JP2004522444A - 多温度一本鎖コンフォメーション多型性 - Google Patents

多温度一本鎖コンフォメーション多型性 Download PDF

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Abstract

一重鎖核酸のネイティブな条件における分離移動度に影響を与える方法を開示する。一重鎖核酸のネイティブな分離過程中において温度変化を使用し、特定の核酸配列を検出する新規な方法の基盤とした。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明の方法は核酸配列と配列変異性の迅速な検出と特性付けの方法に関するものである。本発明は一本鎖核酸の分離移動性を温度依存的に変化させる方法に関するものである。分離移動性の変化は核酸における既知及び未知の一塩基変化の検出に用いられる。
【背景技術】
【0002】
個体の生涯を通じて、生物学的な進化や自然発生的な突然変異が蓄積した結果、発現した多型性によって、どのような種にも標本間の遺伝的な変異性が観察される。
遺伝的な変異性と環境及び有機体個体(又は母集団)の表現型(Phenotype)との相関が確立されれば、生命の基本的なメカニズムの理解に有用な情報がもたらされるであろう。
【0003】
最も数多く観察される多型性の一つは、最も頻繁に発見される核酸鎖(wild type,野生型)に比して一つの塩基対だけが異なっている核酸配列で、これは単一核酸多型性(Single Nucleotide Polymorphism、SNP)と呼ばれる。もし構造蛋白やその調節領域をコードしている遺伝子にSNPが起きると、コードされている蛋白質の機能や細胞、生物全体のフェノタイプに影響を及ぼすのである。
たいていの場合、高等生物において観察できるフェノタイプはいくつかの遺伝子産物の相互作用の結果である。蛋白質レベルにおいて存在する補償/調節機構が最終的なフェノタイプに影響し得るのであるから、いずれかのフェノタイプに関連する多型性パターンと変異性頻度は、対照群に比べると疾患群では、ほんの僅かな違いの可能性がある。このような相関を確立するためには遺伝子−母集団関連研究が通常必要となる。
【0004】
このような研究の恩恵により、例えば病院の日常診療行為にDNA解析に基づく診断とか遺伝子投薬とかが導入されれば、人の生活を有意に改善出来る可能性があるので、DNA変異と多型性解析を遺伝子―母集団レベルの規模で行える信頼性のある方法論を確立することが強く要望されている。DNA配列解析はますます日常的な技術となって来ているにもかかわらず、その他の遺伝子配列変異検出用の既存技術のうち、、妥当な時間と費用でヒトの遺伝子―母集団レベルの規模での遺伝子研究に応用できるものは無い。
【0005】
現状では変異/SNPの検出は少なくとも3つの段階に区別できる。最初の段階では、ゲノムのどの領域/遺伝子を解析しなければないかを決定する必要がある。第2段階では、選ばれた上記遺伝子/領域内での変異/SNPの存在のスクリーニングが実施されなければならないし、最終段階では、選ばれた資料の塩基配列決定が必要となろう。
変異/SNPの検出工程は分析試料の中に標的となるNAがどの程度含まれているかに依存する。出発物質から核酸を精製するには幾つかの標準的な方法を使用できるが、核酸精製キットもたくさん商品化されており、これらから選択できる。
【0006】
単離された標的核酸の量が特定の検出に十分であれば、いわゆる“直接変異検出”法が適用できる。核酸における特定配列の“直接検出”方法はほとんどNA/NAハイブリダイゼーション(例えばBranched DNA method bDNA-Urdea等,Gene 61:253-264(1987))か蛋白/NA 相互作用(Restriction Fragment Length Polymorphism-RFLP)に基づいている。
しかし、分析試料中の標的核酸量が直接分析には低すぎる場合には、選ばれた核酸断片の増幅段階が必要となる。標的核酸断片の増幅に使われる最も有名な方法はポリメラーゼチェインリアクション(PCR)法であって、Mullis等の米国特許第4,683,195および4,683,202号に記載されている。この工程は、分離された核酸の相補鎖を等モル以上のオリゴヌクレオチド プライマーで処理し、熱安定性DNAポリメラーゼ法でプライマーを伸長させて、相補的なプライマーの伸長産物を得、これを鋳型に必要な核酸配列を合成して、増幅された配列を検出するものである。この反応の段階は、段階的にも同時にも実施することができ、望むだけ繰り返すことができる。
【0007】
核酸増幅に使える他の方法としては、下記の方法がある:
・Barany、Proc. Natl. Acad. Sci., 88: 189 (1991)に記載のリガーゼチェインリアクション(Ligase Chain Reaction)(LCR又はLAR)―このLCR法による標的NAの増幅は、標的NAに対する4つのオリゴヌクレオチドの特異的なハイブリダイゼーションとそのサイクリックライゲーションペア(cyclic ligation pairs)に基いている。標的とは無関係なバックグラウンド信号(background signal)になってしまう非特異的なハイブリダイゼーションの可能性や、この方法が既知の遺伝的変異の検出に応用できるという事実により、LCR法の使い道を限定されている。
