JP2004531236A - 動物飼料添加剤としてのd−パントテン酸および/またはその塩の製造方法 - Google Patents

動物飼料添加剤としてのd−パントテン酸および/またはその塩の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004531236A
JP2004531236A JP2002566370A JP2002566370A JP2004531236A JP 2004531236 A JP2004531236 A JP 2004531236A JP 2002566370 A JP2002566370 A JP 2002566370A JP 2002566370 A JP2002566370 A JP 2002566370A JP 2004531236 A JP2004531236 A JP 2004531236A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solution
pantothenic acid
pantothenate
weight
calcium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002566370A
Other languages
English (en)
Inventor
バルデニアス,カイ−ウヴェ
ベック,クリスティーネ
フィッシャー,アンドレアズ
ハルツ,ハンス−ペーター
ローシャイト,マルクス
リーマン,マーチン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
BASF SE
Original Assignee
BASF SE
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by BASF SE filed Critical BASF SE
Publication of JP2004531236A publication Critical patent/JP2004531236A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P13/00Preparation of nitrogen-containing organic compounds
    • C12P13/02Amides, e.g. chloramphenicol or polyamides; Imides or polyimides; Urethanes, i.e. compounds comprising N-C=O structural element or polyurethanes
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23KFODDER
    • A23K10/00Animal feeding-stuffs
    • A23K10/10Animal feeding-stuffs obtained by microbiological or biochemical processes
    • A23K10/12Animal feeding-stuffs obtained by microbiological or biochemical processes by fermentation of natural products, e.g. of vegetable material, animal waste material or biomass
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23KFODDER
    • A23K20/00Accessory food factors for animal feeding-stuffs
    • A23K20/10Organic substances
    • A23K20/174Vitamins

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Animal Husbandry (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Sustainable Development (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Physiology (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Fodder In General (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)

