JP2004526510A - 選択的生理学的応答を達成するための、陰部神経または陰部神経枝の中、その上またはその付近の成分を選択的に刺激するためのシステムおよび方法 - Google Patents

Abstract

ヒトにおいて所望の応答を惹起するために仙骨根から離れた陰部神経の成分を選択的に刺激するためのシステムおよび方法が提供される。このシステムおよび方法は、陰部神経上、陰部神経中、または陰部神経付近に配置された複数の電極アレイまたは個々の電極アレイ（１８、２０、２２、および２４）を使用する。この電極アレイまたは個々の電極は、パルス発生器と組み合わせて、異なる生理学的応答を達成するために、陰部神経内の個々の束の選択的な刺激を提供する。

Description

【技術分野】
【０００１】
（関連出願）
本願は、２００１年３月３０日に提出された米国仮特許出願第６０／２８０，２２２号、タイトル「Ｓｙｓｔｅｍｓ ａｎｄ Ｍｅｔｈｏｄｓ ｆｏｒ Ｓｅｌｅｃｔｉｖｅｌｙ Ｓｔｉｍｕｌａｔｉｎｇ Ｆａｓｃｉｃｌｅｓ ｉｎ ｔｈｅ Ｐｕｄｅｎｄａｌ Ｎｅｒｖｅ ｔｏ Ａｃｈｉｅｖｅ Ｓｅｌｅｃｔｉｖｅ Ｐｈｙｓｉｏｌｏｇｉｃ Ｒｅｓｐｏｎｓｅｓ」（これは本明細書中で参考として援用される）の優先権を主張する。
【０００２】
（発明の分野）
本発明は、ヒトを含む動物における神経を刺激するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【０００３】
（発明の背景）
下尿路は、膀胱、尿道、尿道周囲の筋肉および括約筋、ならびに付属器官を含む。この下尿路は、２つの主な機能：尿の蓄積および貯蔵（節制）、ならびに適切な時点での尿の排泄（排尿または放尿）を有する。
【０００４】
体の丈夫な個体において、節制は、高い伸展性の膀胱における低圧尿貯蔵により維持され、これは、内尿道括約筋および外尿道括約筋における緊張性活動により増大される。排尿は、このような個体において、尿道括約筋および膀胱の収縮の共同的な弛緩により達成される。
【０００５】
上仙骨脊髄損傷、脳幹発作または疾患（例えば、多発性硬化症）は、脳により生成される電気信号が通常、下尿路の神経筋群および身体中の他の部分に伝達される経路を遮断するかまたはそうでなければ破壊する。結果として、これらの神経および筋肉が、インタクトである場合でさえ、異常な電気信号を脊髄から受けるかまたは電気信号を受けず、そして関連の筋肉が機能しない。
【０００６】
下尿路において、膀胱の麻痺が生じ得、これと共に、膀胱を自発的に空にする能力がなくなる。膀胱制御の喪失は、これらの状態の主な破滅的な影響である。
【０００７】
これらの状態はまた、膀胱が小さい流体容量で自発的に収縮する膀胱反射亢進を生じ得る。膀胱括約筋筋失調がまた生じ得、ここで、外尿道括約筋は、膀胱収縮の間に、弛緩するのではなく収縮する。反射亢進および筋失調は、高圧での膀胱収縮、排尿障害、排尿後の大きな残量および低い膀胱伸展性を生じる。
【０００８】
これらの機能障害は、しばしば、尿管の逆流および閉塞、腎臓の感染、危険な血圧上昇を伴う自律神経失調の発症、皮膚の問題を生じる失禁、頻繁な尿管感染、および長期の腎臓損傷を生じる。泌尿器科学的合併症は、脊髄損傷を有する人における罹患率の主な原因の１つである。膀胱制御の喪失はまた、大きな社会的影響を有し、そして生活の質の低下を導く。これはまた、処置、供給者および医薬の大きな直接医療費を生じる。
【０００９】
清潔な自己カテーテル法は、時折抗コリン作用剤との組み合わせで、神経因性膀胱を処置するための現在最も有効な方法である。しかし、この処置は、カテーテル処置のための器用さ、ならびに抗コリン作用剤に対する耐性および応答を有する個体を必要とする。これらの個体を用いた場合でさえ、尿管感染は持続する。
【００１０】
膀胱排尿および節制の回復は、仙骨感覚神経根の外科的切断（後神経根切断）と連結された、仙骨神経根の電気的刺激により達成されてきた。この後神経根切断は、膀胱反射亢進および膀胱括約筋筋失調を排除する。この技術は、文書化された医学的な利点、生活の質および経済的な利点を生じた。しかし、この技術の広まった適用は、後神経根切断の不可逆的効果（これは男性における反射性勃起の喪失を生じる）および複雑な外科的移植手順自体（これは棘に沿った背部を通るアクセス、椎骨体の椎弓切除、ならびに脳脊髄液漏出および硬膜感染の危険性を必要とする）に起因して制限される。
【００１１】
他の身体的状態はまた、毎日の膀胱機能に対する悪影響を有する。例えば、切迫尿失禁と呼ばれる状態（これは時折、神経学的原因が見出されない）は、機能亢進膀胱および節制の喪失を生じる。ストレス性失禁と呼ばれる状態もあり、これは出産の間に、筋肉が骨盤において伸ばされた後に生じ得る。膀胱の不安定性または機能障害はまた、多くの高齢者、特に女性の慢性的状態である。
【００１２】
膀胱および他の尿管の機能（例えば、内尿および／または節制）を、簡単な様式で、自己カテーテル法も、薬物治療も、複雑な外科的手順も、神経繊維の不可逆的な外科的切断も必要とすることなく、回復させ得るシステムおよび方法の必要性が存在する。下腸機能（例えば、便失禁および／または排便）および／または性的機能（例えば、陰茎の勃起、膣潤滑、射精および／またはオルガズム）に影響を与える機能障害または損傷を解決するシステムおよび方法の必要性もまた、存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【００１３】
（発明の要旨）
本発明は、混合神経または複合神経の成分または束を選択的に刺激し、所望の生理学的機能をモニタリングするか、制御するか、またはモニタリングおよび制御の両方を行うためのシステムおよび方法を提供する。神経成分間の選択性としては、複合神経幹内の成分間の選択、または神経幹の枝間の選択、または所定の神経構造を有する求心性（感覚）神経繊維もしくは遠心性（運動）神経繊維の間の選択、あるいは神経繊維のサイズに関する選択、または活性化の方向に関する選択、または神経活性化の機能に関する選択（活動電位またはインパルスおよび神経に沿ったその伝達の生成を生じる）、または神経の不活性化もしくはブロックに関する選択（活動電位またはインパルスの活性化または伝達の防止を生じる）が挙げられ得る。
【００１４】
本発明の特徴を具体化するシステムおよび方法は、一般に、身体全体にわたる混合神経構造または複合神経構造と関連した使用に適用可能である。例えば、このシステムおよび方法は、陰部神経、特に、陰部神経幹ならびに仙骨根からはなれたその求心性および遠心性の枝または成分（これは下尿管、下腸および生殖器の筋肉および器官を刺激する）と共に使用するためにてよく適している。陰部神経幹またはその枝は、仙骨根および脊柱から離れている。これらは、身体の正面からアクセス可能であり、そして脊柱の上、その中またはその付近における複雑な外科的手順も、必然的に生じる後神経根切断術も必要としない。
【００１５】
本発明の１つの局面は、所望の生理学的を制御するためのシステムおよび方法を提供し、この方法は、少なくとも１つの電極を、仙骨根から離れた陰部神経の標的成分の上、その中またはその付近に配置する工程を包含する。このシステムおよび方法は、この電極に電気信号を供給して、この標的成分を選択的に刺激し、それにより、所望の生理学的機能に影響を与える。
【００１６】
所望の生理学的機能は、変化し得る。例えば、これは、下尿路機能（例えば、切迫尿失禁もしくは排尿、またはその両方）を制御すること含み得る。別の例として、この所望の生理学的機能は、下腸機能（例えば、便失禁、もしくは排便、もしくはぜん動、またはそれらの組み合わせ）を制御することを含み得る。別の例として、この所望の生理学的機能は、性的機能（例えば、勃起、膣潤滑、射精もしくはオルガズム、またはそれらの組み合わせ）を制御することを含み得る。
【００１７】
このシステムおよび方法は、単一の電極または複数の電極アレイを使用して、陰部神経の求心性成分、もしくは陰部神経の遠心性成分、またはその両方を選択的に刺激することによって、所望の生理学的結果を達成し得る。この選択的刺激は、１つ以上の成分を選択的に活性化するか、または別の成分を選択的に不活性化しつつ１つの成分を選択的に活性化するか、または１つ以上の成分を選択的に不活性化するか、または活性化および／もしくは不活性化の他の組み合わせを果たし、所望の生理学的結果を達成するのに役立ち得る。
【００１８】
例えば、このシステムおよび方法は、所望の機能に依存して、求心性神経枝または遠位性神経枝のいずれか、またはその両方を含み得る、陰部神経枝の上、その中またはその付近に電極を配置し得る。この配置において、電極は、単一の電極または複数の電極アレイを含み得る。この単一電極または複数の電極アレイは、パルス発生器と共に使用され得、陰部神経枝の選択的刺激を提供し、所望の生理学的応答を達成する。
【００１９】
あるいは、または組み合わせて、このシステムおよび方法は、陰部神経幹の上、その中またはその付近に電極を配置し得る。この配置において、このシステムおよび方法は、電気信号を適用して、陰部神経幹の求心性成分、もしくは陰部神経幹の遠心性成分、またはその両方を選択的に刺激し得る。この配置において、電極は、標的求心性成分もしくは標的遠心性成分、またはその両方の選択的刺激を達成するように操作される複数の電極アレイを含み得る。この電極アレイは、パルス発生器と共に使用され得、陰部神経幹内の個々の成分または束の選択的刺激を提供して、異なる生理学的応答を達成する。
