ-γ-ラクトンをL-アスコルビン酸に変換することができる。無細胞抽出物を産生するのには任意の方法が使用できる。例えばフレンチプレス細胞破砕、酵素的溶解、機械的剪断(例えばガラスビーズで)、浸透圧ショック、超音波処理、および/または凍結−融解サイクル繰り返しの次にろ過および/または遠心分離を使用して、完全な細胞から無細胞抽出物を産生することができる。
【0092】
細胞、精製ポリペプチド、および/または無細胞抽出物を使用して、特定の有機化合物が産生され、これは次に化学的に処理されて別の有機化合物を産生することができることに注意されたい。例えば微生物を使用してL-グロノ-γ-ラクトンを産生することができ、一方化学的処理を使用してL-グロノ-γ-ラクトンはL-アスコルビン酸に変換される。そのような化学的処理には、特に限定されないが、ベンズアルデヒド−塩化水素による処理、二酸化マンガンによる酸化、および70パーセント酢酸−水による加水分解がある(CrawfordとCrawford、Adv. in Carbohydrate Chem. Biochem. 37:79-155 (1980))。同様に化学的処理を使用して、特定の有機化合物を産生することができ、これは次に本明細書に記載の微生物、精製ポリペプチド、および/または無細胞抽出物を使用して別の有機化合物に変換される。例えば化学的処理を使用してL-グロノ-γ-ラクトンを産生することができ、一方微生物を使用してL-グロノ-γ-ラクトンはL-アスコルビン酸に変換される。
【0093】
典型的には、特定の有機化合物は、その有機化合物が産生されるように、細胞を提供し、提供された細胞を培地で培養することにより産生される。一般に、培地および/または培養条件は、細胞が充分な密度まで増殖し所望の化合物を効率的に産生するようなものである。
【0094】
大規模な産生プロセスのために、以下の方法を使用することができる。第1に、例えばヘキソースおよび/またはペントース炭素を有する適切な培地を含有する大きなタンク(例えば、50−、100−、200−ガロン、またはそれ以上のタンク)に、特定の細胞の培養物を接種する。接種後、細胞をインキュベートして菌体を産生させる。充分な菌体量に達したら、細胞を含有するブロスを第2のタンクに移す。この第2のタンクははいかなる大きさでもよい。例えば第2のタンクは、第1のタンクの大きさより大きいか、小さいか、または同じでもよい。典型的には第2のタンクは、第1のタンクから追加の培地をブロスに加えられるように、第1のタンクより大きい。さらに第2のタンク内の培地は、第1のタンクで使用されるものと同じかまたは異なってもよい。例えば第1のタンクは、キシロースおよびアラビノースを有する培地を含有することができ、第2のタンクはグルコースを有する培地を含有する。
【0095】
いったん移されると、所望の有機化合物の産生を可能にするために、細胞はインキュベートされる。いったん産生されると、任意の方法を使用して所望の化合物を単離することができる。例えばブロスから菌体を除去するために一般的な分離法を使用することができ、無細胞ブロスから有機化合物を得るために、一般的な単離法(例えば、抽出、蒸留、およびイオン交換法)を使用することができる。さらに、所望の有機化合物が産生されている時に単離するか、または生成物の産生相が停止後にブロスから単離することができる。
【0096】
本明細書に記載の方法と材料は、特に限定されないが、一般的に「連続発酵」および「バッチ発酵」プロセスと呼ばれる任意の型の培養法で応用され使用される。さらに、1回の生産プロセスで使用される細胞は、回収して次の生産プロセスで再使用することができる。例えば細胞を複数回再使用して、所望の有機化合物を産生することができる。さらに任意の炭素源を使用することができる。例えば、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース、ガラクトース、タロース、メリビオース、フィチン酸、ショ糖、果糖、ラフィノース、スタキオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グリセロール、イノシトール、イノシトールとグルコースのような炭素組合せ、デンプン(例えば、糖密、コーンスターチ、およびコムギデンプン)、加水分解物(例えば、トウモロコシ繊維加水分解物、および他のセルロース性加水分解物)を、菌体または所望の有機化合物を産生するための炭素源として使用することができる。さらに、任意の培地を使用することができる。例えば標準的培地(例えば、酵母最小培地、およびYP培地(酵母エキス10g/L、ペプトンブロス20g/L)ならびにコーンスティープ水やコーンスティープリカーのような培地を使用することができる。
【0097】
フィチン酸はミオイノシトールに変換でき、これは次に、本明細書に記載のようにアスコルビン酸に変換される。フィチン酸からアスコルビン酸を産生するのに任意の方法が使用できる。例えば化学的方法を使用してフィチン酸をミオイノシトールに変換し、酵素的方法を使用してミオイノシトールをアスコルビン酸に変換することができる。フィチン酸を含有する任意の物質(例えばコーンスティープリカー)を供給源物質として使用することができる。さらにフィチン酸は、純粋な形または純粋ではない形で使用することができる。ある実施形態においてフィチン酸は、コーンスティープリカーのような溶液から精製され、化学的加水分解によりイノシトールに変換される。この場合、生じるイノシトールを酵素的にアスコルビン酸に変換することができる。
【0098】
溶液からフィチン酸を精製するのに任意の方法が使用できる。例えばコーンスティープリカー、ヘビースティープウォーター、またはライトスティープウォーターのような物質から、液体培地を水酸化カルシウムのようなカルシウム化合物(例えば水酸化カルシウムの15パーセント溶液)で処理することにより、フィチン酸カルシウムを回収することができる。処理後、pHを約6.0に調整してもよい。いったん生成されると、フィチン酸カルシウム生成物は、お湯(例えば50℃の湯)で洗浄しろ過して、不純物を除去することができる。このプロセスは不溶性フィチン酸カルシウムを与え、これはさらにイノシトールに変換することができる。
【0099】
あるいは、フィチン酸を含有する溶液を、例えばUS Patent No. 4,668,813に記載のようなイオン交換樹脂で処理することができる。フィチン酸の樹脂に吸着後、樹脂をお湯(例えば30℃〜85℃の湯)で洗浄し、結合樹脂を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの溶液で処理して、フィチン酸を塩として溶出することができる。フィチン酸を単離するのに使用できる他の方法には、US Patent No. 3,410,929に記載のようにスティープウォーターからフィチン酸を分離する方法がある。簡単に説明すると、ダウケミカルカンパニー(Dow Chemical Company)Retardation 11 A8 樹脂のような樹脂上にスティープウォーターを通過させることができる。スティープウォーターの通過後、樹脂を水で洗浄し、NaCl溶液で洗浄して樹脂からフィチン酸を脱着させる。
【0100】
別の方法を使用して、フィチン酸をイノシトールに変換することができる。例えば別に記載のように(Cosgrove, D.J. "Inositoll Phosphates" Elsevier、アムステルダム、1980、36頁)、フィチン酸を100℃の湯で処理することにより、フィチン酸からイノシトールを作成することができる。あるいは別に記載のように(例えばUS Patent No. 4,668,813)蒸気処理により、または別に記載のように(US Patent No. 5,830,732)酵素処理により、フィチン酸からイノシトールが得ることができる。さらに酵素活性の組合せを使用して、フィチン酸をイノシトールに変換することができる。例えばフィターゼ酵素を使用してフィチン酸をイノシトールモノホスフェートに変換し、生じるイノシトールモノホスフェートを酸性ホスファターゼを使用してイノシトールに変換することができる。
【0101】
本明細書に記載の方法と材料を使用して、フィチン酸またはイノシトールからアスコルビン酸を産生することができる。例えば、(1) フィチン酸をイノシトールにまたはフィチン酸を酸性ホスファターゼ活性に変換することができるフィターゼ活性、(2) ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性、(3) グルクロネート還元酵素活性、(4) ウロノラクトナーゼ活性、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、またはD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性、および(5) グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、グロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性、またはガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、を有するポリペプチドを発現する細胞(例えばサッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae))を使用して、高い割合の例えばコーンスティープリカーを含有する培地(例えば、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上の割合のコーンスティープリカーを含む培地)を用いて微生物を培養することにより、フィチン酸をアスコルビン酸に変換することができる。そのような培地は、コーンスティープリカー(10g/L、乾燥ベース)、硫酸アンモニウム(3g/L)、ビオチン(0.1g/L)、およびグルコース(20g/L)を含有してもよい。あるいは、ミオイノシトールオキシゲナーゼ、グルクロネート還元酵素、ウロノラクトナーゼ、およびグロノ-γ-ラクトンオキシダーゼを有するポリペプチドを含有する細胞を使用して、イノシトールからアスコルビン酸を産生することができる。いったん産生されると、生じるアスコルビン酸を任意の方法を使用して精製することができる。例えば、US Patent No. 6,037,480または6,169,187に記載の方法と材料を使用して、発酵ブロスからアスコルビン酸を精製することができる。あるいは、非精製アスコルビン酸を、供給補足物として直接使用することができる。
【0102】
9.植物と植物細胞の修飾
本発明は、(1) ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチド、(2) ミオイノシトール、および/または(3) アスコルビン酸を産生するための、植物と植物細胞の使用に関する方法と材料を提供する。植物細胞を形質転換するための発現ベクターと方法が本明細書に提供される。これらのベクターは、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするトランス遺伝子が、トランスジェニック植物および/または植物細胞中で過剰発現されるように、設計される。ある実施形態において植物または植物細胞を使用して、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを産生することができ、これは次に精製され、例えばアスコルビン酸の産生におけるin vitro応用で使用することができる。
【0103】
植物細胞および/またはトランスジェニック植物はまた、生じる植物細胞および/またはトランスジェニック植物が、環境ストレスに対する上昇したまたは低下した応答を有するように設計することができる。例えばトランスジェニック植物細胞または植物は、上昇または低下した塩耐性を示すことができる(Nelsonら、Plant Physiology, 119:165-172 (1999);およびNelson, The Plant Cell 10:753-764 (1998))。イノシトール濃度の調節はまた、種子の成長を改変するのに有用である(Yoshidaら、Plant Physiology 119:65-72 (1999))。プロモーターに機能できる形で結合したミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含有する構築体で、植物を形質転換することにより、植物細胞および/またはトランスジェニック植物でミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドの発現を増加させることができる。同様に、内因性ミオイノシトールオキシゲナーゼ発現のダウンレギュレーションを引き起こすアンチセンスまたはセンス配列を含有する構築体で、植物または植物細胞を形質転換することにより、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を低下させることができる(Napoliら、The Plant Cell 2:279-289 (1990) およびUS Patent No. 5,034,323)。ミオイノシトールオキシゲナーゼ発現をアップレギュレートするかまたはミオイノシトールオキシゲナーゼ発現をダウンレギュレートする構築体を、以後本明細書において調節性構築体と呼ぶ。
【0104】
ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列がいったん産生されると、標準的方法を使用してトランスジェニック植物中で配列を発現することができる。基本的なアプローチは、植物細胞中で核酸配列の発現を指令する1つ以上の制御配列(例えばプロモーター)に機能できる形で結合するように、核酸配列を形質転換ベクター中でクローン化することである。次に、多くの方法の1つ(例えばバイオリスティクス)により形質転換ベクターを植物細胞中に導入し、植物全体を細胞から再生し、そして導入された核酸配列を含有する子孫植物が選択される。形質転換ベクターのすべてまたは一部は、植物細胞のゲノム中に安定に組み込むことができる。植物細胞中に組み込まれ、導入された配列と発現を制御するための関連配列(導入された「トランス遺伝子」)を含有する形質転換ベクターの部分は、組換え発現カセットと考えられる。
【0105】
改変表現型の検出に基づいて、導入されたトランス遺伝子を含有する子孫植物を選択することができる。そのような表現型は、形質転換ベクター中に取り込まれた優勢選択マーカー遺伝子の含有の結果としての、化学的物質(例えば抗生物質)に対する耐性の上昇でもよい。
【0106】
クローン化核酸配列を用いる形質転換による植物の特徴の修飾の成功例は、技術文献および科学文献に豊富に存在する。本技術分野の知識を例示する選択された例には、US Patent No. 5,571,706; 5,677,175; 5,510,471; 5,750,386; 5,597,945; 5,589,615; 5,750,871; 5,268,526; 5,780,708; 5,538,880; 5,773,269; 5,736,369; および5,610,042がある。これらの例には、形質転換ベクター選択、形質転換法、および導入されたトランス遺伝子を過剰発現するように設計された構築体の構築を含む。
【0107】
調節性構築体は、多様な植物種中に導入することができる。これらの植物は、単子葉植物、双子葉植物、または裸子植物でもよい。すなわち例えばミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を、特に限定されないが、トウモロコシ、コムギ、イネ、オオムギ、ダイズ、綿、ビーンズ一般、セイヨウアブラナ/カノーラ、アルファルファ、アマ、ヒマワリ、ベニバナ、アブラナ、綿、タバコ、アマ、ピーナツ、クローバー、ササゲ、グレープのような植物種;レタス、トマト、ヒョウタン、カッサバ、ポテト、ニンジン、ダイコン、エンドウ、レンズマメ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリ、メキャベツ、トウガラシのような野菜;ミカン、リンゴ、ナシ、桃、アプリコット、クルミのような木の果実;ベイマツやテーダマツのようなモミの木、およびカーネーションやバラのような花を、含む植物種に導入することができる。
【0108】
植物細胞の安定なトランスフェクションに適した、またはトランスジェニック植物の樹立に適した多くの組換えベクターが記載されており、Pouwelsら(Cloning Vectors: A Laboratory Manual, 1985, 増刊、1987);WeissbachとWeissbach(Methods for Plant Molecular Biology, アカデミックプレス(Academic Press)、5:173-184, 1989);およびGelvinら(Plant Molecular Biology Manual, クルワーアカデミックパブリッシャーズ(Kluwer Academic Publishers), 1990)に記載のものがある。典型的には植物形質転換ベクターは、5'および3'制御配列の転写制御下の1つ以上のクローン化配列と優勢選択マーカーを含む。そのような植物形質転換ベクターはまた、典型的にはプロモーター制御領域(例えば、誘導性もしくは構成性、環境的もしくは成長的に制御された、または細胞もしくは組織特異的発現を制御する制御領域)、転写開始部位、リボゾーム結合部位、およびRNAプロセシングシグナル、転写停止部位、および/またはポリアデニル化シグナルを含有する。トランス遺伝子を発現するのに使用できる構成性植物プロモーターの例には以下がある:カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、これは、ほとんどの植物組織で構成性の高レベル発現を付与する(例えばOdelら、Nature, 313:810 (1985); Dekeyserら、Plant Cell, 2:591 (1990); TeradaとShimanoto, Mol. Gen. Genet. 220:389 (1990); およびBenfeyとChua, Science, 250:959-966 (1990));ノパリンシンターゼプロモーター(Anら、Plant Physiol. 88:547 (1988); オクトピンシンターゼプロモーター(Frommら、Plant Cell, 1:977 (1989); および 翻訳増強配列を有する2x CaMN/35Sプロモーター(Kayら、Science, 236:1299-1302 (1987)を参照)。
【0109】
環境、ホルモン、化学的、および/または成長シグナルに応答して制御される種々の植物遺伝子プロモーターはまた、植物細胞中のトランス遺伝子の発現に使用でき、以下により制御されるプロモーターがある:(a) 熱(Callisら、Plant Physiol. 88:965 (1988); Ainleyら、Plant Mol. Biol. 22:13-23 (1993); およびGilmartinら、The Plant Cell. 4:839-949 (1992));(b) 光(例えばエンドウrbcS-3Aプロモーター、Kuhlemeierら、Plant Cell, 1:471 (1989)、およびトウモロコシrbcSプロモーター、SchaffnerとSheen, Plant Cell, 3:997 (1991));(c) ホルモン、例えばアブシジン酸(Marcotteら、Plant Cell, 1:471 (1989));(d) 傷(例えばポテトPinIIプロモーター(Keilら、Nucleic Acids Res. 14:5641-5650 (1986))、アグロバクテリウム(Agrobacterium)masプロモーター(Langridgeら、Bio/Technology 10:305-308 (1989))、およびグレープバインvst1プロモーター(Weiseら、Plant Mol. Biol. 26:667-677 (1994));および(e) メチルジャスモネート(methyl jasmonate)またはサリチル酸のような化学物質(Gatzら、Plant Mol. Biol. 48:89-108 (1997))。
【0110】
あるいは、組織特異的(例えば根、葉、花、および種子)プロモーター(Carpenterら、The Plant Cell 4:557-571 (1992); Denisら、Plant Physiol 101:1295-1304 (1993); Oppermanら、Science 263:221-223 (1993); Stockhauseら、The Plant Cell 9:479-489 (1997); Roshalら、The EMBO J. 6:1155 (1987); Schernathanerら、EMBO J. 7:1249 (1988); Yamamotoら、Plant Cell 3:371-382 (1990);およびBustosら、Plant Cell 1:839 (1989))をコード配列に融合させて、各臓器で具体的な発現を得ることができる。
【0111】
植物形質転換ベクターはまた、トランス遺伝子中のORF配列の上流または下流に置くことができるRNAプロセシングシグナル(例えばイントロン)を含有することもできる。さらに発現ベクターはまた、植物遺伝子の3'非翻訳領域(例えばmRNAのmRNA安定性を上昇させるための3'停止領域、例えばポテトのPI-II停止領域、またはノパリンシンターゼ(NOS)3'停止領域のオクトパイン)からの追加の制御配列を含むこともできる。
【0112】
植物形質転換ベクターはまた、形質転換体の即時選択を可能にする優勢選択マーカー遺伝子を含有することもできる。そのような遺伝子には、抗生物質耐性遺伝子(例えばヒグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、G418、ストレプトマイシンまたはスペクチノマイシンに対する耐性)および除草剤耐性遺伝子(例えばホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)をコードするものがある。
【0113】
単子葉植物細胞と双子葉植物細胞の形質転換と再生は、現在はルーチン法であり、実験者が適切な形質転換法を決定することができる。方法の選択は、形質転換される植物の型により変化し、ある型の植物についての具体的な方法の適切性を、当業者は認識するであろう。適当な方法には、特に限定されないが、植物プロトプラストの電気穿孔法、リポソーム介在形質転換、ポリエチレングリコール(PEG)介在形質転換、ウイルスを使用する形質転換、植物細胞の微量注入法、植物細胞の微量噴射衝撃、真空浸潤、およびアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(AT)介在形質転換がある。植物を形質転換し再生する典型的な方法は、上記の特許に記載されている。
【0114】
