JP2004519202A - 大腸直腸癌および他の胃腸病態の非観血的検出 - Google Patents
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Abstract
通常周囲温度で、生存した、生物学的に実質的に純粋な剥脱糞便大腸細胞を単離する方法を記載する。ある胃腸容態を示す糞便中免疫細胞および炎症細胞、および、大腸直腸癌を検出する非観血的方法を示す。大腸細胞を単離するための輸送および懸濁培地の組成を詳述する。
Description
【0001】
これは、1999年4月15日に提出された、係属中の米国特許出願第09/292,358号の一部継続出願である。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、大腸直腸癌および他の胃腸疾患の早期の非観血的検出を可能とする、単離大腸細胞に関する。より特定すると、本発明は、小糞便サンプルから得られた、単離され、生物学的に実質的に純粋で生存した糞便中免疫細胞およびリンパ腫起源の非上皮細胞に関する。本発明は、さらに、通常周囲温度で糞便サンプルから生大腸細胞を単離するための輸送培地および分散または懸濁培地の提供、および、本発明の単離大腸細胞を使用して大腸直腸および他の胃腸病態を検出する方法に関する。また、単離した大腸細胞により、他の異常容態、症状、疾患、または病理容態の研究および決定が可能となる。
【0003】
(従来技術)
ヒトの一般的な胃腸悪性疾患は、大腸直腸癌である。大腸直腸癌は、米国の男性および女性の全ての癌関連死の約14%を占めると推定され、その発症率は高くなり続けている(Boringら、CA Cancer J.Clin.1994;44:7〜26)。早期検出は、他の悪性疾患の処置でも同じであるように、この癌の成功裡の処置にも重要な因子である。
【0004】
大腸および大腸直腸腫瘍の検出のスクリーニングアプローチは、現在、(a)糞便潜血検査(FOBT)、(b)S字結腸鏡検査、(c)バリウム注腸二重造影法、および(d)結腸鏡検査の使用に基づく。これらのスクリーニング検査の中で、大腸直腸腫瘍からの可能性の比較的高い出血に基づく、FOBTのみが、非観血的で、簡単で、比較的安価である。しかし、FOBTの頻繁な偽陽性および偽陰性結果により、その特異性および感度はかなり限定される。他の手順は高価で観血的である。従って、簡単で、非観血的で、信頼でき、安価な、結腸直腸癌、胃腸(GI)管疾患および他の病理容態の検出法を提供することが明らかに必要である。
【0005】
大腸細胞は、被検者の胃腸管の直前の過去の代謝病歴の状況を提供する、重要な情報マーカー分子源を示す。さらに、かかる細胞は、内視鏡検査を含む観血的手順を使用した大腸生検による限定的なサンプリングとは対照的に、非観血的な方法での、大腸の全長に沿った大腸粘膜の状態を反映する統計学的に大きなサンプリングフレーム由来の細胞個体群を示す。
【0006】
大腸細胞は、ある変化または形質転換を受け、前癌および癌状態を含む大腸病態を示す、ある生物学的または化学的マーカーを有する。それ故、大腸細胞は、胃腸管の新生物プロセスの開始および他の病態生理学的変化の価値ある早期の指示物質として役立ち得る。遺伝子および表面タンパク質の僅かな変化は、かかる新生物マーカーの例である。特に、Ki67、細胞表面糖タンパク質CD44および腫瘍関連抗原19〜9およびレクチン結合は、胃腸管の新生物性転化の特異的バイオマーカーである。また、単離大腸細胞中のDNAの量と腫瘍の存在の間に強い関連がある。なぜなら、急速に分裂している細胞は、より多くのDNAを含むからである。また、大腸腺腫ポリープおよび癌の発達は、発癌遺伝子(ki−ras)の活性化、腫瘍抑制遺伝子(p53およびAPC)の失活、およびDNAミスマッチ修復遺伝子の変化を含む、多段階プロセスであることはよく認識されている。
【0007】
これまで、剥脱大腸細胞は、それらが糞便中に流されると、分解すると、一般に、本発明が属する分野で理解され、理由は、これらの細胞は、大気に曝露されるとすぐに分解し始めるからである。糞便中に含まれる酵素、粘液および細菌は、大腸細胞を分解するプロセスに寄与する。新しく集めた糞便サンプルを−20℃以下の温度まで冷凍することが、例えば、米国特許第5,094,956号、第5,380,647号および第5,455,160号に、細胞成分は考えず、化学的構成成分を保存するためのみに記載されている。従って、これらの手順は、細胞完全性を保持せず、他の不純物質を含まない無傷の生細胞を単離するのには適用できない。
【0008】
DuttaおよびNair(Gastroenterology、114:1333〜1335、1998)は、生大腸細胞の単離を達成するために、Albaughら(Int.J.Cancer、52:347〜350、1992)およびIyengarら(FASEB J.5:2856〜2859、1991)を参照する。Albaughらは、輸送培地、および、Iyengarらの昔の研究に基づいて糞便サンプルから大腸細胞を得る手順を記載した。しかし、従来技術の輸送培地は、脂肪酸を含まないBSAに加えて抗生物質の添加された食塩水溶液からなるAlbaughらの培地と同じように、本発明の輸送培地とは異なる。別の言葉で言えば、従来技術の輸送培地は、少なくとも1つの基準の点で欠け、すなわち、本発明に記載の輸送培地の処方に絶対必要な粘液溶解剤を有さない点で欠けていた。
【0009】
さらに、Albaughらのシステムでは、回収後の糞便サンプルは、氷中での冷却を保たなければならず、さらに処理するために実験室に輸送されるが、僅か約1時間しか氷中に保存できなかった。これに対し、本発明のシステムは、氷中での冷却を必要とせず、通常周囲温度で所望の結果を達成し、これは、本発明の重要な特徴である。さらに、Albaughらは、その細胞は80%を超える生存率を有していたが、食細胞および他の細胞の存在を除外できなかったと記述する。実際、Iyengarらの図3および4により、得られた細胞調製物はかなり不純であることが明らかに示される。従って、IyengarらおよびAlbaughらの手順は、生大腸細胞を提供し得るが、それらは、実質的に純粋な大腸細胞を得る目的には適していない。要約すると、これまで、小さな糞便塊から通常周囲大気条件で単離された、特定の細胞型の生存し生物学的に実質的に純粋なサンプルを得ることは不可能であった。
【0010】
(発明の要約)
それ故、本発明の目的は、通常周囲温度で単離された、生存し生物学的に実質的に純粋な剥脱糞便大腸細胞を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、生存し、単離された、糞便中免疫細胞を提供することである。
【0012】
本発明の追加の目的は、リンパ腫または非リンパ腫系統の、生存し、単離された、免疫細胞を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、通常周囲温度で生存剥脱糞便大腸細胞を単離するための、輸送培地、および、分散または懸濁培地を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、本発明の教示に従って通常周囲温度で単離された剥脱糞便大腸細胞を使用して、大腸直腸癌を含む胃腸疾患を検出する非観血的方法を提供することである。