【００２０】
このシステムおよび方法は、個体の意志的行動に応答して、もしくは感覚的生理学的現象に応答して、またはその両方に応答して、電気信号を適用し得る。このシステムおよび方法はまた、必要に応じてかまたは感覚的生理学的現象に応答してのいずれかで、予めプログラムされたパターンの電気信号を適用し得る。この生理学的現象は、神経（例えば、陰部神経幹または陰部神経の枝もしくは成分）の中、その上またはその付近に、少なくとも１つの記録電極を配置することによって、感知され得る。
【００２１】
本発明のこの局面は、陰部神経に関するシステムおよび方法を提供し、これは、所望の生理学的応答を他の場合に生成する能力（例えば、尿節制を維持しそして／または尿意を生成し、そして／または便失禁を維持し、そして／または便意を生成し、そして／または正常な男性／女性の性的応答を維持する）を欠いた人において、所望の生理学的応答を惹起し得る。
【００２２】
例えば、排尿応答（膀胱圧力の増加および外尿道括約筋の活動の減少）は、陰部神経の尿道求心性成分の選択的刺激（例えば、膀胱収縮を生じるか、もしくは自発的な尿道括約筋機能に影響するか、またはその両方を生じる）、または陰部神経の遠心性成分の選択的刺激（例えば、自発的尿道括約筋機能に影響する）、あるいはその両方により惹起され得る。排尿応答に付いて、求心性成分の選択的刺激は、神経の不活性化に影響し、尿道括約筋の弛緩を引き起こし、それによって排尿を促進するように、実施され得る。これは、単独で実施され得るか、または求心性成分の選択的刺激と組み合わされて実施され得、神経の活性化に影響し、膀胱収縮を引き起こし、さらに排尿を促進する。神経の活性化に影響を与え、膀胱収縮を引き起こす求心性成分のみの選択的刺激はまた、排尿を促進し得る。
【００２３】
自制応答（膀胱収縮を阻止する）は、陰部神経の生殖器求心性成分の選択的刺激（膀胱収縮を阻害する）、陰部神経の遠心性成分の選択的刺激（自発的尿道括約筋の機能のための神経活性化に影響する）によって、またはその両方によって、惹起され得る。自制応答について、求心性成分もしくは遠心性成分のいずれかまたは両方の選択的刺激は、所望の生理学的応答を惹起するように神経の活性化に影響を与えるために、実施され得る。
【００２４】
他の例として、排便応答（直腸の収縮の増加および外肛門括約筋における活性の減少）は、陰部神経の求心性成分の選択的刺激（直腸の収縮を引き起こすか、もしくは自発的肛門括約筋機能に影響を与えるか、またはその両方）によって、陰部神経の遠心性成分の選択的刺激（自発的肛門括約筋機能に影響を与える）、またはその両方によって、惹起され得る。排便応答について、遠心性成分の選択的刺激は、神経不活性化に影響し、肛門括約筋の弛緩を引き起こし、それにより排便を促進するように実施され得る。これは、単独で実施され得るか、または求心性成分の選択的刺激と組み合わせて実施され得、神経活性化に影響を与え、直腸の収縮を引き起こし、さらに排便を促進する。神経活性化に影響を与え、直腸の収縮を引き起こす求心性成分のみの選択的刺激はまた、排便を促進し得る。
【００２５】
便自制応答（直腸の収縮を阻止し、そして自発的肛門括約筋の活性に影響を与える）は、陰部神経の求心性成分の選択的刺激（直腸の収縮を阻害する）によって、陰部神経の遠心性成分の選択的刺激（自発的な肛門括約筋機能に影響を与える）によって、またはその両方によって、惹起され得る。便自制応答について、求心性成分または遠心性成分のいずれかまたは両方の選択的刺激は、神経活性化に影響を与えて、所望の生理学的応答を惹起するように実施され得る。
【００２６】
蠕動（結腸の収縮）を制御するための応答は、陰部神経の１つ以上の求心性成分の選択的刺激によって惹起され得る。蠕動について、求心性成分または遠心性成分のいずれかまたは両方の選択的刺激は、神経活性化に影響を与えて、所望の生理学的応答を惹起するように実施され得る。
【００２７】
他の例として、男性における勃起応答または女性における膣潤滑応答が、陰部神経の求心性成分を単独でか、または神経系の他の求心性成分（例えば、腹側生殖器）と組み合わせて選択的に刺激し、陰茎の血管の拡大または膣における潤滑に影響を与えることによって、惹起され得る。射精応答は、単独でか、または神経系の他の求心性成分（例えば、腹側生殖器）、および／もしくは神経系の他の遠心性成分と組み合わせた、陰部神経の求心性成分の選択的刺激によって、もしくは陰部神経の遠心性成分の選択的刺激によって、またはその両方によって惹起され得、骨盤筋肉を収縮させそして射精を引き起こす。オルガズム応答は、単独でかまたは他の求心性成分（例えば、腹側生殖器）および中枢神経系の他の成分と組み合わせて、陰部神経の求心性成分を選択的に刺激することによって、惹起され得る。
【００２８】
上記の全ての例において、刺激は、自動的にか、使用者の意志的行動によって手動で、惹起され得る。この刺激は、予めプログラムされたパターンの刺激信号の使用を含み得る。
【００２９】
本発明の別の局面は、下尿路もしくは下腸またはその両方の機能をモニタリングするためのシステムおよび方法を提供する。このシステムおよび方法は、陰部神経の標的成分の上、その中またはその付近に位置するようにサイズ決めおよび構成された少なくとも１つの記録電極を配置して、それぞれ、膀胱機能または下腸機能に関する電気的活性を感知する。このシステムおよび方法は、記録電極により感知される電気的活性に基づいて、情報信号を生成する。
【００３０】
膀胱機能の場合において、情報信号は、例えば、膀胱収縮、膀胱容量または膀胱収縮の発生に関連し得る。下腸機能の場合において、情報信号は、例えば、直腸の収縮、直腸の容量または直腸の収縮の発生に関連し得る。
【００３１】
記録電極により標的化される成分は、陰部神経の求心性成分、陰部神経の遠心性成分、またはその両方を含み得る。
【００３２】
１つの配置において、このシステムおよび方法は、陰部神経の標的枝の上、その中またはその付近に記録電極を配置する。この標的枝は、求心性枝、遠心性枝またはその両方であり得る。
【００３３】
あるいは、または組み合わせて、このシステムおよび方法は、記録電極を、陰部神経幹の上、その中またはその付近に配置する。この配置において、この記録電極により標的化される成分は、陰部神経幹の求心性成分、陰部神経幹の遠心性成分、またはその両方を含み得る。
【００３４】
本発明の別の局面に従って、このシステムおよび方法は、生成される情報信号に少なくとも一部基づいて、膀胱機能または下部腸機能にそれぞれ影響する制御信号を生成する。膀胱機能の場合、制御信号は、膀胱収縮を妨げる（尿自制を誘発する）かまたは膀胱収縮を引き起こす（排尿を誘発する）かのいずれかであり得る。下部腸機能の場合、制御信号は、下部腸機能を妨げる（糞便自制を誘発する）かまたは下部腸機能を引き起こす（排便を誘発する）かのいずれかであり得る。
【００３５】
１つの配置において、制御信号は、既に記載された様式で、陰部神経の標的成分上、標的成分内、または標的成分近くに配置される電極に適用される。
【００３６】
例えば、膀胱機能をモニタリングおよび制御する際に、膀胱収縮の開始は、陰部神経の電気的活性を記録することによって検出され得る。検出される場合、情報信号が発生され、そして陰部神経の生殖求心性成分、陰部神経の遠心性成分またはその両方の刺激が、自動的に収縮を抑えるように生じ、そして随意尿管括約筋の機能に影響し得る。あるいは、使用者は、手動で、陰部神経の生殖求心性成分、陰部神経の生殖遠心性成分またはその両方の刺激を開始して、必要に応じて自制を誘発し得る。同様に、使用者は、手動で、陰部神経の尿管求心性成分、陰部神経の遠心性成分またはその両方の刺激を開始して、必要に応じて排尿を誘発し得る。
【００３７】
例えば、下部腸機能をモニタリングおよび制御する際に、直腸の収縮の開始は、陰部神経の電気的活性を記録することによって検出され得る。検出される場合、情報信号が発生され、そして陰部神経の求心性成分、陰部神経の遠心性成分またはその両方の刺激が、自動的に収縮を抑えるように生じ、随意肛門括約筋の機能に影響し得る。あるいは、使用者は、手動で、陰部神経の求心性成分、陰部神経の遠心性成分またはその両方の刺激を開始して、必要に応じて糞便自制を誘発し得る。同様に、使用者は、手動で、陰部神経の求心性成分、陰部神経の遠心性成分またはその両方の刺激を開始して、必要に応じて排便を誘発し得る。
【００３８】
本発明の他の特徴および利点は、以下の明細書および添付の図面に記載される。
【００３９】
本発明は、その精神または必須の特徴から逸脱することなく、いくつかの形態で具体化され得る。本発明の範囲は、詳細な説明よりも、添付の特許請求の範囲によって規定される。従って、特許請求の範囲と等価の意味および範囲内に入る全ての実施形態は、特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【００４０】
（好ましい実施形態の説明）
本発明の種々の局面は、身体中の複雑なまたは複合した神経構造内の神経活性の検出および／または標的神経成分もしくは標的神経束の刺激を達成することと関連して記載される。説明のために、本発明は、下部尿路、および／または下部腸および／または生殖領域において生じる所望の生理学的結果を達成するために、仙骨根から離れて配置される複合陰部神経幹またはその枝の文脈で開示される。これは、本発明に起因して生じる特徴および利点がこの目的に十分に適するからである。なお、本発明の種々の局面が、他の目的も達成するために身体内の他の場所で適用され得ることが理解されるべきである。