形質転換ベクターによる植物の形質転換と再生後に、形質転換植物は通常、形質転換ベクター中に取り込まれた優勢選択マーカーを使用して選択される。典型的にはそのようなマーカーは、形質転換植物の苗木に抗生物質耐性を付与し、形質転換体の選択は、苗木を適切な濃度の抗生物質に暴露することにより行われる。
【0115】
10.治療用途
ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、植物、哺乳動物(例えばヒト)、および酵母を含む多くの真核生物で、ミオイノシトールをグルクロン酸に変換することができる。この酵素活性は、糖尿病の動物の腎臓では異常であることがわかっており、過剰量のイノシトールが尿中に分泌される。異常イノシトールレベルはまた、多くの他の臨床的な異常に関連している(表1)。
【表1】
Figure 2004536577
【0116】
ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドの同定は、異常レベルのイノシトールが検出される治療用途(上記参照)で、酵素とその変種の使用を可能にする。異常イノシトールレベルは、対照群から予測される範囲のイノシトールレベルの外にあるイノシトールレベルを特徴とする。異常なイノシトールレベルは対照群より高いかまたは低い。多くの場合に対照群は、正常な健常集団からのランダムサンプリングである(すなわち、異常イノシトールレベルに関連することが疑われる疾患の外見を示さない集団)。
【0117】
本明細書にように、アンチセンス技術とミオイノシトールオキシゲナーゼ結合物質を使用して、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を低下させることができ、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性の上昇が所望の場合、治療薬として提供することができる。
【0118】
ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドまたはその変種は、医薬組成物中に取り込むことができる。動物への投与のために、精製ミオイノシトールオキシゲナーゼポリペプチドまたはその変種は、一般に薬剤学的に許容される担体と組合わされる。医薬調製物は、1つのタイプのミオイノシトールオキシゲナーゼポリペプチドのみを含有するか、または種々のミオイノシトールオキシゲナーゼポリペプチドの組合せを含有することができる。一般に担体の性質は、使用される具体的な投与法に依存する。例えば非経口製剤は通常、薬剤学的かつ生理学的に許容される液体(例えば、水、生理食塩水、バランス塩、溶液、水性デキストロース、グリセロール、ヒトアルブミンなど)をビヒクルとして含む注射溶液を含有する。固体組成物(例えば散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤型)の従来の非毒性固体担体には、例えば医薬グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムがある。生物学的に中性の担体以外に、投与される医薬組成物は、少量の非毒性補助物質(例えば湿潤剤または乳化剤、保存剤およびpH緩衝剤など、例えば酢酸もしくはソルビタンモノラウレート)を含有してもよい。
【0119】
本明細書に記載の治療組成物は、任意の経路で投与することができる。例えばミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを含有する組成物は、皮下投与されるかまたは経口摂取により投与することができる。さらに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを含有する組成物は、持続放出性組成物として調製することができる。持続放出性製剤は、ポリペプチドを生体適合性マトリックス(例えばコレステロール)と組合せることにより産生される。ポリペプチド医薬の別の可能な投与法は、ミニ浸透圧ポンプの使用による。上記したように生体適合性担体はまた、この送達方法とともに使用することができる。
【0120】
ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドは、次に宿主細胞によりポリペプチドが翻訳されるように、ポリペプチドをコードする核酸を導入することにより、細胞に送達することができる。これは、例えばウイルスベクターまたはリポソームの使用により行われる。リポソームはポリペプチド自体の送達にも使用可能である。
【0121】
ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードする核酸は、他の治療薬とともに送達することができる。これらの追加の治療薬は、治療効果を増強するのに使用することができる。追加の治療薬の例には、特に限定されないが、ホルモン、抗炎症剤、および抗生物質がある。
【0122】
本明細書に記載の医薬組成物は、その目的を達成するための任意の手段により投与することができる。疾患の治療分野の当業者は、医薬組成物の投与量と投与法を容易に決定することができる。これらの症状の治療に使用するために、記載のポリペプチドはイノシトールレベルを制御するのに有効な量で投与することができる。記載のポリペプチドは、in vivo、例えば静脈内投与または腹腔内投与のような全身性投与により宿主に投与することができる。また、記載のポリペプチドは、局所的に(すなわち、患部に直接注入)投与してもよい。
【0123】
ミオイノシトールオキシゲナーゼベースの治療薬による治療の有効な投与量は、治療すべき症状の性質と重症度、患者の年齢と症状、および他の臨床的要因に依存して変化する。すなわち、適切な治療法の決定は担当の医師により行われる。典型的には投与量範囲は、約0.1μg/kg体重〜約100mg/kg体重であろう。他の適切な範囲には、特に限定されないが、約1μg/kg〜10μg/kg体重がある。投与スケジュールは、多くの臨床的要因(例えば治療に対する患者の感受性)に依存して、週1回〜毎日の範囲で変動してもよい。投与スケジュールの例は、3μg/kgを週2回、週3回、または毎日;7μg/kgを週2回、週3回、または毎日;10μg/kgを週2回、週3回、または毎日;または30μg/kgを週2回、週3回、または毎日投与する。より重症の疾患の場合は、上記のような用量を、静脈内またはくも膜下経路を含む交互の経路により投与することが好ましいこともある。連続的注入も使用できる。
【0124】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を決して限定するものではない。
【実施例1】
【0125】
実施例
実施例1−ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸のクローニング
1.概説
クリプトコッカス・テレウス(Cryptococcus terreus)(ATCC#11799)のミオイノシトールオキシゲナーゼ(MIO)活性を有するポリペプチドを、イオン交換クロマトグラフィーを使用して部分的に精製した。この部分精製した調製物を、1次元または2次元SDS-PAGEによりさらに精製した。候補の可能性のあるバンドとスポットを注意深く切り取り、ペプチド分離(μLC/MS/MS)と配列分析のためにin situ消化に付した。両方の分析により、未知の機能を有するプレウロツス・オストレアツス(Pleurotus ostreatus)(受け入れ番号6934670)からの推定ポリペプチドの発現配列タグ(EST)と相関する配列が明らかになった。ピー・オストレアツス(P. ostreatus)の全EST配列を使用して、ジーンバンク(GenBank)(登録商標)のBLASTNとBLASTX検索により、広範囲の生物で推定の同族体が存在することが明らかになった。ピー・オストレアツス(P. ostreatus)配列との1つの一致は、EMBL:CAB63064.1またはEMBL:AL096767と呼ぶホモサピエンス(Homo sapiens)ORFであった。エイチ・サピエンス(H. sapiens)配列と高い類似性を有する他の翻訳配列との整列を示す(図7)。
【0126】
オクアホマ大学のシーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)H99EST配列データベースに対して、ピー・オストレアツス(P. ostreatus)およびホモサピエンス(Homo sapiens)翻訳配列ならびにシーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)ポリペプチド断片(C.J. Rosario、MS論文、カリホルニア州立大学、ロングビーチ)のアミノ末端アミノ酸配列を使用するBLAST探索により、若干の類似性を有するcDNA配列の5'と3'領域を含有するEST配列が得られた。これらの領域から設計されたプライマーを使用して、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)B3501株(配列番号1)の以下の完全長cDNA配列を単離した:
Figure 2004536577
Figure 2004536577
2.方法
バイオラッド(BioRad)プロテインアッセイ(Protein Assay)と製造業者のマイクロアッセイプロトコールを使用して、ポリペプチド濃度を推定した。標準曲線作成のために、ウシガンマグロブリンを使用した。このアッセイは、Bradford色素結合法(Bradford, M., Anal. Biochem., 72:248 (1976))に基づく。クロマトグラフィー画分中のポリペプチド含量は、280nmでの吸光度測定値により推定した。
【0127】
バイオラッド(BioRad)Protean 3 ミニゲルシステムとプレキャストSDS-PAGEゲル(4〜15%および12%)またはProtean 3 xiシステムと16cm×20cm×1mm SDS-PAGEゲル(12.5%)キャストを使用して、製造業者のプロトコールに従って、電気泳動を行った。製造業者の説明書に従って、25mMトリス塩酸(pH8.3)、192mMグリシン、および0.1%SDSのランニングバッファーをゲルに流した(Laemmliバッファーシステム:Laemmli, Nature 22:680 (1970))。
【0128】
ミオイノシトールで置換したセファロース6Bを使用して、親和性クロマトグラフィーを行った。製造業者の説明書に従って、ミオイノシトールをエポキシ活性化セファロース6B充填物質(アマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech))に共有結合させた。簡単に説明すると、2gの凍結乾燥エポキシ活性化セファロース6Bを水の中で15分間膨潤させ、焼結ガラスフィルター上で水で繰り返し洗浄した。膨潤し洗浄した充填物質を、0.4Mミオイノシトールを含有する10mlの10mM NaOHに懸濁した。静かに振盪しながら混合物を25℃で20分間インキュベートした。1リットルの水で洗浄して過剰のリガンドを除去し、残存する活性基を、1Mエタノールアミン(pH8.0)で40℃で4時間インキュベートしてブロックした。次に生成物を水で完全に洗浄し、pHを3サイクル変化させた。低pH洗浄液は、0.5MのNaClを有する0.1M酢酸バッファー(pH4.0)からなり、高pHバッファーは0.5MのNaClを有する0.1Mトリス塩酸(pH8.0)をからなっていた。この操作により、遊離のリガンドは固定化リガンドにイオン結合しなかった。最終生成物を、50mMのTEGバッファー(50mMトリス塩酸(pH7.0)、0.5mM EDTA、100mg/Lグルタチオン)に懸濁し、4℃で保存した。
【0129】
2次元SDS-PAGE分析のために、50μl中の約400〜1000μgの総ポリペプチドを調製した。ポリペプチド試料をSDS沸騰バッファーに再懸濁し、95℃で10分間加熱した。SDS沸騰バッファーは、5% SDS、5% BME、10%グリセロール、および60mMトリス塩酸(pH6.8)を含有した。O'Farrellの方法(J. Biol. Chem. 250:4007-4021 (1975))に従って、2次元電気泳動を行った。内径2.0mmのガラス管を用いて、2% pH4〜8アンホライン(Gallard-Schlessinger、ガーデンシティ、ニューヨーク州)を使用して、9600ボルト時間で等電点電気泳動を行った。この電気泳動工程で、ポリペプチドからポリペプチド試料中のSDSが除去された。50ngのIEF内部標準物質(トロポミオシン)を、各サンプルに加えた後にのせた。表面pH電極を使用してpH勾配プロットを作成し、これを使用して、種々のポリペプチドのおよそのpI値を計算した。
【0130】
SDSサンプルバッファー(10%グリセロール、50mMジチオスレイトール、2.3% SDS、および0.0625Mトリス(pH6.8))中で平衡化後、各チューブのゲルをスタッキングゲルの上に密封したが、これは10%アクリルアミドスラブゲル(0.75mmの厚さ)を重層する。SDSスラブゲル電気泳動を、12.5mA/ゲルで約4時間行った。以下のポリペプチドは、シグマケミカル社(Sigma Chemical Company)(セントルイス、ミズーリ州)から得て、チューブゲルをスラブゲルに密封するアガロースに分子量標準物質として加えた:ミオシン(220,000)、ホスホリラーゼA(94,000)、カタラーゼ(60,000)、アクチン(43,000)、カーボニックアンヒドラーゼ(29,000)、およびリゾチーム(14,000)。酸性側を左にして、透明シートの間でゲルを乾燥した。
【0131】
各サンプルについて二重測定でゲルを使用して、各ゲルをレーザーデンシトメーター(モデルPDSI、マレキュラーダイナミクスインク(Molecular Dynamics Inc.)、サニーデール、カリホルニア州)を用いてスキャンした。スキャニングの前に、Neutral Density Filter Set(メレスグリオト(Melles Griot), Irvine, カリホルニア州)を用いて直線性についてスキャナーをチェックした。主要なスポットとすべて変化するスポットが、すべてのゲル上で輪郭が描かれ、定量され、マッチングさせられるように、Phoretix2D Fullソフトウェア(バージョン5.01)を使用して画像を解析した。あるゲルではポリペプチドスポットが欠失しており、別のゲルに存在する場合、マッチングを容易にするためにバックグランドの狭い領域におよその輪郭を描いた。これらの対のコンピューター解析の一般的な方法には、自動スポット検出と定量、自動バックグランドサブトラクション(境界の最小値)、および自動スポット検出とマッチング関数の詳細なマニュアルチェックを組合せた自動スポットマッチングがある。Phoretixソフトウェアを使用して、各サンプルについて平均ゲルを作成した。
【0132】
スポット割合(スポットの積分密度(容量)に等しい)を、測定したすべてのスポットの総密度のパーセントとして表した。異なるサンプルで一致したスポットの間の差を、以下の式に従ってPhoretixソフトウェアを使用して平均スポットパーセントから計算した:
差=(1−平均スポット%サンプルx/平均スポット%サンプルref)(-100)
各スポットについて分子量とおよそのpI値を、参照画像に適用したアルゴリズムから測定した。
【0133】
ポリペプチド単離と配列決定のために、SDS-PAGEゲルについて新鮮なバッファーと染色溶液を毎日調製した。1次元SDS-PAGEについては1mmのゲル厚さを使用し、2次元SDS-PAGEについては0.75mmを使用した。クマシーブルー(バイオラッド(BioRad)カタログ#161-0436)を用いてゲルを短時間染色し、次に脱色してバックグランドを清澄化した。過剰の染色されていないゲルが存在しないように、ポリペプチドバンドを切り出した。ポリペプチドの無い等しい面積のゲルを、陰性対照として切り出した。あらかじめHPLCグレードの水中の50%アセトニトリルで洗浄し、50%アセトニトリルで2回洗浄した無着色の微量遠心分離管にゲルスライスを入れ、分析するまでドライアイス上に置いた。
【0134】
ポリペプチドサンプルをトリプシンでin-situ酵素消化後に、生じたポリペプチド断片をマイクロ毛細管逆相HPLCで分離した。HPLCは、Finnigan LCQ 四極子イオン捕捉質量スペクトル計(μLC/MS/MS)のナノ電子噴霧イオン化源に直接つないだ。個々の配列スペクトル(MS/MS)は、クロマトグラフィー実験で分離された複数のポリペプチド断片について高感度でオンラインで採取した。ポリペプチド断片のMS/MSスペクトルを、ワシントン大学で開発されたアルゴリズムSequest(Engら、J. Am. Chem. Soc. Mass Spectrom. 5:976 (1994))と別に記載のプログラム(Chittumら、Biochemistry 37:10866 (1998))を使用して、既知の配列と相関させた。既知のポリペプチドとの一致と忠実度のマニュアル確認について、結果を再検討した。
【0135】
3.クリプトコッカス・テレウス(Cryptococcus terreus)の増殖と細胞抽出物の分析
シーアール・テレウス(Cr. terreus)(ATCC11799)を、30℃で酵母窒素ベース(YNB)(6.7g/L)、酵母エキス(0.3%)、0.1Mリン酸ナトリウム、およびミオイノシトール(1%)、グルコース(1%)、または追加の炭素源無しからなる培地で振盪して培養した。ミオイノシトール(1%)、グルコース(1%)、または追加の炭素源無しのYM培地(0.3%酵母エキス、0.3%麦芽エキス、0.5%ペプトン)を用いて、同様の培養実験を行った。50mlの一晩培養物からのペレットを、50mMのTEGGPバッファー(50mMトリス塩酸(pH7.0)、0.5mM EDTA、100mg/Lグルタチオン、5%グリセロール、およびプロテアーゼインヒビターカクテル(「完全」カクテル、10mlにつき錠剤1つ;ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)))で洗浄し再懸濁した。洗浄した細胞ペレットを19,000psiのスペクトロニック(Spectronic)フレンチ圧セル(ミニセル)に3回通過させ、次に20,000xgで45分間遠心分離して、細胞抽出物を調製した。分析を妨害する可能性のある細胞抽出物の低分子量成分を除去するために、あらかじめ50mMのTEGGPバッファーで平衡化させたファルマシア(Pharmacia)PD-10カラム(9.1ml)に、清澄な上清(遠心分離後)を適用した。同じバッファーを使用して、これらのディスポのゲルろ過カラムからポリペプチドを溶出させた。溶出液を、MIO活性について測定した。
【0136】
MIO活性は、Reddyら(J. Biol. Chem. 256:8510 (1981))が記載した方法を改変して測定した。簡単に説明すると、このアッセイは、オルシノール(5-メチル1,3-ベンゼンジオール)と、MIO酵素反応生成物であるD-グルクロン酸との反応に基づく。標準的アッセイ混合物は、総量0.50ml中に50mMトリス塩酸(pH8.0)、2.0mMシステイン、1.0mM硫酸第一鉄アンモニウム、60mMミオイノシトール、および適当料の酵素を含有した。ストックL-システイン溶液(0.10M)は2週間毎に調製し、ストック硫酸第一鉄アンモニウム溶液(0.50M)は毎日新たに調製した。酵素溶液は、記載のように調製した細胞抽出物、または酵素の部分精製で生成したクロマトグラフィー画分からなった。基質ミオイノシトール(0.50Mのストック溶液、50mMのTEGGに溶解)を添加して反応を開始する前に、すべての他の試薬を、ボルテックス混合し37℃で5分インキュベートすることにより混合した。次に基質を加えてアッセイを開始した。成分をボルテックス混合後、30℃の空気雰囲気中で200rpmで10分振盪して反応を行った。75μlの20%トリクロロ酢酸を加えて、反応を停止させた。ボルテックス混合後、アッセイ混合物を1.5mlのポリプロピレン微量遠心分離管に移し、沈殿したポリペプチドを21,000×gで25℃で3分遠心分離した。上清を新しい1.5mlのポリプロピレン微量遠心分離管に移し、D-グルクロン酸濃度をオルシノール比色アッセイにより測定した。
【0137】
オルシノール比色測定法は以下のように行った。新たに調製したオルシノール試薬(濃塩酸中0.6ml;0.4%(w/v)オルシノール、0.09%(w/v)三塩化第二鉄6水塩)を、0.3mlのきれいな上清に加えた。混合物をボルテックス混合し、次に沸騰水浴中で30分間インキュベートした。25℃に冷却後、混合物を21,000×gで3分間遠心分離して清澄化した。上清をディスポのキュベットに移し、660nmで吸光度を測定した。酵素画分をD-グルクロン酸(0〜40μg/ml)と反応させ、上記したようにアッセイを行って、標準曲線を作成した。典型的な実験では、イノシトールを炭素源として培養したクリプトコッカス・テレウス(Cryptococcus terreus)中のMIOの比活性(生成したμgグルクロン酸/mgタンパク質/10分間インキュベーション)は、グルコース上で培養した時3.9対1.1であった。
【0138】
すべての反応は二重測定で行い、すべてのポリペプチド画分は、ミオイノシトール基質有りまたは無しで測定した(基質が有るかまたは無い等量のTEGGを加えてアッセイを開始した)。基質無しで行ったアッセイ混合物の吸光度読み値の平均を、基質を含有するアッセイ混合物の読み値の平均から引いた。値の差を使用して、10分間で生成したμgD-グルクロン酸/mgポリペプチドとして、比活性を計算した。
【0139】
シーアール・テレウス(Cr. terreus)からの細胞抽出物を、細胞をミオイノシトール対グルコースで増殖させた時の濃縮ミオイノシトールオキシゲナーゼ(MIO)活性について測定した。これらの細胞抽出物を、上記したように2次元ポリアクリルアミド電気泳動のサブトラクティブコンピューター解析により解析した。
【0140】
シーアール・テレウス(Cr. terreus)11799細胞抽出物の2次元SDS-PAGEコンピューター解析の結果は、シーアール・テレウス(Cr. terreus)細胞をイノシトールの存在下で培養すると約4つのポリペプチドの群が誘導されることを明らかにした。これらのポリペプチドに、124、125、126および117と番号を付けた。これらのスポットの2つ以上はそのサイズとpI値が小さいため、同じポリペプチドのアイソザイムかも知れない。4つのポリペプチドの分子量の範囲は34〜36kDaであり、そのpIの範囲は5.67〜5.95であった。
【0141】
4.MIO活性を有するシーアール・テレウス(Cr. terreus)からのポリペプチドの部分精製
