JP2004527974A - 入力インピーダンスに対してマッチングされる小型アンテナを設計する方法及びその方法によって設計された小型アンテナ - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は、アンテナに関し、特に、例えば無線玩具、無線キーボード、無線セキュリティシステム、TVセット用RFリモートコントローラ等の短距離無線に適用できる低コストな小型プリントアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、その関連産業は、幾つかの主要な問題、特に、1)性能に著しい影響を与えることなくアンテナを小型化すること;2)アンテナのコストおよびシステム内へのアンテナの組み込みコストを低減すること;3)帯域外周波信号を初期段階で排除するための部品としてアンテナに取り付けられる低損失フィルタの必要性;4)製造公差による影響および/または人間が近くに存在することによる影響を最小にした状態で安定したマッチングを維持する低損失インピーダンスマッチングネットワークの必要性;等に関する問題に直面している。
従来のループアンテナは、通常、アンテナが受信または送信する信号の電気的な波長とアンテナの物理的な長さとが等しい場合に共振するように形成されている。以下の説明において、“ループ”とは、差動送信ラインポートで終端する任意の閉じられたカーブのことである。このようなアンテナを使用したい用途において、これは、サイズおよび形状因子に大きな制約を与える。例えば、一般的な2.4Ghzアンテナは、周長が約12.5cmである。この長さは、多くの用途において、例えばより小型なアンテナを必要とするリモートコントローラにおいては、あまりに大き過ぎる。そのような用途においてアンテナのサイズを小さくすることは、一般に、誘電ローディングによって行なわれる。例えば、誘電率が高いセラミック基板の層間にアンテナを組み込むことができる。その結果、有効誘電率が増大して、アンテナでの電気信号の有効波長が減少し、したがって、アンテナのサイズが小さくなる。しかしながら、誘電ローディングは、送信または受信されるエネルギの大部分が誘電材料中に散逸するため、アンテナ利得を著しく低下させる。これは、アンテナ指向性をそらせ、また、比較的高価であると見なされる。
【0003】
アンテナのサイズを小さくするための様々な他の方法は、通常、複雑で高価なマッチングネットワークということになる。これらの方法は、通常、好ましくない作用を有する標準的な別個のマッチングコンポーネント(コンデンサ、インダクタ)を使用する(前記作用は、コンポーネントの寸法がアンテナの寸法または波長に対して大きくなる場合に、特に高い周波数で顕著である)。多くの場合、これらのコンポーネントで多くのエネルギが消費されるため、アンテナ利得が減少する。そのようなコンポーネントは、通常、製造公差を有する。このことは、例えば、狭帯域のアンテナを形成するために前記コンポーネントを使用できないことを意味する。これは、インピーダンスマッチングの中心周波数がデバイス間で異なるためである。
フィルタリングの問題も非常に重要である。短距離無線用途の産業では、通常、システムを妨害信号から保護し且つ帯域外周波信号の放射を防止して、USAのFCC規定等の電磁両立性規定に従うため、アンテナポートでのフィルタリングを必要とする。したがって、高価なフィルタがアンテナポートに組み込まれる。一般的なフィルタは、通常“挿入損失”を受け、これにより、所要の周波数帯域内にある幾らかのエネルギを遮断する。
また、RF増幅器とアンテナとを統合すると、幾つかの問題が生じる。RFチップは、通常、電流消費量を低くするため、高い出力インピーダンスを示す。今日の市場の殆どのアンテナは、従来の50Ωインピーダンスにマッチングするように形成されるが、この場合もやはり、損失の多い高価な他のマッチングネットワークを間に使用する必要がある。また、平衡インタフェースもRFチップの出力効率を向上させるため、多くのチップ製造メーカは、今日、平衡(差動)RFポートを有するチップを設計している。今日の市場の殆どのアンテナは、不平衡に形成されており、これにより、マイクロストリップライン等の非差動送信ラインでアンテナに給電されるため、アンテナチップインタフェースに“バラン”コンポーネントが必要となり、コストおよびエネルギ損失が増大する。