【００４１】
（Ｉ．複合陰部神経幹の解剖学）
陰部神経幹（ＰＮＴ）は、求心性（感覚）神経成分および遠心性（運動）神経成分を有し、これらは、下部尿路における筋肉および器官の神経を支配する。図１は、概略的形態で、陰部神経幹（ＰＮＴ）の主要な枝を示す。これらの主要な枝は、主感覚（求心性）枝（ＳＢ）および主運動（遠心性）枝（ＭＢ）を含む。
【００４２】
生殖感覚枝（ＧＳＢ）および尿道感覚枝（ＵＳＢ）が、主感覚枝から伸長する。生殖感覚枝（ＧＳＢ）は、雄性の陰茎背神経および雌性の陰核神経を含む。尿道感覚枝（ＵＳＢ）は、尿道の神経を支配する。
【００４３】
外尿道括約筋枝（ＵＭＢ）（これは、外尿道括約筋の神経を支配する）および外肛門括約筋枝（ＡＭＢ）（これは、外肛門括約筋の神経を支配する）が、主運動枝から伸長する。
【００４４】
研究によって、陰部神経の電気的活性が膀胱収縮の間に調節されることが示された。従って、陰部神経の電気的活性を使用して膀胱収縮の開始を検出し得る。ちょうど説明したように、陰部神経は、骨盤床（ｐｅｌｖｉｃ ｆｌｏｏｒ）（外（随意性）尿道括約筋および外（随意性）肛門括約筋を含む）の筋肉の神経を支配する。ヒトにおいて、膀胱への流体の迅速な注入により誘発される膀胱圧力の増加は、骨盤床の筋肉の活性の増加を誘発する。脊椎の損傷に続いて、膀胱−括約筋共同運動障害（ｄｙｓｎｅｒｇｉａ）は、骨盤床膀胱収縮の増加を導く。これらのデータは、陰部神経またはその枝における活性の電気的記録が、反射性膀胱収縮を検出することを示す。
【００４５】
研究によってまた、陰部神経の生殖感覚枝（ＧＳＢ）の電気的刺激が膀胱収縮を妨げることが示された。これらのデータは、ＧＳＢの電気的刺激が過剰な反射性膀胱収縮を避け得、そして例えば、脊椎損傷に起因する膀胱反射亢進を有する個体における膀胱容量を増加し得ること示す。
【００４６】
協調排尿（ｃｏｏｒｄｉｎａｔｅｄ ｍｉｃｔｕｒｉｔｉｏｎ）（膀胱収縮が外尿道括約筋の活性の減少と連結する）は、膀胱拡張により誘発される脊椎−脳幹−脊椎反射ループを必要とするという従来の考えを維持する。しかし、膀胱収縮はまた、尿道求心性神経の活性化によって誘発され得る。データは、尿道感覚神経枝（ＵＳＢ）の刺激が排尿様膀胱収縮および尿道括約筋における活性の減少を誘発することを示す。この組合せは、必要に応じて、膀胱の低圧力連続流排出を導く。
【００４７】
陰部神経幹（ＰＮＴ）の断面（図２を参照のこと）は、ちょうど記載された主要な運動および感覚神経枝が神経幹（ＰＮＴ）中で末梢的に間隔の離れた成分または神経束で配置されることを示す。この神経形状は、それ自体、陰部神経幹（ＰＮＴ）の神経束の独立した神経感知および／または神経刺激に影響するための、陰部神経幹（ＰＮＴ）内、陰部神経幹上、または陰部神経幹近くに移植される電極１８、２０、２２、２４の末梢的に間隔をあけて配置されたカフアレイ１６（図３および４を参照のこと）の使用を導く。
【００４８】
図３および４は、規則的な９０°の間隔をあけて配置された４つの電極１８、２０、２２，および２４を含むようなアレイ１６を示す。示される実施形態において、アレイ１６はまた、２つのリングリターン電極Ｒ１およびＲ２をカフの各端部に備える。アレイ１６は、より多いまたはより少ない電極１８、２０、２２，および２４を備え得、そして電極１８、２０、２２，および２４間の間隔は、異なり得、均一である必要はない。
【００４９】
アレイ１６は、望ましくは、神経の特定の神経束構造に対する事前参照なしで、移植され、電極と神経束との間で無作為の方向を導く。従って、個々の標的神経束の所望の刺激をもたらすために、アレイ１６の電極１８〜２４の位置および操作パラメータを臨床家医によって確認するためのプログラミングまたは「チューニング」が必要とされる。使用前のアレイ１６のプログラミングまたは「チューニング」のさらなる詳細は、後でより詳細に記載される。あるいは、別々の電極が個々の枝中、枝上または枝の近くに移植され得、それによって、無作為な方向を避ける。亜神経束（ｓｕｂ−ｆａｓｃｉｃｕｌａｒ）選択を可能にする技術もまた使用され得る。
【００５０】
（ＩＩ．システム概観）
図５は、複合陰部神経幹（ＰＮＴ）内の神経インパルスおよび／または標的神経枝の刺激の検出を可能にするシステム１０を示す。
【００５１】
システム１０は、電気刺激波形を生成し、そしてこの電気刺激波形を、神経幹（ＰＮＴ）内の選択された求心性神経束および／または遠心性神経束に、あるいは神経幹（ＰＮＴ）の外側の選択された求心性神経束および／または遠心性神経束に分配する。
【００５２】
示されるように、システム１０は、以下の４つの基礎的な機能的成分を備える：（ｉ）１つ以上の制御信号供給源１２；（ｉｉ）パルス発生器１４；（ｉｉｉ）少なくとも１つの電極１８；および（ｉｖ）電極１８をパルス発生器１４に接続する電気リード線２６。
【００５３】
図５で構築され、そして配置されるように、制御信号供給源１２は、定められた応答要求入力をパルス発生器１４に発生させるように機能する。定められた要求入力は、後でより詳細に記載されるように、所望の生理学的応答に関連する。
【００５４】
パルス発生器１４は、オンボードプログラム可能マイクロプロセッサ３０を備え得、これは、埋め込まれたコードを有する。このコードは、所望の電気的刺激波形が所定の要求入力に応答して発生し、そして電極アレイ１６に分配される、予めプログラムされた規則またはアルゴリズムを表す。これらのプログラムされた規則に従って、パルス発生器１４は、所定の刺激波形を、リード線２６を通して、所望の応答に関連する標的神経束を選択的に刺激する電極１８または電極アレイ１６の電極１８〜２４に向ける。所定の要求入力に対する電極選択パラメータおよび操作パラメータは、後で記載されるように、臨床家医によってコードに予めプログラムされる。このように、特定の所定の要求入力と関連する特定の生理学的応答は、信頼可能に達成される。
【００５５】
発生される刺激波形は、望ましくは、低周波数（例えば、約１０Ｈｚ未満）である。周波数は、所望の生理学的結果を達成するために調整され得る。波形の形状もまた変化し得る。例えば、代表的な方形波であり得るか、またはランプ（ｒａｍｐｅｄ）形状を有し得る。パルスまたはパルスの上昇縁部もしくは下降縁部は、種々の直線的、指数関数的、双曲線的、または準台形（ｑｕａｓｉ−ｔｒａｐｅｚｏｉｄａｌ）形状を提示し得る。後で記載されるように、刺激波形は、連続的であり得るか、または種々であり得、経時にわたって大きさおよび波形において周期的にまたは段階的様式で変化し得る。
【００５６】
このように記載されるように、システム１０は、生理学的機能を制御するために操作可能である。システム１０は、仙骨根から離れた陰部神経の標的成分上、標的成分内、または標的成分近くに配置されるような大きさおよび構成である少なくとも１つの電極１８を備える。電極に接続されたパルス発生器１４は、電気信号を適用して、陰部神経の標的成分を選択的に刺激し、所望の生理学的機能を達成する。
【００５７】
標的成分は、陰部神経の求心性成分、または陰部神経の遠心性成分、またはその両方を含み得る。図５に示されるように、電極は、陰部神経幹（ＰＮＴ）内、陰部神経幹（ＰＮＴ）上、または陰部神経幹（ＰＮＴ）近くに配置される大きさである複数の電極アレイ１６の形態を取る。この配置において、後でより詳細に記載するように、パルス発生器１４は、神経幹の求心性成分、神経幹の遠心性成分、またはその両方を選択的に刺激して、所望の生理学的機能を達成し得る。
【００５８】
あるいは、図５に示されるような、単一電極１８または電極１８〜２４のアレイは、陰部神経枝上、陰部神経枝中、または陰部神経枝近く、あるいは神経幹の外側に配置されるような大きさおよび構成にされ得る。神経枝は、求心性枝、遠心性枝、またはその両方を含み得る。この配置において、パルス発生器１４は、神経幹の求心性枝、または神経幹の遠心性枝、またはその両方を選択的に刺激して、所望の生理学的機能を達成し得る。
【００５９】
後でより詳細に記載されるように、パルス発生器１４は、個体の意志の作用に応答して、電気信号を適用するように操作され得る。マイクロプロセッサ３０に起因して、パルス発生器１４は、所望な場合、電気信号の予めプログラムされたパターンを適用するように作動され得る。
【００６０】
システム１０はまた、電気的事象を感知するために、神経内、神経上、または神経近くに配置される少なくとも１つの記録電極を備え得る。示されるように、電極は、陰部神経幹（ＰＮＴ）内、特に、遠心性外肛門括約筋枝（ＡＭＢ）および／または陰部神経幹（ＰＮＴ）の遠心性尿道括約筋枝（ＵＭＢ）内の電気的活性を検出するのに役立つ。この電気的活性は、膀胱収縮および／または直腸の収縮の開始と相関し得る。この配置において、パルス発生器１４は、記録電極に接続され得、そして感知された電気的事象に応答して電気信号を提供するために操作され得る。
【００６１】