・Guatelli等, Proc. Natl. Acad. Sci, 87:1874-1878(1990)に記載のSelf-Sustained Synthetic Reaction(3SR/NASBA)は転写に基いた核酸増幅法で、均一温度で200-300塩基対長さのRNA配列を指数的に増幅できる。
【0008】
標的核酸が増幅できたなら、次の変異と多型性の検出と特性付けにはいくつかの方法が使用可能である。これらの方法の全ては下記の2つのグループに分けられよう:
・生物学的または特異的なもの―RFLP, ハイブリダイゼーション、ASO PCR、パイロシーケンシング(pyrosequencing)等のような方法、
・物理的または走査的なもの―SSCP、DGGE、DHPLC、開裂に基く方法等のような方法。
【0009】
SNP/変異の検出に使われる技術の分かりやすい総説がElectrophoresis No.6/99,vol.20 又は米国特許第5719028号に記載されている。
生物学的な(特異的な)方法は特定の核酸配列の認識に基いている−したがってこれは既知のSNP/変異の検出には根本的に適している。対照的に、第2グループの方法は探索する配列に関する予備知識は必要としないので、SNP/点変異の検出及び/又は同定に用いられる。したがって、例えば非常に変異しやすい遺伝子領域のスクリーニングに用いることが出来る。
遺伝子の多様性を検出するための生物学的方法の例は、米国特許第5,582,989号に記載された競合的PCRであろう。この方法では2つの異なったプライマー対のセットが標的核酸配列の増幅に用いられる。この方法によれば、プライマーセットの一つは野生型の配列を認識し、他方のセットが選ばれた点変異を認識する。特異的なSNPsの存在を標的核酸中に検出するもう一つの例はShuberの米国特許第5,633,134号(1997)に記載されたアレ特異的増幅(AlleleSpecific Amplification(ASO))に基く方法である。しかしながら、PCR反応が間違った結果を惹き起こすことがあり、これは、プライマーとは完全には相補的でない核酸配列が増幅されることに起因する。したがって、反応条件(温度、イオン強度)によっては、競合するプライマーのどちらかのセットが、野生型と変異配列の何れかの伸長を開始するのである。
【0010】
SNP/変異の検出と解析用に開発されたもう一つの技術グループはNA(バイオチップ)のハイブリダイゼーションの特質に基くもので、例えばSapolsky 等の 米国特許第5858659号(1999)、Nerenberger, M等の国際公開第WO0061805号(2000);Arnold,L等の 国際公開第WO0050869号(2000)に見られる。また既述したRFLP法も増幅した核酸断片の遺伝子変異検出に用いることが出来よう。しかしながら上述の方法はどれを用いても、検査前に疑われる遺伝子変異の性質を知っておかなければならない。このため、性質や位置が未知の変異/多型性の検出が必要な場合にはこれらは適用できないのである。
第2のグループの(物理−化学的)方法だけが、対象として選ばれた遺伝子における既知または未知の何れの変異あるいは多型性を検出できる。
【0011】
これらの方法の一つ−変性グラジエントゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis(DGGE))は、解析しようとするNA/NAハイブリッドの変性条件下における電気泳動移動性の変化に着目した方法である。この方法では、遺伝子変異は、NAの同種二重鎖(homoduplexes)対異種二重鎖(heteroduplexes)の一つのヌクレオチドの違いによって溶融特性が異なり、これらの電気泳動での運動性に反映してくるのを利用して判別される。DGGEで識別できる変異の数を増やすために、PCR反応で増幅された核酸断片は一端でG-C塩基対の長い伸長(30−80)によって“クランプ(clamp)”され、対象の配列の完全な変性は許容されるが、2重鎖の完全な乖離を避けるようにする(Abrams等,Genomics 7:463-475[1990], Sheffield等.,Proc. Natl. Acad. Sci.,86:232-236[1989];Lerman および Silverstein, Meth. Enzymol., 155:482-501[1987])。SNP/変異の検出率向上のため、増幅したNA標的の分離中に温度勾配が導入された(Wartell等、Nucl. Acids Res.,18:2699-2701[1990])。
【0012】
この方法の難点は変性条件(温度及び尿素濃度)は解析しようとする配列に依存するという事実であり、それぞれの標的配列につき個別に変性条件を最適化を図る必要があることである。この方法の最終的な再現性は、正確な勾配ゲルの調製と精密なゲル温度管理に依存している。試験するそれぞれの配列のためGCクランプ末端(GC clamping tail)を合成する費用や、検体毎に非常に長い分析時間を要することなども、主たる検討課題である。