他の問題は、アンテナの近くに人間が存在すると、アンテナの性能に影響が及ぶという点である。これは、人体組織の高い誘電率によって、アンテナによって形成される電場が‘吸収’されてしまうためである。言い換えると、人体組織は、アンテナに連結される負荷として機能し、したがって、アンテナポートで測定される入力インピーダンスを変化させる。今日の多くの用途は、‘手持ち式’の用途であるため、人間の存在によって影響されないアンテナマッチングを維持するという大きな問題がある。これにより、時として、無線設計者は、ある程度の大きさだけ送信出力を高めざるを得ない(携帯電話において起こり得る)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、所要の出力インピーダンスに対してマッチングされる高性能の小型アンテナであって、フィルタリングが不要で且つ簡単で安価に製造できるとともに、最小コスト、最小の外部コンポーネント、最小のエネルギ損失でRF電力増幅器に簡単に組み込める小型アンテナの必要性が広く認識され、また、それがあることは非常に有益である。本発明は、前述した全ての問題を克服するとともに、新規なアンテナ設計方法によるこれらの利点、およびこの方法を使用して設計されたアンテナを示す実施例を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、画期的および高性能であり、且つ小さい領域のマッチングされたアンテナであって、極めて狭い帯域幅でRF信号を送受信するためのアンテナを開示する。更に具体的には、本発明のアンテナは、一般に約数フェムトファラッド〜数十フェムトファラッド程度の非常に小さい静電容量を与える要素に接続される。前記静電容量は、プリントギャップによって得られることが好ましい。アンテナは、所望の入力インピーダンスに対してインピーダンスマッチングされ、余計なフィルタリングが不要であるとともに、簡単且つ安価に製造することができる。本発明のアンテナは、ビデオ、ラジオ、または任意の他のタイプのデータ送信におけるRFトランシーバ;入力デバイスおよび制御デバイス等(TVセットのためのリモートコントローラ、ワイヤレスキーボード等)の無線の用途で統合されるRFモジュール;玩具及びゲーム(ワイヤレスゲームパッド、手持ち式ゲーム);ホームオートメーションおよびセキュリティ用途(ワイヤレスライトスイッチ、強盗警報システムのためのワイヤレスセンサ);産業オートメーションのためのワイヤレスセンサ;携帯電話;ワイヤレスモデム等のために(あるいはそれらにおいて)使用することができる。
本発明においては、実数部分と虚数部分とを有する所要の入力インピーダンスに対してマッチングされ且つ所望の周波数で動作する小型アンテナを設計するための方法であって、a)1つの特異点に関するインピーダンスマッチング点を選択し、b)入力インピーダンスの虚数部分をキャンセルすることにより、所要のインピーダンスに対してマッチングされ且つ所望の周波数で動作するアンテナの構造を得る方法が提供される。
本発明においては、所要の周波数で動作するように設計された幾何学的な寸法を有する小型ループアンテナを得るための方法であって、前記ループアンテナが所要の入力インピーダンスに対してマッチングされる方法において、a)入力インピーダンスおよび幾何学的な寸法と所要の周波数との間の相関関係によって規定された特異点のマッチングに基づいて、最適な構造を得て、b)前記構造を実施する方法が提供される。