システム１０は、種々の所望の生理学的機能を達成するために、陰部神経幹またはその枝と関連して構成および操作され得る。システム１０は、例えば、１つ以上の下部尿路機能（例えば、尿失禁、および／または排尿、またはその両方）を制御するために構成および操作され得る。別の例において、システム１０は、１つ以上の下部腸機能（例えば、糞便失禁、および／または排便、または蠕動、またはこれらの組合せ）を制御するために構成および操作され得る。なお別の例として、システム１０は、１つ以上の性機能（例えば、（雄性の）勃起、および／または射精、および／またはオルガズム、あるいは（雌性の）膣湿潤および／またはオルガズム）を制御するために構成および操作され得る。
【００６２】
これらの種々の生理学的機能を達成するためのシステム１０の構成および操作は、ここで、さらに詳細に記載される。
【００６３】
（ＩＩＩ．下部尿路機能）
システム１０は、刺激波形を発生し得、そしてその刺激波形を、陰部神経幹（ＰＮＴ）の求心性生殖感覚枝（ＧＳＢ）の神経束、または尿道遠心性枝（ＵＭＢ）の神経束、またはその両方に分配する。求心性成分の刺激は、膀胱収縮を妨げる。遠心性成分の刺激は、随意性尿路括約筋機能に影響する。単独で、またはタンデムで、刺激は、膀胱収縮を停止し（新たな反射亢進型を含む）、そして／または尿路括約筋機能に影響するために役立ち得る。このシステム１０は、これによって、尿自制を制御し得る。
【００６４】
システム１０はまた、電気刺激波形を発生し得、そしてその電気刺激波形を、陰部神経幹（ＰＮＴ）の求心性尿道感覚枝（ＵＳＢ）の神経束、または尿道遠心性枝（ＵＭＢ）の神経束、またはその両方に分配する。求心性成分の刺激は、膀胱排出を生じる。遠心性成分の刺激は、随意性尿道括約筋機能に影響する。単独でまたはタンデムで、刺激は、必要に応じて、排尿を達成し得る。
【００６５】
示される実施形態において、神経記録および刺激は、図３および４に示されるように、陰部神経幹（ＰＮＴ）近く、陰部神経幹（ＰＮＴ）上、または陰部神経幹（ＰＮＴ）内に配置される、複数の円周上に間隔をあけて配置された電極１８〜２４のアレイによって実行される。もちろん、生殖求心性枝（ＧＳＢ）および／または尿道求心性枝（ＵＳＢ）および／または尿道遠心性枝（ＵＭＢ）内、上または近くに配置される個々の電極または複数の電極アレイが使用され得る。
【００６６】
マイクロプロセッサ３０に埋め込まれたコードにより表される予めプログラムされた規則に従って、パルス発生器１４は、所定の刺激波形を、リード線２６を通してアレイ１６における電極１８または電極１８〜２４に送る。この刺激波形は、所望の応答に関連する標的化された束（例えば、求心性陰部感覚枝（ＧＳＢ）および／もしくは遠心性尿道枝（ＵＭＢ）（自制のため）または求心性尿道感覚枝（ＵＳＢ）および／もしくは遠心性尿道枝（ＵＭＢ）（排尿のため））を刺激する。
【００６７】
自制応答（膀胱収縮を止めること）は、陰部神経の生殖器求心性成分（膀胱収縮を止めるため）、陰部神経の遠心性成分（自発的尿道括約筋機能のための神経活動化に作用するため）、またはこれらの両方の選択的刺激により誘発され得る。自制応答のために、所望の生理学的応答を誘発するために神経活動化に作用するように、求心性成分または遠心性成分のいずれかまたは両方の選択的刺激が行われ得る。
【００６８】
マイクロプロセッサコードはまた、臨床医により予めプログラムされた規則またはアルゴリズムを表し得る。この規則またはアルゴリズムの下では、陰部神経幹（ＰＮＴ）全体、または神経幹（ＰＮＴ）の個々の遠心性外肛門括約筋枝（ＡＭＢ）および／もしくは遠心性尿道括約筋枝（ＵＭＢ）における電気ニューログラム（ＥＮＧ）活動は、情報信号を生成するために特徴付けられる。この情報信号は、例えば、膀胱収縮、もしくは膀胱容積、または膀胱収縮の開始に関連し得る。この情報信号は、使用者に読み出し可能な出力で表され、その使用者または臨床医に膀胱機能の状態についてフィードバックを提供し得る。後述するように、この情報信号はまた、コントロールとして使用されて、要求入力の自動発生をもたらし得る。
【００６９】
例示される実施において、パルス発生器１４は、１つ以上の所定の自制要求入力に応答して、例えば、発生期の過敏性膀胱収縮の停止に作用する（これにより、自制を達成する）ようにプログラムされる。１つ以上の所定の自制要求入力に応じて、パルス発生器１４は、電気波形を、アレイ１６における電極１８または電極１８〜２４に印加する。この電極は、陰部神経幹（ＰＮＴ）の求心性陰部感覚枝（ＧＳＢ）および／または遠心性尿道運動枝（ＵＭＢ）を刺激するように位置決めされる。
【００７０】
例示される実施形態において、このパルス発生器１４はまた、１つ以上の所定の排尿要求入力に応答して膀胱射出に作用する（それにより、排尿を達成する）ようにプログラムされる。１つ以上の所定の排尿要求入力に応じて、パルス発生器１４は、電気波形を、アレイ１６における電極１８または電極１８〜２４に印加し、これらの電極は、陰部神経幹（ＰＮＴ）の求心性尿道感覚枝（ＵＳＢ）および／または遠心性尿道運動枝（ＵＭＢ）を刺激するように位置決めされる。
【００７１】
排尿応答（膀胱圧の増加および外尿道括約筋の活動の低下）は、陰部神経の尿道求心性成分（例えば、膀胱収縮を引き起こすため、または自発的尿道括約筋機能に作用するため、またはその両方のため）、陰部神経の遠心性成分（例えば、自発的尿道括約筋機能に作用するため）、またはこれらの両方の選択的刺激により誘発され得る。排尿応答のために、遠心性成分の選択的刺激が行われて、神経不活化に作用し得、尿道括約筋の弛緩を引き起こし、それにより排尿を容易にする。これは、単独で行われても、神経活動化に作用する求心性成分の選択的刺激と組み合わされてもよく、膀胱収縮を引き起こし、さらに排尿を促進する。膀胱収縮を引き起こす神経活動化に作用するための求心性成分単独の選択的刺激もまた、排尿を促進し得る。
【００７２】
所定の制御信号源１２は、使用者の意思による動作ではなく、自動的に要求入力を発生するように構成され得る。所定の制御信号源１２はまた、手動で要求入力を発生し、それにより使用者の意思による動作を必要とするようにも構成され得る。このシステム１０は、制御信号源１２のいずれかの形態または両方の形態に依存し得る。
【００７３】
これらの構成を使用して、自制を達成するための刺激は、条件付でないかまたは条件付きのいずれかであり得る。条件付きでない刺激は、手動の信号で停止される場合を除いて、連続的に適用される。条件付き刺激は、手動信号または自動（例えば、神経記録（ｒｅｃｏｄｉｎｇ））信号により誘発される別個の間隔で発生する。
【００７４】
例えば、自動的制御信号源１２の１つの形態は、アレイ１６において１つ以上の電極１８〜２４を備え得、これらの電極は、陰部神経全体、または個々の遠心性外肛門括約筋枝（ＡＭＢ）および／もしくは遠心性尿道括約筋枝（ＵＭＢ）における電気ニューログラム（ＥＮＧ）活動を感知するように位置決めされる。記録は、神経全体の記録を含み得、記録される神経信号は、陰部神経（ＰＮＴ）における全ての神経線維の活動の集合である。しかし、神経記録全体は、代表的に、最も大きな直径の繊維（ＡＭＢおよびＵＭＢを含む）から生じる信号が大部分を占めている。あるいは、この記録は、個々の枝ＡＭＢおよびＵＭＢからの選択的な記録を含み得る。それにもかかわらず、記録された活動は、過敏性膀胱収縮の開始を検出するためにパルス発生器１４により処理される。
【００７５】
パルス発生器１４により開始が検出される場合、要求入力は、自動的に伝送される。このパルス発生器１４は、次いで、自動的に所望の波形を生成して、求心性陰部感覚枝（ＧＳＢ）および／または遠心性尿道運動枝（ＵＭＢ）を刺激し、それにより過敏性収縮を停止するか、そして／または自発的尿道括約筋機能に作用し、そしてそれにより、自制を維持する。
【００７６】
手動制御信号源１２の１つの形態は、使用者が操作する外部コントローラー２８を備え得る。この外部コントローラーは、遠隔制御スイッチングデバイスまたは磁気リードスイッチの形態をとり得る。手動コントローラー２８は、ＥＮＧ感知電極または自動信号源１２の他の形態の代わりに、またはこれらと組み合わせて使用され得る。
【００７７】
例えは、手動コントローラー２８を使用して、使用者は、自動的自制要求入力と独立して、または自動的自制要求入力なしで、自制要求入力を生成し得る。これに応じて、パルス発生器１４は、電気波形を、アレイ１６中の電極１８または電極１８〜２４に印加し、これらの電極は、陰部神経幹（ＰＮＴ）の求心性陰部感覚枝（ＧＳＢ）および／または遠心性尿道運動枝（ＵＭＢ）を刺激するように位置決めされる。手動コントローラー２８を使用して、使用者はまた、自制要求入力を終結し得る。結果として、この使用者は、例えば、日時または流体消費量に依存して、自制制御を「オン」または「オフ」にし得る。手動コントローラー２８を使用して、使用者はまた、自動自制要求入力源を使用可能または使用不可能にし得る。
【００７８】
別の例として、手動コントローラー２８を使用して、この使用者は、自身の意思で排尿要求入力を開始し得る。これに応じて、パルス発生器１４は、電気波形を、アレイ１６における電極１８または電極１８〜２４に印加し、これらの電極は、陰部神経幹（ＰＮＴ）の求心性尿道感覚枝（ＵＳＢ）および／または遠心性尿道運動枝（ＵＭＢ）を刺激するように位置決めされる。結果として、使用者は、要求に応じて排尿し得る。
【００７９】