Abstract

本発明はD-パントテン酸および/またはその塩の改良された製造方法、および動物飼料添加剤としてのそれの使用に関する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明はD-パントテン酸および/またはその塩の改良された製造方法に関し、また動物飼料添加剤としてのそれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
補酵素Aの生合成の出発素材として、D-パントテン酸は動植物界に広く分布している。食物を通してパントテン酸の十分な量を摂取する人間とは対照的に、D-パントテン酸欠乏症の症状が植物のみならず動物についても数多く報告されている。D-パントテン酸のアベイラビリティはそれゆえに特に動物飼料産業界では大きな経済的関心事である。
【0003】
一般的には、D-パントテン酸はD-パントラクトンとβ-アラニン酸カルシウムから化学合成反応により製造される(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th edition, 1999、電子出版、“Vitamins”の章)。D-パントテン酸の製造は、ジアステレオマー塩を経由しての複雑な古典的ラセミ体分離を必要とする。この化学合成反応から得られる市販の製品は通常D-パントテン酸のカルシウム塩、すなわちD-パントテン酸カルシウムである。
【0004】
化学合成に比較して、微生物を使ったバイオテクノロジーによる製造方法の利点は、高等生物が摂取することができるパントテン酸のD体を選択的(鏡像異性体的に純粋)に産生することである。化学合成反応で必要とされる複雑なラセミ体分離は従って必要ない。
【0005】
多数の、微生物を使ったD-パントテン酸の発酵製造方法が公知であり、例えばEP-0 590 857、WO 96/33283、US 6,013,492、WO 97/10340、DE 198 46 499、EP 1 001 027、EP 1 006 189、EP 1 006 192およびEP 1 006 193に記載のものである。
【0006】
例えば、EP 1 006 189およびEP 1 001 027は、発酵溶液中のD-パントテン酸含有量最大1 g/Lを達成するパントテン酸の製造方法を記載している。しかしながら、そのような低い発酵溶液中のパントテン酸の含有量、すなわち固形分基準で10重量%より低いものは、D-パントテン酸含有の動物飼料サプリメントの経済的な製造には向いていない。これまでに記載されたこれらの方法の別の欠点は、発酵培地から生成物を単離するには数多くの複雑な後処理工程を必要とすることである。工業スケールでの経済的な製造方法は知られていない。
【0007】
ドイツ国特許出願公開 DE 100 16 321は、D-パントテン酸含有の動物飼料サプリメントの発酵製造方法を記載している。しかしながら、この方法の重大な欠点は、上述のD-パントテン酸の発酵製造方法と同じように、目的とする生成物の経済的収量を得るためには、パントテン酸前駆体β-アラニンを、発酵培地を介して微生物に供給しなければならないことである。
【0008】
さらに、US 6,013,492およびWO 96/332839は、培養培地から不溶構成成分(例えば細胞材料)を濾過分離し、その濾液を活性炭に吸着させ、そのあと有機溶媒(好ましくはメタノール)でD-パントテン酸を溶出させ、水酸化カルシウムで中和しそしてそのあとD-パントテン酸カルシウムを結晶化させることによる、発酵溶液からのD-パントテン酸の後処理を記載している。結晶化の際に貴重な生成物のロスが起ること、また、生成物から分離するのに困難が伴い且つ複雑な溶媒回収工程を必要とする有機溶媒を用いること、が見過ごせない欠点である。
【0009】
EP 0 590 857は、微生物の培養にβ-アラニンのフィード(供給)を必要とするD-パントテン酸の発酵製造方法を記載している。この方法では発酵溶液を濾過してバイオマスを分離し、そのあと陽イオン交換体を通過させ次いで陰イオン交換体を通過させ、そのあと水酸化カルシウムで中和させ、蒸発により濃縮し、活性炭を加え、もう一度濾過を行いそしてメタノールおよび塩化カルシウムを加えることで結晶化させる。得られるパントテン酸カルシウム含有の生成物は、カルシウム塩の形態にあるD-パントテン酸以外に塩化カルシウムもモル比1:1で含有する。この塩化カルシウムの含有量を減らすには電気透析とそのあとのスプレー乾燥を必要とする。この工程は、複雑な工程段階が多数あることまた有機溶媒を使用することから、経済的でなくまた環境上もよくないという欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、D-パントテン酸および/またはその塩を含有する動物飼料サプリメントならびに、上述の欠点を持たない、D-パントテン酸および/またはその塩の改良された製造方法を提供することにある。経済的な理由から、ここではβ-アラニンの供給が大幅に低下しているかまたは全く必要としない方法が望ましい。さらに、パントテン酸の二価の塩はその一価の塩よりもより低い吸湿特性を有する、従って例えば動物飼料サプリメントなどのその先の用途においてより低い凝集の傾向を示すので、D-パントテン酸をその二価の塩の形態、そして特にアルカリ土類金属塩の形態で製造するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、この目的は本発明により有利に達成されることを見出した。
本発明はD-パントテン酸および/またはその塩の製造方法に関し、その方法は、
a)D-パントテン酸を産生し且つパントテン酸(pan)および/またはイソロイシン/バリン(ilv)の生合成が調節解除されており且つ培養培地中で発酵によりD-パントテン酸の塩を少なくとも2 g/L生成する少なくとも1種の生物を用い、該培養培地に遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩0〜20 g/Lを供給する工程、
b)得られたD-パントテン酸塩含有の発酵溶液を、電場を印加することにより1つ以上のイオン選択性膜を通過させて、該D-パントテン酸塩含有溶液から低分子量のイオンを取り除く工程、
c)カルシウム塩基および/またはマグネシウム塩基を加えて前記溶液中に含まれる遊離のD-パントテン酸をpH 5〜10に調整し、パントテン酸カルシウムおよび/またはマグネシウムを含有する溶液を得る工程、および
d)前記パントテン酸カルシウムおよび/またはパントテン酸マグネシウム含有の溶液を乾燥および/または剤形化する工程、
を有する。
【0012】
本発明の方法の1つの実施形態では、工程c)またはd)において、パントテン酸カルシウムおよび/またはパントテン酸マグネシウムを含有する懸濁液が得られるかまたは生成される。
【0013】
本発明の工程a)で行う発酵はさらに、それ自体公知の、回分式、流加式[fed-batch]もしくは繰り返し流加式または連続式の方法を用いて行うことができる。得られるパントテン酸はこの場合例えば、NaOH、KOHまたはアンモニアを含有しているリン酸緩衝液などの通常の緩衝液システムを用いて中和される。
【0014】
本発明の他の実施形態では、工程a)において、発酵により培養培地中に少なくとも10 g/L、好ましくは少なくとも20 g/L、特に好ましくは少なくとも40 g/L、非常に好ましくは少なくとも60 g/L、とりわけ特に少なくとも70 g/LのD-パントテン酸の塩を生成させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の意味するところでは、「産生する」という表現は、生物が、それ自体の代謝ニーズに必要とされるよりもさらに多い量のD-パントテン酸および/またはその塩を合成することができるということを意味する。本発明の有利な実施形態では、合成されるD-パントテン酸および/またはその塩の量は細胞の内側には存在せず、むしろ理想的には生物により培養培地中に完全に放出される。この排出は、それ自体公知の機序により、能動的あるいは受動的であり得る。
【0016】
本発明では用いるD-パントテン酸産生生物は微生物である。これらには本発明では真菌、酵母および/または細菌が挙げられる。本発明では、例えばケカビなどの真菌、または、例えばSaccharomycesもしくはDebaromycesなどの酵母、を用いるのが好ましく、これらの中ではSaccharomyces cerevisiaeが好ましい。有利には、本発明ではコリネ型細菌またはBacillaceaeを用いる。本発明の範囲内にあるもので好ましいものは例えば、Corynebacterium属、Escherichia属、Bacillus属、Arthrobacter属、Bevibacterium属、Pseudomonas属、Salmonella属、Klebsiella属、Proteus属、Acinetobacter属、またはRhizobium属の細菌である。この場合特に好ましいのは、例えば、Corynebacterium glutamicum、Brevibacterium breveまたはBacillus subtilis、B. licheniformis、B. amyloliquefaciens、B. cereus、B. lentimorbus、B. lentus、B. firmus、B. pantothenticus、B. circulans、B. coagulans、B. megaterium、B. pumilus、B. thuringiensis、B. brevis、B. stearothermophilusおよびその16sRNAにより特徴づけられるグループ1の他のBacillus種、あるいはActinum mycetalisである。この掲載は説明のためのものであって、決して本発明を限定するものではない。
【0017】
さらに本発明はまた、遊離のD-パントテン酸および/またはその塩を含有する動物飼料用サプリメントの改良された製法に遺伝子改変生物を用いることも含む。そのような遺伝子改変生物は、例えば化学的突然変異誘発とそのあとの適切な「スクリーニング方法」を用いる選別[selection]により単離することができる。本発明では、本発明の意味において本生成物を産生するのに好適であり且つ、細胞膜を通してのD-パントテン酸および/またはその塩の排出に関する改変も含めて、その代謝フラックスに関してD-パントテン酸の方向への遺伝的改変を有する、「産生用菌株」と呼ばれるものも含まれる。これは例えば、用いる生物の適切な代謝生合成の経路中の鍵となる位置で改変することにより達成できる。
【0018】
目的とする生成物を合成するのに必要である、または必要とされ得る相同および/または非相同ヌクレオチド塩基配列の導入により得られる遺伝子導入生物を用いることも考えられる。この場合は、そのゲノム中および/またはベクター上に個々におよび/または組み合せで局在化された1つ以上の遺伝子の過剰発現および/または調節解除が考えられる。
このタイプの遺伝子導入生物は有利にも、panB、panC、panD、panEおよび/またはこれらの組み合せさらには/あるいはpanBCDオペロンを含有している組織ユニットから構成される群から選択される追加のコピーおよび/または遺伝子改変された遺伝子を含有することができる。加えて、例えばEP 1 006 189、EP 1 006 192、EP 1 006 193またはEP 1 001 027に記載されているように、例えばイソロイシン-バリン生合成経路などの他の代謝経路をこの生物中で都合良く操作することができる。その結果、パントテン酸生合成の分岐鎖前駆体物質がますます利用可能となる。有利には、適切な場合はこの生合成経路の遺伝子、すなわちilvB、ilvN、ilvCおよび/またはilvDを過剰発現させる。
さらに、用いる本D-パントテン酸産生生物中の、例えば過剰発現および/または調節解除によるアスパラギン酸α-デカルボキシラーゼ(panD)の遺伝子改変が本発明に包含される。
【0019】
本発明の意味するところでは、用語「調節解除[deregulation]」とは、微生物中で1つの酵素の活性を変更または改変するために、生合成の代謝経路においてその酵素をコードする少なくとも1個の遺伝子を変更または改変することを意味する。遺伝子産物がもっと多量に生成するよう、あるいはもっと高い活性をもつように、生合成代謝経路の1つの酵素をコードする少なくとも1個の遺伝子を変更するのが好ましい。用語「調節解除された代謝経路」は、1つ以上の酵素の活性が変更または改変されるように、1つ以上の酵素をコードする1個以上の遺伝子が変更または改変されている生合成代謝経路も包含する。
変更または改変としては、限定するものではないが、以下のようなものが含まれ得る:内因性プロモーターまたは調節エレメントの除去;強力プロモーター、誘導プロモーターの導入あるいは複数プロモーターの同時導入;目的遺伝子産物の発現を変えるために行う調節塩基配列の除去;目的遺伝子の染色体位置の変更;目的遺伝子の近辺または遺伝子の中、例えばリボソーム結合部位(RBS)におけるDNA塩基配列の変更;ゲノム中で目的遺伝子のコピー数を増大させることまたは様々なコピー数のプラスミドの導入による目的遺伝子のコピー数の増大;遺伝子の転写および/または目的遺伝子産物を生じるその翻訳において役割を演じるタンパク質(例:調節タンパク質、サプレッサ、エンハンサー、転写活性化因子など)の改変。これには、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いること、あるいはリプレッサータンパク質をブロックすることなど、先行技術に属する、遺伝子発現を調節解除する他の全ての可能性も含まれる。
調節解除は、例えば、目的遺伝子産物のフィードバック調節の除去につながる、あるいは目的遺伝子産物のより大きいまたはより小さい特異的活性につながる、遺伝子のコード領域への変更も含み得る。
【0020】
さらに、本発明では、パントテン酸の前駆体の流出および/または補酵素Aを生じるパントテン酸のフラックスに作用する酵素の遺伝子改変が有利である。そのような酵素をコードする遺伝子の例は:alsD、avtA、ilvE、ansB、coaA、coaX 等である。この掲載は説明のためだけであって、断じて本発明を制限するものではない。
