JP2004528394A - 石油酸の処理方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、有機酸を含む石油の酸性度の低減方法であり、これは有機酸を含む前記石油を、アルコールの対応するエステルを形成するのに十分な温度および条件下で、有効量のアルコールおよび有効痕跡量の塩基と接触させることを含む。前記塩基は、第IAおよびIIA族金属の炭酸塩、水酸化物、ホスフェート、ビホスフェート、ならびに水酸化物と、ホスフェートおよび/またはビホスフェートとの混合物から選ばれる。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は、石油の酸性度および腐食性の両方を低減する方法に関する。
【0002】
発明の背景
高い有機酸含有量の全原油および原油留分(カルボン酸、特にナフテン酸を含むものなど)は、原油を抽出し、輸送し、および処理するのに用いられる装置に対して腐食性がある。この問題の解決には、耐腐食性合金を装置に用いることや、腐食防止剤を用いること、そして有機酸を種々の塩基で中和することが含まれる。
【0003】
有機酸による腐食を最小にする努力には、酸を中和し、油から除去することによる数多くの方法が含まれる。例えば、米国特許第2,302,281号、およびKalichevskyおよびKobe(「Petroleum Refining with Chemicals」(1956年)、第4章)により、油および原油留分の種々の塩基処理が開示される。米国特許第4,199,440号には、希薄アルカリ水溶液、特に希薄NaOHまたはKOH水溶液を用いる液体炭化水素の処理が開示される。米国特許第5,683,626号には、水酸化テトラ−アルキルアンモニウムを用いる酸性原油の処理が教示され、米国特許第5,643,439号ではトリアルキルシラノレートが用いられる。PCT US96/13688、同US/13689および同US/13690(199年3月6日付け公報;WO97/08270、同97/08271および同97/08275)には、第IA族および第IIA族の酸化物および水酸化物を用いて全原油および原油留分を処理して、ナフテン酸含有量を低減することが教示される。米国特許第4,300,995号には、炭素質物質、特に石炭およびその生成物、重質油、減圧ガス油および酸機能を有する石油残油を、液体(アルコールまたは水)中で水酸化テトラメチルアンモニウムなどの希薄四級塩で処理することが開示される。この特許は、生成物の収率および物理性状を向上することを目的とするものであり、酸性度の低減の課題に応えるものではなかった。
【0004】
鉱酸が、カルボン酸のアルコールによる求核付加(エステル化)に対して触媒作用をすることは知られている。(例えば、Streitweiser,Jr.およびHeathcockの「Introduction to Organic Chemistry」(第二版、第18章、第516頁)を参照されたい。)しかし、石油中の有機酸をエステル化するべくこれらの鉱酸を添加することは、酸を低減するべく酸が油に添加されることからして、逆効果となろう。単に、一つの酸を他のより腐食性の酸で置き換えることに過ぎないであろう。
【0005】
上記の方法は、ほどほどの成功を収めたものの、特に、用いる処理化合物の量を減少して酸性原油を処理するためのより効率的な方法を開発する必要性が依然として存在する。出願人の発明はこれらの必要性に応えるものである。
【0006】
発明の概要
本発明は、有機酸含有石油ストリームの酸性度および任意に腐食性を低減する方法の一実施形態に関する。これは、前記有機酸を含む石油ストリームを、アルコールの対応するエステルを形成するのに十分な温度および条件下で、痕跡量の塩基の存在下に有効量のC〜約C13アルカノールまたはアルカンジオールと接触させることを含み、その際前記塩基は、第IA族金属のホスフェート、ビホスフェート、炭酸塩または水酸化物から選択される。他の実施形態においては、接触が、石油ストリーム、アルコール、痕跡量の第IA族金属水酸化物、および第IA族金属のホスフェートまたはビホスフェートの少なくとも一種の存在下に行なわれる場合に、酸性度および腐食性の低減という二つの利点が達成される。
【0007】
本発明は、開示された要件を適切に含むか、それらからなるか、または実質的にそれらからなり、さらに本発明は開示されない要件なしに実施できる。
【0008】
発明の詳細な説明