図６に示されるように、手動コントローラー２８は、小型で軽量のハンドヘルドハウジング３２に収容され得、このハウジングは、望ましくは、充電可能な搭載型電池（示さず）により電力供給されるそれ自身のマイクロプロセッサ３４を備える。このマイクロプロセッサ３４は、埋め込まれたコードを有し、このコードは、使用者インターフェースを作製するための、ディスプレイ３６およびキーパッド３８の操作を支配し得る予めプログラムされた規則またはアルゴリズムを含み得る。このマイクロプロセッサ３４はまた、所望の要求入力が選択され、そしてディスプレイ３６およびキーパッド３８を使用して生成される、プレプログラムされた規則またはアルゴリズムを表す。マイクロプロセッサ３４はまた、データを記録する能力を有し得、これにより医師により評価され得る検出および刺激の記録を保つ。この型のコントローラー２８のさらなる詳細は、以下に記載される。
【００８０】
基本的な機能的成分は、種々の方法で構築され、そして配置され得る。１つの代表的な実施において、電極アレイ１６、リード線２６、およびパルス発生器１４は、全て移植される。この配置において、手動コントローラー２８は、外部ユニットを備える。すなわち、例えば、パルス発生器１４に磁気的に連結されるか、または（例えば、Ｐｅｃｋｈａｍら、米国特許第５，１６７，２２９号（本明細書中に参考として援用される）に記載されるような様式で）パルス発生器１４に高周波リンクにより連結される。あるいは、手動コントローラー２８は、パルス発生器１４に経皮リード線により連結され得る。
【００８１】
（ＩＶ．下部腸機能）
別の実施形態において、システム１０は、刺激波形を生成して、陰部神経幹（ＰＮＴ）の１つ以上の標的化成分に選択的に分配して、下部腸機能を制御するように構成および操作され得る。
【００８２】
一実施形態において、システム１０は、便失禁を制御するように構成および操作され得る。この配置において、システム１０は、仙骨根から離れた陰部神経の標的化成分上、この成分中、またはこの成分の付近に位置するような大きさにされ、そして構成された、少なくとも１つの電極１８を備える。パルス発生器１４は、電気信号を印加して選択的に標的化された成分を刺激するために、電極１８に連結される。この標的化された成分は、臨床医により直腸収縮を阻害すると同定された陰部神経の求心性成分、または臨床医により自発的な肛門括約筋機能に作用すると同定された遠心性成分、またはこれらの両方を含み得る。この電極は、単一の電極１８または図３および４に示される型の複数の電極アレイ１６を備え得る。
【００８３】
排便自制応答（直腸の収縮を停止し、そして自発的な肛門括約筋の活動に作用すること）は、陰部神経の求心性成分（直腸の収縮を阻害するため）、陰部神経の遠心性成分（自発的肛門括約筋機能に作用するため）、またはこれらの両方の選択的刺激により誘発され得る。排便自制応答のために、求心性成分または遠心性成分のいずれかまたは両方の選択的刺激が行われ、所望の生理学的応答を誘発するように神経活動化に作用し得る。
【００８４】
別の実施形態において、システム１０は、排便を制御するように構成および操作され得る。この配置において、システム１０は、仙骨根から離れた陰部神経の標的化成分上に、この成分中に、またはこの成分の付近に位置するような大きさにされ、そして構成された、少なくとも１つの電極１８を備える。パルス発生器１４は、電気信号を印加して、標的化された成分を選択的に刺激するために、電極１８に連結される。この標的化された成分は、臨床医により直腸収縮を引き起こすと同定された陰部神経の求心性成分、もしくは臨床医により自発的肛門括約筋機能に作用すると同定された遠心性成分、またはこれらの両方を含み得る。以前のように、この電極は、単一の電極１８または図３および４に示される型の複数の電極アレイ１６を含み得る。
【００８５】
排便応答（直腸の収縮の増加および外肛門括約筋における活動の減少）は、陰部神経の求心性成分（直腸の収縮を引き起こすか、または自発的肛門括約筋機能に作用するか、またはその両方）、陰部神経の遠心性成分（自発的肛門括約筋機能に作用するため）、またはその両方の選択的刺激により誘発され得る。排便応答のために、求心性成分の選択的刺激が行われて、神経不活化に作用し得、肛門括約筋の弛緩を引き起こし、これにより排便を容易にする。これは、単独で行われるか、または神経活動化に作用する求心性成分の選択的刺激と組合され得、直腸の収縮を引き起こし、排便をさらに促進する。神経活動化に作用して直腸の収縮を引き起こすための求心性成分単独の選択的刺激はまた、排便を促進し得る。
【００８６】
いずれかの配置において、単一または複数の電極が、陰部神経の選択された求心性枝上、この枝中、もしくはこの枝付近；または陰部神経の選択された遠心性枝上、この枝中、もしくはこの枝付近；あるいは両方に配置され得る。あるいは、複数の電極のアレイ１６は、図４に示されるように、陰部神経幹上、この幹中、またはこの幹の付近に位置するような大きさにされ、そして構成され得る。
【００８７】
この配置において、便失禁を制御するために、パルス発生器４０は、電気信号を印加するための電極アレイ１６に連結されて、臨床医により直腸収縮を阻害すると同定された陰部神経幹の求心性成分、もしくは臨床医により自発的肛門括約筋機能に作用すると同定された陰部神経幹の遠心性成分、またはその両方を選択的に刺激する。同様に、排便を制御するために、このパルス発生器４０は、電気信号を印加するための電極アレイ１６に連結されて、臨床医により直腸収縮を引き起こすと同定された陰部神経幹の求心性成分、もしくは臨床医により自発的肛門括約筋機能に作用すると同定された陰部神経幹の遠心性成分、またはその両方を選択的に刺激する。
【００８８】
下部尿路の機能の制御に関して以前に説明したように、下部腸機能を制御する際に、このパルス発生器１４は、個体の意思による動作に応じて、電気信号を印加するように作動し得る。マイクロプロセッサ３０に埋め込まれたコードにより表される予めプログラムされた規則に従って、このパルス発生器１４は、所定の刺激波形を、リード線２６を通して、アレイ１６における電極（単数または複数）１８〜２４に送る。この刺激波形は、所望の応答（例えば、排便自制または排便）に関連する標的化された束を刺激する。
【００８９】
以前も説明したように、このシステム１０は、直腸機能を示す電気的事象を感知するために、陰部神経または陰部神経の枝の中、これらの上、またはこれらの付近に位置する少なくとも１つの記録電極を備え得る。この配置において、パルス発生器１４は、この記録電極に連結され、そして感知された電気的事象に応じて電気信号を印加するように作動する。
【００９０】
より詳細には、パルス発生器１４のマイクロプロセッサコードは、臨床医により予めプログラムされた規則またはアルゴリズムを表し得、この規則またはアルゴリズム下では、陰部神経幹（ＰＮＴ）全体における電気ニューログラム（ＥＮＧ）活動、または神経幹（ＰＮＴ）の個々の遠心性外肛門括約筋枝（ＡＭＢ）および／もしくは遠心性尿道括約筋枝（ＵＭＢ）が、特徴付けされて情報信号を提供する。この情報信号は、例えば、直腸収縮の状態、直腸容積、または直腸収縮の開始に関連し得る。この情報信号は、使用者に読み出し可能な出力で表されて、使用者または臨床医に、下部腸機能の状態についてフィードバックを提供し得る。以下で記載されるように、この情報信号は、コントロールとして使用されて、要求入力の自動的発生をもたらし得る。
【００９１】
例示された実施において、パルス発生器１４は、１つ以上の所定の自制要求入力に応答して、直腸収縮の停止に作用し、そして／または自発的肛門括約筋機能に作用する（それにより自制を達成する）ようにプログラムされる。１つ以上の所定の自制要求入力に応じて、このパルス発生器１４は、電気波形を、アレイ１６における電極（単数または複数）１８〜２４に印加し、この電極は、陰部神経幹（ＰＮＴ）の選択された求心性成分（直腸の収縮を阻害するため）、および／または陰部神経幹（ＰＮＴ）の選択された遠心性成分（自発的肛門括約筋機能に作用するため）を刺激するように位置決めされる。
【００９２】
例示された実施形態において、このパルス発生器１４はまた、１つ以上の所定の排便要求入力に応答して排便に作用するようにプログラムされ得る。１つ以上の所定の排便要求入力に応じて、このパルス発生器１４は、電気波形を、アレイ１６における電極（単数または複数）１８〜２４に印加する。この電極は、陰部神経幹（ＰＮＴ）の選択された求心性成分（直腸収縮を引き起こすため）、および／または陰部神経幹（ＰＮＴ）の選択された遠心性成分（自発的肛門括約筋機能に作用するため）を刺激するように位置決めされる。
【００９３】
所定の制御信号源１２は、使用者の意思による動作なしに自動的に要求入力を発生するように構成され得る。所定の制御信号源１２はまた、手動で要求入力を生成し、これにより使用者の医師による作用を必要とするように構成され得る。このシステム１０は、制御信号源１２の形態のいずれかまたは両方の形態に依存し得る。
【００９４】
これらの構成を使用して、自制を達成するための刺激は、条件付きでないか、または条件付きのいずれかであり得る。条件付でない刺激は、手動信号により停止される場合を除いて、連続的に適用される。条件付き刺激は、手動信号または自動（例えば、神経記録）信号により誘発される別個の間隔で発生する。
【００９５】