【0015】
本発明の様々な他の目的および利点は、本発明の詳細な説明から、および、図面の簡単な説明から明らかとなろう。
【0016】
前記のおよび他の目的、態様および利点は、図面を参照すると、よりよく理解されよう。
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明の様々な目的および利点は、通常大気条件および周囲温度で糞便サンプルから単離された所望の細胞型の生存均一大腸細胞を得ることにより達成される。
【0018】
特記しない限り、本明細書に使用した全ての専門的および科学的用語は、本発明が属する分野の普通程度の技術的理解力を有する者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものに類似または等価な任意の方法および物質を、本発明の実施または試験に使用できるが、本明細書に記載した方法および物質が好ましい。特記しない限り、本明細書で使用または考えられる技術は、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には公知の標準的な方法である。物質、方法および実施例は、単に例示的なものであり、限定的なものではない。
【0019】
本明細書に使用した「実質的に純粋」なる語は、産物は、フローサイトメトリーまたは本明細書に記載の手順により決定したところ、96%以上の純度、通常98%〜99%の純度をもって、均一または単一の型に統一され、物質の妨害または他の型の細胞の混入がない。
【0020】
これまで、糞便物中の剥脱大腸細胞の遭遇する問題は、これらの細胞が、糞便物中のタンパク質分解酵素、微生物叢、粘液等の存在に因り、通常大気条件に曝露されるとすぐに、分解されることであった。従って、糞便物からの通常周囲温度での無傷生大腸細胞の単離を妨げる全てのこのような因子または要素の作用を阻害するシステムを発明しなければならなかった。これは、本発明により、2つの異なる培地を処方することにより達成される:(1)輸送培地、および(2)分散または懸濁培地。輸送培地は、酵素失活量の酵素捕捉剤またはプロテアーゼ封鎖剤、細菌活性を阻害するに十分な量の殺細菌剤または静細菌剤、および、糞便物に含まれる粘液を破壊する粘液溶解量の物質を含む、生理食塩水からなる。
【0021】
様々な酵素捕捉剤、静細菌剤および粘液溶解剤が、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には思い付き、本発明の目的を妨害しない任意の適切な物質を、本発明の教義に従って輸送培地の処方に使用し得る。
【0022】
酵素捕捉剤の中で好ましいものには、タンパク質分解活性阻害剤および動物タンパク質がある。適切なタンパク質分解活性阻害剤の例は、PMSF、ペプスタチンA、ベスタチンおよびキモスタチンを含む。酵素活性を阻害または失活する試薬は、ホルムアルデヒド、金属キレート剤、重金属イオン、あるアミノ酸、例えばチロシンおよびフェニルアラニン、および高濃度の亜鉛または無機ホスフェートを含む。動物タンパク質の中で適切なものには、ウサギ(RSA)、ヤギ(GSA)、ヒツジ(SHA)、ウマ(ESA)、ウシ(BSA)およびヒト(HSA)起源の血清アルブミンを含む、非免疫性の水溶性化合物であるものがある。後のアッセイ手順を妨害しない、あるポリアミノ酸も、酵素失活剤として使用し得る。かかるポリアミノ酸の適切な例は、ポリ−L−リジン、ポリ−L−プロリン、ポリ−L−チロシン等である。
【0023】
静細菌剤の適切な例は、アジ化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、抗生物質(例えばペニシリン、ストレプトマイシン、アムホテリシンB、ゲンタマイシン、ポリミキシンB等)、グリシルリジン酸、グリシルレチン酸(α&β)、その適切な誘導体等である。好ましい殺細菌剤は、チメロサール(シグマケミカル社)であり、好ましい静細菌剤はグリシルリジン酸である。
【0024】
粘液溶解剤の適切な例は、グアイフェネシン、グアイアコール、ヨウ化カリウム、β−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、カプサイシン、グリシルリジン等である。好ましい粘液溶解剤はグアイフェネシン(シグマケミカル社)である。
【0025】
Puck食塩水Gは、好ましい生理食塩水溶液源である。
【0026】
好ましい輸送培地は以下のように調製する。
【0027】
Puck食塩水G 500ml
重炭酸ナトリウム 350〜500mg
BSA 2.5〜15g
グアイフェネシン 2.5〜5g
グリシルリジン酸 2〜4g
分散または懸濁培地は、分散または懸濁培地の調製時には削除される、例えばグリシルリチン酸などの殺細菌剤/静細菌剤に関して、輸送培地とは異なる。
【0028】
通常周囲温度で実質的に純粋な大腸細胞を単離する手順
ここで図1を参照すると、小さな糞便サンプル10(約0.5〜1.0g)を、輸送培地およびいくつかのガラスビーズ12を含むチューブ11に入れ、その後、チューブに栓で封をする。次いで、糞便サンプル10を、培地12に、例えばボルテックスにより十分に分散し、その後、チューブ11の内容物を、メッシュふるい(約300μmの孔サイズ)を通してろ過し、新しいチューブ13(50mlのポリプロプレンまたは類似の円錐遠心チューブ)に入れ、約1.033から約1.25の範囲の密度を有する重い培地14を下に敷き、ブレーキをオフにして卓上遠心機で約200×gで約10分間遠心分離する。
【0029】
大腸細胞は、重いクッション中に、および、チューブの底にペレットとして蓄積し、重い培地14と、上のより軽い懸濁液18の間の界面で、より軽い細胞(少量成分)のバンド17を除去した後に、プラスチック移動ピペット15を用いて吸引することにより回収する。細胞を重い培地から回収し、ペレットを、新しい50mlの遠心チューブ19に入れ、約40mlの懸濁培地20で希釈する。次いで、かくして得られた細胞の懸濁液を、約900×gで約10分間遠心分離し、その後、透明な上清を廃棄し、遠心チューブの底に残っている細胞ペレット21を、約1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁する。より軽い細胞のバンド(少量成分)17を、第二の新しい50mlの遠心チューブ22に入れ、重いクッションおよびペレットからの細胞について記載したように洗浄する。実質的に生物学的に純粋な単離剥脱生大腸細胞を含む、細胞ペレット21を回収し、適切な塩溶液(例えばPBS)に分散し、45μmのふるいフィルターを通してろ過する。
【0030】
単離大腸細胞の生存率を決定するために、一部のペレット21を、PBS/BSA培地26(1ml/gの糞便サンプル)に分散する。次いで、懸濁液の1/10希釈液を、トリパンブルーの存在下で血球測定計で計測する。当業者には公知のように、トリパンブルーを取込まない細胞は、生存していると考えられ、計測し、細胞収率を決定する。
【0031】
チューブまたはバイアルは、プラスチック、ポリスチレン、ポリプロピレン等を含む任意の適切な物質からなり得る。
【0032】