加えて、補因子(例えば、メチレンテトラヒドロ葉酸、レドックス等価体などの)の細胞産生を、パントテン酸産生に至適な量で確保する遺伝子改変が有利である。
【0021】
例えば、対応する遺伝子改変されていない生物と比較して、β-アラニンが細胞中に高められた濃度で既に存在し、その結果、例えばEP-A 0 590 857で必要とされているようには、培養培地に前駆体として加える必要がないと有利である。パントテン酸(pan)および/またはイソロイシン-バリン(ilv)ならびに/あるいはアスパラギン酸-α-デカルボキシラーゼ(panD)の生合成が調節解除されている微生物が有利である。さらに、微生物中のケトパント酸レダクターゼ(panE)の追加的な過剰発現が有利である。
【0022】
本発明では、適切ならば、補酵素Aの生合成に必要であるcoaA遺伝子がその活性において低くなっている、あるいは完全にスイッチが切られている(例えばBacillus種において)場合はさらに有利である。これは、Bacillusが、coaAに加えて、この酵素作用のための別の遺伝子(= coaX)を含んでいるためである。この遺伝子coaXまたはそれの対応する酵素の活性もまた、coaA自体が、低下した酵素活性ではあるがなお十分な酵素活性を有している場合は、すなわちcoaAの酵素活性が完全には失われていない場合は、変える、好ましくは減らす、あるいは消すことさえもできる。各種遺伝子の過剰発現に加えて、これら遺伝子のプロモーター領域の遺伝子操作もまた、この操作が本遺伝子産物の過剰発現を引き起こす場合は、有利である。
【0023】
本発明の1つの実施形態では、PCT/US 出願番号 0025993に記載されている細菌株、例えばBacillus subtilis[枯草菌] PA 824および/またはその派生株、が用いられる。本発明の好ましい実施形態では、US 出願番号 60/262,995に記載されている微生物Bacillus subtilis PA 668が本発明の方法において使用される。これらの菌株Bacillus subtilis PA 824およびPA 668は以下のようにして作成した。
【0024】
遺伝子型trpC2(Trp-)をもつ菌株Bacillus subtilis 168(Marburg 菌株 ATCC 6051)から出発して、菌株PY79を、Trp+マーカー(Bacillus subtilis 野生型 W23 からのもの)の形質導入を経て作成した。この菌株PY79中に古典的遺伝子工学手法(例えば、Harwood, C.R. and Cutting, S.M. (editors), Molecular Biological Methods for Bacillus (1990) John Wiley & Sons, Ltd., Chichester, England に記載されている)により変異ΔpanBおよびΔpanE1を導入した。
得られた菌株を、Bacillus subtilis 菌株 PA221(遺伝子型 P26panBCD、trpC2(Trp-))のゲノムDNAおよびBacillus subtilis 菌株 PA303(遺伝子型 P26panE1)のゲノムDNAで形質転換した。結果として得られる菌株PA327は遺伝子型P26panBCD、P26panE1を有し、トリプトファン栄養要求株(Trp-)である。Bacillus subtilis 菌株 PA327を、前もってβ-アラニン5 g/Lとα-ケトイソ吉草酸5 g/Lが補充されているSVY培地(水 740 mL中に、Difco Veal Infusion Broth 25 g/L、Difco Yeast Extract 5 g/L、グルタミン酸Na 5 g/L、硫酸アンモニウム 2.7 g/Lを投入し、得られる混合液を高圧加熱滅菌しそのあとpH 7.0の1 M リン酸カリウム 200 mLと50% 滅菌グルコース溶液 60 mLを加えた)を含有する培養液10 mL中に用いて、最高3.0 g/L(24 時間)のパントテン酸力価を達成した。
【0025】
Bacillus subtilis 菌株 PA221(遺伝子型 P26panBCD、trpC2(Trp-))の作成は次のようにして行った。
古典的遺伝子工学手法により、Bacillus subtilis GP275プラスミドライブラリーから出発して、E. coliのpanBCDオペロンの塩基配列情報(参照:Merkel et al., FEMS Microbiol. Lett., 143, 1996:247-252)の助けを借りて、BacillusのpanBCDオペロンのクローニングを行った。このクローニングには、E. coli 菌株 BM4062(birts)および、Bacillusオペロンは birA 遺伝子の近くにあるという情報を用いた。panBCDオペロンを、E. coli中で複製することができるプラスミド中に導入した。このpanBCDオペロンの発現を改良するために、Bacillus subtilis ファージ SP01の強力構成プロモーター(P26)を用い、またpanB遺伝子の前にあるリボソーム結合部位(=RBS)を人工RBSで置き換えた。Bacillusの元々のpanB遺伝子の直ぐ上流にあるDNA断片を、上記プラスミド上のP26panBCDカセットの前にライゲーション(結紮)した。このプラスミドをBacillus subtilis 菌株 RL-1(古典的突然変異誘発により得られるBacillus subtilis 168の派生株(Marburg 菌株 ATCC 6051)、遺伝子型 trpC2(Trp-))中に導入し、そして相同組換えにより、元々のpanBCDオペロンをp26panBCDオペロンで置き換えた。得られる菌株はPA221と呼び、遺伝子型P26panBCD、trpC2(Trp-)を有する。
このBacillus subtilis 菌株 PA221を、前もってβ-アラニン5 g/Lとα-ケトイソ吉草酸5 g/Lが補充されているSVY培地を含有する培養液10 mL中で用いて、最高0.92 g/L(24 時間)のパントテン酸力価を達成した。
【0026】
Bacillus subtilis 菌株 PA303(遺伝子型 P26panE1)の作成は次のようにして行った。
E. coli panE 遺伝子塩基配列を用いて、Bacillus panE 塩基配列を同じようにしてクローニングした。B. subtilis には、panE1 および panE2と呼ばれるE. coli panE遺伝子の二つの相同体が存在することを見出した。欠失解析によりpanE1遺伝子がパントテン酸産生の90%を担い、panE2遺伝子を欠失させてもパントテン酸の産生には有意な影響がないことが分かった。ここでもまた、panBCD オペロンのクローニングと同様に、プロモーターを強力構成プロモーターP26 で置き換え、panE1遺伝子の前のリボソーム結合部位を人工結合部位で置き換えた。このP26panE1 断片を、P26panE1断片をBacillus subtilisゲノムの元のpanE1遺伝子座中に組み込むことができるように作成されたベクター中にクローニングした。遺伝子導入および相同組換えの後得られる菌株をPA303と命名、この菌株は遺伝子型 P26panE1を有している。このBacillus subtilis 菌株 PA303を用いて、前もってβ-アラニン5 g/Lとα-ケトイソ吉草酸5 g/Lが補充されているSVY培地を含有する培養液10 mL中で、最高1.66 g/L(24 時間)のパントテン酸力価を達成した。
【0027】
PA327を、P26ilvBNCオペロンとスペクチノマイシンのマーカー遺伝子を有しているプラスミドで形質転換することにより別の菌株を作成した。P26ilvBNC オペロンをamyE遺伝子座中に組み込み、組み込みはPCRにより確認された。1つの形質転換株をPA340と呼んだ(遺伝子型 P26panBCD、P26panE1、P26ilvBNC、specR、trpC2(Trp-))。
このBacillus subtilis 菌株 PA340を、前もってβ-アラニン5 g/Lだけが補充されている、SVY培地を含有している培養液10 mL中で用いて、最高3.6 g/L(24 時間)のパントテン酸力価を達成した;前もってβ-アラニン5 g/Lとα-ケトイソ吉草酸5 g/Lが補充されている、SVY培地を含有する培養液10 mL中では、最高4.1 g/L(24 時間)のパントテン酸力価を達成した。
【0028】
さらに、菌株PA340中に調節解除されたilvDカセットを導入した。このためには、人工RBS2を含んでいる、P26プロモーターの支配下にあるilvD遺伝子を含んでいるプラスミドをPA340中に導入した。このP26ilvD遺伝子を元のilvD遺伝子座中に相同組換えにより組み込んだ。この結果得られる菌株 PA374は、遺伝子型 P26panBCD、P26panE1、P26ilvBNC、P26ilvD、specRおよびtrpC2(Trp-)を有する。
このBacillus subtilis 菌株 PA374を、前もってβ-アラニン5 g/Lだけが補充されている、SVY培地を含有する培養液10 mL中で用いて、最高2.99 g/L(24 時間)のパントテン酸力価を達成した。
【0029】
β-アラニンをフィードすることなく菌株 PA374を用いてパントテン酸を産生させるために、アスパラギン酸-α-デカルボキシラーゼをコードする遺伝子panDの追加のコピーを菌株 PA374中に導入した。このためには、菌株 PA401の染色体DNAをPA374中に導入した。菌株PA377をテトラサイクリンのセレクション(選別)により得た。
結果として得られる菌株 PA377は遺伝子型 P26panBCD、P26panE1、P26ilvBNC、P26ilvD、specR、tetRおよびtrpC2(Trp-)を有する。
【0030】
Bacillus subtilis 菌株 PA377をSVY培地を含有する培養液10 mL中で用いて、最高1.31 g/L(24 時間)のパントテン酸力価を達成した。
【0031】
Bacillus subtilis 菌株 PA401(遺伝子型 P26panD)の調製は次のようにして行った。
Bacillus subtilis panD遺伝子をpanBCDオペロンから、テトラサイクリンマーカー遺伝子を持つベクター中にクローニングした。プロモーターP26および上記した人工RBSをpanD遺伝子の前にクローニングした。制限消化により、テトラサイクリンマーカー遺伝子とP26panD遺伝子を含んでいる断片を調製した。この断片を再ライゲーションして上述の菌株 PA221中に形質転換した。断片は菌株 PA211のゲノム中に組み込まれていた。この結果得られる菌株 PA401は遺伝子型P26panBCD、P26panD、tetRおよびtrpC2(Trp-)を有している。
このBacillus subtilis 菌株 PA401を、前もってα-ケトイソ吉草酸5 g/Lが補充されているSVY培地を含有する培養液10 mL中で用いて、最高0.3 g/L(24 時間)のパントテン酸力価を達成した。前もってD-パントテン酸5 g/LとL-アスパラギン酸10 g/Lが補充された、SVY培地を含有する培養液10 mLでは、最高2.2 g/L(24 時間)のパントテン酸力価を達成した。
【0032】
菌株 PA377から出発して、菌株 PY79に由来する染色体DNAによる形質転換によりトリプトファン原栄養菌株を作成した。この菌株PA824は遺伝子型P26panBCD、P26panE1、P26ilvBNC、P26ilvD、specR、tetRおよびTrp+を有する。
Bacillus subtilis 菌株 PA824を、SVY培地の培養液10 mL中で用いて前駆体の供給なしで最高4.9 g/L(48 時間)のパントテン酸力価を達成した(PA377との比較:48時間で最高3.6 g/L)。
【0033】
PA668の調製は次のように行った。
Bacillus panB遺伝子を野生型panBCD オペロンからクローニングし、クロラムフェニコール耐性遺伝子に加えてvpr遺伝子座のB. subtilis 塩基配列も含んでいるベクター中に挿入した。
強力構成プロモーターP26をpanB遺伝子の5'末端の前に導入した。P26panB遺伝子、クロラムフェニコール耐性のマーカー遺伝子ならびにBacillus subtilis vpr 塩基配列を含んでいる1つの断片を制限消化により得た。単離した断片を再ライゲーションし、菌株PA824を形質転換するのに用いた。結果として得られる菌株をPA668と呼んだ。PA668の遺伝子型は:P26panBCD、P26panE1、P26ilvBNC、P26ilvD、P26panB、specR、tetR、CmRおよびTrp+である。
PA668の2つのコロニーを単離し、1つをPA668-2Aと呼び、もう1つの方をPA668-24と呼んだ。
B. subtilis 菌株 PA668-2Aを用いて、前駆体の供給なしのSVY培地の培養液10 mL中48時間で1.5 g/Lのパントテン酸力価が達成される。アスパラギン酸10 g/Lが補充されている培養液10 mL中では、最高5 g/Lの力価が達成される。
B. subtilis 菌株 PA668-24を用いて、前駆体の供給なしのSVY培地の培養液10 mL中48時間で1.8 g/Lのパントテン酸力価が達成される。L-アスパラギン酸10 g/Lが補充されている培養液10 mL中では、最高4.9 g/Lの力価が達成される。
【0034】
菌株の正確な作成法については、PCT/US出願番号0025993およびUS出願番号60/262,995を参照されたい。
【0035】