いくつかの石油ストリームおよび油には、精製装置の腐食またはファウリングの一因となり、また処理される油からの分離が困難な有機酸が含まれる。一般に、有機酸は、ナフテン系および他の有機酸の範疇に入る。ナフテン酸は、石油材中に存在する有機カルボン酸の混合物を特定するのに用いられる総称である。ナフテン酸は、単独またはフェノールなどの他の有機酸との組合わせのいずれかで存在することができる。ナフテン酸は、単独または他の有機酸との組合わせで、約65℃(150°F)〜420℃(790°F)の範囲の温度で腐食を引き起こすであろう。これらの石油のナフテン酸含有量を低減することは、精製業者の目標である。
【0009】
本発明にしたがって処理されるであろう石油は、任意の有機酸含有石油ストリームであり、これには、本発明が実施される温度で液体であるか、もしくは液化可能または気化可能な全原油および原油留分が含まれる。本明細書で用いられるように、全原油という用語は、未精製かつ未蒸留の原油を意味する。石油は、好ましくは全原油である。
【0010】
意外にも、出願人は、次の点を見出した。すなわち、有機特にナフテン系の酸を含む石油は、第IA族金属の水酸化物、炭酸塩、ホスフェートもしくはビホスフェート、または第IA族金属のホスフェートおよび/またはビホスフェートと、第IA族金属水酸化物との組合わせの有効量の存在下に、有効量のアルコールで処理されることによって、ナフテン酸含有量が低減させられるであろう。処理は、アルコールおよび酸を、対応するエステルに転換できる条件下で行われる。例えば、メタノールが用いられる場合には、ナフテン酸はそのメチルエステルに転換されるであろう。処理温度は、好ましくは約周囲温度から石油の分解温度未満の範囲に亘るであろう。典型的には約450℃である。一般に、圧力は、システムそのものに起因する(自原的圧力)。約100(14psig)〜約3000kPa(430psig)の圧力が典型的である。例えば、350℃での反応は、約1750kPa(250psig)で行うことができる。
【0011】
任意に、過剰なメタノールの少なくとも一部分は、回収され、バッチ処理または連続処理のいずれかにおいて再利用されて、そこでさらなる未処理の石油と接触することができる。これらの回収は、熟練者により容易になされる。
【0012】
望ましくは、酸およびアルコールの反応から生成されるエステルは、なんら有害な効果もなしに、処理された石油中に残こすことができる。
【0013】
本明細書で用いることができるアルコールは、好ましくは商業的に入手可能である。アルコールは、アルカノールおよびアルカンジオールから選択できる。アルカノールは、好ましくはC〜C13、より好ましくはC〜C、最も好ましくはC〜C炭素を有するものであり、アルカンジオールは、好ましくはC〜C、より好ましくはC〜C、最も好ましくはC〜C炭素を有するものである。好ましくは、アルコールは、メタノールまたはエタノール、最も好ましくはメタノールである。用いることができるアルコールは、処理される石油中に含まれる酸により、熱的および加水分解的に安定なエステルを形成することができさえすればよい。上記の基準を満たすアルコールの選択は、熟練者により容易に達成される。より高級のアルコールを用いることは、適切な非妨害共溶媒の添加を必要とする。また、共溶媒は、当業者により適宜選択される。石油が、約5wt%未満の水、より好ましくは3wt%未満の水、最も好ましくは1wt%未満の水を含む場合には、加水分解安定性が促進される。
【0014】
処理方法で用いられる痕跡物質は、酸レベルの低減のみが望まれる場合には、第IA族金属のホスフェート、ビホスフェート、炭酸塩および水酸化物から選択される塩基性化合物であり、酸性度および腐食性の両方の低減が望まれる場合には、水酸化物との組合わせで、第IA族金属のホスフェートおよび/またはビホスフェートから選択される塩基性化合物である。第IA族金属は、好ましくはKおよびNa、最も好ましくはKである。また、その処理のために、第IIA族金属を使用することも可能である。しかし、これらとの反応は、それらがそれほど強い塩基性でなく、速度がそれほど速くないが故に、経済的に望ましくない傾向である。
【0015】
金属は、典型的には合計300wppmまでの有効痕跡量、より典型的には約50〜300wppmの有効痕跡量で添加される。組合わせで用いられる場合には、第IA族金属の水酸化物と、ホスフェートおよび/またはビホスフェートとのほぼ等しい痕跡量が用いられる。しかし、この範囲内で、水酸化物およびホスフェートの量は、過剰の水酸化物による高い速度、または過剰のホスフェートによる腐食防止をバランスさせて選択できる。