例えば、先に記載されたように、自動制御信号源１２の１つの形態は、１つ以上の電極１８〜２４をアレイ１６に備え得、これらの電極は、陰部神経全体における、または個々の遠心性の外肛門括約筋枝（ＡＭＢ）および／もしくは遠心性の尿道の括約筋枝（ＵＭＢ）における、神経電気記録（ＥＮＧ）活性を感知するように位置している。記録された活性は、パルス発生器１４によって処理されて、直腸の収縮の開始を検出する。
【００９６】
この開始がパルス発生器１４によって検出される場合、要求量の入力が、自動的に伝達される。パルス発生器１４が、次に、求心性の成分および／または遠心性の成分を刺激するための所望の波形を自動的に発生させ、これによって、収縮を抑止し、そして／または自発的な肛門括約筋機能をもたらし、これによって、糞便の自制を維持する。
【００９７】
手動制御信号源１２の１つの形態は、外部制御装置２８を備え得、この制御装置を、ユーザが操作する。この外部制御装置は、遠隔操作スイッチデバイスまたは磁気リードスイッチの形態を採り得る。手動制御装置２８は、ＥＮＧ感知電極または他の形態の自動信号源１２の代わりにかまたはこれと組み合わせて使用され得る。
【００９８】
例えば、手動制御装置２８を使用して、ユーザは、任意の自動糞便自制要求量入力とは独立してかまたはその非存在下で、糞便の自制の要求量入力を生じ得る。応答において、パルス発生器１４は、陰部神経幹（ＰＮＴ）の選択された求心性成分および／または選択された遠心性成分を刺激するように配置された、アレイ１６における電極（単数または複数）１８〜２４に電気的波形を印加する。手動制御装置２８を使用して、ユーザはまた、糞便自制の要求量入力を終了し得る。その結果、ユーザは、例えば、日時または食物消費に依存して、糞便自制制御を「オン」または「オフ」にし得る。手動制御装置２８を使用して、ユーザはまた、自動糞便自制要求量入力源をイネーブルまたはディセーブルし得る。
【００９９】
別の例として、手動制御装置２８を使用して、ユーザは、独自の意思で、排便の要求量入力を開始し得る。応答として、パルス発生器１４は、陰部神経幹（ＰＮＴ）の選択された求心性成分および／または選択された遠心性成分を刺激するように配置された、アレイ１６における電極（単数または複数）１８〜２４に電気的波形を印加する。その結果、ユーザは、要求に応じて排泄することが可能となる。
【０１００】
代替の実施形態において、システム１０は、蠕動を制御するために構成および操作され得る。この配置において、システム１０は、仙骨根から離れた陰部神経の、標的化された成分、またはその中または近くに位置するような大きさおよび構成にされる、少なくとも１つの電極１８を備える。パルス発生器１４は、電極１８に結合され、電気信号を印加して、臨床家によって蠕動を制御すると同定された陰部神経の選択的に標的化された求心性成分を、選択的に刺激する。電極１８は、図３および４に示される型の、単一の電極または複数電極のアレイを構成し得る。電極は、陰部神経の求心性枝、またはその中または近くに位置し得る。あるいは、電極は、陰部神経幹、またはその中または近くに位置し得る。この配置において、パルス発生器１４は、陰部神経幹における同定された求心性成分を選択的に刺激するように働く。他の下部腸制御機能と同様に、パルス発生器１４は、個体の随意の活動に応答して、電気信号を印加するように作動し得る。マイクロプロセッサ３０に埋め込まれたコードによって表される、予めプログラムされた規則に従って、パルス発生器１４は、規定された刺激波形を、リード線２６を通してアレイ１６における電極１８〜２４へと方向付け、これは、所望の蠕動制御応答に関連する標的化された束を刺激する。また先に説明されたように、システム１０は、蠕動機能を示す電気的事象を感知するために、陰部神経または陰部神経の幹、またはその中または近くに位置する、少なくとも１つの記録電極を備え得る。この配置において、パルス発生器１４は、記録電極に接続され、そして感知された電気的事象に応答して、電気信号を印加するように作動する。
【０１０１】
蠕動（結腸の収縮）を制御するための応答は、陰部神経の１つ以上の求心性成分の選択的な刺激によって引き起こされ得る。蠕動について、求心性成分または遠心性成分のいずれかまたは両方の選択的刺激は、神経の活性化に影響を与えて所望の生理学的応答を引き起こすために、着手され得る。
【０１０２】
図６に示されるように、下部腸制御のための手動制御装置２８はまた、小型の軽量の携帯型ハウジング３２に収容され得、これは望ましくは、充電可能なボード上のバッテリ（図示せず）から電力供給される、その独自のマイクロプロセッサ３４を備える。下部尿道制御機能のために使用される場合の、制御装置２８のさらなる特徴はまた、下部腸制御機能を達成するために使用され得る。
【０１０３】
下部尿道制御機能の場合と同様に、下部腸制御機能のための基本的な機能的構成要素は、種々の様式で構築および配置され得る。１つの代表的な実施において、電極アレイ１６、リード線２６、およびパルス発生器１４は全て、移植される。この配置において、手動の制御装置２８は、外部ユニットを備え、これは例えば、パルス発生器１４に磁気的に結合されるか、またはパルス発生器１４に高周波結合によって結合される（例えば、Ｐｅｃｋｈａｍらの米国特許第５，１６７，２２９号（これは、本明細書中に参考として援用される）に記載されるような様式で）。あるいは、手動の制御装置２８は、経皮リード線によってパルス発生器１４に結合され得る。
【０１０４】
（Ｖ．性的機能の制御）
別の実施形態において、システム１０は、刺激波形を選択的に発生させ、そして陰部神経幹（ＰＮＴ）１つ以上の成分に分配し、性的機能（例えば、男性においては、勃起、射精、またはオルガズム、そして女性においては、膣性潤滑またはオルガズム）を制御するように、構築および操作され得る。
【０１０５】
１つの実施形態において、システム１０は、男性における勃起、および女性における膣的潤滑を制御するために、構成および操作され得る。この配置において、システム１０は、仙骨幹から離れた陰部神経の、標的化された構成要素、またはその中または近くに位置するような大きさおよび構成にされた、少なくとも１つの電極１８を備える。パルス発生器１４は、電極１８に接続されて、電気信号を印加し、標的化構成要素を選択的に刺激する。標的化構成要素は、陰部神経の求心性成分を含み得、これは、単独でかまたは神経系の他の求心性成分（例えば、腹側の性器）および／もしくは神経系の他の遠心性成分と組み合わせて、血管を拡張させ、そして男性における勃起を引き起こし、または女性における膣性潤滑を導くと、臨床家によって同定される。
【０１０６】
別の実施形態において、システム１０は、男性における射精を制御するために、構成および操作され得る。この配置において、システム１０は、仙骨幹から離れた陰部神経の、標的化された構成要素、またはその中または近くに位置するような大きさおよび構成にされた、少なくとも１つの電極１８を備える。パルス発生器１４は、電極１８に接続されて、電気信号を印加し、標的化構成要素を選択的に刺激する。標的化構成要素は、陰部神経の求心性成分または神経系の求心性成分、あるいはその両方を含み得、これは、単独でかまたは神経系の他の求心性成分（例えば、腹側の性器）および／もしくは神経系の他の遠心性成分と組み合わせて、骨盤筋を収縮させ、そして射精を引き起こすと、臨床家によって同定される。
【０１０７】
別の実施形態において、システム１０は、男性または女性におけるオルガズムを制御するために、構成および操作され得る。この配置において、システム１０は、仙骨幹から離れた陰部神経の、標的化された構成要素、またはその中または近くに位置するような大きさおよび構成にされた、少なくとも１つの電極１８を備える。パルス発生器１４は、電極１８に接続されて、電気信号を印加し、標的化構成要素を選択的に刺激する。標的化構成要素は、陰部神経の１つ以上の求心性成分を含み得、これは、単独でかまたは神経系の他の求心性成分（例えば、腹側の性器）および／もしくは神経系の他の遠心性成分と組み合わせて、個体におけるオルガズムを引き起こすと、臨床家によって同定される。
【０１０８】
これらの実施形態のいずれにおいても、電極１８は、単独の電極または図３および４に示される型の複数電極アレイを構成し得る。単一または複数の電極は、陰部神経の選択された求心性枝またはその中または近く；あるいは陰部神経の選択された遠心性枝またはその中または近く、またはその両方に位置し得る。あるいは、複数電極のアレイ１６は、図４が示すように、陰部神経幹またはその中または近くに位置するような大きさおよび構成にされ得る。
【０１０９】
この配置において、パルス発生器４０は、電極アレイ１６に接続されて、電気信号を印加し、陰部神経幹の選択された求心性成分および／または遠心性成分を選択的に刺激する。
【０１１０】
下部尿道機能の制御に関連して先に説明したように、性的機能の制御において、パルス発生器１４は、個体の随意の活動に応答して、電気信号を印加するように作動し得る。マイクロプロセッサ３０に埋め込まれたコードによって表される、予めプログラムされた規則に従って、パルス発生器１４は、規定された刺激波形を、リード線２６を通してアレイ１６における電極１８〜２４へと方向付け、これは、所望の性的応答に関連する標的化された束を刺激する。
【０１１１】