本発明の発明的態様は、単離手順中およびその後に、通常周囲温度において、糞便サンプルに見られる剥脱大腸細胞の生存を共に可能とする、輸送培地、および、分散または懸濁培地の処方である。別の言葉で言えば、本発明により、全単離プロセス中に、約22℃から約25℃の範囲の通常周囲温度で、冷凍または凍結することなく、小さな糞便物質サンプル(例えば0.5〜1.0g)からの、無傷で生存している剥脱大腸細胞の単離が可能となる。約800万から1000万個の生大腸細胞を、本発明の技術に従って、1gの糞便サンプルから得ることができる。
【0033】
本発明の懸濁培地に通常周囲温度で維持する場合、単離大腸細胞は、より長期間、生存したままで保存できる。表1は、保存時間および温度条件の関数としての、細胞収率および生存率を示す。
【0034】
勿論、単離段階において、別の技術で代替できる。例えば、輸送培地12中の糞便サンプルの懸濁液を、ふるい(149μm、105μmおよび52μm)を通してろ過してもよい。また、分散培地中のペレットを、高密度パーコール勾配上に穏やかに重層でき、遠心分離して、細胞を勾配の上部から回収できる。かかる修飾は、当分野で一般的であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0035】
勿論、適切である場合いつでも、基準または基線を、通常、疾患に罹患していない被検者から得られた大腸細胞を使用して確立し、よって、疾患または病理学的容態の疑われる被検者から得られた大腸細胞を用いて、比較、診断または評価試験を実施できることが理解される。
【0036】
本発明の非観血的に得られた大腸細胞の重要で有利な特徴は、これらの単離大腸細胞が、胃腸管の病態に特徴的なマーカーまたは形質転換を有し、それ故、それらは、胃腸管病態の診断的および予測的指示物質として役立ち得ることが発見された。
【0037】
糞便中免疫細胞
糞便から単離された大腸細胞は、全大腸の解剖学的および病態生理学的容態を真に示すものであることが発見されたので、他の用途の中でもとりわけ、これらの細胞はまた、粘膜免疫のモニタリングも可能とする。胃腸管の粘膜は、免疫グロブリンにより媒介される免疫学的防御の発生の主要な部位である。本明細書で糞便中免疫細胞と称する、機能的に別個の細胞群を、本発明の方法により得られた剥脱細胞から、同定および単離できることが発見された。糞便中免疫細胞は、IgGおよびIgAの両方に対する抗体により認識される、キメラ免疫グロブリンとして定義される、本明細書でIgCと称される、特異的免疫グロブリンを発現する上で独特である。さらに、糞便中免疫細胞は、クローン性で、抗原特異的であり、Fc受容体および免疫グロブリンA(IgA)の存在により特徴づけられる。
【0038】
IgGおよびIgA抗体に対する糞便中免疫細胞の親和性から、糞便中免疫細胞を単離するための数個のアプローチが、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には思い付くだろう。例えば、糞便、大腸パージまたは洗浄から、または、手術および部検標本から得られた細胞の混合物からの、糞便中免疫細胞の選択的単離は、抗IgGまたは特異的抗IgCモノクローナル抗体を使用して達成できる。間接的免疫接着アプローチは、これらの細胞が、抗IgGまたは特異的抗IgC抗体で覆膜されたペトリ皿に接着できるパニング技術を使用する。糞便中免疫細胞の捕獲剤としての抗IgG抗体の使用は、純粋なIgG発現モノ特異的(すなわち、IgAの共発現を欠く)大腸細胞は、通常条件下では検出されないという、本発明による発見に基づく。所望の型のモノクローナル抗体の調製は、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には公知であり、慣用的に得られる。
【0039】
実質的に純粋な糞便中免疫細胞を得る別のアプローチは、蛍光色素コンジュゲート抗IgGまたは抗IgCを使用した蛍光活性化細胞選別(FACS)技術の使用である。1つの実施形態において、大腸細胞を、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識IgGと共にインキュベートし、過剰の試薬を洗浄して除去し、蛍光でタグした糞便中免疫細胞を、蛍光活性化細胞選別機で選別する。
【0040】
別の実施形態において、IgGまたはIgCに対するモノクローナル抗体を、当業者に公知のアガロースビーズ、ガラスビーズ、ポリスチレンビーズ、中空繊維、磁気ビーズ、プラスチック組織培養皿等の固体マトリックスに共有結合的にまたは非共有結合的に付着させる。抗体を覆膜した支持体に付着した細胞は、機械的、磁気的または任意の他の適切な手段により懸濁液からマトリックスを単に分離することにより、細胞懸濁液から分離される。当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には公知であるように、糞便中免疫細胞を、リンカーを介して抗IgGまたは抗IgCで覆膜された組織培養フラスコの表面に結合でき、フラスコ中で大腸細胞懸濁液をインキュベートした後、非結合非糞便中免疫細胞をデカントして除去する。次いで、結合した糞便中免疫細胞を、掻爬により、またはリンカーの適切な酵素的切断により回収する。ビーズマトリックス(例えばセファロース)に結合したリンカーは市販で入手できる(例えばファルマシア)。
【0041】
二色免疫蛍光フローサイトメトリーを使用して、糞便中免疫細胞の数または個体群を決定する。大腸細胞を、抗IgG FITC(緑蛍光)および抗IgA PE(フィコエリトリン、赤蛍光)と共にインキュベートする。細胞を緩衝液で洗浄して、過剰の抗体を除去した後、次いで、細胞をフローサイトメーターで解析して、単一の蛍光(緑または赤)を有する細胞、および二重蛍光(緑および赤の両方)を有する細胞を計測する。二重蛍光を有する細胞は、キメラIgC糞便中免疫細胞であり、赤蛍光を有する細胞は、IgA分泌大腸上皮細胞である。正常被検者からの大半の大腸調製物には、抗IgG FITCのみを認識する、測定可能な数の細胞はない。別の言葉で言えば、IgGのみを有する大腸細胞は稀であり、存在する場合、異常な粘膜または全身免疫機能不全に関連し得る。
【0042】
フローサイトメトリーによる免疫蛍光標識細胞の解析は、少なくとも3つの型の大腸細胞の存在を明らかにした。他のFc受容体から糞便中免疫細胞のFc受容体を区別するために、糞便中免疫細胞のFc受容体は、CFc受容体と本明細書では称する。表2は、これらの細胞に見られるIgC、CFcおよびIgAのいくつかの代表的な正規分布を示す。正常値からの逸脱は、免疫系に関与する疾患プロセスを示すだろう。図3は、一般的に検出された少なくとも3つの型の大腸細胞の図解である:「A」は、各分子2の2つの抗体結合部位により示される数個の独特なキメラ免疫グロブリンIgCおよび数個のCFc受容体3を有する糞便中免疫細胞を示す。「B」は、「A」に類似した大腸細胞を示すが、数個のCFc受容体3と共に、数個のIgA免疫グロブリン分子5を有する。「C」は、「A」および「B」に類似した大腸細胞を示すが、免疫グロブリンを全く有さず、CFc受容体のみを有する。
【0043】