上述の菌株PA377を用いて、グルコース溶液が連続供給されている10 L規模でのSVY培地(Difco Veal Infusion Broth 25 g/L、Difco Yeast Extract 5 g/L、トリプトファン5 g/L、グルタミン酸Na 5 g/L、(NH4)2SO4 2 g/L、KH2PO4 10 g/L、K2HPO4 20 g/L、CaCl2 0.1 g/L、MgSO4 1 g/L、クエン酸ナトリウム1 g/L、FeSO4・7H2O 0.01 g/L、ならびに以下の組成の微量塩溶液 1 mL/L:Na2MoO4・2H2O 0.15 g、H3BO3 2.5 g、CoCl2・6H2O 0.7 g、CuSO4・5H2O 0.25 g、MnCl2・4H2O 1.6 g、ZnSO4・7H2O 0.3 g、水で1 Lにする)中のグルコース制限発酵において、36時間(48時間)で発酵ブロス中のパントテン酸濃度18-19 g/L(22-25 g/L)が達成される。
【0036】
酵母エキス培地(Difco Yeast Extract 10 g/L、グルタミン酸Na 5 g/L、(NH4)2SO4 8 g/L、KH2PO4 10 g/L、K2HPO4 20 g/L、CaCl2 0.1 g/L、MgSO4 1 g/L、クエン酸ナトリウム 1 g/L、FeSO4・7H2O 0.01 g/L、ならびに上記の微量塩溶液1 mL/L)中での、PA377のトリプトファン原栄養派生株であるPA824のグルコース制限発酵の場合は、グルコース溶液が連続供給されている10 L規模において、36時間、48時間および72時間で、以下の発酵ブロス中パントテン酸濃度が達成される:20 g/L、28 g/Lおよび36 g/L。
培地のさらなる至適化により、Difco Yeast Extract 10 g/L、NZアミンA(Quest International GmbH, Erftstadt) 10 g/L、グルタミン酸ナトリウム 10 g/L、(NH4)2SO4 4 g/L、KH2PO4 10 g/L、K2HPO4 20 g/L、CaCl2 0.1 g/L、MgSO4 1 g/L、クエン酸ナトリウム 1 g/L、FeSO4・7H2O 0.01 g/Lおよび上記の微量塩溶液1 mL/Lから構成される培地中のグルコース制限発酵に菌株PA824を用いて、グルコース溶液が連続供給されている10 L規模において36時間(48時間)で、発酵ブロス中パントテン酸濃度37 g/L(48 g/L)が達成される。
さらなる培地の至適化により、また発酵時間を長くすることにより、また工程と菌株の改良により、またこれらの個々の段階を組み合せることにより、発酵ブロス中のパントテン酸濃度をさらに増大させることが考えられる。例えば、上述のパントテン酸濃度は、上記PA824の派生株である菌株の発酵によっても達成可能である。派生株は古典的な菌株生育により、またさらなる遺伝子工学的な操作により調製することができる。培地、菌株および発酵方法の開発により、発酵ブロス中のパントテン酸力価を40、45、50、55、60、65、70、75、80、85および90 g/Lよりも大きくすることができる。
【0037】
本発明の方法の重要な優位点は、出発化合物として、少なくとも1種の炭素源および窒素源以外には他の前駆体を含んでいない培養培地中で発酵を行うことにある。すなわちD-パントテン酸の生合成は、他の前駆体の供給には依存しないことである。本発明の意味するところでは、そのような前駆体は、β-アラニンおよび/またはL-アスパラギン酸および/またはL-バリンおよび/またはα-ケトイソ吉草酸および/またはこれらの組み合せのような物質である。
本発明の好ましい実施形態では、D-パントテン酸産生生物の発酵を、炭素源と窒素源を含有し、発酵の過程で遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩を加えないまたは供給しない培養培地中で行う。すなわちD-パントテン酸を、少なくとも10 g/L培養培地、好ましくは少なくとも20 g/L、特に好ましくは少なくとも40 g/L、非常に好ましくは少なくとも60 g/L、そしてなかでも少なくとも70 g/Lの範囲で製造するのに、本発明では遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩の供給を必要としない。
前駆体の供給に依存しないということは、前駆体の多くは大変高価であるので、公知の方法と比較した場合、本発明の方法の特に重要な経済的優位点である。
【0038】
しかしながら、本発明はβ-アラニンおよび/またはβ-アラニン塩を添加することを排除するものではなく、従ってD-パントテン酸の収率はβ-アラニンおよび/またはβ-アラニン塩を加えることによりさらに増大させることができる。例えばパントテン酸の必要とされる全ての前駆体が十分な量存在するとすると、panD遺伝子の活性のみがパントテン酸産生のさらなる増加を制限するので、パントテン酸の収率は、遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩を加えることにより、例えばさらに50%増やすことができる。
本発明の有利な実施形態では、パントテン酸の収率をさらに50%増やすために培養培地に最高20 g/Lの遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩を加えることができる。培養培地には約15 g/Lの遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩を加えるのが好ましい。
【0039】
上述の生物を発酵させる培養培地に用いるのに本発明で適切な炭素源の例は、デンプン加水分解物(単糖類、二糖類、オリゴ糖類)などの糖類(グルコースもしくはスクロースが好ましい)、ならびにビート糖蜜もしくはサトウキビ糖蜜、タンパク質、タンパク質加水分解物、ダイズミール、コーン・スティープ・リカー[corn steep liquor]、脂肪、遊離脂肪酸、前の発酵からの再循環細胞もしくはその加水分解物、および酵母エキス、である。この掲載は本発明に対して限定を行うものではない。
【0040】
さらに、本発明の方法は、全糖質含有量を発酵の終点まで最低限に抑えられるという点が、さもなければ粘着のため後に行なわれる発酵溶液の乾燥および/または剤形化が困難になると考えられるので、有利な特徴である。これは本発明では、(流加式、繰り返し流加式または連続工程式の場合)炭素源の濃度が実質的にゼロとなるように、(回分式培養の場合)炭素源が消費されたあと、あるいは(流加式もしくは繰り返し流加式の工程方式の場合)炭素のフィードを停止および/または調節したあと、発酵をさらにしばらくの間続けることにより達成できる。
【0041】
これは本発明では、炭素源(例えば砂糖水)の添加を中断したあと、発酵溶液中で溶解酸素濃度(pO2)がその飽和値の少なくとも80%、好ましくは90%、そして特に好ましくは95%に到達するまで発酵を続けることにより達成される。
【0042】
本発明で好適な窒素源の例は、アンモニア、硫酸アンモニウム、尿素、タンパク質、タンパク質加水分解物あるいは酵母エキスである。この掲載もまた本発明に対して限定的なものではない。
【0043】
さらに、本発酵培地にはアミノ酸やビタミンなどの無機塩類および/または微量元素を含ませる。適切な発酵培地の正確な組成は当業者には十分知られており、また入手可能である。
発酵培地に適当なD-パントテン酸産生生物を接種したあと(当業者には知られている細胞密度で)、適切ならば消泡剤を加えて、その生物を培養する。培地のpHの必要な調節は、各種の無機もしくは有機のアルカリもしくは酸(例えば、NaOH、KOH、アンモニア、リン酸、硫酸、塩酸、蟻酸、コハク酸、クエン酸など)を用いて行うことができる。
【0044】
発酵の際に用いる緩衝系のため(これは、先に述べたように、例えばNaOH、KOH、アンモニア、リン酸、硫酸、塩酸、蟻酸、コハク酸、クエン酸などであり得る)、生成するD-パントテン酸は、発酵溶液中で、用いる緩衝系に依存して、それぞれの塩の形態で存在する。この場合本発明では、特に一価陽イオンの形態にあるD-パントテン酸の塩は不利であるので、すなわちD-パントテン酸がそのカルシウム塩またはマグネシウム塩の形態にあるのが好ましいので、発酵溶液は本発明では電気的膜分離工程により処理される。
【0045】
本発明ではこの場合、膜電解法あるいは電気透析法などの、電気的膜分離法の全ての利用可能なタイプが含まれる。適切な選択を行うには当業者の知識は十分である。
本発明では電気透析を用いるのが好ましい。この場合、専ら単極膜を用いる電気透析を用いることができるのみならず、単極膜および/または両極膜を用いる電気透析も用いることができる。特に好ましいのは、専ら単極膜を用いる電気透析、特にモノ(一価)選択性膜と呼ばれる、一価のイオンに対して選択性である単極膜を有している電気透析である。
原理的には、本発明の方法を実施するのには、電気透析工程の絡みで通常用いられる全ての膜が使用できる。本発明の電気透析の絡みで用いられる膜は好ましくは市販の、在来型の、イオン交換膜である。
用い得る陰イオン交換膜は、例えば、Tokuyama Corp.のNeosepta AM1、AM2、AM3、AMX、AMH、AFN、およびAsahi GlassのAMVである。
陽イオン交換膜の例は、Neosepta CM1、CM2、CMX、CMH、CMB、Asahi glassのCMV、ならびにDu Pont de NemoursのNafion 435または350である。
言及しておいてもよい一価選択性陽イオン交換膜は、例えばNeosepta CMS膜である。
用い得る一価選択性陰イオン交換膜は、例えば、Tokuyama Corp.のNeosepta ACS膜、あるいはAsahi GlassのSelmion ASV膜である。
用いる電極としては、ステンレススチール、ニッケル、貴金属(例えばプラチナ)あるいは当業者には公知の他の適当な材料が挙げられる。
【0046】
単極電気透析を用いることで、本発明では、パントテン酸塩含有溶液からマイグレーション(イオン移動)により電場の中を陰イオン交換膜または陽イオン交換膜を通過させて第2の溶液(濃縮溶液、CONC)の中に、陰イオンのみならず陽イオンも移動させることができ、その結果それらイオンをパントテン酸含有溶液(希釈溶液、DIL)から除去することができる。有利なことには、本発明では、上記パントテン酸含有溶液から低分子量イオンが除去される。本発明では、低分子量イオンとは、培養培地および/または緩衝系の組成により発酵ブロス中に導入されたが、最終製品中には不要であるものである。例えば、それらには次のようなイオンが挙げられる:アンモニウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、鉄イオン、塩化物イオン、リン酸イオンまたは硫酸イオン。
【0047】
本発明のさらなる実施形態では、Ca2+ などの多価の陽イオンに対向して、Na+ あるいはアンモニウムイオンなどの一価陽イオンのイオン交換を行うことが可能である。このためには、一価のイオンに対して選択的である陽イオン交換膜を用いる。従って、例えば、
循環路 Iには、CaCl2 の溶液を投入し、そして陽イオン交換膜により循環路 Iから隔てられている第2の循環路 IIには一価陽イオン含有パントテン酸溶液を投入する。次に、一価イオンに対して選択的であり且つチャンバー IIとチャンバー IIIの間に配置されている陽イオン交換膜を通って、好ましくは一価陽イオンを第3のチャンバー III中に移動させる。このとき同時に、塩化物イオンなどの陰イオンを、チャンバー Iとチャンバー IIIの間に配置された陰イオン交換膜を通してチャンバー Iからチャンバー III中に移動させる。Ca2+ イオンは陽イオン交換膜を通ってチャンバー Iからチャンバー II中に移動する。このようにしてD-パントテン酸カルシウムを直接得る。例えばパントテン酸などの弱酸の塩が存在する場合は、チャンバー I中にCaCl2 の代わりにHCl水溶液を投入する組み合わせで遊離のD-パントテン酸を生成させることもできる。
【0048】
本発明はまた無機陰イオンまたは有機陰イオンの形態にあるカルシウム塩および/またはマグネシウム塩の使用も包含する。有利には、本発明では、カルシウムおよび/またはマグネシウムの塩化物、硝酸塩、水酸化物、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、グリシン酸塩、あるいは乳酸塩を用いる。
【0049】
両極電気透析を用いる、本発明の別の実施形態では、有利なことには、その両極膜中の水の解離によりプロトンが同時に供給されることで、パントテン酸塩含有溶液から陽イオン交換膜を通って第2の溶液中に陽イオンを移動させることができ、従って上記パントテン酸含有溶液から陽イオンを分離することができる。この第2の溶液中では、上記両極膜中の水の解離により供給される水酸イオンを用いることで、移動させられた陽イオンの対応する塩基が生成する。
【0050】
両極電気透析を用いる、本発明のもう1つの実施形態では、有利なことには、その両極膜中の水の解離により水酸イオンが同時に供給されることで、パントテン酸塩含有溶液から陰イオン交換膜を通って第2の溶液中に陰イオンを移動させることができ、従って上記パントテン酸含有溶液から陰イオンを分離することができる。この第2の溶液中では、上記両極膜中の水の解離により供給されるプロトンを用いることで、移動させられた陰イオンの対応する酸が生成する。
【0051】
本発明はまたさらに別の実施形態も包含するもので、この場合は、両極電気透析を用いることで、第1には、有利なことには、その両極膜中の水の解離により水酸イオンが同時に供給されることで、パントテン酸塩含有溶液から陰イオン交換膜を通って第2の溶液中に陰イオンが移動させられ、従って上記パントテン酸含有溶液から陰イオンが分離され、そして第2には、該両極膜中の水の解離によりプロトンが同時に供給されることで、該パントテン酸塩含有溶液から陽イオン交換膜を通って第3の溶液中に陽イオンが移動させられ、従ってパントテン酸含有溶液から陽イオンが分離される。この第2の溶液中では、該両極膜中の水の解離により供給されるプロトンを用いることで移動させられた陰イオンの対応する酸が生成し、そして第3の溶液中では、両極膜中の水の解離により供給される水酸イオンを用いることで移動させられた陽イオンの対応する塩基が生成する。
【0052】
さらに本発明では本方法において、好ましくは、パントテン酸塩含有溶液のpHを酸もしくは塩基を用いてパントテン酸の等電点に調整する。これにより、遊離D-パントテン酸の収量をさらに増大させることができるか、あるいはロスをさらに少なくすることができる。