本発明においては、入力インピーダンスに対してマッチングされる小型アンテナであって、前記入力インピーダンスは、マッチング前に非常に高い正のリアクタンスを有し、所望の周波数で動作するように設計されるアンテナにおいて、a)周波数に関連する少なくとも1つの幾何学的な寸法を有するアンテナ素子であって、前記関連が非常に高い正のリアクタンスと相関関係にあるアンテナ素子と、b)前記アンテナ素子に付加され、非常に高い正のリアクタンスをキャンセルする静電容量とを備え、これによって、入力インピーダンスに対してマッチングされるとともに、非常に狭い周波数帯域で動作するアンテナが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、添付図面を参照しながら、単なる一例として、本発明を説明する。
本発明は、短距離無線に用いられる小型アンテナであって、帯域幅が狭いインピーダンスマッチングされた高性能の小型アンテナに関するものである。具体的には、本発明のアンテナは、特定の特異点を選択することにより、所望の入力インピーダンスにマッチングされる。このマッチングは、非常に小さな静電容量を使用することにより得られる。このような非常に小さな静電容量は、アンテナ給電ポートに直列に接続され且つアンテナと一体の部分である要素によって与えられる。また、このような要素は、プリントギャップであることが好ましい。
前述したように、本発明の本質である独特で且つ洗練された技術により、アンテナ産業またはRFモジュールの設計者が現在直面している問題を克服することができる。一般に、アンテナの設計手順は、その入力インピーダンスの特異領域でアンテナをマッチングさせるため選択することにより開始する。特異領域は、入力インピーダンス、すなわち、入力インピーダンスの実数部分および虚数部分の両方がアンテナの幾何学的な寸法に対して高い派生作用を有する区間である。その一例は、図1(a)に示されるピーク100の周辺の領域および図1(b)に示されるその対応する領域100’である。この明細書本文において、用語“幾何学的な寸法”とは、ループ長や周長または金属ライン長といった特徴だけを示すのではなく、基板の幅や厚さ等の特性、アンテナの線幅や厚さ、金属の種類、または前記特徴の任意の組み合わせも示している。幾何学的な寸法は、アンテナに内在する周波数モードに関係しているため、派生作用も周波数に関しては極端である。この特異区間(図1(a)に示されるピーク100の周辺の領域)において、インピーダンスの実数部分は、劇的に増大するとともに、幾何学的な変化または周波数変化が比較的小さい状態で、値が広い範囲に及ぶ。マッチング点は、アンテナをマッチングさせたいインピーダンスの実数値を反映する点となるように選択される。そのような点(インピーダンスの実数部分が増大および減少する)は、特異領域に2つある。すなわち、非常に高い正のリアクタンス(高い正の虚数インピーダンス)を有する点、および非常に低い負のリアクタンスを有する点である。我々のマッチングにおいては、最初の点を選択しなければならない。高い正のリアクタンスが実質的に高いインダクタンスである場合、所望の実数インピーダンス値に対するマッチングは、高いインダクタンスと共振する非常に小さな直列静電容量を使用して、高いインダクタンスをキャンセルすることにより行なわれる。
【0007】
アンテナの入力インピーダンスの計算およびマッチング点の特定は、簡単な構造(例えば、単純なループ)の場合、分析的に行なうことができる。しかしながら、更に複雑な形状の場合には、モーメント法電磁解決アルゴリズムまたはFDTDアルゴリズムを使用するツール等の電磁シミュレーションツールを使用しなければ、アンテナの入力インピーダンスの計算およびマッチング点の特定を行なうことができない。これらのシミュレーションツールは、金属および基板材料の電磁特性を含むアンテナの物理的モデルを入力として受けるとともに、周波数または任意の幾何学的なパラメータに対するアンテナの入力インピーダンスの依存度を示すグラフを形成する。
共振要素、好ましくはプリントギャップを使用して特異点に対してインピーダンスマッチングされる本発明に係るアンテナの原理および動作は、図面および付随する説明を参照すれば、更によく理解することができる。