上記した糞便中免疫細胞、IgAを有する大腸細胞およびCFC受容体を有する大腸細胞は、胃腸管の免疫監視に、および、全生物の全身体液性免疫の維持に別個の役割を有する。これらの細胞は不可欠な機能を実施する:(i)微生物叢による大腸でのコロニー形成における平衡を維持する;(ii)それらはクローン性であり、多能性細胞個体群を含み、各々が、食事または生物学的起源の、可溶性または粒子状の、単一抗原を認識する;(iii)それらは、腸関連リンパ組織に抗原提示細胞として作用し得る;(iv)それらは、病原体(例えば、ロタウイルス、赤痢菌、ポリオ、腸内寄生虫、マイコバクテリア等)による侵襲を検出するための守衛であり得る;および(v)その非存在は、医原性起源の免疫学的不応答、または、先天的免疫グロブリン欠損の状態を表し得る。糞便中免疫細胞を含む、これらの大腸細胞は、抗原特異的であるので、それらは、発癌物質、発癌遺伝子DNA、EBV、SV−40等を用いた形質転換により不死化して、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には公知のハイブリドーマ技術により選択抗原に特異的な抗体分泌細胞系を産生できる。
【0044】
以下の実施例は、本発明の同定または単離した大腸細胞の特定の有用性を示す。これらの実施例は、単に説明的なものでありいずれにしても限定的なものではない。
【0045】
実施例−1
本発明に記載の手順により正常被検者から単離された大腸細胞は、実質的に全ての炎症細胞を含まない。潰瘍性大腸炎およびクローン病などの、炎症性腸疾患(IBD)では、かなりの数の炎症細胞が、大腸粘膜表面に移動し、上皮細胞と共に剥脱される。
【0046】
輸送培地に懸濁した、IBD患者から集めた1から2gのアリコートの糞便を、約150mlの懸濁培地と共にストマッカー中でホモジナイズした。懸濁液のアリコート(30ml)を、10mlのヒストパック1077(密度1.077)を用いて下に敷き、室温で200×gで30分間、ブレーキをオフにして遠心分離した。懸濁水とヒストパック1077の間の界面を回収し、3回遠心分離の繰返しにより洗浄する。このプロセスで、炎症細胞が、通常の大腸細胞の完全体に加えて回収される。
【0047】
細胞混合物中の炎症細胞を、抗CD45/FITC(緑蛍光)でタグし、陽性細胞をフローサイトメーターで計測する。白血球共通抗原としても知られるCD45(cluster of differentiation)は、リンパ腫細胞の系統特異的マーカーであり、炎症細胞上に存在する。さらに、炎症の第二マーカーである抗COX−2/PE(赤蛍光)も、炎症細胞の検出に使用し得る。大腸上皮細胞は、CD45について陰性であるので、単離物中のCD45陽性細胞数は、IBD中の炎症プロセスの重度の直接的な指標である。CD45およびCOX−2の両方に陽性の細胞のモニタリングは、処置の経過中の疾患の進行を追跡するための、極めて有用な非観血的手順である。
【0048】
実施例2
粘膜免疫の状態の評価
細胞を、免疫無防備状態の腸を有することが疑われる被検者から上記のように得られる。細胞のアリコート(約110K)を、PBS緩衝液に懸濁し、37℃で約45分間、蛍光標識抗体の以下の組合せの1つと共にインキュベートする:抗IgG FITC(緑)抗IgA PE(赤)、および抗IgC FITC+抗IgA PE。アイソタイプ対照抗体を有する細胞を含む平行チューブも、非特異的結合抗体を説明するために維持する。直接的免疫蛍光アッセイを実施して、様々な大腸細胞のセットに対する抗体の結合を測定する。糞便中免疫細胞(IgCを発現)またはIgAを有する細胞の数の有意な減少は、免疫不全に診断的に重要である。表2は、正常被検者で得られた数値を列挙する。正常値からのあらゆる逸脱は、免疫機能不全を示す。直接的および間接的免疫蛍光アッセイは、巨大分子のレパートリー、例えばサイトカイン、シグナル伝達中間体、成長因子等の評価に同じように実施できることを注記すべきである。
【0049】
実施例3
大腸癌関連バイオマーカーの発現
細胞を、大腸癌または大腸癌前駆体(ポリープ)を有することが疑われる患者から上記のように得る。この技術の1つの実施形態において、細胞を、CD44またはその分子変異体、例えば、CD44V3、CD44V6およびCD44V10の発現について、間接的免疫蛍光アッセイにかけ;CD44またはその分子変異体の存在は、大腸癌の診断となる。
【0050】
実施例4
非観血的に得られる体細胞源として、本発明の大腸細胞は、表現型並びに遺伝子型を示す。従って、それらは、例えば薬理学的および環境的物質に対する応答を決定するための生物学的巨大分子(例えばDNA、RNA、タンパク質等)のDNA分類および調査並びに多剤耐性の評価に有用である。これらの単離された細胞はまた、当業者が容易に思い付く様々な他の方法にも有用である。
【0051】
本明細書に提供した指針、説明および実施例から、本発明の様々な代替の実施形態、修飾または操作を、当業者は思い付き、これらは、本出願の精神および概観および添付の特許請求の範囲内に含まれることは明らかである。
【0052】
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、小さな糞便物質のサンプルから通常周囲温度で生存剥脱大腸細胞を単離するプロセスの図解である。
【図2】
図2は、96%以上の純度を示す、本発明に記載の単離大腸細胞のフロサイトメトリーのヒストグラムデータを示す。
【図3】
図3は、その免疫グロブリン特徴に基づいて同定した大腸細胞のクラスの図解である。
これは、1999年4月15日に提出された、係属中の米国特許出願第09/292,358号の一部継続出願である。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、大腸直腸癌および他の胃腸疾患の早期の非観血的検出を可能とする、単離大腸細胞に関する。より特定すると、本発明は、小糞便サンプルから得られた、単離され、生物学的に実質的に純粋で生存した糞便中免疫細胞およびリンパ腫起源の非上皮細胞に関する。本発明は、さらに、通常周囲温度で糞便サンプルから生大腸細胞を単離するための輸送培地および分散または懸濁培地の提供、および、本発明の単離大腸細胞を使用して大腸直腸および他の胃腸病態を検出する方法に関する。また、単離した大腸細胞により、他の異常容態、症状、疾患、または病理容態の研究および決定が可能となる。
【0003】
(従来技術)
ヒトの一般的な胃腸悪性疾患は、大腸直腸癌である。大腸直腸癌は、米国の男性および女性の全ての癌関連死の約14%を占めると推定され、その発症率は高くなり続けている(Boringら、CA Cancer J.Clin.1994;44:7〜26)。早期検出は、他の悪性疾患の処置でも同じであるように、この癌の成功裡の処置にも重要な因子である。
【0004】
大腸および大腸直腸腫瘍の検出のスクリーニングアプローチは、現在、(a)糞便潜血検査(FOBT)、(b)S字結腸鏡検査、(c)バリウム注腸二重造影法、および(d)結腸鏡検査の使用に基づく。これらのスクリーニング検査の中で、大腸直腸腫瘍からの可能性の比較的高い出血に基づく、FOBTのみが、非観血的で、簡単で、比較的安価である。しかし、FOBTの頻繁な偽陽性および偽陰性結果により、その特異性および感度はかなり限定される。他の手順は高価で観血的である。従って、簡単で、非観血的で、信頼でき、安価な、結腸直腸癌、胃腸(GI)管疾患および他の病理容態の検出法を提供することが明らかに必要である。