【0053】
単極電気透析は、両極電気透析に比較して極めて費用対効果が良いので、特に好ましい実施形態である。
【0054】
特に、pHを調整するのに酸もしくは塩基を加えてはならない場合は、あるいは存在する酸またはアルカリ金属水酸化物溶液をさらに用いることができる場合は、両極電気透析を用いてもよい。
【0055】
本発明では、全ての電気透析の実施形態は、イオン交換樹脂の再生から廃水は生じないという利点を提供する。
【0056】
本発明に従い本電気的分離工程を用いることで、好ましいことには、D-パントテン酸塩含有溶液から、アンモニウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、鉄イオン、塩化物イオン、リン酸イオンあるいは硫酸イオンなどの不要の低分子量イオン(関係のないイオン)が分離される。すなわち、好ましいことには、遊離D-パントテン酸またはD-パントテン酸カルシウムおよび/またはマグネシウムなどの望ましい塩が生成される。
本発明では、一価陽イオン、好ましくはアンモニウムイオン、カリウムイオンおよび/またはナトリウムイオンの含有量は、濃度≦1 g/kg溶液に下がる。
【0057】
例えば塩化物イオン、硫酸イオンまたはリン酸イオンなどの不要の陰イオンの含有量も、イオン交換膜を選択することにより、好ましくは陰イオン交換膜を用いることで、相当下げることができる。
【0058】
遊離D-パントテン酸を含有している、得られた溶液を、本発明ではカルシウム塩基および/またはマグネシウム塩基を加えることでpH3〜10に調整する。pH5〜10が有利である。好ましくは、pHは5〜9の値、特に好ましくは6〜9、そしてなかでも特に好ましくは6〜8に調整する。このようにしてパントテン酸カルシウムおよび/またはパントテン酸マグネシウムを含有する溶液を得る。中和反応には、好ましくは、本溶液に、固形物の形態でおよび/または水性懸濁液として、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび/または塩基性炭酸マグネシウムを加える。
本発明ではこの場合、本遊離D-パントテン酸含有溶液を、水性懸濁液の形態にあるカルシウム塩基および/またはマグネシウム塩基で中和するのが好ましい。水性分散液を用いる結果、この中和反応はより迅速に、且つ対応する固形物を用いた場合に起る比較的大きなpHの変動もなく行なわれる。
【0059】
本発明では、本方法は、工程c)において溶液に、水酸化カルシウム2〜55重量%、好ましくは10〜50重量%、そして特に好ましくは20〜40重量%含んでいる水性懸濁液を加えることを特徴としている。本発明はさらに、工程c)において溶液に、炭酸カルシウム2〜65重量%、好ましくは10〜50重量%、そして特に好ましくは20〜40重量%含んでいる水性懸濁液を加える方法を包含する。本発明のさらなる実施形態では、本発明の方法の工程c)において溶液に、水酸化マグネシウム2〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、そして特に好ましくは20〜40重量%含んでいる水性懸濁液を加える。本発明はまた、工程c)において溶液に、塩基性炭酸マグネシウム2〜25重量%、好ましくは10〜20重量%含んでいる水性懸濁液を加える方法も包含する。
【0060】
本発酵溶液は、それ自体公知の方法、例えばスプレー乾燥、スプレー顆粒化、流動層乾燥、流動層顆粒化、ドラム乾燥あるいは遠心脱水フラッシュ乾燥((Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th edition, 1999、電子出版、“Drying of Solid Materials”の章)、を用いて乾燥および/または剤形化させる。対流乾燥におけるガス入口温度は100〜280℃、好ましくは120〜210℃の範囲内である。ガス出口温度は50〜180℃、好ましくは60〜150℃である。望ましい粒子径分布、またそれに関連する製品特性を得るためには、微細粒子を分離して再循環させることもできる。加えて、粒の粗い材料は粉砕機で粉砕して同様にそのあと再循環させることもできる。
【0061】
本発明では、上述の方法において、複雑な後処理工程が減ること、特に高い生物学的価値をもつ所望製品の製造を同時に行いながら有機溶媒の使用が避けられることが有利な点である。加えて、本発明では、生成する廃液の量が顕著に少なくなる。従ってこれは、複雑な後処理プラントおよび廃棄処理プラントのさらなる節約につながる。従って本発明の方法は、従来の方法に比べて、より簡単であること、誤りをより起しにくいこと、時間がよりかからないこと、際立ってより安価であること従ってより経済的であることを有利な特徴としている。
【0062】
しかしながらこれは、本発明の方法を変えることができるということを排除するものではない。冒頭に記載した本発明の方法の工程a)〜d)は、それ自体当業者にはよく知られている以下の工程段階の1つ以上を補充することができる。この場合、付加される(操作)工程段階と本(必須)工程段階a)〜d)との考えられ得る全ての組み合せは本発明に包含される。
【0063】
例えば、本工程段階a)〜c)で得られる溶液は、例えば加熱(滅菌)あるいは例えばパスツール式低温滅菌または滅菌濾過などの他の方法により殺菌することができる。
【0064】
本発明の他の実施形態では、発酵溶液の乾燥および/または剤形化の前に、溶菌および/またはバイオマスの滅菌および/または発酵溶液からのバイオマスの分離および/またはさらなる添加剤の添加および/または発酵溶液の濃縮(好ましくは水の除去による)等の工程の少なくとも1つおよび/またはそれらを組み合せたものを行うことができる。
【0065】
従って本発明はまた、溶菌および/またはバイオマスの滅菌を、まだ発酵溶液中に在る時に、あるいはバイオマスが発酵溶液から分離される前に行う方法にも関する。これは、例えば温度処理により(好ましくは80〜200℃)、および/または酸処理により(好ましくは硫酸または塩酸により)、および/または酵素的に(好ましくはリソチームで)行うことができる。
【0066】
本発明のさらなる実施形態では、発酵した微生物の細胞は、本発明の方法の工程a)、b)またはc)の溶液から、濾過、分離(例えば遠心分離)および/またはデカンテーションにより分離することができる。また工程a)、b)またはc)の溶液を、存在する微生物を分離することなく、電場を印加することにより直接1以上のイオン選択性膜を通過させることも考えられる。
【0067】
膜式電気分解あるいは膜式電気透析による後処理で得られる溶液は、中和反応の後、適当な蒸発器、例えば流下膜式蒸発器、薄膜型蒸発器あるいはロータリーエバポレータにより濃縮することができる。そのような蒸発器は、例えば、GIG社(4800 Attnang Puchheim, Austria)、GEA Canzier社(52303 Deuren, Germany)、Diessel社(31103 Hildesheim, Germany)、Pitton社(35274 Kirchhain, Germany)等の会社が製作している。
【0068】
最終製品の色調を良くするには、本方法で得られる溶液に少量の活性炭を加え、そしてその懸濁液をそのあと濾過するさらなる濾過工程を実施することでできる。あるいは、本発酵中に得られる溶液を、小型の活性炭ベッドの中に通すこともできる。これに必要とされる、使用される活性炭の量は溶液の数重量%の範囲内であり、当業者の知識と経験の範囲内のものである。
これらの濾過操作は、濾過操作の前にそれぞれの溶液に市販の凝集助剤を加えることにより簡易化することができる(例えばBASF AG(Ludwigshafen)のSedipur CF 902あるいはSedipur CL 930)。
【0069】
本発明の1つの有利な実施形態では、発酵産物(発酵ブロス)を加熱により滅菌し、そしてそのあと細胞塊を遠心分離、濾過あるいはデカンテーションにより分離する。この発酵産物を基準にして市販の通常の凝集助剤50〜1000 mg/kg、好ましくは100〜200 mg/kgを加えた後、この混合物を活性炭と砂の短いベッドを通過させて濾過することにより高D-パントテン酸含有量の、バイオマス無しの溶液を得る。この処理された溶液を次に電場を印加することにより1つ以上のイオン選択性膜を通過させる。
【0070】
この溶液は次に例えばスプレー乾燥により乾燥させることができる。これは並流で、向流であるいは混成流で行うことができる。噴霧化(atomization)には、いずれの公知の噴霧器(atomizer)も用いることができ、特には一流体型ノズルまたは二流体型ノズルの遠心噴霧器(アトマイザーディスク)である。好ましくは乾燥温度条件は塔入口温度を150〜250℃、塔出口温度を70〜130℃とする。しかしながら、乾燥をもっと高い温度レベルで、あるいはもっと低い温度レベルで行うこともできる。非常に低い残留水分率を達成するには、流動床の下流にさらなる乾燥工程を設けることができる。
【0071】
このスプレー乾燥は、スプレー乾燥器と流動床を組み合せたものであり、Niro(Copenhagen, Denmark)およびAPV-Anhydro(Copenhagen, Denmark)の会社で製作されているFSD乾燥機またはSBD乾燥機(FSD: fluidized spray dryer; SBD: spray bed dryer)で行うことができる。
このスプレー乾燥においては固化防止剤を加えることができる。これにより、特に微細粉末の場合、乾燥機壁への付着を減らすことができまた流動特性を良くすることができる。使用できる固化防止剤は、なかでもケイ酸塩、ステアリン酸塩、リン酸塩、コーンスターチである。
【0072】
原理的には上記乾燥はスプレー式流動床でも行うことができ、この場合これは連続式のみならず回分式にも運転することができる。溶液を上部から(上部スプレー)ならびに底部から(底部スプレー)のみならず、側部から(側部スプレー)もスプレーすることができる。
【0073】
本発明はさらに動物飼料添加剤および/または動物飼料サプリメントとして使用される組成物にも関し、この場合それは以下の工程によって調製され得る:
a)D-パントテン酸を産生し且つパントテン酸(pan)および/またはイソロイシン/バリン(ilv)の生合成が調節解除され且つ培養培地中で発酵によりD-パントテン酸の塩を少なくとも2 g/L生成する少なくとも1種の生物を用い、該培養培地に遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩0〜20 g/L、好ましくは0 g/Lを供給する工程、
b)得られたD-パントテン酸塩含有の発酵溶液を電場を印加することにより1つ以上のイオン選択性膜を通過させて、該D-パントテン酸塩含有溶液から低分子量のイオンを取り除く工程、
c)カルシウム塩基および/またはマグネシウム塩基を加えて前記溶液中に含まれている遊離のD-パントテン酸をpH 3〜10に調整し、パントテン酸カルシウムおよび/またはマグネシウムを含有する溶液を得る工程、および
d)前記パントテン酸カルシウムおよび/またはパントテン酸マグネシウム含有の溶液を乾燥および/または剤形化する工程。
【0074】
本発明の1つの実施形態では、本組成物は、工程c)またはd)において、パントテン酸カルシウムおよび/またはパントテン酸マグネシウムを含有する懸濁液を得るまたは使用することを特徴としている。
【0075】
本発明では本組成物はさらに、それがD-パントテン酸の塩を少なくとも1-100重量%、好ましくは少なくとも20-100重量%、そして特に好ましくは少なくとも50重量%の濃度で含んでいることを特徴としている。本発明は、二価陽イオンの形態、好ましくはD-パントテン酸カルシウムおよび/またはマグネシウムの形態でD-パントテン酸の塩を含んでいる組成物に関する。本発明では、一価陽イオンの形態でのD-パントテン酸の塩の含有量が≦1 g/kgであることを特徴としている組成物が好ましい。
【0076】
本発明では上述の方法により、飼料添加剤の要求事項を満足するD-パントテン酸カルシウムまたはD-パントテン酸マグネシウムが得られる。これらの要求事項は、例えば、D-パントテン酸塩の比較的高い含有量およびその標的生物に対する高い適合性ならびに、本発明製品の「ビタミン活性」の意味においての生物学的価値である。
【実施例】
【0077】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
実施例1
撹拌機と14 L容量のガス導入装置を有する実験室発酵槽中に、以下の組成の水性発酵培地を投入した。
【表1】
Figure 2004531236
【0078】
滅菌のあと、以下の滅菌培地成分をさらに加えた。
【表2】
Figure 2004531236
【0079】
表中の微量塩溶液は次のような組成を有する:Na2MoO4・2H2O 0.15 g、H3BO3 2.5 g、CoCl2・6H2O 0.7 g、CuSO4・5H2O 0.25 g、MnCl2・4H2O 1.6 g、ZnSO4・7H2O 0.3 gを水で合計1 Lとする。この微量塩溶液を滅菌濾過を経させて加える。初期液体容量を8.4 Lとする。上記で設定された含有量はこの値に基づく。
【0080】
この溶液に、Bacillus subtilis PA824の接種培養菌(SVY培地[SVY 培地:H2O 740 mL中Difco Veal Infusion ブロス 25 g、Difco Yeast Extract 5 g、グルタミン酸ナトリウム 5 g、(NH4)2SO4 2.7 g、滅菌する;滅菌 1M K2HPO4(pH 7) 200 mLおよび滅菌 50% グルコース溶液 60 mLを加える(最終容量 1L)]中 OD = 10)160 mLを加え、そしてガス流量12 L/分で激しく撹拌しながら43℃で発酵させる。この菌株はPCT/US Application 0025993に記載されている。
【0081】
52時間で、滅菌水溶液 6 Lを加えた。その組成は以下のとおりであった。