シーアール・テレウス(Cr. terreus)(ATCC11799)を、炭素源としてイノシトールを有するYNB培地で一晩培養した(26℃で振盪、650nmでの最終吸光度は約1)。細胞の培養後のすべての操作は、特に明記しない場合は1〜4℃で行った。1.5リットル培養物からの細胞を、12,000×gで10分間遠心分離し、2×200mlの10mM TEGGバッファー(10mMトリス塩酸(pH7.0)、0.5mM EDTA、100mg/Lグルタチオン、および5%グリセロール)で洗浄し、洗浄と洗浄の間には遠心分離して細胞をペレットにすることにより、採取した。洗浄した細胞(24.2gの湿細胞重量)を、プロテアーゼインヒビターカクテル(「完全」プロテアーゼインヒビターカクテル錠剤、10mlのバッファーにつき錠剤1つ;ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))を含有する20mlの10mM TEGGPバッファーに再懸濁し、25,000psiのスペクトロニック(Spectronic)フレンチ圧セル(40K)に3回通過させて細胞を破砕した。20,000xgで45分間遠心分離して細胞破片を除去し、ペレットを捨てた。あらかじめ20mlの10mMのTEGGPバッファーで、次に5mlの10mM TEGGPバッファーで平衡化させたファルマシア(Pharmacia)のディスポのPD-10カラム(カラム当たり2.5mlの抽出物をのせた)で分離して脱塩した。ポリペプチド画分を、カラム当たり3.5mlの10mM TEGGPバッファーで溶出させた(総量=42ml)。
【0142】
得られる細胞抽出物を、あらかじめ10mM TEGGバッファーで平衡化させたバイオラッド(Bio-Rad)UnoQ(6ml)カラムに3回のランで適用した。陰イオン交換カラムを30mlの10mM TEGGで洗浄し、10mM TEGGバッファー(50ml)中0〜400mMのNaClの線形勾配、次に2.0M NaCl(12ml)までのステップ勾配により溶出した。溶出の流速は1ml/分であり、5mlの画分を集めた。画分を、上記したようにMIO-オルシノールアッセイ法を使用して測定した。正確な活性結果を得るために、UnoQクロマトグラフィーからの各画分を脱塩した後、上記したように測定した。MIO活性を有すると測定された画分をプールした。
【0143】
活性のある脱塩したポリペプチド画分を、10mM TEGGバッファーであらかじめ平衡化したイノシトールセファロースカラム(1×10cm)で分離することによりさらに精製した。親和性カラムを25mlの同じバッファーで洗浄し、10mM TEGGバッファー(24ml)中0〜200mMのNaClの線形勾配、次に500mM NaCl(7ml)までのステップ勾配により溶出した。MIO−オルシノールアッセイ法を使用して活性を有すると測定されたポリペプチド画分をプールし、4℃で保存した。1.5リットルの細胞培養物から出発した典型的な調製物の結果を表2に示す。産生したグルクロネートの量をサンプルの総ポリペプチドで割って、比活性を計算した。精製中のMIOポリペプチドの相対的純度を、1次元ゲル電気泳動上のバンドの相対的強度により、推定した。
【表2】
Figure 2004536577
【0144】
5.ポリペプチド配列決定
バイオラッド(Bio-Rad)UnoQカラム(6ml)上のイオン交換クロマトグラフィーを使用して部分的に精製したMIO活性を有するシーアール・テレウス(Cr. terreus)(ATCC#11799)からのポリペプチドサンプルを、16cm×20cm×1mmの12.5%スラブゲルを使用する1次元SDS-PAGEによりさらに精製した。クマシーブルーでゲルを短時間染色し、分子量が約35kDaに対応するバンドを切り出し、上記したように配列決定した。
【0145】
3つのMS/MSスペクトルから3つのコンセンサス配列を同定し、以下のようにマニュアル法で確認した:DGKPEWMQVTGLVHDLGK(配列番号2);DGKPEWM*QVTGLVHDLGK(配列番号3);およびYHSFYPWHR(配列番号4)。これらの3つの配列は、プレウロツス・オストレアツス(Pleurotus ostreatus)(オイスター・マッシュルーム(Otster mushroom)としても知られている)からの未知の機能を有する推定のポリペプチドと相関した。
【0146】
バイオラッド(Bio-Rad)UnoQカラム上のイオン交換クロマトグラフィーとイノシトール−セファロースを使用する親和性クロマトグラフィーにより部分精製した、MIO活性を有するシーアール・テレウス(Cr. terreus)(ATCC#11799)からのポリペプチドサンプルを、2次元電気泳動を使用してさらに分離した。これらのゲルのスポットは、上記したように制限サブトラクティブコンピューター解析に付したシーアール・テレウス(Cr. terreus)細胞抽出物の2次元ゲルからのスポットと相関した。これらのスポットの1つ(細胞抽出物ゲルの#117;MW=35,700Da;pI=5.95)が、部分的精製MIOサンプルのゲル中で最も多く、配列解析に選択した。ゲルからこのスポットを切り出し、in situ消化、ペプチド分離(μLC/MS/MS)、および配列解析のために上記したように処理した。以下の2つの顕著なコンセンサス配列が同定された:DGKPEWMQVTGLVHDLGK(配列番号2)とYHSFYPWHR(配列番号4)。これらの配列は、1次元電気泳動により分離された部分精製サンプルから得られたものと同一であった。
【0147】
これらのポリペプチドサンプルから得られたデータは、プレウロツス・オストレアツス(Pleurotus ostreatus)からのESTクローン(gi:6934670)の部分配列との配列類似性を明らかにした。全ピー・オストレアツス(P. ostreatus)ESTを鋳型として、公の遺伝子配列データベースの検索を行い、広範囲の生物の推定されるMIO同族体を検索した。BLASTNとBLASTX検索により、いくつかの完全長同族体が明らかになった。ピー・オストレアツス(P. ostreatus)ESTと最も高い類似性を有する配列は、ピヌス・ラジアータ(Pinus radiata)からの217アミノ酸の推定のポリペプチド(ラジアータマツ(Monterey pine);gi:293552;Eスコア 7e-57)であった。また検索により、アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana)からの3つのORF(シロイヌナズナ;gb:AAF43953.1;gb:AAC62136.1;gb:pir:T06010)、ホモサピエンス(Homo sapiens)からの2つのORF(ヒト;gb:AAF25204.1;emb:CAB63064.1)、およびラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)からの1つのORF(ラット;gb:AAF25203.1)が明らかになった。ムス・ムスクルス(Mus musculus)(マウス)ならびにイネとトマトESTデータベース中で、他の配列が同定された。エー・タリアーナ(A. thaliana)配列の1つ(gb:AAC62136.1)はイントロンを含有し、配列を修正してこの領域を欠失させた。図7は、ピヌス・ラジアータ(Pinus radiata)配列と配列類似性を共有するいくつかの配列の整列である。
【0148】
6.核酸クローニング
オクアホマ大学のシーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)(H99株)EST配列データベースに対して、ピー・オストレアツス(P. ostreatus)とホモサピエンス(Homo sapiens)翻訳配列ならびにシーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)ポリペプチド断片のアミノ末端アミノ酸配列(C.J. Rosario, MS論文、カリホルニア州立大学、ロングビーチ)を使用してBLAST検索を行った。1つのESTは、アミノ末端領域を含むすべての3つの配列と配列類似性を示した。このクローン(a7e05cn.r1とa7e05cn.f1と呼ぶ)の5'と3'領域を用いる整列解析により、推定の開始コドンと停止コドンが同定された。これらの配列からプライマーを設計し、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)からの全DNA配列を単離するのに使用した。具体的には、pET30a(ノバゲン(Novagen))とpYES2(インビトロゲン(Invitrogen))へのクローニングのために、以下のPCRプライマーを設計した:5'-GGCCGGTACCATGGACGCTCCCGAAGTCAA-3'(配列番号5:両方のベクターについて5'プライマー)、5'-CGCCTCGAGCTACCACTGCACCTCCTCAG-3'(配列番号6:pET30について3'プライマー)、および5'-GGGCTCTAGACTACCACTGCACCTCCTCAG-3'(配列番号7:pYES2について3'プライマー)。制限部位に下線を引き、開始コドンと停止コドンは太字とした。
【0149】
pET30aクローニングのためのmio挿入体とベクターの両方をNcoIとXhoIで消化した後、Roche Rapid DNA Ligation Kitを使用して連結した。mio挿入体とpYES2をKpnIとXbaIで消化し、Roche Rapid DNA Ligation Kitを使用して連結した。酵素KpnIは、無傷のコザック配列(酵母リボゾーム結合部位)を残す。コザック配列の一部を操作して、コード配列の4つ目のbpに変化(CからG)を加えた。シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)のmio核酸を、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)cDNAライブラリー(B3501株;ストラタジーン(Stratagene)カタログ#937052)から、以下のプロトコールを使用して増幅した:(1) 94℃5分、(2) 94℃30秒、(3) 55℃60秒、(4) 72℃1.5分、(5) 工程2〜4を9回繰り返す、(6) 94℃30秒、(7) 55℃60秒、(8) 72℃1.5分(+5秒/サイクル)、(9) 工程6〜8を14回繰り返す、(10)94℃30秒、(11)55℃60秒、(12)72℃2.5分、(13)工程10〜12を9回繰り返す、および(14)72℃7分。配列決定は、複クローニング部位に隣接したベクターの領域と相補的なプライマーを用いて行い、次にプライマー歩行を行って完全な2本鎖配列を作成した。
【0150】
7.大腸菌(E. coli)でのMIO発現
化学的にコンピタントな大腸菌(E. coli)BLR(DE3)細胞を、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)mio配列を含有するpET30aベクターを用いて、製造業者の説明書に従って形質転換した。いったん形質転換された後、BLR(DE3)細胞を50μg/mlカナマイシンを含有する50mlの2xYT培地(16gトリプトン、10g酵母エキス、5g塩化ナトリウム)中で培養した。1mMのIPTG(最終濃度)を加えてポリペプチド発現を誘導した後、細胞をさらに4時間30℃で培養した。細胞の培養後のすべての操作は、特に明記しない場合は1〜4℃で行った。12,000xgで10分間遠心分離し、50mM TEGGバッファー(50mMトリス塩酸(pH7.0)、0.5mM EDTA、100μg/L グルタチオン、および5%グリセロール)で2回洗浄し、洗浄の間に遠心分離(12,000xg;10分)して細胞をペレットにすることにより、細胞を採取した。洗浄した細胞を、ノバゲンベンゾナーゼヌクレアーゼ(Novagen benzonase nucleaase)(1mlのノバゲンバグバスター(Novagen Bug Buster)試薬当たり1μgのベンゾナーゼヌクレアーゼ)とカルビオケムプロテアーゼインヒビターカクテルIII(Calbiochem Protease Inhibitor Cocktail III)(1:500希釈)を含有するノバゲンバグバスター(Novagen Bug Buster)試薬(1gの細胞湿重量当たり5ml)を使用して、製造業者の説明書に従って溶解した。21,000xgで20分間遠心分離して細胞破片を除去しペレットを捨てた。上記したように、上清(細胞抽出物)を直ちにミオイノシトールオキシゲナーゼ活性について測定した。典型的な実験では、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)配列を発現する細胞からの細胞抽出物は、1mgの総タンパク質当たり10分間で138μgのグルクロン酸を生成する比活性を示した。挿入体の無いPET30aを含有する誘導された細胞からの細胞抽出物は、1mgの総タンパク質当たり10分間で10.7μgのグルクロン酸を生成する比活性を示した。
【0151】
シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)ポリペプチドはまた精製し、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性について試験した。簡単に説明すると、50μg/mlカナマイシンを含有する50mlの2xYT培地中で培養し1mM IPTGで誘導した、pET30中にシーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)mioを含有するBLR(DE3)細胞の250ml液体培養物からの細胞抽出物を、上記したように調製した。シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)ポリペプチドは、上記したようにノバゲン(Novagen)His-Bind Quick 900 カートリッジを使用して、製造業者の説明書に従って精製した。溶出液(ノバゲンエルートバッファー(Novagen Elute Buffer)中総4.0mlの2.5ml)を、あらかじめ20mlの50mMのTEGGPバッファーで、次にプロテアーゼインヒビターカクテルを含有する5mlの50mM TEGGPバッファー(50mM TEGGP)で平衡化させたファルマシア(Pharmacia)のディスポのPD-10カラムで分離して脱塩した。タンパク質画分を3.5mlの50mM TEGGPバッファーで溶出し、直ちに上記したようにミオイノシトールオキシゲナーゼ活性について測定した。サンプル中の総タンパク質は、バイオラッド(BioRad)Total Protein Reagentを使用して製造業者の説明書に従って測定した。典型的なアッセイでは、脱塩した溶出液は、1mgの総タンパク質当たり10分間で203μgのグルクロン酸を生成する比活性を示した。
【0152】
8.エス・セレビッシェ(S. cerevisiae)中のmio発現
コンピタントなエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)INVSc1細胞を、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)mio配列を含有するpYES2ベクターで形質転換した。いったん形質転換した後、インビトロゲン(Invitrogen)のプロトコールに従って、2%ラフィノースを含有する20mlのSC-ウラシル培地中で、細胞を30℃で200rpmで振盪して培養した。一晩培養物からのペレットにした細胞を使用して、2%ガラクトースと1%ラフィノースを含有するSC-ウラシル培地中に250mlの液体培養物を、OD650が0.4になるように接種した。生じた培養物を30℃で振盪してインキュベートした。ガラクトースで誘導した後0、5、および10時間後にアリコートを採取し、12,000xgで10分間遠心分離して細胞を採取した。遠心分離後、細胞を50mM TEGGバッファー(50mMトリス塩酸(pH7.0)、0.5mM EDTA、100mg/L グルタチオン、および5%グリセロール)で洗浄し、再度ペレットにし、そして−80℃で凍結した。細胞抽出物調製のための以後のすべての操作は、特に明記しない場合は1〜4℃で行った。洗浄した細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche「完全」プロテアーゼインヒビターカクテル錠剤、10mlのバッファーにつき錠剤1つ;50mM TEGGP)を含有する50mM TEGGPバッファーに再懸濁し、19,000psiのスペクトロニック(Spectronic)フレンチ圧に3回通過させて細胞を破砕した。21,000xgで30分間遠心分離して細胞破片を除去し、ペレットを捨てた。得られた細胞抽出物を直ちにミオイノシトールオキシゲナーゼ活性について測定した。サンプル中の総タンパク質は、バイオラッド(BioRad)Total Protein Reagentを使用して製造業者の説明書に従って測定した。
【0153】
典型的な実験では、ポリペプチド発現誘導の5時間後に採取したエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)細胞からの細胞抽出物は、1mgの総タンパク質当たり10分間で21.1μgのグルクロン酸を生成する比活性を示し、誘導後10時間に採取した細胞からの細胞抽出物の比活性は12.8μgであった。誘導直前に採取した細胞からの細胞抽出物の比活性は6.7μgであった。
【実施例2】
【0154】
実施例2−ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するヒトポリペプチドをコードする核酸のクローニング
大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞を、ライフテクノロジーズインク(Life Technologies, Inc.)(カタログ#18290-015)から購入し、プラスミドpTRC99Aをアマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)(カタログ#27-5007)から購入した。ヒト腎臓cDNAライブラリーを、ストラタジーン(Stratagene)(カタログ#937250)から購入した。細菌増殖培地の成分は、ディフコ(Difco)またはフィッシャーサイエンティフック(Fisher Scientific)から購入し、他の試薬は分析グレードであるかまたは市販の最も高いグレードであった。ポリペプチドについては、バイオラッド(BioRad)Protean II xi細胞ゲルシステムを使用して電気泳動を行った。核酸については、バイオラッド(BioRad)Mini-Sub Cell GT システムを使用して電気泳動を行った。PCR実験には、エッペンドルフマスターサイクラー勾配(Eppendorf Mastercycler Gradient)サーマルサイクラーを使用した。UV-可視分光測定は、バイオラッド(BioRad)SmartSpec 3000、またはモレキュラーデバイシーズ(Molecular Devices)SpectraMAX Plus分光光度計を使用して行った。プライマーは、インテグレーティッドDNAテクノロジーズ社(Integrated DNA Technologies, Inc.)から購入した。自動DNA配列決定は、ABI prism 377 DNAシーケンサーを使用して行った。
【0155】
ホモサピエンス(Homo sapiens)ORFに特異的なPCRプライマー(EMBL:CAB63064.1と呼ぶ)を設計し、所望のcDNAをヒト腎臓cDNAライブラリー(ストラタジーン(Stratagene))から増幅した。プライマーは以下の通りであった:5'-ATATCCATGGAGGTGACGGTGGGCCCAGAC-3'(配列番号8;NcoI部位を有する5'プライマー)と5'-CTATTCTAGATCACCAGCTCAGGATGCC-3'(配列番号9;XbaI部位を有する3'プライマー)。制限部位に下線を引き、開始コドンと停止コドンは太字とした。PCR反応物は、50μl反応物中に、最終濃度1μMの各プライマー;0.2mMのdATP、dCTP、dGTP、およびdTTP;2.5単位のExpand High Fidelity PCRポリメラーゼ(ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals));1mM MgCl2;5μlのヒト腎臓cDNAライブラリー;およびMgCl2を含まない1×HFバッファー。サーマルサイクラープログラムは、94℃5分のホットスタ−ト;次に10サイクルの94℃(30秒)で変性工程、50℃(1分)でアニーリング工程、および72℃(1.5分)で伸長工程;15サイクルの94℃(30秒)で変性工程、50℃(1分)でアニーリング工程、および72℃(1.5分)で伸長工程、1サイクルにつき5秒増えた;10サイクルの94℃(30秒)で変性工程、50℃(1分)でアニーリング工程、および72℃(2.75分)で伸長工程;最後に72℃(7分)で最終工程。約850bpのサイズを有する増幅DNAを、Qiagen QIAquick Gel Extraction Kitを使用して1%アガロースゲルから精製し、次にXbaIとNcoIで消化した。消化したDNAを、挿入体対プラスミドの5:1モル比でRapid DNA Ligation Kit (ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))を使用して、pTRC99Aプラスミド(これもXbaIとNcoIで消化した)中に連結した。エレクトロコンピタントなDH10Bへの形質転換は、バイオラッド(BioRad)電気穿孔法マニュアルに記載の標準的条件下で行った。ヒト核酸を含有するクローンを、制限分析で同定し、DNA配列決定により確認した。
【0156】
MIO活性を有する酵素をコードするヒト核酸を含有する大腸菌(E. coli)細胞を、100μg/mlアンピシリンを含有する100mlのLB培地中でOD650が0.5になるまで培養し、1mM IPTG(最終濃度)で誘導した。誘導した細胞を、30℃でさらに4時間培養した。細胞の培養後のすべての操作は、特に明記しない場合は1〜4℃で行った。12,000xgで10分間遠心分離し、50mM TEGGバッファー(50mMトリス塩酸(pH7.0)、0.5mM EDTA、100μg/L グルタチオン、および5%グリセロール)で2回洗浄し、洗浄の間に遠心分離(12,000xg;10分)して細胞をペレットにすることにより、細胞を採取した。洗浄した細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche「完全」プロテアーゼインヒビターカクテル錠剤、10mlのバッファーにつき錠剤1つ)を含有する2.0mlの50mM TEGGPバッファーに再懸濁し、リゾチーム(300μg/ml)で30分間溶解した。38,000xgで45分間遠心分離して細胞破片を除去し、ペレットを捨てた。あらかじめ20mlの50mMのTEGGPバッファーで、次にプロテアーゼインヒビターカクテルを含有する5mlの50mM TEGGPバッファー(50mM TEGGP)で平衡化させたファルマシア(Pharmacia)のディスポのPD-10カラム(カラム当たり正確に2.5mlのせた)で、上清を分離して脱塩した。ポリペプチド画分を3.5mlの50mM TEGGPバッファーで溶出し、直ちに実施例1に記載したようにミオイノシトールオキシゲナーゼ活性について測定した。