【0005】
大腸細胞は、被検者の胃腸管の直前の過去の代謝病歴の状況を提供する、重要な情報マーカー分子源を示す。さらに、かかる細胞は、内視鏡検査を含む観血的手順を使用した大腸生検による限定的なサンプリングとは対照的に、非観血的な方法での、大腸の全長に沿った大腸粘膜の状態を反映する統計学的に大きなサンプリングフレーム由来の細胞個体群を示す。
【0006】
大腸細胞は、ある変化または形質転換を受け、前癌および癌状態を含む大腸病態を示す、ある生物学的または化学的マーカーを有する。それ故、大腸細胞は、胃腸管の新生物プロセスの開始および他の病態生理学的変化の価値ある早期の指示物質として役立ち得る。遺伝子および表面タンパク質の僅かな変化は、かかる新生物マーカーの例である。特に、Ki67、細胞表面糖タンパク質CD44および腫瘍関連抗原19〜9およびレクチン結合は、胃腸管の新生物性転化の特異的バイオマーカーである。また、単離大腸細胞中のDNAの量と腫瘍の存在の間に強い関連がある。なぜなら、急速に分裂している細胞は、より多くのDNAを含むからである。また、大腸腺腫ポリープおよび癌の発達は、発癌遺伝子(ki−ras)の活性化、腫瘍抑制遺伝子(p53およびAPC)の失活、およびDNAミスマッチ修復遺伝子の変化を含む、多段階プロセスであることはよく認識されている。
【0007】
これまで、剥脱大腸細胞は、それらが糞便中に流されると、分解すると、一般に、本発明が属する分野で理解され、理由は、これらの細胞は、大気に曝露されるとすぐに分解し始めるからである。糞便中に含まれる酵素、粘液および細菌は、大腸細胞を分解するプロセスに寄与する。新しく集めた糞便サンプルを−20℃以下の温度まで冷凍することが、例えば、米国特許第5,094,956号、第5,380,647号および第5,455,160号に、細胞成分は考えず、化学的構成成分を保存するためのみに記載されている。従って、これらの手順は、細胞完全性を保持せず、他の不純物質を含まない無傷の生細胞を単離するのには適用できない。
【0008】
DuttaおよびNair(Gastroenterology、114:1333〜1335、1998)は、生大腸細胞の単離を達成するために、Albaughら(Int.J.Cancer、52:347〜350、1992)およびIyengarら(FASEB J.5:2856〜2859、1991)を参照する。Albaughらは、輸送培地、および、Iyengarらの昔の研究に基づいて糞便サンプルから大腸細胞を得る手順を記載した。しかし、従来技術の輸送培地は、脂肪酸を含まないBSAに加えて抗生物質の添加された食塩水溶液からなるAlbaughらの培地と同じように、本発明の輸送培地とは異なる。別の言葉で言えば、従来技術の輸送培地は、少なくとも1つの基準の点で欠け、すなわち、本発明に記載の輸送培地の処方に絶対必要な粘液溶解剤を有さない点で欠けていた。
【0009】
さらに、Albaughらのシステムでは、回収後の糞便サンプルは、氷中での冷却を保たなければならず、さらに処理するために実験室に輸送されるが、僅か約1時間しか氷中に保存できなかった。これに対し、本発明のシステムは、氷中での冷却を必要とせず、通常周囲温度で所望の結果を達成し、これは、本発明の重要な特徴である。さらに、Albaughらは、その細胞は80%を超える生存率を有していたが、食細胞および他の細胞の存在を除外できなかったと記述する。実際、Iyengarらの図3および4により、得られた細胞調製物はかなり不純であることが明らかに示される。従って、IyengarらおよびAlbaughらの手順は、生大腸細胞を提供し得るが、それらは、実質的に純粋な大腸細胞を得る目的には適していない。要約すると、これまで、小さな糞便塊から通常周囲大気条件で単離された、特定の細胞型の生存し生物学的に実質的に純粋なサンプルを得ることは不可能であった。
【0010】
(発明の要約)
それ故、本発明の目的は、通常周囲温度で単離された、生存し生物学的に実質的に純粋な剥脱糞便大腸細胞を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、生存し、単離された、糞便中免疫細胞を提供することである。
【0012】
本発明の追加の目的は、リンパ腫または非リンパ腫系統の、生存し、単離された、免疫細胞を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、通常周囲温度で生存剥脱糞便大腸細胞を単離するための、輸送培地、および、分散または懸濁培地を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、本発明の教示に従って通常周囲温度で単離された剥脱糞便大腸細胞を使用して、大腸直腸癌を含む胃腸疾患を検出する非観血的方法を提供することである。
【0015】
本発明の様々な他の目的および利点は、本発明の詳細な説明から、および、図面の簡単な説明から明らかとなろう。
【0016】
前記のおよび他の目的、態様および利点は、図面を参照すると、よりよく理解されよう。
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明の様々な目的および利点は、通常大気条件および周囲温度で糞便サンプルから単離された所望の細胞型の生存均一大腸細胞を得ることにより達成される。
【0018】
特記しない限り、本明細書に使用した全ての専門的および科学的用語は、本発明が属する分野の普通程度の技術的理解力を有する者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものに類似または等価な任意の方法および物質を、本発明の実施または試験に使用できるが、本明細書に記載した方法および物質が好ましい。特記しない限り、本明細書で使用または考えられる技術は、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には公知の標準的な方法である。物質、方法および実施例は、単に例示的なものであり、限定的なものではない。
【0019】
本明細書に使用した「実質的に純粋」なる語は、産物は、フローサイトメトリーまたは本明細書に記載の手順により決定したところ、96%以上の純度、通常98%〜99%の純度をもって、均一または単一の型に統一され、物質の妨害または他の型の細胞の混入がない。
【0020】
これまで、糞便物中の剥脱大腸細胞の遭遇する問題は、これらの細胞が、糞便物中のタンパク質分解酵素、微生物叢、粘液等の存在に因り、通常大気条件に曝露されるとすぐに、分解されることであった。従って、糞便物からの通常周囲温度での無傷生大腸細胞の単離を妨げる全てのこのような因子または要素の作用を阻害するシステムを発明しなければならなかった。これは、本発明により、2つの異なる培地を処方することにより達成される:(1)輸送培地、および(2)分散または懸濁培地。輸送培地は、酵素失活量の酵素捕捉剤またはプロテアーゼ封鎖剤、細菌活性を阻害するに十分な量の殺細菌剤または静細菌剤、および、糞便物に含まれる粘液を破壊する粘液溶解量の物質を含む、生理食塩水からなる。
【0021】