【表3】
Figure 2004531236
【0082】
発酵をグルコース制限条件下で行った。発酵中はpHを25%濃度のアンモニア溶液または20%濃度のリン酸を加えることにより7.2に保った。アンモニアは本発酵に対しては同時に窒素源として役立たせる。撹拌羽根の回転スピードを制御して溶解酸素含有量をその飽和値の30%に保った。泡が立つのを時々消泡剤を加えることで抑えた。炭素源の添加を停止した後、発酵を溶解酸素含有量(pO2)がその飽和値の95%の値に到達するまで続けた。発酵をこのあと終わらせ、そして微生物を熱により破壊した。このためには発酵溶液を60分間滅菌した。破壊はプレートアウト[plating out]により示された。細胞をそのあと遠心分離により取り除いた。細胞分離のあと、52時間後D-パントテン酸塩濃度は24.7 g/Lである。
【0083】
同様にして、β-アラニンフィード無しのパントテン酸力価が20よりも大きい、25よりも大きい、30よりも大きい、35よりも大きい、40よりも大きい、45よりも大きい、50よりも大きい、55よりも大きい、60よりも大きい、65よりも大きい、70よりも大きい、75よりも大きい、80よりも大きい、85よりも大きい、そして90 g/Lよりも大きい発酵ブロスを製造することもできる。
【0084】
上述のように熱により滅菌され、また遠心分離により実質的にバイオマスが取り除かれた発酵生成物をさらなるD-パントテン酸と混ぜ、そしてpHを硫酸で約2に合わせた。得られた溶液を小型の砂/活性炭のベッドを通過させて濾過した。この溶液中のD-パントテン酸の含有量は67.7 g/Lである。
【0085】
この濾液900 gを次のように電気透析により処理した:(有効セル面積1.85 dm2 および5つのチャンバーを有する陰イオンおよび陽イオン交換膜[それぞれTokuyama Corp.のNeosepta AMX SbタイプおよびCMX Sbタイプ]が装着された)電気透析セル中で該濾液を初期電流密度29 mA/cm2 で脱塩した。この電流密度は、実験ランにおいて予めセットされた限界電圧20 Vに到達したあと連続的に下がった。その時の温度は33℃〜40℃であった。濃縮フィードとして0.5%濃度(w/w)のNaCl溶液を投入した。この濃縮液(CONC)を、実験ランにおいて濾液(希釈液[diluate]、DIL)から分離された関係の無いイオン(例:アンモニウムイオン、塩化物イオン、鉄イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオンあるいはリン酸イオン)で濃縮した。電気分解サイクルにおいては、電極をフラッシングするために5%濃度(w/w)の硫酸ナトリウム溶液を投入した。実験ラン中、上記希釈溶液の色々なイオン伝導率の値において、希釈液収容チャンバーからサンプルを採り、分析した。分析結果が以下の表に示されており、この表から実験時間を進めるに連れて、該イオンが希釈液から先に分離され、希釈液の電気伝導度が対応して下がることが示されている。例えば塩化物イオンのような小さい一価のイオンは、例えばリン酸イオンのような大容積多価イオンよりもより迅速に除去される。
【0086】
上記希釈液の分析結果を以下の表に示す。
【表4】
Figure 2004531236
【0087】
全ての希釈液サンプルのpHは2〜3であった。希釈液排出量771 gは76 g/Lの遊離D-パントテン酸を含有する。
この表から発酵で得られるD-パントテン酸溶液を電気透析により、妨害陽イオンからうまく分離できることが分かる。実施例2に記載されているように、この得られた脱塩D-パントテン酸から、非吸湿性D-パントテン酸カルシウムの粉末を製造することができる。
【0088】
実施例2
撹拌機と容量14 Lのガス導入装置を有する実験室発酵槽中に以下の組成の水性発酵培地を投入した。
【表5】
Figure 2004531236
【0089】
滅菌ののち、以下の滅菌培地成分をさらに加えた。
【表6】
Figure 2004531236
【0090】
表中の微量塩溶液は次のような組成を有する:Na2MoO4・2H2O 0.15 g、H3BO3 2.5 g、CoCl2・6H2O 0.7 g、CuSO4・5H2O 0.25 g、MnCl2・4H2O 1.6 g、ZnSO4・7H2O 0.3 gを水で合計1 Lとする。この微量塩溶液を滅菌濾過を通過させて加える。初期液体容量を5.5 Lとする。上記で設定された含有量はこの値に基づく。
【0091】
この溶液に、Bacillus subtilis PA824の接種培養菌(SVY培地[SVY 培地:H2O 740 mL中にDifco Veal Infusion ブロス 25 g、Difco Yeast Extract 5 g、グルタミン酸ナトリウム 5 g、(NH4)2SO4 2.7 gを溶解させ、滅菌する;滅菌 1M K2HPO4(pH 7) 200 mLおよび滅菌 50% グルコース溶液 60 mLを加える(最終容量 1L)]中 OD = 10)55 mLを加え、そしてガス流量12 L/分で激しく撹拌しながら43℃で発酵させる。この菌株はPCT/US Application 0025993に記載されている。
【0092】
48時間で、滅菌水溶液 6 Lを加えた。その組成は以下のとおりであった。
【表7】
Figure 2004531236
【0093】
発酵をグルコース制限条件下で行った。発酵中はpHを25%濃度のアンモニア溶液または20%濃度のリン酸を加えることにより7.2に保った。アンモニアは本発酵に対しては同時に窒素源として役立たせる。撹拌羽根の回転スピードを制御して溶解酸素含有量をその飽和値の30%に保った。泡が立つのを時々消泡剤を加えることで抑えた。炭素源の添加を停止した後、発酵を溶解酸素含有量(pO2)がその飽和値の95%の値に到達するまで続けた。発酵をこのあと終わらせ、そして微生物を熱により破壊した。このためには発酵溶液を30分間滅菌した。破壊はプレートアウトにより示された。細胞を遠心分離により取り除いた。細胞分離のあとの48時間後D-パントテン酸塩濃度は24.1 g/Lであった。
【0094】
同様にして、β-アラニンフィード無しのパントテン酸力価が20よりも大きい、25よりも大きい、30よりも大きい、35よりも大きい、40よりも大きい、45よりも大きい、50よりも大きい、55よりも大きい、60よりも大きい、65よりも大きい、70よりも大きい、75よりも大きい、80よりも大きい、85よりも大きい、そして90 g/Lよりも大きい発酵ブロスを製造することができる。
【0095】
この発酵槽生成物2817 mLを濃度178.9 g/Lのパントテン酸溶液1183 mLと混ぜ、そして25%濃度の水酸化アンモニウム溶液(pH 6.5)で中和した。得られた混合物を次に砂/活性炭を通過させて濾過する。この濾液中のD-パントテン酸の含有量は67 g/Lであり、基本的にはアンモニウム塩の形態であった。
この溶液約720 gを実施例1に従い電気透析により処理した。
排出希釈液(密度1.017 g/mLを有している)550 gを40%濃度の水酸化カルシウム懸濁液3.5 gでpH 7.5に調整した。D-パントテン酸カルシウム水溶液を得た(551.03 g、D-パントテン酸カルシウム含有量40.9 g/L)。
上記パントテン酸カルシウム水溶液をNiro Minor実験室用スプレー乾燥機中で乾燥させた。塔入口温度は約200℃で、塔出口温度は90℃であった。噴霧化[atomization]を圧力2 barの二流体型ノズルを用いて行った。加えた粉末化剤はSipernat 22Fであった。以下のスペックの微紛製品を得た(数値の単位は重量%):
水分含有量:2.3%
D-パントテン酸カルシウム:46.1%
アンモニウム:0.60%
カリウム:0.47%
ナトリウム:1.1%。
【0096】
実施例3
撹拌機と200 リットル容量のガス導入装置を有する発酵槽中で、50%濃度の酵母エキス800 g、グルタミン酸Na 438 g、ダイズ粉3200 g、硫酸アンモニウム640 g、KH2PO4 800 g、K2HPO4 1600 g、消泡剤TegoKS 50 mLを水70 Lと混ぜ、そして得られた混合物を121℃で30分間滅菌した。
溶液1および溶液2を次に加えた。
【0097】
溶液1は次のようにしてつくった:グルコース・H2O 1670 g、CaCl2・2H2O 10.2 gおよびMgCl2・6H2O 170.7 gを水9 Lに溶解し、30分間滅菌する。
【0098】
溶液2は次のようにしてつくる:クエン酸-鉄溶液(クエン酸ナトリウム200 g/L、FeSO4・7H2O 2 g/L、滅菌濾過する)800 mLを微量塩溶液(Na2MoO4・2H2O 0.15 g、H3BO3 2.5 g、CoCl2・6H2O 0.7 g、CuSO4・5H2O 0.25 g、MnCl2・4H2O 1.6 g、ZnSO4・7H2O 0.3 gを水で合計1 Lとし、滅菌濾過する)80 mLと混ぜる。
【0099】
この溶液に、Bacillus subtilis PA668の接種培養菌(SVY培地[SVY 培地:H2O 740 mL中Difco Veal Infusion ブロス 25 g、Difco Yeast Extract 5 g、グルタミン酸ナトリウム 5 g、(NH4)2SO4 2.7 g、滅菌する;滅菌 1M K2HPO4(pH 7) 200 mLおよび滅菌 50% グルコース溶液 60 mLを加える(最終容量 1L)]中 OD = 10)2 Lを加え、そしてガス流量3 m3/分で激しく撹拌しながら43℃で発酵させる。この菌株はUS Serial No. 60/262,995に記載されている。
【0100】
48時間で、約10 Lの滅菌グルコース水溶液を加えた。この溶液は次のようにしてつくった。グルコース・H2O 90 kgを水55 kgと混ぜ、そして30分間滅菌する。次に微量塩溶液(組成については上記を参照)300 mLおよびクエン酸-鉄溶液(組成については上記を参照)3 Lを加えた。そのあと、滅菌濾過90 g/L CaCl2・2H2O溶液1 Lおよび滅菌濾過375 g/Lグルタミン酸ナトリウム溶液2 Lを加えた。
【0101】
発酵をグルコース制限条件下で行った。発酵の間はpHを、25%濃度のアンモニア溶液または20%濃度のリン酸を加えることで7.2に保った。アンモニアは本発酵に対しては同時に窒素源として役立たせた。撹拌羽根の回転スピードを制御して溶解酸素含有量をその飽和値の30%に保った。泡が立つのを時々消泡剤を加えることで抑えた。炭素源の添加を停止した後、発酵を、溶解酸素含有量(pO2)がその飽和値の95%の値に到達するまで続けた。このあと発酵を終わらせた。細胞をディスクセパレーター中での分離により取り除いた。上澄み液中に残っている細胞を滅菌により熱的に破壊した。48時間後の停止時におけるD-パントテン酸塩の濃度は13.7 g/Lであった。分離および滅菌を行ったあとのD-パントテン酸塩の濃度は10.7 g/Lであった。同様に、β-アラニンフィード無しのパントテン酸力価が15よりも大きい、20よりも大きい、25よりも大きい、30よりも大きい、35よりも大きい、40よりも大きい、45よりも大きい、50よりも大きい、55よりも大きい、60よりも大きい、65よりも大きい、70よりも大きい、75よりも大きい、80よりも大きい、85よりも大きい、そして90 g/Lよりも大きい発酵ブロスを製造することもできる。
【0102】
このようにして予備処理された発酵溶液3000 gを次のようにしてさらに処理した:このバッチの3分の2を約10℃にて多価陰イオンの当量濃度(40%溶液)に相当するCaCl2 の量で沈殿させた;バッチの3分の1を同様にCa(OH)2(固体)の当量で沈殿させた。この溶液を冷蔵庫中に一晩保存し、そのあと沈降沈殿物を圧力フィルター(Seitzデプス・フィルター700)により取り除いた。この溶液を次によく混合し、そして約10℃にてさらにCa(OH)2 10 gを加えることで塩基性(pH = 8.7)とし、そして再沈殿させた。沈降沈殿物は同じように濾過分離した。
【0103】
この溶液1800 gを次に35℃で3循環路電気透析スタック中で塩交換した。この場合発酵ブロスは2枚の陽イオン交換膜により境界がつくられたプロダクトチャンバーの中を通過させた。陰極側では一価選択性の陽イオン交換膜(Tokuyama Soda, CMS)が濃縮液循環路からプロダクトを分離し、そして陽極側ではプロダクトチャンバーがCaCl2 循環路から通常の陽イオン交換膜(Tokuyama Soda, CMX)で隔てられていた。濃縮液およびCaCl2 循環路は陰イオン交換膜(Tokuyama Soda, AMX)で隔てられていた。濃縮液中に0.5%濃度のNaCl溶液750 gを投入し、そしてCaCl2 循環路中に3.05%濃度のCaCl2 溶液900 gを投入した。電極フラッシング循環路中では、0.1 M Na2SO4 溶液を循環させた。実験は、回分式で、全膜面積500 cm2 を有する上記した基本ユニット5つから構成されるスタック中で30 mA/cm2 の定電流で行った。停止するのに選んだ判断基準は、CaCl2 循環路における最低電気伝導度4 mS/cmとした。プロダクト循環路および濃縮液循環路中の陽イオン分析の結果を以下の表にまとめる。
【表8】
Figure 2004531236
【0104】
この表からナトリウムでは51%、アンモニウムでは66%、そしてカリウムでは61%の減少が計算される。平均直接収率は82%であった。2つの隣接する循環路中のパントテン酸のロスはそれぞれの場合用いた物質の量の0.08%であった。プロダクト循環路のpHは実験の間は7〜7.5であり、そして濃縮液およびCaCl2 循環路中では凡そpH = 6であった。全電圧降下は実験の間CaCl2 循環路中の電気伝導度の低下に従って約11 Vから16 Vに増加した。
【0105】
電気透析によりこのように処理された溶液をこのあとうまくスプレー乾燥して最終製品を得た。ここでは、適切な予備処理が行なわれる場合は、一価選択性陽イオン交換膜を用いた3循環路電気透析を、二価陽イオンに対向する一価陽イオンのイオン交換に用いることで、最終製品の性能が向上し、スプレー乾燥ができることが示された。