【0157】
ヒトMIOポリペプチドをコードする核酸を含有する細胞からの細胞抽出物は、1mgのポリペプチド当たり10分間で8.8μgのグルクロン酸を生成する比活性を示した。挿入体の無いpTRC99aを含有する誘導した細胞からの細胞抽出物は、1mgのポリペプチド当たり10分間で5.5μgのグルクロン酸を生成する比活性を示した。
【実施例3】
【0158】
実施例3−バチルス・メガテリウム( Bacillus megaterium )細胞中のヒト MIO ポリペプチドの活性
ホモサピエンス(Homo sapiens)ORFに特異的な以下のPCRプライマー(EMBL:CAB63064.1と呼ぶ)を設計し、所望のcDNAをヒト腎臓cDNAライブラリー(ストラタジーン(Stratagene))から増幅した:BsrG1部位を有する5'プライマー:5'-ATTATGTACAATGAAGGTGACGGTGGGCCCAGAC-3'(配列番号45)とKpnI部位を有する3'プライマー:5'-CTATGGTACCTCACCAGCTCAGGATGCC-3'(配列番号46)。開始コドンと停止コドンは太字とし、制限部位に下線を引いてある。PCR条件は以下の通りである。反応物は、50ml反応物中に、最終濃度1mMの各プライマー;0.2mMのdATP、dCTP、dGTP、およびdTTP;2.5単位のExpand High Fidelity PCRポリメラーゼ(ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals));1mM MgCl2;5mlのヒト腎臓cDNAライブラリー;および1×HFバッファー。サーマルサイクラープログラムは、94℃5分のホットスタ−ト;次に10サイクルの94℃(30秒)で変性工程、50℃(1分)でアニーリング工程、および72℃(1.5分)で伸長工程;15サイクルの94℃(30秒)で変性工程、50℃(1分)でアニーリング工程、および72℃(1.5分)で伸長工程、1サイクルにつき5秒増える;10サイクルの94℃(30秒)で変性工程、50℃(1分)でアニーリング工程、および72℃(2.75分)で伸長工程;最後に72℃(7分)で最終工程。約850bpのサイズを有する増幅DNAを、Qiagen QIAquick Gel Extraction Kitを使用して1%アガロースゲルから精製し、次にBsrG1とKpnIで消化する。
【0159】
QuickChange 部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene))を使用して製造業者のプロトコールに従って、塩基4と5の間にチミジン(T)ヌクレオチドを挿入し、そして8位の塩基(A)を欠失させることにより、MoBiTecLLCからのベクターpWH1520中にBsrG1制限部位を挿入した。生じるプラスミドはpWH1520Aである。消化したPCR産物を、Rapid DNA Ligation Kit(ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))を使用して、pWH1520Aプラスミド(これもBsrG1とKpnIで消化した)中に連結して、プラスミドhsmiopWH1520Aを作成した。エレクトロコンピタントなDH10Bへの形質転換を、このタイプの細胞についてバイオラッド(BioRad)電気穿孔法マニュアルに記載された標準的条件下で行った。ヒトmio配列を含有するクローンを、制限解析により同定し、DNA配列決定法により確認する。DH10B形質転換体から精製されたhsmiopWH1520Aプラスミドは、製造業者のプロトコール(MoBiTecLLC;Marco Island, フロリダ州)に従って市販のビー・メガテリウム(B. megaterium)中に形質転換される。hsmiopWH1520Aプラスミドを含有するクローンは、制限解析により同定され、DNA配列決定法により確認される。
【0160】
hsmiopWH1520Aを含有するビー・メガテリウム(B. megaterium)細胞を、10mg/mlテトラサイクリンを含有する100mlのLB培地中でOD650が0.3になるまで培養し、0.5%キシロース(最終濃度)で誘導する。細胞をOD600が1.5になるまで培養し、ビー・メガテリウム(B. megaterium)中のタンパク質発現について製造業者のプロトコールに従って、採取した。細胞の培養後のすべての操作は、特に明記しない場合は1〜4℃で行った。細胞ペレットを、50mM TEGGPバッファー(50mMトリス塩酸(pH7.0)、0.5mM EDTA、100μg/L グルタチオン、5%グリセロール、およびRocheプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤(10mlのバッファーにつき錠剤1つ))に再懸濁し、超音波処理により破砕した。12,000rpmで45分間遠心分離して細胞破片を除去した後、上清を、あらかじめ20mlの50mMのTEGGバッファー(50mMトリス塩酸、0.5mM EDTA、100μg/L グルタチオン、および5%グリセロール)で、次に5mlの50mM TEGGPで平衡化させたファルマシア(Pharmacia)のディスポのPD-10カラム(カラム当たり正確に2.5mlのせた)で分離して脱塩した。タンパク質画分を3.5mlの50mM TEGGPバッファーで溶出し、直ちにミオイノシトールオキシゲナーゼ活性について測定した。
【実施例4】
【0161】
実施例4−酵母細胞中のヒト MIO ポリペプチドの活性
大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞を、ライフテクノロジーズインク(Life Technologies, Inc.)(カタログ#18290-015)から購入した。サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)細胞(INVScl;カタログ#C810-00)とpYES2ベクター(カタログ#V825-20)は、インビトロゲン(Invitrogen)から購入した。インビトロゲン(Invitrogen)S.c.EasyComp(登録商標)Transformation Kit(カタログ#KI5050-01)を使用して、INVScl化学コンピタントな細胞を形質転換した。細菌増殖培地の成分は、ディフコ(Difco)またはフィッシャーサイエンティフック(Fisher Scientific)から購入し、他の試薬は分析グレードであるかまたは市販の最も高いグレードであった。Qiagen MiniおよびMidi Plasmid Prep Kitsを使用して大腸菌(E. coli)細胞からプラスミドを精製し、Zymoprep(登録商標)Kit(ザイモリサーチ(Zymo Research);カタログ#D2001)を使用してエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)細胞からプラスミドを精製した。
【0162】
実施例2に記載のヒトmio/pTRC99a構築体に特異的なPCRプライマーを以下のように設計した:5'-AATTGGTACCATGGAGGTGACGGTGGGCCCAGAC-3'(配列番号10;KpnI部位を有する5'プライマー)および5'-CTATTCTAGATCACCAGCTCAGG-ATGCC-3'(配列番号11;XbaI部位を有する3'プライマー)。制限部位に下線を引き、開始コドンと停止コドンは太字とした。PCR反応物は、最終濃度1μMの各プライマー;0.2mMのdATP、dCTP、dGTP、およびdTTP;1.75単位のExpand High Fidelity PCRポリメラーゼ(ロッシュ(Roche));1.5mM MgCl2;0.025μlのヒトmio/pTRC99Aプラスミド(55ng/μl)を、50μlの反応物中に含有した。サーマルサイクラープログラムは、94℃5分のホットスタ−ト;次に10サイクルの94℃(30秒)で変性工程、50℃(1分)でアニーリング工程、および72℃(1.5分)で伸長工程;15サイクルの94℃(30秒)で変性工程、50℃(1分)でアニーリング工程、および72℃(1.5分)で伸長工程、1サイクルにつき5秒増えた;10サイクルの94℃(30秒)で変性工程、50℃(1分)でアニーリング工程、および72℃(2.75分)で伸長工程;最後に72℃(7分)で最終工程を含有した。約850bpのサイズを有する増幅DNAを、Qiagen QIAquick Gel Extraction Kitを使用して1%アガロースゲルから精製し、次にKpnIとNcoIで消化した。消化したDNAを、挿入体対プラスミドの4:1と6:1のモル比でRapid DNA Ligation Kit (ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))を使用して、pYES2プラスミド(これもKpnIとNcoIで消化した)中に連結した。エレクトロコンピタントなDH10B細胞への形質転換は、バイオラッド(BioRad)電気穿孔法マニュアルに記載の標準的条件下で行った。ヒト核酸を含有するクローンを、制限分析で同定し、DNA配列決定により確認した。
【0163】
ヒト挿入体を含有するpYES2プラスミドを有するコンピタントなエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)INVScl細胞(DH10B細胞から精製した)の形質転換は、インビトロゲン(Invitrogen)S.C.EasyComp(登録商標)Transformation Kitを使用して、製造業者の説明書に従って行った。形質転換反応物を、ウラシルが欠損したSC最小プレート(SC-ウラシル)上に蒔いた。ヒト核酸を含有するクローンを、pYES2の複クローニング領域の両側面上の配列に相補的なプライマーを使用してPCR分析により同定した。
【0164】
pYES2中の組換えタンパク質についてのインビトロゲン(Invitrogen)のプロトコールに従って、GAL1プロモーターの制御下でエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)INVScl細胞中で、ヒトMIOポリペプチドの発現を誘導した。細胞を、2%ラフィノースを含有する50mlのSC-ウラシル培地中で、30℃で一晩200rpmで振盪して培養した。一晩培養物からのペレット化した細胞を使用して、2%ガラクトースと1%ラフィノースを含有するSC-ウラシル培地中に350mlの液体培養物を接種してOD650を0.4とした;得られた培養物を30℃で振盪してインキュベートした。ガラクトースで誘導後0と12時間目にアリコートを取り、12,000×gで10分間遠心分離して細胞を採取した。ペレットを50mMのTEGGバッファー(50mMトリス塩酸(pH7.0)、0.5mM EDTA、100μg/L グルタチオン、および5%グリセロール)で洗浄し、再度ペレットにし、−80℃で凍結した。
【0165】
細胞抽出物調製についての以下のすべての操作は、特に明記しない場合は1〜4℃で行った。ガラスビーズ(シグマ(Sigma)、150〜212ミクロン)を用いて、50mMのTEGGPPバッファー(50mMトリス塩酸(pH7.0)、0.5mM EDTA、100μg/L グルタチオン、5%グリセロール、ロシュの"完全" Protease Inhibitor Cocktail錠剤、10mlのバッファーにつき錠剤1つ、および1mMのPefabloc(ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))中で細胞を破砕し、次に小規模調製物についてDunnとWobbeのCurrent Protocols in Molcecular Biologyに記載の方法(B. DunnとC.R. Wobbe, 第2巻、13.13.4節、F.M. Ausubel, R. Brent, R.E. Kingston, D.Dl Moore, J.F. Seidman, J.A. Smith, K. Struhl編、ジョンワイリーアンドサンズインク(John Wiley and Sons Inc.)(1999))に従って破砕した。21,000×gで15分間遠心分離して、細胞破片とガラスビーズを除去した。あらかじめ20mlの50mMのTEGGPバッファーで、次に5mlの50mM TEGGPPバッファーで平衡化させたファルマシア(Pharmacia)のディスポのPD-10カラム(カラム当たり正確に2.5mlの抽出物をのせた)で、上清を分離して脱塩した。ポリペプチド画分を3.5mlの50mM TEGGPPバッファーで溶出し、直ちに実施例1に記載のようにミオイノシトールオキシゲナーゼ活性について測定した。
【0166】
典型的な実験では、ヒトMIOポリペプチドの誘導の12時間後に採取したエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)細胞からの細胞抽出物は、1mgのポリペプチド当たり10分間で13.4μgのグルクロン酸を生成する比活性を示した。挿入体の無いpYES2を含有する同様に誘導した細胞からの細胞抽出物は、1mgの総タンパク質当たり10分間で5.7μgのグルクロン酸を生成する比活性を示した。
【実施例5】
【0167】
実施例5−昆虫細胞中でのヒト MIO ポリペプチドの活性
実施例2に記載のpTRC99Aプラスミド内のMIO酵素をコードするヒト核酸を、バキュロウイルス中にサブクローニングした。具体的にはpTRC99A-mioクローンをNcoIとSalIで消化し、ゲル精製により872bpのヒトmio断片を単離した。ベクターpFastBacHTaもまた、NcoI/SalIで消化し、ウシ小腸ホスファターゼで処理した。ヒトMIOコード配列を、N末端Hisタグのフレーム内でベクターに連結した。
【0168】
DNA配列決定を行って、以下のアミノ酸配列を有するポリペプチドが構築体によりコードされることを証明した:
Figure 2004536577
(配列番号12;非ヒト配列に下線を引き、His-Tagは太字である)。
【0169】
バキュロウイルス伝達ベクターを使用してバクミド(bacmid)DNAを作成し、これを次にSf-9とHi5細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションからのウイルスは、1回の増幅と力価測定を受けた。得られた力価測定した1次増幅ウイルス(40mlの容量)を、初期発現スクリーニングに使用した。
【0170】
40mlの1回の増幅ウイルスストックの大半を使用して、Sf-9とhi5細胞の50ml培養物を感染多重度(MOI)0.1、1、および5で、それぞれ感染後採取時間(HPI)48時間と72時間に感染させた。平行して同じ細胞、MOI、およびHPI条件を使用する発現を、ベクター単独で行い陰性対照とした。発現解析のために細胞と培地を採取し、細胞抽出物をTEGバッファー(50mMトリス塩酸(pH7.5)、0.5mM EDTA、100mg/L グルタチオン)中に再懸濁した。
【0171】
SDS-PAGEとHis-タグ抗体を用いるウェスタンブロット解析を使用して、発現解析により可溶性ポリペプチドの産生を調べた。最適発現は、Hi5細胞株中でMOIが1または5、および感染後採取時間48時間または72時間で起きると測定された。サンプルを液体窒素で急速凍結し、測定するまでドライアイス上に置いた。MIO活性測定は実施例1に記載のように行った。ヒトポリペプチドを発現するHi5細胞はMIO活性を示し、ヒトポリペプチドが欠如したHi5細胞は示さなかった(図8)。図8中の比活性は、生成したグルクロネートμg/mgタンパク質/10分インキュベーションとして規定される。
【0172】
さらなる発現実験を、MOI 1で48時間のHPIで行った。細胞ペーストを50mlの溶解バッファー(1×PBS(pH7.4)、10%グリセロール、1μg/mlペプスタチン、5μg/mlロイペプチン、1μM E64、100mg/Lグルタチオン)中に懸濁した(0.5リットルの昆虫培養物からの各クローンの約6g)。使用直前にプロテアーゼインヒビターとグルタチオンを加えた。細胞懸濁液(総量約60ml)を氷上に置き、Branson Sonifier 450を用いてマクロチップで2回(各30秒;出力=7;効率=70%)超音波処理した。全細胞溶解物を、Beckman JA-14ロータ中で4℃で11,000rpmで30分間遠心分離した(18,600g)。上清を除去し(約60ml)、4℃で2mlのQiagen Nickel-NTAカラム(あらかじめ洗浄し、溶解バッファーで平衡化させた)にのせた。カラムを、4℃で20mlの洗浄バッファー(溶解バッファー+0.17M NaCl+10mMイミダゾール)で洗浄した。2.5mlの溶出バッファー(洗浄バッファー+0.2Mイミダゾール)を用いてポリペプチドを溶出した。組換えポリペプチドの分子量と純度を、精製の各工程でSDS-PAGEにより証明した。溶出ポリペプチドをPD-10カラム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)、Piscataway、ニュージャージー州)に通し、最終保存バッファー(50mMトリス塩酸(pH7.5)、0.5mM EDTA、100mg/Lグルタチオン、10%グリセロール)で溶出した。Bradfordアッセイを使用して、総ポリペプチド濃度を測定した。サンプルを1ml容量にアリコートし、液体窒素で急速凍結し、分析するまで−70℃に置いた。
【0173】
溶出液を、SDS-PAGE分析により均一と判断されるまで精製した。実施例1に記載の方法を使用して、精製プロセスのすべての画分についてMIO活性測定を行った。結果は、精製ポリペプチドが1mgのポリペプチド当たり10分間で225μgのグルクロン酸を生成する比活性を有することを示した。
【実施例6】
【0174】
実施例6−ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するヒトポリペプチドをコードする外因性核酸を含有するヒト細胞
ヒト腎臓胚細胞(293細胞;ATCCカタログ番号CRL1573)を、10%胎児牛血清(ギブコ(Gibco))、2mMグルタミン、100単位/ml ペニシリン、および100mg/mlストレプトマイシンを補足したDMEMで維持する。ヒトmio遺伝子を含有する核酸挿入体を、Carusoら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11302-11306 (1996))が記載した一般的方法を使用して、293細胞中に導入する。簡単に説明すると、ラウス肉腫ウイルス長い末端反復配列プロモーター(受け入れ番号gi:61690)の転写制御下で複製欠陥アデノウイルスベクター(ADV)を使用して、実施例2に記載のMIO酵素をコードするヒト核酸を含有するするようにベクターを構築する。pCITE-1ベクター(ノバゲン(Novagen)、マジソン、ウィスコンシン州)から内部リボゾーム結合部位(ヌクレオチド40〜35)を得て、別に記載のように(Fangら、Gene Ther., 1:247-254 (1994))E1欠失アデノウイルス骨格pAd.1/ラウス肉腫ウイルス中に挿入する。Bettら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:8802-8806 (1994))が記載したように、293細胞中でpBHG10と同時トランスフェクションして組換えアデノウイルスを作成する。プラークアッセイを使用して力価を計算する(pfus)。
【0175】
0.25%トリプシンを使用して細胞を6ウェルプレートに接種する(30,000〜50,000/cm2)。総量0.5ml中で種々の感染多重度(例えば約200〜1000)で、細胞にADV/mioウイルスを感染させる。37℃で2時間インキュベーション後、ウイルス上清をデカントし、2.5mlの新鮮な細胞培地を加えて、感染を停止させる。37℃で48〜72時間インキュベーション後細胞を採取し、溶解バッファー(1×PBS(pH7.4)、10%グリセロール、1μg/mlペプスタチン、5μg/mlロイペプチン、1μM E64)に再懸濁する。細胞懸濁液を氷上で超音波処理し、4℃で遠心分離(18,600g)して細胞破片を除去する。全細胞溶解物を、実施例1に記載のようにMIO活性について測定する。
【実施例7】
【0176】
実施例7−ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するシーアール・ネオホルマンス( Cr. neoformans )ポリペプチドをコードする核酸のシーアール・ネオホルマンス( Cr. neoformans )へのクローニング
delPoetaら(Infect. Immun. 67(4):1812-1820 (1999))が記載した一般的方法を使用して、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)mio遺伝子を含有する核酸挿入体をシーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)中に導入する。MIO活性を有するシーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)ポリペプチドをコードする核酸を、Expand High Fidelity PCRシステム(ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))と以下のプライマー:5'-CACATCTAGAATGCACGCTCCCGAAGTCAA-3'(配列番号13)と5'-TTAAGGTACCCTACCACTGCACCTCCTCAG-3'(配列番号14)を使用して、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)cDNAライブラリー(B3501株;ストラタジーン(Stratagene)#937052)から増幅する。制限部位に下線を引いてある。PCR条件は以下の通りである:(1) 94℃5分、(2) 94℃30秒、(3) 55℃60秒、(4) 72℃1.5分、(5) 工程2〜4を9回繰り返す、(6) 94℃30秒、(7) 55℃60秒、(8) 72℃1.5分(+5秒/サイクル)、(9) 工程6〜8を14回繰り返す、(10)94℃30秒、(11)55℃60秒、(12)72℃2.75分、(13)工程10〜12を9回繰り返す、および(14)72℃7分。PCRを使用して断片(約1Kbp)を産生し、これをXbaIとKpnIで消化し、pUC19のXbaI/KpnI部位に挿入してpMIO1を得る。
【0177】
以下のPCRプライマー:5'-GACCAAGCTTGTGGA-AAGAAGCAGGTCTTGTCGA-3'(配列番号15)と5'-GGCTAAGCTTTCTCAAGAG-GGGATTGAGCGCTGA-3'(配列番号16)を使用して、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)JEC21株(ATCC96910)のゲノムDNAから、GAL7プロモーターを増幅する。制限部位に下線を引いてある。PCR条件は以下の通りである:(1) 95℃5分、(2) 93℃50秒、(3) 50℃50秒、(4) 72℃80秒、および(5) 72℃2分;工程2〜4を25回繰り返す。PCRを使用して断片(約585bp)を産生し、これをHIndIIIで消化し、pMIO1のHIndIII部位に挿入して、pGAL7::MIOを得る。