様々な酵素捕捉剤、静細菌剤および粘液溶解剤が、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には思い付き、本発明の目的を妨害しない任意の適切な物質を、本発明の教義に従って輸送培地の処方に使用し得る。
【0022】
酵素捕捉剤の中で好ましいものには、タンパク質分解活性阻害剤および動物タンパク質がある。適切なタンパク質分解活性阻害剤の例は、PMSF、ペプスタチンA、ベスタチンおよびキモスタチンを含む。酵素活性を阻害または失活する試薬は、ホルムアルデヒド、金属キレート剤、重金属イオン、あるアミノ酸、例えばチロシンおよびフェニルアラニン、および高濃度の亜鉛または無機ホスフェートを含む。動物タンパク質の中で適切なものには、ウサギ(RSA)、ヤギ(GSA)、ヒツジ(SHA)、ウマ(ESA)、ウシ(BSA)およびヒト(HSA)起源の血清アルブミンを含む、非免疫性の水溶性化合物であるものがある。後のアッセイ手順を妨害しない、あるポリアミノ酸も、酵素失活剤として使用し得る。かかるポリアミノ酸の適切な例は、ポリ−L−リジン、ポリ−L−プロリン、ポリ−L−チロシン等である。
【0023】
静細菌剤の適切な例は、アジ化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、抗生物質(例えばペニシリン、ストレプトマイシン、アムホテリシンB、ゲンタマイシン、ポリミキシンB等)、グリシルリジン酸、グリシルレチン酸(α&β)、その適切な誘導体等である。好ましい殺細菌剤は、チメロサール(シグマケミカル社)であり、好ましい静細菌剤はグリシルリジン酸である。
【0024】
粘液溶解剤の適切な例は、グアイフェネシン、グアイアコール、ヨウ化カリウム、β−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、カプサイシン、グリシルリジン等である。好ましい粘液溶解剤はグアイフェネシン(シグマケミカル社)である。
【0025】
Puck食塩水Gは、好ましい生理食塩水溶液源である。
【0026】
好ましい輸送培地は以下のように調製する。
【0027】
Puck食塩水G 500ml
重炭酸ナトリウム 350〜500mg
BSA 2.5〜15g
グアイフェネシン 2.5〜5g
グリシルリジン酸 2〜4g
分散または懸濁培地は、分散または懸濁培地の調製時には削除される、例えばグリシルリチン酸などの殺細菌剤/静細菌剤に関して、輸送培地とは異なる。
【0028】
通常周囲温度で実質的に純粋な大腸細胞を単離する手順
ここで図1を参照すると、小さな糞便サンプル10(約0.5〜1.0g)を、輸送培地およびいくつかのガラスビーズ12を含むチューブ11に入れ、その後、チューブに栓で封をする。次いで、糞便サンプル10を、培地12に、例えばボルテックスにより十分に分散し、その後、チューブ11の内容物を、メッシュふるい(約300μmの孔サイズ)を通してろ過し、新しいチューブ13(50mlのポリプロプレンまたは類似の円錐遠心チューブ)に入れ、約1.033から約1.25の範囲の密度を有する重い培地14を下に敷き、ブレーキをオフにして卓上遠心機で約200×gで約10分間遠心分離する。
【0029】
大腸細胞は、重いクッション中に、および、チューブの底にペレットとして蓄積し、重い培地14と、上のより軽い懸濁液18の間の界面で、より軽い細胞(少量成分)のバンド17を除去した後に、プラスチック移動ピペット15を用いて吸引することにより回収する。細胞を重い培地から回収し、ペレットを、新しい50mlの遠心チューブ19に入れ、約40mlの懸濁培地20で希釈する。次いで、かくして得られた細胞の懸濁液を、約900×gで約10分間遠心分離し、その後、透明な上清を廃棄し、遠心チューブの底に残っている細胞ペレット21を、約1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁する。より軽い細胞のバンド(少量成分)17を、第二の新しい50mlの遠心チューブ22に入れ、重いクッションおよびペレットからの細胞について記載したように洗浄する。実質的に生物学的に純粋な単離剥脱生大腸細胞を含む、細胞ペレット21を回収し、適切な塩溶液(例えばPBS)に分散し、45μmのふるいフィルターを通してろ過する。
【0030】
単離大腸細胞の生存率を決定するために、一部のペレット21を、PBS/BSA培地26(1ml/gの糞便サンプル)に分散する。次いで、懸濁液の1/10希釈液を、トリパンブルーの存在下で血球測定計で計測する。当業者には公知のように、トリパンブルーを取込まない細胞は、生存していると考えられ、計測し、細胞収率を決定する。
【0031】
チューブまたはバイアルは、プラスチック、ポリスチレン、ポリプロピレン等を含む任意の適切な物質からなり得る。
【0032】
本発明の発明的態様は、単離手順中およびその後に、通常周囲温度において、糞便サンプルに見られる剥脱大腸細胞の生存を共に可能とする、輸送培地、および、分散または懸濁培地の処方である。別の言葉で言えば、本発明により、全単離プロセス中に、約22℃から約25℃の範囲の通常周囲温度で、冷凍または凍結することなく、小さな糞便物質サンプル(例えば0.5〜1.0g)からの、無傷で生存している剥脱大腸細胞の単離が可能となる。約800万から1000万個の生大腸細胞を、本発明の技術に従って、1gの糞便サンプルから得ることができる。
【0033】
本発明の懸濁培地に通常周囲温度で維持する場合、単離大腸細胞は、より長期間、生存したままで保存できる。表1は、保存時間および温度条件の関数としての、細胞収率および生存率を示す。
【0034】
勿論、単離段階において、別の技術で代替できる。例えば、輸送培地12中の糞便サンプルの懸濁液を、ふるい(149μm、105μmおよび52μm)を通してろ過してもよい。また、分散培地中のペレットを、高密度パーコール勾配上に穏やかに重層でき、遠心分離して、細胞を勾配の上部から回収できる。かかる修飾は、当分野で一般的であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0035】
勿論、適切である場合いつでも、基準または基線を、通常、疾患に罹患していない被検者から得られた大腸細胞を使用して確立し、よって、疾患または病理学的容態の疑われる被検者から得られた大腸細胞を用いて、比較、診断または評価試験を実施できることが理解される。
【0036】
本発明の非観血的に得られた大腸細胞の重要で有利な特徴は、これらの単離大腸細胞が、胃腸管の病態に特徴的なマーカーまたは形質転換を有し、それ故、それらは、胃腸管病態の診断的および予測的指示物質として役立ち得ることが発見された。
【0037】
糞便中免疫細胞
糞便から単離された大腸細胞は、全大腸の解剖学的および病態生理学的容態を真に示すものであることが発見されたので、他の用途の中でもとりわけ、これらの細胞はまた、粘膜免疫のモニタリングも可能とする。胃腸管の粘膜は、免疫グロブリンにより媒介される免疫学的防御の発生の主要な部位である。本明細書で糞便中免疫細胞と称する、機能的に別個の細胞群を、本発明の方法により得られた剥脱細胞から、同定および単離できることが発見された。糞便中免疫細胞は、IgGおよびIgAの両方に対する抗体により認識される、キメラ免疫グロブリンとして定義される、本明細書でIgCと称される、特異的免疫グロブリンを発現する上で独特である。さらに、糞便中免疫細胞は、クローン性で、抗原特異的であり、Fc受容体および免疫グロブリンA(IgA)の存在により特徴づけられる。