Claims (26)

  1. D-パントテン酸および/またはその塩の製造方法であって、
    a)D-パントテン酸を産生し且つパントテン酸(pan)および/またはイソロイシン/バリン(ilv)の生合成が調節解除され且つ培養培地中で発酵によりD-パントテン酸の塩を少なくとも2 g/L生成する少なくとも1種の生物を用い、該培養培地に遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩0〜20 g/Lを供給する工程、
    b)得られたD-パントテン酸塩含有の発酵溶液を電場を印加することにより1つ以上のイオン選択性膜を通過させて、該D-パントテン酸塩含有溶液から低分子量のイオンを取り除く工程、
    c)カルシウム塩基および/またはマグネシウム塩基を加えて前記溶液中に含まれる遊離のD-パントテン酸をpH 3〜10に調整し、パントテン酸カルシウムおよび/またはマグネシウムを含有する溶液を得る工程、および
    d)前記パントテン酸カルシウムおよび/またはパントテン酸マグネシウム含有の溶液を乾燥および/または剤形化する工程、
    を有する上記方法。
  2. 前記培養培地に遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩を供給しない、請求項1に記載の方法。
  3. 前記用いるD-パントテン酸産生生物が細菌、酵母または真菌である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 用いる微生物がBacillaceae科の細菌である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. Bacillus属そして好ましくはB. subtils種、B. licheniformis種またはB. amyloliquefaciens種の細菌を用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 工程a)において少なくとも10 g/L培養培地、好ましくは少なくとも20 g/L、特に好ましくは少なくとも40 g/Lそして極めて好ましくは少なくとも60 g/L培養培地のD-パントテン酸および/またはその塩の含量を生成させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 工程c)において、前記溶液のpHを5〜10に調整する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 工程c)において、前記溶液のpHを5〜9、好ましくは6〜9、そして特に好ましくは6〜8に調整する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 工程b)において、単極および/または両極イオン交換膜を用いる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 工程b)において、単極イオン交換膜を用いる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 工程b)において、一価選択性イオン交換膜を用いる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 得られるD-パントテン酸含有の発酵溶液のpHを、工程b)で処理する前に、D-パントテン酸の等電pHに調整する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 工程b)において、単極イオン交換膜に対して1〜100 mA/cm2、好ましくは10〜80 mA/cm2、そして特に好ましくは20〜40 mA/cm2の電流密度を設定する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 工程b)において、両極イオン交換膜に対して1〜150 mA/cm2、好ましくは30〜100 mA/cm2、そして特に好ましくは70〜90 mA/cm2の電流密度を設定する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 工程b)において、前記一価陽イオン、好ましくはアンモニウムイオン、カリウムイオンおよび/またはナトリウムイオンの含有量を濃度≦1 g/kg溶液に下げる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 中和反応のために、前記工程c)の溶液に、固形物の形態でおよび/または水性懸濁液として水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび/または塩基性炭酸マグネシウムを加える、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記工程c)の溶液に、水酸化カルシウム2〜55重量%、好ましくは10〜50重量%、そして特に好ましくは20〜40重量%を含んでいる水性懸濁液を加える、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記工程c)の溶液に、炭酸カルシウム2〜65重量%、好ましくは10〜50重量%、そして特に好ましくは20〜40重量%を含んでいる水性懸濁液を加える、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記工程c)の溶液に、水酸化マグネシウム20〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、そして特に好ましくは20〜40重量%を含んでいる水性懸濁液を加える、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記工程c)の溶液に、塩基性炭酸マグネシウム2〜25重量%、好ましくは10〜20重量%を含んでいる水性懸濁液を加える、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 工程c)またはd)において、パントテン酸カルシウムおよび/またはパントテン酸マグネシウムを含有する懸濁液を得るまたは使用する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 動物飼料添加剤および/または動物飼料サプリメントとして使用される組成物であって、
    a)D-パントテン酸を産生し且つパントテン酸(pan)および/またはイソロイシン/バリン(ilv)の生合成が調節解除され且つ培養培地中で発酵によりD-パントテン酸の塩を少なくとも2 g/L生成する少なくとも1種の生物を用い、該培養培地に遊離のβ-アラニンおよび/またはβ-アラニンの塩0〜20 g/L、好ましくは0 g/Lを供給する工程、
    b)得られたD-パントテン酸塩含有の発酵溶液を電場を印加することにより1つ以上のイオン選択性膜を通過させて、該D-パントテン酸塩含有溶液から低分子量のイオンを取り除く工程、
    c)カルシウム塩基および/またはマグネシウム塩基を加えて前記溶液中に含まれる遊離のD-パントテン酸をpH 3〜10に調整し、パントテン酸カルシウムおよび/またはマグネシウムを含有する溶液を得る工程、および
    d)前記パントテン酸カルシウムおよび/またはパントテン酸マグネシウム含有の溶液を乾燥および/または剤形化する工程、
    によって製造することができる上記組成物。
  23. 工程c)またはd)において、パントテン酸カルシウムおよび/またはパントテン酸マグネシウムを含有する懸濁液を得るまたは存在させる、請求項22に記載の組成物。
  24. 二価陽イオンの形態にあるD-パントテン酸塩、好ましくはD-パントテン酸カルシウムおよび/またはD-パントテン酸マグネシウムを含んでいる、請求項22または23に記載の組成物。
  25. D-パントテン酸塩を、少なくとも1〜100重量%、好ましくは少なくとも20〜100重量%、そして特に好ましくは少なくとも50重量%の濃度で含んでいる、請求項22〜24のいずれか1項に記載の組成物。
  26. 一価陽イオンの形態にあるD-パントテン酸塩の含有量が≦1 g/kgである、請求項22〜25のいずれか1項に記載の組成物。
JP2002566370A 2001-02-21 2002-02-20 動物飼料添加剤としてのd−パントテン酸および/またはその塩の製造方法 Pending JP2004531236A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
DE10108223A DE10108223A1 (de) 2001-02-21 2001-02-21 Verfahren zur Herstellung von D-Pantothensäure und/oder deren Salze als Zusatz zu Tierfuttermitteln
PCT/EP2002/001766 WO2002066666A2 (de) 2001-02-21 2002-02-20 Verfahren zur herstellung von d-pantothensäure und/oder deren salze als zusatz zu tierfuttermitteln