SNPs/変異の検出と同定に最も広く用いられている物理-化学的方法の一つは、一本鎖コンフォメーション多型(Single Strand Conformation Polymorphism(SSCP))である。SSCP解析では、NA断片の一塩基差は、ネイティブな条件下でこれらを分離する際におけるこれらの分離移動度の差違に基づいて認識される。(Oritaら、Genomics 5:874-879,(1989))。ネイティブな条件下では一重鎖のNA断片はその塩基配列と実際の物理的条件に応じた2次構造をとっている。一重鎖核酸分子の電気泳動移動度はその全電荷と3次元コンフォメーションに依存しているので、DNA断片の一つのヌクレオチドの変更は、その3次元コンフォメーションを異ならせ、分離移動度に影響を及ぼす可能性がある。一つのヌクレオチドの変更のいくつかは、しかしながら特別な物理化学的条件の下でのみ、3次元コンフォメーションの差異をもたらすのであり、最も重要な条件はイオン強度、pH及び温度である。温度及びイオン強度を関数とした一重鎖核酸分子の2次元コンフォメーションの数とエネルギー安定性は、例えばhttp://bioinfo.math.rpi.edu/〜mfold/dnalにてオンラインで入手できる最近接・近隣熱力学アルゴリズムに基づいて計算できる。
【0013】
しかしFig.1のBと記されている最適条件でしか、野生型と変異型核酸との分離パターンが認められなかった。Fig.1のAと記されている条件下では、野生型と変異型核酸との立体的なコンフォメーションの差異は、測定が可能な程には分離移動度に影響せず、分析した二つの一重鎖核酸の分離パターンには差が認められなかった。
Fig.1には2つの仮想的な核酸分子が示してあり、一つは三つの異なる最低エネルギー水準−安定コンフォーマーを有する野生型の配列であり、もう一つは1塩基だけ異なる変異型で同一の物理的条件下では安定コンフォーマーを2つしか持たない(Fig1,A部)。このような二つの一重鎖核酸分子をネイティブな条件下で分離すると、分離条件が立体的なコンフォメーションの差が生させるのに最適な場合、二つの異なった分離パターンを生じさせるかもしれない。分離溶媒の構成成分が一定しているなら、分離プロファイルに最も大きく影響するのは分離溶媒の温度であろう。
Fig.1Cは、SSCP法で1ヌクレオチド差の検出にゲル温度が及ぼす影響の例を示している。ヒトp53遺伝子のエクソン8由来の5つの一本鎖核酸からなる同一セットの試料を同じ2つのゲル上にロードして、温度以外は同じ条件で電気泳動したものである。Fig.1EとFではゲル温度はそれぞれ13℃と23℃にセットされた。お互いに一塩基対の差しかない一重鎖核酸の電気泳動分離に対するゲル温度の影響が明瞭に示された。
【0014】
これらの発見は、http://bioinfo.math.rpi.edu/〜mfold/dna/で入手できるソフトウエアで利用されている最近接近隣熱力学アルゴリズム[Santa Lucia, Jr., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.95、 1998年2月,1460-1465]に基いて 生成した2次元構造が、温度を約6℃異ならせるだけで有意に異なった安定なコンフォーマーを示したという事実によっても支持される。これはどんなss DNA分子もG+C含量に依存するSSCP解析[Kiyama,M.,Fujita,T.,Biotechniques 21:710-716,1996]のための個々に最適な温度を持っているというアイデアを支持するものである。にもかかわらず、A+T塩基の組成変化もSSCP法で容易に検出できる。[Collins, A., Lonjjou,C.および Morton,N., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96, 15173-15177]
【0015】
遺伝子p53のエクソン8における変異検出にゲル温度が前述のように影響することはSSCPの偽陰性結果は部分的には方法そのものによってではなく、不十分なゲル温度管理によって惹起されたことを示唆するものである。また、本発明者等は、異なる研究機関からのSSCP結果を比較するに際して、ゲルから外部への熱移動のモデルの単純化したバージョン(実施例1,式1)を少なくとも適用してそれぞれの実験における実際のゲル温度を評価すべきであることを提案する。このようなゲル温度の調整はSSCP解析を平板(slab) またはCE 電気泳動装置を空気、固体熱交換モジュール又は反応時間の長い冷却装置を用いて実施する時に特に考慮するべきである。
【0016】
実施が簡便で比較的に感度が高い(90%以上)にも拘わらず、SSCP法には幾つかの難点が報告されている。最も重要なものは一貫した結果を得るのが困難なことと、特定のNA断片に対する最適分離条件(イオン強度、pH、温度)を予測するのに役立つ理論が欠けていることで、これらが検出率100%を低下させている。SSCPの結果が多くの著者により異なることは分離条件が一貫していないことと、分析されたNA断片内での変異位置が同じでないことに起因する(GlavacおよびDean, 1993, HayashiおよびYandell, 1993, LiuおよびSommer,1944)。電気泳動分離に対する温度の影響を低下させるために、低電圧(力)を適用したが、分離に時間が非常に長く−12-14時間−掛かる結果になった。
SSCP法の感度は少なくとも2つの異なった分離条件を同じ標的核酸の分析に用いることにより、100%近くに増加させることが可能である。一重鎖核酸の分離移動度に最も影響する分離条件は多孔性支持体、分離バッファーの化学組成及び温度であることはLiu らの国際公開第WO0020853号に記載されているとおりである。しかしながら、このような試みの時間と費用は、同じ試料の分析に適用する追加分離法の数に比例して増加し、日常の診断方法として用いるのは困難である。