【0038】
IgGおよびIgA抗体に対する糞便中免疫細胞の親和性から、糞便中免疫細胞を単離するための数個のアプローチが、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には思い付くだろう。例えば、糞便、大腸パージまたは洗浄から、または、手術および部検標本から得られた細胞の混合物からの、糞便中免疫細胞の選択的単離は、抗IgGまたは特異的抗IgCモノクローナル抗体を使用して達成できる。間接的免疫接着アプローチは、これらの細胞が、抗IgGまたは特異的抗IgC抗体で覆膜されたペトリ皿に接着できるパニング技術を使用する。糞便中免疫細胞の捕獲剤としての抗IgG抗体の使用は、純粋なIgG発現モノ特異的(すなわち、IgAの共発現を欠く)大腸細胞は、通常条件下では検出されないという、本発明による発見に基づく。所望の型のモノクローナル抗体の調製は、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には公知であり、慣用的に得られる。
【0039】
実質的に純粋な糞便中免疫細胞を得る別のアプローチは、蛍光色素コンジュゲート抗IgGまたは抗IgCを使用した蛍光活性化細胞選別(FACS)技術の使用である。1つの実施形態において、大腸細胞を、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識IgGと共にインキュベートし、過剰の試薬を洗浄して除去し、蛍光でタグした糞便中免疫細胞を、蛍光活性化細胞選別機で選別する。
【0040】
別の実施形態において、IgGまたはIgCに対するモノクローナル抗体を、当業者に公知のアガロースビーズ、ガラスビーズ、ポリスチレンビーズ、中空繊維、磁気ビーズ、プラスチック組織培養皿等の固体マトリックスに共有結合的にまたは非共有結合的に付着させる。抗体を覆膜した支持体に付着した細胞は、機械的、磁気的または任意の他の適切な手段により懸濁液からマトリックスを単に分離することにより、細胞懸濁液から分離される。当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には公知であるように、糞便中免疫細胞を、リンカーを介して抗IgGまたは抗IgCで覆膜された組織培養フラスコの表面に結合でき、フラスコ中で大腸細胞懸濁液をインキュベートした後、非結合非糞便中免疫細胞をデカントして除去する。次いで、結合した糞便中免疫細胞を、掻爬により、またはリンカーの適切な酵素的切断により回収する。ビーズマトリックス(例えばセファロース)に結合したリンカーは市販で入手できる(例えばファルマシア)。
【0041】
二色免疫蛍光フローサイトメトリーを使用して、糞便中免疫細胞の数または個体群を決定する。大腸細胞を、抗IgG FITC(緑蛍光)および抗IgA PE(フィコエリトリン、赤蛍光)と共にインキュベートする。細胞を緩衝液で洗浄して、過剰の抗体を除去した後、次いで、細胞をフローサイトメーターで解析して、単一の蛍光(緑または赤)を有する細胞、および二重蛍光(緑および赤の両方)を有する細胞を計測する。二重蛍光を有する細胞は、キメラIgC糞便中免疫細胞であり、赤蛍光を有する細胞は、IgA分泌大腸上皮細胞である。正常被検者からの大半の大腸調製物には、抗IgG FITCのみを認識する、測定可能な数の細胞はない。別の言葉で言えば、IgGのみを有する大腸細胞は稀であり、存在する場合、異常な粘膜または全身免疫機能不全に関連し得る。
【0042】
フローサイトメトリーによる免疫蛍光標識細胞の解析は、少なくとも3つの型の大腸細胞の存在を明らかにした。他のFc受容体から糞便中免疫細胞のFc受容体を区別するために、糞便中免疫細胞のFc受容体は、CFc受容体と本明細書では称する。表2は、これらの細胞に見られるIgC、CFcおよびIgAのいくつかの代表的な正規分布を示す。正常値からの逸脱は、免疫系に関与する疾患プロセスを示すだろう。図3は、一般的に検出された少なくとも3つの型の大腸細胞の図解である:「A」は、各分子2の2つの抗体結合部位により示される数個の独特なキメラ免疫グロブリンIgCおよび数個のCFc受容体3を有する糞便中免疫細胞を示す。「B」は、「A」に類似した大腸細胞を示すが、数個のCFc受容体3と共に、数個のIgA免疫グロブリン分子5を有する。「C」は、「A」および「B」に類似した大腸細胞を示すが、免疫グロブリンを全く有さず、CFc受容体のみを有する。
【0043】
上記した糞便中免疫細胞、IgAを有する大腸細胞およびCFC受容体を有する大腸細胞は、胃腸管の免疫監視に、および、全生物の全身体液性免疫の維持に別個の役割を有する。これらの細胞は不可欠な機能を実施する:(i)微生物叢による大腸でのコロニー形成における平衡を維持する;(ii)それらはクローン性であり、多能性細胞個体群を含み、各々が、食事または生物学的起源の、可溶性または粒子状の、単一抗原を認識する;(iii)それらは、腸関連リンパ組織に抗原提示細胞として作用し得る;(iv)それらは、病原体(例えば、ロタウイルス、赤痢菌、ポリオ、腸内寄生虫、マイコバクテリア等)による侵襲を検出するための守衛であり得る;および(v)その非存在は、医原性起源の免疫学的不応答、または、先天的免疫グロブリン欠損の状態を表し得る。糞便中免疫細胞を含む、これらの大腸細胞は、抗原特異的であるので、それらは、発癌物質、発癌遺伝子DNA、EBV、SV−40等を用いた形質転換により不死化して、当分野の普通程度の技術的理解力を有する者には公知のハイブリドーマ技術により選択抗原に特異的な抗体分泌細胞系を産生できる。
【0044】
以下の実施例は、本発明の同定または単離した大腸細胞の特定の有用性を示す。これらの実施例は、単に説明的なものでありいずれにしても限定的なものではない。
【0045】
実施例−1
本発明に記載の手順により正常被検者から単離された大腸細胞は、実質的に全ての炎症細胞を含まない。潰瘍性大腸炎およびクローン病などの、炎症性腸疾患(IBD)では、かなりの数の炎症細胞が、大腸粘膜表面に移動し、上皮細胞と共に剥脱される。
【0046】
輸送培地に懸濁した、IBD患者から集めた1から2gのアリコートの糞便を、約150mlの懸濁培地と共にストマッカー中でホモジナイズした。懸濁液のアリコート(30ml)を、10mlのヒストパック1077(密度1.077)を用いて下に敷き、室温で200×gで30分間、ブレーキをオフにして遠心分離した。懸濁水とヒストパック1077の間の界面を回収し、3回遠心分離の繰返しにより洗浄する。このプロセスで、炎症細胞が、通常の大腸細胞の完全体に加えて回収される。
【0047】
細胞混合物中の炎症細胞を、抗CD45/FITC(緑蛍光)でタグし、陽性細胞をフローサイトメーターで計測する。白血球共通抗原としても知られるCD45(cluster of differentiation)は、リンパ腫細胞の系統特異的マーカーであり、炎症細胞上に存在する。さらに、炎症の第二マーカーである抗COX−2/PE(赤蛍光)も、炎症細胞の検出に使用し得る。大腸上皮細胞は、CD45について陰性であるので、単離物中のCD45陽性細胞数は、IBD中の炎症プロセスの重度の直接的な指標である。CD45およびCOX−2の両方に陽性の細胞のモニタリングは、処置の経過中の疾患の進行を追跡するための、極めて有用な非観血的手順である。