図６に示されるように、性的制御のための手動制御装置２８はまた、小型の軽量の携帯型ハウジング３２に収容され得、これは望ましくは、充電可能なボード上のバッテリ（図示せず）から電力供給される、その独自のマイクロプロセッサ３４を備える。下部尿道制御機能のために使用される場合の、制御装置２８のさらなる特徴はまた、性的制御機能を達成するために使用され得る。
【０１１２】
下部尿道制御機能の場合と同様に、性的制御機能のための基本的な機能的構成要素は、種々の様式で構築および配置され得る。１つの代表的な実施において、電極アレイ１６、リード線２６、およびパルス発生器１４は全て、移植される。この配置において、手動の制御装置２８は、外部ユニットを備え、これは例えば、パルス発生器１４に磁気的に結合されるか、またはパルス発生器１４に高周波結合によって結合される（例えば、Ｐｅｃｋｈａｍらの米国特許第５，１６７，２２９号（これは、本明細書中に参考として援用される）に記載されるような様式で）。あるいは、手動の制御装置２８は、経皮リード線によってパルス発生器１４に結合され得る。
【０１１３】
（ＶＩ．パルス発生器のプログラミング）
前述の制御機能のいずれかを達成する際に、パルス発生器１４は、臨床家によるプログラミングのために、遠隔コンピュータにリンクされ得る。このプログラミングは、臨床家が、ユーザの特定の必要、臨床家の処置の目的、および電極アレイ１６に関連する陰部神経幹の特定の解剖学に従って、パルス発生器１４のマクロプロセッサ３０に常駐しているコードをカスタマイズまたは「調整」することを可能にする。
【０１１４】
プログラミングの主な目的は、意図された記録および／または標的化刺激の機能を実施するための電極１８、２０、２２および２４の選択に影響を与える、位置および操作のパラメータを調節および保存することである。プログラミングの間、制御装置２８によってログされたデータはまた、評価のためにダウンロードされ得る。プログラミングは、各電極１８、２０、２２および２４が自制制御または尿意の制御のための神経の記録および／または神経の刺激の所望の目的の程度に影響を与える操作パラメータと共に、電極１８、２０、２２および２４のどれが、陰部神経幹（ＰＮＴ）における神経枝の種々の束に関して最良に位置しているかを評価する。
【０１１５】
プログラミングは、移植された電極１８、２０、２２および２４の、特定の陰部神経幹（ＰＮＴ）の選択された求心性成分および／または遠心性成分に対して相対位置をマッピングする。各選択された成分に関して、プログラミングは、選択された電極を、位置および操作のパラメータの観点で洗練し、所望の標的化された刺激の結果、および望ましい場合、所望の標的化された神経記録を得る。先に説明されたように、神経記録／刺激全体がまた、使用され得る。
【０１１６】
プログラミングはまた、過敏性膀胱収縮の開始に対応する、陰部神経または遠心性の外肛門括約筋枝（ＡＭＢ）および／もしくは遠心性の尿道の括約筋枝（ＵＭＢ）における神経電気記録（ＥＮＧ）活性の性質および特徴を決定する。
【０１１７】
（ＶＩＩ．処置プロトコルおよび選択）
プログラミングの別の主な目的は、個々のユーザに対する治療または処置のプロトコルをインストールすることである。処置プロトコルは、種々の生理学的機能の要求量入力および応答する刺激の波形、ならびにこれらの操作パラメータおよび分布を確立する。処置プロトコルはまた、種々の自制および排尿の要求量入力の、自動または手動の性質を確立する。
【０１１８】
図６に示される型のプログラム可能な手動制御装置２８が使用される場合、プログラミングはまた、手動制御装置２８とパルス発生器１４との間の相互作用を確立し得る。制御装置２８およびパルス発生器１４をプログラムすることによって、ユーザに、制御装備２８およびパルス発生器１４の作動をより厳密に制御する能力が与えられ得る。制御装置２８およびパルス発生器１４をプログラムすることによって、ユーザに、自分の毎日の生活に影響を与える操作パラメータを選択および改変する能力が与えられ得る。
【０１１９】
例えば、制御装置２８は、ディスプレイ３６に、選択肢のメニュー４０を列挙するようにプログラムされ得る（図７を参照のこと）。キーパッド３８の操作によって、ユーザは、排尿（Ｕｒｉｎａｔｅ）を選択し得る。この選択によって、パルス発生器１４への適切な排尿要求量入力が生じ、そして膀胱の瀉出が生じる。
【０１２０】
キーパッド３８の操作によって、ユーザは、自制自動モードのオン（Ｃｏｎｔｉｎｅｎｃｅ Ａｕｔｏ Ｍｏｄｅ（Ｏｎ））を選択し得る。この選択によって、パルス発生器１４への適切な入力が生じ、神経の感知に基づく自制要求量入力の自動発生が可能になり、そして自動的な連続した自制の維持を生じる。
【０１２１】
キーパッド３８の操作により、ユーザは、自制自動モードのオフ（Ｏｆｆ）を選択し得る。この選択によって、パルス発生器１４への適切な入力が生じ、神経の感知に基づく自制要求量入力の自動的な発生が不可能になる。定常状態自制制御（Ｓｔｅａｄｙ Ｓｔａｔｅ Ｃｏｎｔｉｎｅｎｃｅ Ｃｏｎｔｒｏｌ）を選択することによって、パルス発生器１４は、適切な連続的な自制要求量入力を受ける。応答において、パルス発生器１４は、連続的な刺激を適用する。この結果、手動で制御される連続的な自制が維持される。
【０１２２】
連続自動モードのオフが選択される場合、ユーザはまた、周期的自制制御（Ｃｙｃｌｉｃａｌ Ｃｏｎｔｉｎｅｎｃｅ Ｃｏｎｔｒｏｌ）を選択し得る。応答において、パルス発生器１４は、適切な周期的自制要求量入力を受ける。パルス発生器１４は、周期的な刺激波形を適用し、これは例えば、刺激周期の始めには刺激をほとんどまたは全く適用せず、次いで所定の最大程度の刺激が達成されるまで経時的に、刺激の大きさが増加する。この結果は、始め（すなわち、膀胱の瀉出の直後）の最小の自制の維持であり、排尿が指示される時点またはその近くで最大の程度の自制の維持が達成されるまで、時間の経過と共に（膀胱が満たされるにつれて）増加する程度の自制の維持を伴う。この時点で、ユーザは、排尿を選択し得、そして周期的刺激の波形を再開し得る。
【０１２３】
連続自動モードのオフが選択される場合、ユーザはまた、自制制御（Ｃｏｎｔｉｎｅｎｃｅ Ｃｏｎｔｒｏｌ）のオフを選択し得る。応答において、パルス発生器１４は、自制要求量入力を受けない。引き続いて、定常状態自制制御または周期的自制制御または自動自制モード（Ａｕｔｏ Ｃｏｎｔｉｎｅｎｃｅ Ｍｏｄｅ）のオンを選択することにより、ユーザは、自制に影響を与えるための刺激を再開し得る。
【０１２４】
以下の表に実証されるように、システム１０は、陰部神経幹（ＰＮＴ）またはその枝、ならびに身体内の他の混合神経もしくは複合神経が関与する様々な選択的刺激の目的を達成するように、構成およびプログラムされ得る。神経成分の間の選択性は、複合神経幹における成分間の選択、または神経幹の枝間の選択、または所定の神経構造を有する求心性（感覚）または遠心性（運動）の神経線維間の選択、あるいは神経線維の大きさに関する選択、または活性化の方向に関する選択、または神経の活性化（活動電位またはインパルスの発生、および神経に沿ったその伝達を生じる）の機能に関する選択、または神経の不活性化もしくはブロック（活性化の防止、または活動電位もしくはインパルスの伝播の防止を生じる）を含み得る。
【０１２５】
具体的に列挙されていない他の神経枝もまた、所望の治療目的を達成するために、記録および／または刺激され得る。
【０１２６】
（表：異なる生理学的応答を達成するために陰部神経幹またはその枝に関与するこのシステムの代表的な構成および操作）
【０１２７】
【表１】

（注記）
ＲＡは、陰部感覚神経成分の刺激による反射の活性化を示し、これによって、中枢神経系における神経回路の活性化により、制御が達成される。
【０１２８】
ＲＩは、陰部感覚神経成分の刺激による反射の阻害を示し、これによって、中枢神経系における神経回路の阻害により、制御が達成される。
【０１２９】
ＤＡは、陰部運動神経成分の刺激による直接的活性化を示し、これによって、筋肉の活性化（例えば、括約筋の収縮）により、制御が達成される。
【０１３０】
ＤＩは、陰部運動神経成分の刺激による直接的不活性化またはブロックを示し、これによって、筋肉の不活性化（例えば、括約筋の弛緩）により、制御が達成される。
【０１３１】
本発明の種々の特徴は、特許請求の範囲に示される。
【図面の簡単な説明】
【０１３２】
【図１】図１は、下部尿路およびこの下部尿路の器官および筋肉の神経を支配する陰部神経の概略図である。
【図２】図２は、陰部神経の概略断面図であり、これは、異なる遠心性および求心性の神経枝を含む主要神経幹を占める末梢分離神経束を示す。
【図３】図３は、陰部神経幹の周りに配置された本発明の特徴を具体化した複数電極カフと関連する、図２に示されるような陰部神経の拡大断面図である。
【図４】図４は、図３に示される陰部神経および複数電極カフの斜視側面図である。
【図５】図５は、システムの概略図であり、これは、図３および４に示される複数電極カフに接続され、そして陰部神経内の個々の神経束に選択的刺激を提供して、異なる生理学的応答（例えば、自制および排尿）を達成する。
【図６】図６は、図５に示されるシステムと関連して使用され得る手動コントローラーの図であり、この手動コントローラーは、ユーザーインターフェースを可能にするマイクロプロセッサを備える。
【図７】図７は、ユーザーインターフェースの一部の図であり、図６に示される手動コントローラーは、図５に示されるシステムを使用して異なる生理学的応答の選択を可能にするために提示され得る。