【0017】
遺伝子変異は、Monforteの国際公開第WO98/12355号(1998),Turano等の国際公開第WO98/14616号(1998)およびRossらのAnal Chem.15,4197-202(1997)による標的NAの特別な質量分析法で分析して決定することもできる。実際には、この方法はあまりに高価で特別な装置を必要とするので問題である。
【0018】
要約すれば、核酸の遺伝子変異を100%近く検出できる信頼性の高い、費用と時間効率の良い分析ツールが強く要望されているということである。有用な診断または技術的なツールであるためには、理想的には全自動方式で動作するとともに、幾つかの試料を同時に解析できるべきである。そのような方法は、ヒトの致命的疾病に関する疾病体質について、現行で可能なよりも更に広範囲な診断的スクリーニングを可能にし、ヘルスケアのパラダイムを診断と治療から健康予防に変える力を持つであろう。
【発明の開示】
【0019】
本発明は、一重鎖核酸のネイティブな分離移動度を分離条件の物理的パラメータを変更することにより、変える方法に関するものである。ある実施形態では、分離移動度を変える手段は、一重鎖核酸の自然な(native)分離過程で少なくとも一回温度を変更することからなる。一重鎖核酸の分離移動度を変えることは、核酸における既知および未知の一塩基変異の検出に用いることができ、他の用途の中でも、研究および診断の目的に有用である。
本発明は、一重鎖核酸のネイティブな分離過程で温度を変えることにより、解析される一重鎖核酸分子の分離移動度の変化に基づいて、分析される分子の差別化が増幅されるという知見に基礎をおくものである。
【0020】
一重鎖核酸のネイティブな分離過程における分離移動度を変更するに際して、本発明は、分離移動度の変更手段に何ら限定を課するものではない。一つの実施形態では、物理的分離パラメータが用いられる。他の実施形態では、分離溶媒の化学組成が用いられる。どちらの場合も、手段を変更すると、Fig. 1に図示したように、標的一重鎖核酸の2次元的および3次元的なコンフォメーションの変化を生じさせることができる。
【0021】
本発明は、一重鎖核酸の分離過程における分離移動度を様々な物理的および化学的手段で変更させる手段を提供する。好ましい物理的手段は温度である。温度は格別に有用と考えられるものである。何故なら分離過程中に迅速に又頻繁に変えることができるし、一重鎖核酸の2次及び3次構造に与える温度の影響は大きいからである。
本発明は、一重鎖核酸の分離移動度を配列依存的に変更する手段に関するものである。分離移動度の変化は、既知及び未知の変異の探索に、核酸の一塩基変化も含めて用いることができる。
一つの実施形態では、本発明は、一重鎖核酸の分離過程でのコンフォメーション変化を検出する方法を提供するもので、a)一重鎖核酸を用意し;b)該一重鎖NAに一つ以上の2次及び/又は3次構造を形成させて、該分子の分離パターンを生成できるような条件下で分離することから構成される。2次及び3次構造の変化を検出することにより、本発明の方法は間接的に配列を検出していることになる。一つの実施形態では、本発明の方法は、更に段階c)、つまり分離された前記標的一重鎖核酸の前記パターンを第2の一重鎖NAのパターンと比較することを包含する。このような場合には、第2の標的一重鎖核酸の配列は関連はあるが異なってもよい(変異型配列に対する野生型対照など)。一つの実施形態では、標的一重鎖核酸は蛍光標識を含み、段階b)の検出は該蛍光標識断片の検出から構成される。
【0022】
本発明は、核酸の分離に用いられる分離溶媒の性質や、溶媒中で核酸を運動させるのに用いられる物理力の性質の何れによってもによって限定されるものではない。
本発明は、様々な分離条件(例えばイオン強度、pH、温度、粘度等)を提供するものであり、また一重鎖核酸コンフォーマーのネイティブな分離に用いられる装置の形式や構造を提供するものである。
本発明は、核酸の性質によって限定されるものではない。上記に述べた実施形態においても、核酸標的は一重鎖DNA、2重鎖DNAまたはRNAでもよい。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、一重鎖核酸の分離移動度を、ネイティブな条件下における該核酸の分離過程において物理的パラメータを変更することによって変化させる方法に関するものである。特に、本発明は、該一重鎖核酸のネイティブな分離過程において温度を変化させることに関する。
一重鎖核酸のネイティブな分離過程において温度を変化させると分離パターンの差別化がもたらされるという知見が、この特定の核酸配列を検出する新規な方法の根幹をなしている。
本発明によれば、“パターンの差別化”は、分離過程における上記温度変化を単独で、または他の物理的パラメータの変化と組み合わせて適用することにより得られる。
本発明は、異なる配列を持つと推定される一重鎖核酸を差別化する方法を提供する。
本発明は、どのような核酸分離装置を用いても、またはヌクレオチド配列変異の決定又は検出に関する他のどのような環境においても実施できる。
一重鎖核酸の分離移動度の変化は、核酸における既知および未知の一塩基変異の検出に用いられ、他の用途の中でも、研究と診断の目的に有用である。
【0024】
本発明の理解を容易にするために、ここで用いる用語を下記に定義する:
NA:核酸。
ssNA:一重鎖核酸。
“遺伝子”:ポリペプチドやその前駆体の合成に必要な制御およびコード配列。を含むDNA断片。