【0048】
実施例2
粘膜免疫の状態の評価
細胞を、免疫無防備状態の腸を有することが疑われる被検者から上記のように得られる。細胞のアリコート(約110K)を、PBS緩衝液に懸濁し、37℃で約45分間、蛍光標識抗体の以下の組合せの1つと共にインキュベートする:抗IgG FITC(緑)抗IgA PE(赤)、および抗IgC FITC+抗IgA PE。アイソタイプ対照抗体を有する細胞を含む平行チューブも、非特異的結合抗体を説明するために維持する。直接的免疫蛍光アッセイを実施して、様々な大腸細胞のセットに対する抗体の結合を測定する。糞便中免疫細胞(IgCを発現)またはIgAを有する細胞の数の有意な減少は、免疫不全に診断的に重要である。表2は、正常被検者で得られた数値を列挙する。正常値からのあらゆる逸脱は、免疫機能不全を示す。直接的および間接的免疫蛍光アッセイは、巨大分子のレパートリー、例えばサイトカイン、シグナル伝達中間体、成長因子等の評価に同じように実施できることを注記すべきである。
【0049】
実施例3
大腸癌関連バイオマーカーの発現
細胞を、大腸癌または大腸癌前駆体(ポリープ)を有することが疑われる患者から上記のように得る。この技術の1つの実施形態において、細胞を、CD44またはその分子変異体、例えば、CD44V3、CD44V6およびCD44V10の発現について、間接的免疫蛍光アッセイにかけ;CD44またはその分子変異体の存在は、大腸癌の診断となる。
【0050】
実施例4
非観血的に得られる体細胞源として、本発明の大腸細胞は、表現型並びに遺伝子型を示す。従って、それらは、例えば薬理学的および環境的物質に対する応答を決定するための生物学的巨大分子(例えばDNA、RNA、タンパク質等)のDNA分類および調査並びに多剤耐性の評価に有用である。これらの単離された細胞はまた、当業者が容易に思い付く様々な他の方法にも有用である。
【0051】
本明細書に提供した指針、説明および実施例から、本発明の様々な代替の実施形態、修飾または操作を、当業者は思い付き、これらは、本出願の精神および概観および添付の特許請求の範囲内に含まれることは明らかである。
【0052】
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、小さな糞便物質のサンプルから通常周囲温度で生存剥脱大腸細胞を単離するプロセスの図解である。
【図2】
図2は、96%以上の純度を示す、本発明に記載の単離大腸細胞のフロサイトメトリーのヒストグラムデータを示す。
【図3】
図3は、その免疫グロブリン特徴に基づいて同定した大腸細胞のクラスの図解である。
Claims (25)
- 通常周囲温度で単離した生存し生物学的に実質的に純粋な剥脱糞便大腸細胞。
- 特定な胃腸容態を示すマーカーを有する、請求項1に記載の大腸細胞。
- 新生物性転化を示すマーカーを有する、請求項2に記載の大腸細胞。
- 免疫機能不全を示すマーカーを有する、請求項2に記載の大腸細胞。
- 非新生物胃腸病態を示す異常を示す、請求項2に記載の大腸細胞。
- リンパ腫起源の上皮または非上皮細胞である、請求項1に記載の大腸細胞。
- キメラ免疫グロブリンIgCを発現している請求項1に記載の大腸細胞。
- IgAおよびCFcのみを発現している請求項1に記載の大腸細胞。
- CFcのみを発現している請求項1に記載の大腸細胞。
- 糞便サンプルを集めるための輸送培地であって、
(a)糞便物中に存在するプロテアーゼを封鎖するに十分な量の物質;
(b)糞便物中に存在する粘液を破壊するに十分な量の粘液溶解剤;および
(c)糞便物中の細菌活性を阻害するに十分な量の殺細菌剤を含む、前記輸送培地。 - プロテアーゼを封鎖するための前記物質は、血漿タンパク質、ゲル形成ポリマーおよび合成レジンからなる群から選択する、請求項10に記載の輸送培地。
- 前記血漿タンパク質は、ウシ血清アルブミン、卵アルブミンまたはヒト血清アルブミンである、請求項11に記載の輸送培地。
- 粘液溶解剤は、N−アセチルシステイン、β−メルカプトエタノール、カプサイシン、ジチオトレイトール、グアイアコールおよびグアイフェネシンからなる群から選択する、請求項12に記載の輸送培地。
- 殺細菌剤は、チメロサール、抗生物質、アジ化ナトリウム、グリシルリジン酸およびグリシルレチン酸(α&β)からなる群から選択する、請求項13に記載の輸送培地。
- 重炭酸ナトリウム:350〜500mg;ウシ血清アルブミン:2.5〜15g;グアイフェネシン:2.5〜5.0g;グリシルリジン酸:2.0〜4.0g;およびPuck食塩水G:500mlを含む溶液である、請求項14に記載の輸送培地。
- グリシルリジン酸を欠き、それによって前記輸送培地は分散または懸濁液培地に変換される、請求項15に記載の輸送培地。
- 通常周囲温度で、生物学的に実質的に純粋な剥脱糞便大腸細胞を単離する方法であって、
(a)通常周囲温度で維持した輸送培地中に糞便サンプルを集め;
(b)懸濁培地で希釈した前記輸送培地に、糞便サンプルを分散し;
(c)(b)段階の希釈輸送培地に存在する細胞を沈降させて、より重い密度の培地上に、細胞懸濁液を重層することにより、不純物から細胞を単離し;
(d)(c)段階の細胞を、前記のより重い培地との境界で細胞のバンドが形成され、より重い培地およびペレット内に細胞画分が形成される影響にかけ;次いで
(e)前記細胞バンドから、および、より重い培地およびペレットから、生物学的に実質的に純粋な大腸細胞を回収する段階を含む、前記方法。 - 前記のより重い培地は、約1.033から約1.25の範囲の密度である、請求項17に記載の方法。
- 前記のより重い培地の密度は1.25である、請求項18に記載の方法。
- 大腸直腸癌を検出する方法であって、
(a)生物学的に実質的に純粋な大腸細胞を得;次いで
(b)前記大腸細胞を、癌を決定するマーカーの存在を検出する試薬と反応させる段階を含み、ここで前記大腸細胞と前記試薬の陽性反応の発生は癌の存在を示す、前記方法。 - 前記試薬は、蛍光標識抗体または発色産物を産生する植物レクチンである、請求項20に記載の方法。
- 胃腸管の粘膜性免疫を決定する方法であって、胃腸管粘膜免疫を決定したい被検者から回収した糞便中免疫細胞数を、正常被検者から回収した糞便中免疫細胞数と比較する段階を含み、正常値からの統計学的に有意な逸脱は免疫機能不全レベルを示す、前記方法。
- 胃腸管病態を診断する方法であって、胃腸管病態が疑われる被検者の糞便サンプル中の免疫細胞の存在を決定する段階を含み、免疫細胞の存在は胃腸管病態を示す、前記方法。
- 免疫細胞の存在は、細胞を、CD45またはCOX−2に対する抗体と反応させることにより決定し、前記抗体と結合する細胞は免疫細胞である、請求項23に記載の方法。
- 抗原特異的モノクローナル抗体を産生する方法であって、抗原特異的糞便中免疫細胞を、標準的なハイブリドーマ技法においてクローンとして使用し、抗原特異的モノクローナル抗体を回収する段階を含む、前記方法。
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