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004531236A true JP2004531236A (ja) 2004-10-14

Family

ID=7674921

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002566370A Pending JP2004531236A (ja) 2001-02-21 2002-02-20 動物飼料添加剤としてのd−パントテン酸および/またはその塩の製造方法

Country Status (23)

Country Link
US (1) US7824891B2 (ja)
EP (1) EP1362118B1 (ja)
JP (1) JP2004531236A (ja)
KR (1) KR20030075204A (ja)
CN (1) CN1294273C (ja)
AT (1) ATE342372T1 (ja)
AU (1) AU2002250978B2 (ja)
BR (1) BR0207474A (ja)
CA (1) CA2438949A1 (ja)
CZ (1) CZ20032223A3 (ja)
DE (2) DE10108223A1 (ja)
EE (1) EE200300406A (ja)
ES (1) ES2274967T3 (ja)
HU (1) HUP0303304A3 (ja)
IL (1) IL157496A0 (ja)
IN (1) IN2003CH01315A (ja)
MX (1) MX240870B (ja)
NO (1) NO20033707L (ja)
PL (1) PL363989A1 (ja)
RU (1) RU2292397C2 (ja)
SK (1) SK10452003A3 (ja)
UA (1) UA77669C2 (ja)
WO (1) WO2002066666A2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE10108225A1 (de) * 2001-02-21 2002-10-10 Basf Ag Verfahren zur Herstellung von D-Pantothensäure und/oder deren Salze als Zusatz zu Tierfuttermitteln
DE10344200A1 (de) * 2003-09-22 2005-05-04 Basf Ag Verfahren zur Herstellung eines D-Pantothensäure und/oder deren Salze enthaltendes Tierfuttersupplement
EP3426670A4 (en) * 2016-03-07 2019-11-13 Glycom A/S SEPARATION OF OLIGOSACCHARIDES FROM A FERMENTATION BROTH
BR112020005321A2 (pt) * 2017-09-19 2020-09-24 Evogene Ltd. isolados bacterianos biologicamente puros, lisados, caldos de células inteiras, método de obtenção de um isolado bacteriano modificado biologicamente puro, polipeptídeos isolados, construto de ácido nucleico, células vegetais transformadas com um construto de ácido nucleico, planta, composições de matéria, recipiente adaptado para um sistema de irrigação, kits, semente revestida, e, métodos para aumentar uma resistência de uma planta a um inseto e para inibir um inseto em uma planta.
CN111621541A (zh) * 2019-02-27 2020-09-04 上海艾美晶生物科技有限公司 使用电渗析技术拆分光学异构体的方法
KR20240067580A (ko) 2022-11-09 2024-05-17 단국대학교 천안캠퍼스 산학협력단 요통경감의자

Family Cites Families (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB562267A (en) 1941-08-08 1944-06-26 Hoffmann La Roche Process for the manufacture of a crystallised, non-hygroscopic calcium salt of d-pantothenic acid
EP0493060A3 (en) 1990-12-25 1993-04-14 Takeda Chemical Industries, Ltd. Production method of d-pantothenic acid and plasmids and microorganisms thereof
JP3710497B2 (ja) * 1992-09-25 2005-10-26 ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト D−パント酸、d−パントテン酸およびそれらの塩の製造法
EP0822989B1 (en) * 1995-04-21 2001-03-14 Takeda Chemical Industries, Ltd. Process for producing calcium d-pantothenate
US7267967B1 (en) 1997-10-04 2007-09-11 Forschungszentrum Julich Gmbh Nucleic acid encoding pyruvate carboxylase from coryneform glutamicum
AT407050B (de) 1997-12-29 2000-11-27 Chemie Linz Gmbh Verfahren zur herstellung von l-asparaginsäure
US6110342A (en) * 1998-07-21 2000-08-29 Archer Daniels Midland Company Process for production of amino acid hydrochloride and caustic via electrodialysis water splitting
DE19855313A1 (de) * 1998-12-01 2000-06-08 Degussa Verfahren zur fermentativen Herstellung von D-Pantothensäure durch Verstärkung des panD-Gens in Mikroorganismen
PT1050219E (pt) * 1999-05-05 2003-04-30 Degussa Aditivos alimentares para animais contendo acido d-pantotenico e/ou seus sais e processo para a sua preparacao
US8232081B2 (en) * 1999-09-21 2012-07-31 Basf Se Methods and microorganisms for production of panto-compounds
PL356566A1 (en) * 1999-09-21 2004-06-28 Basf Aktiengesellschaft Methods and microorganisms for production of panto-compounds
FR2799754A1 (fr) * 1999-10-18 2001-04-20 Roquette Freres Procede de separation et de purification d'acide lactique a partir d'un milieu de fermentation
DE10021515A1 (de) * 2000-05-03 2001-11-08 Degussa Verfahren zur Herstellung von Erdalkalisalzen der D-Pantothensäure
MXPA03002345A (es) 2000-09-20 2003-06-30 Basf Ag Suplemento alimenticio para animales que contiene acido d-pantotenico y/o sus sales, metodo mejorado para la produccion del mismo, y su uso.
CN100529068C (zh) 2001-01-19 2009-08-19 巴斯福股份公司 用于提高泛酸产量的微生物和方法
RU2003125653A (ru) 2001-01-19 2005-03-10 БАСФ Акциенгезельшафт (DE) Способы улучшенного получения пантотената

Also Published As

Publication number Publication date
BR0207474A (pt) 2004-03-02
IL157496A0 (en) 2004-03-28
ATE342372T1 (de) 2006-11-15
DE50208413D1 (de) 2006-11-23
US7824891B2 (en) 2010-11-02
MX240870B (es) 2006-10-09
RU2003128534A (ru) 2005-04-10
PL363989A1 (en) 2004-11-29
WO2002066666A2 (de) 2002-08-29
AU2002250978B2 (en) 2007-03-01
DE10108223A1 (de) 2002-10-10
CA2438949A1 (en) 2002-08-29
EE200300406A (et) 2003-12-15
IN2003CH01315A (en) 2005-11-25
SK10452003A3 (sk) 2004-02-03
WO2002066666A3 (de) 2003-07-17
CZ20032223A3 (cs) 2003-11-12
NO20033707D0 (no) 2003-08-20
HUP0303304A3 (en) 2007-09-28
CN1492935A (zh) 2004-04-28
ES2274967T3 (es) 2007-06-01
EP1362118B1 (de) 2006-10-11
UA77669C2 (en) 2007-01-15
KR20030075204A (ko) 2003-09-22
HUP0303304A2 (hu) 2004-01-28
US20040072306A1 (en) 2004-04-15
RU2292397C2 (ru) 2007-01-27
NO20033707L (no) 2003-10-20
MXPA03007383A (es) 2004-03-16
EP1362118A2 (de) 2003-11-19
CN1294273C (zh) 2007-01-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7824891B2 (en) Method for producing D-pantothenic acid and/or salts thereof via purification by electrodialysis as an additive for animal feed
US7611872B2 (en) Method for the production of D-pantothenic acid and/or salts thereof via purification by nanofiltration as adjunct for animal feedstuffs
JP2004508841A (ja) D−パントテン酸及び/又はその塩を含む動物用飼料サプリメント、それの改良された製造方法及びそれの使用
US7781192B2 (en) Method for producing D-pantothenic acid and/or a salt thereof via purification by cation exchange as additive for animal food
US7727748B2 (en) Method for producing D-pantothenic acid and/or salts thereof via purification by anion exchange as an additive for animal feed
JP2004529632A (ja) パントテン酸塩の改良された製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070918

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080304