“野生型”:天然に最も普通に存在する遺伝子配列で、構造遺伝子の場合は通常機能性蛋白質をコードする。
“変異型”:野生型と比較して変化した配列を示す遺伝子。変異型遺伝子がコードする蛋白質は野生型遺伝子のタンパクとは異なる性質を持つ。
【0025】
“配列変異”:本明細書の場合、2つの核酸断片の間の核酸配列の差異である。配列変異の例としては、限定されるものではないが、一塩基置換、および/又は欠失、あるいは1以上のヌクレオチドの挿入などがある。“ネイティブな条件”:ssNAが該分子中の原子の分子間相互作用に起因して生じる立体コンフォメーションをとるような条件を指す。通常は最も臨界的な物理的パラメータで定義されるが、これに限定はされず、例えば温度0-50℃、イオン強度0-1 M KCl、6<pH<9 等がある。
【0026】
“3-D,2-D”: 3次元、2次元空間コンフォメーションの略称。
“コンフォーマー”:ssNA分子の特定の3-D又は2-D空間コンフォメーションを指す。ssNA分子はどれもNA配列と物理的条件に依存して様々な3-Dコンフォメーションをとることが知られている。ssNA分子の安定性と2-Dコンフォーメーションは例えば最近接・近隣熱力学アルゴリズム[SantaLucia,Jr.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.95, 1998年2月,1460-1465]モデルに基づいて算出が可能である。このモデルからどのようなssNA分子についても幾つかの2-Dコンフォメーションをとり得ることが示されている。配列の決まったssNA分子の2-Dコンフォメーションに最も大きな影響を与えるのは温度、イオン強度およびpHでである。またこの最近接・近隣アルゴリズムモデルによれば、2-Dコンフォメーションの変更に用いるに最適の温度範囲はネイティブな条件下では0-50℃である。
【0027】
“移動度パターン”:本明細書では、あるssNAコンフォーマーを分離した結果として生じる空間または時間的分布を指す。コンフォーマーは核酸標的から野生型や他の対照を参照することなしに生成する。本発明は、対照を参照することなく”移動度パターン”に基づいてどのような核酸も同定でき、しかも、核酸の変異型を野生型または既知の変異型対照との比較によって同定できる方法を提供する。
“プライマー”:プライマー伸長が開始される条件下に置かれた時、NA合成の開始点として働く能力を有するオリゴペプチドを指す。
“標識”:検出可能な(できれば定量化可能な)シグナルの供給に使用可能な原子又は分子であって、核酸に付着できるものを指す。標識は何らかの物理的手段、例えば電磁波、蛍光、放射線活性、X線回折または吸収、磁性などで検出できるシグナルをもたらすものであってよい。
“最適分離条件”:一つの試料に存在するバンドを最も遠く離れたものとすることができ、かつ、シグナル強度をバンド間で最も均等なものとすることができる一連の条件を指す。検討済みの条件の例としては、限定されるものではないが、温度、イオン強度、pHなどが挙げられる。
【0028】
条件及び1次配列に依存して、核酸は2次構造をとる。少なくとも一塩基の差異がある核酸は異なった2-D及び/又は3-D構造をとり、その結果分離移動度も異なってくる。これらの異なる核酸の分離を時間または空間でFig1 のように記録すると、2つの異なった分離パターンが得られる。理想的には一塩基の変化が一重鎖核酸の分離移動度のパターンに影響を及ぼす。
本願発明の分離方法に従えば、完全に変性された標的核酸を再度天然型に戻した後に形成される3次元構造を有する分子が用いられる。核酸の変性は、核酸の2次構造を崩壊させるような物理的、化学的または酵素的な手段、例えば低い(<3)又は高い(>10)pH、高温、低塩類濃度または尿素、ホルムアミドなどの化学品又は蛋白(例えばヘリカーゼ)あるいはこれらの組み合わせで、核酸を処理して達成される。使用上最も効果的で簡便なのは、ホルムアミド又は尿素などの存在下に高温(約100℃)を組み合わせることと考えられる。温度を下げ、塩類を加え、pHを中和し、化学品や蛋白を除去して核酸のフォールディングや天然型への再生が達成される。
【0029】
変性手段が除去されると、その配列と物理的条件に依存した独特の3-D構造を持つ分子が回収される。これらのコンフォーマーは核酸の特徴的なマークを構成し、多孔性媒体上で最適条件下でコンフォーマーを分離し検出できる。
核酸配列と溶媒の物理的パラメーター双方の変化により、核酸の立体コンフォメーションが変わるので、分析に供した分子の配列の違いまたは分析条件の変更を反映して、異なる分離パターンが得られる。環境パラメーターが非常に強く分離パターンに影響するという事実(これは以前SSCP解析の信頼性が低いと当業界で報告された原因であった)から、2つの非常に配列が似た核酸を分析する時に2つの異なった分離パターンを獲得できる確率を高めることが要求される。本願発明の方法によれば、核酸コンフォーマーのネイティブな分離過程の条件は少なくとも1回変更される。これにより、分析に供された一重鎖核酸が分析過程中にもう一つの2-D又は3-D構造を保持する確率が高められ、2つの異なる分離パターンを獲得する確率が高められる。
【0030】