【0178】
次に、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)cDNAライブラリー(B3501株;ストラタジーン(Stratagene)カタログ#937052)から増幅したシーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)ホスホリボシルアミノイミダゾールカルボキシラーゼ(ade2)遺伝子を、MIO核酸から下流にEcoRI部位に挿入してpGAL7::MIO/ADE2を得る。以下のPCRプライマー:5'-AATTGAATTCCCGGTGGACCA-AGTGGAAGC-3'(配列番号17)と5'-AATTGAATTCGCACAGACACCGCCCGTACT-3'(配列番号18)を使用して、ade2遺伝子を単離する。制限部位に下線を引いてある。PCR条件は以下の通りである:(1) 95℃5分、(2) 93℃50秒、(3) 50℃50秒、(4) 72℃3分、(5) 72℃2分;工程2〜4を30回繰り返す。PCRを使用して断片(約2.5Kbp)を産生し、これをEcoRIで消化し、pGAL7::MIOのEcoRI部位に挿入して、pGAL7::MIO/ADE2を得る。
【0179】
pGAL7::MIO/ADE2構築体を、別に記載されているように(Toffalettiら、J. Bacteriol. 175:1405-1411 (1993))DNAのバイオリスティクス送達により、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)M001(ATCC MYA-428;H99株のade2栄養要求性変異体)中に形質転換する。
【0180】
アデニン原栄養体を、1Mソルビトールを補足した合成培地(アデニン無し)で30℃で選択する。合成培地は、(1リットル当たり)アミノ酸を含まない6.7gの酵母窒素ベース(YNBw/o)、アデニンが欠如した1.3gのアミノ酸混合物、180gのソルビトール、20gのガラクトース、および20gの寒天からなる。アデニン形質転換体は選択培地(YNB-ガラクトース)に継代培養され、次に酵母エキス−ペプトン−デキストロース(YEPD)寒天で2回継代培養されて、安定な形質転換体が選択される。
【実施例8】
【0181】
実施例8−サッカロミセス・セレビッシェ( Saccharomyces cerevisiae )と大腸菌( E. coli )細胞中の酵素活性
以下のポリペプチドをコードする核酸分子を、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)と大腸菌(E. coli)細胞中にクローン化した:(1) Suc scrofa glr(グルクロネート還元酵素;gi:1703236)、(2) ティモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ula(グルコノラクトナーゼ;gi:48654)、(3) フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)lha(ラクトノヒドロラーゼ、広い特異性;gi:3810872;AB010465.1)、および(4) ラットglo(グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ、cDNA;NM_022220)。
【0182】
1.鋳型DNAの供給源
フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)ATCC48112をジャガイモショ糖培地とグリセロールコーンスティープリカー培地で、26℃で270rpmで振盪しながら初期対数期、中期対数期、および静止期まで培養した。3500rpmで10分遠心分離し、50mMトリス塩酸(pH7.0)バッファー(低温)で洗浄し、再度遠心分離することにより、菌糸体を採取した。生じる洗浄ペレットを−80℃で急速凍結した。10gの菌糸体を使用して、カスタムcDNAライブラリー(ストラタジーンインク(Stratagene, Inc.); Uni-ZAP XRベクター)を合成した。生じるカスタムcDNAライブラリーの推定増幅力価は、9.6×109pfu/mlであり、平均挿入体サイズは1.5kBであり、挿入体サイズの範囲は0.80〜2.2kBであった。
【0183】
チモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ATCC29191を、推奨されるATCC培養で増殖させ、グラム(−)菌用のプロメガ(Promega)gDNA単離キットを使用してgDNAを単離した。
【0184】
市販のラット肝臓cDNAライブラリー(クロンテクインク(Clontech Inc.))を、gloとglrクローニングのために購入した。
【0185】
2.クローニング
シャトルベクターpYES2(インビトロゲンライフテクノロジーズ(Invitrogen Life Technologies))を使用して、すべての構築体をエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)にクローン化した。構築体配列はすべて、コザック配列(ATCATGG)を含有した(太字は開始コドンを示す)。PCRプライマーはジーンバンク(GenBank)配列に基づき設計し、pYES2の複クローニング部位へのクローニングのための制限部位を含有した。エフ・オキシスポルム(F. oxysporum)のlha遺伝子のためのPCRプライマーを、提唱された成熟型のラクトノヒドロラーゼの配列(ここで、最初の20アミノ酸(リーダー配列)は切断されている)(Kobayashiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(22):12787-12793 (1998))に基づいて、設計した。ATG開始コドンを、コドンGCT(未成熟ポリペプチドの21番目のアミノ酸(Ala)をコードする)に先行するN末端プライマー中に設計した。これらのプライマーの配列は以下の通りである:
N末端:5'-CGCGGATCCATGGCTAAGCTTCCTTCTACG-3'(配列番号47)
BamHI部位は斜体で示し、開始コドンは太字で示す。
【0186】
C末端:5'-CGACTCGAGCTAATCATAGAGCTTGGGACC-3'(配列番号48)
xhoI部位は斜体で示し、停止コドンは太字で示す。
【0187】
PCRによるラットglo配列の増幅は、以下の反応混合物を使用して、pYES2クローニングについて上記したように行った:
2μl ラット肝臓cDNAライブラリー(クロンテク(Clontech)カタログ#RL5004T)
1μlの500μM PCRプライマー(各)
4μlの10mM(各)dNTP
10μlの10×Deep Ventポリメラーゼバッファー
4μlの100mM MgSO4
0.5μlのDeep Ventポリメラーゼ(2U/μl)
78.5μl H2O
鋳型、プライマー、バッファー、およびMgSO4を混合し、96℃に15分加熱した。次にチューブを氷上で冷却し、dNTPとDNAポリメラーゼを加えた後、反応チューブをサーマルサイクラーに入れた。サーマルサイクラープロトコールは以下の通りである:(1) 96℃ 3:30、(2) 96℃ 0:45、(3) 55℃ 1:15、(4) 72℃ 4:00、(5) 工程2〜4を34回繰り返す、および(6) 72℃ 10:00。
【0188】
すべての他のクローンについて、PCRの標準的組換えDNA技術、DNAの精製、連結、および形質転換は、確立された方法(Sambrook, Fritsch, Maniatis, 1989)または販売業者のプロトコールに従って行った。連結は典型的には、ロシュ(Roche)T4 DNAリガーゼを使用して行った。初期形質転換は典型的には、SOC培地への回収とLBプレート(100μg/mlのアンピシリン含有)への塗布を含むバイオラッド(BioRad)の推奨法を使用して、大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞で行った。精製したプラスミド(キアゲン(Qiagen)ミニプレップ)を制限消化によりスクリーニングし、ジデオキシヌクレオチド鎖−停止DNA配列決定法により証明した。
【0189】
ジーンバンク(GenBank)(登録商標)内の配列と比較すると、配列中に差が見つかった。エフ・オキシスポルム(F. oxysporum)lha配列について、以下の差が確認された:V33V(GTA→GTC);K108K(AAG→AAA);142V(GTT→GTC);P145P(CCA→CCC);T149T(ACT→ACG);N154N(AAC→AAT);E160E(GAG→GAA);G163G(GGT→GGC);181T(ACC挿入体);L184L(CTT→CTC);F189F(TTC→TTT);R191R(CGC→CCT);Q230Q(CAG→CAA);T238T(ACT→ACC);V241V(GTC→GTT);Y304Y(TAT→TAC);およびR358R(AGG→AGA)。ゼット・モビリス(Z. mobilis)ula配列については、以下の差が確認された:T2A(ACC→GCC;コザック配列の導入から意図的);V16A(GTT→GCC);M17I(ATG→ATA);I20I(ATC→ATT);A25A(GCA→GCC);E34Q(GAG→CAG);I96I(ATT→ATC);163V(CGT挿入);S237S(TCC→TCT);P238P(CCG→CCT);およびD261D(GAT→GAC)。ラットglo配列については、以下の差が確認された:I85V(ATA→GTA);R168R(AGA→CGA);およびQ189H(CAG→CAC)。ラットglr配列については、以下の差が確認された:T→A(ACG→GCG;コザック配列の導入から意図的)。
【0190】
S.c.EasyComp(登録商標)Transformation Kit(インビトロゲンライフテクノロジーズ(Invitrogen Life Technologies)、Carlsbad、カリホルニア州)を使用して、エス・セレビッシェ(S. cerevisiae)INVSclコンピタント細胞を調製し、同じキットを使用してpYES2構築体をINVSC1コンピタント細胞中に形質転換した。形質転換反応物を、選択培地(SC-ura)に蒔き、30℃で2時間インキュベートし、コロニーPCRにより分析した。
【0191】
すべての配列をpET30a中にサブクローニングした。pET30aの複クローニング部位に適合する制限部位を有するプライマーを設計し、この配列を、鋳型としてのpYES2クローンとExpand DNAポリメラーゼ(ロシュ(Roche))を使用して、PCRにより増幅した。
【0192】
大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞への連結と形質転換は、pYES2構築体について上記したように行った。配列解析により配列を証明後、製造業者のプロトコールに従ってpET30a構築体を発現宿主BLR(DE3)(ノバゲン(Novagen))に形質転換した。これらの構築体を、精製プラスミドの制限消化により証明した。glo-pET30a構築体もまた、Rosetta(DE3)細胞(ノバゲン(Novagen))中に形質転換した。この株は、適合性のあるクロラムフェニコール耐性プラスミド上で、まれなコドンであるAUA、AGG、AGA、CUA、CCC、およびGGAについての本来のプロモーターの制御下で、tRNAを提供する。
【0193】
pET30a/BLR(DE3)クローンを用いる誘導実験を、50mg/Lカナマイシンを含有するLB培地で行った。glo-pET30a/Rosetta(DE3)クローンを用いる誘導実験を、50mg/Lカナマイシンと34mg/Lクロラムフェニコールとを含有するLB培地で行った。培養物をまず37℃で225rpmで振盪してOD650が0.5〜0.8になるまで培養し、IPTGを加えてタンパク質発現を誘導した。lha-pET30a-BLR(DE3)培養物を0.1mMのIPTGで誘導し、21℃(封入体形成を抑えるため)で8時間インキュベートし、次に12,000×gで10分間遠心分離して細胞を採取した。ula-pET30a-BLR(DE3)とglo-pET30a-Rosetta(DE3)培養物を0.025mMのIPTGとインキュベートし、30℃で4時間インキュベートした後採取した。glr-pET30a-BLR(DE3)培養物を0.1mMのIPTGで誘導し、30℃で4時間インキュベートした後採取した。
【0194】
試薬1ml当たり1μlのベンゾナーゼプロテアーゼと試薬1ml当たり5μlのCalbiochemプロテアーゼインヒビターsetIIIを含有するNovagen BugBuster試薬(1gのWCWについて5mlの試薬)を使用して、細胞抽出物を調製した。細胞懸濁液を室温で15分間静かに振盪してインキュベートし、次に21,000×gで20分間遠心分離して細胞破片を除去した。あるいは、ミニフレンチ圧セルに19,000psi(アミンコ(Aminco))に2回通過させ、次に遠心分離して細胞破片を除去して、細胞抽出物をまた調製した。遠心分離後、上清(細胞抽出物)を注意深く取り出し、His-Bind900カートリッジ(ノバゲン(Novagen))を使用して親和性クロマトグラフィーにより酵素を精製した。His-Bindカートリッジから溶出した後、アッセイバッファーと適合性のあるバッファーであらかじめ平衡化したファルマシア(Pharmacia)のディスポのPD-10カラムを通過させて、各精製タンパク質を脱塩した。例えばlha(His-LHA)の融合生成物を、100mMのPIPES(pH7.0)で溶出した。脱塩した細胞抽出物を、可溶性タンパク質のSDS-PAGE分析と酵素アッセイに使用した。
【0195】
0.3mM NADPH、10mM グルクロン酸、および100mMのリン酸ナトリウム(pH6.6)中の種々の量の酵素(Hayashiら、J. Biochem. 95:2223-2232 (1984))を使用して340nmの吸光度の消失(NADPHの消失)を追跡してGLRを測定した。典型的には1分間にタンパク質1mg当たり、1〜2マイクロモルのNADPHが消費された。
【0196】
ニシキミ(Methods in Enzymology 62:24-30 (1979))が記載した方法に従って、GLO活性を測定した。アッセイ混合物は、1mlにつき、50mMのリン酸カリウムバッファー(pH7.5)、2.5mMのL-グロノ-γ-ラクトン、1mMのEDTA、および酵素を含有した。基質または酵素を添加して反応を開始し、混合物を空気中で37℃で15分間振盪してインキュベートした。0.1mlの50%トリクロロ酢酸を加えて反応を停止させ、沈殿したタンパク質を遠心分離して除去した。生成物アスコルビン酸を、実施例9に記載の方法により検出した。簡単に説明すると、0.956mlの2,2'-ジピリジル試薬を0.15mlの上清溶液に加え、反応混合物を25℃で15分間インキュベートした。15分後、サンプルを遠心分離して沈殿物を除去し、525nmで吸光度を読んだ。2,2'-ジピリジル試薬は、0.056mlのオルトリン酸(85%)、0.75mlの0.5% 2,2'-ジピリジル(熱H2O中で調製)、および0.15mlの1% FeCl3(H2O中)を含有した。標準曲線のために、アスコルビン酸の標準物質(1.0μg〜10μg)を生物的サンプルと平行して実験した。1単位は、上記条件下で1分間に1nmolのL-アスコルビン酸の生成を触媒する量として定義される。比活性は、タンパク質1mg当たりの単位(μmol/分/mg)として表される。
【0197】
LHA活性を、Shimizuら(Eur. J. Biochem. 209:383-390 (1992))が記載した方法に従って測定した。標準的アッセイ混合物は、最終容量250μl中に100mMのPIPES-NaOH(pH7.0)、150mMのパントイル-γ-ラクトン、および酵素を含有した。30℃で30分インキュベーション後、2mMのEDTA(2ナトリウム塩)を含有する250μlのメタノールを加えて反応を停止させた。21,000×gで5分間遠心分離して得られた上清を、HPLCにより分析した。1単位(U)の酵素は、標準的アッセイ条件下で1μモルのパントイル-γ-ラクトンの加水分解を触媒する量として定義される。比活性は、タンパク質画分の酵素活性の単位を画分のタンパク質濃度で割ったものとして定義される(mmol/分/mg)。
【0198】
すべてのアッセイサンプルは、0.45μmフィルターでろ過し、HPLCによる分析のために10μg/ml〜150μg/mlの較正範囲に希釈した。ウォーターズ社(Waters Corporation)、アイルランド)のSymmetry(登録商標)C18 3.5μm(4.6×75mm)を使用して分離を行った。HPLC条件は以下の通りであった:(1) 流速:0.8ml/分;(2) カラム温度:周囲;(3) 移動相:13%メタノール、トリクロロ酢酸でpH2.5;および(4) 検出:UV@220nm。これらの条件下で、パントイン酸は約3.5分で溶出し、パントイル-γ-ラクトンは約2.5分で溶出する。
【0199】
タンパク質濃度を、バイオラッド(BioRad)タンパク質アッセイと製造業者の微量アッセイプロトコールを使用して推定した。ウシガンマグロブリンを、標準曲線測定のために使用した。このアッセイは、Bradford色素結合法に基づく。
【0200】
3.結果
glo-pET30a、lha-pET30a、およびglr-pET30a構築体は、SDS-PAGEで判定すると予測された分子量の可溶性ポリペプチドを発現した。実際、各細胞抽出物中の総タンパク質の約5〜10%は、発現されたポリペプチドであった。ula-pET30a構築体は、可溶性型のULA融合タンパク質の予測された分子量を有する多量のポリペプチドは発現しなかった。酵素活性の結果は以下の通りである:
Figure 2004536577
同じプロトコールを使用して150mMのパントイル-γ-ラクトンの代わりに150mMのグロノ-γ-ラクトンを使用して、グロノ-γ-ラクトンからのグルクロン酸の生成を触媒する能力についてもLHAを測定した。HPLCによる分析は、グロン酸が生成したことを示した。グロン酸ピークの複雑な形は、生成物形成の正確の定量を不可能にした。
【0201】
さらに、パントイル-γ-ラクトンまたはグロノ-γ-ラクトンの加水分解を触媒する能力についてULAを測定した。HPLCにより、生成物形成は検出されなかった。測定可能な活性の欠如は、IPTG誘導後に形成される可溶性ULAの量が非常に少ないためかも知れない。
【0202】
glo-pET30a-Rosetta(DE3)の誘導した培養物をマンニトール最小培地中の1mMグロノ-γ-ラクトンとインキュベートした時に培地中に分泌されるアスコルビン酸の量は、実施例9に記載のように測定した。30℃で7時間インキュベーション後、および0.05mMのIPTGで誘導後、glo-pET30a-Rosetta(DE3)培養物は、1mlの発酵ブロス当たり110.7nmolのアスコルビン酸を分泌し、一方pET30a-Rosetta(DE3)の対照培養物により14.3nmolが分泌された。
【実施例9】
【0203】
実施例9−生物的サンプル中のアスコルビン酸の検出
2つの方法を使用して、発酵ブロスと細胞抽出物を含む生物学的サンプル中のアスコルビン酸を測定した。サンプリング直後に測定したアスコルビン酸濃度のために、別に記載のように(Zannoniら、Biochemical Medicine 11:41-48 (1974))、アスコルビン酸による第2鉄イオン(Fe(III))から第1鉄イオン(Fe(II))への還元を追跡する比色アッセイを使用した。このアッセイでは、第1鉄イオンの産生は、525nmで吸収する2,2'-ジピリジル-Fe(II)錯体の生成により測定される。簡単に説明すると、0.15mlの生物学的サンプルを0.956mlの2,2'-ジピリジル試薬と混合し、25℃で15分間インキュベートする。15分後、サンプルを遠心分離して沈殿物を取り出し、吸光度を525nmで読んだ。0.956mlの2,2'-ジピリジル試薬は0.056mlのオルトリン酸(85%)、0.75mlの0.5%2,2'-ジピリジル(熱H2O中で調製)、および0.15mlの1%FeCl2(H2O中)を含有した。アスコルビン酸の標準物質(0.15ml中1.0μg〜10μg)を、標準曲線のために生物学的サンプルとともに実験した。
【0204】
別に記載の方法(Lykkesfeldt, Analytical Biochemistry 282:89-93 (2000))を使用して、サンプリングの数時間後または数日後について、二重測定サンプルを安定化させた。この方法は、10%メタリン酸で酸性化し−80℃で凍結し、次に静かに融解し、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩でpH6.2で還元直後にHPLCで測定する。トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩でpHを下げて、分析中のアスコルビン酸の酸化を小さくする。簡単に説明すると、生物学的サンプルを2mM EDTAを含有する等量の10%メタリン酸と混合し、直ちに−80℃で凍結する。HPLC分析の日に、サンプルを静かに融解した。0.8Mトリス塩酸(pH9.0)中の0.1mlの2.5mM トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩を、融解したサンプル0.2mlに加えた。混合後、溶液を25℃で5分間インキュベートし、次に0.7mlの0.46Mリン酸水素2ナトリウム+0.27Mクエン酸(pH4.5)を加えてpHを4.7の調整した。HPLCへの注入前に、すべてのサンプルを0.2μmフィルターでろ過した。HPLCパラメータは以下の通りであった:(1) カラム:Shodex Asahipak NH2P-50 4E;(2) 溶出液:A:20mM NaH2PO4+30mM H3PO4(pH2.2) B:CH3CN 20A/80Bアイソクラチック勾配;(3) 流速:1.0ml/分;(4) 検出器:UV@254nm;(5) 温度:周囲;および(6) 保持時間:エリソルビン酸=6.3分、アスコルビン酸=7.7分。
【実施例10】
【0205】
実施例 10 −大腸菌( E. coli )構築体とビタミンC産生