以下、単なる一例として、特異点を見つけ出すための好ましい方法について説明する。ループアンテナのインピーダンスの態様が図1に示されている[Balanis C. A.,“アンテナ理論、解析および設計”、John Wiley & Sons社、第2版、1997年、227頁 (Balanis C. A., “Antenna theory, analysis and design”, John Wiley & Sons Inc, second edition, 1997, page 227) ]。図1の2つのグラフは、ループ入力インピーダンス(実数部分(a)および虚数部分(b))と、ループの物理的な周長(長さ)とそれが伝える信号の波長(作用周波数に関連付けられる)との間の比と、の関係を示している。ループ長が波長の約半分まで減少すると、抵抗(入力インピーダンスの実数部分)が劇的に増大する。リアクタンスは、ループ長/波長の比であるC/λが抵抗ピーク100におけるのを下回る場合には、非常に大きなインダクタンス(高い正のリアクタンス)として振る舞い、またリアクタンスは、ループ長/波長の比が抵抗ピークにおけるのをちょうど上回る場合には、非常に小さな静電容量(負のリアクタンス)として振る舞う。したがって、この特定の例においては、ループ長が波長の約0.5である時(C/λ=0.5)に、特異点が見いだされる。一般に、ループにおける特異点は、分数すなわち1よりも小さい長さで、更に一般には波長の約0.2〜0.7の長さで見いだされる。
ここで、この特異点を開始点として選択することは全く自明のことではなく、実際にはアンテナ設計における現在の手法に反するものであるという点について言及することに意味がある。実際に、現在の手法において、設計者は、このような特異点を避ける傾向がある。その理由は、a)特異点を扱うことが非常に困難であり、あるいは不可能であるとさえ設計者が考えているからであり、また、b)特異点を使用する際の利点および可能性を設計者が見いだしていないからである。本発明は、特異性を使用することに関して多数の利点をもたらす独特で且つ洗練された手法で、この特異性を扱う。
【0008】
ここで、図面を再び参照すると、図1(a)から分かるように、インピーダンスの実数部分は、特異領域において、数Ωの値から1kΩを超える値へと及んでいる。ここで、例えば、一般性を失うことなく、小さなループアンテナを200Ωのインピーダンスに対してマッチングしたいと考えよう。特異領域には、インピーダンスの実数部分が200Ωであるそのような点が2つ存在する。その1つは、図1(a)の点102にある約0.4波長での点であり、他の1つは、図1(a)の点104にある約0.55波長での点である。虚数インピーダンスの正の値は、図1(b)の曲線106によって与えられる。これらの曲線の値は、右から、C/λ=0.5で破線110により示される値まで、漸近的に増大する。したがって、本発明の方法により、0.4波長点(点102)を選択する。これは、この点で、入力インピーダンスの虚数部分が、図1(b)において点102と平行な1つの点を見る時に反映される高い正の値(高いインダクタンスを反映する)であるからである。すなわち、動作周波数の波長を計算し、長さが約0.4波長であるループを設計する。例えば、2.4Ghzアンテナの場合、波長は12.5cmであり、したがって、ループ周長は5cmである。明らかに、実際には、動作点を決定する他の物理的なパラメータ(例えば、材料、プリントアンテナのための基板構造、線幅など、または、更に一般的には、前述した任意の“幾何学的な寸法”)が存在するので、これは非常に複雑となる。したがって、特に幾何学的な構造がループほど単純でない場合には、シミュレーションを行なって、正確な動作点を決定しなければならない。
ここで、設計の第1の利点は、即座に認知できる。すなわち、ループアンテナは、通常、1波長の長さであり、そのため、0.4波長の動作点を選択すると、アンテナが必要とする面積は、0.4の2乗因子だけ、すなわち、6倍を超える分だけ減少する。
【0009】