本発明によれば、分離過程中に溶媒の温度を変えることにより、分析に供された核酸が異なる空間コンフォメーションを保持する確率が高められる。分離中の温度変更は、核酸分子中の1塩基変異を簡便かつ迅速に検出するのに使用できる。本発明の方法は “多温度一重鎖コンフォメーション多型性(Multitemperature Single Strand Conformation Polymorphism)”と命名され、略称は”MSSCP”である。
一重鎖核酸のネイティブな分離過程における分析条件を改変するのに用いられる物理的パラメーターの性質は、分離移動度を変更するのに必要であるとしても、本発明を何等限定するものではない。本発明は、温度、イオン強度、pHなどあるいは例えばグリセロールのような化学添加物を存在させることなどをも包含している。温度は、このシステムの熱力学的エネルギーの尺度でもあり、好ましいパラメーターである。
【0031】
MSSCP法で解析できる標的核酸としてはRNAおよびDNAの両方が挙げられる。このような核酸標的はすべて、標準的な分子生物学手法を使って得ることができる。例えば標的NAは、組織標本や培養物、細胞、細菌やウイルスからの単離してもよく、DNA鋳型を用いてin vitro転写してもよく、または化学合成してもよい。更に、基質は生命体から、ゲノム物質として又はプラスミドや染色体外DNAとして単離してもよく、または、これらの物質を制限エンドヌクレアーゼや他の開裂試薬で処理して生成した断片であってもよく、また、化学合成してもよい。
標的となる核酸はPCRを用いた増幅によっても製造できる。標的が一重鎖分子の時は一本鎖を優先的に増幅させるPCR (非対称PCR)法を用いて標的を作ることができる。一重鎖の標的は他の既知の方法によっても、例えば2重鎖分子の一鎖をエクソヌクレアーゼで消化する方法によっても得ることができる。
【0032】
標的核酸は分離の後その検出を補助するために、標識を含んでいてもよい。標識は核酸の5’又は3’末端の何れかに配置された放射性同位元素とすることができる。また、蛍光標識も直接検出用に使用でき、また、第2の試薬によって特異的な認識が可能な反応性基も使用できる。例えばビオチン化された核酸はストレプトアビジン分子をプローブとし、これにインジケーター(酵素や蛍光源など)を結合させることにより検出できる。
好ましい実施形態においては、標識されていない核酸は、銀イオンとか市販の一重鎖核酸染料で染色して可視化される。また、分析用に十分な量のDNAが利用できる場合には、核酸断片の直接蛍光化も幾つかの試料を並行的に解析できる方法として使える。このようなアプローチは同一ゲル上に分離された野生型と変異型の遺伝子などを自動的に比較する場合に特に有用である。
異なる3-Dコンフォメーションを持つ標的核酸の空間コンフォーマーは、電気泳動、クロマトグラフィー、蛍光偏光などの幾つかの方法により分析し解像できる。本発明では電気泳動分離を用いて例示している。しかしながら、標的コンフォーマーの分離は電気泳動だけに限定されるものではない。電場における一重鎖核酸コンフォーマーの分離を本発明の方法を説明するために用いたのは、電気泳動が生物学的分子を分離するのに最もポピュラーな方法の一つであるからに過ぎない。
【0033】
MSSCP反応は核酸分子間の一塩基配列の差異を検索するのに迅速でコスト安の有用な方法である。MSSCP反応を所望の標的核酸(例えば野生型核酸とその1つまたはそれ以上の変異型核酸)に対して最適化するには、野生型核酸とその一塩基対変異核酸を用いて、標的分子が2つの最も明瞭に異なる分離パターンを形成するような最良のMSSCP条件(温度ステップおよび塩濃度)を決定するのがよい。
同様に、核酸構造に影響する他の因子、たとえば、ホルムアミドや尿素または極端なpHなども用いることができる。最初の試験では典型的には1回につき4段階の温度45℃、30℃、15℃および5℃にて、3次元コンフォーマーの分離を2度おこなう。また塩類濃度も例えば5mM又は35mMというように選択してもよい。本発明は利用する塩類によって限定されるものではない。塩類は塩化カリウムや塩化ナトリウムなどから選択することができる。
【0034】
今日では、MSSCP法によって解析される核酸の一塩基の差異は、識別化された再現性のある断片パターンを生成するようになった。電気泳動時間の短さ(3分/サンプル)と100%に近い感度と特異性と再現性とが、分離溶媒の正確な温度管理のおかげでもたらされ、この分析方法は、ゲノム−母集団の広範囲なレベルでの調査における遺伝子多様性の迅速検査法として非常に適したものなった。
特に、癌診断、組織型解析、遺伝的同一性、細菌のタイプ分け、遺伝子交配における変異のスクリーニングなどの目的には、MSSCP法を使用する明確な利点の一つとして、分離されたコンフォーマーのパターンが特定の物理的条件の組み合わせにおいて特徴的なフィンガープリントを形成するので、配列解析すること無しに、潜在的な変異を以前に特長づけられた変異と比較できることが挙げられる。また、野生型とは異なった移動度を示すバンドがあれば、クローニングするまでもなく、引き続き配列決定反応のためのマトリックスとして使用できる。このことは、再増幅反応には一つの一重鎖NAしか使われないことから、配列決定反応の質を有意に高めるものである。このようにして、この方法は、非常に速く新しいSNPまたは単一点変異の発見を導くことができる。
【実施例】
【0035】
下記の例は、本発明の或る好ましい実施態様と局面を例示するために供するものであって、本発明の範囲を制限するものと解釈してはならない。