大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞は、インビトロゲンライフテクノロジーズインク(Invitrogen Life Technologies, Inc)(Carlsbad、カリホルニア州)から購入した。大腸菌(E. coli)Rosetta(DE3)は、ノバゲン(Novagen)(マジソン、ウィスコンシン州)から購入した。大腸菌(E. coli)GM48株(ATCC#39099)は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ロックビル、メリーランド州)から購入した。培養物をLB培地中で中期対数期(OD600=0.5〜0.8)まで培養し、等量の氷冷した10%グリセロールで3回洗浄し、次に氷冷した10%グリセロールに40μl対1mlの元々の培養物の比で再懸濁し、40μlのアリコートを−80℃で急速に凍結して、エレクトロコンピタントなGM48細胞を調製した。大腸菌(E. coli)発現ベクターpETBlue-2とpET11aは、ノバゲン(Novagen)(マジソン、ウィスコンシン州)から購入した。Expand DNAポリメラーゼとRapid DNA Ligation Kitは、ロシュダイアグノスティクス社(Roche Diagnostics Corp)(インヂアナポリス、インディアナ州)から購入した。微生物増殖培地成分は、ベクトンディッキンソン・マイクロバイオロジーシステムズ(Becton Dickinson Microbiology Systems)(Sparks、メリーランド州)またはVWR Scientific Products (So. Plainfield, ニュージャージー州)から購入し、他の試薬は分析グレードかまたは市販の最も高いグレードであった。プライマーは、インテグレーティッドDNAテクノロジーズ社(Integrated DNA Technologies, Inc.)から購入した。制限酵素はニューイングランドバイオラボズ社(New England Biolabs Inc)(ビバリー、マサチューセッツ州)から得た。Eppendorf Mastercycler Gradientサーマルサイクラーを、PCR実験のために使用した。UV−可視分光測定は、バイオラッド(BioRad)SmartSpec 3000またはMolecular Devices SpecgtraMAX Plus分光光度計(Sunnyvale、カリホルニア州)を使用して行った。電気穿孔法は、バイオラッド(BioRad)Gene Pulser IIシステムを使用して行った。自動DNA配列決定は、SeqWright(ヒューストン、テキサス州)により行った。
【0206】
PCRのための組換えDNA技術、DNAの精製、連結、および形質転換は、確立された方法(例えばSambrookら、Molecular Cloning (A Laboratory Manual) 、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)(1989)および製造業者の技術報告)に従って行った。
【0207】
5'-ラットglo、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)mio、およびラットglr-3'(glo_mio_glr)からなる合成3遺伝子オペロンを、Hoら(Gene 77(1):51-59 (1989))が記載したように重複PCR法により構築した。簡単に説明すると、この方法は相補的オリゴヌクレオチドプライマーとPCRを使用して、重複末端を有するDNA断片を作成することにより、3つの独立のDNA配列(glo、mio、およびglr)の融合を可能にした。適当な重複配列を有するラットglo、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)mio、およびラットglr配列の合成のためのプライマー、リボゾーム結合部位(RBS)、およびpETBlue-2ベクターの制限部位を設計した。PCR増幅と1%アガロースゲルからPCR産物の精製後に、これらの生成物を、第2の「融合」PCR反応物中で一緒にした(ここで重複末端がアニーリングする)。この重複は、各鎖が、相補的鎖の伸長のためのプライマーとして機能することを可能にする。融合した生成物の末端のためのオリゴヌクレオチドプライマー(gloのフォワードプライマーとglrのリバースプライマー)の添加は、融合生成物の同時増幅を可能にした。初期PCR増幅は、対応するpYES2クローンを鋳型として使用して行った。PCR産物を1%アガロースゲルから精製し、PCR産物とpETBlue-2ベクターの両方をNheI/PacIで制限消化後、Rapid DNA Ligation Kit (ロシュ(Roche))を使用して連結を行った。連結混合物を脱塩し、次に0.2cm微量電気穿孔法キュベットを使用して、大腸菌(E. coli)細胞の形質転換のためのバイオラッド(BioRad)推奨法を使用して、大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞中に形質転換した。SOC培地で回収後、形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ベータ-D-ガラクトピラノシド(X-gal;70μg/ml)、およびイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG;80μM)を含有するLBプレートに蒔いた。LB+アンピシリン+IPTG+X-galプレートから取り上げた白色のコロニーのプラスミドDNAを、液体培養物(37℃で一晩培養した5ml 2×YT培地+アンピシリン(100μg/ml))から単離し、キアゲン(Qiagen)mini-prep kitを使用して精製した。精製プラスミドを制限消化によりスクリーニングし、ジデオキシヌクレオチド鎖停止DNA配列決定法により証明した。この構築体をpETBlue-3と名付けた。
【0208】
NheI部位と合成RBSを有するgloのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-GGCGGCTAGCGAAGGAGATATACCATGGTCCATGGGTACAAAG-3'(配列番号49)。SphI、XhoI部位と合成RBSを有するgloのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-CTTCGGGAGCGTGCATGGTATATCTCCTTCTGCATGCTCGAGTTAGTAG-3'(配列番号50)。SphI、XhoI部位と合成RBSを有するmioのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-CTACTAACTCGAGCATGCAGAAGGAGATATACCATGCACGCTCCCGAAGTC-3'(配列番号51)。MluIとAscI部位および合成RBSを有するmioのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-GAGGCCGCCATGGTATATCTCCTTCACGCGTGGCGCGCCTACCACTGCACCTCCTCAG-3'(配列番号52)。AscIとMluI部位および合成RBSを有するglrのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-GGTAGGCGCGCCACGCGTGAAGGAGATATACCATGGCGGCCTCCAGTGTCCT-3'(配列番号53)。PacIとXbaI部位を有するglrのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-CGGCTTAATTAATGCGGCCCTCTAGATCAGTAT-3'(配列番号54)。斜体は制限部位を示し、太字は、開始コドンと停止コドンを示し、下線の配列はRBS配列を示す。
【0209】
エス・セレビッシェ(S. cerevisiae)遺伝子inoIとitrIを、PCRによりエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)ゲノムDNAから増幅し、MluI/AscI断片としてpETBlue-3中にmioとglr配列の間に挿入した。これらの構築体(それぞれ、pETBlue-3+inoIおよびpETBlue-3+itrI)を、MluI/AscI消化によりMluI/AscI断片の正しい配向についてスクリーニングした。pETBlue-3、pETBlue-3+inoI、およびpETBlue-3+itrIを、0.2cm微量電気穿孔法キュベットを使用して、大腸菌(E. coli)細胞の形質転換のためのバイオラッド(BioRad)推奨法を使用して、エレクトロコンピタントな大腸菌(E. coli)GM48株(damメチル化(−))に、それぞれ形質転換した。SOC培地で回収後、形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレートに蒔いた。LB+アンピシリンプレートから取り上げたコロニーのプラスミドDNAを液体培養物から単離し、キアゲン(Qiagen)mini-prep kitを使用して精製し、XbaIで消化した。glo_mio_glr、glo_mio_inoI_glr、およびglo_mio_itrI_glrオペロンをそれぞれ1%アガロースゲルから精製し、XbaI/エビアルカリホスファターゼ消化pET11aに連結した。連結は、Rapid DNA Ligation Kit(ロシュ(Roche))を使用して行った。連結混合物を脱塩し、次に0.2cm微量電気穿孔法キュベットを使用して、大腸菌(E. coli)細胞の形質転換のためのバイオラッド(BioRad)推奨法を使用して、大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞中に形質転換した。SOC培地で回収後、形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレートに蒔いた。LB+アンピシリンプレートから取り上げたコロニーのプラスミドDNAを液体培養物から単離し、キアゲン(Qiagen)mini-prep kitを使用して精製した。精製プラスミドを制限消化によりスクリーニングし、ジデオキシヌクレオチド鎖停止DNA配列決定法により証明した。生じた構築体をそれぞれpET11a-3、pET11a-3+inoI、およびpET11a+itrIと名付けた。pET11aベクター中のオペロンの配向を、BamHIによる制限消化で確認した。
【0210】
AscIとSacII部位および合成RBSを有するinoIのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-CGCAGGCGCGCCCCGCGGAAGGAGATATACCATGTTAGTTTTATCCTTGATTTA-3'(配列番号55)。MluIとApaI部位を有するinoIのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-GCATACGCGTGGGCCCGTTACAACAATCTCTCTTCGAATCT-3'(配列番号56)。AscIとSacII部位および合成RBSを有するitrIのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-CGCAGGCGCGCCGGGCCCGAAGGAGATATACCATGGGAATACACATACCATA-3'(配列番号57)。MluIとSacII部位を有するitrIのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-GCATACGCGTCCGCGGCCTATATATCCTCTATAATC-3'(配列番号58)。斜体は制限部位を示し、太字は、開始コドンと停止コドンを示し、下線の配列はRBS配列を示す。
【0211】
大腸菌(E. coli)Rosetta(DE3)発現宿主へのpET11aベクター構築体の形質転換は、ノバゲン(Novagen)が規定する方法に従って行い、LB+100μg/mlアンピシリン+34μg/mlクロラムフェニコール上に蒔いた。各プレートからコロニーを取り上げ、プラスミド単離とゲル視覚化により分析した。各作成体からの1つの単離体を、発現試験のために選択した。
【0212】
記載したベクター構築体(pET11a-3、pET11a-3+inoI、またはpET11a-3+itrI)の1つとpET11a親ベクターを有する大腸菌(E. coli)Rosetta(DE3)細胞を、100μg/mlアンピシリン+34μg/mlクロラムフェニコールを含有するグリセロール規定培地中で、振盪しながら37℃で8時間培養し、4℃に一晩置いた。細胞を3500×gで4℃で10分間遠心分離してペレットにし、ペレットをそれぞれ、100μg/mlアンピシリン+34μg/mlクロラムフェニコールを含有する5mlのグリセロール規定培地に再懸濁した。各再懸濁培養物のOD600を測定し、100μg/mlアンピシリン+34μg/mlクロラムフェニコールを含有する30mlのグリセロール規定培地中でOD600が0.08〜0.16になるのに必要な培養物の量を計算した。細胞の計算量を接種し、各構築体を37℃で225rpmで攪拌しながら約2.5時間、各培養物のOD600が約0.6に達するまで約2.5時間培養した。発酵ブロスの3mlアリコートを取り、遠心分離して細胞を除いた。本明細書に記載のように2mM EDTAを含有する等量の10%メタリン酸で上清を希釈して、サンプル中のアスコルビン酸を安定化させた。ミオイノシトール(pET11a、pET11a-3、およびpET11a-3+itrI)またはグルコース(pET11a-3+inoI)を、最終濃度1%になるように加えた。10μMの硫酸第1鉄アンモニウムと100μM IPTGをすべての培養物に加えた。3時間と6時間後、3mlアリコートの発酵ブロスを取り、遠心分離して細胞を除いた。上清を等量の10%メタリン酸で希釈して、サンプル中のアスコルビン酸を安定化させた。経時変化の完了後、すべてのサンプルをトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩で還元し、2,2'-ジピリジル試薬を使用して測定した。
【0213】
各構築体について各時点で発酵ブロス中のアスコルビン酸の濃度を、その時点の構築体のOD600で割った。図19に示すように、すべての構築体でアスコルビン酸が産生された。これらの結果は、glo、glr、およびmioがアスコルビン酸を産生するのに使用可能であることを示している。
【実施例11】
【0214】
実施例 11 −酵母構築体とビタミンC産生
大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞は、インビトロゲンライフテクノロジーズインク(Invitrogen Life Technologies, Inc)(Carlsbad、カリホルニア州)から購入した。エス・セレビッシェ(S. cerevisiae)YPH500株とpESCleuとpESCtrpベクターは、ストラタジーンインク(Stratagene Inc)(ラホヤ(La Jolla)、カリホルニア州)から得た。2つの遺伝子は、これらのベクターのそれぞれにクローン化することができる。各ベクターは、GalIまたはGal10プロモーターの後ろに別々の複クローニング部位を含有することができる。Expand DNAポリメラーゼとRapid DNA Ligation Kitは、ロシュダイアグノスティクス社(Roche Diagnostics Corp)(インヂアナポリス、インディアナ州)から購入した。微生物増殖培地成分は、ベクトンディッキンソン・マイクロバイオロジーシステムズ(Becton Dickinson Microbiology Systems)(Sparks、メリーランド州)またはVWR Scientific Products (So. Plainfield, ニュージャージー州)から購入し、他の試薬は分析グレードかまたは市販の最も高いグレードであった。プライマーは、インテグレーティッドDNAテクノロジーズ社(Integrated DNA Technologies, Inc.)から購入した。制限酵素はニューイングランドバイオラボズ社(New England Biolabs Inc)(ビバリー、マサチューセッツ州)から得た。バイオラッド(BioRad)Protean IIミニゲルシステム(タンパク質)とバイオラッド(BioRad)Mini-Sub Cell GT システム(DNA)(バイオラッドラボラトリーズ(BioRad Laboratories)、Hercules、カリホルニア州)を使用して電気泳動を行った。Eppendorf Mastercycler Gradientサーマルサイクラーを、PCR実験のために使用した。UV−可視分光測定は、バイオラッド(BioRad)SmartSpec 3000またはMolecular Devices SpecgtraMAX Plus分光光度計(Sunnyvale、カリホルニア州)を使用して行った。電気穿孔法は、バイオラッド(BioRad)Gene Pulser IIシステムを使用して行った。自動DNA配列決定は、SeqWright(ヒューストン、テキサス州)により行った。
【0215】
PCRのための組換えDNA技術、DNAの精製、連結、および形質転換は、確立された方法に従って行った。GLOおよび/または(ULAまたはLHA)の配列をpESC-leuベクター中にクローン化し、GLRとMIOの配列を、エス・セレビッシェ(S. cerevisiae)YPH500株への2重形質転換のためにpESC-trp中にクローン化した。各配列のATG開始コドンの5'と各配列の停止コドンの3'にpESCベクターの適切な制限配列を有する、ラットglo、ラットglr、シーアール・ネオホルマンス(Cr. neoformans)mio、チモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)ula、およびフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)lha配列の合成のためのプライマーを、対応するpYES2クローンを鋳型としてPCR増幅のために設計した。
【0216】
SalI部位を有するgloのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-GGCCGTCGACCATAATGGTCCATGGGTACA-3'(配列番号59)。XhoI部位を有するgloのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-AATTCTCGAGTTAGTAGAAGACTTTCTCCAGGT-3'(配列番号60)。ApaI部位を有するglrのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-GGAAGGGCCCATAATGGCGGCCTCCAGTGTCCTCCTGC-3'(配列番号61)。HIndIII部位を有するglrのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-GGCCAAGCTTTAGATCAGTATGGGTCATTA-3'(配列番号62)。SpeI部位を有するulaのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-CCGGACTAGTATAATGGCCACTGGTCGTAT-3'(配列番号63)。PacI部位を有するulaのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-GGCGTTAATTAACCCTCTAGATTACCAGAAAATAAG-3'(配列番号64)。SpeI部位を有するlhaのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-CGGCACTAGTATAATGGCTAAGCTTCCTTCTACGGCTCAG-3'(配列番号65)。PacI部位を有するlhaのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-GGCCTTAATTAACTAATCATAGAGCTTGGGACCCGAAGC-3'(配列番号66)。SpeI部位を有するmioのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-GGCCACTAGTATAATGGACGCTCCCGAAGTCA-3'(配列番号67)。PacI部位を有するmioのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-GGCCTTAATTAATAGACTACCACTGCACCTCCTCAG-3'(配列番号68)。斜体は制限部位を示し、太字は、開始コドンと停止コドンを示す。
【0217】
PCR産物を1%アガロースゲルから精製し、PCR産物とpESCベクターの両方の制限消化後、Rapid DNA Ligation Kit (ロシュ(Roche))を使用して連結を行った。連結混合物を脱塩し、次に0.2cm微量電気穿孔法キュベットを使用して、大腸菌(E. coli)細胞の形質転換のためのバイオラッド(BioRad)推奨法を使用して、大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞中に形質転換した。SOC培地で回収後、形質転換混合物を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するLBプレートに蒔いた。LB+アンピシリンプレートから取り上げたコロニーの液体培養物(37℃で一晩培養した5ml 2×YT培地+アンピシリン(100μg/ml))からプラスミドDNAを単離し、キアゲン(Qiagen)mini-prep kitを使用して精製した。精製プラスミドを制限消化によりスクリーニングし、ジデオキシヌクレオチド鎖停止DNA配列決定法により証明した。
【0218】
インビトロゲン(Invitrogen)S.c.EasyComp(登録商標)Transformation Kit(Carlsbad、カリホルニア州)を使用して、コンピタントなエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)YPH500細胞を調製した。アリコート(50μl)を−80℃で凍結し、使用直前に融解した。
【0219】
S.c.EasyComp(登録商標)Transformation Kitを使用して、エス・セレビッシェ(S. cerevisiae)YPH500のコンピタント細胞へのpESCベクター構築体の形質転換を行った。ベクター構築体glo-pESCtrp、(glo+ula)-pESCleu、または(glo+lha)pESCleuを、(glr+mio)-pESCtropベクター構築体とともに同時形質転換を行った。各形質転換反応からの100μlのアリコートを、SC-leu-trpプレートに蒔いた。プレートを30℃で2日間インキュベートした。各プレートのコロニーを取り上げ、PCRにより分析した。予測されたPCR産物(アガロースゲル電気泳動により評価)を生成した各構築体から1つの単離体を、発現実験に選択した。