【0016】
意外にも、有機酸含有石油を処理する際に、メタノールとの組合わせでこれらの痕跡量を用いることにより、第IA族金属の炭酸塩、水酸化物、ホスフェートまたはビホスフェートが単独で用いられる場合には、酸性度の減少がもたらされ、あるいは第IA族のホスフェートおよび/またはビホスフェート、および水酸化物が組合わせで用いられる場合には、酸性度および腐食性の減少がもたらされる。これは、メタノールの単独使用よりかなり高められる。すなわち、プロセスにおいて数倍の速度上昇が認められる。
【0017】
これらの痕跡量の塩基を用いて高めることは、高い反応速度(痕跡レベルの塩基を用いて達成されるであろう)をもたらすのであるが、これはより多量の塩基を用いる処理については予期されない。また、これはエマルジョン形成の可能性を有利に減少する。
【0018】
酸素含有ガスの導入は、典型的には反応にとっては重要ではないものの、酸素酸化により過酸化物が形成されるのを防止するために、典型的には最小限にされるであろう。過酸化物は、精製装置におけるその後の下流でファウリング反応を引起すであろう。
【0019】
より速い速度は、より小さい反応槽を用いることを可能とし、また残存する未反応の塩基を回収する必要性を最小限にするという点で、精製プロセスにさらなる利点をもたらす。すなわち、それが用いられる低レベルで、短時間に実質的に完全な反応がもたらされる。
【0020】
処理のための接触時間は、処理される石油の特性およびその酸含有量による。典型的には、接触は、数分から数時間で行うことができる。前記のように、接触時間は、アルコールおよび酸のエステルを形成するのに必要である。
【0021】
本明細書で用いられる痕跡量は、処理される石油においてアルコールおよび有機酸のエステル化を促進するのに役立つ。また、本明細書に述べるように痕跡量の塩基を用いることなく、エステル化が妥当な速度で起こるであろう油中において、エステル化を促進するのに全く弊害がない。
【0022】
アルコール:石油中の有機酸のモル比は、約0.5:約20、好ましくは約1:約15の範囲とすることができる。
【0023】
エステル化の程度は、赤外分光法により評価することができる。これにより、カルボキシル基に起因する1708cm−1バンドの強度の減少が示される。新規のバンドが、エステル基に起因する1742cm−1に現れる。いくつかの場合に、ナフテン酸は部分的にケトンに転換されるが、ケトンは凡そ1715cm−1にバンドを示す。ケトンおよびカルボキシルのバンドを識別するために、試料はトリエチルアミンで処理される。トリエチルアミンは、カルボキシルバンドを消滅させ、ケトンバンドを変化させないままにする。
【0024】
原油中の酸濃度は、典型的には酸中和数または酸価として表される。酸価は油1gの酸性度を中和するのに必要なKOHのミリグラム数である。それは、ASTM D−664にしたがって滴定により測定されうる。いかなる酸性石油も、本発明にしたがって処理することができる。例えば、0.5〜10mgKOH/gの酸中和数の酸を有する油である。典型的には、酸含有量の減少は、中和数、または赤外分光法における約1708cm−1のカルボキシルバンドの強度の減少によって決定される。約1.0以下の酸価の石油は、中位から低位の腐食性であるとみなされる。1.5超の酸価の石油は腐食性であるとみなされる。自由カルボキシル基を有する酸性石油は、本発明の方法を用いて効果的に処理できる。
【0025】
図1には、メタノールに溶解された低レベルのナトリウム(NaOHとして)が、本方法におけるエステル化速度を高めることが示される。
【0026】
図2には、本発明の方法にしたがって、Heidrun原油について、メタノールおよび低カリウム(K3PO4および/またはKOH)のレベルを用いた350℃における接触エステル化が示される。
【0027】
石油は、広範囲の汚染物質を含む非常に複雑な混合物であり、そこでは多くの競争反応が起こる。したがって、所望の中和を引起す特定化合物の反応は予測ができない。方法の簡素化が強く望まれる。
【0028】
本発明を、以下の限定しない実施例を引用して説明する。
【0029】
実施例1
Heidrun原油(120g)を、300mLオートクレーブ反応器中に充填し、次いで水酸化ナトリウムの16.15wt%メタノール溶液0.37gを添加して、原油中のナトリウムを最終濃度286wppmとし、またさらなるメタノール1.4gを添加して、全メタノールをHeidrun原油中の全酸量の化学量論量の10倍に等しくした。次いで、反応器を閉じ、混合を400rpmで始め、内容物を350℃に加熱した。全反応順序を一つの反応器内で行なった。典型的には、5〜10mLの試料を、異なる時間間隔(例えば350℃で2、5、10、20、40および60分後)で採取し、試料をTAN(全酸価)分析した。