動作点を選択した後、本設計方法にしたがって、インピーダンスマッチングへと移行する必要がある。選択された特異動作点で、インピーダスンの実数部分がマッチングにおける所望のインピーダンスであるので、前述したように、虚数部分を除去する必要がある。虚数部分は高いインダクタンスを反映するため、非常に小さい直列静電容量によって除去を行なうことが好ましい。例えば、2.4Ghzの周波数で2kΩの正のリアクタンスを除去するためには、直列コンデンサまたは極めて小さい静電容量である約30ffの全静電容量を持つコンデンサの組み合わせを接続する必要がある。GHz範囲で機能し且つ数十〜数百Ωの一般的なインピーダンスに対してマッチングされるように設計されるアンテナにおける一般的な静電容量は、数フェムトファラッド〜数百フェムトファラッドの範囲である。また、インピーダンスデリバティブは、特異動作点で非常に高いため、大量生産で安定点を維持するために必要な許容値は極めて高い。これは、従来の設計が動作点を必然的に避けている他の理由である。別個のコンポーネントを使用してそのような低い静電容量値に達するとともに、必要とされる厳しい許容値を維持することは、最も難しい。
本発明の方法において、低い所要の静電容量は、プリントアンテナに最適な少なくとも1つのプリントギャップを使用して達成される。ギャップは、アンテナストリップ上の好ましくはポートに形成され、所要の静電容量を与える。ギャップは、実際にアンテナの一体部分となり、最適な精度を達成するためアンテナを用いてシミュレートされなければならない。ギャップによって形成される静電容量は、極めて低いが、プリント基板(PCB)製造公差が考慮される場合にはそれほど気にすべきものではなく、したがって、完全な解決法を与えることができる。また、差動アンテナを選択するには、アンテナポートの各極に静電容量が必要であり、各ポートで必要な静電容量がインピーダンスマッチングに必要な全静電容量の2倍となるようにする。
【0010】
直列に接続されたプリントギャップを有する本発明のアンテナの好ましい実施形態が図2(a)に示されている。構造は、2.44Ghzで動作し且つ200Ωの差動インピーダンスに対してマッチングされるスクエアループアンテナ200である。アンテナは、比誘電率が4.4で且つ厚さが0.6mmのFR4誘電基板上にプリントされたマイクロストリップアンテナ素子であることが好ましい。2つのギャップ202、204は、アンテナ入力ポート206に垂直で且つ給電ライン208に対して平行に形成されており、マッチングに必要な静電容量を与える。各ギャップの幅は、約0.2mmであることが好ましい。この実施形態において、アンテナサイズは、約14×17mmである。2つのギャップは、単なる一例として与えられており、本発明の範囲内で、1つまたは複数のギャップ、あるいはマッチングに必要な小さな静電容量を与えることができる任意のギャップの組み合わせも考えられる。
また、図2(b)は、モーメント法電磁シミュレーションツールを使用してシミュレートされ且つ200Ω電源インピーダンスに関して計算されたこのアンテナの反射係数(S11)の絶対等級をdbスケールで示している。図は、アンテナが所望の周波数でうまくマッチングされた状態を示している。ここで、このアンテナの他の重要な利点について述べると、マッチングは、動作周波数の約3%である約80mhzの非常に狭い帯域であり、│S11│=−6dbとなる点間の区間で規定される。この特質により、アンテナは、帯域外周波信号の受信または送信を防止する高Q帯域通過フィルタに変わる。高Qフィルタリングは、アンテナがマッチングされる特異領域での高インピーダンスデリバティブに起因して、また、マッチング機構のエネルギ散逸が最小であるという事実に起因して行なわれる。
【0011】
図3は、200Ω平衡対50Ω不平衡の2.4Ghz“バラン”コンポーネント304を介して50ΩSMAコネクタ302に接続された図2のアンテナ200の写真を示している。図4(a)は、アンテナの反射係数(S11)を周波数の関数として極表示(‘スミスチャート’)で表わしている。中心に最も近い点は、2.44Ghzにあり、所要の共振を示している。図4(b)は、反射係数の絶対等級│S11│を対数目盛りで示している。また、2.44Ghzでのエネルギ吸収がはっきりと分かり、これは狭い吸収帯域である。HP8753ベクトルネットワーク分析器を使用して反射係数を測定した。アンソフトセレナーデV8.5ソフトウェアを使用して、結果ファイルを保存してプロットした(図4)。図4(b)と図2(b)とを比較すると、実験結果がシミュレーション結果と一致しているのがはっきりと分かる。これらのアンテナを多量に製造したが、全て同じ性能を示した。このことは、マッチングの特異性にもかかわらず、製造公差に対してアンテナの中心周波数の感度が低いことを示している。この再現性および低い感度は、製造公差に対するギャップ静電容量(ギャップコンデンサ)の低い感度に直接関連している。