【0220】
記載のベクター構築体または挿入体の無いベクターの1つを有するエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)YPH500株を、2%ラフィノースと0.2%グルコースを含有する5mlのSC-trp-leu培地で、30℃で一晩振盪しながら培養した。1500×gで10分間遠心分離して細胞をペレットにし、ペレットをそれぞれ2%ラフィノースを含有する40mlのSC-leu-trp培地に懸濁した。得られた細胞懸濁液を、30℃で一晩振盪しながら培養した。各一晩培養物のOD650を測定し、0.2%ガラクトースを含有する100mlのSC-leu-trp(誘導培地)中でOD650が0.2〜0.4を得るのに必要な一晩培養物の量を計算した。計算した容量の細胞を、1500×gで4℃で10分間遠心分離し、ペレットを2mlの誘導培地に再懸濁し、1%ミオイノシトールと0.5%ラフィノースを含有する150mlの誘導培地に加えた。各構築体を30℃で225rpmで0〜19時間振盪して培養した。0、4、8および19時間目に発酵ブロスのアリコートを取り、遠心分離して細胞を除去した。2,2'-ジピリジル試薬を使用して、上清をアスコルビン酸について測定した。
【0221】
他のサンプルについて測定された値から、各時点のベクター対照サンプル中のアスコルビン酸の濃度を引いた。4時間目に、pESCベクター上のglo、glr、およびmioからなる3つの配列構築体(7.9mg/L 上清)と、追加のlha配列を有する4つの配列構築体(9.4mg/L上清;図20)中で最大量のアスコルビン酸が産生された。これらの結果は、glo、glr、およびmioをアスコルビン酸の産生に使用することができ、lhaはこの産生を増強することを示す。
【実施例12】
【0222】
実施例 12 in vivo のミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を上昇させる
グルクロン酸の産生を増加させるために、哺乳動物臓器(例えばヒト腎臓)中のmioの発現の上昇が設計される。mio発現により産生されるグルクロン酸レベルの上昇は、アルデヒド脱水素酵素の使用によりグルカン酸の産生上昇を引き起こすように設計される。グルカン酸レベルの上昇は、ベータ−グルクロニダーゼの活性を阻害し、こうして体内の毒性代謝物を解毒するように設計される。
【0223】
ヒトミオイノシトールオキシゲナーゼ(mio)配列(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号XM_010057;gi|18594511)の5'末端および3'末端に相同的なオリゴヌクレオチドプライマーが設計され、PCRによりヒトcDNAライブラリーからヒトmioを増幅するのに使用される。XbaI部位を有するmioのフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-AATCTCTAGAATGAAGGTGACGGTGGGCCCAGAC-3'(配列番号69)。KpnI部位を有するmioのリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-CTATGGTACCTCACCAGCTCAGGATGCC-3'(配列番号70)。斜体は制限部位を示し、太字は、開始コドンと停止コドンを示す。
【0224】
PCR産物を1%アガロースゲルから精製し、PCR産物とpSHUTTLE(クロンテク(Clontech))ベクターの両方のXbaI/KpnIによる制限消化後、Rapid DNA Ligation Kit(ロシュ(Roche))を使用して連結を行った。連結混合物を脱塩し、次に0.2cm微量電気穿孔法キュベットを使用して、大腸菌(E. coli)細胞の形質転換のためのバイオラッド(BioRad)推奨法を使用して、大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞中に形質転換した。SOC培地で回収後、形質転換混合物を、カナマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレートに蒔いた。LB+カナマイシンから取り上げたコロニーのプラスミドDNAを、液体培養物(37℃で一晩培養した5ml 2×YT培地+カナマイシン(50μg/ml))から単離し、キアゲン(Qiagen)mini-prep kitを使用して精製した。精製プラスミドを制限消化によりスクリーニングし、ジデオキシヌクレオチド鎖停止DNA配列決定法により証明した。この構築体を、pSHUTTLE-mioと呼ぶ。
【0225】
pSHUTTLE-mioをPI-SceIとI-CeuIで消化し、1%アガロースゲルから精製する。mio配列を含有する生じる断片を単離し、あらかじめ消化したAdeno-XウイルスDNA(クロンテク(Clontech))に連結する。Rapid DNA Ligation Kit(ロシュ(Roche))を使用して連結を行う。連結混合物を脱塩し、SwaIで消化し、脱塩し、次に0.2cm微量電気穿孔法キュベットを使用して、大腸菌(E. coli)細胞の形質転換のためのバイオラッド(BioRad)推奨法を使用して、大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞中に形質転換する。SOC培地で回収後、形質転換混合物を、カナマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレートに蒔く。LB+カナマイシンプレートから取り上げたコロニーのプラスミドDNAを、液体培地(37℃で一晩培養した液体培養物(5ml 2×YT培地+カナマイシン(50μg/ml))から単離し、キアゲン(Qiagen)mini-prep kitを使用して精製する。精製プラスミドを制限消化によりスクリーニングし、ジデオキシヌクレオチド鎖停止DNA配列決定法により証明する。生じる構築体をAdeno-X-mioと呼ぶ。
【0226】
Adeno-X-mioを低継代HEK293細胞(クロンテク(Clontech))に移し、4〜7日でアデノウイルスDNAを採取する。200μlのAdeno-X-mio(>1010pfu/ml)を、3月齢のFisherラット(実験群)の肝臓に注入し、200μlのAdeno-X(>1010pfu/ml)を、3月齢のFisherラット(対照群)の肝臓に注入する。3日後、実験群と対照群のラットを屠殺し、腎臓組織をmio活性ならびにグルクロン酸とグルカン酸レベルについて測定する。mio活性、グルクロン酸、およびグルカン酸レベルを、実験群と対照群で比較する。
【実施例13】
【0227】
実施例13−枯草菌(B. subtilis)ycbDとycbE配列の大腸菌(E. coli)へのクローニングと発現
枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC6051株は、ATCCから購入した。PfuTurbo DNAポリメラーゼは、ストラタジーン(Stratagene)(ラホヤ(La Jolla)、カリホルニア州)から購入した。微生物増殖培地成分は、ベクトンディッキンソン・マイクロバイオロジーシステムズ(Becton Dickinson Microbiology Systems)(Sparks、メリーランド州)またはVWR Scientific Products (So. Plainfield, ニュージャージー州)から購入した。
【0228】
枯草菌(B. subtilis)からのycbD(受け入れ番号16077068;領域gi|16077068:268838-270304)とycbE(受け入れ番号16077068;領域gi|16077068:270388-271755)配列を、pET30a(ノバゲン(Novagen))とpPRONdeベクター中にクローン化した。pPRONdeベクターは、pPROLAR.A122ベクター(クロンテクラボラトリーズ(Clontech Laboratories))の誘導体であり、ここで、部位特異的突然変異誘発によりbp132にNdeI部位が導入されている。ycbD遺伝子は、アルデヒド脱水素酵素をコードすることが確認されており、一方ycbE遺伝子は、グルカン酸トランスポーターをコードすることが確認されている。
【0229】
ycbD ATG開始コドンの5'とycbE 停止コドンの3'にpET30aとpPRONde複クローニング部位を有する適合性のある制限配列を有するプライマーを設計し、この配列を、枯草菌(B. subtilis)ゲノムDNAを鋳型として使用してPCRにより増幅した。4部のExpand DNAポリメラーゼと1部のPfuTurbo DNAポリメラーゼの混合物を、増幅反応で使用した。NdeI部位を有するフォワードプライマーの配列は以下の通りである:5'-GCG ATT CCA TAT GTC TGT GAT CAC GGA ACA AAA CAC GTA C-3'(配列番号71)。BamHI部位を有するリバースプライマーの配列は以下の通りである:5'-GCG CGG ATC CAG GCT TAA TTA AGC TTA GAC AGG CAA CGA T-3'(配列番号72)。斜体は制限部位を示し、太字は、開始コドンと停止コドンを示す。
【0230】
栄養ブロス中で30℃で培養した枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC6051株の培養物から、ゲノムDNAを精製した。キアゲン(Qiagen)ゲノムチップ100/Gシステムを使用して、製造業者のプロトコールに以下の変化を加えて、ゲノムDNAを単離した − プロテイナーゼKとリゾチームの濃度を倍にし、酵素による誘導時間を2〜3倍長くした。
【0231】
ycbDとycbE配列の間の介在配列は、NdeI部位を含有する。個々のycbD配列とycbE配列を、PCR産物の制限消化物(NdeI/BamHI)から精製した。ycbD配列を、あらかじめNdeIで消化したベクターpET30aとpPRONde中にクローン化し、ycbE配列を、あらかじめNdeIとBamHIで消化したpET30aとpPRONde中にクローン化した。ycbEpET30a構築体をNdeIで消化し、次にNdeI消化ycbD遺伝子と連結した。PCR産物とプラスミドのすべての制限消化物を、1%アガロースゲルから精製した。すべての連結は、Roche Rapid DNA Ligation Kit(ロシュ(Roche))を使用して行った。連結混合物を脱塩し、0.2cm微量電気穿孔法キュベットを使用して、大腸菌(E. coli)細胞の形質転換のためのバイオラッド(BioRad)推奨法を使用して、大腸菌(E. coli)DH10B ElectroMAX細胞中に形質転換した。SOC培地で回収後、形質転換混合物を、カナマイシン(50μg/ml)を含有するLBプレートに蒔いた。LB+カナマイシンプレートから取り上げたコロニーのプラスミドDNAを、液体培地(5ml 2×YT培地+カナマイシン(50μg/ml))から単離し、37℃で一晩培養した。キアゲン(Qiagen)mini-prep kitを使用してプラスミドDNAを精製した。精製プラスミドを制限消化によりスクリーニングし、ジデオキシヌクレオチド鎖停止DNA配列決定法により証明した。ジーンバンク(GenBank)配列:C938Aと比較してycbD配列中に1つのサイレント塩基変化が見つかった。ジーンバンク(GenBank)配列C499Tと比較してycbE配列中に、P167Sのアミノ酸配列の変化に対応する1つの塩基変化が検出された。
【0232】
配列解析により証明されたpET30a構築体を、製造業者のプロトコールに従って発現宿主BLR(DE3)(ノバゲン(Novagen))にサブクローニングした。これらの構築体を、精製プラスミドの制限消化により証明した。
【0233】
pET30a/BLR(DE3)クローンを用いる誘導実験を、50mg/Lカナマイシンを含有するLB培地で行った。培養物をまず、37℃で225rpmで振盪してOD650が0.5〜0.8まで培養し、0.1M IPTGを加えてタンパク質発現を誘導した。培養物を225rpmで振盪して30℃で4時間インキュベートし、21,000×gで10分間遠心分離して採取した。タンパク質をSDS-PAGEにより4〜15%の勾配ゲルで分析して、組換えタンパク質の予測MWの総タンパク質および可溶性タンパク質レベルについてチェックした。1mlの培養物からの細胞ペレットを、タンパク質ローディングバッファー(50mMトリス塩酸(pH8.8)、10%グリセロール、2.0%SDS、100mMジチオスレイトール、0.1%ブロモフェノールブルー)で95℃で10分間インキュベートして、総タンパク質サンプルを調製した。
【0234】
試薬1ml当たり1μlのベンゾナーゼプロテアーゼと試薬1ml当たり5μlのCalbiochemプロテアーゼインヒビターsetIIIを含有するノバゲン(Novagen)BugBuster試薬(1gのWCWについて5mlの試薬)を使用して、細胞抽出物を調製した。細胞懸濁液を室温で15分間静かに振盪してインキュベートし、次に21,000×gで20分間遠心分離して細胞破片を除去した。上清(細胞抽出物)を注意深く取り出し、10mMのジチオスレイトールを含有する25mlの50mMトリス塩酸(pH8.0)であらかじめ平衡化したファルマシア(Pharmacia)のディスポのPD-10カラムを通過させて脱塩した。同じバッファーを使用してタンパク質を溶出した。脱塩した細胞抽出物を、可溶性タンパク質のSDS-PAGE分析と酵素アッセイに使用した。
【0235】
細胞抽出物の脱水素酵素活性を、アセトアルデヒド、グルクロン酸、およびグルクロノ-3,6-ラクトンを基質として使用して96ウェルプレート中で追跡した。抽出アッセイ混合物は、100mM リン酸カリウム(pH7.8)、1mM NADPまたはNAD、200mM 基質、および0.02〜0.1mlの細胞抽出物(0.1〜0.5mgタンパク質)を含有した。酵素を加えて反応を開始し、30℃で分光光度計中でインキュベートした。脱水素酵素活性を、10分間の340nmでの吸光度の線形変化を追跡することにより追跡した(基質の無い反応混合物を参照)。
【0236】
ycbDとycbEの生成物は、pET30a構築体中で多量に(総タンパク質の約10%)発現され、SDS-PAGEにより可溶性タンパク質中に容易に検出できた。NADPは、試験したすべての基質についてycbD生成物の脱水素酵素活性についての好適な補酵素であった。表3は、0.05mlの細胞抽出物(0.25mgタンパク質)を用いて測定した[ycbd+ycde]−pET30a−BLR(DE3)構築体からの細胞抽出物についての酵素活性を要約する。アセトアルデヒドは、試験した基質のうちで最良のもであり、次にグルクロノ-3,6-ラクトン、そして最後にグルクロン酸であった。酵素活性にカリウムは必要ではなかった。バッファーとして200mMのトリス塩酸(pH7.8)を使用すると、100mMのリン酸カリウムを使用した時よりグルクロノ-3,6-ラクトンの酸化速度はわずかに速かった(他の基質は測定しなかった)。
【表3】
Figure 2004536577
【実施例14】
【0237】
実施例 14 −生物学的サンプル中のグルカン酸を検出する
生物学的サンプル(発酵ブロスと細胞抽出物の両方)中のグルカン酸の生成をHPLCにより追跡する。2つのラクトン(グルカレート-1,4-ラクトンとグルカレート-3,6-ラクトン)は、中性pHでグルカン酸と平衡にあり、その生成は別に記載のように追跡される(HortonとWalaszek、Carbohydrate Research 105:95-109 (1982))。サンプルのアリコートを、0.2μmフィルターで無菌ろ過した後、クロマトグラフィーカラムに注入する。HPLCのパラメータは以下の通りである:(1) カラム:Aminex APX-87H 300 x 7.0 mm バイオラッド(BioRad);(2) 溶出液:0.005N H2SO4;(3) 流速:0.6ml/分;(4)検出器:屈折率;(5) 温度:45℃;(6) 保持時間:グルカレート-1,4-ラクトン=9.0分、とグルカリック-3,6-ラクトン=9.1分、グルカン酸=8.0分、グルクロノ-3,6-ラクトン=10.8分、およびグルクロン酸=8.1分。
【実施例15】
【0238】
実施例 15 −グルクロン酸からグルカン酸の酵素的生成
グルカン酸は、非特異的ヘキソースオキシダーゼ活性(EC1.1.3.5)を有する酵素により触媒される反応でグルクロン酸から合成される。藻類コンドルス・クリスプス(Chondrus crispus)(AAB49376.1 GI:1877522)から単離した酵素は、グルコースの酸化速度の2%の速度でこの反応を触媒する。fasta確率スコア(P-スコア)が4e-60を超えるこの酵素の同族体が、ペスト菌(Yersinia pestis)(NP_403959.1;gi:16120646)、偽結核エルシニア菌(Yersinia pseudotuberculosis)(Sangre Centre、Contig1834上の遺伝子配列(長さ8,117)、5,184から3,130)、ラルストニア・ソラナセアルム(Ralstonia solanacearum)(NP_518171.1;gi:17544769)、およびバークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)(Sangre Centre、Contig01233上の遺伝子配列(長さ58,761)、23,445〜25,103)中で、アミノ酸配列のBLAST分析により同定された。
【0239】
グルクロン酸とヘキソースオキシダーゼとの反応により生成したグルカン酸の量は、別に記載(SullivanとIkawa、Biochim. et Biophys. Acta 309:11-22 (1973)とUS Patent No. 6,251,626)のように測定された。このアッセイでは、ペルオキシダーゼの存在下でグルクロン酸の酸化により生成した過酸化水素は、発色性基質オルトジアニシジンと反応して、402nmで吸収する色素を生成する。
【0240】
アッセイ混合物は酵素サンプルと0.85mlのアッセイ溶液(0.370mlの0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0);0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中0.462mlのD-グルクロン酸(異なる濃度);0.009mlの西洋ワサビペルオキシダーゼ(シグマケミカルズ(Sigma Chemicals)、カタログ番号P6782、またはベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim)カタログ番号814393)、0.1mg/ml水;および0.009mlのオルトジアニシジン2HCl(3,3'-ジメトキシベンジジン、シグマケミカルズ(Sigma Chemicals))、3.0mg/ml水を含有する)からなる。室温で15〜30分インキュベーション後、一滴の37%HClを加えてアッセイを停止させる。0.100mlのサンプルをアッセイチューブからマイクロタイタープレートのウェルに移し、Molecular Devices SpecgtraMAX Plus分光光度計(Sunnyvale、カリホルニア州)を使用して410nmの吸光度を読む。1酵素単位は、基質濃度0.05Mで1分間に25℃、pH6.3で1nmoleの過酸化水素の産生を触媒する酵素の量として定義される。
【実施例16】
【0241】
実施例 16 −グルクロン酸からグルカン酸への化学変換
以下の方法を使用してグルクロン酸をグルカン酸に変換した。5%パラジウム担持活性炭触媒(10g;5%Pd/C触媒;Johnson Matthey Inc., Ward Hil, マサチューセッツ州)を、50mlの蒸留水を有する三ツ首フラスコに入れた。酸素を混合物中に約15分間バブリングした。一方、5gのグルクロン酸を25mlの蒸留水に溶解し、10%水酸化ナトリウムを加えてpHを8に調整した。次にグルクロネート溶液を、触媒を含有するフラスコに加えた。フラスコを、10%水酸化ナトリウム含有滴下ロート、pH電極、および金属フリットを有する酸素ラインとを備えた50℃の油浴に入れた。反応混合物を、酸素を連続的にバブリングしてpHを追跡しながら50℃で攪拌した。10%水酸化ナトリウムを定期的に加えてpHを8より高く維持した。10時間後、触媒をろ過して除去し、反応混合物をHPLCにより分析した。
【0242】
図21Aは、10時間目の出発物質、グルクロン酸、生成物、グルカン酸、および反応混合物のLC-MSクロマトグラムを示す。図21Bは、対応する質量スペクトルを示す。反応収率は、反応混合物の質量スペクトル中の146.1(グルカン酸の主要な娘断片)と140.4(グルクロン酸の主要な娘断片)のイオン化断片の比較により、90%を超えると測定された。これらの結果は、化学的または酵素的に得られたグルクロン酸が、触媒的酸化により高収率でグルカン酸に変換できることを示す。
【0243】
本実施例において、配列について太字は開始コドンと停止コドンを示すとあるが、開始コドン、停止コドンはATG、TCA、TTA、CTA、TGA、CAT、TAAで示される。
【0244】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明とともに記載したが、前記記載は、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を例示するものであり、決してその範囲を限定するものではない。他の態様、利点、および修飾は、以下の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】D-ミオイノシトールとL-グロン酸を中間体として使用して、グルコースからアスコルビン酸を産生することができる7工程の代謝経路を示す図。
【図2】D-ミオイノシトールとD-グルクロノ-3,6-ラクトンを中間体として使用して、グルコースからアスコルビン酸を産生することができる7工程の代謝経路を示す図。
【図3】UDP-D-グルクロネートとL-グロネートを中間体として使用して、グルコースからアスコルビン酸を産生することができる8工程の代謝経路を示す図。
【図4】UDP-D-グルクロネートとD-グルクロノ-3,6-ラクトンを中間体として使用して、グルコースからアスコルビン酸を産生することができる8工程の代謝経路を示す図。
【図5】UDP-D-グルクロネートとL-グロネートを中間体として使用して、グルコースからアスコルビン酸を産生することができる9工程の代謝経路を示す図。
【図6】UDP-D-グルクロネートとD-グルクロノ-3,6-ラクトンを中間体として使用して、グルコースからアスコルビン酸を産生することができる9工程の代謝経路を示す図。
【図7A】17個のアミノ酸配列の整列である。
【図7B】図7Aの続き。
【図7C】図7Bの続き。
【図8】記載の細胞抽出物について、1測定あたりに生成したグルクロネートのμgを1測定あたりのタンパク質のμgに対してプロットしたグラフ。