Claims (51)

1. 生理学的機能を制御するためのシステムであって：
   少なくとも１つの電極であって、仙骨根から離れた陰部神経の標的化された成分上、該成分中、または該成分付近に配置されるための大きさおよび構成を有し、電極、および
   パルス発生器であって、該標的化された成分を選択的に刺激するための電気信号を適用するために該電極に接続されるよう適合されたパルス発生器、
   を備える、システム。
2. 前記標的化された成分が、求心性成分を含む、請求項１に記載のシステム。
3. 前記標的化された成分が、遠心性成分を含む、請求項１に記載のシステム。
4. 前記標的化された成分が、求心性成分および遠心性成分を含む、請求項１に記載のシステム。
5. 前記電極が、陰部神経枝上、該枝中、または該枝付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項１に記載のシステム。
6. 前記電極が、単一の電極を備える、請求項５に記載のシステム。
7. 前記電極が、複数の電極アレイを備える、請求項５に記載のシステム。
8. 前記電極が、陰部神経幹上、該幹中、または該幹付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項１に記載のシステム。
9. 前記電極が、複数の電極アレイを備える、請求項８に記載のシステム。
10. 前記標的化された成分が、前記陰部神経幹の求心性成分を含む、請求項８に記載のシステム。
11. 前記標的化された成分が、前記陰部神経幹の遠心性成分を含む、請求項８に記載のシステム。
12. 前記標的化された成分が、前記陰部神経幹の求心性成分および遠心性成分を含む、請求項８に記載のシステム。
13. 前記パルス発生器が、個体の意思による動作に応じて、電気信号を適用するよう作動する、請求項１に記載のシステム。
14. 前記パルス発生器が、電極信号の予めプログラムされたパターンを適用するよう作動する、請求項１に記載のシステム。
15. 少なくとも１つの記録電極であって、電気的現象を感知するために神経中、神経上、または神経付近に配置される、記録電極、をさらに備え、ここで、前記パルス発生器は、該記録電極に接続され、そして該感知された電気的現象に応じて、前記電気信号を適用するよう作動する、請求項１に記載のシステム。
16. 前記生理学的機能が、尿の失禁の制御、排尿の制御、糞便の失禁の制御、排便の制御、ぜん動の制御、勃起の制御、膣潤滑の制御、射精の制御、およびオルガズムの制御のうちの１つを含む、請求項１に記載のシステム。
17. 膀胱の機能をモニタリングするためのシステムであって：
    少なくとも１つの記録電極であって、膀胱機能に関連する電気的活動を感知するために、陰部神経の標的化された成分上、該成分中、または該成分付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、記録電極、および
    プロセッサであって、該記録電極により感知される該電気的活動に基づく情報信号を生成するための、プロセッサ、
    を備える、システム。
18. 前記プロセッサが、前記情報信号のための出力装置を備える、請求項１７に記載のシステム。
19. 前記標的化された成分が、求心性成分を含む、請求項１７に記載のシステム。
20. 前記標的化された成分が、遠心性成分を含む、請求項１７に記載のシステム。
21. 前記標的化された成分が、求心性成分および遠心性成分を含む、請求項１７に記載のシステム。
22. 前記記録電極が、前記陰部神経の標的化された枝上、該枝中、または該枝付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項１７に記載のシステム。
23. 前記記録電極が、前記陰部神経幹上、該幹中、または該幹付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項１７に記載のシステム。
24. 処理ユニットにより生成される前記情報信号が、膀胱の収縮に関連する、請求項１７に記載のシステム。
25. 処理ユニットにより生成される前記情報信号が、膀胱の容積に関連する、請求項１７に記載のシステム。
26. 処理ユニットにより生成される前記情報信号が、膀胱の収縮の開始に関連する、請求項１７に記載のシステム。
27. 前記プロセッサにより生成された前記情報信号に少なくとも一部基づく、膀胱機能に影響を及ぼす制御信号を生成するよう作動する制御デバイスをさらに備える、請求項１７に記載のシステム。
28. 前記制御デバイスが：
    少なくとも１つの刺激電極であって、前記陰部神経の標的化された成分上、該成分中、または該成分付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、刺激電極、および
    パルス発生器であって、膀胱機能を制御するために、該標的化された成分を選択的に刺激する電気信号を適用するための該刺激電極に接続されるように適合されている、パルス発生器、
    を備える、請求項２７に記載のシステム。
29. 前記刺激される標的化された成分が、求心性成分を含む、請求項２８に記載のシステム。
30. 前記刺激される標的化された成分が、遠心性成分を含む、請求項２８に記載のシステム。
31. 前記刺激される標的化された成分が、求心性成分および遠心性成分を含む、請求項２８に記載のシステム。
32. 前記刺激電極が、前記陰部神経の標的化された枝上、該枝中、または該枝付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項２８に記載のシステム。
33. 前記刺激電極が、陰部神経幹上、該幹中、または該幹付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項２８に記載のシステム。
34. 前記制御デバイスが、膀胱の収縮を阻害する、請求項２７に記載のシステム。
35. 前記制御デバイスが、膀胱の収縮を引き起こす、請求項２７に記載のシステム。
36. 下部腸の機能をモニタリングするためのシステムであって：
    少なくとも１つの記録電極であって、下部腸の機能に関連する電気的活動を感知するために、陰部神経の標的化された成分上、該成分中、または該成分付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、記録電極、および
    プロセッサであって、該記録電極により感知される該電気的活動に基づく情報信号を生成するための、プロセッサ、
    を備える、システム。
37. 前記プロセッサが、前記情報信号のための出力装置を備える、請求項３６に記載のシステム。
38. 前記標的化された成分が、求心性成分を含む、請求項３６に記載のシステム。
39. 前記標的化された成分が、遠心性成分を含む、請求項３６に記載のシステム。
40. 前記標的化された成分が、求心性成分および遠心性成分を含む、請求項３６に記載のシステム。
41. 前記記録電極が、陰部神経の標的化された枝上、該枝中、または該枝付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項３６に記載のシステム。
42. 前記記録電極が、前記陰部神経幹上、該幹中、または該幹付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項３６に記載のシステム。
43. 前記処理ユニットにより生成される前記情報信号が、直腸の収縮に関連する、請求項３６に記載のシステム。
44. 前記処理ユニットにより生成される前記情報信号が、直腸の容積に関連する、請求項３６に記載のシステム。
45. 前記処理ユニットにより生成される前記情報信号が、直腸の収縮の開始に関連する、請求項３６に記載のシステム。
46. 前記処理ユニットにより生成された前記情報信号に少なくとも一部基づく、下部腸の機能に影響を及ぼす制御信号を生成するよう作動する制御デバイスをさらに備える、請求項３６に記載のシステム。
47. 前記制御デバイスが：
    少なくとも１つの刺激電極であって、前記陰部神経の標的化された成分上、該成分中、または該成分付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、刺激電極、および
    パルス発生器であって、下部腸の機能を制御するために、該標的化された成分を選択的に刺激する電気信号を適用するための該刺激電極に接続されるように適合されている、パルス発生器、
    を備える、請求項４６に記載のシステム。
48. 前記刺激電極が、前記陰部神経の標的化された枝上、該枝中、または該枝付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項４７に記載のシステム。
49. 前記刺激電極が、陰部神経幹上、該幹中、または該幹付近に配置されるための大きさおよび構成を有する、請求項４７に記載のシステム。
50. 前記制御デバイスが、下部腸の機能を阻害する、請求項４６に記載のシステム。
51. 前記制御デバイスが、下部腸の機能を引き起こす、請求項４６に記載のシステム。

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