本発明に係るアンテナの他の特別な特性および利点は、それが環境によって殆ど影響されないという点である。マッチングされた周波数は、アンテナから非常に短い距離内に人体組織が存在する場合であっても、安定した状態を保つ。ここに示された特定の実施形態においては、アンテナから1cmの距離で人体組織によりアンテナが取り囲まれる場合、アンテナの中心周波数が一定に保たれることが、反射係数測定を使用して実験的に示された。このことは、近距離場エネルギが電気的であり且つ場のパターンが人間の存在によって大きく影響される例えばダイポールアンテナとは異なり、ループアンテナがその近距離場エネルギを人体組織の高い比誘電率によって殆ど影響されない磁場内に蓄えるという事実によって説明することができる。この事実は、本発明と直接に関係していないが、ループアンテナの特性であり、本設計方法は、マッチング機構が最小で且つ正確であるために人間の存在に影響されない狭帯域アンテナを容易に製造できるという事実により、この利点に大きく寄与する。
【0012】
図5は、RFトランシーバ500の一部としての本発明のアンテナを示している。アンテナ構造体504とRFチップ506との間の接合部502を見ると、アンテナ504がチップに対して直接に接続されているのがはっきりと分かる。したがって、マッチングコンポーネント、フィルタ、バランコンポーネント等の別個のコンポーネントは、不要である。そのため、チップとアンテナとの間の経路におけるエネルギ散逸が劇的に最小に抑えられ、システムが更に効率的になり、アンテナ利得が増大する。また、製造コストおよび複雑度が減少する。
本発明のアンテナの他の好ましい実施形態が、図6に示されている。構造は、図2のそれと基本的に類似しているが、ここでは、ギャップが給電ラインと平行である図2の場合と異なり、ギャップ静電容量(ギャップコンデンサ)602が給電ライン208と直交している。この構造は、図2の構造よりも若干小さく、図6(b)のS11グラフに現われるような狭い帯域幅(約60Mhz)を与える。また、このアンテナも製造されて検査され、測定結果がシミュレーション結果と一致した。
前述の幾何学的構造は、矩形ループから成るが、多くの他のアンテナの幾何学的構造であっても、前述した原理に適合し得る同じ特異インピーダンス態様を示すことができる。円形ループは、1つの平凡な例であるが、多くの他の湾曲形状または閉じた幾何学的形状、例えば楕円、矩形、三角形、六角形等および不規則形状を使用することができる。図7は、そのような3つの不規則形状、すなわち、(A)切り欠き矩形、(B)フォーク形状ループ、(C)2層螺旋形を示している。ループ、螺旋、または同じ特異態様を示すダイポールの組み合わせといったより複雑な形状、例えば図7(D)のループ/ダイポールの組み合わせも、本発明の範囲内に入る。本方法は、差動ポートに適用できるだけでなく、図7(E)、(F)にそれぞれ示されるモノポールアンテナおよび螺旋モノポールアンテナ等の非差動アンテナにおいても同じ特異性を見いだすことができる。
【0013】
また、製造方法に関しては、多くの可能性がある。前述した例は、FR4等の1層PCB基板上にプリントされたアンテナを示している。しかしながら、アンテナは、PCBの2つの層の間に組み込むこともでき(これによって、サイズは減少するが、誘電損失が増大し、利得が減少する)、あるいは、複数の層上にプリントすることもできる(1つの層上にアンテナの一部をプリントし、他の層上にアンテナの一部をプリントする)。PCB技術は、通常、FR4またはテフロン(登録商標)等の有機材料を使用する。また、HTCCまたはLTCC(高/低温セラミックコファイア)技術でセラミック基板を使用することもでき、また、セラミック基板の1つまたは複数の層上にアンテナをプリントすることもでき、あるいはセラミック材料の内部にアンテナを組み込むこともできる。セラミック材料は、非常に高い比誘電率を有しているため、一方でサイズを減少させることができるが、他方で効率を低下させてしまう。