【図9】グルクロネート還元酵素活性を有するポリペプチドからのアミノ酸配列を含有する配列リスト。2位のスレオニンはアラニンでもよい。
【図10】D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトヒドロラーゼ活性を有するポリペプチドからのアミノ酸配列を含有する配列リスト。2位のスレオニンはアラニンでもよい;16位のバリンはアラニンでもよい;17位のメチオニンはイソロイシンでもよい;34位のグルタミン酸はグルタミンでもよい;および162位のバリンの後にバリンを挿入してもよい。
【図11】ウロノラクトナーゼ活性を有するポリペプチドからのアミノ酸配列を含有する配列リスト。2〜20位のアミノ酸残基は、除去して成熟ポリペプチドを生成することができる。
【図12】グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドからのアミノ酸配列を含有する配列リスト。85位のイソロイシンはバリンでもよく、189位のグルタミンはヒスチジンでもよい。
【図13】ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドからのアミノ酸配列を含有する配列リスト。
【図14】酸性ホスファターゼ活性を有するポリペプチドからのアミノ酸配列を含有する配列リスト。
【図15】フィターゼ活性を有するポリペプチドからのアミノ酸配列を含有する配列リスト。
【図16】フィターゼ活性を有するポリペプチドからのアミノ酸配列を含有する配列リスト。
【図17】ホスファターゼ活性を有するポリペプチドからのアミノ酸配列を含有する配列リスト。
【図18】グルコースまたはフィチン酸からD-グルカン酸を産生する代謝経路を示す図。
【図19】記載のサンプルについて、0、3、または6時間インキュベーション後の1mlあたりOD600に対してアスコルビン酸μgをプロットしたグラフ。
【図20】記載のサンプルについて、0、4、8、または19時間インキュベーション後の、アスコルビン酸の濃度をプロットしたグラフ。
【図21】グルクロン酸からグルカン酸への変換を示すHPLCと質量スペクトルグラフを含む。

Claims (90)

  1. 核酸分子を細胞中に導入することを含む、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを細胞に提供する方法であって、核酸分子はポリペプチドをコードし、細胞はポリペプチドを発現する上記方法。
  2. 細胞は原核細胞である、請求項1の方法。
  3. 原核細胞は、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、ラクトバチルス(Bacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)細胞よりなる群から選択される、請求項2の方法。
  4. 細胞は真核細胞である、請求項1の方法。
  5. 真核細胞は、酵母、真菌、昆虫、および哺乳動物細胞よりなる群から選択される、請求項4の方法。
  6. 細胞は、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、シュワニオミセス(Schwanniomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、スポドプテラ(Spodoptera)、クリセツルス(Cricetulus)、およびホモサピエンス(Homo sapiens)細胞よりなる群から選択される、請求項1の方法。
  7. 核酸分子は細胞のゲノム中に組み込まれる、請求項1の方法。
  8. ポリペプチドは、配列番号12、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35に記載の配列と、少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含む、請求項1の方法。
  9. ポリペプチドは、配列番号12、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35に記載の配列と、少なくとも約70パーセント同一のアミノ酸配列を含む、請求項1の方法。
  10. 細胞はL-アスコルビン酸またはグルカン酸を産生する、請求項1の方法。
  11. 細胞はグルクロネート還元酵素活性を含む、請求項1の方法。
  12. 細胞は、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性、またはウロノラクトナーゼ活性を含む、請求項1の方法。
  13. 細胞は、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ヘキソースオキシダーゼ活性、またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を含む、請求項1の方法。
  14. 細胞はホスファターゼ活性を含む、請求項1の方法。
  15. 細胞はフィターゼ活性を含む、請求項1の方法。
  16. 細胞はL-グロネート3-脱水素酵素が欠如した、請求項1の方法。
  17. 細胞は、1gの乾燥細胞重量当たり1時間当たり40mgグルクロン酸を超える比活性のミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を含む、請求項1の方法。
  18. 細胞は、1×106 細胞からの抽出物が、10mgの総タンパク質あたり10分間に生成されるグルクロン酸が150μgを超える比活性を有するように、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を含み、ここで各1×106 細胞は、その細胞であるかまたは細胞の子孫である請求項1の方法。
  19. 核酸分子は、乳糖非応答性であるプロモーターを含む、請求項1の方法。
  20. ポリペプチドは、N-末端ポリヒスチジンタグが欠如した、請求項1の方法。
  21. ポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ配列が欠如した、請求項1の方法。
  22. 1つ以上の外因性核酸分子を含む細胞であって、該1つ以上の外因性核酸分子は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、かつ細胞は少なくとも一つの該ポリペプチドを発現する、上記細胞。
  23. 細胞は原核細胞である、請求項22の細胞。
  24. 原核細胞は、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、ラクトバチルス(Bacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)細胞よりなる群から選択される、請求項23の細胞。
  25. 細胞は真核細胞である、請求項22の細胞。
  26. 真核細胞は、酵母、真菌、昆虫、および哺乳動物細胞よりなる群から選択される、請求項25の方法。
  27. 細胞は、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、アスペルギルス(Aspergillus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、シュワニオミセス(Schwanniomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、スポドプテラ(Spodoptera)、クリセツルス(Cricetulus)、およびホモサピエンス(Homo sapiens)細胞よりなる群から選択される、請求項22の細胞。
  28. ポリペプチドは、配列番号12、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35に記載の配列と、少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含む、請求項22の細胞。
  29. ポリペプチドは、配列番号12、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35に記載の配列と、少なくとも約70パーセント同一のアミノ酸配列を含む、請求項22の細胞。
  30. 細胞は、1つ以上の外因性核酸分子によりコードされる第2のポリペプチドをさらに含む、請求項22の細胞。
  31. 第2のポリペプチドはグルクロネート還元酵素活性を含む、請求項30の細胞。
  32. 第2のポリペプチドは、配列番号36に記載の配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含む、請求項31の細胞。
  33. 第2のポリペプチドは、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性、ヘキソースオキシダーゼ活性、またはウロノラクトナーゼ活性を含む、請求項30の細胞。
  34. 第2のポリペプチドは、配列番号37または38に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含む、請求項33の細胞。
  35. 第2のポリペプチドは、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を含む、請求項30の細胞。
  36. 第2のポリペプチドは、配列番号39または40に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含む、請求項35の細胞。
  37. 第2のポリペプチドはホスファターゼ活性を含む、請求項30の細胞。
  38. 第2のポリペプチドは、配列番号41または44に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含む、請求項37の細胞。
  39. 第2のポリペプチドはフィターゼ活性を含む、請求項30の細胞。
  40. 第2のポリペプチドは、配列番号42または43に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含む、請求項39の細胞。
  41. 細胞は、第2のポリペプチドと、1つ以上の外因性核酸分子によりコードされる第3のポリペプチドをさらに含む、請求項22の細胞。
  42. 第2のポリペプチドは、グルクロネート還元酵素活性、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、グロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性、ウロノラクトナーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ活性、フィターゼ活性、およびホスファターゼ活性よりなる群から選択される活性を含む、請求項41の細胞。
  43. 第3のポリペプチドは、グルクロネート還元酵素活性、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、D-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、グロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性、ウロノラクトナーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ活性、フィターゼ活性、およびホスファターゼ活性よりなる群から選択される活性を含む、請求項41の細胞。
  44. 細胞はL-グロネート3-脱水素酵素活性が欠如した、請求項22の細胞。
  45. 細胞は、L-グロネート3-脱水素酵素活性を低下させる遺伝子修飾を含む、請求項22の細胞。
  46. 遺伝子修飾は、細胞のゲノム中の核酸欠失を含む、請求項45の細胞。
  47. 細胞はアスコルビン酸またはグルカン酸を産生する、請求項22の細胞。
  48. 細胞はピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ活性を含む、請求項47の細胞。
  49. 細胞は、1gの乾燥細胞重量当たり1時間当たり40mgグルクロン酸を超える比活性のミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を含む、請求項22の細胞。
  50. 細胞は、1×106 細胞からの抽出物が、10mgの総タンパク質あたり10分間に生成されるグルクロン酸が150μgを超える比活性を有するように、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を含み、ここで各1×106 細胞は、その細胞であるかまたは細胞の子孫である請求項22の細胞。
  51. 外因性核酸分子は、乳糖非応答性であるプロモーターを含む、請求項22の細胞。
  52. ポリペプチドは、N-末端ポリヒスチジンタグが欠如した、請求項22の細胞。
  53. ポリペプチドは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ配列が欠如した、請求項22の細胞。
  54. 外因性核酸分子は、細胞のゲノム中に組み込まれる、請求項22の細胞。
  55. ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドの発現が低下するように、細胞のゲノムの遺伝子修飾を含む、細胞中のミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を低下させる方法。
  56. 細胞は真核細胞である、請求項55の方法。
  57. 細胞は植物細胞である、請求項55の方法。
  58. 遺伝子修飾は、細胞のゲノム中の核酸欠失を含む、請求項55の方法。
  59. ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を低下させる遺伝子修飾を含む細胞。
  60. 細胞は真核細胞である、請求項59の方法。
  61. 細胞は植物細胞である、請求項59の方法。
  62. 遺伝子修飾は、細胞のゲノム中の核酸欠失を含む、請求項59の方法。
  63. 細胞はミオイノシトールオキシゲナーゼ活性が欠如した、請求項59の細胞。
  64. L-グロネート3-脱水素酵素活性を低下させる遺伝子修飾を含む細胞。
  65. 細胞は真核細胞である、請求項64の細胞。
  66. 遺伝子修飾は、細胞のゲノム中の核酸欠失を含む、請求項64の細胞。
  67. 細胞はL-グロネート3-脱水素酵素活性が欠如した、請求項64の細胞。
  68. 配列番号1に記載の配列と少なくとも約50パーセント同一の核酸配列を含む、単離された核酸分子。
  69. 単離された核酸分子は、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、請求項68の単離された核酸分子。
  70. 核酸配列は請求項1に記載のものである、請求項68の単離された核酸分子。
  71. 配列番号19に記載の配列と少なくとも約50パーセント同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
  72. ポリペプチドは、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する、請求項71の単離された核酸分子。
  73. アミノ酸配列は請求項19に記載のものである、請求項71の単離された核酸分子。
  74. アスコルビン酸の産生方法であって:
    a) ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドを接触させてグルクロネートを形成させ、ここで第1のポリペプチドは細胞内にあり、
    b) グルクロネートに、グルクロネート還元酵素活性を有する第2のポリペプチドを接触させてグロネートを形成させ、
    c) グロネートに1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性および/またはD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性よりなる群から選択される活性を有する第3のポリペプチドを接触させてグロノ-γ-ラクトンを形成させ、そして
    d) グロノ-γ-ラクトンにグロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、およびグロノ-ラクトン脱水素酵素活性を有する第4のポリペプチドを接触させてアスコルビン酸を形成させる、
    ことを含む方法であり、1グラムの乾燥細胞重量あたり1時間で少なくとも10mgのアスコルビン酸が産生される上記方法。
  75. アスコルビン酸の産生方法であって:
    a) ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドを接触させてグルクロネートを形成させ、ここで第1のポリペプチドは細胞内にあり、
    b) グルクロネートに、ウロノラクトナーゼ活性を有する第2のポリペプチドを接触させてグルクロノ−ラクトンを形成させ、
    c) グルクロノ−ラクトンに、グルクロノラクトン還元酵素活性を有する第3のポリペプチドを接触させて、グロノ-γ-ラクトンを形成させ、そして
    d) グロノ-γ-ラクトンにグロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、およびグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性を有する第4のポリペプチドを接触させてアスコルビン酸を形成させる、
    ことを含む方法であって、1グラムの乾燥細胞重量あたり1時間で少なくとも10mgのアスコルビン酸が産生される上記方法。
  76. アスコルビン酸の産生方法であって、
    a) ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドを接触させてグルクロネートを形成させ、ここで、第1のポリペプチドは細胞外にあり、
    b) グルクロネートに、グルクロネート還元酵素活性を有する第2のポリペプチドを接触させてグロネートを形成させ、
    c) グロネートに1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性およびD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性よりなる群から選択される活性を有する第3のポリペプチドを接触させてグロノ-γ-ラクトンを形成させ、そして
    d) グロノ-γ-ラクトンにグロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、およびグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性よりなる群から選択される活性を有する第4のポリペプチドを接触させてアスコルビン酸を形成させる、
    ことを含む上記方法。
  77. アスコルビン酸の産生方法であって、
    a) ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドを接触させてグルクロネートを形成させ、ここで、第1のポリペプチドは細胞外にあり、
    b) グルクロネートに、ウロノラクトナーゼ活性を有する第2のポリペプチドを接触させてグルクロノ−ラクトンを形成させ、
    c) グルクロノ−ラクトンに、グルクロノラクトン還元酵素活性を有する第3のポリペプチドを接触させて、グロノ-γ-ラクトンを形成させ、そして
    d) グロノ-γ-ラクトンにグロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、および/またはグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性よりなる群から選択される活性を有する第4のポリペプチドを接触させてアスコルビン酸を形成させる、
    ことを含む上記方法。
  78. グルカン酸の産生方法であって、
    a) ミオイノシトールをグルクロン酸に変換し、そして
    b) グルクロン酸をグルカン酸変換する、
    ことを含む上記方法。
  79. ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを接触させることを含む、請求項78の方法。
  80. グルクロン酸に、アルデヒド脱水素酵素活性、ヘキソースオキシダーゼ活性、およびアルデヒドオキシダーゼ活性よりなる群から選択される活性を有するポリペプチドを接触させることを含む、請求項78の方法。
  81. ミオイノシトールのグルクロン酸への変換、またはグルクロン酸のグルカン酸への変換は、細胞中で起きる、請求項78の方法。
  82. 少なくとも1つの工程は化学変換により行われる、請求項78の方法。
  83. アスコルビン酸の産生方法であって、
    a) ミオイノシトールをグルクロネートに変換し;
    b) グルクロネートをグロネートに変換し;
    c) グロネートをグロノ-γ-ラクトンに変換し;そして
    b) グロノ-γ-ラクトンをアスコルビン酸に変換する
    ことを含む上記方法。
  84. ミオイノシトールに、ミオイノシトールオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを接触させることを含む、請求項83の方法。
  85. グルクロネートに、グルクロネート還元酵素活性を有するポリペプチドを接触させることを含む、請求項83の方法。
  86. グロネートに、1,4-ラクトンヒドロキシアシルヒドロラーゼ活性、ウロノラクトナーゼ活性、およびD-グルコノ-1,5-ラクトンラクトノヒドロラーゼ活性よりなる群から選択される活性を有するポリペプチドを接触させることを含む、請求項83の方法。
  87. グロノ-γ-ラクトン酸に、グロノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、ガラクトノ-γ-ラクトンオキシダーゼ活性、およびグロノ-γ-ラクトン脱水素酵素活性よりなる群から選択される活性を有するポリペプチドを接触させることを含む、請求項83の方法。
  88. ミオイノシトールのグルクロネートへの変換、グルクロネートのグロネートへの変換、およびグロネートのグロノ-γ-ラクトンへの変換、またはグロノ-γ-ラクトンのアスコルビン酸への変換は、細胞内で起きる、請求項83の方法。
  89. 少なくとも1つの工程は化学変換により行われる、請求項83の方法。
  90. 細胞は植物細胞である、請求項10の方法。
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