以下の部分では次の省略が適用される:アンプリコン(PCR反応で増幅されたDNA断片);vol(容積);w/v(重量/容積);v/v(容積/容積);DNA(デオキシリボ核酸);ml(ミリリットル);M(モル);mM(ミリモル);EDTA(エチレンジアミン四酢酸);SDS(ドデシルスルホン酸ナトリウム);Tris(トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン);TBE(トリス−ホウ酸塩−EDTA、すなわち、ホウ酸で滴定されてEDTAを含有するトリス緩衝液);PBS(リン酸緩衝生理食塩水);PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動);PerkinElmer(コネチカット、ノーワーク(Norwalk, Conn.)のパーキンエルマー);Promega Corp.(ウィスコンシン、マディソン(Madison, Wis.)のプロメガ コーポレーション);Kucharczyk Inc.(ポーランド、ワルシャワ(Warsaw, Poland)のクチャルツィーク インコーポレイテッド)
【0036】
実施例1
1)DNAポインターシステム(Pointer System)の構築
電気泳動中のゲル温度管理のため、専用のDNAポインターシステムを構築した。このシステムは3つのモジュールから構成される。
1−二つの冷却室を持つ平板ゲル電気泳動室、2−熱交換モジュール−熱電式のペルティア(Peltier)セルと、効率的な循環システムとを基本とするもの、3−コントロール ユニット−ゲルを通過する電流によって生じる熱の量を考慮しながら、電気泳動中のゲル温度特性を管理及びプログラムすることが可能な専用のソフトウェアを持つパーソナルコンピュータ。
基本的なDNAポインターシステムのパラメーターは次のようである:ゲル温度範囲:2-65℃、ゲル温度精度:0,1℃、ゲルサイズ(幅x高さ):標準モデル−150x150mm。
ゲル温度を制御するソフトウェア アルゴリズムは、熱移動を表す次式に基く:
【0037】
ΔT=Qo/(2A)*(1/4Δx1/λ1+Δx2/λ2+1/λ3) (1)
【0038】
式中、
ΔT−冷却溶媒とゲルとの間の温度差、
Qo−ゲル内で発生する熱、
A−熱伝導性表面(ゲル ガラス 冷却表面)、
Δx1−ゲルの厚さ、
λ1−ゲルの熱伝導性、
Δx2−ガラスプレートの厚さ、
λ2−ガラスプレートの熱伝導性、
λ3−ガラスプレートと冷剤との間の対流熱伝導係数。
【0039】
実施例2
ヒトPAH遺伝子エクソン7における1ヌクレオチド差の検出に対して、一重鎖核酸コンフォーマーのネイティブ分離過程で、ゲル温度の変化が及ぼす影響。
1)エクソン7 フェニルアラニンヒドロキシラーゼ ヒト遺伝子の増幅
標準的な手法により、ヒトPAH遺伝子のエクソン7由来の断片を増幅してDNAを調製した。エクソン7はPCR反応により次のプライマーを用いて増幅された。
【0040】
AP287-(TGCCTCTGACTCAGTGGTGAT)と
AP423-(CCCAAACCTCATTCTTGCAGCA)
【0041】
PCR反応は鋳型として100ngのゲノムDNAと、50mM Tris-HCl、50mM KCl、2mM MgCl2、2μMの各プライマー、0.2mMのdNTP,さらに2U/100μlのTaq ポリメラーゼ(Kucharczyk Inc.,Warsaw)を含むものであった。PCRは25μlで実施され、サイクル条件は次のとおり:
94℃ 5分に続き、94℃30秒、58℃30秒、72℃45秒を31サイクル行い、最終に72℃5分間行った。
【0042】
2)ヒトPAH遺伝子エクソン7由来のアンプリコンのMSSCP及びSSCP解析
上記1)のPCR産物1μlを7M尿素5μl、ゲル負荷バッファー(0.25%(w/v)ブロモフェノールブルー、0.25%(w/v)キシレンシアノールFF、30%(v/v)グリセロール水溶液)に加えた。HOを4μlを加えて全容量を12μlとした。混合物を94℃で2分間加熱し、それから氷で冷却した。冷却した混合物を直ちに9%(w/v)ネイティブポリアクリルアミドゲル(9%アクリルアミド:ビスアクリルアミド−29:1、5%(v/v)グリセロール含有)にロードした。電気泳動はDNAポインター変異検出システム(Pointer Mutation Detection System(Kucharczyk Inc.,Warsaw))で1xTBEの中で40Wの定電力で行った。最初の3つ別々のSSCP電気泳動は次のような一定ゲル温度:34℃、22℃及び10℃で行い、それぞれ1000Vh継続した。電気泳動の後、全てのゲル中に分離されたssNAのバンドはKucharczyk Inc.,Warsawの銀染色キットを用いて銀染色で可視化し、乾燥してスキャンした。結果はFig. 3A ,B及びCに示されており、ゲル温度はそれぞれ34℃、22℃及び10℃であった。
Fig. 3では、レーン番号1-6と8はヒトPAH遺伝子エクソン7由来の異なる点変異を備えた8個のssNAを含んでおり、レーン7は野生型のそれである。
【0043】
SSCP解析に対する最適ゲル温度の選定は現状では主として経験的データに基づいている。標的核酸のネイティブな分離過程中にゲル温度を変えることによって電気泳動パターンの差別化が増大することは、Fig. 3に示されている。これは、ヒトPAH遺伝子エクソン7の8つの異なる対立遺伝子を解析した場合の例である。Fig. 3のA, B, Cは、分離温度を低下させるに連れて、それぞれの変異から生じたssDNAコンフォーマーの分離パターンが変化するとともに、5番と5,6番レーンのみがゲル温度34℃、22℃および10℃の各一定温度におけるSSCP電気泳動中に異なったパターンを生じさせたことを示している。また、分析試料の全てがお互いにまたは野生型と識別できる訳でもない。