前述した例においてプリントされたマイクロストリップのギャップによって与えられる静電容量に関しては、それをセラミック技術で達成することもできる。この場合、アンテナは、セラミック基板に組み込まれ、あるいはセラミック基板上にプリントされる。直列の2つ以上のギャップ、または静電容量を減少させる任意の他のギャップの組み合わせを使用することもできる。また、適当な公差および僅かな価格で製造できる場合には、別個のコンデンサを使用することもできる(しかし、これによって価格およびエネルギ散逸が増大する可能性もある)。したがって、用語“静電容量”は、ここでは、任意の1つのコンデンサまたは任意のコンデンサの組み合わせによって得ることができる任意の小さな静電容量を表わすために使用される。
【0014】
この明細書で言及した全ての刊行物は、あたかも各個々の刊行物が具体的に且つ個別に示唆されて参考としてここに組み込まれると同様に、これらを参考とすることにより、その全体が明細書中に組み込まれる。また、この出願中における任意の引例の引用または識別表示は、そのような引例が本発明に対して従来技術として利用可能であるということを自白したものと解釈されるべきではない。
限られた数の実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明は、多くの変形、改良を成すことができ、また他の用途に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ループアンテナのインピーダンスの態様を示す図である。
【図2】本発明の方法を用いて設計されたアンテナの好ましい実施形態の一例およびシミュレーション結果である。
【図3】プリント方法を使用して基板上に実施された図2のアンテナの写真である。
【図4】図3のアンテナに関して得られた測定結果を示している。
【図5】RFモジュールに統合された図4のプリントアンテナの写真である。
【図6】本発明の方法を用いて設計されたアンテナの他の好ましい実施形態である。
【図7(A)】本発明の方法を用いて設計されたアンテナの様々な考えられる幾何学的構成の概略図である。
【図7(B)】本発明の方法を用いて設計されたアンテナの様々な考えられる幾何学的構成の概略図である。
【図7(C)】本発明の方法を用いて設計されたアンテナの様々な考えられる幾何学的構成の概略図である。
【図7(D)】本発明の方法を用いて設計されたアンテナの様々な考えられる幾何学的構成の概略図である。
【図7(E)】本発明の方法を用いて設計されたアンテナの様々な考えられる幾何学的構成の概略図である。
【図7(F)】本発明の方法を用いて設計されたアンテナの様々な考えられる幾何学的構成の概略図である。
【符号の説明】
【0016】
200 スクエアループアンテナ、202、204 ギャップ、206 アンテナ入力ポート、208 給電ライン、302 50ΩSMAコネクタ、304 2.4Ghz“バラン”コンポーネント、500 RFトランシーバ、502 (アンテナ構造体とRFチップとの間の)接合部、504 アンテナ構造体、506 RFチップ、602 ギャップ静電容量(ギャップコンデンサ)。
Claims (24)
- 実数部分と虚数部分とを有する所要の入力インピーダンスに対してマッチングされ且つ所望の周波数で動作する小型アンテナを設計する方法であって、
a.1つの特異点に関するインピーダンスマッチング点を選択し、
b.入力インピーダンスの虚数部分をキャンセルすることにより、所要のインピーダンスに対してマッチングされ且つ所望の周波数で動作するアンテナの構造を得る、
方法。 - 前記インピーダンスマッチング点を選択するステップは、前記所望の動作周波数と数学的な関係を成す前記アンテナの少なくとも1つの幾何学的な寸法を設定することを含む請求項1に記載の方法。