【0030】
図1のデータには、この反応は10分後にTANレベル0.25で実質的に完了し、一方未触媒反応およびナトリウム14wppmを用いた反応は、1時間以上を要して0.5のTAN低減を得た。ナトリウム濃度を858wppmに増加することにより、更なる利点は全くもたらされなかった。ナトリウム70wppmでは、約10分後にTANレベル0.5に達した。これに対して未触媒ケースでは、1時間を要してこのレベルに達した。コスト、許容灰分レベルおよび所望のTANレベルにより、触媒レベルは選択して指示されるであろう(例えば70または286wppmレベル)。
【0031】
実施例2
カリウムホスフェート(カリウム250wppm)を水酸化ナトリウムに換えて用いたことを除いて、実施例1の手順にしたがった。結果(図2)は、カリウムホスフェート速度およびTAN低減のレベルは、メタノールのみの場合より大きいことを示した。しかし、塩基性であるカリウム塩を用いることにより、痕跡のリン酸の生成が見られた。リン酸は、炭素鋼反応器の金属表面を被膜保護するのに望ましい。
【0032】
実施例3
水酸化カリウムとカリウムホスフェートとの50:50wt%混合物(全カリウムレベル250wppm)を用いたことを除いて、実施例1の手順にしたがった。この処理により、実施例1におけるナトリウム286wppmレベルに匹敵する速度およびTANレベルが得られる。しかも、同時に腐食が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、TAN(y軸):350℃におけるメタノールとのエステル化時間(x軸)のプロットである。ひし形はNa14ppmを示し、四角形はNa70ppmを示し、三角形はNa286ppmを示し、円形はメタノールのみを示す。
【図2】
図2は、TAN(y軸):時間(x軸)のプロットである。三角形はKPOとしてのK250ppmを示し、四角形はKOHとしてのK125ppmプラスKPOとしてのK125ppmを示し、円形はメタノールのみを示す。

Claims (12)

  1. 有機酸含有石油を、アルコールの対応するエステルを形成するのに十分な温度および条件下で、有効量のアルコール、および第IAおよびIIA族金属の炭酸塩、水酸化物、ホスフェート、ビホスフェート、ならびに水酸化物と、ホスフェートもしくはビホスフェートの少なくとも一種との混合物から選択される有効痕跡量の塩基と接触させることを含む、有機酸含有石油の酸性度を低減する方法。
  2. 前記塩基の量が、300wppmまでの有効量である、請求項1に記載の低減方法。
  3. 前記塩基が、水酸化カリウムと、カリウムホスフェートおよびカリウムビホスフェートの少なくとも一種との約50:50wt%混合物である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記方法が、約周囲温度から油の分解温度未満の範囲の温度で行なわれる、請求項1に記載の方法。
  5. 前記アルコールが、アルカノール、アルカンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記アルカノールが、C〜C13アルカノールから選択される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記アルカノールが、メタノール、エタノールおよびそれらの混合物である、請求項6に記載の低減方法。
  8. 前記アルカノールが、メタノールである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記アルカンジオールが、C〜C13アルカンジオールである、請求項5に記載の方法。
  10. 石油原料中のアルコール:有機酸のモル比が、約0.5〜約20である、請求項1に記載の方法。
  11. 前記第IA族金属が、K、Naおよびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
  12. 前記塩基の量が、約300ppm(wt)までの有効量である、請求項1に記載の方法。
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