しかしながら、一回のMSSCP電気泳動過程では、ゲル温度は34℃から22℃へ、次いで10℃に変更され、各温度での電気泳動は333Vhで行われたところ、それぞれの変異型と野生型に関し、明瞭なパターンがFig. 3Dに示すように得られた。
総ての分析試料は明確に異なった電気泳動パターンを持っており、お互いにまた野生型からも容易に識別できる。MSSCP電気泳動の総時間は約65分(1000Vh)である。電気泳動の後、ゲルは銀染色キット (Kucharczyk Inc.,Warsaw)を用いて30分間銀染色し、その後ドライアウト(Dryout)ゲル乾燥ユニット(Kucharczyk Inc.,Warsaw)の中で乾燥し、ゲルスキャンソフトウエア(Gelscan software(Kucharczyk Inc.,Warsaw))を用いてスキャンし解析した。
【0044】
これらのデータは、選ばれた温度が一重鎖DNA断片における総ての配列変異を検出するのに十分であるということだけでなく、電気泳動中にゲル温度を変えることが分析試料間の電気泳動的差異を増加させるという事実も示唆している。
MSSCP技術の助けによって、本発明者等はヒト遺伝子における他のSNPsと点変異、例えばAPOE、APOB、LHRなどを解析した。そしてどのケースにおいても、古典的なSSCP法に比べて高い変異検出率と明瞭な対立遺伝子差別化を達成することができた(原稿準備中)。この蓄積された証拠に基づいて、本発明者等はMSSCP法の感度は公表されたSSCP法の変異検出率よりも有意に高いと結論付けた。更に、分析に要する合計時間と実験中の化学薬品のコストは試料一件当たりそれぞれ約4分間、0.2USDであり、古典的なSSCP法に対しては大きな改善である。加えて、DNA 断片の増幅に用いるPCR反応は容量が低くて済み、無標識プライマーを利用できるので、PCR反応のコスト、ひいてはSNP/変異スクリーニング研究全体のコストが低下する。MSSCP解析を、所望の一重鎖DNA分子を高速で能率良くPAゲルから電気溶出する方法と組み合わせて、爾後の配列決定反応に供することで(原稿準備中)、高速でコスト効率のよいSNPおよび点変異の発見のための技術基盤が形成される。
【0045】
本出願において使用した総ての刊行物記載技術及び特許出願は、あたかも個々の刊行物または特許出願が参照目的だけのために編入されたかのように、本明細書中に引用により編入される。 本発明は上述したとおりであり、実施例については本発明の例示として含まれているものであるが、当業者にとっては、添付の特許請求の範囲の思想又は範囲を逸脱せずに本発明に或る種の変更や方法論的改変を施し得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】Fig. 1は本発明による検出方法の一実施形態の図解であって、SSCP法によるヒトp53遺伝子エクソン8における変異の検出に及ぼすゲル温度の影響を示している。
【図2】Fig. 2は本発明の検出方法の一実施形態の図解であって、2つの異なる一重鎖NAコンフォーマーのネイティブな分離過程において、温度変化がこれらの電気泳動移動度に与える影響を示している。
【図3】Fig. 3はネイティブな電気泳動過程において、ヒトPAH遺伝子エクソン7由来のssDNA断片の電気泳動移動度に及ぼすゲル温度変化の影響を図示したものである。

Claims (13)

  1. 標的核酸の配列の差異を検出する方法であって、
    a)対照と比較して配列の変異を含んでいる疑いのある核酸標的を用意すること、
    b)標的核酸を一重鎖空間コンフォーマーに変換すること、および、
    c)該核酸の一重鎖空間コンフォーマーのネイティブな分離過程中の物理的条件を少なくとも一回変更し、該コンフォーマーに配列の変異を検出できるようなコンフォメーションの変化をもたらすこと、
    を備えてなる方法。
  2. 更に、d)標的核酸由来の分離された前記一重鎖コンフォマーを参照用の対照と比較すること、を備えてなる請求項1に記載の方法。
  3. 前記分離過程中に変更された物理的パラメーターが前記核酸の一重鎖空間コンフォーマーのエネルギー総量に影響を与えるものである請求項2に記載の方法。
  4. 前記分離過程中に変更された前記物理的パラメーターが温度である請求項2に記載の方法。
  5. 前記物理的パラメーターが、温度、pH、イオン強度などのようなパラメーターの任意の組み合わせである請求項2に記載の方法。
  6. 前記核酸標的が一重鎖DNAから成る請求項1に記載の方法。
  7. 前記核酸標的が二重鎖DNAから成る請求項1に記載の方法。
  8. 前記核酸標的がRNAから成る請求項1に記載の方法。
  9. 前記核酸標的が蛍光標識を含む請求項1に記載の方法。
  10. 前記核酸標的が電磁標識を含む請求項1に記載の方法。
  11. 前記検出段階c)が蛍光標識断片の検出を含む請求項9に記載の方法。
  12. 前記検出段階c)が電磁標識断片の検出を含む請求項10に記載の方法。
  13. 前記検出段階c)が標識核酸の銀染色法による検出を含む請求項1に記載の方法。
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