- 前記幾何学的な寸法が長さであり、前記動作周波数と数学的な関係を成す前記長さの前記設定は、前記周波数に比例する波長の分数よりも小さい分数となるように前記長さを設定することを含む請求項2に記載の方法。
- 前記設定は、前記少なくとも1つの幾何学的な寸法と前記所望の動作周波数との間の前記関係を用いて、前記特異点でインピーダンスの所要の実数部分をマッチングすることを更に含む請求項2に記載の方法。
- 前記キャンセルは、入力インピーダンスの虚数部分の非常に高い正の値と共振する非常に小さい直列静電容量を与えることを含む請求項1に記載の方法。
- 非常に小さい直列静電容量を与える前記ステップは、ギャップ静電容量を与えることを含む請求項5に記載の方法。
- 前記アンテナは、ループアンテナであり、前記幾何学的な寸法は、前記ループの長さを含んでいる請求項3に記載の方法。
- 前記アンテナは、非差動アンテナである請求項2に記載の方法。
- 所要の周波数で動作するように設計された幾何学的な寸法を有する小型ループアンテナを得るための方法であって、前記ループアンテナが所要の入力インピーダンスに対してマッチングされる方法において、
a.入力インピーダンスおよび幾何学的な寸法と所要の周波数との間の相関関係によって規定された特異点のマッチングに基づいて、最適な構造を得て、
b.前記構造を実施する、
方法。 - 前記特異点のマッチングを行なう前に、インピーダンスの実数部分が増大する特異領域を特定するとともに、前記特異領域内で前記特異点を選択する請求項9に記載の方法。
- インピーダンスの実数部分のマッチングに基づいて、前記特異点の選択が行なわれ、実数部分の前記マッチングは、非常に高い正のリアクタンスを選択することを含む請求項10に記載の方法。
- 前記実施は、プリント基板技術を用いて、基板上で前記構造を実施することを更に含む請求項9に記載の方法。
- インピーダンスの前記実数部分の前記マッチングは、前記非常に高い正のリアクタンスをキャンセルすることを更に含む請求項11に記載の方法。
- 前記キャンセルは、直列静電容量を前記アンテナに付加することにより行なわれる請求項13に記載の方法。
- 直列静電容量を付加する前記ステップは、ギャップコンデンサを付加することを含む請求項14に記載の方法。
- 前記ギャップコンデンサは、数フェムトファラッド〜数百フェムトファラッドの範囲の静電容量を有している請求項15に記載の方法。
- 入力インピーダンスに対してマッチングされる小型アンテナであって、前記入力インピーダンスは、マッチング前に非常に高い正のリアクタンスを有し、所望の周波数で動作するように設計されるアンテナにおいて、
a.周波数に関連する少なくとも1つの幾何学的な寸法を有するアンテナ素子であって、前記関連が非常に高い正のリアクタンスと相関関係にあるアンテナ素子と、
b.前記アンテナ素子に付加され、非常に高い正のリアクタンスをキャンセルする静電容量と、を備え、
これによって、入力インピーダンスに対してマッチングされるとともに、非常に狭い周波数帯域で動作する小型アンテナ。 - 前記コンデンサは、ギャップ静電容量を有する少なくとも1つのギャップコンデンサを含む請求項17に記載のアンテナ。
- 前記アンテナ素子および前記少なくとも1つのギャップコンデンサは、基板上にプリントされる請求項18に記載のアンテナ。
- 前記ギャップ静電容量は、数フェムトファラッド〜数百フェムトファラッドの範囲にある請求項18に記載のアンテナ。
- 前記アンテナ素子は、ループ、螺旋、ダイポール、およびこれらの組み合わせから成るグループから選択される形状を有している請求項17に記載のアンテナ。
- 前記基板は、単層PCB基板、2層PCB基板、多層PCB基板、単層セラミック基板および多層セラミック基板から成るグループから選択される請求項19に記載のアンテナ。
- 前記ループ形状は、楕円、矩形、三角形、六角形および不規則な幾何学的形状から成るグループから選択される請求項21に記載のアンテナ。
- 非差動アンテナとして実施される請求項23に記載のアンテナ。
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